図面を参照して、実施形態としての車両の制御装置について説明する。以下に示す実施形態はあくまでも例示に過ぎず、以下の実施形態で明示しない種々の変形や技術の適用を排除する意図はない。本実施形態の各構成は、それらの趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。また、必要に応じて取捨選択することができ、あるいは適宜組み合わせることができる。
[1.全体構成]
本実施形態の制御装置5は、図1に示す車両10に適用され、この車両10に搭載されるトランスアクスル1を制御する。この車両10は、駆動源としてのエンジン2と走行用のモータ3(電動機,第一の回転電機)と発電用のジェネレータ4(発電機,第二の回転電機)とを装備したハイブリッド車両である。ジェネレータ4はエンジン2に連結され、モータ3の作動状態とは独立して作動可能とされる。車両10には、モータ3の電力源であるバッテリ6が搭載される。
また、車両10にはEVモード,シリーズモード,パラレルモードの三種類の走行モードが用意される。これらの走行モードは、制御装置5によって、車両状態や走行状態,ドライバの要求出力等に応じて択一的に選択され、その種類に応じてエンジン2,モータ3,ジェネレータ4が使い分けられる。なお、モータ3は発電機能(ジェネレータの機能)を有していてもよいし、また、ジェネレータ4は電動機能(モータの機能)を有していてもよい。
EVモードは、エンジン2及びジェネレータ4を停止させたまま、駆動用のバッテリ6の充電電力を用いてモータ3のみで車両10を駆動する走行モードである。EVモードは、走行負荷,走行速度が低い場合やバッテリ6の充電レベルが高い場合に選択される。シリーズモードは、エンジン2でジェネレータ4を駆動して発電しつつ、その電力を利用してモータ3で車両10を駆動する走行モードである。シリーズモードは、走行負荷が高い場合やバッテリ6の充電レベルが低い場合に選択される。パラレルモードは、おもにエンジン2で車両10を駆動し、必要に応じてモータ3で車両10の駆動や制動をアシストする走行モードであり、走行速度が高い場合に選択される。
駆動輪8には、トランスアクスル1を介してエンジン2及びモータ3が並列に接続され、エンジン2及びモータ3のそれぞれの動力が個別に伝達される。また、エンジン2には、トランスアクスル1を介してジェネレータ4及び駆動輪8が並列に接続され、エンジン2の動力が駆動輪8に加えてジェネレータ4にも伝達される。
トランスアクスル1は、デファレンシャルギア18(差動装置、以下「デフ18」と呼ぶ)を含むファイナルドライブ(終減速機)とトランスミッション(減速機)とを一体に形成した動力伝達装置であり、駆動源と被駆動装置との間の動力伝達を担う複数の機構を内蔵する。本実施形態のトランスアクスル1は、ハイロー切替(高速段,低速段の切替)が可能に構成されており、パラレルモードにおいて、制御装置5によって走行状態や要求出力等に応じてハイギア段とローギア段のいずれかが選択される。
エンジン2は、ガソリンや軽油を燃料とする内燃機関(ガソリンエンジン,ディーゼルエンジン)である。このエンジン2は、クランクシャフト2a(回転軸)の向きが車両10の車幅方向に一致するように横向きに配置されたいわゆる横置きエンジンであり、トランスアクスル1の右側面に対して固定される。クランクシャフト2aは、駆動輪8のドライブシャフト9に対して平行に配置される。エンジン2の作動状態は、制御装置5で制御されてもよいし、図示しないエンジン制御装置で制御されてもよい。
モータ3及びジェネレータ4はいずれも、電動機としての機能と発電機としての機能とを兼ね備えた電動発電機(モータジェネレータ)である。モータ3は、バッテリ6と電力の授受を行う駆動源であり、おもに電動機として機能して車両10を駆動し、回生時には発電機として機能する。ジェネレータ4は、エンジン2を始動させる際に電動機(スターター)として機能し、エンジン2の作動時にはエンジン動力で駆動されて発電することでバッテリ6に電力を供給する。モータ3及びジェネレータ4の各周囲(又は各内部)には、直流電流と交流電流とを変換するインバータ(図示略)が設けられる。モータ3及びジェネレータ4の各回転速度は、インバータを制御することで制御される。なお、モータ3,ジェネレータ4,各インバータの作動状態は、制御装置5で制御されてもよいし、図示しないモータ制御装置やジェネレータ制御装置によって制御されてもよい。
車両10には、車速を検出する車速センサ42と、シフトポジションを検出するシフトポジションセンサ43とが設けられる。車速センサ42は、車速を検出する車速検出部の一例である。また、本実施形態の車両10には、モータ3の回転速度を検出するモータ回転速度センサ44と、駆動輪8側の出力軸12の回転速度を検出する出力軸回転速度センサ45と、バッテリ6の電圧を検出する電圧センサ46と、バッテリ6の入出力電流を検出する電流センサ47と、アクセルペダルの踏み込み量(アクセル開度)やその踏み込み速度(アクセル開速度)を検出するアクセル開度センサ49とが設けられる。各センサ42~47,49で検出された情報は、制御装置5に伝達される。
制御装置5は、例えばマイクロプロセッサやROM,RAM等を集積したLSIデバイスや組み込み電子デバイスとして構成された電子制御装置であり、車両10に搭載される各種装置を統合制御する。本実施形態の制御装置5は、ドライバの要求出力等に応じて走行モードを選択し、選択した走行モードに応じて各種機器(例えばエンジン2やモータ3)を制御するとともにトランスアクスル1内の断接機構20,30の断接状態を制御する。
[2.トランスアクスル]
図2は、エンジン2,モータ3,ジェネレータ4,トランスアクスル1を含むパワートレイン7を左側から見た側面図である。なお、この側面図ではエンジン2を省略している。また、図3は、本実施形態のトランスアクスル1を備えたパワートレイン7のスケルトン図である。図2及び図3に示すように、トランスアクスル1には、互いに平行に配列された六つの軸11~16が設けられる。以下、クランクシャフト2aと同軸上に接続される回転軸を入力軸11と呼ぶ。
同様に、ドライブシャフト9,モータ3の回転軸3a,ジェネレータ4の回転軸4aのそれぞれと同軸上に接続される回転軸を、出力軸12,モータ軸13,ジェネレータ軸14と呼ぶ。また、入力軸11と出力軸12との間の動力伝達経路上に配置された回転軸を第一カウンタ軸15と呼び、モータ軸13と出力軸12との間の動力伝達経路上に配置された回転軸を第二カウンタ軸16と呼ぶ。
六つの軸11~16はいずれも、両端部が図示しない軸受を介してトランスアクスル1のケーシング1Cに軸支される。また、入力軸11,出力軸12,モータ軸13,ジェネレータ軸14のそれぞれの軸上に位置するケーシング1Cの側面には開口が形成されており、これらの開口を通じてクランクシャフト2a等と接続される。
トランスアクスル1の内部には、三つの動力伝達経路が形成される。具体的には、図2中に二点鎖線で示すように、モータ3からモータ軸13を介して出力軸12に至る動力伝達経路(以下「第一経路51」と呼ぶ)と、エンジン2から入力軸11を介して出力軸12に至る動力伝達経路(以下「第二経路52」と呼ぶ)と、エンジン2から入力軸11を介してジェネレータ軸14に至る動力伝達経路(以下「第三経路53」と呼ぶ)とが形成される。ここで、第一経路51及び第二経路52は駆動用動力伝達経路であり、第三経路53は発電用動力伝達経路である。
第一経路51は、モータ3から駆動輪8側の出力軸12への動力伝達に係る経路であり、モータ3の動力伝達を担うものである。第一経路51は、モータ3から出力軸12に至る第一動力伝達経路の一例である。第一経路51の中途には、その動力伝達を断接する断接機構20が介装される。断接機構20は、例えばスリーブ式クラッチ,多板クラッチ,クラッチやブレーキを含む遊星歯車機構などで構成される。以下、この断接機構20を「モータクラッチ20」という。
第二経路52は、エンジン2から駆動輪8側の出力軸12への動力伝達に係る経路であり、エンジン2の作動時における動力の伝達を担うものである。第二経路52の中途には、その動力伝達の断接とハイロー切替とを実施する後述のエンジン側断接機構30が介装される。第二経路52は、エンジン2から出力軸12に至る第二動力伝達経路の一例である。エンジン側断接機構30は、例えばスリーブ式クラッチ,多板クラッチ,クラッチやブレーキを含む遊星歯車機構などで構成される。以下、このエンジン側断接機構30を「エンジンクラッチ30」という。第三経路53は、エンジン2からジェネレータ4への動力伝達に係る経路であり、エンジン2の始動時の動力伝達及びエンジン2による発電時の動力伝達を担うものである。
次に、図3を用いて、本実施形態のトランスアクスル1の構成を簡単に説明する。なお、ここで説明するトランスアクスル1の構成はあくまでも一例である。以下の説明において、「固定ギア」とは、軸と一体に設けられ、軸に対して相対回転不能な歯車を意味する。また、「遊転ギア」とは、軸に対して相対回転可能に枢支された歯車を意味する。
入力軸11には、二つの固定ギア11H,11Lが設けられる。二つの固定ギア11H,11Lは、互いに異なる歯数を持ち、第一カウンタ軸15に設けられた互いに歯数の異なる二つの遊転ギア15H,15Lのそれぞれと常時噛合している。本実施形態では、歯数が少ない一方の固定ギア11Lが、歯数が多い一方の遊転ギア15Lと噛み合ってローギア段を形成し、歯数が多い他方の固定ギア11Hが、歯数が少ない他方の遊転ギア15Hと噛み合ってハイギア段を形成する。
遊転ギア15Hは、左部に固定ギア11Hと噛み合う歯面部を有し、この歯面部の右側に突設された当接部に対して結合されたドグギア15dを有する。遊転ギア15Lは、右部に固定ギア11Lと噛み合う歯面部を有し、この歯面部の左側に突設された当接部に対して結合されたドグギア15eを有する。各ドグギア15d,15eの先端部(径方向外側の端部)には、図示しないドグ歯が設けられる。
エンジンクラッチ30は、二つの遊転ギア15H,15Lの間に配置され、エンジン2の動力の断接状態を制御するとともにハイギア段とローギア段とを切り替えるものである。エンジンクラッチ30のハイギア段とローギア段は、第二経路52(第二動力伝達経路)上に設けられた多段ギアの一例である。本実施形態のエンジンクラッチ30は、第一カウンタ軸15に固定されたハブ31と、ハブ31(第一カウンタ軸15)に対して相対回転不能であり、かつ、第一カウンタ軸15の軸方向に摺動自在に結合された環状のスリーブ32とを有する。スリーブ32は、図示しないアクチュエータが制御装置5によって制御されることで、図中のニュートラル位置から左右両側へ移動する。スリーブ32の径方向内側には、ドグギア15d,15eのドグ歯と係合するスプライン歯(図示略)が設けられる。スプライン歯とドグ歯とが係合することで、スリーブ32とドグギア15d又はドグギア15eとが係合する。
スリーブ32がニュートラル位置である場合には、二つの遊転ギア15H,15Lはいずれも空転状態となる。この場合には、エンジン2が作動していても、エンジン2の動力(入力軸11の回転)は出力軸12へは伝達されない。つまり、この場合はエンジン2の動力伝達が遮断された状態となる。
スリーブ32がニュートラル位置から左右いずれか一方へ移動し、二つの遊転ギア15H,15Lのうちの一方のドグギア15d,15eと係合すると、入力軸11の回転をいずれか一方の遊転ギア15H,15Lに伝達する。以下、この状態を回転連結状態と呼ぶ。本実施形態のトランスアクスル1では、スリーブ32が右側に移動して遊転ギア15Lのドグギア15eと係合することで、ローギア段の遊転ギア15Lを第一カウンタ軸15に対して回転連結状態とする。反対に、スリーブ32が左側に移動して遊転ギア15Hのドグギア15dと係合することで、ハイギア段の遊転ギア15Hを第一カウンタ軸15に対して回転連結状態とする。エンジンクラッチ30は、エンジン側断接機構30の一例であり、また、多段ギア(ハイギア段とローギア段)のいずれか一つを動力伝達経路に結合する選択機構の一例でもある。
また、本実施形態のトランスアクスル1は、スリーブ32の移動に際し、ジェネレータ4によって入力軸11の回転速度(すなわち遊転ギア15H,15Lの回転速度)を駆動輪8側の回転速度に合わせて同期させる。つまり、スリーブ32を遊転ギア15H,15Lのいずれか一方のドグギア15d,15eと係合させる場合(ハイギア段又はローギア段の選択時、あるいは、ハイギア段とローギア段との切替時)には、その係合に先立ち、入力軸11の回転速度が第一カウンタ軸15の回転速度に合うように、制御装置5によってジェネレータ4側のインバータが制御される。
なお、ロー側の固定ギア11Lは、ジェネレータ軸14に設けられた固定ギア14aとも常時噛合している。つまり、入力軸11とジェネレータ軸14とは、二つの固定ギア11L,14aを介して連結されており、エンジン2とジェネレータ4との間で動力伝達可能とされる。また、第一カウンタ軸15には、ロー側の遊転ギア15Lの右側に隣接して固定ギア15aが設けられる。この固定ギア15aは、出力軸12に設けられたデフ18のリングギア18aと常時噛合している。
第二カウンタ軸16には、二つの固定ギア16a,16bが設けられる。右側の固定ギア16aは、モータ軸13に設けられた遊転ギア13bと常時噛合し、左側の固定ギア16bは、デフ18のリングギア18aと常時噛合している。モータ軸13の遊転ギア13bは、モータ軸13に介装されたクラッチ21とともにモータクラッチ20を構成する。すなわち、本実施形態のモータクラッチ20は、モータ軸13に介装されており、クラッチ21の車幅方向位置とデフ18の車幅方向位置とが略同一とされる。これにより、トランスアクスル1の軸方向寸法(車幅方向の寸法)の増大が回避される。
クラッチ21は、モータ3の動力の断接状態を制御する多板式クラッチであり、モータ軸13に固定された第一係合要素22と、遊転ギア13bに固定された第二係合要素23とを有する。第一係合要素22はモータ3からの動力が入力されるものであり、第二係合要素23は駆動輪8側に動力を出力するものである。これらの係合要素22,23は、例えば、モータ軸13に設けられた油路入口から流入したオイルの油圧に応じて互いに離間(切断,開放),接近(係合,結合)する方向に駆動される。
クラッチ21が係合されると、モータ3の動力が遊転ギア13b及び固定ギア16a,16bを介して駆動輪8側へと伝達されるとともに、駆動輪8側の回転がモータ3へと伝わる。つまり、クラッチ21が係合された状態では、モータ3による力行駆動,回生ブレーキが可能となる。反対に、エンジン2での走行時(モータ3の停止時)にクラッチ21を切断すると、遊転ギア13bが空転し、駆動輪8側の回転がモータ3に伝わることがないため、モータ3が連れ回されることがなくなり抵抗が小さくなる。本実施形態のクラッチ21は、モータ3の作動時に(オン状態で)係合され、モータ3の停止時に(オフ状態で)切断されるように油圧制御される。
なお、油圧回路上に複数のソレノイド弁(オンオフソレノイド弁,リニアソレノイド弁等)で構成された調圧装置を設け、図示しないポンプから圧送されたオイルを適切な油圧に調圧することでクラッチ21の断接が制御される構成であってもよい。あるいは、ポンプ及び多板式のクラッチ21に代えて、電制カップリングを設けて、制御装置5によって動力の伝達が断接制御される構成としてもよい。すなわち、モータクラッチ20が電制カップリングと遊転ギア13bとを有していてもよい。
[3.制御構成]
上述したトランスアクスル1では、パラレルモードでの走行中にモータアシスト又はモータ回生が不要であれば、第一経路51上に介装されたモータクラッチ20を切断(開放)し、モータ3を出力軸12から切り離す。以下、モータクラッチ20を切断し又は結合するときの制御(すなわち、断接するときの制御)を、「モータ断接制御」と呼び、このモータ断接制御について詳述する。なお、本実施形態では、上記の通り、走行モードの選択や、エンジン2やモータ3等の作動状態の制御を制御装置5が実施するが、これら選択及び制御は従来の手法を採用可能であることから、ここではその説明は省略する。
制御装置5には、モータ断接制御を実施するための要素として、算出部5A,設定部5B,判定部5C及び制御部5Dが設けられる。これらの要素は、制御装置5で実行されるプログラムの一部の機能を示すものであり、ソフトウェアで実現されるものとする。ただし、各機能の一部又は全部をハードウェア(電子回路)で実現してもよく、あるいはソフトウェアとハードウェアとを併用して実現してもよい。
算出部5Aは、要求トルクを算出する。本実施形態の算出部5Aは、アクセル開度センサ49で検出されたアクセル操作に関する情報(アクセル開度やアクセル開速度)に基づいて要求トルクを算出し、算出した値を設定部5B及び判定部5Cに伝達する。なお、算出部5Aは、アクセル開度に加えて、車速センサ42で検出された車速を考慮して要求トルクを算出してもよい。
設定部5Bは、エンジン2の最大トルクに基づいて第一トルク閾値を設定する。第一トルク閾値は、モータクラッチ20の断接判定に用いられる閾値であり、具体的にはモータアシストの要否判定に使用されるため、アシスト基準トルクといってよい。第一トルク閾値は、要求トルクを、エンジン2のトルクだけで賄うよりもモータアシストを併用した方が効率的であることを加味して設定される。第一閾値トルクは、エンジン2の最大トルクに加え、車速にも基づいて設定されることが好ましい。設定部5Bは、例えば、エンジン2の回転数が高くなる高車速では、エンジン負荷が高まり効率が悪化する傾向があるため、第一トルク閾値をエンジン2の最大トルクよりも低いトルクに設定してよい。設定部5Bは、設定した値を判定部5Cに伝達する。
また、設定部5Bは、エンジン2の最小トルクに基づいて第二トルク閾値を設定する。第二トルク閾値も、モータクラッチ20の断接判定に用いられる閾値である。ただし、第二トルク閾値は、エンジン2が燃料カットされてエンジンブレーキが作動しているときに、モータ3による回生アシストの要否判定に使用されるため、燃料カットトルクといってよい。第二トルク閾値は、負の要求トルク(制動要求トルク)を、エンジン2のトルクだけで賄えない場合に、モータ3による回生アシストを併用して減速度を得る値に設定される。つまり、設定部5Bは、エンジン2の最小トルクを第二トルク閾値に設定し、設定した値を判定部5Cに伝達する。
最大トルク及び最小トルクは、それぞれ、エンジン2の状態(例えば、エンジン温度や油温)や気圧などによって変化する可変値である。最大トルク及び最小トルクは、制御装置5によって常時算出される。算出された最大トルク及び最小トルクは設定部5Bに入力される。ただし、これに限定されるものではなく、例えば、図示しないエンジン制御装置が最大トルク及び最小トルクの少なくとも一つを算出する機能を有してもよく、適宜変更して実施することができる。
また、設定部5Bは、制御装置5がモータ断接制御を実現する際に用いるマップを作成してもよい。図4は、実施形態に係る制御装置5が参照するマップの一例である。図4に例示するマップにおいては、本実施形態の車両10が持つ、車速に対するエンジン2の最大トルク(符号P1参照)の特性を示すグラフと、第一トルク閾値(符号P2参照)及び第二トルク閾値(符号P3参照)の各グラフとが規定されている。
エンジン2の最大トルクP1のグラフは、車両10のエンジン2が出力可能な正の最大トルクを車速に応じて示したもの(エンジン2の特性)である。第一トルク閾値は、モータ3による力行駆動の状態のとき(モータアシストのとき)に参照され、第二トルク閾値は、モータ3による回生ブレーキの状態のとき(回生アシストのとき)に参照される。以下、モータ3による力行駆動の状態を、単に力行状態という場合があり、モータ3による回生ブレーキの状態を、単に回生状態という場合がある。
また、本実施形態の設定部5Bは、第一トルク閾値として、第一トルク閾値の上側及び下側の少なくとも一方に所定のマージンを持つ第一トルク閾値範囲を設定する。第一トルク閾値の上側に設定した第一トルク閾値範囲を上側第一トルク閾値範囲といってよく、第一トルク閾値の下側に設定した第一トルク閾値範囲を下側第一トルク閾値範囲といってよい。また、第一トルク閾値における第一トルク閾値範囲の上限値を第一モータクラッチ再結合閾値といってよい。また、第一トルク閾値における第一トルク閾値範囲の下限値を第一モータクラッチ開放閾値といってよい。
さらに、本実施形態の設定部5Bは、第二トルク閾値として、第二トルク閾値の上側及び下側の少なくとも一方に所定のマージンを持つ第二トルク閾値範囲を設定する。第二トルク閾値の上側に設定した第二トルク閾値範囲を上側第二トルク閾値範囲といってよく、第二トルク閾値の下側に設定した第二トルク閾値範囲を下側第二トルク閾値範囲といってよい。また、第二トルク閾値における第二トルク閾値範囲の上限値を第二モータクラッチ開放閾値といってよい。また、第二トルク閾値における第二トルク閾値範囲の下限値を第二モータクラッチ再結合閾値といってよい。
図4においては、第一トルク閾値範囲(符号R1参照)の上限値(第一モータクラッチ再結合閾値)を表すグラフに符号P4を付して表すとともに、第一トルク閾値範囲の下限値(第一モータクラッチ開放閾値)を表すグラフに符号P5を付して表す。また、第二トルク閾値範囲(符号R2参照)の上限値(第二モータクラッチ開放閾値)を表すグラフに符号P6を付して表すとともに、第二トルク閾値範囲の下限値(第二モータクラッチ再結合閾値)を表すグラフに符号P7を付して表す。なお、図4における符号Ra1,Rb1,Ra2,Rb2はそれぞれ、上側第一トルク閾値範囲,下側第一トルク閾値範囲,上側第二トルク閾値範囲,下側第二トルク閾値範囲を示す。
また、本実施形態の設定部5Bは、エンジンクラッチ30の断接が切り替えられる第一車速閾値よりも高い車速値として、車両10の減速時における開放状態のモータクラッチ20の再結合に要する時間を加味した第二車速閾値を設定する。図4においては、第一車速閾値に符号V1を付して表すとともに、第二車速閾値に符号V2を付して表す。第一車速閾値及び第二車速閾値は、それぞれ固定値としてよい。また、設定部5Bがこれらの第一車速閾値及び第二車速閾値を設定してもよい。ただし、これに限定されるものではなく、これらの第一車速閾値及び第二車速閾値は可変値であってもよい。
判定部5Cは、少なくとも、開放状態のモータクラッチ20の結合要否を判定する。本実施形態の判定部5Cは、この結合要否の判定に加え、モータクラッチ20の開放禁止や開放要否の判定を実施する。本実施形態の判定部5Cによる判定処理には、以下に示す、第一判定処理,第二判定処理,第三判定処理及び第四判定処理が含まれる。これらの四つの処理には優先順位が設定されており、判定部5Cは、例えば、第一判定処理,第二判定処理,第三判定処理,第四判定処理の順番で、モータクラッチ20の切断要否及び結合要否を判定してよい。
<第一判定処理>
第一判定処理は、所定の条件(第一制御条件)が満たされているかを判断することで、モータクラッチ20を開放させることを禁止する判定を行う処理である。判定部5Cは、第一判定処理において、第一制御条件を満たすと判定した場合に、モータクラッチ20を開放させることを禁止する「開放禁止の要求」を制御部5Dに伝達する。
第一制御条件としては、例えば、以下の二つの条件が挙げられる。判定部5Cは、これら二つの条件の少なくとも一つが成立するときには、第一制御条件を満たすと判定する。
(1-1)車両10が低車速(例えば、10km/h未満)である
(1-2)バッテリ6の電力がモータ3の回転数同期に必要な所定電力未満である
また、車輪速は正値しか出力されないため、低車速時においては車両10が後退している可能性がある。車両10の後退中にはモータクラッチ20を結合できない。条件(1-1)は、このような車両10の後退中にはモータクラッチ20の開放を禁止することで、モータクラッチ20を結合できなくなることを回避するために設定された条件である。
また、条件(1-2)は、回転数同期のための電力が確保困難な場合には、モータクラッチ20を再結合させることが困難となることから、これを回避するために設定された条件である。モータクラッチ20の結合を行う前には、制御部5Dにより、モータ3の回転数を駆動輪8の回転数に同期させる回転数同期が行われるが、このモータ3の回転数同期は、バッテリ6の電力を用いて行われる。すなわち、バッテリ6の電力が少ない場合にモータクラッチ20を開放してしまうと、モータクラッチ20を再結合することができない可能性がある。条件(1-2)は、このような事態を回避するための条件である。なお、回転数同期に必要な所定電力は、予め設定された固定値であってもよいし、車両状態や走行状態,周辺環境などに応じて算出,設定される可変値であってもよい。また、所定電力は、回転数同期に必要となる最大の電力であってよい。また、バッテリ6の電力(充電率)は、制御装置5において常時演算され、又は、図示しないバッテリ制御装置(BMU)により常時演算されて制御装置5に伝達される。
<第二判定処理>
第二判定処理は、所定の条件(第二制御条件)が満たされているかを判断することで、モータクラッチ20を開放させることを優先する判定を行う処理である。判定部5Cは、第二判定処理において、第二制御条件を満たすと判定した場合に、モータクラッチ20を開放させることを優先する「開放優先の要求」を制御部5Dに伝達する。
第二制御条件としては、例えば、以下の条件が挙げられる。判定部5Cは、以下の条件が成立するときには、第二制御条件を満たすと判定する。
(2-1)シフトポジションがNレンジである
条件(2-1)は、Nレンジでの惰性走行中にモータクラッチ20の断接による減速度変化を防止するために設定された条件である。
<第三判定処理>
第三判定処理は、所定の条件(第三制御条件)が満たされているかを判断することで、モータクラッチ20を結合させる判定を行う処理である。判定部5Cは、第三判定処理において、第三制御条件を満たすと判定した場合に、モータクラッチ20を結合させる「結合要求」を制御部5Dに伝達する。
第三制御条件としては、例えば、以下の五つの条件が挙げられる。判定部5Cは、これら五つの条件の少なくとも一つが成立するときには、第三制御条件を満たすと判定する。
(3-1)走行モードがパラレルモード以外である
(3-2)パラレルモードへの遷移要求がない
(3-3)エンジン駆動への遷移中である
(3-4)モータアシストが必要である
(3-5)回生アシストが必要である
条件(3-1)は、モータクラッチ20が開放されることで駆動力が喪失してしまうことを回避するために設定された条件である。条件(3-2)は、パラレルモードにおいて、その後シリーズモードに遷移することになった場合に駆動力が喪失してしまうことを回避するために設定された条件である。条件(3-3)は、モータ駆動トルクを0Nmにしないとモータクラッチ20を開放することができないために設定された条件である。これは、パラレルモードへの移行直後はモータ3で走行し、モータトルクを所定時間でエンジントルクに移行することになるが、エンジントルクに移行完了すればモータトルクは0Nmとなり、アシストが必要にならない限り0Nmのままであることに基づいている。
条件(3-4)及び(3-5)は、要求トルクに基づくモータクラッチ20の結合要否に関する条件である。条件(3-4)は力行状態のときに成立しうる条件である。条件(3-4)に関し、判定部5Cは、要求トルクと第一トルク閾値とを比較して、開放状態のモータクラッチ20の結合要否を判定する。例えば、判定部5Cは、力行状態において要求トルクが第一トルク閾値よりも大きい場合には、モータアシストが要求されていると判断し、条件(3-4)が成立すると判定する。
また、条件(3-5)は回生状態のとき成立しうる条件である。条件(3-5)に関し、判定部5Cは、要求トルクと第二トルク閾値とを比較して、モータクラッチ20の結合要否を判定する。例えば、判定部5Cは、回生状態において要求トルクが第二トルク閾値よりも小さい場合には、回生アシストが要求されていると判断し、条件(3-5)が成立すると判定する。
判定部5Cは、要求トルクに基づくモータクラッチ20の結合要否の判定を、図4に例示したマップを用いて実現してもよい。具体的には、判定部5Cは、算出部5Aで算出された要求トルクと、車速センサ42によって検出された車速(現在車速)とをマップに適用し、第一トルク閾値及び第二トルク閾値と比較することで、開放状態のモータクラッチ20の結合要否を判定する。なお、上記のとおり、本実施形態の設定部5Bは、第一トルク閾値範囲及び第二トルク閾値範囲を設定していることから、本実施形態の判定部5Cは、モータクラッチ20の結合要否判定に先立って、判定に用いる閾値(以下「判定閾値」という)を選択する。
例えば、判定部5Cは、力行状態において、モータクラッチ20が開放状態である場合には、第一トルク閾値範囲の上限値(第一モータクラッチ再結合閾値P4)を、判定閾値として選択する。また、判定部5Cは、力行状態において、モータクラッチ20が結合状態である場合には、第一トルク閾値範囲の下限値(第一モータクラッチ開放閾値P5)を、判定閾値として選択する。
これと同様に、判定部5Cは、回生状態において、モータクラッチ20が開放状態である場合には、第二トルク閾値範囲の下限値(第二モータクラッチ再結合閾値P7)を、判定閾値として選択する。また、判定部5Cは、回生状態において、モータクラッチ20が結合状態である場合には、第二トルク閾値範囲の上限値(第二モータクラッチ開放閾値P6)を、判定閾値として選択する。
判定部5Cは、図4に例示するマップにおいて、要求トルクと現在車速とから現在の運転点をプロットし、この運転点と上述の如く選択した判定閾値とを比較して、この比較結果に応じて、モータクラッチ20の結合要否を判定してよい。すなわち、判定部5Cは、力行状態において、モータクラッチ20が開放状態である場合には、運転点が判定閾値(第一モータクラッチ再結合閾値P4)以上であれば、開放状態のモータクラッチ20の結合が必要であると判定する。また、判定部5Cは、力行状態において、モータクラッチ20が結合状態である場合には、運転点が判定閾値(第一モータクラッチ開放閾値P5)未満であれば、結合状態のモータクラッチ20の開放が必要であると判定する。
また、判定部5Cは、回生状態において、モータクラッチ20が開放状態である場合には、運転点が判定閾値(第二モータクラッチ再結合閾値P7)未満であれば、開放状態のモータクラッチ20の結合が必要であると判定する。また、判定部5Cは、回生状態において、モータクラッチ20が結合状態である場合には、運転点が判定閾値(第二モータクラッチ開放閾値P6)以上であれば、結合状態のモータクラッチ20の開放が必要であると判定する。
なお、上記のとおり、本実施形態の設定部5Bは、第二車速閾値を設定していることから、本実施形態の判定部5Cは、モータクラッチ20の結合要否の判定〔条件(3-4),(3-5)の判定〕に先立ち、車速単独の判定も行う。具体的には、判定部5Cは、車速が第二車速閾値未満である場合には、要求トルクにかかわらずモータクラッチ20の結合が必要であると判定する。すなわちこの場合は、条件(3-4),(3-5)の判定は実施しない。また、判定部5Cは、車速が第二車速閾値以上である場合には、上述した要求トルクに基づくモータクラッチ20の結合要否の判定〔条件(3-4),(3-5)の判定〕を実施する。
<第四判定処理>
第四判定処理は、所定の条件(第四制御条件)が満たされているかを判断することで、モータクラッチ20を開放させる判定を行う処理である。判定部5Cは、第四判定処理において、第四制御条件を満たすと判定した場合に、モータクラッチ20を開放させる「開放要求」を制御部5Dに伝達する。
第四制御条件としては、例えば、以下の条件が挙げられる。判定部5Cは、以下の条件が成立するときには、第四制御条件を満たすと判定する。
(4-1)エンジンクラッチ30において高トルク伝達用のローギア段が選択されていない、且つ、車速が第二車速閾値以上である
ローギア段等の高トルク伝達用のギアは、駆動力が要求されるときに選択されるギアであるので、このギアが選択されているということは、高トルクが要求される可能性が高く、アクセル操作に対する応答性が求められる。そのため、条件(4-1)が成立するときにモータクラッチ20を開放禁止とすることで、モータクラッチ20の再結合の度に応答遅れが生じることを抑止しながら、効率よく走行できる。
制御部5Dは、上述した判定部5Cによるモータクラッチ20の結合要否の判定結果に応じて、モータクラッチ20の状態を、切断状態又は結合状態に維持又は変更する。具体的には、判定部5Cから「開放禁止の要求」が伝達された場合、制御部5Dは、モータクラッチ20の開放を禁止する。すなわち、モータクラッチ20が結合状態であればそれを維持し、モータクラッチ20が開放状態であれば直ちに結合状態に変更する。また、判定部5Cから「開放優先の要求」が伝達された場合、制御部5Dは、モータクラッチ20の開放を優先する。すなわち、モータクラッチ20が開放状態であればそれを維持し、モータクラッチ20が結合状態であれば直ちに開放状態に変更する。
また、判定部5Cから「結合要求」が伝達された場合、制御部5Dは、モータクラッチ20を結合する。すなわち、モータクラッチ20が結合状態であればそれを維持し、モータクラッチ20が開放状態であれば直ちに結合状態に変更する。さらに、判定部5Cから「開放要求」が伝達された場合、制御部5Dは、モータクラッチ20を開放する。すなわち、モータクラッチ20が開放状態であればそれを維持し、モータクラッチ20が結合状態であれば直ちに開放状態に変更する。
制御部5Dは、開放状態のモータクラッチ20を結合状態に変更する場合には、モータ3の回転数を出力軸12側の回転数に合うよう回転数同期させたのち、回転数差が所定範囲内になったら回転数が同期したと判断してモータクラッチ20を結合する。なお、ここでいう「同期」とは回転数差が0(回転数が完全に一致すること)だけでなく、結合に際し問題ない程度の回転数差は許容されるものとする。
[4.フローチャート]
図5は、上述したモータ断接制御を説明するためのフローチャート例である。このフローチャートは、制御装置5において、車両10の主電源がオン状態のときに所定の演算周期で実施される。なお、車両10の走行モード(EVモード,シリーズモード,パラレルモード)は、このフローチャートとは別に設定されるものとする。また、各判定において必要となる情報(例えば、車速,バッテリ6の電力,モータクラッチ作動禁止スイッチ48のオンオフ状態,シフトポジションなど)は、都度、取得されるものとする。図5に例示するフローチャートにおいて、ステップS1,S2が前述した第一判定処理に、ステップS3,S4が第二判定処理に、ステップS5,S6が第三判定処理に、ステップS7,S8が第四判定処理に、それぞれ相当する。
ステップS1では、判定部5Cにより第一制御条件が満たされているかが判定される。すなわち、判定部5Cは、第一制御条件に含まれる複数の条件項目のうち、少なくともいずれか一つが成立するかを判定する。第一制御条件が満たされる場合には、ステップS2に進み、判定部5Cにより、モータクラッチ20の開放を禁止する「開放禁止の要求」が出力され、このフローをリターンする。一方、第一制御条件が満たされない場合には、ステップS3に進む。
ステップS3では、判定部5Cにより第二制御条件が満たされているかが判定される。本実施形態の判定部5Cは、条件(2-1)が成立するか否かを判定する。第二制御条件が満たされる場合には、ステップS4に進み、判定部5Cにより、モータクラッチ20の開放を優先する「開放優先の要求」が出力され、このフローをリターンする。一方、第二制御条件が満たされない場合には、ステップS5に進む。
ステップS5では、判定部5Cにより第三制御条件が満たされているかが判定される。すなわち、判定部5Cは、第三制御条件に含まれる複数の条件項目のうち、少なくともいずれか一つが成立するかを判定する。第三制御条件が満たされる場合には、ステップS6に進み、判定部5Cにより、モータクラッチ20の結合を要求する「結合要求」が出力され、このフローをリターンする。「結合要求」を受信した制御部5Dは、この要求に応じて、モータクラッチ20を結合させる。なお、ステップS5の判定処理のうち、要求トルクに基づくモータクラッチ20の結合要否の判定処理については、図6に示すフローチャートを用いて後述する。一方、第三制御条件が満たされない場合には、ステップS7に進む。
ステップS7では、判定部5Cにより第四制御条件が満たされているかが判定される。本実施形態の判定部5Cは、条件(4-1)が成立するか否かを判定する。第四制御条件が満たされる場合には、ステップS8に進み、判定部5Cにより、モータクラッチ20の開放を要求する「開放要求」が出力され、このフローをリターンする。一方、第四制御条件が満たされない場合には、このフローをリターンする。この場合、いずれの制御条件も満たされず、モータクラッチ20の状態は変化しない。
図6は、第三判定処理に含まれる要求トルクに基づくモータクラッチ20の結合要否の判定を説明するためのフローチャート例である。このフローチャートは、図5のステップS5のサブフローチャートに相当する。
ステップS11では、判定部5Cにより、車速が第二車速閾値未満であるかが判定される。車速が第二車速閾値未満である場合には、ステップS12に進み、判定部5Cによりモータクラッチ20の結合が必要であると判定されて(「結合要求」が出力されて)、このフローをリターンする。一方、車速が第二車速閾値以上である場合には、ステップS13に進む。
ステップS13では、判定部5Cにより、力行状態であるか回生状態であるかが判定され、力行状態であればステップS14に進み、回生状態であればステップS18に進む。ステップS14では、判定部5Cにより、モータクラッチ20の結合要否の判定に用いる判定閾値が選択される。具体的には、判定部5Cは、モータクラッチ20が開放状態であれば、第一モータクラッチ再結合閾値を判定閾値として選択し、モータクラッチ20が結合状態であれば、第一モータクラッチ開放閾値を判定閾値として選択する。
続くステップS15では、判定部5Cにより、要求トルクが、現在車速における判定閾値(第一トルク閾値)以上であるか否かが判定される。なお、要求トルクは、算出部5Aによって、例えば周期的に算出される。要求トルクが現在車速における判定閾値以上である場合には、ステップS16に進み、判定部5Cにより、モータクラッチ20の結合が必要であると判定される。また、要求トルクが現在車速における判定閾値未満である場合には、ステップS17に進み、判定部5Cにより、モータクラッチ20の切断が必要であると判定される。その後、このフローをリターンする。
また、ステップS13からステップS18に進んだ場合、判定部5Cにより、モータクラッチ20の結合要否の判定に用いる判定閾値が選択される。具体的には、判定部5Cは、モータクラッチ20が開放状態であれば第二モータクラッチ再結合閾値を判定閾値として選択し、モータクラッチ20が結合状態であれば、第二モータクラッチ開放閾値を判定閾値として選択する。
続くステップS19では、判定部5Cにより、要求トルクが、現在車速における判定閾値(第二トルク閾値)未満であるか否かが判定される。要求トルクが現在車速における判定閾値未満である場合には、ステップS20に進み、判定部5Cにより、モータクラッチ20の結合が必要であると判定される。また、要求トルクが現在車速における判定閾値以上である場合には、ステップS21に進み、判定部5Cにより、モータクラッチ20の切断が必要であると判定される。その後、このフローをリターンする。
[5.作用,効果]
(1)上述したトランスアクスル1においては、判定部5Cが、モータクラッチ20が開放状態であるときに、このモータクラッチ20を結合するか否かの判定を、要求トルクと二つのトルク閾値(第一トルク閾値,第二トルク閾値)とを比較して行う。
ここで、これら二つのトルク閾値が、エンジン2の最大トルク及び最小トルクに基づいてそれぞれ設定される。このため、例えば、エンジン2のみで、車両に要求する駆動トルクや制動トルクを賄える場合にはモータクラッチ20を開放したままとし、賄えない場合にはモータクラッチ20を結合すると判定することで、適切に車両やドライバの要求に応えることができる。これにより、ドライバビリティを向上させることができる。
また、モータクラッチ20の結合が必要と判定されてから実際に結合が完了するまでには時間がかかる(応答遅れが発生する)。これに対し、上述した制御装置5では、第一トルク閾値が、エンジン2の最大トルクに基づいて設定され、第二トルク閾値が、エンジン2の最小トルクに基づいて設定されることで、上記の応答遅れをこれらの閾値設定に加味することもできる。これにより、モータクラッチ20の結合が必要な場合に、加速や減速が緩慢になることを抑制でき、ドライバビリティの向上に寄与できる。
(2)上述したトランスアクスル1には、エンジンクラッチ30が設けられており、設定部5Bが、エンジンクラッチ30の断接が切り替えられる閾値である第一車速閾値よりも高い車速値として第二車速閾値を設定する。第二車速閾値は、車両10の減速時における開放状態のモータクラッチ20の再結合に要する時間を加味した値である。上述した制御装置5では、車速が第二車速閾値未満である場合にはモータクラッチ20の結合が必要であると判定され、車速が第二車速閾値以上である場合に、上記のモータクラッチ20の結合要否の判定が実施される。このため、エンジン2の動力が確実に出力軸12に伝達されている状態でモータクラッチ20が開放されうる。したがって、駆動力喪失を確実に回避することができ、ドライバビリティの向上を図ることができる。
(3)また、上述した制御装置5では、バッテリ6の電力が、回転数同期に必要な所定電力 未満である場合には、結合状態のモータクラッチ20の開放を禁止する。このように、上述した制御装置5によれば、モータクラッチ20の開放前に再結合(回転数同期)に必要な電力がバッテリ6に残っているかを確認し、残っていない場合は開放を禁止するため、開放状態のモータクラッチ20を結合できなくなるという不具合発生を防止できる。したがって、ドライバビリティの低下が防止される。
(4)上述したトランスアクスル1では、第二経路52上に多段ギア(例えばハイギア段とローギア段)及び選択機構が設けられている。また、上述した制御部5Dは、車両10の走行モードがパラレルモードで選択されている多段ギアが低トルク伝達用のギア(例えばハイギア段)である場合に、結合状態のモータクラッチ20を開放し、高トルク伝達用のギア(例えばローギア段)である場合に、結合状態のモータクラッチ20の開放を禁止する。このように、上述した制御装置5では、パラレルモードにおいて、エンジンクラッチ30にて高トルクが要求されるギアが選択されている場合には、モータ3によるアシストが必要になる可能性が高いことから、モータクラッチ20の開放を禁止する。これにより、モータクラッチ20の頻繁な断接切替や、応答遅れによるドライバビリティの低下を防止できる。
(5)上述した制御装置5では、設定部5Bが、第一トルク閾値として、第一トルク閾値の上側及び下側の少なくとも一方に所定のマージンを持つ第一トルク閾値範囲を設定するとともに、第二トルク閾値として、第二トルク閾値の上側及び下側の少なくとも一方に所定のマージンを設けて第二トルク閾値範囲を設定する。そして、判定部5Cが、要求トルクを、これらの第一トルク閾値範囲の上限値や下限値、第二トルク閾値範囲の上限値や下限値以下と比較することで、モータクラッチ20の結合や開放の要否を判定する。したがって、上述した制御装置5によれば、モータクラッチ20の開放と結合とが頻繁に繰り返されることを防止でき、ドライバビリティの低下を防止できる。
[6.その他]
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形することが可能である。
上述した実施形態では、ハイギア段とローギア段とを切り替えるエンジンクラッチ30(またはエンジンクラッチ30の一部)が第一カウンタ軸15に介装されたトランスアクスル1を例示したが、エンジンクラッチ30の配置は特に限られず、例えば入力軸11に介装されていてもよいし、入力軸11及び第一カウンタ軸15に跨って配置されてもよい。なお、上記のエンジンクラッチ30は、断接機構30としての機能と、ハイロー切替機能(ハイギア段及びローギア段と選択機構)とを備えているが、これらの機能が別の機構として設けられていてもよい。なお、エンジン2側の断接機構30は、本件には必須の構成ではなく、省略してもよい。
また、トランスアクスル1の構成も一例である。例えば、トランスアクスル1に対するエンジン2,モータ3,ジェネレータ4の相対位置は上述したものに限らない。これらの相対位置に応じて、トランスアクスル1内の六つの軸11~16の配置を設定すればよい。また、トランスアクスル1内の各軸に設けられるギアの配置も一例であって、上述したものに限られない。また、上記のモータクラッチ20は、モータ軸13に介装されているが、モータクラッチ20の配置はこれに限られず、第二カウンタ軸16に介装されていてもよいし、モータ軸13及び第二カウンタ軸16に跨って配置されてもよい。
また、上述した実施形態においては、判定部5Cが、第一判定処理,第二判定処理,第三判定処理,第四判定処理の順番で、モータクラッチ20の切断/結合を判断しているが、これに限定されるものではない。例えば、第一判定処理,第二判定処理,第三判定処理,第四判定処理の順番を入れ替えて実施してもよい。また、他の判定処理を追加してもよく、また、一部の判定処理を省略してもよい。
さらに、第一判定処理,第二判定処理,第三判定処理,第四判定処理のそれぞれにおいても、上記以外の処理を行ってもよく、また、一部の処理を省略してもよく、種々変形して実施することができる。また、各判定処理で例示した条件項目はいずれも一例であり、一部の条件項目が省略されてもよいし、他の条件項目が追加されてもよい。