明 細 書
α _ァミノ- ε -力プロラタタムラセマーゼを用いた、 D及び L-アミノ酸アミド の混合物の製造方法、 D又は L -アミノ酸の製造方法、 D又は L -アミノ酸アミドの製 造方法
技術分野
[0001] 本発明は、光学活性なアミノ酸アミドをラセミ化する酵素を使用することにより、より 光学活性の低下した D-アミノ酸アミド及び L-アミノ酸アミドの混合物を製造する方法 、 D又は L-アミノ酸の製造方法、並びに D又は L-アミノ酸アミドを製造する方法に関す る。
背景技術
[0002] D -アミノ酸又は D -アミノ酸オリゴマーは、医薬品、農薬、その他の化学物質の合成 材料として有用である。 D-アミノ酸を製造する方法としては、 D山-アミノ酸アミドに D- 立体特異的なペプチド加水分解酵素を作用させて D-アミノ酸を製造する方法が知ら れている。この際、 L-アミノ酸アミドは酵素の基質とならないため、反応系に残存する 。ここで、 L-アミノ酸アミドをラセミ化すると、ラセミ化によって生成する D-アミノ酸アミド が酵素によって D-アミノ酸へと変換され、 D-アミノ酸の収率を向上させることができる (特許文献 1)。また、 D-立体特異的なペプチド加水分解酵素に代えて L-立体特異 的なペプチド加水分解酵素を使用すれば、収率よく L-アミノ酸を得ることができる。 従って、 D又は L-アミノ酸の製造において、 D又は L-アミノ酸アミドをラセミ化する酵素 は重要な役割を担っている。し力 ながら、特許文献 1において D又は L-アミノ酸アミ ドをラセミ化する酵素として記載されていた Pseudomonas putida (NCIB 40042)由来の ラセマーゼ及び Rhodococcus sp. (NCIB 12569)由来のラセマーゼを利用した光学活 性な D又は L-アミノ酸の製造は、実質的に実用化されていない。
[0003] また、ァミノ酪酸アミド等のアミノ酸アミドの光学異性体は、医薬品原料等として有用 であることが知られている。アミノ酸アミドの光学異性体の製造法としては、アミノ酸ァ ミドのラセミ体を光学分割する方法が知られているが、 目的とする光学異性体の分離 、精製工程が複雑となるため、収率及びコストの点で改善が求められている。
特許文献 1:国際特許公開公報 WO89/01525
発明の開示
発明が解決しょうとする課題
[0004] 本発明 ίま、 D_アミノ酸了ミド、又 ίま L_アミノ酸了ミド、に作用してし—アミノ酸了ミド、又 ίま D_ アミノ酸アミドを生成する酵素を用いて、より光学活性の低下した D-アミノ酸アミド及 び L-アミノ酸アミドの混合物(以下、 D,L-アミノ酸アミド混合物と称することがある)を 製造する方法、 D又は L-アミノ酸の製造方法、並びに D又は L-アミノ酸アミドを製造 する方法を提供するものである。
課題を解決するための手段
[0005] 本発明者は、環状アミド化合物をラセミ化する公知のひ -ァミノ- ε -カプロラタタム( 以下、 ACLと称することがある)ラセマーゼ力 D-アミノ酸アミドに作用して L -アミノ酸 アミドに変換し、 L-アミノ酸アミドに作用して D-アミノ酸アミドに変換することを見いだ し、 D,L-アミノ酸アミド混合物、光学活性なアミノ酸又は光学活性なアミノ酸アミドを製 造する方法を完成させるに至った。
[0006] すなわち、本発明は、下記の製造方法を提供するものである。
項 1. D-アミノ酸アミド及び L-アミノ酸アミドからなる群から選択される少なくとも 1種の アミノ酸アミドを原料とし、該原料に α -ァミノ- ε -力プロラタタムラセマーゼを作用さ せる、該原料より光学活性の低下した D-アミノ酸アミド及び L-アミノ酸アミドの混合物 の製造方法。
項 2· α _ァミノ- ε -カプロラタタムラセマーゼが、 Achromobacter obae由来である項 1 に記載のアミノ酸アミドの混合物の製造方法。
項 3.アミノ酸アミドカ S、ァラニンアミド、、メチォニンアミド、、ロイシンアミド、、セリンアミド、 フエ二ルァラニンアミド、ノ リンアミド、プロリンアミド、ァスパラギンアミド、システィンァ ミド、、シスチンアミド、、卜レ才ニンアミド、、 2 -ァミノ酪酸アミド、ノノレノ リンアミド、、ノノレ口イシ ンアミド及びトレォニンアミドからなる群から選択される少なくとも 1種のアミドである項 1又は 2に記載のアミノ酸アミドの混合物の製造方法。
項 4.アミノ酸アミドカ S、ァラニンアミド、メチォニンアミド、ロイシンアミド、セリンアミド、 フエ二ルァラニンアミド、ノ リンアミド、 2—ァミノ酪酸アミド、ノノレバリンアミド、ノル口イシ
ンアミド及びトレォニンアミドからなる群から選択される少なくとも 1種のアミドである項 1一 3のいずれかに記載のアミノ酸アミドの混合物の製造方法。
項 5. D-アミノ酸アミド及び L-アミノ酸アミドからなる群から選択される少なくとも 1種の アミノ酸アミドに、 ひ -アミノ- ε -力プロラタタムラセマーゼ及び D又は L-アミノ酸アミド に選択的に作用して D又は L-アミノ酸に変換する酵素を作用させる、 D又は L-ァミノ 酸の製造方法。
項 6. ひ -アミノ- ε -カプロラタタムラセマーゼが、 Achromobacter obae由来である項 5 に記載の D又は L-アミノ酸の製造方法。
項 7.アミノ酸アミドカ S、ァラニンアミド、、メチォニンアミド、、ロイシンアミド、、セリンアミド、 フエ二ルァラニンアミド、ノ リンアミド、プロリンアミド、ァスパラギンアミド、システィンァ ミド、、シスチンアミド、、卜レ才ニンアミド、、 2 -ァミノ酪酸アミド、ノノレノ リンアミド、、ノノレ口イシ ンアミド及びトレォニンアミドからなる群から選択される少なくとも 1種のアミドである項 5又は 6に記載の D又は L-アミノ酸の製造方法。
項 8.アミノ酸アミド力 ァラニンアミド、メチォニンアミド、ロイシンアミド、セリンアミド、 フエ二ルァラニンアミド、 ノくリンアミド、 2—ァミノ酪酸アミド、ノノレバリンアミド、ノル口イシ ンアミド及びトレォニンアミドからなる群から選択される少なくとも 1種のアミドである項 5— 7のいずれかに記載の D又は L-アミノ酸の製造方法。
項 9. D—アミノ酸アミド及び L—アミノ酸アミドの昆合物に、 α—ァミノ—ε—力プロラタタム ラセマーゼ及び D又はし-アミノ酸アミドに選択的に作用して D又は L-アミノ酸に変換 する酵素を作用させて D又は L-アミノ酸を生成させ、生成した D又は L-アミノ酸をアミ ド化して D又は L-アミノ酸アミドを製造する方法。
項 10. ひ -アミノ- ε -カプロラタタムラセマーゼが、 Achromobacter obae由来である項 9に記載の D又は L-アミノ酸アミドの製造方法。
項 11.アミノ酸アミドカ S、ァラニンアミド、メチォニンアミド、ロイシンアミド、セリンアミド、 フエ二ルァラニンアミド、ノ リンアミド、プロリンアミド、ァスパラギンアミド、システィンァ ミド、、シスチンアミド、、卜レ才ニンアミド、、 2 -ァミノ酪酸アミド、ノノレノ リンアミド、、ノノレ口イシ ンアミド及びトレォニンアミドからなる群から選択される少なくとも 1種のアミドである項 9又は 10に記載の D又は L -アミノ酸アミドの製造方法。
項 12·アミノ酸アミド力 ァラニンアミド、メチォニンアミド、ロイシンアミド、セリンアミド、 フエ二ルァラニンアミド、ノくリンアミド、 2—ァミノ酪酸アミド、ノノレバリンアミド、ノル口イシ ンアミド及びトレォニンアミドからなる群から選択される少なくとも 1種のアミドである項 9一 1 1のいずれかに記載の D又は L -アミノ酸アミドの製造方法。
[0007] ( 1 )原料より光学活性の低下した D -アミノ酸アミド及び L-アミノ酸アミドの混合物の 製造方法
本発明の製造方法は、 D -アミノ酸アミド及び L-アミノ酸アミドからなる群から選択さ れる少なくとも 1種のアミノ酸アミドを原料とし、該原料にひ-アミノ- ε -カプロラクタムラ セマーゼを作用させて、該原料より光学活性の低下した D -アミノ酸アミド及び L -ァミノ 酸アミドの混合物を製造することを特徴とする。
[0008] D -アミノ酸アミド及び L-アミノ酸アミドからなる群から選択される少なくとも 1種のアミ ノ酸アミドに ACLラセマーゼを作用させると時間の経過に伴って、反応系に存在する アミノ酸アミドの光学活性が低下し、最終的には、 D,L-アミノ酸アミドラセミ体(D体と L 体の比が 1: 1の混合物)が生成する。なお、反応時間等の条件を適宜設定すること により、任意の D体と L体の比を有する D,L-アミノ酸アミド混合物を製造することが可 能である。
[0009] 従って、「原料より光学活性の低下した D-アミノ酸アミド及び L-アミノ酸アミドの混合 物」、とは、 D—アミノ酸アミド及び L_アミノ酸アミドの等量昆合物(アミノ酸アミドラセミ体 )或レヽ ίま原料である D—アミノ酸アミド、 L_アミノ酸アミド又 ίま D,L_アミノ酸アミド混合物 より光学活性が該等量混合物に近い D,L-アミノ酸アミド混合物を包含する。
[0010] 例えば、 D -アミノ酸アミド: L-アミノ酸アミドが 90 : 10の混合物に ACLラセマーゼを作 用させると、その比が 90 : 10から反応時間の経過に伴って 50 : 50にまで変化するが、 途中で反応を止めてその比が 90: 10から 50: 50までの間の任意の比(例えば 80: 20、 70 : 30、 60 : 40など。)の D,L-アミノ酸アミド混合物を得ることも本発明の製造方法に包 含される。
[0011] 本発明において使用される ACLラセマーゼとしては、例えば、酵素分類において EC 5.1.1.15が付与されている酵素を使用することができる。 ACLラセマーゼは、 Achromobacter obae、 Pseudomonas sp. (CCM 3443)等を培養することにより単離され
ており、いずれの菌由来の ACLラセマーゼも本発明において使用できる。なお、 Achromobacter obae (FERM_P776)力 ACLラセマーゼを得る方法は、「S. A.
Ahmed, et al., Agric. Biol. Chem. , 47 (8), 1887-1893 (1983)」に示されている。
[0012] また、 Achromobacter obae由来 ACLラセマーゼの全遺伝子配列が報告されており 、例えば、特開昭 63-129984の第 2図において、全 DNA配列(配列番号 1)及び全ァ ミノ酸配列(配列番号 2)が記載されてレ、る。
[0013] さらに、 Achromobacter obae由来 ACLラセマーゼとアミノ酸配列の一次構造が類似 である、 Sinorhizobium meliloti (Rhizobium meliloti) 1021由来の遺伝子(配列番号 49 )を発現させたタンパク質(配列番号 50)、 Pyrococcus iuriosus DSM 3638由来の遺 伝子(配列番号 51)を発現させたタンパク質(配列番号 52)、 Pyrococcus horikoshii 〇T3由来の遺伝子(配列番号 53)を発現させたタンパク質 (配列番号 54)、
Pyrococcus abyssi由来の遺伝子(配列番号 55)を発現させたタンパク質(配列番号 5 6; Pyndoxal phosphate-dependent aminotransferase)及び Thermococcus kodakaraensis由来の遺伝子(配列番号 57)を発現させたタンパク質(配列番号 58 ; aminotransferase, class III)も、本発明の製造方法において ACLラセマーゼとして使 用しうる。
[0014] 一般に、天然に存在するタンパク質の中には、それをコードする遺伝子の多形性や 変異のために、あるいはタンパク質生成後の修飾反応などによって、アミノ酸配列中 でアミノ酸残基の欠失、付加、置換などの変異が生じる場合があるが、それにも関わ らずそのような変異が生じないタンパク質と同じ生理学的活性を有するものがある。あ るいはまた、遺伝子組み換え工学の技術を使用して人工的に遺伝子に変異を施す ことも可能であり、この場合にも該タンパク質の生理学的活性に実質的に変化を生じ させることなく変異させることが可能である。
[0015] また、本発明において ACLラセマーゼとして使用されるタンパク質は、天然のタンパ ク質でも組み換えタンパク質でも、あるいは化学合成タンパク質でもよぐその起源は 特に限定されない。天然のタンパク質を得たい場合には、 目的タンパク質を発現して レ、る組織または培養細胞の培養物を出発原料として、塩析、ァフィ二ティークロマトグ ラフィー、イオン交換クロマトグラフィーまたはゲル濾過などのタンパク質の精製のた
めの公知の方法を適宜組み合わせて精製することが可能である。例えば、ァフィニテ ィークロマトグラフィーを利用する場合には、本発明のタンパク質に対する抗体を結 合させた担体を用いることにより目的タンパク質を精製することができる。
[0016] また、組換えタンパク質を得たい場合には、上記のように目的タンパク質をコードす る本発明の遺伝子を好適な発現ベクター中にクローニングして得られた組換え発現 ベクターを宿主 (大腸菌、酵母など)に形質転換し、形質転換体を好適な条件下で培 養することにより目的とするタンパク質を産生させることができる。 目的タンパク質の単 離のためには、 目的タンパク質を培養上清中に分泌させることが一般には好ましぐ これは、組換えベクター/宿主の組み合わせや培養条件などを適宜選択することに よって行うことができる。また、所望のアミノ酸配列を有するタンパク質を化学合成的 に製造することも当業者ならば適宜行うことができる。
[0017] さらに、アミノ酸アミドラセマーゼ活性を保持する限り、上記のタンパク質に薬学的に 許容しうる適当な修飾をすることが可能である。すなわち、配列番号 2、 50, 52又は 5 4で表されるアミノ酸配列のタンパク質および部分配列などを含有するタンパク質は C 末端が通常カルボキシル基(-COOH)またはカルボキシレート (-COO-)である力 C 末端がアミド(-CONH )またはエステル (-COOR)であってもよレ、。エステルの Rとして
2
は、例えばメチル、ェチル、 n プロピル、イソプロピルもしくは n ブチルなどの C ァ
1-6 ノレキノレ基、シクロペンチル、シクロへキシルなどの C シクロアルキル基、フエニル、
3-8
ひ ナフチルなどの C ァリール基、ベンジル、フエネチル、ベンズヒドリルなどのフ
6-12
工ニルー C アルキル、もしくは α ナフチルメチルなどの α ナフチルー C アルキ
1-2 1-2 ノレなどの C ァラルキル基のほ力、経口用エステルとして汎用されるビバロイルォキ
7-14
シメチルエステルなどが挙げられる。本発明のタンパク質の塩としては、薬学的に許 容される塩基 (例えばアルカリ金属など)や酸 (有機酸、無機酸)との塩が用いられる が、とりわけ薬学的に許容される酸付加塩が好ましい。このような塩としては例えば無 機酸 (例えば、塩酸、リン酸、臭化水素酸、硫酸)との塩、あるいは有機酸 (例えば、 酢酸、ギ酸、プロピオン酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、酒石酸、クェン酸、リン ゴ酸、シユウ酸、安息香酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸)との塩などが用い られる。
したがって、配列番号 2、 50, 52又は 54のアミノ酸配列をこれらの天然又は人工的 な変異で変異させたアミノ酸配列を有するタンパク質もアミノ酸アミドラセマーゼ活性 を有する限り、本発明の製造法において使用できる。
[0018] したがって、本発明において使用される ACLラセマーゼとしては、(1)上記の配列番 号 2, 50, 52, 54, 56又は 58で示されたアミノ酸配列からなるタンパク質、(2)該アミ ノ酸配列において、 1若しくは複数個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されたアミノ酸 配列からなり、かつアミノ酸アミドラセマーゼ活性を有するタンパク質、又は (3)該ァミノ 酸配列と 70%以上、好ましくは 85%以上、より好ましくは 90%以上の相同性を有す るアミノ酸配列からなり、かつアミノ酸アミドラセマーゼ活性を有するタンパク質も包含 される。
[0019] 従って、本発明において使用される ACLラセマーゼとしては、要求される酵素活性 を有するものであれば特に制限なく使用でき、例えば、微生物培養物から精製して 得られた酵素、微生物培養物の酵素活性を有する粗精製物、遺伝子工学的に製造 された酵素などが使用できる。微生物培養物としては、培養液、培養菌体などが挙げ られ、培養菌体が好ましい。遺伝子工学的な製造では、上記のアミノ酸配列に基づき 化学合成によってペプチドを調製する方法、あるいは上記の DNA配列を用いて組 換え DNA技術で生産する方法などにより ACLラセマーゼを取得することもできる。例 えば、組換え DNA技術によって ACLラセマーゼを取得する場合には、この配列又は その断片を有するベクターからインビトロ転写によって RNAを調製し、これを铸型とし てインビトロ翻訳を行なうことによりインビトロで発現できる。また翻訳領域を公知の方 法により適当な発現ベクターに組換えてやれば、大腸菌、枯草菌、酵母、動物細胞 等で、 cDNAがコードする ACLラセマーゼを大量に発現させることができる。
[0020] ACLラセマーゼを大腸菌などの微生物で発現させる場合には、微生物中で複製可 能なオリジン、プロモーター、リボソーム結合部位、 cDNAクローニング部位、ターミネ 一ター等を有する発現ベクターに、この発明の cDNAの翻訳領域を揷入結合して組 換えた発現ベクターを作成し、この発現ベクターで宿主細胞を形質転換したのち、得 られた形質転換体を培養してやれば、 cDNAがコードしている ACLラセマーゼを微 生物内で大量生産することができる。あるいは、他の蛋白質との融合蛋白質として発
現させることもできる。得られた融合蛋白質を適当なプロテアーゼで切断することによ つて、 cDNAがコードするタンパク質部分のみを取得することもできる。
[0021] 本発明の D,L-アミノ酸アミド混合物の製造方法において、原料は、 D-アミノ酸アミド 、 L-アミノ酸アミドのいずれ力、を含み、 D-アミノ酸アミドと L-アミノ酸アミドの混合物で あっても良い。しかし、原料が D -アミノ酸アミドと L-アミノ酸アミドの等量混合物(ラセミ 体)である場合には、 ACLラセマーゼを作用させても D -アミノ酸アミドと L-アミノ酸アミ ドの含有割合が変化することはないため、原料からのぞかれる。好ましい D,L -ァミノ 酸アミド混合物は、 D-アミノ酸アミドのモル数/ (D -アミノ酸アミドのモル数 + L-ァミノ 酸アミドのモル数)が 0.001 0.499及び 0.501 0.999であり、より好ましいのは、 0.001 一 0.49及び 0.51 0.999であり、よりいつそう好ましいのは 0.001— 0.48及び 0.52 0.999である。アミノ酸アミドとしては、光学活性体の存在する公知のアミノ酸のアミド が包含され、例えば、ァラニンアミド、メチォニンアミド、ロイシンアミド、セリンアミド、フ ェニルァラニンアミド、ノくリンアミド、プロリンアミド、ァスパラギンアミド、システィンアミド 、シスチンアミド、トレオニンアミド、イソロイシンアミド、トリプトファンアミド、グルタミンァ ミド、チロシンアミド、リシンアミド、アルギニンアミド、ヒスチジンアミド、ァスパラギン酸 アミド、ク、'ノレタミン酸アミド、、 2_了ミノ酷酸アミド、、ノノレ/ リンアミド、、ノノレロイシン了ミド、ぺ ニシラミンアミドなどであり、 D体、 L体を問わず、また 1種単独でも 2種以上を組み合 わせても使用できる。好ましくは、ァラニンアミド、メチォニンアミド、ロイシンアミド、セリ ンアミド、フエニノレアラニンアミド、 ノくリンアミド、プロリンアミド、ァスハ。ラギンアミド、シス ティンアミド、シスチンアミド、トレ才ニンアミド、 2_アミノ酷酸アミド、ノノレ/ リンアミド、ノ ノレロイシンアミド、ぺニシラミンアミドであり、より好ましくは、ァラニンアミド、メチォニン アミド、ロイシンアミド、セリンアミド、フエ二ルァラニンアミド、ノ リンアミド、 2-ァミノ酪酸 アミド、ノノレバリンアミド、ノノレロイシンアミド、トレオニンアミド、ぺニシラミンアミドであり 、よりいつそう好ましくは、ァラニンアミド、メチォニンアミド、ロイシンアミド、セリンアミド 、フエ二ルァラニンアミド、バリンアミド、 2—ァミノ酪酸アミド、トレオニンアミド、ぺニシラ ミンアミドである。
[0022] 原料が D,L -アミノ酸アミド混合物の場合、原料中の D体の含有割合及び L体の含有 割合は特に制限されなレ、。原料のアミノ酸アミドは、通常 1一 500g/liter程度の濃度で
使用する。低濃度で使用する場合には遊離塩基の形で使用ことができるが、比較的 高濃度で使用する場合には例えば、塩酸塩やトシノレ酸塩等の形で使用することが、 反応系の pHを考慮すると、好ましい。
[0023] 反応媒体としては、水、又は、アセトン、ァセトニトリル、 DMSO、 DMF等を含む水 性液、例えば、水性緩衝液を用いることができる。緩衝液としては、例えば、トリス一 H C1緩衝液、リン酸カリウム緩衝液等を使用することができる。また、ケトン、エーテル、 炭化水素、芳香族ォレフイン、ハロゲン化炭化水素、有機酸エステル、アルコール、 二トリル等の水と混合しない有機溶媒をも用いることもできる。例えば、メチルブチル ケトン、イソプロピルエーテル、石油エーテル、へキサン、ヘプタン、シクロへキサン、 四塩化炭素、クロロフオルム、二塩化メチレン、トリクロロェタン、ベンゼン、トルエン、 キシレン、酢酸ェチル、酢酸ブチル、ブタノール、へキサノール、ォクタノール等を使 用すること力 Sできる。また、それらの有機溶媒の混合物を使うこともできるし、水飽和の 有機溶媒、水性緩衝液との二層系あるいは、ェマルジヨンとして反応させることもでき る。好ましいのは、水性液であり、より好ましいのは、水性緩衝液である。
[0024] 上記の原料に対する ACLラセマーゼの使用量は特に制限されなレ、が、 0.01— lOOOU/ml程度、好ましくは 0.05— 100U/mlである。なお、この場合の ACLラセマーゼ の 1ユニットは、 1分間に 1マイクロモルのアミノ酸アミドの生成を触媒する酵素量とする 。 ACLラセマーゼを作用させる際、反応温度は通常、 20— 70°C程度、好ましくは 25— 50°C程度であり、 pHは、通常 4一 11程度、好ましくは pH6— 10程度である。
[0025] また、反応時間は、原料であるアミノ酸アミドの種類や量、酵素量、反応温度、生成 物における所望の D,L混合割合などに応じて適宜設定可能である。通常 0.2時間一 10日程度、好ましくは 0.5時間一 2日程度である。反応時間を長くすればアミノ酸アミド ラセミ体に近い D,L-アミノ酸混合物を得ることができる。
[0026] 製造の態様は特に制限されず、例えば、原料と ACLラセマーゼを一つの容器に仕 込んでバッチ式で製造することもできるし、 ACLラセマーゼをカラムに固定し、原料を 含有する溶液をそのカラムに通液することにより製造することもできる。酵素反応後、 生成したアミノ酸は任意に常法によって精製採取することができる。例えば、反応終 了後に、菌体ゃ固定化した酵素剤を、タンパク質変性剤の添加後、遠心分離する方
法、 His-Tagなどを融合させた酵素を使用している場合であれば、 Niカラムなどを用 レ、て選択的に除去する方法により除去し、除去後の液中に含まれるアミノ酸を溶媒 抽出やイオン交換樹脂等により精製し、結晶化する。
[0027] 使用する酵素の態様は、細胞培養液、培養上清液、培養液から分離した菌体の処 理物、これ力 得た酵素剤、さらに、これらの酵素又は、酵素含有物を常法によって 固定化したもの等、酵素活性を有するものなどが使用できる。工業的な実施にあたつ ては、生菌体、固定化菌体等を用いるのが有利である。固定化担体は、ポリアクリノレ アミド、光架橋性樹脂、ポリウレタン樹脂、カッパカラギーナン、アルギン酸ナトリウム、 イオン交換樹脂、半透膜等を用いることができる。酵素を固定化するには、例えば担 体に酵素液を吸収させる方法、酵素液と担体とを混合し、酵素を吸着固定する方法
、酵素を包括固定化する方法、酵素を架橋剤で架橋する方法等を採用することがで きる。
[0028] このようにして、所望の D山-アミノ酸アミド混合物を得ることができる。得られた D,L- アミノ酸アミド混合物は、原料であるアミノ酸アミドよりも光学活性の点で低いものとな る。製造される D,L-アミノ酸アミド混合物のアミノ酸アミドの種類については上記の原 料のアミノ酸アミドと同様である。また、製造される D,L-アミノ酸アミド混合物は D体と L 体の含有量比が 1: 1のものであってもよい。
[0029] 得られた D,L-アミノ酸アミド混合物は、 D又は L-アミノ酸の製造原料としても利用で きる。例えば、 D山-アミノ酸アミド混合物に、 D又は L-アミノ酸アミドに立体特異的に作 用して D又は L-アミノ酸に変換する酵素を作用させる方法等によって D又は L-ァミノ 酸を製造することができる。
[0030] (2) D又は L -アミノ酸の製造方法
本発明の D又は L -アミノ酸の製造方法は、 D-アミノ酸アミド及び L -アミノ酸アミドカ、ら なる群から選択される少なくとも 1種のアミノ酸アミドに、 ひ-アミノ- ε -カプロラクタムラ セマーゼ及び D又は L -アミノ酸アミドに選択的に作用して D又は L -アミノ酸に変換す る酵素(以下、アミノ酸に変換する酵素と称することがある)を作用させる、ことを特徴 とする。
[0031] この製造方法により D -アミノ酸を得る場合、 D-アミノ酸アミド、 L-アミノ酸アミド又は
D—アミノ酸アミド及び L-アミノ酸アミドの昆合物に、 α—ァミノ— ε—力プロラタタムラセマ ーゼ及び D-アミノ酸アミドに選択的に作用して D-アミノ酸に変換する酵素を作用させ る。反応系中の D-アミノ酸アミドは D-アミノ酸に変換する酵素によって D-アミノ酸に変 換され、反応系中の L -アミノ酸アミドは ACLラセマーゼによって D -アミノ酸アミドに変 換された後、該 D-アミノ酸アミドが、 D-アミノ酸に変換する酵素によって、 D -アミノ酸 に変換されて D-アミノ酸が製造される。
[0032] また、この製造方法により L-アミノ酸を得る場合、 D-アミノ酸アミド、 L -アミノ酸アミド 、又は D-アミノ酸アミド及び L -アミノ酸アミドの混合物に、 ACLラセマーゼ及び L-アミ ノ酸アミドに選択的に作用して L-アミノ酸に変換する酵素を作用させる。反応系中の L-アミノ酸アミドは L-アミノ酸に変換する酵素によって L -アミノ酸に変換され、反応系 中の D-アミノ酸アミドは ACLラセマーゼによって L-アミノ酸アミドに変換された後、該 L-アミノ酸アミドが、 L-アミノ酸に変換する酵素によって、 L-アミノ酸に変換されて L- アミノ酸が製造される。
[0033] この製造方法においては、 D又は L-アミノ酸に変換する酵素の基質となるアミノ酸ァ ミドは減少するが、 D又は L-アミノ酸に変換する酵素の基質とならなレ、アミノ酸アミドが ACLラセマーゼの作用によって変換されて、 D又は L-アミノ酸に変換する酵素の基質 となるアミノ酸アミドが生成する。このアミノ酸アミドを D又は L-アミノ酸に変換する酵素 力 ¾又は L-アミノ酸に変換するため、 D又は L-アミノ酸に変換する酵素の基質となる アミノ酸アミドだけでなく、 D又は L-アミノ酸に変換する酵素の基質とならないアミノ酸 アミドも原料として有効に利用できる。
[0034] 本製造方法にぉレ、ては、 D—アミノ酸アミド、 L—アミノ酸アミド、 D—アミノ酸アミドとし—ァ ミノ酸アミドの混合物(D,L-アミノ酸アミド)が原料として使用され、その態様は次に記 載の点を除き、上記(1)の場合と同様である。なお、 D -アミノ酸アミドと L-アミノ酸アミ ドの混合物(D,L -アミノ酸アミド)については、上記(1)の場合と異なり、 D-アミノ酸アミ ドと L -アミノ酸アミドの等量混合物(ラセミ体)も使用できるため、本製造方法において D,L-アミノ酸アミド混合物は D-アミノ酸アミドと L -アミノ酸アミドの等量混合物(ラセミ 体)も包含する。また、本製造方法において使用される ACLラセマーゼの態様につい ても上記(1)の場合と同様である。
[0035] D又は L-アミノ酸アミドに選択的に作用して D又は L-アミノ酸に変換する酵素は、 D_ アミノ酸アミドに選択的に作用して D-アミノ酸を生成する酵素、 L-アミノ酸アミドに選 択的に作用して L-アミノ酸を生成する酵素、であれば特に制限なく使用されうる。
[0036] D又は L -アミノ酸アミドに選択的に作用して D又は L -アミノ酸に変換する酵素は、通 常、アミノ酸アミダーゼ、アミノぺプチダーゼ、プロテアーゼ等の名称が付けられてい る。例えば、 D -アミノぺプチダーゼ、アルカリ D-ぺプチダーゼ、 D -ァラニンアミダーゼ 、 L -アミノぺプチダーゼと呼ばれる酵素などが挙げられる。また、一般的にアミダーゼ 、ぺプチダーゼ、プロテアーゼ、プロティナーゼ、立体特異的アミダーゼ、ェナンチォ マー特異的アミダーゼと呼ばれるものでもよい。これらの酵素は、要求される酵素活 性を有するものであれば特に制限なく使用でき、例えば、微生物培養物から精製し て得られた酵素、微生物培養物の酵素活性を有する粗精製物、遺伝子工学的に製 造された酵素などが使用できる。ここで、遺伝子工学的な製造法は、上記の ACLラセ マーゼの遺伝子工学的製造法と同様である。
[0037] より具体的には、 L-アミノ酸アミダーゼ、 D-アミノぺプチダーゼ、 L-アミノぺプチダー ゼ、 Comamonas acidovorans KPO_2771_4由来の(S)_及び (R)_ェナンチォマー特 異的アミダーゼ(Hayashi, Τ·ら, J. Ferment. Bioeng., 83(1997), 139-145)、
Pseudomonas putida ATCC 12633由来の(S)_立体特異的アミダーゼ(Hermes, H.F.M.ら, Appl. Environ. Microbiol. , 59(1993), 4330—4334)、 Ochrobactrum anthropi NCIMB 40321由来の(S)_立体特異的アミダーゼ(van den Tweelら, Appl. Microbiol. Biotechnol., 39(1993), 296-300)、 Mycobacterium neoaurum ATCC 25795由来の(S)_立体特異的アミノ酸アミダーゼ(Hermesら, Appl. Environ.
Microbiol., 60(1994), 153-159)、 Pseudomonas azotoformans IAM 1603由来の (S)-立 体特異的アミノ酸アミダーゼ(米田英伸ら、 Pseudomonas azotoformans由来の (S)体 特異的 N-tert-プチルビペラジンカルボキサミド加水分解酵素、 日本農芸化学会 2002年度大会、 2002.3.26 (仙台市))、 Ochrobactrum anthropi C1-38由来の (R) -立 体特異的アミノ酸アミダーゼ(Asanoら, J. Biol. Chem., 264(1989), 14233-14239及び Asanoら, Biochemistry, 31(1992), 2316—2328)、 Ochrobactrum anthropi SV3 ( Komedaら, Eur. J. Biochem., 267 (2000), 2028-2035)由来の (R)_立体特異的ァミノ
酸アミダーゼ、 Arthrobacter sp. NJ-26由来の (R)_立体特異的アミノ酸アミダーゼ( Ozakiら, Biosci. Biotech. Biochem" 56(1992), 1980—1984)、 Brevibacillus borstelensis BCS-1由来の (R)_立体特異的アミノ酸アミダーゼ(Baekら, Appl.
Environ. Microbiol , 69(2003), 980-986)、 Pseudomonas sp.由来の (R)_立体特異的 アミノ酸アミダーゼ(米田英伸ら、 Pseudomonas sp.由来の (R)_体特異的ピペラジン -2-tert-ブチルカルボキサミド加水分解酵素、 日本生物工学会平成 14年度大会、 2002.10.29 (大阪市))、 Pseudomonas aeruginosa PAOl由来の (R)_立体特異的ァミノ 酸アミダーゼ(米田英伸ら、 Pseudomonas aeruginosa PAOl由来のアミダーゼ相同タ ンパク質 PA3598の諸性質、 日本農芸化学会 2003年度大会、 2003.4.1 (藤沢巿))な どを挙げること力 Sできる。
[0038] 原料が D,L -アミノ酸アミド混合物の場合、原料中の D体の含有割合及び L体の含有 割合は特に制限されない。上記の原料に対する ACLラセマーゼの使用量は、 0.01— lOOOU/ml程度、好ましくは 0.5— lOOU/mlであり、アミノ酸に変換する酵素の使用量は 0.01— 1000U/ml、好ましくは 0.5— 100U/mlである。なおアミノ酸に変換する酵素の 1 ユニットは、 1分間に 1マイクロモルのアミノ酸アミドの加水分解を触媒する酵素量とす る。上記の ACLラセマーゼ及びアミノ酸アミダーゼを作用させる際、反応温度は通常 、 20— 70°C程度、好ましくは 25— 50°C程度であり、 pHは通常 4一 11程度、好ましくは 6 一 10程度である。
また、反応時間は、原料であるアミノ酸アミドの種類や量、酵素量、反応温度、生成 物における所望の D,L混合割合などに応じて適宜設定可能である。通常 0.2時間一 10日程度、好ましくは 0.5時間一 2日程度である。
[0039] 製造の態様は特に制限されず、例えば、原料と ACLラセマーゼ及びアミノ酸に変換 する酵素を一つの容器に仕込んでバッチ式で製造することもできるし、 ACLラセマー ゼをカラムに固定し、原料を含有する溶液をそのカラムに通液し、次いでこの液をアミ ノ酸に変換する酵素と反応させることにより製造することもできる。酵素反応後、生成 したアミノ酸は (1)の場合と同様にして精製できる。また、反応に使用される酵素の態 様も (1)と同様である。
[0040] このようにして製造された D又は L-アミノ酸としては、光学活性体の存在する公知の
アミノ酸が包含され、例えば、ァラニン、メチォニン、ロイシン、セリン、フエ二ルァラ二 ン、バリン、プロリン、ァスパラギン、システィン、シスチン、トレオニン、イソロイシン、ト リプトフアン、グルタミン、チロシン、リシン、アルギニン、ヒスチジン、ァスパラギン酸、 グノレタミン酸、 2-ァミノ酪酸、ノルパリン、ノルロイシン、ぺニシラミンなどであり、 1種単 独でも 2種以上を組み合わせても使用できる。好ましくは、ァラニン、メチォニン、ロイ シン、セリン、フエニノレアラニン、バリン、プロリン、ァスパラギン、システィン、シスチン 、トレオニン、 2-ァミノ酪酸、ノルパリン、ノルロイシン、ぺニシラミンであり、より好ましく は、ァラニン、メチォニン、ロイシン、セリン、フエ二ルァラニン、バリン、 2 -ァミノ酪酸、 ノルパリン、ノノレロイシン、トレオニン、ぺニシラミンである。よりいつそう好ましくは、ァラ ニン、メチォニン、ロイシン、セリン、フエ二ルァラニン、バリン、 2 -ァミノ酪酸、トレオニ ン、ぺニシラミンである。
[0041] (3) D又は L -アミノ酸アミドの製造方法
本発明の D又は L-アミノ酸アミドの製造方法は、 D-アミノ酸アミド及び L-アミノ酸アミ ドの混合物に、 α -ァミノ- ε -力プロラタタムラセマーゼ及び D又は L-アミノ酸アミドに 選択的に作用して D又は L-アミノ酸に変換する酵素を作用させて D又は L-アミノ酸を 生成させ、生成した D又は L-アミノ酸をアミド化することを特徴とする。
[0042] D,L-アミノ酸アミドの混合物から D又は L-アミノ酸アミドを分離する方法としては、光 学活性な塩基を用いて、ジァステレオマーを生成し、物理化学的性質の差異により 分離する方法や、酵素を用いて立体選択的に加水分解し光学活性体を得る方法が 知られているが、前者は分離が困難であり、後者は収率が悪いため実用的ではなか つた。しかし、本製造方法では、 D,L-アミノ酸アミドの混合物に ACLラセマーゼとアミ ノ酸に変換する酵素作用させ、反応液から D又は L-アミノ酸を分離する。ここまでは (2)と同様にして行うことができる。得られた D又は L -アミノ酸に、公知のアミノ酸をアミ ド化する方法を適用することによって、 D又は L-アミノ酸アミドを分離することができる
[0043] D又は L -アミノ酸をアミド化する方法は、従来公知の方法を広く使用できる。例えば 、アミノ酸をアミノ酸エステノレにし、アンモニアガスを吹き込む方法などである。
図面の簡単な説明
[0044] [図 1]実施例 2における、 ACLラセマーゼによる L-2-ァミノ酪酸アミドのラセミ化を示す グラフである。
[図 2]実施例 2における、 ACLラセマーゼによる L-ァラニンアミドのラセミ化を示すダラ フである。
[図 3]実施例 3における、 D-フエ二ルァラニンアミドのラセミィ匕を示すグラフである。
[図 4]実施例 3における、 L-フエ二ルァラニンアミドのラセミ化を示すグラフである。
[図 5]実施例 4における、 L -ァラニンアミドを原料とした D -ァラニンの合成を示すダラ フである。
発明を実施するための最良の形態
[0045] 以下、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されない。
実施例
[0046] 材料
ここでは、以下の材料を使用した。
組み換えプラスミドの宿主: E. coli JM109
クローニングベクター: pUC18 (宝酒造社製)
培養培地:アンピシリン添カロ LB培地(lOg/1 Bacto tryptone)、 5g/lBacto酵素エキス、 lOg/1 NaCl、 80 μ g/mlアンピシリン、 pH 7.2)
オリゴヌクレオチド:北海道システムサイエンス社製
DNAポリメラーゼ: Takara Ex Taq DNAポリメラーゼ(宝酒造社製)
制限酵素: EcoRI (New England Biolabs社製)、 Sphl (東洋紡社製)
ホスファターゼ:シュリンプアルカリホスファターゼ(ベーリンガーマンハイム社) リゲーシヨンキット ver. 2 (宝酒造社製)
クラウンパック CR(+)カラム (ダイセル化学社製)
DEAE-Toyopearl 650M及び Butyle-Toyopearl 650M (トーソ一社製)
Superdex 200 HR 10/30及び Mono Q HR 5/5 (Pharmacia社製)
Bacto酵素エキス及び Bacto tryptone (Difco社製)
D,L_ a -ァミノ- ε -カプロラタタムラセマーゼ (D,L_ACL) (東京化成社製)
L-Aし L : Brennerりの方法 (M. Brenner, H. R. Rickenbacher, Helv. し him. Acta.
41(1958) 181-188)に従って、(S)_ (-) _L_ピロリドンカルボン酸を用いる光学分割によ り、 D,L-ACL力ら調製した。
[0047] 製造例 1
< ひ-アミノ- ε -カプロラタタムラセマーゼの遺伝子工学的製造 >
1.プライマー
配列番号 2に示した ACLラセマーゼのアミノ酸配列を含むようにプライマーを 46個 設計した。これら 46個のプライマーを A1プライマーカも Α46プライマーと称し、各々の ヌクレオチド配列を配列番号 3 48に示した。設計方法は、各々のプライマーが約 50merで、そのうち 20merずつ重なるように設計した(各々のプライマーの 5 '側は、 G,Cにした)。 A1プライマーには、開始コドン(atg)、ストップコドン (tag)、リボソーム結 合サイト(aggagg)、 EcoRI認識サイト(gaattc)を設けた。 A45プライマーにはストップコ ドン (taa)、 A46プライマーには、 Sphl認識サイト (gcatgc)を設けた。
[0048] 2. PCR
これらのプライマーを用いて PCRを行った。各プライマー(46個)を 100 pmol/ /i lの 濃度に調整したプライマー液を 1 μ 1ずつ混ぜて Mixプライマーとした。 Mixプライマー 0.5 μ 1、 0.5 μ 1の Takara Ex Taqポリメラーゼ、 TAKARA Ex Taq用 Buffer,及び
2.5mMの dNTPの 5 μ 1で全量を 50 μ 1とし、 PCRを行った。 PCRの条件は、 94°Cで 30s、 52°Cで 30s、 72°Cで 30sをワンセットとし、これを 55回繰り返した。
[0049] PCR反応液 1.3 μ 1、 0.5 μ 1の Ex Taqポリメラーゼ、 Ex Taq用 Buffer、 2.5mMの dNTP の 5 μ 1、 Alプライマー液 1 a 1、及び A46プライマー液 1 μ 1で全量を 50 μ 1とし、 PCRを 行った。 PCRの条件は 94°Cで 30s、 52°Cで 30s、 72°Cで 60sをワンセットとし、これを 23 回繰り返した。なお、 PCRは PTC- 200 (MJ Research社)を使用して行った。
[0050] 3.クローニング
PCRにより増幅された DNAの 1400bp付近をゲル抽出し、 EcoRI-Sphl処理、アルカリ 処理して得られた断片を、 pUC 18ベクター中の lacプロモーターの下流にインサートし 、これを大腸菌 JM109に揷入し、アンピシリン添加 LB培地で 37°C 12時間培養して、形 質転換した。 ACL活性を示すコロニーを選択し、 ACL活性を示す形質転換大腸菌( E. coli JM109/pACL60)を得た。
[0051] 4.形質転換大腸菌からの ACLラセマーゼの精製
E. coli JM109/pACL60をアンピシリン添力 QLB培地(5ml)の入った試験管に入れ、 37°Cで 12時間培養した。得られた培養液(5ml)を、 80 /i g/mlのアンピシリン及び 0.5mMのイソプロピルチオ- β -D_ガラクトシド(IPTG)を添加した 500mlの LB培地の入 つた 2Lのフラスコに入れ、 37°Cで 8時間振とう培養した。培養後、遠心分離 (4°C、 8000g、 5分間)で菌体を分取し、菌体を 0.85%NaClで洗浄した。同様にして、 500ml の LB培地の入った 2Lフラスコ(20本)で形質転換大腸菌を培養し、合計 10Lの培養液 を得た。
[0052] 10Lの培養液から同様にして菌体を分取し、 0.25Mのスクロース及び 2 μ Μのピリドキ サールリン酸(以下、 PLPと称する)を含んだ lOOmMの ΚΡΒ緩衝液(ρΗ7.0、以下、本 製造例 (酵素活性測定に使用する緩衝液をのぞく)における「緩衝液」は、この緩衝 液を意味する。 )に懸濁し、 10分間超音波処理(19KHz、 Insonator model 201M、クボ タ社製)した。その後、懸濁液を遠心分離 (4°C、 15000g、 30分間)して菌体を除去し た。菌体除去後の液を熱処理 (60°C、 10分間)し、変性タンパク質を遠心分離により 除去し、上清を得た。上清を、 10mMの緩衝液で平衡化した DEAE-トヨパール 650M力 ラム(直径 3cm X長さ 25cm)にかけ、 10mMの緩衝液でカラムを洗浄した。 0から
300mMの NaClの濃度勾配をつけた 10mMの緩衝液で溶出し、フラクションを得た。
ACLラセマーゼ活性のあるフラクションを硫化アンモニゥムで 30%飽和させた。この液 を、硫化アンモニゥムで 30%飽和させた緩衝液で平衡化したブチルトヨパール 650M カラム(直径 1.5cm X長さ 13cm)に吸着させた。カラムを硫化アンモニゥムで 30%飽和 させた緩衝液で洗浄した後、 30%から 0%の硫化アンモニゥムを含有する緩衝液で 濃度勾配溶出した。活性を有するフラクションを集め、セントリコン 10 (Centricon 10) で濃縮した。この濃縮物を、 150mMの NaClを含む 10mMの緩衝液で平衡化した
Superdex 200 HR 10/30カラムの上部に吸着させた。 FPLC (Pharmacia)によりカラム を 0.4ml/分の速度で溶出し、活性を有するフラクションを集め、セントリコン 10で濃縮 した。濃縮物を、 lOmMの緩衝液で平衡化した Mono Q HR5/5に吸着させ、 0— 300mMの NaClを含有する 10mMの緩衝液で濃度勾配溶出した。活性を含むフラクシ ヨンを集め、セントリコン 10で濃縮し、 ACLラセマーゼを得た。得られた ACL-ラセマー
ゼを SDS電気泳動にかけて単一であることを確認した。この酵素の分子量は 4万であ つた。なお、各精製段階での ACLラセマーゼ活性の確認は以下のようにして ACLラセ マーゼ活性を測定することにより行った。
[0053] <ACLラセマーゼ活性の測定方法 >
lOOmMリン酸カリウム緩衝液(KPB、 pH 7.0)、 2 μ Μピリドキサールリン酸(PLP)、 lOmMの L-ACL及び各段階で得られた酵素活性液 20 μ 1を含有する混合液 (2ml)を、 30°Cで 30分間反応させ、 2Nの HC10を 20 μ 1添加して反応を終了させ、 D-ACL生成
4
量に基づいて ACLラセマーゼ活性を決定する。ただし、 SDS電気泳動で単一であるこ とを確認された最終フラクションの測定では、酵素活性液の使用量は 1 μ 1 (混合液全 量は 2ml)、反応時間は 1分間とした。 D-ACL生成量はクラウンパック CR(+)カラムを用 いた HPLC (0.6 ml/分、溶媒 60mMの HCIO )により決定した。溶出液の吸光度(
4
200nM)を測定した。 D-ACLをラセミィ匕し、 1分間に 1 μモルの L-ACLの生成を触媒す る酵素量を 1ユニットとした。
[0054] 実施例 1
く ACLラセマーゼによる L-2-ァミノ酪酸アミド、 L-トレオニンアミド、 L-ァラニンアミド、 L-セリンアミド、 L-ノルパリンアミド、 L-ノルロイシンアミド、 L-メチォニンアミド、 L-バリ ンアミド、 L-ロイシンアミド及び L-フエ二ルァラニンアミドのラセミ化 >
2 i Mi PLP, lOOmMの KPB (pH7.0)、 10mMのアミノ酸アミド及び製造例 1で得られ た ACLラセマーゼ 71.2ngの混合液(2ml)を 30°Cで 30分間反応させた。 HC10を添加
4 して反応を停止させ、反応液を、クラウンパック CR(+)カラムを装着した HPLC (溶媒は 60mMの HCIO (0.6ml/分))にかけ、 200nm吸光度で反応系中の D-アミノ酸アミド量を
4
測定し、 L-アミノ酸アミドに対する ACLラセマーゼの比活性を算出した。その結果を 表 1に示す。なお、 L-ACLに対する ACLラセマーゼの活性は 350U/mgであった。 表 1から ACLラセマーゼが L-アミノ酸アミドを D -アミノ酸アミドを生成し、ラセミ化するこ とが確認された。
[0055] なお、アミノ酸アミドを下記のアミノ酸の D体又は L体に代えて、 ACLラセマーゼと反 応させ生成物を定量したところ、 ACLラセマーゼは下記のアミノ酸をラセミ化しなレ、こ とを確認した。使用したアミノ酸:ァラニン、パリン、セリン、メチォニン、ロイシン、フエ
二ルァラニンの各 D体及び L体
[0056] [表 1]
[0057] 実施例 2
く ACLラセマーゼによる、 L- 2-ァミノ酪酸アミドおよび L-ァラニンアミドのラセミ化〉
20 μ M PLP, lOOmMの KPB (pH7.0)、 40mMの L_2_ァミノ酪酸アミド及び製造例 1 で得られた 71.2ngの ACLラセマーゼの混合液(2ml)を 30°Cで 120分間反応させ、反応 液中のアミノ酸アミドの D体と L体の存在比を 200nm吸光度から測定した。また、 L_2_ ァミノ酪酸アミドを L-ァラニンアミドに代えた以外は同様にして測定した。結果を図 1 ( ァミノ酪酸アミド)及び図 2 (ァラニンアミド)に示す。時間の経過と共に L-2 -ァミノ酪酸 アミド及び L -ァラニンアミドがラセミィ匕されていくことが確認された。
[0058] 実施例 3
く D又は L-フエ二ルァラニンアミドのラセミ化及び光学活性なフエ二ルァラニンの製 造 >
形質転換大腸菌(E. coli JM109/pACL60)を 80 β g/mlのアンピシリンを含む 50mlの LB培地の入った試験管に入れ、 37°Cで 12時間培養した。この培養液から得られる菌 体を、 0.1Mの Tris/HCl (pH8.0)、 10mMの D-フエ二ルァラニンアミドからなる 5mlの溶 液に懸濁し 30°Cで 24時間反応させた。なお、大腸菌体には L-フエ二ルァラニンアミド を L-フエ二ルァラニンに変換する酵素(L-フエ二ルァラニンアミダーゼ)が含有されて おり、反応系中の L-フエ二ルァラニンアミドは L-フエ二ルァラニンに変換される。
HCIOを添加して反応を停止させ、反応液を、クラウンパック CR(+)カラムを装着した
HPLC (溶媒は 60mMの HCIO (0.8ml/min)にかけ、 200nm吸光度から D及び L-フエ二 ルァラニンアミド並びに D及び L-フエ二ルァラニンを定量した。結果を図 3に示す。ま た、 D-フエ二ルァラニンアミドを L-フエ二ルァラニンアミドに代え、反応時間を 8時間 に代えて、同様に定量した。結果を図 4に示す。なお、大腸菌体には D-フエ二ルァラ ニンアミドを D-フエ二ルァラニンに変換する酵素(D-フエ二ルァラニンアミダーゼ)が 含有されておらず、反応系中の D-フエ二ルァラニンアミドは D-フエ二ルァラニンに変 換されない。
[0059] 図 3では、 D -フエ二ルァラニンアミドが減少し、反応当初には存在していなかった L- フエ二ルァラニンアミド及び L -フエ二ルァラニンが生成している。これは、菌体が D-フ ェニルァラニンアミドを L -フエ二ルァラニンアミドに転換し、生成した L -フエ二ルァラ二 ンアミドが L-アミノ酸アミダーゼにより L-フエ二ルァラニンに転換されたことを示す。
[0060] 図 4では、 L-フエ二ルァラニンアミドが減少し、反応当初には存在していなかった D- フエ二ルァラニンアミド及び L-フエ二ルァラニンが生成している。これは、菌体が L-フ ェニルァラニンアミドを D-フエ二ルァラニンアミドに転換し、 L-アミノ酸アミダーゼが L- フエ二ルァラニンアミドを L-フエ二ルァラニンに転換したことを示す。
[0061] 実施例 4
< L-ァラニンアミドを原料とした D-ァラニンの合成 >
L-ァラニンアミドに、製造例 1で得られた ACLラセマーゼ及び Ochrobactrum anthropi C 1-38由来の D_アミノぺプチダーゼを作用させて D_ァラニンを合成した。 2 μ Μの PLP、 lOOmMの KPB (pH7.0)、 45mMの L-ァラニンアミド、 ACLラセマーゼ( 0.22U)及び D-アミノぺプチダーゼ(2.2U)を混合し(2ml)、 30°Cで 7時間反応させた。
HC10を添加して反応を停止させ、反応液を、クラウンパック CR(+)カラムを装着した
HPLC (溶媒は 60mMの HCIO (0.4ml/min)にかけ、 200nm吸光度から D及び L-ァラニ ンアミド並びに D -ァラニンを定量した。結果を図 5に示す。なお、ここで使用した D -ァ ノへフナタ、、 1 ~ fa~、 Y. Asano, et al, Biochem. Biophys. Res. Commun., 162, 470-474 (1989)に記載の方法に従って製造した。
[0062] 図 5では、 L-ァラニンアミドが減少し、反応当初には存在していなかった D -ァラニン
アミド及び D-ァラニンが生成している。これは、菌体が L-ァラニンアミドを D-ァラニン アミドに転換し、生成した D-ァラニンアミドが D-アミノぺプチダーゼにより D-ァラニン に転換されたことを示す。
産業上の利用可能性
[0063] 本発明の (1)D -アミノ酸アミド及び L-アミノ酸アミドの混合物の製造方法は、 ACLラ セマーゼを作用させるという簡便な方法である。また、本発明の (2)D又は L -アミノ酸 の製造方法では、 D又は L-アミノ酸に変換する酵素の基質となるアミノ酸アミドは減少 する力 D又は L-アミノ酸に変換する酵素の基質とならなレ、アミノ酸アミドが ACLラセ マーゼの作用によって変換されて、 D又は L-アミノ酸に変換する酵素の基質となるァ ミノ酸アミドが生成する。このアミノ酸アミドを D又は L-アミノ酸に変換する酵素が D又 は L-アミノ酸に変換するため、 D又は L-アミノ酸に変換する酵素の基質となるアミノ酸 アミドだけでなぐ D又は L-アミノ酸に変換する酵素の基質とならないアミノ酸アミドも 原料として有効に利用できるため、(2)の製造方法は、光学分割操作の不要な、収率 のよい簡便な方法である。さらに本発明の (3)の D又は L-アミノ酸アミドの製造方法は 、(2)の製造方法により得られた光学活性なアミノ酸を公知の方法でアミド化するもの であることから、(2)の製造方法と同様に、光学分割操作の不要な、収率のよい簡便な 方法である。
配列表フリーテキスト
[0064] 配列番号 3— 48は、それぞれ A1— A46プライマーの DNA配列を示す。