明 細 書 ホウ酸エステル化合物の製造方法、 電気化学デバイス用電解質
および二次電池
技術分野
本発明は、 ォキシアルキレン基を有する化合物のホウ酸エステル化 合物の製造方法、 該ホウ酸エステル化合物またはその重合物を用いた 電気化学デバイス用電解質ならびに二次電池に関する。
背景技術
近年、 電子製品の高性能化、 小型化に対する要求が強く、 そのエネ ルギ一源であるリチウムイオン二次電池などの電池材料に対しても、 小型化、 軽量化でかつ高容量、 高エネルギー密度が求められ、 種々の 研究開発が行われている。 リチウムイオン二次電池は一般的に金属酸 化物を正極、 炭素材料等を負極に、 そして極間にセパレ一夕一と電解 液を挟んだ構造をしている。 これは高エネルギー密度を有する二次電 池であり実用化されているが、 現在ではさ らに性能の向上が望まれて いる o
そのような要求に応える目的から、 従来の電解質溶液に代わる新し いイオン伝導体と して、 固体電解質を全固体一次電池、 二次電池、 コ ンデンサ等の電気化学デバイスへに応用する試みがなされ、 このよう な電解質と して高分子化合物を使用したいわゆる高分子電解質が種々 検討されている。 高分子電解質は可堯性を有し、 機械的衝撃にも追従 し、 さ らに電極と電解質間でのイオン電子交換反応に際して生じる電 極の体積変化にも追従し得る特徴を有している。 このような高分子電
解質と しては、 米国特許第 4 3 0 3 7 4 8号明細書ではポリアルキレ ンォキシ ドにアルカ リ金属塩またはアル力 リ土類金属塩を溶解した固 体電解質が提案されているが、 前記塩類の溶解に時間を要するために 作業効率に劣り、 イオン伝導度が不十分で、 さ らに極材との接触抵抗 が高いといつた課題が残されている。 このよ うにィォン伝導度が不十 分で、 接触抵抗が高い場合には、 充電および放電時の電流密度が充分 に得られず、 大電流を必要とする用途には適用できず、 用途が限定さ れてしま う。
上記の固体電解質の欠点を克服するため、 ポリ (メ タ) アタ リ レ一 トを主鎖と して側鎖および/または架橋鎖と してポリアルキレングリ コール鎖を導入した高分子にアル力 リ金属塩またはアルカ リ土類金属 塩を溶解した固体電解質が数多く提案されている。 このような高分子 電解質と して、 例えば特公平 3 — 7 3 0 8 1号公報にはァク リ ロイル 変性ポリアルキレンォキシ ドにアルカ リ金属塩またはアルカ リ土類金 属塩を溶解した固体電解質が提案されているが、 ここにおいてもィォ ン伝導度が不十分で、 さらに充放電に関与するカチオン成分の移動度 が低いといった課題が残されている。 このよ うにイオン伝導度が不十 分でカチオン成分の移動度が低い場合、 上述のように、 用途が限定さ れ、 さ らに対ァニオンの移動によって好ましく ない副反応が発生し得 るため充放電サイ クルによつて劣化が起こるという問題もあった。 上記アルキレンォキシ ド誘導体の開環重合物を主成分とする高分子 電解質での充放電に寄与し得るィォンの移動を制御する目的から、 特 開平 1 1 _ 5 4 1 5 1号公報ゃ特開 2 0 0 1 — 5 5 4 4 1号公報には 前記金属塩の対陰ィォンを捕捉するボロキシン環のような三官能ホウ 素化合物を使用した電解質が提案されている。 しかしながらこれらの 化合物を得るために使用するホウ素含有化合物にはオルトホウ酸や酸
化ホウ素が使用されており、 この場合、 反応時に水が脱離生成し、 さ らに得られた上記化合物もまた水によつて容易に加水分解する性質を 有しているため、 生成水の除去が非常に困難である。 このために得ら れる化合物中への水分の残存が避けがたく、 電解質基材と して使用し た場合の障害となる恐れがある。 また特開 2 0 0 1 — 7 2 8 7 6号公 報、 特開 2 0 0 1 — 7 2 8 7 7号公報にはホウ素を含有する化合物の 電解質が提案され、 これらの化合物を得るために使用するホウ素の基 材と してはボランが挙げられている。 しかしボランは活性が非常に強 く、 空気中では自ら燃焼性を示すことから、 ホウ素を含有する化合物 の製造に当たっては取り扱いが困難であり、 さ らに重合性基を有する 化合物との反応に使用した際には重合性基を損なう恐れがある。
一方で、 高分子ホウ酸エステルを電解質に用いることが提案されて いる。 ホウ酸エステル化合物は、 アルコールとホウ酸または無水ホウ 酸と反応させることによ り得られることが知られている。 すなわち、 アルコールとホウ酸を用いる場合では式 〔 1 〕 のように、 アルコール と無水ホウ酸を用いる場合では式 〔 2 〕 のようになる。
H3 B 03 + 3 R O H→B ( O R) 3 + 3 H2 0 〔 1 〕 B 2 03 + 3 R〇 H→B (〇 R) 3 + H3 B〇 3 〔 2 〕 しかしながら、 ホウ酸エステル化合物は極めて加水分解性が高く、 '水と接触するとホウ酸とアルコールを生成する。 これは、 式 〔 1 〕 の 逆反応である。 実際、 式 〔 1 〕 は平衡反応であるが、 その平衡は極端 に左に、 つまりホウ酸エステルを加水分解し、 ホウ酸とアルコールを 生成する方向に片寄っており、 通常の操作では、 ホウ酸エステルの収 率は極めて低くなる。 このため、 アルコールとホウ酸を反応させる方 法では、 通常はベンゼン等の共沸脱水剤を用い、 反応で生成する反応 液中の水を順次除去することにより、 前記式中の平衡を右に移動させ
、 目的物を回収する方法が取られている。 しかし、 この方法において も、 式 〔 1 〕 の平衡が極端に左に片寄っているため、 反応率が高く な るにつれ脱水効率が悪く なり、 水の低減には限界がある。 さ らに、 高 純度なホウ酸エステルを得るには、 ホウ酸およびアルコールの低減が 必要という問題がある。
すなわち、 アルコールを過剰に用いる場合、 反応速度を上げること ができ、 脱水効率についても有利な点がある反面、 分子量の大きなァ ルコールや、 温度を上げると重合の危険性がある重合性基を有するァ ルコ一ルでは、 蒸発させることが困難であり、 系内に残存することに なる。 このよ うな水酸基を有する化合物が系内に残存すると、 電気化 学デバイスの用途によつては性能を著しく悪化させることがある。
またホウ酸を過剰に用いる場合、 ホウ酸とホウ酸エステルの混合物 が得られるが、 このホウ酸とホウ酸エステルの混合物を加熱すると、 ホウ酸エステルが分解され、 収率が低下するという問題点が挙げられ る。 この解決手段と して、 例えば、 特開平 3 — 7 4 3 9 0号公報には 、 酸化ホウ素と脂肪族アルコールを反応させてホウ酸エステルとホウ 酸を含む反応液を得、 該反応液からホウ酸を濾別した後、 濾液を蒸留 する方法が示されており、 これは前述したとおりホウ酸を濾別しない まま蒸留すると、 ホウ酸エステルやホウ酸の分解が促進され、 目的物 の収率が低下することによるという旨が示されている。 しかし、 この 方法では、 脂肪族アルコールのホウ酸エステル化合物などの、 ホウ酸 を濾別することが出来る化合物でありかつ蒸留精製を行う ことの出来 る化合物に限られてしまう。
これに対し、 式 〔 2〕 で示した、 無水ホウ酸を使用する方法では、 共沸脱水剤を用いなく とも供給したホウ素の 5 0 %をホウ酸エステル と して得ることができる。 しかし、 残りのホウ酸は式 〔 1 〕 と同様な
反応でホウ酸エステル化することになるため、 前述したとおり、 高純 度なホウ酸エステルを得るには限界がある。
このよ うに不純物を多く含有するホウ酸エステルを電解質原料と し て使用した場合、 電極被膜抵抗の増大、 充放電サイ クル特性の低下、 電位安定性の低下等の、 電解質特性を低下させる可能性が高いといつ た問題がある。 また、 リチウムイオン二次電池用電解質に限ると、 ホ ゥ酸エステル化合物中に含まれる不純物と リチウムが反応し、 気体が 発生する可能性が高く、 電池の安全性を低下させるといつた問題もあ る。
このよ うに、 電気化学デバイス用電解質等に使用するホウ酸エステ ル化合物においては、 水等の不純物を低減する高純度化が望まれてい る。 発明の開示
本発明は、 高いイオン伝導度を示し、 かつ安全性に優れた二次電池 ゃコンデンサ等の電気化学デバイス用の材料として有用で、 かつ水分 量が低く不純物の少ないホウ酸エステル化合物の製造方法、 これを含 有する高分子電解質およびこれを使用した二次電池を提供することを 目的とする。
すなわち本発明は、 以下の通りである。
( A ) 式 ( 1 ) で示される化合物を、 式 ( 2 ) で示されるホウ素含有 化合物を用いてホゥ酸エステル化することを特徴とするホウ酸エステ ル化合物の製造方法、
X - [ 0 ( A O ) 一 H ] a ( 1 )
( Xは 1 〜 6個の水酸基を持つ化合物の残基、 ァク リ ロイル基及びメ タク リ ロイル基から選ばれる基であり、 A Oは炭素数 2〜 4のォキシ
アルキレン基、 nは 0〜 6 0 0、 aは 1 〜 6であ り、 かつ n x a = 0 〜 6 0 0である。 )
(R O ) 3 - B ( 2 )
( Rは炭素数 1 〜 4のアルキル基である。 )
( B ) 式 ( 1 ) で示される化合物の平均分子量が 1 1 0以上である前 記 (A) のホウ酸エステル化合物の製造方法、
( C ) 式 ( 1 ) で示される化合物および式 ( ) で示されるホウ素含 有化合物を反応させると共に、 式 ( 2 ) で示されるホウ素含有化合物 および反応によって生成する式 ( 3 ) で示されるアルコールの蒸留を 行う ことを特徴とする前記 ( A) または ( B ) のホウ酸エステル化合 物の製造方法、
R 0 H ( 3 )
( Rは炭素数 1 〜 4のアルキル基である。 )
( D ) 式 ( 1 ) で示される化合物の水酸基 1 モルに対し、 式 ( 2 ) で 示されるホゥ素含有化合物を 1 / 3モル倍以上用いることを特徴とす る前記 (A) 〜 ( C ) のいずれかのホウ酸エステル化合物の製造方法
( E ) 得られたホゥ酸エステル化合物中の、 カールフイ ツシャ一滴定 法によつて測定された水分含有量が 1 0 0 0 p p m以下であることを 特徴とする前記 (A) 〜 ( D ) のいずれかのホウ酸エステルの製造方 法、
( F ) 前記 (A) 〜 ( E ) のいずれかの製造方法によって得られたホ ゥ酸エステル化合物またはその重合物を含有する電気化学デバイス用
( G) 前記 ( F ) の電気化学デバイス用電解質を用いる二次電池、 及 び
(H) カールフィ ッシヤー滴定法によって測定された水分含有量が 1 0 0 O p p m以下であり、 式 ( 4 ) で示されるホウ酸エステル化合物 またはその重合物を含有する電気化学デバイス用電解質。
B - [ 0 (A O ) p -Y] 3 ( 4 )
(Yはァク リ ロイル基、 メ タク リ ロイル基及び炭素数 1〜 4のアルキ ル基から選ばれる基であり、 その少なく とも一つがァク リ ロイル基ま たはメ タク リ ロイル基である。 A Oは炭素数 2〜 4のォキシアルキレ ン基、 pは 1 〜 6 0 0である。 ) 発明を実施するための最良の形態
以下、 本発明を更に詳細に説明する。
本発明の製造方法で用いる式 ( 1 ) で示される化合物において、 X は 1 〜 6個の水酸基を持つ化合物の残基、 ァク リ ロイル基及びメ 夕ク リ ロイル基から選ばれる基である。 ここで、 水酸基をもつ化合物の残 基とは、 それぞれの化合物から水酸基を除いた基である。
式 ( 1 ) において A 0で示される炭素数 2〜 4 のォキシアルキレン 基と しては、 ォキシエチレン基、 ォキシプロピレン基、 ォキシブチレ ン基、 ォキシテ トラメチレン基などが挙げられ、 好ま しく はォキシェ チレン基またはォキシプロピレン基である。 またこれらを 1種または 2種以上組み合わせたものでもよく、 2種以上有する時の重合形式は ブロッ ク状、 ランダム状のいずれでもよい。
nは炭素数 2〜 4のォキシアルキレン基の平均付加モル数であり、 0〜 6 0 0である。 イオン伝導度を得る目的から好ましく は 1 〜 2 0 0、 より好ましく は 1 〜 1 0 0である。 6 0 0 を超えるとホウ素の導 入量が少なく、 電解質と して使用した際の陰ィォン補足能の発現が困 難となる。
aは 1 〜 6であ り、 好ま しく は 1 〜 4、 特に好ま しく は 1 である。 ここで n x aは 0 〜 6 0 0 であ り、 好ま しく は 1 〜 4 0 0、 よ り好ま しく は 1 〜 2 0 0である。 6 0 0 を超えるとホウ酸エステル結合の導 入量が少なく なり陰ィォン捕捉能の発現が困難となることから、 高い ィォン伝導度が得難く なる。
本発明におけるホウ酸エステル化合物の基質となる式 ( 1 ) で示さ れる化合物は、 通常の開環重合によ り得るこ とができる。 例えば、 1 〜 6個の水酸基を持つ化合物に、 水酸化ナ ト リ ウム、 水酸化力 リ ウム 、 水酸化リ チウム、 ナ ト リ ウムメ トキシ ド等のアルカ リ金属化合物、 三フッ化ホウ素エーテラー ト、 四塩化錫、 三塩化アルミニウム等のル イス酸等の開環重合触媒を用いて、 エチレンォキシ ド、 プロ ピレンォ キシ ド、 ブチレンォキシ ド、 テ ト ラ ヒ ドロフランなどの炭素数 2 〜 4 のアルキレンォキシ ドを所定のモル比で重合させることで合成するこ とができる。
式 ( 1 ) において Xで表される 1 〜 6個の水酸基を持つ化合物と し ては、 例えばメチルアルコール、 エチルアルコール、 プロ ピルアルコ —ル、 ィ ソプロ ピルアルコール、 n —ブチルアルコール、 2 —ブチル アルコール、 t 一ブチルアルコール、 n —へキシルアルコール、 n— ォクチルアルコール、 イ ソォクチルアルコール、 デシルアルコール、 ドデシルアルコール、 ト リ デシルアルコール、 テ トラデシルアルコー ル、 へキサデシルアルコール、 ォク タデシルアルコール、 ォク タデセ ニルアルコール、 ィコシルアルコール、 テ トライ コシルアルコール、 ァ リ ルアルコール、 メ タ リ ルアルコール、 ヒ ドロキシェチルビニルェ —テル、 アク リ ル酸 2 —ヒ ドロキシェチル、 メ タ ク リル酸 2 —ヒ ドロ キシェチル、 アク リル酸 2 —ヒ ドロキシプロ ピル、 メ タ ク リル酸 2 ― ヒ ドロキシプロ ピル、 アク リ ル酸 2 —ヒ ドロキシブチル、 メ タク リ ル
酸 2 —ヒ ドロキシブチル、 アク リル酸 4 —ヒ ドロキシブチル、 メ 夕 ク リル酸 4 —ヒ ドロキシブチル、 グリ セロール _ 1 , 3 —ジメ 夕 ク リ レ — ト、 グリ セロール一 1 , 3 _ジァク リ レ一ト、 グリセ口一ルー 1 一 アタ リ レー ト一 3 —メ タ ク リ レー ト、 ト リ メチロールプロパンジメ 夕 ク リ レート、 フヱ ノール、 4 —ェチルフヱ ノール、 p—ォキシ安息香 酸メチル、 p — t —ォクチルフヱノール、 ドデシルフヱノール、 α— ナフ トール、 j8—ナフ トール、 ノニルフヱ ノール、 フヱニルフヱノー ル、 4 ーフエ ノキシフヱ ノ一ル、 p — t —ブチルフエノール、 p— ( メ トキシェチル) フヱ ノール、 4 ーメ トキシフエノール、 グァヤコ一 ル、 グェ トール、 p — ( α —ク ミル) フエ ノール、 ク レゾール、 4 一 シァノ一 4 , 一ヒ ドロキシビフエニル、 キシレノール、 η—ヘプチル パラベン等のモノオール ; エチレングリ コール、 プロ ピレングリ コ一 ル、 ブタンジオール、 ペンタ ンジオール、 へキサンジオール、 ォク 夕 ンジオール、 グリセロールモノメ タ ク リ レー ト、 ト リ メチロールプロ パンモノメ タ ク リ レー ト、 力テコ一ル、 ハイ ド口キノ ン、 1 , 4 ージ ヒ ドロキシナフタ レン、 ビスフエノール A、 水素化ビスフエ ノール A
、 レゾルシン、 4 一 t 一プチルカテコール、 2 _ t —ブチルヒ ドロキ ノ ン等のジオール ; グリ セリ ン、 ト リ メチロールプロパン、 ペンタエ リ ス リ トールモノメ タク リ レー ト、 ペン夕エリスリ トールモノアク リ レー ト、 ジグリ セ リ ンモノメ タ ク リ レー ト、 ジグリ セ リ ンモノアタ リ レー ト、 フロログルシノール等の ト リオ一ル ; ペンタエリ ス リ トール 、 ジグリセ リ ン等のテ トラオール、 ト リ グリ セ リ ン等のペン夕オール ; テ ト ラグリ セ リ ン、 ジペンタエリ ス リ トール等のへキサオール ; が 挙げられる。
Xと して好ま しく はメチルアルコール、 エチレングリ コール、 プロ ピレングリ コール、 ブチレングリ コール、 アク リル酸 2 —ヒ ドロキシ
ェチル、 メ タク リル酸 2 —ヒ ドロキシェチル、 アタ リル酸 2 —ヒ ドロ キシプロピル、 メ タク リル酸 2 —ヒ ドロキシプロピル、 グリセロール モノメ タク リ レ一トおよびグリセロ一ルモノアク リ レー 卜の残基、 ァ ク リ ロイル基おょぴメ タク リ ロイル基である。
ホウ素含有化合物と反応生成物の蒸留と反応を同時に行う本発明の 製造方法では、 式 ( 1 ) で示される化合物が、 アタ リ ロイル基または メ 夕ク リ ロイル基を持つことが、 熱負荷を少なく製造することができ 重合性基を損なわない点から好ま しい。
式 ( 1 ) で示される化合物の平均分子量は数平均分子量で 1 1 0以 上、 更に 1 1 0〜 3 0, 0 0 0であることが好ましい。 該平均分子量 が 1 1 0以上であると、 式 ( 1 ) で示される化合物を十分反応液中に 留めておく ことができるため、 反応率を上げることができる。 また、 前記蒸留を行う場合は、 留出物を簡単に回収利用できるため好ましい また、 式 ( 1 ) で示される化合物は 1種または 2種以上を組み合わ せて用いることができる。 2種以上用いるときは、 混合物の水酸基価 が 4 3 0以下であることが好ま しい。
式 ( 1 ) で示される化合物は、 予め低水分化されていることが好ま しく、 水分量と しては 0 . 5重量%以下に低水分化されているものが 好ま しい。 水分を多く含有する場合、 ホウ酸エステルの加水分解によ つて生成したホウ酸が系内に残存してしまい、 電気化学デバイス用の 電解質に用いた場合、 その性能を損なう恐れがある。
本発明に用いられる式 ( 2 ) で示されるホウ素含有化合物の Rと し ては、 メチル基、 ェチル基、 n—プロピル基、 イソプロピル基、 n— ブチル基、 2 _ブチル基、 イソブチル基、 t 一ブチル基などが挙げら れる。 ホウ酸エステル化の際に生成するアルコールの除去のし易さの
点から、 メチル基、 ェチル基、 イソプロピル基、 t 一ブチル基が好ま しく、 メチル基がより好ま しい。
また、 式 ( 2 ) で示されるホウ素含有化合物は 1種または 2種以上 を組み合わせて用いることができるが、 蒸留制御や原料の回収精製が 簡易であるため 1種のみで用いる方が好ましい。
本発明のホウ酸エステル化合物の製造においては、 式 ( 1 ) で示さ れる化合物に式 ( 2 ) で示されるホウ素含有化合物を加え、 3 0〜 2 0 0 °Cにて不活性ガス通気下でホウ酸エステル交換反応を行う。 その 後、 生成する式 ( 3 ) で示されるアルコールを大気圧下もしく は不活 性ガス雰囲気加圧下から 0 . 0 1 3 k P aの圧力下で除去し、 ホウ酸 エステル交換反応を進行させる。
式 ( 1 ) で示される化合物が (メ タ) ァク リ ロイル基 (以下、 (メ 夕) ァク リ ロイルはァク リ ロイルまたはメ タク リ ロイルを示す) を持 たない場合には前記反応温度は好ましく は 5 0〜 2 0 0 °Cであり、 よ り好ましく は 6 0〜 1 5 0 °Cである。 また、 この場合、 反応釜内に窒 素ガスを適当量通気するのが好ま しい。 反応温度が低いと脱離する低 分子アルコールの除去によるホウ酸エステル交換反応の進行が遅く な り、 2 0 0 °Cよ り高いと式 ( 1 ) で示される化合物の熱劣化がおこり やすくなる。
また式 ( 1 ) で示される化合物が (メ タ) アタ リロイル基を有する 場合には、 前記反応温度は好ましく は 3 0〜 1 2 0 °Cであり、 より好 ま しく は 6 0 〜 9 0 °Cである。 また、 この場合、 反応釜内に乾燥空気 を適当量通気するのが好ましい。 反応温度が低いと脱離する低分子ァ ルコールの除去によるホウ酸エステル交換反応の進行が遅く なり、 2 0 o °cより高いと (メ タ) ァク リ ロイル基の保持が困難となる場合が ある。
反応時の圧力は、 温度、 式 ( 2 ) で示されるホウ素含有化合物の種 類などによ り、 適宜決定できるが、 不活性ガス雰囲気加圧下から 0. 0 1 3 k P aの範囲であることが好ま しい。 0. 0 1 3 k P aよ り も 低いと式 ( 2 ) で示されるホウ素含有化合物を十分反応液中に留めて おく ことが難しく、 不活性ガス雰囲気加圧下あるいは大気圧より も高 い場合は、 式 ( 3 ) で示されるアルコールを除去する場合、 温度が高 くなりすぎ、 化合物の熱劣化を引き起こす場合がある。 本発明のホウ 酸エステル化合物の純度を上げるためには、 最終的に 0. 0 1 3〜 6
. 6 7 k P aの減圧下で揮発成分の除去を行う ことが好ましい。 反応 条件は反応の進行に伴って、 上記で示された範囲内で変化させてもよ い。
反応時間は、 0. 5〜 1 0 0時間であり、 好ま しく は 2〜 5 0時間 である。 また、 この時間で反応を終了させるように条件および装置を 選定することができる。 0 . 5時間よ り短いと式 ( 3 ) で示される低 分子アルコールの除去が困難であることがあり、 1 0 0時間を超える 場合は、 式 ( 1 ) で示される化合物および生成したホウ酸エステルの 劣化が進行しやすく なる。 式 ( 1 ) で示される化合物が (メ タ) ァク リ ロイル基を有する場合には、 (メ タ) ァク リ ロイル基の重合反応を 抑制するために、 反応時間は 2〜 3 0時間であることがよ り好ましい 上記反応においては、 式 ( 1 ) で示される化合物と式 ( 2 ) で示さ れる化合物を所定量混合して、 乾燥空気または不活性ガス雰囲気下に おいて、 0 . 5〜 5時間混合を行う ことが好ま しい。 その後、 6 . 6 7 k P a以下の減圧下、 6 0〜 1 2 0 °Cで揮発分の除去を行う ことが 好ま しい。
減圧を行う際は、 反応温度を保ったまま、 徐々に減圧を行うことが
さ らに好ま しい。
反応中に系内に通じる乾燥空気は、 特に制限はないものの、 好まし く は凝縮型エアードライヤー等によって乾燥させたものであり、 式 (
2 ) で示されるホウ素含有化合物や目的のホウ酸エステル化合物が加 水分解し易いため、 ガス中の水分は低い必要があり、 例えば、 露点— 1 0 °c以下である。
本発明に用いられる式 ( 2 ) で示されるホウ素含有化合物は、 ホウ 酸エステル化反応の際には、 式 ( 1 ) で示される水酸基含有化合物と のエステル交換反応によつて式 ( 3 ) で示される低分子アルコールが 生成する。 例えば、 式 ( 2 ) で示されるホウ素含有化合物がホウ酸ト リメチルである場合、 式 ( 3 ) で示される低分子アルコ—ルはメ 夕ノ ールとなる。 式 ( 2 ) で示されるホウ素含有化合物を 2種以上使用す る場合には、 式 ( 3 ) で示される低分子アルコールも 2種以上となる 本発明のホウ酸エステル化合物の製造方法は、 式 ( 1 ) で示される 化合物に式 ( 2 ) で示されるホウ素含有化合物を加え、 反応を行う方 法であるが、 好ましく は、 その後または同時に、 反応によつて生成す る式 ( 3 ) で示される低分子アルコールと、 式 ( 2 ) で示されるホウ 素含有化合物を蒸留するこ とでホウ酸エステル化合物を得ることがで きる。 蒸留は通常、 単蒸留と精留に区別されるが、 本発明で行う蒸留 は単蒸留だけでなく精留も包含している。
a ( R 0 ) 3 - B + 3 X - [ 0 ( A O ) n — H ] a →ホウ酸エステ ル化合物 + 3 a R 0 H [ 3 ]
本発明における製造方法は式 [ 3 ] で示される平衡反応を利用して 、 高純度なホウ酸エステル化合物を製造する方法である。 式 ( 1 ) で 示される化合物の水酸基 1 モルに対して、 ホウ素原子 1 / 3 モルの比
率において、 ホウ酸エステルが生成する。 ホウ酸エステル化の割合は 、 反応温度、 反応時間や水酸基とホウ素原子のモル比率などによって 任意に調整可能であり、 好ましく は反応率が 5 0 〜 1 0 0 %、 よ り好 ましくは 6 5 〜 1 0 0 %の範囲のホウ酸エステル化合物である。
ホウ酸エステル化の割合を高くするには、 式 ( 3 ) で示されるアル コールを効率よく除去し、 反応を進行させることである。 ただし、 式 ( 3 ) で示されるアルコールと式 ( 2 ) で示されるホゥ素含有化合物 は、 それらの沸点が非常に近く しかも最低共沸混合物を形成する組み 合わせであるものが多いため、 式 ( 3 ) で示されるアルコールを効率 よく除去するために蒸留操作を用いることが好ま しい。
蒸留条件と しては、 温度 3 0〜 2 0 0 t:、 圧力が不活性ガス雰囲気 加圧下から 0 . 0 1 3 k P aの範囲で行う ことが好ま しく、 0 . 1 0 〜 1 1 0 k P aの範囲であることがよ り好ま しい。 圧力がこの範囲外 の場合、 特殊な装置を必要と したり、 蒸留制御が困難になる場合があ る。
反応に使用する式 ( 1 ) で示される化合物に対する式 ( 2 ) で示さ れる化合物の使用量は、 式 ( 1 ) で示される化合物の水酸基 1 モルあ たり、 式 ( 2 ) で示されるホウ素含有化合物 1 / 3モル以上であるこ とが好ましい。 より高純度品を得るためには、 式 ( 2 ) で示されるホ ゥ素含有化合物の使用量は、 式 ( 1 ) で示される化合物の水酸基 1 モ ルあたり、 よ り好ま しく は 0 . 5モル以上であり、 さ らに好ましく は 0 . 6 7 モル以上である。
また、 式 ( 2 ) で示されるホウ素含有化合物の使用量は、 式 ( 1 ) で示される化合物の構造や分子量などを考慮する必要がある。 例えば 、 式 ( 1 ) で示される化合物が高分子量である場合、 式 ( 2 ) で示さ れる化合物の量が少ないと、 この混合物は固体となるこどがあり、 反
応率が十分高く ならない場合がある。 よって、 式 ( 2 ) で示されるホ ゥ素含有化合物の使用量の上限については特に制限は無いものの、 通 常は反応液の全重量に対して最大 8 0重量%である。 これ以上の量を 用いても蒸留時間が長くなるだけでそれ以上の効果を得ることは難し い。
式 ( 2 ) で示されるホウ素含有化合物をさ らに追加して、 蒸留を行 う ことも出来る。 追加の方法は特に限定されないものの、 一時に追加 することも、 連続的あるいは断続的に時間経過と共に適宜追加するこ とも出来る。
上記反応は特に触媒を必要と しないで行う ことができる。 3級アル コールなどの反応性の低いアルコールを用いる場合には、 十分な反応 速度を得るために、 ナト リ ウム、 カ リ ウムなどを触媒として用いるこ とができるが、 精製を簡易に行うためには触媒は用いないことが好ま しい。
反応に際しては、 ホウ酸エステル化反応に寄与しない溶剤を適宜用 いることができる。 溶剤と しては、 式 ( 3 ) で示される低分子アルコ ールと最低共沸組成物を形成し、 式 ( 2 ) で示されるホウ素含有化合 物とは最低共沸組成物を形成しない非プロ ト ン性溶剤が好ましく 、 具 体的にはへキサン、 ヘプ夕ン、 ベンゼン、 トルエン、 キシレン等が挙 げられる。 これらの溶剤を使用した場合、 式 ( 2 ) で示されるホウ素 含有化合物の留出割合が低減される効果が発現され、 式 ( 2 ) で示さ れるホウ素含有化合物の使用量を減らすことが出来る。
また、 式 ( 1 ) で示される化合物のうち (メ タ) ァク リ ロイル基ま たはアルケニル基等の重合性基を有する化合物を用いる場合には、 重 合性基の保護のために、 ジー t —プチルーヒ ドロキシ トルエン (以下 B H Tと記す) 、 フヱノチアジン等の重合禁止剤を 2 0〜 1 0 0 0 p
p mの量で用いることができる。 重合性基を有しない化合物において も、 酸化防止のため、 B H T等の酸化防止剤を l ~ 1 0 0 0 p p mの 量で用いることができる。
本発明の製造方法によつて得られたホウ酸エステル化合物は、 特に 精製を行わなくてもよいが、 本発明の効果を阻害しない範囲で種々の 精製を行う ことが出来、 例えば、 濾過、 吸着処理、 抽出、 蒸留、 再結 晶、 乾燥等を行う ことが出来る。 ホウ酸エステル化合物は加水分解性 の高い化合物であるので、 上記処理は吸湿または加水分解しない条件 で行う ことが好ましく、 例えば、 吸着剤で処理する場合、 加熱乾燥し た吸着剤を使用することが好ま しい。
本発明の製造方法によ り得られたホウ酸エステル化合物は、 カール フィ ッシヤー滴定法によって測定された水分含有量が 1 0 0 0 p p m 以下、 好ましく は 9 0 O p p m以下であり、 更に好ま しく は 3 5 O p p m以下であり、 特に好ま しく は 1 0 0 ppm以下である。
カールフィ ッ シャー滴定法による水分含有量の測定では、 メ タ ノ一 ルを測定用溶媒と して用いる。 この測定では、 ホウ酸エステル化合物 中に存在する水だけでなく、 微量に存在するオルトホウ酸、 無水ホウ 酸などの不純物の量も同時に測定できる。 これらの水及び不純物を多 く含有するホウ酸エステル化合物を電解質原料として使用する場合、 電極被膜抵抗の増大、 電位安定性の低下等の特性を劣化させる恐れが 高く なる。 また、 リチウムイオン二次電池用電解質と して用いる場合 、 ホウ酸エステル化合物中に含まれる水及び不純物と リチウムゃ支持 塩が反応したり、 充放電時に電気分解を起こ したり、 気体を発生する 可能性が高く なることから、 電池の安全性を低下させるといつた問題 が起こる。
本発明においては、 力一ルフイ ツシャ一滴定法による水分含有量の
測定は以下の方法で行う ことができる。 なお、 下記条件以外は、 日本 工業規格 J I S K 1 5 5 7 6 . 5 に準拠して行う。
カールフィ ッシャー測定用脱水メ タノール 1 0 0 m 1 を溶剤と して 用い、 容量滴定法によって水分含有量の測定を行う。 滴定液は力価 3 m g H 2 O / gの試薬を用いる。 水分含有量の少ないものについては 、 J I S K 1 5 5 7 6 . 5 に規定されたサンプル量 2 0 gより多 く の試料 (例えば 4 0 g ) を測定に供し水分含有量を求める。 試料は シ リ ンジで測定容器に投入する。 また、 すべての試料について、 二つ の測定値の平均をと り、 有効数字 2桁 ( 3桁目を四捨五入) とする。 本発明の製造方法によつて得られた、 ホウ酸エステル化合物中には 、 化合物の構造、 精製方法等によるが、 式 ( 2 ) で示されるホウ素含 有化合物が微少量含まれることがある。 本発明によって得られたホウ 酸エステル化合物を電気化学デバイス用電解質と して用いる場合、 式
( 2 ) で示されるホウ素含有化合物が有する揮発性のために、 電気化 学デバイスの膨張、 液漏れの恐れがあるため、 その量は 5重量%以下 まで低減されていることが好ましい。
本発明の製造方法では、 式 ( 2 ) で示されるホウ素含有化合物と式
( 3 ) で示される低分子アルコールの混合物が留出物として得られる 。 これらの留出物は全て再利用することができ、 例えば、 アルキルァ ルコールとホウ酸の反応よつて得られるホウ酸エステルの製造用原料 と して使用することができる。 また、 式 ( 2 ) で示されるホウ素含有 化合物を主成分とする留出物は、 本発明の製造方法の原料と して再使 用することができる。
本発明の製造方法を行う装置は、 当業界における公知の装置から適 宜選定でき、 その材質もガラス、 ステンレス等公知の材質から適宜選
定できる。 また、 反応条件を考慮し、 伝熱面積、 熱媒体等も適宜選定 することが出来る。 精留を行う場合は、 精留塔が必要であるが、 その 分離形式、 理論段数、 塔径などは反応条件に合わせて適宜選定するこ とができる。 また、 ホウ酸エステル化合物は加水分解し易いため、 装 置内は予め乾燥されていることが好ましい。
本発明は、 また、 カールフィ ッシャー滴定法によって測定された水 分含有量が 1 0 0 O p p m以下であり、 式 ( 4 ) で示されるホウ酸ェ ステル化合物またはその重合物を含有する電気化学デバイス用電解質 に関する。
B - [ 0 (A O ) P - Y] 3 ( 4 )
(Υはァク リ ロイル基、 メ タ ク リ ロイル基及び炭素数 1 〜 4のアルキ ル基から選ばれる基であり、 その少なく とも一つがァク リ ロイル基ま たはメ タク リ ロイル基である。 A Oは炭素数 2〜 4のォキシアルキレ ン基、 pは 1 〜 6 0 0である。 )
上記電気化学デバイス用電解質は、 カールフイ ツシャ一滴定法によ つて測定された水分含有量が 1 0 0 0 p p m以下であり、 好ま しく は 9 0 0 p p m以下、 更に好ま しく は 3 5 0 p p m以下、 特に好ましく は 1 0 0 p p m以下である。 式 ( 4 ) で示されるホウ酸エステル化合 物またはその重合物は、 電気化学デバイス用電解質と して有用であり 、 このような電解質を使用することによ り、 陰イオン捕捉能の発現と 高いィォン伝導度を得ることができ、 安全性および電気特性に優れた 電解質を得ることができる。 なお、 式 ( 4 ) において、 A〇で表され る炭素数 2〜 4のォキシアルキレン基については、 式 ( 1 ) について 規定したものと同様である。 また、 Yで表される炭素数 1 〜 4のアル キル基としては、 式 ( 1 ) における Xで表される 1 〜 6の水酸基を持 つ化合物の残基のうち、 炭素数 1 〜 4のアルキル基が挙げられる。 p
は炭素数 2〜 4のォキシアルキレン基の平均付加モル数であり 1 〜 6 0 0である。 イオン伝導度を得る目的から好ましく は 1 〜 2 0 0、 よ り好ましく は 1 〜 1 0 0である。 この値が 6 0 0 を超えるとホウ素の 導入量が少なく、 電解質として使用した際の陰ィォン補足能の発現が 困難となる。
上記電気化学デバイ ス用電解質は、 二次電池、 電気二重層コンデン サ等の電解質と して使用することができ、 二次電池用電解質と して有 用であり、 特にリチウムィォン二次電池用電解質と して有用である。 さ らに、 その二次電池用電解質を用いた二次電池と して使用すること ができる。
上記のホウ酸エステル化合物と しては、 本発明においては、 前記本 発明のホウ酸エステル化合物の製造方法、 すなわち式 ( 1 ) の化合物 と式 ( 2 ) のホウ酸含有化合物を用いて得られるホウ酸エステル化合 物を好ま しく用いることができる。
本発明に係るホウ酸エステル化合物のうち重合性基を有する化合物 は、 これに含まれる重合性基を重合させた形で使用する。 重合は、 加 熱、 紫外線、 可視光、 電子線などのエネルギーによってなされるが、 適宜、 公知の重合開始剤を使用しても良い。 重合後の数平均分子量は 5 0 , 0 0 0〜 1 0, 0 0 0 , 0 0 0であるものが好ましく、 5 0, 0 0 0 を下回ると得られるフィルムの自立性ゃ可堯性の発現が得難く なることがある。
本発明に係るホウ酸エステル化合物は、 1種または 2種以上を混合 して使用することができる。 配合によっては、 混合して使用すること によ り機械的特性の向上や二次電池用電解質と して使用した際のィォ ン伝導度の向上が望まれる。
例えば、 本発明の製造方法で得られるホウ酸エステル化合物の場合
、 式 ( 1 ) で示される化合物のうち重合性基を有するものと、 持たな いものを同時に用いてホウ酸エステル化することで、 重合性基の導入 量、 ホウ酸エステル基の導入量を任意に制御することができ、 材料設 計の点からも非常に有用である。
本発明に係るホウ酸エステル化合物は、 充放電に寄与し得るイオン の移動を制御する効果を得る目的から、 有機高分子化合物中に 5〜 1 0 0重量%用いるのが好ましく、 1 0 〜 1 0 0重量%用いるのがより 好ま しい。
本発明に係るホウ酸エステル化合物を使用した電解質では、 ホウ素 によるカチォン輸率の向上によってィォン伝導度の向上と、 それに伴 う電気化学デバイス用電解質と しての性能改善が達成できる。 さ らに 、 ホウ酸エステル化合物の水分が本質的に低いため、 電解質と して使 用した際に他の金属部材、 金属成分等の腐食の発生や、 水の電気分解 反応によるガス発生から起こる内圧上昇の問題が排除されることから 非常に有用である。
本発明に係るホウ酸エステル化合物のうち重合性基を有する化合物 では、 ホゥ酸エステル基がポリマ一マ ト リ クスと同一分子中に固定さ れているために、 高いイオン伝導度と両立して、 フィルム安定性がよ り優れる。 また、 重合性基を有するホウ酸エステル化合物の場合には 、 ホウ酸エステル基がポリマーマ ト リ クスと同一分子中にあるため、 ィォン性化合物以外の第三成分を添加することなく使用することもで き、 電解質フィルムを得る際の工程の単純化が可能であり、 非常に有 用である。
本発明の電気化学デバイス用電解質は、 種々の方法で調製可能であ る。 その調製方法は特に限定されないが、 例えば、 ホウ酸エステル化 合物と他の重合性有機化合物と混合して、 これにィォン性化合物を溶
解させ、 キャスティ ングした後に加熱して重合させることで力学的強 度を有する高分子電解質薄膜を得ることができる。 また例えば、 重合 性基を有するホウ酸エステル化合物の場合には、 ィォン性化合物を溶 解させて溶液を調製し、 これを加熱によ りキャスティ ングして熱重合 させることで、 力学的強度を有する高分子電解質薄膜を得ることがで きる。 必要に応じて、 紫外線、 可視光、 電子線等のエネルギー線を照 射することで重合性化合物の重合による薄膜を得ることもできる。 ま た、 例えば、 重合性基を有するホウ酸エステル化合物の重合物とィォ ン性化合物を良く混練し成形することで、 電気化学デバイス用電解質 薄膜を得ることができる。
電気化学デバイス用電解質はィォン性化合物およびホウ酸エステル 化合物を含有する有機高分子化合物からなる。 有機高分子化合物は、 本発明の効果を妨げない範囲でホウ酸エステル以外の他の有機高分子 化合物または重合性化合物を含有してもよい。
他の有機高分子化合物と しては、 例えばポリアク リ ロニト リル、 ァ ク リ ロニト リル一メ タク リル酸共重合体、 アク リ ロニト リル—メ タク リル酸メチル共重合体、 メ タク リル酸一スチレン共重合体、 ァク リ ロ ニト リ ルースチレン共重合体、 ァク リ ロニト リル一スチレン一メ タ ク リル酸共重合体、 アク リ ロニト リル一スチレン一メ タク リル酸メチル 共重合体、 スチレン一マレイ ン酸共重合体、 ポリアルキレングリ コ一 ル (メ タ) ァク リ レート共重合体等が挙げられる。
また、 本発明に用いられるホウ酸エステル化合物に他の重合性化合 物を予め混合し、 イオン性化合物を溶解させて、 かかる後に重合して も良い。
他の重合性化合物と しては、 アク リル酸メチル、 アク リル酸ブチル 等のアルキルァク リ レート、 メ タク リル酸メチル、 メ タク リル酸ブチ
ル等のアルキルメ タ ク リ レー ト、 下記式 ( 5 ) で示されるポリ アルキ レングリ コ一ル (メ タ) ァク リ レー ト、 アク リ ロニ ト リル、 スチレン 、 ジビュルべンゼンなどが挙げられ、 下記式 ( 5 ) で示されるポリ ア ルキレングリ コール (メ タ) アタ リ レー トを用いることが好ま しい。
Z - [ 0 (A2 0 ) m - R' ] b ( 5 )
( Zは 1 〜 4個の水酸基を持つ化合物の残基、 水素原子、 ァク リ ロイ ル基またはメ タ ク リ ロイル基であ り、 A 2 0は炭素数 2〜 4のォキシ アルキレン基の 1種または 2種以上の混合物であ り、 mは 0〜 1 5 0 、 bは 1 〜 4であり、 かつ mx b = 0〜 3 0 0であり、 R ' は水素原 子、 炭素数 1 〜 8の炭化水素基、 シァノエチル基、 ァク リ ロイル基ま たはメ 夕 ク リ ロイル基であり、 分子中に少なく と も一つはァク リ ロイ ル基またはメ タ ク リ ロイル基を含む。 )
式 ( 5 ) において Zで表される 1 〜 4個の水酸基を持つ化合物と し ては、 メチルアルコール、 エチルアルコール、 プロ ピルアルコール、 イ ソプロ ピルアルコール、 n—ブチルアルコール、 2 一ブチルアルコ —ル、 t 一ブチルアルコール、 n—へキシルアルコール、 n—ォクチ ルアルコール、 イ ソォクチルアルコール、 デシルアルコール、 ドデシ ルアルコール、 ト リ デシルアルコール、 テ トラデシルアルコール、 へ キサデシルアルコール、 ォク 夕デシルアルコール、 ォク タデセニルァ ルコール、 ィコシルアルコール、 テ トライコシルアルコール、 ァ リル アルコール、 メ タ リ ルアルコール、 ヒ ドロキシェチルビュルエーテル 等のモノオール、 エチレングリ コール、 プロ ピレングリ コール、 ブ夕 ンジオール、 ペンタ ンジオール、 へキサンジオール、 オク タ ンジォー ル等のジオール、 グリ セ リ ン、 ト リ メチロールプロパン等の ト リオ一 ル、 ペンタエリ ス リ トール、 ジグリ セリ ン等のテ トラオールが挙げら れる。
Z と しては好ま しく はメチルアルコール、 エチレングリ コ一ル、 プ ロ ピレングリ コール、 グリ セ リ ン、 ト リ メチロールプロノ、。ン、 ペン夕 エリ ス リ トール、 ジグリ セリ ンの残基、 および水素原子、 ァク リ ロイ ル基、 メ 夕 ク リ ロイル基、 よ り好ま しく はメチルアルコール、 ェチレ ングリ コール、 プロ ピレングリ コールの残基、 水素原子、 ァク リロイ ル基、 メ 夕 ク リ ロイル基である。
式 ( 5 ) において A 2 〇で示される炭素数 2 〜 4 のォキシアルキレ ン基は、 ォキシエチレン基、 ォキシプロ ピレン基、 ォキシブチレン基 、 ォキシテ ト ラメチレン基などが挙げられ、 好ま しく はォキシェチレ ン基またはォキシプロ ピレン基である。 またこれらの 1 種または 2種 以上の混合物でもよ く 、 2種以上の時の重合形式はブロッ ク状、 ラン ダム状のいずれでもよい。
式 ( 5 ) で示される化合物は分子中に少なく と も一つはァク リ ロイ ル基またはメ タ ク リ ロイル基をもつ。
本発明の電気化学デバイス用電解質に用いられるィォン性化合物は 、 有機高分子化合物に対して任意の比率で混合することができるが、 イオン性化合物に含まれるアルカ リ金属 1 モルに対して、 ホウ酸エス テル化合物に含まれるォキシアルキレン単位の総数 2〜 3 0 モル、 更 には 2 〜 2 0モルの比率となるよ うに混合するのが、 有機高分子化合 物のガラス転移温度低下によるイオン伝導度への寄与およびキヤ リ ァ 数の増大によるイオン伝導度向上の点からよ り好ま しい。 特に、 アル 力 リ金属 1 モルに対してォキシアルキレン単位の総数 4 〜 2 0 モルの 比率となるよう に混合するのが、 ィォン性化合物の解離の促進の点か ら好ま しい。
なお、 ホウ酸エステル化合物以外のォキシアルキレン単位を有する 化合物を配合する場合、 そのォキシアルキレン単位もあわせてイオン
性化合物の配合量を設定する。
本発明の電気化学デバイス用電解質に用いられるィォン性化合物の 種類は特に限定されるものではなく、 コ ンデンサ用途においては、 例 えば (C H3 ) 4 N B F 4 、 (C H3 C H2 ) 4 N B F 4 等の 4級ァ ンモニゥム塩、 A g C 1 04 等の遷移金属塩、 (C H3 ) 4 P B F 4 等の 4級ホスホニゥム塩、 L i C 1 04 、 L i A s F 6 、 L i P F 6 、 L i B F , 、 L i C F a S〇3 、 L i ( C F 3 S 02 ) 2 N、 L i (C 2 F 5 S 02 ) 2 N、 L i ( C F 3 S〇 2 ) 3 C . L i I、 L i S C N、 N a B r、 N a l、 N a S C N、 K I、 K S C Nなどのアル カ リ金属塩、 p— トルエンスルホン酸等の有機酸およびその塩などが 挙げられ、 好ま しく は出力電圧が高く得られ、 解離定数が大きい点か ら、 4級アンモニゥム塩、 4級ホスホニゥム塩、 アルカ リ金属塩であ る。
本発明の二次電池用電解質に用いられるィォン性化合物と しては、 例えば L i C 1 04 、 L i A s F 6 、 L i P F 6 、 L i B F 4 、 L i C F a S 03 L i ( C F 3 S 02 ) 2 N. L i ( C 2 F 5 S〇 2 ) 2 N、 L i .( C F 3 S 02 ) 3 C、 L i I、 L i S C N、 N a B r、 N a l、 N a S C N、 K I、 K S C Nなどのアルカ リ金属塩が挙げら れ、 好ま しく は L i C 1 04 、 L i A s F 6 、 L i P F 6 、 L i B F 4 、 L i C F 3 S 03 、 L i ( C F 3 S 02 ) 2 N、 L i ( C 2 F 5. S 02 ) 2 N、 L i ( C F 3 S 02 ) 3 C、 L i I、 L i S C Nなど のリ チウム塩である。
さ らに本発明の二次電池用電解質には、 ィォン伝導性または強誘電 性の塩、 ガラスの粉末などを添加することができる。 このような塩ま たはガラスの粉末としては、 例えば S n〇 2 、 B a T i 03 、 L a T i 03 などが挙げられる。
本発明の効果を妨げなければ、 エチレンカーボネー ト、 プロピレン カーボネー ト、 ブチレンカーボネー ト、 ジメチルカ一ボネー ト、 ジェ チルカーボネー ト、 メチルェチルカ一ボネー ト、 テ トラ ヒ ドロフラン
、 ァーブチロラ ク ト ン、 ジメ トキシェタ ン、 2 —メチルテ トラヒ ドロ フラン、 1 , 3 —ジォキソラン、 ホルムアミ ド、 ジメチルホルムアミ ド、 ニトロメ タン、 蟻酸メチル、 酢酸メチル等の液体の電解質基材を 混合して使用してもよい。
本発明の高分子電解質と、 従来公知の正極材料、 負極材料を組み合 わせることで、 イオン伝導度、 充放電サイ クル特性、 安全性に優れた 二次電池を得ることが可能である。
本発明のホウ酸エステル化合物の製造方法は、 前記式 ( 2 ) で示さ れるホゥ素含有化合物を用いるものであり、 ホウ酸エステルの製造に 従来から用いられているホウ素含有化合物である酸化ホウ素やオルト ホウ酸などのようにホウ酸エステル化反応する際の水の発生が本質的 に見られず、 式 ( 1 ) で示される化合物と式 ( 2 ) で示される化合物 のホウ酸エステル交換反応によつて発生する低分子アルコールの除去 が容易であることから、 反応に要する時間の短縮が可能であり、 生産 の効率に優れている。
さ らに、 式 ( 1 ) で示される化合物と式 ( 2 ) で示される化合物の ホウ酸エステル交換反応によって発生する式 ( 3 ) で示される低分子 量のアルコールを、 式 ( 2 ) の化合物と蒸留することによ り、 非常に 高い反応率でホゥ酸エステル化反応を進行させることが可能である。 しかも、 反応で消費されなかった残存する式 ( 2 ) で示されるホウ素 含有化合物の除去も容易であり、 高純度のホウ酸エステル化合物を得 ることができる。
また本発明のホウ酸エステル化合物は、 ホウ酸エステル化反応する
際の水の発生がないことから水分含有量が非常に少なく、 電気化学デ バイス用電解質と して使用した場合に、 電解質の用途上含まれるィォ ン性化合物の分解を誘因せず、 かつこれら電気化学デバイスに用いら れている金属の腐食も発生させず、 電気特性に優れる。
さ らに、 ホウ酸エステル化合物の製造に通常用いられているホウ素 含有化合物である酸化ホウ素、 オルトホウ酸、 メ タホウ酸やピロホゥ 酸はポリアルキレングリ コール誘導体への溶解性を有するため、 エス テル化した後にも溶存している可能性があり、 これで得られたホウ酸 エステル化合物を電気化学デバイス用電解質と して使用した際に、 含 まれるィォン性化合物とのイオン交換や、 用いられている金属との反 応ゃイオン捕捉が発生する可能性がある。 本発明の製造方法では、 前 記式 ( 2 ) で示されるホウ素含有化合物が残存した場合でも支持塩類 や金属と反応や相互作用をしない形態であるため、 電気特性に優れる 本発明の電気化学デバイス用電解質を用いた場合に、 広い温度範囲 に亘つて高いイオン伝導度を有し、 サイ クル特性および安全性および 安定性に優れた電気化学デバイスを得ることができる。
また本発明の製造方法で得られたホウ酸エステル化合物は、 水分含 有量が非常に少なく、 かつ、 純度が高いため、 式 ( 1 ) で示される化 合物および式 ( 3 ) で示される化合物の残存量が少ない。 このような 、 低水分、 水酸基の少ないホウ酸エステル化合物は、 リチウムイオン 二次電池用電解質と して使用した場合に、 内部抵抗の増加が非常に少 なく、 高性能な電解質およびその電解質を使用した良好な電池を得る ことができる。
さ らに、 本発明のホウ酸エステル化合物の製造方法では、 任意の構 造を有するホウ酸エステル化合物を得ることができ、 分子設計が容易
であることから様々な特性を発揮することのできる電気化学デバイス への応用が容易に達成することができる。
以下、 本発明を実施例によ り更に具体的に説明する。
なお、 以下文中において乾燥空気は凝縮型エア一ドライヤーを通じ て脱水した空気を示し、 L i T F S I はリチウムゼス ( ト リ フルォロ メ タンスルホネート) イ ミ ドを示し、 L i P F 6 は六フッ化リ ン酸リ チウムを示す。 電解質組成物のイオン性化合物と しての L i T F S I または L i P F 6 の添加量は、 各実施例とも電解質組成物中に含まれ るアルキレンォキシ ドのエーテル酸素 1 6 モルに対して、 L i イオン 濃度が 1 モルの比率となっている。
実施例 1
出発物質と して分子量 5 5 0 のメ トキシポリエチレングリ コール 5 5 0 g ( 1 . 0 モル) にホウ酸ト リ メチル 3 4 . 6 g ( 0 . 3 3 3 モ ル) を加え、 攪拌しながら窒素ガス雰囲気下 6 0 °Cまで昇温した。 6 0 °Cにて 1 時間保持したのちに温度 1 2 0 °Cまで 1 時間かけて昇温し た。 1 2 0 °Cになったのちに系内を徐々に減圧し、 圧力 1 . 6 7 k P a ( 2 0 m m H g ) 以下の状態を 3時間保持し、 反応の進行に伴って 発生する揮発分を除去した。 その後濾過することでホウ酸エステル化 合物 5 2 0 gが得られた。
実施例 2
出発物質として日本油脂 (株) 製ブレンマー P E _ 3 5 0 (ポリエ チレングリ コール ( 3 5 0 ) モノメ タク リ レー ト) 6 5 4 g ( 1 . 5 モル) にホウ酸ト リ メチル 5 1 . 9 g ( 0 . 5 モル) を加え、 攪拌し ながら乾燥空気雰囲気下 6 0 °Cまで昇温した。 6 0 °Cにて 1 時間保持 したのちに温度 7 5 °Cまで昇温し、 7 5 °Cになったのちに系内を徐々 に減圧し、 圧力 2 . 6 7 k P a以下の状態を 6時間保持し、 反応の進
行に伴って発生する揮発分を除去した。 その後濾過することで重合性 ホウ酸エステル化合物 6 2 5 gが得られた。
実施例 3
出発物質と して日本油脂 (株) 製ブレンマー A E— 4 0 0 (ポリェ チレングリ コール ( 4 0 0 ) モノアク リ レー ト) 7 0 8 g ( 1 . 5モ ル) にホウ酸ト リメチル 5 1 . 9 g ( 0 . 5モル) を加え、 攪拌しな がら乾燥空気雰囲気下 6 0 °Cまで昇温した。 6 0 °Cにて 1 時間保持し たのちに温度 7 0 °Cまで昇温し、 7 0 °Cになったのちに系内を徐々に 減圧し、 圧力 2 . 6 7 k P a以下の状態を 6時間保持し、 反応の進行 に伴って発生する揮発分を除去した。 その後濾過することで重合性ホ ゥ酸エステル化合物 6 7 0 gが得られた。
実施例 4
出発物質と して日本油脂 (株) 製ブレンマー A E— 4 0 0 (ポリェ チレングリ コール ( 4 0 0 ) モノアク リ レー ト) 9 4 4 g ( 2 . 0モ ル) および分子量 5 5 0 のメ トキシポリエチレングリ コール 5 5 0 g
( 1 . 0 モル) にホウ酸ト リメチル 1 0 3 . 8 g ( 1 . 0モル) を加 え、 攪拌しながら乾燥空気雰囲気下 6 0 °Cまで昇温した。 6 0 °Cにて
1 時間保持したのちに温度 7 0 °Cまで昇温し、 7 0 °Cになったのちに 系内を徐々に減圧し、 圧力 2 . 6 7 k P a以下の状態を 6時間保持し 、 反応の進行に伴って発生する揮発分を除去した。 その後濾過するこ とで重合性ホウ酸エステル化合物 1 4 3 O gが得られた。
比較例 1
出発物質と して分子量 5 5 0 のメ トキシポリェチレングリ コール 5 5 0 g ( 1 . 0 モル) に酸化ホウ素 1 6 g ( 0 . 1 6 7 モル) を 加え、 攪拌しながら窒素ガス雰囲気下 1 1 0 °Cまで昇温した。 1 1 0 °Cになったのちに系内を徐々に減圧し、 圧力 1. 6 7 k P a以下の状
態を 3時間保持し、 反応の進行に伴って発生する水を除去した。 その 後濾過することでホウ酸エステル化合物 5 2 0 gが得られた。
比較例 1
出発物質と して日本油脂 (株) 製ブレンマ一 A E— 4 0 0 (ポリェ チレングリ コール ( 4 0 0 ) モノアク リ レー ト) 4 7 2 g ( 1 . 0モ ル) にオル卜ホウ酸 2 0. 6 g ( 0. 3 3 3モル) を加え、 攪拌しな がら乾燥空気雰囲気下 7 0 °Cまで昇温した。 7 0 °Cになったのちに系 内を徐々に減圧し、 乾燥空気通気下にて圧力 . 6 7 k P a以下の状 態を 6時間保持し、 反応の進行に伴って発生する水を除去した。 その 後濾過することで重合性ホウ酸エステル化合物を 4 5 0 gが得られた 比較例 3
出発物質として日本油脂 (株) 製ブレンマー P E— 3 5 0 (ポリヱ チレングリ コール ( 3 5 0 ) モノメ タ ク リ レー ト) 6 5 4 g ( 1 . 5 モル) に酸化ホウ素 1 7. 4 g ( 0 . 2 5モル) を加え、 攪拌しなが ら乾燥空気雰囲気下 7 5 tまで昇温した。 7 5 °Cになったのちに系内 を徐々に減圧し、 乾燥空気通気下にて圧力 2 . 6 7 k P a以下の状態 を 6時間保持し、 反応の進行に伴って発生する水を除去した。 その後 濾過することで重合性ホウ酸エステル化合物を 6 2 0 gが得られた。 実施例 1 〜 4および比較例 1 〜 3のホウ酸エステル化合物の水分含 有量を、 日本工業規格 J I S K 1 5 5 7 6 . 5 に準拠したカール フイ ツシャ一滴定によって、 以下のように測定、 算出した。
カールフィ ッ シャー測定用脱水メ タノール 1 0 0 m 1 を溶剤として 用い、 容量滴定法によって水分含有量の測定を行った。 滴定液は、 力 価 3 m g H2 O/ gの試薬を用いた。 水分含有量の少ないものについ
ては、 J I S K 1 5 5 7 6. 5に規定されたサンプル量 2 0 gよ り多く の試料 ( 4 0 g ) を測定に供し水分含有量を求めた。 試料はシ リ ンジで測定容器に投入した。 また、 すべての試料について、 二つの 測定値の平均をと り、 有効数字 2桁 ( 3桁目を四捨五入) と した。 実施例 5
実施例 1のホウ酸エステル化合物 5. 0 0 gとポリエチレングリ コ —ル ( 6 0 0 ) ジメ タク リ レートである日本油脂 (株) 製ブレンマー P D E - 6 0 0を 2. 5 0 gとメ トキシポリエチレングリコール ( 4 0 0 0 ) モノメ タク リ レー トである日本油脂 (株) 製ブレンマー P M E— 4 0 0 0を 2. 5 0 gとを混合し、 支持塩と して L i T F S I を 3. 6 5 g添加し、 均一に溶解させた後、 熱重合開始剤であるァゾビ スイソプチ口二ト リル 3 0 m gを混合溶解させ、 シリ コンウェハ一上 にスピンコ一夕一を用いて塗布し、 その後 8 0 tのオーブン中に 2時 間静置して熱重合させることで厚さ 1 0 O wmのィォン伝導性高分子 組成物 (高分子電解質) を得た。
実施例 6
実施例 3の重合性ホウ酸エステル化合物 1 0. 0 gに、 支持塩と し て L i TF S I を 3. 3 7 g添加し、 均一に溶解させた後、 熱重合開 始剤であるァゾビスイソプチロニト リル 3 0 m gを混合溶解させ、 シ リ コンウェハ一上にスピンコ一夕一を用いて塗布し、 その後 8 0 °Cの ォ―ブン中に 2時間静置して熱重合させることで厚さ 1 0 O wmのィ オン伝導性高分子組成物 (高分子電解質) を得た。
実施例 7
実施例 4の重合性ホウ酸エステル化合物 1 0. 0 gに、 支持塩と し て L i TF S I を 3. 5 5 g添加し、 均一に溶解させた後、 熱重合開 始剤であるァゾビスイソプチロニト リル 3 0 m gを混合溶解させ、 シ
リ コンウェハー上にスピンコ一夕一を用いて塗布し、 その後 8 0 °Cの オーブン中に 2時間静置して熱重合させることで厚さ 1 0 O w mのィ オン伝導性高分子組成物 (高分子電解質) を得た。
実施例 8
実施例 2の重合性ホウ酸エステル化合物 1 0. 0 gに、 支持塩と し て L i P F 6 を 1 . 7 1 g添加し、 均一に溶解させた後、 熱重合開始 剤であるァゾビスイソプチロニト リル 3 0 m gを混合溶解させ、 シリ コンウェハー上にスビンコ一夕一を用いて塗布し、 その後 8 0 °Cのォ ーブン中に 2時間静置して熱重合させることで厚さ 1 0 0 〃 mのィォ ン伝導性高分子組成物 (高分子電解質) を得た。
実施例 9
実施例 2の重合性ホウ酸エステル化合物 5 . 0 0 g と、 メ トキシポ リエチレングリ コール ( 4 0 0 0 ) モノメ タク リ レートである日本油 脂 (株) 製ブレンマー P M E— 4 0 0 0 を 5 . 0 O g とをよく混合し 、 支持塩と して L i P F 6 を 1 . 9 1 g添加し、 均一に溶解させた後 、 熱重合開始剤であるァゾビスイソプチロニト リル 3 0 m gを混合溶 解させ、 シリ コンウェハー上にスピンコ一夕一を用いて塗布し、 その 後 8 0 °Cのオーブン中に 2時間静置して熱重合させるこ とで厚さ 1 0 0 のイオン伝導性高分子組成物 (高分子電解質) を得た。
比較例 4
比較例 1の重合性ホウ酸エステル化合物 1 0 . 0 gに、 支持塩と し て L i T F S I を 3 . 3 7 g添加し、 均一に溶解させた後、 熱重合開 始剤であるァゾビスィソブチロニト リル 3 0 m gを混合溶解させ、 シ リ コンウェハ一上にスピンコ一夕一を用いて塗布し、 その後 8 0 °Cの オーブン中に 2時間静置して熱重合させることで厚さ 1 0 0 mのィ オン伝導性高分子組成物 (高分子電解質) を得た。
比較例 5
比較例 1 のホウ酸エステル化合物 5. 0 0 g とポリエチレングリ コ ール ( 4 0 0 ) ジアタ リ レートである日本油脂 (株) 製ブレンマー A D E - 4 0 0を 2 . 5 0 g とメ トキシポリエチレングリ コール ( 4 0 0 0 ) モノメ タク リ レートである日本油脂 (株) 製ブレンマー P M E 一 4 0 0 0 を 2 . 5 0 g とを混合し、 支持塩と して L i P F 6 を 1 . 9 3 g添加し、 均一に溶解させた後、 熱重合開始剤であるァゾビスィ ソブチロニ ト リル 3 0 m gを混合溶解させ、 シリ コンウェハー上にス ビンコ一夕一を用いて塗布し、 その後 8 0 °Cのオーブン中に 2時間静 置して熱重合させることで厚さ 1 0 のィォン伝導性高分子組成 物 (高分子電解質) を得た。
比較例 6
比較例 1 の重合性ホウ酸エステル化合物 1 0. 0 gに、 支持塩と し て L i P F 6 を 1 . 7 8 g添加し、 均一に溶解させた後、 熱重合開始 剤であるァゾビスイソプチロニト リル 3 0 m gを混合溶解させ、 シリ コンウェハ一上にスピンコ一夕一を用いて塗布し、 その後 8 0 °Cのォ —ブン中に 2時間静置して熱重合させることで厚さ 1 0 O w mのィォ ン伝導性高分子組成物 (高分子電解質) を得た。
比較例 7
比較例 3 の重合性ホウ酸エステル化合物 7. 5 0 g とメ トキシポリ エチレングリコール ( 2 0 0 0 ) モノメ タク リ レートである日本油脂 (株) 製ブレンマ一 P M E— 2 0 0 0 を 2 . 5 0 g とを混合し、 支持 塩と してし i P F 6 を 1 . 8 0 g添加し、 均一に溶解させた後、 熱重 合開始剤であるァゾビスィソブチロニ卜リル 3 0 m gを混合溶解させ 、 シリ コンウェハー上にスピンコーターを用いて塗布し、 その後 8 0 °Cのオーブン中に 2時間静置して熱重合させることで厚さ 1 0 0 〃 m
のイオン伝導性高分子組成物 (高分子電解質) を得た。
実施例 5〜 9、 比較例 4〜 7で得られた高分子電解質についてフィ ルム成形性および安定性の評価を行った。
フィルム成形性は電気化学デバイス用電解質と して使用するにあた つて、 いずれも申し分ない性状が得られた。
高分子電解質の安定性は次の方法で評価をおこなった。
各高分子電解質フィルムを厚さ 5 0 ί πιの金属リチウム箔 2枚に挟 み込んだ物をアルゴン雰囲気下 5 0 °Cの恒温槽に入れ、 1 日後および 7 日後の電解質フィルムの外観およびリチウム箔の電解質フイルムと の接触面の状態を観察した。
〇 : 電解質フィルム外観、 金属リチゥム箔の接触面とも全く変化無し
△ : 電解質フィルム外観が着色、 も しく は金属リチウム箔の接触面が 一部腐食している。
X : 電解質フィルム外観が着色し、 さ らに金属リチゥム箔が明らかに 腐食している。
また、 イオン伝導度について実施例 5、 7、 9および比較例 5、 6 で得られた高分子電解質の評価をおこなつた。 ィォン伝導度の測定は 次の方法でおこなった。
上記の金属リチウム箔 2枚に挟み込んだ物をステンレス電極に挟み 込んでノンブロッキング電極を形成し、 アルゴン雰囲気下、 温度を変 化させ、 各温度における交流複素ィ ンピーダンス測定を行い、 得られ た複素平面上のプロッ ト ( C o 1 e - C 0 1 eプロッ ト) のバルク抵 抗成分の半円の直径からィォン伝導度と して求めた。
実施例 1 0
正極活物質と して L i C 0 1 / 6 M η , , / 6 0 4 の組成式で示されるス
ピネル型構造を有するコバルト 1 / 6置換マンガン酸リチウム粉末 7
5重量部と、 バイ ンダーポリマ一と してポリ フッ化ビニリデン粉末 5 重量部、 導電材と してアセチレンブラッ ク粉末 2 0重量部を良く混練 し、 銅箔上にホッ トプレス法にて厚さ 1 0 0 m、 直径 1 0 mmの正 極材料を得た。 アルカ リ金属ィォン吸蔵材と して厚さ約 8 0 u m、 直 径 1 0 mmの金属リ チウム箔を負極材料と した。 実施例 6 の高分子電 解質を直径 1 O mmに打ち抜き、 前述の正極材料および負極材料にて 挟み込み、 さ らにステンレス電極にて挟み込んで二次電池を得た。 得られた二次電池について、 5 0 °C も しく は 8 0 °Cにて電流密度 2
0 0 mA/m2 にて 4 . 1 5 Vまで充電した後、 電流密度 2 2 O mA /m2 にて 3 . 5 0 Vまで放電する充放電を 3 0 0サイクル繰り返し 、 各電池の初期容量 ( 1 サイ クル目) 、 1 0 0サイ クル目および 3 0
0サイ クル目の正極 1 k g当たりの放電容量を、 初期容量に対する百 分率にて評価した。
◎ : 初期容量の 7 0 %以上の放電容量を有する。
〇 : 初期容量の 4 0 %以上 7 0 %未満の放電容量を有する。
△ : 初期容量の 4 0 %未満の放電容量を有する。
X : 内部短絡発生あるいは極材の劣化、 または伝導度が十分に得られ ない等の理由により評価不可。
実施例 1 1
高分子電解質と して実施例 8の高分子電解質を使用した他は、 実施 例 1 0 と同じ組成にて二次電池系を組み、 実施例 1 0 と同様の条件に て充放電サイ クル試験を行った。
比較例 8
高分子電解質と して比較例 4 の高分子電解質を使用した他は、 実施 例 1 0 と同じ組成にて二次電池系を組み、 実施例 1 0 と同様の条件に
て充放電サイ クル試験を行った。
比較例 9
高分子電解質と して比較例 7 の高分子電解質を使用した他は、 実施 例 1 0 と同じ組成にて二次電池系を組み、 実施例 1 0 と同様の条件に て充放電サイ クル試験を行った。
実施例 1 〜 4、 比較例 1 〜 3 で得られたホウ酸エステル化合物に使 用した式 ( 1 ) で示される化合物の種類、 ホウ素含有化合物の種類、 反応に要した減圧状態を保持した時間、 水分含有量を表 1 に示す。 以 下、 実施例および比較例の電解質組成およびィォン性化合物の種類お よび得られた電解質フィルムの安定性評価結果を表 2 、 2 5 °Cおよび 8 0 °Cにおけるィォン伝導度の評価結果を表 3 、 5 0 °Cおよび 8 0 °C における充放電試験の評価結果を表 4 に示す。 表 1 式 (1)
反応に要し で示され 反応に用いたホウ素 水分含有量
式 (1) で示される化合物 た減圧時間 る化合物 含有化合物 P ρητ
(h r) のモル比
1 CHsO-CEOin.e-H ホウ酸卜リメチル 42 3. 0
2 M0-(E0)8.0-H ホウ酸トリメチル 120 6. 0 施
例 3 AO- (EO -H ホウ酸トリメチル 320 6. 0
4 AO- (E0) g. Ί-Η/0Η30- (E0)„.8-H 2/1 ホウ酸トリメチル 220 6. 0
1 0Η30-(Ε0) .8-Η 無水ホウ酸 1400 3. 0 比
較 2 Α0-(Ε0)9.Ί-Η オルトホウ酸 5200 6. 0 例
3 M0-(E0)8.0-H 無水ホウ酸 3700 6. 0
表 2
表 1 2 中、 Μはメ タ ク リ ロイル基を、 Αはァク リ ロイル基を示す また、 E〇はォキシエチレン基を示す。
表 3
伝導度(S/m)
No.
25°C 80°C
5 5.75 10"4 2.06 X 10— 2
実
施 7 3.37 X 10"4 1.55 X 10"2
例
9 1.06X 10—4 1.03X 10— 1
比 5 2.10 10"7 5.40X 10
較
例 6 1.23 X 10— 6 3.93 X 10— 4
表 4
比較例 1 〜 3の製造方法で得られたホウ酸エステル化合物では水分 含有量が高いのに対し、 実施例 1 〜 4で得られたホウ酸エステル化合 物では反応の温度、 時間の条件は同じにもかかわらず水分含有量が遙 かに小さいことが確かめられた。
また実施例で得られたホウ酸エステル化合物を用いた電気化学デバ ィス用電解質では、 アル力 リ金属の腐食性が見られず安定性に優れ、 イオン伝導度が高く、 二次電池用電解質と しても優れたサイ クル特性 を示すことが確かめられた。
実施例 1 2
出発物質と して平均分子量 3 7 0 のポリエチレングリ コール ( 6 . 8 モル) モノアタ リ レー ト (日本油脂 (株) 製ブレンマー A E— 3 0 0 ) 1 1 1 0 g ( 3 . 0モル) 、 ホウ酸ト リ メチル 9 3 4 . 2 g ( 9 . 0モル) 仕込み、 この混合液中に B H T 0 . 3 3 g加え、 攪拌しな がら乾燥空気吹き込み下、 常圧で 7 0 tまで昇温した。 7 0 °Cにて 1 時間保持したのちに系内を徐々に減圧し、 8時間かけて 2 . 6 7 k P aまで、 7 0 °Cを保ちながら、 反応によって副生するメ タノールとホ
ゥ酸ト リメチルの蒸留除去を行った。 さらに、 7 0 °C、 2 . 6 7 k P aの状態を 3時間保持して乾燥を行い、 目的のホウ酸エステル化合物 1 1 0 0 gが得られた。
実施例 1 3
出発物質と して平均分子量 9 0 のポリエチレングリ コール ( 4 . 6 モル) モノメ タク リ レート (日本油脂 (株) 製ブレンマ一 P E— 2 0 0 ) 8 7 0 g ( 3 . 0 モル) 、 ノニルフヱノール 3 3 0 g ( 1 . 5 モル) 、 ホウ酸ト リ メチル 7 7 8 . 5 g ( 7 . 5 モル) 仕込み、 この 混合液中に B H T 0 . 3 3 g加え、 攪拌しながら乾燥空気吹き込み下 、 常圧で 7 0 °Cまで昇温した。 7 0 °Cにて 1時間保持したのちに系内 を徐々に減圧し、 8時間かけて 2 . 6 7 k P aまで、 7 0 °Cを保ちな がら、 反応によって副生するメ タノールとホウ酸ト リ メチルの蒸留除 去を行った。 さ らに、 7 0 ° (:、 2 . 6 7 k P aの状態を 3時間保持し て乾燥を行い、 目的のホウ酸エステル化合物 1 1 0 0 gが得られた。 実施例 1 4
出発物質と して平均分子量 1 0 0 0 のメ トキシポリオキシエチレン ( 1 6 . 5モル) プロ ピレングリ コール ( 4 . 2 モル) ラ ンダム共重 合体 1 5 0 0 g ( 1 . 5 モル) 、 ホウ酸ト リ イ ソプロ ピル 4 7 0 g ( 2 . 5 モル) を加え、 攪拌しながら窒素ガス雰囲気下 1 3 0 °Cまで昇 温した。 1 3 0 °Cにて 1 時間保持したのちに系内を徐々に減圧し、 8 時間かけて 2 . 6 7 k P aまで、 1 3 0 °Cを保ちながら、 反応によつ て副生するイソプロパノールとホウ酸ト リイソプロピルの蒸留除去を 行った。 さらに、 1 3 0 :、 2. 6 7 k P aの状態を 3時間保持して 乾燥を行い、 目的のホウ酸エステル化合物 1 4 0 0 gが得られた。 実施例 1 5
出発物質と して平均分子量 3 7 0 のポリエチレングリ コール ( 6 .
8モル) モノアク リ レー 卜 (日本油脂 (株) 製ブレンマー A E— 3 0 0 ) 1 8 5 g ( 0 . 5 モル) 、 平均分子量 1 0 0 0 のメ トキシポリオ キシエチレン ( 1 6 . 5 モル) /ポリオキシプロ ピレン ( 4 . 2 モル ) ランダム共重合体 1 O O O g ( 1 . 0モル) 、 ホウ酸ト リメチル 1 0 3 . 8 g ( 1 . 0 モル) 、 B H T 0 . 5 9 gを加え、 攪拌しながら 乾燥空気吹き込み下 6 0 °Cまで昇温した。 6 0 °Cにて 1時間保持した のちに系内を徐々に減圧し、 4時間かけて 2 . 6 7 k P aまで、 6 0 °Cを保ちながら、 反応によって副生するメ タノールとホウ酸ト リ メチ ルの蒸留除去を行った。 その後、 圧力を常圧に戻し、 さ らにホウ酸ト リ メチル 1 0 3 . 8 g ( 1 . 0モル) を加え、 6 0 °C、 圧力を常圧か ら 2 . 6 7 k P aまで 4時間かけて徐々に減圧し、 副生するメ タノ一 ルとホウ酸ト リメチルの蒸留除去を行った。 その後、 6 0 °C、 2 . 6 7 k P aの状態を 1時間保持して乾燥を行い、 目的のホウ酸エステル 化合物 1 1 0 0 gが得られた。
実施例 1 6
蒸留塔を備えた 3 リ ッ トルの 4つ口フラスコに、 平均分子量 1 9 0 のポリエチレングリ コ一ル ( 4 . 6 モル) モノメ タ ク リ レー ト (日本 油脂 (株) 製ブレンマー P E— 2 0 0 ) 9 2 8 g ( 3 . 2 モル) 、 平 均分子量 4 0 0 のポリエチレングリ コール ( 8 . 7モル) 3 2 0 g ( 0 . 8モル) 、 ホウ酸ト リ メチル 1 2 4 6 g ( 1 2 . 0モル) 、 B H T 0 . 6 2 g仕込み、 乾燥空気を吹き込みながら、 6 8 k P aで還流 が始まる温度 ( 5 0〜 6 5 °C ) まで昇温した。 全還流を 3 0分間行つ た後、 還流比 1 0 で 5時間、 塔頂より留出させた。 留出させるにした がい、 釜内温度および塔頂温度が上昇し、 塔頂温度が 6 0 °Cになって から還流比 1 0でさ らに 3時間留出させた。
その後、 釜内反応液に含まれるホウ酸ト リメチルを釜内温度 6 0 °C
以下、 2 . 6 7 k P aまで留去させ、 その後 6 0 ° (:、 2. 6 7 k P a の状態を 2時間保持して乾燥を行い、 目的のホウ酸エステル化合物 1 1 5 0 gを得た。
比較例 1 0
出発物質と して平均分子量 3 7 0のポリエチレングリ コール ( 6 . 8モル) モノアク リ レート (日本油脂 (株) 製ブレンマー A E— 3 0 0 ) 2 2 2 0 g ( 6 . 0モル) に酸化ホウ素 6 9. 6 g ( 1 . 0モル ) 、 B H T 0 . 6 7 gを加え、 攪拌しながら乾燥空気吹き込み下 8 0 °Cまで昇温した。 8 0 °C となったのちに系内を徐々に減圧し、 2 . 6 7 k P a以下の状態を 3時間保持し、 反応の進行に伴って発生する水 を除去した。 その後濾過することでホウ酸エステル化合物 2 1 0 0 g が得られた。
比較例 1 1
出発物質と して平均分子量 3 7 0のポリエチレングリ コール ( 6 . 8モル) モノアク リ レー ト (日本油脂 (株) 製ブレンマー A E— 3 0 0 ) 1 4 8 0 g ( 4. 0モル) 、 平均分子量 1 0 0 0のメ トキシポリ ォキシエチレン ( 1 6 . 5モル) ポリオキシプロ ピレン ( 4 . 2モル ) ランダム共重合体 2 0 0 0 g ( 2 . 0モル) 、 に酸化ホウ素 5 5. 7 g ( 0 . 8モル) を加え、 攪拌しながら乾燥空気吹き込み下 8 0 °C まで昇温した。 8 0 °C となったのちに系内を徐々に減圧し、 2 . 6 7 k P a以下の状態を 3時間保持し、 反応の進行に伴って発生する水を 除去した。 その後濾過することでホウ酸エステル化合物 3 4 0 0 が 得られた。
比較例 1 2
出発物質と して平均分子量 1 9 0のポリエチレングリ コール ( 4. 6モル) モノメ タクリ レート (日本油脂 (株) 製ブレンマ一 P E— 2
0 0 ) 5 8 0 g ( 2 . 0モル) 、 平均分子量 4 0 0のポリエチレング リ コール ( 8. 7モル) 2 0 0 g ( 0 . 5モル) 、 にホウ酸 6 1 . 8 g ( 1 . 0モル) 、 B H T O . 2 3 gを加え、 攪拌しながら乾燥空気 吹き込み下 8 0 °Cまで昇温した。 8 0 °C となったのちに系内を徐々に 減圧し、 2 . 6 7 k P a以下の状態を 3時間保持し、 反応の進行に伴 つて発生する水を除去した。 その後濾過することでホウ酸エステル化 合物 5 2 0 gが得られた。
〔ホウ酸エステル化合物の評価〕
《水分含有量の測定方法》
前記と同様の方法で求めた。
実施例 1 2〜 1 6、 比較例 1 0〜 1 2 のホウ酸エステル化合物のホ ゥ素濃度を、 以下に示す手法によ り求めた。
ここでは式 ( 1 ) で示される化合物のみが全てホウ酸エステル化さ れ、 その他の化合物を含有しないと仮定した時のホウ素濃度を理論ホ ゥ素濃度と定義し、 化合物の純度をホウ素濃度/理論ホウ素濃度、 と して示した。
《ホウ素濃度の測定方法》
グリセリ ン /ィォン交換水 ( 5 0 / 5 0 v o l ) 1 0 0 m l の混合 溶液中に、 得られたホウ酸エステル化合物を、 予想されるホウ素濃度 に応じて 1 〜 5 0 g秤量し、 加える。 混合液を室温で 5分間攪拌した 後、 フヱノールフタ レイ ン 1 %溶液 2〜 3滴を該混合液に加え、 フユ ノールフタ レイ ンの変色 (無色—紫色) が見られるまで 1 / 1 0規定 水酸化ナ ト リゥム水溶液で滴定する。 ホウ素濃度は式 ( 7 ) より求め た。
ホウ素濃度 (m o l /k g ) = ( a— b ) x f /w ( 7 )
a : 1 / 1 0規定水酸化ナ ト リ ゥム水溶液の滴定量 (m 1 )
b : 空測定における 1 / 1 0規定水酸化ナト リ ゥム水溶液の滴定: m 1 )
w : 試料採取量 ( g )
f : 1 / 1 0規定水酸化ナト リ ゥム水溶液のファクタ一
表 5
※ E 0はォキシエチレン基、 P 0はォキシプロピレン基を示す。
Mはメ 夕 ク リ ロイル基、 Aはァク リ ロイル基、 P hはフエ二レン基 を示す。
[ / ] はランダム共重合を示す。
〔リチウムイオン二次電池用電解質と しての評価〕
〔高分子電解質〕
実施例 1 2 、 1 6及び比較例 1 0 、 1 2の各々によ り得られたホウ 酸エステル化合物に、 L i F T S I を 2 0重量%となるように加え、
均一になるまで十分に混合した。 その後、 A I B N (ァゾイソプチ口 二ト リル) を 0 . 1重量%加え混合し、 温度 8 0 °Cで熱重合反応を行 つた。 その後、 厚さ 1 . O m m、 直径 1 4 m mの円盤状に成形し、 高 分子電解質を作成した。
〔正極〕
L i N i 0 . 9 C o o . . 0 2 で示される正極活物質を乳鉢中で粉砕し 、 正極活物質粉末を得た。 この粉末と、 導電剤と してのアセチレンブ ラッ クと、 結着剤と してのポリ フッ化ビニリデンとを、 重量比 4 3 : 3 : 2 で混合して正極合剤を調整し、 直径 1 4 m mの円盤状に加圧成 形および熱処理を行い、 正極を作成した。
〔負極〕
所定の厚みを有する金属リチウムを直径 1 4 m mの円盤状に打ち抜 いて負極を作成した。
《リチウムイオン二次電池の作成およびその評価》
上記で示される高分子電解質、 正極、 負極を組み合わせることによ り、 それぞれ実施例 1 7、 1 8および比較例 1 3、 1 4 で示すリチウ ムィォン二次電池を作成した。 この電池をアルゴン雰囲気下で密閉し 、 温度 6 0 °Cにおいて、 初期の内部抵抗を測定した。 その後、 6 0 °C で 1 0 0時間保存し、 その後の内部抵抗を測定した。
評価結果を表 6 に示す。
表 6
比較例 1 0 〜 1 2 においては、 水分も しく は純度の低いホウ酸エス テル化合物しか得られなかつたのに対し、 実施例 1 2 〜 1 6 によれば 、 水分含有量が低く、 かつ反応率の高い、 も しく は純度の高いホウ酸 エステル化合物を得ることが可能である。
さ らに、 本発明による製造方法により得られたホウ酸エステル化合 物は、 リチウムィォン二次電池用電解質と して使用した場合、 保存時 の内部抵抗の増加が少ない電池を得ることが可能であり、 性能の高い 電解質および二次電池を得ることができた。 産業上の利用分野
本発明の製造方法で得られたホウ酸エステル化合物は、 水分含有量 が非常に少なく、 かつ、 純度が高いため、 式 ( 1 ) で示される化合物 および式 ( 3 ) で示される化合物の残存量が少ない。 このよ うな、 低 水分、 水酸基の少ないホウ酸エステル化合物は、 リチウムイオン二次 電池用電解質と して使用した場合に、 内部抵抗の増加が非常に少なく 、 高性能な電解質およびその電解質を使用した良好な電池を得ること ができる。
さ らに、 本発明のホウ酸エステル化合物の製造方法では、 任意の構
造を有するホウ酸エステル化合物を得ることができ、 分子設計が容易 であるこ とから様々な特性を発揮することのできる電気化学デバイス への応用を容易に達成することができる。