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JPWO1996028966A1 - 外来遺伝子の導入により高等霊長類の抗原型を発現した非霊長哺乳類の形質転換動物及びその作出方法 - Google Patents

外来遺伝子の導入により高等霊長類の抗原型を発現した非霊長哺乳類の形質転換動物及びその作出方法

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JPWO1996028966A1
JPWO1996028966A1 JP8-528259A JP52825996A JPWO1996028966A1 JP WO1996028966 A1 JPWO1996028966 A1 JP WO1996028966A1 JP 52825996 A JP52825996 A JP 52825996A JP WO1996028966 A1 JPWO1996028966 A1 JP WO1996028966A1
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blood
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千裕 小池
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Abstract

(57)【要約】 非霊長哺乳類の動物に、高等霊長類の糖転移酵素を発現させる外来遺伝子を導入し、高等霊長類の糖鎖抗原を発現するようする。これにより、非霊長類哺乳動物の組織を、高等霊長類へ移植する際の超急性拒絶反応を緩和することができる。

Description

【発明の詳細な説明】 外来遺伝子の導入により高等霊長類の抗原型を発現した非霊長哺乳類の形質転換 動物及びその作出方法 〔技術分野〕 この発明は、外来遺伝子導入により、高等霊長類への移植に適した細胞、組織 あるいは臓器等を有する非霊長哺乳類の形質転換動物及びその動物の作出方法に 関し、特に、非霊長哺乳類の糖鎖抗原を高等霊長類に特有な形に転換し、その状 態を遺伝的に安定化させた形質転換動物及びその作出方法に関するものである。
なお、本発明において、高等霊長類とは、霊長類の真猿亜目のうち、ヒトやチ ンパンジー、オランウータン、ヒヒ、日本猿などが属する狭鼻猿類をいう。また 、非高等霊長類とは、霊長類の真猿亜目のうちの広鼻猿類及び原猿亜目をいう。
また、非霊長哺乳類あるいは非霊長類哺乳動物とは、霊長類でない哺乳類をいう 。
〔背景技術〕
今日、ヒトの欠損あるいは不完全な組織を、代替物を移植することにより補充 する治療法が一般的な治療法の一つとなりつつある。ここで、例えば組織とは、 腎臓や肝臓等の臓器から、皮膚、血管、細胞までも含まれ、かかる組織の代替物 としては、人工臓器や人工血管に代表される人工材料、自己の組織、さらには同 種あるいは異種の動物の組織や細胞までが含まれるものである。
しかし、人工臓器の多くは、いまのところ人工弁の他は移植された動物体内で 臓器として充分に機能できるまでには至っておらず、また、人工血管においては 、その内部に血栓が生じやすいという欠点があり、とりわけ、人工血管の直径が 小さいほど、その傾向が大きいという問題がある。
また、自己の組織を代替物として用いるにあたっては、補充用として利用可能 な器官や量に極めて限りがあるし、かかる組織を摘出し、さらに補充するための 身体への負担を考慮すれば、実際には不可能なことも多い。
さらに、ヒトに近い高等霊長類から摘出した組織により補充するには、その飼 育上の問題から需要に応じ切れないとともに、倫理的観点等からの問題があるた め、困難なことが多い。
一方、家畜は、非霊長哺乳類であって、その飼育方法が確立しており、容易に 入手でき、倫理的問題も少ないため、代替物の提供体、いわゆるドナーとして有 望である。
しかしながら、その反面、かかる哺乳動物から摘出した組織は、ヒトにおいて は激しい拒絶反応を引き起こすことが知られ、特に24時間以内に発生する激し い拒絶反応(以下、超急性拒絶反応ともいう。)が問題となっている。
かかる超急性拒絶反応は、補充したドナー組織の血管をレシピエントの血管と を吻合して血液を灌流する際に、ドナーの組織内の血管内皮細胞で生じる。
この超急性拒絶反応は、ヒトが自然抗体を持つところの種との組み合わせにお いては、2種類あるヒトの補体系の活性化経路のうち、抗原抗体反応によって引 き起こされる古典経路が主要な反応であると考えられている。この抗原抗体反応 は、以下の原因によるものと考えられている。
まず、第1に、ブタなどの非霊長類哺乳動物の血管内皮細胞膜を含む脈管系細 胞及び血球系細胞(以下、単に脈管・血球系細胞ともいう。)上の抗原性がヒト 等の高等霊長類のそれと異なるからである。
すなわち、ブタなど非霊長哺乳類は、高等霊長類の持っていない彼ら特有の糖 鎖抗原(以下、この抗原をG型抗原あるいはG型物質という。)をその脈管・血 球系細胞膜表面に持っているからである。
第2に、ヒトはブタなどのG型抗原に対する自然抗体を生まれながらに持って いるからである。
したがって、例えばブタをドナーとする場合に、ブタの血管の中にヒトの血液 が流された際、ヒトの血液中の抗G自然抗体とブタの血管内皮細胞膜上のG型抗 原との抗原抗体反応が引き起こされ、その結果形成された抗原抗体複合体が補体 系を活性化し、ブタの血管内皮細胞が破壊され、補充したドナー組織の破壊につ ながり、超急性拒絶反応が生ずるのである。
かかる超急性拒絶反応を回避するために、非霊長哺乳類の組織を摘出してヒト に補充する際に、同時にヒト等のレシピエントにおける補体の活性を制限する物 質を供給する技術も開示されているが(特表平5−503074号公報)、そこ に示されている補体制限因子を持ったブタの細胞とヒトの血流との関係は、基本 的にはいわゆる異型輸血と同じ構造を持った関係となるため、超急性拒絶反応の 発生を必ずしも防止できるものではなく、又、ヒトが動物の抗原に感作されるた め、いわゆる血清病を誘発する可能性を併せもつという不都合がある。
また、ドナーにおいてG型抗原の発現に係わる遺伝子に対するアンチセンスD NAを導入したり、この遺伝子の発現を完全に抑制したりしてドナー組織におけ るG型抗原の発現を抑制しようとする考えもある。しかし、この方法だけでは、 ドナー組織に、G型抗原の前駆物質が蓄積されることになり、この前駆物質は、 また、いわゆるボンベイ型抗原であるため、依然としてヒトに存する自然抗体に よる超急性拒絶反応を生じることになる。
さらに、同種移植の場合は免疫抑制剤の利用は有効な場合が多いが、異種移植 の場合は多剤併用してもなお、今日、超急性拒絶反応を免れていない。
ここで、脈管・血球系細胞におけるABH型物質の異種間分布をみると、AB H型物質が発現されるのは、本発明にいう、高等霊長類、すなわち、真猿亜目の うち、ヒトやチンパンジー、オランウータン、ヒヒ、日本猿などが属する狭鼻猿 類だけであって、他の霊長類や非霊長類哺乳動物では消化管粘膜や嗅覚受容体細 胞などでは発現されていることがあるが、脈管・血球系細胞には発現されていな い。
一方、非霊長哺乳類が脈管・血球系細胞に有するG型物質は、ABH型物質の 前駆物質(N−アセチルラクトサミン)に対し、ガラクトースがα1−3構造で 結合した物質である。
ABH型物質とG型物質の合成経路について図1に示す。
すなわち、本発明にいうH型物質は前駆物質(N−アセチルラクトサミン)に 対して、GDP-L-フコース:β-D-ガラクトシド 2-α-L-フコシルトランスフ ェラーゼ(以下、単にFTという。)が作用して生成され、G型物質は、前述の H型物質と同じ前駆物質であるN−アセチルラクトサミンに対してUDPガラク トース:β-D-ガラクトシル-1,4-N-アセチル-D-グルコサミニド α-1,3-ガラ クトシルトランスフェラーゼ(以下、単にGTという。)が作用して生成される のである。このように、ヒト等とブタ等における脈管・血球系細胞における抗原 型の差異は、前駆物質に作用する酵素の差異、換言すれば、ブタ等に酵素GTが 存在し、反対にヒト等に酵素GTが存在せず酵素FTが存在するという差異に基 づくものである。このような各種組織におけるABH型物質の存否、酵素の存否 は、進化に基づくものであると考えられている。
しかしながら、かかる高等霊長類と非霊長類哺乳動物におけるそれぞれ特有の 糖鎖抗原の分布と、超急性拒絶反応の主たる場である血管内皮細胞等におけるこ れら糖鎖抗原の差異を積極的に利用して、超急性拒絶反応を緩和することについ ては、従来全く着目されていなかった。
〔発明の開示〕
そこで、本発明は、従来の異種間移植における問題を解決するべく、家畜とし て広く餌育され入手の容易なブタ等の非霊長類哺乳動物において、従来にない新 しい手法により、移植時の超急性拒絶反応を緩和して、非霊長類哺乳動物の組織 を高等霊長類への移植に適用することを目的とするものである。
上記目的を達成するため、本発明者は、ブタ等の非霊長類哺乳動物において、 遺伝子工学的・発生工学的に、例えばFT等の高等霊長類の糖転移酵素を発現さ せて、高等霊長類の抗原物質を積極的に生成せしめ、あるいは同時に、例えばG T等の非霊長類哺乳動物の糖転移酵素の発現を抑制して、脈管・血球系細胞を抗 原的に高等霊長類型に転換することにより、高等霊長類に非霊長類哺乳動物の組 織を移植した際の超急性拒絶反応を緩和できることを見い出し、以下の発明を完 成したのである。
なお、異種間移植の超急性拒絶反応を緩和させるために、ドナーにおいてヒト 等の高等霊長類とおなじH型物質を発現させることは従来考えられていない。す なわち、従来は、自然抗体と抗原との結合後における補体活性化経路の抑制等に 着目されていた。また、本発明は、ヒト等の高等霊長類における抗G自然抗体と G型抗原との結合自体を抑制する点で、従来の手法に対し、より本質的な解決手 段といえる。
本発明の非霊長哺乳類の形質転換動物は、高等霊長類の糖耘移酵素を発現させ る外来遺伝子を有することを特徴とする。
これらの外来遺伝子は、ヘテロの状態で保持されていても、ホモの状態で保持 されていてもかまわないが、ホモの状態で保持されることが好ましい。
この動物は、特に、前記高等霊長類の糖転移酵素としてFTを発現させる外来 遺伝子を有することもできる。
また、本発明の動物は、高等霊長類の糖転移酵素を発現させる第1の外来遺伝 子と、非霊長哺乳類の糖転移酵素の発現を抑制する第2外来遺伝子、とを有する 。
特に、前記高等霊長類の糖転移酵素をFTとし、非霊長哺乳類の糖耘移酵素を GTとすることができる。
これらの外来遺伝子は、ヘテロの状態で保持されていても、ホモの状態で保持 されていてもかまわないが、ホモの状態で保持されることが好ましい。
特に、本発明の非霊長類哺乳動物は、ブタとすることができる。
また、本発明の動物から得られた組織は、幅広く高等霊長類への移植材料に適 用することができる。
さらに、本発明の方法は、高等霊長類の糖耘移酵素を発現させる第1の外来遺 伝子及び/又は非霊長哺乳類の糖転移酵素の発現を抑制する第2の外来遺伝子を 非霊長哺乳類に導入することを特徴とする高等霊長類型の抗原型を発現した非霊 長哺乳類の形質転換動物の作出方法である。
以下、本発明を詳細に説明する。
ブタ等の非霊長類哺乳動物の脈管・血球系細胞において、ヒトなど高等霊長類 だけが持ち、ブタなどの非霊長類哺乳動物が持たない遺伝子あるいはその発現物 質であるタンパク質を発現させるには、形質転換動物を作成することが必要にな る。
ヒトとヒトとの移植における基本原則の一つとして血液型を合わせることが広 く認められているが、いわゆる血液型すなわちABO式の分類の基本物質はH型 物質であって、それは脈管・血球系細胞においては、前述のように前駆物質(N −アセチルラクトサミン)に糖転移酵素FTが作用して形成される。
しかし、ブタなど非霊長類哺乳動物は、FTでなくGTを持ち、それによりヒ トとは異なった物質(G型物質)を形成している。
したがって、例えば、H型物質をその前駆物質から生成する糖耘移酵素FTを コードするFT遺伝子を含む外来遺伝子断片をブタ等の受精卵に導入し、この遺 伝子断片が染色体上に組み込まれた場合、各細胞でこのFT遺伝子が転写翻訳さ れ、酵素FTが産生されてH型物質を発現させることが期待できる。
さらに、H型物質の場合には、酵素FTが前駆物質を消費すれば、それだけ、 内在する酵素GTと前駆物質との結合が阻害され、G型物質の生成が抑制される ことが期待できる。なお、FT遺伝子はブタ染色体にくみこまれた後、安定して 子孫に伝達されることが可能である。
さらに、本発明では、ブタ等の非霊長類哺乳動物に内在する糖耘移酵素、例え ば、G型物質をその前駆物質から生成する糖転移酵素GTの遺伝子の発現を不活 性化する目的で、GT遺伝子のアンチセンスDNAを含む外来遺伝子断片をブタ 受精卵に導入する。この遺伝子断片が、個体の染色体上に組み込まれた場合、各 細胞でこのアンチセンスDNAが転写されれば、その転写物は内在性のGT転写 産物と対合して、GT遺伝子の翻訳が抑制されることが期待される。
この結果、個体レベルでは、酵素FTが積極的に発現されるとともに、酵素G Tの発現が抑制されて、H型物質が生成される一方、一層G型物質の生成が低減 されたブタ等を得ることができる。なお、アンチセンスDNA等の外来遺伝子断 片は、染色体に組み込まれた後、安定して子孫に伝達されることが可能である。
なお、一旦、染色体に外来遺伝子が組みこまれた後、交配により外来遺伝子に 関してホモの状態にすることが可能であり、高等霊長類の糖転移酵素を発現させ る外来遺伝子に関してホモの状態の系と、非霊長哺乳類の糖転移酵素に関してホ モの状態の系とを交配させることにより、非霊長哺乳類の酵素を発現するかわり に、高等霊長類の糖転移酵素を発現して、高等霊長類の抗原型を呈した非霊長類 哺乳動物の系を得ることができる。
本発明では、高等霊長類として、特にヒトを対象することができる。また、本 発明では、非霊長哺乳類として、特に、前記高等霊長類に対して異種間移植の対 象となる動物を対象とすることができる。さらに、家畜として飼育されるブタ、 ウシ、ヒツジ、ヤギ等が好適である。これらの家畜は、飼育が容易で、安定した 供給が可能なため、移植用組織の補充に適する。さらに、ブタが、臓器の大きさ や、生理学的・生化学的な観点、発育が早く多産である点から好適である。
高等霊長類の糖転移酵素とは、高等霊長類において見いだされ、非霊長哺乳類 の脈管・血球系細胞において見いだされない抗原の生成に関与する糖転移酵素を いう。具体例としては、FTを挙げることができる。特に、ヒトFTは〔EC2 .4.1.89〕で特定される。
高等霊長類の糖転移酵素を発現させる外来遺伝子は、該糖転移酵素の遺伝子の 他、プロモータ、ターミネーター等を有することができる。SV40の初期遺伝 子のポリA付加シグナルに続くターミネーターは付加に適した配列の一つである 。一般的にどの遺伝子からとったポリAシグナルかによって遺伝子の発現のレベ ルはかなり左右されるが、SV40初期遺伝子から取ったポリA付加遺伝子が優 れている。このシグナルはターミネーターの前に置かれる。
例えば、FTを発現させることのできる外来遺伝子を形成するには、少なくと もFTの遺伝子配列を知る必要がある。ヒトのFTについては、既に報告されて いる(Proc.Natl.Acad.Sci.USA,87(1990),pp6674-6678 )。
また、外来遺伝子は、染色体における非相同的組み換えのみならず、相同的組 み換えを目的として構築することもできる。この場合、例えば、ブタのGT遺伝 子をターゲットに、ヒトのFT遺伝子を組み換えるようにすれば、GTの発現の 抑制と、FTの発現が同時に可能である。
なお、遺伝子断片が染色体に組み換えられた際に、高率に前記糖転移酵素が発 現される手段を用いることができる。例えばpMAMをベクタープラスミドとし て外来遺伝子断片を調製した場合には、ステロイドの投与により高発現が誘導さ れうる。
非霊長哺乳類の糖転移酵素とは、非霊長哺乳類の脈管・血球系細胞において見 いだされ高等霊長類において見いだされない抗原の生成に関与する糖転移酵素を いう。具体例としては、ブタやマウスのGTを挙げることができる。特に、マウ スGTは、〔EC 2.4.1.151〕で特定される。
非霊長哺乳類の糖転移酵素の発現を抑制する外来遺伝子には、該糖耘移酵素の 遺伝子に対するアンチセンスDNAや、該糖転移酵素の遺伝子において相同的に 組み換えされて、該遺伝子を他の遺伝子で置換したり、該遺伝子に他の遺伝子を 挿入したり、変異を導入することにより、該遺伝子を破壊する外来遺伝子を用い ることができる。
この外来遺伝子を形成するには、少なくとも非霊長哺乳類の糖転移酵素の遺伝 子配列を知る必要がある。マウスGT遺伝子は、既に報告されている(Proc .Natl.Acad.Sci.USA,86(1989),pp.8227-8231)。また、ブタ GT遺伝子も既に報告されている(Xenotransplantation 1994;1:pp.81-88)。
例えば、GTのアンチセンスDNAを外来遺伝子とする場合には、GT遺伝子 のcDNAの一部又は全部をアンチセンス方向に組み込んだ断片を外来遺伝子と して形成する。
また、相同的組み換えによる場合には、例えばGT遺伝子との相同領域を可及 的多く有するように形成するのが好ましい。
なお、非霊長哺乳類の糖転移酵素の発現を抑制するには、外来遺伝子の導入以 外に従来公知の方法によることもできる。
非霊長類哺乳動物への外来遺伝子の導入は、レトロウイルスを用いる方法やマ イクロインジェクションによる方法等多数あるが、どの方法も採用することがで きる。子孫を得るという点からは、生殖細胞を形質転換することが望ましい。こ の場合の形質転換は、非霊長類哺乳動物の胚細胞やES細胞あるいは、受精卵に 対して行うのが望ましい。
このように、外来遺伝子が導入された非霊長類哺乳動物は、種々の細胞におけ る高等霊長類の糖転移酵素の発現により、あるいは同時に非霊長哺乳類の糖転移 酵素の発現の抑制により、組織・血液の抗原型が高等霊長類に近似された動物と なる。したがって、これらの動物の組織等を高等霊長類へ移植した際の超急性拒 絶反応を緩和することができるようになり、これらの動物の組織等は、高等霊長 類への移植に適したものとなる。また、特に、血管内皮細胞で発現された場合に は、超急性拒絶反応が大きく緩和される。さらに、赤血球細胞における高等霊長 類の糖転移酵素の発現により、血液の抗原型が高等霊長類に近似された動物とな り、これらの動物の血液は高等霊長類の代替血液に適したものとなる。
また、高等霊長類の糖転移酵素FTが導入された場合には、非霊長哺乳類の脈 管・血球系細胞では、H型物質が発現されると同時にG型物質が低減されること になり、組織・血液の抗原型が高等霊長類に近似された動物となる。加えて、同 時にGTの発現を抑制する外来遺伝子も導入された場合には、より一層G型物質 が低減され、組織・血液の抗原型が極めて高等霊長類に近似された動物となり、 これらの組織・血液は、高等霊長類への移植・代替物により適したものとなる。
なお、特に、FTが血管内皮細胞表固に発現されれば、異種間臓器あるいは組 織移植における超急性拒絶反応が大きく緩和される。また、赤血球において発現 されれば、代替血液により適したものとなる。
また、相同組み換えにより、GTのかわりにFTが発現するように転換された 形質転換動物においては、染色体上の1本以上のGT遺伝子座のうち、一本が存 在せず、同時にFTが少なくとも1本存在するようになるため、交配により染色 体上にGTが1本も存在せず、その代わりにFTが2本存在する個体を得ること ができる。こうした個体はドナーとして、レシピエントのABO式の血液型のい かんをとわずに、ヒト等の移植に適した移植材料を提供する。
このように、かかる形質転換された非霊長類哺乳動物は、ヒト等の高等霊長類 に移植の可能な組織・血液を有するため、ヒト等の組織等の代替物の提供源とな る。また、これらの動物が安定して飼育されることにより、必要時に、必要な組 織等を提供可能となり、移植組織等の貯蔵体となる。
また、非霊長類哺乳動物における高等霊長類特有のFT遺伝子の発現により、 異種間移植の場合に超急性拒絶反応を緩和できる動物や材料を提供する方法は、 従来にない新規なものであるとともに、異種間移植における超急性拒絶反応の緩 和のために、より本質的な解決をもたらすものである。
本発明の非霊長哺乳類の形質転換動物によれば、その組織・血液において、高 等霊長類の糖鎖抗原が生成されるため、あるいは同時に非霊長哺乳類の糖鎖抗原 の生成が抑制されるため、非霊長類哺乳動物の組織を異種間移植となる高等霊長 類に移植した場合に超急性拒絶反応を緩和することができ、従来の人工血管や人 工臓器、あるいは同種間で補充される臓器、組織等に代わり得る材料を提供する ことができる。
なお、本発明により非霊長類哺乳動物を形質転換することは、これらの動物に いかなる被害あるいは虐待を与えることがなく、また、本発明は、形質転換され た非霊長類哺乳動物の生存、生殖等に悪影響を及ぼすものではない。さらに、本 発明は、ヒトをはじめ他のいかなる動物に対しても悪影響を及ぼすものではない 。
〔図面の簡単な説明〕
図1は、前駆物質(N−アセチルラクトサミン)からのABH型物質とG型物 質の合成経路を示す図である。
図2は、実施例1のFT遺伝子を有するプラスミドpMAM/FTを構築操作 する過程図である。
図3は、実施例1のFT遺伝子導入用断片の模式図である。
図4は、実施例2のpREP8/AS/GTを構築操作する過程図である。る 。
図5は、実施例2のAS/GT遺伝子導入用断片の模式図である。
図6は、実施例3のpREP9/GT3−4を構築操作する過程図である。
図7は、実施例3のpREP9/GT3−4/FT/△SspI/△DraI IIを構築操作する過程及び遺伝子断片GT3−4/FT/polyAの調製過 程を図示したものである。
図8は、実施例3のpGT/FTを構築操作する過程図である。
図9は、51Crリリースアッセイの結果を示すグラフ図である。
〔発明を実施するための最良の形態〕 以下に本発明の実施例を示す。本発明に於ける外来遺伝子に関して、既に述べ た2種類の糖転移酵素、即ちGT遺伝子とFT遺伝子のcDNAを例示できる。
ただし、以下の実施例は、請求の範囲を制限するものではない。
(実施例1) 導入用遺伝子を含むプラスミド(pMAM/FT)の構築及びその遺伝子導入 用断片の調製 (1)PCR法によるFT遺伝子断片の調製 Proc.Natl.Acad.Sci.USA.87(1990),pp6674-6678に報 告されたヒトのFT〔EC2.4.1.96〕のDNA配列に基づいて、そのス タートコドンとストップコドンを含むような形でPCR用の2種類のプライマー を合成した。なお、その5’側のプライマーには、制限酵素NheIのサイトを付け た、また3’側のプライマーには、制限酵素XhoIのサイトを付けた。
一方、健康な成人の血液より白血球を採取し全RNAを抽出し、逆転写酵素を 用いて、全RNAに対応するcDNAを合成した。このcDNAを鋳型にして、 前記のプライマーを用いてPCRを施行した。
本PCR施行により得られたcDNA断片を1%アガロースゲル電気泳動にか けたところ、約1100bpの長さのバンドを得た。このPCR産物をpGEM−T( Promega社製)に挿入した上で自動塩基配列読み取り機で塩基配列を読み取った ところ、前記既報の通りのFT遺伝子の塩基配列を有していた。そこでこのcD NAを0.8%Low Melting Point(以下、LMPという。)ゲルで電気泳動し て精製した後、制限酵素NheIとXhoIで処理し、レジンを用いたPromega社のWizar dDNA精製システム(以下、Wizardシステムという。)により精製・分離した 。なお、以下各種DNA断片の精製分離は、LMPゲル電気泳動とWizardシステ ムとを用いることにより行った。
(2)pMAM/FTの構築 哺乳類発現ベクターの一種であるpMAM(CLONETECH社製、Lee,F.(1981)Nat ure 294:228)のマルチクローニング部位(MCS)を制限酵素NheIとXhoIで処理 し、この断片をLMPゲル電気泳動及びWizardシステムで精製・分離した。この ベクターに精製・分離したFT遺伝子のcDNAを、T4DNAリガーゼにより 挿入させた。このプラスミドDNAによって、コンピテント状態のJM109 細菌細胞を形質転換させて、得られた形質転換体をアンピシリンプレートで選択 した。個々のコロニー毎にLB培地(組成;Bacto-tryprone 10g(DIFCO社製)、 Bacto-yeast extract 5g(DIFCO社製)、NaCl 10gを水にて1Lとする、以下同じ。
)で増殖させ、ミニプラスミド調製を行った。抽出したプラスミドDNAを種々 の制限酵素を使って消化した後に電気泳動して、挿入断片のサイズ及び位置方向 を調べた。その結果、正しい方向に組み込まれているプラスミドを、pMAM/ FTと称した(図2参照)。
(3)遺伝子導入用断片の調製 さらに、遺伝子導入のための直鎖状断片とするために、大腸菌JM109/p MAM/FT株をLB培地で大量培養した後に、プラスミド調製を行った。さら に、得られたプラスミドをcεCl密度勾配遠心法により精製した。精製したプ ラスミド10μgを、制限酵素PvuIとBamHIで消化後、この断片を精製 ・分離し、FT遺伝子導入用断片とした。この断片の構築模式図を図3に示す。
(実施例2) 導入用遺伝子を含むプラスミド(pREP8/AS/GT)の構築及びその導 入用遺伝子断片の調製 (1)アンチセンスGTの調製 既報(Xenotransplantation 1994;1:pp81−8 8)に報告されたブタGT遺伝子のDNA配列に基づいて、そのスタートコドン とストップコドンを含むような形で2種類のPCR用のプライマーを合成した。
なお、その5’側のプライマーには、制限酵素XhoIのサイトを付けた、また3’ 側のプライマーには制限酵素NheIのサイトを付けた。
一方、健康なブタの血液より白血球を採取し、その全RNAを抽出し、逆転写 酵素を用いて全RNAに対応するcDNAを合成した。このcDNAを鋳型にし て、前記のプライマーを用いてPCRを施行した。
本PCR施行により得られたcDNA断片を1%アガロースゲル電気泳動にか けたところ、約1100bpの長さのバンドを得た。このPCR産物をpGEM−T( prornega社製)に挿入した上で、自動塩基配列読み取り機で塩基配列を読み取っ たところ、前記既報の通りのGT遺伝子の塩基配列を有していた。そこでこのc DNAをLMPゲルで電気泳動して精製した後、制限酵素NheIとXhoIで処理し、 Wizardシステムを用いて精製・分離した。
(2)pREP8/AS/GTの構築 哺乳類発現ベクターの一種であるpREP8(Invitorogen社製、George,R.,e t al,Gene,81,285(1989))のMCSを制限酵素XhoIとNheIで処理し、精製・分離 した。このベクターに、T4DNAリガーゼにより、精製・分離したGT遺伝子 のcDNAを、挿入した。このプラスミドDNAによって、コンピテント状態の JM109細菌細胞を形質転換させて、得られた形質転換体をアンピシリンプレ ートで選択した。個々のコロニー毎にLB培地で増殖させ、ミニプラスミド調製 を行った。抽出したプラスミドDNAを種々の制限酵素を使って消化した後に電 気泳動して、挿入断片のサイズ及び位置方向を調べた。その結果、正しくアンチ センス方向に組み込まれているプラスミドを、pREP8/AS/GTと称した (図4参照)。
(3)導入用遺伝子断片の調製 さらに、遺伝子導入のための直鎖状断片とするために、大腸菌JM109/p REP8/AS/GT株をLB培地で大量培養した後に、プラスミド調製を行っ た。さらに、得られたプラスミドをCsCl密度勾配還心法により精製した。精 製したプラスミド10μgを、制限酵素XbaIとPstIで消化後、この断片 をLMPゲル電気泳動及びWizardシステムで精製・分離し、AS/GT遺伝子導 入用断片とした。この断片の構築模式図を図5に示す。
(実施例3) 相同組換え用遺伝子を含むプラスミド(pREP9/GT/FT)の構築及び 導入用遺伝子断片(pGT/FT)の調製 以下、マウスの例を示すがブタにおいても基本的な考え方は同じである。
(1)pREP9/GT3−4の構築 以下、pREP9/GT3−4の構築を図6に基づいて説明する。
既報(Proc.Natl.Acad.Sci.USA,86(1989),pp.8227-82 31)のマウスのGT〔EC2.4.1.151〕の配列に基づいてエキソン3か ら4までの部分をPCR法にて抽出するために、エキソン3内のセンスプライマ ーとして制限酵素KpnIの切断部位をつけたプライマー(p/Aとする)、又 アンチセンスプライマーとしてエキソン4内のスタートコドンの部位に制限酵素 SspIの切断部位を含み、その下流に制限酵素HindIIIの切断部位をつ けたプライマー(p/B)を合成した。
これらのプライマーp/A及びp/Bを用いてPCR法を施行し、得られた断 片を、制限酵素KpnI及びHindIIIで切断した後、精製・分離し、これ をGT3−4と称した。
一方、発現ベクターであるpREP9(Invitragen社)を制限酵素BamHI で切断し、T4DNAポリメラーゼによりその断端を平滑にし、T4DNAリガ ーゼによりself−ligatianし、制限酵素BamHIの切断部位が欠失した発現ベ クターを、pREP9/△BamHIと称した。
これを更に制限酵素DraIIIで切断し、T4DNAポリメラーゼによりそ の断端を平滑にし、T4DNAリガーゼによりself−ligationし、制限酵素Dr aIIIの切断部位が欠失した発現ベクターを、pREP9/△BamHI/△ DraIIIと称した。このベクターを制限酵素KpnI及びHindIIIで 切断し、上記GT3−4を挿入したプラスミドをpREP9/GT3−4と称し た。
(2)pREP9/GT3−4/FT/△SspI/△DraIIIの構築 以下、pREP9/GT3−4/FT/△SspI/△DraIIIの構築を 図7に基づいて説明する。
ヒトFT(Proc.Natl.Acad.Sci.USA.87(1990),pp667 4-6678)の配列に基づき、そのスタートコドンとストップコドンを含む発現部位 をPCR法にて抽出するために、スタートコドンを含む5’側のセンスプライマ ー(p/C)には制限酵素NheIとDraIII切断部位を、この順で付けた 。
一方、FTのストップコドンを含むアンチセンスプライマー(p/D)にはそ の3’側に制限酵素XhoI切断部位を付けた。これらのプライマーを用いてP CR法を施行し、得られた断片を制限酵素NheI及びXhoIで切断し、pR EP9/GT3−4を制限酵素NheI及びXhoIで切断したプラスミドに挿 入する。これをpREP9/GT3−4/FTと称した。
このプラスミドpREP/GT3−4/FTを制限酵素SspI及びDraI IIで切断すると平滑末端が生成された。
ここでT4DNAリガーゼにて処理するとself−ligationにより両者末端が連 結し、GTの発現開始部位にFTcDNAの発現開始部位が位置された。
このプラスミドをpREP9/GT3−4/FT/△SspI/△DraII Iと称した。以上に於いてこれら制限酵素KpnI、HindIII,SspI 、NheI、DraIII、及びXhoIがいずれもエキソン3からエキソン4 までの断片及びFTcDNAの発現部位の断片を切断しないことが既に確かめら れている。
(3)導入用遺伝子断片pGT/FTの調製 以下、pGT/FTの調製について図7及び図8に基づいて説明する。
pREP9のpolyAの3’側を含みかつ制限酵素BamHI切断部位を含 む形でアンチセンスプライマー(p/E)を合成し、これとセンスプライマー( p/A)とを用いて、pREP9/GT3−4/FT/△SspI/△DraI IIに対し、PCR法を施行し、得られた断片を制限酵素KpnI及びBamH Iで切断して精製・分離し、得られた断片をGT3−4/FT/polyAと称 した(図7参照)。
一方、発現ベクターpREP9を制限酵素KpnIとBamHIで切断し、上 記の断片GT3−4/FT/polyAを挿入した。これをpREP9/GT3 −4/FT/polyAと称した。
GTのエキソン4からエキソン6又はエキソン7までの部分を、センスプライ マー(p/F)、アンチセンスプライマー(p/G)とも制限酵素BamHIの 切断部位を付け、PCR法にて抽出し、この断片を制限酵素BamHIで切断し 、得られた断片を、制限酵素BamHIで開列したプラスミドpREP9/GT 3−4/FT/polyAに挿入した(BamHIが、GT3−4、FT、po lyA及びT4−7を切断しないことは既に確かめられている)。
得られたプラスミドをpREP9/GT3−4/FT/polyA/GT4− 7、或いは簡単に、pREP9/GT/FTと称した。
このプラスミドに対し、プライマーp/A及びp/Gを用いてPCR法を施行 した。精製後得られた断片を受精卵への導入用断片とし、GT3−4/FT/p olyA/GT4−7、或いは簡単にpGT/FTと称した。
このようにして作成した導入用遺伝子断片は、GTの染色体の遺伝子と相同性 が高く、相同組み換えを起こすことが期待される。相同組み換えを起こした場合 は、GTの代わりにFTが発現するのでその個体(Fo)はGTもFTも発現す る。しかし交配を1、2世代行うと、メンデルの法則により、FTのみを持った 個体を得ることが出来る。この個体こそが、非霊長類哺乳動物に特有な抗原を持 たずに高等霊長類特有の抗原を持つに至った、形質転換動物である。マウスのG TとブタのGTとではホモロジーが高いのでマウスのGTに基づいた相同組み換 え遺伝子をブタに適用することができる。
(実施例4) 導入用遺伝子断片(pMAM/FT及びpREP8/AS/GT)のブタ受精 卵への注入及びその受精卵の移植 (1)導入用遺伝子断片(pMAM/FT及びpREP8/GT)のブタ受精卵 への注入 実験動物として家畜豚を用いた。受精卵提供用のブタとしてLandraceとWhite Yorkshireの交配豚で、生後約6ヶ月の、まだ自然発情を来す前の雌ブタを用い た。この雌ブタに排卵誘発剤pMS(妊馬血清、シグマ社製、G4877)及びhCG (ヒト絨毛ゴナドトロピン、シグマ社製、CG5)を注射し、Duroc系の成熟雄ブタ から採取した精液により人工受精を行い、卵管をM2培地で灌流することにより 受精卵を採取した。これらの受精卵の前核は脂肪滴に覆われているために直視出 来ないため、受精卵を10000gで10分間遠心することにより、脂肪滴と前核を分 離し、微分干渉顕微鏡で直視下においた。
受精卵への遺伝子の注入に於いては、マウス受精卵に於ける遺伝子導入の既報 (Hogan.et al.,In manipulating the Mouse Bmbryo.,Cold Spring Harbor La baratory Press,1988、Pinkert,et al.,Transgenic animal,technology.,Acad emic press,Inc.1994)に記載されているマイクロインジェクション法を、ブタ 受精卵に適用した。即ち、培養液中で受精卵を保持用ガラスピペットで固定後、 微小ガラスピペットを用いて導入用遺伝子断片の溶液2plを雄性前核に注入し た。
2種類の遺伝子導入用断片を含む溶液は、これらの導入用断片をTE緩衝液( 0.25mM EDTA、5mM Tris(pH7.4))に懸濁して、それぞれ1.0 μg/mlになるよ うに調製したものを用いた。
(2)遺伝子注入をした受精卵の移植 注入操作後、CO2インキュベーター内にて、M2培地で2〜3時間培養後、受 精卵を発情している雌成熟豚の卵管へ移植した。移植は、全身麻酔下にて開腹後 、卵管内移植により行った。卵管移植後分娩満期まで飼育し、産仔を得た。
なお、遺伝子注入した受精卵は、速やかに移植されるのが好ましい。
(実施例5) 遺伝子導入ブタに於ける導入遺伝子の同定 分娩後約1週目に、得られた仔ブタの尾部の先端部分約1cmを切断採取した。
尾部の細胞より高分子DNAを抽出・精製した後、サザンブロッティング法及び フイルターハイブリダイゼイション法によって、導入した遺伝子断片がブタの染 色体に組み込まれているかを調べた。即ち、制限酵素BcoRIとBamHIで完全に消化 させた10μgの高分子DNAを1%アガロースゲル電気泳動した後、ナイロンフ イルター(HybondN,Amersham)にDNAを転写した。フイルターは風乾後、UV 照射を行いDNAを固定させて、フイルターハイブリダイゼーションに供した。
なお、プローブとして、pMAM/FTを制限酵素Cla IとNhe Iで完全に消化 させた断片をFT用に用いた。
これらの結果を下記表1に示した。計19回の実験で550個の受精卵に遺伝 子注入を行い、同数を19頭のレシピエントに移植した。この結果7頭が妊娠し 、27頭の仔ブタを分娩した。これらのうち、サザンプロッテイング法及びフイ ルターハイブリダイゼイション法によって、FTに関して1頭が陽性であった。
なお、遺伝子導入していないコントロールブタ15頭に対しても同様の検索を行 ったが、いずれも陰性であった。
(実施例6) 導入遺伝子の発現の確認 遺伝子導入が確認されている仔ブタの尾部の先端を約1cm切断し、また血液を 採取し、導入遺伝子発現の検出の試料とした。採取した尾部よりAGPC法(Aci d Guanidinium Thiocyanate-Phenol-Chloroform Method)を用いて、全RNAを 分離した。次にこの全RNAを使ったRT−PCR法によって、FT遺伝子の発 現の解析を行った。
即ち、全RNAから逆転写酵素によってcDNAを合成し、前述のFT遺伝子 抽出のために用いたプライマーを用いてPCR法を施行した。その結果、27頭 中1頭が陽性と判定された。すなわち、導入したFT遺伝子がmRNAに翻訳さ れ、FTの酵素タンパク質を産生していることを確認した。なお、遺伝子導入し ていないコントロールブタ15頭に対しても同様の検索を行ったが、いずれも陰 性であった。
(実施例7) 実施例6で陽性と判定された、即ちFTの蛋白質を産生していると考えられる 仔ブタから血液を採取し、遠心後、血球を分離し、蛍光抗体を使ったFITC法 でブタ血球を染色した。一方、コントロールブタ(遺伝子導入していないブタ) からも血液を採取し、同様に染色した。
即ち、一次抗体として抗H塁抗体を、2次抗体として蛍光色素がラベルしてあ るマウスγグロプリン(F(ab)2)を用いた。この結果、実施例6の陽性の仔ブタ は陽性と判定された。一方、コントロールブタのそれは全て陰性だった。即ち、 導入されたFTがブタ細胞の中で正しく機能していることが確かめられた。
(実施例8) ブタの腎由来の細胞系PK15にpMAM/FTを感染させたコロニーを選択 し、51Crを加えた培養液中にて、一定時間培養し、その後健康な成人ヒト血液 (A,B,O、ABの4つの血液型を含む)から採取した血漿を加えることによ り、51Crリリースアッセイを行った。
この結果、図9に示すように、24時間経過の後、放出された51Crを測定し た。その結果、コントロールブタの血液はほぼ100%細胞が破壊されたのが観 察されたが、FTを導入したブタの細胞は24時間経っても細胞破壊は10%以 下しか観測されなかった。
このように、ブタ細胞にFTを導入することによりいわゆる血液型が転換され 、その結果ヒトのO型と同じH型物質が生成されることになり、ヒトが持つブタ に対する自然抗体と抗原抗体反応を形成しないか、あるいは抗原抗体反応を形成 しても低頻度であることが示された。
なお、この発明は、その本質的特性から逸脱することなく数多くの形式のもの として具体化することができるから、これらの実施態様はもっぱら説明上のもの で制約的なものではない。また、この発明の範囲は、請求の範囲以外の記載によ るものでなく、請求の範囲によって限定するものであるから、請求の範囲の要件 内のあらゆる変更、またはその要件に対する均等物は請求の範囲に包含されるも のである。
───────────────────────────────────────────────────── (注)この公表は、国際事務局(WIPO)により国際公開された公報を基に作 成したものである。 なおこの公表に係る日本語特許出願(日本語実用新案登録出願)の国際公開の 効果は、特許法第184条の10第1項(実用新案法第48条の13第2項)に より生ずるものであり、本掲載とは関係ありません。

Claims (9)

    【特許請求の範囲】
  1. 1.高等霊長類の糖転移酵素を発現させる外来遺伝子を有することを特徴とする 非霊長哺乳類の形質転換動物。
  2. 2.高等霊長類の糖転移酵素を発現させる第1の外来遺伝子と、 非霊長哺乳類の糖転移酵素の発現を抑制する第2外来遺伝子、 とを有することを特徴とする非霊長哺乳類の形質転換動物。
  3. 3.前記高等霊長類の糖転移酵素が、GDP-L-フコース:β-D-ガラクトシド2 -α-L-フコシルトランスフェラーゼである請求項1に記載の動物。
  4. 4.前記高等霊長類の糖転移酵素が、GDP−L-フコース:β-D-ガラクトシド 2-α-L-フコシルトランスフェラーゼであり、 前記非霊長哺乳類の糖耘移酵素が、UDPガラクトース:β-D-ガラクトシル- 1,4-N-アセチル-D-グルコサミニド α-1,3-ガラクトシルトランスフェラーゼ である請求項2に記載の動物。
  5. 5.餌記外来遺伝子が、ホモの状態で保持されていることを特徴とする請求項1 又は3に記載の動物。
  6. 6.前記第1の外来遺伝子と、前記第2の外来遺伝子がいずれもホモの状態で保 持されていることを特徴とする請求項2又は4に記載の動物。
  7. 7.前記非霊長哺乳類の形質転換動物がブタである請求項1から6のいずれかに 記載の動物。
  8. 8.請求項1から7のいずれかに記載の非霊長哺乳類の形質転換動物から得られ た高等霊長類への移植用材料。
  9. 9.高等霊長類の糖転移酵素を発現させる第1の外来遺伝子及び/又は非霊長哺 乳類の糖転移酵素の発現を抑制する第2の外来遺伝子を非霊長哺乳類に導入する ことを特徴とする高等霊長類型の抗原型を発現した非霊長哺乳類の形質転換動物 の作出方法。
JP8-528259A 1995-03-17 外来遺伝子の導入により高等霊長類の抗原型を発現した非霊長哺乳類の形質転換動物及びその作出方法 Pending JPWO1996028966A1 (ja)

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