明細 ΐ
C型肝炎ウィルス NS 3プロテアーゼに対する発色団又は蛍光団を有する 新規な活性測定用の合成基質 技術分野
本発明は、 C型肝炎ウィルス (Hepatitis C virus/以下 「HCV」 と略称す る) の NS 3プロテアーゼによって切断をうける新規な合成基質、 及び該合成基 質を用いた HCVの NS 3プロテアーゼの活性測定方法に関する。 體 ¾匕
C型肝炎ウィルス (Hepatitis C virus, HCV) は、 C型肝炎の原因ウィルスで ある。 C型肝炎は患者数が多い上、 慢性化しやすく、 肝硬変、 肝癌に移行する確 率が高いといわれ 〔H. J. Alter et al., N. Engl. J. Med. 321, 1494-1500 (1 989): I. Saito et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87, 6547-6549 (】990) :K. Shimotohno,Semin. Virol. 4, 305-312 (1993)〕 、 その治療が重大な臨床上の問 題となっている。 従って、 その治^薬はエイズ治療薬と並んで、 現在 も希求さ れているウィルス疾患治療薬といえる。 現在、 C型肝炎の治療にはインターフエ ロンが使用されているが、 有効率が低く、 治療効果には限界があるといわれてい る。
HCVゲノムは、 9400塩基からなる一本鎖 RNA ( +鎖) からなり、 約 3000アミノ酸 からなる一本のポリプロテインをコードしている。 この前駆体タンパクには、 N 末端より(NH2)- C - El- E2- NS2- NS3- NS4A- NS4B- NS5A- NS5B-(C00H)の j鎖に 9 種類のウィルスタンパクが含まれる [M. J. Selby et al., J. Gen. Virol. ,74, 1103-1113 (1993):A. Grakoui et al.,J. Virol. ,67, 1385-1395 (1993):L. To mei et al.,J. Virol. ,67,4017-40 6 (1993)] 。 宿主細胞由来のプロテア一ゼと
ウィルス自身がコ一ドしている 2種のプロテア一ゼ (NS3プロテアーゼと cprol) によりポリプロティンがプロセッシングを受け、 ウィルスの増殖に必要なタンパ ク質が供給される。
非構造タンパク 3 (NS3) の N末側の 3分の 1に NS3プロテア一ゼ活性は存在し、 ゥ ィルス複製に必要なタンパク質をコードする非構造領域内の 4力所 (それぞれの 切断部位は 「NS3/4A」 「NS4A/4B」 「NS4B/5A」 「NS5A/5B」 と呼ばれる) を切断す る 〔Α· C. Grakoui et al.,J. Virol. 67, 2832-2843 (1993)〕 。 その結果 NS3か ら NS5Bの領域において、 NS3(p70)、 醒 (p4)、 NS4B(p27)、 NS5A(p58/56)及び NS5 Mp66)の 5つのタンパク質が^じる(Hijikata K.et al. ,Proc. Natl. Acad. Sci.U. S.A., 90, 10773(1993))。 NS3プロテア一ゼは、 単独では活性が弱く、 別の非構造夕 ンパク質の 1つである NS4Aがコファクター (補助因子) となりプロテア一ゼの基 質切断活性を増強することが知られている 〔C. Failla et al.,J. Virol. ,68, 3 753-3760 (1994)〕 。 NS3プロテアーゼで切断される 4力所の基 t配列のうちトラ ンスに切断される 3力所 (NS4A/4B, NS4B/5A, NS5A/5B) については P1位がシステ ィンであり、 NS3プロテア一ゼは今までに知られていない基質特異性を有している 。 このように、 NS3プロテア一ゼはウィルス増殖に必要であること、 また宿主のプ 口テア一ゼとは異なる基質特異性を有していることから、 抗 HCV薬の 力なターゲ ヅ 卜の 1つと考えられている。 即ち、 NS3プロテア一ゼ阻害剤のスクリーニングに よって、 抗 HCV薬の有力な候補を見い出すことが可能であると考えられる。
ところで、 NS3プロテアーゼ阻害剤をスクリーニングするためには、 HCV NS3プ 口テア一ゼの活性測定系が必要であることはいうまでもないが、 合成基質を用い た迅速で簡便な HCV NS3プロテア一ゼの活性測定系は、 未だ確立されていないのが 現状である。 特に、 酵素活性測定用の合成基質は、 酵素に対する高度の感受性及 び高度の特異性、 水又は生物学的試験液に対する 好な溶解性及び消化物の易検 出性の 4点を満足することが重要であるといわれているが、 これらの条件を満た す NS3プロテアーゼのための 成基質については全く知見がない。
これまで、 NS3プロテア一ゼ活性は、 インビトロ (in vitro) の転写一翻訳系又 は細胞内発現系で、 プロテア一ゼと基質を共発現し、 基質の切断を免疫沈降又は ウエスタンブロッ 卜で確認するという方法で行われていた 〔Y.Komoda et al.,J. Virol. 68, 7351-7357 (1994) :P. Bouffard et al., Virology, 209, 52- 59 (1995) : B. Hahm et al.,J. Virol. ,69,2534-2539 (1995):R. Bartenschlager et al.,J . Virol., 68, 5045-5055 (1994) :C. L. Failla et al.,J, Virol., 68, 3753-376 0 (1994):C. Lin et al.,J. Virol.,68, 5063-5073 (1994)〕 。 これらの方法は、 免疫沈降、 電気泳動の操作が必要なため、 PI1害剤スクリーニングのための簡便な アツセィ法とは言い難い上に、 酵素と基質の発現量を判断しにくいことから、 酵 素学的な解析には向いていなかった。
また、 合成べプチド基質を用いた NS3プロテアーゼのアツセィ系も報告されてい る 〔N. Kakiuchi et al.,B. B. R. , 210, 1059-1065 (1995)〕 。 これは、 NS5A /5B間の配列を模した 20アミノ酸の N末端にダンシル基を導入した基質を用いた系 であるが、 基質の消化を逆相 HPLCで検出する必要があり、 活性測定にかなりの時 問と手間を要することから、 多くのサンプル数をこなす必要がある阻害剤のラン ダムスクリーニングには適した方法とは言えない。
二段階法については古くから知られており、 基質の C末端に蛍光団 [例えば 7 —ァミノ一 4—メチルクマリン (7- amino- 4- methy卜 coumarin) /以下 「AMC」 と略称/なお、 ペプチド又はアミノ酸と共有結合した場合は 「MCA」 (4- met hy卜 coumarine- 7- yi- amido) と略称; 7—アミノー 4—トリフルォロメチルクマ リン (7-amino-4-trifluoromethyl-coumarin) /以下 「AFC」 と略称/なお、 前記と同様の場合は 4—トリフルォロメチルクマリン— 7—ィルアミ ド (4- trif luoroiethyl-coumarine-7-yl-amido ; 5—ナフチノレアミン ^-naphthylamine ) /以下 「 ?NA」 と略称/なお、 前記と同様の場合は 一ナフチルアミ ド 、β -naphthylamido) ] や発色団 [例えばパラ二 トロア二リン (para-nitroaniline) /以下 「pNA」 と略称/なお、 同様にパラ二トロアニリ ド (para-nitroanilid
o) ] を付加した合成基質を作製し、 活性を測定したい酵素で切断したのち ( 1次 消化) 、 その消化物を過剰量のァミノべプチダーゼ (以下 「AP」 と略称) で消 化し (2次消化) 、 遊離する蛍光団乂は発色団の量から一次消化物の量を測定す る方法である。 こうした基質を利用してレニンゃ大腸菌リーダーべプチダ一ゼ等 の酵素活性が測定されている [A. Reinhaiz and M. Roth, European J. Biochem., 7,334- 339(1969) :K. Murakami et al., Anal. Biochem. , 110, 232-239 (1981) :D. Kuo et al., Biochemistry, 33, 8347-8354 (1994)] 。 しかし、 従来の 2段階法 は基本的に、 活性を測定したい酵素の切断部位を含む天然の配列を含む基質を利 用していた。 また、 NS 3プロテアーゼの活性測定に 2段階法基 を適用したと いう報告もなかった。 発明の開示
本発明は、 N S 3プロテア一ゼ阻害剤のスクリーニングに必要な、 迅速、 簡便 、 高感度かつ多処理可能な (High througput) N S 3プロテアーゼのアツセィ系 を開発すること、 特に該アツセィ系に用いられる新規な合成 ^質を提供すること を課題とする。
本発明者らは、 二段階法に着 し、 鋭意努力し合成基質およびアツセィ系の改 良を行い、 迅速、 簡便、 高感度かつ多処理可能な NS 3プロテア一ゼの新規活性 測定系を完成させた。
即ち、 本発明は、
( 1) 下記式 (I) で示される合成基質、
(N末端) Z— Cys— Al a— Me t— Al a— X— A— Y (C 端)
( I )
(但し、 式屮、 Zはアミノ酸又はペプチドを、 Xは Leu、 T rp又は Tyrを 、 Aは単結合又はペプチドを、 Yは蛍光団乂は発色団を表し、 Z— Cy sの領域 内に存在するべプチド結合の少なくとも 1つはアミノぺプチダーゼで消化され難
く、 X— Aの領域内に存在するべプチド結合はいずれもァミノべプチダ一ゼで消 化される。 ) であり、
好ましくは、 (2) 発色団又は蛍光団が 7—ァミノ一 4一メチルクマリン (7- amino-4-methyl-coumarin) 、 7—アミノー 4—トリフルォロメチルクマリン (7 -amino-4-trif luoromethyl-coumann) 、 ノ ラ二 卜 Dァニ リ ン (para-nitroanili ne) 又は;6—ナフチルァミン ( 5-naphthylajnine) である上記 ( 1 ) 記載の合成 基質、 又は
(3) Z-Cy sの領域内に存在するアミノぺプチダーゼで消化され難いアミ ノ酸又はアミノ酸残基が、 As p、 S e r、 P r o, 1 16又は & 1でぁる上 記 ( 1) 又は (2) 記載の合成基質であり、
さらに好ましくは、 ( 4 ) ァミノ酸配列が 「Ly s— Gl u— Asp— Va l —Va l—Pr o—Cys—A l a—Me t—A l a—Leu—Y」 (配列番号 : 1 ) である上記 ( 1) 記載の合成基質、
(5) C末端側に結合する発色団がパラ二トロア二リンである上記 (4) 記載 の合成基質、 又は
(6) C末端側に結合する発色団が 7—アミノー 4ーメチルクマ リンである上 記 (4) 記載の合成基質である。
また本発明は、 (7) 上記 ( 1) 〜 (6) のいずれかに記載の合成基質に対し て、 C型肝炎ウィルス N S 3プロテア一ゼとァミノべプチダーゼによる 2重消化 を行う丁.程を含む、 C型肝炎ウィルス NS 3プロテアーゼの活性を測定する方法 であり、
好ましくは、 (8) C型肝炎ウィルスの N S 4 A由来ペプチドの存在下で H C V由来の N S 3プロテア一ゼとァミノべプチダーゼによる 2重消化を行う工程を 含むことを特徴とする、 上記 (7) 記載の方法、 又は
(9) NS4 A由来べプチドが NS 4 Aの N末端から 18から 40¾目のアミ ノ酸配列を含むペプチドである、 十.記 (8) 記載の方法である。
以下、 本発明につき詳述する。
HCVのポリプロテイン上の切断部位は既に報告されている (A. Grakoui et al., J.Virol.,67, 2832-2843 (1993)) 。 トランスに切断される 3力所の切断部 位や各切断部位の亜型間の比較から、 P 6位の ¾電荷アミノ酸 (八 3 又は01 u)、 P 1位の C y s、 P 1, 位の S e r又は A 1 a、 P 4, 位の疎水性ァミノ 酸 (Tyr、 Trp、 A la又は Leu) の保存性が指摘されている (プロテア —ゼの基質中のアミノ酸残基を、 切断点から N末端に向かい P 1、 Ρ2、 Ρ3 · • · と、 また C末端に向かい P l' 、 P2, 、 P3, · · · と呼ぶ) 。 即ち、 キ モトリブシン、 トリプシン、 エラス夕一ゼ等のセリンプロテア一ゼとは異なり、 切断点より C末側の配列も基 認識に ΪΕ要であると思われる。 よって、 切断点の Ν末側の配列 (例えば Ρ6〜Ρ 1) のみを用いた基質、 例えば 「EDVVPCな るアミノ酸配列を有するぺプチドの C末端に発色団を共有結合させた基質」 等は NS 3プロテア一ゼの基質としては適さないと考えられる。
2段階法基質を設計する際、 基質配列内の切断点より C末側の配列は、 短い方 がアミノぺプチダーゼで消化されやすくかつ基質の合成も容易であるので好まし い。 そこで、 我々は ffi内 (N.Kakiuchi) 等が H P L Cによる N S 3プロテア一ゼ のアツセィ系に用いた 5 A/ 5 Bの配列 (GEAGDD IVPCSMSYTWT GAL) を基に、 切断に必要な最小単位を求めた (参考例 1参照) 。 これまでに も、 基質配列の変異体と NS 3プロテア一ゼを大腸菌又は動物細胞に共発現させ 、 切断に重要なアミノ酸配列の検討がなされており、 [Y. Komoda et al., J.Vi rol.,68, 7351-7357 (1994) : Y. Tanji et al., Gene, 145, 215-219 (1994):A. Alexander et al., J.Virol. ,68, 7525-7533 (1994)] 、 P4位から P 1, 位の基 質配列 が切断に重要であることが報告されている。 しかし、 本発明者らは、 合成 ペプチドを基質とした場合、 切断点から C末端側は P 1 ' まででは不十分であり 、 P 3, 位の S e rまでの配列 ( S M S ) を有していれば消化されるが、 P 4, 位の Tyrまでの配列 (SMSY) を有しているとより消化されやすいことを見
い出した。 また、 切断点から N末端側は、 P4位の I l eまでの配列 (IVPC ) までを有していれば消化されるが、 P 7位の G 1 y又は P 6位の A s pまでの 配列 (GDD I VP C又は DD I VP C) を有しているとより消化され易いこと を見い出した。 よって、 NS 3プロテア一ゼの基質としては、 P6から P3' ま でのペプチド配列を有しているものが好ましく、 ? 6から 4' までのペプチド 配列を有しているものがより好ましいと考えられる。 さらに、 基質の水溶性を配 慮して、 P 7位の G 1 yと P 5の A s pを共に L y sに置換した KDK IVPC SMS Y (以下 「N3nk」 と呼ぶ) なる配列が N S 3プロテアーゼ基質の基本 配列として特に適していることを見出した (参考例 1参照) 。
ところで 「N3nk」 の C末端に pNAを付加した 2段階法基質を作製し、 N S 3プロテア一ゼとァミノべプチダ一ゼ M (以下 「APM」 と略称する) による 2段階消化を行っても該基質は十分発色しなかった。 それは、 APMは 「N3n k— pNA」 が NS 3プロテアーゼ消化されて生じる C末側断片 「SMSY— p NA」 を十分消化できないからであった。 即ち、 N S 3プロテア一ゼの切断点よ りも C末端側の配列が A P Mで効率よく消化されることが、 基質として必須の要 件であると考えられたので、 本発明者らは APMの基質特異性を検討した。
これまで、 アミノ酸の pN A基質、 MCA¾質さらにはジペプチド基質を用い て、 APMの基質特異性が幾つかの限られたアミノ酸についてのみ検討されてい たが [It. K. Kania, et al., J. Biol.Chem. ,252, 4929-4934 (1977):M. Nakanis hi,et al., J.Biochem. , 106, 818-825 (1989): S. Ishiura, et al., J.Biochem .,102, 1023-1031 (1987)]、 A PMの基質特異性については未知の部分が多か つた。 本活性測定系においては簡便さの点から N S 3プロテア一ゼと APMは同 一緩衝液中で反応することが好ましい。 そこで本発明者らは、 NS3プロテア一 ゼの至適緩衝液中に於いて APMの基質特異性を検討し、 Leu、 Al a、 Me t、 A r gは極めて消化されやすいが、 Tyr、 Gly、 P heはやや消化され 難く、 I l e、 Val、 Asp、 S e r, P r oは消化されにくいことを明らか
にした (参考例 2参照) 。
そこで A PMで消化されやすいアミノ酸配列を考慮し NS 3プロテアーゼと A PMの両者の基質特異性を同時に満足するよう P 1 ' 〜Ρ4' の改変を行なった 。 その結果、 N S 3プロテア一ゼで切断され、 かつその C末端側の切断断片が A PMで消化可能な基質を見い出した (参考例 3参照) 。
なお、 通常 2段階法基質においては、 一次消化で未消化だった基質もァミノべ プチダ一ゼによる 2次消化で分解され発色する可能性があるので、 N末端のアミ ノ基をァセチル基、 サクシ二ル基、 Fmo c等で保護することが行われる。 しか し、 ァミノ基の保護は通常ペプチド基質の溶解度を下げるので好ましくない。 本 発明者らは、 N S 3プロテア一ゼ切断点より N末側に APMで消化されにくい A sp、 l ie, Ser、 P r o及び V a 1などを含ませた場合、 N末端のァミノ 基を保護しなくても、 NS 3プロテアーゼの C末端側切断断片が A PMによって 2次消化される時間内に、 未消化基質が APMで発色することはなく、 水溶性が 確保されることを確認した。 そして、 基質の C末端に pN Aや AM Cを付加した 発色性および蛍光性の合成基 を用いれば、 高感度かつ簡便に N S 3プロテア一 ゼの活性測定が可能であることを確認し (実施例参照) 、 本発明を完成した。 即ち、 本発明の合成基質は、 N S 3プロテア一ゼで切断されやすく、 また、 N S 3プロテア一の切断部位から N末端側はァミノべプチダーゼで消化されにく く C末端側は消化されやすいという、 二段階法による NS3プロテアーゼの活性測 定に最も適したペプチドを新たに設計し、 該設計に基づく合成¾質を提供した点 に最大の特長があり、 従来の天然の配列を基質とした二段階法とはその ¾本的な 設計思想を異にしている。 そして、 上記特長によって、 HCVを検出するための 測定法としては初めて、 短時間で大量の化合物をアツセィする多処理可能なスク "—ニング (High Throughput Screening) が可能となった。 また、 本発明の蛍光 基質を用いることにより、 N S 3プロテア一ゼの検出感度が格段に上昇すると期 待される。
本発明の語句にっき詳述する。
「アミノ酸」 とは、 同一分子内にカルボキシル基とアミノ Sを有する化合物を 意味し、 またプロリンのようなイミノ酸もアミノ酸に含まれる。 天然型及び非天 然型も包含される (生化学辞典、 東京化学同人、 第二版、 58-69, 1468-1474(1992 )及び有機化学 ·生化学命名法 (下) 、 南江堂、 改訂第二版、 59-82(1989))。 また 、 本発明において、 合成基質の末端に存在するアミノ酸も本定義に含まれる。 具 体的には、 ァラニン (A l a ) 、 アルギニン (A r g ) 、 ァスパラギン (A s n ) 、 ァスパラギン酸 (A s n ) 、 システィン (C y s ) 、 グルタミン (G 1 u ) 、 グルタミン酸 (G i n ) 、 グリシン (G 1 y ) 、 ヒスチジン (H i s ) 、 イソ ロイシン ( I 1 e ) 、 ロイシン (L e u ) 、 リジン (L y s ) 、 メチォニン (M e t ) 、 フェニルァラニン (P h e ) 、 プロリン (P r o ) 、 セリン (S e r ) 、 スレオニン (T h r ) 、 トリプトファン (T r p ) 、 チロシン (T y r ) 、 ノく リン (V a 1 ) 、 β —ァラニン ( i3 A l a ) 、 2—アミノ酪酸 (A b u ) 、 a - ァミノイ ソブチリ ック酸 (A i b ) 、 α—アミノスべリ ック酸 (A s u ) 、 4 - クロ口フエ二ルァラニン、 シトルリン (C i t ) 、 —シク口へキシルァラニン (C h a ) 、 3 , 4一デヒ ドロブ口 リン、 2 _, 3—若しくは 4—フルオロフェ 二ルァラニン、 ホモセリン (h S e r ) 、 ヒ ドロキシァ口リン (H y p ) 、 β — ヒ ドロキシバリン、 4—ニトロフエ-ルァラニン、 ノルロイシン (N l e ) 、 ノ ルバリン (N v a ) 、 オル二チン (O r n ) 、 ベ-シラミン (P e n ) 、 フエ二 ルグリシン (P h g ) 、 ピログルタミン、 ザルコシン (S a r ) 、 β - ( 2—チ ェニル) ァラニン (T h i ) 、 ピペコリン酸 (P i p ) 、 ナフチルァラニン、 ブ 口パルギルグリシン (P r a ) 等である。
「ァミノ酸残基」 とはタンパク質又はべプチドの構成単位でべプチド結合を形 成する際に除かれた水素原子及び水酸基以外の上記ァミノ酸部分の総称である ( 日経バイオ ¾新用語辞典、 日経バイオテク、 第 4版、 2 3 ( 1 9 9 5 ) 又は生化 学辞典、 東京化学同人、 第 2版、 61-62 ( 1 9 9 2 ) 等参照) c
「ペプチド」 とは、 2個以上のアミノ酸がペプチド結合によって結合したもの を意味する。
「Z— C y sの領域内に存在するべプチド結合の少なくとも 1っはァミノぺプ チダ一ゼで消化され難い」 とは、 Z中のアミノ酸又はペプチド内にアミノぺプチ ダーゼで消化され難いァミノ酸又はァミノ酸残基が存在することを意味し、 具体 的には 1 l e、 V a し A s p、 S e r、 P r o等である。
「X— Aの領域内に存在するぺプチド結合は何れもァミノべプチダ一ゼで消化 される」 とは、 X— A問の結合がアミノぺプチダ一ゼで切断されるだけでなく、 A中のぺプチド内に上記ァミノぺプチダーゼで消化されにくいァミノ酸残基を除 いたアミノ酸残基が存在することを意味する。
「発色団又は蛍光団」 とは、 従来、 セリンプロテアーゼ、 チオールプロテア一 ゼ又はアミノぺプチダーゼ等の活性測定に用いられているものであり、 本発明の 目的を達成するいかなる発色団または蛍光団をも意味し、 具体的には、 本発明基 質内で結合している状態では蛍光性乂は発光性を有さず、 ァミノべプチダーゼで 消化されて遊離された際に蛍光性又は発光性を有する基を意味し、 さらに具体的 には、 pNA、 AMC、 AF C又は /5NAが挙げられる。 本発明において、 NS 3プロテア一ゼで切断を受けるアミノ酸配列に特に制限はないが、 効率 J¾い切断 のためには、 好ましくは P 4まで、 ¾に好ましくは P 6までの長さを持つとよい 。 Ρ6〜Ρ4' の配列としては、 N S 5 A/5 Βの亜型の配列 (A.Grakoui et a 1., Journal of Virology, 67, 2832-2843 (1993)) 又は N S 3プロテア一ゼで切 断されることを本発明者らが確認した配列、 より 体的には、 P6は Asp、 A sn又は Glu、 P 5は Lys、 Asp、 Se r、 Asn又は Gly、 P4は I 16又は & 1、 P3は Va l、 Glu、 11 & 1又は116、 2は卩 0、 ハイ ドロキシ P r o、 Ρ h e、 G 1 u、 V a 1又は T y rが好ましい。 P 4 ' は Trp、 Tyr、 A 1 a又は L e uであることが好ましい。
好ましい基質の例として、 例えば、 「Ly s— G 1 u— As p— Va 1— Va
1一 P r o— Cys— Al a— Me t— A l a— Leu— pNA」 又は 「: L y s — G l u— As p— Va l— Va l—P r o— Cy s— A l a— Me t— Al a — L eu— AMC」 (配列番号: 1) を挙げることができる。 一般に、 本発明に おいて使用される基質は、 下記の実施例 (V) に記載の条件において、 NS 3ブ 口テアーゼによる切断率が 20%以上のものが好適であるが、 更に好ましくは 4 0%以上のもの、 更に好ましくは 60%以上のものが用いられる。
また、 本発明の、 具体的には前述の合成基質に対して HCV由来の NS 3プロ テア一ゼとァミノべプチダ一ゼによる 2重消化を行う工程を含む、 C型肝炎ウイ ルス NS 3プロテア一ゼの活性を測定する方法は、 C型肝炎ウィルスの NS 4 A 由来べプチドの存在下で行うことが好ましい。
本発明における NS 4 Aとは、 前述の如く H CVウィルスの非構造タンパクが NS 3プロテア一ゼにより消化された結果生じる断片、 非構造タンパク 4 A (N S 4 A) を意味し、 親水性領域と疎水性領域をもつ全長 54アミノ酸のタンパク を意味する。
なお、 本発明のアツセィ系に添加する NS 4 A配列は 「4A 18— 40」 に限 らず、 N末端から 22から 34番目を含む N S 4 A由来の断片であればいずれの 断片でもかまわない。 4A2 1 _40、 4A 18— 37、 4A 18— 34、 4 A
21— 34、 4 A 22— 34などがその例である。 ( 4 Aの後の数字は、 各 N S 4 A断片の N末と C末の、 NS 4 Aの N末端から数えたアミノ酸番号を示す。 ) また、 酵素反応を行う際に使用する緩衝液の pHは 5. 0から 10. 0の範 ffl であればよく、 好ましくは 7. 0から 9. 0である。 塩化ナトリウムは無添加で あるか、 または 20 OmM以下の範囲であればよい。 DTT濃度は 0. 05から 10. OmMの範囲であればよく、 好ましくは 0. 5から 2mMである。 反応温 度は 10から 50°Cの範 fflであればよく、 好ましくは 25から 37°Cである。 本発明の合成ペプチド基質は、 「泉屋信夫等、 ペプチド合成の ¾礎と実験 ( 1 985 ) 、 丸善」 、 「Novabiochem社製のぺプチド合成マニュアル ( 1994 ) ι
、 「矢島治明監修、 ベプチド合成 (続医薬品の開発 14) 、 広川書店 ( 199 1 ) 」 、 「M, Bodanszky, Peptide Chemistry, A Practical Textbook, Springer - Verlag, Berlin (1988)」 等を参考に合成することができる。 発色団又は蛍光団を 含有する合成基質の製造法としては、 常法により行われる。 例えば 「K. Murakami et al., Anal.Biochem., 110, 232-239 (1981)」 、 「A.Reinharz & M.Roth, Eu ropean J.Biochem., 7, 334-339 (1969)」 、 「0.Kuo et al., Biochemistry, 33 , 8347-8354」 、 「Konig W. & R.Geiger, Chem.Ber., 103, 788-798 (1970)」 、
「T. Morita et al., J. Biochemistry, 82, 1495-1498 (1977)」 、 「M. Zi腿 er man et al., Anal.Biochei., 78, 41-51 (1977)」 等の方法を参考にして行われる 。 例えば、 本発明の合成基質の製造法として、 液相法又は固相法による方法、 ま たペプチドの合成法であるアジド法、 酸クロライ ド法、 酸無水物法、 混合酸無水 物法、 N, N' —ジシクロへキシルカルボジイミ ド法、 活性エステル法、 カルボ エルジイミダゾ一ル法、 酸化還元法等が挙げられる。 固相法によってペプチドを 合成するに当たっては、 優れたペプチド自動合成機、 例えばアプライ ド .バイオ システム社製のぺプチド 動合成機 430A等が市販されており、 このような装置の 標準的運転プログラムに従って行えばよい。 なお、 本発明の合成基質の製法とし て現在市販品装置の適用のみに限定されるものではない。
このようにして得られた合成基質は、 精製するか、 又はそのままで用いられる 。 単離 ·精製は、 常法で行われ、 例えば抽出、 分配、 再沈殿、 再結品、 又はカラ ムクロマトグラフィ一等によって行われる c
本発明に用いられるアミノぺプチダ一ゼは N S 3プロテアーゼ消化により生じ た C末断片を消化し発色団又は蛍光団を遊離出来るものであれば何でも良いが、 好ましくは APM (ロイシンアミノぺプチダ一ゼ; EC 3. 4. 1 1. 2 ) が良 い。 さらに好ましくはブ夕腎臓のマイクロソーム由来の APMが良い。
2つのプロテアーゼによる消化は同一の 96穴プレート上で行うことが可能で あり、 そのまま吸光度又は蛍光強度を測定できることから、 大量のサンプルの測
定を迅速に行うことができる。 A P Mは N S 3プロテアーゼ消化後添加してもよ いが、 NS 3プロテアーゼと同時に添加しても良い。 前述の垣内らによるアツセ ィ法 (N. Kakiuchi et al., BBRC.,210, 1059-1065 (1995)) では、 酵素濃度、 基 質濃度がそれぞれ終濃度 80〃g/ml、 86〃Mとされているが、 本発明の M C A 基質では、 酵素濃度、 基質濃度はそれぞれ終濃度 10〜40〃g/ml、 1〜20〃 M で充分であり、 従来のアツセィ系に比してはるかに高感度である。 なお、 pN A基質の場合、 好適には 0. 2〜2 Μの濃度で使用することができる。 また、 M C A基質の場合、 好適には 1〜 100〃Mの濃度で使用することができる。
なお、 NS 3プロテア一ゼはそれ自身では基質切断活性が弱いため、 NS 4A 存在下でアツセィ系を構築することが望ましい。 本 ¾明者らは、 これまで酵素活 性を増強するために必要な NS 4 Aの配列は、 NS 4 Aの N末端から 22から 3 4番目に含まれることが示唆されていたため [ Failla et al.,J. Virol. ,68, 3753-3760(1994):に Lin et al., Virol. ,68, 8147-8157( 1994) :Y. Tanji et a l.,J. Virol. ,69,4017-4026(1995)] 、 この配列を含む 18から 40赉目のぺプ チド (LTTGSVVIVGR I I LSGRPAVVPD ;以後 「4A 18— 4 0」 と略称する) を合成し、 アツセィ系に添加したところ、 「4 A 1 8— 40」 を酵素と等モル以上添加した場合に、 N S 3プロテァ一ゼの基質切断活性が著し く増強されることを見い出した (比較例 1参照) 。 例えば、 「4 A 1 8— 40」 を酵素量の 2倍量添加した場合には、 反応速度は約 1 5倍に上昇した。 本発明者 らのこの知見によって、 少ない酵素量でも高感度でプロテアーゼの活性測定を行 うことが可能となった。
なお、 本明細書における化合物の略号は以下の意味である。
「Boc」 は三級ブトキシカルボニル (tert.Butoxycarbonyl) 、 「tBu」 は三級 ブチル (tert. Butyl) 、 「Clt」 はクロロトリチル (Chlorotrithyl) 、 「DCC」 は Ν,Ν,-ジシク口へキシルカルボジイミ ド (Ν,Ν' -Dicyclohexylcarbodiimide) 、 「DCM」 はジクロロメタン (dichloromethan) 、 「DIEA」 は Ν,Ν-ジイソプロピル
ェチルァミン (Ν,Ν-diisopropyl ethylamine) 、 「DMF」 はジメチルホルムアミ ド (Dimethylformamide) 、 「EDT」 はェ夕ンジチォ一ル (Ethanedithiol) 、 「F moc」 は 9-フルォレニルメ トキシカルボニル (9_F orenylmethoxycarbonyl) 、 「HBTU」 は 2- (1H-ベンゾトリァゾール-1-ィル)-1,1,3,3,-テトラメチルゥロニゥ ム へキサフルオロフォスフェート (2- (1H- Benzotriazole-卜 yl)- 1,1,3,3- tetra methyluronium hexaf luorophosphate; 、 「議 t」 は N -ヒ ドロキシベンゾトリア ゾール (N-Hydroxybenzotriazole) 、 「TFA」 はトリフルォロ酢酸 (Trifluoroac etic acid) 、 「TFE」 はトリフルォロエタノール (Trifluoroethanol) 、 「Trt」 はトリチル (Trityl) をそれぞれ表す。
また、 本明細書において、 アミノ酸の 1文字表記及び 3文字表記は、 I UPA C生化学命名委員会 (CBN) の規則に従ったもので、 例えば 「生化学辞典 (第 2版) 、 柬京化学同人、 1990年、 第 1468頁」 の記載が参照される。 図面の簡単な説明
図 1は、 4A 18— 40存在、 非存在下における NS 3プロテア一ゼによる 基質消化の経時的変化を示す である。
図 2は、 A PMの基質特異性を示す図である。
図 3は、 N 307— pNAの合成工程を示す。
図 4は、 N 307— MCAの合成工程を示す。
図 5は、 N 307— pN Aのマススぺクトロメ トリ一を示す図である。
図 6は、 N307— MCAのマススぺク トロメ トリーを示す図である。
図 7は、 N 307— pNAの基質消化の N S 3プロテア一ゼの濃度依存性を 示す図である。
図 8は、 N 307—MC Aの某質消化の絰時的変化を示す図である。 発明を実施するための最良の形態
本発明を以下、 実施例により説明するが、 本発明はこれら実施例に限定される ものではない。 なお、 特に記載しない限り、 本実験に使用したペプチドは島津製 作所 P S SM— 8型べプチド合成機を用いて該合成機のマニュアルに準じて合成 、 精製した。
[比較例 1 ] 4 A 18-40添加による NS 3プロテァーゼの活性増強効果 NS 3プロテア一ゼの発現方法は公知であるが、 以下の実施例では垣内ら (N.
Kakiuchi et al., B. B. R. , 210, 1059-1065 (1995)) の方法により NS 3 領域を MBP (Maltose binding protein) との融合タンパク質として発現させ たものを用いた (以下 「MBP— NS 3」 と呼ぶ) 。酵素反応液 (50mM Tris-HC 1(ρΗ7.6)、 30mM NaC 2mM DTT) に MBP— NS 3 (終濃度 2. 2〃M) を加え、 4 A 18-40 (終濃度 4. 4 酵素濃度の 2倍モル量) 存在下又は非 存在 下で全量 47. 5 1とした。 25 °Cで 30分間予加温後、 NS 5A/5B 配列 を模した 2 Omerのべプチド基: HI (GEAGDD IVPCSMSYTWTGAL) 2. 5〃1 (終濃度 100〃M) を加え、 37 Cで消化反応を行った。 反応の停止 は、 各時間ごとに 5M酢酸を 1〃1加えることにより行った。 反応停止後 の反応 液は逆相 HP L Cで分離を行い、 基質の消化率を酵素未消化時の基質のピーク面 積に対する減少率から求めた。
その結果、 4 A 18— 40存在下では、 非存在下に比べて、 反応速度が 15倍 に上昇した (図 1) 。 なお、 以下の実施例では NS 3プロテア一ゼ消化は全て 4 A 18 - 40存在下で行っている。
[参考例 1 ] HCVのNS 3プロテア一ゼ消化に必要な基質の最小単位の同定 NS 3プロテア一ゼ活性測定に使用する 2段階法用の好適な合成基質を設計す るために、 基質配列をどこまで短くできるかについて検討を行った。 HCVの N S 3プロテア一ゼの認識配列の 1つである N S 5 A/ 5 B間の配列を基に、 下記 表 1のペプチドの合成を行った。 なお、 N末側、 C末側の小文字で表したリジン およびァスパラギン酸は、 水溶性を増すために人為的に付加したものである。
酵素反応液 (50mM Tris-HCl(pH7.6), 30mM NaCl, 2mM DTT) に MBP— NS 3 (終濃度 2. 2〃M) 、 4 A 18 -40 (終濃度 4. 4〃M/酵素濃度の 2倍モル 量) を加え、 47. 5〃1とした。 25 °Cで 30分間予加温後、 以下に示すぺプ チド基質をそれぞれ 2. 5〃1 (終濃度 100 M) 加え、 3 14は25°(で3時 間、 それ以外は、 25°Cで 6時間消化反応を行った。 5M酢酸を 1〃1添加して、 反応を停止した。 反応停止後の反応液は、 逆相 HPLC (OD S 80 Tm/東ソ 一社製 /2. 1 5 x 30 cm) で分離して、 基質の消化率を酵素未消化時の基質 のビーク面積に対する減少率から求めた。
表 1 ぺプチドの配列 消化率 (%) dNS4+/dNS4-
PS GEAGDDIVPC- -SMSYTWTGAL (配列番¾ 2) 85/19
Dl EAGDDIVPC- -SMSYTWTGA (配列番号 3) 92/14
D2 AGDDIVPC- -S SYTWTG (配列番号 4) 75/8
D3 GDDIVPC- -SMSYTWT (配列番号 5) 59/nd
D4 GDDIVPC- -SMSYTW (配列番号 6) 44/4
CO kkGDDIVPC- -SMSYT (配列番号 7) 88/nd
CI kkGDD!VPC- -SMSY (配列番号 8) 89/7
C2G GDDIVPC- -SMS (配列番号 9) 22/2
Nl DDIVPC- SMSYkdk (配列番号 • 10) 62/5
N3 IVPC- -SMSYkdk (配列番号 11 ) 49/9
N3d VPC- -SMSYkd (配列番号 ' 12) 2/0
N3k IVPC- -SMSYk (配列番号 13) 6/2
N3Y IVPC- -SMSY (配列番号 14) 3/0
N3nk kDklVPC- -SMSY (配列番号 15) 85/8
314 kDklVPC- -SMSW (配列番号 16) 22/2 dNS4+ : 4A18-40存在下
dNS4- :4A18-40非存在下
nd:試験せず
[参考例 2 ] A PMの基質特異性
APMはシグマ (SIGMA)社より購入した (製品番号 L 0632) 。 A 1 a— pNA、 Ala-Al a-Phe-pNA, Arg— pNA、 Asp— pNA、 G 1 y-pNA, G 1 y-P h e -pNA, l i e— pNA、 Leu— pNA、 Met— pNA、 Phe— pNA、 V a 1— pNAはバヅケム (Bachem)社より 、 T y r— pNAはノババイオケム (NovaMochem) 社より購入した。 アミノ酸配 列 SMS YTWTGを有するベプチドは常法により P S SM— 8を用いて合成し た。
100 1の?83, 2mMDTT緩衝液中で各 ImMの上記基質と 0.05Uの APMを室 温で反応させ遊離する pNAの量 (405 nmの吸収) を絰時的に測定した (図 2) 。 Asp、 I 1 eおよび Va 1は APMで消化され難いが L e u、 Ala、 A r gは切れ易いことが示された。
また、 APMが表 1において 「D 2」 又は 「N3」 で示される基質を NS 3プ 口テアーゼ消化することにより生じる C末側断片 SMSYTWTG又は SMSY kdkを、 どの残基まで消化できるかを逆相 HPLCで分析したところ、 両者と も 1残基目から 3残基目まではほとんど消化され難いことが判明した。
[参考例 3 ] NS 3プロテア一ゼと APMの両者の基質特異性を満足するぺプ チド基質
下記の表 2に示すベプチドが、 NS 3プロテアーゼと APMの両者の基質特異 性を満足することを、 消化反応を 37°C3時間とした以外は、 参考例 1と同じ条 件で確認した。 即ち、 消化反応を 37°C3時問とした以外は参考例 1と同じ条件 で NS 3プロテアーゼ消化し、 消化率を調べた。 下線が引かれたアミノ酸は、 ァ ミノべプチダーゼの切断を受けやすいように、 天然型から改変されたアミノ酸で ある。 なお、 「N3nk」 は、 P l, 及び P3, 位に APMで切断を受けないセ リン ( S ) が配置されている比較対照例である。 「N3nk」 の Se rを Ala に置換した 「N301」 では、 AMA Yが APMで消化可能となったが、 NS3
プロテア一ゼでの消化率が低下した。 そこで更に基質配列の検討を行い、 「N3 07」 なる配列を使用すれば APMでの消化のされやすさを維持しながら N S 3 プロテア一ゼでの消化率が向上することが判明した。 また、 発色団又は蛍光団の 付加によりさらに NS 3プロテア一ゼでの消化率は向上した。
ベプチドの配列 消化率 (%)
N3nk kDklVPC-SMSY (配列番号 15) 40
N301 kDklVPC-AMAY (配列番号 17) 19
讓 kEDIVPC-SMSY (配列番号 18) 60
N303 kDklVPC-AMAL (配列番号 19) 21
N307 kEDVVPC-AMAL (配列番号 1) 41
N307-pNA kEDVVPC-AMAL-pNA (配列番号 1) 74
N307-MCA kEDVVPC-腿- MCA (配列番号 1) 67
[実施例] NS 3プロテアーゼ活性測定のための発色性および蛍光性合成基質 の製造
(I) KEDVVPCAMAL- A (N 307 -pNA) の合成 (図 3に示 す)
Fmo c-Ly s (Bo c) - Glu ( t Bu) -Asp ( t B u) — Val 一 Va l—Pro (断片 1) は、 P r o— 2 _ C 1 tレジンを用いて、 Fmo c -Cy s (t r t ) 一 Ala— Met— Ala (断片 2) は A 1 a— 2— C 1 t レジンを用いて常法により以下のように合成した。
1. レジンを DMFで膨潤させる。
2. 目的の f-mocアミノ酸 (20画 ol) を 20mlの D M Fに溶かす。
3. アミノ酸溶液に 40mlの DMFに溶解した 0.45Mの HB TU/HOB Tと 7mlの D I E Aを加えて 5分間撹拌する。
4. 3. の産物をレジンに加え 1時間撹拌する。
5. DMFでレジンを洗浄する。
6. 100mlの 20%ビべリジン (piperidine) を含む D M Fをレジンに加え 20分 間撹拌する。
7. 以上の操作を次に付加する f-mocアミノ酸を用いて繰り返す。
保護ぺプチドの切り出しは酢酸: TFE : DCM= 1 : 2 : 7の溶液で 1時間処 理することにより行った。 溶媒を留去後、 ェ一テルによりペプチドを沈殿させた
C y s ( t r t ) —Ala— Met— Ala— Leu— pNA (配列番号: 2 0) の合成は以下の通り行った。
1. 断片 2 (3.85g) 、 L e u-pNA · HC 1 (1.63g) 、 HOBT (0.65g) , D I E A (0.774ml) を 50mlの D M Fに溶かす。
2. DMFに溶かした lgの D CCを 0°Cで加える。
3. 室温で一晩撹拌した後、 ウレァをフィルターで除去する。
4. 溶媒を留去の後、 残査を 300mlの酢酸ェチルに懸濁する。
5. 0.5N HCK 5 NaHC03および飽和食塩水でそれそれ洗浄後、 機溶媒層を回収 し、 留去する。
6. 残査に 100mlの 20%ピぺリジンを含む DMF溶液を加え、 20分処理する。 7. 溶媒を留去の後、 エーテルによりペプチドを沈殿させる。
N 307一 pNAの合成は以下の通り行った。
1. 断片 1 (3g) と Cys ( t r t ) 一 Al a— Me t— Al a— Leu— pN A (2.1g) 、 HOBT (0.4g) を 40mlの D M Fに溶かす。
2. DMFに溶かしたlgのDCCを0°Cで加ぇる。
3. 室温で 6時間撹拌した後、 ウレァをフィルターで除去する。
4. 瀘液に 10mlのピペリジンを加える。
5. 20分処理後、 溶媒を留去の後、 エーテルによりペプチドを沈殿させる。
6. ペプチドを 40mlの切断溶液 (reagent K) に溶かし、 室温で 2時間処理する。
7. エーテルによりペプチドを沈殿させる。
(I I) N 307— MC Aの合成 (図 4に示す)
L e u-MC A · HC 1を用いて上記と同様の方法で行った。
(I I I) ぺプチドの合成と精製
ペプチドは、 逆相の HPLC (OD S— 80 Tm/東ソ一社製) により精製し た。 その際、 A液には 0.1%T F A含有水溶液、 B液には 0.1%T FA含冇ァセトニ トリルを使用し、 分離は Β液の直線勾配 (25〜60%) で行った。
(IV) 完成した合成基質の確認
1 ) マススぺク トロメ トリー
「エレク トロンスプレー (ES I) マススぺク トロメ トリ一」 により該基質の 分子量の確認を行った。 Ν 307— ρΝΑ (図 5) および N 307—MCA (図 6) ともに目的の分子量と一致した。
2 ) ァミノ酸組成分析
ビコ夕グヮ一クステーションおよびグラジェントシステム (共にゥォ一夕一ズ 社製) を用い、 ピコタグアミノ酸分析法により該基質のアミノ酸組成分析を行つ た。 カツコ内の値は合成基質中に含まれる数を示す。 「nd」 はデータが存在しな いことを示す。
表 3
N 307 - NA N 307 -MCA
Ala 1. 90 (2) 1. 91 (2)
A s x 0. 94 (1) 0. 94 (1)
Cy s nd nd
G 1 x 1. 00 (1) 0. 99 (1)
Leu 0. 97 (1) 0. 96 (1)
L y s 0. 93 (1) 0. 94 (1)
Met 0. 95 (1) 0. 95 (1)
Pro 1, 33 (1) 1. 30 ( 1)
Va 1 1. 79 (2) 1. 80 (2)
N 307一 pNA及び N 307— MCA共に、 アミノ酸配列から予想されるァ ミノ酸組成を有していた。
(V) N 307— pNA基質を用いた N S 3プロテアーゼの活性測定
反応は 96穴型プレート (マキシィムノブレート (Maxi immuno plate) /ヌ ンク社) を用いて行った。 PBS緩衝液 (2mM DTTを含む) に l〜12〃gの MB P— NS 3および 4 A 18— 40 (終濃度 44〃M) を加え、 99〃 1とした 。 25 aCで 30分間予加温後、 本発明の N 307— pNA (終濃度 500〃M) を加え、 37°Cで 3時間、 基質消化を行った。 1次反応終了後、 0. 05Uの A PMを添加し 55°Cで 1時間反応を行った (2次反応) 。 反応終了後 「サ一モマ ックス (THERMO max) マイクロプレート リーダ一 (モレキュラーデバイス (Mole cular Devices)社) 」 で 405 nmの吸光度を測定した。 NS 3プロテアーゼ
の酵素濃度 (図 7の横軸) に比例して基質消化が進んでいることが確認された ( 図 7) 。
(VI) N 307—MCA基質を用いた NS 3プロテアーゼの活性測定 (方法 1
)
反応は 96穴型プレート (Black Cliniplate Solid, Labsystems, フィンラン ド) を用いて行った。 PBS緩衝液 (2mMDTTを含む) に 4〃gの MBP— N S 3および 4 A 18— 40 (終濃度 22〃M) を加え、 99〃 1とした。 25 °C で 30分問予加温後、 本発明の N 307— MCA (終濃度 50〃M) を加え、 3 7 °Cで 3時問、 基質消化を行った。 1次反応終了後、 0. 05 Uの A P Mを添加 し 37 °Cで 2時間反応を行つた ( 2次反応) 。 反応終了後消化に伴う '虽光強度の 増加をフルォス夕一 (テカン社) を用いて励起波長 380 nm、 蛍光波長 460 nmで測定した。 ゲイン 50での測定で 1. 420の蛍光強度が観察された。
(VI I) N 307— MCA基質を用いた N S 3プロテア一ゼの活性測定 (方法 2)
反応は、 (VI) 同様、 96穴型プレートを用いて行った。 終濃度 20〃Mの N 307一 MC Aを含む PB S緩衝液 (2mM DTTを含む) に NS 3ANS4 Aを 0. 3〃gと 0. 05Uの APMを同時添加し、 全量 100〃 1とした。 N S 3 ΔΝ S 4 Aは、 N S 3のプロテアーゼドメイン (1027— 1215) と N S 3の C末部分を含む NS 4 A領域 ( 1651— 1711) を、 スぺーサ一配列 Ly s-L e uを介して融合させた、 組換え一本鎖活性型の N S 3プロテアーゼ である。 該プロテアーゼの発現べクタ一は、 上記アミノ酸配列をコードする HC V cDNAを P CR法を用いて切り出し、 H i nd I I I配列を介して連結させ た後、 大腸菌発現ベクター P E T 3 cの Nde I /B a mH I部位に挿入し作成 した。 タンパクの発現方法は、 F. W. Stud i erらの方法 (Methods in E nzymology 185, 60-89, 1990) 、 また、 発現した夕ンパクの精製は以下の文献を 参考に行った (F.A.O. Marston, DNA cloning vollll, pp59- 88 IRL Press, 198
7) 。 図 8に基質消化の経時変化を示す。 測定は、 M T P— 3 2蛍光プレートリ- ダー (Corona社製) を用いて励起波長 3 6 0 n m、 蛍光波長 4 5 0 n mで行った
産業上の利用の可能性
本発明の合成基質を用いて N S 3プロテア一ゼの活性測定を行うことによって 、 迅速、 簡便かつ高い選択性で、 N S 3プロテアーゼの活性測定を行うことがで きるようになり、 短時間で大量の化合物をアツセィするハイスループッ トスクリ 一二ング (High Throughput Screening) が可能となった。
配列表
配列番号: 1
配列の長さ : 11
配列の型:アミノ酸
トポロジー:直鎖状
配列の種類:ペプチド
配列
Lys Glu Asp Val Val Pro Cys Ala Met Ala Leu
1 5 10
配列の特徴
存在位置: 11
他の特徴: Leuは蛍光団又は発光団と結合していてもよい。 配列番号: 2
配列の長さ : 20
配列の型 : アミノ酸
トポロジー:直鎖状
配列の種類:ペプチド
配列
Gly Glu Ala Gly Asp Asp l ie Val Pro Cys Ser Met Ser Tyr Thr Trp
1 5 10 15
Thr Gly Ala Leu
20 配列番号: 3
配列の長さ : 18
配列の型:アミノ酸
トポロジー:直鎖状
配列の種類:ベプチド配列
Glu Ala Gly Asp Asp He Val Pro Cys Ser Met Ser Tyr Thr Trp Thr
1 5 10 15
Gly Ala 配列番号: 4
配列の長さ : 16
配列の型: アミノ酸
トポロジー:直鎖状
配列の種類:ペプチド
配列
Ala Gly Asp Asp l ie Val Pro Cys Ser Met Ser Tyr Thr Trp Thr Gly 1 5 10 15 配列番号: 5
配列の長さ : 14
配列の型:アミノ酸
トポロジー:直鎖状
配列の種類:ぺブチド
配列
Gly Asp Asp He Val Pro Cys Ser Met Ser Tyr Thr Trp Thr
1 5 10 配列番号: 6
配列の長さ : 13
配列の型: アミノ酸
トポロジー:直鎖状
配列の種類:ぺプチド
配列
Gly Asp Asp He Val Pro Cys Ser Met Ser Tyr Thr Trp 1 5 10 配列番号: 7 :
配列の長さ : 14
配列の型:アミノ酸
トポロジー:直鎖状
配列の種類:ベプチド
配列
Lys Lys Gly Asp Asp l ie Val Pro Cys Ser Met Ser Tyr Thr 1 5 10 配列番号: 8
配列の長さ : 13
配列の型:アミノ酸
トポロジー:直鎖状
配列の種類:ペプチド
配列
Lys Lys Gly Asp Asp l ie Val Pro Cys Ser Met Ser Tyr 1 5 10
配列番号: 9
配列の長さ 10
配列の型:アミノ酸
トポロジー:直鎖状
配列の種類:ペプチド
配列
Gly Asp Asp He Val Pro Cys Ser Met Ser
1 5 10 配列番号: 1 0
配列の長さ : 13
配列の型:アミノ酸
トポロジー:直鎖状
配列の種類:ペプチド
配列
Asp Asp l ie Val Pro Cys Ser Met Ser Tyr Lys Asp Lys 1 5 10 配列番号: 1 1
配列の長さ : 11
配列の型: アミノ酸
トポロジー:直鎖状
配列の種類:ベプチド
配列
l ie Val Pro Cys Ser Met Ser Tyr Lys Asp Lys
1 5 10
配列番号: 1 2
配列の長さ : 9
配列の型:アミノ酸
トポロジー:直鎖状
配列の種類:ペプチド
配列
Val Pro Cys Ser Met Ser Tyr Lys Asp 1 5 配列番号: 1 3
配列の長さ : 9
配列の型: アミノ酸
トポロジー:直鎖状
配列の種類:ぺプチド
配列
He Val Pro Cys Ser Met Ser Tyr Lys 1 5 配列番号: 1 4
配列の長さ : 8
配列の型:アミノ酸
トポロジー:直鎖状
配列の種類:ペプチド
配列
He Val Pro Cys Ser Met Ser Tyr
1 5 配列番号: 1 5
配列の長さ : 11
配列の型:アミノ酸
トポロジー:直鎖状
配列の種類:ペプチド
配列
Lys Asp Lys l ie Val Pro Cys Ser Met Ser Tyr 1 5 10 配列番号: 1 6
配列の長さ : 11
配列の型:アミノ酸
トポロジー:直鎖状
配列の種類:ベプチド
配列
Lys Asp Lys l ie Val Pro Cys Ser Met Ser Trp 1 5 10 配列番号: 1 7
配列の長さ : 11
配列の型: アミノ酸
トポロジー:直鎖状
配列の種類:ペプチド
配列
Lys Asp Lys He Val Pro Cys Ala Met Ala Tyr 1 5 10
配列番号: 1 8
配列の長さ : 11
配列の型:アミノ酸
トポロジー:直鎖状
配列の種類:ベプチド
配列
Lys Glu Asp l ie Val Pro Cys Ser Met Ser Tyr 1 5 10
配列番号: 1 9
配列の長さ : 11
配列の型:アミノ酸
トポロジー:直鎖状
配列の種類:ペプチド
配列
Lys Asp Lys He Val Pro Cys Ala Met Ala Leu 1 5 10
配列番号: 2 0
配列の長さ : 5
配列の型:アミノ酸
トポロジー :直鎖状
配列の種類:ぺプチド
配列
Cys Ala Met Ala Leu
1 5
配列の特徴
存在位置: 1
他の特徴: Cysはトリチル基と結合している < 配列の特徴
存在位置: 5
他の特徴: Leuは pNAと結合している。