JPH05325891A - 高圧放電ランプ - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 放電側電極と封止部側電極とを機械的に強固
に接続した電極を用いることにより，長期間に亘って安
定した放電を持続できる高圧放電ランプを提供すること
を目的とする。 【構成】 放電側電極２と封止部側電極３とを異種材質
で構成し両者を螺合や嵌合する係合接続した電極１をバ
ルブ６内に封装した高圧放電ランプである。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は公園，競技施設などの照
明用や光化学用などに用いられる高圧放電ランプの電極
に関する。

【０００２】

【従来の技術】高圧放電ランプにおける電極１としては
種々の形態のものがある。このうち封止部に封止される
モリブデンなどの金属箔に内部導体として電極棒を溶接
し，この電極棒の先端側に放電側電極を接続したものが
ある。

【０００３】その接続は，（１）図４ (ａ) に示すよう
にタングステンやトリウム入りタングステンなどの耐熱
金属あるいはタングステン，トリウム入りタングステ
ン，タンタルなどの粉末と酸化トリウム，酸化ジルコニ
ウム，酸化アルミニウム，酸化イットリウムなどの金属
酸化物粉末とを混合し加圧成形後に焼結して電子放射物
質含浸用の多孔質の円柱状の放電側電極２を形成する。
そして，この放電側電極２の中心に設けた孔２２内に同
じくタングステンやトリウム入りタングステンなどから
なる電極棒３を挿通することにより行う。

【０００４】（２）また，金属ハロゲン化物を封入した
メタルハライドランプでは放電側電極の先端部は高温度
になるが，封止部に近い部分の電極棒は先端部に比べ低
温度であるのでこの部分がハロゲンによりエッチングさ
れ細くなって電極棒が折れることが知られている。この
対策として図４ (ｂ) に示すように封止部に近い部分の
電極棒３をハロゲンにエッチングされにくいレニウムや
レニウム入りタングステンなどからなる材質とし，放電
側の電極２をタングステンやトリウム入りタングステン
などの材質として，この両者をエミッタを担持させるタ
ングステン線を巻回したコイル４内に挿入して一体化
し，機械的および電気的な接合を行なわせている。

【０００５】（３）さらに，上記のコイルに類似したも
のとして，コイルに変えてスリーブを用い一体化し，機
械的および電気的な接合を行なわせている。

【０００６】しかし，これら構成の電極において，上記
前者（１）の焼結電極の場合は，放電側電極と電極棒と
が異なる材料のために熱膨張率差があり，また中，後者
（２），（３）のコイルやスリーブ接続の電極の場合
も，放電側電極および電極棒とコイルやスリーブとの間
の材料差による熱膨張率差の他，コイルには巻回方向や
軸方向への伸縮などが起こる。

【０００７】このため，放電ランプ点灯時に温度上昇す
る電極の接続部には緩みを生じ，この部分での接触抵抗
が大きくなって発熱し電極が異常に高温となり，さらに
緩みを助長させるのみならず，ランプ特性に大幅な低下
を来たしたり，電極スパッタによるバルブ黒化の発生に
より放電ランプの明るさが早期に低下してしまうなどの
問題があり，特にランプ電流１０Ａ以上の高出力の放電
ランプの場合発生が顕著であった。

【０００８】

【発明が解決しようとする課題】この発明が解決しよう
とする問題点は，放電側と封止部側とを一体的に接続し
た電極においては，放電ランプ点灯により昇温した電極
の接続部に緩みなどを生じ，接触抵抗が増して所定のラ
ンプ特性が得られなかったり甚だしい場合には放電側の
電極が脱落するなどのことがあった。

【０００９】放電側電極と封止部側電極とを機械的に強
固に接続した電極を用いることにより，長期間に亘って
安定した放電を持続できる高圧放電ランプを提供するこ
とを目的とする。

【００１０】

【課題を解決するための手段】本発明の請求項１に記載
の高圧放電ランプは，放電側と封止部側とを異種材質で
構成し両者を係合接続した電極をバルブ内に封装したこ
とを特徴としている。本発明の請求項２に記載の高圧放
電ランプは，石英ガラスバルブ内に水銀，金属ハロゲン
化物および始動用ガスを封入するとともに放電側がタン
グステンまたはトリウム入りタングステンで，封止部側
がレニウムまたはレニウム入りタングステンの材質で構
成し両者を係合接続した電極を封装したことを特徴とし
ている。 本発明の請求項３に記載の高圧放電ランプ
は，上記係合手段が螺合接続であることを特徴としてい
る。

【００１１】本発明の請求項３に記載の高圧放電ランプ
は，上記係合手段が嵌合接続であることを特徴としてい
る。

【００１２】

【作用】放電側電極と封止部側電極との接続部をねじ接
続あるいは嵌合接続としたので，単なる温度変化では抜
け出て分離するようなことがなく，機械的，電気的に長
期間に亘って安定した接続を持続できる高圧放電ランプ
を提供できる。

【００１３】

【実施例】以下，本発明の実施例を図面を参照して説明
する。図１は本発明に係る高圧放電ランプ用の電極，図
２はこの電極を封装した高圧放電ランプを示し，図中図
４と同一部分には同一の符号を付してその説明は省略す
る。

【００１４】図１ (ａ) はたとえば高圧キセノンランプ
に用いられる電極１で，放電側電極２はトリウム入りタ
ングステンからなる先端が円錐状に切削された円柱状を
なし，下面にはねじ孔２１が設けられている。また，封
止部側電極棒３はタングステンからなり，先端に刻設し
たねじ部３２を上記放電側電極２のねじ孔２１に螺合し
て電極１を構成している。

【００１５】また，図１ (ｂ) はたとえばメタルハライ
ドランプに用いられる電極１で，放電側電極２をタング
ステンやトリウム入りタングステンなどからなり，下端
にはねじ部２２が刻設してある。また，封止部側電極３
は上記放電側電極２とほぼ同径のレニウムやレニウム入
りタングステンなどからなり，その端面に形成したねじ
孔３１には上記ねじ部２２が螺合して電極１を構成して
いる。また，この螺合部を含む放電側電極２および封止
部側電極３の周囲にはタングステン線などからなるコイ
ル４が巻装されていて，このコイル４と放電側電極２お
よび封止部側電極３との周囲の隙間やコイル４のピッチ
間には電子放射物質が充填されている。図１の (ａ) ，
(ｂ) のように構成した電極１は，放電ランプ封装後に
ランプ点滅を繰り返して熱的衝撃を与えても，放電側電
極２と封止部側電極３との間が緩み接触抵抗が増すなど
の障害は発生しなかった。

【００１６】つぎに，上記図１ (ｂ) に示す電極１をメ
タルハライドランプに適用した具体例を図３を参照して
説明する。トリウム入りタングステンからなる放電側電
極２は，長さが約１０ｍｍ，線径が約２．５ｍｍ，ねじ
部長さが約４ｍｍ，ねじ部線径が約１．５ｍｍで，レニ
ウムからなる封止部側電極３は，長さが約１５ｍｍ，線
径が約２．５ｍｍ，ねじ孔深さが約４ｍｍ，ねじ孔径が
約１．５ｍｍで，この両電極２，３のねじ部２２とねじ
孔３１とを螺合して固定するとともに線径が約１ｍｍの
タングステン線を両電極２，３に各約５ターン巻回して
電極１を形成する。

【００１７】つぎに通常の方法により，この電極１の封
止部側電極３にモリブデン箔５を接続した後，この電極
１を管最大径約３６ｍｍ，管最大長さ約５２ｍｍの略楕
円形をなす石英ガラスバルブ６の両端封止部７に封止す
る。

【００１８】ついで，ガラスバルブ６内を排気した後，
ＤｙＢｒ3 ３ｍｇ，ＴｍＢｒ3 ３ｍｇ，ＨｏＢｒ3 ３ｍ
ｇ，ＨｇＢｒ2 ８ｍｇ，Ｈｇ７０ｍｇと始動用のアルゴ
ンガス２００トールを封入して排気管８を溶封して定格
出力２ｋＷのランプＬを製作した。

【００１９】このようにして製作したメタルハライドラ
ンプ１０本を定格の２０％増しの２．４ｋｗで点滅（点
灯５．５時間，消灯０．５時間）試験を実施し，０時
間，１００時間，３００時間，５００時間，１０００時
間経過時における電極温度，ランプの電気特性，ランプ
の明るさについて測定を行った。

【００２０】その結果は，各ランプとも電極の温度はも
ちろんのことランプ電気特性および明るさの変化は，対
０時間比較で１０００時間後のランプ電圧が平均で３Ｖ
上昇，ランプの明るさは平均で５％減少と正常点灯にお
ける増減範囲内であり異常は全くみられなかった。ま
た，放電側電極の脱落ももちろん発生せず，さらに，封
止部側電極が封入臭化物によってエッチングされ細るこ
ともなかった。

【００２１】なお，この結果はランプの出力，バルブ形
状，封入物の組成や量および点灯方向，点灯条件などを
変えても同様であった。

【００２２】また，図３は他の実施例を示し，放電側電
極２と封止部側電極３との接続手段を嵌合接続とした電
極１である。図３ (ａ) は封止部側電極３の先端を他の
部分より径大なテーパ状の嵌合突部３３とし，これに対
応する放電側電極２の下面側には奥に向かうにしたがい
径大となる嵌合孔２３が形成してある。両者の接続は嵌
合孔２３に径大な嵌合突部３３を圧入することによりな
され，一旦入れば径大部が嵌合孔２３に係止して抜ける
ことはない。

【００２３】図３ (ｂ) は封止部側電極３の先端には他
の部分より径小な嵌合突部３３が，また，これに対応す
る放電側電極２の下面側には上記嵌合突部３３より小径
の嵌合孔２３が形成してある。両者の接続は嵌合孔２３
に径大な嵌合突部３３を圧入することによりなされ，さ
らにこの接続部にはタングステン線を巻回したコイル４
が巻装してあるので両電極２，３が抜け出ることはな
い。

【００２４】この図３の実施例の場合も図１と同様に両
電極は強固に接続できた。

【００２５】なお，本発明は上記実施例に限定されな
い。たとえば，高圧放電ランプの種類としては，メタル
ハライドランプや高圧キセノンランプに限らず，超高圧
放電ランプや高圧水銀ランプなど他の種類の放電ランプ
にもひろく適用できるものである。

【００２６】また，係合部たとえば螺合するねじ部およ
びねじ孔の形成は放電側電極，封止部側電極の一方に特
定されるものではない。また，電極材料としても実施例
に記載されたものに限らず，放電側は電子放射性のよい
もの，封止部側はバルブ内封入物質に侵され難いものや
安価のものなどを適宜選べばよい。

【００２７】

【発明の効果】以上詳述したように本発明によれば，２
個の材料を接続して電極部材を構成するに当たり，その
接続手段を螺合や嵌合の係合接続としたのでその固着が
強固で確実となり，放電灯点滅時電極に熱応力が加わっ
ても両者の接続が緩むことがなく，接続部に接触不良に
よる過熱や電極部材の脱落が発生せず，特性の安定した
高圧放電ランプを提供できる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の放電ランプ用電極の実施例を示す一部
断面正面図。

【図２】本発明の高圧放電ランプの実施例を示す断面正
面図。

【図３】本発明の放電ランプ用電極の他の実施例を示す
一部断面正面図。

【図４】従来の放電ランプ用電極の実施例を示す一部断
面正面図。

【符号の説明】

Ｌ ランプ １ 電極 ２ 放電側電極 ２１ ねじ孔 ２２ ねじ部 ２３ 嵌合孔 ３ 封止部側電極 ３１ ねじ孔 ３２ ねじ部 ３３ 嵌合突部 ４ コイル ６ ガラスバルブ ７ 封止部

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 伊藤 秀樹 東京都港区三田１丁目４番28号 東芝ライ テック株式会社内

Claims (4)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 放電側と封止部側とを異種材質で構成し
   両者を係合接続した電極をバルブ内に封装したことを特
   徴とする高圧放電ランプ。
2. 【請求項２】 石英ガラスバルブ内に水銀，金属ハロゲ
   ン化物および始動用ガスを封入するとともに放電側がタ
   ングステンまたはトリウム入りタングステンで，封止部
   側がレニウムまたはレニウム入りタングステンの材質で
   構成し両者を係合接続した電極を封装したことを特徴と
   する高圧放電ランプ。
3. 【請求項３】 上記係合手段が螺合接続であることを特
   徴とする請求項１または請求項２に記載の高圧放電ラン
   プ。
4. 【請求項４】 上記係合手段が嵌合接続であることを特
   徴とする請求項１または請求項２に記載の高圧放電ラン
   プ。