JPWO2004111301A1 - 放電表面処理用電極とその評価方法、および放電表面処理方法 - Google Patents
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Abstract
Description
このようなタービンブレード1000が使用されるような高温環境下(700℃以上)においては、常温において用いられる耐磨耗性または潤滑作用を有する被膜は高温環境下では酸化してしまうためにほとんど効果がない。そのため、高温で潤滑性のある酸化物を生成する金属(Cr(クロム)やMo(モリブデン)など)を含んだ合金材料の被膜(厚膜)をタービンブレード1000などに形成している。このような被膜は、溶接や溶射などの方法によって形成されている。
これらの溶接や溶射などの方法は、人手による作業であり、熟練を要するために、作業をライン化することが困難であり、コストが高くなるという問題点がある。また、特に溶接は、熱が集中して被加工物(以下、ワークという)に入る方法であるため、厚みの薄い材料を処理する場合や、単結晶合金や一方向凝固合金などの方向制御合金のように割れ易い材料を処理する場合では、溶接割れや変形が発生し易く、歩留まりが低いという問題点もあった。
一方、パルス状の放電によりワーク表面に被膜を形成する方法(以下、放電表面処理という)が、特許文献1などに開示されている。この放電表面処理は、粉末を白墨程度の硬さに圧縮成形した圧粉体からなる電極とワークとの間にアーク放電を発生させ、これにより溶融した電極の構成材料をワーク表面で再凝固させて被膜を形成するものであり、上述した溶接や溶射などの方法に代わって、作業をライン化することが可能な技術として注目されている。たとえば、従来の放電表面処理は、常温での耐磨耗性を有するTiC(炭化チタン)などの硬質材料の被膜を形成していた。
近年、人手による熟練作業を必要とすることなく、ライン化できる放電表面処理を用いて、常温での耐磨耗性を有する硬質セラミックス被膜の形成だけでなく、100μm程度以上の厚膜の形成に対する要求も強くなっている。
しかし、上記特許文献1に記載の方法では、常温での耐摩耗性を有する薄膜の形成を主な対象としていたため、高温環境下での耐磨耗性能または潤滑性能を有する被膜を形成することができない。また、放電表面処理による厚膜の形成には、電極側からの材料の供給とその供給された材料のワーク表面での溶融およびワーク材料との結合の仕方が被膜性能に最も影響を与えることが知られているが、上記特許文献1には、これらの厚膜の形成に必要な電極材料の供給量、電極の条件、および加工条件が明確ではなかった。
なお、薄膜形成に関してではあるが、放電表面処理の際の電極の供給量について開示されている従来技術がある(たとえば、非特許文献1参照)。これによると、放電表面処理による薄膜は、単発の放電で電極材料がワーク上に移行し、複数の放電によりワーク上で電極材料または電極材料が変化した材料がカバーする部分が増えることで形成させていく。
つぎの発明にかかる放電表面処理用電極の評価方法は、金属、金属化合物またはセラミックスの粉末を圧縮成形した評価用電極を製造する製造工程と、この製造された評価用電極を用いて、被加工物に対して単発放電を行う単発放電工程と、この単発放電により前記被加工物表面に形成された単発放電痕を観察する観察工程と、前記単発放電痕の観察結果に基づいて、前記評価用電極と同じ製造条件で製造される放電表面処理用電極の被膜形成能力を判断する判断工程と、を含むことを特徴とする。
また、上記目的を達成するため、この発明にかかる放電表面処理用電極は、金属、金属化合物もしくはセラミックスの粉末を圧縮成形した圧粉体、または該圧粉体を加熱処理した圧粉体を電極として、加工液中または気中において前記電極と被加工物との間に放電を発生させ、その放電エネルギによって、前記被加工物表面に電極材料または電極材料が放電エネルギにより反応した物質からなる被膜を形成する放電表面処理に用いられる放電表面処理用電極において、単発放電によって前記被加工物表面に電極材料を楕円弧状に堆積させることを特徴とする。
さらに、上記目的を達成するため、この発明にかかる放電表面処理方法は、金属、金属化合物もしくはセラミックスの粉末を圧縮成形した圧粉体、または該圧粉体を加熱処理した圧粉体を電極として、加工液中または気中において前記電極と被加工物との間に放電を発生させ、その放電エネルギによって、前記被加工物表面に電極材料または電極材料が放電エネルギにより反応した物質からなる被膜を形成する放電表面処理方法において、前記被加工物表面に電極材料を楕円弧状に堆積させる単発放電の繰り返しによって被膜を形成することを特徴とする。
この発明の放電表面処理方法によって形成される厚膜に要求される機能としては、高温環境下での耐摩耗性や潤滑性などがあり、高温環境下で使用される部品などを主な対象としてこの発明が適用される。このような厚膜の形成のためには、常温で耐摩耗性などを発揮する硬質セラミックス被膜を形成するためのセラミックスを主成分とした放電表面処理用電極(以下、単に電極ということもある)とは異なり、CrやMoなどの金属成分を主成分とした粉末を圧縮成形し、場合によってはその後加熱処理を行った放電表面処理用電極が使用される。
発明者らの実験により、電極側からの材料の供給とその供給された材料の被加工物表面での溶融および被加工物の材料との結合の仕方が被膜性能に最も影響を与えることが見出された。電極側からの材料の供給に関しては、硬さをある程度低くするなどの所定の特徴を電極に持たせることが必要であると共に、電極硬さのばらつきも均一にしなければならないという条件が必要となる。
なお、電極の硬さが条件となるのは、放電のパルスにより電極材料を多量に被加工物側に供給する必要があるためである。また、電極硬さのばらつきが条件となるのは、電極の硬さが不均一であると、その部分毎に供給される電極材料の量が変化して、被膜形成のされ方に変化が生じてしまい、均一な厚みの被膜を形成することができなくなってしまうからである。これは、多少電極硬さが均一でなくとも被膜にはほとんど影響を与えない薄膜形成の場合と異なり、大量の電極材料を処理範囲に均一に供給することではじめて厚みの一定な被膜ができる厚膜形成に特有の検討事項である。
実施の形態1.
最初に、この発明で用いられる放電表面処理方法とその装置の概要について説明する。第2図は、放電表面処理装置における放電表面処理の概略を示す図である。放電表面処理装置1は、被膜14を形成したい被加工物(以下、ワークという)11と、ワーク11の表面に被膜14を形成させるための放電表面処理用電極12と、ワーク11と放電表面処理用電極12に電気的に接続され両者間にアーク放電を起こさせるために両者に電圧を供給する放電表面処理用電源13と、を備えて構成される。放電表面処理を液中で行う場合には、ワーク11と放電表面処理用電極12のワーク11と対向する部分が油などの加工液15で満たされるように加工槽16がさらに設置される。また、放電表面処理を気中で行う場合には、ワーク11と放電表面処理用電極12とは処理雰囲気中に置かれる。なお、第2図と以下の説明では、加工液15中で放電表面処理を行う場合を例示する。また、以下では、放電表面処理用電極12とワーク11との対向する面の間の距離のことを極間距離という。
このような構成の放電表面処理装置1における放電表面処理方法について説明する。放電表面処理は、たとえば、被膜14を形成したいワーク11を陽極とし、被膜14の供給元となる金属やセラミックスなどの平均粒径が数μmの粉末を圧縮成形した、または場合によってはその後加熱処理した放電表面処理用電極12を陰極とし、これらの電極を加工液15中で両者が接触しないように図示しない制御機構によって極間距離を制御しながら、両者間に放電を発生させる。
放電表面処理用電極12とワーク11との間に放電が発生すると、この放電による爆風や静電気力によって溶融した電極の一部21が電極12から引き離され、ワーク11表面に向かって移動する。そして、溶融した電極の一部21がワーク11表面に到達すると、再凝固して被膜14となる。
電極から引き離された粉末21の供給量が適当な場合には、電極から引き離された粉末21はアーク柱を移動中にすべて溶融され、ワーク11表面で再凝固し被膜14となる。このとき、ワーク11表面もアーク柱の熱によって溶融状態となり、被膜14とワーク11の結合力は強くなる。このときに、単発放電による放電痕(単発放電痕)が形成される。第3図は、電極から引き離された粉末の供給量が適当な場合の単発放電による放電痕の形状を示す図である。この第3図に示されるように、電極から引き離された粉末21の供給量が適当な場合には、放電痕31の中心が最も高い山形の形状(楕円弧状)となる。そして、この放電による放電痕31の積み重ねで形成される被膜は緻密になる。
しかしながら、電極から引き離された粉末21の供給量が多すぎると、電極から引き離された粉末21はワーク11表面に移動する間に完全に溶融されなくなってしまう。その結果、溶けていない電極から引き離された粉末21がワーク11上に到達する。溶融していない電極から引き離された粉末21がワーク11表面に移動しても、ワーク11上に溶融域が形成されないため、電極から移行してきた粉末21とワーク11が結合せず、形成される被膜14は手で剥ぎ取れるほど弱いものとなる。第4図は、電極から引き離された粉末の供給量が多すぎる場合の単発放電による放電痕の形状を示す図である。この第4図に示されるように、この場合の単発放電による放電痕31は、無秩序な形状を有し、堆積したものが外的衝撃で簡単にはがれるものとなる。
また、電極から引き離された粉末21の供給量が少なすぎる場合には、電極からはぎ取られる粉末21がわずかであり、アーク柱の温度は高いままで、電極材料の一部が蒸気化し、ワーク11上にわずかに堆積するだけである(観察できないほど薄い膜になる)。第5図は、電極から引き離された粉末の供給量が少なすぎる場合の単発放電による放電痕の形状を示す図である。この第5図に示されるように、この場合の単発放電による放電痕31の形状は、放電痕31の中心がへこみ、周囲が盛り上がったクレーター形状になる。さらに、電極から引き離された粉末21の供給量が少ないと、電極材料をワーク11へ供給できず、ワーク11を除去してしまうことになる。
つぎに、放電表面処理に用いられる放電表面処理用電極12の製造方法について説明する。第6図は、放電表面処理用電極の製造プロセスを示すフローチャートである。最初に、市場に流通している平均粒径数十μmの金属、金属化合物またはセラミックスの球形粉末を、ボールミル装置などの粉砕機で平均粒径3μm以下に粉砕する(ステップS1)。粉末は小さくなると凝集し易くなるため、平均粒径が数μmの粉末にする場合には、通常、アセトンやエタノール、水などの液体中で粉砕する。粉砕を液体中で行った場合には、粉砕完了後、その液体を蒸発させて粉末を乾燥させる必要がある(ステップS2)。乾燥後の粉末は、粉末と粉末が凝集し、大きな塊を形成しているので、この大きな塊をバラバラにするために、極間距離よりも小さなメッシュサイズ(例えば、0.3mm程度)の網でふるいにかける(ステップS3)。
ここで、このステップS3で粉砕した粉末をふるいにかけることについて説明する。放電表面処理において、放電を発生させるために放電表面処理用電極12とワーク11の間に印加される電圧は、通常80V〜300Vの範囲である。この範囲の電圧を電極12とワーク11との間に印加すると、放電表面処理中の電極12とワーク11の間の距離は0.3mm程度となる。上述したように、放電表面処理においては、両極間に生じるアーク放電によって、電極12を構成する凝集した塊はその大きさのまま電極12から離脱する。ここで、仮に、放電により離脱した電極材料の塊の大きさが極間距離(0.3mm)より大きくなると、極間を短絡させてしまう。そこで、塊の大きさを0.3mm以下にするために、ふるいをかけることにより、凝集された塊がそのままの状態で電極材料となることを防止するものである。なお、塊の大きさが極間距離(0.3mm)以下であれば、極間に0.3mm以下の塊が存在しても、つぎの放電を発生できる。また、放電は距離の近い箇所で発生するため、塊のあるところで放電が起こり、放電の熱エネルギや爆発力で塊を細かく砕くことができるため、問題は少ない。また、ふるいをかけ、バラバラにした電極材料は、つぎの工程で行うワックスとの混合も十分に行え、電極の成形性向上の点でも有利である。
その後、後の工程でのプレスの際に粉末内部へのプレスの圧力の伝わりを良くするために、粉末にパラフィンなどのワックスを重量比1%〜10%程度混入する(ステップS4)。粉末とワックスとを混合すると、成形性を改善することができるが、粉末の周囲が再び液体で覆われることになるので、その分子間力や静電気力の作用によって凝集し、大きな塊を形成してしまう。そこで、再び凝集した塊をバラバラにするためにふるいにかける(ステップS5)。ここでのふるいのかけ方は上述したステップS3での方法と同様である。
ついで、得られた粉末を所定の形状になるように成形器に入れて圧縮プレスで成形する(ステップS6)。その後、成形器から粉末が圧縮された圧紛体が取り出され、真空炉または窒素雰囲気の炉で加熱する(ステップS7)。加熱の際に、電極中に存在するワックスは蒸発して、電極中から除去される。また、加熱温度を高くすると電極は硬くなり、加熱温度を低くすると電極は軟らかくなる。さらに、電極材料の粉末の粒径が小さいと電極は硬くなり、粉末の粒径が大きいと電極は軟らかくなる。このようにして、導電性を有する圧粉体電極の製造が終了する。
なお、上述したステップS1の粉末の粉砕工程において、平均粒径が数十μmの金属やセラミックスの球形粉末を、ボールミル装置などの粉砕機を用いて液体中で平均粒径3μm以下に粉砕し、ステップS2の乾燥工程において液体を乾燥させたが、市場に平均粒径が3μm以下の粉末が流通している場合には、ステップS1の粉砕工程とステップS2の乾燥工程を省略することができる。このような市場に流通している平均粒径が3μm以下の粉末として、酸化され難いCo,Niもしくはこれらの合金、または酸化物やセラミックスなどを挙げることができる。また、成形性の高い粉末を用いる場合には、ステップS4でのワックスの混合工程においてワックスを混合する必要はなく、その後のステップS5におけるふるい行程を省略することができる。
参考までに、説明すると、ステップS1での粉砕工程を省略して、たとえば平均粒径が数十μmの粉末をそのまま使用した場合でも、放電表面処理用電極を成形することはできるが、その電極は、表面の硬度が高く、中心部の硬度が低いという硬さのばらつきを有するので好ましくない。つまり、厚膜形成には適さない電極となる。
このような電極の硬さのばらつきの発生は、以下に示される理由による。通常、粉末をプレス成形する際に、プレス面や金型面に接した粉末から電極の内部に向かって圧力が伝わり、粉末はわずかに動く。この際、粉末の平均粒径が数十μm程度に大きくなると、粉末と粉末の間に形成される空間が大きくなる。そして、プレス面や金型面に接した(電極の表面)粉末が、その空間を埋めるように動き、電極の表面にある粒子密度が増加し、その部分の摩擦が増大する。つまり、粉末が大きい場合には、プレス圧力に対する反作用力を電極表面だけで保持できるようになるので、電極内部へは圧力が伝わらなくなる。その結果、電極に硬さの分布が形成される。
つぎに、厚膜の形成が可能な電極材料の具体例について説明する。この実施の形態1では、市販されている平均粒径1μmのCo粉末を用いて、電極を製造する場合を例に挙げる。上述した第6図にしたがって電極を製造するが、Co粉末は成形性が高いために、ワックスを用いずに所定のプレス圧力で成形した後、真空炉で一時間加熱して、形状φ18.2mm×30.5mmの電極を製造した。ここで、電極の性能を比較するために、加熱温度を100℃,300℃および350℃の各温度で加熱した電極を製造した。
一例として、加熱温度300℃で製造した電極を用いて放電表面処理を行った結果を示す。このとき、電極側をマイナスとし、ワーク側をプラスとし、ピーク電流値ie=5〜20A、放電持続時間(放電パルス幅)te=4〜100μsの様々な組み合わせの放電パルス条件で連続放電させ、5分間実加工を行った。以上の放電パルス条件では、放電痕の大きさ(径)は放電パルス条件に応じて変化するが、放電痕の形状は楕円弧状で変化しなかった。つまり、放電痕は、ピーク電流値と放電持続時間に対して相似的に変化した。換言すれば、300℃の加熱温度で製造された電極は、加工条件(放電パルス条件)に影響を受けること無く堆積加工を行うことが可能である。
第7図は、ピーク電流値ie=12A、放電持続時間(放電パルス幅)te=4μs程度の場合の被膜厚さと放電表面処理用電極の加熱温度との関係を示す図である。この図において、横軸は放電表面処理用電極を加熱した加熱温度(℃)を示し、縦軸は横軸に示される加熱温度で加熱処理された放電表面処理用電極を用いて放電表面処理を行った場合にワーク表面に形成される被膜の厚さ(mm)を示している。この図のコバルトについての結果に示されるように、電極製造時の加熱温度が100℃と300℃の場合では、膜厚が0.1mm程度の被膜をワーク表面に形成(堆積加工)することができたが、電極製造時の加熱温度が350℃の場合では、ワーク表面には被膜が形成されず、ワークを削る除去加工となった。
なお、100℃と300℃の加熱温度で製造された電極を用いて放電表面処理によって形成された被膜の状況を検討すると、100℃の加熱温度で製造された電極による被膜は、手で擦ると剥がれてしまった。しかし、上述したように300℃の加熱温度で製造された電極による被膜は、第3図に示されるような放電痕の積み重ねによって形成されたものであり、緻密なものとなっている。第8図は、300℃の加熱温度で製造された電極を用いて放電表面処理で形成された被膜の断面の様子を示すSEM(Scanning Electron Microscope)写真である。この図に示されるように、ワーク上に形成された被膜は、空孔の無い緻密な被膜となっている。
以上より、平均粒径が1μmのCo粉末から製造した放電表面処理用電極で放電表面処理を行って緻密な被膜を形成するためには、単発放電痕が楕円弧状となるような条件で製造された電極、すなわちCo粉末をプレスした後に300℃で加熱した放電表面処理用電極を用いることが有効であることが示された。
この実施の形態1によれば、単発放電痕の形状によって放電表面処理用電極が緻密な厚膜を形成することができる電極か否かを判断することができる。また、平均粒径が1μmのCo粉末の場合には、該粉末を圧縮成形した圧紛体を300℃で加熱した場合に緻密な厚膜を形成することができる。
実施の形態2.
放電表面処理用電極となる粉末の材質や大きさが変わると、緻密な厚い被膜を形成するための電極の製造条件を求めるために、様々な製造条件で電極を製造し、製造したそれぞれの電極を用いて実際に放電表面処理によって被膜を形成して、その電極の可否を評価しなければならない。これは、労力や時間を膨大に必要とするものである。
また、同じ材質の粉末を用いて同じ製造方法によって電極を製造しても、季節(温度や湿度)によって粉末の集合体の体積が異なる。そのため、上記の粉末の材質や大きさが変わった場合と同様に、製造したそれぞれの電極を用いて実際に放電表面処理によって被膜を形成させて、その電極を評価しなければならない。例えば、同じ材質の粉末を30g取り、φ18.2mm×30.5mmの金型でプレスして電極を製造する場合、夏と冬ではプレス圧力が異なる。
そこで、この実施の形態2では、様々な条件で製造した放電表面処理用電極について被膜形成までの処理を行うことなく、その電極が緻密な被膜を形成できる電極か否かの評価を行うことができる放電表面処理用電極の評価方法について説明する。
まず、この実施の形態2の放電表面処理用電極の評価方法の原理について説明する。この実施の形態2の放電表面処理用電極の評価方法は、1パルスの放電による単発放電痕の積み重なりが被膜を形成していくという事実を利用して、単発放電痕の状態を観察することによって、放電表面処理用電極の評価を行うものである。つまり、緻密な被膜を形成する場合の単発放電痕の形状と、緻密な被膜を形成することができない場合の単発放電痕の形状とを得て、製造した電極の単発放電痕の形状を観察することによって、緻密な被膜の形成の有無を判断するものである。具体的には、単発放電痕の形状が緻密な被膜形成を行うことができる形状を有するものであれば、この単発放電痕の重なりによって形成される被膜も緻密になると判断するものである。ここで、単発放電痕の形状が緻密な被膜形成を行うことができる形状とは、単発放電根の側面形状が実施の形態1の第3図に示される楕円弧状の形状のことをいい、単発放電痕の形状が緻密な被膜を形成することができない形状とは、第4図と第5図に示される単発放電痕の形状のことをいう。
以下に、この放電表面処理用電極の評価方法について、具体例を挙げて説明する。市販されている平均粒径が1μmのCo粉末を用いて、ワックスを用いずに所定のプレス圧で成形した後、真空炉で一時間加熱して、形状φ1mm×10mmの電極を製造した。ここで、電極の性能を比較するために、加熱温度を100℃,300℃および350℃の各温度で加熱した電極を製造した。
実施の形態1と同様に、加熱温度300℃で製造した電極を用いて放電表面処理を行った結果を示す。このとき、電極側をマイナスとし、ワーク側をプラスとし、ピーク電流値ie=5〜20A、放電持続時間(放電パルス幅)te=4〜100μsの様々な組合せの放電パルス条件で1パルスの放電加工を行った。以上の放電パルス条件では、放電痕の大きさ(径)は放電パルス条件に応じて変化するが、放電痕の形状は楕円弧状で変化しなかった。つまり、放電痕は、ピーク電流値と放電持続時間に対して相似的に変化した。換言すれば、単発放電で楕円弧状に放電痕を形成できる電極は、加工条件(放電パルス条件)の影響を受けない。
第9図は、ピーク電流値ie=12A、放電持続時間(放電パルス幅)te=64μs程度で放電表面処理を行った場合の単発放電痕の形状を3次元レーザー顕微鏡で測定した結果を示す図である。この図に示されるように、300℃の加熱温度で製造された電極を用いて、上記の放電パルス条件で放電表面処理を行った場合の単発放電痕は、中心の高い山形となり、第3図に示される楕円弧状と同様の形状となる。
なお、100℃の加熱温度で製造された電極を用いて、上記の放電パルス条件で放電表面処理を行った場合には、ワーク表面に被膜は堆積したが手で擦ることによって剥がれてしまい、放電痕がなくなったためにその形状を観察することができなかった。
第10図は、350℃の加熱温度で製造された電極を用いて、ピーク電流値をie=12A、放電持続時間(放電パルス幅)te=64μs程度で放電表面処理を行った場合の単発放電痕の形状を3次元レーザー顕微鏡で測定した結果を示す図である。この図に示されるように、350℃の加熱温度で製造された電極を用いて、上記の放電パルス条件で放電表面処理を行った場合の単発放電痕は、中心部が窪み、周囲が盛り上がったクレーター形状となり、第5図に示される形状と同様となった。
実施の形態1の被膜形成までの処理と、この実施の形態2の単発放電痕の関係は、上述のように、緻密な被膜形成のためには、単発放電痕の積み重なりが必要なことから、単発放電痕の状態が楕円弧状に堆積した状態となる電極を選定することが重要である。すなわち、単発放電によって堆積できる電極を用いると、その堆積が積み重なって、緻密な被膜を形成できることが見出された。
そこで、この実施の形態2での放電表面処理用電極の評価方法について説明する。この実施の形態2では、電極の製造時のパラフィン(ワックス)量や圧力、加熱温度を変えて製造したφ1mm程度の面を有する電極を上述した方法で製造する。これは、放電が発生したときに陰極である電極表面でのアーク柱の大きさは、大きくてもφ0.3mm程度であるため、上記の大きさの電極で十分であるからである。そして、これらの小さな電極を用いてワークに一回だけ放電させる。
第11図は、この実施の形態2の放電表面処理用電極の評価方法に使用される放電表面処理装置の概略構成を示す図である。この放電表面処理装置1aは、実施の形態1の第2図において、放電表面処理用電極12とワーク11との間での放電の発生を検出する放電検出回路41を備えることを特徴とする。なお、第2図と同一の構成要素には同一の符号を付してその説明を省略している。
放電検出回路41は、電極12とワーク11との間に一回だけ放電を起こさせるために、放電の発生を検出するための回路である。この放電検出回路41は、極間の電圧を検出し、放電開始前に印加されていた電圧が50V以下になると、5Vの信号を放電表面処理用電源13に送出するように構成されている。また、放電表面処理用電源13は、放電検出回路41から信号を受信すると極間への電圧印加を停止する。
このような構成によれば、極間に印加されていた電圧が、放電が始まると80V程度から20V程度まで一気に低下するので、放電検出回路41がこの電圧の低下を検知して、放電表面処理用電源13側に上記5Vの信号を送出する。そして、放電表面処理用電源13ではこの信号を受信すると極間への電圧印加を停止する。このようにして単発の放電を発生することが可能となる。
単発放電を極間に発生させた後、ワーク11に形成される放電痕(単発放電痕)の形状を顕微鏡などの観察手段で観察し、曲線近似や積分処理によって電極12からの電極材料の供給量(堆積量)を把握する。たとえば、放電痕の断面形状について2次〜6次で曲線近似を行い、その近似曲線の方程式を360度積分してワーク11上に堆積した量を算出する。これによって、単発放電によって、緻密な被膜の形成の可否を評価することができる。
なお、上記の例では、単発放電によるワーク11上への堆積量を算出しているが、堆積量を算出せずに単発放電痕の形状だけで緻密な被膜の形成の可否を評価してもよい。これは、緻密な被膜を形成することができる単発放電痕の形状は、第3図に示されるような楕円弧状の場合に限られるからである。これによって、製造した電極12で単発放電を行った結果の中から、第3図に示されるような形状を有する放電痕を見つけだし、その電極12と同じ条件で、実際に使用する電極を製造すればよい。
この実施の形態2によれば、はじめに小さな電極を製造し、この電極で単発放電を行った単発放電痕により緻密な被膜の形成を行うことができる電極か否かを把握することができる。これにより、実際に被膜を形成して緻密な被膜の形成が可能な電極か否かを評価する場合には、被膜の形成にある程度の時間(5分〜15分)を必要とするが、単発放電では一瞬で終わり、その単発放電痕の形状を観察するだけで、緻密な被膜形成に最適な電極か否かを即座に評価することができ、電極製造の効率化を図ることができる。
また、実際に形成した被膜が緻密か否かを判断するには、ワークに形成された被膜の断面を実態顕微鏡や電子顕微鏡で観察する必要があるが、この実施の形態2の方法によれば、単発放電の放電痕を表面からレーザー顕微鏡で観察してその形状を把握し、その形状が緻密な被膜を形成することが可能な場合の単発放電痕か否かを判定するだけで最適な電極か否かを即座に評価することができる。すなわち、ワークの断面を得るためにワークを破断処理する必要がない。さらに、評価用に用いられる電極は、アーク柱の発生が可能な面積を有すればよいので、小さな電極ですみ、電極の製造コストや材料費を抑えることができる。もちろん、実際に使用したいサイズの電極をはじめから製造し、その電極を用いて単発放電させ、放電痕から緻密な被膜が形成できるか判断しても問題はない。
実施の形態3.
この実施の形態3では、上述した実施の形態2とは異なる電極材料で実験を行った場合について説明する。なお、電極材料としては、Mo28wt%、Cr17wt%、Si(シリコン)3wt%、残りがCoの組成からなる合金粉末を使用した。なお、この例では上記割合の合金粉末を使用したが、Cr28wt%、Ni5wt%、W(タングステン)19wt%、残りがCoの組成からなる合金粉末や、Cr25wt%、Ni10wt%、W7wt%、C(炭素)0.5wt%、残りがCoの組成からなる合金粉末などを用いてもよい。
第6図に示されるフローチャートにしたがって、上記合金粉末から放電表面処理用電極を製造した。なお、ステップS1の粉末の粉砕工程においては、上記の組成を有する合金粉末をビーズミル装置で粉砕した。ここで、ビーズミル装置は、粉砕容器とロータの間に径φ1mmのボール(ビーズ)を1.7kg程度入れ、ロータに取り付けられた撹拌ピンを回転させてボールを高速に運動させ、粉末を粉砕する装置である。このとき、電極粉末は、粉末同士がくっつき合って凝集することを避けるために、アセトンやエタノールと混合されている。この混合体をボールが撹拌される領域を通過させてボールとボールの間で粉末を潰して微細化する。なお、混合体は一旦粉砕容器の外部に流出するが、再び戻るように構成され、混合体はビーズミル装置の粉砕領域を何度も循環するようになっている。ここでは、ロータを周速10m/sで回転させて、6時間粉砕した。
第12図は、ビーズミル装置で合金粉末を上記の条件で粉砕した後の状態を示すSEM写真である。この写真に示されるように、ビーズミル装置で粉砕された粉末は、平均粒径が0.7μm程度の鱗片状をしていた。
なお、ビーズミル装置ではなく、容器の中に粉砕する原料とボールと溶媒を入れ、振動させて粉末を微細化する振動ミル装置や、回転する容器の中に粉砕する原料とボールと溶媒を入れ、その容器を乗せた台も回転させて原料を微細化する遊星式ボールミル装置を用いても、ビーズミル装置で粉砕された粉末と同じ形状となる。ただし、ビーズミル装置では小さなボール(ビーズ)で粉末を粉砕するために、粉砕力が振動ミル装置の10倍以上あるので、粒径の分布を示す粒度分布は振動ミル装置で粉砕した場合に比してシャープで狭くなる。そして、このような粒度分布を有する粉末を電極に用いると、同じ放電条件ですべての粉末が溶融するため、被膜の緻密性がさらに向上する。
第6図のステップS3のふるい工程では、メッシュサイズ0.01〜0.1mmのふるいにかけ、ステップS4のワックスとの混合工程では、ワックスを重量比で10%混合し、ステップS5のふるい工程では、メッシュサイズ0.1〜1mmのふるいにかけ、そして、ステップS7の加熱工程では、真空炉で一時間加熱した。製造された電極の形状はφ18mm×30mmである。なお、電極の性能を比較するために、600℃,700℃および800℃の各温度で加熱した電極を製造した。
製造した電極を用いて、材質がINCONEL718(Ni合金)のワークに一回放電を行い、その結果生じる単発放電痕を観察した。その結果、600℃で加熱して製造した電極による単発放電痕は第4図と同じ形状になり、700℃で加熱して製造した電極による単発放電痕は第3図と同じ形状になり、そして800℃で加熱して製造した電極による単発放電痕は第5図と同じ形状になった。すなわち、700℃で加熱して製造した電極が緻密な被膜形成に寄与することがわかる。
そこで、上記700℃で加熱して製造した電極を用いて、連続放電させ、5分間実加工した場合についてさらに詳しく検討した。電極側をマイナスとし、ワーク側をプラスとし、ピーク電流値ie=5〜20A、放電持続時間(放電パルス幅)te=4〜100μsの様々な組合せの放電のパルス条件で連続放電を行った。以上の放電パルス条件では、上述した単発放電と同様に、放電痕の大きさ(径)は放電パルス条件に応じて変化するが、放電痕の形状は楕円弧状で変化しなかった。つまり、放電痕は、ピーク電流値と放電持続時間に対して相似的に変化した。換言すれば、単発放電で楕円弧状に放電痕を形成できる電極は、加工条件(放電パルス条件)の影響を受けない。
ピーク電流値ie=12A、放電持続時間(放電パルス幅)te=8μs程度で放電表面処理を行ったとき、単発放電で堆積可能であった700℃で加熱して製造した電極では、堆積加工となった。第13図は、700℃で加熱して製造した電極で形成された被膜の断面を示す写真である。この図に示されるように、空孔の無い緻密な被膜が形成されている。
一方、単発放電で堆積可能であった600℃で加熱して製造した電極を用いて、ピーク電流値ie=12A、放電持続時間(放電パルス幅)te=8μs程度で放電表面処理を行った場合は、ワーク表面に被膜が形成され、堆積加工となった。しかし、この被膜は手で擦ると剥がれてしまった。また、単発放電ではほとんど堆積量を確認できなかった800℃で加熱して製造した電極では、除去加工となった。
この実施の形態3によれば、実施の形態2で例として用いたCo粉末以外のその他の電極材料によっても、実施の形態2と同様に単発放電痕が楕円弧状となる電極を用いると、実加工ではワーク上に緻密な被膜を堆積できることが見出された。
上述した実施の形態2,3では、平均粒径1μmのCo粉末や、合金粉末を平均粒径0.7μmまで微細化した粉末を用いて電極を製造し、単発放電させ、ワーク上に形成される放電痕について説明した。しかし、単発放電による電極材料の供給量は、電極の材質や組成にはよらないため、その他の金属材料でも単発放電を用いて、厚い被膜を堆積できる電極か否かを評価することができる。
実施の形態4.
この実施の形態4では、上記した実施の形態1〜3で説明した場合と比して、電極形状と電流波形が異なる場合を例に挙げて説明する。
この実施の形態4では、合金粉末から第6図のフローチャートにしたがって電極を製造した。合金粉末の組成は、実施の形態3で説明したものと同様である。各工程における詳細を以下に説明する。まず、ステップS1の粉末の粉砕工程において、平均粒径が6μmの合金粉末をボールミル装置で平均粒径が1.2μmとなるまで粉砕した。この粉砕において、ジルコニア製ボールを用い、合金粉末と、溶媒であるアセトンを混合して粉砕した。ただし、粉末と粉末の凝集を抑制するために、ステアリン酸をアセトンに溶かしている。
つぎに、ステップS2の乾燥工程では、30℃程度の大気雰囲気でアセトンを揮発させた。この際、完全に乾燥させてしまうと粉末の酸化が進むため、わずかに湿った状態で乾燥を終了させる。また、粉末を均一に乾燥させるため、乾燥中は粉末を攪拌し続ける。もし攪拌しなければ、表面付近の粉末が底面付近の粉末より先に乾燥し、酸化してしまうからである。また、ステップS4のワックスとの混合工程では、乾燥して得られた粉末に重量比で1〜10%程度のパラフィンワックスを混合した。
ステップS5のふるい工程では、メッシュサイズ100〜500μm程度のふるいの上にパラフィンワックス混合後の粉末を置き、振動させてふるいを通過させる。また、ステップS6のプレス工程では、50mm×11mmの金型にふるい通過後の粉末10gを投入し、電極表面に50〜100MPaの圧力をかけ成形する。その結果、50mm×11mm×5.5mmの成形体が得られる。
ステップS7の加熱工程では、得られた成形体を真空炉に入れ、加熱処理した。なお、加熱温度を730℃と750℃とし、これらの温度で約一時間保持した後、自然冷却した。冷却したところで、真空炉内に大気を導入し、真空炉を開け、導電性を有する電極が得られる。
このようにして製造された電極を用いて、SKD61(組成名)からなるワークに一回放電を行った。このとき、電極側をマイナスとし、ワーク側をプラスとして放電表面処理を行った。処理条件は、ピーク電流値Ie=10A、放電継続時間(放電パルス幅)te=4μsである。
第14図は、730℃で加熱して製造された電極で単発放電を行った場合の単発放電痕の形状を測定した結果を示す図であり、第15図は、750℃で加熱して製造された電極で単発放電を行った場合の単発放電痕の形状を測定した結果を示す図である。第14図に示される730℃の加熱温度で製造された電極による単発放電痕は、第9図に似た楕円弧状を有する形状となっているが、第15図に示される750℃の加熱温度で製造された電極による単発放電痕は、第10図に似たクレータ状の形状となった。
これら二つの電極を用いて上記の放電を連続的に発生させ、厚い被膜の形成を試みた。このとき、電極の11mm×5.5mmの面で加工を行った。また、電極が1mm消耗された時点で加工を停止した。第16図は、連続的に放電を発生させた場合の電極の加熱温度と被膜厚さとの関係を示す図である。この図において、横軸は、放電表面処理に用いた電極の加熱温度(℃)を示し、縦軸は、横軸に示される温度で加熱処理された電極を用いて放電表面処理を行った場合の被膜の厚さ(mm)を示している。この縦軸において、0mmはワーク表面を示しており、マイナス領域は除去加工を示し、プラス領域は堆積加工を示している。730℃で加熱して製造された電極で放電表面処理を行うと0.2mm程度の被膜をワーク上に形成することができたが、750℃で加熱して製造された電極で放電表面処理を行うと除去加工となった。これは、730℃で加熱して製造された電極は単発放電で楕円弧状の放電痕を形成し、750℃で加熱して製造された電極は単発放電で中心がへこみ、周囲が盛り上がったクレーター形状の放電痕を形成した結果と対応している。
第17図は、730℃で加熱して製造された電極で放電表面処理を行って形成された被膜の研磨後のSEM写真である。この図に示されるように、全面が金属光沢を持っており、非常に緻密な被膜を形成できたことがわかる。
この実施の形態4によれば、電流波形が実施の形態1〜3とは異なる場合でも、実施の形態2と同様に単発放電痕により緻密な被膜を形成することができる電極の製造条件を把握することができる。従来のように、放電表面処理によって実際に被膜を形成するためには、処理にある程度の時間を必要とするが、単発放電では一瞬で終わるために、緻密な被膜を形成するための条件を有する最適な電極か否かを即座に評価することができ、電極製造の効率化を図ることができる。
実施の形態5.
この実施の形態5では、実施の形態4と粉末の材質や粒度が異なる場合をを例に挙げて説明する。
この実施の形態5では、合金粉末と固体潤滑剤であるBN(窒化ホウ素)粉末から第6図のフローチャートにしたがって電極を製造した。合金粉末の組成は、実施の形態3で説明したものと同様である。各工程における詳細を以下に説明する。まず、ステップS1の粉末の粉砕工程において、平均粒径が6μmの合金粉末を実施の形態4と同様の粉砕条件で粉砕し、平均粒径が1.2μmの粉末にした。この粉砕された合金粉末に、平均粒径が6μmの合金粉末と、平均粒径が1μmのBN粉末を、それぞれ重量比で9.5%、0.5%となるように混合する。
合金粉末は、800℃付近で組成中のCrが酸化して潤滑性を有するCr2O3となるため、優れた耐摩耗性を示すが、300℃〜500℃付近では、Cr2O3が現れないため、摩耗してしまう。そのため、被膜内にあらかじめ潤滑性を有するBNを混合しておくと、1050℃以下までの温度において優れた耐摩耗性を発揮する被膜を形成することができる。また、平均粒径が大きいものがわずかに存在すると、後の工程のプレス成形時において成形性が向上するため、平均粒径6μmの合金粉末を混合している。先に粉砕された合金粉末はアセトン中に存在するため、その中に上記粉末を投入し、ボールミル装置で攪拌して4つの粉末、すなわち平均粒径が1.2μmの合金粉末と、平均粒径が6μmの合金粉末と、平均粒径が1μmのBN粉末と、を混合する。
ステップS2の乾燥工程、ステップS4のワックスとの混合工程、ステップS5のふるい工程における詳細は、実施の形態4と同様であるのでその説明を省略する。ステップS6のプレス工程では、50mm×11mmの金型にふるい通過後の粉末10gを投入し、電極表面に100MPaの圧力をかけて成形する。その結果、50mm×11mm×5.5mmの成形体が得られる。
ステップS7の加熱工程では、得られた成形体を真空炉に入れ、700℃の温度で約1時間加熱処理した後、自然冷却した。冷却した時点で、真空炉内に大気を導入し、真空炉を開け、導電性を有する電極が得られる。
このようにして製造された電極を用いて、鋼材SKD61からなるワークに一回放電を行った。このとき、電極側をマイナスとし、ワーク側をプラスとして放電方面処理を行った。また、使用した放電パルス条件は、実施の形態4の条件と同様である。単発放電痕は、第9図に似た楕円弧状を有する放電痕となった。
その後、この電極を用いて上記の放電を連続的に発生させ、厚い被膜の形成を試みた。このとき、電極の11mm×5.5mmの面で加工を行った。また、電極が1mm消耗された時点で加工を停止した。その結果、0.2mm程度の被膜を形成することができた。この被膜は、手で擦っても剥がれず、空孔のない緻密な被膜であった。
この実施の形態5によれば、粉末の材質や粒度が異なる場合でも、単発放電で形成される放電痕の形状で緻密な被膜を堆積できる電極か否かの評価を把握することができる。
以上説明したように、この発明によれば、放電表面処理によって厚い緻密な被膜を形成することができる電極か否かを、実加工の前に容易に判別することができるという効果を有する。
Claims (14)
- 金属、金属化合物もしくはセラミックスの粉末を圧縮成形した圧粉体、または該圧粉体を加熱処理した圧粉体を電極として、加工液中または気中において前記電極と被加工物との間に放電を発生させ、その放電エネルギによって、前記被加工物の表面に電極材料または電極材料が放電エネルギによって反応した物質からなる被膜を形成する放電表面処理に用いられる放電表面処理用電極の評価方法であって、
前記電極による被膜の堆積の可否を単発放電による電極材料の前記被加工物の表面への堆積量で評価することを特徴とする放電表面処理用電極の評価方法。 - 金属、金属化合物またはセラミックスの粉末を圧縮成形した評価用電極を製造する製造工程と、
この製造された評価用電極を用いて、被加工物に対して単発放電を行う単発放電工程と、
この単発放電により前記被加工物表面に形成された単発放電痕を観察する観察工程と、
前記単発放電痕の観察結果に基づいて、前記評価用電極と同じ製造条件で製造される放電表面処理用電極の被膜形成能力を判断する判断工程と、
を含むことを特徴とする放電表面処理用電極の評価方法。 - 前記判断工程では、単発放電による電極材料の前記被加工物表面への堆積量に基づいて前記放電表面処理用電極の被膜形成能力を判断することを特徴とする請求の範囲第2項に記載の放電表面処理用電極の評価方法。
- 前記判断工程では、単発放電によって前記被加工物表面に形成された電極材料の被膜硬度に基づいて前記放電表面処理用電極の被膜形成能力を判断することを特徴とする請求の範囲第2項に記載の放電表面処理用電極の評価方法。
- 前記判断工程では、単発放電によって前記被加工物表面に形成された電極材料の堆積形状に基づいて前記放電表面処理用電極の被膜形成能力を判断することを特徴とする請求の範囲第2項に記載の放電表面処理用電極の評価方法。
- 前記電極材料の堆積形状の断面が楕円弧状である場合に、前記放電表面処理用電極に被膜形成能力があると判断することを特徴とする請求の範囲第5項に記載の放電表面処理用電極の評価方法。
- 前記単発放電は、1パルスの放電のみで行うことを特徴とする請求の範囲第2項〜第6項のいずれか1つに記載の放電表面処理用電極の評価方法。
- 金属、金属化合物もしくはセラミックスの粉末を圧縮成形した圧粉体、または該圧粉体を加熱処理した圧粉体を電極として、加工液中または気中において前記電極と被加工物との間に放電を発生させ、その放電エネルギによって、前記被加工物表面に電極材料または電極材料が放電エネルギにより反応した物質からなる被膜を形成する放電表面処理に用いられる放電表面処理用電極において、
単発放電によって前記被加工物表面に電極材料を楕円弧状に堆積させることを特徴とする放電表面処理用電極。 - 平均粒径3μm以下のCo粉末を圧縮成形した圧粉体を電極として、該電極と被加工物との間に放電を発生させ、その放電エネルギによって、前記被加工物表面に被膜を形成する放電表面処理に用いられる放電表面処理用電極において、
前記Co粉末の圧紛体は、所定の温度で加熱されることを特徴とする放電表面処理用電極。 - 前記Co粉末の平均粒径を、1μm以下とすることを特徴とする請求の範囲第9項に記載の放電表面処理用電極。
- 平均粒径3μm以下の合金粉末を圧縮成形した圧粉体を電極として、該電極と前記被加工物との間に放電を発生させ、その放電エネルギによって、前記被加工物表面に被膜を形成する放電表面処理に用いられる放電表面処理用電極において、
前記合金粉末の圧紛体は、所定の温度で加熱されることを特徴とする放電表面処理用電極。 - 前記合金粉末の平均粒径を、1μm以下とすることを特徴とする請求の範囲第11項に記載の放電表面処理用電極。
- 前記合金粉末は、Mo28wt%、Cr17wt%、Si3wt%、残りがCoの組成からなる合金、Cr28wt%、Ni5wt%、W19wt%、残りがCoの組成からなる合金、またはCr25wt%、Ni10wt%、W7wt%、C0.5wt%、残りがCoの組成からなる合金のいずれかであることを特徴とする請求の範囲第11項または第12項に記載の放電表面処理用電極。
- 金属、金属化合物もしくはセラミックスの粉末を圧縮成形した圧粉体、または該圧粉体を加熱処理した圧粉体を電極として、加工液中または気中において前記電極と被加工物との間に放電を発生させ、その放電エネルギによって、前記被加工物表面に電極材料または電極材料が放電エネルギにより反応した物質からなる被膜を形成する放電表面処理方法において、
前記被加工物表面に電極材料を楕円弧状に堆積させる単発放電の繰り返しによって被膜を形成することを特徴とする放電表面処理方法。
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