明 細 書
腎炎の治療剤
技術分野
[0001] 本発明は、腎炎の治療に関する。
背景技術
[0002] 腎炎は腎臓による尿のろ過機能の阻害によってもたらされる疾患である。ろ過機能 の低下によって、蛋白質や血液の尿への漏出が見られる。一方、本来尿中に排泄さ れるべき代謝産物の排出機能が低下し体内に蓄積するようになる。腎機能の低下に より、たとえば尿素、尿酸、クレアチュンなどの含窒素化合物が体内に蓄積する。また 腎炎患者にはしばしば高血圧が見られる。
[0003] 腎炎については、多くの原因が指摘されている。たとえば、自己免疫応答によって 糸球体が障害される。リウマチなどの自己免疫性の疾患には、しばしば腎炎がともな うこと力 、自己免疫は腎炎の主要な原因の一つと考えられている。あるいは感染に 対する正常な免疫応答が腎炎を引き起こす例も知られている。たとえば溶血性連鎖 球菌の感染後に見られる急性腎炎は、次のようなメカニズムが原因の一つと考えられ ている。すなわち、溶血性連鎖球菌の感染に対する正常な免疫応答として、抗体が 産生される。そして生体内には、溶血性連鎖球菌の抗原とその抗体からなる免疫複 合体が生じる。この免疫複合体が糸球体基底膜に蓄積し、補体の細胞障害作用を 活性化して炎症の原因となる。
[0004] 現在のところ、腎炎の治療の主体は、食塩や蛋白質の制限を目的とする食事療法 である。食事療法には症状の進行を遅らせる効果は期待できるが、腎炎の原因を取 り除くことはできない。また腎炎の治療に、様々な種類のステロイド剤が用いられるこ ともある。しかしステロイド剤による治療効果は主にその抗炎症作用に依存している。 あるいは自己免疫性疾患に伴う腎炎においては、免疫機能の調節によって腎炎症 状が抑制される。いずれにせよ、ステロイド剤によって疾患の原因は除去できないの で、腎炎の症状が進行した場合には人工透析が必要になることもある。人工透析は、 身体的にも、また社会的にも、患者の負担が大きい治療方法である。またステロイド
剤の免疫抑制作用は、感染症のリスクを高める可能性がある。
[0005] 腎炎の例としては、全身性エリテマトーデス (Systemic Lupus Erythematosus、以下 S LEと記載する)が原因で起こるループス腎炎 (lupus nephritis)が挙げられる。 SLEは 19 42年に Klempererにより提唱された膠原病の代表的な病気で、自己抗体や免疫複合 体の出現等に基づく多臓器障害を主徴とする疾患である。本疾患に特徴的な顔面 の蝶形紅斑が、狼 (lupus)による傷 (狼瘡)に似ているため、全身性紅斑性狼瘡 (Syste mic Lupus Erythematosus)と名づけられた。 SLEの臨床症状は皮疼にとどまらず,実 に多彩である。たとえば、発熱、多関節痛および多関節炎、漿膜炎、貧血、血小板減 少、腎症状、あるいは神経症状などが見られる。 SLEは圧倒的に女性、特に 20〜30 歳代の女性に好発し,発症の男女比は 1対 10とされている。 日本には 7,000〜9,000 人の患者が存在し、有病率は人口 10万人あたり 66〜85人と推定される。
[0006] 腎臓は SLEにおいて侵されやすい臓器の 1つである。実際、患者の 70〜80%に腎 障害が起こる。 SLE患者に見られる腎障害は、特にループス腎炎と呼ばれる。ループ ス腎炎は、糸球体への障害と進行性の腎機能低下を特徴とする。ループス腎炎の糸 球体障害は、免疫系が自己抗原に対する抗体(自己抗体)を作るために起こる自己 免疫プロセスと関係がある。すなわち、糸球体などの腎臓組織に結合した自己抗体と 補体の複合体が腎臓に蓄積し、炎症反応を起こすと考えられている。
[0007] ループス腎炎には、血尿、発熱、顔や手足の赤い斑点、あるいはむくみといつた多 彩な症状がみられる。ループス腎炎患者は、しばしばネフローゼ症候群(蛋白質の排 出過剰)や急速進行性糸球体腎炎を起こし、急性腎不全や慢性腎不全に移行する 場合がある。ループス腎炎は遺伝的素因があると考えられている。慢性関節リウマチ や強皮症など他の自己免疫疾患と関連している可能性もある。また妊娠によって誘 発されるゲースも知られて ヽる。
[0008] ループス腎炎の治療は、原因疾患である SLEの治療と同様に、ステロイド剤による 薬物療法が中心となっている。通常、 2〜3年はステロイド剤が継続的に投与される。 症状が軽快した後も再発しやすいので、薬物治療は長期間にわたることが多い。病 気の活動性の強い重症の場合、大量のステロイド剤を点滴で静脈内に投与する「パ ルス療法」を行うこともある。その結果、ステロイド剤の副作用が問題となる場合がある
(非特許文献 lZSaag K.G. et al., AM.J.Med.,96, 115, 1994)。たとえばステロイド剤 によって患者の免疫機能が抑制され、患者が感染症に罹患する可能性が高まる恐 れがあることが指摘されて 、る。
[0009] ステロイド剤だけで効果が現れないときは、さらに免疫抑制剤を併用する。急に腎 臓の機能が低下する「急速進行性腎炎」の症状があるときなどには、抗凝血剤を投与 することちある。
薬物治療の他に、自己抗体などの自己免疫症状の原因物質を除去する治療法も 知られている。 1つは「血漿交換」という方法で、透析と同じように血液を体外へ導き 出して原因物質を除いて力 体内に戻す。所要時間は 3〜4時間で週に 1回程度行 う。もう 1つは「血液吸着」といい、血液を体外へ導き出し原因物質をトリブトファンを固 定ィ匕した膜に吸着させて除去するという方法である。しかし薬物療法と同様に治療効 果には個人差がある。
[0010] SLEのような自己免疫疾患患者の血中 IFN濃度が高いことが報告されている(非特 許文献 2ZScience, 16 Nov. 2001 Vol.294)0このような疾患に対して、 IFNの作用を 抑制すれば、症状をコントロールできる可能性がある。このようなアプローチを実現す るためのサイト力イン拮抗剤として、タイプ 1インターフェロンに対する抗体が用いられ た (特許文献 1ZWO 01/054721)。すなわち、 IFN- αに対する抗体による SLEの治療 が提案された。しかし IFN- αに対する抗体の腎炎症状に及ぼす影響については明 らかでない。
[0011] 更に重要なことは、 SLEのような自己免疫性の疾患に付随する腎炎においては、自 己免疫疾患の治療が主体となっていることである。自己免疫疾患が腎炎の原因とな つている以上、その原因を取り除くための治療が重要であることは言うまでもない。し 力 腎炎は患者の生活の質 (QOL)に大きな影響を与える障害の一つである。したが つて、患者の QOLの維持のためには、腎炎に対する積極的な治療、あるいは予防も 重要な課題と言って良い。
[0012] 特許文献 l :WO 01/054721
非特許文献 l : Saag K.G. et al., AM.J.Med.,96, 115, 1994
非特許文献 2 : Science, 16 Nov. 2001 Vol.294
発明の開示
発明が解決しょうとする課題
[0013] 腎炎の治療において重要なことは、自己免疫症状のコントロールのみならず、腎炎 症状の緩和である。すなわち本発明は、腎炎の治療ならびに予防のための技術の提 供を課題とする。
課題を解決するための手段
[0014] ヒトにおいて、免疫システムのバランスが偏る原因の一つは、タイプ 1インターフエ口 ンの作用である。タイプ 1インターフェロンには、インターフェロンお (IFN a )およびィ ンターフェロン 13 (IFN β )が含まれる。 IFN aあるいは IFN βは、抗ウィルス活性、ある いは抗腫瘍活性を有するインターフェロンとして知られて ヽる。ウィルス感染に伴って 、これらのインターフェロンを大量に産生する細胞として同定されたのがインターフエ ロン産生細胞(以下、 IPCと省略する場合がある)である。 IPCは血中にわず力しか存 在していない。末梢血リンパ球に占める IPCの割合は、 1%以下と考えられている。しか し IPCは、きわめて高いインターフェロンの産生能を有する。 IPCの IFN産生能は、たと えば 3000pg/mL/106cellsに達する。つまり、細胞の数は少ないが、血中 IFN aあるい は IFN jSの大部分は、 IPCによってもたらされていると言って良い。
[0015] したがって、 IPCのインターフェロン産生、あるいは IPCの細胞数そのものを抑制する ことができれば、生体内のタイプ 1インターフェロンの量を制御することができる。その 結果、偏った免疫バランスを調節し、 SLEのような自己免疫性疾患のより本質的な治 療を実現できる可能性がある。
[0016] 本発明者らは、生体内において IPCの活性を調節することができれば、自己免疫疾 患の症状を改善できると考えた。そして本発明者らは、 IPCの細胞表面抗原を認識す る数多くの抗体を作製し、 IPCの活性に及ぼす影響を解析した。その結果、特定の抗 原を認識する抗体は、 IPCの活性を調節する作用を有することを明らかにした。更に 、その自己免疫疾患の治療効果を解析した。そして IPCの活性を抑制する抗体によ つて、特に腎炎の治療効果が得られることを確認して本発明を完成した。すなわち本 発明は、以下の腎炎治療剤あるいは予防剤、治療方法、予防方法、並びに治療剤 あるいは予防剤のスクリ一二ング方法に関する。
〔1〕インターフ ロン産生細胞の活性抑制物質を有効成分として含有する腎炎の治 療剤。
〔2〕インターフェロン産生細胞の活性抑制物質力 インターフェロン産生細胞のイン ターフ ロン産生および細胞の生存のいずれ力、または両方を抑制する作用を有す る物質である〔1〕に記載の治療剤。
〔3〕インターフェロン産生細胞の活性抑制物質力 インターフェロン産生細胞のイン ターフ ロン産生および細胞の生存のいずれ力、または両方を抑制する作用を有す る抗体である〔2〕に記載の治療剤。
〔4〕抗体が、 BST2およびそのホモログのいずれか、または両方を認識する抗体、また はその少なくとも抗原結合領域を含む抗体断片である〔3〕に記載の治療剤。
〔5〕抗体が、 FERM BP-10339として寄託されたハイブリドーマ 3D3#7、または FERM B
P-10340として寄託されたハイブリドーマ 3G7#6が産生するモノクローナル抗体の、少 なくとも抗原結合領域を含む抗体である〔4〕に記載の治療剤。
〔6〕インターフェロン産生細胞の活性を抑制する工程を含む、腎炎の治療方法。
[7]抑制すべきインターフェロン産生細胞の活性力 インターフェロン産生細胞のィ ンターフェロン産生および細胞の生存のいずれか、または両方である〔6〕に記載の 治療方法。
〔8〕インターフェロン産生細胞の活性を抑制する工程力 インターフェロン産生細胞 のインターフェロン産生および細胞の生存の 、ずれか、または両方を抑制する作用 を有する抗体を投与する工程を含む、〔7〕に記載の治療方法。
〔9〕抗体が、 BST2およびそのホモログのいずれか、または両方を認識する抗体、また はその少なくとも抗原結合領域を含む抗体断片である、〔8〕に記載の治療方法。
〔10〕抗体力 FERM BP-10339として寄託されたハイブリドーマ 3D3#7、または FERM
BP-10340として寄託されたハイブリドーマ 3G7#6が産生するモノクローナル抗体の、 少なくとも抗原結合領域を含む抗体である〔9〕に記載の治療方法。
〔11〕次の工程を含む、被験化合物の腎炎の治療効果の検出方法。
(1)インターフェロン産生細胞とインターフェロン産生細胞のインターフェロン産生誘 導物質を、以下の i)-iii)の 、ずれかの順序で接触させる工程、
i)被験化合物とインターフェロン産生細胞を接触後に、インターフェロン産生を誘導 する細胞刺激剤をインターフェロン産生細胞に接触させる、
ii)被験化合物とインターフェロン産生を誘導する細胞刺激剤を同時にインターフエ口 ン産生細胞に接触させる、または
iii)インターフェロン産生を誘導する細胞刺激剤をインターフェロン産生細胞に接触さ せた後に、被験化合物とインターフェロン産生細胞を接触させる
(2)インターフェロン産生細胞の活性を測定する工程、および
(3)対照と比較して、インターフ ロン産生細胞の活性が抑制されたとき、被験化合物 の腎炎の治療効果が検出される工程
〔12〕細胞刺激剤がウィルス、ウィルスの構成要素、およびバクテリアの DNAからなる 群力 選択される少なくとも 1つの細胞刺激剤である〔11〕に記載の方法。
〔13〕被験化合物が、インターフェロン産生細胞を認識する抗体またはその少なくとも 抗原結合領域を含む抗体断片である〔11〕に記載の方法。
〔14〕〔11〕に記載の方法によって腎炎の治療効果が検出された被験化合物を選択 する工程を含む、腎炎の治療効果を有する化合物のスクリーニング方法。
〔15〕〔14〕に記載のスクリーニング方法によって選択されたィ匕合物を有効成分として 含有する腎炎の治療剤。
〔16〕インターフェロン産生細胞の活性抑制物質の、腎炎の治療剤の製造における 使用。
あるいは本発明は、上記スクリーニング方法によって選択された化合物の、腎炎の 治療剤の製造における使用に関する。更に本発明は、インターフェロン産生細胞の 活性抑制物質の、腎炎の治療における使用に関する。力!]えて本発明は、腎炎の治 療に利用されることを表示したインターフェロン産生細胞の活性抑制物質を有効成 分として含有する医薬組成物を含む、腎炎の治療用の医薬パッケージを提供する。 ところで、 IPCを認識する既知のモノクローナル抗体である抗 BDCA-2モノクローナ ノレ抗体 (Dzionek, A. et al. J.lmmunol. 165: 6037-6046, 2000.)は、ヒ HPCの IFN産生 を抑制する作用を有することが明らかにされて 、る。その他にもマウスのインターフエ ロン産生細胞を認識するモノクローナル抗体力 インターフェロンの産生を抑制する
ことも報告されている (Blood 2004 Jun 1;103/11:4201- 4206. Epub 2003 Dec)。マウス のプラズマ細胞様榭状細胞 (Plasmacytoid Dendritic Cell)に対するモノクローナル抗 体による榭状細胞数の減少が報告された (J. Immunol. 2003, 171:6466-6477)。しかし これらの抗体の腎炎に対する治療効果は未知である。
発明の効果
[0018] 本発明により、 IPCを標的とする腎炎の治療剤が提供された。すなわち IPCの活性 抑制剤によって、腎炎を治療しうることが明ら力となった。 IPCは、たとえば IPCの細胞 表面抗原を認識する抗体などの投与によってその活性が抑制される。たとえば、 BST 2並びにそのホモログに対する抗体は、 IPCに結合してその IFN産生および細胞の生 存そのものに対して抑制的に作用する。そして BST2に結合する抗体は、生体内に投 与した場合に、実際に腎炎に対する治療効果が確認された。
[0019] 本発明においては、 IPCの機能調節によって腎炎の治療効果を達成した。ところで 、 IFN- αの産生を抑制する抗体として抗 BDCA-2抗体、および抗 BDCA-4抗体が知 られている。そしてこれらの抗体が SLE患者の自己免疫症状に対する治療効果を示 す可能性が示唆されている (Blomberg S. et al. Arthritis Rheum. 48. 2524, 2003)。し 力 これらの抗体の腎炎に対する影響は明らかでない。一方本発明は、 IFNの機能 調節ではなぐ IFNを産生する細胞を標的とする腎炎の治療戦略を提供した。つまり 本発明のアプローチは、より本質的な腎炎治療を可能とする。より具体的には、たと えば、本発明にお ヽては次のようなメリットが期待できる。
[0020] まず、 IPCの活性抑制剤は、少量でも高度な治療効果を達成することができる。 IPC は、わずかな細胞が多量の IFNを産生する。 IFNの中和には、 IFNの分子数に応じた 抗体が必要である。しかし本発明においては、産生細胞の活性が直接抑制される。 その結果、抗 IFN抗体による中和と比較して、より少量の抗体で強力な IFNの抑制効 果を期待できる。抗体ある 、は可溶性受容体などによって IFNの機能を調節する場 合、 IFNの濃度に応じた治療剤が必要となる。一方、 IPCの活性調節剤は、きわめて 多量の IFNを産生している IPCに直接作用する。そのため、 IFNの産生を効率的に抑 制することができる。一般的に、抗体医薬の製造コストは高い。現在のところ、製造コ ストの大幅な抑制を実現できる方法は確立されていない。したがって、治療に必要な
抗体の投与量が少ないことは、経済的な大きな利点である。また投与量が少ないこと は、経済的に有利なだけでなぐ副作用の危険性を小さくすることにもつながる。
[0021] 更に、持続的に IFNが産生されている場合には、 IFNの抗体による中和は、一過的 な抑制に留まると予想される。 IFNに結合した抗体は免疫複合体を形成し、貪食細胞 などの作用によって速やかに除去される。そして、抗体の IFN活性中和作用は失われ る。 IPCは高度な IFN産生機能を有する細胞である。したがって、抗 IFN抗体の作用に よって一時的に IFN濃度を低下させたとしても、 IFNは再び速やかに補充されてしまう 可能 ¾が高い。
一方、本発明においては、 IPCの活性を抑制することから、長期間にわたる IFN産生 抑制効果が期待できる。特に、本発明の望ましい態様によれば、 BST2あるいはその ホモログを認識する抗体は、 IPCの IFN産生のみならず、細胞数をも抑制する。つまり 、新たな IPCが供給されるまでは、 IFN産生の抑制効果が持続する。また IPCが産生し 得る他の炎症性サイト力インの産生も直接的あるいは間接的に抑制されることになる 。これらの効果が相乗的に作用し、 IFNの産生は効果的に抑制される。その結果、腎 炎の高度な治療効果が達成される。特に腎炎のような慢性の疾患の治療方法にお いては、治療効果の持続性が大きな利点となる。
図面の簡単な説明
[0022] [図 l]FLT-3リガンド添加後、 10日間培養したマウスの骨髄細胞 (IPCが濃縮されて 、 る)の細胞表面を、作製した抗体及び他のマーカーで染色した FACS解析像である。 培養上清陽性分画、陰性分画をそれぞれ R2、 R3とした。グラフ内の、 R1&R2は抗体 陽性の細胞集団、 R1&R3は抗体陰性の細胞集団を表わす。
[図 2]各モノクローナル抗体で抽出した細胞の形態を表わす顕微鏡写真 (x400)であ る。(a)はインフルエンザウイルス PR8に感染させる前の形態、(b)はインフルエンザゥ ィルス PR8と 24時間培養した後の形態を示す。感染後の細胞は榭状突起を持ち、榭 状細胞に典型的な形態を示した。
[図 3]モノクローナル抗体 SNK01、 SNK03を用いて分離した細胞のインターフェロン産 生能を示すグラフである。図中、横軸は細胞の処理の種類を、縦軸は培養上清中の I FN α濃度 (pg/mL)を示す。横軸の P(+)はモノクローナル抗体に結合した細胞にウイ
ルスを感染させた場合、 N(+)はモノクローナル抗体に結合しなかった細胞にウィル スを感染させた場合、そして N (—)はモノクローナル抗体に結合しな力つた細胞にウイ ルスを感染させな力つた場合の結果を示す。
[図 4]モノクローナル抗体 SNK01のインターフェロン産生能に対する影響を示すグラフ である。図中、横軸は処理に用いた抗体の濃度 ( g/mL)を、縦軸は培養上清中の I FN a濃度 (pg/mL)を示す。横軸の (-)はウィルス処理して 、な 、場合の結果を示す。 SNK01は濃度依存的にインターフ ロン産生抑制活性を示した。
[図 5]モノクローナル抗体 SNK03のインターフェロン産生能に対する影響を示すグラフ である。図中、横軸は処理に用いた抗体の濃度 ( g/mL)を、縦軸は培養上清中の I FN α濃度 (pg/mL)を示す。 CTLはコントロール抗体で処理した横軸の場合の結果を 示す。 SNK03は濃度依存的にインターフ ロン産生抑制活性を示した。
[図 6]モノクローナル抗体 SNK01によるウェスタンブロッテイングアツセィの結果を示す 写真である。写真上は抗 Hisタグ抗体、下は本発明のモノクローナル抗体 SNK01によ る結果を示す。写真左側が PCDNA3.1- mBST2D- His、右側が pcDNA3.1- mBST2H- H isで形質転換した COS7細胞の結果である。培養した細胞を溶解処理した際の沈殿 物 (P)と上清 (S)についての結果を示した。
[図 7]マウス BST2及びそのホモログのアミノ酸配列とゲノム構造を示す図である。(a)は 各ァイソフォームのアミノ酸配列のァライメントを、(b)はェキソンマッピングを示す。
[図 8]ヒト BST2及びそのホモログのアミノ酸配列とゲノム構造を示す図である。(a)は各 ァイソフォームのアミノ酸配列のァライメントを、(b)はェキソンマッピングを示す。
[図 9]作製したマウス BST2に対するモノクローナル抗体のインターフェロン産生能に 対する影響を示すグラフである。図中、横軸は処理に用いたノ、イブリドーマ培養上清 の種類を、縦軸は培養上清中の IFN o;濃度 (pg/mL)を示す。 CpGは CpGで処理した 際、 PR8はインフルエンザウイルス PR8を感染させた際の結果を示す。
[図 10]作製したヒト BST2に対するモノクローナル抗体のインターフェロン産生能に対 する影響を示すグラフである。図中、横軸は処理に用いた抗体の種類と濃度、縦軸 はヒ HPCを HSVで刺激した際の培養上清中の IFN a濃度 (pg/mL)を示す。
圆 11]抗体を投与したマウス力も採取した細胞の解析結果を示す図である。 (a)は投
与のスケジュールを示す。(b)は骨髄細胞を CpGあるいはインフルエンザウイルス PR8 で刺激した際に産生した IFNの濃度を示す。横軸が投与した抗体を示し、 IgGはコント ロール抗体を示す。
[図 12]ウィルスを感染させたマウスにおける、抗マウス BST2抗体 SNK01の投与の効果 を示す。(a)は投与のスケジュールを示す。(b)は血清中の INF aの濃度を示し、横 軸が投与した抗体を示す。(c)は脾臓中の IPCの割合を示し、横軸が投与した抗体を 、縦軸が IPCの割合を示す。「抗体なし」は抗体のかわりに PBSのみを投与した群を示 す。
[図 13]各種マウスにおける IPCの細胞数を解析した結果の図である。縦軸は各種臓 器での IPCの割合 (%)を示す。横軸はマウスの系統を示し、 F1は NZBと NZWを掛け合 わせたマウスを示す。
[図 14]各種マウス由来の骨髄細胞を用 V、て、抗体の IFN産生に及ぼす影響を示す図 である。骨髄細胞をインフルエンザウイルス PR8(上段)ある 、は CpG (下段)で刺激した 際に産生した IFNの濃度を測定した結果であり、縦軸が IFN a濃度 (pg/mL)を、横軸 は由来のマウスを、各カラムは処理に用いた抗体を示す。
[図 15ab]ループス腎炎発症モデルを用いて抗体の効果を検討した結果を示す図で ある (n=10)。(a)は抗体投与のスケジュールを示す。 (b)は抗体を投与したマウス群の 蛋白尿頻度の継時変化を示す。
[図 15c]ループス腎炎発症モデルを用いて抗体の効果を検討した結果を示す図であ る (n=10)。(c)は個々のマウスの尿中の蛋白量を示す。縦軸の蛋白尿度は 1:〜37mg/ dl、 2:〜74mg/dl、 3:〜lllmg/dl、 4:〜333mg/dl、 5:〜1000mg/dl、 6:〜3000mg/dl の蛋白量を示す。〇が生存マウスの、參は死亡マウスの値である。
[図 16]ループス腎炎発症モデルを用いて抗体の効果を検討した結果を示す図であ る(n=10)。横軸は投与した抗体、縦軸は抗体を投与したマウスの 5ヶ月齢での血清 中サイト力インの濃度を示す。図中の数字は平均値を示す。
圆 17]ループス腎炎発症モデルを用いて、発症後に抗体を投与し、その治療効果を 検討した結果を示す図である (n=6)。横軸は投与した薬剤を示し、 PDは水溶性プレ ドニン (塩野義製薬社)を示す。縦軸の蛋白尿度は図 15cと同様に、 1:〜 37mg/dl、 2
:〜 74mg/dl、 3:〜 lllmg/dl、 4:〜 333mg/dl、 5:〜 1000mg/dl、 6:〜 3000mg/dlの尿 中蛋白量を示す。〇は生存マウスの、參は死亡マウスの値である。図中の数字は平 均値を示す。
発明を実施するための最良の形態
[0023] 本発明は、インターフェロン産生細胞の活性抑制物質を有効成分として含有する 腎炎の治療剤に関する。
本発明において、腎炎とは腎臓による尿のろ過機能の阻害によってもたらされる疾 患をいい、その原因は限定されない。腎臓のろ過機能の低下は、蛋白質や血液の尿 への漏出を指標として診断される。
[0024] 本発明において、免疫応答を発症メカニズムに含む腎炎は、治療対象として好まし い。免疫応答を発症メカニズムに含む腎炎には、自己免疫疾患に伴う腎炎が含まれ る。たとえば免疫複合体の糸球体への沈着をともなう腎炎を、本発明における治療対 象として示すことができる。このような腎炎は、免疫複合体性腎炎 (immune complex n ephritis)と呼ばれる。免疫複合体を構成する抗原あるいは抗体は、自己のものであつ ても外来性抗原であっても良い。このような腎炎として、ループス腎炎を示すことがで きる。あるいは、自己免疫疾患に伴う腎炎としては、たとえば糸球体に対する自己抗 体によってもたらされる腎炎、または糸球体基底膜に対する自己抗体によってもたら される饥基 1¾膜饥体'性腎炎 (anti— basement membrane nephritis)を不すこと力でさる。
[0025] 本発明において、自己免疫疾患とは、免疫機能によって組織の障害や炎症がもた らされていることを言う。免疫機能には、抗体による液性免疫と、免疫担当細胞による 細胞性免疫が含まれる。本発明における自己免疫疾患は、自己抗原に対する免疫 機構の発動によって定義することもできる。ここでいう自己抗原には、健常者の組織 に存在する抗原にカ卩えて、宿主に何らかの手段によって導入された外来性の抗原も 含まれる。たとえば、感染、移植、あるいは接触などによって生体に導入された外来 性の抗原に対する免疫機能の攻撃が細胞あるいは組織を障害することがある。この ような障害は、本発明における自己免疫疾患に含まれる。生体が自己免疫疾患を有 していることは、自己抗原に対する免疫機構の反応性を指標として検出することがで きる。自己免疫疾患の指標とすることができる自己抗原として IgGなどが知られている
[0026] 本発明において、自己免疫疾患に伴う腎炎とは、自己免疫機構による細胞または 組織の障害が観察され、かつ腎臓における炎症が見られる状態と言うことができる。 本発明における腎炎は、自己免疫機構による直接的な障害のみならず、間接的な障 害も含まれる。たとえば、免疫担当細胞の機能亢進による炎症性サイト力インの産生 過剰に起因する腎炎は、自己免疫疾患を伴う腎炎の代表的な病態である。更に、自 己免疫疾患を含む、複合的なメカニズムによってもたらされる腎炎は、本発明におけ る治療の対象である腎炎に含まれる。たとえばループス腎炎は、本発明における自 己免疫疾患を伴う腎炎の代表的な疾患である。
[0027] 本発明において、ループス腎炎とは、全身性エリトマト一デス(SLE)が原因で起こる 腎炎をいう。より具体的には、自己免疫性疾患の症状と、腎炎を伴う疾患が、ループ ス腎炎に含まれる。自己免疫性疾患の症状は、たとえば、抗 2本鎖 DNA(dsDNA)抗 体などの自己抗体を指標として、確認することができる。ループス腎炎は本発明にお ける自己免疫疾患を伴う腎炎として好ましい。
[0028] 以上のような自己免疫疾患は、いずれも IPCによって自己免疫機構の亢進がもたら されていると考えられる。したがって、 IPCの機能抑制に基づく自己免疫疾患の調節 によって治療効果が期待できる。したがって、本発明においては、これらの疾患を、 IP Cの機能亢進による自己免疫疾患を有する腎炎と言うこともできる。
[0029] 本発明において、腎炎の治療とは、腎炎症状を抑制することに加え、その進行を遅 らせること、あるいは腎炎症状への進行を防ぐことを含む。より具体的には、たとえば 次に示すような腎炎に特徴的な症状の少なくとも一つの症状を抑制、その進行の防 止、あるいは症状の発生そのものを防ぐことによって、腎炎の治療効果が達成される 蛋白尿、
—血尿、
血液のろ過機能低下に伴う窒素化合物の血中濃度の上昇
一糸球体における免疫複合体の沈着、あるいは
腎臓組織に対する自己抗体の沈着等
したがって、本発明は、腎炎の予防を含む。すなわち本発明は、 IPCの活性抑制物 質を有効成分として含む、腎炎の治療剤および予防剤の、いずれかまたは両方を提 供する。あるいは本発明は、 IPCの機能を抑制する工程を含む、腎炎の治療方法お よび予防方法の、いずれかまたは両方を提供する。
[0030] 上記の腎炎に特徴的な症状の進行状態を評価する方法は公知である。たとえば尿 中のアルブミン濃度は、一般に、生化学的な反応に基づく尿試験紙による方法、ある いはィムノアッセィによって測定することができる。同様に、尿中の血液の検出には、 ヘモグロビンを検出するための尿試験紙が用いられている。また腎機能の指標となる 血中の含窒素化合物としては、尿素、尿酸、およびクレアチュンを示すことができる。 中でもクレアチュンは、代表的な腎機能マーカーである。クレアチュンは、ヤッフェ法 や酵素的な測定方法によって測定することができる。更に腎臓組織における免疫複 合体あるいは自己抗体の沈着は、腎臓組織の顕微鏡観察により検出することができ る。検査に必要な腎臓組織は、腎生検 (renal biopsy)によって生体力も採取することが できる。
[0031] また、本発明におけるインターフェロン産生細胞 (IPC)とは、 IFN産生能を有する細 胞をいう。たとえば、細胞表面に BST2およびそのホモログのいずれかまたは両方の 発現が検出される細胞を IPCとして同定することができる。 BST2およびそのホモログ のいずれかまたは両方は、細胞の活性ィ匕に伴って発現する場合が含まれる。たとえ ばヒト並びにマウスにおいて、榭状細胞の前駆細胞であって、刺激により IFNを産生 する細胞は、 IPCとして好ましい。以下、特に断りの無い場合には、 IPCは、榭状細胞 の前駆細胞である細胞のみならず、 IFN産生能を有する細胞を言う。中でも細胞表面 に BST2およびそのホモログの!/、ずれかまたは両方を発現する細胞は、 IPCとして好ま しい。このような IPCの同定方法は公知である。たとえばいくつかの細胞表面マーカー を指標として IPCを他の血液細胞と識別することができる。具体的には、ヒ HPCの細 胞表面マーカーのプロファイルは次のとおりである (Shortman,K. and Liu, YJ. Nature Reviews 2: 151-161, 2002)。近年になって、 BDCA-2陽性細胞を IPCと位置づける報 告もある (Dzionek, A. et al. J.Immunol. 165: 6037-6046, 2000.)。したがって、 BDCA- 2陽性細胞は、本発明における IPCとして好ま 、。
[ヒ HPCの細胞表面抗原のプロファイル]
CD4陽性、 CD123陽性、
Uneage(CD3、 CD14、 CD16、 CD19、 CD20、 CD56)陰性、 CDllc陰性
[0032] あるいはマウス IPCは、以下のプロファイルによって定義されている。
[マウス IPCの細胞表面抗原のプロファイル]
-CDllc, B220、 Ly6C、および CD45RBが陽性
— CDllb、 CD3、 CD19が陰性
更に、ヒトあるいはマウスの IPCに共通して見られる特徴として、以下のような特徴を 示すことができる。
[細胞の形態上の特徴]
プラズマ細胞に似ている
細胞表面が平滑な丸 、細胞
—核が比較的大きい
[細胞の機能的な特徴]
—ウィルス感染時に、短期間に大量の Type-1 interferonを産生する
ウィルス感染後、榭状細胞に分化する
[0033] 本発明において、 IPCの活性抑制とは、 IPCが有する機能の少なくとも一つを抑制 することを言う。すなわち、 IPCの活性抑制剤には、 IPCが有する機能の少なくとも一 つを抑制する任意の物質が含まれる。 IPCの機能として、 IFNの産生と細胞生存を示 すことができる。細胞の生存は、細胞数と言い換えることもできる。したがって、これら の機能の両方あるいはいずれかを抑制する場合に、 IPCの活性を抑制すると言う。そ して、これらの機能の両方あるいはいずれかを抑制する物質を、 IPCの活性抑制剤と して利用することができる。
[0034] IPCによって産生されるタイプ 1IFNが種々の疾患の原因となっていることが明らかに されている。したがってその産生を抑制することは、それらの疾患の治療戦略として 有用である。たとえば、自己免疫性の疾患の病態と IFN aの関連性が指摘されている 。 IFN o;の大部分が IPCによって産生されている。したがってその産生を抑制すれば 、 IFN o;によってもたらされる病態を緩和することができる。なお本発明において、 IPC
による IFN産生抑制とは、 IPCが産生する IFNの少なくとも 1種類の IFN産生を抑制す ることを言う。本発明における好ましい IFNは、タイプ 1IFNである。中でも IFN aは重要 である。
[0035] IPCには、少数の細胞で大量の IFNを産生する細胞が含まれる。たとえば、ウィルス などで刺激を受けた榭状細胞の前駆細胞は、生体が産生する IFNの大部分を産生 する。大量の IFNを産生する IPCの細胞数を抑制することは、結果として IFNの産生量 を抑制することになる。したがって、 IPCの細胞数の抑制によっても、 IFN aによっても たらされる病態を緩和することがでさる。
[0036] 本発明にお 、て、好ま 、IPCの活性抑制剤は、 IPCの細胞表面抗原を認識し、そ の活性を抑制する抗体である。具体的には、 IPCのインターフェロン産生能、および I PCの細胞の数のいずれか、または両方を抑制する抗体である。ある抗体が、 IPCの 活性を抑制することは、たとえば後に述べる腎炎の治療効果の検出方法などによつ て確認することができる。たとえば本発明者らは、 BST2およびそのホモログのいずれ 力または両方を認識する抗体が、 IPCの活性を抑制することを確認した。
すなわち本発明は、 BST2およびそのホモログのいずれかまたは両方を認識する抗 体、またはその少なくとも抗原結合領域を含む抗体断片を有効成分として含有する 腎炎の治療剤に関する。また本発明は、 BST2およびそのホモログのいずれ力または 両方を認識する抗体、またはその少なくとも抗原結合領域を含む抗体断片を投与す る工程を含む、腎炎の治療方法に関する。あるいは本発明は、 BST2およびそのホモ ログのいずれかまたは両方を認識する抗体、またはその少なくとも抗原結合領域を含 む抗体断片の、腎炎の治療剤の製造における使用に関する。
[0037] 本発明にお 、て IPCは、 IFNを産生する細胞であれば特に限定されな 、。たとえば 、ヒト、およびマウスにおいては、 BST2およびそのホモログのいずれかまたは両方を 発現している細胞群は、高度な IFN産生能を有することが確認された (以下、 BST2お よびそのホモログの 、ずれかまたは両方を発現して 、る細胞群を BST2陽性細胞と記 載する場合がある)。したがって、ヒト、およびマウスの BST2陽性細胞は、本発明にお ける IPCとして好ましい。特にヒ HPCにおいては、その活性化に伴って BST2およびそ のホモログの発現レベルが顕著に上昇する。そのため、 BST2およびそのホモログを
認識する抗体は、ヒトにおいては、活性化された IPCに対して特異的に作用する。し たがって、ヒ HPCは本発明の IPCとして特に好ましい。
[0038] 本発明者らは、 BST2あるいはそのホモログに対する抗体力 IPCの活性を抑制する ことを明らかにした。そして、 IPCの活性抑制を通じて、腎炎の症状を緩和しうることを 確認した。すなわち本発明者らは、 IPCの活性を抑制する方法を見出し、そして実際 にその方法によって IPCの活性を抑制することによって腎炎の治療を実現できること を確認した。これらの知見に基づいて、 IPCの機能の抑制力 腎炎の治療戦略として 有用であることが明らかにされた。
[0039] その他、 BDCA- 2に対する抗体 (Dzionek, A. et al. J.Immunol. 165: 6037-6046, 20 00.)も、 IPCの機能を抑制することが明らかにされている (Dzionek, A. et al. J. Exp. M ed. 194;1823-34. 2001.)。したがって、 BDCA-2に結合する抗体も、本発明における「 IPC活性抑制物質」として利用することができる。
[0040] 本発明において、 BST2遺伝子は、配列番号: 2に記載のアミノ酸配列によって定義 されるヒト由来の蛋白質である。配列番号: 2に記載のアミノ酸配列は配列番号: 1に 記載の塩基配列からなる cDNAによってコードされて!/、る。ヒト BST2の cDNAのクロー ユングと、モノクローナル抗体についての報告がある (Ishikawa J. et al. Genomics 26: 527, 1995; GenBank Acc#.D28137)0 BST2は、プレ B細胞増殖支持能を有する膜蛋 白質であるとされた (特開平 7-196694)。 BST2のゲノム遺伝子とプロモーターについて の知見も得られている (WO99/43803)。また、ヒト BST2は、ミエローマに対するモノクロ ーナル抗体である抗 HM1.24抗体が認識している抗原であることが明らかにされてい る (Ohmoto T. et al. B.B.R.C 258: 583, 1999)。抗 HM1.24抗体は、ヒトプラズマセルラ インを免疫原として榭立されたモノクローナル抗体である (Goto T. et al. Blood 84:19 92, 1994)。その後ミエローマを特異的に認識することが明らかにされ、ミエローマの 治療を目的としてヒト化抗体が作成された (Ozaki S. et al. Blood 93: 3922, 1999;: W 098/14580)。ヒトイ匕抗 HM1.24抗体は、造血組織の癌に対する治療効果を有している (WO02/064159)o現在はその実用化を目指して臨床試験が進められている。以上の ようにヒト BST2は、造血器系の腫瘍におけるマーカーとして利用されている。また、ヒト BST2に特異的に結合する抗体が、 T細胞や B細胞の活性化を抑制し、自己免疫疾
患などの治療薬となりうることが示唆されている(特開平 10-298106)。しかし現在のと ころ BST2を認識する抗体と IPCの関連を示唆する報告は無い。
[0041] 本発明において、 BST2はそのホモログを含む。 BST2のホモログとは、配列番号: 2 に記載のアミノ酸配列からなる蛋白質と機能的に同等な蛋白質と定義することができ る。このような蛋白質は、天然に存在する蛋白質を含む。一般に真核生物の遺伝子 は、 IFN遺伝子等で知られているように、多型現象 (polymorphism)を有する。この多型 現象によって生じた塩基配列の変化によって、 1または複数個のアミノ酸が、置換、 欠失、挿入、および Zまたは付加される場合がある。このようにヒトに由来する蛋白質 であって、かつ配列番号: 2に記載のアミノ酸配列において、 1若しくは複数のァミノ 酸が、置換、欠失、挿入、および Zまたは付加したアミノ酸配列を有し、配列番号: 2 に記載のアミノ酸配列からなる蛋白質と機能的に同等な蛋白質は、本発明の BST2ホ モログに含まれる。
[0042] 具体的には、たとえば BST2のスプライシングバリアント、あるいは遺伝子多型によつ て生じる変異体は、 BST2ホモログに含まれる。たとえば本発明者らは、配列番号: 1 の塩基配列力もなる cDNAに対するスプライシングバリアントの存在を明らかにした。 このスプライシングバリアントは、配列番号: 3または配列番号: 5に示す塩基配列力 なり、配列番号: 4または配列番号: 6に記載のアミノ酸配列をコードして 、た。
[0043] あるいは多型現象によって塩基配列に変化はあっても、アミノ酸配列が変わらない 場合もある。このような塩基配列の変異は、サイレント変異と呼ばれる。サイレント変異 を有する塩基配列からなる遺伝子も、本発明に含まれる。なおここで言う多型現象と は、集団内において、ある遺伝子が個体間で異なる塩基配列を有することを言う。一 般に、遺伝学的には多型と変異は遺伝子型の分布率によって定義されている。しか しここで言う多型は、異なる塩基配列が見出される割合 (分布率)とは無関係である。
[0044] BST2のホモログは、ヒト以外の種における機能的に同等な蛋白質を含む。 BST2と 機能的に同等な蛋白質は、たとえばハイブリダィゼーシヨンを利用して同定すること ができる。すなわち、配列番号: 1に示すような BST2をコードするポリヌクレオチド、あ るいはその断片をプローブとし、これとハイブリダィズすることができるポリヌクレオチド を単離するのである。ハイブリダィゼーシヨンをストリンジェントな条件下で実施すれば
、塩基配列としては相同性の高いポリヌクレオチドが選択され、その結果として単離さ れる蛋白質には BST2と機能的に同等なタンパク質が含まれる可能性が高まる。
[0045] 本発明者らは、 BST2のマウスにおけるホモログに対する抗体力 ヒトにおける抗体と 同様にマウス IPCの活性を抑制することを確認した。マウス BST2は、配列番号: 9に記 載の塩基配列を有し配列番号: 10に記載のアミノ酸配列をコードしていた。更に本発 明者らは、 BST2のスプライシングノ リアントである BST2Hについても同様に、マウスに おけるホモログの存在を確認した。マウス BST2Hの塩基配列は配列番号: 7に、この 塩基配列によってコードされるアミノ酸配列を配列番号: 8に示した。マウスの BST2H に対する抗体も、 IPCの活性を抑制することが確認された。
本発明において明らかにされたヒトとマウスの BST2とそのホモログの塩基配列情報 、およびアミノ酸配列情報を以下にまとめた。
塩基配列 アミノ酸配列 アミノ酸配列の長さ ヒト BST2D 配列番号: 1 配列番号: 2 (180)
ヒト BST2H 配列番号: 3 配列番号: 4 (158)
ヒト BST2HS 配列番号: 5 配列番号: 6 (100)
マウス BST2H 配列番号: 7 配列番号: 8 (178)
マウス BST2D 配列番号: 9 配列番号: 10 (172)
マウス BST2HS 配列番号: 18 配列番号: 19 (105)
[0046] なおストリンジヱントな条件とは、具体的には例えば 6 X SSC、 40%ホルムアミド、 25°C でのハイブリダィゼーシヨンと、 I X SSC、 55°Cでの洗浄といった条件を示すことができ る。ストリンジエンシーは、塩濃度、ホルムアミドの濃度、あるいは温度といった条件に 左右される。当業者は、これらの条件を必要なストリンジエンシーを得られるように適 宜調節することができる。
[0047] ノ、イブリダィゼーシヨンを利用することによって、たとえばヒト以外の動物種における BST2のホモログをコードするポリヌクレオチドの単離が可能である。ヒト以外の動物種 、すなわちマウス、ラット、ゥサギ、ブタ、あるいはャギ等の動物種力も得ることができる ポリヌクレオチドがコードする BST2のホモログは、本発明における機能的に同等な蛋 白質を構成する。
[0048] ノ、イブリダィゼーシヨン技術等を利用して単離されるポリヌクレオチドがコードする蛋 白質は、通常、ヒト BST2D (配列番号: 2)とアミノ酸配列において高い相同性を有する 。高い相同性とは、少なくとも 30%以上、好ましくは 50%以上、さらに好ましくは 80% 以上(例えば、 95%以上、あるいは 98%、更には 99%以上)の配列の同一性を指す。 塩基配列やアミノ酸配列の同一性は、インターネットを利用したホモロジ一検索サイト を利用して調べることができる [例えば日本 DNAデータバンク(DDBJ)にお!/、て、 FAS TA、 BLAST, PSI-BLAST、および SSEARCH等の相同性検索が利用できる [例えば 日本 DNAデータバンク(DDBJ)のウェブサイトの相同性検索(Search and Analysis)の へ' ~~ン; http://www.ddbj.nig.ac.Jp/E— mail/homology—j.ntml]。ま 7こ、 Nationalし ente r for Biotechnology Information (NCBI)において、 BLASTを用いた検索を行うことが できる(例えば NCBIのホームページのウェブサイトの BLASTのページ; http:〃 www.n cbi.nlm.nih.gov/BLAST/; Altschul, S.F. et al" J. Mol. Biol, 1990, 215(3):403- 10; Altschul, S.F. & Gish, W., Meth. EnzymoL, 1996, 266:460-480; Altschul, S.F. et al. , Nucleic Acids Res., 1997, 25:3389—3402) ]。
[0049] 例えば Advanced BLAST 2.1におけるアミノ酸配列の同一性の算出は、プログラム に blastpを用い、 Expect値を 10、 Filterは全て OFFにして、 Matrixに BLOSUM62を用 い、 Gap existence cost、 Per residue gap cost、およひ Lambda ratioをてれてれ 11、 1 、 0.85 (デフォルト値)に設定して検索を行 ヽ、同一性 (identity)の値 (%)を得ることが できる(Karlin, S. and S. F. Altschul (1990) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87:2264-68; Karlin, S. and S. F. Altschul (1993) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:5873—7)。
[0050] 更に既に構造が明らかにされている cDNA、あるいはゲノム DNAの塩基配列情報の 検索によって、他の種における BST2ホモログを見出すこともできる。すなわち、公知 の塩基配列情報ある 、はアミノ酸配列情報を蓄積したデータベースを対象として、ヒ ト BST2の塩基配列情報および Zまたはアミノ酸配列情報をクエリーとする相同性検 索によって、類似の配列情報が検索される。もしも他の種に由来する相同性の高い 既知の遺伝子並びに蛋白質がデータベース中に存在すれば、相同性検索によって 、それを見出すことができる。遺伝子の全長が同定されていなくても、 ESTなどの断片 配列情報が得られれば、インシリコクローユングによって、遺伝子の全長配列を構成
できる場合もある。こうして明らかにされた他の種に由来するホモログについて、実際 に当該動物種の IPCにおける発現が確認できれば、本発明における BST2のホモログ として禾 IJ用することができる。
[0051] 本発明に用いる BST2およびそのホモログの 、ずれかまたは両方を認識する抗体は 、 BST2およびそのホモログ、あるいはそれらの断片を免疫原として調製することがで きる。本発明における抗体は、任意のクラスであってよい。また抗体が由来する生物 種も限定されない。更に、抗体の抗原結合領域を含む断片を抗体として用いることが できる。たとえば IgGの酵素的な消化によって生成される、抗原結合部位を含む抗体 断片も、本発明における抗体として利用することができる。具体的には、パパインある いはペプシンによる消化によって、 Fabあるいは F(ab')2などの抗体断片を得ることが できる。これらの抗体断片は、抗原との結合親和性を有する抗体分子として利用しう ることは周知である。あるいは、必要な抗原結合活性を維持している限り、遺伝子組 み換えによって構築された抗体を用いることもできる。遺伝子組み換えによって構築 された抗体とは、たとえばキメラ抗体、 CDR移植抗体、あるいはシングルチェイン Fv等 を示すことができる。任意の免疫原を利用してこれらの抗体を得る方法は公知である
[0052] 本発明において、抗体は、必要に応じて修飾することができる。本発明によれば、 B ST2またはそのホモログの 、ずれかまたは両方を認識する抗体は、 IPCの細胞数を抑 制する作用を有する。すなわち、抗体そのものが IPCに対する細胞傷害性を有してい ると考えられた。強いエフェクター作用を示す抗体のサブクラスは公知である。あるい は、抗体を細胞傷害物質 (cytotoxic agent)によって修飾することによって、 IPCの活性 抑制効果を更に増強することができる。細胞傷害物質としては、以下のような物質を 示すことができる。
トキシン類:緑膿菌毒素 (Pseudomonas Endotoxin; PE)、ジフテリアトキシン、リシン 放射性同位元素: Tc"m、 Sr89、 I131、 Y9°
抗癌剤:カリキアマイシン、マイトマイシン、パクリタキセル
蛋白質力もなるトキシン類は、 2官能性試薬によって抗体あるいはその断片などに 結合することができる。あるいは、抗体をコードする遺伝子にトキシン類をコードする
遺伝子を接合し、両者の融合蛋白質を得ることもできる。放射性同位元素を抗体に 結合する方法も公知である。たとえば、キレート剤を利用して、抗体を放射性同位元 素で標識する方法が公知である。更に抗癌剤は、糖鎖あるいは 2官能性試薬などの 利用により、抗体に結合することができる。
[0053] 本発明において用いられる抗体は、人為的に構造を改変された抗体であっても良 い。たとえば、抗体の細胞傷害作用や安定性を改善するための様々な修飾方法が 公知である。具体的には、重鎖の糖鎖が改変されたィムノグロブリンが知られている( Shinkawa, T. et al. J. Biol. Chem.278:3466-3473. 2003.)。糖鎖の改変によって、ィム ノグロブリンの ADCC (抗体依存性の細胞傷害; Antibody Dependent Cell-mediated C ytotoxicity)活性が増強された。あるいは、 Fc領域のアミノ酸配列を改変されたィムノ グロブリンも公知である。すなわち、ィムノグロブリンの Fc受容体との結合活性を人為 的に高めることによって、 ADCC活性が増強された(Shield,RL.et al. J.Biol.Chem. 27 6;6591- 6604, 2001.)。
[0054] また、 Fc受容体に結合した IgGは、細胞内にいったん取り込まれる。その後、エンド ノームに発現した Fc受容体と結合して、再び血中に放出される現象が明らかにされ ている。 Fc受容体との結合活性が高い IgGは、細胞に取り込まれた後に再び血中に 放出される可能性が高まる。その結果、 IgGの血中における滞留期間が延長される (H inton.PR. et al. J Biol Chem. 279:6213-6216. 2004)。その他、 Fc領域のアミノ酸配列 の改変は、 CDC (補体依存性の細胞傷害作用; Complement Dependent Cytotoxicity )活性の変化をもたらすとも言われて ヽる。これらの改変を施した抗体を本発明にお ける抗体として用いることができる。
[0055] たとえばモノクローナル抗体は、当該モノクローナル抗体を産生する抗体産生細胞 力も採取することができる。本発明に用いることができるモノクローナル抗体の産生細 胞は、たとえば BST2またはそのホモログ、その断片、あるいはそれらを産生する細胞 またはその細胞膜分画を免疫原として免疫動物に投与し、その抗体産生細胞をクロ 一-ングすることによって取得することができる。より具体的には、本発明に用いる抗 体は、たとえば次の工程を含む方法によって得ることができる。
( BST2またはそのホモログを免疫原として免疫動物に投与する工程
(2) (1)の免疫動物の抗体産生細胞から、 BST2を認識する抗体を産生する抗体産生 細胞を選択する工程、
(3) (2)で選択された抗体産生細胞を培養するか、または当該抗体産生細胞が産生す る抗体をコードする遺伝子を単離し、この遺伝子を発現可能に保持する細胞を培養 する工程、および
(4) (3)の培養物からインターフェロン産生細胞の活性を抑制する抗体を回収する工程 一般的なモノクローナル抗体の製造方法においては、免疫細胞と腫瘍細胞との細 胞融合によって得られるハイプリドーマが抗体産生細胞として利用される。本発明に おける免疫原には、 BST2またはそのホモログ、あるいはその断片を用いることができ る。免疫原は、それをコードする遺伝子で形質転換した細胞から精製することができ る。更に、 BST2またはそのホモログを発現している細胞を免疫原として利用すること ができる。このような細胞としては、具体的には以下のような細胞を示すことができる。 これらの細胞の細胞膜分画を免疫原とすることもできる。
—生体力も採取された IPC
一造血幹細胞などから分化誘導された IPC
一外来性の BST2またはそのホモログ遺伝子を発現可能に保持する細胞
生体から IPCを採取するためには、たとえば先に述べたような細胞表面マーカーの 発現プロファイルに基づいて、目的とする細胞を採取すればよい。複数の細胞表面 マーカーを指標として特定の細胞を集めるための方法は公知である。たとえば免疫 染色とセルソーターを利用することによって、目的とする発現プロファイルに適合する 細胞を容易に分取することができる。たとえばヒトの IPCは、 BDCA-2陽性細胞を選択 することにより、 IPCが濃縮される。ヒトから採取された IPCは、必要に応じて活性化さ れた後に免疫原として利用される。
IPCは、生体の末梢血あるいは造血組織以外に、培養細胞として得ることもできる。 たとえばヒトおよびマウスの造血幹細胞を培養し、 IPCに分ィ匕させることによって大量 に得ることができる。ヒトおよびマウス造血幹細胞を in vitroで IPCに分化させるための 条件は公知である。
[0057] たとえば、 in vitroにおける造血幹細胞からのヒト (Blom, B. et al.J.Exp.Med. 192: 17 85-1796, 2000.; Chen, W. et al. Blood 103: 2547-2553, 2004.)、およびマウス (Gillie rt et al 2002, J. Exp. Med. 958-953)の IPCの誘導が報告されている。あるいは in vivo でのマウス IPCの誘導も公知である (Bjorckらの Blood 2001, 3520-3526)。ただし、こ れらの方法によって誘導された IPCを免疫原に用いた報告は無い。しかし本発明者ら は、 in vitroで分化させた IPC力 IPCを認識するモノクローナル抗体を得るための免 疫原として有利であることを見出した。特に、この免疫原の使用によって、マウス IPC の IFN産生能を調節しうるモノクローナル抗体が得られることは、まったく予想されな かった。
[0058] 具体的には、造血幹細胞を含む細胞集団を IPC誘導剤の存在下で培養すること〖こ より、 IPCへの分化が誘導される。造血幹細胞を含む細胞集団としては、たとえば骨 髄細胞を用いることができる。また IPC誘導剤には、 FLT-3リガンド、あるいは FLT-3リ ガンドとトロンボポェチン (TPO)の組み合わせを用いることができる。培地中の FLT-3 リガンドの濃度は、通常 1〜: LOOng/mLとすることができる。その他の培養条件は、一 般的な血液細胞の培養条件を応用すればよい。すなわち基礎培地としては、 RPMI1 640等を用い、更に 10%程度の牛胎児血清をカ卩えることができる。あるいはヒ HPCの誘 導においては、 Yssel's Mediumが用いられた。 in vitroにおける IPCへの分化は、ヒト では、たとえば 25日前後にピークを迎える。
[0059] 培養された造血幹細胞から、 IPCに分化した細胞を取得すれば、免疫原のための I PCを得ることができる。実際には、いくつかの細胞表面マーカーを利用して、 IPCに 特徴的な細胞表面抗原を有する細胞を分取する。すなわち、たとえば BDCA-2陽性 細胞をヒ HPCとして取得することができる。あるいは、 CDllc陽性、 CDllb陰性、およ び B220陽性の細胞分画をセルソーターで分取しマウス IPCを得ることができる。
あるいは、既に IPC特異的であることが明らかな抗体を利用して、当該抗体陽性の 細胞を IPCとして分取することもできる。本発明者らが榭立した、マウス IPC特異抗原 を認識するモノクローナル抗体産生細胞 2E6(WO 2004/013325, FERM- BP-8445)が 産生するモノクローナル抗体を、マウス IPCの分取に利用することができる。
[0060] IPCは、末梢血から分取することもできる。しかし先に述べたように IPCの末梢血にお
けるポピュレーションは極めて低いので、末梢血から IPCを採集するには多量の血液 が必要となる。したがって、免疫原とする IPCには、造血幹細胞から分化させた細胞を 利用するのが有利である。
[0061] 本発明に用いるモノクローナル抗体の調製においては、 IPCのみならず、配列番号
: 2、配列番号: 4、および配列番号: 6からなる群力 選択されるいずれかの配列番号 に記載のアミノ酸配列を含む蛋白質、またはその断片を免疫原として利用することも できる。本発明のモノクローナル抗体は、配列番号: 2、配列番号: 4、および配列番 号: 6からなる群力も選択される 、ずれかの配列番号に記載のアミノ酸配列を含む蛋 白質を抗原として認識していることが明らかにされた。したがって、これらの蛋白質を 免疫原として用いることによって、本発明のモノクローナル抗体を得ることができる。
[0062] 配列番号: 2、配列番号: 4、および配列番号: 6からなる群から選択される 、ずれか の配列番号に記載のアミノ酸配列を含む蛋白質は、組み換え体として得ることができ る。たとえば配列番号: 1に記載の塩基配列は、配列番号: 2に記載のアミノ酸配列を コードして 、る。また配列番号: 3に記載の塩基配列は配列番号: 4に記載のアミノ酸 配列をコードしている。したがって、これらの塩基配列からなる DNAを適当な宿主 ベクターを使って発現させれば、目的とする蛋白質を得ることができる。
[0063] あるいは、配列番号: 2、配列番号: 4、および配列番号: 6からなる群から選択され るいずれかの配列番号に記載のアミノ酸配列力 選択された連続するアミノ酸配列 力もなるオリゴペプチドを免疫原とすることもできる。免疫原として選択すべきアミノ酸 配列は、たとえば 5— 50、好ましくは 7— 20程度のアミノ酸力もなる。任意のアミノ酸 配列を有するオリゴペプチドを得る方法は公知である。たとえば、化学的にアミノ酸を 結合させて、目的とするアミノ酸配列を有するオリゴペプチドを得ることができる。ある いは、上記組み換え体として得られた全長アミノ酸配列を有する蛋白質を切断するこ とによって、所定のアミノ酸配列を有する断片を得ることもできる。得られたオリゴぺプ チドは、適当なキャリアー蛋白質と結合することによって、より免疫原性を高めることが できる。キャリアー蛋白質には、キーホールリンペットへモシァニンゃゥシ血清アルブ ミンなどが用いられる。
[0064] 配列番号: 2と、配列番号: 4および配列番号: 6のアミノ酸配列の大部分は一致して
いる。したがって、共通のアミノ酸配列力も選択されたアミノ酸配列を利用することに よって、これらの蛋白質の全てを認識するモノクローナル抗体を得ることができる。ま た 3種類の蛋白質のそれぞれについて、 2種類が共有するアミノ酸配列を利用するこ とによって、特定の 2つの蛋白質を、他の 1つと識別することができる。あるいは各アミ ノ酸配列に固有のアミノ酸配列を利用することによって、各蛋白質を特異的に識別す るモノクローナル抗体を取得することもできる。たとえば、配列番号: 4に記載のァミノ 酸配列において、 N末端から 139〜158のアミノ酸配列は、配列番号: 4に固有のアミ ノ酸配列である。同様に、配列番号: 6に記載のアミノ酸配列においては、 N末端から 96〜100のアミノ酸配列力 配列番号: 6に固有のアミノ酸配列である。
[0065] 続いて免疫原を、適当な免疫動物に免疫する。 IPCは適当なアジュバントとともに免 疫動物へ投与することができる。あるいは、配列番号:2、配列番号: 4、および配列 番号: 6からなる群力 選択されるいずれかの配列番号に記載の蛋白質、若しくはそ の部分アミノ酸配列力もなるペプチドを、アジュバントとともに免疫動物に投与するこ とがでさる。
[0066] 更に、配列番号: 2、配列番号: 4、および配列番号: 6からなる群から選択されるい ずれかの配列番号に記載のアミノ酸配列をコードする DNAを発現可能に保持した形 質転換細胞を免疫原として利用することができる。たとえば配列番号: 1、配列番号: 3、および配列番号: 5からなる群から選択されるいずれかの配列番号に記載の塩基 配列のコード領域を構成する塩基配列を含む DNAは、上記 DNAとして好ましい。これ らの DNAを適当な発現ベクターに組み込み、宿主細胞を形質転換すれば免疫原とし て有用な形質転換細胞を得ることができる。
[0067] 免疫原とするための宿主細胞は、免疫動物と同じ種に由来する細胞とすることがで きる。同種の細胞を用いることにより、外来性の蛋白質に対する特異的な免疫応答を 誘導することができる。たとえば、免疫動物にラットを用いるのであれば、ラットに由来 する宿主細胞を用いるのが有利である。上記蛋白質を含む形質転換細胞の分画を 免疫原として用いることもできる。実施例に示したように、配列番号: 2、配列番号: 4、 および配列番号: 6力 なる群力 選択されるいずれかの配列番号に記載のアミノ酸 配列には、膜貫通ドメインが見られた(図 8の膜貫通領域; transmembrane region) 0し
たがって、これらのアミノ酸配列を有する蛋白質は、細胞膜に発現する可能性がある
。実際に COS細胞に発現させた場合には、配列番号: 8および配列番号: 10に記載 のアミノ酸配列を有する蛋白質は、形質転換体培養物の沈殿分画においてより多く の蛋白質が検出された。したがって、上記蛋白質を発現する細胞の、細胞膜分画を 免疫原として利用できる。
[0068] 本発明における免疫動物は、 IPCを異物と認識するあらゆる非ヒト脊椎動物を利用 することができる。モノクローナル抗体を得るためには、ハイプリドーマとするための融 合パートナーの入手が容易な動物が有利である。たとえば、マウス、ラット、ラビット、 ゥシ、ャギなどの細胞に由来するハイブリドーマの樹立が確立されている。これらの 免疫動物を、本発明に用いることができる。一方アジュバントには、フロイントの完全 アジュバントゃフロイントの不完全アジュバント等が用いられる。
[0069] 免疫動物は、 3〜: L0日間隔で複数回免疫される。 1回の免疫に用いられる IPCの数 は、任意である。通常、 103〜108、たとえば 106の IPCが免疫される。また蛋白質ゃぺ プチドによる免疫においては、一般に 1〜: LOO /z gが免疫される。複数回の免疫を経 た免疫動物から免疫担当細胞を回収し、目的とする抗体を産生する細胞をクロー二 ングすることにより、本発明のモノクローナル抗体を得ることができる。免疫担当細胞 とは、免疫動物において抗体産生能を有する細胞を言う。
[0070] 免疫担当細胞は、たとえばハイプリドーマ法によってクローニングすることができる。
免疫担当細胞は、 1つの細胞が 1種類の抗体を産生している。したがって、 1つの細 胞に由来する細胞集団を確立すること (すなわちクローユング)ができれば、モノクロ ーナル抗体を得ることができる。ハイプリドーマ法とは、免疫担当細胞を適当な細胞 株と融合させ、不死化する (immortalize)した後にクローユングする方法を言う。ハイブ リドーマ法に有用な多くの細胞株が知られている。これらの細胞株は、リンパ球系細 胞の不死化効率に優れ、かつ細胞融合に成功した細胞の選択に必要な各種の遺伝 マーカーを有している。更に抗体産生細胞の取得を目的とする場合には、抗体産生 能を欠落した細胞株を用いることもできる。
[0071] たとえばマウスミエローマ P3x63Ag8.653(ATCC CRL- 1580)は、マウスやラットの細 胞融合法に有用な細胞株として広く用いられて 、る。ヒトの IPCを免疫原に用いるの
であれば、マウスやラットを免疫動物として利用することができる。一方、後に述べる 実施例においては、マウスの IPCを免疫原としているので、免疫動物はマウス以外の 動物(たとえばラット)となる。一般にハイプリドーマは、同種の細胞の融合によって作 成される力 近縁の異種間でのヘテロハイプリドーマ力 モノクローナル抗体を取得 することちでさる。
[0072] 細胞融合の具体的なプロトコルは公知である。すなわち、免疫動物の免疫担当細 胞を適当な融合パートナーと混合し、細胞融合させる。免疫担当細胞には、脾細胞 や末梢血 B細胞などが用いられる。融合パートナーとしては、先に述べた各種の細胞 株を利用することができる。細胞融合には、ポリエチレングリコール法や、電気融合法 が用いられる。
次に、融合細胞が有する選択マーカーに基づいて、細胞融合に成功した細胞が選 択される。たとえば HAT感受性の細胞株を細胞融合に用いた場合には、 HAT培地に ぉ 、て成育する細胞を選択することによって、細胞融合に成功した細胞が選択され る。更に選択された細胞が産生する抗体が、目的とする反応性を有していることを確 認する。
[0073] 各ノ、イブリドーマは、抗体の反応性に基づいて、スクリーニングされる。すなわち、 B ST2およびそのホモログのいずれ力または両方に結合する抗体を産生するハイブリド 一マが選択される。好ましくは、選択されたノヽイブリドーマをサブクローユングし、最終 的に目的とする抗体の産生が確認された場合に、本発明のモノクローナル抗体を産 生するハイプリドーマとして選択する。
[0074] 具体的には、たとえば配列番号: 2、配列番号: 4、および配列番号: 6力 なる群か ら選択されるいずれかの配列番号に記載のアミノ酸配列力 なる蛋白質や、その部 分アミノ酸配列からなるペプチドを抗原としてスクリーニングすることができる。抗原を 適当な固相に結合し、抗原に結合するモノクローナル抗体を、免疫動物のィムノグロ ブリンを認識する標識抗体によって検出することができる。マイクロプレートの内壁に 抗原を結合させ、酵素標識抗体を使った ELISA法を利用すれば、モノクローナル抗 体を迅速にスクリーニングすることができる。抗原に対する結合活性が確認されたモ ノクローナル抗体は、必要に応じて実際に IPCの活性に与える影響が確認される。 IP
Cに対する影響は、たとえば後に述べるような方法によって確認することができる。
[0075] このようなモノクローナル抗体は、当該ハイプリドーマから抗体の抗原結合領域をコ ードする cDNAを取得し、これを適当な発現ベクターに挿入することによって発現させ ることができる。抗体の可変領域をコードする cDNAを取得し、適当な宿主細胞に発 現させる技術は公知である。また抗原結合領域を含む可変領域を、定常領域と結合 させること〖こよってキメラ抗体とする手法ち公知である。
[0076] 更に、モノクローナル抗体の抗原結合活性を他のィムノグロブリンに移植することも できる。ィムノグロブリンの可変領域は、相補性決定領域 (CDR)と、フレーム領域で構 成されている。各ィムノグロブリンの抗原結合特性は CDRによって決定されており、フ レームは抗原結合領域の構造を維持して 、る。 CDRのアミノ酸配列がきわめて多様 性に富むのに対して、フレーム部分のアミノ酸配列は高度に保存されている。 CDRを 構成するアミノ酸配列を他のィムノグロブリン分子のフレーム領域に組み込むことによ つて、抗原結合活性も移植できることが知られている。この方法を利用して、異種のィ ムノグロブリンが有する抗原結合特性をヒト ·ィムノグロブリンに移植する方法が確立さ れている。本発明において、抗原結合領域とは、フレームに移植 (graft)された CDRを 含みうる。したがって、あるモノクローナル抗体の「抗原結合領域を含む断片」とは、 当該モノクローナル抗体の CDRを移植された可変領域を含むヒトイムノグロブリンの 断片を含む。
[0077] このようにして作成されたモノクローナル抗体は ヽずれも本発明に利用することがで きる。すなわち、当該モノクローナル抗体の抗原結合領域をコードする cDNAに由来 するポリヌクレオチドによってコードされた抗原結合領域を含むィムノグロブリン力 な るモノクローナル抗体、あるいはその抗原結合領域を含む抗体断片を本発明に利用 することができる。
本発明に利用することができるモノクローナル抗体を産生するハイプリドーマとして 、たとえば、ハイプリドーマ 3D3#7あるいは 3G7#6を示すことができる。ハイプリドーマ 3 D3#7およびハイプリドーマ 3G7#6は、 2005年 5月 27日付けで独立行政法人産業技 術総合研究所内特許生物寄託センターに対して、受託番号 FERM BP-10339および 受託番号 FERM BP-10340として寄託されている。以下に、寄託を特定する内容を記
載する。
(a)寄託機関の名称'あて名
名称:独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センター
あて名:日本国茨城県つくば巿東 1丁目 1番 1号中央第 6 (郵便番号 305-8566)
(b)寄託日: 2005年 5月 27日
(c)受託番号: BP-10339 (ハイブリドーマ 3D3#7)
(c)受託番号: BP-10340 (ハイブリドーマ 3G7#6)
[0078] 本発明に利用するためのモノクローナル抗体は、それを産生するハイプリドーマを 培養しその培養物から回収することができる。ハイプリドーマは、 in vitroまたは in vivo で培養することができる。 in vitroにおいては、 RPMI1640などの公知の培地を用いて 、 ノ、イブリドーマを培養することができる。培養上清には当該ハイプリドーマが分泌し たィムノグロブリンが蓄積される。したがって、培養上清を採取し、必要に応じて精製 することにより、本発明のモノクローナル抗体を得ることができる。培地には、血清を 添カロしない方力 ィムノグロブリンの精製が容易である。しかし、ハイプリドーマのより 迅速な増殖と、抗体産生の促進を目的として、 10%程度のゥシ胎児血清を培地にカロ 免ることちでさる。
[0079] ノ、イブリドーマは、 in vivoにおいて培養することもできる。具体的には、ヌードマウス の腹腔にハイプリドーマを接種することにより、腹腔内でハイプリドーマを培養するこ とができる。モノクローナル抗体は、腹水中に蓄積する。したがって、腹水を採取し、 必要に応じて精製すれば、必要なモノクローナル抗体を得ることができる。得られた モノクローナル抗体は、目的に応じて適宜、修飾、あるいはカ卩ェすることができる。
[0080] BST2およびそのホモログのいずれかまたは両方に結合する抗体は、 IPCに接触さ せるとその活性を抑制する。したがってこれらの抗体を、本発明における IPCの活性 抑制剤に利用することができる。すなわち本発明は、下記 (a)- (c)力 なる群力 選択 される少なくとも 1種類の成分を有効成分として含む、腎炎の治療剤を提供する。ある いは本発明は、下記 (a)-(c)力もなる群力 選択される少なくとも 1種類の成分を投与 する工程を含む腎炎の治療方法に関する。更に本発明は、下記 (a)- (c)力 なる群か ら選択される少なくとも 1種類の成分の腎炎の治療剤の製造における使用に関する。
(a) BST2およびそのホモログの 、ずれかまたは両方に結合する抗体、またはその抗 原結合領域を含む断片
(b) (a)の抗体の相補性決定領域を移植したィムノグロブリン、またはその抗原結合領 域を含む断片、および
(c) (a)または (b)に記載の成分をコードするポリヌクレオチド
本発明において、 IPCの活性を抑制するモノクローナル抗体としては、配列番号: 2 、配列番号: 4、および配列番号: 6力 なる群力 選択されるいずれかの配列番号に 記載のアミノ酸配列を有する蛋白質を認識するモノクローナル抗体を利用することが できる。
[0081] 抗体が IPCの IFN産生活性の抑制作用を有することは次のようにして確認することが できる。 IPCはウィルスの刺激によって IFNを大量に産生する。 IPCに対するウィルス 刺激の前、後、あるいはウィルス刺激と同時に抗体を与え、抗体を与えない IPCを対 照として、 IFNの産生能を比較する。 IFN産生能は、 IPCの培養上清中に含まれる IFN - aや IFN- βを測定することによって評価することができる。比較の結果、抗体の添 加によって、上清中の IFNの量が有意に低下すれば、試験された抗体は、 IFN産生 能を抑制する作用を有することが確認できる。これら IFNの測定方法は公知である。 I PCは、生体における IFNの大部分を産生する細胞である。したがって、 IPCの IFN産 生能の抑制によって、生体の IFNの産生状態を調節することができる。
[0082] 本発明にお 、て、 IPC活性には IPCの細胞数の維持が含まれる。したがって本発明 における IPCの活性の抑制は、 IPCの細胞数の抑制を含む。 IFN産生と同様に、感染 性のウィルスなどの刺激によって IPCの活性ィ匕が誘導される。活性ィ匕された IPCの細 胞数が、抗体の存在下で抑制されることを確認すれば、当該抗体が IPCの活性を抑 制していることがわかる。比較対照としては、 IFN産生と同様に、活性を確認すべき抗 体と同じ動物種に由来する不活性なィムノグロブリンを用いることができる。 IPCの細 胞数は、細胞の計数によって定量的に比較することができる。細胞数は、 FACSゃ顕 微鏡によって計数することができる。
[0083] 本発明にお 、て、好ま 、IPCの活性抑制剤は、 IPCの細胞表面抗原を認識し、そ の活性を抑制する抗体である。たとえば BST2およびそのホモログの 、ずれかまたは
両方を認識する抗体は、本発明における IPC活性抑制剤として好ましい。抗体を、そ の抗体が由来する生物種とは異なる宿主に投与する場合には、当該宿主にとって異 物と認識されにくい形にカ卩ェするのが望ましい。たとえば、次のような分子に加工す ることにより、ィムノグロブリンを異物として認識されに《することができる。ィムノグロ ブリン分子を以下のようにカ卩ェする手法は公知である。
一定常領域を欠失した抗原結合領域を含む断片 (Monoclonal Ant¾odies: Principle s and Practice, third edition, Academic Press Limited. 1995; Antioody Engineering, A Practical Approach, IRL PRESS, 1996)
モノクローナル抗体の抗原結合領域と宿主のィムノグロブリンの定常領域とで構成 されるキメラ抗体 (遺伝子発現実験マニュアル 講談社 1994年 (石田 功、安東 民衛 編))
一宿主のィムノグロブリンにおける相補性決定領域 (CDR)をモノクローナル抗体の CD Rに置換した CDR置換抗体 (遺伝子発現実験マニュアル 講談社 1994年 (石田 功、安東 民衛 編))
[0084] あるいはヒト抗体遺伝子を組み込まれた非ヒト動物を免疫動物として用いることによ り、非ヒト動物を用いながら、ヒト抗体を得ることができる。たとえば、ヒト抗体遺伝子を 組み込んだトランスジエニックマウス力 ヒト抗体を製造するための免疫動物として実 用化されている (Ishida et al., Cloning and Stem Cells, 4:85-95,2002)。このような動物 を用いることにより、ヒトの BST2を抗原として、 BST2を認識するヒト抗体を得ることがで きる。ヒト抗体は、ヒトに投与する抗体として好ましい抗体である。
[0085] あるいは、ファージディスプレー法 (McCafferty J. et al., Nature 348:552-554, 1990;
Kretzschmar T et.al, Curr Opin Biotechnol. 2002 Dec;13(6):598- 602.)によって、ヒト のィムノグロブリン可変領域遺伝子を取得することもできる。ファージディスプレー法 にお 、ては、ヒトイムノグロブリン可変領域をコードする遺伝子がファージ遺伝子に組 み込まれる。多様なィムノグロブリン遺伝子をソースとして、ファージライブラリーを作 成することもできる。ファージは自身を構成する蛋白質の融合蛋白質として、当該可 変領域を発現する。ファージによって発現されたファージ表面の可変領域は、抗原と の結合活性を維持している。したがって、抗原あるいは抗原を発現した細胞などに結
合するファージを選択することによって、ファージライブラリーから、目的とする結合活 性を有する可変領域を発現したファージをスクリーニングすることができる。更に、こう して選択されたファージ粒子の中には、目的とする結合活性を有する可変領域をコ ードする遺伝子が保持されている。すなわち、ファージディスプレー法においては、 可変領域の結合活性を指標として、目的とする結合活性を有する可変領域をコード して 、る遺伝子を取得することができる。
[0086] 本発明による腎炎の治療剤、または治療方法において、抗体、またはその少なくと も抗原結合領域を含む抗体断片は、蛋白質として、あるいはそれをコードするポリヌ クレオチドとして、投与することができる。ポリヌクレオチドを投与するには、目的とする 蛋白質を発現できるように、適当なプロモーターの制御下に目的とする蛋白質をコー ドするポリヌクレオチドを配置したベクターを利用するのが望ましい。ベクターには、ェ ンハンサーゃターミネータ一を配置することもできる。ィムノグロブリンを構成する重鎖 と軽鎖の遺伝子を保持し、ィムノグロブリン分子を発現することができるベクターが公 知である。
ィムノグロブリンを発現することができるベクターは、細胞に導入することにより投与 することができる。生体への投与にあたっては、生体への投与によって細胞に感染さ せることができるものはそのまま投与することができる。あるいは、いったん生体から分 離したリンパ球にベクターを導入して再び生体に戻すこともできる (ex vivo)。
[0087] 本発明に基づく腎炎の治療剤、または治療方法において、生体に投与されるモノク ローナル抗体の量は、ィムノグロブリンとして体重 lkgあたり、通常 0. 5mg〜100mg、 たとえば lmg〜50mg、好ましくは 2mg〜: LOmgである。生体への抗体の投与間隔は、 治療期間中の生体内におけるィムノグロブリンの有効濃度が維持できるように適宜調 節することができる。具体的には、たとえば、 1〜2週間間隔で投与することができる。 投与経路は、任意である。当業者は、治療に際して効果的な投与経路を適宜選択す ることができる。具体的には、経口的に、あるいは非経口的な投与を示すことができる 。たとえば、静脈内注射、筋肉内注射、腹腔内注射、あるいは皮下注射等により、全 身あるいは局所に抗体を投与することができる。本発明における非経口投与に適当 な製剤として、注射剤、座剤、噴霧剤などがあげられる。また細胞に与える場合には
、培養液中に通常 1 μ g/mL、好ましくは 10 g/mL以上、より好ましくは 50 g/mL以 上、更に好ましくは 0. 5mg/mL以上のィムノグロブリンを与える。
[0088] 本発明の腎炎の治療剤、または治療方法において、モノクローナル抗体は、任意 の方法により生体に投与することができる。通常モノクローナル抗体は、薬学的に許 容される担体と配合される。モノクローナル抗体には、必要に応じて増粘剤、安定剤 、防腐剤および可溶化剤などの添加剤を配合することができる。このような担体また は添加剤としては、ラタトース、クェン酸、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、ス クロース、デンプン、タルク、ジエラチン、寒天、植物油、エチレングリコールなどが挙 げられる。「薬学的に許容される」という用語は、各国政府の監督当局により承認され ているか、または各国の薬局方もしくは一般的に認知されている薬局方に動物、哺 乳動物、および特にヒトへの使用に関して列記されていることを言う。本発明の腎炎 の治療剤は、 1回または複数回の用量の凍結乾燥粉末または錠剤の形態で供給す ることもできる。凍結乾燥粉末または錠剤には、更に、投与の前に該組成物を所望の 濃度となるように溶解するための注射用の滅菌済みの水、生理的食塩水または緩衝 液を組み合わせることもできる。
[0089] 更に、ィムノグロブリンを発現するベクターとして投与する場合には、重鎖と軽鎖を 別のプラスミドとしてコトランスフエタトするとして、体重 lkgあたり各プラスミドを 0. 1〜 10mg、たとえば l〜5mgを投与することができる。また in vitroにおいて細胞に導入す るためには、 1〜5 μ g/106cellのベクターが用いられる。
[0090] 更に本発明は、次の工程を含む被験化合物の腎炎の治療効果の検出方法に関す る。
(1)インターフェロン産生細胞とインターフェロン産生細胞のインターフェロン産生誘 導物質を、以下の i)-iii)の 、ずれかの順序で接触させる工程、
0被験化合物とインターフェロン産生細胞を接触後に、インターフェロン産生を誘導 する細胞刺激剤をインターフェロン産生細胞に接触させる、
ii)被験化合物とインターフェロン産生を誘導する細胞刺激剤を同時にインターフエ口 ン産生細胞に接触させる、または
iii)インターフェロン産生を誘導する細胞刺激剤をインターフェロン産生細胞に接触さ
せた後に、被験化合物とインターフェロン産生細胞を接触させる
(2)インターフェロン産生細胞の活性を測定する工程、および
(3)対照と比較して、インターフ ロン産生細胞の活性が抑制されたとき、被験化合物 の腎炎の治療効果が検出される工程
[0091] 本発明の方法において、細胞刺激剤とは IPCの活性ィ匕およびインターフェロン産生 を誘導しうる物質を言う。たとえば、ウィルスやウィルスの構成成分を、細胞刺激剤と して示すことができる。具体的には、単純へルぺスウィルス (Herpes simplex virus ;HS V)、あるいはインフルエンザウイルス (Influenza virus)などのウィルスの投与により IPC が活性化することが知られている。その他、バクテリア中の DNAである CpGの IPC活性 化作用も公知である。これらの細胞刺激剤は、単独で用いても良いし、異なる細胞刺 激剤を組み合わせて用いることもできる。細胞刺激剤と被験化合物とは、同時に IPC に接触させても良いし、細胞刺激剤との接触の前あるいは後に IPCと被験化合物を 接虫させることちでさる。
[0092] 本発明にお ヽて、細胞刺激剤、 IPC,および被験化合物は、生体外 (in vitro),生体 内 (in vivo),あるいは ex vivoにおいて接触させることができる。生体外 (in vitro)にお いては、 IPCを培養可能な条件下で、先に述べたような任意の順番で細胞刺激剤お よび被験化合物を IPCと接触させることができる。また生体内 (in vivo)においては、生 体内の IPCに対して、被験化合物あるいは細胞刺激剤を投与した後に、 IPCを採取す る。採取された IPCを生体外にお 、て細胞刺激剤あるいは被験化合物に接触させた 後、細胞の活性ィ匕のレベルを評価することができる。細胞の活性ィ匕のレベルは、細胞 が産生する IFNの濃度の変化などによって評価することができる。
更に ex vivoでの評価においては、生体外で調製された IPCに対して、細胞刺激剤 または被験化合物を接触させる。接触後の IPCを生体に投与し、更に被験化合物ま たは細胞刺激剤を投与する。生体内における IPCの活性ィ匕のレベルを評価し、被験 化合物の作用が評価される。 IPCの活性化のレベルは、たとえば血中の IFNのレベル を指標として評価することができる。なお生体外における IPCの調製とは、生体から IP Cを採取すること、あるいは IPCの前駆細胞の分ィ匕誘導によって人工的に IPCを調製 することを言う。
[0093] なお本発明の方法における対照としては、被験化合物に代えて腎炎の治療効果が 予め知られている物質を用いることができる。たとえば、生理食塩水は治療効果の無 V、物質である。あるいは腎炎の治療効果を有することが確認されて 、る物質を対象と して用い、その物質との相対的な比較によって被験化合物の作用を評価することも できる。
[0094] 本発明による腎炎の治療効果の検出方法において、 IPCの活性とは、たとえば IFN の産生レベル、および IPCの数の、いずれか、または両方を言う。特に好ましい活性 は、 IPCによる IFNの産生能である。 IPCの IFN産生能は、細胞の培養物中に含まれる I FNの量、あるいは濃度を決定することによって比較することができる。各種の IFNを測 定するための試薬、あるいはキットが市販されている。あるいは、 IPCの細胞数は、 IP Cの培養物中に存在する細胞数を計数することによって比較することができる。細胞 数は、 IPCの細胞表面抗原を認識する抗体を使った FACSによって明らかにすること ができる。 IPCの細胞表面抗原には、たとえば BST2や BDCA-2などを利用することが できる。その他、 CD4並びに CD123を、 IPCを計数するためのマーカーとすることもで きる。
[0095] 本発明において、腎炎の治療効果を検出するために必要な試薬には、更に IPCを 活性ィ匕するための細胞刺激剤、 IPCの培養のための培地や培養容器などを組み合 わせることもできる。また、 IPCの活性ィ匕作用に与える影響が明らかな物質を対照とし て組み合わせることもできる。
[0096] 更に本発明の腎炎の治療効果を測定する方法を利用して、腎炎の治療剤の候補 化合物のスクリーニング方法が提供される。すなわち本発明は、次の工程を含む、腎 炎の治療効果を有する被験化合物のスクリーニング方法に関する。
(1)本発明の腎炎の治療効果を測定する方法によって、被験化合物が有している腎 炎の治療効果を測定する工程、および
(2)対照と比較して前記効果が大きい被験化合物を選択する工程
本発明のスクリ一-ング方法に用 、る被験化合物としては、 IPCの細胞表面抗原を 認識する抗体、その少なくとも抗原結合領域を含む抗体断片、あるいはその可変領 域を含む断片を用いることができる。抗体として、可変領域を発現させたファージライ
ブラリーを用いることもできる。あるいは、コンビナトリアルケミストリ一により合成された 化合物標品のほか、動 ·植物組織の抽出物もしくは微生物培養物等の複数の化合 物を含む混合物、またそれらから精製された標品などを候補ィ匕合物として用いること ちでさる。
本発明に基づ 、て、 IPC表面抗原を認識する抗体の、腎炎の治療効果を見出すた めには、たとえば次の工程を含む検出方法を実施することができる。
(1)インターフェロン産生細胞とインターフェロン産生細胞のインターフェロン産生誘 導物質を、以下の i)-iii)の 、ずれかの順序で接触させる工程、
0抗体と IPCを接触後に、 IFN産生を誘導する細胞刺激剤を IPCに接触させる、 ii)抗体と IFN産生を誘導する細胞刺激剤を同時に IPCに接触させる、または
iii) IFN産生を誘導する細胞刺激剤を IPCに接触させた後に、抗体と IPCを接触させる
(2) IPCの活性を測定する工程、および
(3)対照と比較して、 IPCの活性が抑制されたとき、抗体の腎炎の治療効果が検出さ れる工程
本発明に基づぐ抗体の腎炎の治療効果の検出方法は、更に当該活性を有する 抗体のスクリーニング方法を可能とする。すなわち本発明は、以下の工程を含む、腎 炎の治療効果を有する抗体のスクリーニング方法に関する。
(1)本発明の腎炎の治療効果を測定する方法によって、抗体が有している腎炎の治 療効果を測定する工程、および
(2)対照と比較して前記効果が大きい抗体を選択する工程
本発明の検出方法並びにスクリーニング方法において、抗体とは、天然のィムノグ ロブリン分子、その抗原結合領域を含む断片、アミノ酸配列や糖鎖が修飾された変 異体、および化学的な修飾を施した誘導体が含まれる。抗体の抗原結合領域を含む 断片は、ィムノグロブリンを酵素的に消化することによって得ることができる。あるいは 、当該領域をコードする遺伝子を単離し、適当な発現系において発現させることによ り、遺伝子工学的に得ることもできる。このようなィムノグロブリンの組み換え体として、 たとえばファージ抗体ライブラリーを示すことができる。一方、 IPCおよび細胞刺激剤 は、先に示したようなものを利用することができる。
[0098] IPCに対する刺激は IFNの産生を誘導することから、その活性化の調節によって IFN 産生を調節することができる。そして本発明者らは、 IPCの活性の抑制を通じて、腎炎 の治療効果を得られることを明らかにした。したがって、 IPCの活性を抑制することが できる物質は腎炎の治療剤として用いることができる。すなわち、本発明のスクリー- ング方法によって選択することができる化合物は、腎炎の治療剤として有用である。
[0099] 本発明のスクリーニング方法において、腎炎の治療効果を有することが明らかな物 質を接触させた IPCを対照として用いれば、この物質よりも治療効果の大きい物質を 見出すことができる。 IPCは生体中の IFNの大部分を産生する重要な細胞である。し たがって、本発明のスクリーニング方法によって得ることができる化合物は、免疫バラ ンスの調節による腎炎の治療剤として重要である。あるいは、本発明のスクリーニング 方法によって得ることができる化合物は、免疫バランスの調節による腎炎の治療剤の 製造に使用することができる。
[0100] 本発明のスクリーニングによって選択された化合物を、必要に応じて、 IPC以外の様 々な細胞に接触させることにより、他の細胞に対する作用を確認することができる。 IP C以外の細胞に対して顕著な増殖抑制や細胞障害作用が検出されなければ、その 化合物は安全な治療薬として使用できる可能性が高まる。あるいは、特定の細胞に 対する障害作用が確認された場合であっても、局所投与など、投与形態を選択する ことにより、治療薬として利用できる可能性はある。更に、 SLEモデル動物などに投与 して、より詳細に腎炎の治療効果を評価することができる。
なお、本明細書において引用された全ての先行技術文献は、参照として本明細書 に組み入れられる。
以下、実施例に基づいて本発明を更に詳細に説明する。
実施例 1
[0101] モノクローナル抗体作製プロトコール
免疫原とする細胞は以下のようにして調製した。 Balb/cマウス雌 (4〜6週令)の骨髄 細胞を、 10ng/mlの FLT- 3リガンド(R&D Systems社製)を添カ卩した 10%FCS- RPMI164 0培地〔10%牛胎児血清(FCS)、およびペニシリン、ストレプトマイシンを含む RPMI16 40培地〕にて 10日間培養した。 10日後、 IPC (Interferon producing cell)を、 CDllc陽
性、 CDllb陰性、 B220陽性分画としてセルソーター(FACSVantage, Becton Dickinso n社製)で分離した。抗体は Becton Dickinson社製のものを用いた。
上記の分離した細胞を、 0、 4、 11日目に、片足あたり lxlO6個ずつ、完全フロインド アジュバント(CFA:ャトロン社製)と共にラットのフットパッド(foot pad)へ注入した。 12 日目に免疫ラットのリンパ節を分離し、リンパ球を採取した。マウスのミエローマ細胞 P 3x63Ag8.653とラットのリンパ球を 4 : 5の割合で混合し、ポリエチレングリコール(PEG) を加えて細胞を融合した。融合後の細胞を十分に洗浄して HAT培地に分散させ、 1 ゥエルあたり 5xl04個の細胞を含むように 96 well plateにまいた。
[0102] 細胞が増殖したゥエルの細胞を回収して希釈して、その培養上清をマウス脾臓細 胞、及び培養骨髄細胞に対する反応性を指標としてスクリーニングした。スクリーニン グ方法の詳細は実施例 2のとおりである。陽性反応を示したゥエルの細胞を限外希釈 によりクローユングし、モノクローナル抗体を産生するハイブリドーマクローンを確立し た。更に、ノ、イブリドーマの培養上清、あるいはハイプリドーマをマウスの腹腔内に移 植して得られた腹水より精製された抗体の反応性を解析した。
実施例 2
[0103] 培養上清のスクリーニング
Balb/cマウス雌(4〜6週令)の骨髄細胞を、 10ng/mlの FLT- 3リガンドを添カ卩した 10 %FCS-RPMI1640培地にて 10日間培養した。 10日目には約 40%の細胞が IPCになつ た。この細胞を用い、ハイプリドーマ培養上清を 1次抗体とし、 2次抗体に FITC標識 抗ラッ Hg抗体 (BD Pharmingen社製)を用いて染色した。その後、各種抗体 (CDllb、 CDllcゝ CD3、 CD19、 CD45RB、 B220、 Ly6C ;いずれも Becton Dickinson社製)により 二重染色し、フローサイトメトリー法により解析 (FACS解析)した。
[0104] 培養上清陽性分画、陰性分画をそれぞれ R2、 R3とし各々の Gate内での各種抗原 の発現をヒストグラムで示した(図 1)。作製した数種類の抗体によって染色される細胞 群は、文献上で定義されているマウス IPC (Nature Immunol, 2001; 2, 1144-1150.) の細胞表面抗原プロファイルが一致した。したがって、これらの抗体はマウス IPCに特 異的に結合する抗体であると考えられた。
実施例 3
[0105] 抗体で分離した細胞の形態
実施例 2と同様に培養した骨髄細胞を、培養上清を 1次抗体とし、 2次抗体に FITC 標識抗ラット Ig抗体を用いて染色した。その後、セルソーター(FACSVantage, Becton Dickinson社製)を用いて陽性細胞を分離した。サイトスピン後、ギムザ染色し、顕微 鏡下にて観察したところ、 IPCに特異的な形態を示した(図 2a)。すなわち、この細胞 の形は丸ぐ大きな核を有していた。
[0106] lxlO5個の細胞を 96 well丸底プレートにてインフルエンザウイルス PR8と共に 24時 間 37°Cにて培養し、同様にギムザ染色した後、顕微鏡下にて観察したところ、形態的 に典型的な榭状細胞に分化した(図 2b)。この結果から、上記抗体によって分離され た細胞は、ウィルス感染によって榭状細胞に分ィ匕すると 、うマウス IPCの特徴を有し て!、ることが確認された。このようなマウス IPC特異的なモノクローナル抗体およびそ の抗体を産生するハイブリドーマのうち、 SNK01、 SNK03を選択して以降の実験に用 いた。
実施例 4
[0107] 抗体で分離した細胞のインターフ ロン産生能
実施例 2と同様に培養した骨髄細胞を SNK01、SNK03培養上清および 2次抗体で 染色後、セルソーターにて陽性、陰性細胞を分離した。各々の分画の細胞、 lxlO5個 ずつを 96 well丸底プレートに分注し(100 μ 1/well)、インフルエンザウイルス PR8を感 染させ、 24時間後の培養上清中の IFN aの濃度を以下のような ELISA法にて測定し た。
[0108] まずラット抗マウス IFN a抗体(PBL Biomedical Laboratory社製)を 96 wellプレート に 4°Cで一晩反応させ、プレートコートした。プレートを洗浄後、培養上清 100 1を添 加し、 4°Cで一晩反応させた。プレートを洗浄後、 IFN aと IFN βを認識する標識化抗 インターフェロン抗体を添加し、 1時間反応させて、検出を行った。それぞれの反応は 3連で行い、平均値を求めた。検量線を作成することにより、培養上清中の IFN a濃 度を算出した。
抗体陽性細胞では、陰性細胞に比べて、高いインターフェロンの産生が認められた 。すなわち、モノクローナル抗体 SNK01、 SNK03が認識する抗原は IPCに特異的な表
面抗原であることが確認できた(図 3)。
実施例 5
[0109] 抗体のマウスインターフェロン産生能への影響
実施例 2と同様に培養したマウス骨髄細胞を lxlO5個ずつ、 96 well丸底プレートに 分注した。これに抗体、またはコントロール抗体であるラッ HgGを添カ卩し、 37°Cにて 30 分間培養後、インフルエンザウイルス PR8を添カ卩し、 37°Cにて 24時間培養し、培養上 清中の IFN o;を上記実施例 4に示した ELISAにより測定した(図 4)。その結果、 SNK01 は濃度依存的に IFN aの産生を抑制した。また、 SNK03抗体も同様に濃度依存的に I FN αの産生を抑制した(図 5)。
実施例 6
[0110] 抗体が認識する分子のクローユング
1) IPC- cDNAライブラリーの作製
実施例 2と同様に FLT-3リガンドで骨髄細胞力も誘導した IPCより全 RNAをフエノー ル-グァ-ジン法により抽出し、 oligo- dTカラムにより mRNAを精製した。精製した mRN Aから Gubler- Hoffinan法により cDNAを合成し、両端に EcoRI- Notlアダプター (インビト ロジェン社製)を結合後、スパンカラム (クロマスピン 400、クロンテック社製)により未反 応の EcoRIアダプターおよび 500塩基以下の短!、cDNAを除去した。得られた両端に EcoRIサイトを有する cDNAを動物細胞用発現用ベクター pME18s (Xhol断片を除!ヽた もの)の EcoRIサイトに T4リガーゼにより結合し、大腸菌 DH10 (インビトロジェン社製)に エレクト口ポーレーシヨン法により形質転換した。これを 100 g/mlのカルべ-シリンを 含む LB培地(LB.カルべ-シリン) 500mlで 30°Cでー晚培養し、 QIA filter plasmid ma xi kit (Qiagen社製)により同キットのプロトコールに従って plasmidを抽出、精製し、 IP C- cDNAライブラリーを得た。
[0111] 2) COS7細胞による発現クローユング
COS7細胞を 6cmデイシュに 5xl05個ずつ 10枚まき、 37°C、 5%CO存在下で 20時間
2
培養後、 Effectene trasfection Reagent(Qiagen社製)により同製品のプロトコールに従 い、上記 1)で取得した IPC cDNAライブラリー ¾ ransfectionした。 48時間、 37°C、 5% CO下で培養後、 PBS (Phosphate Buffered Saline)で洗浄、 PBS/5mM EDTAで細胞
をデイシュから剥離し、さらに PBSで洗浄後、セルストレナー(70 m,ファルコン社製) を通した。遠心後(1300rpm, 5分)上清を除去し、 PBS/ 0.5%BSA/2mM EDTAを lml 添カロして懸濁し、 Fc block (ファーミンジェン社製) 40 μ 1を加え 4°Cで 20分間置いた。 これにピオチン化した SNK01抗体 30〜50 μ gを加え、氷上で 30分間保持した。 PBSで 洗浄後、 100 μ 1の PBSに懸濁し、ストレプトアビジンマイクロビーズ (Miltenyi Biotec社 製) 10-20 μ 1を加え 10°Cで 15分静置した。 PBS/ 0.5%BSA/2mM EDTAで洗浄すること により過剰なストレプトアビジンマイクロビーズを除去し、 lmlの PBS/ 0.5%BSA/2mM E DTAに懸濁した。 AutoMACS (Miltenyi Biotec社製)で posseldsの条件で細胞を分取 した。改良 Hirt法(BioTechniques Vol.24,760-762,1998)により plasmidを抽出、精製し た。得られた plasmidを大腸菌 DH10にエレクト口ポーレーシヨン法により形質転換し、 L Β·カルべ-シリン 100mlで 30°Cでー晚培養し、 QIA filter plasmid midi kit (Qiagen社 製)により同キットのプロトコールに従って plasmidを抽出、精製した。
[0112] 以上の操作を 1クールとして、この後同じ操作を 4回繰り返し、 SNK01抗体に反応す る抗原をコードする plasmidを濃縮した。最後に、 AutoMACSのかわりにセルソーター( FACSVantage, Becton Dickinson社製)により陽性細胞を分取し、これらより抽出した plasmidを形質転換した大腸菌 DH10を適量 LB'カルべ-シリンプレートに塗布した。 3 0°Cでー晚培養し、現れたコロニーを 30個ピックアップし、それぞれより plasmidを抽出 、 COS7細胞に transfectionし、 SNK01抗体を用いて FACS解析することにより陽性 plas midを選抜した。
[0113] 得られた plasmid上にクローン化されている cDNAの塩基配列を決定し、マウス遺伝 子データベースに登録されている塩基配列情報と blastサーチすることにより、その遺 伝子を決定した。また、同時にヒト遺伝子データベースをサーチすることによりその力 ゥンターパートを同定した。
その結果モノクローナル抗体 SNK01が結合したクローンは、配列番号: 7および、配 列番号: 9に記載の塩基配列を有していた。これらの塩基配列によってコードされるァ ミノ酸配列を、配列番号: 8および配列番号: 10に示した。
[0114] 配列番号: 9に記載の塩基配列は、マウス BST2として既知の塩基配列であった (Ge nBank Acc#.BC027328)。一方、配列番号: 7に記載の塩基配列は、配列番号: 9の塩
基配列と部分的に同一の塩基配列を有していたが、 3'末端側に異なる塩基配列が 見られ、異なるアミノ酸配列をコードしていた。すなわち、配列番号: 8に記載のァミノ 酸配列のうち、 N末端から 139位までのアミノ酸配列は、配列番号: 10に記載されたァ ミノ酸配列と一致した。そして配列番号: 8に記載のアミノ酸配列において、 N末端か ら 140〜178番目のアミノ酸は、配列番号: 8に記載のアミノ酸配列に固有の配列であ つた。両者はォータナティブスプライシングによって生じたノ リアントであると考えられ た。これらの知見に基づいて、配列番号: 7に記載の塩基配列によってコードされるァ ミノ酸配列(配列番号: 8)力 なるタンパク質は、マウス BST2の新規なスプライシング ノ リアントであると考えられた。以下、配列番号: 7に記載の塩基配列からなる遺伝子 を mBST2H、配列番号: 9に記載の塩基配列からなる遺伝子を mBST2Dとも称する。 ( 図 7(a))
[0115] 3) FACSによる確認
上記発現クローニング法により得られたプラスミドを QIA filter plasmid midi kit (Qiag en社製)により再度大腸菌より高度に精製し、もう一度 COS7細胞に transfectionした。 48時間後、定法に従って、 SNK01抗体および FITC標識抗ラッ Hg抗体で反応させ、 F ACS解析を行うことで、 plasmid上にクローン化されている cDNA力 抗原をコードして いるかどうかを確認した。
その結果、上記モノクローナル抗体 SNK01は、プラスミドを導入した COS7細胞に対 する結合が観察された。したがって、プラスミド上にクローンィ匕されている cDNAは、い ずれもこのモノクローナル抗体によって認識された抗原をコードしていることが確認さ れた。
実施例 7
[0116] ウェスタンブロティング法による抗体の反応性の確認
前記モノクローナル抗体力 配列番号: 8または配列番号: 10に記載のアミノ酸配 列を有する蛋白質を認識し結合することを、ウェスタンブロッテイング法によって確認 した。配列番号: 8または配列番号: 10に記載のアミノ酸配列を遺伝子組み換え体と して発現させ、本発明のモノクローナル抗体との反応性を確認した。具体的な操作は 次のとおりである。
[0117] 1 ) pcDNA3.1- mBST2Dおよび pcDNA3.1- mBST2Hの構築
クロー-ングした mBST2Dおよび mBST2Hをコードする plasmid(l μ g)を铸型として、 P CRにより配列番号: 7または配列番号: 9に記載の塩基配列を有する DNAを増幅した 。 PCRに用いたプライマーの塩基配列は次のとおりである。
forward primer (酉己列番 : 1丄
5 -tttttgctagcgacggatcacatggcgccctctttctatcactatctgcccgtgcccatggatgagatgggggggaa gcaagga-3
reverse primer (酉己列番 : 12)
5 -tttttttctcgagtcctcaaaagagcaggaacagtgac-ύ '
また反応液の組成は以下のとおりである。
1XGC bufferl,
dNTP mix (0.25 mM ),
LA Taq DNA polymerase 5U(以上タカラバイオ製)/ 100 μ L
forward primer (1 pmol):
reverse primer (1 pmol)
[0118] 95°Cで 1分インキュベート後、 [95°C30秒 Z55°C30秒 Z72°C1分 30秒]を 1サイ クルとして、 25回の条件で PCRを行った。ァガロースゲル電気泳動にて目的の大きさ の DNA断片が増幅されていることを確認後、フエノールクロロフオルム抽出、エタノー ル沈殿後、回収した増幅産物を TE buffer 10 μ Lに溶解した。これを制限酵素 Nhe I および Xho I (タカラバイオ製)で切断後、 QIAquick Gel Extraction Kit (QIAGEN社製 )を用いてァガロースゲル電気泳動により精製し、エタノール沈殿後、 TE buffer 4 L に溶解した。
[0119] 一方、哺乳動物細胞発現 plasmid pcDNA3.1 (インビトロジヱン社製) 5 μ gを制限酵 素 Nhe Iおよび Xho Iで消化、 CIAP (タカラバイオ製)処理後、ァガロースゲル電気泳 動により精製し、エタノール沈殿後、 TE buffer 4 μ Lに溶解した。前述の DNA断片そ れぞれ 2 μ Lと、この plasmid 0.5 μ Lを ligation kit ver.II (タカラバイオ製)を用いて連結 し、大腸菌 DH5に形質転換した。
[0120] LB培地(100 μ g/mlアンピシリン)にて 37°Cでー晚培養後、出現したコロニー数個
を選び、 QIAprep Spin miniprep kit(QIAGEN社製)を用いて plasmidを抽出した。抽出 されたプラスミドに挿入されて ヽる DNA断片の塩基配列を定法に従って決定した。配 列番号: 8または配列番号: 10に記載のアミノ酸配列をコードする塩基配列を有する DNA断片が挿入されているプラスミドであることを確認し、 目的の構築物 PCDNA3.1- mBST2Dおよび PCDNA3.1- mBST2Hを得た。
[0121] 2) pcDNA3.1- mBST2D- Hisおよび PCDNA3.1- mBST2H- Hisの構築
pcDNA3.1- mBST2D (pcDNA3.1- mBST2D- His構築の場合)あるいは pcDNA3.1- m BST2H (pcDNA3.1- mBST2H- His構築の場合) 1 μ gを铸型として、 PCRにより Hisタグ をコードする塩基配列を付加した。 PCRに用いたプライマーの塩基配列は次のとおり である。なお forward primer (配列番号: 13)は、 pcDNA3.1- mBST2D- Hisと pcDNA3.1 -mBST2H- Hisに同じものを用いた。反応液の組成と温度サイクルの条件は 1)と同様 とした。
forward primer (酉己列番 :13) :
5 -ccagctcacccgcacccaggacagtc-ύ '
reverse primer (pcDNA3.1-mBST2D- His用、配列番号: 14):
5 -tttttttctcgagtcaatgatgatgatgatgatgaaagagcagaaacagtgacactttga-3
reverse primer (pcDNA3.1-mBST2H- His用、配列番号: 15):
5'— tttttttctcgagtcaatgatgatgatgatgatggaagtctccttttggatcctgagctg— 3,
[0122] ァガロースゲル電気泳動にて目的の大きさの DNA断片が増幅されていることを確認 後、フエノールクロロフオルム抽出、エタノール沈殿後、 TE buffer 10 μ Lに溶解した。 これを制限酵素 BamH Iおよび Xho I (タカラバイオ製)で切断後、 QIAquick Gel Extra ction Kit (QIAGEN社製)を用いてァガロースゲル電気泳動により精製し、エタノール 沈殿後、 TE buffer 4 μ 1に溶解した。
[0123] 一方、 PCDNA3.1— mBST2Dおよび pcDNA3.1— mBST2H 5 μ gを制限酵素 BamH Iお よび Xho Iで消化、 CIAP (タカラバイオ製)処理後、ァガロースゲル電気泳動により精 製し、エタノール沈殿後、 TE buffer 4 μ Lに溶解した。 PCRで増幅された DNA断片そ れぞれ 2 μ Lとこれらの plasmid 0.5 μ Lを ligation kit ver.II (タカラバイオ製)を用いて 連結し、大腸菌 DH5に形質転換した。
[0124] LB培地(100 μ g/mlアンピシリン)にて 37°Cでー晚培養後、出現したコロニー数個 を選び、 QIAprep Spin miniprep kit(QIAGEN社製)を用いてこれらより plasmidを抽出 した。抽出されたプラスミドに挿入されて 、る DNA断片の塩基配列を定法に従って決 定した。 Hisタグをコードする塩基配列が付加された DNA断片が挿入されて 、ることを 確認し、 目的の構築物 PCDNA3.1- mBST2D- Hisおよび PCDNA3.1- mBST2H- Hisを得 た。
[0125] 3) Western— blotting
6cmデイシュに COS7細胞を 5xl05で 10枚まき、 37°C、 5%CO下で 20時間培養し
2
た。培養後の COS7細胞に、 Effectene trasfection Reagent(Qiagen社製)により、 pcDN A3. l-mBST2D- Hisあるいは pcDNA3.1-mBST2H- Hisを形質転換した。操作は、同製 品のプロトコールに従った。 37°C ' 5%CO下で 48時間の培養後、 PBSで洗浄、 PBS/
2
5mM EDTAで細胞をデイシュ力も剥離し回収した。回収した細胞は、さらに PBSで洗 浄後、 IxHalt Protease Inhibitor Coctail (PIERCE社製)を含む 2mlの RIPA bufferをカロ えて氷上で 1時間溶解した。 RIPA bufferの組成を以下に示す。
50 mM Tris-HCl(pH7.4),
150 mM NaCl,
1% Triton x- 100,
0.5% sodium deoxycholate,
0.1% SDS
[0126] 溶解後の細胞は、 4°C、 15000 rpm、 5分間の遠心分離した。上清は Microcon YM- 10(MILLIPORE社製)にて L以下まで濃縮し、ウェスタンブロッテイングの試料とし た。一方、沈殿物は、 IxHalt Protease Inhibitor Coctail (PIERCE社製)を含む lmLの RIPA bufferでもう一度洗浄後に、ウェスタンブロッテイングの試料とした。
沈殿には 200 Lの lx変性 bufferを、濃縮した上清には等量の 2x変性 bufferをカロえ 100°Cにて 10分間煮沸した後、それぞれ 5 μ Lを NuPAGE4-12% Bis-Tris Gel (イン ビトロジェン社製)にて電気泳動した。泳動後のゲル力も試料をセミドライ方式のブロッ ティング装置(BIO CRAFT社製、 MODEL BE- 330)にて、 PVDF膜 (MILLIPORE社製 )にトランスファーした。
[0127] 抗体による検出はィムノスターキット (和光純薬社製)を用いた。まず、 1次抗体とし て、 HRP標識抗 His tag抗体 (インビトロジヱン社製)を 5000倍希釈の濃度で用いて、 ィムノスターキットのプロトコールに従ってシグナルを検出した。シグナルの検出後、 P VDF膜を変性溶液(7M 塩酸グァ-ジン、 50mMグリシン、 0.05mM EDTA、 0.1 M 塩ィ匕カリウム、 20 mM 2-メルカプトエタノール)で室温で 1時間振とう処理することによ り、標識抗 His tag抗体を除去した。次に、ピオチン標識した SNK01抗体を用いて、同 様に、シグナルを検出した。結果を図 6に示す。
[0128] モノクローナル抗体 SNK01にお!/、て、アミノ酸配列から予想される分子量(約 20kD) の位置に明瞭なバンドが見られた。 SNK01は、 BST2D (配列番号: 10)と BST2H (配列 番号: 8)の両方に対して強く反応した。 20kD以上の位置にも強 、反応が検出された 。これらの分子量の大きい蛋白質は、糖鎖の修飾を有していると予想された。 BST2D (配列番号: 10)は、上清よりも沈殿で強いシグナルが見られた。 BST2H (配列番号: 8)も沈殿でより強いシグナルが見られたが、上清に対しても抗体の強い反応が検出 された。 BST2D (配列番号: 10)に対する Hisタグ抗体のシグナルが検出されていない のは、 C末端に付加した Hisタグがプロセシングによって除去されてしまったためと考 えられた。
実施例 8
[0129] マウス BST2の新規スプライシングバリアントのクローユング
セルソーター(FACSVantage, Becton Dickinson社製)により高度に分離したマウス I PC力も抽出した RNAより合成した cDNAを铸型として、定法に従って PCRを行い、抗 原遺伝子が IPCに特異的に発現して ヽることを確認した。 PCRに用 ヽたプライマーの 塩基配列は次の通りである。
配列番号: 7用 forward (配列番号: 16):
5 -acatggcgccctctttctatcac-3
reverse (配列番号: 17):
0 -gagcccaggttttgaaggaagtg-3
その結果、 cDNAに該当する増幅断片の他に、短い増幅断片が観察された。本増 幅断片を定法によりクローニングして塩基配列を確認したところ、配列番号: 7に示し
た mBST2Hの第 2ェクソン部分が欠失した塩基配列を有していた。すなわち、配列番 号: 18に示した塩基配列を有する、マウス BST2の新規のスプライシングバリアントで あると考えられた。この遺伝子がコードするアミノ酸配列を配列番号: 19に示した。こ の配列番号: 18記載の遺伝子を、以下 mBST2HSとも称する。
mBST2D、 mBST2H、 mBST2HSのアミノ酸配列のァライメントを図 7(a)に、それぞれ のゲノム構造を図 7(b)に示す。
実施例 9
[0130] マウス BST2発現ベクターの作製
実施例 6により得られた mBST2Dおよび mBST2Hの cDNAを铸型とし、以下の塩基配 列からなるプライマーを使って以下の条件で PCRを行った。
forward primer;
tttttgctagcgacggatcacatggcgccctctttctatcactatctgcccgtgcccatggatgagatgggggggaagca agga (配列番号: 11)および
reverse primer; tttttttctcgagtcctcaaaagagcaggaacagtgac (lc^[J¾ -^": 12)
DNAポリメラーゼ: LA Taq (タカラバイオ社)
[95°Cを 30秒、 55°Cを 30秒、 72°Cを 2分]を 25サイクル
[0131] 増幅されたそれぞれの断片を制限酵素 Nhel及び Xhol (V、ずれもタカラバイオ社製) で処理して切断した後、同様に Nhelと Xholで処理した動物細胞発現用ベクター pcD NA3.1- Zeo(+) (インビトロジェン社)と ligation kit ver.II (タカラバイオ社製)を用いて連 結し、それぞれの発現ベクターとした。 mBST2HSの発現ベクターについては mBST2H の第 2ェクソン部分を PCR法を用いて定法に従って除去することによって作製した。 実施例 10
[0132] ヒトォーソログ cDNAのクローユングと発現ベクターの作製
本発明において同定されたマウス IPC特異抗原 BST2のヒトォーソログを検索したと ころ、ヒト BST2として報告された既知の遺伝子であった(IshikawaJ. et al. Genomics, 1995; 26, 527- ; GenBank Acc#. D28137)。更にマウスで見出された新規スプライシ ングバリアントのヒトォーソログも含めて以下のようにして PCR法によりクローユングし、 3種類の発現ベクターを作製した。
[0133] 下記の実施例に示した方法に従って、 Herpes Simplex virus刺激を行ったヒト IPCを 調製し、 RNAを抽出後、スーパースクリプトファーストストランドシステムキット (インビト ロジェン社)を用いて、ファーストストランド cDNAを合成した。これを铸型に、 hBST2 pr imer F; aaaaaaagctagctggatggcatctacttcgtatg (酉己列番 : 20)および hBST2 primer R ; aaaaaaactcgagacccataacaacaggcagcacat (酉己歹 号: 2丄ノで、 LA i,aq (タカフノ イ ) を酵素にもちいて PCR(95°Cを 30秒、 55°Cを 30秒、 72°Cを 2分、 25 cycle)を行った。 増幅された断片を、制限酵素 Nhelおよび Xholで切断後、 PCDNA3.1- Zeo(+) (インビト ロジェン社)の Nheト Xholサイトに挿入し、ヒト BST2の発現プラスミドとした。
[0134] マウススプライシングバリアントのォーソログである遺伝子に関しては、 IPCの cDNA ライブラリーを铸型として以下の塩基配列からなるプライマーで、 LA Taq (タカラバイ ォ)を酵素に用いて PCR(95°Cを 30秒、 55°Cを 30秒、 72°Cを 2分、 25 cycle)を行った。 cDNAは、 GeneRacer kit (インビトロジェン社)によって合成した。増幅された断片を、 制限酵素 Nhelおよび Xholで切断後、 pcDNA3.1- Zeo(+) (インビトロジェン社)の Nhel- Xholサイトに挿入し、発現プラスミドとした。
mBST2Hォーソログ用のプライマー
hBST2 primer F (配列番号: 20)および
primerhBHR ;ttttttctcgagctagggatgtgggggtgagaggaatgtggcaggtggagggtagcgggggaagg ctatctctgacctcagtcgctccacctctgcagac (酉己列番号: 22)
mBST2HSォーソログ用のプライマー
hBST2 primer F (配列番号: 20)および
pnmerhBi f2HSRl; aaaaaaactcgagcttatggtttaatgtagtgatctctccacagtgtggttgcaggtggc ggcct (配列番号: 23)
[0135] 既知遺伝子であるヒト BST2の塩基配列を配列番号: 1に、アミノ酸配列を配列番号: 2に示した。以下、この配列を有する遺伝子を hBST2Dとも称する。また、上記により得 られた mBST2Hのヒトォーソログ(以下、 hBST2Hとも称する)の塩基配列を配列番号: 3に、アミノ酸配列を配列番号: 4に、また、 mBST2HSのヒトォーソログ(以下、 hBST2H Sとも称する)の塩基配列を配列番号: 5に、アミノ酸配列を配列番号: 6に示した。 hBST2D、 hBST2H、 hBST2HSのアミノ酸配列のァライメントを図 8(a)に、それぞれの
ゲノム構造を図 8(b)に示した。 hBST2Hおよび hBST2HSは新規スプライシングバリアン トであることが示唆された。
実施例 11
[0136] マウス BST2を認識する抗体の作製と評価
1)抗マウス BST2抗体の作製
マウス BST2の 3種類のサブタイプ D、 H、 HSのいずれ力、あるいは複数を認識する 抗体を以下のように作製した。
6cmディッシュ 5枚に、 1枚あたり 4xl05個の COS7細胞を播種し、 20時間培養後に Eff ectene trasfection Reagent(Qiagen社製)を用いて同製品のプロトコールに従い、上記 実施例 10で作製したそれぞれのタイプの cDNAがクローユングされた 3種類の発現べ クタ一を同量(ディッシュ 1枚あたり 1 g)ずつ混合してトランスフエクシヨンした。 24時 間後、新鮮な培地に交換し、更に 24時間後、 PBS/5mM EDTAで細胞を回収し、 PBS で洗浄した後に、 Wister rat (5〜6週令)の両足の foot padにアジュバンド CFAとともに 注入した。
[0137] このような操作を 0、 4、 11日目に行って免疫したラットから、 12日目にリンパ節を採取 して、実施例 1に示したのと同様の方法で、ハイプリドーマを作製した。ハイプリドーマ の培養上清を Cell ELISAによってスクリーニングし、 3種類の発現ベクターをトランスフ ェクシヨンした COS7細胞には反応し、宿主の COS7細胞には反応しないクローンを選 択した。更に FACS解析でも結合活性を確認して細胞のクローユングを行い、最終的 には 5つの陽性クローンを得た。
[0138] 2)マウス IFN産生能への影響
得られたクローンの培養上清を用いて、実施例 5に示した方法に従って、 IFN産生 に与える影響を検討したところ、 V、ずれもコントロール抗体と比較して IPCの IFN産生 を抑制する活性があった。更に、 0.1 μ Μの CpG ODN 1668 (MWG Biotech社)を用い て刺激した際にも、 IFN産生抑制活性を示した(図 9)。このことから、 SNK01以外の m BST2に対する抗体も IPCからの IFN産生を抑制する活性を示すことが確認された。 実施例 12
[0139] ヒト BST2 (hBST2)を認識する抗体の作製と評価
1) ヒト BST2抗体の作製
ヒト BST2の 3種類のサブタイプ D、 H、 HSのいずれ力 あるいは複数を認識する抗体 を実施例 11と同様の方法に従って作製した。実施例 10で作製したそれぞれのタイ プのヒト cDNAがクローユングされた 3種類の発現ベクターを用い、培養上清を FACS 解析することによってハイプリドーマをスクリーニングした。 3D3#7、 3E2#8、 5C11#7、 3 G7#6など、複数のクローンが得られた。得られた複数のクローンの精製抗体を取得し 、更に解析を行った。
[0140] 2)ヒト IFN産生能への影響
健常人より末梢血を採取し、 PBL (末梢血リンパ球)を分離した。 Lineage抗体 (CD3、 CD14、 CD16、 CD19、 CD20、 CD56抗体)にて MACSで種々の細胞を除去した後、 CD 4陽性、 CD123陽性、 Lineage陰性細胞群を IPCとしてセルソーターで分離した。このよ うに取得したヒト IPCを 2xl04cells/wellで 96 wellプレートに播種し、それぞれ 3、 10、 30 μ g/mLの濃度で抗 BST2抗体を添加して 37°Cで 1時間培養した。 1時間培養後に Her pes Simplex virus(20 pfo/cell)を添カ卩し、 37°Cで 24時間培養し、培養上清中の IFN a を ELISA kit(Bender Med System社)により、測定した。その結果、抗ヒト BST2抗体は、 既に報告のある BDCA2抗体 (Miltenyi社)と同様に、ヒ HFN産生抑制活性を示すこと が明らかとなった(図 10)。すなわち、ヒト BST2を認識する抗体は、その分子を発現す る細胞の IFN産生活性に影響を与えることが明ら力となった。
実施例 13
[0141] 抗体の in vivoにおける評価
1)抗体投与マウスより採取した細胞の解析
Balb/cマウスの腹腔内に SNK01、 SNK03、およびコントロールのラット IgGを 1匹あた り 300 gずつ、一日おきに 3回投与し (0.9mg/マウス)、 6日目に脾臓、骨髄を採取し た。更に、骨髄細胞を lxl06/wellにて 96wellプレートに播種し、 CpG (0.5 M)あるい はインフルエンザウイルス PR8によって刺激し、 24時間後の培養上清のサイト力イン値 を ELISAにより測定した(図 11)。
その結果、 SNK01、 SNK03投与群において、 IPCの各種刺激に対する IFNの産生能 が低いことが明らかになった。すなわち、抗体の投与により、 IPCの機能に変化を生じ
、 in vitroでの刺激による IFN産生能が抑制されたことが示された。
[0142] 2) ウィルス感染マウスを用いた解析
抗体を前投与(1.5日前と 0.5日前にそれぞれ一匹あたり 500 g)したマウス (n=3)に 5xl04pfo/mouseの MCMV (マウスサイトメガロウィルス)を腹腔内に投与し、感染を起 した。この感染後、 1.5日後のマウスの血清中の IFN aを ELISAにより測定した。また、 脾臓での IPCの細胞数 (cell population)を B220、 CDllc、 CD1 lbの染色によって解析 した(図 12)。
その結果、 SNK01投与群において、血清中の IFN産生量は抑制されていた。すな わち、本抗体投与により、分子が発現している細胞の機能に変化を生じ、 in vivoにお ける IFN産生能が抑制されたことが示された。
実施例 14
[0143] 自己免疫疾患発症モデルマウスを用いた解析
自己免疫性溶血性貧血を自然発症する NZB(New Zealand Black)マウスと、一見正 常に見える NZW(New Zealand White)マウスの F1マウスは、ループス腎炎を自然発症 する。(Helyer BJ et al. Nature 197;197,1963) これらのマウス(日本 SLC)を用いて、 解析を行った。まず、骨髄、脾臓、末梢血中の IPCの細胞数 (cell population)を FACS 解析によって測定した。その結果、コントロールとして用いた 129マウスと比較して、自 己免疫疾患を発症する NZB、 NZB/W F1マウスでは、 IPCの数が特に骨髄で増加して いることが示された(図 13)。
[0144] また、それぞれのマウス力も採取した骨髄細胞を lxl06/wellにて 96wellプレートに播 種し、 CpG (0.5 M)あるいはインフルエンザウイルス PR8によって刺激し、各種抗体 を添加して、 24時間後の培養上清のサイト力イン値を実施例 5に示したような、 ELISA 法により測定した。その結果、コントロール IgG、あるいは WO2004/013325記載の 2E6 抗体添カ卩時とは異なり、 SNK01抗体、 SNK03抗体添カ卩時には、 IFN産生抑制活性が 見られた(図 14)。このことより、 SNK01、 SNK03抗体はモデルマウス由来 IPCの IFN産 生を抑制することが明らかになった。
実施例 15
[0145] ループス腎炎モデルマウスへの抗体投与試験
NZB/W Flマウス(日本 SLC)を、 SPF環境下で飼育し、 2ヶ月齢から 7ヶ月齢までの 5 ヶ月間、次のように抗体投与を行った。各群 10匹のマウスに、 SNK01、 SNK03、および コントロールのラット IgG (ICN Pharmaceuticals^ )を 1匹あたり 250 gずつ、週 2回腹 腔内に投与した。
[0146] 2週間に 1回、定期的に尿 10 μ Lを濾紙にとり、アルコール固定後、 BPB(Bromophen ol Blue)で染色し、既知濃度の蛋白質(BSA ; bovine serum albmin)溶液をスタンダー ドとして、含まれる蛋白質量を解析した(Knight et al. Clin.Exp.Immunol.28;352-358, 1977) o蛋白質量の指標として、 1 :〜37mg/dl、 2:〜74mg/dl、 3:〜l l lmg/dl、 4:〜3 33mg/dl、 5:〜1000mg/dl、 6:〜3000mg/dlとし、 3: l l lmg/dl以上を陽性と判定して 累積陽性率 (蛋白尿頻度)を算定した。その結果、 SNK01、 SNK03抗体投与群では蛋 白尿の抑制が見られ、腎炎が抑制されたことが示された(図 15)。
5ヶ月齢の各マウスより血清を採取し、血清中の IFN a濃度を実施例 4に示した方法 で、また、 TNF α濃度を ELISA Development kit (Genzyme- Techne社製)により測定し た。その結果、 SNK01、 SNK03抗体投与群では、それぞれのサイト力イン産生量が抑 制されていた(図 16)。
実施例 16
[0147] ループス腎炎モデルマウスへの抗体投与による治療効果の検討
NZB/W F1マウスを飼育し、腎炎が発症する 5ヶ月齢より 8ヶ月齢まで抗体を投与し、 その効果を比較検討した。各群を 6匹とし、以下に示す物質を週 2回腹腔内に投与し た。各群の尿中の蛋白質量を実施例 15と同様に測定し、比較検討した。プレドニン は自己免疫疾患の治療に利用されるステロイドである。塩野義製薬社製のコハク酸 プレドニゾロンナトリウムをプレドニン(以下プレドニンあるいは PDと称する)として用い た。
1) SNK01抗体 250 μ g+プレドニン 0.5mg、
2)コントロールのラット IgG (ICN Pharmaceuticals, Inc. ) 250 iu g +プレドニン 0.5mgゝ
3)プレドニン 0.5mgのみ
治療後 8ヶ月齢のマウスでは、 SNK01抗体とプレドニンを併用した群において、プレ ドニン単独もしくは、プレドニン +コントロール抗体の投与群に比較し、蛋白尿の程度
の抑制が見られ、腎炎発症において治療効果があることが示唆された(図 17)。なお 図において、黒丸は死亡マウスで、死亡直前の蛋白尿の程度を示す。
産業上の利用可能性
[0148] 本発明によって IPCを治療標的とする腎炎の治療剤、並びに治療方法が提供され た。 IPCには他の細胞の数千倍もの IFNを産生する細胞が含まれる。したがって、そ の IFN産生能、および細胞生存 (ある!/、は細胞数)の!、ずれかあるいは両方を抑制す れば、 IFNの産生が効果的に抑制され、腎炎などの症状を緩和することができる。 IPC に作用する本発明の治療剤は、腎炎症状の抑制のみではなぐ腎炎患者の免疫バ ランスの改善を通じてより本質的な治療を実現する。
[0149] 加えて本発明は、腎炎の治療活性の検出方法と、その方法を利用した治療に有用 な候補ィ匕合物のスクリーニング方法を提供した。本発明によって、 IPCの活性の調節 1S 腎炎の治療において重要な課題であることが明らかにされた。したがって、 IPCの 活性を調節する化合物を選択することによって、腎炎の治療に有用な化合物を選択 することができる。すなわち本発明のスクリーニング方法に基づいて選択されたィ匕合 物は、腎炎の治療に有用である。