JPWO2002099110A1 - 細胞周期調節因子 - Google Patents
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Abstract
本発明は、(i)配列番号:1に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質又は、(ii)配列番号:1に記載のアミノ酸配列において1若しくは複数のアミノ酸が置換、欠失、挿入および/もしくは付加したアミノ酸配列からなり、かつキナーゼ活性を有するタンパク質、及び、(i)配列番号:2に記載の塩基配列からなるDNA又は(ii)配列番号:2に記載の塩基配列からなるDNAとハイブリダイズし、かつキナーゼ活性を有するタンパク質をコードする哺乳動物由来のDNAを含む遺伝子を提供する。
Description
技 術 分 野
本発明は、細胞周期の調節に関与する哺乳動物由来のタンパク質およびその遺伝子に関する。より詳しくは、酵母の細胞増殖調節因子であるCdr1/Nim1及びCdr2と相同性を有する新規な細胞周期の調節に関与する蛋白質ヒトCdr2(Changed division response 2)をコードする遺伝子、該遺伝子を含有する組換えベクター、該ベクターによる形質転換体、該遺伝子を用いるヒトCdr2(hCdr2)の製造方法、該製造方法によって得られる組換えヒトCdr2に関する。
背 景 技 術
細胞の分裂、増殖には、遺伝子複製、有糸分裂等の過程が存在し、細胞周期が形成されている。正常な真核生物の細胞周期は、細胞の形態および生化学的活性の違いに応じて4つの段階(順番に、G1、S、G2、M)に分けられ、また細胞周期から離説した細胞をG0期、または非周期状態にあるという。細胞周期にある細胞が活発に複製しているとき、DNA複製はS期に起こり、細胞分裂はM期に起こる。細胞周期の進展は細胞周期チェックポイント(cell cycle checkpoint)により厳密に制御されており、例えば、DNAが損傷した場合には、修復されるまで有糸分裂は停止する(Science 274,1664−1672,1996;Science 246,629−634,1989)。多くの場合、DNA損傷反応経路は、サイクリン依存型キナーゼの活性を阻害することによって細胞周期停止をもたらす。ヒトの細胞の中ではDNA損傷によって起こるG2期の遅延はCdc2の阻害的なリン酸化に大きく依存している(Mol.Cell Biol.,8:1−11,1997;J.Cell Biol.,134,963−970,1996)ことから、この遅延は、Cdc2に作用する対抗キナーゼおよびCdc2に作用するホスファターゼの活性の変化から生じる可能性が高い。しかし、これらの酵素の活性がDNA損傷に応答して実質的に変化することの証拠はない(Cancer Res.,57:5168−5178,1997)。
ヒト細胞の中では、3種類のCdc25タンパク質が発現している。Cdc25Aは、G1期からS期に移行するのに特に必要である(EMBO.J.,13:4302−4310,1994;EMBO.J.,13:1549−1556,1994)が、Cdc25BとCdc25Cは、G2期からM期に移行するのに必要とされる(J.Cell Sci.,7:1081−1093,1996;Cell,67:1181−1194,1991;Proc.Natl.Acad.Sci Acd.USA,88:10500−10504,1991;J.Cell Biol.,138:1105−1116,1997)。M期の進行に対するCdc25BとCdc25Cの正確な関与は解っていない。
近年、細胞周期チェックポイントにおいて重要な役割を果たすと考えられる細胞周期調節因子が明らかになってきた(Science 277,1450,1997;Cell 91,865,1997)。例えば、パン酵母のサッカロミセス・セレビジエ(Saccharomyces cerevisiae)を用いた研究により、細胞周期調節因子としてキナーゼ活性を有するscCds1(Rad53,Chk2とも呼ばれる)が同定され(Genes & Development 8,2401,1994;Genes & Development,10,395,1996)、さらに、分裂酵母のシゾサッカロミセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)においてもscCds1の相同分子spCds1が同定され(Nature 374,817,1995;Genes & development 12,382,1998)、細胞周期調節因子の機能が徐々に明らかになってきた。
このメカニズムは、DNA傷害により細胞周期進行にかかわる因子の不活化シグナルが伝達されることによると考えられる。現在までに分かっているシグナル伝達機構は、DNA傷害によりATM(毛細血管拡張性運動失調症変異)キナーゼ等が活性化され、さらにChk1、Chk2といった分子がリン酸化により活性化され、G2停止においては、Chk1、Chk2が脱リン酸化酵素Cdc25CのSerine216のリン酸化を促し、14−3−3蛋白が結合して、Cdc25Cの核内移行を阻害する。Cdc25Cは、M期移行を司る核内酵素Cdc2キナーゼを活性化する酵素であり、結果としてCdc2の活性化が抑制されるため、G2停止が起こると考えられている。また、最近では、Chk2はp53癌抑制遺伝子蛋白の活性化を促し、転写因子であるp53は、サイクリン依存性キナーゼの阻害因子であるp21waf−1の発現を誘導することにより、G1期停止を促すことも報告されている。
このp53は、GADD45等G2停止にも関係する因子の発現も制御することも示唆されている。これらのことより、Chk1、Chk2等のキナーゼは、様々な因子の活性を制御し、DNA傷害時の細胞周期停止に関わっているものと推察される。
細胞周期の停止機構は、DNA傷害の修復時間を稼ぐ機構をして重要であり、特に癌治療においては、このような修復機構により癌細胞が放射線或いは抗がん剤による傷害から逃れているものと考えられる。従って、このチェックポイント機構を破壊すれば、癌細胞に対する放射線や抗がん剤の効果を高めることができると考えられる。
発 明 の 開 示
本発明は、spCdr1/Nim1やspCdr2と相同性を有する哺乳類由来の遺伝子及びそのタンパク質を提供することを主な目的とする。
本発明者らは、Chk2の機能を解析している過程で発見した新しい酵素が、細胞の増殖に関与し、癌やリウマチなどの様々な増殖性疾患の診断や治療のための新たな医薬品の開発の重要なツールとして利用しうることを見出し、本発明を完成するに至った。
具体的には、本発明者等は、ヒトの細胞周期調節因子であるChk2の機能を解析するため、Chk2に対するウサギポリクローナル抗体を作製した。該ポリクローナル抗体を用いたウェスタンブロッテイングにより各種のDNA傷害によるChk2のリン酸化を解析する過程で、該ポリクローナル抗体が交叉反応するタンパク質の一つが、DNA傷害によりリン酸化されることを見出した。
DNA傷害によりリン酸化状態が変化する蛋白は、DNA傷害に対応するための細胞内反応へのシグナルの伝達に関わることが予想される。このため、該抗体に反応する蛋白の遺伝子をクローニングし、その機能の解析を行った。具体的には、ラムダファージのヒトcDNA発現ライブラリーを用いて該抗体により検出される遺伝子クローンを選別し、その遺伝子配列を決定した結果、酵母Cdr2に相同性を有するヒトCdr2の遺伝子全長を単離することに成功した。酵母のCdr2はCdc2の不活化酵素であるWee1キナーゼをリン酸化することによって、Cdc2が不活化されることを阻害する。従って、Cdr2が不活化されると、結果として活性型のWee1により、Cdc2が不活化され、G2停止が誘導される。これに対し、本発明のタンパク質hCdr2は、S期を中心に発現し、Chk1、Chk2と同様に、Cdc25をリン酸化しうるプロテインキナーゼであることが明らかになった。
従って、本発明のタンパク質は、細胞周期の調節に関与していると考えられ、癌などの増殖性疾患の診断や治療のための新たな医薬品の開発の重要なツールとして利用しうる。特に、本発明のタンパク質の活性や発現を阻害する化合物には抗癌剤への応用が期待される。
本発明は、細胞周期の調節に関係する新規な哺乳動物由来のキナーゼタンパク質およびその遺伝子、これらタンパク質および遺伝子の検出、単離、製造などに用いられる分子、並びに該タンパク質の活性を調節する化合物のスクリーニングなどに関し、本発明は、spCdr1/Nim1やspCdr2と相同性を有する哺乳類由来の遺伝子、及びそのタンパク質を提供する。また、本発明は、該タンパク質の製造などに利用されるベクター、形質転換細胞、および組換えタンパク質の製造方法を提供する。また本発明は、該遺伝子の検出や単離などに利用されるオリゴヌクレオチド、および該タンパク質の検出や精製などに利用される抗体を提供する。
さらに、本発明は、該タンパク質に結合する化合物および該タンパク質の活性を促進若しくは阻害する化合物をスクリーニングする方法を提供する。即ち、本発明は、以下の発明を提供するものである。
項1. 以下の(i)又は(ii)のタンパク質。
(i)配列番号:1に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質;
(ii)配列番号:1に記載のアミノ酸配列において1若しくは複数のアミノ酸が置換、欠失、挿入および/もしくは付加したアミノ酸配列からなり、かつキナーゼ活性を有するタンパク質。
項2. 配列番号:2に記載の塩基配列からなるDNAとハイブリダイズする哺乳動物由来のDNAがコードするタンパク質であって、かつキナーゼ活性を有するタンパク質。
項3. Cdc25のリン酸化作用を有する項1又は2に記載のタンパク質。
項4. Cdc25Cのセリン216のリン酸化作用を有する項1又は2に記載のタンパク質。
項5. Cdc25Bのセリン309のリン酸化作用を有する項1又は2に記載のタンパク質。
項6. 以下の(i)又は(ii)のタンパク質をコードする遺伝子。
(i)配列番号:1に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質;
(ii)配列番号:1に記載のアミノ酸配列において1若しくは複数のアミノ酸が置換、欠失、挿入および/もしくは付加したアミノ酸配列からなり、かつキナーゼ活性を有するタンパク質。
項7. 以下の(i)又は(ii)のDNAを含む遺伝子。
(i)配列番号:2に記載の塩基配列からなるDNA;
(ii)配列番号:2に記載の塩基配列からなるDNAとハイブリダイズし、かつキナーゼ活性を有するタンパク質をコードする哺乳動物由来のDNA。
項8. 項6又は7に記載の遺伝子の発現産物。
項9. 項6又は7に記載の遺伝子を有する組換え体発現ベクター。
項10. 項9に記載の組換え体発現ベクターにより形質転換された形質転換体。
項11. 項10に記載の形質転換体を培養し、産生されたタンパク質を精製することを含む組換えタンパク質の製造方法。
項12. 項6又は7に記載の遺伝子と特異的にハイブリダイズする、少なくとも15ヌクレオチドの鎖長を有するオリゴヌクレオチド。
項13. 項6又は7に記載の遺伝子と特異的にハイブリダイズし、該遺伝子の発現を抑制することができる、少なくとも15ヌクレオチドの鎖長を有するオリゴヌクレオチド。
項14. 項1〜5のいずれかに記載のタンパク質又は項8に記載の発現産物に結合性を有する抗体。
項15. 項1〜5のいずれかに記載のタンパク質又は項8に記載の発現産物に結合する活性を有する化合物をスクリーニングする方法であって、
(a)項1〜5のいずれかに記載のタンパク質又は項8に記載の発現産物に被検試料を接触させる工程、
(b)項1〜5のいずれかに記載のタンパク質又は項8に記載の発現産物に結合する活性を有する化合物を選択する工程、
を含む方法。
項16. 項1〜5のいずれかに記載のタンパク質又は項8に記載の発現産物のキナーゼ活性を促進もしくは阻害する化合物をスクリーニングする方法であって、
(a)被検化合物の存在下で項1〜5のいずれかに記載のタンパク質又は項8に記載の発現産物とその基質とを接触させる工程、
(b)項1〜5のいずれかに記載のタンパク質又は項8に記載の発現産物の基質に対するキナーゼ活性を測定する工程、
(c)被検化合物の非存在下において測定を行った場合(対照)と比較して、項1〜5のいずれかに記載のタンパク質又は項8に記載の発現産物の基質に対するキナーゼ活性を促進または阻害する化合物を選択する工程、
を含む方法。
項17. 項15または16に記載の方法により単離しうる化合物。
項18. タンパク質である、項17に記載の化合物。
項19. タンパク質が抗体である、項18に記載の化合物。
項20. 項1〜5のいずれかに記載のタンパク質又は項8に記載の発現産物のキナーゼ活性を阻害する化合物を含有する医薬品組成物。
項21. 細胞内において項6又は7に記載の遺伝子の発現を阻害する化合物を含有する医薬品組成物。
項22. 抗癌剤である、項20又は21に記載の医薬品組成物。
項23. 癌の治療を目的とした医薬品を得るための、項20〜22のいずれかに記載の医薬品組成物の使用。
項24. 項20〜22のいずれかに記載の医薬品組成物を、治療的に有効な量で、癌を有する患者に投与する癌の治療方法。
項25. 項1〜5のいずれかに記載のタンパク質又は項8に記載の発現産物のキナーゼ活性を促進する化合物を含有する医薬品組成物。
項26. 細胞内において項6又は7に記載の遺伝子の発現を促進する化合物を含有する医薬品組成物。
項27. 創傷治癒剤である、項25又は26に記載の医薬品組成物。
項28. 創傷の治癒を目的とした医薬品を得るための、項25〜27のいずれかに記載の医薬品組成物の使用。
項29. 項25〜27のいずれかに記載の医薬品組成物を、治療的に有効な量で、創傷を有する患者に投与する創傷の治療方法。
本発明は、第一に、細胞周期の調節に関与する哺乳動物由来の新規なタンパク質に関する。
本発明のタンパク質に含まれる「hCdr2」と命名されたヒト由来のタンパク質のアミノ酸配列を配列番号:1に、該タンパク質をコードするcDNAを配列番号:2に示す。本発明者らが単離した「hCdr2」タンパク質は、酵母で知られている細胞周期調節因子spCdr2(Cell 49,569(1987))およびspCdr1(Molecular Biology of the Cell 9,3399(1998)及び同誌9,3321(1998))と有意な相同性を有する。
この事実は、「hCdr2」が酵母由来のタンパク質と同様に細胞周期の調節において機能し、この機能においてタンパク質におけるキナーゼ活性が重要な役割を担っていることを意味するものである。さらに、このような「hCdr2」タンパク質と細胞周期の調節との関係は、該タンパク質およびその遺伝子、さらには「hCdr2」タンパク質の機能を調節する化合物が、癌などの細胞周期の異常に関連する疾患の診断や治療へ応用しうることを示唆する。
本発明のタンパク質は、当業者に公知の方法により、遺伝子組換え技術を用いて調整することが可能である。組換えタンパク質であれば、例えば、本発明のタンパク質をコードするDNA(例えば、配列番号:2に記載の塩基配列を有するDNA)を適切な発現ベクターに組み込み、これを宿主細胞に導入して得た形質転換体から精製するなどの方法により調整することが可能である。また、天然のタンパク質であれば、例えば、調整した組み換えタンパク質を小動物に免疫することにより得た抗体を固定したカラムを調整し、本発明のタンパク質の発現する組織もしくは細胞の抽出物に対し該カラムを用いたアフィニティークロマトグラフィーを行うなどの方法により調整することが可能である。
また、本発明は、「hCdr2」タンパク質と機能的に同等なタンパク質に関する。このようなタンパク質を単離するための方法としては、タンパク質中のアミノ酸に変異を導入する方法が当業者にはよく知られている。当業者に公知のアミノ酸を改変する方法としては、例えば、文献「新細胞工学実験プロトコール 東京大学医科学研究所 制癌研究部編 p241−248(1993年発行)」に記載の方法が挙げられる。
また、市販の「Quick Change Site−Directed Mutagenesis Kit」(ストラタジーン社製)を利用して、配列番号:1に示された「hCdr2」タンパク質において、その機能に影響を与えないアミノ酸を適時置換などして、「hCdr2」タンパク質と機能的に同等なタンパク質を単離することは通常行いうる事である。また、アミノ酸の変異は自然界においても生じることもある。このように「hCdr2」タンパク質(配列番号:1)中のアミノ酸配列において1もしくは複数のアミノ酸が置換、欠失、挿入および/もしくは付加されたアミノ酸配列を有し、「hCdr2」タンパク質と機能的に同等なタンパク質も本発明のタンパク質に含まれる。
ここで「挿入」とは、上記アミノ酸配列中の両末端以外の部位にアミノ酸が付加されたことを意味し、「付加」とは、上記アミノ酸配列中の両末端部位にアミノ酸が付加されたことを意味するものである。
ここで「機能的に同等」とは、タンパク質が天然型の「hCdr2」タンパク質と同等のキナーゼ活性を有することを指す。本発明において「キナーゼ活性」とは、リン酸基(−PO3H2)を基質タンパク質(例えば、Wee1等)のセリン、スレオニンあるいはチロシン残基に転移させ、リン酸化タンパク質を生ずる活性を指す。タンパク質のキナーゼ活性は、後述の実施例に記載の方法に従って検出することが可能である。「hCdr2」タンパク質と機能的に同様なタンパク質において変異するアミノ酸の数は、「hCdr2」タンパク質と同等のキナーゼ活性を保持する限り特に制限はない。通常、50アミノ酸以内であり、好ましくは20アミノ酸以内であり、さらに好ましくは10アミノ酸以内であり、さらに好ましくは数個、より具体的には5アミノ酸以内である。また、変異部位は、「hCdr2」タンパク質と同等のキナーゼ活性を保持する限り、いかなる部位でも良い。
また、配列番号:1に記載のアミノ酸配列に対して一定の相同性を有しているポリペプチドであって、「hCdr2」タンパク質と機能的に同等なタンパク質も本発明のタンパク質に含まれる。一定の相同性とは、例えば、少なくとも、70%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、更に好ましくは95%以上の相同性であることができる。本発明は、かかる相同性を有する相同物を包含する。
また、機能的に同等なタンパク質を単離するための他の方法としては、ハイブリダイゼーション技術(例えば、Sambrook,J et al.,Molecular Cloning 2nd ed.9.47−98,58,Cold Spring Harbor Lab.Press,1989参照)を利用する方法が当業者には知られている。即ち、当業者であれば、「hCdr2」タンパク質をコードするDNA(配列番号:2)若しくはその一部を基に、これと相同性の高いDNAを単離して、該DNAから「hCdr2」タンパク質と機能的に同等なタンパク質を得ることも通常行いうることである。このように「hCdr2」タンパク質をコードするDNAとハイブリダイズするDNAがコードするタンパク質であって、「hCdr2」タンパク質と機能的に同等なタンパク質もまた本発明のタンパク質に含まれる。
ここで「機能的に同等」とは、上記と同様に、タンパク質が「hCdr2」タンパク質と同等のキナーゼ活性を有していることを指す。
機能的に同等なタンパク質を単離するための生物としては、ヒト以外に、例えば、マウス、ラット、イヌ、ウサギ、サルなどの哺乳動物が挙げられる。これらヒト以外の哺乳動物由来のタンパク質は、例えば、医薬品開発などのための動物モデル系の開発に有用である。
機能的に同様なタンパク質をコードするDNAを単離するためのハイブリダイゼーションの「ストリンジェントな条件」としては、例えば、10%ホルムアミド、5×SSPE,1×デンハルト溶液,1×サケ精子DNAの条件であり、さらに好ましい条件(さらにストリンジェントな条件)としては、25%ホルムアミド,5×SSPE,1×デンハルト溶液,1×サケ精子DNAの条件である。但し、ハイブリダイゼーションの「ストリンジェントな条件」に影響する要素としては上記ホルムアミド濃度以外にも複数考えられ、当業者であればこれら要素を適宜選択することで同様のストリンジェンシーを実現することが可能である。又、ハイブリダイゼーションにかえて、「hCdr2」タンパク質をコードするDNA(配列番号:2)の一部をプライマーに用いる遺伝子増幅法、例えば、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法を利用して単離することも可能である。有利には、例えば、クローニングしたい遺伝子の領域に対する約15から50ヌクレオチドからなる一組のプライマーを作り、このプライマーをヒト細胞由来のmRNA、cDNA、またはゲノムDNAと接触させ、所望の領域(必要であれば最初に逆転写ステップを行うこと)の増幅を生じるような条件下でPCR法を行い、増幅された領域または断片を単離し、増幅されたDNAを回収するということを一般的に含むPCRクローニングのメカニズムなどの組換え法または合成法などを用いて作製することができる。ここで定義されているような技術は、Sambrookら、Molecular Cloning:a Laboratory Manual,1989 by Cold Spring Harbor Laboratory Press;Current Protocols in Molecular Biology,Supplement 46,April 1999 by John Wiley & Sons,Inc.等に記載されているように、当技術分野において公知である。
これらハイブリダイゼーション技術または遺伝子増幅技術により単離される「hCdr2」タンパク質と機能的に同等なタンパク質をコードする哺乳類動物由来のDNAは、通常、配列番号:2に記載のヒト由来の「hCdr2」タンパク質をコードするDNAと高い相同性を有する。高い相同性とは、少なくとも70%以上、好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上の配列の同一性を指す。相同性の算出には、BLAST法、FASTA法等の当業者に周知の方法を用いることができ、例えば文献(Proc.Natl.Acad.Sci.USA 80:726,1983)に記載の方法を用いることができる。
また、本発明は、上記発明のタンパク質をコードする遺伝子に関する。本発明の遺伝子としては、本発明のタンパク質をコードしうるものであれば特に制限はなく、2本鎖DNAのみならず、それを構成するセンス鎖、アンチセンス鎖等の1本鎖DNAも包含し、cDNA、ゲノムDNA、化学合成DNAなどが含まれる。
具体的には、
配列番号:1に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードする遺伝子、
配列番号:1に記載のアミノ酸配列において1若しくは複数のアミノ酸が置換、欠失、挿入および/もしくは付加したアミノ酸配列からなり、かつキナーゼ活性を有するタンパク質をコードする遺伝子、
配列番号:2に記載の塩基配列からなるDNAからなる遺伝子、
配列番号:2に記載の塩基配列からなるDNAとハイブリダイズし、かつキナーゼ活性を有するタンパク質をコードする哺乳動物由来のDNAからなる遺伝子、配列番号:1に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするポリヌクレオチドまたは配列番号:2に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチドに対して、一定の相同性を有しているポリヌクレオチドからなる遺伝子が例示できる。「一定の相同性を有しているポリヌクレオチド」とは、例えば、少なくとも、50%以上、好ましくは70%以上、より好ましくは90%以上の相同性であることができる。本発明は、かかる相同性を有する相同物を包含する。
本発明の遺伝子は、当業者に通常利用される方法、例えば、配列番号:2に開示された塩基配列の一部若しくは全部をプローブとして利用した、cDNAライブラリーやゲノムライブラリーのスクリーニング、あるいは塩基配列の一部若しくは全部をテンプレートとして利用したPCR法により単離することが可能である。
本発明の遺伝子(DNA)は、例えば、上記本発明のタンパク質を組み換えタンパク質として量産する目的に利用しうる。組み換えタンパク質の製造においては、本発明のタンパク質をコードする遺伝子(例えば、配列番号:2に記載のDNA)を適当な発現ベクターに挿入し、該ベクターを適当な宿主細胞に導入して得た形質転換体を培養し、発現させたタンパク質を精製する。
組み換えタンパク質の生産に用いる宿主−ベクター系としては、当業者に公知の多くの系を用いることが可能である。宿主細胞としては、特に制限されないが、例えば、大腸菌等の原核細胞、酵母、動物細胞、昆虫細胞などの真核細胞が挙げられる。細胞内で組み換えタンパク質を発現させるためのベクターは、宿主細胞に応じて変えられるが、例えば、大腸菌であればpGEX(ファルマシア社製)、pET(ノバーゲン社製)が好適に用いられ、動物細胞であればpcDNA3.1(インビトロゲン社製)が好適に用いられ、昆虫細胞であればpVL1392(インビトロゲン社製)、Bac−to−Bac baculovirus expression system(ギブコBRL社製)が好適に用いられる。発現ベクターは、複製起源、選択マーカー、プロモーター、RNAスプライス部位、ポリアデニル化シグナルなどを含むことができる。
細胞へのベクターの導入は、当業者に公知の方法、例えば、電気的穿孔法、リン酸カルシウム法、リポフェクション法、DEAEデキストラン法などの方法で行うことが可能である。
形質転換体の培養、および形質転換体に発現させた組み換えタンパク質の分離、精製は、常法により行うことが可能である。ベクターとしては、例えば、pGEX(ファルマシア社製)を用いた場合にはグルタチオンセファロースアフィニティークロマトグラフィーにより、またpET(ノバーゲン社製)を用いた場合にはニッケルアガロースアフィニティークロマトグラフィーにより発現させた組み換えタンパク質(融合タンパク質)を容易に精製することができる。
本発明は、上記遺伝子の発現産物も包含するものである。即ち、上記タンパク質のみならず、宿主細胞による特有の修飾を受けているもの(例えば、糖鎖の結合、リン酸化体等)も本発明に包含される。
また、本発明の遺伝子は、遺伝子治療への応用も考えられる。本発明の遺伝子は、細胞周期の調節に関与しているため、特に癌などの増殖性疾患などが遺伝子治療の主な対象疾患である。本発明の遺伝子を遺伝子治療目的で利用する場合には、本発明の遺伝子をヒト体内で発現させるためのベクターに組み込み、例えば、レトロウィルス法、リポソーム法、アデノウィルス法などを用いて、in vivoまたはex vivo投与することにより体内に導入する。
また、本発明は、本発明のタンパク質に結合する抗体に関する。本発明の抗体の形態には、特に制限はなく、ポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体が含まれる。また、キメラ抗体、ヒト型抗体、およびヒト抗体などの抗体を含む。さらに、完全な形態の抗体のみならず、Fab断片、F(ab’)2断片、シングルチェインscFvなどを含む。本発明の抗体は当業者に公知の方法で作製することができる。ポリクローナル抗体であれば、例えば、本発明のタンパク質をウサギなどに注入し、硫安沈殿によりイムノグロブリン画分を精製するなど公知の方法で調整することが可能である。また、モノクローナル抗体であれば、例えば、本発明のタンパク質で免疫されたマウスの脾細胞を用いて骨髄腫細胞とのハイブリドーマを調整し、培養液中に分泌されるモノクローナル抗体を得て、さらに腹腔内に注入して大量のモノクローナル抗体を得るなどの方法で調整することが可能である。これにより調整された抗体は、本発明のタンパク質のアフィニティー精製や検出のために用いられる他、本発明のタンパク質の発現異常などに起因する癌などの細胞増殖性疾患の診断や抗体治療などに応用することも考えられる。抗体治療に用いる場合には、免疫原性の観点から、ヒト化抗体もしくはヒト抗体であることが好ましい。
また、本発明は、本発明のタンパク質をコードする遺伝子と特異的にハイブリダイズし、少なくとも15ヌクレオチドの鎖長を有するオリゴヌクレオチドに関する。ここで「オリゴヌクレオチド」とは、天然に存在する塩基および本来のホスホジエステル結合によって結合した糖部分から生成されたオリゴヌクレオチドおよびその類似体を意味する。したがって、この用語が含む第1の群は、天然に存在する種または天然に存在するサブユニットまたはそれらの同族体から生成された合成種である。また、サブユニットとは隣接するサブユニットに対してホスホジエステル結合または他の結合によって結合した塩基−糖の組み合わせをいう。またオリゴヌクレオチドの第2の群はその類似体であり、これはオリゴヌクレオチドと同様に機能するが、天然に存在していない部分を有する残基を意味する。これらには、安定性を増加するためにリン酸基、糖部分、3’−,5’−末端に化学修飾を施したオリゴヌクレオチドを含む。例えば、ヌクレオチド間のホスホジエステル基の酸素原子の1つを硫黄に置換したオリゴホスホロチオエート、−CH3に置換したオリゴメチルホスホネートなどが挙げられる。また、ホスホジエステル結合は、非イオン性かつ非キラル性である他の構造で置換されていてもよい。さらに、オリゴヌクレオチド類似体としては、修飾された塩基形態、すなわち天然に通常見いだされるもの以外のプリンおよびピリミジンを含む種を用いてもよい。本発明においては「オリゴヌクレオチド」にはDNA、RNAの他、ペプチド核酸(PNA、例えば、Bioconjugate Chem.Vol.5,No.1,1994を参照)も含まれる。
ここで「特異的にハイブリダイズする」とは、通常のハイブリダイゼーション条件下、好ましくはストリンジェントな条件下で、他のタンパク質をコードする遺伝子とクロスハイブリダイゼーションが有意に生じないことを指す。ここで「ストリンジェントな条件」とは上述の通りである。このようなオリゴヌクレオチドは、本発明のタンパク質をコードする遺伝子を検出、単離するためのプローブとして、また増幅するためのプライマーとして利用可能である。
本発明は、更に、本発明遺伝子と特異的にハイブリダイズし、該遺伝子の発現を抑制することができる、少なくとも15ヌクレオチドの鎖長を有するオリゴヌクレオチドにも関する。具体的には、本発明遺伝子のDNAと特異的に結合して転写を阻害する上記オリゴヌクレオチド、本発明遺伝子のmRNAの特定部分に結合して、翻訳を阻害する上記オリゴヌクレオチドが含まれる。該「オリゴヌクレオチド」には、DNA、RNA、PNA等が含まれる。該オリゴヌクレオチドは、天然型のオリゴヌクレオチドであってもよいし、効果的に細胞に取り込まれるために修飾されていてもよい。例えば、天然型に見られるリン酸結合の酸素原子をイオウ原子に置換してもよい。上記オリゴヌクレオチドを使用するアンチセンス法やトリプレット法に関しては、Murray,J.A.H.,;Antisense RNA and DNA:WileyLiss,Inc.,New York,pp1−49(1992)に記載に従って、行うことができる。
本発明において、オリゴヌクレオチドがハイブリダイズするmRNAの標的部分としては、転写開始部位、翻訳開始部位、イントロン/エキソン結合部位又は5´キャップ部位が好ましいが、mRNAの二次構造を考慮して、例えば、立体障害のない部分を選択してもよい。
本発明のオリゴヌクレオチドがハイブリダイズするDNAの標的部分としては、例えば、本発明の遺伝子の調節領域に結合して転写調節因子を接近させないようにしてもよい。
本発明の特に好ましい態様は、配列表の配列番号1に示すアミノ酸配列をコードする塩基配列とハイブリダイズし、hCdr2タンパク質の発現を阻害しうるオリゴヌクレオチドである。
本発明によるオリゴヌクレオチドは、当業者で公知の合成法、例えばAppliedBiosystems社などの合成装置を用いる固相合成法によって製造できる。同様の方法を用いて、他のオリゴヌクレオチド類似体、例えば、ホスホロチオエートやアルキル化誘導体を製造することもできる(村上 章ら、「機能性アンチセンスDNAの化学合成」、有機合成化学、48(3):180−193、1990)。
また、本発明は、本発明のタンパク質及び発現産物に結合する化合物のスクリーニング方法に関する。本発明のスクリーニング法は、(a)本発明のタンパク質及び発現産物と被検試料とを接触させる工程、および(b)本発明のタンパク質及び発現産物に結合する活性を有する化合物を選択する工程を含む。
スクリーニングに用いる被検試料としては、例えば、精製タンパク質(抗体を含む)、遺伝子ライブラリーの発現産物、合成ペプチドのライブラリー、細胞抽出液、細胞培養上清、合成低分子化合物のライブラリーなどが挙げられるが、これらに制限されない。
本発明のタンパク質及び発現産物に結合する活性を有する化合物を選択する方法としては、当業者に公知の多くの方法(例えば、BIA coreや本発明のタンパク質及び発現産物を固相化したアフィニティカラム等)を用いることができる。
本発明のタンパク質(発現産物も含む)を用いてこれに結合する化合物を単離する方法としては、例えば、以下の方法が当業者によく知られている。本発明のタンパク質と結合するタンパク質は、例えば、本発明のタンパク質と結合するタンパク質を発現していることが予想される細胞よりファージベクター(λgt11,ZAPなど)を用いたcDNAライブラリーを作製し、これをLB−アガロース上で発現させフィルターに発現させたタンパクを固定し、本発明のタンパク質をビオチンラベル、あるいはGSTタンパク質との融合タンパク質として精製し、これを上記フィルターと反応させ、結合するタンパク質を発現しているプラークを、ストレプトアビジン、あるいは抗GST抗体により検出する「ウェストウェスタンブロッテイング法」(Skolnik EY,Margolis B,Mohammadi M,Lowenstein E,Fischer R,Drepps A,Ullrich A,and Schlessinger J(1991)Cloning of PI3 kinase−associated p85 utilizing a novel method for expression/cloning of target proteins for receptor tyrosine kinase.Cell 65,83−90)により調整することが可能である。また、本発明のタンパク質に結合するタンパク質は、「twoハイブリッドシステム」(「MATCHMAKER Two−Hybrid System」,「Mammalian MATCHMAKER Two−Hybrid Assay Kit」、「MACHMAKER One−Hybrid System」(いずれもクロンテック社製)「HybriZAP Two−Hybrid Vector System」(ストラタジーン社製)、「Dalton S,and Treisman R(1992)Characterization of SAP−1,a protein recruited by serum response factor to the c−fos serum response element.Cell 68,597−612」)を利用して調整することも可能である。
Twoハイブリッドシステムにおいては、まず、本発明のタンパク質をSRF結合領域またはGAL4結合領域と融合させて酵母細胞の中で発現させ、本発明のタンパク質と結合するタンパク質を発現していることが予想される細胞より、VP16またはGAL4転写活性化領域と融合する形で発現するようなcDNAライブラリーを作製し、これを上記酵母細胞に導入する。次いで、検出された陽性クローンからライブラリー由来cDNAを単離する(酵母細胞内で本発明のタンパク質と結合するタンパク質が発現すると、両者の結合によりレポーター遺伝子が活性化され、陽性のクローンが確認できる)。さらに、単離したcDNAを大腸菌などに導入し、これにより発現させたタンパク質を精製することにより、該cDNAがコードするタンパク質を得ることができる。
さらに、本発明のタンパク質を固定したアフィニティカラムに本発明のタンパク質と結合するタンパク質を発現していることが予想される細胞の培養上清もしくは細胞抽出物をのせ、カラムに特異的に結合するタンパク質を精製することにより調整することも可能である。得られたタンパク質のアミノ酸配列を分析し、それを基にオリゴDNAを合成し、該DNAをプローブとしてcDNAライブラリーをスクリーニングすることにより、本発明のタンパク質と結合するタンパク質をコードするDNAを得ることも可能である。
また、固定した本発明タンパク質に、合成化合物、又は天然物バンク、若しくはランダムファージペプチドディスプレイライブラリーを作用させ、結合する分子をスクリーニングする方法や、コンビナトリアルケミストリー技術によりハイスループットを用いたスクリーニング(Science,273 458−464,1996;Nature,384,11−13,1996;Nature,384,17−19,1996)により本発明タンパク質に結合する低分子化合物、タンパク質(又はその遺伝子)、ペプチドなどを単離する方法も当業者に周知の技術である。
これにより得られる本発明タンパク質に結合する化合物は、本発明タンパク質の活性を促進または阻害するための薬剤の候補となる。また、本発明タンパク質に結合する細胞内タンパク質は、生体内において本発明タンパク質の細胞周期の調節機能、より具体的にはキナーゼ活性に密接に関連していると考えられる。このため本発明のタンパク質に結合する細胞内タンパク質が得られれば、この両者の結合を阻害する化合物をスクリーニングすることにより、癌などの細胞周期の調節異常に起因する疾患に対する医薬品開発を行うことが可能となる。
また、本発明は、本発明タンパク質の活性の阻害剤または促進剤のスクリーニング方法に関する。本発明のスクリーニング法は、(a)被検化合物の存在下で本発明のタンパク質(発現産物を含む)とその基質とを接触させる工程、(b)本発明のタンパク質の基質に対するキナーゼ活性を測定する工程、および(c)被検化合物の非存在下において測定を行った場合(対照)と比較して、本発明のタンパク質の基質に対するキナーゼ活性を促進または阻害する化合物を選択する工程、を含む。スクリーニングに用いる被検化合物としては特に制限はなく、例えば、合成低分子化合物のライブラリー、精製タンパク質(抗体を含む)、遺伝子ライブラリーの発現産物、合成ペプチドのライブラリー、細胞抽出液、細胞培養上清などを用いることが可能である。
また、本発明タンパク質のキナーゼ活性の検出に利用される基質としては、例えば、Cdc25(例えば、Cdc25A、Cdc25B又はCdc25C、特には、Cdc25B又はCdc25C)、またはこれらの断片などを用いることが可能であるが、これらに制限されない。本発明のタンパク質と基質との接触反応は、例えば、以下のように行うことができる。
被検化合物、本発明タンパク質、基質、およびリンが放射標識されているATPを含む緩衝液を調製する。適当な時間、本発明タンパク質と基質との反応を行わせた後、キナーゼ活性の検出を行う。キナーゼ活性を、基質に結合したリンの放射活性を検出することにより測定する。放射活性の検出は、反応液を電気泳動(SDS−PAGE)にて分離し、ゲルを乾燥した後、オートラジオグラフィーにてリン酸化された基質のバンドを検出することにより行うことができる。一方、対照として、被検化合物を添加せずに同様にキナーゼ活性の検出を行う。次いで、対照と比較して、有意なキナーゼ活性の増加若しくは低下をもたらした化合物を選択する。これにより得られる、有意なキナーゼ活性の増加をもたらした化合物は、本発明タンパク質の促進剤の候補となり、創傷治癒剤などの医薬品開発を行うことが可能となる。
また有意なキナーゼ活性の低下をもたらした化合物は、本発明タンパク質の阻害剤の候補となり、癌などの細胞周期の調節異常に起因する疾患に対する医薬品開発を行うことが可能となる。
癌細胞においてhCdr2経路を特異的に阻害する薬剤(hCdr2遣伝子の発現を阻害する薬剤)は、例えば、癌細胞株に、候補化合物を接触させ、次いで、hCdr2遺伝子の発現を検出し、該遺伝子の発現を候補化合物を接触させていない対照と比較して低下させる化合物を選択することにより、単離することが可能である。
hCdr2遺伝子の発現の検出は、転写産物レベルであれば、例えば、ノーザンブロッティング法などの公知の方法により、翻訳産物レベルであれば、例えば、ウェスタンブロッティング法などの公知の方法により行なうことが可能である。また、hCdr2遺伝子のプロモーターの下流に連結されたレポーター遺伝子を含むベクターを細胞に導入し、レポーター活性を指標にhCdr2遺伝子の発現を検出してもよい。
本発明は、本発明タンパク質のキナーゼ活性を阻害する化合物を含有する医薬組成物および本発明タンパク質の発現を阻害する化合物を含有する医薬組成物、好ましくは抗癌剤である医薬組成物を包含する。
本発明は、本発明タンパク質のキナーゼ活性を促進する化合物を含有する医薬組成物および本発明タンパク質の発現を促進する化合物を含有する医薬組成物、好ましくは創傷治癒剤である医薬組成物を包含する。
本発明のスクリーニング方法を用いて得られる化合物をヒトや哺乳動物、例えばマウス、ラット、モルモット、ウサギ、ニワトリ、ネコ、イヌ、ヒツジ、ブタ、ウシ、サル、マントヒヒ、チンパンジーの医薬として使用する場合には、単離された化合物自体を直接患者に投与する以外に、公知の製剤学的方法により製剤化して投与を行うことも可能である。例えば、必要に応じて糖衣を施した錠剤、カプセル剤、エリキシル剤、マイクロカプセル剤として経口的に、あるいは水もしくはそれ以外の薬学的に許容し得る液との無菌性溶液、又は懸濁液剤の注射剤の形で非経口的に使用できる。例えば、薬理学上許容される担体もしくは媒体、具体的には、滅菌水や生理食塩水、植物油、乳化剤、懸濁剤、界面活性剤、安定剤、薬味剤、賦形剤、ベヒクル、防腐剤、結合剤などと適宜組み合わせて、一般に認められた製薬実施に要求される単位用量形態で混和することによって製剤化することが考えられる。これら製剤における有効成分量は指示された範囲の適当な容量が得られる用にするものである。
錠剤、カプセル剤に混和することができる添加剤としては、例えばゼラチン、コーンスターチ、トラガントガム、アラビアゴムのような結合剤、結晶性セルロースのような賦形剤、コーンスターチ、ゼラチン、アルギン酸のような膨化剤、ステアリン酸マグネシウムのような潤滑剤、ショ糖、乳糖またはサッカリンのような甘味剤、ペパーミント、アカモノ油又はチェリーのような香味剤が用いられる。調剤単位形態がカプセルである場合には、上記の材料にさらに油脂のような液状担体を含有することができる。注射のための無菌組成物は注射用蒸留水のようなペヒクルを用いて通常の製剤実施に従って処方することができる。
注射用の水溶液としては、例えば生理食塩水、ブドウ糖やその他の補助薬を含む等張液、例えばD−ソルビトール、D−マンノース、D−マンニトール、塩化ナトリウムが挙げられ、適当な溶解補助剤、例えばアルコール、具体的にはエタノール、ポリアルコール、例えばプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、非イオン性界面活性剤、例えばポリソルベート80(TM)、HCO−50と併用してもよい。
油性液としてはゴマ油、大豆油があげられ、溶解補助剤として安息香酸ベンジル、ベンジルアルコールと併用してもよい。また、緩衝剤、例えばリン酸塩緩衝剤、酢酸ナトリウム緩衝剤、無痛化剤、例えば、塩酸プロカイン、安定剤、例えばベンジルアルコール、フェノール、酸化膨化剤と配合してもよい。調製された注射液は通常、適当なアンプルに充填させる。
患者への投与は、例えば、動脈内注射、静脈内注射、皮下注射などのほか、鼻腔内的、経気管支的、筋内的、経皮的、または経口的に当業者に公知の方法により行いうる。投与量は、患者の体重や年齢、投与方法などにより変動するが、当業者であれば適当な投与量を適宜選択することが可能である。また、該化合物がDNAによりコードされうるものであれば、該DNAを遺伝子治療用ベクターに組込み、遺伝子治療を行うことも考えられる。投与量、投与方法は、患者の体重や年齢、症状などにより変動するが、当業者であれば適宜選択することが可能である。
例えば、上記化合物の投与量は、症状により差異はあるが、経口投与の場合、一般的に成人(体重60kgとして)においては、1日あたり約0.1〜100mg、好ましくは約1.0から50mg、より好ましくは約1.0から20mgである。
非経口的に投与する場合は、その1回投与量は投与対象、対象臓器、症状、投与方法によっても異なるが、例えば注射剤の形では通常成人(体重60kgとして)においては、1日あたり約0.01から30mg、好ましくは約0.1から20mg、より好ましくは約0.1から10mg程度を静脈注射により投与するのが好都合である。他の動物の場合も、体重60Kg当たりに換算した量、あるいは体表面積あたりに換算した量を投与することができる。
発明を実施するための最良の形態
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に制限されるものではない。
実施例1:抗hChk2ポリクローナル抗体の作製
国際公開WO99/67369号記載のヒト(h)Chk2遺伝子を、バキュロウィルス(Baculovirus)発現ベクターpVL1392(Invitrogen社製)にサブクローニングし、pVL1392hChk2myc/6Hisを作製した。昆虫細胞Sf−9 105cells当たりに1μgのpVL1392hChk2myc/6Hisと0.5μgのlinearized baculovirus DNAをベクターキットBaculoglod(PharMigen社製)を用いて共感染させ、hChk2蛋白を発現させた。hChk2蛋白をProbond Resin(ニッケルNTAレジンの商品名:Invitrogen社製)を用いて精製し、これを抗原として常法に従ってウサギに免疫した。得られた抗血清より、GST−hChk2を結合させたCNBr−activated Sepharose 4B(Amersham Pharmacia Biotech社製)を用いて抗hChk2ポリクローナル抗体を精製した(Journal of Biological Chemistry Vol.274.No.44,pp31463−31467,1999参照)。
実施例2:抗hChk2ポリクローナル抗体で認識されるリン酸化蛋白の検出
実施例1で得られた抗hChk2抗体を用いて、各種DNA障害処理した細胞蛋白をウェスタンブロットで解析した。正常ヒト繊維芽細胞株MJ90とataxia telangiectasia(毛細血管拡張性運動失調症)患者より樹立された繊維芽細胞株AT2KYに、ioning radiation(X−ray;10Gy)、UV照射0.07J/cm2およびメチルメタンスルホン酸(MMS)(0.03%)で1,4,8時間処理した細胞より、protease inhibitor(20μg/ml soybean trypsin inhibitor,2μg/ml aprotinin,5μg/ml leupeptin,100μg/mlフェニルメチルスルホニルフルオライド(PMSF))、phosphatase inhibitor(50mM NaF,0.1mM Na3VO4,5mg/ml phosphatase substrate)を含むIP kinase buffer(50mM HEPES,pH8.0,150mM NaCl,2.5mM EGTA,1mM EDTA,0.1% Tween 20,10% glycerol)を用いて氷中で冷やしながらセルライゼートを作製し、その遠心上清(100μg)を8%SDS−Polyacrylamide gelで電気泳動し、PVDF膜に転写し、常法に従って抗hChk2ポリクローナル抗体を一次抗体としてウェスタンブロッティングを行った。
その結果、hChk2とは分子量が異なる新蛋白が検出され、且つこの蛋白には各種DNA障害によって誘導されたリン酸化によると考えられるバンドシフトが観察された(図1)。
Chk2は正常細胞ではDNA障害処理によりリン酸化によるバンドシフトが観察されるが、ATMキナーゼの欠損細胞AT2KYにおいてこのバンドシフトが起こらないことより、Chk2はATMキナーゼでリン酸化されて活性化されると考えられている(Journal of Biological Chemistry Vol.274.No.44,pp31463−31467,1999参照)。
一方、実施例1で得られた抗hChk2ポリクローナル抗体が認識する別蛋白では、AT2KY細胞でもUV、MMS処理によるバンドシフトが観察され、ATM以外のキナーゼでリン酸化を受けているものと考えられた。そこで、該蛋白のクローニングに着手した。
実施例3:hCdr2 cDNAの同定
クローンテック社Human fetal brain cDNA(ラムダgt11)と実施例1で得られた抗hChk2ポリクローナル抗体を用いてイムノスクリーニングを行った(抗体希釈:1:2000)。スクリーニングの詳細はストラタジーン社製pico Blue Immunoscreeining kitを用いて、マニュアルに従い、行った。得られた陽性クローンの1つはタンパク質リン酸化酵素に特有のドメインを持つ遺伝子をコードしており、この遺伝子cDNAの部分配列をもとに上記と同様のライブラリーを用いてハイブリダイゼーション法によりスクリーニングを行い全cDNA配列を決定した(配列番号2)。該cDNA配列からアミノ酸配列を推定した(配列番号1)。図2にアミノ酸配列及びcDNA配列を示す。
図3にヒトの「hCdr2」のアミノ酸配列を、分裂酵母のspCdr2,spCdr1のアミノ酸配列とともに整列化した図を示す。アミノ酸配列は1文字表記で表した。アミノ酸のギャップはハイフンで表した。3種でアミノ酸が一致する場合はアスタリスクで、2種でアミノ酸が一致する場合はドットで、その位置を示した。hCdr2とspCdr2およびspCdr1に配列の類似性が見出された。蛋白全体でのアミノ酸配列のホモロジーは、spCdr2に対して28.2%、spCdr1に対して23.9%であった。一方、hChk2に対しては、ホモロジーは低く8.4%であり、hCdr2の検出に用いた抗体の認識するエピトープ部位が類似していたものと考えられた。
更に、図4は,「hCdr2」のN末側(1−295)のアミノ酸配列を、分裂酵母のspCdr2のアミノ酸配列とともに整列化した図を示す。アミノ酸配列は1文字表記で表した。アミノ酸のギャップはハイフンでまた類以したアミノ酸である場合はドットで、その位置を示した。特にキナーゼドメインがあるN末側hCdr2 catalytic domain(1−295aa)で高い類似性が確認され、spCdr2に対しては45.8%、spCdr1では35.6%であった。
実施例4:ノーザンブロッテングによる検出
完全長のヒトCdr2 cDNAを32Pで標識した後に、TOYOBO Human normal tissue mRNA blotを用いてハイブリダイゼーション溶液(Ambion社製、Ultra Hyb)中でノーザンブロットを行った。結果は、特に脳・精巣で強く発現を認めた(図5)。
また、HeLaヒト子宮癌細胞、A172ヒトグリオブラストーマ(glioblastoma)培養癌細胞株におけるhCdr2の発現についてRT−PCR法(プライマー配列1:ACTGCATCACGGGTCAGAAGG、プライマー配列2:CGAGACGTGCTCCAGAACCAG)により調べた(RT−PCR法については「Sambrookら、Molecular Cloning:a Laboratory Manual,1989 by Cold Spring Harbor Laboratory Press」参照)。結果、両細胞株で転写産物が検出された。つぎに、細胞周期調節因子であるということを考慮して細胞周期依存的な発現についてA172細胞を用いて調べた。A172細胞を過剰チミジン処理(日本組織培養学会編、組織培養の技術、5章、1991年、朝倉書店発行)によりG1/S境界期に停止させて同調させ、その後チミジンを除いた通常培地に交換することにより細胞周期を回転させた。リリース後の適当な時間(0,3,7,9,12及び24時間)経過後サンプリングを行い、mRNAの調整と細胞周期の解析を行った。各サンプリング時に調整されたmRNA10μg用いてノーザンブロットを行い、hCdr2のmRNAの発現を解析した。なお、アッセイに用いるmRNA量をサンプル間で揃えるために、ハウスキーピング遺伝子の1つであるGAPDH(glyceraldehyde−3−phosphate dehydrogenase)を指標として用いた(図6−B)。また、各サンプリング時での細胞周期を解析するために、PI(Propidium Iodate)染色によるFlow cytometory法を用いてFACS解析を行った。この結果、hCdr2はほとんどの細胞がS期に存在する時間帯(リリース後3時間目)に最も高い発現を観察し、S期に最も発現誘導されることが明らかになった。また、リリース後24時間では発現量は減弱しており、G1期ではあまり発現されていないことが判明した(図6−A及び図6−C)。
実施例5:プロテインキナーゼ活性の検出(リコンビナントタンパク質の発現とキナーゼアッセイ)
in vitroキナーゼアッセイを行うためにhCdr2のワイルドタイプ(wt)及び59番目のアミノ酸K(リジン)をA(アラニン)に変換したkinase dead型変異蛋白K59AをコードするcDNAを導入したバキュロウィルスをPharmigen社のBaculovirus Expression Vector Systemを用いて作製した。hCdr2 wt及びhCdr2 K59A蛋白の回収は、抗c−Mycタグ抗体を用いた免疫沈降法により行った。バキュロウィルスからは、共に90kD程度の大きさを持つリコンビナントタンパク質が生産されることが、リコンビナント蛋白の末端に存在するc−Mycタグに対する抗体を用いたウエスタンブロット法により確認された。一方、hCdr2遺伝子を導入していないバキュロウィルスを感染させたmockでは、hCdr2に相当する分子量の蛋白は検出されなかった(図7)。
また、アッセイの基質にするために大腸菌を用いてヒトWee1(全長蛋白)、ヒト脱リン酸化酵素Cdc25C(C末側ペプチド:195−260aa)、ヒト脱リン酸化酵素Cdc25B(C末側ペプチド:281−381aa)を有するGST−融合リコンビナントタンパク質(GST−Cdc25C及びGST−Cdc25B)を作製した。これらのリコンビナントタンパク質を用いてキナーゼアッセイを行うと、S.pombeのヒトホモログであるにもかかわらずヒトWee1をリン酸化することはできなかった。しかし、hCdr2は細胞周期の制御因子でありM期チェックポイントに関わるヒトCdc25C及びCdc25Bをリン酸化することが明らかとなった。そこで、Cdc25C及びCdc25Bのリン酸化部位を明らかにするために14−3−3タンパク質の結合領域を含むペプチド断片を再度大腸菌にて発現させてキナーゼアッセイを行うと、14−3−3タンパク質の結合領域がリン酸化されることがわかった。14−3−3タンパク質の結合に必要とされるCdc25Cアミノ酸配列の216番のセリンをアラニンに変換した変異導入基質GST−Cdc25C S216A、とCdc25Bアミノ酸配列の309番のセリンをアラニンに変換した変異導入基質GST−Cdc25B S309Aを目的の塩基を変異させたプライマーを用いたPCR法により作製し、基質として使用した(PCR法については「Sambrookら、Molecular Cloning:a Laboratory Manual,1989 by Cold Spring Harbor Laboratory Press」参照)。これらの基質を用い、γ−[32P]−ATPを含む緩衝液中でタンパク質と基質との反応を行わせた後、反応液を電気泳動(SDS−PAGE)にて分離し、ゲルを乾燥した後、オートラジオグラフィーにてリン酸化された基質のバンドを検出した。
結果、基質としてGST−Cdc25Cを使用した場合、hCdr2 wt蛋白はGST−Cdc25C(C末側ペプチド:195−260aa)をリン酸化したが、hCdr2 K59A蛋白はリン酸化できなかった。また、GST−Cdc25C S216Aを基質とした場合は、hCdr2 wt蛋白でもリン酸化が起こらなかった(図8−A)。この結果は、hCdr2はCdc25CのS216をリン酸化するプロテインキナーゼであることを示している。
また、基質としてGST−Cdc25Bを使用した場合、hCdr2 wt蛋白は、GST−Cdc25B(C末側ペプチド:282−381aa)を強くリン酸化したのに対し、mock及びhCdr2 K59Aのリン酸化作用は弱いものであった。また、GST−Cdc25B S309Aを基質とした場合は、hCdr2 wt蛋白でもリン酸化が起こらなかった(図8−B)。これらの結果は、hCdr2はCdc25BのS309をリン酸化するプロテインキナーゼであることを示している。
以上、これらの変異導入基質に対してはhCdr2はキナーゼ活性を示さなかった。このためhCdr2のin vitroでのCdc25C及びCdc25Bに対するリン酸化部位は、それぞれセリン216番とセリン309番を含むことが証明された。また、hCdr2のATP結合部位の変異蛋白hCdr2 K59Aは、Cdc25C及びBペプチドに対するリン酸化能はなかったことから、キナーゼアッセイで示されたリン酸化はwtリコンビナントhCdr2由来であることが確認された。
実施例6:細胞内での局在性
hCdr2の細胞内での局在性を解析するために、pEGFP−N1(Genebank Accession#:U55762)ベクターにhCdr2遺伝子を挿入し、TransIT−LT1(Mirus社)を用いてGFP融合hCdr2をHela細胞に一過性形質転換(transient transfection)した。蛍光顕微鏡で観察すると、GFP−hCdr2は細胞質および核に存在することが確認できた。
産業上の利用の可能性
本発明により、キナーゼ活性を有する哺乳動物由来のタンパク質および遺伝子が提供された。本発明のタンパク質は、細胞周期の調節に関与していると考えられるため、これにより癌などの増殖性疾患の診断や治療のための新たな医薬品の開発が可能となった。また、本発明のタンパク質をコードする遺伝子は、上記疾患の遺伝子治療への応用が期待される。また、本発明により、本発明のタンパク質を製造するための宿主−ベクター系が提供され、これにより本発明のタンパク質の量産が可能となった。さらに、本発明により、発明のタンパク質がコードするDNAに特異的にハイブリダイズするオリゴヌクレオチドや本発明のタンパク質に結合する抗体が提供され、これにより本発明のタンパク質やその遺伝子の検出や単離などを容易に行うことが可能となった。さらに、本発明により、本発明のタンパク質に結合する化合物および該タンパク質の活性を促進若しくは阻害する化合物をスクリーニングする方法が提供された。これにより単離される化合物は、上記疾患の診断や治療のための医薬品候補化合物として有用である。特に、本発明のタンパク質の活性や発現を阻害する化合物には、抗癌剤としての利用が期待される。
【配列表】
【図面の簡単な説明】
図1は、各種DNA障害処理した細胞蛋白について、抗hChk2抗体を用いたウェスタンブロットで解析した結果を示す図面である。ここでは、抗hChk2ポリクローナル抗体で観察されたChk2とは挙動を異にする別種蛋白(本発明蛋白質)を示している。この蛋白には、各種DNA障害によって誘導されたリン酸化によると考えられるバンドシフトが観察された。一方、抗hChk2ポリクローナル抗体が認識する別種蛋白(本発明蛋白質)では、AT2KY細胞でもUV、MMS処理によるバンドシフトが観察された。
図2(図2−A〜図2−C)は、本発明の「hCdr2」のアミノ酸配列及びcDNA配列を示す図面である。
このうち、図2−Aは、cDNA配列における1〜900番目の塩基に相当する部位を示す図面である。
図2−Bは、図2−Aに続く図面で、cDNA配列における901〜1800番目の塩基に相当する部位を示す図面である。
図2−Cは、図2−Bに続く図面で、cDNA配列における1801〜2799番目の塩基に相当する部位を示す図面である。
図3(図3−A〜図3−C)は、「hCdr2」のアミノ酸配列を、分裂酵母のspCdr2、spCdr1のアミノ酸配列とともに整列化した図である。アミノ酸配列は1文字表記で表した。アミノ酸のギャップはハイフンで表した。3種でアミノ酸が一致する場合はアスタリスクで、2種でアミノ酸が一致する場合はドットで、その位置を示した。
このうち、図3−Aは、hCdr2のアミノ酸配列における1〜298番目のアミノ酸に相当する部位を示す図面である。
図3−Bは、図3−Aに続く図面で、hCdr2のアミノ酸配列における299〜567番目のアミノ酸に相当する部位を示す図面である。
図3−Cは、図3−Bに続く図面で、hCdr2のアミノ酸配列における568〜754番目のアミノ酸に相当する部位を示す図面である。
図4(図4−A〜図4−B)は、「hCdr2」のN末側(1−295)のアミノ酸配列を、分裂酵母のspCdr2のアミノ酸配列とともに整列化した図である。アミノ酸配列は1文字表記で表した。アミノ酸のギャップはハイフンでまた類似したアミノ酸である場合はドットで、その位置を示した。
このうち、図4−Aは、hCdr2のアミノ酸配列における1〜179番目のアミノ酸に相当する部位を示す図面である。
図4−Bは、図4−Aに続く図面で、hCdr2のアミノ酸配列における180〜359番目のアミノ酸に相当する部位を示す図面である。
図5は,hCdr2 mRNAのヒト組織での発現をノーザンブロッティングにより解析した図である。
図6(図6−A〜図6−C)は、A172ヒトglioblastoma培養癌細胞株において細胞周期におけるhCdr2の発現変化を解析した図である。
図6−Aは、ノーザンブロット法により解析したhCdr2の発現を示す図面である。
図6−Bは、ノーザンブロット法により解析したハウスキーピング遺伝子GAPDH(glyceraldehyde−3−phosphate dehydrogenase)の発現を示す図面である。
図6−Cは、PI(Propidium Iodate)染色によるFlow cytometory法にて細胞周期を解析した図面である。
図7は、バキュロウィルス発現ベクターを用い、昆虫細胞内で発現させたhCdr2リコンビナントタンパク質の量をウエスタンブロット法で解析した図である。
図8は、hCdr2がプロテインキナーゼであることの証明として、hCdr2のCdc25蛋白のリン酸化を解析した図である。
図8−Aは、基質としてGST−Cdc25C及びGST−Cdc25C S216Aを使用した場合のキナーゼアッセイを示す図である。
図8−Bは、基質としてGST−Cdc25B及びGST−Cdc25B S309Aを使用した場合のキナーゼアッセイを示す図である。
本発明は、細胞周期の調節に関与する哺乳動物由来のタンパク質およびその遺伝子に関する。より詳しくは、酵母の細胞増殖調節因子であるCdr1/Nim1及びCdr2と相同性を有する新規な細胞周期の調節に関与する蛋白質ヒトCdr2(Changed division response 2)をコードする遺伝子、該遺伝子を含有する組換えベクター、該ベクターによる形質転換体、該遺伝子を用いるヒトCdr2(hCdr2)の製造方法、該製造方法によって得られる組換えヒトCdr2に関する。
背 景 技 術
細胞の分裂、増殖には、遺伝子複製、有糸分裂等の過程が存在し、細胞周期が形成されている。正常な真核生物の細胞周期は、細胞の形態および生化学的活性の違いに応じて4つの段階(順番に、G1、S、G2、M)に分けられ、また細胞周期から離説した細胞をG0期、または非周期状態にあるという。細胞周期にある細胞が活発に複製しているとき、DNA複製はS期に起こり、細胞分裂はM期に起こる。細胞周期の進展は細胞周期チェックポイント(cell cycle checkpoint)により厳密に制御されており、例えば、DNAが損傷した場合には、修復されるまで有糸分裂は停止する(Science 274,1664−1672,1996;Science 246,629−634,1989)。多くの場合、DNA損傷反応経路は、サイクリン依存型キナーゼの活性を阻害することによって細胞周期停止をもたらす。ヒトの細胞の中ではDNA損傷によって起こるG2期の遅延はCdc2の阻害的なリン酸化に大きく依存している(Mol.Cell Biol.,8:1−11,1997;J.Cell Biol.,134,963−970,1996)ことから、この遅延は、Cdc2に作用する対抗キナーゼおよびCdc2に作用するホスファターゼの活性の変化から生じる可能性が高い。しかし、これらの酵素の活性がDNA損傷に応答して実質的に変化することの証拠はない(Cancer Res.,57:5168−5178,1997)。
ヒト細胞の中では、3種類のCdc25タンパク質が発現している。Cdc25Aは、G1期からS期に移行するのに特に必要である(EMBO.J.,13:4302−4310,1994;EMBO.J.,13:1549−1556,1994)が、Cdc25BとCdc25Cは、G2期からM期に移行するのに必要とされる(J.Cell Sci.,7:1081−1093,1996;Cell,67:1181−1194,1991;Proc.Natl.Acad.Sci Acd.USA,88:10500−10504,1991;J.Cell Biol.,138:1105−1116,1997)。M期の進行に対するCdc25BとCdc25Cの正確な関与は解っていない。
近年、細胞周期チェックポイントにおいて重要な役割を果たすと考えられる細胞周期調節因子が明らかになってきた(Science 277,1450,1997;Cell 91,865,1997)。例えば、パン酵母のサッカロミセス・セレビジエ(Saccharomyces cerevisiae)を用いた研究により、細胞周期調節因子としてキナーゼ活性を有するscCds1(Rad53,Chk2とも呼ばれる)が同定され(Genes & Development 8,2401,1994;Genes & Development,10,395,1996)、さらに、分裂酵母のシゾサッカロミセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)においてもscCds1の相同分子spCds1が同定され(Nature 374,817,1995;Genes & development 12,382,1998)、細胞周期調節因子の機能が徐々に明らかになってきた。
このメカニズムは、DNA傷害により細胞周期進行にかかわる因子の不活化シグナルが伝達されることによると考えられる。現在までに分かっているシグナル伝達機構は、DNA傷害によりATM(毛細血管拡張性運動失調症変異)キナーゼ等が活性化され、さらにChk1、Chk2といった分子がリン酸化により活性化され、G2停止においては、Chk1、Chk2が脱リン酸化酵素Cdc25CのSerine216のリン酸化を促し、14−3−3蛋白が結合して、Cdc25Cの核内移行を阻害する。Cdc25Cは、M期移行を司る核内酵素Cdc2キナーゼを活性化する酵素であり、結果としてCdc2の活性化が抑制されるため、G2停止が起こると考えられている。また、最近では、Chk2はp53癌抑制遺伝子蛋白の活性化を促し、転写因子であるp53は、サイクリン依存性キナーゼの阻害因子であるp21waf−1の発現を誘導することにより、G1期停止を促すことも報告されている。
このp53は、GADD45等G2停止にも関係する因子の発現も制御することも示唆されている。これらのことより、Chk1、Chk2等のキナーゼは、様々な因子の活性を制御し、DNA傷害時の細胞周期停止に関わっているものと推察される。
細胞周期の停止機構は、DNA傷害の修復時間を稼ぐ機構をして重要であり、特に癌治療においては、このような修復機構により癌細胞が放射線或いは抗がん剤による傷害から逃れているものと考えられる。従って、このチェックポイント機構を破壊すれば、癌細胞に対する放射線や抗がん剤の効果を高めることができると考えられる。
発 明 の 開 示
本発明は、spCdr1/Nim1やspCdr2と相同性を有する哺乳類由来の遺伝子及びそのタンパク質を提供することを主な目的とする。
本発明者らは、Chk2の機能を解析している過程で発見した新しい酵素が、細胞の増殖に関与し、癌やリウマチなどの様々な増殖性疾患の診断や治療のための新たな医薬品の開発の重要なツールとして利用しうることを見出し、本発明を完成するに至った。
具体的には、本発明者等は、ヒトの細胞周期調節因子であるChk2の機能を解析するため、Chk2に対するウサギポリクローナル抗体を作製した。該ポリクローナル抗体を用いたウェスタンブロッテイングにより各種のDNA傷害によるChk2のリン酸化を解析する過程で、該ポリクローナル抗体が交叉反応するタンパク質の一つが、DNA傷害によりリン酸化されることを見出した。
DNA傷害によりリン酸化状態が変化する蛋白は、DNA傷害に対応するための細胞内反応へのシグナルの伝達に関わることが予想される。このため、該抗体に反応する蛋白の遺伝子をクローニングし、その機能の解析を行った。具体的には、ラムダファージのヒトcDNA発現ライブラリーを用いて該抗体により検出される遺伝子クローンを選別し、その遺伝子配列を決定した結果、酵母Cdr2に相同性を有するヒトCdr2の遺伝子全長を単離することに成功した。酵母のCdr2はCdc2の不活化酵素であるWee1キナーゼをリン酸化することによって、Cdc2が不活化されることを阻害する。従って、Cdr2が不活化されると、結果として活性型のWee1により、Cdc2が不活化され、G2停止が誘導される。これに対し、本発明のタンパク質hCdr2は、S期を中心に発現し、Chk1、Chk2と同様に、Cdc25をリン酸化しうるプロテインキナーゼであることが明らかになった。
従って、本発明のタンパク質は、細胞周期の調節に関与していると考えられ、癌などの増殖性疾患の診断や治療のための新たな医薬品の開発の重要なツールとして利用しうる。特に、本発明のタンパク質の活性や発現を阻害する化合物には抗癌剤への応用が期待される。
本発明は、細胞周期の調節に関係する新規な哺乳動物由来のキナーゼタンパク質およびその遺伝子、これらタンパク質および遺伝子の検出、単離、製造などに用いられる分子、並びに該タンパク質の活性を調節する化合物のスクリーニングなどに関し、本発明は、spCdr1/Nim1やspCdr2と相同性を有する哺乳類由来の遺伝子、及びそのタンパク質を提供する。また、本発明は、該タンパク質の製造などに利用されるベクター、形質転換細胞、および組換えタンパク質の製造方法を提供する。また本発明は、該遺伝子の検出や単離などに利用されるオリゴヌクレオチド、および該タンパク質の検出や精製などに利用される抗体を提供する。
さらに、本発明は、該タンパク質に結合する化合物および該タンパク質の活性を促進若しくは阻害する化合物をスクリーニングする方法を提供する。即ち、本発明は、以下の発明を提供するものである。
項1. 以下の(i)又は(ii)のタンパク質。
(i)配列番号:1に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質;
(ii)配列番号:1に記載のアミノ酸配列において1若しくは複数のアミノ酸が置換、欠失、挿入および/もしくは付加したアミノ酸配列からなり、かつキナーゼ活性を有するタンパク質。
項2. 配列番号:2に記載の塩基配列からなるDNAとハイブリダイズする哺乳動物由来のDNAがコードするタンパク質であって、かつキナーゼ活性を有するタンパク質。
項3. Cdc25のリン酸化作用を有する項1又は2に記載のタンパク質。
項4. Cdc25Cのセリン216のリン酸化作用を有する項1又は2に記載のタンパク質。
項5. Cdc25Bのセリン309のリン酸化作用を有する項1又は2に記載のタンパク質。
項6. 以下の(i)又は(ii)のタンパク質をコードする遺伝子。
(i)配列番号:1に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質;
(ii)配列番号:1に記載のアミノ酸配列において1若しくは複数のアミノ酸が置換、欠失、挿入および/もしくは付加したアミノ酸配列からなり、かつキナーゼ活性を有するタンパク質。
項7. 以下の(i)又は(ii)のDNAを含む遺伝子。
(i)配列番号:2に記載の塩基配列からなるDNA;
(ii)配列番号:2に記載の塩基配列からなるDNAとハイブリダイズし、かつキナーゼ活性を有するタンパク質をコードする哺乳動物由来のDNA。
項8. 項6又は7に記載の遺伝子の発現産物。
項9. 項6又は7に記載の遺伝子を有する組換え体発現ベクター。
項10. 項9に記載の組換え体発現ベクターにより形質転換された形質転換体。
項11. 項10に記載の形質転換体を培養し、産生されたタンパク質を精製することを含む組換えタンパク質の製造方法。
項12. 項6又は7に記載の遺伝子と特異的にハイブリダイズする、少なくとも15ヌクレオチドの鎖長を有するオリゴヌクレオチド。
項13. 項6又は7に記載の遺伝子と特異的にハイブリダイズし、該遺伝子の発現を抑制することができる、少なくとも15ヌクレオチドの鎖長を有するオリゴヌクレオチド。
項14. 項1〜5のいずれかに記載のタンパク質又は項8に記載の発現産物に結合性を有する抗体。
項15. 項1〜5のいずれかに記載のタンパク質又は項8に記載の発現産物に結合する活性を有する化合物をスクリーニングする方法であって、
(a)項1〜5のいずれかに記載のタンパク質又は項8に記載の発現産物に被検試料を接触させる工程、
(b)項1〜5のいずれかに記載のタンパク質又は項8に記載の発現産物に結合する活性を有する化合物を選択する工程、
を含む方法。
項16. 項1〜5のいずれかに記載のタンパク質又は項8に記載の発現産物のキナーゼ活性を促進もしくは阻害する化合物をスクリーニングする方法であって、
(a)被検化合物の存在下で項1〜5のいずれかに記載のタンパク質又は項8に記載の発現産物とその基質とを接触させる工程、
(b)項1〜5のいずれかに記載のタンパク質又は項8に記載の発現産物の基質に対するキナーゼ活性を測定する工程、
(c)被検化合物の非存在下において測定を行った場合(対照)と比較して、項1〜5のいずれかに記載のタンパク質又は項8に記載の発現産物の基質に対するキナーゼ活性を促進または阻害する化合物を選択する工程、
を含む方法。
項17. 項15または16に記載の方法により単離しうる化合物。
項18. タンパク質である、項17に記載の化合物。
項19. タンパク質が抗体である、項18に記載の化合物。
項20. 項1〜5のいずれかに記載のタンパク質又は項8に記載の発現産物のキナーゼ活性を阻害する化合物を含有する医薬品組成物。
項21. 細胞内において項6又は7に記載の遺伝子の発現を阻害する化合物を含有する医薬品組成物。
項22. 抗癌剤である、項20又は21に記載の医薬品組成物。
項23. 癌の治療を目的とした医薬品を得るための、項20〜22のいずれかに記載の医薬品組成物の使用。
項24. 項20〜22のいずれかに記載の医薬品組成物を、治療的に有効な量で、癌を有する患者に投与する癌の治療方法。
項25. 項1〜5のいずれかに記載のタンパク質又は項8に記載の発現産物のキナーゼ活性を促進する化合物を含有する医薬品組成物。
項26. 細胞内において項6又は7に記載の遺伝子の発現を促進する化合物を含有する医薬品組成物。
項27. 創傷治癒剤である、項25又は26に記載の医薬品組成物。
項28. 創傷の治癒を目的とした医薬品を得るための、項25〜27のいずれかに記載の医薬品組成物の使用。
項29. 項25〜27のいずれかに記載の医薬品組成物を、治療的に有効な量で、創傷を有する患者に投与する創傷の治療方法。
本発明は、第一に、細胞周期の調節に関与する哺乳動物由来の新規なタンパク質に関する。
本発明のタンパク質に含まれる「hCdr2」と命名されたヒト由来のタンパク質のアミノ酸配列を配列番号:1に、該タンパク質をコードするcDNAを配列番号:2に示す。本発明者らが単離した「hCdr2」タンパク質は、酵母で知られている細胞周期調節因子spCdr2(Cell 49,569(1987))およびspCdr1(Molecular Biology of the Cell 9,3399(1998)及び同誌9,3321(1998))と有意な相同性を有する。
この事実は、「hCdr2」が酵母由来のタンパク質と同様に細胞周期の調節において機能し、この機能においてタンパク質におけるキナーゼ活性が重要な役割を担っていることを意味するものである。さらに、このような「hCdr2」タンパク質と細胞周期の調節との関係は、該タンパク質およびその遺伝子、さらには「hCdr2」タンパク質の機能を調節する化合物が、癌などの細胞周期の異常に関連する疾患の診断や治療へ応用しうることを示唆する。
本発明のタンパク質は、当業者に公知の方法により、遺伝子組換え技術を用いて調整することが可能である。組換えタンパク質であれば、例えば、本発明のタンパク質をコードするDNA(例えば、配列番号:2に記載の塩基配列を有するDNA)を適切な発現ベクターに組み込み、これを宿主細胞に導入して得た形質転換体から精製するなどの方法により調整することが可能である。また、天然のタンパク質であれば、例えば、調整した組み換えタンパク質を小動物に免疫することにより得た抗体を固定したカラムを調整し、本発明のタンパク質の発現する組織もしくは細胞の抽出物に対し該カラムを用いたアフィニティークロマトグラフィーを行うなどの方法により調整することが可能である。
また、本発明は、「hCdr2」タンパク質と機能的に同等なタンパク質に関する。このようなタンパク質を単離するための方法としては、タンパク質中のアミノ酸に変異を導入する方法が当業者にはよく知られている。当業者に公知のアミノ酸を改変する方法としては、例えば、文献「新細胞工学実験プロトコール 東京大学医科学研究所 制癌研究部編 p241−248(1993年発行)」に記載の方法が挙げられる。
また、市販の「Quick Change Site−Directed Mutagenesis Kit」(ストラタジーン社製)を利用して、配列番号:1に示された「hCdr2」タンパク質において、その機能に影響を与えないアミノ酸を適時置換などして、「hCdr2」タンパク質と機能的に同等なタンパク質を単離することは通常行いうる事である。また、アミノ酸の変異は自然界においても生じることもある。このように「hCdr2」タンパク質(配列番号:1)中のアミノ酸配列において1もしくは複数のアミノ酸が置換、欠失、挿入および/もしくは付加されたアミノ酸配列を有し、「hCdr2」タンパク質と機能的に同等なタンパク質も本発明のタンパク質に含まれる。
ここで「挿入」とは、上記アミノ酸配列中の両末端以外の部位にアミノ酸が付加されたことを意味し、「付加」とは、上記アミノ酸配列中の両末端部位にアミノ酸が付加されたことを意味するものである。
ここで「機能的に同等」とは、タンパク質が天然型の「hCdr2」タンパク質と同等のキナーゼ活性を有することを指す。本発明において「キナーゼ活性」とは、リン酸基(−PO3H2)を基質タンパク質(例えば、Wee1等)のセリン、スレオニンあるいはチロシン残基に転移させ、リン酸化タンパク質を生ずる活性を指す。タンパク質のキナーゼ活性は、後述の実施例に記載の方法に従って検出することが可能である。「hCdr2」タンパク質と機能的に同様なタンパク質において変異するアミノ酸の数は、「hCdr2」タンパク質と同等のキナーゼ活性を保持する限り特に制限はない。通常、50アミノ酸以内であり、好ましくは20アミノ酸以内であり、さらに好ましくは10アミノ酸以内であり、さらに好ましくは数個、より具体的には5アミノ酸以内である。また、変異部位は、「hCdr2」タンパク質と同等のキナーゼ活性を保持する限り、いかなる部位でも良い。
また、配列番号:1に記載のアミノ酸配列に対して一定の相同性を有しているポリペプチドであって、「hCdr2」タンパク質と機能的に同等なタンパク質も本発明のタンパク質に含まれる。一定の相同性とは、例えば、少なくとも、70%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、更に好ましくは95%以上の相同性であることができる。本発明は、かかる相同性を有する相同物を包含する。
また、機能的に同等なタンパク質を単離するための他の方法としては、ハイブリダイゼーション技術(例えば、Sambrook,J et al.,Molecular Cloning 2nd ed.9.47−98,58,Cold Spring Harbor Lab.Press,1989参照)を利用する方法が当業者には知られている。即ち、当業者であれば、「hCdr2」タンパク質をコードするDNA(配列番号:2)若しくはその一部を基に、これと相同性の高いDNAを単離して、該DNAから「hCdr2」タンパク質と機能的に同等なタンパク質を得ることも通常行いうることである。このように「hCdr2」タンパク質をコードするDNAとハイブリダイズするDNAがコードするタンパク質であって、「hCdr2」タンパク質と機能的に同等なタンパク質もまた本発明のタンパク質に含まれる。
ここで「機能的に同等」とは、上記と同様に、タンパク質が「hCdr2」タンパク質と同等のキナーゼ活性を有していることを指す。
機能的に同等なタンパク質を単離するための生物としては、ヒト以外に、例えば、マウス、ラット、イヌ、ウサギ、サルなどの哺乳動物が挙げられる。これらヒト以外の哺乳動物由来のタンパク質は、例えば、医薬品開発などのための動物モデル系の開発に有用である。
機能的に同様なタンパク質をコードするDNAを単離するためのハイブリダイゼーションの「ストリンジェントな条件」としては、例えば、10%ホルムアミド、5×SSPE,1×デンハルト溶液,1×サケ精子DNAの条件であり、さらに好ましい条件(さらにストリンジェントな条件)としては、25%ホルムアミド,5×SSPE,1×デンハルト溶液,1×サケ精子DNAの条件である。但し、ハイブリダイゼーションの「ストリンジェントな条件」に影響する要素としては上記ホルムアミド濃度以外にも複数考えられ、当業者であればこれら要素を適宜選択することで同様のストリンジェンシーを実現することが可能である。又、ハイブリダイゼーションにかえて、「hCdr2」タンパク質をコードするDNA(配列番号:2)の一部をプライマーに用いる遺伝子増幅法、例えば、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法を利用して単離することも可能である。有利には、例えば、クローニングしたい遺伝子の領域に対する約15から50ヌクレオチドからなる一組のプライマーを作り、このプライマーをヒト細胞由来のmRNA、cDNA、またはゲノムDNAと接触させ、所望の領域(必要であれば最初に逆転写ステップを行うこと)の増幅を生じるような条件下でPCR法を行い、増幅された領域または断片を単離し、増幅されたDNAを回収するということを一般的に含むPCRクローニングのメカニズムなどの組換え法または合成法などを用いて作製することができる。ここで定義されているような技術は、Sambrookら、Molecular Cloning:a Laboratory Manual,1989 by Cold Spring Harbor Laboratory Press;Current Protocols in Molecular Biology,Supplement 46,April 1999 by John Wiley & Sons,Inc.等に記載されているように、当技術分野において公知である。
これらハイブリダイゼーション技術または遺伝子増幅技術により単離される「hCdr2」タンパク質と機能的に同等なタンパク質をコードする哺乳類動物由来のDNAは、通常、配列番号:2に記載のヒト由来の「hCdr2」タンパク質をコードするDNAと高い相同性を有する。高い相同性とは、少なくとも70%以上、好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上の配列の同一性を指す。相同性の算出には、BLAST法、FASTA法等の当業者に周知の方法を用いることができ、例えば文献(Proc.Natl.Acad.Sci.USA 80:726,1983)に記載の方法を用いることができる。
また、本発明は、上記発明のタンパク質をコードする遺伝子に関する。本発明の遺伝子としては、本発明のタンパク質をコードしうるものであれば特に制限はなく、2本鎖DNAのみならず、それを構成するセンス鎖、アンチセンス鎖等の1本鎖DNAも包含し、cDNA、ゲノムDNA、化学合成DNAなどが含まれる。
具体的には、
配列番号:1に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードする遺伝子、
配列番号:1に記載のアミノ酸配列において1若しくは複数のアミノ酸が置換、欠失、挿入および/もしくは付加したアミノ酸配列からなり、かつキナーゼ活性を有するタンパク質をコードする遺伝子、
配列番号:2に記載の塩基配列からなるDNAからなる遺伝子、
配列番号:2に記載の塩基配列からなるDNAとハイブリダイズし、かつキナーゼ活性を有するタンパク質をコードする哺乳動物由来のDNAからなる遺伝子、配列番号:1に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするポリヌクレオチドまたは配列番号:2に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチドに対して、一定の相同性を有しているポリヌクレオチドからなる遺伝子が例示できる。「一定の相同性を有しているポリヌクレオチド」とは、例えば、少なくとも、50%以上、好ましくは70%以上、より好ましくは90%以上の相同性であることができる。本発明は、かかる相同性を有する相同物を包含する。
本発明の遺伝子は、当業者に通常利用される方法、例えば、配列番号:2に開示された塩基配列の一部若しくは全部をプローブとして利用した、cDNAライブラリーやゲノムライブラリーのスクリーニング、あるいは塩基配列の一部若しくは全部をテンプレートとして利用したPCR法により単離することが可能である。
本発明の遺伝子(DNA)は、例えば、上記本発明のタンパク質を組み換えタンパク質として量産する目的に利用しうる。組み換えタンパク質の製造においては、本発明のタンパク質をコードする遺伝子(例えば、配列番号:2に記載のDNA)を適当な発現ベクターに挿入し、該ベクターを適当な宿主細胞に導入して得た形質転換体を培養し、発現させたタンパク質を精製する。
組み換えタンパク質の生産に用いる宿主−ベクター系としては、当業者に公知の多くの系を用いることが可能である。宿主細胞としては、特に制限されないが、例えば、大腸菌等の原核細胞、酵母、動物細胞、昆虫細胞などの真核細胞が挙げられる。細胞内で組み換えタンパク質を発現させるためのベクターは、宿主細胞に応じて変えられるが、例えば、大腸菌であればpGEX(ファルマシア社製)、pET(ノバーゲン社製)が好適に用いられ、動物細胞であればpcDNA3.1(インビトロゲン社製)が好適に用いられ、昆虫細胞であればpVL1392(インビトロゲン社製)、Bac−to−Bac baculovirus expression system(ギブコBRL社製)が好適に用いられる。発現ベクターは、複製起源、選択マーカー、プロモーター、RNAスプライス部位、ポリアデニル化シグナルなどを含むことができる。
細胞へのベクターの導入は、当業者に公知の方法、例えば、電気的穿孔法、リン酸カルシウム法、リポフェクション法、DEAEデキストラン法などの方法で行うことが可能である。
形質転換体の培養、および形質転換体に発現させた組み換えタンパク質の分離、精製は、常法により行うことが可能である。ベクターとしては、例えば、pGEX(ファルマシア社製)を用いた場合にはグルタチオンセファロースアフィニティークロマトグラフィーにより、またpET(ノバーゲン社製)を用いた場合にはニッケルアガロースアフィニティークロマトグラフィーにより発現させた組み換えタンパク質(融合タンパク質)を容易に精製することができる。
本発明は、上記遺伝子の発現産物も包含するものである。即ち、上記タンパク質のみならず、宿主細胞による特有の修飾を受けているもの(例えば、糖鎖の結合、リン酸化体等)も本発明に包含される。
また、本発明の遺伝子は、遺伝子治療への応用も考えられる。本発明の遺伝子は、細胞周期の調節に関与しているため、特に癌などの増殖性疾患などが遺伝子治療の主な対象疾患である。本発明の遺伝子を遺伝子治療目的で利用する場合には、本発明の遺伝子をヒト体内で発現させるためのベクターに組み込み、例えば、レトロウィルス法、リポソーム法、アデノウィルス法などを用いて、in vivoまたはex vivo投与することにより体内に導入する。
また、本発明は、本発明のタンパク質に結合する抗体に関する。本発明の抗体の形態には、特に制限はなく、ポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体が含まれる。また、キメラ抗体、ヒト型抗体、およびヒト抗体などの抗体を含む。さらに、完全な形態の抗体のみならず、Fab断片、F(ab’)2断片、シングルチェインscFvなどを含む。本発明の抗体は当業者に公知の方法で作製することができる。ポリクローナル抗体であれば、例えば、本発明のタンパク質をウサギなどに注入し、硫安沈殿によりイムノグロブリン画分を精製するなど公知の方法で調整することが可能である。また、モノクローナル抗体であれば、例えば、本発明のタンパク質で免疫されたマウスの脾細胞を用いて骨髄腫細胞とのハイブリドーマを調整し、培養液中に分泌されるモノクローナル抗体を得て、さらに腹腔内に注入して大量のモノクローナル抗体を得るなどの方法で調整することが可能である。これにより調整された抗体は、本発明のタンパク質のアフィニティー精製や検出のために用いられる他、本発明のタンパク質の発現異常などに起因する癌などの細胞増殖性疾患の診断や抗体治療などに応用することも考えられる。抗体治療に用いる場合には、免疫原性の観点から、ヒト化抗体もしくはヒト抗体であることが好ましい。
また、本発明は、本発明のタンパク質をコードする遺伝子と特異的にハイブリダイズし、少なくとも15ヌクレオチドの鎖長を有するオリゴヌクレオチドに関する。ここで「オリゴヌクレオチド」とは、天然に存在する塩基および本来のホスホジエステル結合によって結合した糖部分から生成されたオリゴヌクレオチドおよびその類似体を意味する。したがって、この用語が含む第1の群は、天然に存在する種または天然に存在するサブユニットまたはそれらの同族体から生成された合成種である。また、サブユニットとは隣接するサブユニットに対してホスホジエステル結合または他の結合によって結合した塩基−糖の組み合わせをいう。またオリゴヌクレオチドの第2の群はその類似体であり、これはオリゴヌクレオチドと同様に機能するが、天然に存在していない部分を有する残基を意味する。これらには、安定性を増加するためにリン酸基、糖部分、3’−,5’−末端に化学修飾を施したオリゴヌクレオチドを含む。例えば、ヌクレオチド間のホスホジエステル基の酸素原子の1つを硫黄に置換したオリゴホスホロチオエート、−CH3に置換したオリゴメチルホスホネートなどが挙げられる。また、ホスホジエステル結合は、非イオン性かつ非キラル性である他の構造で置換されていてもよい。さらに、オリゴヌクレオチド類似体としては、修飾された塩基形態、すなわち天然に通常見いだされるもの以外のプリンおよびピリミジンを含む種を用いてもよい。本発明においては「オリゴヌクレオチド」にはDNA、RNAの他、ペプチド核酸(PNA、例えば、Bioconjugate Chem.Vol.5,No.1,1994を参照)も含まれる。
ここで「特異的にハイブリダイズする」とは、通常のハイブリダイゼーション条件下、好ましくはストリンジェントな条件下で、他のタンパク質をコードする遺伝子とクロスハイブリダイゼーションが有意に生じないことを指す。ここで「ストリンジェントな条件」とは上述の通りである。このようなオリゴヌクレオチドは、本発明のタンパク質をコードする遺伝子を検出、単離するためのプローブとして、また増幅するためのプライマーとして利用可能である。
本発明は、更に、本発明遺伝子と特異的にハイブリダイズし、該遺伝子の発現を抑制することができる、少なくとも15ヌクレオチドの鎖長を有するオリゴヌクレオチドにも関する。具体的には、本発明遺伝子のDNAと特異的に結合して転写を阻害する上記オリゴヌクレオチド、本発明遺伝子のmRNAの特定部分に結合して、翻訳を阻害する上記オリゴヌクレオチドが含まれる。該「オリゴヌクレオチド」には、DNA、RNA、PNA等が含まれる。該オリゴヌクレオチドは、天然型のオリゴヌクレオチドであってもよいし、効果的に細胞に取り込まれるために修飾されていてもよい。例えば、天然型に見られるリン酸結合の酸素原子をイオウ原子に置換してもよい。上記オリゴヌクレオチドを使用するアンチセンス法やトリプレット法に関しては、Murray,J.A.H.,;Antisense RNA and DNA:WileyLiss,Inc.,New York,pp1−49(1992)に記載に従って、行うことができる。
本発明において、オリゴヌクレオチドがハイブリダイズするmRNAの標的部分としては、転写開始部位、翻訳開始部位、イントロン/エキソン結合部位又は5´キャップ部位が好ましいが、mRNAの二次構造を考慮して、例えば、立体障害のない部分を選択してもよい。
本発明のオリゴヌクレオチドがハイブリダイズするDNAの標的部分としては、例えば、本発明の遺伝子の調節領域に結合して転写調節因子を接近させないようにしてもよい。
本発明の特に好ましい態様は、配列表の配列番号1に示すアミノ酸配列をコードする塩基配列とハイブリダイズし、hCdr2タンパク質の発現を阻害しうるオリゴヌクレオチドである。
本発明によるオリゴヌクレオチドは、当業者で公知の合成法、例えばAppliedBiosystems社などの合成装置を用いる固相合成法によって製造できる。同様の方法を用いて、他のオリゴヌクレオチド類似体、例えば、ホスホロチオエートやアルキル化誘導体を製造することもできる(村上 章ら、「機能性アンチセンスDNAの化学合成」、有機合成化学、48(3):180−193、1990)。
また、本発明は、本発明のタンパク質及び発現産物に結合する化合物のスクリーニング方法に関する。本発明のスクリーニング法は、(a)本発明のタンパク質及び発現産物と被検試料とを接触させる工程、および(b)本発明のタンパク質及び発現産物に結合する活性を有する化合物を選択する工程を含む。
スクリーニングに用いる被検試料としては、例えば、精製タンパク質(抗体を含む)、遺伝子ライブラリーの発現産物、合成ペプチドのライブラリー、細胞抽出液、細胞培養上清、合成低分子化合物のライブラリーなどが挙げられるが、これらに制限されない。
本発明のタンパク質及び発現産物に結合する活性を有する化合物を選択する方法としては、当業者に公知の多くの方法(例えば、BIA coreや本発明のタンパク質及び発現産物を固相化したアフィニティカラム等)を用いることができる。
本発明のタンパク質(発現産物も含む)を用いてこれに結合する化合物を単離する方法としては、例えば、以下の方法が当業者によく知られている。本発明のタンパク質と結合するタンパク質は、例えば、本発明のタンパク質と結合するタンパク質を発現していることが予想される細胞よりファージベクター(λgt11,ZAPなど)を用いたcDNAライブラリーを作製し、これをLB−アガロース上で発現させフィルターに発現させたタンパクを固定し、本発明のタンパク質をビオチンラベル、あるいはGSTタンパク質との融合タンパク質として精製し、これを上記フィルターと反応させ、結合するタンパク質を発現しているプラークを、ストレプトアビジン、あるいは抗GST抗体により検出する「ウェストウェスタンブロッテイング法」(Skolnik EY,Margolis B,Mohammadi M,Lowenstein E,Fischer R,Drepps A,Ullrich A,and Schlessinger J(1991)Cloning of PI3 kinase−associated p85 utilizing a novel method for expression/cloning of target proteins for receptor tyrosine kinase.Cell 65,83−90)により調整することが可能である。また、本発明のタンパク質に結合するタンパク質は、「twoハイブリッドシステム」(「MATCHMAKER Two−Hybrid System」,「Mammalian MATCHMAKER Two−Hybrid Assay Kit」、「MACHMAKER One−Hybrid System」(いずれもクロンテック社製)「HybriZAP Two−Hybrid Vector System」(ストラタジーン社製)、「Dalton S,and Treisman R(1992)Characterization of SAP−1,a protein recruited by serum response factor to the c−fos serum response element.Cell 68,597−612」)を利用して調整することも可能である。
Twoハイブリッドシステムにおいては、まず、本発明のタンパク質をSRF結合領域またはGAL4結合領域と融合させて酵母細胞の中で発現させ、本発明のタンパク質と結合するタンパク質を発現していることが予想される細胞より、VP16またはGAL4転写活性化領域と融合する形で発現するようなcDNAライブラリーを作製し、これを上記酵母細胞に導入する。次いで、検出された陽性クローンからライブラリー由来cDNAを単離する(酵母細胞内で本発明のタンパク質と結合するタンパク質が発現すると、両者の結合によりレポーター遺伝子が活性化され、陽性のクローンが確認できる)。さらに、単離したcDNAを大腸菌などに導入し、これにより発現させたタンパク質を精製することにより、該cDNAがコードするタンパク質を得ることができる。
さらに、本発明のタンパク質を固定したアフィニティカラムに本発明のタンパク質と結合するタンパク質を発現していることが予想される細胞の培養上清もしくは細胞抽出物をのせ、カラムに特異的に結合するタンパク質を精製することにより調整することも可能である。得られたタンパク質のアミノ酸配列を分析し、それを基にオリゴDNAを合成し、該DNAをプローブとしてcDNAライブラリーをスクリーニングすることにより、本発明のタンパク質と結合するタンパク質をコードするDNAを得ることも可能である。
また、固定した本発明タンパク質に、合成化合物、又は天然物バンク、若しくはランダムファージペプチドディスプレイライブラリーを作用させ、結合する分子をスクリーニングする方法や、コンビナトリアルケミストリー技術によりハイスループットを用いたスクリーニング(Science,273 458−464,1996;Nature,384,11−13,1996;Nature,384,17−19,1996)により本発明タンパク質に結合する低分子化合物、タンパク質(又はその遺伝子)、ペプチドなどを単離する方法も当業者に周知の技術である。
これにより得られる本発明タンパク質に結合する化合物は、本発明タンパク質の活性を促進または阻害するための薬剤の候補となる。また、本発明タンパク質に結合する細胞内タンパク質は、生体内において本発明タンパク質の細胞周期の調節機能、より具体的にはキナーゼ活性に密接に関連していると考えられる。このため本発明のタンパク質に結合する細胞内タンパク質が得られれば、この両者の結合を阻害する化合物をスクリーニングすることにより、癌などの細胞周期の調節異常に起因する疾患に対する医薬品開発を行うことが可能となる。
また、本発明は、本発明タンパク質の活性の阻害剤または促進剤のスクリーニング方法に関する。本発明のスクリーニング法は、(a)被検化合物の存在下で本発明のタンパク質(発現産物を含む)とその基質とを接触させる工程、(b)本発明のタンパク質の基質に対するキナーゼ活性を測定する工程、および(c)被検化合物の非存在下において測定を行った場合(対照)と比較して、本発明のタンパク質の基質に対するキナーゼ活性を促進または阻害する化合物を選択する工程、を含む。スクリーニングに用いる被検化合物としては特に制限はなく、例えば、合成低分子化合物のライブラリー、精製タンパク質(抗体を含む)、遺伝子ライブラリーの発現産物、合成ペプチドのライブラリー、細胞抽出液、細胞培養上清などを用いることが可能である。
また、本発明タンパク質のキナーゼ活性の検出に利用される基質としては、例えば、Cdc25(例えば、Cdc25A、Cdc25B又はCdc25C、特には、Cdc25B又はCdc25C)、またはこれらの断片などを用いることが可能であるが、これらに制限されない。本発明のタンパク質と基質との接触反応は、例えば、以下のように行うことができる。
被検化合物、本発明タンパク質、基質、およびリンが放射標識されているATPを含む緩衝液を調製する。適当な時間、本発明タンパク質と基質との反応を行わせた後、キナーゼ活性の検出を行う。キナーゼ活性を、基質に結合したリンの放射活性を検出することにより測定する。放射活性の検出は、反応液を電気泳動(SDS−PAGE)にて分離し、ゲルを乾燥した後、オートラジオグラフィーにてリン酸化された基質のバンドを検出することにより行うことができる。一方、対照として、被検化合物を添加せずに同様にキナーゼ活性の検出を行う。次いで、対照と比較して、有意なキナーゼ活性の増加若しくは低下をもたらした化合物を選択する。これにより得られる、有意なキナーゼ活性の増加をもたらした化合物は、本発明タンパク質の促進剤の候補となり、創傷治癒剤などの医薬品開発を行うことが可能となる。
また有意なキナーゼ活性の低下をもたらした化合物は、本発明タンパク質の阻害剤の候補となり、癌などの細胞周期の調節異常に起因する疾患に対する医薬品開発を行うことが可能となる。
癌細胞においてhCdr2経路を特異的に阻害する薬剤(hCdr2遣伝子の発現を阻害する薬剤)は、例えば、癌細胞株に、候補化合物を接触させ、次いで、hCdr2遺伝子の発現を検出し、該遺伝子の発現を候補化合物を接触させていない対照と比較して低下させる化合物を選択することにより、単離することが可能である。
hCdr2遺伝子の発現の検出は、転写産物レベルであれば、例えば、ノーザンブロッティング法などの公知の方法により、翻訳産物レベルであれば、例えば、ウェスタンブロッティング法などの公知の方法により行なうことが可能である。また、hCdr2遺伝子のプロモーターの下流に連結されたレポーター遺伝子を含むベクターを細胞に導入し、レポーター活性を指標にhCdr2遺伝子の発現を検出してもよい。
本発明は、本発明タンパク質のキナーゼ活性を阻害する化合物を含有する医薬組成物および本発明タンパク質の発現を阻害する化合物を含有する医薬組成物、好ましくは抗癌剤である医薬組成物を包含する。
本発明は、本発明タンパク質のキナーゼ活性を促進する化合物を含有する医薬組成物および本発明タンパク質の発現を促進する化合物を含有する医薬組成物、好ましくは創傷治癒剤である医薬組成物を包含する。
本発明のスクリーニング方法を用いて得られる化合物をヒトや哺乳動物、例えばマウス、ラット、モルモット、ウサギ、ニワトリ、ネコ、イヌ、ヒツジ、ブタ、ウシ、サル、マントヒヒ、チンパンジーの医薬として使用する場合には、単離された化合物自体を直接患者に投与する以外に、公知の製剤学的方法により製剤化して投与を行うことも可能である。例えば、必要に応じて糖衣を施した錠剤、カプセル剤、エリキシル剤、マイクロカプセル剤として経口的に、あるいは水もしくはそれ以外の薬学的に許容し得る液との無菌性溶液、又は懸濁液剤の注射剤の形で非経口的に使用できる。例えば、薬理学上許容される担体もしくは媒体、具体的には、滅菌水や生理食塩水、植物油、乳化剤、懸濁剤、界面活性剤、安定剤、薬味剤、賦形剤、ベヒクル、防腐剤、結合剤などと適宜組み合わせて、一般に認められた製薬実施に要求される単位用量形態で混和することによって製剤化することが考えられる。これら製剤における有効成分量は指示された範囲の適当な容量が得られる用にするものである。
錠剤、カプセル剤に混和することができる添加剤としては、例えばゼラチン、コーンスターチ、トラガントガム、アラビアゴムのような結合剤、結晶性セルロースのような賦形剤、コーンスターチ、ゼラチン、アルギン酸のような膨化剤、ステアリン酸マグネシウムのような潤滑剤、ショ糖、乳糖またはサッカリンのような甘味剤、ペパーミント、アカモノ油又はチェリーのような香味剤が用いられる。調剤単位形態がカプセルである場合には、上記の材料にさらに油脂のような液状担体を含有することができる。注射のための無菌組成物は注射用蒸留水のようなペヒクルを用いて通常の製剤実施に従って処方することができる。
注射用の水溶液としては、例えば生理食塩水、ブドウ糖やその他の補助薬を含む等張液、例えばD−ソルビトール、D−マンノース、D−マンニトール、塩化ナトリウムが挙げられ、適当な溶解補助剤、例えばアルコール、具体的にはエタノール、ポリアルコール、例えばプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、非イオン性界面活性剤、例えばポリソルベート80(TM)、HCO−50と併用してもよい。
油性液としてはゴマ油、大豆油があげられ、溶解補助剤として安息香酸ベンジル、ベンジルアルコールと併用してもよい。また、緩衝剤、例えばリン酸塩緩衝剤、酢酸ナトリウム緩衝剤、無痛化剤、例えば、塩酸プロカイン、安定剤、例えばベンジルアルコール、フェノール、酸化膨化剤と配合してもよい。調製された注射液は通常、適当なアンプルに充填させる。
患者への投与は、例えば、動脈内注射、静脈内注射、皮下注射などのほか、鼻腔内的、経気管支的、筋内的、経皮的、または経口的に当業者に公知の方法により行いうる。投与量は、患者の体重や年齢、投与方法などにより変動するが、当業者であれば適当な投与量を適宜選択することが可能である。また、該化合物がDNAによりコードされうるものであれば、該DNAを遺伝子治療用ベクターに組込み、遺伝子治療を行うことも考えられる。投与量、投与方法は、患者の体重や年齢、症状などにより変動するが、当業者であれば適宜選択することが可能である。
例えば、上記化合物の投与量は、症状により差異はあるが、経口投与の場合、一般的に成人(体重60kgとして)においては、1日あたり約0.1〜100mg、好ましくは約1.0から50mg、より好ましくは約1.0から20mgである。
非経口的に投与する場合は、その1回投与量は投与対象、対象臓器、症状、投与方法によっても異なるが、例えば注射剤の形では通常成人(体重60kgとして)においては、1日あたり約0.01から30mg、好ましくは約0.1から20mg、より好ましくは約0.1から10mg程度を静脈注射により投与するのが好都合である。他の動物の場合も、体重60Kg当たりに換算した量、あるいは体表面積あたりに換算した量を投与することができる。
発明を実施するための最良の形態
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に制限されるものではない。
実施例1:抗hChk2ポリクローナル抗体の作製
国際公開WO99/67369号記載のヒト(h)Chk2遺伝子を、バキュロウィルス(Baculovirus)発現ベクターpVL1392(Invitrogen社製)にサブクローニングし、pVL1392hChk2myc/6Hisを作製した。昆虫細胞Sf−9 105cells当たりに1μgのpVL1392hChk2myc/6Hisと0.5μgのlinearized baculovirus DNAをベクターキットBaculoglod(PharMigen社製)を用いて共感染させ、hChk2蛋白を発現させた。hChk2蛋白をProbond Resin(ニッケルNTAレジンの商品名:Invitrogen社製)を用いて精製し、これを抗原として常法に従ってウサギに免疫した。得られた抗血清より、GST−hChk2を結合させたCNBr−activated Sepharose 4B(Amersham Pharmacia Biotech社製)を用いて抗hChk2ポリクローナル抗体を精製した(Journal of Biological Chemistry Vol.274.No.44,pp31463−31467,1999参照)。
実施例2:抗hChk2ポリクローナル抗体で認識されるリン酸化蛋白の検出
実施例1で得られた抗hChk2抗体を用いて、各種DNA障害処理した細胞蛋白をウェスタンブロットで解析した。正常ヒト繊維芽細胞株MJ90とataxia telangiectasia(毛細血管拡張性運動失調症)患者より樹立された繊維芽細胞株AT2KYに、ioning radiation(X−ray;10Gy)、UV照射0.07J/cm2およびメチルメタンスルホン酸(MMS)(0.03%)で1,4,8時間処理した細胞より、protease inhibitor(20μg/ml soybean trypsin inhibitor,2μg/ml aprotinin,5μg/ml leupeptin,100μg/mlフェニルメチルスルホニルフルオライド(PMSF))、phosphatase inhibitor(50mM NaF,0.1mM Na3VO4,5mg/ml phosphatase substrate)を含むIP kinase buffer(50mM HEPES,pH8.0,150mM NaCl,2.5mM EGTA,1mM EDTA,0.1% Tween 20,10% glycerol)を用いて氷中で冷やしながらセルライゼートを作製し、その遠心上清(100μg)を8%SDS−Polyacrylamide gelで電気泳動し、PVDF膜に転写し、常法に従って抗hChk2ポリクローナル抗体を一次抗体としてウェスタンブロッティングを行った。
その結果、hChk2とは分子量が異なる新蛋白が検出され、且つこの蛋白には各種DNA障害によって誘導されたリン酸化によると考えられるバンドシフトが観察された(図1)。
Chk2は正常細胞ではDNA障害処理によりリン酸化によるバンドシフトが観察されるが、ATMキナーゼの欠損細胞AT2KYにおいてこのバンドシフトが起こらないことより、Chk2はATMキナーゼでリン酸化されて活性化されると考えられている(Journal of Biological Chemistry Vol.274.No.44,pp31463−31467,1999参照)。
一方、実施例1で得られた抗hChk2ポリクローナル抗体が認識する別蛋白では、AT2KY細胞でもUV、MMS処理によるバンドシフトが観察され、ATM以外のキナーゼでリン酸化を受けているものと考えられた。そこで、該蛋白のクローニングに着手した。
実施例3:hCdr2 cDNAの同定
クローンテック社Human fetal brain cDNA(ラムダgt11)と実施例1で得られた抗hChk2ポリクローナル抗体を用いてイムノスクリーニングを行った(抗体希釈:1:2000)。スクリーニングの詳細はストラタジーン社製pico Blue Immunoscreeining kitを用いて、マニュアルに従い、行った。得られた陽性クローンの1つはタンパク質リン酸化酵素に特有のドメインを持つ遺伝子をコードしており、この遺伝子cDNAの部分配列をもとに上記と同様のライブラリーを用いてハイブリダイゼーション法によりスクリーニングを行い全cDNA配列を決定した(配列番号2)。該cDNA配列からアミノ酸配列を推定した(配列番号1)。図2にアミノ酸配列及びcDNA配列を示す。
図3にヒトの「hCdr2」のアミノ酸配列を、分裂酵母のspCdr2,spCdr1のアミノ酸配列とともに整列化した図を示す。アミノ酸配列は1文字表記で表した。アミノ酸のギャップはハイフンで表した。3種でアミノ酸が一致する場合はアスタリスクで、2種でアミノ酸が一致する場合はドットで、その位置を示した。hCdr2とspCdr2およびspCdr1に配列の類似性が見出された。蛋白全体でのアミノ酸配列のホモロジーは、spCdr2に対して28.2%、spCdr1に対して23.9%であった。一方、hChk2に対しては、ホモロジーは低く8.4%であり、hCdr2の検出に用いた抗体の認識するエピトープ部位が類似していたものと考えられた。
更に、図4は,「hCdr2」のN末側(1−295)のアミノ酸配列を、分裂酵母のspCdr2のアミノ酸配列とともに整列化した図を示す。アミノ酸配列は1文字表記で表した。アミノ酸のギャップはハイフンでまた類以したアミノ酸である場合はドットで、その位置を示した。特にキナーゼドメインがあるN末側hCdr2 catalytic domain(1−295aa)で高い類似性が確認され、spCdr2に対しては45.8%、spCdr1では35.6%であった。
実施例4:ノーザンブロッテングによる検出
完全長のヒトCdr2 cDNAを32Pで標識した後に、TOYOBO Human normal tissue mRNA blotを用いてハイブリダイゼーション溶液(Ambion社製、Ultra Hyb)中でノーザンブロットを行った。結果は、特に脳・精巣で強く発現を認めた(図5)。
また、HeLaヒト子宮癌細胞、A172ヒトグリオブラストーマ(glioblastoma)培養癌細胞株におけるhCdr2の発現についてRT−PCR法(プライマー配列1:ACTGCATCACGGGTCAGAAGG、プライマー配列2:CGAGACGTGCTCCAGAACCAG)により調べた(RT−PCR法については「Sambrookら、Molecular Cloning:a Laboratory Manual,1989 by Cold Spring Harbor Laboratory Press」参照)。結果、両細胞株で転写産物が検出された。つぎに、細胞周期調節因子であるということを考慮して細胞周期依存的な発現についてA172細胞を用いて調べた。A172細胞を過剰チミジン処理(日本組織培養学会編、組織培養の技術、5章、1991年、朝倉書店発行)によりG1/S境界期に停止させて同調させ、その後チミジンを除いた通常培地に交換することにより細胞周期を回転させた。リリース後の適当な時間(0,3,7,9,12及び24時間)経過後サンプリングを行い、mRNAの調整と細胞周期の解析を行った。各サンプリング時に調整されたmRNA10μg用いてノーザンブロットを行い、hCdr2のmRNAの発現を解析した。なお、アッセイに用いるmRNA量をサンプル間で揃えるために、ハウスキーピング遺伝子の1つであるGAPDH(glyceraldehyde−3−phosphate dehydrogenase)を指標として用いた(図6−B)。また、各サンプリング時での細胞周期を解析するために、PI(Propidium Iodate)染色によるFlow cytometory法を用いてFACS解析を行った。この結果、hCdr2はほとんどの細胞がS期に存在する時間帯(リリース後3時間目)に最も高い発現を観察し、S期に最も発現誘導されることが明らかになった。また、リリース後24時間では発現量は減弱しており、G1期ではあまり発現されていないことが判明した(図6−A及び図6−C)。
実施例5:プロテインキナーゼ活性の検出(リコンビナントタンパク質の発現とキナーゼアッセイ)
in vitroキナーゼアッセイを行うためにhCdr2のワイルドタイプ(wt)及び59番目のアミノ酸K(リジン)をA(アラニン)に変換したkinase dead型変異蛋白K59AをコードするcDNAを導入したバキュロウィルスをPharmigen社のBaculovirus Expression Vector Systemを用いて作製した。hCdr2 wt及びhCdr2 K59A蛋白の回収は、抗c−Mycタグ抗体を用いた免疫沈降法により行った。バキュロウィルスからは、共に90kD程度の大きさを持つリコンビナントタンパク質が生産されることが、リコンビナント蛋白の末端に存在するc−Mycタグに対する抗体を用いたウエスタンブロット法により確認された。一方、hCdr2遺伝子を導入していないバキュロウィルスを感染させたmockでは、hCdr2に相当する分子量の蛋白は検出されなかった(図7)。
また、アッセイの基質にするために大腸菌を用いてヒトWee1(全長蛋白)、ヒト脱リン酸化酵素Cdc25C(C末側ペプチド:195−260aa)、ヒト脱リン酸化酵素Cdc25B(C末側ペプチド:281−381aa)を有するGST−融合リコンビナントタンパク質(GST−Cdc25C及びGST−Cdc25B)を作製した。これらのリコンビナントタンパク質を用いてキナーゼアッセイを行うと、S.pombeのヒトホモログであるにもかかわらずヒトWee1をリン酸化することはできなかった。しかし、hCdr2は細胞周期の制御因子でありM期チェックポイントに関わるヒトCdc25C及びCdc25Bをリン酸化することが明らかとなった。そこで、Cdc25C及びCdc25Bのリン酸化部位を明らかにするために14−3−3タンパク質の結合領域を含むペプチド断片を再度大腸菌にて発現させてキナーゼアッセイを行うと、14−3−3タンパク質の結合領域がリン酸化されることがわかった。14−3−3タンパク質の結合に必要とされるCdc25Cアミノ酸配列の216番のセリンをアラニンに変換した変異導入基質GST−Cdc25C S216A、とCdc25Bアミノ酸配列の309番のセリンをアラニンに変換した変異導入基質GST−Cdc25B S309Aを目的の塩基を変異させたプライマーを用いたPCR法により作製し、基質として使用した(PCR法については「Sambrookら、Molecular Cloning:a Laboratory Manual,1989 by Cold Spring Harbor Laboratory Press」参照)。これらの基質を用い、γ−[32P]−ATPを含む緩衝液中でタンパク質と基質との反応を行わせた後、反応液を電気泳動(SDS−PAGE)にて分離し、ゲルを乾燥した後、オートラジオグラフィーにてリン酸化された基質のバンドを検出した。
結果、基質としてGST−Cdc25Cを使用した場合、hCdr2 wt蛋白はGST−Cdc25C(C末側ペプチド:195−260aa)をリン酸化したが、hCdr2 K59A蛋白はリン酸化できなかった。また、GST−Cdc25C S216Aを基質とした場合は、hCdr2 wt蛋白でもリン酸化が起こらなかった(図8−A)。この結果は、hCdr2はCdc25CのS216をリン酸化するプロテインキナーゼであることを示している。
また、基質としてGST−Cdc25Bを使用した場合、hCdr2 wt蛋白は、GST−Cdc25B(C末側ペプチド:282−381aa)を強くリン酸化したのに対し、mock及びhCdr2 K59Aのリン酸化作用は弱いものであった。また、GST−Cdc25B S309Aを基質とした場合は、hCdr2 wt蛋白でもリン酸化が起こらなかった(図8−B)。これらの結果は、hCdr2はCdc25BのS309をリン酸化するプロテインキナーゼであることを示している。
以上、これらの変異導入基質に対してはhCdr2はキナーゼ活性を示さなかった。このためhCdr2のin vitroでのCdc25C及びCdc25Bに対するリン酸化部位は、それぞれセリン216番とセリン309番を含むことが証明された。また、hCdr2のATP結合部位の変異蛋白hCdr2 K59Aは、Cdc25C及びBペプチドに対するリン酸化能はなかったことから、キナーゼアッセイで示されたリン酸化はwtリコンビナントhCdr2由来であることが確認された。
実施例6:細胞内での局在性
hCdr2の細胞内での局在性を解析するために、pEGFP−N1(Genebank Accession#:U55762)ベクターにhCdr2遺伝子を挿入し、TransIT−LT1(Mirus社)を用いてGFP融合hCdr2をHela細胞に一過性形質転換(transient transfection)した。蛍光顕微鏡で観察すると、GFP−hCdr2は細胞質および核に存在することが確認できた。
産業上の利用の可能性
本発明により、キナーゼ活性を有する哺乳動物由来のタンパク質および遺伝子が提供された。本発明のタンパク質は、細胞周期の調節に関与していると考えられるため、これにより癌などの増殖性疾患の診断や治療のための新たな医薬品の開発が可能となった。また、本発明のタンパク質をコードする遺伝子は、上記疾患の遺伝子治療への応用が期待される。また、本発明により、本発明のタンパク質を製造するための宿主−ベクター系が提供され、これにより本発明のタンパク質の量産が可能となった。さらに、本発明により、発明のタンパク質がコードするDNAに特異的にハイブリダイズするオリゴヌクレオチドや本発明のタンパク質に結合する抗体が提供され、これにより本発明のタンパク質やその遺伝子の検出や単離などを容易に行うことが可能となった。さらに、本発明により、本発明のタンパク質に結合する化合物および該タンパク質の活性を促進若しくは阻害する化合物をスクリーニングする方法が提供された。これにより単離される化合物は、上記疾患の診断や治療のための医薬品候補化合物として有用である。特に、本発明のタンパク質の活性や発現を阻害する化合物には、抗癌剤としての利用が期待される。
【配列表】
【図面の簡単な説明】
図1は、各種DNA障害処理した細胞蛋白について、抗hChk2抗体を用いたウェスタンブロットで解析した結果を示す図面である。ここでは、抗hChk2ポリクローナル抗体で観察されたChk2とは挙動を異にする別種蛋白(本発明蛋白質)を示している。この蛋白には、各種DNA障害によって誘導されたリン酸化によると考えられるバンドシフトが観察された。一方、抗hChk2ポリクローナル抗体が認識する別種蛋白(本発明蛋白質)では、AT2KY細胞でもUV、MMS処理によるバンドシフトが観察された。
図2(図2−A〜図2−C)は、本発明の「hCdr2」のアミノ酸配列及びcDNA配列を示す図面である。
このうち、図2−Aは、cDNA配列における1〜900番目の塩基に相当する部位を示す図面である。
図2−Bは、図2−Aに続く図面で、cDNA配列における901〜1800番目の塩基に相当する部位を示す図面である。
図2−Cは、図2−Bに続く図面で、cDNA配列における1801〜2799番目の塩基に相当する部位を示す図面である。
図3(図3−A〜図3−C)は、「hCdr2」のアミノ酸配列を、分裂酵母のspCdr2、spCdr1のアミノ酸配列とともに整列化した図である。アミノ酸配列は1文字表記で表した。アミノ酸のギャップはハイフンで表した。3種でアミノ酸が一致する場合はアスタリスクで、2種でアミノ酸が一致する場合はドットで、その位置を示した。
このうち、図3−Aは、hCdr2のアミノ酸配列における1〜298番目のアミノ酸に相当する部位を示す図面である。
図3−Bは、図3−Aに続く図面で、hCdr2のアミノ酸配列における299〜567番目のアミノ酸に相当する部位を示す図面である。
図3−Cは、図3−Bに続く図面で、hCdr2のアミノ酸配列における568〜754番目のアミノ酸に相当する部位を示す図面である。
図4(図4−A〜図4−B)は、「hCdr2」のN末側(1−295)のアミノ酸配列を、分裂酵母のspCdr2のアミノ酸配列とともに整列化した図である。アミノ酸配列は1文字表記で表した。アミノ酸のギャップはハイフンでまた類似したアミノ酸である場合はドットで、その位置を示した。
このうち、図4−Aは、hCdr2のアミノ酸配列における1〜179番目のアミノ酸に相当する部位を示す図面である。
図4−Bは、図4−Aに続く図面で、hCdr2のアミノ酸配列における180〜359番目のアミノ酸に相当する部位を示す図面である。
図5は,hCdr2 mRNAのヒト組織での発現をノーザンブロッティングにより解析した図である。
図6(図6−A〜図6−C)は、A172ヒトglioblastoma培養癌細胞株において細胞周期におけるhCdr2の発現変化を解析した図である。
図6−Aは、ノーザンブロット法により解析したhCdr2の発現を示す図面である。
図6−Bは、ノーザンブロット法により解析したハウスキーピング遺伝子GAPDH(glyceraldehyde−3−phosphate dehydrogenase)の発現を示す図面である。
図6−Cは、PI(Propidium Iodate)染色によるFlow cytometory法にて細胞周期を解析した図面である。
図7は、バキュロウィルス発現ベクターを用い、昆虫細胞内で発現させたhCdr2リコンビナントタンパク質の量をウエスタンブロット法で解析した図である。
図8は、hCdr2がプロテインキナーゼであることの証明として、hCdr2のCdc25蛋白のリン酸化を解析した図である。
図8−Aは、基質としてGST−Cdc25C及びGST−Cdc25C S216Aを使用した場合のキナーゼアッセイを示す図である。
図8−Bは、基質としてGST−Cdc25B及びGST−Cdc25B S309Aを使用した場合のキナーゼアッセイを示す図である。
Claims (29)
- 以下の(i)又は(ii)のタンパク質。
(i)配列番号:1に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質;
(ii)配列番号:1に記載のアミノ酸配列において1若しくは複数のアミノ酸が置換、欠失、挿入および/もしくは付加したアミノ酸配列からなり、かつキナーゼ活性を有するタンパク質。 - 配列番号:2に記載の塩基配列からなるDNAとハイブリダイズする哺乳動物由来のDNAがコードするタンパク質であって、かつキナーゼ活性を有するタンパク質。
- Cdc25のリン酸化作用を有する請求項1又は2に記載のタンパク質。
- Cdc25Cのセリン216のリン酸化作用を有する請求項1又は2に記載のタンパク質。
- Cdc25Bのセリン309のリン酸化作用を有する請求項1又は2に記載のタンパク質
- 以下の(i)又は(ii)のタンパク質をコードする遺伝子。
(i)配列番号:1に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質;
(ii)配列番号:1に記載のアミノ酸配列において1若しくは複数のアミノ酸が置換、欠失、挿入および/もしくは付加したアミノ酸配列からなり、かつキナーゼ活性を有するタンパク質。 - 以下の(i)又は(ii)のDNAを含む遺伝子。
(i)配列番号:2に記載の塩基配列からなるDNA;
(ii)配列番号:2に記載の塩基配列からなるDNAとハイブリダイズし、かつキナーゼ活性を有するタンパク質をコードする哺乳動物由来のDNA。 - 請求項6又は7に記載の遺伝子の発現産物。
- 請求項6又は7に記載の遺伝子を有する組換え体発現ベクター。
- 請求項9に記載の組換え体発現ベクターにより形質転換された形質転換体。
- 請求項10に記載の形質転換体を培養し、産生されたタンパク質を精製することを含む組換えタンパク質の製造方法。
- 請求項6又は7に記載の遺伝子と特異的にハイブリダイズする、少なくとも15ヌクレオチドの鎖長を有するオリゴヌクレオチド。
- 請求項6又は7に記載の遺伝子と特異的にハイブリダイズし、該遺伝子の発現を抑制することができる、少なくとも15ヌクレオチドの鎖長を有するオリゴヌクレオチド。
- 請求項1〜5のいずれかに記載のタンパク質又は請求項8に記載の発現産物に結合性を有する抗体。
- 請求項1〜5のいずれかに記載のタンパク質又は請求項8に記載の発現産物に結合する活性を有する化合物をスクリーニングする方法であって、
(a)請求項1〜5のいずれかに記載のタンパク質又は請求項8に記載の発現産物に被検試料を接触させる工程、
(b)請求項1〜5のいずれかに記載のタンパク質又は請求項8に記載の発現産物に結合する活性を有する化合物を選択する工程、
を含む方法。 - 請求項1〜5のいずれかに記載のタンパク質又は請求項8に記載の発現産物のキナーゼ活性を促進もしくは阻害する化合物をスクリーニングする方法であって、
(a)被検化合物の存在下で請求項1〜5のいずれかに記載のタンパク質又は請求項8に記載の発現産物とその基質とを接触させる工程、
(b)請求項1〜5のいずれかに記載のタンパク質又は請求項8に記載の発現産物の基質に対するキナーゼ活性を測定する工程、
(c)被検化合物の非存在下において測定を行った場合(対照)と比較して、請求項1〜5のいずれかに記載のタンパク質又は請求項8に記載の発現産物の基質に対するキナーゼ活性を促進または阻害する化合物を選択する工程、
を含む方法。 - 請求項15または16に記載の方法により単離しうる化合物。
- タンパク質である、請求項17に記載の化合物。
- タンパク質が抗体である、請求項18に記載の化合物。
- 請求項1〜5のいずれかに記載のタンパク質又は請求項8に記載の発現産物のキナーゼ活性を阻害する化合物を含有する医薬品組成物。
- 細胞内において請求項6又は7に記載の遺伝子の発現を阻害する化合物を含有する医薬品組成物。
- 抗癌剤である、請求項20又は21に記載の医薬品組成物。
- 癌の治療を目的とした医薬品を得るための、請求項20〜22のいずれかに記載の医薬品組成物の使用。
- 請求項20〜22のいずれかに記載の医薬品組成物を、治療的に有効な量で、癌を有する患者に投与する癌の治療方法。
- 請求項1〜5のいずれかに記載のタンパク質又は請求項8に記載の発現産物のキナーゼ活性を促進する化合物を含有する医薬品組成物。
- 細胞内において請求項6又は7に記載の遺伝子の発現を促進する化合物を含有する医薬品組成物。
- 創傷治癒剤である、請求項25又は26に記載の医薬品組成物。
- 創傷の治癒を目的とした医薬品を得るための、請求項25〜27のいずれかに記載の医薬品組成物の使用。
- 請求項25〜27のいずれかに記載の医薬品組成物を、治療的に有効な量で、創傷を有する患者に投与する創傷の治療方法。
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