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JP7735022B1 - がん細胞の培養用および/または保存用の培地、がん細胞の初代培養方法、がん細胞の継代培養方法およびがん細胞の保存方法 - Google Patents

がん細胞の培養用および/または保存用の培地、がん細胞の初代培養方法、がん細胞の継代培養方法およびがん細胞の保存方法

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JP7735022B1
JP7735022B1 JP2025522035A JP2025522035A JP7735022B1 JP 7735022 B1 JP7735022 B1 JP 7735022B1 JP 2025522035 A JP2025522035 A JP 2025522035A JP 2025522035 A JP2025522035 A JP 2025522035A JP 7735022 B1 JP7735022 B1 JP 7735022B1
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Abstract

がん細胞の初代培養に適した培地を提供することを課題とする。
がん細胞の培養用および/または保存用の培地であって、該培地は、
ROCK阻害剤およびモノチオグリセロールを少なくとも含む
培地、により課題を解決できる。

Description

本出願における開示は、がん細胞の培養用および/または保存用の培地、がん細胞の初代培養方法、がん細胞の継代培養方法およびがん細胞の保存方法に関する。
抗がん剤などの化学療法の基礎的研究には、一般的に、確立されたがん細胞株が用いられている。しかしながら、長年にわたり生体外で維持され培養され続けているがん細胞株は、もとの患者腫瘍組織と性質が変化しており、生体内での挙動を十分に反映していない可能性がある。そこで、より精度の高い抗がん剤開発や、患者ごとに最適な治療の選択のために、がん細胞の初代培養が有望視されている。
初代培養方法としては、既にいくつかの方法が知られている。例えば、特許文献1には、(1)特別に増殖因子や何らかの阻害剤を加えることなく、一般的な細胞培養に用いられる培養培地を用いて、生体から採取された組織(生体組織)中の細胞を初代培養するため、(2)間質を構成する細胞を含み、単層の又は2以上の細胞層が厚み方向に積層されている細胞構造体の天面に、生体から採取した組織中の細胞を播種し培養する、ことが記載されている。
特許文献2には、(a)生体由来のがん組織を細断化し、細断化されたがん組織から挟雑物を除去し、(b)工程(a)で得られた組織塊を浮遊培養に供し、次いで(c)工程(b)で得られた培養物を接着培養に供することで、患者由来がん細胞を、インビトロで、簡便、短時間かつ安定に大量培養できる初代培養法が記載されている。
国際公開第2019/039457号 特開2018-011576号公報
ところで、患者のがん組織からのがん細胞の初代培養は、臓器よって培養の成功率が異なる。一般的に大腸がん、胃がん、肝臓がんなどの実質臓器からのがん細胞の初代培養成功率は、比較的高いが必ず初代培養が成功する訳ではない。一方、肺がんは、初代培養の最も難しいがん種の1つといわれており、肺がん組織からのがん細胞初代培養の成功率は、一般的に10%程度といわれている(Giard DJ, et al., “In vitro cultivation of human tumors: establishment of cell lines derived from a series of solid tumors.”, J Natl Cancer Inst., 1973 Nov;51(5):1417-23. doi:10.1093/jnci/51.5.1417. PMID: 4357758.)。
しかしながら、上記特許文献1および2には、初代培養の成功率に着目して培地の組成を検討する旨の記載はない。がん細胞の初代培養の分野において、初代培養に適した培地の提供が望まれる。
本出願における開示は、上記問題点を解決するためになされたものである。本発明者らは鋭意研究を行ったところ、ROCK阻害剤およびモノチオグリセロールを少なくとも含む培地を用いることで、がん細胞の初代培養を好適に実施できることを新たに見出した。
すなわち、本出願における開示の目的は、がん細胞の初代培養に適した培地を提供することである。
本出願における開示は、以下に示すがん細胞の培養用および/または保存用の培地、がん細胞の初代培養方法、がん細胞の継代培養方法およびがん細胞の保存方法に関する。
(1)がん細胞の培養用および/または保存用の培地であって、該培地は、
ROCK阻害剤およびモノチオグリセロールを少なくとも含む
培地。
(2)前記ROCK阻害剤が、
Y-27632 2HCl、Y-27632、H-1152 dihydrochloride、Hydroxyfasudil(HA-1100)HCl、GSK269962A HCl、Thiazovivin、Fasudil(HA-1077)HCl、GSK429286A、RKI-1447、Azaindole 1(TC-S 7001)、Y-39983 HCl、Netarsudil(AR-13324)2HCl、Belumosudil(KD025)およびAT13148からなる群から選択した少なくとも一種である
上記(1)に記載の培地。
(3)前記ロック阻害剤が、Y-27632 2HCl、Y-27632、H-1152 dihydrochloride、Hydroxyfasudil(HA-1100)HClおよびGSK269962A HClからなる群から選択した少なくとも一種である
上記(2)に記載の培地。
(4)前記培地中のROCK阻害剤の最終濃度が、0.05μmol/L以上、100μmol/L以下であり、
前記培地中のモノチオグリセロールの最終濃度が、10μmol/L以上、5000μmol/L以下である
上記(1)に記載の培地。
(5)前記培地中のROCK阻害剤の最終濃度が、0.05μmol/L以上、100μmol/L以下であり、
前記培地中のモノチオグリセロールの最終濃度が、10μmol/L以上、5000μmol/L以下である
上記(3)に記載の培地。
(6)抗生物質および/または抗真菌剤を更に含む
上記(1)に記載の培地。
(7)がんが、肺がんである
上記(1)に記載の培地。
(8)前記培地が、がん細胞の保存用の培地であり、
がん細胞が常温で保存される
上記(1)~(7)のいずれか一つに記載の培地。
(9)がん細胞の初代培養方法であって、該初代培養方法は、
上記(1)~(7)のいずれか一つに記載の培地を用いて、生体から採取したがん細胞を培養する培養工程を含む
初代培養方法。
(10)がん細胞の継代培養方法であって、該継代培養方法は、
上記(9)に記載の初代培養方法で培養したがん細胞を、継代時に、2価の金属イオンと結合するキレート剤を用いることで、がん細胞が培養容器の壁面に接着することを低下させた状態でがん細胞を培養容器から取り出し、新しい培地を含む培養容器に移し替える継代工程を含む
継代培養方法。
(11)がん細胞の保存方法であって、該保存方法は、
上記(1)~(7)のいずれか一つに記載の培地に、生体から採取したがん細胞を浸漬し、常温で保存する保存工程を含む
保存方法。
(12)培地がウシ胎児血清を含む
上記(11)に記載の保存方法。
本出願で開示する培地を用いることで、がん細胞の初代培養を好適に実施できる。また、本出願で開示する培地は、継代培養、がん細胞の保存用の培地としても使用できる。
図1は図面代用写真で、実施例2において、初代培養で得られた肺がん細胞の写真である。 図2は図面代用写真で、実施例4において、継代培養で得られた肺がん細胞の第3世代の写真である。 図3は図面代用写真で、実施例4において、継代培養で得られた肺がん細胞の第4世代の写真である。 図4は図面代用写真で、実施例6において、3日間常温で保存した後に初代培養で得られた肺がん細胞の写真である。 図5は図面代用写真で、比較例4において、3日間冷蔵庫で保存した後に初代培養で得られた肺がん細胞の写真である。 図6は、実施例7において、ホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)から抽出したDNA、Rapid-FFPEから抽出したDNA、Culture Cellから抽出したDNAの品質を調べた結果を示す電気泳動写真である。
以下に、本出願において開示する、がん細胞の培養用および/または保存用の培地(以下、単に「培地」と記載することがある。)、がん細胞の初代培養方法(以下、単に「初代培養方法」と記載することがある。)、がん細胞の継代培養方法(以下、単に「継代培養方法」と記載することがある。)およびがん細胞の保存方法(以下、単に「保存方法」と記載することがある。)について、詳しく説明する。
また、本明細書において、
(1)「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味し、
(2)数値、数値範囲、及び定性的な表現(例えば、「同一」、「同じ」等の表現)については、当該技術分野において一般的に許容される誤差を含む数値、数値範囲及び性質を示している、
(3)「略〇〇状」と記載した場合、正確な〇〇状に加え、凡そ〇〇状と把握される形状を含む、
と解釈される。
(培地の実施形態)
実施形態に係る培地は、ROCK阻害剤およびモノチオグリセロールを少なくとも含む。
ROCK(Rhoキナーゼ。Rho-associated protein kinase)は、低分子量GTP結合蛋白Rhoの標的蛋白質として同定されたセリン-スレオニン蛋白リン酸化酵素であり、平滑筋収縮や細胞の形態変化など様々な生理機能に関与している。ROCK阻害剤とは、上記ROCKの活性を阻害する化合物である。ROCK阻害剤は、ROCKの活性を阻害できるものであれば特に制限はない。限定されるものではないが、市販されているROCK阻害剤としては、Y-27632 2HCl、Y-27632、H-1152 dihydrochloride、Hydroxyfasudil(HA-1100)HCl、GSK269962A HCl、Thiazovivin、Fasudil(HA-1077)HCl、GSK429286A、RKI-1447、Azaindole 1(TC-S 7001)、Y-39983 HCl、Netarsudil(AR-13324)2HCl、Belumosudil(KD025)、AT13148等が挙げられる。培地に含まれるROCK阻害剤は、1種類であってもよいし、2種類以上を組み合わせてもよい。
上記に例示したROCK阻害剤は、それぞれ、以下に示す化合物である。
上記に例示したROCK阻害剤の中で、Y-27632 2HCl、Y-27632、H-1152 dihydrochloride、Hydroxyfasudil(HA-1100)HCl、GSK269962A HClがより好ましい。
モノチオグリセロールは、下記式(15)で表される化合物で、抗生物質の安定剤・抗酸化剤、その優れた還元能力により毛髪のS-S結合を切断することからカーリング剤(パーマ液)、抗菌保存剤、等の用途に用いられる化合物である。
培地は、ROCK阻害剤およびモノチオグリセロールが必須の成分として含まれる以外は、公知の細胞培養用の培地を基本培地として用いることができる。限定されるものではないが、DMEM(Dulbecco′s Modified Eagle′s Medium)、DMEM:F-12(Dulbecco′s Modified Eagle Medium:Nutrient Mixture F-12)、EMEM(Eagle′s minimal essential medium)、MEMα(Minimum Essential Medium Alpha)、BME(Basal Medium Eagle)、RPMI-1640等が挙げられる。これらの培地に、必要に応じて細胞増殖因子等の各種成分を添加し、細胞種に合せて組成を調整した培地を用いればよい。
培地に一般的に添加される各種成分としては、例えば、FGF-2(Fibroblast Growth Factor-2)、TGF-β(Transforming Growth Factor-β)、EGF(Epidermal Growth Factor)、VEGF(Vascular Endothelial Growth Factor)等の細胞増殖因子;アスコルビン酸、レチノイン酸等のビタミン又はビタミン誘導体;グルコース等の糖源;アミノ酸;亜セレン酸ナトリウム、塩化ナトリウム等の無機塩;トランスフェリン等のタンパク質;インスリン等のホルモン;分化抑制因子;デキサメタゾン、オンコスタチンM等の分化誘導因子;2-メルカプトエタノール、ジチオトレイトール等の抗酸化剤;などが挙げられる。
また、がんの種類(特に、胃がん、大腸がん)によっては、患者から採取した細胞をそのまま培養すると、採取したがん細胞に付着している細菌や真菌が増殖するおそれがある。したがって、培地には、必要に応じて抗生物質および/または抗真菌剤を添加してもよい。限定されるものではないが、抗生物質は、ペニシリン、ストレプトマイシン、ゲンタマイシン等が挙げられ、抗真菌剤としては、アンフォテリシンB、フルコナゾール等が挙げられる。
がんは何れの種類であってもよい。例えば、大腸がん、小腸がん、胃がん、食道がん、肛門がん、膵がん、肝がん、胆管がん、消化器内分泌腫瘍、消化管間質腫瘍(GIST)、乳がん、肺がん、中皮腫、胸腺がん、腎がん、尿路上皮がん、精巣腫瘍、前立腺がん、子宮体がん、子宮頚がん、子宮肉腫、卵巣悪性腫瘍、舌がん、歯肉がん、口腔底がん、咽頭がん、喉頭がん、唾液腺がん、甲状腺がん、骨肉種、Ewing肉腫、軟部肉腫、骨髄異形成症候群、皮膚がん、神経芽細胞腫、悪性神経膠腫(グリオブラストーマ)、悪性リンパ腫、多発性骨髄腫などが例示されるが、これらに限定されない。
実施形態に係る培地は、胃がん、肝がん、膵がんの他、後述する実施例に示すとおり、従来は初代培養が難しいとされた肺がんについても、高い成功率で初代培養することができた。
培地に添加されるROCK阻害剤およびモノチオグリセロールの濃度は、がん細胞の初代培養を好適に実施できる範囲であれば特に制限はない。限定されるものではないが、培地中のROCK阻害剤の最終濃度は、培地1Lあたり、下限値は、0.05μmol以上、0.06μmol以上、0.07μmol以上、0.08μmol以上、0.1μmol以上、0.2μmol以上、0.4μmol以上、0.6μmol以上、0.8μmol以上、1μmol以上、2μmol以上、3μmol以上、4μmol以上、5μmol以上、6μmol以上、7μmol以上、8μmol以上、9μmol以上、10μmol以上等が挙げられ、上限値は、100μmol以下、90μmol以下、80μmol以下、70μmol以下、60μmol以下、50μmol以下等が挙げられる。
培地中のモノチオグリセロールの最終濃度は、限定されるものではないが、培地1Lあたり、下限値は、10μmol以上、20μmol以上、30μmol以上、40μmol以上、50μmol以上、60μmol以上、70μmol以上、80μmol以上、90μmol以上、100μmol以上等が挙げられ、上限値は、5000μmol以下、4000μmol以下、3000μmol以下、2000μmol以下、1000μmol以下、750μmol以下、500μmol以下等が挙げられる。
また、実施形態に係る培地は、後述する実施例に示すとおり、初代培養に加え、継代培養や、患者から採取したがん細胞を保存する際にも好適に用いることができる。特に、がん細胞を保存する際には、冷蔵保存する必要はなく、常温で保存できる。したがって、採取したがん細胞の取り扱いの利便性が向上する。なお、本明細書において「常温」とは、冷却手段または加熱手段を用いずに保存する温度を意味し、季節により異なるものの約15℃~30℃を意味する。また、本明細書において「保存」とは、生体からがん細胞を採取してから初代培養方法を実施するまでの間(保存期間)、採取したがん細胞が死滅することを可能な限り抑制しつつ生存状態を維持することを意味する。なお、保存期間中のがん細胞は、同じ場所で静置されてもよいし、運搬(例えば、がん細胞を採取した病院から初代培養を実施する施設に運搬)されてもよい。
本出願で開示する培地は、以下の効果を奏する。
(1)従来は初代培養が難しいとされていた肺がんの初代培養の成功率を高くできる他、肺がん以外のがん細胞の初代培養に使用できる。したがって、がんの種類を問わずがん細胞を初代培養できることから、診断・治療のための遺伝子解析や抗がん剤の選択等の臨床応用、がんの分子メカニズム、遺伝子変異解析、創薬研究等の基礎研究に有用である。
(2)初代培養および継代培養に加え、がん細胞の保存用の培地としても使用できる。したがって、1種類の培地であっても異なる用途に使用できることから、臨床等の現場において有用である。
(初代培養方法の実施形態)
次に、実施形態に係る初代培養方法について説明する。初代培養方法は、上記培地の実施形態で説明をした何れかの培地を用いて、採取したがん細胞を培養する培養工程を含む。
がん細胞を採取すべき対象は、生体(生きた動物)であればよく、好ましくはがんを有するヒトである。生体のがん組織は、公知の方法で採取されればよい。限定されるものではないが、外科手術時に採取または摘出、あるいは生検等が挙げられる。
培養工程は、生体から採取したがん細胞が培養できれば培養方法に特に制限はない。通常、生体から採取したがん細胞を含む組織は、培養する前に細断化が行われる。細断化は、ナイフ、はさみ等を用いて、組織塊が肉眼で見えなくなる程度(約1mm角以下)まで細断すればよい。そして、培養方法は、細断したがん細胞を含む組織をそのまま培養するエクスプラント培養であってもよいし、細断したがん細胞を含む組織を酵素により細胞単位に分離して培養する酵素処理分散培養であってもよい。なお、本明細書において「がん細胞を培養する」と記載した場合、細断したがん細胞を含む組織を培養すること、および、細胞単位に分離したがん細胞を培養すること、の両方を含む概念である。また、本明細書において「がん細胞」と記載した場合、当該記載には「単離したがん細胞」および「がん細胞を含む組織」の両方が含まれる。酵素処理分散培養に用いる酵素は、細胞培養の分野で一般的に用いられている酵素であれば特に制限はなく、限定されるものではないが、コラゲナーゼ、トリプシン、パパイン、ディスパーゼ等が挙げられる。
また、がん細胞は、必要に応じて、洗浄、滅菌されたフィルターを用いて篩い分け等を行うことで、夾雑物の除去を行ってもよい。
がん細胞の培養方法としては、がん細胞を人工基質上で単層に成長させる接着培養、および、がん細胞を培地中で自由に浮遊させて成長させる浮遊培養が知られている。接着培養は初代培養を含むほとんどの細胞タイプに適しているが、浮遊培養は主に非接着性の細胞に適している。したがって、実施形態に係る初代培養方法では、接着培養が好ましい例として挙げられるが、最初は浮遊培養によりがん細胞を培養して細胞凝集体を形成してから接着培養してもよい。
培養工程で用いる培養容器は、細胞培養の分野で一般的に用いられている公知の容器を用いればよい。限定されるものではないが、接着培養は、表面に細胞または細胞塊が付着し易い処理をしたものが市販されており、これらを用いてもよい。がんの種類や組織型によってはラミニン511、ラミニン411、可溶性Eカドヘリン等を固層化したプレートに播種してもよい。また、培養容器の形状やサイズも、がん細胞の種類や必要量などの条件に応じて選択することができる。様々なサイズのフラスコ、ボトル、ディッシュ、チューブ、プレートなどが市販されているので、これらを用いることができる。
浮遊培養で浮遊培養用の培養容器は、表面に細胞または細胞塊が付着し難い処理をしたものが市販されており、これらを用いてもよい。また、培養容器の形状やサイズも、がん細胞の種類や必要量などの条件に応じて選択することができる。様々なサイズのフラスコ、ボトル、ディッシュ、チューブ、プレートなどが市販されているので、これらを用いることができる。
培養時間、温度等の培養条件は、がんの種類に応じて、培養を実施する者が適宜決定すればよい。
実施形態に係る初代培養方法は、以下の効果を奏する。
(1)培養工程で増殖したがん細胞の初代培養物は、採取した生体の臨床組織に類似する。つまり、生体内のがん組織の状態をインビトロで再現することができる。そのため、実施形態に係る初代培養方法により得られた初代培養物を用いて、がん分子メカニズムの解明、薬剤感受性試験、採取した生体(患者)の適した医薬品のスクリーニング、がん細胞の遺伝子解析等に用いることができる。また、創薬などの研究開発にも用いることができる。
(2)本出願で開示する培地を用いることで、初代培養が特に難しいとされている肺がん細胞の成功率が70%程度に向上する。なお、本明細書において「成功率」とは、初代培養により、がん細胞が100倍程度増えることを意味する。成功率が向上することで、上記(1)に記載のがん分子メカニズムの解明、薬剤感受性試験、採取した生体(患者)の適した医薬品のスクリーニング、がん細胞の遺伝子解析等を実施できる確率が高くなる。したがって、患者に特化したオーダーメイド医療を実現することができる。
(3)手術等の際に採取したがん組織は、一般的にはホルマリン固定が行われ、パラフィンブロックを作製し、病理観察等に用いられる。ところで、組織固定に使用されるホルマリンは核酸(DNAなど)とタンパク質の架橋を引き起こすため、DNAは物理的ストレスを受けやすくなる。また、ホルマリンは酸化してギ酸になる場合があり、ギ酸はDNAを脱プリン化し、DNA鎖切断の原因となる。したがって、ホルマリン固定したがん組織を用いてDNA分析をしようとしても、DNAの品質が非常に悪いという問題がある。一方、初代培養方法により得られたがん細胞は後述する実施例に示すとおり、高品質なgDNAが得られることから、遺伝子解析の精度が向上する。
(継代培養方法の実施形態)
次に、実施形態に係る継代培養方法について説明する。継代培養方法は、上記初代培養方法により培養したがん細胞を、継代時に、2価の金属イオンと結合するキレート剤を用いることで、がん細胞が培養容器の壁面に接着することを低下させた状態でがん細胞を培養容器から取り出し、新しい培地を含む培養容器に移し替える継代工程を含む。
継代培養方法で用いる培地は、初代培養方法で用いた培地と同じでよい。代替的に、ROCK阻害剤およびモノチオグリセロールを含めば、継代培養方法で用いる培地成分が初代培養方法の培地成分と異なっていてもよい。また、継代工程後に実施する継代培養は、接着培養が好ましいが浮遊培養でも問題ない。継代工程および継代培養は複数回繰り返してもよい。
キレート剤としては、培地中に含まれる2価の金属イオン(カルシウムイオン、亜鉛イオン、銅イオン、マグネシウムイオン、鉄イオン等)と結合するものであれば特に制限はない。限定されるものではないが、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、グリコールエーテルジアミン四酢酸(EGTA)、1,2-ビス(o-アミノフェノキシド)エタン-N,N,N′,N′-テトラ酢酸(BAPTA)等が挙げられる。
継代時に添加するキレート剤の濃度は、培養した細胞を培養容器から取り出すことができ、細胞に大きなダメージを与えない範囲であれば特に制限はない。限定されるものではないが、1mMのキレート剤溶液を0.5~1mL程度添加すればよい。
従来の細胞培養方法では、継代時に、酵素を用いて細胞を培養容器から剥がしていた。しかしながら、酵素を用いると細胞膜や細胞膜表面の受容体などが脆弱となり、細胞が弱くなることから増殖性が低下することがある。また、細胞膜表面で発現の弱い受容体などが消失することがあり、細胞膜表面解析時に検出できなくなることがある。一方、実施形態に係る継代培養方法では、2価の金属イオンと結合するキレート剤を用いることでがん細胞を培養容器から容易に取り出しができる。換言すると、継代工程は、酵素を用いずに培養容器からがん細胞を取り出し、新しい培地を含む培養容器に移し替える工程ということができる。
実施形態に係る継代培養方法により、継代培養の効率が向上するとの効果が得られる。
(保存方法の実施形態)
次に、実施形態に係る保存方法について説明する。実施形態に係る保存方法は、培地の実施形態に記載の培地に、生体から採取したがん細胞を浸漬し、常温で保存する保存工程を含む。
培地に関しては上記培地の実施形態で説明済みであり、生体から採取したがん細胞に関しては上記初代培養方法の実施形態で説明済みである。したがって、重複記載となることから詳しい説明は省略する。
がん細胞を冷蔵庫に入れて保存すると細胞がダメージを受ける。そのため、冷蔵庫で保存したがん細胞を初代培養しても、がん細胞が増殖しない場合がある。一方、実施形態に係る保存方法は、本出願で開示する培地を用いることで、常温保存することができる。したがって、手術で採取したがん細胞を初代培養する際の細胞の取り扱いの利便性が向上するという効果が得られる。また、常温保存できることから、例えば、細胞培養施設を有しない診療所で採取したがん細胞を初代培養できる施設に常温で運搬できることから、運搬の利便性が向上するという効果が得られる。
保存期間は、保存中のがん細胞が死滅したり増殖能力が極端に低下しない範囲であれば特に制限はないが、約1日~4日間を目途にすることが好ましい。また、任意付加的に培地に、ペニシリン、ストレプトマイシン、ゲンタマイシン等の抗生物質を添加してもよい。
保存培地を用いて採取したがん細胞を長期間保存する場合、保存培地にはFBS(ウシ胎児血清)が含まれることが望ましい。また、FBSに加えて、KSR等の血清代替品(無血清サプリメント)も含まれることが望ましい。FBS(および無血清サプリメント)が含まれることで、がん細胞は安定的に保存される。保存培地に含まれるFBSの濃度は、限定されるものではないが、下限値としては0.5体積%以上、0.75体積%以上、1.0体積%以上、1.5体積%以上、2.0体積%以上、2.5体積%以上、3.0体積%以上等が挙げられ、上限値としては20体積%以下、18体積%以下、16体積%以下、14体積%以下、12体積%以下、10体積%以下等が挙げられる。
無血清サプリメントの濃度は、限定されるものではないが、下限値としては0.5体積%以上、0.75体積%以上、1.0体積%以上、1.5体積%以上、2.0体積%以上、2.5体積%以上、3.0体積%以上等が挙げられ、上限値としては20体積%以下、18体積%以下、16体積%以下、14体積%以下、12体積%以下、10体積%以下等が挙げられる。
なお、動物由来の成分が保存培地に含まれると、培養したがん細胞にウイルス等がコンタミする恐れがある。ウイルスがコンタミしても、培養したがん細胞が研究用途や創薬等のスクリーニングに使用される場合は特段の問題はない。しかしながら、より安全性を高めるとの観点では、採取したがん細胞の保存期間が短い場合、保存培地にはFBS(および無血清サプリメント)が含まれないほうが望ましい。なお、本明細書において「長期保存」とは、3日以上保存することを意味し、短期とは3日未満保存することを意味する。
以下に実施例を掲げ、本出願で開示する実施形態を具体的に説明するが、この実施例は単に実施形態の説明のためのものである。本出願で開示する技術的範囲を限定したり、あるいは制限することを表すものではない。
[培地の作製]
<実施例1>
以下の組成で培地を作製した。
1.初代培養用、継代培養用の培地(接着培養、浮遊培養いずれも共通)、保存用培地(短期保存用)
・1μM A83-01(TGF-β阻害剤。富士フィルム和光純薬株式会社製)
・50ng/mL EGF(上皮成長因子。Sigma-Aldrich社製)
・2mM CHIR99021(GSK-3 阻害剤。富士フィルム和光純薬株式会社製)
・1μmol/L Y-27632(ROCK阻害剤。富士フィルム和光純薬株式会社製)
・×100 N2サプリメント(Thermo Fisher社製)
・×50 B27サプリメント入り(Thermo Fisher社製)
・20ng/mL bFGF(塩基性線維芽細胞増殖因子。Sigma-Aldrich社製)
・2mM GlutamaxTM Supplement(グルタミン酸。Thermo Fisher社製)
・50μmol/L モノチオグリセロール(富士フィルム和光純薬株式会社製)
・×100 MEM Non-Essential Amino Acids Solution(Thermo Fisher社製)
・0.5mg/mL BSA(ウシ血清アルブミン。富士フィルム和光純薬株式会社製)
・100units/mL ペニシリンG(富士フィルム和光純薬株式会社製)
・100μg/mL ストレプトマイシン硫酸塩(富士フィルム和光純薬株式会社製)
2.長期保存用培地
・5体積%FBS(ウシ胎児血清。Thermo Fisher社製)
・2.5体積%KSR(無血清サプリメント。Thermo Fisher社製)
・1 mmol/L ピルビン酸ナトリウム(Thermo Fisher社製)
・2.5体積% Human Serum(Sigma-Aldrich社製)
・2mM GlutamaxTM Supplement(グルタミン酸。Thermo Fisher社製)
・1μmol/L Y-27632(ROCK阻害剤。富士フィルム和光純薬株式会社製)
・50ng/mL SAG(Smoothenedアゴニスト。Abcam社製)
・50μmol/L モノチオグリセロール(富士フィルム和光純薬株式会社製)
・RPMI1640培地(Thermo Fisher社製)
・100units/mL ペニシリンG(富士フィルム和光純薬株式会社製)
・100μg/mL ストレプトマイシン硫酸塩(富士フィルム和光純薬株式会社製)
[初代培養の実施]
<実施例2>
1.培養容器
実施例2では、以下の培養容器を用いた。
・接着培養用マルチウェルプレート(1/12 well)。なお、接着培養用のマルチウェルプレートは、iMatrix-511コート(タカラバイオ社製)を用いて冷蔵庫で一晩コーティングした。
培養用培地 1mL/well。
・浮遊培養用 HydroCellプレート(24 well)。なお、浮遊培養用のプレートは、iMatrix-511コート(タカラバイオ社製)でコーティングされていない。
培養用培地 1mL/well。
2.初代培養の手順
(1)手術で採取した肺がんの組織を、短期保存用培地2mLを含む15mLチューブに入れて、2時間保存した。
(2)先太チップにて組織を10cm dishに移し、短期保存用を少量添加した。メス刃で組織を細切した(約0.5-1mm角)。細切した組織片を再び短期保存用に入れて30分間、37℃でインキュベーションした。
(3)PBSで10mLまでメスupして、遠心洗浄(1,000rpm、5min)した。
(4)上清を吸引除去して酵素処理した。具体的には、0.1% Collagenase Iを2mL添加し、Voltex後、酵素反応(37℃、20~30min、振盪)した。なお、Collagenase I(SIGMA)はHBSS(Mg,Ca入り)にて0.5%を5倍希釈した。
(5)PBS 9mL+CELLOTION(タカラバイオ社製)1mLで10mLまでメスupし、遠心洗浄(1,000rpm、5min)した。
(6)PBSを2mL添加し、ピペッティングにより組織を解した。解した2mL液を組織残渣ごと新しい15mLチューブにフィルトレーションし、フィルター上に残った組織残渣をピペットで軽くすりつぶした後、約7mLのPBSでチューブを共洗い、フィルトレーションした。ここにCELLOTIONを1mL添加し遠心洗浄(1,000rpm、5min)した。
(7)上清をギリギリまで吸引除去し、溶血剤を3mL添加し、Voltexして溶血処理(4℃、15min)を行った。
(8)PBSとCELLOTION1mLで10mLまでメスupし、遠心洗浄(1,000rpm、5min)した。
(9)上清を吸引除去し、再度PBSとCELLOTION1mLで10mLまでメスupし、遠心洗浄(1,000rpm、5min)した。なお、遠心前に細胞懸濁液12μLを計算盤に添加し、細胞数をカウントした。
(10)上清を100μLまで吸引除去し、がん細胞を初代培養用培地(上記「1.培養容器」に記載の接着培養用のウェルプレート、浮遊培養用のプレート)に播種した(播種数は適宜決定)。
(11)37℃、5%炭酸ガスの細胞培養用インキュベーターにて、約7日培養した。なお、培地交換は2~3日に1回程度行った。
なお、実施例2では、62名の患者(N=62)から採取した肺がん組織を半分に分け、それぞれ、接着培養および浮遊培養で実験を行った。換言すると、同一症例のサンプルについて、接着培養および浮遊培養の2つの培養方法で検証を行った。結果は、接着培養および浮遊培養の両方で初代培養が成功した症例が30、接着培養のみで初代培養が成功した症例が4、浮遊培養のみで初代培養が成功した症例が12であった。つまり、62症例の内、接着培養および浮遊培養の両方、または、いずれか一方で初代培養が成功(肺がんの細胞数が100倍以上の増加)した症例は46であり、生体から採取した肺がん組織の約74%で初代培養が成功した。図1に初代培養(接着培養)で得られた肺がん細胞の写真を示す。
<比較例1>
実施例1の培地組成においてROCK阻害剤を添加しなかった以外は実施例2と同様の手順で実験を行ったところ(N=11)、接着培養および浮遊培養の何れにおいてもがん細胞は殆ど増殖しなかった。
<比較例2>
実施例1の培地組成においてモノチオグリセロールを添加しなかった以外は実施例2と同様に実験を行ったところ(N=8)、接着培養および浮遊培養の何れにおいてもがん細胞は1週間で-20%となった。
実施例2および比較例1、2の結果から、ROCK阻害剤およびモノチオグリセロールを組み合わせて添加した培地を用いることで、初代培養の成功率が非常に低いと言われている肺がん細胞であっても、高い成功率で初代培養できることを確認した。また、本出願で開示する培地は、接着培養および浮遊培養の何れにおいても有用であることを確認した。
<実施例3>
肺がん組織に代え、骨肉腫、胃がん、卵巣がん、大腸がん、膵臓がん、食道がんの手術の際に採取したがん組織を用いた以外は、実施例2と同様の手順(ただし、胃がんおよび大腸がんでは、2.5μg/mL アンフォテリシンB(富士フィルム和光純薬株式会社製)および5μg/mL フルコナゾール(富士フィルム和光純薬株式会社製)を添加した。)で初代培養を行った。初代培養の成功率(細胞数が100倍以上に増殖)は以下のとおりであった。なお、接着培養および浮遊培養の両方で初代培養は成功したが、実施例2と異なり、成功率が高かった培養方法の結果のみを示す。
骨肉腫:4例中3例で成功。成功率75%。
胃がん:10例中7例で成功。成功率70%。なお、失敗した3例は真菌がコンタミしたため中止したが、がん細胞が増殖したことは確認できた。
卵巣がん:3例中2例で成功。成功率67%。
大腸がん:5例中4例で成功。成功率は80%。
膵臓がん:10例中6例で成功。成功率は60%。なお、失敗した4例中、3例は切除した組織にがん細胞が入っていなかったことが別途確認された。
食道がん:2例中2例で成功。成功率100%。
以上の結果から、本出願で開示する培地は、肺がんのみでなく、多くの種類のがんの初代培養に有用であることを確認した。特に、肺がん細胞の初代培養の成功率は、従来の方法では約10%と報告されていたところ、本出願で開示する培地を用いることで成功率は約74%と顕著に向上した。
[継代培養の実施]
<実施例4>
上記実施例2の初代培養に続き、以下の手順で継代培養を行った。なお、継代培養には、接着培養で初代培養した肺がん細胞を用いた。以下に、継代工程を示す。
(1)培地を吸引し、PBSにて洗浄した。
(2)キレート剤として、1mMのEDTA溶液を1mL加えて、37℃の炭酸ガスインキュベーターにて5~15分反応させ、5分おきに顕微鏡で観察し、細胞がディッシュから剥がれ始めたら、PBSを加えてピペッティングを行い、細胞を回収した。
(3)15mLのチューブに移して、PBSとCELLOTION1mLで10mLまでメスupし、遠心洗浄(1,000rpm、5min)した。
継代培養した第2世代の肺がん細胞の一部について、更に継代培養を行った。図2に第3世代の写真、図3に第4世代の写真を示す。なお、第2世代から第4世代までの継代培養の成功率は、約90%であった。
<比較例3>
実施例4のキレート剤に代え、酵素(0.05% Trypsin、1mL)を添加した以外は、実施例4と同様の手順で継代培養を行った。結果は、多くのがん細胞が死んでしまい、50%~70%の頻度で継代できなかった。
[他のROCK阻害剤を用いた初代培養、継代培養の実施]
<実施例5>
実施例2のY-27632に代え、ROCK阻害剤としてY-27632 2HCl(MedChemExpress社製)、H-1152 dihydrochloride(MedChemExpress社製)、Hydroxyfasudil(HA-1100)HCl(MedChemExpress社製)、GSK269962A HCl(MedChemExpress社製)の4薬剤を使用した以外は、実施例2と同様の手順で初代培養を行った。初代培養の成功率は、以下のとおりであった。なお、接着培養および浮遊培養の両方で初代培養は成功したが、実施例2と異なり、成功率が高かった培養方法の結果のみを示す。
・Y-27632 2HCL:3例中2例で成功。成功率67%。
・H-1152 dihydrochloride:4例中3例で成功。成功率75%。
・Hydroxyfasudil (HA-1100) HCL:4例中3例で成功。成功率75%。
・GSK269962A HCL:3例中2例で成功。成功率67%。
また、実施例5の4種類のROCK阻害剤を用いて第2世代まで培養した肺がん、膵臓がん、胃がん細胞から、肺がん(3例)、膵臓がん(2例)、胃がん(3例)を選択して更に継代培養したところ、全て第4世代まで継代することができた。継代による細胞の増殖数は、Y-27632 2HClを基準(1とする)とした場合、H-1152 dihydrochlorideは0.99、Hydroxyfasudil(HA-1100)HClは1.13、GSK269962A HClは1.03となり、同様に増殖していた。
以上の結果から、本出願で開示する培地を用いることで、がん細胞の種類を問わず、高い成功率で初代培養および継代培養できることを確認した。
[保存用培地]
<実施例6、比較例4>
生体から採取した肺がん細胞を長期保存用培地に浸漬し、常温(実施例6)と冷蔵庫(比較例4)で3日間保存し、その後に実施例2と同様の手順で初代培養(ただし、接着培養のみ。)を行った。図4に常温で保存した肺がん細胞の初代培養7日目の写真を示す。図5に冷蔵庫で保存した肺がん細胞の初代培養7日目の写真を示す。図4の写真から明らかなように、長期保存用培地にて生体から採取したがん細胞を常温で保存しても、がん細胞は増殖することを確認した。一方、図5の写真から明らかなように、生体から採取したがん細胞を冷蔵庫で保存した場合は、がん細胞の増殖は常温保存と比較して劣っていた。一般的に、生体から採取したがん細胞を直ぐに培養しない場合は、冷蔵庫で保存される。本出願で開示する培地を用いることで、採取したがん細胞を常温保存できることから、採取した細胞の取り扱いの利便性が向上する。
<比較例5>
実施例2で用いた培地からROCK阻害剤およびモノチオグリセロールを除いた培地、つまり、従来から一般的に用いられる培地を用いた以外は実施例6と同様の手順で実験を行った。なお、比較例5では、肺がん細胞に加え、卵巣がんでも実験を行った。結果は以下のとおりであった。
・肺がん:3例中成功は0。成功率は0%。
・卵巣がん:2例中成功は0。成功率0%。
以上の結果から、本出願で開示する培地は、初代培養、継代培養、保存用の何れの用途にも使用できることを確認した。更に、がん細胞を保存する際には、常温保存の方が好ましいことを確認した。
[DNA品質につて]
<実施例7>
次に、初代培養で得られたがん細胞のDNA品質を調べる実験を行った。実験手順を以下に示す。
<サンプルの調整>
(1)ホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)のDNA
4人の患者(結果を示す図4では、それぞれ、Sample1、2、3、4と表記する。)から手術の際に採取した肺がん組織を、一般的な手順と処理時間でホルマリン固定し、その後、組織の切り出しを行い、一般的な工程にて病理診断用パラフィンブロックを作製(formalin-fixed paraffin-embedded:FFPE)した。このブロックからミクロトームを用いて一般的な手法で作製されたパラフィン切片から、市販のDNA抽出キットにてゲノムDNA(gDNA)を抽出した。
(2)Rapid-FFPEのDNA
上記3人の患者(Sample3は無し。)から手術の際に採取した肺がん組織を、直ちに5~10mm程度のサイズに切り出しを行い、一般的な方法にてホルマリン固定パラフィンブロックを作製した。その後は、上記のFFPEと同様にパラフィン切片を作製し、gDNA抽出を行った。
(3)Culture CellのDNA
上記4人の患者から手術の際に採取した肺がん組織を、短期保存用培地に入れて細胞培養室まで搬送した。その後、実施例2の手順にしたがって初代培養を行った。培養によって増殖したがん細胞からgDNAを抽出した。
<電気泳動>
TapeStationシステム(Agilent社製)を用いて、上記<サンプルの調整>で抽出したgDNAの品質を確認した。図6に結果を示す。図6のゲル電気泳動の結果に示すように、FFPEではほとんどバンドは見えなかった。一方、Rapid-FFPEでは、バンドは見えたがブロードであった。これは、組織固定に使用されるホルマリンにより、タンパク質とDNAが架橋したり、DNAの分解が起きたためと考えられる。一方、初代培養(Culture Cell)では、DNAは分解されずにきれいなバンドが確認された。各サンプルのゲノムDNA(gDNA)の相対的な品質の決定におけるDNAIntegrity Number(DIN)の値は、図6から明らかなようにCulture Cellが最も高かった。なお、DINの評価範囲は1~10であり、DIN値が高いほどgDNAが分解されていないことを示している。
以上の結果から、初代培養したがん細胞からは高い品質のgDNAが得られることから、患者毎の遺伝子解析等にも用いることができる。
本出願で開示する培地を用いることで、高い成功率でがん細胞の初代培養ができる。したがって、医療産業にとって有用である。

Claims (11)

  1. がん細胞の培養用および/または保存用の培地であって、該培地は、
    ROCK阻害剤およびモノチオグリセロールを少なくとも含み、
    前記培地中のROCK阻害剤の最終濃度が、0.05μmol/L以上、100μmol/L以下であり、
    前記培地中のモノチオグリセロールの最終濃度が、10μmol/L以上、5000μmol/L以下である
    培地。
  2. 前記ROCK阻害剤が、
    Y-27632 2HCl、Y-27632、H-1152 dihydrochloride、Hydroxyfasudil(HA-1100)HCl、GSK269962A HCl、Thiazovivin、Fasudil(HA-1077)HCl、GSK429286A、RKI-1447、Azaindole 1(TC-S 7001)、Y-39983 HCl、Netarsudil(AR-13324)2HCl、Belumosudil(KD025)およびAT13148からなる群から選択した少なくとも一種である
    請求項1に記載の培地。
  3. 前記ROCK阻害剤が、Y-27632 2HCl、Y-27632、H-1152 dihydrochloride、Hydroxyfasudil(HA-1100)HClおよびGSK269962A HClからなる群から選択した少なくとも一種である
    請求項2に記載の培地。
  4. 前記培地中のモノチオグリセロールの最終濃度が、10μmol/L以上(ただし、10μmol/Lは除く。)、5000μmol/L以下である
    請求項1に記載の培地。
  5. 抗生物質および/または抗真菌剤を更に含む
    請求項1に記載の培地。
  6. がんが、肺がんである
    請求項1に記載の培地。
  7. 前記培地が、がん細胞の保存用の培地であり、
    がん細胞が常温で保存される
    請求項1~のいずれか一項に記載の培地。
  8. がん細胞の初代培養方法であって、該初代培養方法は、
    請求項1~のいずれか一項に記載の培地を用いて、生体から採取したがん細胞を培養する培養工程を含む
    初代培養方法。
  9. がん細胞の継代培養方法であって、該継代培養方法は、
    請求項に記載の初代培養方法で培養したがん細胞を、継代時に、2価の金属イオンと結合するキレート剤を用いることで、がん細胞が培養容器の壁面に接着することを低下させた状態でがん細胞を培養容器から取り出し、新しい培地を含む培養容器に移し替える継代工程を含む
    継代培養方法。
  10. がん細胞の保存方法であって、該保存方法は、
    請求項1~のいずれか一項に記載の培地に、生体から採取したがん細胞を浸漬し、常温で保存する保存工程を含む
    保存方法。
  11. 培地がウシ胎児血清を含む
    請求項10に記載の保存方法。
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