明細書
ポリエステル樹脂組成物及びその製造方法
技術分野
本発明は機械的強度、 硬度、 剛性、 ガスバリア性等が改善されたポリエ ステル樹脂組成物及びその製造方法に関する。 特に、 ポリエステル樹脂と 層状無機粒子との複合した上記の性能に優れたポリエステル樹脂組成物及 びその製造方法に関する。
背景技術
ポリエチレンテレフタレ一卜やポリブチレンテレフタレートなどのポリ エステル樹脂は、優れた機械的強度、耐熱性、 衛生性を有するため、繊維、 フィルム、 ポ卜ル、 成型材料等の分野で広く使われている。 これらポリエ ステル樹脂に無機強化材ゃ各種添加剤を配合することによって種々の機能 を付与することが行われている。 たとえば、 耐候性、難燃性、 帯電防止性、 着色性、 摺動性、 表面特性、 抗菌性、 結晶性、 透明性、 耐衝撃性、 耐ブロ ッキング性、 導電性、 ガスバリア性等の機能の向上を図って無機強化材ゃ 各種添加剤の配合がなされている。
近年、 無機層状化合物への単量体化合物のィン夕一力レーシヨンを利用 したナイロン クレー (モンモリロナイ ト等) ハイブリッドが盛んに検討 され、ナノコンポジットとして自動車部品等に実用化されている。このナノ コンポジッ トにより、 フィラー (無機強化材等) がわずか数%の充填率で あっても、 高い弾性率、 耐熱性の向上あるいはガスバリア性の向上等の効 果が得られている。このナノコンポジッ トにおいて用いられるフィラーと しては、 モンモリロナイ ト、 サボナイ ト等のスメクタイ ト族や力オリナイ ト等の力オリン族等の粘土鉱物、 ケィ酸塩化合物等が用いられている。 このような無機層状化合物の粒子の一つとしてハイ ドロタルサイ 卜に代 表される層状複水酸化物が知られている。 層状複水酸化物 (ハイ ド口タル サイ ト類等) の化合物は層間にァニオンを有する層状構造を持った物質で あり、 微粒子状でポリ塩化ビニルに配合されて、 熱安定剤等として使われ
ている。 また、 蓄熱効果を有するためにォレフィンフィルムに添加して農 業用フィルムに使われたり、 酸に溶けて P H調節機能を有することから医 薬用の制酸剤にも使われている。 W O 0 1 / 4 2 3 3 5ではハイ ドロタル サイ ト類のポリエステル重合触媒としての利用が開示されている。 また、 特公表 2002-500253及び特公表 2002-500254ではァニオンの少なくとも 2 0 %が高分子マトリックスと相溶性及び/又は反応性を有するものを使用 するナノ複合材料が開示されている。 ポリエステル樹脂においては、 高温 での耐加水分解を抑制するためにハイ ドロタルサイ トを配合することが開 示されている。
ハイ ドロタルサイ トも含め層状無機粒子とポリエステル樹脂の複合系組 成物は検討されているが、 ポリエチレンテレフ夕レート等のポリエステル 樹脂中にナノメータサイズで層状無機粒子を分散することができておらず, 満足できる特性を有するものが得られていない。 そのため層状無機粒子と ポリエステル樹脂のナノコンポジッ トは実用化に至っていない。
発明の開示
本発明の課題は、 ポリエステル樹脂と層状無機粒子とを複合した組成物 において、層状無機粒子がポリエステル樹脂中に極めて微細に分散され、機 械的強度、 硬度、 剛性、 ガスバリア性等が改善されたポリエステル樹脂組 成物を提供することである。
本発明者等は上記課題に対して鋭意検討した結果、 本発明に到達した。 すなわち、 本発明は以下のポリエステル樹脂組成物の製造方法とその方法 により製造されたポリエステル樹脂組成物である。
( 1 ) ポリエステル樹脂 1 0 0重量部および層状複水酸化物 0 . 1〜 1 0 重量部からなるポリエステル樹脂組成物の製造方法において、 層状複水酸 化物をポリエステル樹脂の重縮合が完了するまでの任意の段階で配合した 後、 重縮合を完了せしめることを特徴とするポリエステル樹脂組成物の製 造方法。
( 2 )層状複水酸化物がハイ ドロタルサイ トであることを特徴とする ( 1 )
記載のポリエステル樹脂組成物の製造方法。
(3) ポリエステル樹脂 1 0 0重量部および層状複水酸化物 0. 1〜 1 0 重量部のからなるポリエステル樹脂組成物の製造方法において、 グリコー ルにより膨潤した層状複水酸化物をポリエステル樹脂の重合工程において 重縮合が完了するまでの任意の段階で配合した後、 ポリエステル樹脂の重 縮合を完了せしめることを特徴とするポリエステル樹脂組成物の製造方法 (
(4) (3) 層状複水酸化物がハイ ド口タルサイ トであることを特徴とす る ( 3) 記載のポリエステル樹脂組成物の製造方法。
(5) ( 1 ) 〜 (4) いすれかに記載の方法により製造されたポリエステ ル樹脂組成物。
以下に本発明を詳細に説明する。
本発明に用いる層状複水酸化物は、 一般式が [MS +
+ x (OH)
2] [A"-
x/n · z H
2〇] で表される層状無機化合物で、 二価金属 (M
2+) が三価金属 (M
3+) により置換されることにより、 層がプラスに荷電し、 ァニオン (A
11— ) が層間に存在する構造を形成する。 二価の金属としては マグネシウム、 ニッケル、 亜鉛等が、 三価の金属としてはアルミニウム、 鉄、 クロムが挙げられる (nは 1〜3の整数、 Xは 0· 15〜0.5の数値、 z は 5以下の数値である) 。 二価と三価の金属以外に、 リチウム等の一価金 属ゃチ夕ン等の四価金属を含んでも良い。
本発明に用いる層状複水酸化物を製造する方法は特に限定されないが、 例えば S. Miya , Clays Clay Miner. , vol.28 , 50ページ (1980年発行) 記載の方法が簡便で好ましい。
層状複水酸化物は 3 0 0〜8 0 0°Cの範囲で焼成したものを用いても良 い。
本発明に用いる層状複水酸化物は、特にハイ ドロタルサイ 卜が好ましい。 本発明のポリエステル樹脂組成物は、 エチレングリコールで膨潤させた 層状複水酸化物をポリエステルの重合工程において重縮合が完了するまで の任意の段階で配合した後、重縮合を完了せしめることによって得られる。
層状複水酸化物を分散、 層剥離を充分に行うためには、 層状複水酸化物 をエステル化反応あるいはエステル交換反応の反応前あるいは反応の途中 に添加することが望ましい。
ポリエステルの重合工程において重縮合が完了するまでの任意の段階で 層状複水酸化物を添加する際には、 層状複水酸化物をグリコールにより膨 潤させ層間隔を広げておくことが本発明の目的を達成するために必須であ る。 グリコールによる層状複水酸化物の膨潤はグリコール中で加熱するこ とによって行う。 加熱する温度は 5 0で以上 2 0 O t:以下、 より好ましく は 1 0 0で以上 1 8 0で以下が適している。
層状複水酸化物をグリコールによって膨潤させる工程は、 ポリエステル の重合工程において行うことができ、 あるいは重合工程とは別の工程にお いて事前に行っても良い。 層状複水酸化物をグリコールに膨潤させる際に は、 ポリエステル原料の成分である二塩基酸が存在してもかまわない。 グリコールで膨潤させた層状複水酸化物を用いることにより、 ポリエス テル樹脂中に層状複水酸化物を効率よく分散することができ、 また層状複 水酸化物の層の剥離を促進することができる。 その結果、 層状複水酸化物 をポリエステル樹脂中にナノメ一夕サイズで分散することができるため、 分子補強ができ、 機械的強度、 硬度、 剛性、 ガスバリア性等の特性が改善 されると考えられる。
層状複水酸化物をグリコールに膨潤させる際に用いるグリコールとして は、 エチレングリコール、 ジエチレングリコール、 トリエチレングリコー ルが好まじい。 特にエチレングリコールが好ましい。 これらのグリコール は、 加熱によってハイ ドロタルサイ トの層間に存在する水との置換が起こ るものと考えられる。
本発明に用いる層状複水酸化物の表面積は 5〜 2 0 0 m 2 / gのものが 好ましい。 表面積が 5 m 2 Z g未満であると層状複水酸化物を効率よく分 散することができず得られたポリエステル樹脂組成物の透明性が低下する ことがある。 また 2 0 O m s / gを越えると重合時の溶融粘度が急激に上
昇するため、 目的の分子量の樹脂を得られない場合がある。
本発明において層状複水酸化物は、 ポリエステル樹脂 1 0 0重量部に対 して 0 . 1〜 1 0重量部になるように配合する。 1 0重量部を超えると溶 融粘度が高くなりすぎ、ポリエステル樹脂の分子量を高くすることが困難 になり、得られたポリエステル組成物は非常に脆くなることがある。 また、 0 . 1重量部以下では層状複水酸化物の添加効果が少なくなる。
本発明に用いるポリエステル樹脂の二塩基酸成分としては、 テレフタル 酸、 イソフ夕ル酸、 オルソフタル酸 >ナフタレンジカルボン酸、 ジフェニー ルジカルボン酸、ジフェニールエーテルジカルボン酸等の芳香族二塩基酸、 コハク酸、アジピン酸、 ァゼライン酸、 セバシン酸、 ダイマー酸、シクロへ キサンジカルボン酸等の脂肪族二塩基酸を挙げることができる。
本発明に用いるポリエステル樹脂のグリコール成分としてはエチレング リコール、 1 , 2 _プロピレングリコール、 1, 3—プロピレングリコー ル、 1 , 4—ブタンジオール、 1, 3—ブタンジオール、 1 , 5—ペン夕 ンジオール、 1 , 6—へキサンジオール、 ジエチレングリコール、 トリエ チレングリコール、 3 _メチル— 1 , 5 —ペン夕ンジオール、 ネオペンチ ルグリコール、 2 —ェチルー 2 —ブチル— 1 , 3—プロパンジオール、 ジ エチレングリコール、 1 , 4 —シクロへキサンジメタノール、 ビスフエノ ール Aのエチレンォキサイ ド付加物、 ビスフエノール Aのプロピレンォキ サイ ド付加物あるいはポリエチレングリコール、 ポリプロピレングリコー ル、 ポリテトラメチレングリコール等のポリエーテルグリコール等を挙げ ることができる。
さらに、 本発明に用いるポリエステル樹脂には ε —力プロラク トン、 δ 一バレロラクトン等のラクトン類成分や ρ —ヒドロキシエトキシ安息香酸 等のォキシカルボン酸成分も原料として用いることができる。 また、 トリ メチロールプロパン、 ペン夕エリスリ トール、 無水トリメリッ ト酸等の三 官能以上の成分を併用してもかまわない。
層状複水酸化物のポリエステル樹脂中での分散性や層剥離性の改善のた
めには、 スルホン酸金属塩基などの極性基をポリエステル樹脂中に導入す ることが好ましい。 例えば、 ポリエステル樹脂にスルホン酸金属塩を導入 するための原料としては、 5—ナトリウムスルホイソフ夕ル酸、 5—カリ ゥムスルホイソフ夕ル酸、 ナトリウムスルホテレフタル酸、 2—ナトリウ ムスルホ— 1 , 4—ブタンジオール、 2, 5 —ジメチルー 3—ナトリウム スルホ _ 2, 5—へキサンジオール等のジカルボン酸あるいはグリコール が挙げられる。 特に 5—ナトリウムスルホイソフ夕ル酸、 5—力リウムス ルホイソフタル酸が特に好ましい。 ポリエステル樹脂中に導入するスルホ ン酸金属塩基の量は、 全ジカルボン酸成分の 0 . 5モル%〜2 0モル%が 好ましい。 0 . 5モル%未満では層状複水酸化物の分散性や層剥離性の改 善の効果が顕著に得られなく、 2 0モル%以上ではポリエステル樹脂の熱 安定性が悪くなる傾向があり好ましくない。
本発明のポリエステル樹脂組成物の製造は、 通常のポリエステルの重合 方法を用いることができる。 すなわち、 グリコールが過剰の条件下で、 二 塩基酸とグリコールをエステル化反応させた後、 アンチモンやチタン、 ゲ ルマニウム等の金属触媒の存在下、 高温高真空下で脱グリコールし重縮合 する溶融重合法や二塩基酸のメチルエステル化合物とグリコールをエステ ル交換反応させた後同様に重縮合する方法を用いることができる。 更にこ れらの方法で得たポリエステル樹脂を樹脂の融点以下で固相重合し分子量 を高くする方法が挙げられる。
例えば、 ハイ ド口タルサイ 卜を層状複水酸化物として用いる場合は、 重 縮合が完了するまでの任意の段階でハイ ドロタルサイ トを配合した後、 重 縮合を完了せしめる。 ハイ ドロタルサイ トをポリエステル樹脂中に十分に 分散し、 層の剥離を行うためには、 ハイ ド口タルサイ トをエステル化反応 あるいはエステル交換反応前に投入することが好ましい。
ハイ ドロタルサイ トは、 事前にグリコールに分散させておくことがさら に望ましい。 分散に使用するグリコールとしてはエチレングリコール、 ジ エチレングリコールが望ましい。 エチレングリコール、 ジエチレングリコ
ールはポリエステル重合時の加熱時にハイ ドロタルサイ 卜の層間に存在す る水との置換が起こると考えられる。
ポリエステル樹脂中にハイ ドロタルサイ トを効率よく分散し、 層剥離を 促進することによりナノメ一夕サイズの分散ができる。
ポリエステル樹脂中にハイ ド口タルサイ トを効率よく分散し、 層剥離を 促進するためには、 あらかじめ二塩基酸をハイ ドロタルサイ 卜の層間にィ ンターカレ一トしたものを使用することが望ましい。 二塩基酸をィン夕カ レートしたハイ ドロタルサイ トを得る方法としては①ハイ ドロタルサイ ト を合成する際のァニオン源として二塩基酸を使用する方法、 ②あらかじめ 得られたハイ ドロタルサイ トのァ二オンを二塩基酸ァニオンと交換する方 法、 ③ 3 0 0〜8 0 0での範囲で焼成して層間ァニオンを排除したハイ ド 口タルサイ 卜に水を添加してもとの構造のハイ ドロタルサイ トに変換する 際のァニオン源として二塩基酸を使用する方法等がある。
本発明のポリエステル樹脂組成物には、 目的に応じ所望の特性を付与す るために、 公知の物質を添加することができる。 例えば、 無機強化材、 繊 維強化材、 熱安定剤、 酸化防止剤、 帯電防止剤、 耐候剤、 離型剤、 潤滑剤、 染料や顔料等の着色剤等いずれも配合することが可能である。
また、 目的に応じ所望の特性を付与するために、 他の樹脂とブレンドま たはァロイにしてもかまわない。
発明を実施するための最良の形態
以下に実施例に基づき本発明をより具体的に説明する。 もっとも、 本発 明はこれらの実施例に限定されるものではない。
実施例の説明の中で用いた測定方法、 評価方法を以下に示す。
(還元粘度)
還元粘度はフエノール テトラクロ口ェ夕ン (6 / 4重量比) を溶媒と し、 0 . 4 g Z d 1 の組成物濃度で、 3 0でで測定した。
(ガラス転移温度 ; Tg)
試料を下記条件で D S C測定し、ガラス転移温度 Tgを J I S K 7 1
2 1 に準拠して求めた。
セイコーインスツルメンッ (株) 製 DSC6200 パン アルミパン (非気密型)
5 mg
昇温開始温度 : -100
昇温速度 : 20 °C/niin.
雰囲気ガス
(層状複水酸化物の層間距離)
層間距離は X線回析装置リガク (株) ガイガーフレックス RAD— II型に よって粉末 X線回析法で測定した。
(ポリエステル樹脂の組成)
ポリエステルの組成は1 H— N M Rによって下記条件で測定した。
核磁気共鳴装置 (BRUKER製 AVANCE 50 0) 測定溶媒 : 重水素化クロ口ホルム トリフルォロ酢酸 = 9 / 1容量比 共鳴周波数 500MHz
積算回数: 5 1 2回
測定温度: 室温
( 5 0 %引張弾性率)
5 0 %伸張時の引張弾性率を下記条件で測定した。
装置名 :東洋ポールドウイン社製 UYM— I — 2 5 0 0
測定温湿度: 2 0で、 5 0 %RH
引張り速度: 2 0 Omm/分
試料の形状: 1 5mmX 3 Ommの短冊状 (厚み: 2 5 ^m)
(保存弾性率)
一 1 Ot:での動的保存弾性率を下記条件で測定した。
装置名 : アイティー計測制御社製 DVA— 2 00
昇温開始温度 : 一 1 0 0で
昇温速度 : 2 0 /分
雰囲気ガス : 窒素
測定周波数: 1 1 0 H z
測定様式: 引張り変形
(溶液安定性)
層状複水酸化物の分散度を調べるために得られたポリエステル樹脂組成 物をメチルェチルケトンノトルエン 1 / 1重量比)に固形分濃度 1 0 % で溶解し室温保存 1週間後の溶液安定性を観察し、 層状複水酸化物の沈降 が全くないものを〇、 わずかに沈降するものを△、 顕著に沈降するものを Xとして評価した。
(水蒸気バリア性)
内径 2 cmの 1 0 0 c cの円筒状ガラス瓶に水を 3 0 c c入れ、 実施例 及び比較例のフィルム (厚み 2 5 m) で瓶の入口を密閉して、 20で、 50 %RHの雰囲気中に 24時間放置後、 水の重量減少を測定した。 実施 例 1 A〜6 A、 比較例 1 A、 3 A〜 5 Aについては比較例 2 Aの層状複水 酸化物を含まないフィルムでの水の減少量を標準 1とし、 その割合を示し た。 実施例 1 B〜3 B、 比較例 2 B〜 5 Bについては比較例 1 Bの層状複 水酸化物を含まないフィルムでの水の減少量を標準 1とし、 その割合を示 した。 数値が小さいほど水蒸気バリァ性が良好なことを示す。
(酸素バリァ性)
2 5 / mフィルムの酸素透過量について、 層状複水酸化物を含有しない 同組成のポリエステル樹脂の酸素透過量を 1としたときの割合を計算し評 価した。数字が小さいほどバリァ性が高い。酸素透過量は JIS K7126に準 じて測定した。
測定温湿度: 20で、 50 RH
(実施例 1 A)
温度計、 攪拌機、 留出用冷却管を具備した反応容器にイソフタル酸 1 6 3重量部、 5—ナトリウムスルホイソフタル酸ジメチル 5. 9重量部、 3 —メチルー 1 , 5—ペンタンジオールと Mg 6A 1 2 (OH) 16C03 · 4
H20で表されるハイ ドロタルサイ トを 1 0 0対 2の重量比率で分散した 溶液 2 55重量部、 反応触媒としてテトラブチルチタネート 0. 06 8重 量部を仕込み、 2 2 0 °Cまで昇温した。 エステル化反応による水の溜出が 終わった後、 240でまで昇温する間にエステル化反応を終了した。 その 後、 系内を徐々に減圧し、 最終的に 0. ImmHgに達した。 その時の温 度は 2 60 を保持させた。 このようにして、 ハイ ド口タルサイ トを 2重 量%含有するポリエステル樹脂組成物を得た。
ポリエステルの組成を1 H— NMRにより分析した。 得られた組成物を フエノール/テトラクロロェタン (6Z4重量比) に溶解し、 還元粘度を 測定した。 また、 得られた組成物をメチルェチルケトン/トルエン (= 1 Z 1重量比) に溶解し、 二軸延伸ポリプロピレンフィルム上に塗布および 乾燥し、 プロピレンフィルムより剥がし取り、 樹脂組成物自身の塗膜を得 た。 塗膜の強伸度、 ガラス状態での保存弾性率、 水蒸気バリア性を測定し た。 評価結果を表 1に示す。
(実施例 2 A、 3 A)
実施例 1 Aと同様に、 ただし、 3—メチル— 1, 5—ペン夕ンジオール Zハイ ドロタルサイ ト分散物の濃度を変更してハイ ドロタルサイ トの含有 量の異なるポリエステル組成物を得た。 実施例 1と同様に評価した。 評価 結果を表 1に示す。
(実施例 4A)
実施例 1 Aと同様に、 ただし 5—ナトリゥムスルホイソフタル酸ジメチ ル 5. 9重量部を使わずに、 イソフ夕ル酸と 3—メチルー 1 , 5—ペン夕 ンジオール/"ハイ ドロタルサイ ト分散物からポリエステル樹脂組成物を得 た。 実施例 1 Aと同様に評価した。 評価結果を表 1に示す。
(実施例 5 A、 6 A)
実施例 5 Aでは実施例 1 Aと同様に、 ただし実施例 1 Aで用いたハイ ド 口タルサイ トをエチレングリコールに 6. 3重量%で分散したものを 40 重量部、 3—メチルー 1, 5—ペン夕ンジオール 1 6 5重量部とイソフタ
ル酸 1 6 6重量部とを反応させた。
実施例 6 Aでは実施例 1 Aと同様に、 ただし実施例 1 Aで用いたハイ ド 口タルサイ トをジエチレングリコールに 4重量%分散したものを 6 2重量 部、 3—メチル— 1, 5 —ペン夕ンジオール 1 6 5重量部とイソフ夕ル酸 1 6 6重量部とを反応させた。
実施例 1 Aと同様に評価した。 評価結果を表 1に示す。
(比較例 1 A、 2 A )
ハイ ドロタルサイ 卜を用いることなく実施例 1 Aおよび 4 Aと同様の組 成を有するポリエステル樹脂を得た。 実施例 1 Aと同様に評価した。 評価 結果を表 1に示す。
(比較例 3 A )
比較例 1 Aのポリエステル樹脂溶液 (溶媒 : メチルェチルケトンノトル ェン = 1 Z 1重量比) にハイ ドロタルサイ トを固形分重量比で 1 0 0対 2 の割合で混合し、 ガラスビーズを添加しペイントシエ一カーで 6時間振盪 分散を行った。 この分散液から実施例 1 Aと同様に乾燥塗膜を得た。 実施 例 1 Aと同様に評価した。 評価結果を表 1に示す。
(比較例 4 A、 5 A )
実施例 1 Aと同様に、 ただし、 3—メチルー 1, 5 —ペンタンジオール Zハイ ドロタルサイ 卜分散物の濃度を変更してハイ ドロタルサイ 卜の含有 量の異なるポリエステル組成物を得た。 比較例 4 Aと 5 Aはハイ ド口タル サイ トの含有量が本発明の範囲外になる。 実施例 1 Aと同様に評価した。 評価結果を表 1に示す。 比較例 5 Aは得られた塗膜が非常に脆く、 5 0 % 引張弾性率と水蒸気バリァ性を測定することが出来なかった。
表 1 ポリエステル樹脂組成物の特性
IPA:イソフタル酸 MPD:3—メチルー 1, 5—ペンタン オール DSN: 5—ナトリウムスルホイソフタル酸 EG:エチレングリコール
DEG:ジエチレングリコール
(実施例 7 A、 8 A、 9 A)
1 9 88年発行の Inorganic Chemistry, vol27, 462 8ページに記載 された方法により合成したテレフタル酸ァニオンをィン夕一力レートした ハイドロタルサイ ト (Mg4A l 2 (OH) 12 (TA) · 4Η20) 、 (Τ Αはテレフタル酸イオンを表す) 1 0重量部をエチレングリコール 90重 量部に分散させた。 実施例 1 Aで用いた温度計、 攪拌機、 留出用冷却管を 具備した反応容器にテレフタル酸 1 6 6重量部、 上記のハイ ドロタルサイ トを分散させたエチレングリコールを 1 8. 9重量部 (ハイ ドロタルサイ ト 1. 9重量部、 エチレングリコール 1 7重量部) 、 エチレングリコール 1 07重量部を仕込み、 加圧下でエステル化反応を実施した。 その間に温 度は 2 30 まで達した。 重縮合反応触媒としてテトラブチルチ夕ネート 0. 0 7重量部仕込み、 その後系内を徐々に減圧し、 最終的に 0. 1mm Hgに達した。 その時の温度は 27 Ot:を保持させた。 このようにしてハ ィ ドロタルサイ トを 1重量%含有する高粘度のポリエチレンテレフ夕レー ト (P ETともいう) 組成物を得た。
得られた組成物をフエノールノテトラクロロェタンに溶解し、 還元粘度 を測定した。 また熱プレス法 (樹脂の融点、 軟化点以上まで加熱して樹脂 を溶融し、 圧力をかけて伸ばした後水冷により急冷する方法) により得ら れたフィルムの酸素バリア性を J I S K 7 1 26に従って測定した。 ま た、 ハイ ド口タルサイ トを含まない P ETを用いて、 同様の方法により得 たフィルムの酸素バリァ性を表 2に示した。
実施例 8 Aでは実施例 7で用いたハイ ドロタルサイ トを 1 , 3—プロパ ンジオールに分散させて、 同様の重合方法によりハイ ドロタルサイ トを分 散させたポリ トリメチレンテレフタレート (PTT) を得た。
実施例 9 Aでは実施例 8と同様にしてハイ ドロタルサイ トを分散させた ポリテトラメチレンテレフ夕レート (P BT) を得た。
それぞれの還元粘度と酸素バリア性を表 2に示す。
表 2 ポリエステル樹脂組成物の特性
E G : エチレングリコール
T P A : テレフタル酸
1 , 3 - P G : 1 , 3—プロパンジオール
1 , 4 - BD : 1 , 4一ブタンジオール
表 1、 2より明らかなように、 ポリエステルの重縮合時にハイ ド口タル サイ トを添加した実施例 1 A〜 9 Aは、 ハイ ドロタルサイ トを含まない比 較例 1 A、 2 Aや重縮合が終了してから単に配合しただけの比蛟例 3 A、 ハイ ドロタルサイ ト含有量が特許請求の範囲外の比較例 4 A、 5 Aに比べ て、 強度、 弾性率、 ガスバリア性が飛躍的に向上していることがわかる。
(実施例 1 B)
攪拌装置つきガラス製反応容器に層状複水酸化物としてハイ ドロタルサ イ ト (戸田工業社製ハイ ド口タルサイ ト、 平均粒子サイズ 0. 1 5 /zm、 Mg/A lモル比 2. 7、 B ET表面積 1 8m2/g) 20重量部、 ェチレ ングリコール 80重量部を入れ内容物を 1 30 で 1 0分間加熱した。 ハ ィ ドロタルサイ トを含むエチレングリコール溶液は高粘度のペース卜状に なった。 また、 ハイ ド口タルサイ トの層間距離は X線回析による測定によ ると、 エチレングリコール中で加熱することにより 7. 5 Aから 8. 4 A に広がっていた。
温度計、 攪拌機、 留出用冷却管を具備した反応容器にイソフ夕ル酸ジメ チル 1 94重量部、 3—メチルー 1 , 5—ペンタンジオール 236重量部
と上記のハイ ドロタルサイ トノエチレングリコール溶液 (2 8重量比) 24. 8重量部、 反応触媒としてテトラブチルチ夕ネート 0. 068重量 部を仕込み、 1 8 (TCまで昇温した。 エステル交換反応によるメタノール の溜出を続けながら、 23 O :まで昇温する間にエステル交換反応を終了 した。 その後、 系内を徐々に減圧し、 最終的に 0. 3mmHgに達した。 その時の温度は 260でを保持させた。 このようにして、 ハイ ド口タルサ ィ トを 2重量%含有するポリエステル樹脂組成物を得た。
ポリエステルの組成を1 H— NMRにより分析した。 得られた組成物を フエノール テトラクロロェタン (6 4重量比) に溶解し、 還元粘度を 測定した。 また、 得られた組成物をメチルェチルケトン トルエン (= 1 1重量比) に溶解し、 二軸延伸ポリプロピレンフィルム上に塗布および 乾燥し、 プロピレンフィルムより剥がし取り、 樹脂組成物自身の塗膜を得 た。 塗膜の還元粘度、 ガラス転移温度、 50%引張弾性率、 保存弾性率、 溶 液安定性、 水蒸気バリア性を評価した。 結果を表 3に示す。
(実施例 2 B)
実施例 1 Bと同様に、 ただし、 実施例 1 Bで用いたハイ ドロタルサイ ト /エチレングリコール (2Z8) 溶液 6. 2重量部とエチレングリコール 1 5重量部を用いてハイ ドロタルサイ トを 0. 5重量%含有するポリエス テル樹脂組成物を得た。実施例 1 Bと同様に評価した。結果を表 3に示す。 (実施例 3 B)
温度計、 攪拌機、 留出用冷却管を具備した反応容器に実施例 1 Bで用い たハイ ドロタルサイ ト 1 9. 8重量部とエチレングリコール 40重量部を 仕込み、 1 50 で 1 0分間攪拌した。 更にイソフタル酸ジメチル 1 94 重量部、 3—メチル— 1, 5—ペンタンジオール 2 36重量部、 反応触媒 としてテトラブチルチ夕ネート 0. 06 8重量部を仕込み、 実施例 1と同 様にエステル交換反応、 重縮合反応を行い 8重量%のハイ ドロタルサイ ト を含有するポリエステル組成物を得た。 実施例 1 Bと同様に評価した。 結 果を表 3に示す。
(比較例 1 B )
ハイ ドロタルサイ 卜を用いることなく実施例 1 Bと同様の組成を有する ポリエステル樹脂を得た。 実施例 1 Bと同様に評価した。 評価結果を表 3 に示す。
(比較例 2 B )
比較例 1 Bのポリエステル樹脂溶液 (溶媒: メチルェチルケトン トル ェン = 1 1重量比) にハイ ドロタルサイ 卜を固形分重量比で 1 0 0対 2 の割合で混合し、 ガラスビーズを添加しペイントシエ一力一で 6時間振盪 分散を行った。 この分散液から実施例 1 Bと同様に乾燥塗膜を得た。 実施 例 1 Bと同様に評価した。 評価結果を表 3に示す。
(比較例 3 B、 4 B )
実施例 I Bと同様に、 ただし、 ハイ ド口タルサイ トノエチレングリコ一 ル分散物の濃度を変更してハイ ドロタルサイ 卜の含有量の異なるポリエス テル組成物を得た。 比較例 3 Bと 4 Bはハイ ド口タルサイ 卜の含有量が本 発明の範囲外になる。 実施例 1 Bと同様に評価した。 評価結果を表 3に示 す。 比較例 4 Bは得られた塗膜が非常に脆く、 5 0 %引張弾性率と水蒸気 バリア性を測定することが出来なかった。
(比較例 5 B )
温度計、 攪拌機、 留出用冷却管を具備した反応容器に実施例 1 Bで用い たハイ ド口タルサイ ト 1 9 . 8重量部と 3 —メチル— 1 , 5—ペン夕ンジ オール 4 0重量部を仕込み、 1 5 0 °Cで 1 0分間攪拌した。 更にイソフタ ル酸ジメチル 1 9 4重量部、 3—メチル— 1, 5 —ペン夕ンジオール 2 3 6重量部、 反応触媒としてテトラブチルチクネート 0 . 0 6 8重量部を仕 込み、 実施例 1 Bと同様にエステル交換反応、 重縮合反応を行い 2重量% のハイ ドロタルサイ トを含有するポリエステル樹脂組成物を得た。
実施例 1 Bと同様に評価した。 結果を表 3に示す。
表 3 ポリエステル樹脂組成物の特性
IPA:イソフタヅレ酸
MPD:3—メチル一 1, 5—ペンタンジオール EG:エチレングリコール
(実施例 4 B、 5 B、 6 B )
表 4に記載した層状複水酸化物 2重量部、 エチレングリコール 1 2 4重 量部、 テレフタル酸 1 6 6重量部、 反応触媒としてテトラブチルチタネ一 ト 0 . 0 6 8重量部を、 温度計、 攪拌機、 留出用冷却管を具備した反応容 器に仕込み、加圧下でエステル化反応を実施した。その間に温度は 2 3 0で まで上げた。 温度が 2 0 0でを越える頃から溶融物は透明になった。 その 後系内を徐々に減圧し、 最終的に 0 . 5 mm H gに達した。 その時の温度 は 2 7 0でを保持させた。 このようにして層状複水酸化物を 1重量%含有 する高粘度のポリエチレンテレフ夕レート (P E T ) 組成物を得た。
得られた組成物をフエノール/テトラクロロェタンに溶解し、 還元粘度 を測定した。 また、 熱プレス法 (ヒートプレスでポリエステル樹脂組成物 を 2 8 0でに加熱溶融し、 0 . 2 mm厚のフッ素系樹脂フィルムの間で圧 力をかけて薄くした後、 水で急冷固化し厚み約 2 5 mのフィルム状樹脂 組成物を得る方法)によって得られたフィルムの酸素バリァ性を測定した。 層状複水酸化物による酸素バリア効果を、 層状複水酸化物含有による酸素 透過量の減少比として表 4に記載した。
(比較例 6 B、 7 B、 8 B )
表 4に記載した層状複水酸化物 2重量部、 ビス (/3 —ヒドロキシェチル) テレフ夕レート 2 5 4重量部、反応触媒としてテトラブチルチタネート 0 . 0 6 8重量部を、 温度計、 攪拌機、 留出用冷却管を具備した反応容器に仕 込み、 系内の温度を 2 3 0でまで上げた。 その後系内を徐々に減圧し、 最 終的に 0 . 5 mm H gに達した。 その時の温度は 2 7 0でを保持させた。 このようにして層状複水酸化物を 1 %含有する高粘度のポリエチレンテレ フタレート (P E T ) 組成物を得た。 ただし、 層状複水酸化物は分散不良 で、 肉眼でも観察できる塊になっていた。 実施例 4 Bと同様に評価した。 結果を表 4に示す。 なお、 実施例 5 Bと比較例 6 B、 実施例 6 Bと比較例 7 B、 実施例 7 Bと比較例 8 Bはそれぞれ同じ層状複水酸化物を用いた。
表 4 ポリエステル樹脂組成物の特性
EG :エチレングリコール
TPA:テレフタル酸
BHET:ビス(/8—ヒドロキシェチル)亍レフタレ一ト
表 3、 4より明らかなように、 ポリエステルの重縮合時に層状複水酸化 物を添加した実施例 1 B〜 6 Bは、 層状複水酸化物を含まない比較例 1 B や重縮合が終了してから単に配合しただけの比較例 2 B、 層状複水酸化物 含有量が特許請求の範囲外の比較例 3 B、 4 B、 エチレングリコールを使 わない比較例 5 B、 6 B、 7 B、 8 Bに比べて、 外観、 強度、 弾性率、 ガ スバリァ性が飛躍的に向上していることがわかる。
産業上の利用可能性
本発明のポリエステル樹脂と層状複水酸化物とを複合した組成物の製造 方法によって、 層状複水酸化物がポリエステル樹脂中に極めて微細に分散 され、 機械的強度、 硬度、 剛性、 ガスバリア性等が改善されたポリエステ ル樹脂組成物を得ることができるので、 本発明のポリエステル樹脂組成物 はその特性を活かして、 エンジニアりングプラスチックとして電気 ·電子 部品などの各種成形品として使用できる。 また、 フィルム、 塗料、 繊維へ の応用も可能であり、 層状複水酸化物がポリエステル樹脂中に極めて微細 に分散されているので、 特に塗料やフィルムの原料として有用である。