ハク酸誘導体の製造方法 技 術 分 野
本発明は、 優れた血糖低下作用を有し、 糖尿病治療薬として有用な、 式
(式中の (S ) 力付された炭素原子は S配置の炭素原子を表す) で表されるベン ジルコハク酸誘導体およびその塩の製造方法に関するものである。
さらに詳しく述べれば、 反応副生物等が混在した、 式
(式中の (S ) が付された炭素原子は前記と同じ意味をもつ) で表されるベンジ ルコハク酸誘導体およびその塩を、 一般式
(式中の Xは水酸基、 塩素原子または臭素原子である) で表される化合物と反応 させ、 式
(
(式中の (S ) が付された炭素原子は前記と同じ意味をもつ) で表されるベンジ
ルエステル誘導体を製造、 精製した後、 脱べンジルイ匕し、 所望に応じ、 得られた ベンジルコハク酸誘導体をその塩に変換することを特徴とする、 高純度の前記式
( I ) で表されるベンジルコハク酸誘導体およびその塩の製造方法および当該製 造方法により得られる、 前記式 (I) で表されるベンジルコハク酸誘導体および その塩に関するものである。
背 景 技 術
糖尿病治療薬として有用な前記式 (I) で表されるベンジルコハク酸誘導体お よびその塩の製造方法については、 既にいくつか提案されている (日本特許公開 平 4一 356459号公報、 同平 6— 340622号公報、 同平 6— 34062 3号公報) 。
例えば、 式
(式中の (S)が付された炭素原子は前記と同じ意味をもつ) で表されるベンジ ルコハク酸またはその反応性官能的誘導体をイミダゾ一ル、 カルボ二ルジィミダ ゾール、 ォキザリルジィミダゾール、 チォニルジィミダゾ一ルまたはチォカルボ ニルジイミダゾ一ルと反応させ、 式
(式中の (S) が付された炭素原子は前記と同じ意味をもつ) で表されるイミダ ゾリル誘導体を得、 次いで、 式
で表される環状アミンと反応させた後、 加水分解することによる製造方法が開示
されている。
前記製造方法により得られた前記式 (I ) で表されるベンジルコハク酸誘導体 は融点が低く、 そのままでは精製が困難であるため、 カルシウム塩等の塩にして 精製する方法が試みられている。
しかしながら、 これらの塩を用いて再結晶により精製を行う場合、 精製効率が 悪く、 医薬品としての品質を確保するためには再結晶操作を繰り返す必要があり
、 結果として収率の低下を招き、 また、 このようにして精製された前記式 (I ) のベンジルコハク酸誘導体は純度面でロット間にバラツキが見られるという問題 点^、めつた
本発明で製造される前記式 ( I ) のベンジルコハク酸誘導体は糖尿病治療薬と いう性質上、 長期間の服用が考えられるため、 高純度の前記式 ( I ) のべンジル コハク酸誘導体を効率的に安定して供給することのできる新規な製造方法の開発 が大いに嘱望されていた。
本発明者らは、 上記の課題を解決すべく鋭意研究を行ったところ、 前記式 (m ) で表されるベンジルエステル誘導体が再結晶による精製操作に非常に適した結 晶性を有していることを見出し、 前記式 (I ) で表されるベンジルコハク酸誘導 体の製造工程において、 一旦、前記式 (no で表されるベンジルエステル誘導体 に誘導し、 再結晶を行い精製することにより、 反応混合物中の副生成物を効率良 く除去でき、 高純度の前記式 ( I ) のベンジルコハク酸誘導体を一定して製造で きるという知見を得、 本発明を成すに至った。
発 明 の 開 示
本発明は、 式
(式中の (S ) が付された炭素原子は S配置の炭素原子を表す) で表されるベン ジルエステル誘導体を脱べンジルイ匕し、 所望に応じ、 得られたベンジルコハク酸 誘導体をその塩に変換することを特徴とする、 式
(式中の (s ) が付された炭素原子は s配置の炭素原子を表す) で表されるベン ジルコハク酸誘導体およびその塩の製造方法に関するものである。
本発明は、 前記式 ( I ) で表されるベンジルコハク酸誘導体およびその塩の製 造における、 前言己式 ( I ) で表されるベンジルエステル誘導体の使用に関するも のである。
本発明は、 前記式 (m ) で表されるベンジルエステル誘導体を脱べンジル化し た後、 所望に応じ、 塩に変換することにより得られる、 前記式 ( I ) で表される ベンジルコハク酸誘導体およびその塩に関するものである。
即ち、 本発明は、 前記式 ( I ) で表されるベンジルコハク酸誘導体を、 不活性 有機溶媒中、 塩基の存在下にべンジルクロリ ドまたはべンジルブロミ ドと反応さ せるか、 または縮合剤の存在下にべンジルアルコールと反応させ、 一旦、 前記式 ( I ) のべンジルエステル誘導体を製造し、 この段階で再結晶による精製操作を 行い、 反応混合物中の副生成物を除去し、 その後、 常法に従い脱べンジル化し、 所望に応じ、 その塩にすることにより、 前記式 ( I ) のベンジルコハク酸誘導体 およびその塩を製造するものである。 当該方法により、 高純度の前記式 (I ) の ベンジルコハク酸誘導体およびその塩を効率的に再現性良く製造することができ o
本発明の、 前記式 (m) で表されるベンジルエステル誘導体の製造方法におい て用いられる不活性有機溶媒としては、 例えば、 酢酸ェチル、 トルエン、 ァセト ン、 N, N—ジメチルホルムアミ ド、 ジメチルスルホキシド、 ァセトニトリル、 塩化メチレン、 クロ口ホルム、 テトラヒドロフラン、 ベンゼン等の有機溶媒を挙 げることができ、 塩基としては、 例えば、 炭酸カリウム等の無機塩基、 1 , 8— ジァザビシクロ 〔5 . 4 . 0〕 一 7—ゥンデセン、 トリェチルァミン、 N—メチ ルモルホリン、 ジィソプロピルェチルァミン等の有機第三級ァミンを挙げること ができ、 縮合剤としては、 例えば、 塩化チォニル、 塩化ォキザリル、 三塩化リン
r
5
、 五塩ィヒリン、 ォキシ塩化リン等のハロゲン化剤、 N, N' —ジシクロへキシル カルポジイミ ド、 Ν, Ν' —カルボニルジイミダゾール、 N, N' 一ジスクシン ィミジル力一ボネ一卜、 1—ェチル— 3— ( 3—ジメチルァミノプロピル) カル ボジィミ ド ·塩酸塩等の通常のぺプチド合成に用いられる縮合剤を挙げることが でき、 再結晶溶媒としては、 例えば、 酢酸ェチル等の有機溶媒および酢酸ェチル 一へキサン等の有機混合溶媒を挙げることができる。
また、 前記式 (ΠΙ) のべンジルエステル誘導体の脱べンジル化の方法としては 、 例えば、 水酸化ナトリゥム、 水酸化力リゥム等のアル力リ金属の水酸化物を用 いた加水分解、 アルコール等の有機溶媒中パラジゥム等の金属触媒を用いた接触 還元等を挙げることができる。
前記式 ( I ) で表されるベンジルコハク酸の塩としてはカルシウム塩、 ナトリ ゥム塩、 カリウム塩、 L—アルギニン塩等の薬理学的に許容される塩を挙げるこ とができ、 これらの塩は前記式 (I ) で表されるベンジルコハク酸から常法に従 、容易に製造することができる。
また、 前記式 (I ) で表されるベンジルコハク酸およびその塩は水、 ェタノ— ル等の医薬品として許容される溶媒と溶媒和物を形成してもよい。
本発明の好適な実施方法は以下の通りである。
前記式 (I ) で表されるベンジルコハク酸誘導体を酢酸ェチルに溶解し、 約 2 倍モルの炭酸カリウムを加え、 攪拌下に約 1 . 2倍モルのベンジルブロミ ドまた はべンジルクロリ ドを加え、 加熱攪拌する。 放冷後、氷水を加え有機層を分離し 、 飽和食塩水で洗浄後、 無水硫酸マグネシウムで乾燥し、 減圧下に溶媒を留去す る。 ここで得られた残留物を酢酸ェチルーへキサンで結晶化した後、 さらに酢酸 ェチルで再結晶する。 ここで得られた前記式 (m) で表されるベンジルエステル 誘導体をアルカリ加水分解した後、 所望に応じ塩にすることにより前記式 (I ) で表されるベンジルコハク酸誘導体およびその塩を得ることができる。
このように、 前記式 (m) のべンジルエステル誘導体はその結晶性、 溶解 ¾t等 の点で再結晶による精製操作に非常に適した物性を有しており、 本発明の製造方 法は工業的生産において高純度の前記式 ( I ) のベンジルコハク酸誘導体および その塩の安定した供給を可能にする優れた製造方法である。
0 発明を実施するための最良の形態
本発明の内容を以下の参考例、 実施例および比較例でさらに詳細に説明するが 、 本発明はこれらに限定されるものではない。 なお、 実施例中の化合物の融点は 全て未補正である。 また、 (S) — 2—ベンジルー 3— (シス—へキサヒドロ—
2—イソインドリ二ルカルポニル) プロピオン酸および ( S ) — 2—ベンジル一
3 - (シス—へキサヒドロ— 2—イソインドリニルカルボニル) プロピオン酸カ ルシゥム · 2水和物の化学純度は、 高速液体カラムクロマトグラフィ一を用い、 サンプル 50mgをメタノール 10mlに溶解したものを試料溶液として、 以下の条件に て測定した。 使用カラム: WAKO S I L 5 C 1 8 - 2 0 0 T ( 4.60 x 150mm ) 溶出溶媒 : 0.04M (NH4)2HP04 水溶液/ CH3CN = 3 / 1 (v/v)
流速 : 1. 0m l / i n .
検出波長 : 2 5 9 nm
カラム温度: 0°C 参考例 1
(S) — 2—ベンジル一 3— (シス一へキサヒドロー 2—イソインドリニルカル ボニル) プロピオン酸
卜リェチルァミン 42.5 gを酢酸ェチル 250mlに溶解し、 攪拌下にィミダゾール 14.3gおよび (S) —ベンジルコハク酸 20.8gを加え、 一 15°C攪拌下に塩ィヒチォ ニル 25.0gを加え— 15〜0°Cで 4時間反応させた後、 シス一へキサヒドロイソィ ンドリン 12.5 gを加え 0 °C〜室温で一晩反応させた。 反応液に 1規定塩酸 200ral を加え有機層を分離し、 水洗した後、 1規定水酸化ナトリゥム水溶液で抽出した 。 水層を酢酸ェチルで洗浄した後、 1規定塩酸で中和し、 酢酸ェチルで抽出した 後、 飽和食塩水で洗浄した。 有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥した後、 溶媒 を減圧下に留去し、 無色粘性油状の (S) — 2—ベンジルー 3— (シス—へキサ ヒドロ— 2—イソインドリ二ルカルポニル) プロピオン酸 30.6 gを得た。
化学純度: 9 3. 2 %
了
1H_NMR (CDCla, 270MHz) <5ppm:
1.15-1.7 (8H, m), 2.05-2.3 (2H, m), 2.35-2.55 (2H, m), 2.65-3.5 (7H, m), 7.1-7.4 (5H, m)
I R (neat): 1735, 1605cm-1 実施例 1
(S) 一 2—ベンジルー 3— (シス一へキサヒドロ _ 2—イソインドリニルカル ボニル) プロピオン酸べンジル
(S) — 2—ベンジル一 3— (シス一へキサヒドロ一 2—イソインドリニルカ ルボニル) プロピオン酸 27.54gを酢酸ェチル 200mlに溶解し、 炭酸力リウム 24.9 gを加えた後、 室温攪拌下にべンジルブロミ ド 12.8mlを加え、 80°Cで 6時間反応 させた。 放冷後、 氷水 200mlを加え、 有機層を分離した後、 飽和食塩水 100mlで 洗浄し、 無水硫酸マグネシウムで乾燥した。 減圧下に溶媒を留去した後、 残留物 を酔酸ェチル 20ml、 へキサン 150mlより再結晶し、 無色結晶 27.58gを得た。 この 無色結晶をさらに酢酸ェチル 50mlより再結晶し、 無色結晶の (S) —2—べンジ ルー 3— (シス一へキサヒドロ一 2 Γソインドリニルカルボニル) プロピオン 酸べンジル 24.45gを得た。
融点: 107〜: L08 °C
!H-NMR (CDCI3, 400MHz)< ppm:
1.3 - 1.65 (8H, m), 2.1-2.35 (3H, m), 2.55-2.7 (1H, m), 2.8-2.9 (1H, m), 3.0-3.45 (6H, m), 5.0-5.2 (2H, m), 7.1-7.4 (10H, m)
I R(KBr): 1735, 1630cm一1 実施例 2
(S) — 2 _ベンジル一 3— (シス一へキサヒドロ一 2—イソインドリニルカル ボニル) プロピオン酸べンジル
(S) — 2—べンジルー 3— (シス一へキサヒドロ一 2—イソインドリニルカ ルボニル) プロピオン酸 3.67 gおよびべンジルアルコール 1.5gを酢酸ェチル 20ml に溶解し、 氷冷撹拌下に N, N' —ジシクロへキシルカルボジイミ ド 2.63gを加
え室温下に 3日間攪拌した。 不溶物をろ去し、 ろ液を飽和重曹水で洗浄した後、 無水硫酸マグネシゥムで乾燥し減圧下に溶媒を留去した。 残留物を少量の酢酸ェ チルに溶解させ、 へキサンを加えて析出した結晶をろ取し、 無色結晶の (S) — 2一ベンジル一 3— (シス—へキサヒドロ一 2—イソィンドリニルカルボニル) プロピオン酸べンジル 3.78gを得た。 物性値は実施例 1の化合物と一致した。 実施例 3
(S) _ 2 _ベンジルー 3— (シス一へキサヒドロ— 2—イソインドリニルカル ボニル) プロピオン酸カルシウム ' 2水和物
(S) 一 2—べンジルー 3— (シス一へキサヒドロ一 2—イソインドリニルカ ルポニル) プロピオン酸べンジル 4.06 gをメタノール 30mlに溶解し、 2規定水酸 化ナ卜リゥム水溶液 7.5mlを加え室温で一晩攪拌した。 反応液を減圧下に濃縮し 、 残留物を水に溶解した後、 酢酸ェチルで洗浄し、 水層に 2規定塩酸 7.5mlを加 え、 酢酸ェチルで抽出した。 有機層を飽和食塩水で洗浄し、 無水硫酸マグネシゥ ムで乾燥した後、 減圧下に溶媒を留去した。 残留物をエタノール 40mlに溶解し、 2規定水酸化ナトリウム水溶液 5.0mlを加えた溶液を、 塩化カルシウム 2.22 gの 水 40ml溶液に激しく攪拌させながら滴下した。 更に、 エタノール 10mlおよび水 20 mlを加え、 析出した結晶をろ取した後、 エタノール—水から再結晶し、 無色結晶 の (S) —2—ベンジル一 3— (シス一へキサヒドロー 2—イソインドリニルカ ルポニル) プロピオン酸カルシウム · 2水和物 2.47g ( (S) —ベンジルコハク 酸からの収率: 47%) を得た。
化学純度 : 1 00%
1.15—1.5 (16H, m), 1.9-2.4 (6H, m), 2.55-3.1 (14H, m), 3.2-3.5 (6H, m), 7.1-7.3 (10H, m)
I R (KBr): 1660, 1625cm— 1 実施例 4
(S) 一 2—ベンジル一 3— (シス一へキサヒドロー 2—イソインドリニルカル
g ボニル) プロピオン酸カルシゥム · 2水和物
(S) — 2—ベンジル一 3— (シス一へキサヒドロ一 2 _イソインドリニルカ ルポニル) プロピオン酸べンジル 4.05 gをメタノール 30mlに溶解し、 10%パラジ ゥム炭素 400mgを加え、 室温水素気流中 1気圧で 2時間攪拌した後、 触媒をろ去 し、 溶媒を減圧下に留去した。 残留物をエタノール 80mlに溶解し、 2規定水酸化 ナトリウム 5.0mlを加えた溶液を塩化カルシウム 2.2gの水 50ml溶液に激しく攪拌 させながら滴下した。 析出した結晶をろ取し、 この結晶をエタノール—水から再 結晶し、 無色結晶の (S) — 2—ベンジル一 3— (シス—へキサヒドロ一 2—ィ ソインドリニルカルボニル) プロピオン酸カルシウム ' 2水和物 2.73 g ( (S) —ベンジルコハク酸からの収率: 5 2 %) を得た。 物性値は実施例 3の化合物と 一致した。
化学純度 : 1 0 0% 比較例 1
(S) — 2—ベンジル一 3— (シス一へキサヒドロ一 2—イソインドリニルカル ボニル) プロピオン酸カルシゥム · 2水和物
(S) — 2—ベンジルー 3— (シス一へキサヒドロー 2—イソインドリニルカ ルポニル) プロピオン酸 3.06 gをェタノ一ル 20ralに溶解し、 2規定水酸化ナトリ ゥム水溶液 5.0mlを加えた溶液を塩ィ匕カルシウム 2.2gの水 40ml溶液に激しく攪拌 させながら滴下した。 更に、 エタノール 30mlを加え攪拌し、 析出した結晶をろ取 し、 10%含水エタノールで洗浄し、 無色結晶 3.06 g ( (S) 一ベンジルコハク酸 からの収率: 8 1 %) を得た。 得られた結晶 3.06 gをエタノール—水から再結晶 し、 無色結晶の (S) — 2—べンジル _ 3— (シス一へキサヒドロー 2—イソィ ンドリニルカルボニル) プロピオン酸カルシウム ' 2水和物 2.09 g ( (S) —ベ ンジルコハク酸からの収率: 5 9 %) を得た。
化学純度: 9 5. 5%
更に、 エタノール—水から再結晶を行い、 (S) — 2—ベンジルー 3— (シス —へキサヒドロー 2—イソインドリニルカルボニル) プロピオン酸カルシウム · 2水和物 1.80g ( (S) —ベンジルコハク酸からの収率: 5 1 %) を得た。 物性
値は実施例 3の化合物と一致した。 化学純度: 9 7. 4%