明細書 エリス口マイシン A誘導体の製造方法
技術分野
本発明は、新規なエリスロマイシン A誘導体の合成中間体として有用な 9一デォキ ソー 9ーヒドロキシエリスロマイシン A 1 1, 1 2—サイクリック力一ポネート 誘導体の製造方法に関する。 背景技術
近年、 呼吸器感染症領域において、 ペニシリン及びエリスロマイシン耐性菌の増加 が治療上の大きな問題となり、 これらの耐性菌に対して強い活性を有する新規マクロ ライド系抗生物質の開発が活発に進められている。 3—〇一(3—ピリジルァセチル) —5—〇_デソサミニルー 9ージヒドロエリスロノライド A 6, 9 ; 1 1, 1 2 —ジサイクリックカーボネートが W09813373号に開示されており、 また、 3—デォキ シー 3—ォキソ _ 6—〇一 ( ( 3—キノリ— 3—ィル) プロべ— 2—ィル) — 5 _〇 一デソサミニルエリスロノライド A 1 1, 1 2—サイクリックカーバメートが US5866549号に開示されている。 一方、 これらの化合物の合成法は、 エリスロマイシ ン A 1 1, 1 2—サイクリック力一ポネート誘導体の 9位カルボ二ル基を 「水素 化ホウ素ナトリウム メタノール溶媒」 という通常の条件で還元し、 9—デォキソー 9ーヒドロキシエリスロマイシン A 1 1, 1 2—サイクリックカーボネート誘導 体へと導く工程を共通して有している。 この反応は、 還元剤と溶媒が反応し、 試薬の 失活、 急激な水素の発生などの問題があり、 小スケール実験では大きな問題とはなら ないが、 工業的スケールでは大きな問題となり実施は極めて困難である。
一方、水素化ホウ素ナトリゥムを用いる力ルポ二ル基を水酸基へと還元する反応で は、 反応溶媒をメタノールから、 水素化ホウ素ナトリウムとの反応性が低いエタノー ル、 イソプロパノール、 テトラヒドロフラン又はそれらの混合溶媒などに代える事に より水素の発生を防げることが知られている。 発明の開示
本発明の目的は、 エリスロマイシン A 1 1, 1 2 _サイクリックカーボネート 誘導体の 9位力ルポ二ル基を還元し、 9ーデォキソー 9ーヒドロキシエリスロマイシ ン A 1 1, 1 2—サイクリックカーボネート誘導体へ導く工業的に安全で有用な 製造方法を提供することにある。
さらに詳しくは、水素化ホウ素ナトリゥムとメタノールとの反応による試薬の失活、 水素の発生、 副反応による収率低下などを抑制し、 エリスロマイシン A 1 1 , 1 2—サイクリックカーポネ一ト誘導体から 9—デォキソ— 9ーヒドロキシェリス口 マイシン A 1 1 , 1 2—サイクリックカーボネート誘導体を工業的に安全且つ高 収率で得るために有用な製造方法を提供することにある。
本発明者らは、水素化ホウ素ナトリウムを用いるカルポニル基の還元反応において、 メタノ一ル以外に通常反応溶媒として使用されるエタノール、ィソプロパノール又は イソプロパノ一ル /メタノール混合溶媒を用い、実際にエリスロマイシン A l l , 1 2—サイクリックカーボネート誘導体に対して還元反応を実施した結果、水素の発 生は防 、るものの 1 1, 1 2—ジオール体が副生し、 目的物の収率低下を招くことを 確認した。
本発明者らは、 鋭意検討した結果、 エリスロマイシン A 1 1, 1 2—サイクリ ックカーボネート誘導体のメタノール溶液中にある種の塩基を添加することにより、
工業的に 9—デォキソ—9—ヒドロキシエリスロマイシン A 1 1 , 1 2—サイク リックカーボネート誘導体を水素の発生を防ぐと共に、安全かつ高収率で製造する方 法を見い出し、 本発明を完成した。
すなわち、 本発明は、 式
(R1は水素原子、炭素原子数 1〜 5のアルカノィル基、炭素原子数 5〜 1 2の芳香環 もしくは炭素原子数 3〜 9のへテロ環で置換された炭素原子数 1〜 5のアル力ノィ ル基又は「炭素原子数 1〜4のアルキル基、 炭素原子数 6〜1 0の芳香環及び炭素原 子数 6〜1 0の芳香環で置換された炭素原子数 1〜4のアルキル基」からなる群から 選ばれる 1〜 3個の基で置換されたシリル基を示す。 ) で表される化合物 (I ) を水 酸化ナトリウム、 水酸化カリウム、 ナトリウムメトキシド、 ナトリウムエトキシド、 カリウムメトキシド、カリウムエトキシド又はカリウム tert—ブトキシドから選ばれ る 1種又は 2種以上の塩基を添加したメタノール中、水素化ホウ素ナトリウムを用い ることによる、 式
(式中、 R1は前記と同じである。 ) で表される化合物 (I I) の製造方法である
c 発明を実施するための最良の形態
本発明で炭素原子数 1〜5のアルカノィル基とは、 例えば、 ホルミル基、 ァセチル 基、 プロピオニル基、 プチリル基、 イソプチリル基、 バレリル基、 イソバレリル基又 はピバロィル基であり、炭素原子数 5〜 1 2の芳香環もしくは炭素原子数 3〜 9のへ テロ環とは、 例えば、 フエニル基、 ナフチル基、 イミダゾリル基又はピリジル基であ り、炭素原子数 1〜4のアルキル基とは、例えば、メチル基、ェチル基、プロピル基、 イソプロピル基、 ブチル基、 イソブチル基又は tert-ブチル基であり、 炭素原子数 6 〜1 0の芳香環とは、 例えば、 フエニル基又はナフチル基であり、 炭素原子数 6〜1 0の芳香環で置換された炭素原子数 1〜4のアルキル基とは、 例えば、 ベンジル基又 はフエネチル基である。
本発明は、 下記反応スキームに示す製造方法に関する。 US5866549号に記載される 化合物 (I ) を原料にし、 化合物 (I I) を製造する方法に関する。
工程 1 :水酸ィ匕ナトリウム、 水酸化カリウム、 ナトリウムメトキシド、 ナトリウムェ トキシド、カリウムメトキシド、カリウムエトキシド又はカリウム tert—ブトキシド から選ばれる 1種又は 2種以上の塩基を添加したメタノール溶液(塩基濃度が 0 . 0 0 1〜0 . 5 M) を調整し、 そのメタノール溶液を二つに分け、 一方に水素化ホウ素
ナトリウム( 1〜 5当量)を溶解し、他方に US5866549号に記載される化合物(式(I) ) を溶解し、 両液を混合し、 0°C〜60°Cで反応を行うことにより式 (II) で示される 化合物を得ることが出来る。 実施例
以下、 本発明を実施例及び参考例により更に詳細に示す。
実施例 1
9—デォキソー 9—ヒドロキシエリスロマイシン A 11, 12—サイクリック カーボネ一トの製造 (ナトリウムメトキシドを用いた場合)
エリスロマイシン A 11, 12—サイクリックカーボネート 20 g (26m mo 1 )を溶解した 0. 01M ナトリウムメトキシド /メタノール溶液 4 Omlに、 水素化ホウ素ナトリウム 3. 0 g (79mmo 1 , 3. 0 e q) を溶解した 0. 01 M ナトリウムメトキシド Zメタノール溶液 6 Omlを内温が 50°Cを越えないよう に温度制御しながら滴下し、 そのまま 2時間攪拌を続けた。
反応液に 20%塩化アンモニゥム水溶液 19 Omlと酢酸ェチル 20 Om 1を加 え分液した。 水層をトルエン 10 Omlで抽出し、 先の酢酸ェチル層と合わせ飽和食 塩水 (5 Oml) で 2回洗浄後、 減圧濃縮し、 19 gの粗生成物を得た。 得られた粗 生成物をシリカゲル力ラムクロマトグラフィー(溶出液、クロ口ホルム:メタノール: 28%アンモニア水 =200 : 10 : 1) により精製し、 表題化合物 16 g (収率: 80%) を得た。
¾NMR(500 MHz, CDC13) δ (ppm) : 2.30(s, 6H, 3' - N(CH3)2), 3.29(s, 3H, 3' ' -OCH3) , 3.40(brs, 1H, 9-H), 3.96(s, 1H, OH), 4.91(s, 1H, 11-H)
13C NMR(125 MHz, CDC13) δ (ppm) : 40.3 (3' -N(CH3) 2), 49.3 (3" -0CH3) , 79.3(9-C), 82.2(11-0, 97.5 (l"-C), 104.6(1'-C), 153.9 (ll-OCOO-12) , 175.7(1-0 ESI -MS : m/z = 784.5 [M+Na] + 実施例 2
9ーデォキソ _ 9—ヒドロキシエリスロマイシン A 11, 12—サイクリック カーボネートの製造 (水酸化ナトリウムを用いた場合)
エリスロマイシン A 11, 12—サイクリックカーボネート 50 g (66m mo 1) を溶解した 0. 01M水酸化ナトリウム /メタノール溶液 10 Om 1に、 水素化ホウ素ナトリウム 7. 5 g (0. 2 Omo 1 , 3 e q) を溶解した 0. 01M 水酸化ナトリウム/メタノール溶液 15 Omlを内温が 3 Otを越えないように温 度制御しながら滴下し、 そのまま 2時間攪拌を続けた。
反応液に 20 %塩化アンモニゥム水溶液 47 Omlと酢酸ェチル 50 Om 1を加 え分液した。 水層をトルエン 25 Omlで抽出し、 先の酢酸ェチル層と合わせ飽和食 塩水 (250ml) で洗浄後、 減圧濃縮し、 53 gの粗生成物を得た。 得られた粗生 成物を酢酸ェチルー n-ヘプタンから結晶化し、 表題化合物 40 g (収率: 80%) を 得た。 結晶を濾取した母液を濃縮し、 再度、 酢酸ェチルー n—ヘプタンから結晶化す ることにより、 表題化合物 9. 2 g (収率: 18%) を 2番晶として得た。 下記の参考例 1〜3は、 カルポニル基の還元反応で、 メタノール溶媒の代わりに通 常用いられるエタノール、ィソプロパノール及びィソプロパノ一ル メ夕ノール混合 溶媒を用い、 水素の発生を抑えた反応条件下で実施した結果である。 これらの反応で
は、 11, 12—ジオール体が副成し、 9—デォキソ— 9ーヒドロキシエリス口マイ シン A 1 1, 12—サイクリックカーボネートの収率が低下した。
参考例 1
ェタノール溶媒を用いた 9—デォキソ一 9—ヒドロキシエリスロマイシン A 1 1, 12—サイクリックカーボネートの製造
エリスロマイシン A 1 1, 12_サイクリックカーボネート 2. O g (2. 6mmo 1 ) をエタノール 1 Om 1に溶解し、 室温下、 水素化ホウ素ナトリウム 0. 30 g (7. 9mmoし 2. 0 e q) を加え、 一晩攪拌を続けた。 反応液に水 50 m 1を加え、 酢酸ェチル 50 m 1で 2回抽出後、 酢酸ェチル層を飽和食塩水 100m 1で洗浄し、 無水硫酸マグネシウムで乾燥した。
溶媒を減圧下留去し、 得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー (溶離 液、 クロ口ホルム:メタノール: 28%アンモニア水 =250 : 10 : 1) にふし、 表題化合物 1. 2 g (収率: 60%) 及び 9—デォキソー 9ーヒドロキシエリスロマ イシン A (l l, 12—脱力一ポネ一ト体) 0. 41 g (収率: 21%) を得た。
9ーデォキソ一 9—ヒドロキシエリスロマイシン A (1 1, 12—脱力ーポネ ート体) :
ΐΝΜίΚδΟΟΜΗζ, CDC13) δ (ppm) : 2.30(s, 6H, 3' - N(CH3)2), 2.85(s, 1H, OH), 3.32(s, 3H, 3' ' -0CH3) , 3.38(d, 1H, J=4.8Hz, 9— H), 3.75(s, 1H, 11-H), 4.32(s, 1H, OH), 4.45(s, 1H, OH), 4.54 (d, 1H, J=7.3Hz, l'-H), 4.57(s, 1H, OH)
13C NMR(125 MHz, CDC13) 6 (ppm) : 40.3(3' -N(CH3)2), 49.3 (3" -0CH3) , 70.8(11-C), 83.2(9-0, 96.4 (l"-C), 103.3(1'-C), 177.0(1-C)
ESI- MS': i/z = 758.4讀 a] +
参考例 2
イソプロパノール溶媒を用いた 9—デォキソ _ 9—ヒドロキシエリスロマイシン A 11, 12—サイクリックカーボネートの製造
エリスロマイシン. A 11, 12—サイクリックカーボネート 0. 5 g (0. 66mmo 1 ) と水素化ホウ素ナトリウム 75 mg (2. Ommo l, 3. 0 e q) をイソプロパノール 2. 5ml中で参考例 1と同様に反応させた。 溶媒留去後、 得ら れた組生成物を高速液体クロマトグラフィー (HPLC) により分析し、 9一デォキ ソ一 9—ヒドロキシエリスロマイシン A 11, 12—サイクリック力一ポネート 及び 9—デォキソー 9—ヒドロキシエリスロマイシン A (11, 12—脱力一ポ ネート体) の生成比がそれぞれ 63 %及び 36 %であった。 参考例 3
ィソプロパノール/メ夕ノ一ル混合溶媒を用いた 9 -デォキソ一 9ーヒドロキシ エリスロマイシン A 11, 12—サイクリックカーボネートの製造
水素化ホウ素ナトリウム 1. 6 kg (43mo 1 , 3. 9 e q) を懸濁させたィ ソプロパノール溶液 26 Lに、 エリスロマイシン A 11, 12—サイクリック力 ーポネート 8. 3 kg (1 lmo 1) を溶解したメタノール溶液 26Lを 15°C で 滴下し、 そのまま一晩攪拌を続けた。 反応後、 酢酸ェチルに代えトルエンを用いて参 考例 1と同様に抽出を行った。 減圧下、 トルエンを留去し、 10 kgの粗生成物を得 た。 得られた組成生物を参考例 2と同様に分析し、 9—デォキソー 9ーヒドロキシェ リスロマイシン A 11, 12—サイクリックカーボネート及び 9—デォキソ— 9 —ヒドロキシエリスロマイシン A (11, 12—脱カーボネート体) の生成比がそ れぞれ 67%及び 26%であった。
産業上の利用可能性
本発明は、 エリスロマイシン A 1 1 , 1 2 _サイクリックカーボネ一ト誘導体 と水素化ホウ素ナトリゥムのメタノール溶液中に水酸化ナトリゥム、水酸化力リゥム、 ナトリウムメトキシド、 ナトリウムエトキシド、 カリウムメトキシド、 カリウムエト キシド又はカリウム tert—ブトキシドから選ばれる 1種又は 2種以上の塩基を添加 することにより、安全で工業的に実施可能な 9一デォキソー 9—ヒドロキシエリス口 マイシン A 1 1, 1 2—サイクリックカーボネート誘導体を高収率で製造する方 法として極めて有用である。