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JP7776801B1 - 鋼板及び部品 - Google Patents

鋼板及び部品

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JP7776801B1
JP7776801B1 JP2025547465A JP2025547465A JP7776801B1 JP 7776801 B1 JP7776801 B1 JP 7776801B1 JP 2025547465 A JP2025547465 A JP 2025547465A JP 2025547465 A JP2025547465 A JP 2025547465A JP 7776801 B1 JP7776801 B1 JP 7776801B1
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steel
martensite
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JP2025547465A
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匠 小山内
恭平 石川
隆 安富
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Nippon Steel Corp
Original Assignee
Nippon Steel Corp
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Publication date
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  • Heat Treatment Of Sheet Steel (AREA)

Abstract

この熱延鋼板は、所定の化学組成を有し、板厚1/4位置における金属組織において、面積%で、面積%で、焼戻しマルテンサイト:30%超、80%以下、粒状ベイナイト:10~50%、フェライト及びパーライトの1種以上:合計で5%未満、フレッシュマルテンサイト及び残留オーステナイトの1種以上:合計で10%以下であり、旧オーステナイト粒のアスペクト比の平均値が3.0~6.0である。

Description

本開示は、鋼板及び部品に関する。
本願は、2024年7月30日に、日本に出願された特願2024-123403号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
近年、CO排出量低減のため、自動車車体の軽量化がなされている。プレス成形部品等のブランク成形部品では、部品材料の板厚を減少させることで軽量化が可能となる。特に、ロアアーム、トレーリングアームなどの自動車足回り部品では、自動車車体の軽量化を実現するため、980MPa級超の鋼板の適用が検討され始めている。
上記のような部品は、複雑な形状を有する。鋼板が高強度化するにつれ加工性は低下するため、高強度の鋼板を上記のような部品に適用すると、加工性不足により部品にネッキングや破断が生じる場合がある。そのため、上記のような部品に適用される鋼板は加工性、特に延性及び穴広げ性に優れることが要求される。
特許文献1には、面積率で85%以上のベイナイト相を主相とし、面積率で15%以下のマルテンサイト相またはマルテンサイト-オーステナイト混合相を第2相とし、残部がフェライト相からなり、前記第2相の平均粒径が3.0μm以下であり、さらに旧オーステナイト粒の平均アスペクト比が1.3以上5.0以下であり、未再結晶旧オーステナイト粒に対する再結晶旧オーステナイト粒の面積率が15%以下である組織を有し、かつ熱延鋼板中に析出している直径20nm未満の析出物が質量%で0.10%以下であり、引張強さTSが980MPa以上である高強度熱延鋼板が開示されている。特許文献1には、上記構成により、引張強さTSが980MPa以上であり、かつ打抜き性と穴広げ性に優れた高強度熱延鋼板が得られることが開示されている。
国際公開第2017/017933号
特許文献1には、300~530℃の温度域で巻取ることで、ベイナイト変態を促進することが開示されている。この温度域はいわゆる遷移沸騰温度領域であることから、製造される鋼板内に温度のばらつきが生じやすい。鋼板の表面上に発生した蒸気が無い箇所に冷却水がかかる領域のように、冷却量が大きい領域ではフレッシュマルテンサイトが生成し、この領域において加工性が大きく低下する。つまり、局所的に加工性が低い領域を含む鋼板が製造される。このような鋼板をプレス加工した場合、鋼板の強度からは予期しないプレス割れ等が生じ、歩留まりの低下を引き起こす。
本開示は上記実情に鑑みてなされたものである。本開示は、高い強度、並びに、優れた延性及び穴広げ性を有し、且つ、鋼板内の材質ばらつきが低減された鋼板、並びに、この鋼板を用いた部品を提供することを目的とする。
本開示の要旨は以下の通りである。
[1]化学組成が、質量%で、
C :0.050~0.180%、
Si:0.40~1.30%、
Mn:1.60~2.80%、
P :0.100%以下、
S :0.0500%以下、
Al:0.020~0.100%、
N :0.0100%以下、
O :0.0060%以下、
Ti:0.030~0.150%、
B :0.0005~0.0050%、
Cr:0~1.00%、
Mo:0~0.500%、
W :0~0.500%、
Co:0~0.500%、
Ni:0~1.000%、
Cu:0~1.000%、
V :0~0.500%、
Nb:0~0.150%、
As:0~0.050%、
Zr:0~0.050%、
Sn:0~0.050%、
Sb:0~0.050%、
Ta:0~0.100%、
Bi:0~0.0400%、
Ca:0~0.0400%、
Mg:0~0.0400%、
REM:0~0.0400%、並びに、
残部:Fe及び不純物であり、
表面から板厚方向に板厚の1/4位置における金属組織において、
面積%で、
焼戻しマルテンサイト:30%超、80%以下、
粒状ベイナイト:10~50%、
フェライト及びパーライトの1種以上:合計で5%未満、
フレッシュマルテンサイト及び残留オーステナイトの1種以上:合計で10%以下であり、
旧オーステナイト粒のアスペクト比の平均値が3.0~6.0であることを特徴とする鋼板。
[2]前記化学組成が、質量%で、
Cr:0.01~1.00%、
Mo:0.001~0.500%、
W :0.001~0.500%、
Co:0.001~0.500%、
Ni:0.001~1.000%、
Cu:0.001~1.000%、
V :0.001~0.500%、
Nb:0.001~0.150%、
As:0.001~0.050%、
Zr:0.001~0.050%、
Sn:0.001~0.050%、
Sb:0.001~0.050%、
Ta:0.001~0.100%、
Bi:0.0001~0.0400%、
Ca:0.0001~0.0400%、
Mg:0.0001~0.0400%、及び
REM:0.0001~0.0400%からなる群のうち1種以上を含有することを特徴とする[1]に記載の鋼板。
[3]前記表面から前記板厚方向に前記板厚の1/2位置における集合組織において、
{100}<011>~{223}<110>の方位群のX線ランダム強度比の平均値が5.0~11.0であり、
{332}<113>の方位のX線ランダム強度比が5.0~9.0であることを特徴とする[1]又は[2]に記載の鋼板。
[4]前記化学組成が、
B :0.0016~0.0050%を含むことを特徴とする[1]~[3]のいずれか1項に記載の鋼板。
[5][1]~[4]のいずれか1項に記載の鋼板からなることを特徴とする部品。
本開示に係る上記態様によれば、高い強度、並びに、優れた延性及び穴広げ性を有し、且つ、鋼板内の材質ばらつきが低減された鋼板、並びに、この鋼板を用いた部品を提供することができる。
旧オーステナイト粒を楕円体に近似する方法を説明するための図である。
上記課題を解決するために本発明者らが検討した結果、本発明者らは以下の知見を得た。
鋼板内の材質ばらつきを低減するためには、ベイナイトではなく、マルテンサイトの生成を促進することが効果的である。冷却過程において先にベイナイトが生成すると、未変態のオーステナイトにCが濃化するため、その後にマルテンサイトを生成させることが困難となる。そのため、ベイナイトの生成を抑制することで、マルテンサイトの生成を促進することができる。ベイナイトの生成を抑制する方法として、(a)熱間圧延においてオーステナイト粒に適切な量の歪みを与えることで、オーステナイト粒の形状を造り込むことができる。これにより、ベイナイトの生成速度を遅くすることができる。更に、(b)仕上げ圧延後の冷却において、ベイナイトが生成しやすい温度域の滞留時間を短くすることで、先にベイナイトが生成することを抑制し、マルテンサイトの生成を促進することができる。
更に、マルテンサイト変態に伴う発熱を利用することも効果的である。マルテンサイトはそのままでは硬いため、鋼板の加工性を低下させる原因となる。しかしながら、マルテンサイト変態に伴う発熱を利用し、「焼戻し」をすることで、マルテンサイトの硬さを調整し、強度及び加工性のバランスを好ましく制御することができる。また、発熱によって温度が高まると、粒状ベイナイトが生成する。この粒状ベイナイトは比較的軟質な組織であるため、鋼板に含ませることで、鋼板の加工性を高めることができる。上記(a)におけるオーステナイト粒の形状の造り込みは、粒状ベイナイトの生成を過度に抑制しない範囲とすることが重要である。
以下、本実施形態に係る鋼板について詳細に説明する。まず、本実施形態に係る鋼板の化学組成の限定理由について説明する。
本実施形態に係る鋼板は、以下の化学組成を有する。なお、以下に記載する「~」を挟んで記載される数値限定範囲には、下限値及び上限値がその範囲に含まれる。「未満」、「超」と示す数値には、その値が数値範囲に含まれない。化学組成についての%は全て質量%を示す。
本実施形態に係る鋼板は、C:0.050~0.180%、Si:0.40~1.30%、Mn:1.60~2.80%、P:0.100%以下、S:0.0500%以下、Al:0.020~0.100%、N:0.0100%以下、O:0.0060%以下、Ti:0.030~0.150%、B:0.0005~0.0050%、並びに、残部:Fe及び不純物からなる。
以下、各元素について詳細に説明する。
C:0.050~0.180%
Cは、鋼板の強度を高める元素である。C含有量が0.050%未満であると、鋼板の強度が低下する。そのため、C含有量は0.050%以上とする。C含有量は、好ましくは、0.060%以上、0.070%以上又は0.100%以上である。
一方、C含有量が0.180%超であると、強度が高くなりすぎて、鋼板の延性及び穴広げ性が低下する。そのため、C含有量は0.180%以下とする。C含有量は、好ましくは、0.160%以下、0.150%以下又は0.140%以下である。
Si:0.40~1.30%
Siは、粒状ベイナイトの生成を促進し、鋼板の延性を高める元素である。Si含有量が0.40%未満であると、この効果を得ることができない。そのため、Si含有量は0.40%以上とする。Si含有量は、好ましくは、0.50%以上、0.60%以上又は0.70%以上である。
一方、Si含有量が1.30%超であると、マルテンサイトに先行してフェライトが多量に生成し、所望量の焼戻しマルテンサイトを確保することができず、鋼板の材質ばらつきが大きくなる。そのため、Si含有量は1.30%以下とする。Si含有量は、好ましくは、1.20%以下、1.10%以下、1.00%以下又は0.80%以下である。
Mn:1.60~2.80%
Mnは、焼入れ性向上及び固溶強化により鋼板の強度を高める元素である。Mn含有量が1.60%未満であると、鋼板の強度が低下する。また、マルテンサイトに先行してフェライトやベイナイトが生成し易くなり、鋼板の材質ばらつきが大きくなる。そのため、Mn含有量は1.60%以上とする。Mn含有量は、好ましくは、1.80%以上、2.00%以上又は2.10%以上である。
一方、Mn含有量が2.80%超であると、粒状ベイナイト量が不足し、且つ、強度が高くなりすぎて、鋼板の延性及び穴広げ性が低下する。そのため、Mn含有量は2.80%以下とする。Mn含有量は、好ましくは、2.70%以下、2.60%以下、2.50%以下又は2.40%以下である。
P:0.100%以下
Pは、粒界に偏析することで鋼板の延性及び穴広げ性を低下させる元素である。P含有量が0.100%超であると、鋼板の延性及び穴広げ性が顕著に低下する。そのため、P含有量は0.100%以下とする。P含有量は、好ましくは、0.080%以下、0.050%以下、0.030%以下又は0.020%以下である。
P含有量は低い程好ましいため、0%であってもよい。ただし、P含有量を過剰に低減すると、脱Pコストが著しく増加する。そのため、P含有量は0.001%以上又は0.005%以上としてもよい。
S:0.0500%以下
Sは、MnS等の硫化物を形成することで鋼板の延性及び穴広げ性を低下させる元素である。S含有量が0.0500%超であると、鋼板の延性及び穴広げ性が顕著に低下する。そのため、S含有量は0.0500%以下とする。S含有量は、好ましくは、0.0300%以下、0.0200%以下、0.0100%以下又は0.0050%以下である。
S含有量は低い程好ましいため、0%であってもよい。ただし、S含有量を過剰に低減すると、脱Sコストが著しく増加する。そのため、S含有量は0.0001%以上、0.0005%以上又は0.0010%以上としてもよい。
Al:0.020~0.100%
Alは、溶鋼の脱酸材として含有される元素である。また、Alはフェライト変態を制御する元素でもある。Al含有量が0.020%未満であると、鋼板の穴広げ性が低下する。そのため、Al含有量は0.020%以上とする。Al含有量は、好ましくは、0.025%以上、0.030%以上又は0.035%以上とすることが好ましい。
一方、Al含有量が0.100%超であると、フェライト量が多くなり、鋼板の穴広げ性が低下する。そのため、Al含有量は0.100%以下とする。Al含有量は、好ましくは、0.080%以下、0.050%以下又は0.030%以下である。
N:0.0100%以下
Nは、鋼中に粗大な窒化物を形成し、鋼板の穴広げ性を低下させる元素である。N含有量が0.0100%超であると、鋼板の穴広げ性が顕著に低下する。また、Nが多量に含まれるとスラブ割れのリスクが高まる。そのため、N含有量は0.0100%以下とする。N含有量は、好ましくは、0.0070%以下又は0.0050%以下である。
N含有量は低い程好ましいため、0%であってもよい。ただし、N含有量を過剰に低減すると脱Nコストが著しく増加する。そのため、N含有量は0.0001%以上、0.0005%以上又は0.0010%以上としてもよい。
O:0.0060%以下
Oは、鋼中に多く含まれると粗大な酸化物を形成する。O含有量が0.0060%超であると、鋼板の穴広げ性が顕著に低下する。そのため、O含有量は0.0060%以下とする。O含有量は、好ましくは、0.0050%以下又は0.0040%以下である。
O含有量は少ない程好ましいため、0%であってもよい。ただし、溶鋼の脱酸時に微細な酸化物を多数分散させるために、O含有量は0.0005%以上又は0.0010%以上としてもよい。
Ti:0.030~0.150%
Tiは、TiC等のTi炭化物として鋼中に析出し、析出強化により鋼板の強度を高める元素である。Ti含有量が0.030%未満であると、鋼板の強度が低下する。そのため、Ti含有量は0.030%以上とする。Ti含有量は、好ましくは、0.050%以上、0.080%以上又は0.100%以上である。
一方、Ti含有量が0.150%超であると、鋼中に粗大な炭化物が生成し、熱間圧延中にスラブ割れが生じたり、鋼板の延性及び穴広げ性が低下したりする。そのため、Ti含有量は0.150%以下とする。Ti含有量は、好ましくは、0.130%以下又は0.110%以下である。
B:0.0005~0.0050%
Bは、鋼の焼入れ性を高め、鋼板の強度を高める元素である。B含有量が0.0005%未満であると、鋼板の強度が低下する。また、マルテンサイトに先行してフェライトやベイナイトが生成しやすくなり,鋼板の材質ばらつきが大きくなる。そのため、B含有量は0.0005%以上とする。B含有量は、好ましくは、0.0007%以上、0.0010%以上、0.0015%以上、0.0016%以上、0.0018%以上又は0.0020%以上である。
B含有量が0.0050%超であると、Bを含む析出物が多量に生成して、鋼板の穴広げ性が低下する。そのため、B含有量は0.0050%以下とする。B含有量は、好ましくは、0.0040%以下、0.0030%以下又は0.0025%以下である。
本実施形態に係る鋼板の化学組成の残部は、Fe及び不純物であってもよい。本実施形態において、不純物とは、原料としての鉱石、スクラップ、または製造環境等から混入されるものであって、本実施形態に係る鋼板の特性に悪影響を与えない範囲で許容されるものを意味する。
本実施形態に係る鋼板は、Feの一部に代えて、以下の任意元素を含んでもよい。任意元素を含有させない場合の含有量の下限は0%である。以下、各任意元素について説明する。
Cr:0~1.00%
Crは、鋼の焼入れ性を高め、鋼板の強度を高める元素である。また、Crは、粒状ベイナイトの生成を促進する元素である。これらの効果を確実に得るためには、Cr含有量は0.01%以上又は0.05%以上とすることが好ましい。
一方、Cr含有量が1.00%超であると鋼板の延性が低下する。そのため、Cr含有量は1.00%以下とする。Cr含有量は、好ましくは、0.85%以下、0.70%以下、0.65%以下、0.50%以下、0.35%以下又は0.20%以下である。
Mo:0~0.500%
Moは、鋼中に微細な炭化物を形成することで鋼板の強度を高める元素である。この効果を確実に得るためには、Mo含有量は0.001%以上又は0.010%以上とすることが好ましい。
一方、Mo含有量が0.500%超であると、鋼板の穴広げ性が低下する。そのため、Mo含有量は0.500%以下とする。Mo含有量は、好ましくは、0.400%以下、0.300%以下、0.150%以下又は0.110%以下である。
W:0~0.500%
Wは、固溶強化により鋼板の強度を高める元素である。この効果をより確実に得るためには、W含有量は0.001%以上又は0.010%以上とすることが好ましい。
一方、W含有量が0.500%超であると、鋼板の穴広げ性が低下する。そのため、W含有量は0.500%以下とする。W含有量は、好ましくは、0.400%以下、0.300%以下、0.200%以下、0.100%以下、0.050%以下又は0.040%以下である。
Co:0~0.500%
Coは、固溶強化により鋼板の強度を高める元素である。この効果をより確実に得るためには、Co含有量は0.001%以上又は0.010%以上とすることが好ましい。
一方、Co含有量が0.500%超であると、鋼板の穴広げ性が低下する。そのため、Co含有量は0.500%以下とする。Co含有量は、好ましくは、0.400%以下、0.300%以下、0.200%以下、0.100%以下、0.050%以下又は0.040%以下である。
Ni:0~1.000%
Niは、鋼板の焼入性を高めて、鋼板の強度を高める元素である。また、Niは、Cuを含有させる場合においては、Cuに起因するスラブの粒界割れを効果的に抑制する作用を有する。上記作用による効果をより確実に得るためには、Ni含有量は0.001%以上又は0.010%以上とすることが好ましい。
一方、Niは、高価な元素であるため、多量に含有させることは経済的に好ましくない。したがって、Ni含有量は1.000%以下とする。Ni含有量は、好ましくは、0.800%以下、0.700%以下、0.500%以下、0.250%以下又は0.200%以下である。
Cu:0~1.000%
Cuは、鋼板の焼入れ性を高める作用及び低温で鋼中に炭化物として析出して鋼板の強度を高める元素である。上記作用による効果をより確実に得るためには、Cu含有量は0.001%以上又は0.010%以上とすることが好ましい。
一方、Cu含有量が1.000%超では、スラブの粒界割れが生じる場合がある。したがって、Cu含有量は1.000%以下とする。Cu含有量は、好ましくは、0.800%以下、0.600%以下、0.400%以下、0.250%以下、0.150%以下、0.100%以下又は0.090%以下である。
V:0~0.500%
Vは、鋼中に微細な炭化物を形成することで鋼板の強度を高める元素である。この効果を確実に得るためには、V含有量は0.001%以上又は0.010%以上とすることが好ましい。
一方、V含有量が0.500%超であると、鋼板の穴広げ性が低下する。そのため、V含有量は0.500%以下とする。V含有量は、好ましくは、0.400%以下、0.320%以下、0.200%以下、0.150%以下又は0.110%以下である。
Nb:0~0.150%
Nbは金属組織の微細化及びNbCの析出強化により、鋼板の強度を高める元素である。この効果を確実に得るためには、Nb含有量は0.001%以上又は0.010%以上とすることが好ましい。
一方、Nb含有量が0.150%超では上記効果は飽和する。また、鋼板の穴広げ性が低下する。そのため、Nb含有量は0.150%以下とする。Nb含有量は、好ましくは、0.100%以下、0.080%以下0.050%以下又は0.025%以下である。
As:0~0.050%
Asはオーステナイト単相化温度を低下させることにより、旧オーステナイト粒を細粒化させて、鋼板の穴広げ性を高める元素である。この効果をより確実に得るためには、As含有量は0.001%以上又は0.010%以上とすることが好ましい。
一方、Asを多量に含有させても上記効果は飽和するため、As含有量は0.050%以下とする。As含有量は、好ましくは、0.010%以下又は0.005%以下である。
Zr:0~0.050%
Zrは、固溶強化により鋼板の強度を高める元素である。この効果をより確実に得るためには、Zr含有量は0.001%以上又は0.010%以上とすることが好ましい。
一方、Zr含有量が0.050%超であると、鋼板の穴広げ性が低下する。そのため、Zr含有量は0.050%以下とする。Zr含有量は、好ましくは、0.010%以下又は0.005%以下である。
Sn:0~0.050%
Snは破壊の起点となる酸化物の生成を抑制することで、鋼板の穴広げ性を高める元素である。この効果をより確実に得るためには、Sn含有量は0.001%以上又は0.010%以上とすることが好ましい。
一方、Snを多量に含有させても上記効果は飽和するため、Sn含有量は0.050%以下とする。Sn含有量は、好ましくは、0.010%以下又は0.005%以下である。
Sb:0~0.050%
Sbは、破壊の起点となる酸化物の生成を抑制することで、鋼板の延性及び穴広げ性を高める元素である。この効果を確実に得るためには、Sb含有量は0.001%以上又は0.010%以上とすることが好ましい。
一方、Sbを多量に含有させても上記効果は飽和するため、Sb含有量は0.050%以下とする。Sb含有量は、好ましくは、0.010%以下又は0.005%以下である。
Ta:0~0.100%
Taは、鋼中に微細な炭化物を形成することで鋼板の強度を高める元素である。この効果を確実に得るためには、Ta含有量を0.001%以上又は0.010%以上とすることが好ましい。
一方、Ta含有量が0.100%超であると、鋼板の延性及び穴広げ性が低下する。そのため、Ta含有量は0.100%以下とする。Ta含有量は、好ましくは、0.080%以下、0.050%以下である。Ta含有量は、好ましくは、0.010%以下又は0.005%以下である。
Bi:0~0.0400%
Biは、凝固組織を微細化することにより、鋼板の延性及び穴広げ性を高める元素である。この効果をより確実に得るためには、Bi含有量は0.0001%以上又は0.0010%以上とすることが好ましい。
一方、Bi含有量を0.020%超としても、上記作用による効果は飽和してしまい、経済的に好ましくない。そのため、Bi含有量は0.0400%以下とする。Bi含有量は、好ましくは、0.0100%以下又は0.0015%以下である。
Ca:0~0.0400%
Caは、破壊の起点となり、鋼板の延性及び穴広げ性を低下させる原因となる非金属介在物の形態を制御することで、鋼板の延性及び穴広げ性を高める元素である。この効果をより確実に得るためには、Ca含有量は0.0001%以上又は0.0010%以上とすることが好ましい。
一方、Ca含有量が0.0400%超であると、鋼中に介在物が過剰に生成され、鋼板の延性及び穴広げ性が低下する。そのため、Ca含有量は0.0400%以下とする。Ca含有量は、好ましくは、0.0100%以下又は0.0015%以下である。
Mg:0~0.0400%
Mgは、Caと同様、非金属介在物の形態を制御することで、鋼板の延性及び穴広げ性を高める元素である。この効果をより確実に得るためには、Mg含有量は0.0001%以上又は0.0010%以上とすることが好ましい。
一方、Mg含有量が0.0400%超であると、鋼中に介在物が過剰に生成され、鋼板の延性及び穴広げ性が低下する。そのため、Mg含有量は0.0400%以下とする。Mg含有量は、好ましくは、0.0100%以下又は0.0015%以下である。
REM:0~0.0400%
REMは、Caと同様、非金属介在物の形態を制御することで、鋼板の延性及び穴広げ性を高める元素である。この効果をより確実に得るためには、REM含有量は0.0001%以上又は0.0010%以上とすることが好ましい。
一方、REM含有量が0.0400%超であると、鋼中に介在物が過剰に生成され、鋼板の延性及び穴広げ性が低下する。そのため、REM含有量は0.0400%以下とする。
なお、REMは、Sc、Y及びランタノイドからなる合計17元素を指し、上記REMの含有量は、これらの元素の合計含有量を指す。REM含有量は、好ましくは、0.0250%以下又は0.0200%以下である。
上述した鋼板の化学組成は、以下の方法で求めることができる。
鋼板の表面から板厚方向に板厚の1/8の位置~板厚の3/8の位置の領域から試験片を採取し、この試験片に対し、ICP-AES(Inductively Coupled Plasma-Atomic Emission Spectrometry)などの一般的な方法で化学組成を測定する。なお、C及びSは燃焼-赤外線吸収法を用い、Nは不活性ガス融解-熱伝導度法を用い、Oは不活性ガス融解-非分散型赤外線吸収法を用いて測定する。
鋼板が表面に被覆を備える場合は、機械研削により表面の被覆を除去してから、同様に化学組成の分析を行う。
なお、溶鋼分析値、スラブ分析値又は同一溶綱から製造された他の鋼板の鋼板分析値などが確認できる場合には、鋼板から採取した試験片での分析を省略し、それらの分析値を鋼板の化学組成とみなしてもよい。
次に、本実施形態に係る鋼板の金属組織について説明する。
本実施形態に係る鋼板は、表面から板厚方向に板厚の1/4位置における金属組織において、面積%で、焼戻しマルテンサイト:30%超、80%以下、粒状ベイナイト:10~50%、フェライト及びパーライトの1種以上:合計で5%未満、フレッシュマルテンサイト及び残留オーステナイトの1種以上:合計で10%以下であり、旧オーステナイト粒のアスペクト比の平均値が3.0~6.0である。
本実施形態では、表面から板厚方向に板厚の1/4位置(以下、板厚1/4位置と記載する場合がある)、及び前記表面から前記板厚方向に前記板厚の1/2位置(以下、板厚1/2位置と記載する場合がある)の金属組織を規定する。
板厚1/4位置とは、鋼板の表面から板厚方向に板厚の1/8の位置~前記板厚の3/8の位置の範囲のことであり、鋼板の表面から板厚の1/8の位置を始点として、板厚の3/8の位置を終点する範囲と換言することができる。
なお、ここでいう鋼板の表面とは、鋼板が表面に被覆を有さない場合には鋼板の表面のことをいい、鋼板が表面に被覆を備える場合には、被覆と鋼板との界面のことをいう。
被覆と鋼板との界面は、後述するBSE COMPO像(BSE Compositional Image)により判別する。
<板厚1/4位置>
焼戻しマルテンサイト:30%超、80%以下
焼戻しマルテンサイトは、強度、延性及び穴広げ性を高め、更に鋼板内の材質ばらつきを低減する組織である。焼戻しマルテンサイトの面積率が30%以下であると、鋼板内の材質ばらつきが高まる。そのため、焼戻しマルテンサイトの面積率は30%超とする。焼戻しマルテンサイトの面積率は、好ましくは、35%以上、40%以上、45%以上又は50%以上である。
一方、焼戻しマルテンサイトの面積率が80%超であると、鋼板の延性が低下する。そのため、焼戻しマルテンサイトの面積率は80%以下とする。焼戻しマルテンサイトの面積率は、好ましくは、75%以下、70%以下又は65%以下である。
粒状ベイナイト(Granular Bainite):10~50%
粒状ベイナイトは、鋼板の延性を高める組織である。粒状ベイナイトの面積率が10%未満であると、鋼板の延性が低下する。そのため、粒状ベイナイトの面積率は10%以上とする。粒状ベイナイトの面積率は、好ましくは、15%以上、20%以上又は25%以上である。
一方、粒状ベイナイトの面積率が50%超であると、鋼板内の材質ばらつきが大きくなる。そのため、粒状ベイナイトの面積率は50%以下とする。粒状ベイナイトの面積率は、好ましくは47%以下、45%以下又は40%以下である。
なお、板厚1/4において、焼戻しマルテンサイト及び粒状ベイナイトの面積率は、合計で85%以上であってもよい。焼戻しマルテンサイト及び粒状ベイナイトの面積率は、合計で、88%以上、90%以上又は92%以上であってもよく、100%以下又は98%以下であってもよい。
フェライト及びパーライトの1種以上:合計で5%未満
フェライト及びパーライトの面積率の合計が5%以上であると、焼戻しマルテンサイトを十分に得ることができず、鋼板内のばらつきが大きくなる。そのため、フェライト及びパーライトの面積率の合計は5%未満とする。フェライト及びパーライトの面積率の合計は少ない程好ましいため、3%以下、2%以下又は1%以下とすることが好ましい。フェライト及びパーライトの面積率の合計は0%であってもよい。
フレッシュマルテンサイト及び残留オーステナイトの1種以上:合計で10%以下
フレッシュマルテンサイト及び残留オーステナイトは鋼板の強度を高める。しかしながら、フレッシュマルテンサイト及び残留オーステナイトの面積率の合計が10%超であると、鋼板の穴広げ性が低下する。そのため、フレッシュマルテンサイト及び残留オーステナイトの1種以上の面積率の合計は10%以下とする。フレッシュマルテンサイト及び残留オーステナイトの1種以上の面積率の合計は、好ましくは、7%以下、5%以下又は3%以下である。
フレッシュマルテンサイト及び残留オーステナイトは含まれなくてもよいため、0%としてもよい。
金属組織の面積率は、以下の方法により測定する。
まず、フレッシュマルテンサイト及び残留オーステナイトの面積率の測定方法について説明する。
鋼板から、板厚1/4位置(表面から板厚方向に板厚の1/8の位置~前記板厚の3/8の位置の範囲)における金属組織が観察できるように試験片を採取する。試験片の板厚断面を鏡面研磨で仕上げ、レペラ(LePera)エッチングした後、FE-SEM(Field Emission-Scanning Electron Microscope):サーマル電界放射型走査電子顕微鏡(JEOL製JSM-7200F)を用いて、板厚1/4位置における200μm(板厚方向)×600μm(板厚方向と直角方向)の領域を観察し、画像解析を行う。
レペラ腐食では、フレッシュマルテンサイト及び残留オーステナイトは腐食されない。そのため、腐食されていない領域の面積率を算出することで、フレッシュマルテンサイト及び残留オーステナイトの面積率の合計を得る。
なお、レペラ腐食では、フレッシュマルテンサイト、焼戻しマルテンサイト及び残留オーステナイトが腐食されないと考えることもある。しかし、本実施形態では、便宜的に、レペラ腐食で腐食されない組織をフレッシュマルテンサイト又は残留オーステナイトとみなす。
また、後述の面積率の測定(X線回折を除く)において同領域を観察するため、例えば、FE-SEMでの観察領域の4隅の内3点に対して、観察領域の4隅から100μm以内の範囲にそれぞれビッカース圧痕を打刻することが好ましい。これらのビッカース圧痕を目印とすれば、FE-SEMでの観察領域と同じ領域を観察することができる。
残留オーステナイトの面積率はX線回折により得る。
鋼板から採取した試験片について、板面から板厚1/4位置(表面から板厚方向に板厚の1/8の位置~前記板厚の3/8の位置の範囲)まで面削し、露出した面を観察面とする。この観察面について、鏡面研磨を行った後、電解研磨で仕上げる。観察面について、Rigaku製RINT-2500、Mo-Kαを用いて、α(200)、α(211)、γ(200)、γ(220)、γ(311)の計5ピークの積分強度を求め、強度平均法を用いて残留オーステナイトの体積率を算出する。この残留オーステナイトの体積率を残留オーステナイトの面積率とみなす。
上述のFE-SEMを用いた観察により得られた「フレッシュマルテンサイト及び残留オーステナイト」の面積率の合計から、X線回折により得られた残留オーステナイトの面積率を差し引くことで、フレッシュマルテンサイトの面積率を得る。計算上、フレッシュマルテンサイトの面積率が負の値となる場合、フレッシュマルテンサイトの面積率は0%とする。
パーライトの面積率は、以下の方法により得る。
FE-SEMでの観察による、フレッシュマルテンサイトの面積率を求めたときと同じ領域(200μm×600μmの領域)について、腐食層のみを研磨により除去し鏡面仕上げした後、ナイタール液を用いてエッチングし、FE-SEMを用いて観察し、画像解析を行う。
セメンタイトとフェライトとがラメラ状に配列している領域をパーライトと判別し、その領域の面積率を算出することで、パーライトの面積率を得る。
フェライト、焼戻しマルテンサイト及び粒状ベイナイトの面積率は以下の方法により得る。
FE-SEMでの観察による、フレッシュマルテンサイト及び残留オーステナイトの面積率を求めたときと同じ領域(200μm×600μmの領域)について、コロイダル研磨又は電解研磨を実施した後、0.2μmの測定間隔で、電子後方散乱回折法により結晶方位情報を得る。測定には、サーマル電界放射型走査電子顕微鏡(JEOL製JSM-7200F)とEBSD検出器(EDAX Velocity(登録商標) 超高速動作型EBSD検出器)とで構成されたEBSD解析装置を用いる。この際、装置内の真空度は9.6×10-5Pa以下、加速電圧は25kV、照射電流レベルは16とする。
得られたBCC結晶構造の結晶方位情報において、EDAX/TSL solution社製 OIM Analysis(登録商標)のバージョン7以降を用いて以下の解析を実施する。結晶方位差が15°以上である測定点間を結晶粒界とみなし、その結晶粒界で囲まれた領域を結晶粒とみなす。次に、結晶粒内に存在する全ての測定点間の結晶方位の差を計算し、この差の平均値を算出することで、その結晶粒のGAM値(Grain Average Misorientation値)を得る。GAM値が0.5°以下であるBCC結晶構造の結晶粒をフェライトとみなし、その面積率(BCC結晶構造以外も含む全ての測定面積を分母とし、フェライトの面積を分子とした割合)を算出することで、フェライトの面積率を得る。
次に、GAM値が0.5°超である結晶粒(フェライトと判別された結晶粒以外のBCC結晶構造の結晶粒)について、結晶方位差が5°超である境界を表示する。結晶粒内の結晶方位差が5°超である境界の密度(単位面積当たりの結晶方位差が5°超である粒界の長さ)を算出することで、その結晶粒の5°境界密度を得る。5°境界密度が0.4μm/μm以下である結晶粒を粒状ベイナイトと判別し、その面積率(BCC結晶構造以外も含む全ての測定面積を分母とし、粒状ベイナイトの面積を分子とした割合)を算出することで、粒状ベイナイトの面積率を得る。5°境界密度が0.4μm/μm超である結晶粒をフレッシュマルテンサイト及び焼戻しマルテンサイトと判別し、その面積率(BCC結晶構造以外も含む全ての測定面積を分母とし、5°境界密度が0.4μm/μm超である結晶粒の面積を分子とした割合)を算出することで、「フレッシュマルテンサイト及び焼戻しマルテンサイト」の面積率の合計を得る。「フレッシュマルテンサイト及び焼戻しマルテンサイト」の面積率の合計から、上述のレペラ腐食とX線回析による方法により得たフレッシュマルテンサイトの面積率を差し引くことで、焼戻しマルテンサイトの面積率を得る。
上述の方法によって焼戻しマルテンサイトと判定された金属組織(すなわち、レペラ腐食で腐食されない組織(つまり、フレッシュマルテンサイト及び残留オーステナイト)以外の金属組織であって、GAM値が0.5°超である結晶粒(フェライトと判別された結晶粒以外のBCC結晶構造の結晶粒)のうち、5°境界密度が0.4μm/μm超である結晶粒)は、通常“マルテンサイト”と判定される組織とならないことがある。具体的には、パーライトの判定に用いるナイタール液を用いてエッチングした試料のFE-SEMによる組織観察(方法Aと呼称する)により、以下の基準により、いわゆる“マルテンサイト”といわれる組織に該当するか否かを判定することができる。
いわゆる“マルテンサイト”といわれる組織は、ラスの集合体で形成された組織であって、(1)組織を構成するラス内に針状のセメンタイトを有し、そのセメンタイトの伸長方向が2方向以上であるか、(2)ラス幅の平均値が1.0μm以下であるか、(1)及び(2)の両方を満足する。ラス幅は、同一の長軸方向をもった3本以上のラスの集合体に対し、それを貫通する最短の直線を引き、その直線の長さを貫通したラスの本数で除すことで測定できる。これを10視野で行い,その平均値をラス幅の平均値とする。FE-SEM観察の際には、ラスの内部に存在する針状の析出物をセメンタイトとみなす。厳密には、針状の析出物には、η炭化物(FeC)、ε炭化物(Fe2+xC)、χ炭化物(Fe)などを含むことがあるが、これらはセメンタイトの前駆的な炭化物と解釈されるため、これらを含めてセメンタイトと総称する。つまり、レペラ腐食によって腐食され、GAM値が0.5°超かつ5°境界密度が0.4μm/μm超のBCC結晶構造の結晶粒であって、前記の方法Aにより“マルテンサイト”と判定されない組織は、“ベイナイト”である。
レペラ腐食、GAM値及び5°境界密度などを利用した前記の方法Aによって焼戻しマルテンサイトと判定された金属組織は、B含有量が0.0015%以下の場合、前記の方法Aでは、“マルテンサイト”と判定されず、ベイナイトと判定される。それらの金属組織は、B含有量が0.0016%以上である場合には、前記の方法Aでは“マルテンサイト”と判定されるようになり、B含有量が0.0020%以上である場合には、前記の方法Aでは殆どが“マルテンサイト”と判定される。
なお、本実施形態においては、レペラ腐食、GAM値及び5°境界密度などを利用した前記の面積率の測定方法により焼戻しマルテンサイトと判定された組織に対し、前記の方法Aによる確認などは不要である。レペラ腐食、GAM値及び5°境界密度などを利用した前記の面積率の測定方法により測定された焼戻しマルテンサイトの面積率は、前記の方法Aにより修正されることはない。
本実施形態では金属組織の面積率をFE-SEMによる画像解析、X線回折及びEBSD解析により算出しているため、各組織の合計が100%にならない場合がある。その場合には、合計が100%になるように各組織の面積率を補正する。例えば、各組織の面積率の合計が103%となる場合には、各組織の面積率に「100/103」を掛けて、各組織の面積率を補正する。
<板厚1/4位置>
旧オーステナイト粒のアスペクト比の平均値:3.0~6.0
板厚1/4位置における旧オーステナイト粒のアスペクト比の平均値が3.0未満であると、加工硬化による強度を高める効果を十分に得られず、鋼板の強度が低下する。また、マルテンサイトに先行してベイナイトが生成し易くなり、材質ばらつきが大きくなる。そのため、板厚1/4位置における旧オーステナイト粒のアスペクト比の平均値は3.0以上とする。旧オーステナイト粒のアスペクト比の平均値は、より好ましくは、3.2以上又は3.4以上である。
一方、板厚1/4位置における旧オーステナイト粒のアスペクト比の平均値が6.0超であると、加工硬化が過剰となり、また、面内異方性が大きくなることで鋼板の穴広げ性が低下する。そのため、板厚1/4位置における旧オーステナイト粒のアスペクト比の平均値は6.0以下とする。旧オーステナイト粒のアスペクト比の平均値は、より好ましくは、5.5以下又は5.0以下である。
板厚1/4位置における旧オーステナイト粒のアスペクト比及び粒径は以下の方法により測定する。
鋼板から、板厚1/4位置(表面から板厚方向に板厚の1/8の位置~前記板厚の3/8の位置の範囲)における金属組織が観察できるように試験片を採取する。圧延方向に平行な板厚断面を鏡面研磨後、腐食液(JIS G 0551:2020の付属書JAのJA.2に記載の腐食液)で旧オーステナイト粒界を現出させる。光学顕微鏡を用い、板厚1/4位置における200μm(板厚方向)×600μm(板厚方向と直角方向)の領域について、旧オーステナイト粒を特定する。次に、後述の方法により旧オーステナイト粒を楕円に近似し、その長径(長軸径)及び短径(短軸径)を求める。上記領域内の全ての旧オーステナイト粒について長径及び短径の比(アスペクト比)を算出し、各旧オーステナイト粒の面積で重みづけして平均値を算出することで、旧オーステナイト粒のアスペクト比の平均値を得る。なお、長径が2μm以下の旧オーステナイト粒は測定から除外する。旧オーステナイト粒のアスペクト比の平均値は、一般式としては、下記式により表すことができる。ここで、Aiはi番目の旧オーステナイト粒の面積であり、riはi番目の旧オーステナイト粒のアスペクト比である。
旧オーステナイト粒のアスペクト比の平均値=Σi(Ai×ri)/ΣiAi
上述の方法で旧オーステナイト粒を十分に現出できない場合は、「Kengo Hata, Masayuki Wakita, Kazuki Fujiwara, Kaori Kawano, Nippon Steel & Sumitomo Metal Technical Report,No.114(2017), p26-31」に記載される再構築法によって旧オーステナイト粒を特定する。
旧オーステナイト粒は以下の方法により楕円体に近似する。
図1に示すように、特定した旧オーステナイト粒Gについて、楕円体に含まれない結晶粒の領域の面積Soutと、楕円体内の結晶粒でない領域の面積Sinとの総和が最小となるように、楕円体gとして近似する。このように楕円体gとして近似することで、(x0,y0):楕円体gの中心、a:楕円体gの長径、b:楕円体gの短径を求める。
<板厚1/2位置>
{100}<011>~{223}<110>の方位群のX線ランダム強度比の平均値:5.0~11.0
{332}<113>の方位のX線ランダム強度比:5.0~9.0
表面から板厚方向に板厚の1/2位置(以下、板厚1/2位置と記載する場合がある)における集合組織において、板面の{100}<011>~{223}<110>の方位群のX線ランダム強度比の平均値を5.0以上とし、且つ、板面の{332}<113>の方位のX線ランダム強度比を5.0以上とすることで、鋼板の強度をより高めることができる。また、板厚1/2位置における集合組織において、板面の{100}<011>~{223}<110>の方位群のX線ランダム強度比の平均値を11.0以下とし、且つ、板面の{332}<113>の方位のX線ランダム強度比を9.0以下とすることで、鋼板の穴広げ性をより高めることができる。
板面の{100}<011>~{223}<110>方位群のX線ランダム強度比の平均値は、{110}<001>、{116}<110>、{114}<110>、{113}<110>、{112}<110>、{335}<110>及び{223}<110>の各X線ランダム強度比の平均値である。なお、{hkl}<uvw>であらわされる結晶方位とは、板面の法線方向が<hkl>に平行で、圧延方向が<uvw>に平行であることを示している。
本実施形態において、板厚1/2位置とは、鋼板の表面から板厚方向に板厚の3/8の位置~前記板厚の5/8の位置の範囲のことであり、鋼板の表面から板厚の3/8の位置を始点として、板厚の5/8の位置を終点する範囲と換言することができる。
板厚1/2位置における集合組織は、以下の方法により測定する。
鋼板から、板厚1/2位置(表面から板厚方向に板厚の3/8の位置~前記板厚の5/8の位置の範囲)の板面が測定面となるように試料を作製する。このとき、機械研磨などによって鋼板を所定の板厚まで表面から減肉し、次いで、化学研磨や電解研磨によって機械研磨によるひずみを除去する。このときの化学研磨や電解研磨による減肉量を50μm以上とすることで、機械研磨によるひずみを十分に除去し、ひずみに起因する測定誤差を最小化する。
次に、Rigaku製RINT-2500、Mo-Kαを用いて、この試料をX線回折に供する。Rigaku製のソフトウェアであるPole Figure Analysis Version.7.0を用いて、級数展開法による結晶方位分布関数を計算し、{110}、{100}、{211}、{310}の極点図を求める。このとき、ランダムな方位を有する標準試料の測定結果を用いて強度を規格化する。また、一律BGモードを選択する。また、平滑化ありを選択し、α方向とβ方向の点数を5点に設定する。このようにして求めた{110}、{100}、{211}、{310}のうち複数の極点図(好ましくは3つ以上)を用いて、Rigaku製のソフトウェアであるODF DataProcessing Version 1.4を用いて、級数展開法により3次元集合組織(X線ランダム強度比の3次元分布関数)を計算する。このとき、偶数項の展開時数は22、奇数項の展開時数は19、X線ランダム強度比を0.0とする強度は0.2に設定する。得られた3次元集合組織におけるφ2=45°断面に存在する{110}<001>、{116}<110>、{114}<110>、{113}<110>、{112}<110>、{335}<110>及び{223}<110>のX線ランダム強度比を求め、それらの平均値を求めることで、{100}<011>~{223}<110>の方位群のX線ランダム強度比の平均値を得る。また、同じφ2=45°断面に存在する{332}<113>のX線ランダム強度比を求めることで、{332}<113>の方位のX線ランダム強度比を得る。
本実施形態に係る鋼板は、表面の一部又は全部に被覆を備えていてもよい。被覆はAl系被覆(Fe-Al系合金を主体とした被覆)であってもよく、Zn系被覆(Fe-Zn系合金を主体とした被覆)であってもよく、電着塗装によって塗着されたエポキシ系樹脂を含んでもよい。被覆は、皮膜、合金化めっき層、金属間化合物層ともいう。被覆を有することで、耐食性を高めることができる。
被覆の厚みは、5~100μmであることが好ましい。
Al系被覆(Fe-Al系合金を主体とした被覆)とは、FeとAlとを合計で70質量%以上含む被覆である。Zn系被覆(Fe-Zn系合金を主体とした被覆)とは、FeとZnとを合計で70質量%以上含む被覆である。
Al系被覆(Fe-Al系合金を主体とした被覆)は、Fe、Alの他に、更にSi、Mg、Ca、Sr、Ni、Cu、Mo、Mn、Cr、C、Nb、Ti、B、V、Sn、W、Sb、Zn、Co、In、Bi、Zr、Se、As、REMの1種以上を含有し、残部が不純物であってもよい。
Zn系被覆(Fe-Zn系合金を主体とした被覆)は、Fe、Znの他に、更にSi、Mg、Ca、Sr、Ni、Cu、Mo、Mn、Cr、C、Nb、Ti、B、V、Sn、W、Sb、Al、Co、In、Bi、Zr、Se、As、REMの1種以上を含有し、残部が不純物であってもよい。
被覆の化学組成及び厚みは、走査型電子顕微鏡を用いた断面観察によって求めることができる。
端面から10mm以上離れた任意の位置から試料を切り出す。切り出した試料の板厚断面を機械研磨し、続いて鏡面仕上げする。走査型電子顕微鏡による観察範囲は、例えば400倍の倍率で、面積で40000μm以上の範囲とする。
BSE COMPO像によって断面観察すると、被覆と、地鉄(鋼板)とでは、明確なコントラストの差が確認される。そのため、最表面からコントラストの変わる位置までの厚みを測定することで、被覆の厚みを測定することができる。測定は、観察写真内で等間隔に20カ所測定し、測定箇所間の距離は6.5μmとする。また測定に際しては、上記の要領で5視野観察を行い、その平均値を用いて被覆の厚みとする。
被覆の化学組成は、上記と同様の観察範囲に対し、電子プローブマイクロアナライザ(EPMA)を用いて、スポットの元素分析(ビーム直径1μm以下)を行うことで被覆に含まれるFe、Al、Znの濃度を求めることができる。任意の10視野の被覆において計10点の分析を行い、その平均値を被覆に含まれるFe、Al、Znの濃度とする。Fe、Al、Zn以外の元素が含まれる場合であっても同様の方法を用いて求める。
本実施形態に係る鋼板の板厚は特に限定されないが、0.4~5.0mmとしてもよい。板厚は、0.8mm以上、1.0mm以上、1.6mm以上又は2.0mm以上としてもよく、4.8mm以下、4.2mm以下、3.8mm以下、3.6mm以下としてもよい。
強度:引張強さ(TS)が980MPa以上
本実施形態に係る鋼板は、引張強さが980MPa以上であることが好ましい。引張強さを980MPa以上とすることで、車体軽量化の効果を大きくすることができる。引張強さは、より好ましくは、1000MPa以上又は1050MPa以上である。
引張強さの上限は、金型摩耗の抑制及び鋼板の延性確保の観点から、1300MPa以下とすることが好ましい。
延性:全伸び(El)が10.0%以上
全伸びは10.0%以上であることが好ましい。全伸びが10.0%以上であれば、延性に優れると判断することができる。なお、全伸びとは、JIS Z 2241:2022でいう「破断時全伸び」のことである。
引張強さ及び全伸びは、JIS Z 2241:2022に準拠して5号試験片を採取し、JIS Z 2241:2022に準拠して引張試験を行うことで得る。引張試験片の採取位置は、圧延方向に垂直な方向を長手方向とする。また、引張試験片の採取位置は、鋼板の板幅方向の端部から1/4部分とすることが好ましい。引張試験は2回実施し、それらの平均値を代表値として用いる。
なお、鋼板の圧延方向は以下の方法により判別する。
鋼板の板厚断面が観察できるように試験片を採取する。試験片は、板面に垂直な方向をZ方向とし、このZ方向を軸として30°毎回転させて、合計で12個採取する。採取した試験片の板厚断面を研磨し、上述の腐食液により旧オーステナイト粒界を現出させ、旧オーステナイト粒のアスペクト比の平均値を切断法によって算出する。旧オーステナイト粒のアスペクト比の平均値が最も大きい試験片を特定し、その試験片を採取した方向を、鋼板の圧延方向と判別する。すなわち、その試験片の板厚断面と平行且つ板厚方向に直角な方向を、鋼板の圧延方向と判別する。
穴広げ性:穴広げ率(λ)が30%以上
穴広げ率は30%以上であることが好ましい。穴広げ率が30%以上であれば、穴広げ性に優れると判断することができる。
穴広げ率は、JIS Z 2256:2020に準拠して穴広げ試験を行うことで得る。穴広げ試験片の採取位置は、引張試験片と同じように、鋼板の板幅方向の端部から1/4部分とすることが好ましい。試験は2回以上実施し、それらの平均値を代表値として用いる。
材質ばらつき
本実施形態において、材質ばらつきは、鋼板の異なる位置から採取した試験片について測定した全伸び及び穴広げ率のばらつきが小さいことが好ましい。具体的には、まず、鋼板の板幅方向の端部から1/4部分、1/2部分及び3/4部分から引張試験片及び穴広げ試験片を採取する。それぞれの試験片について、上述の方法により引張試験及び穴広げ試験を行い、各部分における代表値を得る。なお、鋼板の板幅方向の端部から1/4部分については、新たに試験を実施することなく、上述の試験により得られた代表値を採用する。
1/4部分、1/2部分及び3/4部分について得られた全伸び及び穴広げ率の平均値をそれぞれ算出することで、3部分(1/4部分、1/2部分及び3/4部分)の全伸びの平均値及び穴広げ率の平均値を得る。3部分の全伸びの平均値と、各部分における全伸びの最小値との差が2.5%以下であれば、鋼板内における延性のばらつきが小さいと判断することができる。また、3部分の穴広げ率の平均値と、各部分における穴広げ率の最小値との差が15%以下であれば、鋼板内における穴広げ性のばらつきが小さいと判断することができる。
そのため、本実施形態に係る鋼板は、全伸びの平均値と全伸びの最小値との差が2.5%以下であり、且つ、穴広げ率の平均値と穴広げ率の最小値との差が15%以下であることが好ましい。より好ましくは、全伸びの平均値と全伸びの最小値との差が2.0%以下又は1.8%以下であり、且つ、穴広げ率の平均値と穴広げ率の最小値との差が10%以下又は8%以下である。
本実施形態に係る鋼板は、高い強度、並びに、優れた延性及び穴広げ性を有するとともに、鋼板内の材質ばらつきが低減されている。そのため、部品、特に自動車部品に好適に用いることができる。自動車部品の中でも、ロアアーム、トレーリングアームなどの自動車足回り部品に好適に用いることができる。
本実施形態に係る鋼板を用いて製造された部品は、上述した鋼板と同じ化学組成を有する。また、部品においては、加工を受けた部分と加工を受けていない部分とが混在していてもよい。加工を受けていない部分では、上述した鋼板と同じ金属組織を有する。加工を受けた部分においては、基本的には上述した鋼板と同じ金属組織を有するが、強い加工を受けた場合には、上述した金属組織を有さないか、あるいは、その判定が困難となる場合がある。そのため、部品において金属組織の測定を行う際には、加工を受けていない部分について測定を行う。加工を受けていない部分が無い場合には、強い加工を受けていない部分について測定を行う。加工を受けていない又は強い加工を受けていない部分とは、例えば、部品における平面部分、加工に伴う板厚の増減が小さい部分、並びに、打ち抜き加工、穴広げ加工や曲げ加工などを受けた部分を避けた部分をいう。一例としては、上記部品の場合、平坦で最大の面積を有する部分であり、その重心部付近より試験片を採取し、測定を行う。
例えばロアアームは、本実施形態に係る鋼板に対して絞り加工、曲げ加工、余肉のトリムを行った後、打ち抜き加工、穴広げ加工を行うことで製造することができる。また、トレーリングアームは、本実施形態に係る鋼板に対してバーリング加工、曲げ加工及び切断加工を行うことで製造することができる。
次に、本実施形態に係る鋼板の好ましい製造方法について説明する。以下に説明する製造方法によれば、本実施形態に係る鋼板を安定的に製造することができる。本実施形態に係る鋼板は、スラブに対して熱間圧延を行うことで製造されるため、熱延鋼板と呼ぶこともできる。
なお、以下の説明における温度とは、鋼板の表面温度のことをいう。
本実施形態に係る鋼板の好ましい製造方法では、
熱間圧延における仕上げ圧延において、
1050~1150℃の温度域で、表面温度が30~200℃低下する第1の冷却を施した後、10秒以内に総圧下率が30%以上となる圧延を行い、
1040℃以下の温度域における総圧下率が40~70%となる圧延を行い、
仕上げ圧延完了温度を850~980℃の温度域とし、
仕上げ圧延後、550℃に到達するまでの時間が20秒以下となる冷却を行い、
350~500℃の温度域で巻取る。
また、本実施形態に係る鋼板のより好ましい製造方法では、
コイル状に巻取った後は、コイルの最外周と最内周との中間位置の端面における温度が、350~500℃の温度域で3600~18000秒保持されるように冷却することがより好ましい。
以下、各工程について詳細に説明する。
上述の化学組成を有するスラブを加熱して、熱間圧延を行う。スラブの加熱温度は、例えば1150℃以上としてもよい。エネルギーコストの観点から、スラブの加熱温度は1350℃以下とすることが好ましい。
加熱するスラブについては、上述した化学組成を有する点以外については特に限定されない。例えば、転炉又は電気炉等を用いて上記化学組成の溶鋼を溶製し、連続鋳造法により製造したスラブを用いることができる。連続鋳造法に代えて、造塊法、薄スラブ鋳造法等を採用してもよい。
熱間圧延における粗圧延の条件は特に限定されない。
仕上げ圧延では、1050~1150℃の温度域で、表面温度が30~200℃低下する第1の冷却を施した後、10秒以内に総圧下率が30%以上となる圧延を行うことが好ましい。表面温度が30℃以上低下する第1の冷却としては、水冷が挙げられる。第1の冷却は、冷却前の表面温度が1050~1150℃の温度域であるときに冷却を開始し、表面温度が30~200℃低下するように冷却すればよい。
1050~1150℃の温度域で、表面温度が30℃以上低下する第1の冷却を施した後、10秒以内に総圧下率が30%以上となる圧延を行う(すなわち、復熱中に圧延を行う)ことで、板厚1/4位置における粒状ベイナイトの面積率を好ましく制御することができる。さらに、第1の冷却において表面温度が100℃超、200℃以下低下するように冷却した後、5秒以内に総圧下率が30%以上となる圧延を行うことで、好ましい粒状ベイナイトの面積率を満たす板厚位置の範囲が広がり、強度-伸び-穴広げ性を高位にバランスさせることができる。
仕上げ圧延では、1040℃以下の温度域における総圧下率が40~70%となる圧延を行い、且つ、仕上げ圧延完了温度を850~980℃の温度域とすることが好ましい。仕上げ圧延において、1040℃以下の温度域における総圧下率が40~70%となる圧延を行い、且つ、仕上げ圧延完了温度を850~980℃の温度域とすることで、板厚1/4位置における各組織の分率及び旧オーステナイト粒のアスペクト比を好ましく制御することができる。
本実施形態でいう総圧下率とは、設定する範囲の最初の圧延前の板厚をtとし、設定する範囲の最後の圧延後の板厚をtとしたとき、(1-t/t)×100(%)で表すことができる。
なお、仕上げ圧延開始温度は、1020~1200℃の温度域とすればよい。仕上げ圧延開始温度とは、仕上げ圧延の最初のパスの入側温度である。仕上げ圧延完了温度とは、仕上げ圧延の最終パスの出側温度である。
仕上げ圧延後は、550℃に到達するまでの時間が20秒以下となる冷却(すなわち、平均冷却速度が15℃/s以上の冷却)を行うことが好ましい。仕上げ圧延完了温度から550℃の温度域は、フェライト及びベイナイトが生成する温度域であり、この温度域の滞留時間を短くすることで、マルテンサイトに先行するフェライト及びベイナイトの生成を抑制する。
550℃に到達するまで冷却した後は、350~500℃の温度域で巻取ることが好ましい。この温度域で巻取ることで、所望量の焼戻しマルテンサイトを得ることができる。なお、550℃から巻取り温度の間は、例えば、空冷により冷却すればよい。
コイル状に巻取った後は、コイルの最外周と最内周との中間位置の端面における温度が、350~500℃の温度域で3600~18000秒保持されるように冷却することがより好ましい。端面の温度よりも,コイルの内部では温度が高い状態にあるが、端面の温度において350~500℃の温度域は、コイルの内部におけるマルテンサイトの焼戻しに好適な温度範囲である。このような条件でコイルを冷却することで、所望量の粒状ベイナイト及び焼戻しマルテンサイトが得やすくなる。また、板厚1/2位置における集合組織を好ましく制御することができる。
上記のコイル冷却を達成するための手段は特に限定されない。例えば、巻取り中もしくは巻取り後のコイルに水を吹き付ける方法や、巻取り後のコイルに保温を目的としたカバーをする方法を採用してもよい。
なお、コイル状に巻き取られる前の時間は短いため、上述の保持時間に、コイル状に巻き取られる前の時間は含まれない。
以上説明した製造方法により、本実施形態に係る鋼板を安定的に製造することができる。
次に、実施例により本開示の一態様の効果を更に具体的に説明するが、実施例での条件は、本開示の実施可能性及び効果を確認するために採用した一条件例であり、本開示はこの一条件例に限定されない。本開示は、本開示の要旨を逸脱せず、本開示の目的を達成する限りにおいて、種々の条件を採用し得る。
転炉溶製及び連続鋳造を行うことで、表1及び表2に示す化学組成を有するスラブを得た。得られたスラブに対して、表3A及び表3Bに示す条件により、板厚が2.6~3.2mmの鋼板を得た。
なお、スラブの加熱温度は1200℃以上とし、当該温度域での保持時間は3500秒以上とした。仕上げ圧延開始温度は、1020~1200℃の温度域とした。
また、「第1の冷却による温度低下量」が100℃超であったNo.1について、その冷却の後5秒以内の総圧下率は33%であった。
得られた鋼板について、上述の方法により、金属組織、引張強さ、全伸び、穴広げ率、材質ばらつきを評価した。金属組織の結晶方位情報は、EDAX/TSL solution社製 OIM Analysis(登録商標)のバージョン7.3.1を用いて解析を実施した。
得られた結果を表4A~表5Bに示す。
なお、表中の下線は、本開示の範囲外であること、製造条件が好ましくないこと又は特性値が好ましくないことを示す。
引張強さが980MPa以上であった場合、高い強度を有するとして合格と判定した。一方、引張強さが980MPa未満であった場合、高い強度を有さないとして不合格と判定した。
全伸びが10.0%以上であった場合、優れた延性を有するとして合格と判定した。一方、全伸びが10.0%未満であった場合、優れた延性を有さないとして不合格と判定した。
穴広げ率が30%以上であった場合、優れた穴広げ性を有するとして合格と判定した。一方、穴広げ率が30%未満であった場合、優れた穴広げ性を有さないとして不合格と判定した。
全伸びの平均値と全伸びの最小値との差が2.5%以下であり、且つ、穴広げ率の平均値と穴広げ率の最小値との差が15%以下であった場合、鋼板内の材質ばらつきが低減されていると判断し、合格と判定した。一方、いずれか一方の条件でも満たさなかった場合、鋼板内の材質ばらつきが低減されていないと判断し、不合格と判定した。
表4A~表5Bを見ると、本発明例に係る鋼板は、高い強度、並びに、優れた延性及び穴広げ性を有し、且つ、鋼板内の材質ばらつきが低減されていることが分かる。
一方、比較例に係る鋼板は、上記特性の1つ以上が劣ることが分かる。
また、全ての実施例について、プレス加工によりロアアーム(部品)を製造した。ロアアームの平坦部分について、上述の方法と同様の評価を行った。測定結果及び評価結果は表4A~表5Bに示す結果と同様であった。
本開示に係る上記態様によれば、高い強度、並びに、優れた延性及び穴広げ性を有し、且つ、鋼板内の材質ばらつきが低減された鋼板、並びに、この鋼板を用いた部品を提供することができる。

Claims (5)

  1. 化学組成が、質量%で、
    C :0.050~0.180%、
    Si:0.40~1.30%、
    Mn:1.60~2.80%、
    P :0.100%以下、
    S :0.0500%以下、
    Al:0.020~0.100%、
    N :0.0100%以下、
    O :0.0060%以下、
    Ti:0.030~0.150%、
    B :0.0005~0.0050%、
    Cr:0~1.00%、
    Mo:0~0.500%、
    W :0~0.500%、
    Co:0~0.500%、
    Ni:0~1.000%、
    Cu:0~1.000%、
    V :0~0.500%、
    Nb:0~0.150%、
    As:0~0.050%、
    Zr:0~0.050%、
    Sn:0~0.050%、
    Sb:0~0.050%、
    Ta:0~0.100%、
    Bi:0~0.0400%、
    Ca:0~0.0400%、
    Mg:0~0.0400%、
    REM:0~0.0400%、並びに、
    残部:Fe及び不純物からなり、
    表面から板厚方向に板厚の1/4位置における金属組織において、
    面積%で、
    焼戻しマルテンサイト:30%超、80%以下、
    粒状ベイナイト:10~50%、
    フェライト及びパーライトの1種以上:合計で5%未満、
    フレッシュマルテンサイト及び残留オーステナイトの1種以上:合計で10%以下であり、
    旧オーステナイト粒のアスペクト比の平均値が3.0~6.0であることを特徴とする鋼板。
  2. 前記化学組成が、質量%で、
    Cr:0.01~1.00%、
    Mo:0.001~0.500%、
    W :0.001~0.500%、
    Co:0.001~0.500%、
    Ni:0.001~1.000%、
    Cu:0.001~1.000%、
    V :0.001~0.500%、
    Nb:0.001~0.150%、
    As:0.001~0.050%、
    Zr:0.001~0.050%、
    Sn:0.001~0.050%、
    Sb:0.001~0.050%、
    Ta:0.001~0.100%、
    Bi:0.0001~0.0400%、
    Ca:0.0001~0.0400%、
    Mg:0.0001~0.0400%、及び
    REM:0.0001~0.0400%からなる群のうち1種以上を含有することを特徴とする請求項1に記載の鋼板。
  3. 前記表面から前記板厚方向に前記板厚の1/2位置における集合組織において、
    {100}<011>~{223}<110>の方位群のX線ランダム強度比の平均値が5.0~11.0であり、
    {332}<113>の方位のX線ランダム強度比が5.0~9.0であることを特徴とする請求項1又は2に記載の鋼板。
  4. 前記化学組成が、
    B :0.0016~0.0050%を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の鋼板。
  5. 請求項1又は2に記載の鋼板からなることを特徴とする部品。
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