JPH0515761A - 動物性蛋白質起泡剤およびその製造方法 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 発泡コンクリート等の発泡体を製造するのに
適する起泡剤及びその製造方法を提供する。 【構成】 ケラチン蛋白質のうち特に羽毛を原料とし
て、還元剤、複合反応防止剤をアルカリ類と併用して加
水分解して得られる分子量1000〜2000のポリペプタイド
からなる動物性蛋白質起泡剤。 【効果】 原料として鳥肉処理場からの羽毛を使用する
ことにより、アルカリ加水分解が容易で、優れた起泡力
を有する起泡剤が得られる。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、原料として利用価値の
少い、また、廃棄物公害となりかねない鳥の羽毛を原料
とする、コラーゲン蛋白質を原料とした従来の起泡剤よ
り優れた、起泡性、安定性、無臭性を有する起泡剤およ
びその製造方法に関する。

【０００２】

【従来の技術及び問題点】加水分解した蛋白質を起泡剤
として使用することは既に知られている。従来は原料と
して動物の皮、腱、骨等のコラーゲン蛋白質を用い、こ
れをアルカリで加水分解してペプタイド状の起泡剤を製
造していたが、これらの原料は食用蛋白質として有用で
あることから安価でなく、また原料を精製しなければな
らない程不純な原料が多いため、従って洗浄、排水等の
問題が生じ、立地的、経済的にも大きな制約を受けてい
た。また、これらの蛋白質は、原料自体が比較的高価で
あり且つ製品がコラーゲン蛋白質を分解したときの特有
の悪臭を有し、使用時において抵抗感がある。このほ
か、牛馬のひずめや角を原料とするケラチン蛋白質起泡
剤も使用されているが、分解が容易でないため狭い範囲
の分子量分布を有するペプチドが得にくいことと、動物
の成育度が一定でないため、これらの原料を分解しても
一定の品質の蛋白質が得られないという問題があり、特
にケラチン蛋白質は硬蛋白質に属し分解が容易でないた
めこの傾向が著しかった。

【０００３】また、従来のコラーゲン蛋白質およびケラ
チン蛋白質からなる起泡剤は、その製造上の都合から４
０〜５０％濃度の水溶液として供給されていた。そのた
め、蛋白の加水分解の進行や腐敗などによる製品の安定
性の悪さや起泡力の低下が生じていた。更にまた、製品
とした後のこれら加水分解等に基づく悪臭の発生もある
ため、無臭の発泡体を得ることが難しかった。

【０００４】

【発明が解決しようとする課題】本発明は、食用鶏肉処
理工場等の鳥処理工場で大量に副生産されしかも利用価
値が少いため、今後廃棄処理が問題となる羽毛を原料と
して、有用なしかも従来の起泡剤より優れた起泡力を有
する蛋白質起泡剤を得ることを目的とするものである。

【０００５】従来の蛋白質起泡剤は濃度が４０％〜５０
％の水溶液であり、変質のため保存上の問題が多く、
又、運搬上の問題点もあるのに対し、本発明は最終製品
を乾燥して粉砕し粉体状とすることによって、これらの
問題を解決し得るものである。また、蛋白質起泡剤は原
料を動物に求めているため、長期の供給安定性に欠ける
こと、動物の成育度によって原料の成分が異なること、
また臭気があるため用途が制限されることなどの問題点
を有している。本発明はこれらの問題点を解決し得るも
のである。

【０００６】

【課題を解決するための手段】本発明の蛋白質起泡剤
は、ケラチン蛋白質を分子量1000〜2000のポリペプタイ
ドまで分解してなるものであるが、また羽毛を分子量10
00〜2000のポリペプタイドに加水分解した蛋白分解物か
らなるものである。

【０００７】ケラチン蛋白質はジスルフィド結合（−Ｓ
−Ｓ−）による網状結合を有するため分解が難しく、ま
た原料的にも一定の品質のものが得にくいものである
が、本発明者は食用鶏加工場から大量に出る羽毛が品質
が一定であり且つ容易に分解できることに着目し、本発
明を完成した。本発明においてケラチン蛋白質原料とし
て、飼料用に加工したフェザーミールを原料として使用
することもできるが、価格の点から直接鳥の羽根を原料
とするのが有利である。食用鶏加工場から出る羽毛は充
分に洗滌されているのできれいであり、そのまま利用で
き、且つ一工場から数％〜数十％の含水状態、例えば６
０〜７０％の含水状態、で１ケ月1000トン位の生産量が
あり、原料的にも充分使用できるものである。特に、食
用鶏肉加工場より出る羽毛は、食用鶏肉を一定の品質に
保つため、飼育する鶏も同一品種のものが成育され、ま
た不必要に長期間飼育することは食肉生産上不経済であ
ることから、一定期間飼育した後は一度に食肉加工され
るため成育度も同じである。そのため、原料中のケラチ
ン蛋白質の含有量や蛋白質の構成アミノ酸も同じであ
り、分解処理等も容易にしかも同一程度の分子量に分解
することができる。

【０００８】本発明者は更に研究を進めた結果、ケラチ
ン蛋白質を起泡剤として使用するには、分子量1000〜20
00のポリペプタイドとすると良好な起泡効果が得られる
ことを見出した。ここで分子量は平均分子量を意味す
る。分子量の測定は通常の方法で行ってよく、例えば超
遠心による沈降平衡法、簡便には粘度測定法によって行
うことができる。本発明において、ポリペプタイドの分
子量が1000以下のものは被膜形成能力が低いため、起泡
力および泡の安定性の点で好ましくなく、分子量が2000
以上のものは泡立てるのに強い撹拌力を必要とするなど
の点で好ましくない。

【０００９】上記の様に、従来の起泡剤の蛋白質原料の
場合、例えば獣皮を使用した場合、多くは獣皮の表面に
毛があることから、毛と皮の部分の蛋白質が異なるた
め、分解によって得られるポリペプタイドの分子量や蛋
白構成分子が異なり、起泡力を不揃のものとしていた。
また、成育期間が長くなるとケラチン蛋白質におけるシ
スチン結合、ジスルフィド結合（−Ｓ−Ｓ−）による網
目構造の度合いが大となるため分解の程度が不揃となり
やすく、一定のポリペプタイドが得にくい。

【００１０】本発明は食用鶏処理工場からの成育度一定
の羽毛を使用するため、容易に加水分解でき上記分子量
分布を有する良好な起泡剤を得ることができた。また、
羽毛中にはケラチン蛋白質のほか他の蛋白質も多少含ま
れるが、本発明の場合これらの蛋白質も何らかの形で起
泡力に寄与しているものと考えられる。原料としての羽
毛は、ニワトリ、アヒル等種々のものが考えられるが、
原料の供給性や品質の点から鶏卵生産場や食用鶏肉工場
からのものがよく、１年以内かまたは余り長く飼育され
ていないニワトリの羽毛がよい。アヒルの場合も同様で
ある。

【００１１】本発明において、原料の羽毛を分解する方
法は、従来ケラチン蛋白質の製造に使用されていた方法
が使用できる。しかしながら、本発明の製法の場合、予
めペプシンなどのプロテアーゼで原料中の他の蛋白質を
分解除去することなく、羽毛を水または熱水で洗浄した
後そのまま使用することができる。具体的に説明する
と、原料羽毛に対し適正量のカセイソーダ、消石灰等の
アルカリ剤を使用し、またシスチン結合を切断するため
のメルカプトエタノール、チオグリコール酸を添加し、
更に亜硫酸水素ナトリウム、硫化ナトリウム等の還元剤
を加えて行うとよい。

【００１２】ケラチン蛋白質の分解の場合、シスチン結
合が切断された時に副生されるチオール基、ビニール
基、アルデヒド基等の二次反応によって生成される極め
て安定なランチオニンがアルカリ分解を著しく阻害する
という説がある。本発明者の研究によれば、ヒドラジ
ン、ヒドロキシルアミン、ピペラジン、メチルアミン類
を複合反応防止剤として添加してアルデヒド基、チオー
ル基群を不活性化するとアルカリ分解が速かに行われる
ことがわかった。分解に使用される上記薬剤の量は、従
来法にしたがって、羽毛の量や種類によって任意に選択
使用される。分解は適当な温度での加熱下に１〜３時間
緩やかに攪拌しながら行い、所定の分子量のポリペプチ
ドが生成された時点で分解を停止する。分解の停止は中
和により行う。例えば、加圧釜中で９０〜１２０℃温度
で２〜３時間加水分解するとよい。

【００１３】起泡剤として使用される蛋白質分解液は、
蛋白質の分子量が1000〜2000位のポリペプタイド状に分
解されることが望ましい。従って加水分解に使用される
アルカリは、カセイソーダより作用がゆるやかな石灰類
を使用すると好結果が得られることがわかった。また分
解終了時に液を中和した時、カセイソーダであると塩分
として起泡剤中に残留する量が多くなるが、石灰類を使
用する時は燐酸または蓚酸によって中和することによっ
て大部分が不溶性塩となるので容易に除去される。また
この際生じた不溶性塩は分解液中の不純物と共に沈下す
るので、濾液の清澄作用を行う利点がある。加水分解処
理後は、上記の様に適当な酸を加えて中和し、未分解物
と分解液とに分離する。未分解物と分離した後分解液を
中和してもよい。中和はｐＨ７前後とする。

【００１４】分解液には従来この種の起泡剤に使用され
ている泡膜安定剤としての二価の鉄塩や防腐剤等を加え
ることができる。従来の安定剤、硬化剤としての無機塩
のうちには、コンクリートの発泡に使用したとき鉄筋を
錆させることがあるので好ましくないとされているもの
もあるが、本発明の起泡剤の場合には、これら無機塩の
代わりに界面活性剤を安定剤として使用することもでき
るのでこの種の問題は生じない。特にアニオン系界面活
性剤の使用が好ましい結果を与える。

【００１５】得られた加水分解液は、そのまま適当な濃
度に調整して起泡剤として使用してもよく、また水分を
乾燥等の方法により除去して、板またはフィルム状体等
の固体として得、これを適当な手段で粉砕して粉末とし
てもよい。乾燥は、加熱乾燥、熱風乾燥のほか、減圧乾
燥、凍結乾燥等任意の手段が使用できる。

【００１６】本発明においては、分子量が特定の範囲内
のものを得ることができるため、乾燥工程などの水分除
去工程でケラチン蛋白質に生じ易かった悪臭を除去する
ことができ、その後生ずることがないようにすることが
できる。従来のものは、分子量が不揃であるため貯蔵中
または起泡剤として使用した時、シスチンのイオウによ
る悪臭を生ずるため食品等の起泡剤として使用されなか
ったが、本発明の起泡剤はこのような問題がないため、
種々の用途に使用できる。

【００１７】

【実施例】以下本発明を実施例により説明するが、本発
明はこれらに限られものではない。 実施例１ 食用鶏肉工場からのニワトリの羽根１kgを採取し、分解
釜に入れ、これに消石灰 100ｇ、亜硫酸水素ナトリウム
10ｇ、ヒドラジン10ｇと水10Ｌを加えて１〜２時間煮沸
して分解する。分解終了後濾過して、濾液と残渣を分離
したのち、燐酸でｐＨ 7.0〜7.5 に中和する。中和液を
濾過して沈澱した燐酸カルシウムを除去し、透明な原液
を得る。この原液を濃縮して濃度40％〜50％、比重1.17
〜1.18の液に仕上げ、この濃縮液１Ｌに対し硫酸アルミ
ニウム10ｇを入れてよく撹拌して起泡剤原液１Ｌを得
る。

【００１８】実施例２ フェザーミール１kgを採取して分解釜に入れ、これに消
石灰 100ｇ、硫化ソーダ10ｇ、メチルアミン10ｇ、水10
Ｌを加えて１〜２時間煮沸する。分解終了後、濾過して
濾液と残渣を分離し、蓚酸でｐＨ 7.0〜7.5 に中和す
る。沈澱する蓚酸カルシウムを濾別して透明な原液を得
る。この原液を濃縮して濃度40％〜50％、比重1.17〜1.
18の液に仕上げ、得られた濃縮原液１Ｌに対して硫酸ク
ロム５ｇを加えてよく撹拌したのち、ステンレススチー
ルのコンベアに薄く塗布し、これに乾燥空気を送って連
続的に乾燥し、かきとって粉砕し粉体状に仕上げる。

【００１９】

【発明の効果】従来のコラーゲン蛋白を主体にした起泡
剤と本発明による鳥の羽根ケラチン蛋白を原料とした起
泡剤と比較してみると以下の点で本発明のケラチン蛋白
分解起泡剤の方が優れていることがわかる。 １．従来のケラチン蛋白分解起泡剤はシスチンに由来す
るメルカプタンによる特有の悪臭があって作業上の抵抗
感が強いが、本発明の鳥の羽根からのケラチン蛋白分解
起泡剤は、上記の様に原料である羽毛の成育度が低く、
シスチン量が少ないためか分解度がほぼ一定となるため
この悪臭は全く感ぜられない。 ２．従来、ケラチン蛋白質起泡剤の原料とされている牛
馬のひずめや角は分解するのに５〜６時間煮沸を要する
が、鳥の羽根ケラチン蛋白質は分解溶液化が容易で１〜
２時間で充分なので作業性、燃料費の点で大いに有利で
ある。また、牛馬のひずめや角の場合にはそのまま原料
として使用できず、あらかじめ粉砕する必要があり、そ
のための費用や労力を必要とするが、羽毛の場合にはこ
のような問題は全くない。 ３．従来の牛馬のひずめを原料とするケラチン蛋白分解
起泡剤と本発明による起泡剤とを、その起泡性、泡の安
定性について簡便な試験法で比較したところ優れた起泡
効果を示した。結果を以下に示す。

【００２０】試験方法 起泡剤原液を 0.6ccとり水で20ccに稀釈し 200ccのメス
シリンダーにとり、蓋をして激しく上下に10数回振って
泡立て、発生した起泡の高さをメスシリンダーの目盛り
（ｃｍ³ ）数で表した。測定は、泡立て直後、１時間
後、10時間後に行った。原液は、本発明の起泡剤は上記
実施例１のものを使用し、従来のものは牛のひずめを原
料とし苛性ソーダを使用して５時間加水分解したこと以
外は実施例１にしたがって調製したものを用いた。

【表１】

【００２１】上記表１の結果からわかるように、本発明
の起泡剤は長時間起泡状態が持続する。また泡立ち性も
良好であることから、簡単な攪拌で発泡状態を得ること
ができる。そのため、従来の発泡コンクリートの製造や
泡消火器などに使用できる他、種々の発泡用途に使用で
きる。本発明の起泡剤は粉末状として保存供給し、使用
に際して液化すればよいため、貯蔵費、輸送費等がかか
らず、また従来の水溶液のもののと異なり防腐剤等の安
定剤を加える必要もないことから、起泡剤本来の起泡力
を損なうことなく使用できるなど優れた多くの利点を有
する。粉末状とした本発明の起泡剤は、プラスチック
袋、金属缶などに脱酸素剤を入れて密封することにより
長期保存が可能で、１年以上貯蔵したものでも水溶液と
して使用したとき製造当初のものと何等変りない起泡力
を示した。

Claims (5)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 ケラチン蛋白質を分子量1000〜2000のポ
   リペプタイドに分解した蛋白分解物からなることを特徴
   とする動物性蛋白質起泡剤。
2. 【請求項２】 羽毛をアルカリ加水分解して得られる分
   子量1000〜2000のポリペプタイドからなることを特徴と
   する動物性蛋白質起泡剤。
3. 【請求項３】 羽毛をアルカリ加水分解して得られた分
   子量1000〜2000のポリペプタイドを乾燥して粉末状とし
   たことを特徴とする請求項２記載の蛋白質起泡剤。
4. 【請求項４】 ケラチン蛋白質のうち特に羽毛を原料と
   し、還元剤、複合反応防止剤をアルカリ類と併用して、
   分子量1000〜2000のポリペプタイドまで加水分解するこ
   とからなる蛋白質起泡剤の製造方法。
5. 【請求項５】 加水分解によって得られた分解液のポリ
   ペプタイドを乾燥して粉砕し、粉体状に仕上げることか
   らなる請求項４記載の蛋白質起泡剤の製造方法。