JPH06228330A - 複層摺動材 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 耐熱性を損なうことなく、耐荷重性にすぐ
れ、摩耗による相手部材への焼き付き、固着を防止する
ことができる複層摺動材を提供することである。 【構成】 熱可塑性ポリイミド等の熱可塑性樹脂に、グ
ラファイト等の固体潤滑剤を混入し、これを、芳香族ポ
リアミド繊維又は炭素繊維をそれぞれ単独若しくは両者
併用した織布に含浸させることにより第一の摺動材を
得、この第一の摺動材の表面に、芳香族ポリアミド繊
維、炭素繊維及びガラス繊維から選ばれる一種以上の繊
維から成る織布に熱硬化性樹脂を含浸、硬化させた第二
の摺動材を、接着又は熱融着により積層一体化した複層
摺動材とする。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】この発明は、軸受等の摺動部材の
素材であって複数の材料からなる複層摺動材に関する。

【０００２】

【従来の技術】従来の複層摺動材の一例として、金属基
板の表面に銅系金属粒子の焼結層が一体的に形成され、
この焼結層の凹部及びその表面にフッ素樹脂層が一体的
に形成されたもの（特開昭６１−２４８４６号公報記
載）、あるいは多孔性金属中間層の空孔を満たすと共
に、ベアリング材料上に表面層を形成するポリテトラフ
ルオロエチレンをベースとする組成物から成るもの（特
開昭６１−２１４２１号公報記載）が知られている。

【０００３】しかしながら、上記従来の複層摺動材は耐
摩耗性に劣ることから、特に高負荷で過大摩耗したり、
焼結層を構成する銅粒子が潰れるという問題があり、そ
の結果、金属基板が露出して相手部材に焼き付いたり、
固着するという欠点がある。

【０００４】この問題を解決する一つの方法として、ガ
ラス繊維をエポキシ樹脂で固めたものを外層とし、内層
としてポリテトラフルオロエチレン織布を接着する方法
がある。

【０００５】

【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記ポ
リテトラフルオロエチレン織布は、耐摩耗性に劣ること
から、高荷重の摺動条件に耐えることができないという
欠点がある。

【０００６】そこで、この発明は、耐熱性を損なうこと
なく、耐荷重性を補い、且つ高荷重の摺動条件下におい
ても摩耗量の少ない複層摺動材を提供することを課題と
する。

【０００７】

【課題を解決するための手段】上記の課題を解決するた
めに、この発明は、芳香族ポリアミド繊維又は炭素繊維
をいずれか単独若しくは両者併用した織布に固体潤滑剤
を含有する熱可塑性樹脂を含浸した第一の摺動材と、芳
香族ポリアミド繊維、炭素繊維及びガラス繊維から選ば
れる一種以上の繊維から成る織布に熱硬化性樹脂を含
浸、硬化させた第二の摺動材とを、積層一体化する構成
を採用したのである。以下、その詳細を述べる。

【０００８】この発明に用いられる熱可塑性樹脂は、熱
可塑性ポリイミド樹脂（例えば三井東圧化学社製「オー
ラム」等）、ポリエーテルエーテルケトン樹脂（例えば
ＩＣＩ社製「ビクトレックスＰＥＥＫ」等）、ポリエー
テルサルフォン樹脂（例えばＩＣＩ社製「ビクトレック
スＰＥＳ」等）、ポリエーテルニトリル樹脂（ＰＥ
Ｎ）、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリエーテル
イミド樹脂等が挙げられる。

【０００９】また、上記熱可塑性樹脂に充填される固体
潤滑剤としては、二硫化モリブデン、三酸化モリブデ
ン、カーボン、マイカ、タルク、グラファイト、フッ化
カルシウム、炭酸カルシウム、酸化マグネシウム、ポリ
テトラフルオロエチレン樹脂粉末、酸化スズ等があり、
これらの材料を単体で、又は適宜組合せて使用すること
ができる。

【００１０】以上述べた熱可塑性樹脂と固体潤滑剤との
混合方法は、特に限定されるものではなく、原料を個別
に溶融混合機に供給してもよいし、あらかじめヘンシェ
ルミキサー、ボールミル、タンブラーミキサー等の混合
機を用いて乾式混合した後に、熱ロール、ニーダ、バン
バリーミキサー、スクリュー押出し機などで溶融混合し
て成形材料としてペレット状にしてもよい。なお、固体
潤滑剤の充填量は１０〜４０％が好ましい。１０％未満
の少量では発明の効果が発揮されず、４０％を超える多
量では加工性が損なわれるからである。粒子径は、含浸
性を損なわないように、５０μｍ以下とすることが好ま
しい。

【００１１】そして、フィルムを成形するには、上記混
合した材料を縦型又は横型のＴダイを備えた単軸又は２
軸スクリュー押出機によりシート状に押出し、室温好ま
しくは加熱した縦型又は横型ロール引取り装置により冷
却成形する。

【００１２】芳香族ポリアミド繊維はパラ系、メタ系い
ずれでもよく、例えばデュポン社製ケブラー、帝人社製
コーネックス、テクノーラ等が挙げられる。炭素繊維は
パン系、ピッチ系いずれでもよい。

【００１３】以上述べた繊維を単独又は併用して織物に
し、上述の固体潤滑剤を含有するフィルム状の熱可塑性
樹脂を溶融含浸させ、得られた摺動材の厚さを、１００
〜１０００μｍとするのが好ましい。１００μｍ未満の
薄肉では摩耗寿命が短く、１０００μｍを超える厚肉で
は屈曲性が悪くなるので成型性が損なわれる。

【００１４】固体潤滑剤を含有する熱可塑性樹脂を含浸
した摺動材と、熱硬化性樹脂を含浸、硬化させた摺動材
とを接合する方法としては、接着又は熱融着による。ま
た、芳香族ポリアミド繊維、炭素繊維若しくはガラス繊
維をそれぞれ単独又は併用した織布に、熱硬化性樹脂を
含浸、硬化する際に、適当に加圧して接合することもで
きる。

【００１５】

【作用】この発明における複層摺動材は、固体潤滑剤を
含有する熱可塑性樹脂を含浸した第一の摺動材により、
優れた耐荷重性を発揮することができる。

【００１６】また、この第一の摺動材の外側に熱硬化性
樹脂を含浸させた第二の摺動材が積層一体化されている
ことから、上記第一の摺動材が摩耗しても、第二の摺動
材が相手部材に焼き付いて固着することがない。

【００１７】

【実施例】以下、この発明を実施例により更に詳細に説
明する。

【００１８】まず、実施例及び比較例に用いられた摺動
材の原材料を一括して示すと、次のとおりである。な
お、（ ）内に略号を、配合割合は重量％で示した。

【００１９】（１）熱可塑性ポリイミド樹脂（ＰＩ） 三井東圧化学社製：オーラム＃４５０ （２）ポリエーテルエーテルケトン樹脂（ＰＥＥＫ） ＩＣＩ社製：ビクトレックスＰＥＥＫ （３）ポリテトラフルオロエチレン樹脂（ＰＴＦＥ） 喜多村社製：ＫＴＬ６００ （４）グラファイト（ＧＲＰ） 日本黒鉛社製：グラファイトＡＣＰ 〔実施例１〜４〕以上の原材料を表１に示した割合で混
合してペレット状とした後、厚さ５０μｍのフィルムに
成形した。これを、炭素繊維を平織りにした織布３枚
（厚さ１５０μｍ）に挟み、ホットプレスにより溶融、
含浸させて厚さ約５００μｍのシート材とした。

【００２０】上記各シート材の片面に一液性接着剤（セ
メダイン社製：セメダイン１１０）を塗布し、ガラス織
布をエポキシ樹脂で固めて外径４５mm、内径３５mm、長
さ２０mmに形成したパイプの内面に接着して試験片を得
た。この試験片を用いて下記の試験を実施し、結果を表
１に示した。

【００２１】摩耗試験：ラジアル型摩耗試験機を用い、
相手材ＳＵＪ２にて２０００ kgf／cm² の荷重を与え、
試験軸を回転させてすべり速度毎分１．８ｍ、無潤滑連
続運転で５００分間摺動した後の摩耗量を測定した。

【００２２】

【表１】

【００２３】〔実施例５、６〕上記の原材料を表１に示
した割合で混合してペレット状とした後、厚さ５０μｍ
のフィルムに成形した。これを、アラミド繊維を平織り
にした織布３枚（厚さ１５０μｍ）に挟み、ホットプレ
スにより溶融、含浸させて厚さ約５００μｍのシート材
とした。

【００２４】このシート材を用いて、上記実施例１〜４
と同様の方法により、同様の試験を実施した結果、使用
し得るものを得た。

【００２５】〔比較例〕ガラス織布をエポキシ樹脂で固
めて外径４５mm、内径３５mm、長さ２０mmに形成したパ
イプの内面に、ポリテトラフルオロエチレン織布を接着
して得られた試験片を用いて、上記実施例と同じ試験を
行い、その結果を表１に併記した。

【００２６】表１の結果から明らかなように、固体潤滑
剤を含有する熱可塑性樹脂を含浸した摺動材を内層とし
て用いた実施例１〜４は、比較例に比して摩耗量が著し
く減少した。

【００２７】

【発明の効果】以上のとおり、この発明は、熱可塑性樹
脂本来の耐熱性を有すると共に、この熱可塑性樹脂に固
体潤滑剤を混入して織布に含浸させたことから、摺動材
全体に占める樹脂層が薄くなり、放熱性を向上させて摺
動面の温度上昇を防ぐことができる。

【００２８】また、熱硬化性樹脂を含浸、硬化させた織
布を積層一体化したことから、摩耗により摺動材が焼き
付いて、相手部材に固着することがなく、耐荷重性に優
れた複層摺動材を提供することができる。

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 芳香族ポリアミド繊維又は炭素繊維をい
   ずれか単独若しくは両者併用した織布に固体潤滑剤を含
   有する熱可塑性樹脂を含浸した第一の摺動材と、芳香族
   ポリアミド繊維、炭素繊維及びガラス繊維から選ばれる
   一種以上の繊維から成る織布に熱硬化性樹脂を含浸、硬
   化させた第二の摺動材とを、積層一体化して成る複層摺
   動材。