JP7702110B2 - ヒト膵癌オルガノイドを用いたマウスモデルの樹立 - Google Patents
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Description
本発明は、例えばヒト膵癌マウスモデル及び当該マウスモデルの使用に関する。
膵癌をはじめとする難治性癌に対し、新規治療法の開発が急務となっている。従来において、新規治療法の開発においては、癌マウスモデルを利用した治療薬の探索が行われている。また、予後不良の癌の代表である膵癌は早期発見が困難であり、有用な診断マーカーの開発が望まれている。
しかしながら、膵癌については、ハイスループットでヒト膵癌組織に類似した組織構築をなす腫瘍を形成することができるマウスモデルは存在していない。このため、薬剤の有効性の実験に用いることができる有用な膵癌マウスモデルが存在していなかった。
また、患者から得られた膵癌組織を免疫不全動物に移植して作製した異種移植片(Patient-Derived Xenograft、PDX)は腫瘍内に間質細胞・がん関連線維芽細胞や腫瘍マクロファージなどの患者由来の細胞が含まれていることから、患者由来腫瘍の特徴を保持しており、腫瘍の病態解析、腫瘍マーカー解析、薬剤開発等への活用が強く期待されている。しかし、PDXでは継代が進むにつれてマウス体内における腫瘍増殖が加速し、患者由来サンプルと比較して遺伝子発現プロファイルが変化する。さらに、PDX樹立には通常3-6ヶ月の時間を要し、現時点では腫瘍を提供した患者の個別医療に直接関与するのが困難である。このため、PDXはハイスループット性に欠けていて、医薬品開発等における汎用性が十分でない。
一方、特許文献1には、ヒト膵癌細胞株(PANC-1、CFPAC-1、SW1990)、ヒト血管内皮細胞(HUVEC)及びヒト間葉系細胞(hMSC)を共培養することで、ヒト膵癌オルガノイドを再構成し、この膵癌オルガノイドより、豊富な間質や腺管構造を有した膵癌ゼノグラフトが形成されたことが開示されている。しかしながら、特許文献1には、当該ヒト膵癌オルガノイドを担持したマウスにおいて、乳頭状構造、癌間質を伴った膵癌細胞の浸潤、脈管侵襲、リンパ節転移、上皮間葉転換(EMT)等の臨床的な膵癌と類似する組織構築をなす腫瘍が形成されたことは開示されていない。また、特許文献1には、ヒト膵癌オルガノイドを担持したマウスから採取した血清において、膵癌診断マーカーが臨床的な膵癌と同様の挙動を示すことは開示されていない。さらに、特許文献1には、ヒト膵癌オルガノイドを担持したマウスが膵癌治療薬の治療効果を判定するために有用なモデルであることは開示されていない。
しかしながら、膵癌については、ハイスループットでヒト膵癌組織に類似した組織構築をなす腫瘍を形成することができるマウスモデルは存在していない。このため、薬剤の有効性の実験に用いることができる有用な膵癌マウスモデルが存在していなかった。
また、患者から得られた膵癌組織を免疫不全動物に移植して作製した異種移植片(Patient-Derived Xenograft、PDX)は腫瘍内に間質細胞・がん関連線維芽細胞や腫瘍マクロファージなどの患者由来の細胞が含まれていることから、患者由来腫瘍の特徴を保持しており、腫瘍の病態解析、腫瘍マーカー解析、薬剤開発等への活用が強く期待されている。しかし、PDXでは継代が進むにつれてマウス体内における腫瘍増殖が加速し、患者由来サンプルと比較して遺伝子発現プロファイルが変化する。さらに、PDX樹立には通常3-6ヶ月の時間を要し、現時点では腫瘍を提供した患者の個別医療に直接関与するのが困難である。このため、PDXはハイスループット性に欠けていて、医薬品開発等における汎用性が十分でない。
一方、特許文献1には、ヒト膵癌細胞株(PANC-1、CFPAC-1、SW1990)、ヒト血管内皮細胞(HUVEC)及びヒト間葉系細胞(hMSC)を共培養することで、ヒト膵癌オルガノイドを再構成し、この膵癌オルガノイドより、豊富な間質や腺管構造を有した膵癌ゼノグラフトが形成されたことが開示されている。しかしながら、特許文献1には、当該ヒト膵癌オルガノイドを担持したマウスにおいて、乳頭状構造、癌間質を伴った膵癌細胞の浸潤、脈管侵襲、リンパ節転移、上皮間葉転換(EMT)等の臨床的な膵癌と類似する組織構築をなす腫瘍が形成されたことは開示されていない。また、特許文献1には、ヒト膵癌オルガノイドを担持したマウスから採取した血清において、膵癌診断マーカーが臨床的な膵癌と同様の挙動を示すことは開示されていない。さらに、特許文献1には、ヒト膵癌オルガノイドを担持したマウスが膵癌治療薬の治療効果を判定するために有用なモデルであることは開示されていない。
本発明は、上述の実情に鑑み、ヒト膵癌に類似した膵癌のマウスモデルを提供することを目的とする。
上記課題を解決するため鋭意研究を行った結果、ヒト膵癌細胞株S2-013を用いて作製した膵癌オルガノイドをマウスに移植することで、当該マウスにおいてヒト膵癌組織に類似した組織構築をなす腫瘍が形成されることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、以下を包含する。
(1)ヒト膵癌細胞株S2-013を含む膵癌オルガノイドを担持するヒト膵癌マウスモデル。
(2)(1)記載のヒト膵癌マウスモデルを用いて膵癌治療剤をスクリーニングする方法。
(3)(1)記載のヒト膵癌マウスモデルを用いて膵癌治療剤の薬効を評価する方法。
(4)(1)記載のヒト膵癌マウスモデルから採取した血清サンプルを用いて、膵癌診断マーカーの有用性を評価する方法。
(5)(1)記載のヒト膵癌マウスモデルから採取した血清サンプルを用いて、膵癌診断マーカーをスクリーニングする方法。
本明細書は本願の優先権の基礎となる日本国特許出願番号2020-078771号の開示内容を包含する。
上記課題を解決するため鋭意研究を行った結果、ヒト膵癌細胞株S2-013を用いて作製した膵癌オルガノイドをマウスに移植することで、当該マウスにおいてヒト膵癌組織に類似した組織構築をなす腫瘍が形成されることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、以下を包含する。
(1)ヒト膵癌細胞株S2-013を含む膵癌オルガノイドを担持するヒト膵癌マウスモデル。
(2)(1)記載のヒト膵癌マウスモデルを用いて膵癌治療剤をスクリーニングする方法。
(3)(1)記載のヒト膵癌マウスモデルを用いて膵癌治療剤の薬効を評価する方法。
(4)(1)記載のヒト膵癌マウスモデルから採取した血清サンプルを用いて、膵癌診断マーカーの有用性を評価する方法。
(5)(1)記載のヒト膵癌マウスモデルから採取した血清サンプルを用いて、膵癌診断マーカーをスクリーニングする方法。
本明細書は本願の優先権の基礎となる日本国特許出願番号2020-078771号の開示内容を包含する。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明に係るヒト膵癌マウスモデル(以下、「本発明に係るマウスモデル」と称する)は、ヒト膵癌細胞株S2-013を含む膵癌オルガノイドを担持するヒト膵癌マウスモデルである。
本発明に係るマウスモデルは、乳頭状構造、癌間質を伴った膵癌細胞の浸潤、脈管侵襲、リンパ節転移、上皮間葉転換(EMT)等のヒト膵癌組織に類似した組織構築をなす腫瘍を有し、膵癌治療剤等の薬剤の薬効評価の実験および膵癌診断マーカーの有用性評価の実験に用いることができる有用なマウスモデルである。
本発明では、ヒト膵癌細胞株S2-013を用い、そのオルガノイドの作製条件について詳細な検討を行うことにより、膵癌細胞増殖スピード(=腫瘍体積の増加)の個体間での均一化に成功したことで、以下の特徴を有するヒト膵癌マウスモデルの利用を可能とした:
(1)ほぼ100%の成功率で大きさのそろった腫瘍を形成することができる。ハイスループット化に対応している。腫瘍体積のバラツキが極めて小さいため、正確な薬効評価が可能である(腫瘍体積がそろわないことが問題であったオルガノイド移植モデルの中で初めて腫瘍体積が安定したモデルを樹立できた);
(2)腫瘍から出血しないため、腫瘍径の測定を正確に実施できる;
(3)血清CA19-9を薬効評価のマーカーとして用いることにより、薬効評価を充実させることができる。
1.本発明に係るマウスモデルの作製
1-1.膵癌オルガノイドの作製
本発明における膵癌オルガノイドは、特許文献1に記載の方法に準じて作製することができる。
ここで、「膵癌オルガノイド」とは、膵癌細胞とその他の細胞から構成される細胞凝集体である。複数の細胞間での細胞間相互作用を再現することが可能である。本発明における膵癌オルガノイドは、膵癌微小環境を再現するものであり、例えば、間質が豊富である。
多くの場合、癌組織は、癌細胞の他に間質と呼ばれる部分がある。間質には、線維芽細胞等の間葉系細胞の他、血管、リンパ管、神経等を構成する細胞(血液細胞、血管細胞、免疫細胞等)、炎症をつかさどる細胞(炎症細胞)等の多種類の細胞、これらの細胞の間に存在するコラーゲン等から成る結合組織が存在して、特徴的な構造を形成している。これを「癌微小環境」と呼ぶ。
本発明における膵癌オルガノイドは、癌間質を含む癌微小環境を再現するとよい。S2-013細胞は膵管腺癌由来であり、腺癌組織では腺管構造を有する成分も認められる。本発明における膵癌オルガノイドは、癌微小環境の他、さらに、腺管構造を再現するとよい。
本発明における膵癌オルガノイドは、ヒト膵癌細胞株S2-013を間葉系細胞及び血管内皮細胞と共培養することにより作製することができる。培養は、三次元(3D)培養であるとよい。本発明における膵癌オルガノイドの再構成に適した3D培養技術は、Nature,25;499(7459):481-4,2013、Nat Protoc.9(2):396-409,2014、Cell Stem Cell,7;16(5):556-65,2015等で報告されている。
本発明において使用する「ヒト膵癌細胞株S2-013」は、東北大学加齢医学研究所 医用細胞資源センター・細胞バンク(〒980-8575日本国宮城県仙台市青葉区星陵町4-1 東北大学加齢医学研究所 医用細胞資源センター)においてID:TKG0709;細胞名:S2-013として保有されており、ここより入手することができる。
本発明において「血管内皮細胞」とは、血管内皮を構成する細胞、又はそのような細胞に分化することのできる細胞をいう。ある細胞が血管内皮細胞であるかどうかは、マーカータンパク質、例えば、TIE2、VEGFR-1、VEGFR-2、VEGFR-3、CD41が発現しているかどうかを調べることにより確認できる(前記マーカータンパク質のいずれか一つあるいは複数が発現していれば血管内皮細胞であると判断できる)。本発明において用いる血管内皮細胞は、分化したものであっても、未分化なものであってもよい。血管内皮細胞が、分化した細胞であるかどうかは、CD31、CD144により、確認することができる。当業者間で使用されている用語のうち、endothelial cells、umbilical vein endothelial cells、endothelial progenitor cells、endothelial precursor cells、vasculogenic progenitors、hemangioblast(HJ.joo,et al.Blood.25;118(8):2094-104.(2011))等は本発明における血管内皮細胞に含まれる。好ましい血管内皮細胞は、臍帯静脈由来の血管内皮細胞である。血管内皮細胞は、血管から採取したり、あるいは、人工多能性幹細胞(iPS細胞)、胚性幹細胞(ES細胞)等の多能性幹細胞から公知の方法に従って作製することができる。血管内皮細胞は、主としてヒト由来のものを用いるが、ヒト以外の動物(例えば、実験動物、愛玩動物、使役動物、競走馬、闘犬などに利用される動物、具体的には、マウス、ラット、ウサギ、ブタ、イヌ、サル、ウシ、ウマ、ヒツジ、ニワトリ、サメ、エイ、ギンザメ、サケ、エビ、カニ等)由来の血管内皮細胞を用いてもよい。
本発明において「間葉系細胞」とは、主として中胚葉に由来する結合織に存在し、組織で機能する細胞の支持構造を形成する結合織細胞であるが、間葉系細胞への分化運命が決定しているが、まだ間葉系細胞へ分化していない細胞も含む概念である。本発明において用いる間葉系細胞は、分化したものであっても、未分化なものであってもよい。ある細胞が未分化間葉系細胞であるかどうかは、マーカータンパク質、例えば、Stro-1、CD29、CD44、CD73、CD90、CD105、CD133、CD271、Nestinが発現しているかどうかを調べることにより確認できる(前記マーカータンパク質のいずれか一つあるいは複数が発現していれば未分化間葉系細胞であると判断できる)。また、前項のマーカーのいずれも発現していない間葉系細胞は分化間葉系細胞と判断できる。当業者間で使用されている用語のうち、mesenchymal stem cells、mesenchymal progenitor cells、mesenchymal cells(R.Peters,et al.PLoS One.30;5(12):e15689.(2010))等は本発明における間葉系細胞に含まれる。好ましい間葉系細胞は、骨髄由来の間葉系細胞(特に、間葉系幹細胞)である。間葉系細胞は、骨髄、脂肪組織、胎盤組織、臍帯組織、歯髄等の組織から採取したり、あるいは、人工多能性幹細胞(iPS細胞)、胚性幹細胞(ES細胞)等の多能性幹細胞から公知の方法に従って作製することができる。間葉系細胞は、主としてヒト由来のものを用いるが、ヒト以外の動物(例えば、実験動物、愛玩動物、使役動物、競走馬、闘犬等に利用される動物、具体的には、マウス、ラット、ウサギ、ブタ、イヌ、サル、ウシ、ウマ、ヒツジ、ニワトリ、サメ、エイ、ギンザメ、サケ、エビ、カニ等)由来の未分化間葉系細胞を用いてもよい。
共培養における三種類の細胞の培養比は膵癌オルガノイドが形成できる範囲内であれば特に限定されないが、好適な細胞の数比は、ヒト膵癌細胞株S2-013:血管内皮細胞:間葉系細胞=10:1~100:1~100であり、より好適には、ヒト膵癌細胞株S2-013:血管内皮細胞:間葉系細胞=10:1~100:5~100である。ヒト膵癌細胞株S2-013を20万個程度、血管内皮細胞を14万個程度、間葉系細胞を40万個程度で共培養して、大きさが50~50000マイクロメートル程度の膵癌オルガノイドを形成させることができる。
培養の際に使用する培地は、膵癌オルガノイドが形成されるものであればどのようなものでもよいが、血管内皮細胞培養用の培地、癌細胞培養用の培地、前記2つの培地を混合したもの等を使用することが好ましい。血管内皮細胞培養用の培地はどのようなものを使用してもよいが、hEGF(組換えヒト上皮細胞成長因子)、VEGF(血管内皮細胞成長因子)、ヒドロコルチゾン、bFGF、アスコルビン酸、IGF1、FBS、Antibiotics(例えば、ゲンタマイシン、アンフォテリシンB等)、Heparin、L-Glutamine、Phenolred、BBEの少なくとも1種を含むものを使用するのが好ましい。血管内皮細胞培養用の培地としては、EGM-2 BulletKit(Lonza社製)、EGM BulletKit(Lonza社製)、VascuLife EnGS Comp Kit(LCT社製)、Human Endothelial-SFM Medium(Thermo Fisher Scientific社製)、ヒト微小血管内皮細胞増殖培地(TOYOBO社製)等を用いることができる。癌細胞培養用の培地はどのようなものを使用してもよく、例えば、DMEM培地が挙げられる。特に、膵癌オルガノイドの作製には、EGM:DMEM=1:1の培地が適している。
細胞の培養にあたっては、足場材料を用いる必要はないが、三種類の細胞の混合物を間葉系細胞が収縮可能なゲル状支持体上で培養するとよい。
間葉系細胞の収縮は、(顕微鏡、ないし肉眼で)形態学的に立体組織形成を認めることや、薬さじ等による回収に伴い組織の形状が保たれる強度を有することを示す等(Takebe et al.Nature 499(7459),481-484,2013))のようにして確認することができる。
支持体は、適正な硬さ(例えば、ヤング率200kPa以下(マトリゲルをコートした形状が平坦なゲルの場合等)であるが、支持体の適正な硬さはコーティングと形状によって変化しうる)を有するゲル状基材であるとよく、そのような基材としては、ハイドロゲル(例えば、アクリルアミドゲル、ゼラチン、マトリゲル等)等を例示することができるが、それらに限定されることはない。なお、目的とする集合体の形・サイズ・量に応じて、支持体の硬さは均一である必然性はなく、硬さに空間的・時間的な勾配を設定することやパターン化することが可能である。支持体の硬さが均一である場合には、支持体の硬さは、好ましくは、100kPa以下、より好ましくは1~50kPaである。ゲル状支持体は、平面であってもよいし、あるいは、ゲル状支持体の培養する側の断面がU又はV字の形状であるとよい。ゲル状支持体の培養する側の断面がU又はV字の形状であることにより、支持体の培養面に細胞が集まるようになり、より少ない数の細胞及び/又は組織で細胞集合体が形成されるので有利である。また、支持体に、化学的・物理的な修飾を施してもよい。修飾物質としては、マトリゲル、ラミニン、エンタクチン、コラーゲン、フィブロネクチン、ビトロネクチン等を例示することができる。
ゲル状培養支持体の硬さに空間的な勾配を設定した一例は、中心部の硬さが周辺部の硬さより固いゲル状培養支持体である。中心部の硬さは、200kPa以下が適正であり、周辺部の硬さは、中心部より柔らかければよいが、支持体の中心部と周辺部の適正な硬さはコーティングと形状によって変化しうる。ゲル状培養支持体の硬さに空間的な勾配を設定した別の一例は、周辺部の硬さが中心部の硬さより固いゲル状培養支持体である。
パターン化したゲル状培養支持体の一例は、中心部の硬さが周辺部の硬さより固いというパターンを1個以上有するゲル状培養支持体である。中心部の硬さは、200kPa以下が適正であり、周辺部の硬さは、中心部より柔らかければよいが、支持体の中心部と周辺部の適正な硬さはコーティングと形状によって変化しうる。パターン化したゲル状培養支持体の別の一例は、周辺部の硬さが中心部の硬さより固いというパターンを1個以上有するゲル状培養支持体である。周辺部の硬さは、200kPa以下が適正であり、中心部の硬さは、周辺部より柔らかければよいが、支持体の中心部と周辺部の適正な硬さはコーティングと形状によって変化しうる。
培養時の温度は特に限定されないが、30~40℃とするのが好ましく、37℃とするのが更に好ましい。
培養期間は特に限定されないが、1~60日とするのが好ましく、1~7日とするのが更に好ましい。
1-2.マウスモデルの作製
上述の膵癌微小環境を再現する、再構成された膵癌オルガノイドをマウスに移植することにより、腺管構造および膵癌微小環境を再現する、ヒト膵癌マウスモデル(ゼノグラフトモデル)を作製することができる。
本発明において使用するマウスとしては、例えばBALB/cSlc-nu/nuマウス等が挙げられる。
上述のように作製し、実体顕微鏡観察により円形の膵癌オルガノイドが形成されたことを確認し、当該円形の膵癌オルガノイドをマウス皮下に移植する。移植は、従来のゼノグラフト移植方法に準じて行うことができる。例えば移植の2~10週間後、マウスにおいて腫瘍組織が十分に形成され、ヒト膵癌マウスモデルとして使用することができる。
2.ヒト膵癌マウスモデルの用途
以上に説明した本発明に係るマウスモデルは、ヒト膵癌に類似する膵癌を有することから、ヒト膵癌の病態モデルマウスとして利用することができる。例えば、ヒト膵癌の発症メカニズム又は病態の解明、膵癌治療剤(抗癌剤)のスクリーニングや膵癌治療剤の薬効の評価、および膵癌診断マーカーのスクリーニングや有用性の評価に用いることができる。
例えば、膵癌治療剤のスクリーニングは、本発明に係るマウスモデルに治療剤候補化合物である被験物質を経口等の適当な投与経路により投与し、当該マウスモデルにおいて膵癌の大きさ、浸潤、遠隔転移の数、マウスの死等を観察することにより被験物質の効果を判定することができる。同様に、膵癌治療剤の薬効の評価は、本発明に係るマウスモデルに評価対象の膵癌治療剤を経口等の適当な投与経路により投与し、当該マウスモデルにおいて膵癌の大きさ、浸潤、遠隔転移の数、マウスの死等を観察することにより当該膵癌治療剤の薬効を評価することができる。
また、本発明に係るマウスモデルから採取した血清において、膵癌診断マーカーが臨床的な膵癌と同様の挙動を示す。従って、本発明に係るマウスモデルは、当該マウスモデルから採取した血清等の生物学的サンプルにおける膵癌診断マーカーの有用性の評価又は膵癌診断マーカーのスクリーニングに用いることができる。
例えば、膵癌診断マーカーの有用性の評価は、本発明に係るマウスモデルから採取した血清等の生物学的サンプルを、評価対象の膵癌診断マーカーに対する抗体を用いた免疫学的測定方法等に供し、タンパク質レベルで当該膵癌診断マーカーを測定する。測定した膵癌診断マーカーレベル(血清等の生物学的サンプル中の濃度)が、陰性対照(例えば、膵癌オルガノイドを担持しないこと以外、本発明に係るマウスモデルと同一のマウス由来の血清等の生物学的サンプル)と比較して、評価対象の膵癌診断マーカーに準じた有意な変動(増加又は低下)が見られるか否かを判定することにより、膵癌診断マーカーの有用性を評価することができる。
同様に、膵癌診断マーカーのスクリーニングは、本発明に係るマウスモデルから採取した血清等の生物学的サンプルを、膵癌診断マーカー候補に対する抗体を用いた免疫学的測定方法等に供し、タンパク質レベルで当該膵癌診断マーカー候補を測定する。測定した膵癌診断マーカー候補レベル(血清等の生物学的サンプル中の濃度)が、陰性対照(例えば、膵癌オルガノイドを担持しないこと以外、本発明に係るマウスモデルと同一のマウス由来の血清等の生物学的サンプル)と比較して、有意に変動(増加又は低下)していることによって、当該膵癌診断マーカー候補を、膵癌診断マーカーとして同定することができる。
ここで、免疫学的測定方法としては、特に限定されるものではないが、例えばELISA、フローサイトメトリー、ウェスタンブロッティング等が挙げられる。
本発明に係るヒト膵癌マウスモデル(以下、「本発明に係るマウスモデル」と称する)は、ヒト膵癌細胞株S2-013を含む膵癌オルガノイドを担持するヒト膵癌マウスモデルである。
本発明に係るマウスモデルは、乳頭状構造、癌間質を伴った膵癌細胞の浸潤、脈管侵襲、リンパ節転移、上皮間葉転換(EMT)等のヒト膵癌組織に類似した組織構築をなす腫瘍を有し、膵癌治療剤等の薬剤の薬効評価の実験および膵癌診断マーカーの有用性評価の実験に用いることができる有用なマウスモデルである。
本発明では、ヒト膵癌細胞株S2-013を用い、そのオルガノイドの作製条件について詳細な検討を行うことにより、膵癌細胞増殖スピード(=腫瘍体積の増加)の個体間での均一化に成功したことで、以下の特徴を有するヒト膵癌マウスモデルの利用を可能とした:
(1)ほぼ100%の成功率で大きさのそろった腫瘍を形成することができる。ハイスループット化に対応している。腫瘍体積のバラツキが極めて小さいため、正確な薬効評価が可能である(腫瘍体積がそろわないことが問題であったオルガノイド移植モデルの中で初めて腫瘍体積が安定したモデルを樹立できた);
(2)腫瘍から出血しないため、腫瘍径の測定を正確に実施できる;
(3)血清CA19-9を薬効評価のマーカーとして用いることにより、薬効評価を充実させることができる。
1.本発明に係るマウスモデルの作製
1-1.膵癌オルガノイドの作製
本発明における膵癌オルガノイドは、特許文献1に記載の方法に準じて作製することができる。
ここで、「膵癌オルガノイド」とは、膵癌細胞とその他の細胞から構成される細胞凝集体である。複数の細胞間での細胞間相互作用を再現することが可能である。本発明における膵癌オルガノイドは、膵癌微小環境を再現するものであり、例えば、間質が豊富である。
多くの場合、癌組織は、癌細胞の他に間質と呼ばれる部分がある。間質には、線維芽細胞等の間葉系細胞の他、血管、リンパ管、神経等を構成する細胞(血液細胞、血管細胞、免疫細胞等)、炎症をつかさどる細胞(炎症細胞)等の多種類の細胞、これらの細胞の間に存在するコラーゲン等から成る結合組織が存在して、特徴的な構造を形成している。これを「癌微小環境」と呼ぶ。
本発明における膵癌オルガノイドは、癌間質を含む癌微小環境を再現するとよい。S2-013細胞は膵管腺癌由来であり、腺癌組織では腺管構造を有する成分も認められる。本発明における膵癌オルガノイドは、癌微小環境の他、さらに、腺管構造を再現するとよい。
本発明における膵癌オルガノイドは、ヒト膵癌細胞株S2-013を間葉系細胞及び血管内皮細胞と共培養することにより作製することができる。培養は、三次元(3D)培養であるとよい。本発明における膵癌オルガノイドの再構成に適した3D培養技術は、Nature,25;499(7459):481-4,2013、Nat Protoc.9(2):396-409,2014、Cell Stem Cell,7;16(5):556-65,2015等で報告されている。
本発明において使用する「ヒト膵癌細胞株S2-013」は、東北大学加齢医学研究所 医用細胞資源センター・細胞バンク(〒980-8575日本国宮城県仙台市青葉区星陵町4-1 東北大学加齢医学研究所 医用細胞資源センター)においてID:TKG0709;細胞名:S2-013として保有されており、ここより入手することができる。
本発明において「血管内皮細胞」とは、血管内皮を構成する細胞、又はそのような細胞に分化することのできる細胞をいう。ある細胞が血管内皮細胞であるかどうかは、マーカータンパク質、例えば、TIE2、VEGFR-1、VEGFR-2、VEGFR-3、CD41が発現しているかどうかを調べることにより確認できる(前記マーカータンパク質のいずれか一つあるいは複数が発現していれば血管内皮細胞であると判断できる)。本発明において用いる血管内皮細胞は、分化したものであっても、未分化なものであってもよい。血管内皮細胞が、分化した細胞であるかどうかは、CD31、CD144により、確認することができる。当業者間で使用されている用語のうち、endothelial cells、umbilical vein endothelial cells、endothelial progenitor cells、endothelial precursor cells、vasculogenic progenitors、hemangioblast(HJ.joo,et al.Blood.25;118(8):2094-104.(2011))等は本発明における血管内皮細胞に含まれる。好ましい血管内皮細胞は、臍帯静脈由来の血管内皮細胞である。血管内皮細胞は、血管から採取したり、あるいは、人工多能性幹細胞(iPS細胞)、胚性幹細胞(ES細胞)等の多能性幹細胞から公知の方法に従って作製することができる。血管内皮細胞は、主としてヒト由来のものを用いるが、ヒト以外の動物(例えば、実験動物、愛玩動物、使役動物、競走馬、闘犬などに利用される動物、具体的には、マウス、ラット、ウサギ、ブタ、イヌ、サル、ウシ、ウマ、ヒツジ、ニワトリ、サメ、エイ、ギンザメ、サケ、エビ、カニ等)由来の血管内皮細胞を用いてもよい。
本発明において「間葉系細胞」とは、主として中胚葉に由来する結合織に存在し、組織で機能する細胞の支持構造を形成する結合織細胞であるが、間葉系細胞への分化運命が決定しているが、まだ間葉系細胞へ分化していない細胞も含む概念である。本発明において用いる間葉系細胞は、分化したものであっても、未分化なものであってもよい。ある細胞が未分化間葉系細胞であるかどうかは、マーカータンパク質、例えば、Stro-1、CD29、CD44、CD73、CD90、CD105、CD133、CD271、Nestinが発現しているかどうかを調べることにより確認できる(前記マーカータンパク質のいずれか一つあるいは複数が発現していれば未分化間葉系細胞であると判断できる)。また、前項のマーカーのいずれも発現していない間葉系細胞は分化間葉系細胞と判断できる。当業者間で使用されている用語のうち、mesenchymal stem cells、mesenchymal progenitor cells、mesenchymal cells(R.Peters,et al.PLoS One.30;5(12):e15689.(2010))等は本発明における間葉系細胞に含まれる。好ましい間葉系細胞は、骨髄由来の間葉系細胞(特に、間葉系幹細胞)である。間葉系細胞は、骨髄、脂肪組織、胎盤組織、臍帯組織、歯髄等の組織から採取したり、あるいは、人工多能性幹細胞(iPS細胞)、胚性幹細胞(ES細胞)等の多能性幹細胞から公知の方法に従って作製することができる。間葉系細胞は、主としてヒト由来のものを用いるが、ヒト以外の動物(例えば、実験動物、愛玩動物、使役動物、競走馬、闘犬等に利用される動物、具体的には、マウス、ラット、ウサギ、ブタ、イヌ、サル、ウシ、ウマ、ヒツジ、ニワトリ、サメ、エイ、ギンザメ、サケ、エビ、カニ等)由来の未分化間葉系細胞を用いてもよい。
共培養における三種類の細胞の培養比は膵癌オルガノイドが形成できる範囲内であれば特に限定されないが、好適な細胞の数比は、ヒト膵癌細胞株S2-013:血管内皮細胞:間葉系細胞=10:1~100:1~100であり、より好適には、ヒト膵癌細胞株S2-013:血管内皮細胞:間葉系細胞=10:1~100:5~100である。ヒト膵癌細胞株S2-013を20万個程度、血管内皮細胞を14万個程度、間葉系細胞を40万個程度で共培養して、大きさが50~50000マイクロメートル程度の膵癌オルガノイドを形成させることができる。
培養の際に使用する培地は、膵癌オルガノイドが形成されるものであればどのようなものでもよいが、血管内皮細胞培養用の培地、癌細胞培養用の培地、前記2つの培地を混合したもの等を使用することが好ましい。血管内皮細胞培養用の培地はどのようなものを使用してもよいが、hEGF(組換えヒト上皮細胞成長因子)、VEGF(血管内皮細胞成長因子)、ヒドロコルチゾン、bFGF、アスコルビン酸、IGF1、FBS、Antibiotics(例えば、ゲンタマイシン、アンフォテリシンB等)、Heparin、L-Glutamine、Phenolred、BBEの少なくとも1種を含むものを使用するのが好ましい。血管内皮細胞培養用の培地としては、EGM-2 BulletKit(Lonza社製)、EGM BulletKit(Lonza社製)、VascuLife EnGS Comp Kit(LCT社製)、Human Endothelial-SFM Medium(Thermo Fisher Scientific社製)、ヒト微小血管内皮細胞増殖培地(TOYOBO社製)等を用いることができる。癌細胞培養用の培地はどのようなものを使用してもよく、例えば、DMEM培地が挙げられる。特に、膵癌オルガノイドの作製には、EGM:DMEM=1:1の培地が適している。
細胞の培養にあたっては、足場材料を用いる必要はないが、三種類の細胞の混合物を間葉系細胞が収縮可能なゲル状支持体上で培養するとよい。
間葉系細胞の収縮は、(顕微鏡、ないし肉眼で)形態学的に立体組織形成を認めることや、薬さじ等による回収に伴い組織の形状が保たれる強度を有することを示す等(Takebe et al.Nature 499(7459),481-484,2013))のようにして確認することができる。
支持体は、適正な硬さ(例えば、ヤング率200kPa以下(マトリゲルをコートした形状が平坦なゲルの場合等)であるが、支持体の適正な硬さはコーティングと形状によって変化しうる)を有するゲル状基材であるとよく、そのような基材としては、ハイドロゲル(例えば、アクリルアミドゲル、ゼラチン、マトリゲル等)等を例示することができるが、それらに限定されることはない。なお、目的とする集合体の形・サイズ・量に応じて、支持体の硬さは均一である必然性はなく、硬さに空間的・時間的な勾配を設定することやパターン化することが可能である。支持体の硬さが均一である場合には、支持体の硬さは、好ましくは、100kPa以下、より好ましくは1~50kPaである。ゲル状支持体は、平面であってもよいし、あるいは、ゲル状支持体の培養する側の断面がU又はV字の形状であるとよい。ゲル状支持体の培養する側の断面がU又はV字の形状であることにより、支持体の培養面に細胞が集まるようになり、より少ない数の細胞及び/又は組織で細胞集合体が形成されるので有利である。また、支持体に、化学的・物理的な修飾を施してもよい。修飾物質としては、マトリゲル、ラミニン、エンタクチン、コラーゲン、フィブロネクチン、ビトロネクチン等を例示することができる。
ゲル状培養支持体の硬さに空間的な勾配を設定した一例は、中心部の硬さが周辺部の硬さより固いゲル状培養支持体である。中心部の硬さは、200kPa以下が適正であり、周辺部の硬さは、中心部より柔らかければよいが、支持体の中心部と周辺部の適正な硬さはコーティングと形状によって変化しうる。ゲル状培養支持体の硬さに空間的な勾配を設定した別の一例は、周辺部の硬さが中心部の硬さより固いゲル状培養支持体である。
パターン化したゲル状培養支持体の一例は、中心部の硬さが周辺部の硬さより固いというパターンを1個以上有するゲル状培養支持体である。中心部の硬さは、200kPa以下が適正であり、周辺部の硬さは、中心部より柔らかければよいが、支持体の中心部と周辺部の適正な硬さはコーティングと形状によって変化しうる。パターン化したゲル状培養支持体の別の一例は、周辺部の硬さが中心部の硬さより固いというパターンを1個以上有するゲル状培養支持体である。周辺部の硬さは、200kPa以下が適正であり、中心部の硬さは、周辺部より柔らかければよいが、支持体の中心部と周辺部の適正な硬さはコーティングと形状によって変化しうる。
培養時の温度は特に限定されないが、30~40℃とするのが好ましく、37℃とするのが更に好ましい。
培養期間は特に限定されないが、1~60日とするのが好ましく、1~7日とするのが更に好ましい。
1-2.マウスモデルの作製
上述の膵癌微小環境を再現する、再構成された膵癌オルガノイドをマウスに移植することにより、腺管構造および膵癌微小環境を再現する、ヒト膵癌マウスモデル(ゼノグラフトモデル)を作製することができる。
本発明において使用するマウスとしては、例えばBALB/cSlc-nu/nuマウス等が挙げられる。
上述のように作製し、実体顕微鏡観察により円形の膵癌オルガノイドが形成されたことを確認し、当該円形の膵癌オルガノイドをマウス皮下に移植する。移植は、従来のゼノグラフト移植方法に準じて行うことができる。例えば移植の2~10週間後、マウスにおいて腫瘍組織が十分に形成され、ヒト膵癌マウスモデルとして使用することができる。
2.ヒト膵癌マウスモデルの用途
以上に説明した本発明に係るマウスモデルは、ヒト膵癌に類似する膵癌を有することから、ヒト膵癌の病態モデルマウスとして利用することができる。例えば、ヒト膵癌の発症メカニズム又は病態の解明、膵癌治療剤(抗癌剤)のスクリーニングや膵癌治療剤の薬効の評価、および膵癌診断マーカーのスクリーニングや有用性の評価に用いることができる。
例えば、膵癌治療剤のスクリーニングは、本発明に係るマウスモデルに治療剤候補化合物である被験物質を経口等の適当な投与経路により投与し、当該マウスモデルにおいて膵癌の大きさ、浸潤、遠隔転移の数、マウスの死等を観察することにより被験物質の効果を判定することができる。同様に、膵癌治療剤の薬効の評価は、本発明に係るマウスモデルに評価対象の膵癌治療剤を経口等の適当な投与経路により投与し、当該マウスモデルにおいて膵癌の大きさ、浸潤、遠隔転移の数、マウスの死等を観察することにより当該膵癌治療剤の薬効を評価することができる。
また、本発明に係るマウスモデルから採取した血清において、膵癌診断マーカーが臨床的な膵癌と同様の挙動を示す。従って、本発明に係るマウスモデルは、当該マウスモデルから採取した血清等の生物学的サンプルにおける膵癌診断マーカーの有用性の評価又は膵癌診断マーカーのスクリーニングに用いることができる。
例えば、膵癌診断マーカーの有用性の評価は、本発明に係るマウスモデルから採取した血清等の生物学的サンプルを、評価対象の膵癌診断マーカーに対する抗体を用いた免疫学的測定方法等に供し、タンパク質レベルで当該膵癌診断マーカーを測定する。測定した膵癌診断マーカーレベル(血清等の生物学的サンプル中の濃度)が、陰性対照(例えば、膵癌オルガノイドを担持しないこと以外、本発明に係るマウスモデルと同一のマウス由来の血清等の生物学的サンプル)と比較して、評価対象の膵癌診断マーカーに準じた有意な変動(増加又は低下)が見られるか否かを判定することにより、膵癌診断マーカーの有用性を評価することができる。
同様に、膵癌診断マーカーのスクリーニングは、本発明に係るマウスモデルから採取した血清等の生物学的サンプルを、膵癌診断マーカー候補に対する抗体を用いた免疫学的測定方法等に供し、タンパク質レベルで当該膵癌診断マーカー候補を測定する。測定した膵癌診断マーカー候補レベル(血清等の生物学的サンプル中の濃度)が、陰性対照(例えば、膵癌オルガノイドを担持しないこと以外、本発明に係るマウスモデルと同一のマウス由来の血清等の生物学的サンプル)と比較して、有意に変動(増加又は低下)していることによって、当該膵癌診断マーカー候補を、膵癌診断マーカーとして同定することができる。
ここで、免疫学的測定方法としては、特に限定されるものではないが、例えばELISA、フローサイトメトリー、ウェスタンブロッティング等が挙げられる。
以下、実施例を用いて本発明をより詳細に説明するが、本発明の技術的範囲はこれら実施例に限定されるものではない。
〔ヒト膵癌マウスモデルの作製とその評価〕
1.材料及び方法
1-1.細胞
使用した細胞は、ヒト膵癌細胞株S2-013(以下、「S2-013」と称する場合がある)、ヒト臍帯静脈内皮細胞HUVEC(LONZA)(以下、「HUVEC」と称する場合がある)及びヒト間葉系幹細胞MSC(LONZA)(以下、「MSC」と称する場合がある)であった。
S2-013はDMEM培地にて培養した。HUVECはEGM-2・HUVEC用培地にて培養した。MSCはMSCGM培地にて培養した。
1-2.膵癌オルガノイドの作製
培養中のS2-013、MSC及びHUVECを、トリプシンを用いて1種類づつ順番に回収した。S2-013は0.5%トリプシン(SIGMA)を用いて剥離し、またMSCとHUVECは0.05%トリプシン(gibco)を用いて剥離した。各細胞の状態に合わせてトリプシン処理の時間を調節した。次いで、FCS入りのDMEMにてトリプシンを中和し、遠心後に培養液を出来る限り抜いた。それぞれの細胞にあった培養液で懸濁した後、トリパンブルーと細胞懸濁液を1.5mLアシストtube内で当量混ぜ、そのうち10μLを用いて血球計算版にてセルカウントを行った。
生細胞率と細胞数を確認した後、オルガノイド1個につき15mLのファルコンチューブ1本を用いて、各細胞を必要量分注した。分注後は氷上に保管した。オルガノイド1個あたりに必要な細胞数は、S2-013:20×104個、MSC:40×104個、HUVEC:14×104個であった。
一方、あらかじめ冷やしておいたDMEMにマトリゲルを当量加えた。マトリゲルが固まらないように、よく冷えたPBSで濡らしたピペットチップを用いた。DMEM/マトリゲル混合溶液をよく混ぜ、氷上に置いた。
次いで、48well plateを良く冷えたPBS 200μL/wellで濡らし、wellからPBSを取り除いた後、DMEM/マトリゲル混合溶液を160μL/wellアプライした。その際、気泡はチップの先端などでつぶし、液面が平らなことを確認した後、CO2インキュベータで37℃1時間Incubateした。
上述の分注により準備した3種類の細胞の混合液をよく混ぜ、室温で600g5分遠心し、パスツールに10μLチップをつけたものを用いて上清を出来る限り取り除いた。次いで、インキュベートが終わった48wellの各wellに細胞混合液を含有するファルコンチューブ1本ずつアプライした。この際泡が入ったり、割れたりしないように注意した。
細胞混合液をアプライした48well plateを、CO2インキュベータで37℃30分インキュベートした。インキュベーションの待ち時間の間に、DMEMとEGMを当量で混ぜたDMEM/EGM混合溶液を作った。Incubate終了後、DMEM/EGM混合溶液を300μL/wellアプライして、マトリゲルとの間に気泡が入っていないか確認してから、再びplateをCO2インキュベータへ入れ37℃24時間Incubateした。
このようにして、48well plateの各wellに膵癌オルガノイドを1個ずつ作製した。
1-3.ヒト膵癌マウスモデルの作製
第1-2節において前日に用意しておいた膵癌オルガノイドを顕微鏡で観察し、収縮しているか、割れていないかなど使用できる形状かを確認した。マトリゲル/DMEM混合溶液を作製し、1.5mLtubeに50μL/tubeで分注した。膵癌オルガノイドの数と同量の本数用意し、氷上に置いた。
6週齢のヌードマウス(BALB/cSlc-nu/nu)を日本エスエルシー株式会社から購入し、高知大学研究機関内動物管理使用ガイドラインに従って扱った。麻酔した当該ヌードマウスの脇腹の皮膚を5-8mm程度切開し、止血鉗子にて皮下を鈍的剥離して、ヒト膵癌オルガノイドが入る程度の大きさのポケットを作った。
1000μLチップを冷えたPBSで濡らし、膵癌オルガノイドを培養した48wellプレートから培地とゲルを取り除いた。次いで、あらかじめ先を切って滅菌処理をした200μLチップを冷えたPBSで濡らし、膵癌オルガノイドを吸い取り、最初に用意したDMEM/マトリゲル混合溶液入りのチューブに入れた。膵癌オルガノイドの入った混合溶液を全量、作製したヌードマウスの脇腹の皮下のポケットにアプライし縫合した。
このようにして、ヒト膵癌マウスモデルを作製した。
1-4.ヒト膵癌マウスモデルへのTS-1の投与
第1-3節で説明するように、ヒト膵癌細胞株S2-013由来のヒト膵癌オルガノイドをヌードマウス脇腹の皮下に移植した。ヒト膵癌マウスモデルを2群に分け、移植の翌週から、6匹に対して膵癌の標準化学療法薬であるTS-1(10mg/kg)を5日/週の頻度で経口投与した。4週間の薬剤投与後、2週間休薬し、再び2週間投与した。また、コントロール群として6匹には薬剤を投与せず観察のみした。
移植の2週間後から毎週、膵癌組織の腫瘍径の計測と写真撮影を行った。移植から8週間後における各マウスの写真を図14に、各群マウスの腫瘍径の経時的変化を図15に示す。図15中、「*」はt-テストにおいてコントロール群に対してp<0.05で有意差があることを示す。表には摘出したヒト膵癌の病理組織学的所見を示す。
1-5.ヒト膵癌マウスモデルから採取した血清における膵癌診断マーカーの測定
第1-3節で説明するように、ヒト膵癌細胞株S2-013由来のヒト膵癌オルガノイドをヌードマウス脇腹の皮下に移植した。ヒト膵癌マウスモデルを2群に分け、1群目の5匹のヒト膵癌マウスモデルでは腫瘍径が平均5mmの膵癌オルガノイドを移植後4週後に全血採血を行った。2群目の5匹のヒト膵癌マウスモデルでは腫瘍径が平均20mmの膵癌オルガノイドを移植後8週後に全血採血を行った。コントロール群としてヒト膵癌オルガノイドを移植していないヌードマウス5匹から全血採血を行った。
全ての血液から血清を分離して冷凍保存した。次いで、全ての血清中CA19-9濃度を市販のELISAキット(EIA-5069,DRG)を用いて測定した。
2.結果
2-1.ヒト膵癌マウスモデルから摘出した腫瘍組織の病理組織学的検討
上記のように、ヒト膵癌細胞株S2-013を用いて膵癌オルガノイドを作製し、マウス皮下に移植した。図1、2、3に示すように、膵癌オルガノイドをマウス皮下に移植してから6週間経過観察を行い、腫瘍組織を摘出した。腫瘍組織は経時的に増大していった。
摘出した腫瘍組織の組織標本を作製して病理組織学的検討を行った。ヒト膵癌組織の最大の特徴は豊富な癌間質である。癌間質の中で膵癌細胞は活発に動き回り、周囲組織に浸潤していく。図4に示すように、上記のように作製した膵癌オルガノイドを担持したヒト膵癌マウスモデルから摘出した腫瘍組織では、ヒト膵癌オルガノイド由来の癌間質が豊富に存在し、腺腔構造・微小乳頭状構造を呈する部分が混在していた。癌間質を伴った膵癌細胞の浸潤像が見られた。一方、従来のXenograftを担持したマウスから摘出した腫瘍組織では、充実性の部分がほとんどであり、腺腔構造と癌間質に乏しく、腺癌の組織とは言えなかった。
なお、本実施例において、「従来のXenograftを担持したマウス」とは、S2-013細胞の浮遊液をヌードマウスの脇腹の皮下に注射して腫瘍を形成させる異所移植モデルであった。
従来のXenograftを担持したマウス:6週齢のヌードマウス(BALB/cSlc-nu/nu)を用いた。PBSに浮遊させた2.0×106個のS2-013細胞を麻酔した当該ヌードマウスの脇腹に皮下注射することにより、マウス皮下に腫瘍を形成させた。
図5に示すように、上記のように作製した膵癌オルガノイドを担持したヒト膵癌マウスモデルから摘出した腫瘍組織では、腺腔((A)の左の写真)及び微小乳頭状構造((A)の右の写真)からも、腺癌であることは明らかであった。一方、従来のXenograftを担持したマウスから摘出した腫瘍組織では、腺管構造や乳頭状構造がほとんどなく、腺癌への分化に乏しかった((B)の写真)。
図6に示すように、上記のように作製した膵癌オルガノイドを担持したヒト膵癌マウスモデルから摘出した腫瘍組織では、豊富な癌間質を伴った筋層と皮下への細胞浸潤を認めた((A)の写真)。一方、従来のXenograftを担持したマウスから摘出した腫瘍組織では、筋層への細胞浸潤を認めるが、癌間質は乏しかった((B)の写真)。
図7に示すように、上記のように作製した膵癌オルガノイドを担持したヒト膵癌マウスモデルから摘出した腫瘍組織では、腫瘍近傍の脈管侵襲(図左)及び皮下リンパ節への転移(図右)を認めた。一方、従来のXenograftを担持したマウスから摘出した腫瘍組織では、脈管侵襲とリンパ節転移が見られなかった。
図8に示すように、上記のように作製した膵癌オルガノイドを担持したヒト膵癌マウスモデルから摘出した腫瘍組織では、上皮間葉転換(EMT)が見られた((A)の写真:点線の枠内)。膵癌でよく発現しているCK19の染色性も同部では低く((C)の写真)、逆にvimentinが発現していた((D)の写真)。腫瘍細胞はCK19(+),vimentin(-)である。EMTは浸潤と転移に関与する。間質茎を伴った乳頭状構造も一部にみられた((B)の写真)。
図9に示すように、従来のXenograftを担持したマウスから摘出した腫瘍組織においては、膵癌組織の分化は全体に均一で、部位ごとの分化のバリエーションが見られなかった。EMT像や間質茎を伴った乳頭状構造もなかった。腫瘍細胞はCK19(+),vimentin(-)であり、膵癌オルガノイド腫瘍と同様の所見だった。しかし、Vimentin発現は全体的に膵癌オルガノイド腫瘍より強かった。分化のバリエーションがなく、ほぼ均一であることが最大の特徴であり、分化のバリエーションと癌間質が豊富である臨床的膵癌組織と乖離していた。
図10に示すように、膵癌患者から手術摘出された膵癌組織において豊富な癌間質を伴う膵癌細胞が腺管構造形成して膵臓内脂肪組織への浸潤がみられた。図4に示したように、ヒト膵癌マウスモデルから摘出した腫瘍組織は臨床的な膵癌と類似しており、ヒト膵癌マウスモデルは臨床的な膵癌と乖離していないモデルマウスであった。
図11に示すように、膵癌患者から手術摘出された膵癌組織において乳頭状構造を認めた。図5に示したように、ヒト膵癌マウスモデルから摘出した腫瘍組織においても乳頭状構造は見られた。
図12に示すように、膵癌患者から手術摘出された膵癌組織において腹腔内のリンパ節転移が散見された。図7に示したように、ヒト膵癌マウスモデルから摘出した腫瘍組織においてもリンパ節転移は見られた。
図13に示すように、膵癌患者から手術摘出された膵癌組織においてEMTが散見された。図8に示したように、ヒト膵癌マウスモデルから摘出した腫瘍組織においてもEMTは見られた。一方、従来のXenograftを担持したマウスから摘出した腫瘍組織においては臨床的な膵癌の所見である(1)豊富な癌間質を伴う膵癌細胞の浸潤、(2)腺癌の性質である腺管構造・乳頭状構造、(3)脈管侵襲、リンパ節転移、及び(4)EMTのいずれの所見も見られなかった。
2-2.ヒト膵癌マウスモデルへのTS-1の投与による抗腫瘍効果の観察
上記のように作製したヒト膵癌マウスモデルへ、術後膵癌の第一選択薬であるTS-1を投与して抗腫瘍効果を観察した。ヒト膵癌モデルマウスへの投与後、腫瘍径の経時的計測と病理組織学的検討を行った。ヒト膵癌マウスモデルへのTS-1の投与方法は、マウスの体重当たり10mg/kgのTS-1を週5日4週間投与し2週間休薬を1コースとして実験期間の間投与を繰り返した。
結果を図14及び15に示す。
図14、15に示すように、TS-1を8週間投与したヒト膵癌マウスモデル群の皮下に形成された膵癌腫瘍の体積は、コントロール群に比較して移植後7週目から有意に抑制された。
また、ヒト膵癌オルガノイドの皮下への移植後8週目に各マウスを解剖して、マウス脇腹に形成された腫瘍組織をホルマリン固定し、ヘマトキシリン-エオシン染色を行った。病理組織学的検討の結果を図15の(B)表に示す。図15の(B)表に示すように、TS-1は脈管侵襲・筋層浸潤の抑制効果においてコントロール群と差を認めなかった。TS-1を経口投与したヒト膵癌マウスモデル群では、コントロール群と比較して壊死による嚢胞化が顕著であった。これらの結果は、TS-1が細胞増殖抑制することにより腫瘍増大を抑制する実臨床で得られている薬効と一致した所見であった。ヒト膵癌マウスモデルは、従来のXenograftモデルで問題になっていた臨床の膵癌組織との乖離を解決することができ、膵癌新薬の薬効評価を行う際、正確な情報を提供できることが示された。
2-3.ヒト膵癌マウスモデルから採取した血清における膵癌診断マーカーの測定
膵癌腫瘍マーカーCA19-9の血清濃度を、上記のように作製したヒト膵癌マウスモデルから採取した血清において測定した。
ヒト膵癌マウスモデルから、移植後4週目、8週目及び10週目に採血し、膵癌診断マーカーの血清濃度の測定を行った。
図16に示すように、ヒト膵癌マウスモデルから採取した血清中のCA19-9濃度は経時的に上昇した。腫瘍組織から血液中に漏れ出たCA19-9を検出することができ、腫瘍が大きくなるにつれて濃度も上昇した。
このように、新規の膵癌診断マーカー同定を目指す研究において、ヒト膵癌マウスモデルの血清濃度を経時的に測定することにより、有望な診断マーカーであることの評価に役立つ情報を提供することができる。
2-4.従来のXenograftを担持したマウスへのTS-1の投与による抗腫瘍効果の観察
従来のXenograftを担持したマウスへ、TS-1を8週間投与して抗腫瘍効果を観察した。Xenograftを担持したマウスへの投与後、腫瘍径の経時的計測を行った。
図17に示すように、TS-1を投与したXenograftを担持したマウス群の皮下に形成された膵癌腫瘍の体積は、コントロール群に比較して抑制されなかった。また、皮下の腫瘍組織から出血して掘れ込んでおり腫瘍増大を観察するモデルとして不適格であると思われた。一方、図14に示したようにヒト膵癌マウスモデル群の皮下に形成された膵癌腫瘍には出血は見られなかった。
図18に示すように、従来のXenograftを担持したマウスではTS-1の腫瘍増殖を抑制する効果を検出できなかった。
2-5.従来のXenograftを担持したマウスから採取した血清における膵癌診断マーカーの測定
膵癌腫瘍マーカーCA19-9の血清濃度を、従来のXenograftを担持したマウスから採取した血清において測定した。
従来のXenograftを担持したマウスから、移植後4週目及び8週目に採血し、膵癌診断マーカーの血清濃度の測定を行った。
図19に示すように、従来のXenograftを担持したマウスから採取した血清中のCA19-9濃度は経時的な上昇を示さなかった。腫瘍から出血がみられたが、腫瘍は経時的に大きくなっているにも関わらず、腫瘍組織から血液中に漏れ出たCA19-9は経時的に濃度が低下した。
3.まとめ
膵癌オルガノイドを担持したヒト膵癌マウスモデルのヒト膵癌組織は、臨床的な膵癌組織と組織構築が極めて類似しており、ヒト膵癌由来の癌間質が豊富に存在していた。
また、膵癌オルガノイドを担持したヒト膵癌マウスモデルに膵癌術後治療の第一選択薬であるTS-1の投与を行ったところ、TS-1は膵癌腫瘍の増大を抑制するが、周囲組織への浸潤抑制の効果は低いことを明らかにすることができた。TS-1が膵癌の特徴である「癌間質を伴う強力な浸潤」を十分に抑制することができず薬効に限界がある根拠を示すことができた。
さらに、膵癌オルガノイドを担持したヒト膵癌マウスモデルは、従来のモデルで問題になっていた臨床の膵癌組織との乖離を解決することができ、膵癌新薬の薬効評価を行う際、正確な情報を提供できる。
〔ヒト膵癌マウスモデルの作製とその評価〕
1.材料及び方法
1-1.細胞
使用した細胞は、ヒト膵癌細胞株S2-013(以下、「S2-013」と称する場合がある)、ヒト臍帯静脈内皮細胞HUVEC(LONZA)(以下、「HUVEC」と称する場合がある)及びヒト間葉系幹細胞MSC(LONZA)(以下、「MSC」と称する場合がある)であった。
S2-013はDMEM培地にて培養した。HUVECはEGM-2・HUVEC用培地にて培養した。MSCはMSCGM培地にて培養した。
1-2.膵癌オルガノイドの作製
培養中のS2-013、MSC及びHUVECを、トリプシンを用いて1種類づつ順番に回収した。S2-013は0.5%トリプシン(SIGMA)を用いて剥離し、またMSCとHUVECは0.05%トリプシン(gibco)を用いて剥離した。各細胞の状態に合わせてトリプシン処理の時間を調節した。次いで、FCS入りのDMEMにてトリプシンを中和し、遠心後に培養液を出来る限り抜いた。それぞれの細胞にあった培養液で懸濁した後、トリパンブルーと細胞懸濁液を1.5mLアシストtube内で当量混ぜ、そのうち10μLを用いて血球計算版にてセルカウントを行った。
生細胞率と細胞数を確認した後、オルガノイド1個につき15mLのファルコンチューブ1本を用いて、各細胞を必要量分注した。分注後は氷上に保管した。オルガノイド1個あたりに必要な細胞数は、S2-013:20×104個、MSC:40×104個、HUVEC:14×104個であった。
一方、あらかじめ冷やしておいたDMEMにマトリゲルを当量加えた。マトリゲルが固まらないように、よく冷えたPBSで濡らしたピペットチップを用いた。DMEM/マトリゲル混合溶液をよく混ぜ、氷上に置いた。
次いで、48well plateを良く冷えたPBS 200μL/wellで濡らし、wellからPBSを取り除いた後、DMEM/マトリゲル混合溶液を160μL/wellアプライした。その際、気泡はチップの先端などでつぶし、液面が平らなことを確認した後、CO2インキュベータで37℃1時間Incubateした。
上述の分注により準備した3種類の細胞の混合液をよく混ぜ、室温で600g5分遠心し、パスツールに10μLチップをつけたものを用いて上清を出来る限り取り除いた。次いで、インキュベートが終わった48wellの各wellに細胞混合液を含有するファルコンチューブ1本ずつアプライした。この際泡が入ったり、割れたりしないように注意した。
細胞混合液をアプライした48well plateを、CO2インキュベータで37℃30分インキュベートした。インキュベーションの待ち時間の間に、DMEMとEGMを当量で混ぜたDMEM/EGM混合溶液を作った。Incubate終了後、DMEM/EGM混合溶液を300μL/wellアプライして、マトリゲルとの間に気泡が入っていないか確認してから、再びplateをCO2インキュベータへ入れ37℃24時間Incubateした。
このようにして、48well plateの各wellに膵癌オルガノイドを1個ずつ作製した。
1-3.ヒト膵癌マウスモデルの作製
第1-2節において前日に用意しておいた膵癌オルガノイドを顕微鏡で観察し、収縮しているか、割れていないかなど使用できる形状かを確認した。マトリゲル/DMEM混合溶液を作製し、1.5mLtubeに50μL/tubeで分注した。膵癌オルガノイドの数と同量の本数用意し、氷上に置いた。
6週齢のヌードマウス(BALB/cSlc-nu/nu)を日本エスエルシー株式会社から購入し、高知大学研究機関内動物管理使用ガイドラインに従って扱った。麻酔した当該ヌードマウスの脇腹の皮膚を5-8mm程度切開し、止血鉗子にて皮下を鈍的剥離して、ヒト膵癌オルガノイドが入る程度の大きさのポケットを作った。
1000μLチップを冷えたPBSで濡らし、膵癌オルガノイドを培養した48wellプレートから培地とゲルを取り除いた。次いで、あらかじめ先を切って滅菌処理をした200μLチップを冷えたPBSで濡らし、膵癌オルガノイドを吸い取り、最初に用意したDMEM/マトリゲル混合溶液入りのチューブに入れた。膵癌オルガノイドの入った混合溶液を全量、作製したヌードマウスの脇腹の皮下のポケットにアプライし縫合した。
このようにして、ヒト膵癌マウスモデルを作製した。
1-4.ヒト膵癌マウスモデルへのTS-1の投与
第1-3節で説明するように、ヒト膵癌細胞株S2-013由来のヒト膵癌オルガノイドをヌードマウス脇腹の皮下に移植した。ヒト膵癌マウスモデルを2群に分け、移植の翌週から、6匹に対して膵癌の標準化学療法薬であるTS-1(10mg/kg)を5日/週の頻度で経口投与した。4週間の薬剤投与後、2週間休薬し、再び2週間投与した。また、コントロール群として6匹には薬剤を投与せず観察のみした。
移植の2週間後から毎週、膵癌組織の腫瘍径の計測と写真撮影を行った。移植から8週間後における各マウスの写真を図14に、各群マウスの腫瘍径の経時的変化を図15に示す。図15中、「*」はt-テストにおいてコントロール群に対してp<0.05で有意差があることを示す。表には摘出したヒト膵癌の病理組織学的所見を示す。
1-5.ヒト膵癌マウスモデルから採取した血清における膵癌診断マーカーの測定
第1-3節で説明するように、ヒト膵癌細胞株S2-013由来のヒト膵癌オルガノイドをヌードマウス脇腹の皮下に移植した。ヒト膵癌マウスモデルを2群に分け、1群目の5匹のヒト膵癌マウスモデルでは腫瘍径が平均5mmの膵癌オルガノイドを移植後4週後に全血採血を行った。2群目の5匹のヒト膵癌マウスモデルでは腫瘍径が平均20mmの膵癌オルガノイドを移植後8週後に全血採血を行った。コントロール群としてヒト膵癌オルガノイドを移植していないヌードマウス5匹から全血採血を行った。
全ての血液から血清を分離して冷凍保存した。次いで、全ての血清中CA19-9濃度を市販のELISAキット(EIA-5069,DRG)を用いて測定した。
2.結果
2-1.ヒト膵癌マウスモデルから摘出した腫瘍組織の病理組織学的検討
上記のように、ヒト膵癌細胞株S2-013を用いて膵癌オルガノイドを作製し、マウス皮下に移植した。図1、2、3に示すように、膵癌オルガノイドをマウス皮下に移植してから6週間経過観察を行い、腫瘍組織を摘出した。腫瘍組織は経時的に増大していった。
摘出した腫瘍組織の組織標本を作製して病理組織学的検討を行った。ヒト膵癌組織の最大の特徴は豊富な癌間質である。癌間質の中で膵癌細胞は活発に動き回り、周囲組織に浸潤していく。図4に示すように、上記のように作製した膵癌オルガノイドを担持したヒト膵癌マウスモデルから摘出した腫瘍組織では、ヒト膵癌オルガノイド由来の癌間質が豊富に存在し、腺腔構造・微小乳頭状構造を呈する部分が混在していた。癌間質を伴った膵癌細胞の浸潤像が見られた。一方、従来のXenograftを担持したマウスから摘出した腫瘍組織では、充実性の部分がほとんどであり、腺腔構造と癌間質に乏しく、腺癌の組織とは言えなかった。
なお、本実施例において、「従来のXenograftを担持したマウス」とは、S2-013細胞の浮遊液をヌードマウスの脇腹の皮下に注射して腫瘍を形成させる異所移植モデルであった。
従来のXenograftを担持したマウス:6週齢のヌードマウス(BALB/cSlc-nu/nu)を用いた。PBSに浮遊させた2.0×106個のS2-013細胞を麻酔した当該ヌードマウスの脇腹に皮下注射することにより、マウス皮下に腫瘍を形成させた。
図5に示すように、上記のように作製した膵癌オルガノイドを担持したヒト膵癌マウスモデルから摘出した腫瘍組織では、腺腔((A)の左の写真)及び微小乳頭状構造((A)の右の写真)からも、腺癌であることは明らかであった。一方、従来のXenograftを担持したマウスから摘出した腫瘍組織では、腺管構造や乳頭状構造がほとんどなく、腺癌への分化に乏しかった((B)の写真)。
図6に示すように、上記のように作製した膵癌オルガノイドを担持したヒト膵癌マウスモデルから摘出した腫瘍組織では、豊富な癌間質を伴った筋層と皮下への細胞浸潤を認めた((A)の写真)。一方、従来のXenograftを担持したマウスから摘出した腫瘍組織では、筋層への細胞浸潤を認めるが、癌間質は乏しかった((B)の写真)。
図7に示すように、上記のように作製した膵癌オルガノイドを担持したヒト膵癌マウスモデルから摘出した腫瘍組織では、腫瘍近傍の脈管侵襲(図左)及び皮下リンパ節への転移(図右)を認めた。一方、従来のXenograftを担持したマウスから摘出した腫瘍組織では、脈管侵襲とリンパ節転移が見られなかった。
図8に示すように、上記のように作製した膵癌オルガノイドを担持したヒト膵癌マウスモデルから摘出した腫瘍組織では、上皮間葉転換(EMT)が見られた((A)の写真:点線の枠内)。膵癌でよく発現しているCK19の染色性も同部では低く((C)の写真)、逆にvimentinが発現していた((D)の写真)。腫瘍細胞はCK19(+),vimentin(-)である。EMTは浸潤と転移に関与する。間質茎を伴った乳頭状構造も一部にみられた((B)の写真)。
図9に示すように、従来のXenograftを担持したマウスから摘出した腫瘍組織においては、膵癌組織の分化は全体に均一で、部位ごとの分化のバリエーションが見られなかった。EMT像や間質茎を伴った乳頭状構造もなかった。腫瘍細胞はCK19(+),vimentin(-)であり、膵癌オルガノイド腫瘍と同様の所見だった。しかし、Vimentin発現は全体的に膵癌オルガノイド腫瘍より強かった。分化のバリエーションがなく、ほぼ均一であることが最大の特徴であり、分化のバリエーションと癌間質が豊富である臨床的膵癌組織と乖離していた。
図10に示すように、膵癌患者から手術摘出された膵癌組織において豊富な癌間質を伴う膵癌細胞が腺管構造形成して膵臓内脂肪組織への浸潤がみられた。図4に示したように、ヒト膵癌マウスモデルから摘出した腫瘍組織は臨床的な膵癌と類似しており、ヒト膵癌マウスモデルは臨床的な膵癌と乖離していないモデルマウスであった。
図11に示すように、膵癌患者から手術摘出された膵癌組織において乳頭状構造を認めた。図5に示したように、ヒト膵癌マウスモデルから摘出した腫瘍組織においても乳頭状構造は見られた。
図12に示すように、膵癌患者から手術摘出された膵癌組織において腹腔内のリンパ節転移が散見された。図7に示したように、ヒト膵癌マウスモデルから摘出した腫瘍組織においてもリンパ節転移は見られた。
図13に示すように、膵癌患者から手術摘出された膵癌組織においてEMTが散見された。図8に示したように、ヒト膵癌マウスモデルから摘出した腫瘍組織においてもEMTは見られた。一方、従来のXenograftを担持したマウスから摘出した腫瘍組織においては臨床的な膵癌の所見である(1)豊富な癌間質を伴う膵癌細胞の浸潤、(2)腺癌の性質である腺管構造・乳頭状構造、(3)脈管侵襲、リンパ節転移、及び(4)EMTのいずれの所見も見られなかった。
2-2.ヒト膵癌マウスモデルへのTS-1の投与による抗腫瘍効果の観察
上記のように作製したヒト膵癌マウスモデルへ、術後膵癌の第一選択薬であるTS-1を投与して抗腫瘍効果を観察した。ヒト膵癌モデルマウスへの投与後、腫瘍径の経時的計測と病理組織学的検討を行った。ヒト膵癌マウスモデルへのTS-1の投与方法は、マウスの体重当たり10mg/kgのTS-1を週5日4週間投与し2週間休薬を1コースとして実験期間の間投与を繰り返した。
結果を図14及び15に示す。
図14、15に示すように、TS-1を8週間投与したヒト膵癌マウスモデル群の皮下に形成された膵癌腫瘍の体積は、コントロール群に比較して移植後7週目から有意に抑制された。
また、ヒト膵癌オルガノイドの皮下への移植後8週目に各マウスを解剖して、マウス脇腹に形成された腫瘍組織をホルマリン固定し、ヘマトキシリン-エオシン染色を行った。病理組織学的検討の結果を図15の(B)表に示す。図15の(B)表に示すように、TS-1は脈管侵襲・筋層浸潤の抑制効果においてコントロール群と差を認めなかった。TS-1を経口投与したヒト膵癌マウスモデル群では、コントロール群と比較して壊死による嚢胞化が顕著であった。これらの結果は、TS-1が細胞増殖抑制することにより腫瘍増大を抑制する実臨床で得られている薬効と一致した所見であった。ヒト膵癌マウスモデルは、従来のXenograftモデルで問題になっていた臨床の膵癌組織との乖離を解決することができ、膵癌新薬の薬効評価を行う際、正確な情報を提供できることが示された。
2-3.ヒト膵癌マウスモデルから採取した血清における膵癌診断マーカーの測定
膵癌腫瘍マーカーCA19-9の血清濃度を、上記のように作製したヒト膵癌マウスモデルから採取した血清において測定した。
ヒト膵癌マウスモデルから、移植後4週目、8週目及び10週目に採血し、膵癌診断マーカーの血清濃度の測定を行った。
図16に示すように、ヒト膵癌マウスモデルから採取した血清中のCA19-9濃度は経時的に上昇した。腫瘍組織から血液中に漏れ出たCA19-9を検出することができ、腫瘍が大きくなるにつれて濃度も上昇した。
このように、新規の膵癌診断マーカー同定を目指す研究において、ヒト膵癌マウスモデルの血清濃度を経時的に測定することにより、有望な診断マーカーであることの評価に役立つ情報を提供することができる。
2-4.従来のXenograftを担持したマウスへのTS-1の投与による抗腫瘍効果の観察
従来のXenograftを担持したマウスへ、TS-1を8週間投与して抗腫瘍効果を観察した。Xenograftを担持したマウスへの投与後、腫瘍径の経時的計測を行った。
図17に示すように、TS-1を投与したXenograftを担持したマウス群の皮下に形成された膵癌腫瘍の体積は、コントロール群に比較して抑制されなかった。また、皮下の腫瘍組織から出血して掘れ込んでおり腫瘍増大を観察するモデルとして不適格であると思われた。一方、図14に示したようにヒト膵癌マウスモデル群の皮下に形成された膵癌腫瘍には出血は見られなかった。
図18に示すように、従来のXenograftを担持したマウスではTS-1の腫瘍増殖を抑制する効果を検出できなかった。
2-5.従来のXenograftを担持したマウスから採取した血清における膵癌診断マーカーの測定
膵癌腫瘍マーカーCA19-9の血清濃度を、従来のXenograftを担持したマウスから採取した血清において測定した。
従来のXenograftを担持したマウスから、移植後4週目及び8週目に採血し、膵癌診断マーカーの血清濃度の測定を行った。
図19に示すように、従来のXenograftを担持したマウスから採取した血清中のCA19-9濃度は経時的な上昇を示さなかった。腫瘍から出血がみられたが、腫瘍は経時的に大きくなっているにも関わらず、腫瘍組織から血液中に漏れ出たCA19-9は経時的に濃度が低下した。
3.まとめ
膵癌オルガノイドを担持したヒト膵癌マウスモデルのヒト膵癌組織は、臨床的な膵癌組織と組織構築が極めて類似しており、ヒト膵癌由来の癌間質が豊富に存在していた。
また、膵癌オルガノイドを担持したヒト膵癌マウスモデルに膵癌術後治療の第一選択薬であるTS-1の投与を行ったところ、TS-1は膵癌腫瘍の増大を抑制するが、周囲組織への浸潤抑制の効果は低いことを明らかにすることができた。TS-1が膵癌の特徴である「癌間質を伴う強力な浸潤」を十分に抑制することができず薬効に限界がある根拠を示すことができた。
さらに、膵癌オルガノイドを担持したヒト膵癌マウスモデルは、従来のモデルで問題になっていた臨床の膵癌組織との乖離を解決することができ、膵癌新薬の薬効評価を行う際、正確な情報を提供できる。
本発明によれば、ヒト膵癌の特徴を示す膵癌マウスモデルが提供される。また、本発明に係るマウスモデルを用いて、ヒト膵癌に有効な治療剤をスクリーニングすること、及び当該治療剤の薬効を評価することができる。さらに、本発明に係るマウスモデルの血清サンプルを用いて、膵癌診断マーカーをスクリーニングすること、及び当該マーカーの有用性を評価することができる。
また、本発明に係るマウスモデルは、以下の利点を有する:
(1)市販のヒト膵癌細胞株を用いることにより、ハイスループット化に対応している;
(2)3種類の細胞培養を開始した日から6週目にマウスモデルを供給可能である;
(3)購入可能なヒト膵癌細胞株を用いるので、手術摘出した患者由来の膵癌組織を必要としない;
(4)上記に詳細に説明するように、ヒト膵癌オルガノイドの作製及びマウス創出の技術は確立済みである;
(5)本発明に係るマウスモデルにおけるヒト膵癌組織は、臨床的な膵癌組織と組織構築が極めて類似しており、癌間質が豊富に存在し、血清CA19-9が高値を示す;
(6)患者の臨床データ、遺伝子発現プロファイルはないが、ヒト膵癌オルガノイド腫瘍の組織切片を販売できる;
(7)遺伝子発現プロファイルが必要な場合、ヒト膵癌オルガノイド腫瘍の組織切片を準備することが可能である;
(8)非臨床薬理試験における膵癌新規治療薬の薬効評価に有用なモデルである。
本明細書で引用した全ての刊行物、特許及び特許出願はそのまま引用により本明細書に組み入れられるものとする。
また、本発明に係るマウスモデルは、以下の利点を有する:
(1)市販のヒト膵癌細胞株を用いることにより、ハイスループット化に対応している;
(2)3種類の細胞培養を開始した日から6週目にマウスモデルを供給可能である;
(3)購入可能なヒト膵癌細胞株を用いるので、手術摘出した患者由来の膵癌組織を必要としない;
(4)上記に詳細に説明するように、ヒト膵癌オルガノイドの作製及びマウス創出の技術は確立済みである;
(5)本発明に係るマウスモデルにおけるヒト膵癌組織は、臨床的な膵癌組織と組織構築が極めて類似しており、癌間質が豊富に存在し、血清CA19-9が高値を示す;
(6)患者の臨床データ、遺伝子発現プロファイルはないが、ヒト膵癌オルガノイド腫瘍の組織切片を販売できる;
(7)遺伝子発現プロファイルが必要な場合、ヒト膵癌オルガノイド腫瘍の組織切片を準備することが可能である;
(8)非臨床薬理試験における膵癌新規治療薬の薬効評価に有用なモデルである。
本明細書で引用した全ての刊行物、特許及び特許出願はそのまま引用により本明細書に組み入れられるものとする。
Claims (5)
- ヒト膵癌細胞株S2-013を含む膵癌オルガノイドを担持するヒト膵癌マウスモデル。
- 請求項1記載のヒト膵癌マウスモデルを用いて膵癌治療剤をスクリーニングする方法。
- 請求項1記載のヒト膵癌マウスモデルを用いて膵癌治療剤の薬効を評価する方法。
- 請求項1記載のヒト膵癌マウスモデルから採取した血清サンプルを用いて、膵癌診断マーカーの有用性を評価する方法。
- 請求項1記載のヒト膵癌マウスモデルから採取した血清サンプルを用いて、膵癌診断マーカーをスクリーニングする方法。
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