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JPWO2002017957A1 - 長期安定化溶液製剤 - Google Patents

長期安定化溶液製剤

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Publication number
JPWO2002017957A1
JPWO2002017957A1 JP2002-522930A JP2002522930A JPWO2002017957A1 JP WO2002017957 A1 JPWO2002017957 A1 JP WO2002017957A1 JP 2002522930 A JP2002522930 A JP 2002522930A JP WO2002017957 A1 JPWO2002017957 A1 JP WO2002017957A1
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
csf
formulation
solution
amino acid
solution formulation
Prior art date
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Pending
Application number
JP2002-522930A
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English (en)
Inventor
泰 佐藤
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Chugai Pharmaceutical Co Ltd
Original Assignee
Chugai Pharmaceutical Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Chugai Pharmaceutical Co Ltd filed Critical Chugai Pharmaceutical Co Ltd
Publication of JPWO2002017957A1 publication Critical patent/JPWO2002017957A1/ja
Pending legal-status Critical Current

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Abstract

(57)【要約】 安定化剤として、実質的にタンパク質を含まず、また安定化剤として、少なくとも一種のアミノ酸又はその塩を含むG−CSF溶液製剤。

Description

【発明の詳細な説明】技術分野 本発明はG−CSF(顆粒球コロニー刺激因子)溶液製剤に関し、特に長期保
存した後も活性成分の損失が少なく、かつG−CSFのメチオニン残基酸化体生
成率の低い、安定化させたG−CSF製剤に関する。背景技術 G−CSFは、好中球の前駆細胞に作用し、その増殖ならびに分化成熟を促進
する分子量約2万の糖タンパク質である。
本出願人によって、口腔底癌患者の腫瘍細胞から採取した細胞株を培養するこ
とにより高純度のヒトG−CSFが精製されて以来、これを契機に、ヒトG−C
SF遺伝子のクローニングに成功し、現在では遺伝子工学的方法によって微生物
や動物細胞で組換えヒトG−CSFを大量に生産することが可能になった。また
、本願出願人はこの精製したG−CSFの製剤化に成功し、これを感染防御剤と
して市場に製品を供給している(特許第2116515号)。
G−CSFは極めて微量で使用され、通常成人一人当たり、0.1〜1000
μg(好ましくは5〜500μg)のG−CSFを含有する製剤を1〜7回/週
の割合で投与する。しかしながら、このG−CSFは例えば注射用アンプル、注
射器等の器壁に対し吸着性を示す。また、G−CSFは不安定で、外的因子の影
響を受けやすく、温度、湿度、酸素、紫外線等に起因して会合、重合あるいは酸
化等の物理的、化学的変化を生じ、結果として大きな活性の低下を招く。
従来、これらの影響を防ぐために、剤形として主に凍結乾燥製剤が選択され、
種々の処方設計がなされてきた。例えば、(a)トレオニン、トリプトファン、
リジン、ヒドロキシリジン、ヒスチジン、アルギニン、システイン、シスチン、
メチオニンから選ばれる少なくとも1種のアミノ酸;(b)少なくとも1種の含
硫還元剤;又は(c)少なくとも1種の酸化防止剤;からなる群から選ばれる少
なくとも1種を含む製剤(特許第2577744号)等が提案されている。また
、安定化剤としてポリソルベートなどの界面活性剤を含むG−CSF製剤がある
(特開昭63−146826号)。
また、マルトース、ラフィノース、スクロース、トレハロース又はアミノ糖を
含有したG−CSF凍結乾燥製剤も報告されている(特表平8−504784号
)。
しかし、凍結乾燥の工程は、工業的には生産コストの増大を招き、さらに機械
トラブルによる危険性の増大を伴うことになる。さらに、凍結乾燥製剤は使用時
に純水(注射用滅菌水)に溶解して使用しなければならないという手間がかかる
、という問題があった。
一方、従来市場に供給されている製品には、これら化学的、物理的変化を抑制
するために、安定化剤として一般的に使用されているヒト血清アルブミンあるい
は精製ゼラチンなどのタンパク質が添加されているものがある。しかしながら、
タンパク質を安定化剤として添加することに関しては、ウィルスのコンタミを除
去する等のために非常に煩雑な工程を必要とする等の問題があった。
しかしながら、このようなタンパク質を添加しない場合には、G−CSFのメ
チオニン残基の酸化体の生成が多くなり、品質劣化をもたらすというという問題
があった。
以上の理由から、安定化剤としてタンパク質を含有せず、しかも長期の保存に
も安定な、凍結乾燥製剤に代わるG−CSFの溶液製剤が求められている。発明の開示 上記目的を達成するために鋭意研究した結果、本発明者らは安定化剤として特
定アミノ酸を組み合わせて添加することによって、長期保存後でもG−CSF残
存率が高く、かつG−CSFのメチオニン残基の酸化体生成率の低いG−CSF
溶液製剤となしうることを見いだし本発明を完成した。
すなわち、本発明は、安定化剤として、実質的にタンパク質を含まず、また安
定化剤として、少なくとも一種のアミノ酸又はその塩を含むG−CSF溶液製剤
を提供する。
本発明はさらに、アミノ酸がグリシン、グルタミン酸ナトリウム、アルギニン
及びヒスチジン又はそれらの塩から選択される一種以上である、前記G−CSF
溶液製剤を提供する。
本発明はさらに、アミノ酸がアルギニン及びヒスチジン又はそれらの塩から選
択される一種以上である、前記G−CSF溶液製剤を提供する。
本発明はさらに、アミノ酸がヒスチジン又はその塩である、前記G−CSF溶
液製剤を提供する。
本発明はさらに、メチオニンをさらに含む、前記G−CSF溶液製剤を提供す
る。
本発明はさらに、アミノ酸の添加量が0.01重量%〜10重量%である前記
G−CSF溶液製剤を提供する。
本発明はさらに、ヒスチジン又はその塩の添加量が0.01重量%〜10重量
%である前記G−CSF溶液製剤を提供する。
本発明はさらに、マンニトール及び/又は塩化ナトリウムをさらに含む前記G
−CSF溶液製剤を提供する。
本発明はさらに、界面活性剤をさらに含む前記G−CSF溶液製剤を提供する
本発明はさらに、界面活性剤がポリオキシエチレンソルビタンアルキルエステ
ルである前記G−CSF溶液製剤を提供する。
本発明はさらに、界面活性剤がポリソルベート20及び/又は80である前記
G−CSF溶液製剤を提供する。
本発明はさらに、pHが5〜7である前記G−CSF溶液製剤を提供する。
本発明はさらに、pHが5.5〜6.8である前記G−CSF溶液製剤を提供
する。
本発明はさらに、G−CSFがCHO細胞から産生されたG−CSFである、
前記G−CSF溶液製剤を提供する。
本発明はさらに、バイアル製剤又はプレフィルドシリンジ製剤である前記G−
CSF製剤を提供する。
本発明はさらに、40℃−2週間の加速試験後におけるG−CSF残存率が9
0%以上であり、あるいは25℃−6ヶ月間の安定性試験後におけるG−CSF
残存率が97%以上であり、あるいは10℃−1年間の安定性試験後におけるG
−CSF残存率が97%以上であり、かつ40℃−2週間の加速試験後G−CS
Fのメチオニン残基酸化体生成率が1%以下である、安定なG−CSF溶液製剤
を提供する。
本発明はさらに、実質的にG−CSFのメチオニン残基酸化体を含まない、安
定なG−CSF溶液製剤を提供する。ここで、「実質的にG−CSFのメチオニ
ン残基酸化体を含まない」とは、前記G−CSFのメチオニン残基酸化体が検出
限界以下のものをいう。
本発明はさらに、安定化剤として、実質的にタンパク質を添加せず、また安定
化剤として、少なくとも一種のアミノ酸又はその塩を添加することを含むG−C
SF溶液製剤の安定化方法を提供する。
本発明はさらに、少なくとも一種のアミノ酸又はその塩の、安定化されたG−
CSF溶液製剤の製造のための使用を提供する。
本発明の溶液製剤とは、製造工程で凍結乾燥の工程を含まず、溶液状態で長期
保存可能な製剤をいう。発明を実施するための最良の態様 本発明の溶液製剤に使用するG−CSFは高純度に精製されたヒトG−CSF
であれば全て使用できる。具体的には、哺乳動物、特にヒトのG−CSFと実質
的に同じ生物学的活性を有するものであり、天然由来のもの、および遺伝子組換
え法によって得られたものを含む。遺伝子組換え法によって得られるG−CSF
には天然のG−CSFとアミノ酸配列が同じであるもの、あるいは該アミノ酸配
列の1または複数を欠失、置換、付加したもので前記生物学的活性を有するもの
を含む。本発明におけるG−CSFは、いかなる方法で製造されたものでもよく
、ヒト腫瘍細胞の細胞株を培養し、これから種々の方法で抽出し分離精製したも
の、あるいは遺伝子工学的手法により大腸菌などの細菌類;イースト菌;チャイ
ニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、C127細胞、COS細胞などの動物由
来の培養細胞などに産生せしめ、種々の方法で抽出し分離精製したものが用いら
れる。好ましくは大腸菌、イースト菌又はCHO細胞によって遺伝子組換え法を
用いて生産されたものである。最も好ましくはCHO細胞によって遺伝子組換え
法を用いて生産されたものである。さらには、PEG等により化学修飾されたG
−CSFも含む(国際特許出願公開番号WO90/12874参照)。
本発明のG−CSF溶液製剤には好ましくは安定化剤としてヒト血清アルブミ
ンや精製ゼラチンなどのタンパク質を実質的に含まない。
本発明のG−CSF溶液製剤は、安定化剤として、少なくとも一種のアミノ酸
又はその塩を含む。上記アミノ酸としては、グリシン、グルタミン酸ナトリウム
、アルギニン及びヒスチジン又はそれらの塩から選択される一種以上であること
が好ましく、アルギニン及びヒスチジン又はそれらの塩から選択される一種以上
であることがより好ましく、ヒスチジン又はその塩であることが最も好ましい。
本発明で用いるアミノ酸は、遊離のアミノ酸ならびにそのナトリウム塩、カリ
ウム塩、塩酸塩などの塩を含む。本発明の製剤には、これらのアミノ酸のD−、
L−およびDL−体を含み、より好ましいのはL−体ならびにその塩である。
本発明の製剤に添加するアミノ酸の添加量は使用するアミノ酸の種類により、
後述する試験方法を用いて好ましい範囲を定めることができる。一般には0.0
01〜10重量%、好ましくは0.01〜5重量%で、より好ましくは0.1〜
3重量%である。ヒスチジン又はその塩の場合には、通常0.01〜10重量%
、好ましくは0.05〜3重量%で、より好ましくは0.1〜2重量%である。
ヒスチジン塩酸塩の場合には、40℃−2週間加速試験では、試験した0.1〜
1.6重量%の範囲で極めて高いG−CSF残存率を示し、0.4重量%で最も
高い残存率を示した。
本発明のG−CSF溶液製剤には、メチオニンを含むことが好ましい。メチオ
ニンの添加量は好ましくは0.001〜5重量%、さらに好ましくは0.01〜
1重量%、最も好ましいのは0.1重量%である。メチオニンの添加により、G
−CSFのメチオニン残基酸化体生成率を検出限界以下にすることが観察された
。本発明者らは、特定の理論に拘束されるつもりはないが、G−CSFのメチオ
ニン残基に代えて、添加されたメチオニンが酸化されることにより、G−CSF
のメチオニン残基酸化体生成率を低くすると推測した。
本発明の製剤には等張化剤として、ポリエチレングリコール;デキストラン、
マンニトール、ソルビトール、イノシトール、グルコース、フラクトース、ラク
トース、キシロース、マンノース、マルトース、シュークロース、ラフィノース
などの糖類や塩化ナトリウム、塩化カリウムなどの無機塩類を用いることができ
、好ましくはマンニトールあるいは塩化ナトリウム、特に好ましくはマンニトー
ルを用いる。マンニトール等の糖類の添加量は製剤中に0.1〜10重量%、さ
らに好ましくは0.5〜6重量%である。塩化ナトリウム等の無機塩類の添加量
は製剤中に20〜200mM、好ましくは50〜150mMである。
本発明の製剤には界面活性剤をさらに含むことができる。界面活性剤としては
、非イオン界面活性剤、例えばソルビタンモノカプリレート、ソルビタンモノラ
ウレート、ソルビタンモノパルミテート等のソルビタン脂肪酸エステル;グリセ
リンモノカプリレート、グリセリンモノミリテート、グリセリンモノステアレー
ト等のグリセリン脂肪酸エステル;デカグリセリルモノステアレート、デカグリ
セリルジステアレート、デカグリセリルモノリノレート等のポリグリセリン脂肪
酸エステル;ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレ
ンソルビタンモノオレエート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート
、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテート、ポリオキシエチレンソルビ
タントリオレエート、ポリオキシエチレンソルビタントリステアレート等のポリ
オキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル;ポリオキシエチレンソルビットテト
ラステアレート、ポリオキシエチレンソルビットテトラオレエート等のポリオキ
シエチレンソルビット脂肪酸エステル;ポリオキシエチレングリセリルモノステ
アレート等のポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル;ポリエチレングリ
コールジステアレート等のポリエチレングリコール脂肪酸エステル;ポリオキシ
エチレンラウリルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル;ポリオキ
シエチレンポリオキシプロピレングリコールエーテル、ポリオキシエチレンポリ
オキシプロピレンプロピルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン
セチルエーテル等のポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル
;ポリオキシエチエレンノニルフェニルエーテル等のポリオキシエチレンアルキ
ルフェニルエーテル;ポリオキシエチレンヒマシ油、ポリオキシエチレン硬化ヒ
マシ油(ポリオキシエチレン水素ヒマシ油)等のポリオキシエチレン硬化ヒマシ
油;ポリオキシエチレンソルビットミツロウ等のポリオキシエチレンミツロウ誘
導体;ポリオキシエチレンラノリン等のポリオキシエチレンラノリン誘導体;ポ
リオキシエチレンステアリン酸アミド等のポリオキシエチレン脂肪酸アミド等の
HLB6〜18を有するもの;陰イオン界面活性剤、例えばセチル硫酸ナトリウ
ム、ラウリル硫酸ナトリウム、オレイル硫酸ナトリウム等の炭素原子数10〜1
8のアルキル基を有するアルキル硫酸塩;ポリオキシエチレンラウリル硫酸ナト
リウム等の、エチレンオキシドの平均付加モル数が2〜4でアルキル基の炭素原
子数が10〜18であるポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩;ラウリル
スルホコハク酸エステルナトリウム等の、アルキル基の炭素原子数が8〜18の
アルキルスルホコハク酸エステル塩;天然系の界面活性剤、例えばレシチン、グ
リセロリン脂質;スフィンゴミエリン等のフィンゴリン脂質;炭素原子数12〜
18の脂肪酸のショ糖脂肪酸エステル等を典型的例として挙げることができる。
本発明の製剤には、これらの界面活性剤の1種または2種以上を組み合わせて添
加することができる。
好ましい界面活性剤はポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルであり、
特に好ましいのはポリソルベート20、21、40、60、65、80、81、
85であり、最も好ましいのはポリソルベート20及び80である。
本発明のG−CSF含有製剤に添加する界面活性剤の添加量は、一般にはG−
CSF1重量部に対して0.0001〜10重量部であり、好ましくはG−CS
F1重量部に対して0.01〜5重量部であり、最も好ましくはG−CSF1重
量部に対して0.2〜2重量部である。具体的に、界面活性剤の添加量は、0.
0001〜0.5重量%の間で適宜選択することができる。
本発明のG−CSF溶液製剤のpHは好ましくは5〜7であり、さらに好まし
くはpHが5.5〜6.8であり、さらに好ましくはpHが6〜6.7であり、
最も好ましくはpHが6.5である。
本発明のG−CSF溶液製剤には、所望によりさらに希釈剤、溶解補助剤、賦
形剤、pH調整剤、無痛化剤、緩衝剤、含硫還元剤、酸化防止剤等を含有しても
よい。例えば、含硫還元剤としては、N−アセチルシステイン、N−アセチルホ
モシステイン、チオクト酸、チオジグリコール、チオエタノールアミン、チオグ
リセロール、チオソルビトール、チオグリコール酸及びその塩、チオ硫酸ナトリ
ウム、グルタチオン、並びに炭素原子数1〜7のチオアルカン酸等のスルフヒド
リル基を有するもの等が挙げられる。また、酸化防止剤としては、エリソルビン
酸、ジブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール、α−トコフェ
ロール、酢酸トコフェロール、L−アスコルビン酸及びその塩、L−アスコルビ
ン酸パルミテート、L−アスコルビン酸ステアレート、亜硫酸水素ナトリウム、
亜硫酸ナトリウム、没食子酸トリアミル、没食子酸プロピルあるいはエチレンジ
アミン四酢酸二ナトリウム(EDTA)、ピロリン酸ナトリウム、メタリン酸ナ
トリウム等のキレート剤が挙げられる。さらには、塩化ナトリウム、塩化カリウ
ム、塩化カルシウム、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、炭酸水素ナトリウム
などの無機塩;クエン酸ナトリウム、クエン酸カリウム、酢酸ナトリウムなどの
有機塩などの通常添加される成分を含んでいてよい。
本発明の溶液製剤は、これらの成分をリン酸緩衝液(好ましくはリン酸一水素
ナトリウム−リン酸二水素ナトリウム系)及び/又はクエン酸緩衝液(好ましく
はクエン酸ナトリウムの緩衝液)などの溶液製剤の分野で公知の水性緩衝液に溶
解することによって製造できる。
本発明の安定化されたG−CSF溶液製剤は通常非経口投与経路で、例えば注
射剤(皮下注、静注、筋注など)、経皮、経粘膜、経鼻、経肺などで投与される
が、経口投与も可能である。
本発明のG−CSF溶液製剤は、通常密封、滅菌されたプラスチックまたはガ
ラス容器中に収納されている。容器はアンプル、バイアルまたはディスポーザブ
ル注射器のような規定用量の形状で供給することができ、あるいは注射用バック
または瓶のような大用量の形状で供給することもできる。
本発明の製剤中に含まれるG−CSFの量は、治療すべき疾患の種類、疾患の
重症度、患者の年齢などに応じて決定できるが、一般には最終投与濃度で1〜1
000μg/ml、好ましくは10〜800μg/ml、さらに好ましくは50
〜500μg/mlである。
本発明の製剤は、感染症や癌の化学治療において、抗生物質、抗菌剤、抗癌剤
などの薬剤を投与する際に同時投与すると、患者の抵抗力、活性などといった免
疫応答力に基づいた防御機能を改善することが判明しており、臨床上極めて有用
である。従って、本発明の製剤はこれらの薬剤と併用投与することができる。
本発明のG−CSF溶液製剤は後述の実施例に示すように、40℃−2週間の
加速試験を行った後にも、極めて良好なG−CSF残存率を示す。また、40℃
−2週間の加速試験後にも、G−CSFのメチオニン残基酸化体生成率がほとん
ど観察されなかった。
本発明のG−CSF溶液製剤は、40℃−2週間の加速試験後におけるG−C
SF残存率が90%以上、好ましくは93%以上であり、最も好ましくは95%
以上であり、あるいは25℃−6ヶ月間の安定性試験後におけるG−CSF残存
率が97%以上であり、あるいは10℃−1年間の安定性試験後におけるG−C
SF残存率が97%以上であり、かつ40℃−2週間の加速試験後G−CSFの
メチオニン残基酸化体生成率が1%以下、好ましくは検出限界以下であり、従来
知られているG−CSF製剤に比べて極めて安定な製剤である。
本発明の検討の中で、溶液製剤を封入するバイアル、シリンジなどの容器条件
(製造ロット間の差など)によっては、ヒスチジンを添加したときにメチオニン
残基酸化体が増加する現象が観察され、この現象は特にシリンジ容器で顕著であ
った。このメチオニン残基酸化体の生成はメチオニンの添加によりほぼ完全に抑
制された。従って、プレフィルドシリンジ製剤として供給する場合には、ヒスチ
ジンなどのアミノ酸と、メチオニン又は既知の酸化防止剤などメチオニン残基酸
化体の生成を抑制する薬剤を添加することにより、G−CSFの残存率が極めて
高く、またG−CSFのメチオニン残基酸化体生成率の低い、長期安定化製剤と
することができる。産業上の利用可能性 本発明のG−CSF溶液製剤は、短期加速試験後においても、長期保存後にお
いても、等張化剤の種類や容器形態によらず、G−CSFの残存率が極めて高く
、またG−CSFのメチオニン残基酸化体生成率をほぼ完全に抑制することので
きる安定な製剤である。
本発明を以下の実施例によってさらに詳しく説明するが、本発明の範囲はこれ
に限定されない。本発明の記載に基づき種々の変更、修飾が当業者には可能であ
り、これらの変更、修飾も本発明に含まれる。実施例 実施例1:各種アミノ酸の安定性に及ぼす効果 第1表記載の処方となるよう所定量のアミノ酸、0.01重量% ポリソルベ
ート20を含む250μg/ml G−CSF、pH6.5調剤液を無菌濾過し
た後、ガラスバイアルに上記調剤液を1mLずつ無菌的に充填し、打栓を施した
このように、無菌的に調製・濾過を行い製造した第1表記載のG−CSF製剤
は、40℃の恒温槽において2週間の加速に供された。未加速品試料、および、
40℃−2週間加速品試料について、下記評価法1を用いて、40℃−2週間加
速後の残存率(%)を算出した。評価法1 C4逆相カラム(4.6mm x 250mm、300オングストローム)を
用い、純水、アセトニトリル、トリフルオロ酢酸を移動相に用いた逆相系高速液
体クロマトグラフィー法によりG−CSF含量を測定した。G−CSFとして、
5μg相当量を注入し、アセトニトリルのグラジエントによりG−CSFを溶出
させ、215nmの波長で分光学的に検出し、G−CSF含量を測定した。
本方法で測定したG−CSF含量を用い、下記の式に基づき40℃−2週間加
速後の残存率(%)を算出した。
その結果を第2表に示す。
このように、グリシン、グルタミン酸ナトリウム、アルギニン塩酸塩、及びヒ
スチジン塩酸塩の添加により40℃−2週間加速において良好な残存率が観察さ
れ、特にアルギニン塩酸塩及びヒスチジン塩酸塩の添加により残存率が顕著に向
上することが見いだされた。
実施例2:メチオニン添加のG−CSF酸化体生成に及ぼす効果 第3表記載の処方となるよう所定量のメチオニン、0.01重量% ポリソル
ベート20を含む100μg/ml G−CSF、pH6.5調剤液を無菌濾過
した後、ガラスバイアルに上記調剤液を1mLずつ無菌的に充填し、打栓を施し
た。
このように、無菌的に調製・濾過を行い製造した第3表記載のG−CSF製剤
を、25℃の恒温槽において5日間保存後、下記評価法2を用いてG−CSF酸
化体含量を算出した。評価法2 C4逆相カラム(4.6mm x 250mm、300オングストローム)を
用い、純水、アセトニトリル、トリフルオロ酢酸を移動相に用いた逆相系高速液
体クロマトグラフィー法によりG−CSF含量を測定した。G−CSFとして、
5μg相当量を注入し、アセトニトリルのグラジエントによりG−CSFを溶出
させ、215nmの波長で分光学的に検出し、G−CSF酸化体のピーク面積、
G−CSF未変化体のピーク面積を測定した。
本方法で測定した各ピーク面積値を用い、下記の式に基づきG−CSF酸化体
含量(%)を算出した。
その結果を第4表に示す。
メチオニンの添加により、G−CSF酸化体の生成を抑制しうることを見いだ
した。
実施例3:ヒスチジン添加量の安定性に及ぼす効果 第5表記載の処方となるよう所定量の塩酸ヒスチジン、0.1重量% メチオ
ニン、0.01重量% ポリソルベート20を含む250μg/ml G−CS
F、pH6.5調剤液を無菌濾過した後、ガラスバイアルに上記調剤液を1mL
ずつ無菌的に充填し、打栓を施した。
このように、無菌的に調製・濾過を行い製造した第5表記載のG−CSF製剤
は、40℃の恒温槽において2週間の加速に供された。未加速品試料、および、
40℃−2週間加速品試料について、前述の評価法1を用いて、40℃−2週間
加速後の残存率(%)を算出した。
その結果を第6表に示す。
このように、ヒスチジンの添加に伴い、飛躍的に残存率が向上し、短期加速試
験における安定性向上が可能となった。
また、被験試料No.12〜16はいずれもG−CSFのメチオニン残基酸化
体は検出限界以下であった。
実施例4:容器形態が安定性に及ぼす効果 第7表記載の処方となるよう0.4重量%塩酸ヒスチジン、0.1重量% メ
チオニン、0.01重量% ポリソルベート20を含む250μg/ml G−
CSF、pH6.5調剤液を無菌濾過した後、下記に示した容器形態に上記調剤
液を1mLずつ無菌的に充填し、打栓を施した。
このように、無菌的に調製・濾過を行い製造した第7表記載のG−CSF製剤
は、40℃の恒温槽において2週間の加速に供された。未加速品試料、および、
40℃−2週間加速品試料について、前述評価法1を用いて、40℃−2週間加
速後、25℃−6ヶ月保存後、10℃−1年保存後の残存率(%)を算出した。
その結果、第8表に示す。
40℃における短期加速試験だけでなく、25℃および10℃における長期保
存試験においても、ヒスチジンの添加効果は顕著であり、ヒスチジンの添加によ
りG−CSF製剤の長期保存安定性確保が可能であることが見いだされた。また
、被験試料No.19及び20はいずれもG−CSFのメチオニン残基酸化体は
検出限界以下であった。これらの結果から、容器形態によらず、安定化されたG
−CSF製剤の提供が可能であると考えられた。
なお、本検討の中で、溶液製剤を封入するバイアルやシリンジの製造ロット間
の差により、ヒスチジン0.4%のみを添加したときにメチオニン残基酸化体が
増加する現象が観察され、この現象は特にシリンジ容器で顕著であった。このメ
チオニン残基酸化体の生成はメチオニン0.1%の添加により検出限界以下とな
った。
実施例5:等張化剤の安定性に及ぼす効果 第9表記載の処方となるよう、所定の等張化剤(塩化ナトリウムまたはD−マ
ンニトール)、0.4重量% 塩酸ヒスチジン、0.1重量% メチオニン、0
.01重量%ポリソルベート20を含む250μg/ml G−CSF、pH6
.5調剤液を無菌濾過した後、ガラスバイアルに上記調剤液を1mLずつ無菌的
に充填し、打栓を施した。
このように、無菌的に調製・濾過を行い製造した第9表記載のG−CSF製剤
は、40℃の恒温槽において2週間の加速に供された。未加速品試料、および、
40℃−2週間加速品試料について、前述評価法1を用いて、25℃−4ヶ月、
25℃−6ヶ月及び10℃−1年保存後の残存率(%)を算出した。
その結果を第10表に示す。
また、被験試料No.21及び22はいずれもG−CSFのメチオニン残基酸
化体は検出限界以下であった。
以上の結果から等張化剤の種類によらず、良好な安定性確保が可能であること
が判明した。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI A61K 47/34 A61K 47/34 A61P 43/00 107 A61P 43/00 107 (81)指定国 EP(AT,BE,CH,CY, DE,DK,ES,FI,FR,GB,GR,IE,I T,LU,MC,NL,PT,SE,TR),OA(BF ,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ, GW,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AP(G H,GM,KE,LS,MW,MZ,SD,SL,SZ ,TZ,UG,ZW),UA(AM,AZ,BY,KG, KZ,MD,RU,TJ,TM),AE,AG,AL, AM,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BR,B Y,BZ,CA,CH,CN,CO,CR,CU,CZ ,DE,DK,DM,DZ,EC,EE,ES,FI, GB,GD,GE,GH,GM,HR,HU,ID,I L,IN,IS,JP,KE,KG,KP,KR,KZ ,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LV,MA, MD,MG,MK,MN,MW,MX,MZ,NO,N Z,PH,PL,PT,RO,RU,SD,SE,SG ,SI,SK,SL,TJ,TM,TR,TT,TZ, UA,UG,US,UZ,VN,YU,ZA,ZW (注)この公表は、国際事務局(WIPO)により国際公開された公報を基に作 成したものである。 なおこの公表に係る日本語特許出願(日本語実用新案登録出願)の国際公開の 効果は、特許法第184条の10第1項(実用新案法第48条の13第2項)に より生ずるものであり、本掲載とは関係ありません。

Claims (20)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】安定化剤として、実質的にタンパク質を含まず、また安定化剤とし
    て、少なくとも一種のアミノ酸又はその塩を含むG−CSF溶液製剤。
  2. 【請求項2】アミノ酸がグリシン、グルタミン酸ナトリウム、アルギニン及びヒ
    スチジン又はそれらの塩から選択される一種以上である、請求項1記載のG−C
    SF溶液製剤。
  3. 【請求項3】アミノ酸がアルギニン及びヒスチジン又はそれらの塩から選択され
    る一種以上である、請求項2記載のG−CSF溶液製剤。
  4. 【請求項4】アミノ酸がヒスチジン又はその塩である請求項3記載のG−CSF
    溶液製剤。
  5. 【請求項5】メチオニンをさらに含む請求項1〜4のいずれかに記載のG−CS
    F溶液製剤。
  6. 【請求項6】アミノ酸の添加量が0.01重量%〜10重量%である請求項1〜
    5のいずれかに記載のG−CSF溶液製剤。
  7. 【請求項7】ヒスチジン又はその塩の添加量が0.01重量%〜10重量%であ
    る請求項6に記載のG−CSF溶液製剤。
  8. 【請求項8】マンニトール及び/又は塩化ナトリウムをさらに含む請求項1〜7
    のいずれかに記載のG−CSF溶液製剤。
  9. 【請求項9】界面活性剤をさらに含む請求項1〜8のいずれかに記載のG−CS
    F溶液製剤。
  10. 【請求項10】界面活性剤がポリオキシエチレンソルビタンアルキルエステルで
    ある請求項9記載のG−CSF溶液製剤。
  11. 【請求項11】界面活性剤がポリソルベート20及び/又は80である請求項1
    0記載のG−CSF溶液製剤。
  12. 【請求項12】pHが5〜7である請求項1〜11のいずれかに記載のG−CS
    F溶液製剤。
  13. 【請求項13】pHが5.5〜6.8である請求項12記載のG−CSF溶液製
    剤。
  14. 【請求項14】G−CSFがCHO細胞から産生されたG−CSFである請求項
    1〜13のいずれかに記載のG−CSF溶液製剤。
  15. 【請求項15】バイアル製剤又はプレフィルドシリンジ製剤である請求項1〜1
    4のいずれかに記載のG−CSF製剤。
  16. 【請求項16】プレフィルドシリンジ製剤である請求項15記載のG−CSF製
    剤。
  17. 【請求項17】40℃−2週間の加速試験後におけるG−CSF残存率が90%
    以上であり、あるいは25℃−6ヶ月間の安定性試験後におけるG−CSF残存
    率が97%以上であり、あるいは10℃−1年間の安定性試験後におけるG−C
    SF残存率が97%以上であり、かつ40℃−2週間の加速試験後G−CSFの
    メチオニン残基酸化体生成率が1%以下である、安定なG−CSF溶液製剤。
  18. 【請求項18】実質的にG−CSFのメチオニン残基酸化体を含まない、安定な
    G−CSF溶液製剤。
  19. 【請求項19】安定化剤として、実質的にタンパク質を添加せず、また安定化剤
    として、少なくとも一種のアミノ酸又はその塩を添加することを含むG−CSF
    溶液製剤の安定化方法。
  20. 【請求項20】少なくとも一種のアミノ酸又はその塩の、安定化されたG−CS
    F溶液製剤の製造のための使用。
JP2002-522930A 2000-09-01 2001-09-03 長期安定化溶液製剤 Pending JPWO2002017957A1 (ja)

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Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2010532784A (ja) * 2007-07-10 2010-10-14 メディ‐トックス、インク. ボツリヌス毒素の安定性が改善された薬学的液状組成物

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