以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して説明する。図1~図4は本発明を実施する形態の一例であって、図中、同一の符号を付した部分は同一構成を表わす。また、各図において一部の構成を適宜省略して、図面を簡略化する。また、各図において一部の構成について形状や寸法を適宜誇張して表現する。
<第1実施形態>
<スクロール型流体機械の全体構成>
図1は、本発明の実施形態に係るスクロール型流体機械1の一例を示す縦断面図である。本実施形態では、スクロール型流体機械1として、図示しない車両に搭載された車両用空調装置の冷凍回路に組み込まれている開放型スクロール圧縮機(以下、単に「圧縮機1」という。)である場合を例に説明する。冷凍回路は圧縮機1の作動流体である冷媒の冷媒循環経路を備え、圧縮機1は冷媒循環経路の復路から冷媒を吸入し、この冷媒を圧縮して冷媒循環経路の往路に向けて吐出する。
図1に示すように、圧縮機1はリアケーシング2及びフロントケーシング(ケーシング)4を備えている。リアケーシング2とフロントケーシング4との間にはスクロールユニット6が配置されている。フロントケーシング4内には駆動軸8が配置され、この駆動軸8は軸受51を介してフロントケーシング4に回転自在に支持されている。駆動軸8は、偏芯ブッシュ8aと大径軸部8bを有する段付き形状に形成されている。また、フロントケーシング4には、その内方に向けて台座部4aが突設されている。
駆動軸8のフロントケーシング4からの突出端には、電磁クラッチ10を内蔵した駆動プーリ12が取付けられている。駆動プーリ12は軸受52を介してフロントケーシング4に回転自在に支持されている。駆動プーリ12には車両のエンジンの動力が図示しない駆動ベルトを介して伝達され、駆動プーリ12の回転は電磁クラッチ10を介して駆動軸8に伝達可能である。したがって、エンジンの駆動中、電磁クラッチ10がオン作動されると、駆動軸8は駆動プーリ12と一体的に回転する。
スクロールユニット6は固定スクロール14及び可動スクロール16を備えている。可動スクロール16は、固定スクロール14に対して噛み合うように組付けられている。固定スクロール14は、リアケーシング2とフロントケーシング4との間に位置付けられ、駆動軸8の一点鎖線で示す軸線方向に延びる複数の固定ボルト50によってリアケーシング2及びフロントケーシング4に固定されてこれらにより挟持される。
固定スクロール14は例えば基板14aを備え、この基板14aには可動スクロール16に向けて渦巻壁14bが立設されている。
可動スクロール16も例えば基板16aを備え、この基板16aには固定スクロール14に向けて渦巻壁16bが立設されている。可動スクロール16の基板16aの背面16cはフロントケーシングの台座部4aに対向して位置付けられている。
フロントケーシング4の端壁4bには固定スクロール14の渦巻壁14bの外周部が当接され、フロントケーシング4内には可動スクロール16の基板16aが位置付けられている。フロントケーシング4の端壁4bと基板16aとの間には冷媒の吸入室20が確保されている。吸入室20には前述した冷媒循環経路の復路が連通している。
リアケーシング2の端壁2aには固定スクロール14の基板14aが当接されている。リアケーシング2内には基板14aと区画された冷媒の吐出室22が形成され、吐出室22には前述した冷媒循環経路の往路が連通している。また、吐出室22は固定スクロール14の基板14aに穿孔された吐出孔24を介して圧縮室18と連通している。吐出室22には吐出孔24を開閉する吐出弁(不図示)が配置され、吐出弁はストッパプレート28によってその開度が規制されている。
可動スクロール16の基板16aの背面16cには補強部(ボス)30が突設され、ボス30の内側に、軸受53を介して偏芯ブッシュ8aが回転自在に挿入されている。偏芯ブッシュ8aは、例えば、駆動軸8の軸心(一点鎖線で示す)に対して偏心した穴部8ahを有する例えば円板状に設けられる。大径軸部8bは偏芯ブッシュ8a方向に突出する係合部8bcを有する。係合部8bcは穴部8ahに挿入され、これにより駆動軸8の回転に伴い偏芯ブッシュ8aが駆動軸8の軸心に対して偏心して回転する。
可動スクロール16の基板16aの背面16cとフロントケーシング4の台座部4aとの間には、自転阻止機構36が配置されている。これにより可動スクロール16は、偏芯ブッシュ8aの回転に伴って、駆動軸8の軸心を中心として(すなわち、固定スクロール14に対して)公転旋回運動する。尚、偏芯ブッシュ8aには、可動スクロール16の動作時の遠心力に対抗するバランサウエイト35が取付けられる。
また、可動スクロール16の基板16aの背面16cとフロントケーシング4の台座部4aとの間にはリング板形状のスラストプレート34が配置されている。可動スクロール16の公転旋回運動に際し、可動スクロール16の基板16aの背面16cがスラストプレート34に摺動する。
また、この圧縮機1には、可動スクロール16の基板16aの背面16cとスラストプレート34との間に潤滑油を含む冷媒のクランク室37が確保されている。クランク室37は、台座部4aの外周側にて吸入室20に連通され、可動スクロール16の公転旋回運動に伴いクランク室37に吸入室20側から圧縮室18側に向けて冷媒が流れることにより、クランク室37は吸入室20と圧縮室18との間の圧力に調整される。
このクランク室37の圧力及び自転阻止機構36によって、可動スクロール16の公転旋回運動が阻害されることなく、可動スクロール16が固定スクロール14に好適に押圧付勢される。また、クランク室37に冷媒とともに流れる潤滑油は、可動スクロール16の背面16cと背面16cが摺動するスラストプレート34の摺動面34aとを潤滑すると共に、自転阻止機構36を潤滑し、クランク室37は潤滑油流路としても機能している。
図2は、図1のV-V線方向から見たスクロールユニット6の平面図概要図である。固定スクロール14の中心(軸心)14CTは駆動軸8の軸心と一致しており、可動スクロール16は、その中心(軸心)16CTが固定スクロール14の中心(軸心)14CTに対して偏心して組み付けられる。固定スクロール14と可動スクロール16は、各渦巻壁14b,16bの周方向の角度が互いにずれた状態で、渦巻壁14b,16bの側壁が互いに部分的に接触するように対向して配設される。固定スクロール14及び可動スクロール16の各渦巻壁14b,16bが対向して噛み合うことにより、各渦巻壁14b,16b間に三日月状の密閉空間である流体ポケット18が形成される。流体ポケット18はこの例では、潤滑油を含む作動流体である冷媒の圧縮室となる。
図1および図2を参照して、圧縮機1は、駆動プーリ12が回転すると、電磁クラッチ10を介して駆動軸8が回転し、駆動軸8の回転に伴って、可動スクロール16が固定スクロール14の軸心14CT周りに(軸心14CT(駆動軸8の軸心)を中心として)、渦巻壁14b,16bの接触により規定される旋回半径AORで例えば時計回りの方向に公転旋回運動される。このとき可動スクロール16は、自転阻止機構36により自転が阻止されつつ、その背面16cをスラストプレート34に摺動させながら公転旋回運動する。流体ポケット(圧縮室)18の容積は、固定スクロール14に対する可動スクロール16の公転旋回運動に伴い増減される。
つまり、渦巻壁14b,16bが接触しつつ、両者の間に形成される圧縮室18が渦巻壁14b,16bの外端部から中心部へ向かって移動しつつその容積が縮小方向に変化する。圧縮室18の容積が縮小されると、渦巻壁14b,16bの外端部側から圧縮室18内に取込まれた流体(例えば冷媒ガス)が圧縮される。これにより、冷媒循環経路の復路から吸入室20に吸入された冷媒は圧縮室18内でスクロールユニット6の中心に向けて移動されながら圧縮された後、吐出孔24を介して吐出室22に吐出され、吐出室22から冷媒循環経路の往路へ送出される。
<自転阻止機構>
図3から図5を参照して、本発明の第1実施形態に係る自転阻止機構36を説明する。図3(A)はスクロールユニット6(基板16a側)の概略を示す図であり、図1のV-V線方向から視た平面図である。図3(B)は、1組の自転阻止機構36を抜き出して示す平面図であり、図3(C)は、図3(B)のX-X線断面図である。
図3(A)に示すように、自転阻止機構36は一つの基板16aに対して複数組(この例では4組)設けられる。本実施形態の自転阻止機構36は、図3(B)に示すように収容溝42と、自転阻止ピン38(以下、単に「ピン」と称する場合がある。)と、リング40を有する。
図3(B)および同図(C)に示すように、収容溝42は、可動スクロール16の渦巻壁16bが立設された基板16aの背面16cに穿設される。収容溝42は、公転旋回運動の公転軸(固定スクロール14の中心(軸心)14CT、駆動軸8の軸心)と自身の中心軸が平行となる略円環状に設けられる。より詳細には、収容溝42は、中心軸を含む領域の基板16aの一部を台座部4a方向に凸状に残存させるとともにその周りの基板16aを略円環状に刳り抜いて形成される。収容溝42は、径方向外側に位置し、大径となる内壁(以下、「大径側内壁42a」という。)と、径方向内側に位置し、小径となる内壁(以下、「小径側内壁42b」という。)と、底面42cを有する。
ピン38は、フロントケーシング4の台座部4aに固定(例えば、圧入固定)される円柱形状部材であり、公転旋回運動の公転軸(固定スクロール14の中心(軸心)14CT、駆動軸8の軸心)と自身の中心軸が平行となるように収容溝42内(可動スクロール16の基板16a側)に突出する突出部38aを有する。
リング40は、収容溝42に収容され、その内側にピン38(突出部38a)が配置される。リング40は、略円環(円筒)形状であり、リング40の径方向外側の側面となる外周面40aと、径方向内側の側面となる内周面40bと、自身の中心軸方向において対向する摺動面40cとを有する。リング40はピン38(突出部38a)と隙間嵌めにより係合する。
これにより、可動スクロール16の公転旋回運動に伴い、リング40の内周面40bがピン38の外周面38bに対して相対的に摺動又は転動可能とされる。また、可動スクロール16の公転旋回運動に伴い、リング40の外周面40aが収容溝42の大径側内壁42aに対して相対的に摺動又は転動可能とされる。また、可動スクロール16の公転旋回運動に伴い、各摺動面40cは、収容溝42の底面42cとスラストプレート34の摺動面34aと、それぞれに摺動可能とされる。
また、この例では、収容溝42の一部は、クランク室37に連通している。クランク室37の潤滑油は、可動スクロール16の公転旋回運動に伴い、収容溝42に取り込まれ、リング40がピン38および収容溝42に対して摺動又は転動する際の潤滑、リング40の各摺動面40cとスラストプレート34の摺動面34a、収容溝42の底面42cとの潤滑にも寄与する。
本実施形態の自転阻止機構36は、略円環状の収容溝42内にピン38を収容し、収容溝42とピン38の直接的又は間接的な衝突(当接)により可動スクロール16の自転を阻止する。
ところで、可動スクロール16、すなわち収容溝42は、例えば、軽合金(例えばアルミニウム合金等)で形成されている。一方、ピン38及びリング40は、双方とも例えばクロムモリブデン鋼(例えば、SCM415)等の鉄系の高硬度材料から形成されている。
ピン38及びリング40の表面硬度はHRC(ロックウェル硬さ)で60~64程度(HV(ビッカーズ硬さ)換算で697?800程度)であり、収容溝42の表面硬度はHVで150程度である。また、アルミニウム合金とクロムモリブデン鋼の摩擦係数は、流体潤滑で0.02~0.05である。
つまり、自転阻止機構36が機能する際、表面硬度の異なるピン38と収容溝42の衝突(当接)や摺動により、収容溝42の摩耗・劣化が生じる。そこで、ピン38および収容溝42のいずれに対しても相対的に摺動又は転動が可能なリング40を設ける。更に、ピンと38とリング40の間、およびリング40と収容溝42の間にそれぞれ微小な隙間(所定の寸法差)を確保する。これによりピン38および収容溝42の摺動性を高め、収容溝42の摩耗・劣化を低減でき、PV値を低減できる。寸法差については後述する。
図4および図5を参照して公転旋回運動について説明する。図4(A)は図3(A)に固定スクロール14の軸心14CTおよび可動スクロール16の軸心16CTを重ねて示す平面図であり、図4(B)は1組の自転阻止機構36の平面図であって、可動スクロール16の最大許容旋回半径LPORを示す図である。また図4(C)は1組の自転阻止機構36の平面図であって可動スクロール16の最小許容旋回半径SPORを示す図である。図5は、可動スクロール16の運動の状態を示す平面図である。
図4(A)に示すように、可動スクロール16の収容溝42は、その中心が可動スクロール16の軸心16CTと同一直線上に位置するように設けられる。また、ピン38はその中心が固定スクロール14の軸心14CTと同一直線上に位置するように固定スクロール14に圧入される。そして、可動スクロール16は、駆動軸8の回転により、自身の軸心16CTが固定スクロール14の軸心14CTの周りを、例えば時計回りの方向に移動(旋回)する。これに伴い、可動スクロール16に設けられた収容溝42は、固定スクロール14に固定されたピン38の周囲を、ピン38を中心として旋回する。
図5を参照して時系列に説明する。図5(A)は図4(A)に示す状態であり、図5(B)から同図(D)は、図5(A)の状態から順次、可動スクロール16の軸心16CTが時計回りに90度ずつ旋回した状態を示している。図5(B)から同図(D)における大破線は、図5(A)の可動スクロール16の状態を示している。
可動スクロール16の軸心16CTが、固定スクロール14の軸心14CTの周りを旋回する(駆動軸8に対して偏心運動する)結果、4組の収容溝42は、それぞれの内側に収容されたピン38の周りを移動する。詳細には、収容溝42の大径側内壁42aがリング40を介してピン38に間接的に当接し、すなわちピン38に係合しながら外方に逃げるように移動する。
同時に、可動スクロール16にはその軸心16CTを中心として自転する方向の力P1も付与されている。つまり可動スクロール16は、図5(A)に二点鎖線で示すように、軸心16CTを通る直径方向の線分が軸心16CTを中心として傾くように自転しようとする。しかしながらこのとき、図4(B)に示すように収容溝42の大径側内壁42aがリング40を介してピン38に衝突(間接的に当接)するため、可動スクロール16の軸心16CTを中心とする自転が阻止される。このようにして、可動スクロール16は、自転阻止機構36によりその軸心16CTを中心とする自転が阻止されつつ、図5(A)~同図(D)に示すように、固定スクロール14の軸心14CT(駆動軸8の軸心)を中心として公転旋回運動する。
また、本実施形態の圧縮機1(特に開放型スクロール圧縮機)の場合、電磁クラッチ10をオフしたときに残存する高圧ガスの膨張により可動スクロール16が移動する場合がある。具体的には、電磁クラッチ10のオフにより、可動スクロール16には固定スクロール14の軸心14CTを中心とする公転旋回運動の駆動力は働かなくなる。これと同時に、高圧ガスが膨張することにより、図5(A)に示すように、可動スクロール16にはそれまでの公転旋回運動とは逆方向(図示の例では反時計回り)の力P2が付与される。この力P2により、可動スクロール16はその軸心16CTを中心として、反時計回りに自転しようとする。しかしながら本実施形態では、可動スクロール16にこの力P2が作用した場合には、図4(C)に示すように収容溝42の小径側内壁42bがリング40を介してピン38と衝突(間接的に当接)する。これにより、可動スクロール16の、軸心16CTを中心とした反時計回りの自転が阻止される。以下、このような駆動軸8の回転が伝達されていない状態において生じる自転(通常の運転時に阻止されている自転とは逆方向の自転(ここでは反時計回りの自転))を説明の便宜上、「反自転」という。つまり本実施形態の自転阻止機構36は、反自転阻止機構も備えている。また、以下の説明において、単に「公転旋回運動」と記載する場合は、「固定スクロール14の軸心14CT(駆動軸8の軸心)を中心とする公転旋回運動」を意味し、また、単に「自転」または「反自転」と記載する場合は、「可動スクロールの軸心16CTを中心とする自転(反自転)」を意味する。
自転阻止機構36は上記構成により、可動スクロール16の最大許容旋回半径LPOR(図4(B))と最小許容旋回半径SPOR(図4(C))を規定する。そして、固定スクロール14の中心14CTに対する可動スクロール16の中心16CTの偏心量により規定される可動スクロール16の旋回半径AOR(図2参照)が、SPOR<AOR<LPORの関係を満たすように設定されている。本実施形態の自転阻止機構36は、ピン38の外周を、収容溝42の中心軸が移動(旋回)するが、その旋回半径、すなわちピン38の中心軸から収容溝42の中心軸までの距離は、可動スクロール16の旋回半径AORと同等である(図4(A))。
図4(B)に示す可動スクロール16(自転阻止機構36)の最大許容旋回半径LPORは、固定スクロール14と可動スクロール16の製造、組み立てにより生ずる両スクロール14,16の中心14CT、16CTの正規の偏心量からのずれ量(芯ずれ量)を考慮し、この芯ずれ量の公差をβとしたとき、AOR+β≦LPORの関係が満たされている。
また、図4(C)に示す最小許容旋回半径SPORは、可動スクロール16の公転旋回運動中に渦巻壁14b、16b間に異物が噛み込まれたり、液圧縮があった場合の逃げ量を確保するために設定される。このため、最小許容旋回半径SPORは、固定スクロール14の渦巻壁14bと可動スクロール16の渦巻壁16bとの接触により規定される可動スクロール16の旋回半径AORに対して若干の遊びを持たせて設定され、この遊び量をγとしたときに、SPOR≦AOR-γとしている。可動スクロール16の旋回半径AORの最小許容旋回半径SPOR側における遊び量γは、一例として0.15mm以下である。
更に本実施形態では、上記の最大許容旋回半径LPOR、旋回半径AORおよび最小許容旋回半径SPORの関係を前提として、図3(B)に示すように、ピン38とリング40の間には寸法差A(それによる微小隙間G1)が確保され、リング40と収容溝42の小径側内壁42bの間には、寸法差B(それによる微小隙間G2)が確保されている。これにより、自転阻止動作の際、及び反自転阻止動作の際の摺動性を高め、収容溝42の摩耗や劣化を抑制できる。なお、リング40は、ピン38および小径側内壁42bに対して相対的に移動するので、図2(C)の微小隙間G1,G2の状態はあるタイミングの一例である。
より詳細には、リング40は所定の肉厚i(リング40の径方向における摺動面40cの長さ(幅))を有する。肉厚iは、リング40の外周面40aの直径である外径kと、リング40の内周面40bの直径である内径jの差である。
リング40の外径kは、収容溝42の溝幅hよりも小さく、両者の間には寸法差B(それによる微小隙間G2)が確保される。収容溝42の溝幅hとは、略円環状の収容溝42の径方向における、収容溝42の大径側内壁42aと小径側内壁42b間の距離である。
ピン38はその外径(直径)lがリング40の内径jより小さく、両者の間には寸法差A(それによる微小隙間G1)が確保される。
本実施形態では、寸法差Aは寸法差Bよりより小さい。一例として、寸法差Aは0.005mm以上であり、寸法差Aと寸法差Bの和は0.35mm以上である。
かかる自転阻止機構36によれば、通常の運転(駆動軸8の回転による運転)で可動スクロール16が公転旋回運動をする際には、収容溝42の大径側内壁42aがリング40を介してピン38と衝突し、可動スクロール16の自転が阻止される。また、リング40の外周面40aが収容溝42の大径側内壁42aに対して相対的に摺動又は転動可能とされ、リング40の内周面40bがピン38に対して相対的に摺動又は転動可能とされることで、ピン38、リング40および収容溝42のそれぞれの摺動性又は転動性を相対的に高めることができ、収容溝42の摩耗や劣化を抑制できる。
また、反自転を阻止する場合は、収容溝42の小径側内壁42bがリング40を介してピン38と衝突し、可動スクロール16の反自転が阻止される。またこの場合リング40の外周面40aが収容溝42の小径側内壁42bに対して相対的に摺動又は転動可能とされ、リング40の内周面40bがピン38に対して相対的に摺動又は転動可能とされることで、ピン38、リング40および収容溝42のそれぞれの摺動性又は転動性を相対的に高めることができ、収容溝42の摩耗や劣化を抑制できる。
本実施形態の自転阻止機構36は、従来のピン&ディスク式の自転阻止機構と比較して、リング40とこれを収容する収容溝42との接触面積が小さい。しかしながら、リング40とピン38の間に寸法差Aを設け、リング40と収容溝42の間に寸法差Bを設けることで、リング40をピン38および収容溝42に対して摺動又は転動可能としたため、従来の従来のピン&ディスク式の自転阻止機構と比較して、PV値を小さくできる。このため、材料の選択幅が広がり、圧縮機1の製造コストを低減できる。
また、自転(反自転)を阻止する際に、ピン38および収容溝42に対して摺動又は転動可能なリング40を設けることで、耐摩耗性が相対的に低い収容溝42の摩耗を抑制することができ、自転阻止機構36としての耐摩耗性を向上させることができる。
また、寸法差Aより寸法差Bを大きくすることにより組付け性を向上させることができる。すなわち、ピン38およびリング40はいずれも、可動スクロール16とは別体の個別部品であり、これら同士の隙間嵌めは寸法差Aが小さくても比較的組付けが容易である。また、寸法差Aは遊び量でもあり、必要以上に大きいと自転阻止および反自転阻止の際に異音が生じる原因にもなる。これに対し、収容溝42は、1つの可動スクロール16に複数(この例では4個)穿設されるものであり、収容溝42同士の加工精度のばらつきは不可避である。その上で各収容溝42には、フロントケーシング4に固定されたピン38を収容するように組み立てる必要がある。
そこで本実施形態では、寸法差Aは必要最小限の量とし、寸法差Bを寸法差Aより大きくなるように設定する。これにより、圧縮機1を製造する際に、ピン38とリング40を係合させた後の離脱を防止し、フロントケーシング4に可動スクロール16を取り付ける際の組付け性を向上させることができる。また、収容溝42の摩耗を抑制し自転阻止機構36としての耐摩耗性を向上させ、異音の発生も抑制できる。さらに、ピン38および収容溝42に対して摺動又は転動可能な部材を簡素なリング40で構成しているため、部品コストの向上も回避できる。
更に、従来のディスクに比べてリング40は体積が小さいため、自転阻止機構36の軽量化が図れる。リング40を収容した可動スクロール16に極端な重量増大及びバランス悪化が生じることはないため、圧縮機1の軽量化を実現可能である。
<第2実施形態>
図6および図7を参照して、本発明の第2実施形態に係る自転阻止機構36について説明する。図6(A)はスクロールユニット6(基板16a側)の概略を示す図であり、図1のV-V線方向から視た平面図である。図6(B)は1組の自転阻止機構36を抜き出して示す平面図であり、図6(C)は、図6(B)のY-Y線断面図である。図7(A)は図6(A)に対応する平面図であり、図7(B)、同図(C)は1組の自転阻止機構36の平面図である。
第2実施形態の自転阻止機構36では、リング40は第1実施形態よりも大径であり、リング40の内側に、ピン38と収容溝42の小径側内壁42bとが配置される構成である。以下、主に第1実施形態と異なる部分について説明し、第1実施形態と同様な事項(構成)については詳細な記載を省略する。
リング40は、その外周面40aが収容溝42の大径側内壁42aと対向するように収容溝42内に収容され、その一部がピン38(の外周面38b)と収容溝42の大径側内壁42aとの間に係合(隙間嵌め)される。
これにより、可動スクロール16の公転旋回運動に伴い、リング40の内周面40bがピン38の外周面38bに対して相対的に摺動又は転動可能とされる。また、可動スクロール16の公転旋回運動に伴い、リング40の外周面40aが収容溝42の大径側内壁42aに対して相対的に摺動又は転動可能とされる。また、可動スクロール16の公転旋回運動に伴い、各摺動面40cは、収容溝42の底面42cとスラストプレート34の摺動面34aとにそれぞれ摺動可能とされる。
図7は第2実施形態における公転旋回運動について説明する平面図であり、第1実施形態の図4に対応する平面図である。第2実施形態における可動スクロール16の公転旋回運動の詳細は、図5を参照して説明した第1実施形態と概ね同様である。すなわち、詳細な図示は省略するが、通常の運転時(駆動軸8の回転による運転の場合)においては、図7(A)に示すように、可動スクロール16の軸心16CTが、固定スクロール14の軸心14CTの周りを旋回する(駆動軸8に対して偏心運動する)結果、4組の収容溝42は、それぞれの内側に収容されたピン38に係合しながらその周りを移動する。具体的には、図7(A),同図(B)に示すように、収容溝42の大径側内壁42aがリング40を介してピン38に間接的に当接し、外方に逃げるように移動するとともに、可動スクロール16の例えば時計回りの方向の自転が阻止される。このようにして、可動スクロール16は公転旋回運動する。
また、電磁クラッチ10をオフしたときなどに反自転動作が生じる場合には、可動スクロール16に設けられた収容溝42は、図7(A),同図(C)に示すように、収容溝42の小径側内壁42bがピン38と衝突し、反自転が阻止される。第2実施形態では、この反自転動作の際に、ピン38と収容溝42の小径側内壁42bが直接接触(当接)する点、および可動スクロール16の公転旋回運動の際に、収容溝42とリング40の接触面積が大きく確保できる点で第1実施形態と異なる。
また、第2実施形態の自転阻止機構36も上記構成により、可動スクロール16の最大許容旋回半径LPOR(図7(B))と最小許容旋回半径SPOR(図7(C))を規定する。そして、固定スクロール14の中心14CTに対する可動スクロール16の中心16CTの偏心量により規定される可動スクロール16(自転阻止機構36)の旋回半径AORが、SPOR<AOR<LPORの関係を満たすように設定されている。自転阻止機構36の旋回半径、すなわちピン38の中心軸から収容溝42の中心軸までの距離は、可動スクロール16の旋回半径AORと同等である(図7(A))。
図7(B)に示す可動スクロール16(自転阻止機構36)の最大許容旋回半径LPORは、固定スクロール14と可動スクロール16の製造、組み立てにより生ずる両スクロール14,16の中心14CT、16CTの正規の偏心量からのずれ量(芯ずれ量)の公差をβとしたとき、AOR+β≦LPORの関係が満たされている。また、図7(C)に示す最小許容旋回半径SPORは、固定スクロール14の渦巻壁14bと可動スクロール16の渦巻壁16bとの接触により規定される可動スクロール16の旋回半径AORに対しての遊び量をγとしたときに、SPOR≦AOR-γとしている。遊び量γの値は、第1実施形態と同様である。
更に、本実施形態では、上記の最大許容旋回半径LPOR、旋回半径AORおよび最小許容旋回半径SPORの関係を前提として、図6(B)に示すように、リング40(の外周面40a)と収容溝42(の大径側内壁42a)の間には寸法差C(それによる微小隙間G3)が確保され、リング40の内側に配置されたピン38と収容溝42(の小径側内壁42b)の間には、寸法差D(それによる微小隙間G4)が確保されている。これにより、自転阻止動作の際、及び反自転阻止動作の際の摺動性を高め、収容溝42の摩耗や劣化を抑制できる。なお、リング40は、ピン38および小径側内壁42bに対して相対的に移動するので、図6(B)に示す微小隙間G3,G4の状態はあるタイミングの一例である。
より詳細には、リング40は所定の肉厚iを有する。肉厚iは、リング40の外径kと、リング40の内径jの差である。リング40の外径kは、収容溝42の大径側内壁42aの内径(直径)mよりも小さく、両者の間には寸法差C(それによる微小隙間G3)が確保される。またピン38はその外径(直径)lが収容溝42の溝幅hより小さく、ピン38の外径lとリング40の肉厚iの合計値(l+i)と、溝幅hとの間には寸法差D(それによる微小隙間G4)が確保される。
本実施形態では、寸法差Cは寸法差Dより小さく、一例として、寸法差Cは0.04mm以上であり、寸法差Dは0.35mm以上である。
かかる自転阻止機構36によれば、通常の運転(駆動軸8の回転による運転)で可動スクロール16が公転旋回運動をする際には、収容溝42の大径側内壁42aがリング40を介してピン38と衝突し、可動スクロール16の自転が阻止される(図7(B))。また、リング40の外周面40aが収容溝42の大径側内壁42aに対して相対的に摺動又は転動可能とされ、リング40の内周面40bがピン38に対して相対的に摺動又は転動可能とされることで、収容溝42の摩耗を抑制できる。
また、反自転を阻止する場合は、収容溝42の小径側内壁42bがピン38と衝突し、可動スクロール16の反自転が阻止される(図7(C))。またこの場合収容溝42の小径側内壁42bがピン38に対して相対的に摺動又は転動可能とされることで、収容溝42の摩耗を抑制できる。
従来のピン&ディスク式の自転阻止機構のディスクの外径と、本実施形態の自転阻止機構36におけるリング40の外径kとが同等、且つ従来のピン&ディスク式の自転阻止機構の収容穴の内径と本実施形態の自転阻止機構36における収容溝42の内径mが同等と仮定すると、本実施形態の自転阻止機構36では、リング40が、収容溝42およびピン38のいずれに対しても摺動又は転動可能であるため、従来のピン&ディスク式の自転阻止機構と比較して、PV値を小さくできる。このため、材料の選択幅が広がり、圧縮機1の製造コストを低減できる。
また第2実施形態の構成では、第1実施形態の構成と収容溝42およびピン38のサイズが同等であると仮定した場合に、第1実施形態と比較して場合のリング40の外周面40aと収容溝42の大径側内壁42aの対向面積(摺動可能な面積、接触面積)を増大でき、リング40の外周面40aと収容溝42間のPV値を第1実施形態の構成より低減できる。つまり、第1実施形態の構成よりも、特に収容溝42の摩耗や劣化を防止でき、自転阻止機構36としての耐摩耗性を向上できる。
また、第2実施形態の構成では、反自転を阻止する際には、ピン38と収容溝42が直接的に接触するが、反自転を阻止する機会は自転阻止に比べて相対的に少ない。また、上記のとおり、自転阻止の際には、第1実施形態の構成よりもリング40の外周面40aと収容溝42間のPV値を低減できる。接触面積の大きいリング40の外周面40aと収容溝42間のPV値を低減できる第2実施形態の方が、自転阻止機構36としての優位性は高いといえる。
また、寸法差Cより寸法差Dを大きくすることにより組付け性を向上させることができる。すなわち、ピン38およびリング40はいずれも、可動スクロール16とは別体の個別部品であり、可動スクロール16(収容溝42)に対する組付けは寸法差Cが小さくても比較的組付けが容易である。これに対し、収容溝42は、1つの可動スクロール16に複数(この例では4個)穿設されるものであり、収容溝42同士の加工精度のばらつきは不可避である。その上で各収容溝42には、フロントケーシング4に固定されたピン38を収容するように組み立てる必要がある。
そこで本実施形態では、寸法差Cより寸法差Dが大きくなるように設定する。これによりフロントケーシング4に可動スクロール16を取り付ける際の組付け性を向上させることができる。また、収容溝42の摩耗を抑制し自転阻止機構36としての耐摩耗性を向上させることができる。さらに、ピン38および収容溝42に対して摺動又は転動可能な部材を簡素なリング40で構成しているため、部品コストの向上も回避できる。
更に、従来のディスクに比べてリング40は体積が小さいため、自転阻止機構36の軽量化が図れる。リング40を収容した可動スクロール16に極端な重量増大及びバランス悪化が生じることはないため、圧縮機1の軽量化を実現可能である。
<第3実施形態>
図8および図9を参照して、本発明の第3実施形態に係る自転阻止機構36について説明する。図8(A)ははスクロールユニット6(基板16a側)の概略を示す図であり、図1のV-V線方向から視た平面図である。図8(B)は1組の自転阻止機構36を抜き出して示す平面図であり、図8(C)は、図8(B)のZ-Z線断面図である。図9(A)は図8(A)に対応する平面図であり、図9(B)、同図(C)は1組の自転阻止機構36の平面図である。
第3実施形態の自転阻止機構36では、リング40は第1実施形態よりも大径であり、リング40の内側に、ピン38と収容溝42の小径側内壁42bとが配置される構成である。更に、第3実施形態の自転阻止機構36は、リング40の内側に配置される中央リング41を有する。中央リング41は、自身の外周面41aがピン38の外周面38bと当接可能、かつ、中央リング41の内周面41bが収容溝42の小径側内壁42bを取り囲む。
以下、主に第1実施形態または第2実施形態と異なる部分について説明し、第1実施形態または第2実施形態と同様な事項(構成)については詳細な記載を省略する。
リング40は、その外周面40aが収容溝42の大径側内壁42aと対向するように収容溝42内に収容され、その一部がピン38(の外周面38b)と収容溝42の大径側内壁42aとの間に係合(隙間嵌め)される。
中央リング41は、その内周面41bが収容溝42の小径側内壁42bと対向するように収容溝42の小径側内壁42bの周囲に係合(隙間嵌め)される。
これにより、可動スクロール16の公転旋回運動に伴い、リング40の内周面40bがピン38の外周面38bに対して相対的に摺動又は転動可能とされる。また、可動スクロール16の公転旋回運動に伴い、リング40の外周面40aが収容溝42の大径側内壁42aに対して相対的に摺動又は転動可能とされる。また、可動スクロール16の公転旋回運動に伴い、各摺動面40cは、収容溝42の底面42cとスラストプレート34の摺動面34aとにそれぞれ摺動可能とされる。さらに、中央リング41は、収容溝42の小径側内壁42bに対して相対的に摺動又は転動可能とされる。
図9は、第3実施形態における公転旋回運動について説明する平面図であり、第1実施形態の図4に対応する平面図である。第3実施形態における可動スクロール16の公転旋回運動の詳細は、図5を参照して説明した第1実施形態と概ね同様である。すなわち、詳細な図示は省略するが、通常の運転時(駆動軸8の回転による運転の場合)においては、図9(A)に示すように、可動スクロール16の軸心16CTが、固定スクロール14の軸心14CTの周りを旋回する(駆動軸8に対して偏心運動する)結果、4組の収容溝42は、それぞれの内側に収容されたピン38に係合しながらその周りを移動する。具体的には、図9(A),同図(B)に示すように、収容溝42の大径側内壁42aがリング40を介してピン38に間接的に当接し、外方に逃げるように移動するとともに、可動スクロール16の例えば時計回りの方向の自転が阻止される。このようにして、可動スクロール16は公転旋回運動する。
また、電磁クラッチ10をオフしたときなどに反自転動作が生じる場合には、可動スクロール16に設けられた収容溝42は、図9(A),同図(C)に示すように収容溝42の小径側内壁42bが中央リング41を介してピン38と衝突(間接的に当接)し、反自転が阻止される。第3実施形態では、自転動作が生じる場合に収容溝42とピン38の間に介在するリング40と、反自転動作が生じる場合に収容溝42とピン38の間に介在する中央リング41とが別体である点、および可動スクロール16の公転旋回運動の際に、収容溝42とリング40の接触面積が大きく確保できる点で第1実施形態と異なる。
第3実施形態の自転阻止機構36も上記構成により、可動スクロール16の最大許容旋回半径LPOR(図9(B))と最小許容旋回半径SPOR(図9(C))を規定する。そして、固定スクロール14の中心14CTに対する可動スクロール16の中心16CTの偏心量により規定される可動スクロール16(自転阻止機構36)の旋回半径AORが、SPOR<AOR<LPORの関係を満たすように設定されている。
可動スクロール16(自転阻止機構36)の最大許容旋回半径LPORは、両スクロール14,16の中心14CT、16CTの正規の偏心量からのずれ量(芯ずれ量)の公差をβとしたとき、AOR+β≦LPORの関係が満たされている。また、最小許容旋回半径SPORは、可動スクロール16の旋回半径AORに対しての遊び量をγとしたときに、SPOR≦AOR-γとしている。遊び量γの値は、第1実施形態と同様である。
更に、本実施形態では、上記の最大許容旋回半径LPOR、旋回半径AORおよび最小許容旋回半径SPORの関係を前提として、図8(B)に示すように、リング40(の外周面40a)と収容溝42(の大径側内壁42a)間には寸法差H(それによる微小隙間G5)が確保され、リング40の内側に配置されたピン38と中央リング41(の外周面41a)の間には、寸法差E(それによる微小隙間G6)が確保され、収容溝42の小径側内壁42bと中央リング41の内周面41bの間には寸法差F(それによる微小隙間G7)が確保されている。なお、リング40および中央リング41はそれぞれ、ピン38および収容溝42に対して相対的に移動するので、図8(B)に示す微小隙間G5、G6,G7の状態はあるタイミングの一例である。
より詳細には、リング40は所定の肉厚iを有し、中央リング41は所定の肉厚pを有する。リング40の外径kは、収容溝42の大径側内壁42aの内径(直径)mよりも小さく、両者の間には寸法差H(それによる微小隙間G5)が確保される。またピン38はその外径(直径)lが、が収容溝42の溝幅hより小さい。より詳細には、ピン38の外径l、リング40の肉厚iおよび中央リング41の肉厚pの合計値は、収容溝42の溝幅hより小さく、当該合計値と溝幅hの間には寸法差E(それによる微小隙間G6)が確保される。更に、中央リング41の内径oは、収容溝42の小径側内壁42bの内径(直径)nよりも大きく、両者の間には寸法差F(それによる微小隙間G7)が確保される。
このように、第3実施形態では、収容溝42の小径側内壁42bの内径nと、中央リング41の内径oは寸法差F(第1の寸法差)を有し、収容溝42の大径側内壁の内径mとリング40の外径kは寸法差H(第2の寸法差)を有し、リング40の肉厚i、中央リングの肉厚p及びピンの外径lの合計値(i+p+l)と、収容溝42の溝幅hとは寸法差E(第3の寸法差)を有し、寸法差Eは寸法差Hより大きく、寸法差Hは寸法差Fより大きい。
一例として、寸法差Fは、0.005mm以上であり、寸法差Hは0.04mm以上であり、寸法差Eは0.35mm以上である。
かかる自転阻止機構36によれば、通常の運転(駆動軸8の回転による運転)で可動スクロール16が公転旋回運動をする際には、収容溝42の大径側内壁42aがリング40を介してピン38と衝突し、可動スクロール16の自転が阻止される(図9(B))。また、リング40の外周面40aが収容溝42の大径側内壁42aに対して相対的に摺動又は転動可能とされ、リング40の内周面40bがピン38に対して相対的に摺動又は転動可能とされることで、収容溝42の摩耗を抑制できる。
また、反自転を阻止する場合は、収容溝42の小径側内壁42bが中央リング41を介してピン38と衝突し、可動スクロール16の反自転が阻止される(図9(C))。またこの場合、中央リング41がピン38および収容溝42の小径側内壁42bに対して相対的に摺動又は転動可能とされることで、収容溝42の摩耗を抑制できる。
従来のピン&ディスク式の自転阻止機構のディスクの外径と、本実施形態の自転阻止機構36におけるリング40の外径kとが同等、且つ従来のピン&ディスク式の自転阻止機構の収容穴の内径と本実施形態の自転阻止機構36における収容溝42の内径mが同等と仮定すると、本実施形態の自転阻止機構36では、リング40が、収容溝42およびピン38のいずれに対しても摺動又は転動可能であるため、従来の従来のピン&ディスク式の自転阻止機構と比較して、PV値を小さくできる。このため、材料の選択幅が広がり、圧縮機1の製造コストを低減できる。
また第3実施形態の構成では、第1実施形態の構成と収容溝42のサイズが同等であると仮定した場合に、第1実施形態と比較してリング40の外周面40aと収容溝42の大径側内壁42aの対向面積(摺動可能な面積、接触面積)を増大でき、リング40の外周面40aと収容溝42間のPV値を第1実施形態の構成より低減できる。
更に反自転動作に際しては、中央リング41によってピン38と収容溝42の小径側内壁42bとの直接的な接触を回避できる。つまり、第1実施形態の構成よりも、特に収容溝42の摩耗や劣化を防止でき、自転阻止機構36としての耐摩耗性を向上できる。
また、寸法差F<寸法差H<寸法差Eとすることにより組付け性を向上させるとともに、異音を防止できる。すなわち、ピン38、リング40および中央リング41はいずれも、可動スクロール16とは別体の個別部品である。中央リング41と収容溝42(の小径側内壁42b)の隙間嵌めは寸法差Fが小さくても比較的組付けが容易である。また、寸法差Fは遊び量でもあり、必要以上に大きいと反自転阻止の際に異音が生じる原因にもなる。また、リング40の可動スクロール16(収容溝42)対する組付けは寸法差Hが小さくても比較的容易である。
これに対し、収容溝42は、1つの可動スクロール16に複数(この例では4個)穿設されるものであり、収容溝42同士の加工精度のばらつきは不可避である。その上で各収容溝42には、フロントケーシング4に固定されたピン38を収容するように組み立てる必要がある。
そこで本実施形態では、寸法差Fを必要最小限の量とし、寸法差Hを寸法差Fより大きくなるように設定し、寸法差Eを寸法差Hより大きくなるように設定する。これにより、圧縮機1を製造する際に、収容溝42に中央リング41を係合させた後の離脱や、中央リング41と収容溝42の衝突時の異音の発生を防止できる。また、フロントケーシング4に可動スクロール16を取り付ける際の組付け性を向上させることができる。また、収容溝42の摩耗を抑制し自転阻止機構36としての耐摩耗性を向上させることができる。さらに、ピン38および収容溝42に対して摺動又は転動可能な部材を簡素なリング40、中央リング41で構成しているため、部品コストの向上も回避できる。
更に、従来のディスクに比べてリング40、中央リング41は体積が小さいため、自転阻止機構36の軽量化が図れ、可動スクロール16に極端な重量増大及びバランス悪化が生じることはないため、圧縮機1の軽量化を実現可能である。
以上、上記の本実施形態では寸法差A,B,C,D,E,F,Hの最小値を例示したが、これらは一例であり、上述の部品同士の寸法差A,B,C,D,E,F,Hが確保できれば、数位は上記の例に限らない。また、寸法差A,B,C,D,E,F,Hは、旋回半径AORに対する割合として設定してもよい。
尚、自転阻止機構36における収容溝42をフロントケーシング4側に形成し、ピン38を可動スクロール16側に固定してもよい。但し、この場合、ピン38の突出部38aの長さ(高さ)を可動スクロール16の基板16aの厚さより短くする必要があり、ピン38が抜け落ちるリスクがある。従って、本実施形態のように、収容溝42を可動スクロール16側に形成し、ピン38をフロントケーシング4側に固定することが望ましい。
また、上記各実施形態では、車両用空調装置に組み込まれるエンジン駆動のスクロール圧縮機1について説明した。しかし、本発明は、一体の電動モータ駆動スクロール圧縮機や、種々の作動流体を使用した、種々の分野における圧縮機または膨脹機等のスクロール型流体機械全般に適用可能である。尚、膨張機の場合には、流体ポケット18が渦巻壁14b、16bの中心部から外端部へ向かって移動されることにより、流体ポケット18の容積が増大方向に変化し、渦巻壁14b、16bの中心部側から流体ポケット18内に取込まれた流体が膨張される。
尚、本発明の加熱装置は、上記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。