明 細 書 細胞死抑制因子 技術分野
本発明は、 細胞死を抑制する活性を有する因子 (細胞死抑制因子、 以下 P C T F 3 5とする) 、 それをコードする遺伝子及びその医薬用途に関する。
背景技術
神経変性疾患の多くは、 神経細胞または神経細胞間の信号伝達に異変が生じる ことにより、 神経細胞が死滅し発症するとされている。
このような神経変性疾患の代表例として、 パーキンソン病やアルツハイマー病 が挙げられる。 パーキンソン症は、 黒質神経細胞が変性して神経伝達物質の一つ であるド一パミンが産生されなくなり、 ド一パミン作動性の神経細胞が死ぬこと により発症すると言われている。 一方、 アルツハイマー病は主に大脳皮質や海馬 の神経細胞が死ぬことによって痴呆症状を呈するとされている。
以上に述べた神経細胞死が関連する疾病に関し、 発症原因である神経細胞死を 抑制する、 または神経細胞の生育若しくは成長を促す作用を示す物質等が有効な 治療薬となり得ると想定されており、 盛んに研究が行われている。
最近、 プロトオンコジーンである b c 2遺伝子 (Tsuj imoto ら、 Science, Vol. 228, p l440-1443, 1985) が細胞死を抑制することが報告されている (Vaux D.し ら、 Nature, Vol. 335, p440-442, 1988)。 その細胞死を抑制する機能につ いて種々の機構が提唱されているが、 完全には証明されていない。
神経性疾患の原因であると考えられる神経細胞死を抑制、 または神経細胞の成 長を促進させる蛋白質、 並びにそれをコードする遺伝子を同定すれば、 神経細胞 死に起因する疾患に有効な治療薬を提供することができ、 またこれに擬似する化 合物の探索を行う上で、 きわめて重要な意義を有する。 すなわち、 神経細胞の死 滅を抑制する活性を有する蛋白質は、 それ自体が有効な医薬となり得ると同時に、 当該蛋白質の機能と同様の機能を有する物質、 当該機能を阻害または促進する作 用を有する物質等を医薬として開発するに際しても、 極めて有用である。
発明の開示
本発明者らは、 b C 2遺伝子が細胞死を抑制することに着目し、 細胞死の抑 制に関与する蛋白質の誘導発現を想定して、 この様な蛋白質の存在を調べたとこ ろ、 b 2遺伝子の導入により、 細胞死を抑制する活性を有する因子 (PCT F 3 5) 力;、 形質転換細胞の外に分泌されることを見出した。 そしてこの PCT F 3 5を精製、 単離し、 さらに精製された PCTF 3 5の部分アミノ酸配列を基 に、 それをコ一ドする遺伝子 (以下、 p c t f 3 5とする) をクローユングし、 本発明を完成した。
すなわち本発明は、 配列番号: 1に記載のアミノ酸配列からなる蛋白質、 もし くは配列番号: 1のアミノ酸配列において 1もしくは数個のァミノ酸が欠失、 置 換もしくは付加されたァミノ酸配列からなり、 かつ細胞死を抑制する活性を有す る蛋白質である。
更に本発明は、 配列番号: 1に記載のァミノ酸配列からなる蛋白質をコ一ドす る遺伝子である。
更に本発明は、 配列番号: 2に記載の塩基配列からなる DNA、 もしくは配列 番号: 2の DNAとストリンジェン卜な条件でハイブリダィズし、 かつ細胞死の 死滅を抑制する活性を有する蛋白質をコ一ドする DN Aである。
更に本発明は、 以下の①〜⑤の理化学的性状および生理活性を有する蛋白性物 質であることを特徴とする細胞死抑制因子である。
①プロトオンコジーンである b c£ 2遺伝子で形質転換された褐色細胞種腫の培 養液から得ることができる ;
②還元下 SDS— PAGEによる推定分子量は約 3 5, 000である;
③細胞の死滅を抑制する活性を有する ;
④ N末端側の 1から 22番目のアミノ酸配列が以下のァミノ酸配列である ; V a 1 e t G 1 y S e r G 1 y A s p S e r V a 1
P r o G 1 y G 1 y V a 1 Cy s T r p L e u G i n
G i n G 1 y L y s G 1 u A 1 a T h r
⑤ N末端側の 1 3 8〜1 4 1番目のアミノ酸配列が以下のァミノ酸配列である
Ty r A r g G l y A r g
更に本発明は、 上記蛋白質または細胞死抑制因子を有効成分として含有する、 細胞死を抑制するための医薬組成物である。
図面の簡単な説明
図 1は、 生物の形態を示す写真であって、 生育状態の野生型 PC 1 2細胞を示 す (細胞密度は 2500個 。
図 2は、 生物の形態を示す写真であって、 野生型 PC 1 2細胞 (細胞密度は 2 500個 。111 2 ) を無血清培地に移行して 24時間経過した後の、 死滅状態 の野生型 PC 1 2細胞を示す。
図 3は、 生物の形態を示す写真であって、 野生型 PC 1 2細胞 (細胞密度は 2 500個< じ 111 2 ) を、 PC 1 2 b c 2細胞の培養上清を含む無血清培地に 移行して 24時間経過した後の、 野生型 PC 1 2細胞を示す。
図 4は、 P C 1 2/b c £2細胞の培養上清についての、 0. 05%の丁 八 を含む 60%ァセトニトリルをグラジェント溶媒とした逆相クロマトグラフを示 す。 縦軸左とバ一グラフは細胞死抑制活性 (%NGF) と各画分の活性値を、 縦 軸右と折線は、 溶媒グラジェント (ァセトニトリル濃度。 /0) を示す。
図 5は、 電気泳動の結果を示す写真であって、 逆相クロマトグラフで得た画分 1 1を SDS— PAGEした後、 銀染色したゲルを示す。
図 6は、 電気泳動の結果を示す写真であって、 逆相クロマトグラフで得た画分 1 1を Na t i v e— PAGEした後、 CBB染色したゲルと、 確認された蛋白 質の位置を— 1ないし— 4で示したものである。
図 7は、 図 6の— 1ないし— 4に相当する蛋白質の細胞死抑制活性を示す (縦 軸が活性%) 。
図 8は、 電気泳動の結果を示す写真であって、 細胞死抑制活性が確認された図 6の— 1に相当する蛋白質の、 S DS— PAGE後に銀染色したゲルの図である。 図 9は、 アミノ酸シーケンサ一で決定された PCTF 35の N末端のアミノ酸 配列を示す。 図中の?は、 未確認の残基を意味する。
図 10は、 アミノ酸シーケンサ一で決定された、 PCTF 35の限定分解物で ある 28 k dの蛋白質の N末端のァミノ酸配列を示す。
図 1 1は、 電気泳動の結果を示す写真であって、 遺伝子 p c t f 35を含んだ 形質転換体から抽出した mRN Aに対するノーザンハイブリダィゼーションの露 光結果を示す。 レーン 1から 3は PC I 2Zp CTF細胞の各クローン、 レーン 4は PC 1 2/p c DNA3細胞、 レーン 5は野生型 PC 1 2細胞である。
図 1 2は、 P C 1 2/p CTF細胞の無血清培地における生存率を示す。
発明を実施するための最良の形態
本発明者らは、 b 2遺伝子の機能解析のために、 これを褐色細胞腫である ラット PC 1 2細胞に形質導入し、 その形質転換細胞 (以下、 PC 1 2Zb c 2細胞とする) の挙動を詳細に調べた。
野生型の PC 1 2細胞は、 適当な生育可能な培地から血清を取り除くと細胞死 に至る。 しかし、 b 2遺伝子によって形質転換された PC 1 2/b c 2細胞 は、 無血清培地においても細胞死に至ることなく生育を続け、 逆に突起を伸展す るという挙動を示した。
本発明者らはこの PC 1 2/b 2細胞の挙動に着目し、 当該細胞の外に細 胞の死滅を抑制する活性を有する因子が分泌されている可能性を想定した。 そこ で、 PC 12Zb c£ 2細胞を培養した後の培養上清を調製し、 これを無血清培 地、 すなわち細胞が死滅に至る環境下におかれた野生型 PC 1 2に加えたところ、 この野生型 PC 1 2は PC 1 2/b 2細胞と同様に生育を続け、 なおかつ突 起を伸展させることが確認された。 このことは、 PC 12Zb C f 2細胞が、 培 地中に他の PC I 2細胞の死滅を抑制する活性を有する因子を放出していること を示すものである。
本発明者らは、 この培地中に存在すると思われる細胞死を抑制する因子を、 6 0%ァセトニトリルを展開溶媒とした逆相高速液体クロマトグラフィ (RP—H PLC) 、 ならびにポリアクリルアミ ド電気泳動 (PAGE) を用いて精製を試 みた。 その結果、 SDS— PAGEにおける分子量が 35キロダルトン (k d) の蛋白質を回収することができた。 この回収蛋白質に細胞死を抑制する活性があ ることを確認することにより、 当該蛋白質が目的の細胞死抑制因子、 即ち PCT F 35であると判断した
また、 本発明者らは、 上記方法で精製された PCTF 35の N末端 2 1残基ま
でのアミノ酸配列、 ならびに、 PCTF 35のペプチド鎖をブロムシアンで切断 して得られる限定分解物の N末端アミノ酸配列をそれぞれ解析した (図 9及び図 10) 。 これらのアミノ酸配列を基に推定される塩基配列からなるオリゴヌクレ ォチドを合成し、 これをプローブとしたポリメラ一ゼチェインリアクション (P CR) 法により、 PC 1 2細胞から調製したメッセンジャー RN A (mRNA) から調製した c DNAライブラリーから、 PCTF 35をコ一ドする遺伝子 p c t f 35をクロ一ユングすることができた。
またクロ一ユングされた遺伝子から決定される PCTF 35のアミノ酸配列か ら、 図 9及び図 1 0に示した N末端アミノ酸配列は、 それぞれ PCTF 35の N 末端側の 1から 22番目のアミノ酸配列 (V a 1 Me t G l y S e r G 1 y A s p S e r V a 1 P r o G l y G l y V a 1 C y s T r p L e u G i n G i n G l y L y s G 1 u A l a Th r) 、 N末端側の 1 38〜 141番目のァミノ酸配列 (T y r A r g G l y
A r g) に相当することが判明した。
遺伝子 p c t f 35は、 配列番号: 3に示される 1 645塩基対 (b p) の塩 基配列のうち、 シグナルぺプチドを含む全長 256個のァミノ酸残基からなる P CTF 35をコードする領域に相当する遺伝子である。 また、 その塩基配列なら びに PCTF 35の N末端配列の解析結果から、 本発明の PCTF 35は、 23 ァミノ酸残基からなるシダナルぺプチドによって細胞外に分泌される分泌型蛋白 質である。 この分泌型 PCTF 35は、 233個のアミノ酸残基からなる推定分 子量 24. 9 k dの蛋白質で、 先の SDS_ PAGEによる分子量の測定によれ ば分泌型 P C T F 35の分子量は 35 k dであることから、 PCTF35は糖鎖 等の何らかの修飾を受けているものと思われる。
本発明の PCTF 35が有する細胞死を抑制する活性とは、 細胞に対して PC TF 35を添加したときに、 NG F及び血清の非存在下にあっても細胞が死滅せ ずに生育を続けることを意味する。 また、 本発明の PCTF 35は、 PC 1 2細 胞に作用させた場合には、 細胞死を抑制する活性と同時に突起の伸展を促す活性 を示す。 すなわち、 野生型の PC 1 2細胞は、 血清または NGF (Nurve
Growth Factor:神経細胞増殖因子、 Greene L A. , J. Cel 1. Biol. , Vol.78,
p747(1978) ) を含む適当な培地においては、 生育を続ける (図 1 ) 力;、 この状 態の細胞を血清及び NG Fを含まない培地に 2500個/ c 程度の低密度 状態にして移すと、 やがて PC 1 2細胞は萎縮して全体の 90〜 100%が死滅 する (図 2) 。 しカゝし、 血清及び NGFを除去した培地に無血清培地における P C 1 2/b c 1 2細胞の培養上清を添加すると、 NGFを添加したときと同様に PC 1 2細胞は生存する (図 3) 。
この様な PCTF 35の細胞死を抑制する活性は、 細胞の生存を観察すること で確認ができる。 また、 より簡便的に測定するには、 PCTF 35と同様に細胞 死を抑制する活性を示す NGFの簡易活性測定方法 (佐々木ら、 1 990年日本 動物実験代替法学会第 4回大会要旨集、 85頁) に準じ、 PCTF 35を細胞に 添加した後の、 当該細胞中の乳酸デヒ ドロゲナ一ゼ (LDH) 活性の変化を確認 することで行うことも可能である。
このように、 細胞死を抑制する蛋白質である PCTF 35は、 細胞死に起因す る疾患に有効な治療薬となり得るものと考えられる。 また、 PCTF 35ならび にそれをコードする遺伝子 P c t f 35は、 当該蛋白質の機能と同様の機能を有 する物質、 当該機能を阻害または促進する作用を有する物質等を医薬として開発 するに際して、 極めて有用であり、 特に遺伝子 p c t f 35は、 遺伝子組み換え 技術等を用いて PCTF 35を大量生産する上で不可欠のものである。
本発明においては、 配列番号: 1に示したアミノ酸配列を有する蛋白質をコー ドするものであればいずれの遺伝子も本発明の範囲内である。 また、 本発明にお いては、 配列番号: 2に示した DNA配列の他に、 当該 DNAとハイブリダィズ し、 かつ細胞死を抑制する活性を有する生理活性蛋白質をコードする DNAも、 本発明の範囲內である。
すなわち、 遺伝子 p c t f 35の全長配列において、 種々の人為的処理、 例え ば部位特異的変異導入、 変異剤処理によるランダム変異、 制限酵素切断による D N A断片の変異 ·欠失 ·連結等により、 部分的に D N A配列が変化したものであ つても、 これら DN A変異体が遺伝子 p c t f 35とストリンジェン卜な条件下 でハイブリダィズし、 かつ細胞死抑制活性を有する生理活性蛋白質をコ一ドする DNAであれば、 配列番号: 2に示した DN A配列との相違に関わらず、 本発明
の範囲内のものである。
上記の DN A変異の程度は、 遺伝子 p c t f 35の DN A配列と 90 °/。以上の 相同性を有するものであれば許容範囲內である。 また、 遺伝子 P c t f 35とハ イブリダィズする程度としては、 通常の条件下 (例えば D I G DNA L a b e l i n g k i t (ベーリンガ一 ·マンハイム社製 C a t No. 1 1 75033) でプローブをラベルした場合に、 32°Cの D I G E a s y Hy b溶液 (ベ一リンガ一'マンハイム社製 Ca t No. 1 603558) 中でハイブリダィズさせ、 50°Cの 0. 5 x S SC溶液 (0. l% [w//v] SDSを含む) 中でメンブレンを洗浄する条件 (1 X S 3。は0. 1 5M Na C l、 0. 0 1 5M クェン酸ナトリウムである) でのサザンハイブリダィ ゼーシヨンで、 遺伝子 p c t f 35にハイブリダィズする程度であればよレ、。 また、 配列番号: 1に示したアミノ酸配列と異なる配列からなる蛋白質であつ ても、 上記のごとく遺伝子 p c t f 35と相同性の高い変異体遺伝子にコードさ れる蛋白質であって、 かつ細胞死抑制活性を有する生理活性蛋白質であれば、 本 発明の範囲内のものである。
すなわち、 本発明の PCTF 35のアミノ酸配列の 1もしくは複数個のァミノ 酸が欠失、 置換もしくは付加された変異体であっても、 当該変異体が細胞死抑制 活性を有する蛋白質であれば、 当該変異体は本発明の範囲内のものである。 蛋白質の構成要素となるアミノ酸の側鎖は、 疎水性、 電荷、 大きさなどにおい てそれぞれ異なるものであるが、 実質的に蛋白質全体の 3次元構造 (立体構造と も言う) に影響を与えないという意味で保存性の高い幾つかの関係が、 経験的に また物理化学的な実測により知られている。 例えば、 アミノ酸残基の置換につい ては、 グリシン (G 1 y) とプロリン (P r o) 、 G 1 yとァラニン (A 1 a) またはバリン (Va 1 ) 、 ロイシン (L e u) とィソロイシン ( I 1 e) 、 グル タミン酸 (G 1 u) とグルタミン (G i n) 、 ァスパラギン酸 (A s p) とァス パラギン (A s n) 、 システィン (Cy s) とスレオニン (T h r ) 、 Th rと セリン (S e r) または A 1 a、 リジン (L y s) とアルギニン (A r g) 、 等 が挙げられる。
従って、 配列番号: 1に示した PCTF 35のアミノ酸配列上の置換、 挿入、
欠失等による変異蛋白質であっても、 その変異が PCTF 35の 3次元構造にお いて保存性が高い変異であって、 その変異蛋白質が PCTF 35と同様に細胞死 抑制活性を有する生理活性蛋白質であれば、 これらは本発明の範囲内にあるもの と言うことができる。 変異の程度としては、 配列番号: 1に示したアミノ酸配列 との相同性が、 90%以上のものが許容し得る範囲である。
このような変異蛋白質としては、 配列番号: 4に示したアミノ酸配列のうちシ ダナルぺプチドに対応するァミノ酸配列を除いたァミノ酸配列からなる蛋白質が 挙げられる。 配列番号: 4に示したアミノ酸配列は、 以下のようにして得られた ものである。 即ち、 上記した配列番号: 3に示される遺伝子の 1部をプローブと してヒ 卜の胎児脳 c DNAライブラリ一を検索した結果、 配列番号: 2に示した 遺伝子と高い相同性を有する、 配列番号: 5に示すヒ ト由来の細胞死抑制因子を コードすると考えられる遺伝子が得られた。 この遺伝子の塩基配列から、 配列番 号: 4に示したァミノ酸配列が得られ、 このアミノ酸配列のうちシグナルぺプチ ドに対応するアミノ酸配列を除いたアミノ酸配列を有する蛋白質が、 配列番号: 1に示したアミノ酸配列からなる蛋白質の 1つの変異蛋白質であり、 ヒ ト由来の 細胞死抑制因子と考えられる。
本発明である PCTF 35は、 上述のように、 b 2遺伝子で形質転換した ラット PC 1 2細胞を適当な培地を用いて培養させることにより、 培地中に生産 させることができる。 b c 2遺伝子は、 PC 1 2細胞および大腸菌、 枯草菌の 双方で複製保持されることのできるシャ トルベクタ一、 例えば、 p c DNA3、 p AGE 1 23等に組み換え、 これをリン酸カルシウム法、 エレク トロボレ一シ ヨン法等の一般的な遺伝子導入法により、 PC 1 2細胞に導入することができる。 また、 形質転換された P C 1 2/b c £2細胞は、 R PM I 1 640培地、 H DM EM培地等の、 適当な培地により培養すればよく、 何ら特別な培養方法や手 段を必要としない。
本発明である PCTF 35は、 同じく本発明である遺伝子 p c t f 35を、 一 般的な遺伝子組み換え技術によつて組み換え用べクターに連結して、 組み換え遺 伝子 p c t f 35を調製し、 これを適当な宿主べクタ一系で発現させることで生 産することもできる。 適当なベクタ一としては、 大腸菌由来のブラスミ ド (例、
p BR3 2 2、 p UC l l 8その他) 、 枯草菌由来のプラスミ ド (例、 p UB 1 1 0、 p C 1 94その他) 、 酵母由来のプラスミ ド (例、 p SH 1 9その他) 、 さらにバクテリオファージゃレトロウィルスやワクシニアウィルス等の動物ウイ ルス等が利用できる。 組み換えに際しては、 適当な合成 DN Aアダプタ一を用い て翻訳開始コドンや翻訳終止コドンを付加することも可能である。 さらに該遺伝 子を発現させるために、 遺伝子の上流に適当な発現プロモータ一を接続すること もできる。 使用するプロモータ一は、 宿主に応じて適宜選択すればよい。 例えば、 宿主が大腸菌である場合には、 T 7プロモ一ター、 l a cプロモータ一、 t r p プロモーター、 え pしプロモータ一などが、 宿主がバチルス属菌である場合には S PO系プロモーター等が、 宿主が酵母である場合には PHO 5プロモータ一、 GAPプロモーター、 ADHプロモータ一等が、 宿主が動物細胞である場合には S V40由来プロモータ一、 レトロウイルスプロモータ一等が、 それぞれ使用で さる。
また本発明の PCTF 3 5は、 遺伝子 p c t f 3 5を他の蛋白質 (例、 グルタ チオン S トランスフェラ一ゼ、 プロテイン Aその他) をコードする遺伝子と連結 することにより、 いわゆる融合蛋白質として発現させることも可能である。 この ようにして発現させた融合型 PCTF 3 5は、 適当なプロテアーゼ (例、 トロン ビンその他) を用いて切り出すことが可能である。
本発明の PCTF 35の発現の際に利用できる宿主としては、 ェシヱリヒア属 菌である E s c h e r i c h i a c o 1 iの各種菌株、 バチルス属菌である旦 a c i 1 1 u s s υ b t i 1 i sの各種菌株、 酵母としては S a c c h a r o my c e s c e r e v i s i a eの各種菌株、 動物細胞としては CO S— 7細 胞、 CHO細胞、 PC 1 2細胞等が利用できる。
組み換え型遺伝子 p c t f 3 5を用いて、 上記宿主細胞を形質転換する方法と しては、 塩化カルシウム法やエレク トロポレーシヨン法等、 用いる宿主細胞に応 じて一般に用いられる形質転換方法を適用することができる。
本発明の蛋白質、 例えば配列番号: 1に示すアミノ酸配列からなる蛋白質、 ま たはその変異蛋白質、 例えば配列番号: 4に示すァミノ酸配列のうちシグナルぺ プチドに対応するァミノ酸配列を除レ、たァミノ酸配列からなる蛋白質は、 細胞死
を抑制する医薬品として有用である。 例えば、 具体的には、 神経細胞死が関連す る疾病であるパーキンソン病やアルツハイマー病などの治療に適用することがで きる。
これらの疾病に適用する場合には、 本発明の蛋白質は、 その凍結乾燥品を通常 の方法により製剤化して、 例えば注射剤としてヒ 卜に適用することができる。 そ の投与量は、 適用する対象、 投与ルート等により変動し得るが、 通常 l g〜l 001718/ 体重1^ g · 日である。
以下、 実施例およひ 験例を示し、 本発明をさらに具体的に説明する。
以下に示す実施例における各種操作は、 市販されている実験キットを用いる場 合には、 キットに添付されている説明書の記載に従い、 またその他特に断らない 場合は、 当業者にとって自体公知の各種操作方法 (Mo l e c u l a r
C l o n i n g、 2 n d. e d . , C o l d S p r i n g Ha r b o r L a b. P r e s s、 1 98 9、 その他当業者にとって標準的な方法を紹介した 技術解説書等に記載の方法、 以下常法とする) により行った。
実施例 1
PCTF 3 5の調製
1 ) b c 1 2遺伝子の PC 1 2細胞への導入
理化学研究所から提供された野生型 P C 1 2 (Mah S.P. ら, J. Neurochem. , Vol.63, p.1183-1186, 1993) 細胞を用い、 S a t oらの方法 (J. Neurobio. , Vol. 25(10),ρ1227- 1234)に従い、 以下の操作により b c f 2遺伝子を導入した。
PC 1 2細胞は、 HDMEM培地を入れた 6穴プレートで 24時間培養後、 1. 5 μ gのヒ ト b 2遺伝子を組み換えた発現べクタ一 p AG E 1 23を加え、 リン酸カルシウム法により、 マーカ一物質 G4 1 8 (和光純薬) 4 50 g mLを含む HDMEM培地で 1 4日間培養することにより、 遺伝子 b c ( 2を含 む p AG E 1 2 3によって形質転換した P C 1 2細胞 (P C l SZb c f Z細 胞) を調製した。
2) 形質転換細胞の培養上清の調製
1 ) で得られた P C 1 2 b c i?2細胞を、 1 00 mm径のシャーレに 1 0。/0 馬血清、 5%牛胎児血清を添加した HDMEM培地 (ギブコ社) 1 0mLに加え
て、 80— 90%コンブルエントになるまで前培養した。
上記シャーレ培養の 3枚分に相当する b c £2//ρ C細胞を、 245 X 245 X 25mmの培養トレィ (住友べ一クライ ト社製) に用意した前培養と同じ培 地 50 mLに接種し、 再び 90%コンフルェントになるまで培養した。 培養後の 細胞を、 血清を含まない HDMEM培地を用いて卜レイ中で 3回洗浄したのち、 同無血清培地 5 OmLを加えて、 2日間培養した。 この培養後の無血清培地を回 収し、 さらに 5 OmLの同無血清培 を新たに加えて 2日間培養した後の培地も 回収した。
以上の作業を繰り返し、 培養上清として合計 100 OmLを用意した。
3) PCTF 35の活性測定
本発明の PCTF 35の細胞死抑制活性の測定は、 佐々木らの方法 (前述) に 準じ、 野生型 PC 1 2細胞に PCTF 35を作用させた際の野生型 PC 1 2細胞 中の乳酸デヒ ドロゲナ一ゼ (LDH) 活性を測定する方法、 具体的には以下の操 作により測定した。
PCTF 35を含む試料を凍結乾燥させた後に HDMEM培地に溶解させ、 被 検試料とした。 24穴プレートの各穴に、 約 5000個の野生型 P C 1 2細胞を 含む 200 μ Lの HDMEM培地を用意し、 そこに被検試料 200 μ 1を添加し た後、 C02 細胞培養器内で 24時間培養した。 培養後、 各サンプルをエツべ ンドルフチューブに回収し、 3000 X g 5分間で野生型 PC 1 2細胞を遠沈、 回収した。 リン酸緩衝液で pH6. 8に調節した生理的食塩水 (PBS) で回収 した PC 1 2細胞を洗浄後、 0. 2%Twe e nを含む PBSで当該 PC 1 2細 胞を可溶化して溶出される LDH活性を、 MTX" LDH" (極東製薬製) を用 いて測定した。 PCTF 35を NGF l O O n g Zm Lに換えて同様の操作を行 つたときの PC 1 2細胞内の LDH活性をあわせて測定して標準値とし、 この標 準値に対する比 (%NGF) をもって被検試料に含まれる PCTF 35の細胞死 抑制活性とした。
4) PCTF 35の精製
a ) 高速液体クロマトグラフ
2) で得た培養上清 1 0◦ OmLを、 攛拌式セル (アミコン社製) を用いて、
蛋白質の分子量として 10 k c!〜 50 k dに相当する分画を 50倍 (2 OmL) にまで精製濃縮した。 この濃縮画分について、 以下の条件による逆相高速液体ク 口マトグラフィ (RP— HP LC) を行った。
機器: 日立製作所 (株) 製高速液体ク口マトグラフ (L6009、 L6299、 し 4000、 D 2500)
検出; UV (220 nm)
カラム;東ソ一 Ph e n y l—5 PWRP (7. 5 c m長) 、 室温
展開液; A緩衝液 0. 05 %トリフロロ酢酸
B緩衝液 0. 05 %トリフロロ酢酸/ 60 %ァセ トニトリル 展開条件;展開速度 l mLZ分
0分〜 50分 B緩衝液 0〜 20 %の直線勾配
50分〜 56分 B緩衝液 20〜 35 %の直線勾配
56分〜 68分 B緩衝液 35〜 47 %の直線勾配
68分〜 73分 B緩衝液 47〜 52。/。の直線勾配
73分〜 78分 B緩衝液 100 %
回収; l mL毎に画分して回収
各回収画分について PCTF 35の活性を測定したところ、 ァセトニトリル 2 5%前後でカラムから溶出される画分 1 1が最も高い活性を示した。 このクロマ トダラフの結果を図 4に示す。
b) SDS—ポリアクリルアミ ド電気泳動 (SDS— PAGE)
a ) で得た画分 1 1を凍結乾燥後、 1 00 Lの 20mMトリス塩酸緩衝液 (p H 8. 0) で溶解した。 この溶解後の試料 1 6 μ Lに 4 μ Lの 5 Xサンプ リング緩衝液を加え、 沸騰水中で 5分間加熱して変性させた試料について、 以下 の条件により SDS— PAGEを行って、 画分 1 1中に含まれる蛋白質の分子量 を測定した。
濃縮ゲル: 0. 45mL 30%T - 2. 7%Cアクリルアミ ド溶液
0. 75mL 0. 4% SDSを含む 0. 5 Mトリス塩酸緩衝液
(p H6. 8)
1. 8mL 精製水
1 8 M L 1 0%過硫酸アンモニゥム溶液
6. 0 μ L TEMED
分離ゲル: ミニスラブゲル (1 mm厚)
3 mL 30%T - 2. 7 %Cアクリルアミ ド溶液 0. 75mL 0. 4。/。303を含む1. 5Mトリス塩酸緩衝液
(p H 8. 8)
3. 7 5mL 精製水
70 μ L 1 0。/。過硫酸ァンモニゥム
1 0 μ L TEMED
泳動緩衝液: 2 5 mMトリス、 0. 1 9 2 Mグリシン、 0 · 1 % S D S 泳動条件;濃縮ゲル 50 V、 分離ゲル 1 50 V
泳動後のゲルをクーマシーブルー (CBB) で染色して、 蛋白質の存在を青色 のバンドで確認したところ、 回収画分中で最も含有量の多い蛋白質は、 分子量 3 5 k dであることが確認された。 この CBB染色後のゲルを図 5に示す。
c) ポリアクリルアミ ド電気泳動 (Na t i v e— PAGE)
a) の画分 1 1について、 以下の条件により N a t i v e— PAGEを行った。 濃縮ゲル; l mL 1 2. 5%T— 2%Cアクリルアミ ド溶液
0. 5 mL 0. 5Mトリス塩酸緩衝液 ( p H 6. 8)
2 m L 精製水
0. 5mL 4%リボフラビン溶液
3 μ L TEMED
分離ゲル; ミニスラブゲル (1 mm厚)
3 mL 30%T - 2. 7 %Cアクリルアミ ド溶液
3 m L 1. 5 Mトリス塩酸緩衝液 ( p H 8. 8) 6 m L 精製水
53. 3 μ L 20%過硫酸アンモニゥム
6. 7 μ L TEMED
泳動緩衝液: 2 5 mMトリス、 0. 1 9 2 Mグリシン
泳動条件:濃縮ゲル 50 V、 分離ゲル 1 50 V
画分 1 1を凍結乾燥後、 1 6 /i Lの 20mMトリス塩酸緩衝液 ( p H 8. 0 ) で溶解した。 この溶解後の試料 3 2 μ ίに 8 /i Lの 5 Xサンプリング緩衝液を 加え、 泳動用試料を調製した。 上記ゲルを 2枚調製し、 泳動用資料の 1 6 を 各ゲルに載せて電気泳動を行った。 泳動後のゲルの 1枚を C B Bで染色して蛋白 質の位置を確認した (図 6の— 1ないし— 4) 。 CBB染色で確認した位置— 1 ないし— 4に相当する部分をもう 1枚のゲルからそれぞれ切り出した。 この切り 出したゲルを、 200// Lの 20 mMトリス緩衝溶液 p H 8. 0に 24時間、 4 °Cで浸してゲル中の蛋白質を抽出後、 ゲルを遠心分離して上清を回収した。 この 回収された各上清を、 HDMEM培地に対して 1 2時間、 4°Cで透析した後、 各 試料の細胞死抑制活性を確認した。 その結果、 — 1に相当する部分のゲルから回 収された蛋白質に、 当該活性が認められた。 各回収蛋白質の細胞死抑制活性を図
7に示す。
さらに、 この回収蛋白質を再度 b) の方法に従って S DS— PAGEを行った ところ、 35 k dの蛋白質が確認され (図 8) 、 以上からこの蛋白質が PCTF 35であると判断した。
5) PCTF 35の N末端アミノ酸配列の決定
3) の c) の S DS— PAGE電気泳動を行った後の 35 k dに位置する PC TF 35を、 泳動ゲルからィモビロン P SQ膜 (ミリポア社製) に、 1 0%メタ ノールを含む 10 mMCA P S ( p H 1 1 ) 緩衝液を用いて、 1 8 OmAで 90 分間の条件で転写させた。 転写後の膜を 50 %メタノール Z 10 %酢酸溶液に 5 分間浸して固定化し、 Rapid Stain CBB Kit (ナカライ社製) で 20分間染色し た。 その後、 脱色、 乾燥して PCTF 35が位置する部分を切り出し、 ヒュ一レ ットパッカード社製アミノ酸シーケンサ一 (HPG 1005A) を使用して、 当 該機器の操作マニュアルに従い、 P SQ膜上の PCTF 35の N末端のァミノ酸 配列を分析した。 この N末端のアミノ酸配列を図 9に示す。
6) PCTF 35の部分アミノ酸配列の決定
3) の c) の SDS— PAGE電気泳動を行った後、 PCTF 35が位置する 部分の泳動ゲルを切り出し、 当該ゲルをホモジネートした- これに、 20 /i gの ブロムシアンを含む 70。/0蟻酸 100 μ Lを加え、 室温で 3時間反応させた後、
1 5000 X gでホモジネートされたゲルを回収した。 この回収されたゲルを 試料として 3) の b) の方法に従って SDS— PAGEを行った。 泳動後のゲル を CB Bで染色したところ、 約 28 k dの相当する位置に新たな蛋白質、 すなわ ちブロムシアンによる PCTF 35の限定分解物のバンドが確認された。 この限 定分解物について 5) と同様の操作を加え、 その N末端のアミノ酸配列を分析し た。 その結果、 図 10に示す配列が確認された。
実施例 2
遺伝子 p c t f 35のクローニング
1) RT— PCRによる遺伝子の増幅
実施例 1で決定した PCTF 35の N末端 21残基 (図 9 ) の一部である配列 QQGKE ATに相当するオリゴ DNA (下記の配列一 1 ) を SENSE PRIMERとし て、 さらに、 実施例 1の 6) で得たブロムシアンによる PCTF 35の限定分解 物の N末端のアミノ酸配列 YRGRSVP (図 1 0) に相当するオリゴ DNA (下記の配列— 2) を ANTISENSE PRIMERとして、 それぞれ PEアプライ ドバイオ システムズ社製の DNA合成機 (AB I 380 B) を用いて合成した。
配列— 1 ; 5' — CA (A/G) C A (A/G) GG (A/C/G/T) AA
(A/G) G A (A/G) GC (A/G/C/T) AC— 3' 配列— 2 ; 5' — GG (A/G/C/T) AC (A/C/G/T) (C/G)
(A/T) (A/G/C/T) C (G/T) (A/G/C/T) C C (A/G/C/T) C (G/T) (A/G) TA— 3' 铸型とする全 RN Aは、 ISOGEN kit (二ツボンジーン社製) を用い、 同 kit の 説明書の記載に従って P C細胞から抽出した。 この全 RN Aを踌型として、 TAKARA RNA PCR kit(AMV) (宝酒造製) を用い、 以下の条件で逆転写反応及び P C R (RT-PCR) を行った。
铸型全 RNA 5 μ 1 ( 1 μ g)
10 X P C R緩衝液 5 μ
2. 5 mM d NT P 1 μ
10 μ M オリゴヌクレオチド (配列一 1 ) 2 μ
1 0 μ Μ オリゴヌクレオチド (配列一 2 ) 2 μ
水 29 μ 1 逆転写酵素 0. 5 μ 1
T a qポリメラ一ゼ 0. 5 1
2 5 mM 塩化マグネシウム 5 μ 1
総量 50 μ 1
上記反応液に対して、 94 で 30秒間保持後、 一 2. 5 °CZ 2秒の速度で冷 却 5 5 °Cまで冷却し、 5 5。じで 30秒間保持した後、 + 2. 5 °C/ 2秒の速度で 7 2°Cに加温して、 72°C 90秒間反応させる工程を 30回繰り返して、 目的配 列を増幅させた。
反応終了後、 常法に従ってァクリルアミ ドゲル電気泳動 (ゲル濃度 1 0%) を 行い、 ゲルをェチジゥムブ口マイ ドで染色した後、 紫外光照射して約 3 90 b p に相当する位置に増幅 DNAの存在を確認し、 この増幅 DNAのバンドを含むゲ ルを切り出した。 このゲルをホモジネートした後、 350 μ Lのマクサムギルバ —ト緩衝液 (0. 5Μ硫酸アンモニゥム、 0. 1 %SDS、 1 mM EDTA、 1 OmM酢酸マグネシウム) を加えて室温で 24時間放置して、 ゲルから DNA 断片を抽出後、 1 5000 X g、 1 0分間遠心して上清を回収した。 この回収 上清からエタノール沈殿で D N A断片を精製した。
2) 増幅 DN Aの塩基配列の決定
1 ) で精製した増幅 DN Aを、 塩基配列決定用べクタ一である pBluescriptll (Stratagene社製) に、 二ツボンジーン (株) 製の Ligation Pack を用いて、 以 下の条件で 1 6°Cで 1 8時間反応させて連結し、 組み換えべクタ一を調製した。 精製増幅 DNA 4 μ 1 (200 n g)
pBluescriptll 1 μ 1 ( 50 n g )
B AS 1. 2 5 1
Hexamine cobalt chloride 0. 5 μ L
Spermidine 0. 5 μ L
水 0. 7 5 μ L
D N ALigase 5 μ 1
組み換えベクターを含む上記反応溶液 5 μ Lを用いて、 ヒ一トショック法によ
り大腸菌 DH 5の形質転換を行った。 形質転換体を、 アンピシリン (Amp) 5 0 μ g / m I 5— B r o m o— 4— C h i o r o— 3— i n d o 1 y 1 — j3— D— g a l a c t o s i d e (X— g a l ) 4 0 μ g / m 1 I s o p r o p y l - ]3 -D-T h i o -G a 1 a c t o p y r a n o s i d e ( I PTG) 1 0 0 μΜを含有する L B寒天培地にプレーティングし、 3 7°Cでー晚培養した。 プレ一ト上の白色コロニーを 5 0 μ g/m 1の A m pを含む L B液体培地 1 0 m 1に接種して 3 7 °Cで一晩培養し、 遠心分離によって菌体を集めた後、 組み換 え DNAを FlexiPrep (フアルマシア社製) で精製した。
精製された組み換え D N Aの 1 μ gを定法に従ってアル力リ変性させ、 ThermoSequenase Pre - mix cycle sequencing Kit マンャム社製) の |¾明 に 従って、 ジデォキシ法により増幅 DNAの塩基配列を決定した。 増幅 DNAの長 さは、 全 3 4 6 b pであった。
3 ) 遺伝子 p c t f 3 5の取得
2) で決定された 3 4 6 b pからなる塩基配列を基に、 目的遺伝子全体の取得 を以下の R A C E (Rapid Amplification of cDNA Ends) 法 (Frohman . A. , et. al. , Proc. Natl. Acad. Sci. USA, Vol.85, p8998(1988) ) により行った。
反応用プライマ一として、 3 ' RACE用に配列一 3を、 5 ' RAC E用に配 列一 4をそれぞれ合成した。
GGTDAGC- 3 '
配列— 4 ; 5 ' -GACTCTAGAGCTCGAGGACG CGC
AGGTCTGGGTGTCC- 3 '
1 ) で得られた全 RN Aの 1 μ gを铸型として Marathon cDNA amplification kit (クローンテック社製) の説明書に従い、 以下の条件で P C Rを行った。 踌型全 RNA 5 μ ( 1 μ g)
1 0 X P C R緩衝液 5 μ
2. 5 m d NT P 1 μ
1 0 μΜ オリゴヌクレオチド (配列一 3 ) 2 μ
\ 0 μΜ オリゴヌクレオチド (配列一 4 ) 2 μ
水 34. 5 μ 1
逆転写酵素
T a qポリメラ一ゼ 0. 5 μ 1
総量 50 μ 1
上記反応液に対して、 94 °Cで 30秒間保持後、 — 2. 5°CZ2秒の速度で 7 2°Cまで冷却後 4分問保持し、 + 2. 5 °CZ 2秒の速度で再び 94 °Cに戻す工程 を 5回、 続いて 94。じで 30秒間保持後、 — 2. 5。C/ 2秒の速度で 70 °Cまで 冷却後 4分間保持し、 + 2. 5°C/2秒の速度で再び 94 °Cに戻す工程を 5回行 つた後、 さらに 94 °Cで 3 0秒間保持後、 一 2. 5。C/ 2秒の速度で 6 8 °Cまで 冷却後 4分間保持し、 + 2. 5°C/2秒の速度で再び 94 °Cに戻す工程を 30回 繰り返した。
反応終了後、 常法に従ってァガロースゲル電気泳動 (ゲル濃度 1 %) を行い、 ゲルをェチジゥムブ口マイ ドで染色した後、 紫外光照射して約 1 600 b pに相 当する位置に増幅 DN Aの存在を確認した。 この増幅 DN Aを含むゲルからの増 幅 DNAの精製、 ベクターへの組み込み、 シ一ケンシングの各操作を 2) と同様 にして行つて、 増幅 D N Aの全塩基配列の決定を行った。
その結果、 増幅 DNAは全 1 64 5 b pからなる DNAであり、 その中に終止 コ ドンを含む 7 l i b pの ORF (Open Reading Flame) を有していた。 この O RFにコードされるアミノ酸配列中に、 PCTF 3 5の N末端アミノ酸配列、 お よびその限定分解物 23 k dの N末端のァミノ酸配列と部分的に一致する配列力' それぞれ含まれていることから、 目的である遺伝子 P c t f 3 5がクロ一ニング されたと判断した。 この遺伝子 p c t f 3 5を含む増幅 DNAである 1 64 5 b pの全塩基配列を配列番号: 3に示す。
クロ一ニングされた遺伝子から決定されるァミノ酸配列を配列番号: 3に示す。 このアミノ酸配列から、 図 9に示した PCTF 3 5の N末端アミノ酸配列は、 P CTF 3 5の N末端側の 1から 22番目のァミノ酸配列: V a 1 Me t G l y S e r G 1 y A s p S e r V a 1 P r o G l y G 1 y V a 1 C y s T r p L e u G i n G i n G l y L y s G l u A l a Th rに相当することが明らかとなった。
また図 10に示した N末端アミノ酸配列は、 PCTF 35の N末端側の 1 38 〜 14 1番目のアミノ酸配列: T y r A r g G 1 y A r gに相当すること が明らかとなった。
実施例 3
組み換え遺伝子手法による PCTF 35の調製
1) 組み換え発現ベクター p CTF 35の構築と PC 1 2細胞の形質転換
制限酵素 E c o R Iおよび Xh o Iで開環させた組み換え用ベクター p c DN A3 (インビトロジヱン社) 1 μ gを調製し、 これに実施例 2の 3 ) で得た遺伝 子 p c t f 35を含む全長 1 645 b pの増幅 DNA1 μ gを加え、 実施例 2の 2) と同様の操作によって連結、 形質転換と組み換え体 DNAの調製を行い、 組 み換え発現べクタ一 p CTF 35を得た。
理化学研究所から提供された野生型 PC 1 2細胞を H DM EM培地を入れた 6 穴プレートで 24時間培養後、 1. 5 μ gの組み換え発現べクタ一 p CTF 35 を加え、 リン酸カルシウム法により、 マーカ一物質 G41 8 (大日本製薬) 40 0 μ gZmLを含む HDMEM培地で 14日間培養することにより、 該組み換え ベクタ一により形質転換された PC 1 2細胞 (PC I 2/p CTF細胞) を 3ク ローン調製した。 同時に p c DNA3で形質転換された PC 1 2細胞 (mo c k • PC 1 2細胞) も調製した。
2) ノーザンハイブリダィゼーシヨン
3クローンの PC 12/p CTF細胞、 mo c k^PC 1 2細胞、 ならびに野 生型 PC I 2細胞を、 それぞれ 1 O Omm径のシャーレに 10%馬血清、 5 %牛 胎児血清を添加した HDMEM培地 (ギブコ社) 1 OmLに加えて、 80— 90 %コンフルェン卜になるまで培養した後、 ISOGEN kit (二ツボンジーン社製) な らびに oligotex dT30 (日本合成ゴム社製) を用いて各細胞から mRNAを抽出 した。 2 / gの mRNAを常法に従ってァガロースゲル電気泳動で分画後、 10 X S S C緩衝液を用いて室温、 1 8時間でメンブレン (NEN社製 Gene Screen Plus) に転写し、 ノーザンハイブリダィゼ一シヨンを行った。 プローブとして、 配列表 3に示した DN Aの 5 ' 末端から 1462 b pのフラグメントを踌型とし て Ramdom Primer DNA Label ingKit (宝酒造社製) を用いて [α— 32 P] d C
T P標識した DN A断片を調製した。 ハイブリダィゼーションは以下の組成の溶 液中で (濃度は全て終濃度) 、 65°Cで 1 6時間行った。
10% デキストラン硫酸
1 % S D S
1 M N a C 1
2. 4 X 105 c p m/mL 標識プロ一ブ
ハイブリダィゼ一シヨン終了後、 メンブレンを 2 X S S C緩衝液で室温、 5 分を 2回、 次いで 1 %S D Sを含む 2 X S S C緩衝液で 60°C、 30分を 2回、 さらに 0. 1 X S S C緩衝液で室温、 5分を 1回の条件で 0. 1 %SDSを用 レ、、 5 1°Cで洗浄した。 メンブレン洗浄後のシグナルの検出は、 ー80。じで24 時間、 Hy p e r f i 1 m^^-EC L (アマシャム社製) フィルムを使用して 行った。
この結果、 mo c k PC 1 2細胞および野生型 PC 1 2細胞に比べ、 3つの P C 12Zp CTF細胞において、 有意な発現が確認された。 このハイブリダィゼ —ション後の露光結果を図 1 1に示す。
3 ) 組み換え体 PC 12 p CTF細胞の生存率の確認
野生型 P C 1 2細胞を、 100 mm径のシャーレに用意した NG F 250 μ g /mLを含む無血清 HDMEM培地 (ギブコ社) 1 0mLに対して、 5000個 /cm3 , 10000個 cm3 , 25000個/ c m 3 の 3種類の細胞密度 となるよう添加し、 24時間および 48時間培養した後の生細胞数を、 トレパン プル一色素排除試験 (ギブコ社) により計測して、 これを 1 00%とした。 1) で得た PC 1 2/p CTF細胞、 ならびに野生型 PC I 2細胞を、 それぞれ 1 0 Omm径のシャーレに用意した無血清 HDMEM培地 (ギブコ社) 10 m Lに対 して、 5000個/ c m3 、 10000個/ c m3 、 25000個 c m3 の 3種類の細胞密度となるよう添加し、 24時間および 48時間培養した後の生細 胞数をそれぞれ計測し、 PC 1 2/pCTF 35の細胞死抑制効果を確認した。 その結果、 PC 12Zp CTF細胞は、 野生型 P C 12細胞に比べ、 より生存 細胞数が多かった (図 12) =
また、 PC 12Zp CTF細胞を実施例 1 と同様に培養して得た上清の濃縮液
に細胞死抑制効果が認められ、 またこれを無血清培地中の野生型 PC 1 2細胞に 添加したところ、 細胞死が抑制されることが確認された。
実施例 4
ヒ ト由来 p c t f 35の遺伝子のクロ一ユング及びそのアミノ酸配列決定
実施例 1で得られた p c t f 35のヒ トホモログ (h p c t f 35) を単離す るために、 配列番号: 3に示す塩基配列の 1部 ( 7番目〜 777番目の塩基配 列) を プ ロ 一 プ と し て Human Fetal . Brain5 ' -STRETCH PLUS cDNA Library(CLONTECH社製) のスクリーニングを行った。 約 50万クローンのスクリ 一ユングにより 4つのポジティブクローンが得られた。 そのうち 3つはゲノム断 片であることが判明したが、 一つはポリ(A) tailを含む c DN A断片であり、 部分的に p c t f 35遺伝子と高い相同性を有していたため、 このクローンの配 列を基に 5' — RACEを行った。 また、 先に得られたゲノム断片に含まれると 予想される ORF領域の配列を用いた PCRを行い、 同ライブラリ一及び、 ヒ ト 胎盤由来の c DNAを用ぃてh p c t f 35遺伝子 ORFの構造を決定した。 シグナルぺプチドを含む全長 263個のァミノ酸残基からなる h p c t f 35 をコ一ドする、 h p c t f 35遺伝子 ORFの塩基配列を配列番号: 5に示した。 またそれから推定されるシグナルペプチドを含む h p c t 35のアミノ酸配列を 配列番号: 4に示した。
産業上の利用可能性
本発明により細胞死を抑制する蛋白質が得られた。 また本発明により、 それを コ一ドする遺伝子のクローニングに成功した。 本発明の細胞死を抑制する蛋白質 は、 神経細胞死が関連する疾患の治療に有用であり、 また該蛋白質の機能と同様 の機能を有する物質、 該蛋白質の機能を阻害または促進する作用を有する物質等 を医薬として開発するに際しても極めて有用である。