細
W F 1 6 6 1 6物質、 その製法及び用途 産業上の利用分野
本発明は、 WF 1 6 6 1 6物質、 その製法及び用途に関するものである。 WF 1 6 6 1 6物質は、 微生物、 特に不完全菌の培養物から分離採取された従来未知 の新規物質であり、 すぐれた生理活性を示し、 ヒトゃ動物用の抗微生物剤、 特に 抗真菌剤、 抗ニューモシスチス 'カリニ肺炎薬等の微生物、 カビ、 その他真菌又 は原虫に起因する各種疾患の予防、 治療剤として有効である。
従来の技術
従来より各種の抗菌性物質が開発されてきたが、 有効性、 抗菌スペク トル、 安 全性、 製造コスト等の面からみて満足し得るものは少なく、 新規物質の開発が当 業界において強く要望されている。
発明が解決しょうとする課題
本発明は、 このような当業界における要望に応えるためになされたものであつ て、 新規にして卓越した生理活性物質を開発する目的でなされたものである。 課題を解決するための手段
上記目的を達成するために本発明者らは各方面から検討の結果、 微生物の発酵 生産物に着目し、 各種微生物のスクリーニングを鋭意実施した。 その結果、 長野 県高遠町で採取した土壌試料より新たに分離した No. 1 6 6 1 6株の培養物から の分離抽出物がすぐれた抗菌性、 特に抗真菌性を有するという新知見を得、 そし て更にこの物質についてその理化学的性質を詳細に研究したところ、 従来未知の 新規物質であることを確認してこの物質を新たに WF 1 6 6 1 6物質と命名し、 そして更に研究の結果、 この工業的製法を確立し、 本発明を完成するに至った。 図面の簡単な説明
図 1は WF 1 6 6 1 6物質の塩 (ナトリゥム塩、 力リゥム塩、 もしくはアンモ ニゥム塩、 又はこれらの混合物と思われる)の1 H核磁気共鳴スぺクトルを示すチ ヤー卜である。
図 2は WF 1 6 6 1 6物質の塩 (ナトリウム塩、 カリウム塩、 もしくはアンモ ニゥム塩、 又はこれらの混合物と思われる) の13 C核磁気共鳴スぺクトルを示す チャートである。
本発明に係る W F 1 6 6 1 6物質は、 後記する理化学的性質ならびにその他の 研究から、 その化学構造式は、 下記式 (1 ) に示されるとおりのものであること が判明した。
本発明に係る WF 1 6 6 1 6物質は、 例えば No. 1 6 6 1 6株によって生産さ れる。 No. 1 6 6 1 6株は、 長野県上伊那郡高遠町で採取した土壌試料から分離 した糸状菌である。 この微生物は各種培地上で抑制的に生育し、 黄味白色のコロ ニーをつくる。 また、 多くの培地上で 1 6 6 1 6株は、 輪生したフィアライドと 粘性のある分生子塊を伴った分生子柄、 アナモルフを形成した。 フィアライドは、 膨らんだ基部と細く伸びた頸部で構成される。 これらの形態的特徵から、 生産菌 は不完全糸状菌のー属 Tolypocladiura W. Gams (Gams, W. : Persoonia, 6: 185-1 91, 1971) に所属する事が明らかである。 以下にその菌学的性質を示す。
種々の寒天培地上の培養的性質を、 下記、 表 1、 表 2に要約した。 ポテトデキ ストロース寒天上の培養では抑制的に生育し、 2 5 °Cで 2週間培養後に直径 1 . 5 - 2 . 0 cmに拡がる。 このコロニーの表面は、 フェルト状から綿毛状で、 やや 隆起し、 コロニーの中心部と周縁部は白色から黄味白色で、 その中間或は灰味茶 色であった。 裏面はォリーブ味茶色と黄味白色であった。 分生子構造は豊富に観 察された。 コーンミール寒天上の集落も抑制的に生育し、 同一条件下で直径 1 . 5 - 2 . 0 cmに拡がる。 集落表面は平坦で、 薄く、 フェル卜状、 中心部がォリ一 ブ味灰色で周緣部は黄味白色であった。 裏面も表面と同じ色調であった。 分生子
は豊富に形成された。
No. 1 6 6 1 6株の培養的性質 ( 1 ) 培 地 培 養 的 性 質
麦芽抽出寒天 * 生育 抑制的、 直径 1. 5-2. 0cm
円形、 平坦、 フェルト状、 アナモルフを豊富 に形成、 集落中心部と周縁部は白色から薄い 黄色 (5A3)、 中間部はォリーブ味茶色 (4F4) 中心部はオリーブ色 (3F3) 、 周縁部はオレン ジ味白色 (5A2)
ポテトデキストロ一ス 生育 抑制的、 直径 1. 5-2. 0cm
寒天 (Difco 0013) 円形、 フェルト状から綿毛状、 やや盛り上が る、 アナモルフを豊富に形成、 中心部と周縁 部は白色から黄味白色 (4A3)、 中間部は灰味 茶色 (5F3)
中心部はオリ一プ味茶色 (4F3)、 周緣部は黄 味白色 (4A2)
ッァぺック寒天 * 生育 抑制的、 直径 2. 0- 2. 5cm
円形、 綿毛状、 アナモルフを豊富に形成、 白 色
白色から黄味白色 (3A2)
サブ口一デキストロース 生育 抑制的、 直径 1. 0-2. 0cm
寒天 (Difco 0190) 円形、 綿毛状、 盛り上がり、 豊富にアナモル フを形成し、 中心部は灰味茶色(7E3) 、 周縁 部は黄味灰色 (4B2)から薄いオレンジ色(5A3) で、 薄いオレンジ色の可溶性色素を産生する。 オリ一ブ味茶色 (4F4)または薄いオレンジ色
表 2
No. 1 6 6 1 6株の培養的性質 (2 ) 培 地 培 養 的 性 質
p ¾ s寒ズ 生育 抑制的、 直径 2. 0-2. 5cm
(Difco 0739) 円形、 平坦、 フェルト状から綿毛状、 アナモ ルフを豊富に形成する、 白色から薄いオレン ジ色 (4A3)
薄いオレンジ色(4A3)
コ一ンミ一ノレ寒天 生育 抑制的、 直径 1. 5-2. Ocm
(Difco 0386) 円形、 平坦、 薄く、 フェルト状、 アナモルフ を豊富に形成する、 中心部はオリープ味灰色
(2F3) で、 周緣部は黄味白色(3 A2) 中心部はオリーブ灰味茶色 (2F2)、 周緣部は 黄味白色 (3A2)
MY 2 0寒天ネ 生育 非常に抑制的、 直径 0. 5-1. 0cm
表面 円形、 盛り上がり、 フェル卜状、 アナモルフ を形成し、 白色から黄味灰色 (4B2)、 中心部は黄味茶色 (5F4)、 周緣部は明るいォ レンジ色 (5A4) 上記した培養的性質において、 アスタリスク記号を付した麦芽抽出寒天、 ッァ ペック寒天、 MY 2 0寒天の組成は、 J CMカタログ (Nakase, T., 5th ed. , δ 03ρ. , Japan Collection of Microorganisms and Life Science Research Infor mat ion Section of the Institute of Physical and Chemical Research, Saita raa, 1992) に従った。
これらの特徴は、 接種して 2 5 °Cで 1 4日間培養後に観察した。 色調の記載は Methuen Handbook of Colour (Kornerup, A. and J. H. Wanscher, 3re ed., 52o pp. , Methuen, London, 1978) に基づいて行った。
形態的特徴は、 三浦培地 (Miura, K. and M. Kudo : Trans. Mycol . So Jap
an, 11: 116-118, 1970)上の培養に基づいて決定した。 分生子柄は明瞭またはや や不明瞭に分化し、 単生、 無色から茶色、 滑面で、 培地表面から直接立ち上がる 、 気菌糸から短い分枝として分化する。 分生子抦は分枝しないか僅かに分枝し、 フィアライドを単生又は輪生する。 フィアライドは無色、 滑面で、 楕円形に膨ら んだ基部と細く伸びた円筒形の頸部からなるフラスコ形である。 基部の大きさは 5 - 8 (— 1 0 ) X 2 - 3 ^ m, 頸部は 2 . 5 - 5 (一 6 ) X I— 1 . 5 で ある。 連続して形成される分生子は粘塊を作るが、 時には鎖状にもなる。 無色、 滑面、 1細胞、 球形から亜球形で 3— 4 X 2 . 5— 3 /z mの大きさである。 栄養 菌糸は、 滑面、 隔壁を持ち、 分枝し、 暗い茶色から薄い茶色で分枝する。 菌糸細 胞は、 円筒形、 幅 1 . 0— 3 . 0 mである。 厚膜胞子は観察されないが、 時に 単一のフィァ口型分生子がフィアライドの先端に形成される事がある。
No. 1 6 6 1 6株は 3〜 3 0 °Cで生育可能で生育最適温度は 1 6 ~ 2 2。Cであ る。 これらのデータはポテトデキストロース寒天 (ニッスィ) 上で決定した。 これらの菌学的性質を検討した結果、 Tolypocladium属菌の分類体系 (Bissett, J. : Can, J, Bot. , 61 : 1311-1329, 1983) に従えば、 No. 1 6 6 1 6株は To lypocladium parasiticum Barron 1980に類似している。 この菌種 ^Barron によ つて最初に水辺の土中に生息するヮムシの寄生菌として記載されたが、 純粋培養 条件でも生育が可能である。 No. 1 6 6 1 6株と T. parasiticumは厚膜胞子の形 成に関してのみ異なっていて、 T. parasiticumが培地上でもヮムシ上でも厚膜胞 子を形成するのに対して、 No. 1 6 6 1 6株は時々厚膜胞子に似た単独のフィァ 口型分生子をフィアライドの先端に形成するだけであった。 その他の特徴に関し ては No. 1 6 6 1 6株と T. parasiticumとは一致していた。 従って No. 1 6 6 1 6株は T. parasiticumの 1菌株と同定された。 本菌株は工業技術院生命工学工業 技術研究所に寄託番号 F E RM B P— 5 5 5 3 (原寄託日平成 7年 5月 2 5日) として寄託されている。
W F 1 6 6 1 6物質の生産は、 単に説明を目的として挙げただけの本明細書記 载の特定の微生物の使用に限定されるものではないことを理解するべきである。 この発明は、 記載の微生物から X線照射、 紫外線照射、 N—メチルー N ' —ニト ロー N—二トロソグァ二ジン、 2—ァミノプリン等の変異処理により取得できる
人工変異株並びに自然変異株を含めて WF 1 6 6 1 6物質を生産しうる全ての変 異株の使用をも包含するものである。
本発明に係る WF 1 6 6 1 6物質は、 糸状菌に属する該物質生産菌 (例えば No. 1 6 6 1 6株) を資化しうる炭素及び窒素源を含む栄養培地中に接種し、 好気条 件下で培養することにより (例えば、 振とう培養、 通気攪拌培養等) 、 生産せし めることができる。
炭素源としては、 グルコース、 シユークロース、 澱粉、 変性澱粉、 フラクトー ス、 グリセリンその他の炭水化物を使用するのが好ましい。
窒素源としては、 オートミール、 酵母エキス、 ペプトン、 ダルテンミール、 綿 実粉、 綿実油粕、 大豆粉、 コーンスティープリカ一、 乾燥酵母、 小麦胚芽、 落花 生粉、 チキン骨肉ミール等を使用するのが好ましいが、 アンモニゥム塩 (例えば、 硝酸アンモニゥム、 硫酸アンモニゥム、 リン酸アンモニゥム等)、 尿素、 ァミノ 酸等の無機及び有機の窒素化合物も有利に使用することができる。
これらの炭素源及び窒素源は、 併用するのが有利であるが、 純粋なものを必ら ずしも使用する必要はない。 不純なものには生長因子や微量要素が含まれている 場合などもあり、 有利な場合があるからである。
必要ある場合には、 例えば次のような無機塩類を培地に添加してもよい;炭酸 ナトリウム、 炭酸カリウム、 リン酸ナトリウム、 リン酸カリウム、 塩化ナトリウ ム、 塩化カリウム、 ヨウ化ナトリウム、 ヨウ化カリウム、 マグネシウム塩、 銅塩、 コノ^レ卜塩等。
特に、 培地が強く発泡するのであれば、 必要に応じて、 液体パラフィン、 動物 油、 植物油、 鉱物油、 シリコン等を添加してもよい。
目的物質を大量に工業生産するには、 他の発酵生産物の場合と同様に、 通気攪 拌培養するのが好ましい。 少量生産の場合は、 フラスコを用いる振とう培養が好 i である。
また、 培養を大きなタンクで行う場合、 WF 1 6 6 1 6物質の生産工程におい て菌の生産遅延を防止するため、 はじめに比較的少量の培地に生産菌を接種培養 した後、 次に培養物を大きなタンクに移してそこで生産培養するのが好ましい。 この場合、 前培養に使用する培地及び生産培養に使用する培地の組成は、 両者と
もに同一であってもよいし必要あれば両者を変えてもよい。
培養は通気授拌条件で行うのが好ましく、 例えばプロペラやその他機械による 攪拌、 フアーメンターの回転または振とう、 ポンプ処理、 空気の吹込み等既知の 方法が適宜使用される。 通気用の空気は滅菌したものを用いる。
培養温度は、 WF 1 6 6 1 6物質生産菌が本物質を生産する範囲内で適宜変更 しうるが、 通常は 9〜3 9 °C、 好ましくは 2 3〜3 0 °Cで培養するのがよい。 培 養時間は、 培養条件や培養量によっても異なるが通常は約 1日〜 2週間である。 発酵終了後、 培養物から目的とする WF 1 6 6 1 6物質を回収する。 すなわち、 菌体 (又は菌体を含有する培養物) は、 直接水及びノ又は有機溶媒による抽出、 あるいは、 これを機械的に又は超音波等既知の手段を用いて破壊した後、 水及び 又は有機溶媒で抽出した後、 常法にしたがって回収、 精製する。 培養液の場合 は、 直接、 常法にしたがって回収、 精製すればよい。
回収、 精製方法としては、 例えば、 水、 有機溶媒、 これらの混合溶媒による溶 媒抽出; クロマトグラフィー;単一溶媒又は混合溶媒からの再結晶等常法が適宜 単独であるいは組合わせて使用できる。
WF 1 6 6 1 6物質の回収、 精製は上記のような既知の方法を適宜利用して行 うが、 例えば次のようにしてもよい。 培養物をアセトンで抽出し、 さらにイオン 交換樹脂処理、 シリカゲル処理した後、 クロマトグラフィーで精製する。 必要あ れば更に精製工程をくり返して行い、 最終的に乾燥粉末を得ることができる。 このようにして得られた WF 1 6 6 1 6物質の理化学的性質は、 下記の表 3、 表 4、 表 5に示すとおりである。
表 3
W F 1 6 6 1 6物質の塩 (ナトリウム塩、 カリウム塩もしくはアンモニゥム 塩、 又はこれらの混合物であると思われる) の理化学的性質 (1 )
( 1 ) 物質の色及び状態
白色粉末
( 2 ) 分子式
C 51 H82N8021 S (遊離酸として)
( 3 ) 分子量
FAB-MS ra/z 1291 (M+2Na-H)
(4) 分解点
210〜215°C (分解)
(5) 比旋光度
〔ひ〕 g3 : — 20° (c=1.0;メタノール)
(6) 紫外線吸収スぺク トル
λ 0·°1Ν
max 議: 245, 290
'
表 4
WF 16616物質の理化学的性質 (2)
(7) 赤外線吸収スぺク トル
vj? ·' 3350, 2959, 2926, 2856, 1670, 1629, 1534, 1442, 1402, 1273, 1148, 1048, 969, 946, 885, 805 αιΓ1
(8) 溶剤に対する溶解性
易溶:メタノール
難溶 ··酢酸ェチル、 アセトン
不、溶: ク口口ホノレム
(9) 呈色反応
陽性: ニンヒドリン反応、 硫酸セリゥム反応、 沃素蒸気反応 陰性:塩化第二鉄反応、 モ一リッシュ反応、 エールリツヒ反応
(10) 物質の酸、 塩基性の区分
酸性物質
表 5
WF 16616物質の理化学的性質 (3)
(11) iH核磁共鳴スぺク トル (500MHz, CD30D)
δΗ : 7.3K1H, d, J=2Hz), 7·02(1Η, dd, J=2 and 8Hz),
6.86(1H, d J=SHz), 5.24(1H, d, J=3Hz),
5.06(1H, d, J=4Hz), 4.94 (1H, d J=3Hz),
4.59〜4.48(3H, m), 4.47〜4.34(5H, m),
4.28(1H, dd, J=2 and 6Hz), 4.16(1H, m),
4.07(1H, m), 3.98〜3.89(2H, m), 3.75(1H, d J=llHz), 3.35(1H, t J=10Hz), 2.76(1H, dd J=4 and 5Hz),
2.51(1H, m), 2.45(1H, dd, J=8 and 16Hz),
2.39(1H, dd, J=7 and 16Hz), 2.21(2H, t, J=7Hz),
2.03〜1.94(3H, m), 1.57(2H, m), 1.50〜: 1.38 (2H, m),
1.37〜1.20(12H, m), 1.17(3H d, J=6Hz),
1.12〜1.04(3H, m), 1.05(3H, d, J=7Hz), 0.90(1H, m), 0.87(3H, t, J=7Hz), 0.85(3H, d, J=6Hz),
0.84(3H, d, J=6Hz)。
チャートを図 1に示す。
(12) 13C核磁共嗚スペク トル (125MHz, CD30D)
6 c: 176.9(s), 175.8(s), 174.4(s), 173.5(s), 172.7(s),
172.6(s), 172.5(s), 169.3(s), 150.3(s), 141. l(s),
134.5(s), 125.6(d), 123.2(d), 118.2(d), 76.4(d),
75.7(d), 75.5(d), 74.2(d), 71.3(d), 70.7(d), 70.6(d), 70.1(d), 68.2(d), 62.4(d), 58.4(d), 57.1(t, CH2),
56.9(d), 55.5(d), 53.0(t, CH2), 51.4(d), 45.9(t, CH2), 39.6 (t, CH2), 39.1(d), 38.4(t, CH2), 38. l(t, CH2),
36.7 (t, CH2), 34.9 (t, CH2), 32.9(d), 31.2(d),
31.1(t, CH2), 30.7(t, CH2), 30.6(t, CH2), 30.3 (t, CH2),
30.3(t, CH2), 28.0(t, CH2), 27.0(t, CH2), 20.7 (q),
20.2(q), 19.8(q), 11.6(q), ll.l(q)。
チヤ一トを図 2に示す。
本発明に係る WF 1 66 1 6物質は、 後記するところからも明らかなように、 すぐれた生理活性、 特に抗真菌作用又は抗原虫作用を有していることが確認され、 且つ低毒性で安全性も高いことも確認され、 抗真菌剤又は抗原虫剤として非常に
有効である。
したがって本発明に係る物質は、 医薬の有効成分として使用することができ、 このような医薬も本発明に包含されるものである。 本発明に係る薬剤組成物は、
WF 16616物質及び/又はその塩を有効成分としてこれに常用される無機又 は有機の担体を加えて、 固体、 半固体又は液体の形で、 経口投与剤のほか、 外用 剤等の非経口投与剤に製剤化する。
経口投与のための製剤としては、 錠剤、 丸剤、 顆粒剤、 軟'硬カプセル剤、 散 剤、 細粒剤、 粉剤、 乳濁剤、 懸濁剤、 シロップ剤、 ペレッ ト剤、 エリキシル剤等 が挙げられる。 非経口投与のための製剤としては、 注射剤、 点滴剤、 輸液、 軟膏、 ローション、 トニック、 スプレー、 懸濁剤、 油剤、 乳剤、 坐剤等が挙げられる。 本発明の有効成分を製剤化するには、 常法にしたがえばよく、 界面活性剤、 賦形 剤、 着色料、 着香料、 保存料、 安定剤、 緩衝剤、 懸濁剤、 等張剤その他常用され る佐薬を適宜使用する。
本発明に係る薬剤組成物の投与量は、 その種類、 治療ないし予防対象疾病の種 類、 投与方法、 患者の年令、 患者の症状、 処理時間等によって相違するが、 静脈 投与の場合は成人ひとり当り 1日に有効成分 (WF 16616物質またはノおよ びその塩) を 0. 01〜: L 000mgZkg、 好ましくは 0. 1〜 100 ingZkg投与 し、 筋肉投与の場合は同じく 0. 01〜100 OmgZkg 好ましくは 0. 1〜1 O OmgZkg投与し、 経口投与の場合は 0. 5〜2000ragZkg、 好ましくは 1〜 100 OmgZkgの範囲内で投与する。
以下、 本発明を実施例について更に詳しく説明する。
実施例 1 : WF 16616物質の発酵生産
(1) 培養
グリセロール (2%) 、 シユークロース (2%) 、 綿実粉 (2%) 、 乾燥酵母 (1%) 、 ポリペプトン (1%) 、 KH2P04 (0. 1%) 、 Twe e n 80 (0. 1%) の組成からなる水性種培地を、 500ml容エルレンマイヤ一フラス コ 3本にそれぞれ 160mlずつ加え、 120°Cで 30分間滅菌した。 上記した減 菌済み培地に、 Y p S s寒天培地において 25 °Cで 2週間培養して充分に成長し た No.16616株の斜面培養物を 1白金耳ずつ接種し、 口一タリ一シェ一力一
を用いて(220rpm、 5. lcmストローク)、 25°Cで 1週間振とう培養した。 コーンスターチ(2%) グルコース(1%) 、 綿実粉(1%) 、 大豆粉(0. 5 %) 、 乾燥酵母 (0. 5%) の組成からなる水性生産用培地を 30L容ステンレ ス製のジャーフアーメンターに入れ、 120°Cで 30分間滅菌した。
先に得た種培養物を上記した滅菌済み生産用培地 20 Lに接種し、 20 L Z分 で通気し、 20 Orpmで攪拌しながら、 25° で 6日間発酵を継続した。
(2) 分離精製
培養終了後、 培養物 (15L) に等量のアセトンを加え、 2時間室温にて抽出 を行った。 混合物にけい藻土を加え、 ろ過した。 得られたろ液を滅圧下アセトン を除去して濃縮した。 濃 H2S04を加えて pHを 3. 95に調整した後、 高分子 吸着体ダイヤイオン HP— 20 (三菱化学株式会社製、 0. 75 L) に吸着せ しめた。 カラムを、 水、 50 %水性メタノールで洗浄した後、 メタノール及びァ セトンで溶出した。
溶出液 (3. 75 L) を滅圧下で蒸発乾固せしめた。 得られた乾燥物を少量の メタノールに溶解し、 これにシリカゲル (Kiesel gel 60、 E. Merok社製、 100 ml) を加えてスラリー化した。 メタノールを除去し、 その結果残留した乾燥粉末 を上記と同じシリカゲルのカラム (200ml) にアプライした。 カラムを、 酢酸 ェチル、 アセトン及びアセトン一メタノール混液で展開した。 アセトンーメタノ —ル混液 (10 : 1及び 1 : 1) で溶出された活性フラクション (200ml) を、 滅圧下で濃縮乾固した。
得られた残渣を 50%水性メタノール (200nd) に溶かし、 YMC— g e l (OD S-AM, 120- S 50, YMC社製、 3 δ Oral) クロマトグラフィー に付した。 カラムを、 50 %及び 60 %水性メタノ一ルで洗い、 そして 70 %水 性メタノールで溶出した。 活性物質を含むフラクション (500ml) を合し、 滅 圧濃縮して水性メタノール溶液 16 Oralを得た。
この溶液を、 分取 HPLC、 YMC充填カラム (ODS— AM, SH- 343 - 5 AM, S— 5, 250 20醒 :[.(1.) に付し、 そして、 0. 5%NH4H2 P04含有 45%水性ァセトニトリルを用い、 流速 16ral/minで展開した。 活性 フラクション (10 Oral) を集め、 水で 2倍に希釈した。 この溶液を、 YMC充
填カラム(〇DS— AM, SH-343 - 5 AM, S-δ, 250 X 20mm i.d.) に付した。 カラムを 50 %水性メタノールで洗い、 次いで 60 %水性メタノール を用いて上記と同じ流速で溶出した。 溶出液 (10 Oral) を減圧濃縮した後凍結 乾燥して、 WF 16616物質の塩 (ナトリウム塩、 カリウム塩もしくはアンモ ニゥム塩、 又はこれらの混合物と思われる) の白色粉末 (46. 6mg) を得た。 実施例 2 : WF 16616物質の生物学的性質
( 1 ) 抗真菌活性
本物質の抗真菌活性は、 96—穴のマイクロタイタ一プレートを用いたマイク ロブロス希釈分析法により、 0. 5%グルコース含有イーストナイトロジェンべ —ス (YNBD) 培地中で測定した。 本物質をメタノール中に溶解し、 マイクロ タイタープレート內で YNBD培地を用いて順次 2倍希积した。
各ゥエル当り、 100 /i l中 1 X 104cfu/wellとなるように、 試験微生物を 接種し 7こ。 ¾プレート^、 Candida albicans及び Aspergillus furaigatus につレヽ ては、 37°Cで 22時間インキュべ一トし、 Cryptococcus neoformans について は、 30°Cで 48時間インキュベートし、 次いで、 顕微鏡観察によって MI Cを 測定した。 得られた結果を下記表 6に示したが、 その結果から明らかなように本 物質の卓越した抗真菌活性が確認された。
表 6
— MI C( gZral)
Candida albicans No.7 0.78
Candida albicans FP633 0.10
Aspergillus fumigatus FD050 0.16
Cryptococcus neoformans YC203 〉50
(2) 毒性試験
生後 5週令の I CR系雌マウス 5匹に WF 16616物質を 5mg/kgの投与量 で毎日 1回、 3日間連続腹腔内注射したが死亡例はなく、 体重増加も無投与マゥ ス群と全く同じであり、 WF 16616物質の安全性の高さが確認された。
実施例 3 :注射剤の製造
(1) 実施例 1で製造した WF 16616物質 5 g
( 2 ) 食塩 9 g
(3) 炭酸水素ナトリウム 1 g
(1) 〜 (3) の全成分を蒸留水 100mlに溶解した後、 アンプルに lralずつ 分注して、 注射剤 100本を製造した。
発明の効果
本発明は、 WF 16616物質を提供するものであるが、 この物質は従来未知 の新規物質であって、 すぐれた生理活性を有し、 抗微生物剤、 特に抗真菌剤、 抗 二ユウモシスチス ·力リ二肺炎薬等として各種の医薬品に利用することができる。
規則第 13規則の 2の寄託された微生物への言及
1. Tolypocladium paras iticum No.16616
ィ 当該微生物を寄託した寄託機関の名称及びあて名
名 称 通商産業省工業技術院生命工学工業技術研究所 あて名 〒350 日本国茨城県つくば市東 1丁目 1番 3号 ィの寄託機関に寄託した日付
平成 7年 (1995年) 5月 25日
ノヽ ィの寄託機関が寄託について付した受託番号
FERM BP— 5553