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JP7795155B1 - 溶融めっき鋼材 - Google Patents

溶融めっき鋼材

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JP7795155B1
JP7795155B1 JP2025560001A JP2025560001A JP7795155B1 JP 7795155 B1 JP7795155 B1 JP 7795155B1 JP 2025560001 A JP2025560001 A JP 2025560001A JP 2025560001 A JP2025560001 A JP 2025560001A JP 7795155 B1 JP7795155 B1 JP 7795155B1
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plating
steel material
layer
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JP2025560001A
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English (en)
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公平 ▲徳▼田
靖人 後藤
浩輔 川本
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Nippon Steel Corp
Original Assignee
Nippon Steel Corp
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Abstract

この溶融めっき鋼材は、鋼材と、鋼材の表面に配置されためっき層と、を有する溶融めっき鋼材であり、めっき層が、質量%で、Al:10%超、40%未満、Mg:4.0%以上、15.0%以下、残部Zn及び不純物であり、V及びMnの合計量ΣTR1:0.05%以上、3.0%以下である化学組成を有し、めっき層の表面から鋼材に向けて、鋼材の厚さ方向にGDS分析した場合の元素分布プロファイルにおいて、Fe濃度が95%に達する深さ位置をめっき層と鋼材との界面とし、めっき層の表面から界面までの間隔をめっき層の厚みtとした場合、合計量ΣTR1が0.1%以上を示す深さの割合が、厚みtに対して10%以上である。

Description

本開示は、溶融めっき鋼材に関する。
本願は、2024年8月15日に、日本に出願された特願2024-135644号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
鋼材を長期に使用する場合、鋼材には腐食に耐える何らかの防錆処理を適用することが好ましい。溶融Znめっき法は、鋼材を安価に防錆する手段として、土木・建築・自動車分野など鋼材防錆が求められる様々な分野で使用されている。
めっき層による防食手段は、めっき層が有する固有の耐食性と、その厚みとによって決定する。例えば、特許文献1には、鋼板を溶融めっき浴に連続的に浸漬させる、いわゆる連続式溶融めっき法により、めっき鋼板を製造することが記載されている。その後、めっき鋼板を加工することにより、部品形状に加工される。連続式溶融めっき法は、亜鉛めっきや、Al、Mgを含有するZn合金めっきを形成するために適用されている。連続式溶融めっき法では、後述する後めっき法に比べて、めっき層の厚みが比較的薄くなる。
特許文献2は、所定の形状に加工した被めっき物をめっき浴に浸漬する方法であり、バッチ式溶融めっき法、もしくは、後めっき法と呼ばれる。後めっき法は、被めっき物をめっき浴に1分以上浸漬するので、めっき層の厚みが分厚くなる傾向にある。しかし後めっき法は、連続式溶融めっき法と比較して合金成分の制約が大きく、耐食性が劣る傾向にあり、製造性も大きく劣る。
ところで、水に濡れる時間(濡れ時間)が長くなる環境下では、めっき鋼板の腐食は極めて厳しくなる。従って、めっき層の厚みを厚くすることがめっき鋼板の長寿命化を図る上で重要となる。そこで、多量のAlを含有するZn合金めっき層を、連続式溶融めっき法によって、後めっき法の場合と同程度に分厚く製造することができれば、鋼材を長期に防食する鋼板を効率的に製造することが可能になる。
連続式溶融めっき法により製造されるめっき鋼板のめっき層の厚みは、20~30μm程度の場合が多い。これは、めっき浴から鋼板を引き上げる際の溶融金属の持ち上げ、ガスワイピング、空冷凝固という連続式溶融めっき法のプロセス上の特徴に起因する。例えば、めっき浴から鋼板を引き上げる際の引き上げ速度を上昇すれば、めっき層の厚みは分厚くなるが、表面外観の制御が難しくなる。そのため、実際は、ワイピング調整によってめっき層の厚みの上限が厳しく制限される。すなわち、Al、Mgを含有するZn合金めっき層を連続式溶融めっき法で製造する場合、30μm以上の厚みを有するめっき層の製造は、一般的には困難である。これは、Alを多量に含有するめっき浴は、比重が軽くなってめっき浴自体の粘度が小さくなり、その結果、めっき浴から鋼板を引き上げる際の溶融金属の付着量が少なくなるためである。
また、近年、めっき層に耐食性以外の性能付与のために、Zn合金めっき浴にAl、Mg以外の様々な元素が添加されるようになっている。特許文献1に示すように、例えば、Snなどがめっき層に添加される場合がある。これらの元素は、Zn合金中のMg、AlまたはZnと結合して、融点の高い金属間化合物を形成しやすい。
国際公開第2018/139619号 日本国特開昭61-295361号公報
めっき層の寿命、すなわち耐食性を向上させる手段の1つとして、めっき層の厚膜化がある。大きな厚みを有するめっき層を得るためには、めっき浴の粘性を高めることが有効であり、これは、例えば、比較的に比重の重い元素をめっき浴に含有させることで実現できる。すなわち、比重の重い元素がめっき浴中に含有されると、比重が戻り、めっき付着量を増大できると想定される。
しかし、比重の重い元素をめっき浴に含有させる場合、比重の重い元素がめっき浴中の元素と素地鋼との反応性を変化させる可能性が高い。このことから、従来は、比重の重い元素の添加効果を見極めながら、比重の重い元素をめっき浴に含有させ、厚みの大きな健全なめっき層を得ることは難しかった。
本開示は上記事情に鑑みてなされたものであり、比較的に比重の重い元素を含有めっき層の場合でも、めっき厚を増大し得る溶融めっき鋼材を提供することを課題とする。
本発明者らは、上記課題を解決すべく、めっき浴添加が困難であるVおよびMn(遷移金属)等など、比重が重い元素の添加技術を検討した。また、VおよびMnなどの遷移元素の融点は比較的高いが、融点の高い物質はドロスの発生などのめっき不良を頻発する場合がある。そのため、高融点である金属元素であっても安定して浴中に添加できる技術を検討した。その結果、比重が重く、かつ高融点である元素を含有するめっき浴を用いた場合であっても、安定してめっき鋼材を製造できる技術を見出し、さらに、厚みの大きい、優れた耐食性を有するめっき層を備えるめっき鋼材を見出した。また、これら比重が重く、かつ高融点である元素を含有し、かつ適切な形態を示すめっき層は、VおよびMn等に起因した優れた耐食性が得られることを見出した。
上記課題を解決するため、本開示は以下の構成を採用する。
[1]本開示の一態様に係る溶融めっき鋼材は、鋼材と、前記鋼材の表面に配置されためっき層と、を有する溶融めっき鋼材であり、
前記めっき層が、質量%で、
Al:10%超、40%未満、
Mg:4.0%以上、15.0%以下、
Si:0%以上、2.0%以下、
V :0%以上、3.0%以下、
Mn:0%以上、3.0%以下、
Cr:0%以上、3.0%以下、
Mo:0%以上、3.0%以下、
Sn:0%以上、0.7%以下、
Bi:0%以上、0.3%以下、
In:0%以上、0.3%以下、
Ca:0%以上、0.6%以下、
Y :0%以上、0.3%以下、
La:0%以上、0.3%以下、
Ce:0%以上、0.3%以下、
Sr:0%以上、0.3%以下、
Li:0%以上、0.3%以下、
Ni:0%以上、3.0%以下、
Co:0%以上、3.0%以下、
Cu:0%以上、0.25%以下、
Ag:0%以上、0.25%以下、
Sb:0%以上、0.25%以下、
Pb:0%以上、0.25%以下、
B :0%以上、0.50%以下、
P :0%以上、0.50%以下、
Ti:0%以上、0.25%以下、
Nb:0%以上、0.25%以下、
Zr:0%以上、0.25%以下、
W :0%以上、0.25%以下、
Fe:0%以上、5.0%以下、
残部Zn及び不純物であり、
V及びMnの合計量ΣTR1:0.05%以上、3.0%以下、
Cr及びMoの合計量ΣTR1’:0%以上、3.0%以下、
ΣTR1+ΣTR1’:0.05%以上、3.0%以下、
Sn、Bi及びInの合計量Σα:0%以上、0.7%以下、
Ca、Y、La、Ce、Sr及びLiの合計量Σβ:0%以上、0.6%以下、
Ni及びCoの合計量ΣTR2:0%以上、3.0%以下、
Cu、Ag、Sb、Pb、B、P、Ti、Nb、Zr及びWの合計量Σγ:0%以上、1.00%以下、
である化学組成を有し、
前記めっき層の表面から前記鋼材に向けて、前記鋼材の厚さ方向にGDS分析した場合の元素分布プロファイルにおいて、Fe濃度が95%に達する深さ位置を前記めっき層と前記鋼材との界面とし、前記めっき層の前記表面から前記界面までの間隔を前記めっき層の厚みtとした場合、前記合計量ΣTR1が0.1%以上を示す深さの割合が、前記厚みtに対して10%以上である。
[2]上記[1]の溶融めっき鋼材は、前記化学組成におけるVおよびMnをTR1とした場合、前記めっき層中に、TR1含有金属間化合物を含有し、前記めっき層の断面において、前記TR1含有金属間化合物の合計の面積率が1%以上であってもよい。
[3]上記[1]または[2]の溶融めっき鋼材は、前記化学組成におけるNiおよびCoをTR2とした場合、前記元素分布プロファイルにおいて、TR2濃度の最大値を示す深さをt(TR2)、TR1濃度の最大値を示す深さをt(TR1)としたとき、下記(1)式を満たしてもよい。
t(TR2)-t(TR1)≦0.30t ・・・(1)
[4]上記[1]または[2]の溶融めっき鋼材は、Cu-Kα線を使用し、X線出力が50kV及び300mAである条件で測定した、前記めっき層の前記表面のX線回折パターンにおいて、下記(4)式に規定するI及び下記(5)式に規定するIが、下記(2)式及び(3)式を満たしてもよい。
1.5≦I …(2)
1.5≦I …(3)
=(Imax(10.5°~11.0°)/(I(10.5°)+0.2{|I(11.0°)-I(10.5°)|}) …(4)
=(Imax(20.2°~20.5°))/(I(20.2°)+0.667{|I(20.5°)-I(20.2°)|}) …(5)
式(4)及び式(5)において、Imax(k~m°)は回折角度k~m°の間におけるX線回折強度の最大値であり、I(n°)は回折角度n°におけるX線回折強度であり、k、m、nはそれぞれ式(4)及び式(5)中に示される回折角度(2θ)である。
本発明の実施形態によれば、めっき厚の大きい溶融めっき鋼材を提供できる。また、本実施形態の溶融めっき鋼材によれば、めっき層の厚みを増大できるため、めっき寿命(耐食性)を向上させることができる。
図1は、本発明の実施形態に係る溶融めっき鋼材のめっき層に対してGDS分析の結果を示す図であって、元素分布プロファイルの一例を示すグラフである。 図2は、XRDの解析方法を示す図面である。
以下、本発明の一実施形態に係る溶融めっき鋼材について説明する。
なお、本明細書において、めっき層の化学組成の各元素の含有量の「%」表示は、特に断りのない限り「質量%」を意味する。また、金属間化合物の組成を表示する際の「%」は、特に断りのない限り「原子%」を意味する。
また、「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。なお、「~」の前後に記載される数値に「超」または「未満」が付されている場合の数値範囲は、これら数値を下限値または上限値として含まない範囲を意味する。
本発明者らは、Al、Mg及びZnを含有するめっき層を備え、連続式の溶融亜鉛めっき法により製造される溶融めっき鋼材について、めっき層の厚み(付着量)が大きく、耐食性に優れ,かつ加工時の密着性に優れる溶融めっき鋼材およびその製造方法を鋭意検討した。
低融点金属であるZnに、AlもしくはMgといった元素を含有させたZn合金の溶融めっき浴の融点は、3元共晶組成や、Zn-3%Al-3%Mg(%表示は質量%)から離れるに従い、上昇する傾向になる。Alが10%超かつ、Mgが4%以上含有されるめっき浴の融点は、純Znの融点よりも高くなる。このようなZn合金めっき浴では、溶融めっきプロセスを考慮した場合、融点より50℃以上高い500℃近傍で操業される。
Al、Mg等の合金元素は、Znと比べると比重が小さい。合金成分の比重は、溶融状態における粘度と密接に関係する。すなわち、Al、Mg等を高濃度で含む溶融金属は、粘度が小さくなる。このため、連続式溶融めっき法において、一定のライン速度で鋼板を500℃程度のめっき浴に通板させると、鋼板に付着して鋼板と共に持ち上がる溶融めっき浴の付着量は、純Znめっきの場合に比べて大幅に少なくなる。従って、厚さが20μmを超えるめっき層を安定して製造するためには、ワイピング技術などの開発が必須になる。しかしながら、めっき層を構成する溶融金属の比重がそもそも小さいゆえに軽いため、ワイピングブロー時に、溶融金属が容易に吹き飛ばされてしまい、鋼板に付着して持ち上がる溶融めっき浴の付着量が減ってしまう。
更に、めっき浴にAlが含有されると、AlとFeとの反応が活発になるため、めっき浴中に鋼材を通過させた際に、容易にAl-Fe系界面合金層が形成される。この場合、曲げ試験などにおいてAl-Fe系合金層を起点としたクラックがめっき層に伝播し、めっき層の剥離が起こる場合がある。このような剥離は、めっき浴の温度が高いほど顕著になる。浸漬時間とFeによるめっき層内部のAlの損耗が発生することから、Al濃度が高く、温度の高いめっき浴の場合には、様々な製品に加工できるような密着性の高いめっき層を有する溶融めっき鋼材を製造することが難しくなる。
そこで、上記の問題点を解決するため、本発明者らは鋭意検討した。めっき浴のAl濃度が高く、かつ、高い浴温の条件下で、付着量が大きなめっき層を製造するには、まず、めっき浴の粘性をあげることが必要であり、これは、比重の重い元素をめっき浴に添加することで成し遂げられる。特に遷移金属元素である、V、Mn(TR1)を添加すると、めっき浴の比重及び粘性が大きくなり、通板時の鋼材へのめっき付着量を大きくすることができる。
一方で、めっき浴にこれらの遷移金属元素を添加すると、遷移金属元素はSi、Ca、Mgといった元素と結合しやすいために、めっき浴に浮遊ドロスが形成する傾向にある。
このドロスが巻き込まれためっき鋼材は、密着性が低下し、またはめっき欠陥を含む。ただし、これらの浮遊ドロスは、添加する遷移金属元素の濃度を一定の範囲内に制限すれば微細であるので、めっき浴の温度を600℃近傍まで上昇させることで、浮遊ドロスをめっき浴中に再溶解させることができる。
一方、600℃程度のめっき浴では、Al-Fe合金化反応が活発であり、鋼材の短時間の浸漬で、Al-Fe系界面合金層が分厚く成長し、その後の溶融めっき鋼材の密着性を著しく損なう可能性がある。
また添加された遷移金属元素は、Feと反応形態が似ており、鋼材(Fe素地)に拡散していく。特に、めっき浴浸漬直後の鋼材表面上におけるV,Mnの集積は、これらのFeよりも還元しにくい元素の集積によって、多量のめっき不良部や、Feとの反応性不良による非めっき部(鋼材表面との未反応部)などの劣化部を生み出す。
この要因は、Zn-Al-Mg系めっき鋼材において、鋼材表面下(つまり、鋼材表層)に形成されるV,Mnに起因する微細な酸化物がめっき付着性を阻害するためである。
従って、めっき浴に遷移金属元素を添加する場合には、鋼材内部に過度な元素拡散をさせない手段を講じることで、めっき層の健全化を維持することができ、その結果、不良部の少ない耐食性に優れためっき鋼材を製造することが可能である。
以上の新たな知見に基づきなされた本発明の一実施形態に係る溶融めっき鋼材について、以下、詳述する。
[溶融めっき鋼材]
本発明の実施形態に係る溶融めっき鋼材について説明する。
本実施形態の溶融めっき鋼材は、鋼材と、鋼材の表面に配置されためっき層と、を有する。
めっき層の平均化学組成は、質量%で、
Al:10%超、40%未満、
Mg:4.0%以上、15.0%以下、
Si:0%以上、2.0%以下、
V :0%以上、3.0%以下、
Mn:0%以上、3.0%以下、
Cr:0%以上、3.0%以下、
Mo:0%以上、3.0%以下、
Sn:0%以上、0.7%以下、
Bi:0%以上、0.3%以下、
In:0%以上、0.3%以下、
Ca:0%以上、0.6%以下、
Y :0%以上、0.3%以下、
La:0%以上、0.3%以下、
Ce:0%以上、0.3%以下、
Sr:0%以上、0.3%以下、
Li:0%以上、0.3%以下、
Ni:0%以上、3.0%以下、
Co:0%以上、3.0%以下、
Cu:0%以上、0.25%以下、
Ag:0%以上、0.25%以下、
Sb:0%以上、0.25%以下、
Pb:0%以上、0.25%以下、
B :0%以上、0.50%以下、
P :0%以上、0.50%以下、
Ti:0%以上、0.25%以下、
Nb:0%以上、0.25%以下、
Zr:0%以上、0.25%以下、
W :0%以上、0.25%以下、
Fe:0%以上、5.0%以下、
残部Zn及び不純物であり、
V及びMnの合計量ΣTR1:0.05%以上、3.0%以下、
Cr及びMoの合計量ΣTR1’:0%以上、3.0%以下、
ΣTR1+ΣTR1’:0.05%以上、3.0%以下、
Sn、Bi及びInの合計量Σα:0%以上、0.7%以下、
Ca、Y、La、Ce、Sr及びLiの合計量Σβ:0%以上、0.6%以下、
Ni及びCoの合計量ΣTR2:0%以上、3.0%以下、
Cu、Ag、Sb、Pb、B、P、Ti、Nb、Zr及びWの合計量Σγ:0%以上、1.00%以下、である。
なお、V、Mn、CrおよびMoはいずれも遷移金属元素であるが、本明細書においては、VおよびMnを「遷移金属元素TR1」、CrおよびMoを「遷移金属元素TR1’」と表記する場合がある。また、V、Mn、CrおよびMoを総称して「遷移金属元素TR」と表記する場合もある。
また、本実施形態の溶融めっき鋼材においては、めっき層の表面から鋼材に向けて鋼材の厚さ方向にGDS分析した場合の元素分布プロファイルのうち、めっき層表面からめっき層と鋼材との界面までの領域において、ΣTR1が0.1%以上を示す深さの割合がめっき層の厚みtに対して10%以上である。つまり、ΣTR1が0.1%以上を示す深さの合計が、0.1t以上である。なお、ここでいう「めっき層の厚みt」は、前述の元素分布プロファイルにおいて、Fe濃度が、Feの最大濃度に対して95%となる深さ位置をめっき層と鋼材との界面とした場合、めっき層の表面から界面までの間隔を指す。
(鋼材)
めっきの対象となる鋼材について説明する。
鋼材は、例えば主に鋼板であるが、そのサイズに特に制限はない。鋼板は、通常の溶融亜鉛めっき工程に適用可能なものであればよい。具体的には、連続溶融亜鉛めっきライン(CGL)など、溶融金属に浸漬して凝固させる工程で適用可能な鋼板がこれに当てはまる。鋼板のサイズとしては、例えば、板厚10mm以下、板幅2000mm以下のものを適用できるが、鋼板のサイズはこれに限定されるものではない。
鋼材の材質には、特に制限はない。鋼材は、例えば、一般鋼、各種金属が薄くめっきされたプレめっき鋼、Alキルド鋼、極低炭素鋼、高炭素鋼、各種高張力鋼、一部の高合金鋼(Ni、Cr等の耐食性強化元素含有鋼等)、軟鋼線、硬鋼線、ばね鋼、スチールコード、ボルト用鋼、橋梁ケーブル用鋼線材などの各種の鋼板、鋼線材、または鋼線が適用可能である。より具体的には、例えばJIS G 3131:2018に示される熱間圧延軟鋼板及び鋼帯、JIS G 3141:2021に示される冷間圧延鋼板及び鋼帯、JIS G 3101:2020に示される一般構造用圧延鋼材、各種金属が薄くめっきされたJIS H 8641:2021、JIS G 3302:2022、JIS G 3303:2022、JIS G 3313:2021、JIS G 3314:2022、JIS G 3315:2022、JIS G 3317:2022、JIS G 3321:2022などの各種めっき鋼(以下、めっき鋼板を母鋼材とするためにめっきすることを「プレめっき」ともいい、母鋼材としてのめっき鋼材又はめっき鋼板を「プレめっき鋼材又はプレめっき鋼板」ともいう。)、JIS G 3136:2022に示される建築構造用圧延鋼材、JIS G 3113:2018、JIS G 3134:2018、JIS G 3135:2018などに示される各種高張力鋼、一部の高合金鋼(Ni、Cr等の耐食性強化元素含有鋼等)が適用可能である。
また、鋼材の表面に、あらかじめ、プレめっきとして、0.3~5g/mの付着量のFeめっき層、Niめっき層またはCoめっき層を設けてもよい。このようなプレめっき層を備えた鋼材を用いることで、本実施形態における遷移元素V,Mnを含有しためっき層を安定して形成することができる。詳細は後述する。
また、鋼材の製造工程としては、高炉または電炉による製銑・製鋼工程、熱間圧延工程、酸洗工程、冷間圧延工程、熱処理工程などの一般的な工程が挙げられるが、本実施形態の鋼材は、何れの工程を経たものでもよく、また、各工程の処理条件は限定されない。
(めっき層)
次に、鋼材上に設けられるめっき層について説明する。
本実施形態に係るめっき層は、Zn-Al-Mg系合金層を含む。ZnにAl、Mgなどの合金元素が含有されると耐食性が改善する。そのため、Zn-Al-Mg系合金層を含む本実施形態のめっき層の場合、めっき層の厚さが小さい薄膜、例えば、通常のZnめっき層の半分程度の厚みでも、Znめっき層と同等以上の耐食性を発揮できる。
めっき層には、Al-Fe系界面合金層を含んでもよい。
Zn-Al-Mg系合金層は、Zn-Al-Mg系合金よりなる。Zn-Al-Mg系合金とは、Zn、Al及びMgを含む三元系合金を意味する。
Zn-Al-Mg系合金層の厚みは、4~100μmであってよい。必要に応じて、Zn-Al-Mg系合金層の厚みの下限は7μm、10μm、15μm又は20μmであってもよく、Zn-Al-Mg系合金層の厚みの上限が90μm、80μm又は70μmであってもよい。
Al-Fe系界面合金層は、多くの場合、鋼材とZn-Al-Mg系合金層との間にある界面合金層であり、鋼材の表面に接している。
めっき層全体の厚みtは、めっき条件に左右されるため、めっき層全体の厚みtの上限及び下限については特に限定されるものではない。また、めっき層全体の厚みは、めっき浴からの鋼材の引抜速度及びワイピング条件の影響を受ける。すなわち、めっき層全体の厚みtは、連続式溶融めっき法ではめっき浴の粘性及び比重の影響を受ける。連続式溶融めっき法で形成されるめっき層の厚みtの最大値は、100μm以下であることが多いので、本実施形態の溶融めっき鋼材のめっき厚tは例えば100μm以下、80μm以下、70μ以下、60μm以下でもよい。めっき層の厚さtは、鋼材の板厚の30%以下であってもよいが、必要に応じて、鋼材の板厚の20%以下であってもよい。めっき層の厚さtは、必要に応じて、15μm以上、20μm以上、30μm以上、35μm以上、40μm以上または45μm以上としてもよい。
<化学組成>
次に、めっき層の平均化学組成について説明する。
めっき層全体の平均化学組成は、めっき層がZn-Al-Mg系合金層の単層構造の場合は、Zn-Al-Mg系合金層の平均化学組成である。また、めっき層がAl-Fe系界面合金層及びZn-Al-Mg系合金層の積層構造の場合は、Al-Fe系界面合金層及びZn-Al-Mg系合金層の合計の平均化学組成である。なお、めっき前の鋼材(原板)の表面に、あらかじめプレめっき層が設けられている場合には、プレめっき層由来のNi、Co等もこの成分組成に含まれる。
本実施形態のめっき層において、Al-Fe系界面合金層の厚みが、めっき層の全体厚みに対して、好ましくは10%以下と小さい。そのため、めっき層のFe濃度は5.0%以内である場合が多い。
Al:10%超、40%未満
Alは、めっき層の主体を構成する元素である。Al含有量が10%超になると、めっき層の融点が純Znよりも高くなる。また、本実施形態におけるめっき層の厚さを増大させるのに必要な遷移金属元素は、Zn、Mgにはほとんど固溶しない。そのため、遷移金属元素を含有させるためには一定量以上のAlが必要である。そのために最低限必要な濃度が10%超であるため、Al含有量は10%超である。また、Alは、V含有金属間化合物、および/またはMn含有金属間化合物(以下、V含有金属間化合物およびMn含有金属間化合物を総称してTR1含有金属間化合物ともいう)を形成するために必須の元素である。Al含有量は、好ましくは11%以上、より好ましくは12%以上、さらに好ましくは18%以上であり、さらにより好ましくは25%以上である。
一方、Al含有量が40%以上になると、めっき浴と地鉄の反応性が高まり、Al-Fe系界面合金層の抑制が困難になり、厚いめっき厚での加工性確保が厳しくなる。また、Al-Fe系界面合金層が厚く形成される分だけ、Zn-Al-Mg系合金層の厚さが減少する。従って、Al含有量を40%未満とする。Al含有量は、好ましくは38%以下であり、より好ましくは35%以下である。
Mg:4.0%以上、15.0%以下
Mgは、Znと同様に、めっき層の主体を構成する元素である。Mgは、めっき層の耐食性を確保するための元素である。Mgは、Zn-Al-Mg系合金層中に、耐食性に優れ比較的硬質なMgZn相を形成させる。また、Mgは遷移金属元素と結合して、種々の性能を向上させるのに有効な元素である。Mg含有量が4.0%未満では、遷移金属元素などと適切な化合物を形成しなくなるため、Alと遷移金属元素との化合物の形成が促進され、ドロスが発生し、健全なめっき層が形成できない場合がある。従って、Mg含有量は4.0%以上とする。Mg含有量は、好ましくは4.5%以上、より好ましくは4.8%以上、さらに好ましくは5.0%以上、よりさらに好ましくは6.0%以上である。
一方、Mg含有量が15.0%超となると、発生するドロスの量が多くなり、めっき層が付着しない不めっき部が増えるおそれがある。そのため、Mg含有量は15.0%以下とする。Mg含有量は、好ましくは、13.0%以下、10.0%以下である。
Si:0%以上、2.0%以下
Siは、めっき浴とFeとの反応を抑制する作用を有する。一般的に、めっき浴中に多量に遷移金属元素TRを含有すると反応が過剰になることから、Siなどを併用することで、ある程度の遷移金属元素の拡散を抑制することもできる。他方、遷移金属元素と多量のSiが混在すると、部分的に界面部や鋼材表面(Fe表面)で酸化物が発生し、めっき層が密着しなくなる、いわゆる“不めっき”を引き起こす場合がある。したがってSi含有量は2.0%以下である。Si含有量は、好ましくは、1.5%以下、1.0%以下、0.30%以下である。プレめっき層を利用する場合は、Siを含有しなくても素地との反応性は十分に抑制できる。Siは含まれなくてもよいため、Si含有量の下限は0%である。Si含有量は、好ましくは、0.01%以上、より好ましくは0.1%以上である。
V :0%以上、3.0%以下
Mn:0%以上、3.0%以下
V及びMnの合計量ΣTR1:0.05%以上、3.0%以下
V及びMn(遷移金属元素TR1)は、Al、Mgを含有するZn系めっき浴に含有されると、めっき浴の比重を増大させ、めっき浴の粘度を向上させる作用を有する。これにより、めっき浴から鋼材を引き上げる際に、鋼材に対する溶融金属の付着量が多くなり、めっき層の厚みが厚くなる。また、めっき浴中に遷移金属元素TR1が含まれることで、めっき相の凝固の初期段階においてAl18(TR1)Mgに代表されるAl-Mg-TR1系金属間化合物(TR1含有金属間化合物)が形成され、めっき層の厚みの増大化がより促進される。このような金属間化合物の形成による厚みの増大効果と、比重および粘度の上昇効果のうち、どちらの効果が大きいかは切り分けることが難しいが、いずれの効果も遷移金属の添加効果と考えられる。Al,Mgが適切な濃度範囲にある際、これらの効果は、遷移金属元素TR1が0.05%以上でめっき付着量が大きくなる傾向にある。そのため、V及びMn(遷移金属元素TR1)の各含有量は、0.05%以上とすることが好ましい。より好ましくは、遷移金属元素TR1の各含有量は0.1%以上、0.3%以上、0.5%以上、0.7%以上または1.0%以上である。
一方、TR1含有金属間化合物は、めっき浴中に浮遊ドロスを形成する。浮遊ドロスは、不めっき、ドロス付着疵といっためっき欠陥を発生させ、製品の形態・性能に大きな影響を与え、耐食性などを劣化させる。従って、これらの浮遊ドロスは完全にめっき浴に溶解させることが好ましく、このため、本実施形態では、遷移金属元素TR1を含有する場合のめっき浴の温度は570℃以上にする必要がある。好ましくは600℃以上である。
遷移金属元素TR1の含有量が3.0%超では、めっき浴の温度を高めたとしても、これらの浮遊ドロスを完全溶解させることが困難であり、また、めっき浴の粘性が極めて高くなって鋼材のめっき浴からの引き上げ時に溶融金属の付着量が低減し、めっき層の厚みが極端に薄くなる。また、めっき外観が大幅に悪化する。このため、V及びMn(遷移金属元素TR1)の各含有量は3.0%以下とする。より好ましくは、遷移金属元素TR1の各含有量は2.5%以下、2.0%以下である。
本実施形態では、めっき層の化学組成としては、VおよびMnの少なくとも一方が含まれればよく、両方が含まれていてもよい。
本実施形態では、VおよびMnによる上述の効果を得るために、V及びMnの濃度の合計量ΣTR1は0.03~3.0%とする。必ずしもV及びMnの両方が含まれる必要はなく、V又はMnの一方の濃度がこの範囲内であってもよい。そのため、V及びMnの濃度の下限は0%である。
合計量ΣTR1は、好ましくは、0.2%以上、0.3%以上、0.5%以上、0.7%以上または1.0%以上である。また、合計量ΣTR1は、好ましくは、2.5%以下、2.0%以下である。
なお、本実施形態においては、めっき層中にCaを含有する場合、TR1含有金属間化合物として、Al10Ca(TR1)が生成する場合がある。ただし、Al10Ca(TR1)は、結晶構造と原子配置に関してAl18Mg(TR1)と区別することが難しく、また、Al18Mg(TR1)のMgの一部がCaに置換した化合物とも考えられる。そのため、本実施形態では、両者を同類の物質として検討して問題ない。
Cr:0%以上、3.0%以下
Mo:0%以上、3.0%以下
CrおよびMo(遷移金属元素TR1’)は、V,Mnと類似の効果をもつ元素である。V,Mnが含有される場合、VおよびMnの一部が、Crおよび/またはMoと置換して、VおよびMnと同様の効果を発揮させることができる。従って、CrおよびMoを遷移金属元素TR1’と定義する。CrおよびMoの各含有量は、VおよびMnと同様に3.0%以下とする。より好ましくは、CrおよびMoの各含有量の各含有量は2.5%以下、2.0%以下である。なお、CrおよびMoの各含有量は0%でもよい。CrおよびMoの各含有量は、0.05%以上とすることが好ましく、より好ましくは、0.1%以上、0.3%以上、0.5%以上、0.7%以上または1.0%以上である。
遷移金属元素TRであるCr、Mo、VおよびMnは、いずれも特徴的な類似の金属間化合物を形成する。しかし、個々の元素に着目してそれぞれの金属間化合物の性質を確認するとその性質に僅かに違いがあるがわかった。
Cr、Mo(遷移金属元素TR1’)を含有する金属間化合物は、犠牲防食作用が小さい傾向にある。これは形成した金属間化合物がCr、Moの酸化被膜に起因する高い電位を示すことが予測され、腐食におけるめっき層内の溶出タイミングが遅くなる傾向にあるためと考えられる。他方、V、Mn(遷移金属元素TR1)は金属間化合物の酸化皮膜を強固にする作用を有しないため、めっき層の腐食において適切なタイミングで溶出し、明瞭に耐食性に貢献することができることがわかった。
なお、Crまたは/およびMo主体の金属間化合物であっても、その中にMn、Vが一定量含有されることで、上述したような酸化被膜による腐食タイミングの遅延は抑制されることも分かった。したがって、Crまたは/およびMo主体の金属間化合物中にV、Mn(遷移金属元素TR1)を取り込むことで金属間化合物の腐食のタイミングをコントロールできる。
また、本実施形態では、CrおよびMoによる上述の効果を得るために、CrおよびMoの濃度の合計量ΣTR1’は0%以上、3.0%以下である。必ずしもCrおよびMoの両方が含まれる必要はなく、CrおよびMoの一方の濃度がこの範囲内であってもよい。
ΣTR1+ΣTR1’:0.05%以上、3.0%以下
上記の通り、遷移金属元素TRであるV、Mn、CrおよびMoが、Al、Mgを含有するZn系めっき浴に含有されると、めっき浴の比重が増大し、めっき浴の粘度が向上するため、得られるめっき層の厚みを増大できる。そのため、遷移金属元素TR1およびTR1´の合計含有量は0.05%以上である。一方、遷移金属元素TR1およびTR1´の合計含有量(ΣTR1+ΣTR1’)が3.0%超の場合、めっき浴の粘性が極めて高くなって鋼材のめっき浴からの引き上げ時に溶融金属の付着量が低減し、めっき層の厚みが極端に薄くなる。このため、遷移金属元素TR1およびTR1´の合計含有量は3.0%以下とする。より好ましくは、遷移金属元素TR1およびTR1´の合計含有量は2.5%以下、2.0%以下である。
元素群α
Sn:0%以上、0.7%以下
Bi:0%以上、0.3%以下
In:0%以上、0.3%以下
Sn、Bi及びInの合計量Σα:0%以上、0.7%以下
元素群α(Sn、Bi、In)の各元素は、めっき層に含有されることによってめっき層の軟化を促す元素である。Sn、Bi、Inは、任意に含有できる元素であるので、それぞれの含有量の下限は0%である。Snを含有させると、めっき層中にMgSnが形成する傾向にある。Biは、MgBi、InはMgInなども形成する。元素群αは、必要に応じて、耐食性や加工性等の特性向上を目的に含有させることが可能である。
ただし、元素群αそれぞれの元素の含有量には上限があり、多量に含有させると、TR1含有金属間化合物からMgを吸収してしまい、TR1含有金属間化合物が形成しなくなって耐食性の劣化や、元素群αとの金属間化合物の形成によりめっき層の外観が劣位となる。そのため、元素群αの上限は、Snにおいては0.7%以下、Bi、Inについては0.3%以下とする。さらにそれらの合計量Σαも0.7%以下とする。合計量Σαは、好ましくは、0.5%以下、0.4%以下である。
次に、以下に説明する元素群β、γの各元素は、何れも任意添加元素であり、その下限を0%以上とする。
元素群β
Ca:0%~0.6%
Y :0%~0.3%
La:0%~0.3%
Ce:0%~0.3%
Sr:0%~0.3%
Li:0%~0.3%
Ca、Y、La、Ce、Sr及びLiの合計量ΣY:0%以上、0.6%以下
元素群βの一つであるCaは、めっき浴の中で様々な含有効果を引き起こすため、含有することが好ましい。Caは、めっき浴の元素の中では、遷移金属元素と最も結合しやすい。このため、Caと遷移金属元素が含有されためっき浴では、Mgの一部がCaに置換されたAl18(Mg,Ca)(TR1)や、Al10Ca(TR1)が元素群βの含有量に従って形成される。このような金属間化合物が形成されると、めっきの粘度が上がり、容易に分厚いめっき層を得ることができる。
Ca含有量が0.6%を超えると、めっき浴中で様々な浮遊ドロスを形成し、めっき欠陥が増える。また、めっき浴の粘性が極めて高くなることで、めっき浴からの引き上げ時において、鋼材における溶融金属の付着量が低減し、めっき層の厚さが極端に薄くなり、耐食性が劣化する。また、めっき外観が大幅に劣化する。従って、Ca含有量は0.6%以下とする。Ca含有量は好ましくは、0.5%以下、0.4%以下である。
Ca以外の元素群βの各元素は、Caとほぼ同等の効果が得られるため、Caの代用として含有させることができる。ただし、Ca以外の元素は高価であり、Caほど多量に含有させると経済性を損なう懸念があり、Ca以外の元素の含有量の合計がCa含有量以上となることはあまり好ましくない。Ca以外の元素群βの含有により形成される金属間化合物は、Al10Ca(TR1)の置換体として、Al10(β)(TR1)を形成する。Caか、いずれか1種類の元素が含有されれば、耐食性における違いや性能差などはほとんど観察されない。濃度が高い場合もCaと同様に、TR1含有金属間化合物からMgを吸収してしまい、この化合物が形成しなくなってめっき厚さが薄くなるため、濃度の上限が存在する。よって、Ca以外の元素群βの各元素の濃度はそれぞれ、0~0.3%とする。Ca以外の元素群βの各元素の濃度はそれぞれ、好ましくは、0.2%以下、0.1%以下である。
また、Caを含む元素群βの各元素の濃度の合計量Σβは、0~0.6%とする。合計量Σβは、好ましくは、0.5%以下、0.4%以下である。
Ni:0%以上、3.0%
Co:0%以上、3.0%
Ni及びCoの合計量ΣTR2:0~3.0%以下
NiおよびCoは、プレめっき層を構成する材料として採用可能な元素である。めっき前の鋼材(原板)にプレめっき層として、例えばNi層もしくはCo層が設けられている場合、これらは、最終的にめっき層に含有される。通常、プレめっき層として、めっき原板上にNiまたはCoを含む金属層を設けた場合、めっき層中に3.0%以下の範囲のNiまたはCoが混入する場合が多い。なお、これらプレめっき層は、めっき層と鋼材との界面に、層として最終的に偏在する場合が多いため、NiおよびCoの濃度は、Zn-Al-Mg合金層内の成分濃度としては小さい。なお、NiおよびCoは、プレめっき層以外にめっき浴に微量(例えば、0.25%以下)であれば添加も可能である。
元素群γ
Cu:0%以上、0.25%以下
Ag:0%以上、0.25%以下
Sb:0%以上、0.25%以下
Pb:0%以上、0.25%以下
B :0%以上、0.50%以下
P :0%以上、0.50%以下
Ti:0%以上、0.25%以下
Nb:0%以上、0.25%以下
Zr:0%以上、0.25%以下
W :0%以上、0.25%以下
Cu、Ag、Sb、Pb、B、P、Ti、Nb、Zr及びWの合計量Σγ:0%以上、1.00%以下
元素群γの元素は、任意で添加できる元素である。これらの元素のうち1種でのその濃度が0.10%以上であると、耐食性が向上する効果が得られる。そのため、これらの元素のうちいずれか1種でも、その濃度が0.10%以上であることが好ましい。
ただし、これらの元素の濃度の合計量Σγが過剰になると、不めっき等のめっき不良が生じる場合がある。そのため、合計量Σγは1.00%以下とする。合計量Σγは、好ましくは、0.50%以下である。
耐食性の観点から、Cu、Ag、Sb、Pb、Ti、Nb、Zr及びWの濃度はそれぞれ0.25%以下とする。BおよびPの濃度はそれぞれ、0.50%以下とする。
Fe:0%以上、5.0%以下
本実施形態の溶融めっき鋼材は、連続式の溶融めっき法により製造されるため、製造時にめっき原材からめっき層にFeが拡散する場合がある。前述の通り、本実施形態では、めっき層のAl濃度が高く、Al-Fe系界面合金層が形成される場合があるが、その厚みは薄い。またFeプレめっき層などを使用すると必然的にめっき層中にFeが拡散するため、FeはZn-Al-Mg合金層に含有される。その結果として、めっき層中にFeが最大5.0%まで含有することがある。Fe濃度は0%であってもよいが、Fe濃度が5.0%以下であれば、めっき層中の亀裂の発生頻度等に影響はない。よって、Fe含有量は5.0%以下とする。Fe濃度は、好ましくは、4.0%以下、3.0%以下、2.0%以下、1.0%以下である。Fe含有量は0%超でもよい。
残部:Zn及び不純物
残部にはZnおよび不純物を含有する。本実施形態の溶融めっき鋼材は、汎用性の高いZn系めっき鋼材であるため、めっき層の主相を構成する元素はZnである。Znの濃度を特に規定する必要はないが、Zn濃度を、質量%で、30~96%としてもよい。必要に応じて、その上限を90%、80%、70%又は60%としてよく、その下限を35%、45%、50%又は55%としてもよい。
不純物は、原材料に含まれる成分、または、製造の工程で混入する成分であって、意図的に含有させたものではない成分を指す。例えば、めっき層には、鋼材(地鉄)とめっき浴との相互の原子拡散によって、不純物として、Fe以外の成分も微量混入することがある。まためっき合金を製造するために通常3N純度の金属を使用するため、不純物の濃度はおよそ、その合計で0.03%以下としてもよい。
めっき層の平均化学組成の同定には、地鉄(鋼材)の腐食を抑制するインヒビターを含有した酸でめっき層を剥離溶解した酸液を得る。次に、得られた酸液をICP発光分光分析法またはICP-MS法で測定することで化学組成を得ることができる。酸種は、めっき層を溶解できる酸であれば、特に制限はない。剥離前後の面積と重量を測定しておけば、めっき付着量(g/m)も同時に得ることができる。
<金属間化合物>
次に、めっき層に含有される金属間化合物について説明する。
本実施形態に係るめっき層は、Zn-Al-Mg系合金めっきであることから、めっき層中にZn相、Al相、MgZn相が含有される。また、本実施形態のめっき層には、遷移金属元素TR1含有の金属間化合物(TR1含有金属間化合物)が含有される。
MgZn
MgZn相は、めっき層の高耐食化を図るためにめっき層中に形成させる相である。
MgZn相は、めっき層に耐食性を与え、硬質な相である。
Zn相(Al-Zn相、Zn-Al相)
Zn相は、めっき層中に存在し、三元共晶組織(Zn/Al/MgZn三元共晶組織)として主に存在する。また、Zn相は、めっき層が多量のAlが含有するために、Al微細結晶とZn微細結晶とが互いに混ざり合い、Al相量が多い場合は、Al-Zn相(混合相)となって存在する。一方で、Zn相内にAl相量が多く含まれる場合は、Zn-Al相(混合相)である。その相量はめっき層全体に対しては少ないため、耐食性劣化、及び向上効果も確認できない場合が多い。なお、Zn、Alから構成される相は極めて加工性に富む。
Al相
Al相は、上記Zn-Al相、Al-Zn相内に微細粒として存在するか、3元共晶組織中にも存在する。また、Al濃度が高い領域では、粒成長し、粗大なAl相となって存在することがある。
遷移金属元素(TR1)を含む金属間化合物(TR1含有金属間化合物)
本実施形態に係るめっき層には、(Al,Zn)18(Mg)(TR1)に例示されるTR1含有金属間化合物が含まれる。このようなTR1含有金属間化合物は、めっき層にTR1が含有されることによりめっき層中に形成される。また、めっき層中にCaが含有される場合、TR1は、Ca及びAlと結合して、Al10Ca(TR1)を形成する場合もある。また、TR1は、Caが不足する場合には、Al及びMgと結合してAl18Mg(TR1)を形成する。また、AlとZn、MgとCaはそれぞれ、互いに原子半径が近いため、めっき層中ではAlの一部がZnに置換するとともに、Mgの一部がCaに置換した(Al,Zn)18(Ca,Mg)(TR1)として存在する場合もある。
また、めっき層においてCaが不足する領域では、(Al,Zn)18(Mg)(TR1)が形成する場合もある。
これらの金属間化合物はいずれも結晶構造が似ており、互いに区別することが難しい。これらの金属間化合物については、XRD上でもほぼ同一の位置に回折ピークなどが現れる。ただし、本実施形態における効果を享受する観点からすると、いずれの金属間化合物が形成されているかは、特に問題がなく、めっき層に含有された際の性能はほぼ同等であり区別する必要はない。詳細は後述する。
めっき浴中にTR1を添加することで、めっき浴の粘性が大幅に向上し、めっき浴から鋼材を引き上げる際にめっき浴の持ち上げ量が大きくなる。つまり、本実施形態によれば、めっき層の構成元素としてTR1を採用することで分厚いめっき鋼板が製造可能で、めっき寿命に優れためっき鋼板を容易に製造することができる。
この効果を得るためには、めっき層中において一定以上のTR1含有金属間化合物量を含有することが有効である。具体的には、めっき層の厚み方向に沿った断面において、TR1含有化合物の合計の面積率が1%以上であることが好ましい。TR1含有化合物の合計の面積率を高めることで、十分なめっき厚を確保できるとともに、密着性に優れためっき層を得ることができる。適切な製造方法で作製されためっき層におけるこの面積率は、主に遷移金属TR1の添加濃度に比例する。TR1含有化合物は、走査型電子顕微鏡(SEM)によって観察できる。TR1含有化合物等の金属間化合物の面積分率の測定の詳細は後述する。
また、めっき層中にこれらのTR1含有金属間化合物が多量に含有されると、TR1含有金属間化合物が粗大に成長する。この場合、XRDでもその金属間化合物が検出することができる。
TR1含有金属間化合物の役割は、めっき層の厚みの増大のほか、めっき層の腐食過程において、遷移金属が腐食生成物中に取り込まれるようになる。腐食生成物の効果は、特に犠牲防食性に現れる。例えば、この粗大なTR1含有金属間化合物を含むめっき層は、めっき鋼材の切断端面部においてこの粗大なTR1含有金属間化合物とMgとが共存することで腐食生成物が安定的に形成するようになり、腐食初期における切断端面部からの赤さび発生を抑制することが可能である。また、TR1含有金属間化合物が粗大に成長することでめっき表面に凹凸が現れ外観も変化する。
TR1含有金属間化合物は、高感度で定量性に優れる検出方法であるGDS法(グロー放電発光分光分析法)により間接的にその存在を確認可能である。
めっき層中に残存した遷移金属元素は優先的にこれらの金属間化合物を形成する。他方、遷移金属元素はFeに拡散しやすいため、鋼材内部(Fe内部)に多量の遷移金属元素を拡散させるとめっき層内の遷移金属元素の量が少なくなる。なお、TR1の添加濃度が少なく、微細な結晶粒が入り、TR1がめっき層全体に分布する場合も容易に検出することが可能である。
さらに、TR1金属間化合物がめっき層中に多量に含有される場合は、めっき層の断面を走査型電子顕微鏡(SEM)によって観察することにより、当該金属間化合物を直接特定するとともに、含有される金属間化合物の面積分率の測定により、化合物の含有効果の影響の大小を特定することができる。これらの測定方法は後述する。
他の金属間化合物
Ca、Siが含有される場合、上述したようなTR1含有金属化合物の他に、Al-Ca-Si化合物が形成される場合がある。また、TR1含有金属化合のうち、Alの一部はZnに置換される場合がある。CaもMgの一部と置換する場合がある。
Siは、MgSiを形成しやすいが、Caが存在する場合には、Al-Ca-Si化合物を形成する。ただし、Ca濃度を超えてSiが多量に含有されるとMgSiを形成するが、このMgSiは耐食性を低下させるため多量に形成されることは好ましくない。ただし、微量のMgSiであれば、めっき層全体に及ぼす耐食性劣化は小さい。
Sn、Inは、Mgと結合する傾向にあり、MgSn、MgSn、MgInを形成する。これらは、上述のように犠牲防食性に優れる相である。Niが含有する場合は、AlNiなどが含有される場合がある。本実施形態において、めっき層を構成する各元素は、原子半径や性質によって群分けされている。そのため、その他の元素が含有された場合は、これら代表的な金属間化合物の置換体を形成する可能性がある。一般的に、これらの金属間化合物はめっき層内で主相を占めないため、その性能への影響は小さい。
次に、本実施形態に係るめっき層における遷移金属元素TR1を含有する金属間化合物の確認方法について説明する。なお、評価においてめっき層の凝固や組織的な特徴の影響をなくすためには、めっき層の断面観察のためのSEMやGDS、XRDに供するサンプルのめっき厚さは25μm(±2μm)とすることが好ましい。このようにすることで、各めっき成分間での相対的な評価が可能となる。
めっき層の内部の深さ方向の成分分析方法には、グロー放電発光分光分析装置(GDS)を使用するとよい。本発明者らは、グロー放電発光分光分析装置としてLECOジャパン850Aを使用するが、測定装置はこれに限定されるものではない。深さ方向の分析を行う場合は、Arスパッタを行いつつ分析することが好ましく、その分析条件は、アルゴン圧:0.27MPa、出力電力:30W、出力電圧:1000V、放電領域:直径4mmの円形の領域内、とする。測定は、めっき層の表面から深さ方向に向けて、Fe濃度が100%(地鉄に到達する)になるまで実施する。したがって、GDSによる深さ方向分析の分析範囲は、めっき表面から、Zn-Al-Mgめっき層、場合によっては、めっき層との間に存在するFe-Alなどの合金層、および、プレめっき層、そして鋼材の一部まで達する範囲となる。GDS分析後は、東京精密株式会社製の「surfcom130A」を使用して断面のスパッタ深さを測定する。GDS分析によって、めっき層の深さ方向の元素分布プロファイルが得られる。元素分布プロファイルでは、検出された元素の全量を100%とした場合に、各元素の深さ方向の含有量の分布が示される。めっき層と鋼材との境界(界面)は、Fe量が95質量%を超えた位置(t)とし、その位置よりも深い領域は地鉄(鋼材)と判断する。
本実施形態では、めっき層の表面から鋼材に向けてGDS分析した場合の元素分布プロファイルにおいて、めっき層の表面から界面までの間隔をめっき層の厚みをtとした場合、めっき層の表面から界面までの領域において、遷移金属元素TR1の合計の濃度ΣTR1が0.1%以上の強度を示す領域が、0.1t以上(めっき層の全厚に対して10%)存在する。なお、めっき層中に2種類以上の遷移金属元素TR1が含有する場合には、遷移金属元素TR1の合計の濃度ΣTR1は、得られた元素分布プロファイルにおいて遷移金属元素TR1の合計の(濃度)強度プロファイルを得る。
図1には、本実施形態に係るめっき層について、GDSによる深さ方向分析の結果の一例を示す。図1に示すグラフは、元素分布プロファイルである。図1に示す例の場合、めっき厚みtは26μmである。
上記の評価範囲、すなわちめっき層の表面から界面までの領域において、ΣTR1が0.1%以上を示す領域が、深さ方向に0.1t以上連続して存在する場合、めっき層の製造時に、明確な粘性増大の効果が現れたものということができる。具体的には、ワイピングや通板速度が一定の同条件のめっき条件で、めっき層の厚みが増大している。めっき層の腐食量を考えた際、めっき厚みが増大することは耐食性の観点から鋼材の防食期間が向上することにつながり好ましい。
なお、上記で説明したような、めっき層における遷移金属元素の適切な分布の実現のためには、製造条件を適切に制御することが有効である。すなわち、めっき浴の温度、めっき原板などを適切に管理することが有効である。
また、めっき原板にNi層、Co層などのプレめっき層が存在する場合、GDSによって、めっき後でもNi層、Co層の残存を確認できる。
本実施形態においては、化学組成におけるNiおよびCoを遷移金属元素TR2とした場合、元素分布プロファイルにおいて、TR2濃度の最大値を示す深さをt(TR2)、TR1濃度の最大値を示す深さをt(TR1)としたとき、下記(1)式を満たすことが好ましい。
t(TR2)-t(TR1)≦0.30t ・・・(1)
式(1)を満たす場合、すなわち、界面付近に遷移金属元素TR1およびTR2の層の残存が見られる際、優れた密着性に加えて高い犠牲防食性が得られることが判明した。これは、素地鋼の露出が抑制され、界面付近に犠牲防食性に優れるTR1を含む金属間化合物が多量に存在するためと考えられる。式(1)を満たすためには、あらかじめNi層やCo層などを設け、かつ、遷移金属の拡散を十分に抑制する程度の付着量を確保することが有効である。
遷移金属元素TR1を含有する金属間化合物(TR1含有金属間化合物)の占める面積率の測定方法は、電子線マイクロアナライザー(EPMA)を用いる。めっき層の断面を露出させ、EPMAに付属する走査型電子顕微鏡によってめっき層の深さ方向の垂直断面を観察し、V,Mn,の存在領域を特定する。特定されたこれらの領域を、TR1を含有する金属間化合物と特定する。更に、特定されたこれらの領域を、点分析などを使用して定量分析し、原子%の割合から金属間化合物を特定する。例えば、本実施形態で得られる金属間化合物はAl10Ca(TR1)、Al18Mg(TR1)などであるが、原子比率がこれらに近ければよい。なお、遷移金属元素の濃度が低い場合は、微細粒となるためEPMAの解析は難しい場合がある。そのような場合には、TEMなどを使用して電子線回折像から金属間化合物を特定するとよい。
金属間化合物を特定後、TR1含有金属間化合物の合計の面積分率を求める。
より具体的には、1000倍の視野にて、EPMAによる元素マッピング像を得る。検出対象とする遷移金属のマップ像が金属間化合物の位置に対応するため、めっき層に対する金属間化合物の占める面積率を元素マッピング像から求めることができる。本実施形態では、めっき層の断面において、TR1含有金属間化合物が、面積率で1%以上含有することにより、めっき層の付着量が増大する傾向にある。より好ましくは、TR1含有金属間化合物の面積率は、5%以上、15%以上、25%以上である。また犠牲防食性を向上させる観点からは、15%以上含有することが好ましい。めっき層内の面積率は、添加された遷移金属元素の濃度と相関関係がみられる。
各元素のマッピング画像が得られたら、ImageJなどの画像解析ソフトを利用して解析を行う。Znマッピング画像(本実施形態においては、めっき層のいかなる部位においても微量以上のZnが分布する)については、これを2値化して、めっき層全体が白、または黒になるように閾値を設定した上で、ピクセル単位でZnマップのピクセル数を算出する。
次に、遷移金属元素TR1マッピング画像についても2値化した上で、TR1含有金属間化合物(TR1の検出位置がSEM像の金属間化合物の場所に一致する領域)がわかるようにTR1のピクセル数を得る。TR1のピクセル数を、Znのピクセル数で除した値が、TR1含有金属間化合物の面積率を表す。同様の操作を、20視野に渡って行う。すなわち、めっき層の断面において異なる視野をランダムに20視野選択し、各視野において面積分率を求め、その平均値を求める。
次に、TR1含有金属間化合物のX線回折による指標について述べる。
X線回折測定は、GDS分析に比較して検出感度が低いので、めっき層中に一定量以上の遷移金属元素を含有する金属間化合物が含まれていることが前提になる。具体的には、上記EPMAによって求められるTR1含有金属間化合物の面積率が5%以上占めていることが望ましい。すなわち、特定方位を示す程度の結晶サイズがめっき層内に現れたとき、XRDでもこれらの金属間化合物が検出できるようになる。めっき層内部の核が成長してめっき層内に特定方位の結晶が成長するとめっき層表面に凹凸が形成し、金属的な反射が抑えられ、コンクリート調の均質外観が得られやすい。これは、光沢度が適度に減少し、建材で様々な素材に使用されるめっき鋼板としては好ましい性能である。
X線回折測定においては、Cu-Kα線を使用し、X線出力が50kV及び300mAである条件で測定した、めっき層表面のX線回折パターンにおいて、下記(4)式に規定するIと、下記(5)式に規定するIとがそれぞれ、下記(2)式及び(3)式を満たすことが好ましい。
1.5≦I …(2)
1.5≦I …(3)
=(Imax(10.5°~11.0°)/(I(10.5°)+0.2{|(I(11.0°)-I(10.5°)|}) …(4)
=(Imax(20.2°~20.5°))/(I(20.2°)+0.667{|I(20.5°)-I(20.2°)|}) …(5)
ただし、Imax(k~m°)は回折角度k~m°の間におけるX線回折強度の最大値であり、I(n°)は回折角度n°におけるX線回折強度であり、k、m、nはそれぞれ式(4)及び式(5)中に示される回折角度(2θ)である。
式(4)及び式(5)におけるI、Iは、(TR1)MgAl18で表される金属間化合物に関するピークであり、例えばJCPDSカード#00-040-1153(VMgAl)や、#04-007-9047(MnMgAl18)、#04-008-7169(CrMgAl18)において定義される金属間化合物が含まれるが,(TR1)及び(TR1´)の元素が変化した場合でも、回折ピーク位置はほとんど変わらない。そのため、これらの金属間化合物は同類として扱ってもよく、また、I、Iの回折位置は他の回折ピークと重ならないため、検出に適した回折ピークである。すなわち、I、Iは、V含有金属間化合物及びMn含有金属間化合物のX線回折ピークに関する規定を代表している。また、Mo含有金属間化合物について述べると、CaMoAl20はJCPDSカード#00-051-1061で定義されるものである。
なお、これらの金属間化合物は、互いに回折ピークが類似しており、個々の区別をすることが困難であるため、すなわち、互いにAl及びMgが固溶しあい、Zn及びCaが固溶しあうため、ほぼ成分と構造が同構造になっていると想定され、回折ピークもほぼ同じ位置に現れる。従って、これらの遷移金属含有金属間化合物は、X線回折測定において互いに区別する必要はない。
一方、本実施形態に係るめっき層では、これらのTR1含有金属間化合物の多くの回折ピークが、他の主要構成相である、MgZn、Al、Znと回折ピークが重複する。従って、TR1含有金属間化合物の多くの回折ピークのうち、他の構成相と重複しない回折ピークに着目する必要がある。その一つが、2θ=10.6°近傍の回折ピークであり、もう一つが、20.4°近傍に現れる回折ピークである。
式(4)は、2θ=10.6°近傍の回折ピークに着目した式である。式(4)におけるImax(10.5°~11.0°)は回折角度10.5°~11.0°の間におけるX線回折強度の最大値である。Imax(10.5°)は回折角度10.5°におけるX線回折強度であり、Imax(11.0°)は回折角度11.0°におけるX線回折強度である。
また、式(5)は、2θ=20.4°近傍の回折ピークに着目した式である。式(4)におけるImax(20.2°~20.5°)は回折角度20.2°~20.5°の間におけるX線回折強度の最大値である。Imax(20.2°)は回折角度20.2°におけるX線回折強度であり、Imax(20.5°)は回折角度20.5°におけるX線回折強度である。
式(4)、(5)の分子は、TR1含有化合物の回折ピークに相当する強度であって、バックグラウンド強度を含む回折ピークの最大回折強度である。X線回折の測定誤差により、回折ピークが10.6°または20.4°から外れる場合があるため、10.5°~11.0°、20.2°~20.5°の間における最大値を取得することにしている。
式(4)、(5)の分母は、回折角度10.6°または20.4°におけるバックグラウンド強度を、10.6°または20.4°における回折強度から計算によって求めたものである。
例えば式(4)の分母については、図2に示すように、10.5°における回折線と11.0°における回折線とを結ぶ直線を引く。この直線が回折ピークのベースラインになる。次に、I(10.5°)-I(11.0°)の絶対値を求める。また、回折角度10.5°と11.0°との差分(0.5°)に対する、回折角度10.5°と10.6°との差分(0.1°)の比(0.1/0.5=0.2)を求める。そして、回折角度10.6°におけるバックグラウンド強度を、上記式(4)の分母に記載した数式により計算する。
式(5)の分母については、図2の場合と同様に、20.2°における回折線と20.5°における回折線とを結ぶ直線を引く。この直線が回折ピークのベースラインになる。
次に、I(20.2°)-I(20.5°)の絶対値を求める。また、回折角度20.2°と20.5°との差分(0.3°)に対する、回折角度20.2°と20.4°との差分(0.2°)の比(0.2/0.3=0.667)を求める。そして、回折角度20.4°におけるバックグラウンド強度を、上記式(5)の分母に記載した数式により計算する。
X線回折像を得る条件は下記の通りとする。
X線源として、CuをターゲットとするX線回折法が、めっき層における構成相の平均的な情報を得られるため、最も都合がよい。測定条件の一例として、X線の条件を電圧50kV、電流300mAとする。X線回折装置としては特に制限はないが、例えば、株式会社リガク製の試料水平型強力X線回折装置RINT-TTR IIIを用いることができる。
[溶融めっき鋼材の製造方法]
次に、本実施形態の溶融めっき鋼材の製造方法について説明する。
本実施形態の溶融めっき鋼材は、連続溶融めっき法によって製造することが好ましい。なお、鋼材のサイズの制約のため、必要に応じて、バッチ式の溶融めっき法にて製造することも可能である。
<製法A:ゼンジマー法>
ここで、本実施形態では、上述したように、浴中に添加された遷移金属元素TR1の拡散を十分に抑制し、めっき層内部に遷移金属元素TR1を取り残し、めっき層内に特定の金属間化合物(TR1含有金属間化合物)を形成する。しかし、通常のゼンジマー法でめっき層を形成すると、鋼材面(Fe面)への遷移金属元素TR1の拡散が活発となり、めっき浴浸漬時に遷移金属元素TR1がFe表面に集まって、還元効果が失われやすく、遷移金属元素TR1からなる酸化膜が発生する。このような状態のめっき層は、めっき非付着部の不めっきの発生や、加工時の剥離につながるため好ましくない。
<製法B>
そこで、本発明者らが最適な製法条件について検討した結果、遷移金属元素TR1をめっき層内に有効に残すためには、めっき原板に物理的な拡散障壁を形成することが有効であることを見出した。なお、「物理的な拡散障壁」とは、例えば、めっき原板の表面のFe面において、電気めっきによって析出したFe結晶との不整合面を形成することである。具体的には、めっき原板の表面のFe面に、Feめっき層(例えば、0.5~2.0g/m)付着させる。これにより、Fe面とFeめっき層との間に結晶粒の連続が形成され、一時的な拡散防止効果が得られるとともに、その後、Feめっき層を形成させためっき原板を高温の浴へ浸漬させることによって、Feが溶解してめっき浴内に拡散していく。そして、多くのFeは遷移金属間化合物の核となってその成長を促し、その痕跡はほぼ残らず、めっき層内で遷移金属元素TR1を有効に残存させることができる。このような、本製法Bの場合は、Fe層の溶解を同時に促進するため、めっき浴温は590~620℃の範囲であることが好ましく、この温度範囲外では、不めっきや密着性に悪影響がでる場合がある。またさらに、遷移金属元素TR1の一部はFe面に拡散するため、めっき原板の酸化条件を十分に制御する必要がある。具体的には、露点0℃以上として、酸素と遷移金属元素TR1との反応を阻害することが有効である。
一方、上述した製法A(ゼンジマー法)の場合は、不めっきの要因となるCr、Mo、Mn、Vが、反応時に瞬時に界面に集まりやすいため、不めっきを引き起こしやすい。また、上述した製法A(ゼンジマー法)は、これら元素を反応時に界面に集まらせずにめっき浴の沖合に留まらせるといったFeめっき層の作用、効果も発現できないことから、製法上好ましくない。
<製法C>
また、よりめっき層内に効率的に遷移金属元素を残すためには、プレめっき層としてFeめっき層を形成する前に、Niプレめっき層、もしくはCoプレめっき層を形成してあげることが好ましい。Niプレめっき層もしくはCoプレめっき層は、遷移金属元素のFe面への拡散のさらなるバリアとして機能する。Niプレめっき層もしくはCoプレめっき層上に存在するFeめっき層は上記製法Bと同様、めっき時に遷移金属元素と反応し、その後、めっき層内に速やかに拡散していく。すなわち、Feめっき層と遷移金属元素とがめっき時に反応することによって、界面に集積しためっき浴が沖合に移動され、フレッシュなFe面が再度得られるという還元の反復効果を享受できる。これは、母材のFeと電気めっきによって析出したFeめっき層のFe結晶(微細粒)による結晶面の不整合性が、遷移金属元素との反応に関わっていると考えられる。Niプレめっき層のNiおよびCoプレめっき層のCoは、めっき浴側へ拡散するよりも、母材のFe面側に拡散する傾向にあり、めっき浴浸漬後もFe面に残りやすい。他方、その上面に形成されたFeめっき層のFeはめっき浴側に拡散していく傾向にある。
なお、下地にNiプレめっき層もしくはCoプレめっき層を備えている場合は、製法Bで採用するような露点制御などは必要ない。本製法Cの場合に有効なNiもしくはCoの付着量は0.5g/m以上である。当該付着量が2.0g/m以上の場合は、界面付近に遷移金属元素をより濃化させることができるため、犠牲防食上好ましい。
<製法D>
一方、Niプレめっき層もしくはCoプレめっき層を単体で用いた場合は、めっき浴へ浸漬した直後、NiもしくはCoが鋼材側に拡散すると同時に、Niプレめっき層もしくはCoプレめっき層上で遷移金属が集積して酸化被膜などが形成しやすい状況となる。その結果、Fe-Ni-遷移金属元素が形成するため、還元しにくい状況となり、酸化被膜が生じる。この場合、めっき密着性は劣り不めっきが発生してしまう。
以上説明したように、本実施形態のめっき鋼材の製造方法としては、上記製法B、製法Cが好ましい。
<そのほかの製造条件>
連続溶融めっき法は、上記製法B、製法Cを満たすようにめっき原板を整えた上でゼンジマー法により行う。すなわち、鋼材をめっき浴に浸漬する前に、窒素-水素混合気体の焼鈍温度において、鋼材温度がめっき浴温以上になるまで鋼材を加熱する。通常、焼鈍雰囲気は水素を含有する窒素雰囲気とし、水素濃度は5%とし、600~800℃近傍の温度で加熱し、鋼材表面を十分に還元する。めっき基板にNiプレめっき層もしくはCoプレめっき層などのプレめっき層を施さない場合は、上記の通り、加湿し、露点調整を実施することが有効である。なお、めっき原板をめっき浴に侵入する際には、鋼材温度をめっき浴温になるまでNガスによる冷却を実施して、製造工程中にめっき浴温が変動しないようにする。
次いで、十分に表面が還元された鋼材を、めっき浴に還元状態で侵入させる。めっき浴の温度は、570℃以上、好ましくは600℃以上とする。
めっき浴への鋼材の浸漬時間は、1~5秒の範囲とする。浸漬時間が5秒を超えると、界面合金層が厚く形成されてしまうので好ましくない。
めっき浴への浸漬後は、直ちにワイピングでめっき層の厚みを調整する。ワイピング完了後は、冷却を行う。
550℃以上での高温時の冷却速度が遅すぎると、Niプレめっき層、Coプレめっき層やFe層のめっき浴への溶け出しが多くなり、めっき性に影響を及ぼす。そのため、浴温~550℃までの冷却は10秒以内に完了させる。
なお、めっき浴に浸漬後は、ただちにFe層中のFeが拡散し、これを核として遷移金属元素を含む金属間化合物が成長する。一方で、浸漬後の冷却速度が大きい場合は、各相の結晶サイズが小さくなり、他方、冷却速度が小さければ、結晶サイズが大きくなる。めっき層の結晶サイズが大きい場合は、めっき厚が大きくなるため好ましい。すなわち、浸漬後の冷却速度は小さい方が好ましい。また、液相が残る350℃までにめっき組織が確定する。以上のことから、めっき浴から引き上げた後、350℃までの冷却速度の上限は100℃/秒以下と設定し、好ましくは50℃/秒以下である。なお、冷却速度の下限はめっき浴引き上げ後、製造ラインの設備制約の観点から1℃/秒以上としてよい。
<製法E>
ここで、Fe層中のFeによる核発生から成長までは、600~300℃の間において液相が存在している状態での冷却速度が影響する。つまり、600~300℃の間では、高温ほど成長しやすく、低温ほど核発生が多くなり、成長しづらくなる。このため、600~450℃の高温領域はゆっくり冷却し、核の発生量を抑制することが好ましい。具体的には、例えばこの高温領域の冷却速度は5~20℃/秒の間に抑制することが好ましい。またプレめっきFeを利用した核成長を促すめっき原板を使用する必要がある。
なお、上記めっき層の形成後は、各種化成処理や塗装処理を行ってもよい。
本実施形態の溶融めっき鋼材には、めっき層上に皮膜を形成してもよい。皮膜は、1層または2層以上を形成することができる。めっき層直上の皮膜の種類としては、例えば、クロメート皮膜、りん酸塩皮膜、クロメートフリー皮膜が挙げられる。これら皮膜の形成は、クロメート処理、りん酸塩処理、クロメートフリー処理などの既知の方法で行うことができる。
クロメート処理には、電解によってクロメート皮膜を形成する電解クロメート処理、素材との反応を利用して皮膜を形成させ、その後余分な処理液を洗い流す反応型クロメート処理、処理液を被塗物に塗布し水洗することなく乾燥して皮膜を形成させる塗布型クロメート処理がある。いずれの処理を採用してもよい。
電解クロメート処理としては、クロム酸、シリカゾル、樹脂(りん酸、アクリル樹脂、ビニルエステル樹脂、酢酸ビニルアクリルエマルション、カルボキシル化スチレンブタジエンラテックス、ジイソプロパノールアミン変性エポキシ樹脂等)、及び硬質シリカを使用する電解クロメート処理を例示することができる。
りん酸塩処理としては、例えば、りん酸亜鉛処理、りん酸亜鉛カルシウム処理、りん酸マンガン処理を例示することができる。
クロメートフリー処理は、特に、環境に負荷なく好適である。クロメートフリー処理には、電解によってクロメートフリー皮膜を形成する電解型クロメートフリー処理、素材との反応を利用して皮膜を形成させ、その後、余分な処理液を洗い流す反応型クロメートフリー処理、処理液を被塗物に塗布し水洗することなく乾燥して皮膜を形成させる塗布型クロメートフリー処理がある。いずれの処理を採用してもよい。
さらに、めっき層直上の皮膜の上に、有機樹脂皮膜を1層もしくは2層以上有してもよい。有機樹脂としては、特定の種類に限定されず、例えば、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリオレフィン樹脂、又はこれらの樹脂の変性体等を挙げられる。ここで変性体とは、これらの樹脂の構造中に含まれる反応性官能基に、その官能基と反応し得る官能基を構造中に含む他の化合物(モノマーや架橋剤など)を反応させた樹脂のことを指す。
このような有機樹脂としては、1種又は2種以上の有機樹脂(変性していないもの)を混合して用いてもよいし、少なくとも1種の有機樹脂の存在下で、少なくとも1種のその他の有機樹脂を変性することによって得られる有機樹脂を1種又は2種以上混合して用いてもよい。また有機樹脂皮膜中には任意の着色顔料や防錆顔料を含んでもよい。水に溶解又は分散することで水系化したものも使用することができる。
以上説明したように、Al量を高めためっき層は、めっき浴の比重低下により、めっき層の付着量を高めることが困難であるところ、本実施形態の溶融めっき鋼材によれば、VもしくはMnを含有することにより、めっき浴の粘性を高めて、付着量が大きなめっき層を備えた溶融めっき鋼材を製造できる。そして、めっき層中には、V含有金属間化合物またはMn含有金属間化合物が含まれるため、耐食性を向上させることができる。また、めっき層にVまたはMnを含有することにより、結果として、界面合金層の厚みを薄くすることができ、これにより、密着性を向上することができる。更に、めっき層の付着量が大きいので、耐食性をより向上することができる。
次に、本発明の実施例について説明するが、実施例での条件は、本発明の実施可能性及び効果を確認するために採用した一条件例であり、本発明は、この一条件例に限定されるものではない。本発明は、本発明の要旨を逸脱せず、本発明の目的を達成する限りにおいて、種々の条件を採用し得るものである。
実施例の詳細を表1~3に示す。
まず、めっきに供するめっき原板(素地鋼材)として、100mm×200mm×0.8mmt、100mm×200mm×2.3mmの厚みの異なる2種類の冷延鋼板(JIS G 3141(2017)該当)を用意した(表中の「0.8mm板」および「2.3mm板」)。
これらの素地鋼材を用いて、ゼンジマー法によって連続溶融めっきに供した。めっき原板には、裏面の中心部にK熱電対をスポット溶接し、めっき工程の温度変化をモニタリングできるようにした。溶融めっきは、レスカ社製、溶融めっきシミュレーターを使用した。
[めっき層の製造条件]
めっき層は、下記の製法A~Eのいずれかを採用して製造した。
各製法いずれにおいても、めっき浴としてZn,Al,およびMgの純金属(純度3N以上)を混合し、表1に示すような化学組成を有するめっき層が得られるように、Zn-Al-Mg系溶融めっき浴を作製した。なお、表中の「原板」に記載の元素はめっき原板上に予め形成したプレめっき層の構成元素であり、当該元素に付された数値は付着量(g/m)を意味する。
<製法A>
溶融めっき法として、ゼンジマー法を採用した。すなわち、めっき原板をめっき浴に浸漬する前に、窒素-水素混合気体の焼鈍温度において、鋼材温度がめっき浴温以上になるまで鋼材を加熱した。焼鈍雰囲気は、5%の水素を含む窒素雰囲気(N-5%H)とし、800℃近傍の温度で1分間程度加熱保持し、鋼材表面を十分に還元した。加湿は実施せず露点は-40℃とした。なお、めっき原板をめっき浴に侵入させる際には、製造工程中にめっき浴温が変動しないように、原板温度がめっき浴温になるまでNガスによる冷却を実施した。めっき浴温は600℃とした。
めっき浴への浸漬時間は3秒とした。引き上げ速度とNガスワイピングを適用して、めっき厚さtを25μm(±2)μmとした。
また、めっき原板の引き上げ後、600~200℃までの温度域を、10℃/秒の冷却速度で冷却した。その後は、自然放冷とした。
<製法B>
溶融めっき法として、ゼンジマー法を採用するが、めっき原板に予めFeめっき層を形成した。Feめっきは、FeSO・7HO:600g/L、6.7A/dm、浴温47℃の条件下で、所定のFe量となるように通電時間を調整して実施した。
その後の、めっき条件は、露点を0℃とした以外、製法Aと同様とした。
<製法C>
溶融めっき法として、ゼンジマー法を採用するが、めっき原板に予め、プレめっき層としてNi層、もしくはCo層を形成した上で、製法Bと同様のFeめっきを実施した。
Niプレめっきは、NiSO・6HO:340g/L、NiCl・6HO:70g/L、HBO:40g/L、浴温50℃、5A/dmの条件下で、所定のNi量となるように通電時間を調整して実施した。
Coプレめっきは、HSO:0.5g/L、CoSO・6HO:246g/L、HBO:45g/L、浴温50℃、5A/dmの条件下で、所定のCo量となるように通電時間を調整して実施した。
その後の、めっき条件は、めっき条件は製法Aと同様とした。
<製法D>
溶融めっき法として、ゼンジマー法を採用するが、めっき原板に予め、プレめっき層としてNi層、もしくはCo層のみ形成した。
その後の、めっき条件は、めっき条件は製法Aと同様とした。
<製法E>
製法Eは製法Cと類似する。製法Eでは、製法Cでめっきを実施し、めっき浴から原板を引き上げた後、ミスト冷却を実行し、30℃/秒の冷却速度で30℃まで冷却した。
以上の製法A~Eによってめっき鋼材を製造した。
得られためっき鋼材中央部から面積4cmのサンプルを切り出した。めっき層の表面からのGDS、XRD、および深さ方向の断面観察をEPMAで実施し、めっき層を解析した。結果を、表3に示す。なお、表3中の「式(1)」の欄は、「(t(TR2)-t(TR1))/t」の計算結果を示している。
[性能]
次に、得られためっき鋼材の各性能を「0.8mm板」および「2.3mm板」を用いて評価した。具体的には、めっき厚さ影響、密着性、犠牲防食性および光沢度について調査した。
(めっき厚さ影響)
めっき厚さへの影響については次の試験により評価した。
サンプルサイズ100×200×0.8mmのめっき原板を、めっき浴に浸漬する前に、N-5%Hの還元雰囲気のもとで焼鈍し、原板表面を還元した。その後、めっき浴に3秒以上浸漬して、原板を垂直方向に引き上げた。
引き上げ速度を10mm/秒、50mm/秒、100mm/秒の3パターンにおいてそれぞれ試験を行った。この際、ワイピングは適用しなかった。
めっき層の厚さは、付着量から換算した。具体的には、得られためっき鋼板の中心部からφ50mmの試料を採取し、インヒビターを入れた10%塩酸に浸漬してめっき層のみを剥離して剥離前後の重量差からめっき付着量を求めた。めっき層の厚さは付着量を成分の理論密度で除した値で算出した。これら3水準をN=3で繰り返し試験を実施し、全サンプルの平均値から平均めっき厚さを求めた。評価基準は以下の通りとし、「S」、「A」、「B」、「C」および「D」を合格とし、「E」を不合格とした。
平均めっき厚さが31.5μm超…「S」
平均めっき厚さが30μm超、31.5μm以下…「A」
平均めっき厚さが27μm超、30μm以下…「B」
平均めっき厚さが24μm超、27μm以下…「C」
平均めっき厚さが21μm超、24μm以下…「D」
平均めっき厚さが21μm以下…「E」
(密着性)
めっき層の密着性(不めっき)は、1t曲げ試験により評価した。
まず、得られためっき鋼材から、めっき層を含むように、40mm×120mm×0.8mmのサイズのサンプルを採取した。次いで、採取されたサンプルを、長手方向(120mm)中央で曲げた(片面長さ60mm)。
サンプルには予め、めっき鋼板の両面にテープをしっかりと貼り付けた。1t(鋼板の板厚一枚分)を内側に挟み、ジグで180℃曲げを行い完全にプレスすることで、内側に鋼板一枚分のスペースをもつ曲げ試験片が作製される。その後、内側の鋼板を取り外し、テープを勢いよく引っ張り剥がした。この際に、内側、外側のテープを黒色の厚紙に貼り付けて加工部におけるめっき剥離粉の有無を確認した。評価基準は以下の通りとし、「G」を合格とし、「B」を不合格とした。
表裏共に剥離粉あり…「Bad(B)」
表裏共に剥離粉なし…「Good(G)」
(犠牲防食性)
得られためっき鋼材の異なる位置から、50×100×2.3mmの長方体サンプルを3つ採取した。なお、切断端面にみられるシャー部分の影響を排除するため、4端面を鏡面研磨した。このサンプルを0.01MのNaCl水溶液に10秒完全に浸漬して、湿度45%、温度30℃に、240時間、水平におき、このサイクルを3セット繰り返した。
240時間後の4端面における赤錆面積率を測定した。3つのサンプルで同じ試験を実施し、平均を赤錆面積率とする。評価基準は以下の通りとし、「EX」、「VG」および「G」を合格とし、「B」を不合格とした。
赤錆面積率が10%未満…「Excellent(EX)」
赤錆面積率が10%以上、20%未満…「Very Good(VG)」
赤錆面積率が20%以上、30%以下…「Good(G)」
赤錆面積率が30%超…「Bad(B)」
(光沢度)
2.3mm板のサンプル中央部から光沢試験用のサンプルを切り出し、当該サンプルを用いて光沢度を測定した。
具体的には、サンプルの表面に対し、光沢度計によって、JIS Z 8741:1997に規定される60°光沢(G60)を測定した。0.8mmで製造したサンプルを使用した。めっき鋼材の表面のランダム10か所の60°光沢を求めて、これらの平均値を求めた。評価基準は以下の通りとし、「FA」の場合を良好(つまり光沢度が低い)と判断した。
60°光沢(G60)が40以下…「favorable(FA)」
60°光沢(G60)が40超…「dazzling(DZ)」
本発明に係る上記態様によれば、比較的に比重の重い元素(特に、遷移金属元素)を含有めっき層の場合でも、めっき厚を確保し得る溶融めっき鋼材を提供できる。その結果、長期にわたって良好な耐食性を発揮することが可能な、長寿命の溶融めっき鋼材を提供することができる。

Claims (4)

  1. 鋼材と、
    前記鋼材の表面に配置されためっき層と、を有する溶融めっき鋼材であり、
    前記めっき層が、質量%で、
    Al:10%超、40%未満、
    Mg:4.0%以上、15.0%以下、
    Si:0%以上、2.0%以下、
    V :0%以上、3.0%以下、
    Mn:0%以上、3.0%以下、
    Cr:0%以上、3.0%以下、
    Mo:0%以上、3.0%以下、
    Sn:0%以上、0.7%以下、
    Bi:0%以上、0.3%以下、
    In:0%以上、0.3%以下、
    Ca:0%以上、0.6%以下、
    Y :0%以上、0.3%以下、
    La:0%以上、0.3%以下、
    Ce:0%以上、0.3%以下、
    Sr:0%以上、0.3%以下、
    Li:0%以上、0.3%以下、
    Ni:0%以上、3.0%以下、
    Co:0%以上、3.0%以下、
    Cu:0%以上、0.25%以下、
    Ag:0%以上、0.25%以下、
    Sb:0%以上、0.25%以下、
    Pb:0%以上、0.25%以下、
    B :0%以上、0.50%以下、
    P :0%以上、0.50%以下、
    Ti:0%以上、0.25%以下、
    Nb:0%以上、0.25%以下、
    Zr:0%以上、0.25%以下、
    W :0%以上、0.25%以下、
    Fe:0%以上、5.0%以下、
    残部Zn及び不純物であり、
    V及びMnの合計量ΣTR1:0.05%以上、3.0%以下、
    Cr及びMoの合計量ΣTR1’:0%以上、3.0%以下、
    ΣTR1+ΣTR1’:0.05%以上、3.0%以下、
    Sn、Bi及びInの合計量Σα:0%以上、0.7%以下、
    Ca、Y、La、Ce、Sr及びLiの合計量Σβ:0%以上、0.6%以下、
    Ni及びCoの合計量ΣTR2:0%以上、3.0%以下、
    Cu、Ag、Sb、Pb、B、P、Ti、Nb、Zr及びWの合計量Σγ:0%以上、1.00%以下、
    である化学組成を有し、
    前記めっき層の表面から前記鋼材に向けて、前記鋼材の厚さ方向にGDS分析した場合の元素分布プロファイルにおいて、Fe濃度が95%に達する深さ位置を前記めっき層と前記鋼材との界面とし、前記めっき層の前記表面から前記界面までの間隔を前記めっき層の厚みtとした場合、前記合計量ΣTR1が0.1%以上を示す深さの割合が、前記厚みtに対して10%以上である、溶融めっき鋼材。
  2. 前記化学組成におけるVおよびMnをTR1とした場合、
    前記めっき層中に、TR1含有金属間化合物を含有し、
    前記めっき層の断面において、前記TR1含有金属間化合物の合計の面積率が1%以上である、請求項1に記載の溶融めっき鋼材。
  3. 前記化学組成におけるNiおよびCoをTR2とした場合、
    前記元素分布プロファイルにおいて、TR2濃度の最大値を示す深さをt(TR2)、TR1濃度の最大値を示す深さをt(TR1)としたとき、下記(1)式を満たす、請求項1または2に記載の溶融めっき鋼材。
    t(TR2)-t(TR1)≦0.30t ・・・(1)
  4. Cu-Kα線を使用し、X線出力が50kV及び300mAである条件で測定した、前記めっき層の前記表面のX線回折パターンにおいて、下記(4)式に規定するI及び下記(5)式に規定するIが、下記(2)式及び(3)式を満たす、請求項1または請求項2に記載の溶融めっき鋼材。
    1.5≦I …(2)
    1.5≦I …(3)
    =(Imax(10.5°~11.0°)/(I(10.5°)+0.2{|I(11.0°)-I(10.5°)|}) …(4)
    =(Imax(20.2°~20.5°))/(I(20.2°)+0.667{|I(20.5°)-I(20.2°)|}) …(5)
    式(4)及び式(5)において、Imax(k~m°)は回折角度k~m°の間におけるX線回折強度の最大値であり、I(n°)は回折角度n°におけるX線回折強度であり、k、m、nはそれぞれ式(4)及び式(5)中に示される回折角度(2θ)である。
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