明 細 書 ァブシジン酸不活性化に関与する遺伝子
技術分野
本発明は、 植物ホルモンであるアブシジン酸の不活性化に関与する遺伝子、 当 該遺伝子を含む組換えベクター及ひ、トランスジヱニック植物、 並びに、 当該組換 えベクターを含む形質転換体及び当該トランスジエニック植物から採取された種 子に関する。 背景技術 ' ァプシジン酸 (以下、 ABA と略記する) は、 植物内で生合成され、 形態形成や 生理現象を引き起こす植物ホルモンである。 各組織における ABA の濃度や、 ABA の組織分布によって、 様々な形態形成や生理現象が調節されていると考えられて いる。
ABA は、 植物が乾燥や低温などの環境ストレスにさらされた時、 生体内で合成 される。 ABA が植物内で生合成されることによって、 植物がこれら環境ス ト レス に適応する能力を獲得する。 また、 ABA は、 通常の発生過程においても生合成さ れる。 例えば、 成熟中の種子において、 ABA が合成されている。 合成された ABA によって、 種子における休眠が誘導されるとともに、 種子発芽が抑制される。 このように、 ABAに関しては、種々の研究がなされているが、 ABA分解の反応過 程や ABA分解に関与する酵素'遺伝子について十分な研究がなされていない。 ABA 分解の反応過程や ABA分解に関与する酵素 ·遺伝子について研究が進み、 ABA分 解が植物内で制御可能となれば、 環境ス トレスに対する適応のメカニズムの解明 や発芽の制御が可能となる。
ABA の不活性化は、 酸化経路と配糠体化経路によって起こる(Cutler and rochko 1999, Zeevaart and Creelman 1988; ともに総説)。 これらのうち、 植物 体の乾燥、 種子発芽時の吸水といった ABAの主要な生理に関わる不活性化経路は oxidation経路であり、 多くの植物種で種子発芽時や植物体の乾燥 ·再吸水時に
oxidation経路の不活性化産物である phaseic acid (PA)やさらに PAの 4'位のケ トンが還元されて生じる dihydrophaseic acid (DPA)の量の変動がみられる。 そ れに対して、 代謝産物の分析から conjugate経路の生理的役割の重要性が指摘さ れている例は少ない。 ABA の不活性化に関わる遺伝子は一つだけ報告例があり、 配糖化酵素が Xu et al. (2002) .らによってァズキからクローユングされている。
しかしながら、 ABA分解の反応過程や ABA分解に関与する酵素 ·遺伝子につい ての有用な知見は、 まだ殆どないのが現状である。
非特許文献 1 Cutler, A. J. , and Krochko, J. E. (1999) . Formation and breakdown of ABA. Trens Plant Sci. 4, 472-478
非特許文献 2 Zeevaart, J. A. , and Creelman, R. A. (1988) . Metaboli sm and physiology of abscisic acid. Annu. Rev. Plant Physiol. Plant Mol. Biol. 39, 439-473.
非特許文献 3 Xu, Z. -J. , Nakajima, M. , Suzuki, Y. , and Yamaguchi, I. (2002) . し丄 onirtg and characterization of the abscisic acid-specific glucosyl transferase gene from Adzuki bean seedl ings. Plant Physiol. 129, 1285-1295.
そこで、 本発明は、 ABA不活性化に関与する新規な遺伝子及びその利用を提供 することを目的とする。 発明の開示
上述した実状に鑑み、 本発明者が鋭意検討した結果、 ABA不活性化活性を有す るタンパク質をコードする遺伝子を新規に見いだし、本発明を完成するに至った。 本発明は、 以下を包含する。
( 1 ) 以下の (a ) 又は (b ) のタンパク質をコ一ドする遺伝子。
( a ) 配列番号 2 、 4 、 6又は 8で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質
( b ) 配列番号 2 、 4 、 6又は 8で表されるアミノ酸配列において 1若しくは数 個のアミノ酸が欠失、 置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、 且つ、 ァ ブシジン酸の不活性化活性を有するタンパク質
( 2 ) 以下の (a ) 又は (b ) の DNAを含む遺伝子。
( a ) 配列番号 1、 3、 5又は 7で表される塩基配列からなる DNA (b) 配列番号 1、 3、 5又は 7で表される塩基配列に対して相補的な塩基配列 からなる DNAに対してス トリンジェントな条件下でハイブリダィズし、 且つ、 了 ブシジン酸の不活性化活性を有するタンパク質をコードする DNA
(3) シロイヌナズナ、 イネ又はトマト由来であることを特徴とする (1) 又 は (2) 記載の遺伝子。
(4) 上記 (1) 又は (2) 記載の遺伝子を含む組換えベクター。
(5) 上記 (4) 記載の組換えベクターを含む形質転換体。
(6) 上記 (1) 又は (2) 記載の遺伝子を含むトランスジエニック植物。 (7) 上記 (6) 記載のトランスジヱニック植物から採取された種子。
(8) 上記 (1) 又は (2) 記載の遺伝子がノックアウトされた植物。
(9) (a)配列番号 4で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質、若しくは(b) 配列番号 4で表されるアミノ酸配列において 1若しくは数個のアミノ酸が欠失、 置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、 且つ、 アブシジン酸の不活性化 活性を有するタンパク質に由来するアブシジン酸の不活性化活性を阻害すること によって、 種子の休眠を維持する方法。
(1 0)テトシクラシス(Tetcyclacis)及び/又はゥェコナゾーノレ (Uniconazole) によって上記タンパク質に由来するアブシジン酸の不活性化活性を阻害すること を特徴とする (9) 記載の種子の休眠を維持する方法。
(1 1) (a)配列番号 4で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質、若しくは
(b)配列番号 4で表されるアミノ酸配列において 1若しくは数個のアミノ酸が欠 失、 置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、 且つ、 アブシジン酸の不活 性化活性を有するタンパク質に由来するアブシジン酸の不活性化活性が阻害され た種子。
本明細書は本願の優先権の基礎である日本国特許出願 2003-176423 号と 2003-367857号の明細書および/または図面に記載される内容を包含する。 図面の簡単な説明
図 1は、 CYP707A1の cDNAを導入した形質転換酵母から得た反応液を HPLCに供
した際の結果を示す特性図である。
図 2は、 CYP707A3の cDNAを導入した形質転換酵母から得た反応液を HPLCに供 した際の結果を示す特性図である。
図 3は、 空の pYeDP60プラスミ ドだけを導入した形質転換酵母からの反応液を HPLCに供した際の結果を示している。
図 4は、 CYP707A2の cDNAを導入した形質転換酵母から得た反応液を HPLCに供 した際の結果を示す特性図である。
図 5は、 CYP707A4の cDNAを導入した形質転換酵母から得た反応液を HPLCに供 した際の結果を示す特性図である。
図 6は、 阻害剤 (Tetcyclaci s, Metyrapone及ぴ Uniconazole) による ABA 8' - 水酸化酵素 (CYP707A1) の活性阻害を示す特性図である'
図 7は、 CYP707A1 , CYP707A2 , CYP707A3および CYP707A4の器官別の発現を mRNA レベルにより示す図である。
図 8は、 乾燥種子吸水時の内生 ABA量の変動を示す図である。 :
図 9は、 CYP707A1、 CYP707A2、 CYP707A3および CYP707A4遺伝子の種子吸水時 の発現を示す図である。
図 1 0は、 2週間目植物の乾燥 ·吸水時の ABA量の変動を示す図である。
図 1 1は、 2週間目植物の乾燥.吸水時の NCED3 mRNA量の変動を示す図である。 図 1 2は、 2週間目植物の乾燥 ·吸水時の CYP707A1、 CYP707A2, CYP707A3およ ぴ CYP707A4raRNA量の変動を示す図である。
図 1 3は、 2週間目植物を ABA (30 M) および水で処理したときの CYP707A1、 CYP707A2、 CYP707A3および CYP707A4 mRNA量の変動を示す図である。
図 1 4は、 cyp707a2- 1変異遺伝子、 cyp707a2_2変異遺伝子、 cyp707a3- 1変異 遺伝子及び cyP707a3- 2変異遺伝子の構成を示す模式図である。
図 1 5は、 CYP707A2遺伝子ノックアウト系銃及び CYP707A3遺伝子ノックァゥ ト系統における吸水処理と発芽率との関係を示す特性図である。
図 1 6は、 CYP707A2遺伝子ノックァゥト系統及び野生型における、 乾燥種子に 含まれる ABA量、 PA量及ぴ DPA量を比較した特性図である。
図 1 7は、 CYP707A2 遺伝子ノックァゥト系統及び野生型の種子における、 ABA
量の経時変化を示す特使図である。 発明を実施するための最良の形態
以下、 本発明を詳細に説明する。
本発明に係る遺伝子は、 ABA を不活性化する機能を有するタンパク質 (以下、 ABA不活化酵素)をコードするものである。ここで、 ABAを不活性化する機能とは、 ABAをファゼイン酸 (以下、 PAと略記する) に変換する機能を意味する。 ABAの 不活性化には、 大きく分けて 2つの経路が知られている。 ひとつは、 ABA におけ る 1位のカルボキシル基や 1'位の水酸基にグルコースが付加する配糖体化経路、 もうひとつは、 ABAにおける 8'位や 7'位といった環状メチル基が水酸化を受ける 酸化経路である。 これらのうち、 酸化経路は不可逆な経路であり、 ABA の本質的 な不活性化経路である。 ABAにおける 8'位の環状メチル基が水酸化されることに よって、 8 ヒ ドロキシ ABAとなる。 この 8,-ヒ ドロキシ ABAは、 熱力学的により 安定な PAとの平衡混合物として単離される。 したがって、 ABAを PAに変換する 機能とは、 より具体的には、 ABAの 8'位の環状メチル基を水酸化する ABA 8' -水 酸化酵素活性を意味する。
1 . ABA不活化酵素遺伝子のクローニング
(1)植物ゲノムの調製
ゲノム DNAの供給源としては、 植物の葉、 茎及び根などの植物体の一部又は植 物体全体が挙げられる。 対象となる植物は、 特に限定されないが、 シロイヌナズ ナ、 イネ、 トマト、 及ぴ大豆を挙げることができる。 植物は、 種子を土壌に播種 し野外において生育させたり、 あるいは GM培地、 MS培地などの固体培地に播種 し無菌条件下で生育させることができる。なお、必要に応じて、 PBZ (probenazole) などの全身獲得抵抗性 (SAR)誘導薬剤を添加することも可能である。
生育させた植物からのゲノム DNAの調製は、 常法に従って行うことができる。 例えば、 まず液体窒素で凍結した植物体を乳鉢などで摩砕後、 摩砕物を TritonX- 100 などの界面活性剤を含有するバッファーに懸濁し、 ガーゼ等で濾過 する。 次いで、 濾液を遠心分離することによって細胞核を沈殿後、 沈殿物にラウ ロイルサイコシン酸ナトリゥム溶液等を加え細胞核を消化する。 消化液を塩化セ
シゥム -臭化工チジゥム密度勾配遠心等に供試後、 DNAの層を回収し、得られた DNA 溶液を TEバッファ一等に対して透析する。最後に、得られた DNA溶液にエタノー ルを加えることによって沈殿後、適当量の TEバッファ一等に溶解させることによ つてゲノム DNAを得ることができる。
(2) ABA不活化酵素遺伝子のクローユング
ABA不活化酵素遺伝子は、「(1)植物ゲノムの調製」に従って調製したゲノム DNA からクローニングすることができる。 例えばシロイヌナズナ、 イネ、 トマト、 及 び大豆等の植物からゲノムを調製し、 シロイヌナズナ、 イネ、 トマト、 及ぴ大豆 由来の ABA不活化酵素遺伝子をクローニングすることができる。
シロイヌナズナ由来の ABA不活化酵素遺伝子には、 ホモログが 4種類あり、 そ れぞれ CYP707A1、 CYP707A2、 CYP707A3及び CYP707A4と呼ぶ。 これら CYP707A1、 CYP707A2、 CYP707A3及ぴ CYP707A4の塩基配列をそれぞれ配列番号 1、 3、 5及 び 7に示す。 また、 これら配列番号 1、 3、 5及ぴ 7によってコードされるタン パク質 (ABA 不活化酵素) のアミノ酸配列をそれぞれ配列番号 2、 4、 6及ぴ 8 に示す。
シロイヌナズナ由来の ABA不活化酵素 (CYP707A1、 CYP707A2, CYP707A3 及ぴ CYP707A4) のアミノ酸配列は、 ABA を不活化する機能を有するのであれば、 配列 番号 2、 4、 6及ぴ 8に示すアミノ酸配列に限定されず、 配列番号 2、 4、 6又 は 8で表されるアミノ酸配列において 1若しくは数個のアミノ酸が欠失、 置換若 しくは付加されたアミノ酸配列であってもよい。 ここで、 数個のアミノ酸とは、 例えば 2〜 5 0個のアミノ酸、 好ましくは 2〜3 0個のアミノ酸、 より好ましく は 2〜1 0個のアミノ酸を意味する。
また、 配列番号 1、 3、 5及ぴ 7に示した塩基配列、 配列番号 2、 4、 6及び 8に示したアミノ酸配列に基づいて、 各種植物体のゲノム塩基配列を格納したデ ータベースを検索することによって、 種々の植物における ABA不活化酵素遺伝子 を同定することができる。 例えば、 イネ (0. sativa (japonica) ) ゲノムの塩基 配列を格納したデータベース(http:〃 drnelson. utmem. edu/rice, html) を検索す ることによって、 ァクセッション番号 AP004129. 1及ぴ AP004162. 1で特定される イネにおける ABA不活化酵素遺伝子を同定することができる。 また、 トマトゲノ
ム の 塩 基 配 列 を 格 納 し た デ ー タ ベ ー ス
(http : //drnelson. utmem. edu/toraato. html) を検索することによって、ァクセッ ション番号 EST; AI489171、 EST247510 cLED17I4で特定されるトマトにおける ABA 不活化酵素遺伝子を同定することができる。 さらに、 大豆ゲノムの塩基配列を格 糸内したァータベース (http : //drnelson. utmem. edu/soybean. html) を検索するこ とによって、 ァクセッション番号 AI431116、 AI735873および AI966688で特定さ れる大豆における ABA不活化酵素遺伝子を同定することができる。これらのイネ、 トマトおよび大豆ゲノムの塩基配列を格納したデータベースは、 テネシー大学の デヴィッ ド ·ネルソン博士の 「Cytochrome P450 Homepage] でアクセスすること が可能である。
具体的には、 シロイヌナズナ由来の ABA不活化酵素に対して高い相同性を示す イネ由来 ABA不活性化酵素としては、 配列番号 2 4及び 2 5に示すァミノ酸配列 を有するものを例示することができる。 また、 シロイヌナズナ由来の ABA不活化 酵素 (CYP707A3) に対して高い相同性を示すトマト由来 ABA不活性化酵素として は、 配列番号 2 6に示すアミノ酸配列を有するものを例示することができる。 シロイヌナズナ由来の ABA不活化酵素 (CYP707A1、 CYP707A2, CYP707A3 及ぴ CYP707A4) のァミノ酸配列と、 イネ由来 ABA不活性化酵素のァミノ酸配列 (配列 番号 2 4及ぴ 2 5 ) と、 トマト由来 ABA不活性化酵素のアミノ酸配列 (配列番号 2 6 ) との相同性を比較した結果を表 1に示す。 なお、 表 1の数値の単位は%で ある。
GYP707A1 CYP707A2 CYP707A3 CYP707A4 配列番号 24配列番号 25配列番号 26
CYP707A1 56.9 86.1 57.5 68.3 52.4 75.
CYP707A2 57.6 53.9 55.6 49.8 56.8
CYP707A3 57.4 66.9 52.4 74.4
GYP707A4 56.5 57.5 57.4 配列番号 24 52.9 67.5 配列番号 25 49.9
このように各種植物における ABA不活化酵素遺伝子の塩基配列が同定されると、 常法に従って ABA不活化酵素遺伝子を単離することができる。 すなわち、 「(1)植
物ゲノムの調製」 に従って調製したゲノムを铸型として、 適宜設計した一対のプ ライマーを用いて PCRにより ABA不活化酵素遺伝子を単離することができる。 ま た、 植物細胞から抽出した全 mRNAを用いて cDNAライブラリーを調製し、 塩基配 列に基づいて設計した DNAプローブを用いて当該 cDNAライブラリ一から ABA不活 化酵素遺伝子を含む cDNAを単離することができる。
一方、 ABA不活化酵素遺伝子としては、 配列番号 1、 3、 5及ぴ 7に示す塩基 配列に限定されず、 これら配列番号 1、 3、 5又は 7に示す塩基配列と相補的な 塩基配列に対してス トリンジェントな条件でハイブリダイズする DNAであって、 ABAを不活性化する機能を有するタンパク質をコードする DNAも含まれる。また、 ストリンジヱントな条件とは、 例えば、 ナトリゥム濃度が 800〜1000ιηΜ、 好まし くは 850〜950mM、 温度が 60〜70° (:、 好ましくは 65〜68°Cでの条件をいう。
なお、 ABA不活化酵素遺伝子への変異の導入は、定法に従って行うことができ、 Kunkel法や Gapped duplex法などの公知の手法又はこれに準ずる方法により、 例 えば部位特異的突然変異誘発法を利用した変異導入用キッ ト (例えば Mutant - K (TAKARA社製)や Mutant- G (TAKARA社製)など)を用いて、あるいは、 TAKARA 社の LA PCR in vitro Mutagenesis シリーズキットを用いて行うことができる。 2 . 組換えべクタ一及び形質転換体の作製
(1)組換えベクターの調製
本発明の組換えベクターは、 適当なベクターに本発明の遺伝子を連結(揷入)す ることにより得ることができる。 本発明の遺伝子を揷入するためのベクターは、 宿主中で複製可能なものであれば特に限定されず、 例えば、 プラスミ ド DNA、 フ ァージ DNAなどが挙げられる。
プラスミド DNAとしては、 pBR322、 pBR325、 pUC118、 pUC119などの大腸菌宿主 用プラスミ ド、 pUB110、 pTP5 などの枯草菌用プラスミ ド、 YEpl3、 YEp24、 YCp50 などの酵母宿主用プラスミ ド、 pBI221、 pBI121などの植物細胞宿主用プラスミ ド などが挙げられ、 ファージ DNAとしては; Iファージなどが挙げられる。 さらに、 レトロウィルス又はワクシニアウィルスなどの動物ウィルス、 バキュ口ウィルス などの昆虫ウィルスベクターを用いることもできる。
ベクターに本発明の遺伝子を揷入するには、 まず、 精製された DNAを適当な制
限酵素で切断し、適当なベクター DNAの制限酵素部位又はマルチクローニングサ ィトに挿入してベクターに連結する方法などが採用される。
本発明の遺伝子は、 その遺伝子の機能が発揮されるようにベクターに組み込ま れることが必要である。 そこで、 本発明のベクターには、 プロモーター、 本発明 の遺伝子のほか、 所望によりェンハンサーなどのシスエレメント、 スプライシン グシグナル、ポリ A付加シグナル、選択マーカー、 リボソーム結合配列(SD配列) などを含有するものを連結することができる。 なお、 選択マーカーとしては、 例 えば、 アンピシリン耐性遺伝子、 ネオマイシン耐性遺伝子、 ジヒ ドロ葉酸還元酵 素遺伝子などが挙げられる。
(2)形質転換体の調製
本発明の形質転換体は、 本発明の組換えベクターを、 目的遺伝子が発現し得るよ うに宿主中に導入することにより得ることができる。 ここで、 宿主としては、 本 発明の遺伝子を発現できるものであれば特に限定されるものではない。 例えば、 エッシェリ ヒァ ' コリ (Escherichia col i) などのェッシェリ ヒァ属、 バチノレス · ズブチリ ス(Bacillussubtil is)などのバチノレス属、 シユー ドモナス ' プチダ (Pseudomonas putida)などのシユー ドモナス属、 リ ゾビゥム · メ リ ロティ (Rhizobiu膽 eli loti)などのリゾビゥム属に属する細菌が挙げられ、サッカロマイ セス · セレピシェ (Saccharomyces cerevis iae)、 シゾサッカロマイセス · ポンべ (Schizosaccharomycespombe)、 ピヒア ·ノ ス トリス (Pichia pastoris などの酵母 が挙げられ、 シロイヌナズナ、 タバコ、 トウモロコシ、 イネ、 ニンジンなどから 株化した植物細胞ゃ該植物から調製したプロトプラストが挙げられ、 COS 細胞、 CH0細胞などの動物細胞が挙げられ、 あるいは Sf9、 Sf21などの昆虫細胞が挙げ られる。
大腸菌などの細菌を宿主とする場合は、 本発明の組換えベクターが該細菌中で 自律複製可能であると同時に、 プロモーター、 リボゾーム結合配列、 本発明の遺 伝子、 転写終結配列により構成されていることが好ましい。 また、 プロモーター を制御する遺伝子が含まれていてもよい。
大腸菌としては、 例えばエツシヱリヒア ' コリ HMS174 (DE3)、 K12、 DH1などが 挙げられ、 枯草菌としては、 例えばバチルス ·ズプチリス Ml 114, 207-21などが
挙げられる。
プロモーターとしては、 大腸菌などの宿主中で発現できるものであればいずれ を用いてもよい。例えば trpプロモーター、 lacプロモーター、 PLプロモーター、 PR プロモーターなどの大腸菌由来のものや T7 プロモーターなどのファージ由来 のものが用いられる。 さらに、 tac プロモーターなどのように人為的に設計改変 されたプロモーターを用いてもよい。
細菌への組換えベクターの導入方法としては、 細菌に DNAを導入する方法であ れば特に限定されるものではない。例えばカルシウムイオンを用いる方法 [Cohen, S. N. , et al.: Proc. Natl. Acad. Sci. , USA, 69 : 2110—2114 (1972) ]、 エレク トロ ポレーシヨン法などが挙げられる。
酵母を宿主とする場合は、 例えばサッカロマイセス 'セレビシェ、 シゾサッカ ロマイセス ' ボンべ、 ピヒア 'パス トリスなどが用いられる。 この場合、 プロモ 一ターとしては酵母中で発現できるものであれば特に限定されず、 例えば gall プロモーター、 gal lO プロモーター、 ヒートショ ックタンノ ク質プロモーター、 MF a lプロモーター、 PH05プロモーター、 PGKプロモーター、 GAPプロモーター、 ADHプロモーター、 A0X1プロモーターなどが挙げられる。
酵母への組換えベクターの導入方法としては、 酵母に DNAを導入する方法であ れば特に限定されず、 例えばエレク トロポレーシヨン法 [Becker, D. M. , et al.: Methods. Enzymol. , 194 : 182— 187 (1990) ]、 スフエロプラスト法 [Hinnen, A. et al.: Proc. Natl. Acad. Sci. , USA, 75 : 1929-1933 (1978) ]、 酢酸リチウム法 [Itoh, H. : J. Bacteriol. , 153 : 163-168 (1983) ]などが挙げられる。
植物細胞を宿主とする場合は、例えばシロイヌナズナ、タバコ、 トゥモロコシ、 イネ、 ニンジンなどから株化した細胞ゃ該植物から調製したプロトプラストが用 いられる。 この場合、 プロモーターとしては植物中で発現できるものであれば特 に限定されず、 例えばカリフラワーモザイクウィルスの 35S RNAプロモーター、 rd29A遺伝子プロモーター、 rbcSプロキータ一などが挙げられる。
植物への組換えベクターの導入方法としては、 Abelらのポリエチレングリコー ルを用いる方法 [Abel, H. , et al. : Plant J. 5 : 421 - 427 (1994) ]やエレクトロポレー ション法などが挙げられる。
動物細胞を宿主とする場合は、 サル細胞 COS- 7、 Vero、 チャイニーズハムスタ 一卵巣細胞 (CH0細胞)、マウス L細胞、 ラット GH3、 ヒ ト FL細胞などが用いられ る。 プロモーターとして SR aプロモーター、 SV40プロモーター、 LTRプロモータ 一、 CMV プロモーターなどが用いられ、 また、 ヒ トサイトメガロウィルスの初期 遺伝子プロモーターなどを用いてもよい。 動物細胞への組換えベクターの導入方 法としては、 例えばエレク ト口ポレーシヨン法、 リン酸カルシウム法、 リポフエ クション法などが挙げられる。
昆虫細胞を宿主とする場合は、 Sf9細胞、 Sf21細胞などが用いられる。 昆虫細 胞への組換えベクターの導入方法としては、 例えばリン酸カルシウム法、 リポフ ェクシヨン法、 エレク ト口ポレーシヨン法などが用いられる。
3 . ABA不活化酵素の生産及び機能解析
(1) ABA不活化酵素の生産
本発明の ABA不活化酵素は、 本発明の ABA不活化酵素遺伝子によりコードされ るアミノ酸配列を有するもの、 または該アミノ酸配列において 1若しくは数個の アミノ酸に前記変異が導入されたアミノ酸配列を有し、 かつ不活性化活性を有す るものである。
ABA不活化酵素は、 前記形質転換体を培地に培養し、 その培養物から採取する ことにより得ることができる。 「培養物」 とは、 培養上清、 あるいは培養細胞若し くは培養菌体又は細胞若しくは菌体の破砕物のいずれをも意味するものである。 形質転換体を培地にて培養する際には、 宿主の培養に用いられる通常の方法を 適用することができる。 大腸菌や酵母菌などの微生物を宿主として得られた形質 転換体を培養する培地としては、 微生物が資化し得る炭素源、 窒素源、 無機塩類 などを含有し、 形質転換体の培養を効率的に行うことができる培地であれば、 天 然培地、 合成培地のいずれを用いてもよい。 また植物細胞を宿主として用いてい る場合には、 必要に応じて、 培地にチアミン、 ピリ ドキシンなどのビタミン類を 添カ卩し、 動物細胞を宿主として用いている場合には、 RPMI1640などの血清を添加 する。
例えば、 炭素源としては、 グルコース、 フラクトース、 スクロース、 デンプン などの炭水化物、 酢酸、 プロピオン酸などの有機酸、 エタノール、 プロパノール
などのアルコール類が用いられる。 窒素源としては、 アンモニア、 塩化アンモニ ゥム、 硫酸アンモニゥム、 酢酸アンモニゥム、 リン酸アンモニゥムなどの無機酸 若しくは有機酸のアンモニゥム塩又はその他の含窒素化合物のほか、 ペプトン、 肉エキス、 コーンスティープリカ一などが用いられる。 無機物としては、 リン酸 第一カリウム、 リン酸第二カリウム、 リン酸マグネシウム、 硫酸マグネシウム、 塩化ナトリウム、 硫酸第一鉄、 硫酸マンガン、 硫酸銅、 炭酸カルシウムなどが用 いられる。 さらに、 培地中には、 必要に応じてアンピシリンやテトラサイクリン などの抗生物質を培地に添加してもよい。
培養は、 通常、 振盪培養又は通気攪拌培養などの好気的条件下、 30〜37°Cで 6 〜24時間行う。 培養期間中、 pHは 7. 0〜7. 5に保持する。 pHの調整は、 無機又は 有機酸、 アル力リ溶液などを用いて行う。
プロモーターとして誘導性のプロモーターを含むベクターで形質転換した微生 物を培養する場合には、 必要に応じてィンデューサーを培地に添加してもよい。 例えば、 Lac プロモーターを用いた発現ベクターで形質転換した微生物を培養す るときにはイソプロピル- /3 -D-チォガラタトピラノシド(IPTG)などを、 trp プロ モーターを用いた発現べクタ一で形質転換した微生物を培養するときにはインド ールアタリル酸(IAA)などを培地に添加してもよい。
培養後、 ABA不活化酵素が菌体内又は細胞内に生産される場合には、 菌体又は 細胞を破碎することにより ABA不活化酵素を抽出する。 また、 ABA不活化酵素が 菌体外又は細胞外に生産される場合には、 培養液をそのまま使用するか、 遠心分 離などにより菌体又は細胞を除去する。 その後、 タンパク質の単離精製に用いら れる一般的な生化学的方法、 例えば硫酸アンモニゥム沈殿、 ゲルクロマトグラフ 'ィ一、 イオン交換クロマトグラフィー、 ァフィ二ティークロマトグラフィーなど を単独で又は適宜組み合わせて用いることにより、 前記培養物中から本発明の ABA不活化酵素を単離精製することができる。
(2) ABA不活化酵素の機能解析
「(1) ABA不活化酵素の生産」 で得られた ABA不活化酵素及ぴ ABAを含む溶液を 調製し、 所定時間反応させ、 反応後の溶液に含まれる ABA量及ぴ ABAが不活化さ れた 8' -ヒドロキシ ABA或いは PA量を測定する。 これによつて、 ABA不活化酵素
における ABAを不活化する機能を解析することができる。
4 . ABA不活化酵素の機能が抑制された植物の作出
ABA は、 植物内で生合成される植物ホルモンであり、 植物の形態形成や生理現 象等に関与している。 例えば、 植物種子内において ABAが生合成されることによ つて休眠が誘導され、 ABAの代鶴す、 すなわち ABAが不活化されることよって発芽 が促進されることが知られている。
ABA不活化酵素は、 ABAを 8' -ヒドロキシ ABA (或いは PA) に変換し、 ABAを不 活化する。 したがって、 植物体内において ABA不活化酵素を機能的に欠損させる ことによって、 ABA が不活化されることに起因する形態形成や生理現象等を抑制 することができる。 例えば、 ABA不活化酵素を機能的に欠損させたトランスジェ ニック植物では、 種子の発芽を抑制することができる。 また、 ABA不活化酵素を 所定の条件下でのみ発現できるように改変したトランスジエニック植物では、 発 芽のタイミングを調節することができる。
特に、シロイヌナズナ由来 ABA不活性化酵素のうち CYP707A2 (配列番号 4 )は、 種子内で比較的に高発現しており、 種子の発芽に大きく関与している。 したがつ て、 CYP707A2 (配列番号 4 ) の機能を阻害した種子においては、 野生型の種子と 比較して休眠が維持されたものとなる。 ここで、 休眠を維持するとは、 種子の吸 水状態等の発芽を誘導する条件下において、 当該種子の発芽を遅延させることを 意味する。 種子の休眠が維持されたか否かは、 当該種子を吸水状態とした後、 発 芽までの時間を測定することによって判断することができる。
ABA不活化酵素の機能の抑制は、限定されないがアンチセンス法や RNA干渉(RNA interfearenece: RNAi) 法により行うことができる。 また、 相同遺伝子組換え法 等により ABA不活化酵素をノックァゥトすることによつても行うことができる。 さらに、 変異型 ABA不活化酵素遺伝子を植物に導入することによつても行うこと ができる。
また、 人為的に ABA不活化酵素の機能を抑制するだけではなく、 農作物の中か ら ABA不活化酵素遺伝子に異常がある植物をスクリーニングすることによって、 種子休眠性が深い穀類ゃストレス耐性が強い作物を得ることができる。 例えば、 イネにおいては、 トランスポゾンがランダムに遺伝子に挿入され、 その遺伝子の
機能を欠損させることが知られており、 ABA 不活化酵素遺伝子にトランスポゾン が揷入され、 機能を欠損した植物をスクリーニングすることができる。
アンチセンス法において、 その標的部位は特に限定されず、 タンパク質コード 領域や 5'非翻訳領域などを標的とすることが可能である。 配列番号 1、 3、 5お ょぴ 7等で表される ABA不活化酵素をコードする遺伝子の塩基配列中又はその相 補配列中のいずれかの箇所にハイブリダィズするアンチセンスヌクレオチドを用 いればよい。 このアンチセンスヌクレオチドは、 好ましくは ABA不活化酵素をコ 一ドする遺伝子の塩基配列中の連続する少なく とも 15 個以上のヌクレオチドに 対するアンチセンスヌクレオチドである。 アンチセンスヌクレオチドは、 DNA 又 は mRNA の所定の領域を構成するヌクレオチドに対応するヌクレオチドが全て相 補配列であるもののみならず、 DNAまたは mRNAとヌクレオチドとが ABA不活化酵 素をコードする遺伝子の塩基配列に特異的にハイブリダイズできる限り、 1又は 複数個のヌクレオチドのミスマッチが存在しているものも含まれる。 RNAiは、 二 本鎖 RNA (dsRNA)を細胞内に導入した際に、その RNA配列に対応する細胞内の mRNA が特異的に分解され、 タンパク質が発現されなくなる現象をいう。 RNAi法におい て、 通常は二本鎖 RNAが用いられるが、 特に限定されず、 例えば、 自己相補的な 一本鎖 RNA中で形成される二本鎖を用いることも可能である。 二本鎖を形成する 領域は、 全ての領域において二本鎖を形成していてもよいし、 一部の領域 (例え ば両末端又は片方の末端など) がー本鎖等になっていてもよい。 RNAiに用いられ るオリゴ RNAは、 その長さは限定されず、 例えば、 25塩基以上 (二本鎖の場合に は、 25bp以上) である。
ABA 不活化酵素をコードする遺伝子のノックァゥトは以下のようにして行うこ とができる。 ノックァゥトは外来 DNAおよび内在性のトランスポゾンによって起 こされる。 外来 DNAの場合にはランダムに外来 DNAを導入した形質転換植物ラィ ブラリーを、 内在性トランスポゾンの場合はトランスポゾンが飛びやすくなる組 織培養を経て再生させた植物ライプラリーを用いてスクリーニングすることがで きる。 外来 DNAおよぴ内在性トランスポゾンの既知配列を元にしたプライマーと
CYP707A 遺伝子 (もしくはそのホモログ) 由来の既知配列を元にしたプライマー の組み合わせで、 植物ライブラリーから調製したゲノム DNAを铸型に PCRを行う
ことによって、 また、 CYP707A遺伝子おょぴそのホモログの DNAをプローブにサ ザンハイブリダィゼーション法によって揷入変異を確認することができる。
ABA 不活化酵素を機能的に欠損させたトランスジエニック植物は、 以下のよう にして作出することができる。 すなわち、 先ず、 ABA不活化酵素活性を欠損させ るような変異型 ABA不活化酵素遺伝子を構築する。 変異型 ABA不活化酵素遺伝子 は、 上記 「1 . (2)ABA不活化酵素遺伝子のクローユング」 で述べたような突然変 異導入方法に準じて作製することができる。
次に、 変異型 ABA不活化酵素遺伝子を、 遺伝子工学的手法を用いて植物宿主に 導入することにより、上述したトランスジェニック植物を作製することができる。 変異型 ABA不活化酵素遺伝子の植物宿主への導入方法としては、 ァグロパクテリ ゥム感染法などの間接導入法や、 パーティクルガン法、 ポリエチレングリコール 法、 リボソーム法、 マイクロインジェクション法などの直接導入法などが挙げら れる。
ァグロパクテリゥム感染法を用いる場合、 以下のようにして、 変異型 ABA不活 化酵素遺伝子を導入したトラ スジエニック植物を作製ことができる。
(1) 植物導入用組換えベクターの作製及ぴァグロバクテリゥムの形質転換
植物導入用組換えベクターは、 変異型 ABA不活化酵素遺伝子を含むプラスミ ド から適当な制限酵素を用いて変異型 ABA不活化酵素遺伝子を切り出し、 得られた 断片に必要に応じて適切なリンカーを連結後、 植物細胞用のクローニングベクタ 一に挿入することにより得ることができる。 クローニング用ベクターとしては、 pBI101、 pBI121、 pGA482、 pGAH、 pBIG等のバイナリーベクター系のプラスミ ドゃ pLGV23Neo、 pNCAT、 pM0N200 などの中間ベクター系のプラスミ ドを用いることが できる。
バイナリーベクター系プラスミ ドを用いる場合、 上記のバイナリーベクターの 境界配列(LB, RB)間に、 目的遺伝子を挿入し、 この組換えベクターを大腸菌中で増 幅する。 次いで、 増幅した組換えベクターをァグロバタテリゥム 'チュメファシ エンス C58、 LBA4404、 EHA101、 C58ClRifR、 EHA105等に、 凍結融解法、 エレク ト 口ポレーシヨン法等により導入し、 該ァグロバタテリゥムを植物の形質導入用に 用いる。
上記の方法以外にも、本発明においては、三者接合法 [Nucleic Aci ds Research, 12 : 8711 (1984) ]によつて本発明の遺伝子を含む植物感染用ァグロパクテリゥムを 調製することができる。 すなわち、 目的遺伝子を含むプラスミ ドを保有する大腸 菌 、 ヘルパープラスミ ド(例えば pRK2013など)を保有する大腸菌 、 及びァグロ バタテリゥムを混合培養し、 リファンピシリン及びカナマイシンを含む培地上で 培養することにより植物感染用の接合体ァグロバタテリゥムを得ることができる 植物体内で外来遺伝子などを発現させるためには、 構造遺伝子の前後に、 それ ぞれ植物用のプロモーターやターミネータ一などを配置させる必要がある。 本発 明において利用可能なプロモーターとしては、 例えば力リフラワーモザイクウイ ノレス(CaMV)由来の 35S転写物 [Jefferson, R. A. et al.: EMBO J 6: 3901-3907 (1987) ] , ト ウモロ コシのュビキチン [Chri stensen, A. H. et al.: Plant Mol. Biol. 18 : 675-689 (1992) ]、 ノパリン合成酵素(N0S)遺伝子、オタ トビン(OCT)合成酵素遺 伝子のプロモーターなどが挙げられ、 ターミネータ一配列としては、 例えばカリ フラワーモザィクウィルス由来ゃノパリン合成酵素遺伝子由来のターミネータ一 などが挙げられる。 但し、 植物体内で機能することが知られているプロモーター やターミネータ一であればこれらのものに限定されるものではない。
また、 必要に応じてプロモーター配列と本発明の遺伝子の間に、 遺伝子の発現 を増強させる機能を持つィントロン配列、 例えばトウモロコシのアルコールデヒ ドロゲナーゼ(Adhl)のイントロン [Genes & Development 1: 1183- 1200 (1987) ]を 導入することができる。
さらに、 効率的に目的の形質転換細胞を選択するために、 有効な選択マーカー 遺伝子を本発明の遺伝子と併用することが好ましい。 その際に使用する選択マー カーとしては、カナマイシン耐性遺伝子(ΝΡΤΠ)、抗生物質ハイグロマイシンに対 する抵抗性を植物に付与するハイグロマイシンホスホトランスフェラーゼ(htp) 遺伝子及ぴビアラホス(bialaphos)に対する抵抗性を付与するホスフィノスリシ ンァセチルトランスフェラーゼ(bar)遺伝子等から選ばれる 1つ以上の遺伝子を 使用することができる。
変異型 ABA不活化酵素遺伝子及ぴ選択マーカー遺伝子は、 単一のベクターに一 緒に組み込んでも良いし、 それぞれ別個のベクターに組み込んだ 2種類の組換え
DNAを用いてもよい。
(2) 植物宿主への本発明の遺伝子の導入
本発明において、 植物宿主とは、 植物培養細胞、 栽培植物の植物体全体、 植物 器官(例えば葉、花弁、茎、根、根茎、種子等)、又は植物組織 (例えば表皮、師部、 柔組織、木部、維管束等)のいずれをも意味するものである。植物宿主として用い ることができる宿主としては、 イネ、 大豆、 トマト、 タバコ、 トウモロコシ、 シ ロイヌナズナなどが挙げられる。
植物培養細胞、 植物体、 植物器官又は植物組織を宿主とする場合、 変異型 ABA 不活化酵素遺伝子は、採取した植物切片にベクターをァグロパクテリゥム感染法、 パーティクルガン法、 又はポリエチレングリコール法などで導入し、 植物宿主を 形質転換することができる。 あるいはプロトプラストにエレクトロポレーション 法で導入して形質転換植物を作製することもできる。
ァグロパクテリゥム感染法により遺伝子を導入する場合、 目的の遺伝子を含む プラスミ ドを保有するァグロパクテリゥムを植物に感染させる工程が必須である 力 これは、 バキュームインフィルトレーシヨン法 [CR Acad. Sci. Paris, Life Science, 316 : 1194 (1993) ]により行うことができる。 すなわち、 シロイヌナズナ をパーミキユラィ トとパーライトを等量ずつ合わせた土で生育させたシロイヌナ ズナに、 本発明の遺伝子を含むプラスミ ドを含むァグロパクテリゥムの培養液に 直接のシロイヌナズナを浸し、これをデシケーターに入れパキュームポンプで 65 〜70mmHgになるまで吸引後、 5〜10分間、 室温に放置する。 鉢をトレーに移しラ ップで覆い湿度を保つ。 翌日ラップを取り、 植物をそのまま生育させ種子を収穫 する。
次いで、 種子を目的の遺伝子を保有する個体を選択するために、 適切な抗生物 質を加えた MS寒天培地に播種する。 この培地で生育した植物体を鉢に移し、生育 させることにより、 本発明の遺伝子が導入されたトランスジエニック植物の種子 を得ることができる。
一般に、 導入遺伝子は宿主植物のゲノム中に同様に導入されるが、 その導入場 所が異なることにより導入遺伝子の発現が異なるポジションイフェク トと呼ばれ る現象が見られる。 プローブとして導入遺伝子の DNA断片を用いたノーザン法で
検定することによって、 より導入遺伝子が強く発現している形質転換体を選抜す ることができる。
本発明の遺伝子を導入したトランスジエニック植物及びその次世代に目的の遺 伝子が組み込まれていることの確認は、 これらの細胞及び組織から常法に従って DNAを抽出し、 公知の PCR法又はサザン分析を用いて導入した遺伝子を検出する ことにより行うことができる。
なお、 ABA不活化酵素を所定の条件下でのみ発現できるように改変したトラン スジニニック植物を作出する場合も、 上述した方法に準じて実施することができ る。
このようにして得られた ABA不活化酵素の機能が抑制された植物の ABA不活化 酵素の活性または変異型 ABA不活化酵素の活性は、 上記 「3 . ABA不活化酵素の 生産及び機能解析」 で述べた方法に準じて解析することができる。
上述したように作出した ABA不活化酵素遺伝子をノックアウトした植物や変異 ABA不活化酵素遺伝子を導入したトランスジエニック植物を、 通常の方法によつ て栽培し、 種子を取得することができる。 例えば、 変異型 ABA不活化酵素遺伝子 を導入したトランスジエニック植物から採取された種子では、 ABA の不活化が抑 制されるため、 長期間に亘つて休眠状態を維持することができる。 これにより、 当該種子は、 長期間の保存や輸送に好適なものとなる。
また、 ABA 不活化酵素を所定の条件下でのみ発現できるように改変したトラン スジエニック植物から採取された種子では、 所望のタイミングで ABAを不活化す ることができる。 これにより、 当該種子は、 長期間の保存や輸送に好適であり、 さらに、 穀物等を計画的に栽培するような企業型農業に適したものとなる。 以下、 実施例により本発明を更に詳細に説明するが、 本発明の技術的範囲はこ れら実施例に限定されるものではない。 '
〔実施例 1〕
くシロイヌナズナ由来チトクローム P450 CYP707A CYP707A2、 CYP707A3 及ぴ
CYP707A4の酵母における機能解析〉
理化学研究所 筑波研究所 バイオリソースセンター(〒305 - 0074茨城県つく ば市高野台 3丁目 1番地の 1 ) より提供された、 シロイヌナズナ由来チトクロー
ム F450 CYP707A1及ぴ CYP707A3の完全長 cDNA (pda03938及び pda05432) を用い て、 PCR法にて、 CYP707A1については N末端に Hpa I並びに C末端に Eco RIの制 限酵素サイトを導入した cDNA断片を調製し、 CYP707A3については N末端に Hpa I 並びに C末端に Kpnlの制限酵素サイトを導入した cDNA断片を調製した。 得られ た両 cDNA断片の塩基配列を DNAシークェンシングにより確認し、提供された完全 長 cDNAと相違なく、 また、 変異の不存在を確認した。
次に、 得られた cDNA断片を酵母の発現ベクターである pYeDP60 (Denis Pompon 氏より提供 0 Pompon, D. , Louerat, B. , Bronine, A. , and Urban, P. (1996) . Yeast expression of animal and plant P450s in optimized redox environment. Mothod. Enzymol. 272, 51-64) に導入した。 CYP707A1の cDNA断片に関しては、 pYeDP60 の Bam HIサイトを平滑末端化処理し、 さらに Eco RIで処理したものを用いてラ ィゲーシヨンを行った。 また、 CYP707A3の cDNA断片に関しては、 pYeDP60の Bam HIサイ トを平滑末端化し、 さらに Kpn lで処理したものを用いてライゲーシヨン を行った。
各々の得られたプラスミ ドを、 酵母 (Saccharomyces cerevisiae) の WAT11株 (Denis Pompon ftより fe供、 Pompon, D. , Louerat, B. , Bronine, A. , and Urban, P. (1996) . Yeast expression of animaland plant P450s in optimized redox environment. Mothod. Enzymol. 272, 51-64) に、 定法に従って導入した。 各々 のプラスミドを導入した形質転換酵母は、グルコース入り SGI培地で培養した後、 ガラク トース入り SLI培地に移し、 12時間培養後、 菌体を集菌した。 そして、 集 菌した形質転換酵母をリン酸バッファー (pH7. 6) に懸濁し、 フレンチプレスにて 菌体を破砕した。
次に、 これを超遠心にかけミクロソーム画分を得、 得られたミクロソーム画分 をリン酸バッファー(PH7. 6) に懸濁した。得られたミクロソーム画分溶液に、 500 μ Mの NADPHと 38 μ Μの ABA (ェタノール溶液) とを添加し、 30度で 1晚反応さ せた。
反応終了後、 反応液より酢酸ェチルにて抽出操作を行い、 濃縮乾固後、 液体ク 口マトグラフィー (HPLC) にて生成物の分析を行った。 HPLCでは 0DS (Senshu Pak
PEGASIL - 0DS) カラム (4. 6 x 250讓) を使用した。 10%メタノ一ル及ぴ 0. 1%酢酸
からなる A液と、 60%メタノ一ル及ぴ 0. 1%酢酸からなる B液とを準備し、 溶出開 始 0〜3分は 50%B液で溶出し、 その後 3~33分は 50〜100%B液となるグラジェン トをかけて溶出した。溶出時間は生成物である PAが 16分、原料の ABAが 30分で ある。
CYP707A1の cDNAを導入した形質転換酵母及び CYP707A3の cDNAを導入した形 質転換酵母から得た反応液において、それぞれ 16分にピークが観測された。一方、 空の pYeDP60プラスミ ドだけを導入した形質転換酵母からの反応液においてはこ のピークは検出されなかった。 この結果を図 1乃至 3に示す。 図 1は CYP707A1 の cDNAを導入した形質転換酵母から得た反応液を HPLCに供した際の結果を示し ている。図 2は、 CYP707A3の cDNAを導入した形質転換酵母から得た反応液を HPLC に供した際の結果を示している。 図 3は空の pYeDP60プラスミ ドだけを導入した 形質転換酵母からの反応液を HPLCに供した際の結果を示している。なお、図 1乃 至 3において、 PAのピークを 「PA」 として示し、 ABAのピークを 「ABAJ として示 した。
次に、得られたこのピークの同定を行うために、ガスクロマトグラフィ ^-マス スぺク トロメ トリー (GC - MS) を用いて分析を行った。 カラムは DB- 1 (250 ra x 30 m) を用いた。 分析条件は、 初期温度 80°Cで 1分、 stepl ; 20°C/minで 220°C まで、 step2 ; 5°C/minで 240°Cまで、 step3 ; 40°C/minで 300°Cまで、 step4 ; 300°C で 5 分のプログラムとした。 CYP707A1 の cDNA を導入した形質転換酵母及び CYP707A3の cDNAを導入した形質転換酵母から得た反応液は、それぞれ PAと同じ 保持時間 (11分) にピ クが得られ、 マススペク トルのパターンが既知の PAの スぺクトルパターンと完全に一致した。
以上の結果から、 CYP707A1 の cDNAを導入した形質転換酵母及び CYP707A3の cDNAを導入した形質転換酵母においては、 それぞれ ABAを PAへと変換する活性 を有することが明らかとなった。すなわち、 CYP707A1の cDNA及び CYP707A3の cDNA は、 ABA 8' -水酸化酵素 (ABA 8' - hydroxylase) をコードする遺伝子であると同定 することができた。
また、 同様に CYP707A2及ぴ CYP707A4の機能を解析するために、 定法に従って 乾燥種子及び未熟種子から CYP707A2の. cDNA及び CYP707A4の cDNAを取得した。
そして、 CYP707A2の cDNA及び CYP707A4の cDNAを用い、 上述した方法に準じ、 CYP707A2及び CYP707A4がコードするタンパク質の ABA不活性化能を検討した。 その結果を図 4及ぴ 5に示す。
図 4は CYP707A2の cDNAを導入した形質転換酵母から得た反応液を HPLCに供し た際の結果を示している。 図 4は CYP707A4の cDNAを導入した形質転換酵母から 得た反応液を HPLCに供した際の結果を示している。これら図 4及ぴ 5から分かる ように、 CYP707A2の cDNAを導入した形質転換酵母及ぴ CYP707A4の cDNAを導入 した形質転換酵母においても、それぞれ ABAを PAへと変換する活性を有すること が明らかとなった。すなわち、 CYP707A2の cDNA及ぴ CYP707A4の cDNAは、 ABA 8' - 水酸化酵素 (ABA 8' - hydroxylase) をコードする遺伝子であると同定することが 'できた。
ンロイヌナズナ由来 CYP707A1の生化学的解析〉
次に、 シロイヌナズナ ABA 8' -水酸化酵素 (ここでは CYP707A1) の生化学的解 析を行うため、 ABA 8' -水酸化酵素阻害剤の影響を検討した。当該阻害剤としては、 P450阻害剤として知られている Tetcyclacis, Metyrapone及ぴ Uniconazoleを使 用した。
具体的には、 上述したように調製した反応液に Ι μ Μ 或いは 10 μ Μ の Tetcyclacis若しくは 1 μ M或!/、は': 10 μ Mの Metyrapone若しくは Ι μ Μ或レ、は 10 μ Μの Uniconazoleを添加して、 同様にして反応液に含まれる PA量を測定した。 その結果を図 6に示す。 図 6に示すように、 阻害剤として 10 の Tetcyclacis 及ぴ 10 μ Μの Uniconazoleを用いた場合には、 PAの生成量が大幅に阻害されてお り ABA 8' -水酸化酵素活性を阻害できた。 一方、 阻害剤として Metyraponeを用い た場合には、 PA量が殆ど変化せず ABA 8' -水酸化酵素活性を阻害することができ なかった。
〔実施例 2
くシロイヌナズナにおける発現解析〉
次に、 シロイヌナズナにおける CYP707A1、 A2、 A3及ぴ A4遺伝子の mRNAの蓄積 量を定量 PCRによって解析した。 1/2 Murashige &Skoogを含む 0. 8%寒天培地にシ ロイヌナズナ野生型(Columbia系統) の種を表面殺菌後に播種し、恒明下 22°Cで
2週間生育させた。 生育後の植物体のロゼット葉と根を RNA抽出に用いた。 茎と 花序はバーミユキユライ ト (緑産業社製) とジフィ一ミ ックス (サカタのタネ社 製) を等量に混合した土植え植物体からサンプリングした。鞘は開花後 10日目の ものを用いた。 乾燥種子は収穫後約 4週間後のものおょぴ 2週間後のものを用い た。 鞘と種からの全 RNAの抽出には RNAqueous™ (Ambion社製) を用いた。 それ ら以外の器官からの全 RNAの抽出には TRIZOL Reagent (Invitrogen社製)を用い た。抽出方法は抽出キツト添付のマニュアルに従い、全 RNAは逆転写反応前に LiCl 沈殿法を行った。全飄の逆転写は Superscript™ First-Strand Synthesi s System for RT- PCR (Invitrogen社製)を用い、 添付のマニュアルに従って行った。
定量 PCRは ABI PRISM 7000 (Appl i ed Biosystems)を用い、 Taqman probe法で逆 転写産物を定量した。 サーマルサイクラ一の条件は、 50°Cで 2分間、 続いて 95°C で 15分間の処理で酵素を活性化させた。 続いて、 変性反応は 95°Cで 15秒とし、 ァニール/伸長反応は 60°Cで 1分間とし、 これら変性反応とァニール/伸長反応を 45回繰り返した。
反応終了後、 増幅した cDNAを 10— 4〜10— ¾ ο1/ ^ 1に希釈したものを用い、 検量 線を作製し、 ターゲット遺伝子の mRNAを定量した。 18S RNAの検量線の作製には ' salmon sperm DNAを lOng/ 1〜: Lpg/ μ 1に希釈したものを用いた。 最終的にそれ ぞれの遺伝子発現は 18S RNAの値でノーマライズした相対値で示した。 反応組成 と Taqman PCRに用いたプライマーは以下に示す通りである。
く 18S RNAの測定〉
逆転写産物 5 1
Pre- Developed TaqMan RNA Assay Reagents 18s ribosomal RNA (Appl i ed Biosystems 社製) 1. 25 1
Quant iTect™ Probe PCR Kit (QIAGEN) 12. 5 μ 1
Water 6. 25 1
く 707A1〜A4 mRNAの測定〉
逆転写産物 5 μ 1
フォワードプライマー (ΙΟΟ μ Μ) 0. 2 1
リパースプライマー (100 /ζ Μ) 0. 2 μ 1
TaqManプローブ (50 M) 0. 1 1
Quant iTect™ Probe PCR Kit (QIAGEN) 12. 5 /^ 1
Water 7 μ 1
なお、 CYP707A1の定量に使用したフォワードプライマー、 リバースプライマー 及び TaqManプローブは以下の通りである。
フォワードプライマー; 5' - CTCACTCTCTTCGCCGGAAG - 3' (配列番号 9 )
リバースプライマー; 5' -TTCCAAACTCCCACTCCCTCC-3 ' (配列番号 1 0 )
TaqManプローブ 5' FAM- TGTCTAATCTCTCAGCGCCGCTTTGG- TAMRA3' (配列番号 1 1 )
CYP707A2 の定量に使用したフォワードプライマー、 リバースプライマー及ぴ TaqManプローブは以下の通りである。
フォワードプライマー; 5' - CGTCTCTCACATCGAGCTCCTT- 3' (配列番号 1 2 ) リバースプライマー; 5, -CCAAAAGTCCATCAACACCCTC-3 ' (配列番号 1 3 )
TaqManプローブ; 5' FAM- TCCTCCAAACCCTTTCCTCTTGGACG- TAMRA3' (配列番号 1 4 )
CYP707A3 の定量に使用したフォワードプライマー、 リバースプライマー及び TaqManプローブは以下の通りである。
フォワードプライマー; 5' -CTCTGTTTCTCTGTTTACTCCGATTTA-3 ' (配列番号 1 5 ) リ バースプライマー; 5, -TGCAGCAAAACAGAGAAGATACG-3' (配列番号 1 6 )
TaqManプローブ; 5, FAM- CCGCCGTAGCTCCTCCACGAAAC- TA腿 A3' (配列番号 1 7 )
CYP707A4 の定量に使用したフォワードプライマー、 リバースプライマー及ぴ TaqManプローブは以下の通りである。
フォワードプライマー; 5' -CCTGAAACCATCCGTAAACTCAT-3' (配列番号 1 8 ) リパースプライマー; 5' -TTCCTTACAATCTTGGGCCAA-3 ' (配列番号 1 9 )
TaqManプローブ; 5' FAM- CTGATATCGAGCACATTGCCCTT- TAMRA3' (配列番号 2 0 )
AtNCED3 の定量に使用したフォワードプライマー、 リバースプライマー及ぴ TaqManプローブは以下の通りである。
フォワードプライマー; 5' -GCTGCGGTTTCTGGGAGAT-3' (配列番号 2 1 )
リパースプライマー; 5' - ATCGTCTTCTCAAAGCTCCGAC- 3' (配列番号 2 2 )
TaqManプローブ; 5' FAM- CTTGGTGGCAATCATACTCAGCCGC- TAMRA3' (配列番号 2 3 ) その結果、 以下のことが判明した。
シロイヌナズナ CYP707A mRNAは、 ロゼット葉、 根、 茎、 花序、 未熟果実、 乾燥 種子と調べた全ての器官から検出された。 特に、未熟果実で CYP707A1力 S、乾燥種 子で CYP707A2の mRNA量が多かった (図 7 )。
乾燥種子は高濃度の ABAを蓄積しており、 吸水に伴って ABA量は減少し、 それ に伴って PA量及び DPA量が増大する (図 8 )。 この急激な ABAの減少は、 休眠種 子が発芽に向かう過程の重要なプロセスであると考えられている。 乾燥種子、 お ょぴ、 吸水後、 6 , 1 2 , 2 4時間 2 2度明所で処理した吸水種子から調製した 全 RNAを鎳型に RT- PCRを行った結果、 CYP707A2 mRNAは乾燥種子で蓄積しており、 吸水後 6時間でその mRNA量は急激に増加し、その後は減少した。一方、 CYP707A1 と CYP707A3は乾燥種子で mRNAはそれほど蓄積していないが、 吸水後 1 2時間以 降で増加する傾向があった。 CYP707A4については吸水 2 4時間の間で mRNAを検 出することができなかった(図 9 )。図 8およぴ図 9に結果を示す検討においては、 収穫後 4週間目の種子を用いた。
一方、 植物体が乾燥されると ABA量の急激な増加がみられ、 さらに乾燥植物を 再吸水すると ABAの量は急激に減少する (図 1 0 )。 乾燥時には緩やかに CYP707A 遺伝子 mRNA量は増加した。 さらに、 6時間乾燥させた植物を吸水させると、 4 つ全ての CYP707A遺伝子の発現が活性化した(図 1 2 )。 この乾燥植物の再吸水時 の CYP707A遺伝子発現の活性化は、 乾燥時の ABA合成の鍵酵素をコードしている NCED3遺伝子の発現と逆であり、 乾燥で強く誘導される NCED3遺伝子は再吸水に よってその発現が急激に減少する(図 1 1 )。 さらに 30 μ Μ ABAによる誘導も全て の CYP707A遺伝子発現でみられ、 CYP707A1の ABAによる誘導性が最も顕著だった
(図 1 3 )。 なお、 図 1 0、 1 1および 1 2中、 乾燥 (白丸で示す) は 2週間目植 物をペーパータオル上で乾燥させたもので、 再吸水 (黒丸で示す) は同上の乾燥 処理を 6時間施した後、 ペーパータオルを湿らせて再吸水させたものである。 図 1 0から 1 2に結果を示す検討においては、 収穫後 2週間目の種子を用いた。
〔実施例 3〕
く CYP707Aノックァゥト系統の表現型解析〉
本実施例では、 CYP707A2遺伝子及ぴ CYP707A3遺伝子のノックァゥト系統を作 出し、 種子の休眠状態に関する表現型を解析した。 Arabidopsis Stock Center
(ABRC) (Alonso et al. , Science, 301, 653-657 (2003) ) から入手した CYP707A2 遺伝子及び CYP707A3遺伝子に T- DNAが挿入された系統を用い、それぞれホモ接合 系統を作出した。
具体的に、 図 1 4に示すように、 CYP707A2遺伝子における 5番目のェクソンと 5 番目のイントロンとの間に T - DNA が挿入された cyp707a2 - 1 変異遺伝子、 CYP707A2遺伝子における 7番目のイントロンに T-DNAが挿入された cyp707a2- 2 変異遺伝子、 CYP707A3遺伝子における 1番目のェクソンに T- DNAが挿入された cyp707a3-l変異遺伝子及ぴ CYP707A3遺伝子における 2番目のエタソンに T- DNA が揷入された cyp707a3-2変異遺伝子を入手した。
これら 4種類の変異遺伝子用いて 4種類のホモ接合系統を作出し、 植物体から 種子を採取した。 採取した種子を用いて発芽効率を検討した。 吸水させたフィル ター紙状に種子を載置し幼根の出現を観測した。 幼根の出現を発芽の基準とし、 発芽までの日数と発芽率との関係を図 1 5に示した。 図 1 5から分かるように、 CYP707A3遺伝子をノックアウトした種子では、野生型と比較してやや発芽率が減 少した。一方、 CYP707A2遺伝子をノックアウトした種子では、野生型及ぴ CYP707A3 遺伝子をノックアウトした系統と比較して、 大幅に発芽率が減少した。
また、 乾燥種子に含まれる ABA量、 PA量及び DPA量を、 野生型及び CYP707A2 遺伝子をノックアウトした系統において比較した結果を図 1 6に示す。 さらに、 吸水処理を開始してから種子に含まれる ABA量変化を、野生型及び CYP707A2遺伝 子をノックアウトした系統において比較した結果を図 1 7に示す。 図 1 6及ぴ図 1 7より、 CYP707A2遺伝子をノックアウトした系統においては、 野生型と比較し て ABAが多量に蓄積されており、吸水処理開始から 24時間経過後であっても多量 の ABAが蓄積されていた。
これら図 1 5乃至 1 7に示した結果より、 CYP707A2遺伝子は、 種子に含まれる ABA量を決定する主要な ABA 8' -水酸化酵素であり、 シロイヌナズナにおいては、 CYP707A2遺伝子に由来する ABA 8' -水酸化酵素活性を阻害することによって、 種 子の休眠を維持できることが明らかとなった。
本明細書で引用した全ての刊行物、 特許および特許出願をそのまま参考として 本明細書にとり入れるものとする。
産業上の利用の可能性
本発明によれば、 ABA を不活性化する機能を有する新規な遺伝子を提供する とができる。 また、 本発明によれば、 当該新規な遺伝子を有する発現ベクター 形質転換体、 トランスジヱニック植物及ぴ種子を提供することができる。