以下に、本開示の実施の形態に係る電力変換装置、モータ駆動装置および冷凍サイクル適用機器を図面に基づいて詳細に説明する。
実施の形態1.
図1は、実施の形態1に係る電力変換装置200の構成例を示す図である。図2は、実施の形態1に係る電力変換装置200が備えるインバータ30の構成例を示す図である。電力変換装置200は、商用電源1およびモータ7に接続される。電力変換装置200は、商用電源1から供給される電源電圧Vsの第1の交流電力を所望の振幅および位相を有する第2の交流電力に変換し、モータ7に供給する。電力変換装置200は、リアクタ2と、整流部3と、平滑コンデンサ5と、インバータ30と、母線電圧検出部10と、負荷電流検出部40と、制御装置100と、を備える。なお、電力変換装置200およびモータ7によって、モータ駆動装置400を構成している。また、電力変換装置200、モータ7、室外ファン914、室外熱交換器910、および制御部920によって、冷凍サイクル適用機器900を構成している。室外熱交換器910は、内部を流れる冷媒と外部の空気とで熱交換を行う。室外ファン914は、室外熱交換器910に送風する。モータ7は、室外ファン914を回転駆動させる。図1では、冷凍サイクル適用機器900のうち、電力変換装置200の説明で必要な構成のみを示している。冷凍サイクル適用機器900の詳細な構成については実施の形態4で説明する。
リアクタ2は、商用電源1と整流部3との間に接続される。整流部3は、整流素子131~134によって構成されるブリッジ回路を有し、商用電源1から供給される電源電圧Vsの第1の交流電力を整流して出力する。整流部3は、全波整流を行うものである。
平滑コンデンサ5は、整流部3の出力端に接続され、整流部3によって整流された電力を平滑化する平滑素子である。平滑コンデンサ5は、例えば、電解コンデンサ、フィルムコンデンサなどのコンデンサである。平滑コンデンサ5は、整流部3によって整流された電力を平滑化するような容量を有し、平滑化により平滑コンデンサ5に発生する電圧は商用電源1の全波整流波形形状ではなく、直流成分に商用電源1の周波数に応じた電圧リプルが重畳した波形形状となり、大きく脈動しない。この電圧リプルの周波数は、商用電源1が単相の場合は電源電圧Vsの周波数の2倍成分となり、商用電源1が三相の場合は6倍成分が主成分となる。
母線電圧検出部10は、平滑コンデンサ5の両端電圧、すなわち直流母線12a,12b間の電圧を母線電圧Vdcとして検出し、検出した電圧値を制御装置100に出力する検出部である。負荷電流検出部40は、平滑コンデンサ5からインバータ30に流入される直流電流である負荷電流Idcを検出し、検出した電流値を制御装置100に出力する検出部である。
インバータ30は、平滑コンデンサ5の両端に接続され、整流部3および平滑コンデンサ5から出力される電力を所望の振幅および位相を有する第2の交流電力に変換、すなわち第2の交流電力を生成して、負荷を駆動するモータ7に出力する。具体的には、インバータ30は、母線電圧Vdcを受けて、周波数および電圧値が可変の3相交流電圧を発生して、出力線331~333を介してモータ7に供給する。インバータ30は、図2に示すように、インバータ主回路310と、駆動回路350と、を備える。インバータ主回路310の入力端子は、直流母線12a,12bに接続されている。インバータ主回路310は、スイッチング素子311~316を備える。スイッチング素子311~316の各々には、還流用の整流素子321~326が逆並列接続されている。
駆動回路350は、制御装置100から出力されるPWM(Pulse Width Modulation)信号Sm1~Sm6に基づいて、駆動信号Sr1~Sr6を生成する。駆動回路350は、駆動信号Sr1~Sr6によってスイッチング素子311~316のオンオフを制御する。これにより、インバータ30は、周波数可変かつ電圧可変の3相交流電圧を、出力線331~333を介してモータ7に供給することができる。
PWM信号Sm1~Sm6は、論理回路の信号レベル、すなわち0V~5Vの大きさを持つ信号である。PWM信号Sm1~Sm6は、制御装置100の接地電位を基準電位とする信号である。一方、駆動信号Sr1~Sr6は、スイッチング素子311~316を制御するのに必要な電圧レベル、例えば、-15V~+15Vの大きさを持つ信号である。駆動信号Sr1~Sr6は、それぞれ対応するスイッチング素子311~316の負側の端子、すなわちエミッタ端子の電位を基準電位とする信号である。
モータ7は、インバータ30から供給される第2の交流電力の振幅および位相に応じて回転する。モータ7は、例えば、圧縮機での圧縮動作、ファンの回転動作などに使用される。モータ7は、図1の例では、前述の負荷として、冷凍サイクル適用機器900が備える室外ファン914を回転駆動させ、室外熱交換器910に風を送って室外熱交換器910の冷却などを行う。モータ7について、図1ではモータ巻線がY結線の場合を示しているが、一例であり、これに限定されない。モータ7のモータ巻線は、Δ結線であってもよいし、Y結線とΔ結線とが切り替え可能な仕様であってもよい。
なお、電力変換装置200において、図1に示す各構成の配置は一例であり、各構成の配置は図1で示される例に限定されない。例えば、リアクタ2は、整流部3の後段に配置されてもよい。また、電力変換装置200は、昇圧部を備えてもよいし、整流部3に昇圧部の機能を持たせるようにしてもよい。以降の説明において、母線電圧検出部10、および負荷電流検出部40をまとめて検出部と称することがある。また、母線電圧検出部10で検出された電圧値、および負荷電流検出部40で検出された電流値を、検出値と称することがある。
制御装置100は、母線電圧検出部10から母線電圧Vdcを取得し、負荷電流検出部40から負荷電流Idcを取得する。制御装置100は、各検出部によって検出された検出値を用いて、インバータ主回路310の動作、具体的には、インバータ主回路310が有するスイッチング素子311~316のオンオフを制御する。制御装置100は、インバータ主回路310が有するスイッチング素子311~316のオンオフを制御することで、モータ7の回転数を制御する。なお、モータ7の回転数については、モータ7の回転速度と表記してもよい。以降についても同様とする。また、制御装置100は、モータ7の負荷トルクを演算する。なお、制御装置100は、各検出部から取得した全ての検出値を用いなくてもよく、一部の検出値を用いて制御を行ってもよい。本実施の形態において、制御装置100は、d軸およびq軸を有する回転座標系において制御を行う。
制御装置100の詳細な構成および動作について説明する。図3は、実施の形態1に係る電力変換装置200が備える制御装置100の構成例を示すブロック図である。制御装置100は、運転制御部102と、インバータ制御部110と、運転継続制御部121と、を備える。
運転制御部102は、冷凍サイクル適用機器900の制御部920から指令情報Qeを取得する。冷凍サイクル適用機器900が空気調和機である場合、指令情報Qeは、例えば、図示しない温度センサで検出された温度、図示しない操作部であるリモコンから指示される設定温度を示す情報、運転モードの選択情報、運転開始及び運転終了の指示情報などに基づく情報である。運転モードとは、例えば、暖房、冷房、除湿などである。また、運転制御部102は、運転継続制御部121から速度指令低下量Δω*を取得する。運転制御部102は、指令情報Qeおよび速度指令低下量Δω*に基づいて、モータ7に印加する電圧の指令値である電圧指令値を生成するための周波数指令値ωe*を生成する。運転制御部102は、周波数指令値ωe*について、モータ7の回転速度の指令値である回転角速度指令値ωm*にモータ7の極対数Pmを乗算した値から速度指令低下量Δω*を減算することで求めることができる。また、運転制御部102は、指令情報Qeに基づいて、インバータ30の動作を停止するための信号である停止信号Stを生成する。運転制御部102は、周波数指令値ωe*をインバータ制御部110の電圧指令値演算部115に出力し、停止信号Stをインバータ制御部110のPWM信号生成部118に出力する。
インバータ制御部110は、電流復元部111と、3相2相変換部112と、d軸電流指令値生成部113と、電圧指令値演算部115と、電気位相演算部116と、2相3相変換部117と、PWM信号生成部118と、を備える。
電流復元部111は、負荷電流検出部40で検出された負荷電流Idcに基づいてモータ7に流れる相電流iu,iv,iwを復元する。電流復元部111は、負荷電流検出部40で検出された負荷電流Idcを、PWM信号生成部118で生成されたPWM信号Sm1~Sm6に基づいて定められるタイミングでサンプリングすることによって、相電流iu,iv,iwを復元することができる。
3相2相変換部112は、電流復元部111で復元された相電流iu,iv,iwを、後述する電気位相演算部116で生成された電気位相θeを用いて、励磁電流であるd軸電流id、およびトルク電流であるq軸電流iq、すなわちdq軸の電流値に変換する。
d軸電流指令値生成部113は、前述の回転座標系におけるd軸電流指令値Id*を生成する。具体的には、d軸電流指令値生成部113は、q軸電流iqと、母線電圧Vdcと、d軸電圧指令値Vd*と、q軸電圧指令値Vq*とに基づいて、モータ7を駆動するために最も効率が良くなる最適なd軸電流指令値Id*を求める。d軸電流指令値生成部113は、q軸電流iq、母線電圧Vdc、d軸電圧指令値Vd*、およびq軸電圧指令値Vq*に基づいて、モータ7の出力トルクが規定された値以上または最大になる、すなわち電流値が規定された値以下または最小になる電流位相βmとなるd軸電流指令値Id*を出力する。なお、ここでは、d軸電流指令値生成部113が、q軸電流iqなどに基づいてd軸電流指令値Id*を求めているが、一例であり、これに限定されない。d軸電流指令値生成部113は、d軸電流id、周波数指令値ωe*などに基づいてd軸電流指令値Id*を求めても、同様の効果を得ることができる。また、d軸電流指令値生成部113は、弱め磁束制御などによってd軸電流指令値Id*を決定してもよい。
電圧指令値演算部115は、運転制御部102から取得した周波数指令値ωe*と、3相2相変換部112から取得したd軸電流idおよびq軸電流iqと、d軸電流指令値生成部113から取得したd軸電流指令値Id*とに基づいて、d軸電圧指令値Vd*およびq軸電圧指令値Vq*を生成する。また、電圧指令値演算部115は、d軸電圧指令値Vd*およびq軸電圧指令値Vq*を生成する過程において、q軸電流指令値Iq*を生成する。さらに、電圧指令値演算部115は、d軸電圧指令値Vd*と、q軸電圧指令値Vq*と、d軸電流idと、q軸電流iqとに基づいて、周波数推定値ωestを推定する。
電気位相演算部116は、電圧指令値演算部115から取得した周波数推定値ωestを積分することで、電気位相θeを演算する。
2相3相変換部117は、電圧指令値演算部115から取得したd軸電圧指令値Vd*およびq軸電圧指令値Vq*、すなわち2相座標系の電圧指令値を、電気位相演算部116から取得した電気位相θeを用いて、3相座標系の出力電圧指令値である3相電圧指令値Vu*,Vv*,Vw*に変換する。
PWM信号生成部118は、2相3相変換部117から取得した3相電圧指令値Vu*,Vv*,Vw*と、運転制御部102から取得した停止信号Stとに基づいて、PWM信号Sm1~Sm6を生成する。PWM信号生成部118は、停止信号Stに基づいてPWM信号Sm1~Sm6を出力しないようにすることによって、モータ7を停止することも可能である。
電圧指令値演算部115の構成および動作について詳細に説明する。図4は、実施の形態1に係る電力変換装置200の制御装置100が備える電圧指令値演算部115の構成例を示すブロック図である。電圧指令値演算部115は、周波数推定部501と、加減算部502,504,505,509,513と、速度制御部503と、d軸電流制御部506と、q軸電流制御部507と、乗算部508,510,512と、加算部511と、を備える。
周波数推定部501は、d軸電流idと、q軸電流iqと、d軸電圧指令値Vd*と、q軸電圧指令値Vq*とに基づいて、モータ7に供給される電圧の周波数を推定し、周波数推定値ωestとして出力する。なお、図4において周波数推定部501から電圧指令値演算部115の外部に出力される周波数推定値ωestは、図3において電圧指令値演算部115から電気位相演算部116に出力される周波数推定値ωestである。加減算部502は、周波数指令値ωe*から周波数推定値ωestを減算し、周波数指令値ωe*と周波数推定値ωestとの周波数偏差del_ωを出力する。
速度制御部503は、周波数偏差del_ωに基づいて、q軸電流指令値Iq*を演算して出力する。q軸電流指令値Iq*は、周波数偏差del_ωが零となるq軸電流iqの指令値、すなわち、周波数指令値ωe*と周波数推定値ωestとを一致させるためのq軸電流iqの指令値である。速度制御部503は、例えば、比例積分(Proportional-Integral:PI)制御器であるが、これに限定されない。速度制御部503は、q軸電流指令値Iq*を、後段の加減算部505に出力するとともに、運転継続制御部121に出力する。
加減算部504は、d軸電流指令値Id*からd軸電流idを減算し、d軸電流指令値Id*とd軸電流idとの偏差を出力する。d軸電流制御部506は、例えば、PI制御器で構成され、d軸電流指令値Id*とd軸電流idとの偏差を零に収束させるように動作する。d軸電流制御部506は、第1のd軸電圧指令値Vdfb*を出力する。
加減算部505は、q軸電流指令値Iq*からq軸電流iqを減算し、q軸電流指令値Iq*とq軸電流iqとの偏差を出力する。q軸電流制御部507は、例えば、PI制御器で構成され、q軸電流指令値Iq*とq軸電流iqとの偏差を零に収束させるように動作する。q軸電流制御部507は、第1のq軸電圧指令値Vqfb*を出力する。
乗算部508は、q軸電流指令値Iq*に、モータ7のq軸インダクタンスLqおよび周波数推定値ωestを乗算し、第1のd軸電圧指令値Vdfb*の補償値Vdff*を演算して出力する。加減算部509は、第1のd軸電圧指令値Vdfb*から補償値Vdff*を減算し、第1のd軸電圧指令値Vdfb*と補償値Vdff*との偏差(Vdfb*-Vdff*)である第2のd軸電圧指令値を、電圧指令値演算部115からのd軸電圧指令値Vd*として出力する。
乗算部510は、d軸電流指令値Id*に、モータ7のd軸インダクタンスLdを乗算して出力する。加算部511は、乗算部510からの出力にモータ7の磁束鎖交数ベクトルφfを加算する。乗算部512は、加算部511からの出力に周波数推定値ωestを乗算し、第1のq軸電圧指令値Vqfb*の補償値Vqff*を演算して出力する。加減算部513は、第1のq軸電圧指令値Vqfb*から補償値Vqff*を減算し、第1のq軸電圧指令値Vqfb*と補償値Vqff*との偏差(Vqfb*-Vqff*)である第2のq軸電圧指令値を、電圧指令値演算部115からのq軸電圧指令値Vq*として出力する。
図3の制御装置100の説明に戻る。制御装置100において、運転継続制御部121は、3相2相変換部112から取得したd軸電流id、および電圧指令値演算部115から取得したq軸電流指令値Iq*に基づいて、速度指令低下量Δω*を演算する。運転継続制御部121は、演算により求めた速度指令低下量Δω*を運転制御部102に出力する。
本実施の形態において、制御装置100は、モータ7の回転速度が低下したときに、回転速度と回転速度を制御するための速度指令値との差分が規定された範囲内になるように速度指令値を低減させるように制御する。例えば、制御装置100は、室外熱交換器910において霜が着いていない無着霜の状態から霜が着いた着霜の状態に変化すると、モータ7の回転数を維持するためには室外ファン914を駆動させるモータ7の負荷トルクが大きくなり、必要な電流も大きくなり、過電流状態になる可能性がある。そのため、制御装置100は、無着霜の状態のときに出力可能な負荷トルクと同程度の負荷トルクによって、着霜の状態では回転数を低下させてモータ7を回転させるように制御する。
ここで、負荷トルクについて簡単に説明する。制御装置100は、負荷電流検出部40で検出された電流値、およびモータ7の仕様に基づくパラメータを用いて負荷トルク、すなわち推定負荷トルクTmを演算することができる。具体的には、制御装置100は、3相2相変換部112から出力されるd軸電流idおよびq軸電流iqを用いて、モータ7の負荷トルクを推定、すなわちモータ7の推定負荷トルクTmを演算する。制御装置100は、以下に示す式(1)に基づいてモータ7の推定負荷トルクTmを演算する。
Tm=Pmφaiq+Pm(Ld-Lq)idiq …(1)
式(1)において、Tmは推定負荷トルクであり、Pmはモータ7の極対数であり、φaはモータ7の誘起電圧定数であり、Ldはモータ7のd軸インダクタンスであり、Lqはモータ7のq軸インダクタンスであり、idはd軸電流であり、iqはq軸電流である。モータ7の回転数すなわち速度がモータ7の動作を制御するための速度指令値に追従し、モータ7が一定速度で運転している場合、モータ7の出力トルクとモータ7の負荷トルクとは同じ大きさになる。そのため、式(1)の出力トルクを負荷トルクとして扱うことができる。制御装置100は、前述のように、d軸電流idおよびq軸電流iqについては3相2相変換部112から得られるが、モータ7の極対数Pm、モータ7の誘起電圧定数φa、モータ7のd軸インダクタンスLd、およびモータ7のq軸インダクタンスLqについては予め保持しておく。
室外ファン914を駆動するモータ7の回転数およびモータ7の負荷トルクの関係について説明する。図5は、実施の形態1に係る電力変換装置200が冷凍サイクル適用機器900に搭載されたときのモータ7の回転数およびモータ7の負荷トルクの特性を示す図である。図5において、横軸はモータ7の回転数を示し、縦軸はモータ7の負荷トルクを示す。また、図5において、丸がプロットされる実線は冷凍サイクル適用機器900において着霜が発生していないときの状態を表す多項式を示し、四角がプロットされる破線は冷凍サイクル適用機器900において着霜が発生しているときの状態を表す多項式を示している。丸がプロットされる実線で示される値は、無着霜時の基準設定値とも言う。なお、図5において、横軸のモータ7の回転数は、室外ファン914の回転数としてもよい。図5に示すように、モータ7の回転数が同じ場合でも、冷凍サイクル適用機器900において着霜が発生しているときの方が、冷凍サイクル適用機器900において着霜が発生していないときよりも負荷トルクが大きくなる。また、モータ7の回転数が高くなるほど、冷凍サイクル適用機器900において着霜が発生しているときの負荷トルクと、冷凍サイクル適用機器900において着霜が発生していないときの負荷トルクとの差分が大きくなる。制御装置100は、図5の例では、モータ7の回転数が2000rpmのときに無着霜の状態から着霜の状態に変化した場合、モータ7の回転数を1400rpm程度に低下させることで、出力される負荷トルクを同程度にしつつ、モータ7の回転、すなわち運転を継続することができる。
制御装置100が備える運転継続制御部121の詳細な構成および動作について説明する。図6は、実施の形態1に係る電力変換装置200の制御装置100が備える運転継続制御部121の構成例を示すブロック図である。運転継続制御部121は、リミッタ値演算部141と、加減算部142と、偏差符号処理部143と、出力部144と、を備える。
リミッタ値演算部141は、3相2相変換部112から取得したd軸電流idを用いて、加減算部142においてq軸電流指令値iq*と比較するためのリミッタ値を演算する。リミッタ値演算部141は、以下に示す式(2)に基づいてリミッタ値iq_limを演算する。
iq_lim=√(3Ie2-id2) …(2)
式(2)において、iq_limはリミッタ値であり、Ieは相電流の実効値のリミッタ値であり、idは3相2相変換部112から取得可能な現在のd軸電流値を示すd軸電流である。なお、√(3Ie2-id2)は(3Ie2-id2)の平方根を表しているものとする。リミッタ値iq_limは、d軸電流idを優先的に流すため、相電流の実効値のリミッタ値Ieからd軸電流idの分を差し引いた残りを、q軸電流iqとして回すことが可能な電流の大きさを示すものである。リミッタ値演算部141は、演算により求めたリミッタ値iq_limを加減算部142に出力する。
加減算部142は、リミッタ値演算部141からリミッタ値iq_limを取得し、電圧指令値演算部115からq軸電流指令値iq*を取得する。加減算部142は、リミッタ値iq_limからq軸電流指令値iq*を減算することで、リミッタ値iq_limとq軸電流指令値iq*との偏差を演算する。加減算部142は、演算により求めたリミッタ値iq_limとq軸電流指令値iq*との偏差を偏差符号処理部143に出力する。
偏差符号処理部143は、加減算部142で演算されたリミッタ値iq_limとq軸電流指令値iq*との偏差に基づいて、出力部144から運転制御部102に出力する速度指令低下量Δω*を制御する。具体的には、偏差符号処理部143は、リミッタ値iq_limとq軸電流指令値iq*との偏差が0以上の場合、すなわちq軸電流指令値iq*がリミッタ値iq_lim以下の場合、出力部144から速度指令低下量Δω*=0が出力されるように制御する。偏差符号処理部143は、リミッタ値iq_limとq軸電流指令値iq*との偏差が0未満の場合、すなわちq軸電流指令値iq*の方がリミッタ値iq_limより大きい場合、出力部144から速度指令低下量Δω*としてリミッタ値iq_limとq軸電流指令値iq*との偏差に対してKIac/Sによる積分制御を行った値が出力されるように制御する。なお、KIacは積分制御の積分ゲインであり、KIac/Sの分母のSはラプラス演算子を表している。
出力部144は、偏差符号処理部143の制御に基づいて、速度指令低下量Δω*=0、または速度指令低下量Δω*としてリミッタ値iq_limとq軸電流指令値iq*との偏差に対してKIac/Sによる積分制御を行った値を運転制御部102に出力する。
このように、制御装置100は、速度指令値であるq軸電流指令値Iq*のq軸電流リミッタ値であるリミッタ値iq_limに対して、q軸電流指令値Iq*が超過した分、q軸電流指令値Iq*を低減させる。制御装置100は、電力変換装置200からモータ7に流れる各相の電流である相電流の実効値のリミッタ値Ieおよび現在のd軸電流値であるd軸電流idに基づいて、q軸電流リミッタ値であるリミッタ値iq_limを設定する。これにより、制御装置100は、図5の例において、モータ7の回転数が2000rpmのときに無着霜の状態から着霜の状態に変化した場合、モータ7の回転数を1400rpm程度にすることで、出力される負荷トルクを同程度にしつつ、モータ7の回転、すなわち運転を継続することができる。すなわち、制御装置100は、モータ7の負荷トルクが大きくなるような事象が発生した場合でも、リミッタ値iq_limを超過した分だけモータ7の回転数を下げるように制御することで、電力変換装置200において最大電流を維持しつつ、モータ7の回転を制御する。
なお、リミッタ値演算部141がリミッタ値iq_limを演算する方法は式(2)の例に限定されない。電力変換装置200において最大電流を維持しつつ、モータ7の回転を制御できれば、リミッタ値演算部141で演算されるリミッタ値iq_limは他の方法で演算されてもよい。例えば、リミッタ値演算部141は、電圧飽和の観点からリミッタ値iq_limを演算してもよい。
図7は、実施の形態1に係る電力変換装置200が備える制御装置100の運転継続制御部121による運転継続制御有無による特性の違いを示す図である。図7において、左側は運転継続制御部121による運転継続制御が無い場合を示し、右側は運転継続制御部121による運転継続制御が有る場合を示している。また、運転継続制御無しの場合および運転継続制御有りの場合の両方において、図7の1段目はモータ7の回転速度を示し、図7の2段目はモータ7のトルクを示し、図7の3段目はモータ7の各相電流iu,iv,iwを示し、図7の4段目はモータ7のq軸電流iqを示している。なお、全てのグラフにおいて、横軸は時間を示している。図7に示すように、運転継続制御無しの場合および運転継続制御有りの場合の両方において、2段目、3段目、および4段目のグラフは同様である。
運転継続制御無しの場合、図7の左側の1段目のグラフでは、指令値と、推定速度および実速度とが乖離した状態になる。これは、電力変換装置200がトルク一定制御または最大トルクでモータ7を回転させようとしたが、着霜などの影響によってモータ7の回転に必要なトルクが大きくなり、所望の回転数、すなわち指令値で示される回転数にできない状態を示している。指令値と、推定速度および実速度とが乖離した状態が継続的になると、ワインドアップ現象が起こるなど、制御が不安定な状態になりやすいので、制御装置100での制御上、好ましくない。これに対して、運転継続制御有りの場合、図7の右側の1段目のグラフでは、運転継続制御を開始してから規定された時間が経過すると、指令値が低下することによって、指令値と、推定速度および実速度とが乖離した状態が解消される。これにより、制御装置100は、指令値と、推定速度および実速度とが乖離した状態が継続的になる事態を回避し、安定した制御状態にすることができる。
実施の形態1で特徴的な電力変換装置200の動作を、フローチャートを用いて説明する。図8は、実施の形態1に係る電力変換装置200の動作を示すフローチャートである。電力変換装置200において、制御装置100の運転継続制御部121は、q軸電流指令値Iq*に対するリミッタ値iq_limを演算する(ステップS1)。運転継続制御部121は、リミッタ値iq_limと電圧指令値演算部115から取得したq軸電流指令値iq*との偏差を演算する(ステップS2)。運転継続制御部121は、リミッタ値iq_limとq軸電流指令値iq*との偏差が0以上の場合、すなわちq軸電流指令値iq*がリミッタ値iq_lim以下の場合(ステップS3:Yes)、速度指令低下量Δω*=0を運転制御部102に出力する(ステップS4)。運転継続制御部121は、リミッタ値iq_limとq軸電流指令値iq*との偏差が0未満の場合、すなわちq軸電流指令値iq*の方がリミッタ値iq_limより大きい場合(ステップS3:No)、速度指令低下量Δω*として、リミッタ値iq_limとq軸電流指令値iq*との偏差に対してKIac/Sによる積分制御を行った値を運転制御部102に出力する(ステップS5)。
本実施の形態のように、制御装置100の運転継続制御部121においてq軸電流指令値Iq*がリミッタ値iq_limによって制限される場合とは、前述のように、単純にモータ7の負荷トルクが大きくなってq軸電流指令値Iq*がリミッタ値iq_limで制限される場合があるがこれに限定されない。制御装置100の運転継続制御部121においてq軸電流指令値Iq*がリミッタ値iq_limによって制限される場合には、例えば、制御装置100が弱め磁束制御を限界までやり切った後、速度が低下してしまったために、速度制御部503の入力に偏差が発生し、q軸電流指令値Iq*がリミッタ値iq_limで制限されるまで大きくなった場合などが含まれる。
つづいて、電力変換装置200が備える制御装置100のハードウェア構成について説明する。図9は、実施の形態1に係る電力変換装置200が備える制御装置100を実現するハードウェア構成の一例を示す図である。制御装置100は、プロセッサ91およびメモリ92により実現される。
プロセッサ91は、CPU(Central Processing Unit、中央処理装置、処理装置、演算装置、マイクロプロセッサ、マイクロコンピュータ、プロセッサ、DSP(Digital Signal Processor)ともいう)、またはシステムLSI(Large Scale Integration)である。メモリ92は、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリー、EPROM(Erasable Programmable Read Only Memory)、EEPROM(登録商標)(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)といった不揮発性または揮発性の半導体メモリを例示できる。またメモリ92は、これらに限定されず、磁気ディスク、光ディスク、コンパクトディスク、ミニディスク、またはDVD(Digital Versatile Disc)でもよい。
以上説明したように、本実施の形態によれば、電力変換装置200において、制御装置100の運転継続制御部121は、電圧指令値演算部115で演算されるq軸電流指令値Iq*の方が、電力変換装置200において最大電流を維持することを考慮して演算されたリミッタ値iq_limより大きい場合、リミッタ値iq_limとq軸電流指令値iq*との偏差に対してKIac/Sによる積分制御を行った値を速度指令低下量Δω*として運転制御部102に出力する。運転制御部102は、演算により求めた周波数指令値から速度指令低下量Δω*の分低下させたものを周波数指令値ωe*として電圧指令値演算部115に出力する。これにより、制御装置100は、モータ7の負荷トルクが大きくなるような事象が発生した場合でも、リミッタ値iq_limを超過した分だけモータ7の回転数を下げるように制御することで、電力変換装置200において最大電流を維持しつつ、モータ7の回転を継続して行うことができる。制御装置100は、電力変換装置200に接続されるモータ7の負荷トルクが大きくなった場合でも、モータ7の回転速度の低下を抑制しつつモータ7の運転を継続可能である。
なお、本実施の形態では、制御装置100が対象にするモータ7が室外ファン914を回転させるファンモータの場合について説明したが、これに限定されない。制御装置100は、負荷トルクが増大する同様の事象が発生するものであれば、ファンモータ以外のモータ7に対しても、同様の制御を行うことが可能である。
実施の形態2.
実施の形態1では、運転継続制御部121は、電圧指令値演算部115から取得したq軸電流指令値Iq*がリミッタ値iq_limよりも大きくなると、運転継続制御を開始する。実施の形態2では、運転継続制御部121が運転継続制御を開始する他のタイミングについて説明する。
運転継続制御部121は、モータ7の推定速度が、モータ7に対する速度指令値よりも小さくなったときに、運転継続制御を開始してもよい。モータ7の推定速度が、モータ7に対する速度指令値よりも小さくなったときとは、図7の左側の1段目のグラフに示すような状態である。運転継続制御部121は、モータ7の推定速度およびモータ7に対する速度指令値を用いて運転継続制御の有無を判定することで、実施の形態1と同様の効果をうることができる。
運転継続制御部121は、q軸電流指令値Iq*およびリミッタ値iq_limを用いた場合を第1の条件とし、前述のモータ7の推定速度およびモータ7に対する速度指令値を用いた場合を第2の条件とすると、第1の条件または第2の条件が規定された期間継続した場合、運転継続制御を開始してもよい。このような場合を第3の条件とする。一般的に、モータ7は、電力変換装置200による通常の制御中でも、加速または減速することによって一時的に第1の条件または第2の条件の状態になることがある。そのため、運転継続制御部121は、電力変換装置200による通常の制御によって一時的に第1の条件または第2の条件になる場合を排除するため、第3の条件のように、第1の条件または第2の条件を満たす期間が規定された期間継続した場合に、運転継続制御を開始すると判定してもよい。すなわち、運転継続制御部121は、速度指令値が規定されたリミッタ値iq_limで制限される第1の条件が成立する場合、またはモータ7の回転速度が速度指令値よりも小さい第2の条件が成立する場合、または第1の条件または第2の条件が規定された期間継続する第3の条件が成立する場合、速度指令値を低減させることができる。運転継続制御部121は、モータ7の回転速度を速度指令値に追従させる制御ができなくなったときに、速度指令値を低減させる、とも言える。
なお、運転継続制御部121が運転継続制御を開始するタイミングについて説明したが、運転継続制御部121は、第1の条件または第2の条件または第3の条件のいずれかの要件を満たさなくなった場合、運転継続制御を停止することができる。ただし、運転継続制御を開始する場合と運転継続制御を停止する場合とを同じ値で判断すると、場合によっては運転継続制御の開始および停止が頻繁に繰り返される事態も考えられる。そのため、運転継続制御部121は、ヒステリシスを考慮して、運転継続制御を開始する場合と、運転継続制御を停止する場合とで、異なる値を基準にして判定してもよい。
このように、運転継続制御部121は、運転継続制御を開始する場合、いくつかの条件を用いて判断することができる。また、運転継続制御部121は、運転継続制御を停止する場合についても、いくつかの条件を用いて判断することができる。
実施の形態3.
実施の形態3では、運転継続制御部121の運転継続制御によって電圧指令値演算部115の速度制御部503での演算処理を変更する場合について説明する。
図10は、実施の形態3に係る電力変換装置200での演算処理のイメージを示す図である。図10は、電力変換装置200での演算処理の一部を抜粋し、抜粋した部分の演算の流れを示すものである。図10において、リミッタ値はリミッタ値演算部141で演算されたリミッタ値iq_limを示し、次の加減算処理は加減算部142の処理を示し、次の速度垂下制御は出力部144でのKIac/Sによる積分制御を示し、次の加算処理は電圧指令値演算部115の内部処理を示し、次の速度制御は速度制御部503での演算処理を示している。制御装置100では、運転継続制御部121が運転継続制御を行っている場合、速度制御部503から出力されるq軸電流指令値Iq*はリミッタ値iq_limに制限される。この場合、速度制御部503では、アンチワインドアップ処理のための積分制御は停止する。そのため、速度制御部503は、運転継続制御部121が運転継続制御を行っている場合、図10の下段に示すように、比例制御のみによってq軸電流指令値Iq*を演算、すなわちq軸電流指令値Iq*を演算する際の速度制御を比例制御によって行ってもよい。
このような場合、実施の形態1でも説明した運転継続制御部121での積分制御の積分ゲインKIacは式(3)のように表すことができる。
KIac=(ωac/ωsc)×(Pm2・φa/J) …(3)
式(3)において、ωacは速度制御部503での制御応答であり、ωscは運転継続制御部121での制御応答であり、Pmはモータ7の極対数であり、φaはモータ7の誘起電圧定数であり、Jはモータ7のイナーシャである。
このように、制御装置100は、制御状態に応じて適宜演算式などを変更することも可能である。
実施の形態4.
図11は、実施の形態4に係る冷凍サイクル適用機器900の構成例を示す図である。実施の形態4に係る冷凍サイクル適用機器900は、電力変換装置200を備える。実施の形態4に係る冷凍サイクル適用機器900は、空気調和機、冷蔵庫、冷凍庫、ヒートポンプ給湯器といった冷凍サイクルを備える製品に適用することが可能である。なお、図11において、実施の形態1などと同様の機能を有する構成要素には、実施の形態1と同一の符号を付している。
前述のように、冷凍サイクル適用機器900は、実施の形態1におけるモータ7と同様のモータ7aと、室外ファン914と、を備える。モータ7aは、室外ファン914を回転駆動させる。室外ファン914は、室外熱交換器910に送風する。室外熱交換器910は、内部を流れる冷媒と空気とで熱交換を行う。また、冷凍サイクル適用機器900は、実施の形態1におけるモータ7と同様のモータ7bを内蔵した圧縮機8と、四方弁902と、室内熱交換器906と、膨張弁908と、室外熱交換器910とが冷媒配管912を介して取り付けられている。
圧縮機8の内部には、冷媒を圧縮する圧縮機構904と、圧縮機構904を動作させるモータ7bとが設けられている。
冷凍サイクル適用機器900は、四方弁902の切替動作により暖房運転又は冷房運転をすることができる。圧縮機構904は、可変速制御されるモータ7bによって駆動される。
暖房運転時には、実線矢印で示すように、冷媒が圧縮機構904で加圧されて送り出され、四方弁902、室内熱交換器906、膨張弁908、室外熱交換器910及び四方弁902を通って圧縮機構904に戻る。
冷房運転時には、破線矢印で示すように、冷媒が圧縮機構904で加圧されて送り出され、四方弁902、室外熱交換器910、膨張弁908、室内熱交換器906及び四方弁902を通って圧縮機構904に戻る。
暖房運転時には、室内熱交換器906が凝縮器として作用して熱放出を行い、室外熱交換器910が蒸発器として作用して熱吸収を行う。冷房運転時には、室外熱交換器910が凝縮器として作用して熱放出を行い、室内熱交換器906が蒸発器として作用し、熱吸収を行う。膨張弁908は、冷媒を減圧して膨張させる。
以上の実施の形態に示した構成は、一例を示すものであり、別の公知の技術と組み合わせることも可能であるし、実施の形態同士を組み合わせることも可能であるし、要旨を逸脱しない範囲で、構成の一部を省略、変更することも可能である。