明 細 書
ウルッ鉱型薄膜、ウルッ鉱型結晶層を含む積層体、および、これらの製造 方法
技術分野
[0001] 本発明は、結晶配向性が良好で分極方向がそろったウルッ鉱型薄膜、および、ゥ ルツ鉱型結晶層を含む積層体、ならびにこれらの製造方法に関するものである。 背景技術
[0002] 窒化アルミニウム (A1N)などのウルッ鉱型構造の化合物からなる半導体は、圧電性 および焦電性を有する。ウルッ鉱型構造の化合物は、このような性質を有することか ら、電子デバイス、光学デバイス、耐高圧 '耐高温電子デバイスなど多くのデバイスへ 応用すること力 Sできる。
[0003] 実際に、ウルッ鉱型構造の化合物は、高周波発振素子、高周波用フィルター、各 種センサ、スィッチ、超音波発振器、可聴帯域用電気機械変換機や発光素子等様 々な電子部品材料として応用されている。
[0004] ウルッ鉱型構造の化合物の中でも、特に A1Nは、 19世紀半ばに初めて合成されて 以来、研究者の関心を集めてきた。 A1Nは、構造的には六方晶系のウルッ鉱型構造 を持つ化合物材料であり、 ΠΙ - V属化合物の一種である。ウルッ鉱型構造の化合物 は、共有結合を主体とする化合物であるが、 A1Nは他の III - V属化合物とは異なり、 若干イオン性を有してレ、るのが特徴とされてレ、る。
[0005] ウルッ鉱型構造の化合物の基本的な特徴としては、以下の 4つの点などが挙げら れる。 (1)高温度まで化学的安定性を有する。
(2)溶融金属に対する耐食性が高レ、。
(3)電気絶縁性に優れてレ、る。
(4)熱伝導度が大きい。
[0006] また、ウルッ鉱型構造の化合物は、対称中心のない結晶形であるために、圧電性 および焦電性を有することが知られている。
[0007] ウルッ鉱型構造の化合物から薄膜や単結晶を合成する方法として、物理気相成長
法(PVD)の一種である反応性スパッタリング法、分子線エピタキシー法、レザーアブ レーシヨン法、イオンプレーティング法、塩化アルミニウムとアンモニアガスを用いた化 学気相成長法(CVD)、トリメチルアルミニウムとアンモニアガスを用いた有機金属 C VD法などが研究されてレ、る。
[0008] これらの試みは、ほとんどがウルッ鉱型構造の化合物の電子 ·光学的機能性薄膜 の実用化を目的としている。特に A1Nは、弾性表面波(SAW)の伝搬速度が圧電体 の中でも最も大きいことから、高周波領域の SAWフィルターに代表される SAWデバ イスやバルタ弾性波(BAW)としての応用が期待されている。
[0009] ところで、ウルッ鉱型構造の化合物を使用した電子部品材料の多くは、その特性を 十分に発揮するために、結晶性及び結晶配向性を制御する必要がある。このため、 単結晶基板を用いたェピタキシャル技術や、不純物の添加などによる結晶性や結晶 配向性の制御技術が提案されてレ、る。
[0010] 例えば、スパッタリング法で形成された A1N膜は、多結晶構造を示すことが多いが、 圧電体として応用するには、結晶軸の配向性が成膜過程において制御されなけれ ばならない。 A1Nの場合、(0002)面配向となるの力 理想的であり、これを実現する ために多くの研究がなされてきた。
[0011] また、基板上に薄膜として形成する圧電性セラミックスは、 1000°C以上の高キユリ 一点を有し、かつ、数千 MHz以上の高振動数にも対応できることが必要とされる。そ して、実際に圧電性セラミックスを基板上に薄膜として形成する場合、このような特性 を有するものを適宜選択することができる。
[0012] このような特性を有する圧電性セラミックスとして具体的には、ぺロブスカイ型酸化 物、 LiNbO型酸化物、ウルツァイト型化合物が挙げられ、このウルツァイト型化合物
3
としては、 A1N、 ZnO等が挙げられる。特に、 ZnO (酸化亜鉛)あるいは A1N (窒化ァ ノレミニゥム)のうち、 c軸方向に配向された薄膜は、基板が焼結体であっても作製可能 という点で有利なものである(特許文献 1参照)。
[0013] しかし、効果的な圧電特性を得るためには、結晶配向性のみならず、各結晶粒の 自発分極の方向を一定の方向にそろえる必要がある。なぜなら、反対の分極方向を 持った結晶粒の存在によって、全体としての圧電効果が打ち消されてしまうからであ
る。
[0014] また、ウルッ鉱型構造の化合物は、チタン酸ジルコン酸鉛 (PZT)に代表される強誘 電体とは異なり、成型後の分極処理ができないために、これまでに分極に関する検 討は行われてこなかった。ウルッ鉱型構造の化合物の場合、分極方向の制御はその 作製と同時に行われなければならない。
[0015] 本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであって、結晶配向性が良ぐか つ、自発分極方向のそろったウルッ鉱型構造の化合物を含む薄膜、および、その製 造方法を提供するものである。
[0016] また、ウルッ鉱型結晶構造化合物を、電子部品材料として応用する場合には、導電 性やその他の機能を有する機能性物質との複合化が不可欠な場合も多い。このため には、それら任意の機能性物質からなる機能性物質層上に、結晶性や結晶配向性 を制御したウルッ鉱型結晶構造化合物からなる層を成長させた、多層構造の積層体 の作製が必要となる(例えば、特許文献 2参照)。
[0017] しかしながら、下地となる機能性物質層の上に、ウルッ鉱型結晶構造化合物からな る層を成長させる場合、そのウルッ鉱型結晶構造化合物の結晶性及び結晶配向性 を制御することが困難であるという問題が生じる。
[0018] そこで、この問題を解決するために、特許文献 3には、図 6に示すように、基板 15上 に、第 1のウルッ鉱型構造の圧電薄膜 16と、第 1の圧電薄膜 16上に、所定形状にフ オトエッチングして構成された面心立方型構造をもつ材料からなる電極 17と、この電 極 17を含む第 1の圧電薄膜 16上に、第 2のウルッ鉱型構造の圧電薄膜 18とが形成 された弾性表面波素子が記載されている。この弾性表面波素子において、第 1の圧 電薄膜 16は主として電極 17の配向ひいては第 2の圧電薄膜 18の配向をよくするの に機能している。
[0019] 上記特許文献 3では、図 6に示すように、島状に形成された電極 17上に形成される 第 2のウルッ鉱型構造の圧電薄膜 18の配向性を改善するために、基板 15と電極 17 との間にさらに第 1のウルッ鉱型構造の圧電薄膜 16を形成している。しかしながら、 電子部品材料によっては、第 1のウルッ鉱型結晶構造化合物の層の一部分ではなく 、第 1のウル
ッ鉱型結晶構造化合物の層の全領域を覆った電極 17などの機能性物質層の上に 第 2のウルッ鉱型結晶構造ィヒ合物の層を形成させた積層体を用いる必要が生じる。
[0020] しかし、第 1のウルッ鉱型結晶構造化合物の層の一部ではなく全域を覆った機能 性物質層の上に、第 2のウルッ鉱型結晶構造化合物の層を形成する場合には、機能 性物質層の内部の応力が大きぐ層が剥がれやすいという問題が生じる。
[0021] また、機能性物質層が体心立方構造又は六方最密格子構造を有する金属からな る場合については、該機能性物質層の上に成長させたウルッ鉱型結晶層の結晶性 や結晶配向性の制御は、面心立方構造を有する機能性物質の場合と比較して困難 であり、未だその方法は見出されていない。これは、面心立方構造の機能性物質と 比較して、体心立方構造又は六方最密格子構造の機能性物質の方がウルッ鉱型結 晶との格子定数の差が大きいこと及び体心立方構造の機能性物質は結晶化度が低 いことに起因する。
[0022] そこで、本発明では、分極方向のそろったウルッ鉱型構造の化合物を含む薄膜、 および、その製造方法を提供するだけでなぐ機能性物質層の結晶構造に関わらず 、該機能性物質層の上に、結晶性や結晶配向性が制御されたウルッ鉱型結晶構造 の化合物からなる層を成長させた多層構造の積層体およびその製造方法について も提供する。
特許文献 1:特開平 10-122948号公報 (公開日:平成 10年(1998年) 5月 15日) 特許文献 2 :特開昭 60-142607号公報 (公開日:昭和 60年(1985年) 7月 27日) 特許文献 3 :特開昭 57— 48820号公報 (公開日:昭和 57年(1982年) 3月 20日) 発明の開示
[0023] 本発明者等は、上記の課題に鑑み、金属材料をターゲットとし、窒素または酸素ガ スを反応性ガスとして用いる反応性スパッタリング法を用いて、分極方向のそろったゥ ルツ鉱型構造の化合物薄膜を製造する方法に関して鋭意検討した。その結果、スパ ッタリング法による薄膜製造時の成膜条件、すなわち、基板温度、スパッタリング圧力 、窒素または酸素濃度、高周波電力密度、膜厚などを最適化することによって、上記 の課題を解決することができることを見出し、本発明を完成させるに至った。
[0024] また、本願発明者らは、上記課題に鑑み鋭意検討した結果、下地となる機能性物
質層のさらに下、すなわち、基板と機能性物質層との間に、第 1のウルッ鉱型結晶層 をあらかじめ形成し、その機能性物質層上に、 目的とする第 2のウルッ鉱型結晶層を 形成することにより、第 2のウルッ鉱型結晶層の結晶性及び結晶配向性を向上させる ことができることを見出して本発明を完成させるに至った。
[0025] すなわち、本発明にかかるウルッ鉱型薄膜は、ウルッ鉱型構造の化合物の結晶を 含むウルッ鉱型薄膜であって、その結晶粒の分極率 X力 51≤X≤ 100%の範囲内 であることを特徴とするものである。
[0026] ウルッ鉱型構造の化合物の結晶粒は、正(プラス)または負(マイナス)に分極して いる。ここで、上記「結晶粒の分極率」とは、薄膜表面の上記結晶粒全体における正 ( プラス)に分極しているもの、または、負(マイナス)に分極しているものの割合のうち、 何れか高レ、方の割合のことを意味する。
[0027] ウルッ鉱型構造の化合物は、上述のように、対称中心のない結晶形であるために、 圧電
性および焦電性を有することが知られている。そのため、このウルッ鉱型構造の化合 物を基板上に薄膜状に形成することによって、圧電性および焦電性を有する電子部 品材料として利用することが試みられている。
[0028] ウルッ鉱型構造の化合物からなる薄膜を電子部品材料として用いる場合、当該薄 膜は効果的な圧電性を有するように、その結晶粒の分極方向が十分にそろった状態 となるように成膜することが重要となる。そして、その結晶粒の分極率が 51 %以上で あれば、その分極方向が十分にそろった状態であると言える。
[0029] 本発明に力かるウルッ鉱型薄膜は、上記のように、薄膜中の結晶粒の分極率が 51
%以上と、効果的な圧電特性を得るために十分な分極率を有している。そのため、 本発明のウルッ鉱型薄膜は、圧電性を有する電子部品材料として各種電子部品に 有効に利用することができる。
[0030] 上記のウルッ鉱型薄膜において、上記ウルッ鉱型構造の化合物の結晶は、 (0002
)面に配向していることが好ましい。これによれば、ウルッ鉱型薄膜により効果的な圧 電性を付加することができる。
[0031] 本発明のウルッ鉱型薄膜は、窒化アルミニウム、窒化ガリウム、窒化インジウム、酸
化亜鉛からなる群から選択される何れか一つの化合物、または、上記の群から選択さ れる任意の 2つ以上の化合物からなることが好ましい。
[0032] また、本発明にかかるウルッ鉱型薄膜の製造方法は、ウルッ鉱型構造の化合物の 結晶を含むウルッ鉱型薄膜の製造方法であって、スパッタリング法によって、上記ゥ ルツ鉱型薄膜中の結晶粒の分極率 Xが、 51≤X≤ 100%の範囲内となるように成膜 することを特 ί敷とするものである。
[0033] 上記の方法によれば、得られるウルッ鉱型薄膜中の結晶粒の分極率が 51%以上と なり、効果的な圧電特性を得るために十分な分極率を有するウルッ鉱型薄膜を製造 すること力 Sできる。そのため、本発明の方法によって製造されたウルッ鉱型薄膜は、 圧電性を有する電子部品材料として各種電子部品に有効に利用することができる。
[0034] 上記の方法においては、単結晶、多結晶、非晶質(アモルファス)のうちの何れかの 構造を有する基板上へ薄膜を形成することが好ましい。
[0035] また、上記の方法にぉレ、て、基板上に薄膜を形成するときの基板の温度は、室温 一 800°Cの範囲内であることが好ましい。ここで、上記「室温」とは、ウルッ鉱型薄膜 の製造を実施する室内の温度のことである。
[0036] 上記の方法において、スパッタリング法によって薄膜を形成するときのスパッタリン グ圧力は、 0. 05-5. OPaの範囲内であることが好ましい。
[0037] 上記の方法において、スパッタリング法に用いられるスパッタリングガスには、ァルゴ ンおよび窒素が少なくとも含まれ、上記スパッタリングガス中の窒素の濃度は 5— 90
%の範囲内であることが好ましい。
[0038] 上記の方法において、上記スパッタリングガスには、酸素が 0. 2— 10%の割合で 含まれていることが好ましい。
[0039] 上記の方法において、スパッタリング法によって薄膜を形成するときに用いる高周 波電
力密度は、 1- 12WZ cm2の範囲内であることが好ましレ、。
[0040] 上記の方法においては、上記ウルッ鉱型薄膜の膜厚が 25nm以上になるように成 膜することが好ましい。
[0041] 上記の方法において、上記ウルッ鉱型薄膜は、窒化アルミニウム、窒化ガリウム、窒
化インジウム、酸化亜鉛からなる群から選択される何れか一つの化合物、または、上 記の群から選択される任意の 2つ以上の化合物から形成されることが好ましい。
[0042] 本発明のウルッ鉱型薄膜の製造方法において、上記のような各成膜条件を採用す ることによって、得られるウルッ鉱型薄膜中の結晶粒の分極率をさらに向上させること ができる。そのため、より高い圧電性が付与され、電子部品材料としてより有用なゥノレ ッ鉱型薄膜を製造することができる。
[0043] また、本発明にかかる積層体は、基板上に、ウルッ鉱型結晶構造化合物からなる 第 1のウルッ鉱型結晶層と、第 1のウルッ鉱型結晶層の全領域を覆った機能性物質 層と、機能性物質層を覆ったウルッ鉱型結晶構造ィヒ合物からなる第 2のウルッ鉱型 結晶層とが形成されてレヽることを特徴としてレヽる。
[0044] 上記積層体においては、上記基板は、単結晶、多結晶又はアモルファスの何れか の物質からなることが好ましい。
[0045] また、上記積層体は、上記第 1のウルッ鉱型結晶層及び第 2のウルッ鉱型結晶層を 構成するウルッ鉱型結晶構造化合物の(0001)面に対して垂直な c軸が、上記基板 表面と略垂直に配向してレ、ることが好ましレ、。
[0046] 本発明にかかる積層体は、上記第 1のウルッ鉱型結晶層及び/又は第 2のゥルツ 鉱型結晶層が、窒化アルミニウム、窒化ガリウム、窒化インジウム又は酸化亜鉛から 選択される 1種以上の化合物を主成分として含むことが好ましい。
[0047] また、本発明にかかる積層体は、上記第 1のウルッ鉱型結晶層及び第 2のウルッ鉱 型結晶層が、窒化アルミニウムを主成分として含むことが好ましい。
[0048] さらに、本発明にかかる積層体は、上記第 1のウルッ鉱型結晶層と第 2のウルッ鉱 型結晶層とが、同一成分からなることが好ましい。
[0049] 本発明にかかる積層体は、上記機能性物質層が、単結晶、多結晶又はァモルファ スの何れかの物質を含むことを特徴としている。また、上記積層体においては、上記 機能性物質層が、導電性物質を含むことが好ましぐ上記機能性物質層が、金属を 含むことがより好ましぐ上記機能性物質層が、体心立方構造又は六方最密格子構 造を有する金属を含むことが特に好ましい。本発明にかかる積層体においては、上 記機能性物質層を構成する機能性物質の代表的な一例としては、例えば、モリブデ
ン又はタングステンの単体、或いは少なくともその一方の元素を含む化合物を挙げる こと力 Sできる。
[0050] 本発明にかかる積層体は、上記第 1のウルッ鉱型結晶層の厚さが 5nm以上である こと力 S好ましく、 50nm以上、 200nm以下であること力 Sより好ましレ、。
[0051] 本発明にかかる製造方法は、上記積層体の製造方法であって、基板上にウルッ鉱 型結晶構造化合物からなる第 1のウルッ鉱型結晶層を形成する工程と、第 1のゥルツ 鉱型結晶層を覆うように機能性物質層を形成する工程と、機能性物質層上にウルッ 鉱型結晶構造化合
物からなる第 2のウルッ鉱型結晶層を形成する工程とを含むとともに、上記少なくとも
1つの工程を、気相成長法により行うことを特徴としている。
[0052] また、上記製造方法において、上記気相成長法は、物理的気相成長法及び Z又 は化学的気相成長法の何れかであることが好ましい。
[0053] 上記製造方法において、上記物理的気相成長法の代表的な一例として、真空蒸 着法、分子線エピタキシー法、レーザーァプレーシヨン法、スパッタ蒸着法、イオンプ レーティング法、イオンィ匕クラスタービーム蒸着法又はイオンビーム蒸着法が挙げら れる。
[0054] また、上記製造方法において、上記化学的気相成長法の代表的な一例として、熱 CVD、光 CVD、高周波プラズマ CVD、マイクロ波プラズマ CVD、 ECRプラズマ CV D又は DCプラズマ CVDが挙げられる。
[0055] 上記構成または方法によれば、ウルッ鉱型結晶層の結晶性や結晶配向性がよぐ かつ、機能性物質の結晶構造を問わず、ウルッ鉱型結晶層と機能性物質層とを複合 化した多層構造の積層体を作製することができる。それゆえ、ウルッ鉱型結晶構造化 合物と、導電性等の機能を有する機能性物質とを複合化した電子部品材料の品質 を向上させることが可能となる。
[0056] 本発明のさらに他の目的、特徴、および優れた点は、以下に示す記載によって十 分分かるであろう。また、本発明の利点は、次の説明によって明白になるであろう。 図面の簡単な説明
[0057] [図 1]本発明のウルッ鉱型薄膜の製造方法によって得られたウルッ鉱型薄膜の分極
方向を示す断面図である。
[図 2]従来のウルッ鉱型薄膜の製造方法によって得られたウルッ鉱型薄膜の分極方 向を示す断面図である。
[図 3]本発明における積層体の断面図である。
[図 4]実施例にて作製された AlNZMo/AlNZSi積層体に関する XRD測定の A1 N (0002)ピークのロッキングカーブである。
[図 5]比較例にて作製された AlNZMo/Si積層体に関する XRD測定の A1N (000 2)ピークのロッキングカーブである。
[図 6]従来の積層体の断面図である。
発明を実施するための最良の形態
[0058] 以下、本発明の実施の一形態について説明する。
[0059] 本実施の形態では、まず、本発明にかかるウルッ鉱型薄膜およびその製造方法に ついて説明する。
(1)ウルッ鉱型薄膜とその製造方法
本発明にかかるウルッ鉱型薄膜は、ウルッ鉱型構造の化合物の結晶を含むウルッ 鉱型薄膜であって、その結晶粒の分極率 Xが、 51≤X≤ 100%の範囲内であること を特徴とするものである。このウルッ鉱型薄膜は、電子部品材料として利用する場合 に十分な圧電
性を有しているものである。
[0060] 例えば、 A1N薄膜に十分な圧電性を持たせるためには、 A1Nの結晶を(0002)面 に配向させることが重要となる。そこで、スパッタリング法の条件を最適化することによ つて、あらゆる基板上に、その結晶構造が(0002)面に配向した A1N膜を製造するこ とのできる製造条件が検討されてレ、る。
[0061] し力、しながら、結晶が(0002)面に配向した A1Nでも、十分な圧電性は得られなレ、。
本願発明者らは、その原因を図 2に示すような分極方向の不揃いにあると考えた。な お、図 2は、従来法によって基板 11上に成膜されたウルッ鉱型薄膜 12を示す断面 図である。この図に示すように、従来法によって基板 11上に成膜された A1N膜 (ウル ッ鉱型薄膜) 12は、矢印で示す分極方向が不揃いであるため、結晶によって得られ
る圧電効果が打ち消されていまい、全体として圧電効果が低下するという問題を有し ている。
[0062] そこで、本願発明者らは、スパッタリング条件のさらなる検討を行レ、、図 1に示すよう に、結晶が(0002)面に配向して、なおかつ分極方向のそろった A1Nの製造条件を 見出した。図 1は、本発明の製造方法によって基板 1上に成膜されたウルッ鉱型薄膜 2を示す断面図である。この図に示す本発明の製造方法によって基板 1上に成膜さ れた A1N膜 (ウルッ鉱型薄膜) 2は、 A1Nの結晶粒の分極方向が 51 %以上 100%以 下の割合でそろった状態にあるものである。なお、図 1においては、 A1N膜における 結晶粒の分極方向を矢印で示している。
[0063] ここで、本発明にかかるウルッ鉱型薄膜の製造方法における具体的な成膜条件、 つまり、得られる薄膜中の結晶粒の分極率 X力 51≤X≤ 100%の範囲内となるよう なウルッ鉱型薄膜の成膜条件について説明する。
[0064] スパッタリングにおける基板温度については、室温から 800°Cの範囲内とすればよ レ、。
[0065] また、スパッタリング圧力は、 0· 05—5. OPaの範囲内とすればよレ、。
[0066] また、スパッタリングガスは、アルゴンと窒素の混合ガスであって、当該混合ガス中 の窒素濃度は、 5— 90%の範囲内であればよい。また、酸素を付加する場合には、 当該混合ガス中の酸素濃度は、 0. 2— 10%の範囲内であればよい。
[0067] また、高周波電力は、 1一 20W/ cm2の範囲内であればよい。
[0068] また、 A1N膜は、膜厚が 25nm— 100 /i mの範囲内となるように成膜すればよい。
[0069] そして、本発明のウルッ鉱型薄膜を製造する場合のより好ましい成膜条件を以下に 示す。
[0070] スパッタリングにおける基板温度は、 300— 400°Cの範囲内に設定することがより好 ましレ、。また、スパッタリング圧力は、 0. 5— lPaの範囲内に設定することがより好まし レ、。また、高周波電力は、 4一 8W/cm2の範囲内に設定することがより好ましい。
[0071] 成膜時の基板温度、スパッタリング圧力、および、高周波電力を以上のように設定 することによって、得られるウルッ鉱型薄膜中の結晶粒の分極率 Xをより向上させるこ とがで
きる。したがって、上記のより好ましい成膜条件によれば、その圧電性を向上させ、電 子部品材料としてより有用なウルッ鉱型薄膜を得ることができる。
[0072] 次に、本発明のウルッ鉱型薄膜の製造に用いられる基板 1について説明する。この 基板 1は、単結晶、多結晶および非晶質 (アモルファス)の何れであってもよい。また 、部分的に結晶化したものであってもよい。
[0073] 上記基板 1の材料としては、機能性セラミックスの一つである絶縁性セラミックスを用 レ、ることができる。この基板材料に要求される基本的性質としては、高絶縁性、熱伝 導性、低誘電率、他の素子とのマッチング、化学的安定性、焼結性などが挙げられる
[0074] より具体的には、基板 1の材料として、 Si、サファイア、水晶、酸化マグネシウム、二 ォブ酸リチウム、タンタル酸リチウム等の単結晶;酸化アルミ、窒化ケィ素、炭化ケィ 素、酸化ジノレコユアに代表されるセラミックス等の多結晶;ガラス、金属ガラス、炭素 等のアモルファスを用いることができる。このように、基板 1の結晶構造は、特に限定 されるものではない。
[0075] 上述の説明では、ウルッ鉱型構造の化合物として A1Nを例に挙げて、分極方向の そろったウルッ鉱型薄膜を製造する場合の製造条件について説明した。しかし、本 発明では、 A1Nのみならず他のウルッ鉱型構造の化合物(例えば、酸化亜鉛)を用 レ、て上述のような条件でウルッ鉱型薄膜を製造しても、得られる薄膜の圧電性を向 上させることができる。
[0076] 続いて、本発明に力かるウルッ鉱型結晶を含む積層体およびその製造方法につい て説明する。
[0077] (2)ウルッ鉱型結晶層を含む積層体
本発明にかかる積層体について図 3に基づいて説明する。図 3は本発明にかかる ウルッ鉱型結晶構造化合物を含む積層体の概略の構成を示す断面図である。
[0078] 本発明にかかる積層体は、基板 5上に、第 1のウルッ鉱型結晶層 6と、機能性物質 層 7と、第 2のウルッ鉱型結晶層 8とが、この順で基板 5に略平行に積層されている。 より具体的には、本発明の積層体は、基板 5上に、第 1のウルッ鉱型結晶層 6が形成 され、その全領域を覆うように、機能性物質層 7が形成され、さらに機能性物質層 7上
に第 2のウルッ鉱型結晶層 8が形成された積層構造を有している。各層の詳細につ いては、後述する。
[0079] このような、導電性やその他の機能を有する機能性物質層 7と、第 1および第 2のゥ ルツ鉱型結晶層 6 · 8とを複合化した積層体を用いれば、機能性物質層 7上に形成さ れた第 2のウルッ鉱型結晶層の結晶性や結晶配向性の向上が可能となる。
[0080] 本発明の積層体は、基板 5上に第 1のウルッ鉱型結晶層 6、機能性物質層 7、第 2 のウルッ鉱型結晶層 8の各層をそれぞれ、この順に形成したものである力 必要によ つては基板を除去して使用することもできる。
[0081] 以下、本発明の積層体を構成する基板 5、第 1および第 2ウルッ鉱型結晶層 6 · 8、 及び機能性物質層 7について詳細に説明する。
[0082] <基板 5 >
基板 5は、特に限定されるものではなぐ単結晶、多結晶、又はアモルファスの何れ 力の物質からなるものであってもよいし、部分的に結晶化したものであってもよい。
[0083] より具体的には、基板 5としては、 Si、サファイア、水晶、酸化マグネシウム、ニオブ 酸リチウム、タンタル酸リチウム等の単結晶;酸化アルミ、窒化ケィ素、炭化ケィ素、酸 化ジノレコユアに代表されるセラミックス等の多結晶;ガラス、金属ガラス、炭素等のァ モルファスが挙げられるがこれに限定されるものではなレ、。つまり、基板 5の結晶構造 は、特に限定されるものではない。
[0084] なお、図 3の積層体は、基板 5上に、第 1のウルッ鉱型結晶層 6、機能性物質層 7、 および第 2のウルッ鉱型結晶層 8の各層がそれぞれこの順に形成された 4層構造で あるが、場合によっては、基板 5を除去した 3層構造の積層体としても使用することが できる。
[0085] <第 1および第 2のウルッ鉱型結晶層 6 · 8 >
第 1および第 2のウルッ鉱型結晶層 6 · 8は、ウルッ鉱型結晶構造化合物からなるも のであれば特に限定されるものではない。
[0086] 上記ウルッ鉱型結晶構造化合物としては、例えば、窒化アルミニウム、窒化ガリウム 、窒化インジウム又は酸化亜鉛の何れかの化合物を主成分として含むことが好ましく 、窒化アルミニウムを主成分とする化合物であることがより好ましレ、。
[0087] ここで、上記「主成分として含む」とは、成分中一番多く含むことを意味する。したが つて、第 1のウルッ鉱型結晶層 6および第 2のウルッ鉱型結晶層 8は、単独のゥルツ 鉱型結晶構造化合物からなる層であってもよいし、 2種以上のウルッ鉱型結晶構造 化合物からなる混晶からなる層であってもよいし、さらに別の化合物を含む層であつ てもよレ、。当該別の化合物としては、第 1のウルッ鉱型結晶層 6および第 2のウルッ鉱 型結晶層 8の結晶性や結晶配向性に影響を与えない限り、特に限定されるものでは ない。
[0088] また、第 1のウルッ鉱型結晶層 6および第 2のウルッ鉱型結晶層 8は、同一成分から なることが好ましいが、異なる成分からなるものであってもよい。
[0089] 第 1のウルッ鉱型結晶層 6の c軸は、上記基板表面と略垂直に配向していることが 好ましレ、。これにより、第 2のウルッ鉱型結晶層 8を構成するウルッ鉱型結晶層の c軸 も、基板 5表面と略垂直方向に配向する。すなわち、機能性物質層 7上に、結晶性お よび結晶配向性が良好な第 2のウルッ鉱型結晶層 8が形成可能となる。
[0090] 本発明は、機能性物質層 7の上に結晶性や結晶配向性を向上させた第 2のゥルツ 鉱型結晶層 8を形成することを目的としている力 以上のように、第 2のウルッ鉱型結 晶層 8のみでなぐ第 1のウルッ鉱型結晶層 6及び第 2のウルッ鉱型結晶層 8を構成 するウルッ鉱型結晶構造化合物の c軸が、上記基板表面と略垂直に配向しているこ とが好ましい。
[0091] 上記第 2のウルッ鉱型結晶層の c軸は、上記基板表面と略垂直に配向していること が好ましい。これにより、上記第 2のウルッ鉱型結晶層 8の結晶性が高品質に保たれ るので、ウルッ鉱型結晶構造化合物は、より高い硬度、速い音速、広いバンドギヤッ プを有する高レ、機能性を示し、ウルッ鉱型結晶構造化合物と導電性等の機能を有 する機能性物質とを複合化した電子部品材料の品質を向上させることが可能となる。
[0092] なお、前述した c軸は、第 1のウルッ鉱型結晶層 6及び第 2のウルッ鉱型結晶層 8を 構成するウルッ鉱型結晶構造化合物の(0001)面に対して垂直な軸とする。
[0093] また、第 2のウルッ鉱型結晶層 8の厚さは、積層体の用途によって設定すればよぐ 特に限定されるものではなレ、。
[0094] 第 1のウルッ鉱型結晶層 6の厚さは、第 2のウルッ鉱型結晶層 8の c軸が上記基板
表面と略垂直に配向しているような結晶配向性を得るために必要な厚さであれば特 に限定されない。具体的には、第 1のウルッ鉱型結晶層 6の厚さは、 5nm以上である ことが好ましぐ 50nm以上、 200nm以下であることがより好ましぐ 80nm以上、 120 nm以下であることがさらに好ましい。とりわけ、第 1のウルッ鉱型結晶層 6の厚さは、 1 OOnmであることが特に好ましい。
[0095] これにより、特に、機能性物質層 7が体心立方構造又は六方最密格子構造を有す る場合にも、機能性物質層 7の上に成長させた第 2のウルッ鉱型結晶層 8の結晶性 や結晶配向性の制御が可能となる。すなわち、機能性物質 7が体心立方構造又は六 方最密格子構造である場合は、面心立方構造である場合と比較して、機能性物質層 7上に成長させた第 2のウルッ鉱型結晶層 8の結晶性や結晶配向性の制御が困難で あるが、第 1のウルッ鉱型結晶層 6の厚さを上記のようにすることにより、第 2のゥルツ 鉱型結晶層 8の c軸が上記基板表面と略垂直に配向しているような結晶配向性を得 ること力 S可言 となる。
[0096] なお、以上のことから、本発明にかかる積層体は、基板上に、第 1のウルッ鉱型結 晶層と、第 1のウルッ鉱型結晶層の一部を覆うように形成された体心立方構造又は六 方最密格子構造を有する機能性物質層と、機能性物質層を含む第 1のウルッ鉱型 結晶層を覆った第 2のウルッ鉱型結晶層とが形成されていることを特徴とする積層体 であってもよい。
[0097] <機能性物質層 7 >
機能性物質層 7は、互いに対向する第 1のウルッ鉱型結晶層 6と第 2のウルッ鉱型 結晶層 8との間に形成されている。
[0098] 機能性物質層 7を構成する機能性物質は、第 1および第 2のウルッ鉱型結晶層 6 · 8 と複合化した電子部品材料に用いられる物質であって、何らかの機能を有するもの であれば特に限定されない。例えば、機能性物質の機能としては、電気伝導性、熱 伝導性、断熱性、耐熱性、耐食性、耐摩耗性等が挙げられる。
[0099] 上記機能性物質は、特に限定されず、単結晶、多結晶、又はアモルファスの何れ かの物質を含んでおればよぐ単結晶、多結晶、又はアモルファスのいずれの物質 であってもよいし、部分的に結晶化したものであってもよい。つまり、上記機能性物質
の結晶構造は、特に限定されるものではなレ、。
[0100] 機能性物質層 7は、例えば、金属、半導体、導電性高分子、導電性ガラスなどの導 電性物質を含んでいるか又はこれらからなることが好ましぐ金属を含んでいるか又 は金属からなることがより好ましい。さらに、機能性物質層 7は、体心立方構造又は六 方最密格子構造を有する金属を含んでいる力 たはこれらからなることがさらに好ま しい。
[0101] これにより、機能性物質層 7が第 1のウルッ鉱型結晶層 6の全領域を覆うことによる、 機能性物質層 7の内部の応力が大きく層が剥がれやすいという問題を解決すること が可能となる。即ち、例えばタングステンやモリブデン等の体心立方構造又は六方最 密格子構造を有する金属は、アルミニウム等の面心立方構造を有する金属と比較し て、ウルッ鉱型結晶構造化合物と熱膨張係数が近い。それゆえ、機能性物質層 7が 第 1のウルッ鉱型結晶層 6の全領域を覆う場合にも応力が発生しにくく剥がれにくレ、
[0102] したがって上記機能性物質は、とりわけ、モリブデン又はタングステンの単体、或い は少なくともその一方の元素を含む化合物であることが特に好ましい。また、モリブデ ン又はタングステンの単体、或いは少なくともその一方の元素を含む化合物を含む 混合物であ
つてもよレ、。これらの硬い金属を使用することによって、高い振動数に対応する電子 部品を供給することが可能になる。
[0103] 上記体心立方構造を有する金属は、特に限定されるものではなぐ例えば、バリゥ ム(Ba)、クロム(Cr)、 α—鉄(a _Fe)、 —鉄(i3 _Fe)、 δ—鉄( δ _Fe)、リチウム( Li)、モリブデン(Mo)、ナトリウム(Na)、 j3—チタン (Ti)、 ひ—タングステン (W)等が 挙げられる。
[0104] 一方、上記六方最密格子構造を有する金属としては、特に限定されるものではなく 、例えば、ベリリウム(Be)、 /3—カルシウム(j3 _Ca)、カドミウム(Cd)、 _コノ ノレト( β -Co)、 β—クロム( β -Cr)、マグネシウム(Mg)、ニッケル(Ni)、チタン (Ti)、亜鉛 (Zn)等が挙げられる。
[0105] 力、かる機能性物質層 7上にウルッ鉱型結晶層 8を形成することにより、ウルッ鉱型結
晶層と導電性等の機能を有する機能性物質層とを複合化することが可能となる。そ れゆえ、ウルッ鉱型結晶化合物と様々な機能性物質とを複合化した形で、ウルッ鉱 型結晶構造化合物を電子部材料に応用することができる。
[0106] また、機能性物質層 7の厚さは、積層体の用途によって設定すればよぐ特に限定 されるものではない。
[0107] 第 2のウルッ鉱型結晶層 8の c軸が上記基板表面と垂直に配向しているような結晶 配向性を得るためには、機能性物質層 7の厚さは lOnm以上であることが好ましぐ 1 OOnm以上、 300nm以下であること力 Sより好ましく、 lOOnmであることが特に好まし レ、。
[0108] 以上のような積層体は、高周波発振素子、高周波用フィルター、各種センサ、スイツ チ、超音波発振器、可聴帯域用電気機械変換機、発光素子等様々な電子部品材料 として利用することができる。例えば、具体的な一例としては、次世代用携帯電話用 の高周波フィルターやセンサなどを挙げることができる力 これらに限定されるもので はない。また、第 1のウルッ鉱型結晶層 6の全域を機能性物質層 7で覆うことにより、 初めてバルタ型共振器の作製が可能となる。
[0109] (3)ウルッ鉱型結晶構造化合物を含む積層体の製造方法
本発明にかかる製造方法は、上記積層体の製造方法であって、基板 5上にウルッ 鉱型結晶構造化合物からなる第 1のウルッ鉱型結晶層 6を形成する工程と、第 1のゥ ルツ鉱型結晶層 6を覆うように機能性物質層 7を形成する工程と、機能性物質層 7上 にウルッ鉱型結晶構造化合物からなる第 2のウルッ鉱型結晶層 8を形成する工程と を含む製造方法であれば特に限定されなレ、。
[0110] また、上記製造方法は、これらの工程の少なくとも一つの工程、より好ましくは、 2ェ 程以上が、気相成長法により製造されることが好ましぐ物理的気相成長法及び Z又 は化学的気相成長法の何れかであることがさらに好ましい。
[0111] 具体的には、上記物理的気相成長法の一例としては、真空蒸着法、分子線ェピタ キシ一法、レーザーァプレーシヨン法、スパッタ蒸着法、イオンプレーティング法、ィ オン化クラスタービーム蒸着法、イオンビーム蒸着法等が挙げられるがこれに限定さ れるものではない。
[0112] また、上記化学的気相成長法の具体的な一例としては、熱 CVD、光 CVD、高周波 プ
ラズマ CVD、マイクロ波プラズマ CVD、 ECRプラズマ CVD、 DCプラズマ CVD等が 挙げられるがこれに限定されるものではない。
[0113] 基板 5上にウルッ鉱型結晶構造化合物からなる第 1のウルッ鉱型結晶層 6を形成す る工程は、上記基板上にウルッ鉱型結晶構造化合物からなる層を形成する工程であ れば、特に限定されるものではなぐ例えば、上記の気相成長法の何れかを好ましく 用いることができる。
[0114] 第 1のウルッ鉱型結晶層 6を覆うように機能性物質層 7を形成する工程も、特に限定 されるものではなぐ例えば、上記の気相成長法の何れかを好ましく用いることができ る。
[0115] 機能性物質層 7上にウルッ鉱型結晶構造化合物力 なる第 2のウルッ鉱型結晶層 8を形成する工程も、特に限定されるものではなぐ例えば、上記の気相成長法の何 れかを好ましく用いることができる。
[0116] 第 1又は第 2のウルッ鉱型結晶層 6 · 8が c軸配向性を有するためには、原料には純 金属を用い、化学的気相成長法によることがより好ましぐ例えばスパッタリングを用 いる場合は、ターゲットにアルミニウムを使用し、ガスにアルゴンと窒素を用いることが 好ましレ、。また、この場合の基板の温度は 200°C以上、 400°C以下であることが好ま しい。
[0117] また、上記の 3つの工程の順序は、上記積層体を製造するものであれば、特に限定 されない。
[0118] 尚、発明を実施するための最良の形態の項においてなした具体的な実施態様また は実施例は、あくまでも、本発明の技術内容を明らかにするものであって、そのような 具体例にのみ限定して狭義に解釈されるべきものではなぐ本発明の精神と次に記 載する特許請求の範囲内で、いろいろと変更して実施することができるものである。
[0119] 以下、本発明の実施例を説明する。
〔実施例 1〕
実施例 1では、基板上にウルッ鉱型構造の化合物として A1Nを用いて基板上にゥ
ルツ鉱型薄膜を成膜した。成膜条件は、基板温度 : 400°C、窒素濃度:50%、高周 波電力密度: 7. 83W/cm2、スパッタリング圧力: 0. 5Paであった。この成膜条件に て、 A1N (窒化アルミニウム)の膜厚が 1 β mになるように、基板上にウルッ鉱型薄膜 を形成した。得られたウルッ鉱型薄膜の分極率を測定したところ、 80%程度であり、 効果的な圧電特性を得るために十分な分極率を有していることが確認された。
〔実施例 2〕
Si単結晶基板上に第 1のウルッ鉱型結晶構造ィ匕合物として窒化アルミニウム (A1N )、機能性物質としてモリブデン (Mo)、第 2のウルッ鉱型結晶構造化合物として窒化 アルミニウム (A1N)を、何れも RFマグネトロンスパッタリング法で形成した。第 1およ び第 2の窒化アルミニウム (A1N)の成膜は、ターゲットに金属アルミニウム (A1)、反応 ガスとしてアルゴン (Ar)と窒素(N )を用レヽ、基板温度 300°C、 RF出力 400Wで行つ
2
た。モリブデン(Mo)の成膜は、ターゲットに金属モリブデン(Mo)、反応ガスとしてァ ルゴン (Ar)を用レ、、非加熱、 RF出力 100Wで行った。
[0120] 膜厚は第 1の窒化アルミニウム(A1N)が 100nm、モリブデン(Mo)が 200nm、第 2 の窒化アルミニウム (A1N)が 1 μ mとなるように成膜した。
[0121] 第 2の窒化アルミニウム (A1N)膜の結晶性および結晶配向性の指標となる X線回 折
(XRD)の A1N (0002)ピークのロッキングカーブを得た。ロッキングカーブ半値幅は 、図 4に示すように、 2. 54° となり、基板に対して c軸が垂直に配向した第 2の窒化ァ ノレミニゥム (A1N)膜が得られた。なお、図 4では、図中縦軸がピーク強度を示し、横軸 が回折角(図中 Θ (deg) )を示す。
[0122] 〔比較例〕
実施例 2の比較例として Si単結晶基板上に、機能性物質層としてモリブデン (Mo) 、第 2ウルッ鉱型結晶層として窒化アルミニウム (A1N)が形成された積層体を作製し た。すなわち、比較例の積層体は、図 3において、第 1のウルッ鉱型結晶層を有して いない構成である。
[0123] 実施例と同様にモリブデン (Mo)と窒化アルミニウム (A1N)は RFスパッタリング法を 用レ、、同じ条件で形成した。膜厚は、モリブデン (Mo)が 200nmで、窒化アルミユウ
ム(A1N)が 1 /i mである。 A1N (0002)ピークのロッキングカーブの半値幅は、図 5に 示すように 8· 15° となり、実施例に比べて c軸結晶配向性の悪い窒化アルミニウム( A1N)膜となった。なお、図 5では、図中縦軸がピーク強度を示し、横軸が回折角(図 中 Θ (deg) )を示す。
産業上の利用の可能性
[0124] 以上のように、本発明によれば、結晶配向性が良ぐかつ、分極方向のそろったゥ ルツ鉱型薄膜を製造することができる。結晶配向性が良ぐかつ、分極方向のそろつ たウルッ鉱型薄膜は、従来のものと比べて高い圧電性を有しているため、電子部品 材料として有効に利用することができる。
[0125] また、本発明の積層体では、機能性物質の層の下にウルッ鉱型結晶構造化合物 の層をあらかじめ形成させている。これによつて、レ、かなる結晶構造をとる機能性物 質の層の上にも、結晶性および結晶配向性が良好なウルッ鉱型結晶構造化合物の 層の形成が可能となるという効果を奏する。
[0126] それゆえ、ウルッ鉱型結晶構造ィ匕合物の電子部品材料としての応用において、導 電性やその他の機能性物質と複合化する場合に、ウルッ鉱型結晶構造化合物を高 品質に保つことができるので、幅広い電子部品材料への応用の可能性が見出される