JP7759015B2 - 鋼材 - Google Patents
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Description
質量%で、
C:0.15~0.45%、
Si:0.05~1.00%、
Mn:0.05~1.00%、
P:0.030%以下、
S:0.0050%以下、
Al:0.005~0.100%、
Cr:0.30~1.50%、
Mo:0.40~2.00%、
Ti:0.002~0.020%、
Nb:0.002~0.100%、
V:0.05~0.30%、
B:0.0005~0.0040%、
N:0.0100%以下、
O:0.0040%以下、
Cu:0~0.50%、
Ni:0~0.50%、
W:0~0.50%、
Ca:0~0.0100%、
Mg:0~0.0100%、
Zr:0~0.0100%、
希土類元素:0~0.0100%、及び、
残部がFe及び不純物からなり、
降伏強度が965MPa以上であり、
前記鋼材中において、
質量%で、Si含有量が20%以上であり、O含有量が10%以上であり、長径が5.0μm以上のSi酸化物の個数密度が、5個/200mm2以下である。
鋼材であって、
質量%で、
C:0.15~0.45%、
Si:0.05~1.00%、
Mn:0.05~1.00%、
P:0.030%以下、
S:0.0050%以下、
Al:0.005~0.100%、
Cr:0.30~1.50%、
Mo:0.40~2.00%、
Ti:0.002~0.020%、
Nb:0.002~0.100%、
V:0.05~0.30%、
B:0.0005~0.0040%、
N:0.0100%以下、
O:0.0040%以下、
Cu:0~0.50%、
Ni:0~0.50%、
W:0~0.50%、
Ca:0~0.0100%、
Mg:0~0.0100%、
Zr:0~0.0100%、
希土類元素:0~0.0100%、及び、
残部がFe及び不純物からなり、
降伏強度が965MPa以上であり、
前記鋼材中において、
質量%で、Si含有量が20%以上であり、O含有量が10%以上であり、長径が5.0μm以上のSi酸化物の個数密度が、5個/200mm2以下である、
鋼材。
[1]に記載の鋼材であって、
Cu:0.01~0.50%、
Ni:0.01~0.50%、
W:0.01~0.50%、
Ca:0.0001~0.0100%、
Mg:0.0001~0.0100%、
Zr:0.0001~0.0100%、及び、
希土類元素:0.0001~0.0100%からなる群から選択される1元素以上を含有する、
鋼材。
[1]又は[2]に記載の鋼材であって、
前記鋼材は継目無鋼管である、
鋼材。
本実施形態による鋼材の化学組成は、次の元素を含有する。
炭素(C)は鋼材の焼入れ性を高め、鋼材の強度を高める。Cはさらに、製造工程中の焼戻しにおいて、炭化物の球状化を促進し、鋼材の耐SSC性を高める。C含有量が低すぎれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、上記効果が十分に得られない。一方、C含有量が高すぎれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、炭化物が多くなりすぎ、鋼材の耐水素脆化特性が低下する。したがって、C含有量は0.15~0.45%である。C含有量の好ましい下限は0.18%であり、さらに好ましくは0.20%であり、さらに好ましくは0.22%であり、さらに好ましくは0.23%である。C含有量の好ましい上限は0.40%であり、さらに好ましくは0.38%であり、さらに好ましくは0.35%である。
ケイ素(Si)は、鋼を脱酸する。Si含有量が低すぎれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、上記効果が十分に得られない。一方、Si含有量が高すぎれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、粗大Si酸化物が多数形成され、鋼材の耐水素脆化特性が低下する場合がある。したがって、Si含有量は0.05~1.00%である。Si含有量の好ましい下限は0.10%であり、さらに好ましくは0.15%であり、さらに好ましくは0.20%である。Si含有量の好ましい上限は0.85%であり、さらに好ましくは0.75%であり、さらに好ましくは0.60%であり、さらに好ましくは0.50%であり、さらに好ましくは0.40%である。
マンガン(Mn)は鋼を脱酸する。Mnはさらに、鋼材の焼入れ性を高める。Mn含有量が低すぎれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、上記効果が十分に得られない。一方、Mn含有量が高すぎれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、粗大な硫化物系介在物が形成され、鋼材の耐水素脆化特性が低下する。したがって、Mn含有量は0.05~1.00%である。Mn含有量の好ましい下限は0.06%であり、さらに好ましくは0.08%であり、さらに好ましくは0.10%である。Mn含有量の好ましい上限は0.90%であり、さらに好ましくは0.80%であり、さらに好ましくは0.70%であり、さらに好ましくは0.60%であり、さらに好ましくは0.50%であり、さらに好ましくは0.40%である。
りん(P)は不純物である。すなわち、P含有量の下限は0%超である。P含有量が高すぎれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、Pが粒界に偏析し、鋼材の耐水素脆化特性が低下する。したがって、P含有量は0.030%以下である。P含有量の好ましい上限は0.025%であり、さらに好ましくは0.020%であり、さらに好ましくは0.015%であり、さらに好ましくは0.010%である。P含有量はなるべく低い方が好ましい。ただし、P含有量の極端な低減は、製造コストを大幅に高める。したがって、工業生産を考慮した場合、P含有量の好ましい下限は0.001%であり、さらに好ましくは0.002%であり、さらに好ましくは0.003%である。
硫黄(S)は不純物である。すなわち、S含有量の下限は0%超である。S含有量が高すぎれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、Sが粒界に偏析し、鋼材の耐水素脆化特性が低下する。したがって、S含有量は0.0050%以下である。S含有量の好ましい上限は0.0040%であり、さらに好ましくは0.0031%であり、さらに好ましくは0.0030%であり、さらに好ましくは0.0020%であり、さらに好ましくは0.0015%である。S含有量はなるべく低い方が好ましい。ただし、S含有量の極端な低減は、製造コストを大幅に高める。したがって、工業生産を考慮した場合、S含有量の好ましい下限は0.0001%であり、さらに好ましくは0.0002%であり、さらに好ましくは0.0003%である。
アルミニウム(Al)は鋼を脱酸する。Al含有量が低すぎれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、上記効果が十分に得られず、鋼材の耐水素脆化特性が低下する。一方、Al含有量が高すぎれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、粗大なAl酸化物が形成され、鋼材の耐水素脆化特性が低下する。したがって、Al含有量は0.005~0.100%である。Al含有量の好ましい下限は0.010%であり、さらに好ましくは0.015%であり、さらに好ましくは0.020%である。Al含有量の好ましい上限は0.080%であり、さらに好ましくは0.060%であり、さらに好ましくは0.040%であり、さらに好ましくは0.035%である。本明細書にいう「Al」含有量は「酸可溶Al」、つまり、「sol.Al」の含有量を意味する。
クロム(Cr)は鋼材の焼入れ性を高める。Crはさらに、鋼材の焼戻し軟化抵抗を高め、高温焼戻しを可能にする。その結果、鋼材の耐水素脆化特性が高まる。Cr含有量が低すぎれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、上記効果が十分に得られない。一方、Cr含有量が高すぎれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、鋼材の耐水素脆化特性が低下する。したがって、Cr含有量は0.30~1.50%である。Cr含有量の好ましい下限は0.35%であり、さらに好ましくは0.40%であり、さらに好ましくは0.50%である。Cr含有量の好ましい上限は1.40%であり、さらに好ましくは1.30%であり、さらに好ましくは1.20%であり、さらに好ましくは1.10%であり、さらに好ましくは1.05%である。
モリブデン(Mo)は鋼材の焼入れ性を高める。Moはさらに、鋼材の焼戻し軟化抵抗を高め、高温焼戻しを可能にする。その結果、鋼材の耐水素脆化特性が高まる。Mo含有量が低すぎれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、上記効果が十分に得られない。一方、Mo含有量が高すぎれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、粗大な炭化物が形成され、鋼材の耐水素脆化特性が低下する。したがって、Mo含有量は0.40~2.00%である。Mo含有量の好ましい下限は0.45%であり、さらに好ましくは0.49%であり、さらに好ましくは0.50%であり、さらに好ましくは0.55%であり、さらに好ましくは0.60%である。Mo含有量の好ましい上限は1.80%であり、さらに好ましくは1.60%であり、さらに好ましくは1.40%であり、さらに好ましくは1.30%である。
チタン(Ti)はNと結合して窒化物を形成し、ピンニング効果により鋼材の結晶粒を微細化する。その結果、鋼材の耐水素脆化特性が高まる。Ti含有量が低すぎれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、上記効果が十分に得られない。一方、Ti含有量が高すぎれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、Ti窒化物が粗大化して、鋼材の耐水素脆化特性が低下する。したがって、Ti含有量は0.002~0.020%である。Ti含有量の好ましい下限は0.003%であり、さらに好ましくは0.004%である。Ti含有量の好ましい上限は0.018%であり、さらに好ましくは0.015%であり、さらに好ましくは0.010%であり、さらに好ましくは0.008%である。
ニオブ(Nb)はC及び/又はNと結合して、炭化物、窒化物又は炭窒化物(以下、「炭窒化物等」という)を形成する。炭窒化物等はピンニング効果により、鋼材の結晶粒を微細化し、鋼材の耐水素脆化特性を高める。Nbはさらに、焼戻し時に微細な炭化物を形成して鋼材の焼戻し軟化抵抗を高め、鋼材の強度を高める。Nb含有量が低すぎれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、上記効果が十分に得られない。一方、Nb含有量が高すぎれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、炭窒化物等が過剰に形成され、鋼材の耐水素脆化特性が低下する。したがって、Nb含有量は0.002~0.100%である。Nb含有量の好ましい下限は0.005%であり、さらに好ましくは0.010%であり、さらに好ましくは0.015%であり、さらに好ましくは0.020%である。Nb含有量の好ましい上限は0.080%であり、さらに好ましくは0.060%であり、さらに好ましくは0.040%である。
バナジウム(V)は炭窒化物等を形成する。炭窒化物等はピンニング効果により、鋼材の結晶粒を微細化し、鋼材の耐水素脆化特性を高める。Vはさらに、焼戻し時に微細な炭化物を形成して鋼材の焼戻し軟化抵抗を高め、鋼材の強度を高める。V含有量が低すぎれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、上記効果が十分に得られない。一方、V含有量が高すぎれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、炭窒化物等が過剰に形成され、鋼材の耐水素脆化特性が低下する。したがって、V含有量は0.05~0.30%である。V含有量の好ましい下限は0.06%であり、さらに好ましくは0.07%であり、さらに好ましくは0.08%である。V含有量の好ましい上限は0.25%であり、さらに好ましくは0.20%であり、さらに好ましくは0.15%である。
ホウ素(B)は鋼に固溶して鋼材の焼入れ性を高め、鋼材の強度を高める。Bはさらに、Pの粒界偏析を抑制して、鋼材の耐水素脆化特性を高める。B含有量が低すぎれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、上記効果が十分に得られない。一方、B含有量が高すぎれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、粗大な窒化物が形成され、鋼材の耐水素脆化特性が低下する。したがって、B含有量は0.0005~0.0040%である。B含有量の好ましい下限は0.0006%であり、さらに好ましくは0.0008%である。B含有量の好ましい上限は0.0035%であり、さらに好ましくは0.0030%であり、さらに好ましくは0.0025%であり、さらに好ましくは0.0020%である。
窒素(N)は不可避に含有される。すなわち、N含有量の下限は0%超である。NはTiと結合して窒化物を形成し、ピンニング効果により、鋼材の結晶粒を微細化する。その結果、鋼材の強度が高まる。しかしながら、N含有量が高すぎれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、粗大な窒化物が形成され、鋼材の耐水素脆化特性が低下する。したがって、N含有量は0.0100%以下である。N含有量の好ましい上限は0.0080%であり、さらに好ましくは0.0060%であり、さらに好ましくは0.0050%であり、さらに好ましくは0.0045%である。上記効果をより有効に得るためのN含有量の好ましい下限は0.0005%であり、さらに好ましくは0.0010%であり、さらに好ましくは0.0015%であり、さらに好ましくは0.0020%である。
酸素(O)は不純物である。すなわち、O含有量の下限は0%超である。O含有量が高すぎれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、粗大な酸化物が形成され、鋼材の耐水素脆化特性が低下する。したがって、O含有量は0.0040%以下である。O含有量の好ましい上限は0.0035%であり、さらに好ましくは0.0033%であり、さらに好ましくは0.0030%であり、さらに好ましくは0.0025%であり、さらに好ましくは0.0020%である。O含有量はなるべく低い方が好ましい。ただし、O含有量の極端な低減は、製造コストを大幅に高める。したがって、工業生産を考慮した場合、O含有量の好ましい下限は0.0001%であり、さらに好ましくは0.0002%であり、さらに好ましくは0.0003%である。
上述の鋼材の化学組成はさらに、Feの一部に代えて、Cu、及び、Niからなる群から選択される1元素以上を含有してもよい。これらの元素はいずれも任意元素であり、鋼材の焼入れ性を高める。
銅(Cu)は任意元素であり、含有されなくてもよい。すなわち、Cu含有量は0%であってもよい。含有される場合、Cuは鋼材の耐水素脆化特性を高める。Cuが少しでも含有されれば、上記効果がある程度得られる。しかしながら、Cu含有量が高すぎれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、鋼材の熱間加工性が低下する。したがって、Cu含有量は0~0.50%である。Cu含有量の好ましい下限は0%超であり、さらに好ましくは0.01%であり、さらに好ましくは0.02%である。Cu含有量の好ましい上限は0.35%であり、さらに好ましくは0.25%であり、さらに好ましくは0.15%であり、さらに好ましくは0.10%であり、さらに好ましくは0.05%である。
ニッケル(Ni)は任意元素であり、含有されなくてもよい。すなわち、Ni含有量は0%であってもよい。含有される場合、Niは鋼材の焼入れ性を高め、鋼材の強度を高める。Niはさらに、鋼に固溶して、鋼材の耐SSC性を高める。Niが少しでも含有されれば、これらの効果がある程度得られる。しかしながら、Ni含有量が高すぎれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、局部的な腐食が促進され、鋼材の耐SSC性が低下する。したがって、Ni含有量は0~0.50%である。Ni含有量の好ましい下限は0%超であり、さらに好ましくは0.01%であり、さらに好ましくは0.02%である。Ni含有量の好ましい上限は0.30%であり、さらに好ましくは0.20%であり、さらに好ましくは0.10%であり、さらに好ましくは0.05%である。
タングステン(W)は任意元素であり、含有されなくてもよい。すなわち、W含有量は0%であってもよい。含有される場合、Wはサワー環境において、保護性の腐食被膜を形成し、鋼材への水素の侵入を抑制する。その結果、鋼材の耐水素脆化特性が高まる。Wが少しでも含有されれば、上記効果がある程度得られる。しかしながら、W含有量が高すぎれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、鋼材中に粗大な炭化物が形成され、鋼材の耐水素脆化特性が低下する。したがって、W含有量は0~0.50%である。W含有量の好ましい下限は0%超であり、さらに好ましくは0.01%であり、さらに好ましくは0.03%であり、さらに好ましくは0.05%である。W含有量の好ましい上限は0.50%未満であり、さらに好ましくは0.48%である。
カルシウム(Ca)は任意元素であり、含有されなくてもよい。すなわち、Ca含有量は0%であってもよい。含有される場合、Caは鋼材中のSを硫化物として無害化し、鋼材の耐水素脆化特性を高める。Caが少しでも含有されれば、上記効果がある程度得られる。しかしながら、Ca含有量が高すぎれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、鋼材中の酸化物が粗大化して、鋼材の耐水素脆化特性が低下する。したがって、Ca含有量は0~0.0100%である。Ca含有量の好ましい下限は0%超であり、さらに好ましくは0.0001%であり、さらに好ましくは0.0003%であり、さらに好ましくは0.0006%である。Ca含有量の好ましい上限は0.0040%であり、さらに好ましくは0.0025%であり、さらに好ましくは0.0020%である。
マグネシウム(Mg)は任意元素であり、含有されなくてもよい。すなわち、Mg含有量は0%であってもよい。含有される場合、Mgは鋼材中のSを硫化物として無害化し、鋼材の耐水素脆化特性を高める。Mgが少しでも含有されれば、上記効果がある程度得られる。しかしながら、Mg含有量が高すぎれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、鋼材中の酸化物が粗大化して、鋼材の耐水素脆化特性が低下する。したがって、Mg含有量は0~0.0100%である。Mg含有量の好ましい下限は0%超であり、さらに好ましくは0.0001%であり、さらに好ましくは0.0003%であり、さらに好ましくは0.0006%である。Mg含有量の好ましい上限は0.0040%であり、さらに好ましくは0.0025%であり、さらに好ましくは0.0020%である。
ジルコニウム(Zr)は任意元素であり、含有されなくてもよい。すなわち、Zr含有量は0%であってもよい。含有される場合、Zrは鋼材中のSを硫化物として無害化し、鋼材の耐水素脆化特性を高める。Zrが少しでも含有されれば、上記効果がある程度得られる。しかしながら、Zr含有量が高すぎれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、鋼材中の酸化物が粗大化して、鋼材の耐水素脆化特性が低下する。したがって、Zr含有量は0~0.0100%である。Zr含有量の好ましい下限は0%超であり、さらに好ましくは0.0001%であり、さらに好ましくは0.0003%であり、さらに好ましくは0.0006%である。Zr含有量の好ましい上限は0.0040%であり、さらに好ましくは0.0025%であり、さらに好ましくは0.0020%である。
希土類元素(REM)は任意元素であり、含有されなくてもよい。すなわち、REM含有量は0%であってもよい。含有される場合、REMは鋼材中のSを硫化物として無害化し、鋼材の耐水素脆化特性を高める。REMはさらに、鋼材中のPと結合して、結晶粒界におけるPの偏析を抑制する。そのため、Pの偏析に起因した鋼材の耐水素脆化特性の低下が抑制される。REMが少しでも含有されれば、上記効果がある程度得られる。しかしながら、REM含有量が高すぎれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、鋼材中の酸化物が粗大化して、鋼材の耐水素脆化特性が低下する。したがって、REM含有量は0~0.0100%である。REM含有量の好ましい下限は0%超であり、さらに好ましくは0.0001%であり、さらに好ましくは0.0003%であり、さらに好ましくは0.0006%である。REM含有量の好ましい上限は0.0040%であり、さらに好ましくは0.0025%であり、さらに好ましくは0.0020%である。
本実施形態による鋼材の降伏強度は965MPa以上(140ksi以上)である。本明細書でいう降伏強度は、ASTM E8/E8M(2021)に準拠した常温(25℃)での引張試験で得られた0.65%伸び時の応力(0.65%耐力)を意味する。本実施形態による鋼材は、上述の化学組成を有し、後述する粗大Si酸化物の個数密度を満たすことで、降伏強度が965MPa以上であっても、優れた耐SSC性を有する。なお、本実施形態において、降伏強度の上限は特に限定されないが、たとえば、1172MPaである。本実施形態において、降伏強度の好ましい下限は986MPaであり、さらに好ましくは1000MPaであり、さらに好ましくは1030MPaであり、さらに好ましくは1034MPa超であり、さらに好ましくは1035MPa、さらに好ましくは1040MPaである。
本実施形態による鋼材は、上述の化学組成と、965MPa以上の降伏強度を有し、さらに、鋼材中の粗大Si酸化物の個数密度が5個/200mm2以下である。上述のとおり、本明細書では、質量%で、Si含有量が20%以上であり、O含有量が10%以上の粒子を「Si酸化物」ともいう。上述のとおり、本明細書ではさらに、長径が5.0μm以上のSi酸化物を「粗大Si酸化物」ともいう。つまり、粗大Si酸化物とは、質量%で、Si含有量が20%以上であり、O含有量が10%以上であり、長径が5.0μm以上の粒子を意味する。
本実施形態による鋼材は、上述の化学組成と、965MPa以上の降伏強度とを有し、鋼材中の粗大Si酸化物の個数密度が5個/200mm2以下である。その結果、本実施形態による鋼材は、高強度と優れた耐水素脆化特性とを両立する。本実施形態において、優れた耐水素脆化特性とは、次の方法で評価できる。
本実施形態による鋼材のミクロ組織は、焼戻しマルテンサイト及び焼戻しベイナイトの体積率の合計が90%以上である。ミクロ組織の残部はたとえば、フェライト、又は、パーライトである。上述の化学組成を有する鋼材のミクロ組織が、焼戻しマルテンサイト及び焼戻しベイナイトの体積率の合計が90%以上を含有すれば、本実施形態の他の構成を満たすことを条件に、965MPa以上の降伏強度と、優れた耐水素脆化特性とを両立できる。すなわち、本実施形態では、鋼材が965MPa以上の降伏強度と、優れた耐SSC性とを両立していれば、ミクロ組織は焼戻しマルテンサイト及び焼戻しベイナイトの体積率の合計が90%以上であると判断する。
本実施形態による鋼材の製造方法を説明する。以下、本実施形態による鋼材の一例として、継目無鋼管の製造方法を説明する。継目無鋼管の製造方法は、素材を準備する工程(製鋼工程)と、素材を熱間加工して素管を製造する工程(熱間加工工程)と、素管に対して焼入れ及び焼戻しを実施して、継目無鋼管とする工程(焼入れ工程及び焼戻し工程)とを備える。なお、本実施形態による製造方法は、以下に説明する製造方法に限定されない。以下、各工程について詳述する。
製鋼工程では、初めに、周知の方法で製造された溶銑に対して、転炉での精錬(一次精錬)を実施する。一次精錬された溶鋼に対して、二次精錬を実施する。二次精錬において、成分調整の合金元素の添加を実施して、上述の化学組成を満たす溶鋼を製造する。
熱間加工工程では、準備された素材を熱間加工して中間鋼材を製造する。鋼材が継目無鋼管である場合、中間鋼材は素管に相当する。始めに、ビレットを加熱炉で加熱する。加熱温度は特に限定されないが、たとえば、1100~1300℃である。加熱炉から抽出されたビレットに対して熱間加工を実施して、素管(継目無鋼管)を製造する。熱間加工の方法は、特に限定されず、周知の方法でよい。
焼入れ工程では、準備された中間鋼材(素管)に対して、焼入れを実施する。本明細書において、「焼入れ」とは、A3点以上の中間鋼材を急冷することを意味する。好ましい焼入れ温度は800~1000℃である。焼入れ温度が高すぎれば、旧γ粒の結晶粒が粗大になり、鋼材の耐SSC性が低下する場合がある。したがって、焼入れ温度は800~1000℃であるのが好ましい。
焼戻し工程では、上述の焼入れが実施された素管に対して、焼戻しを実施する。本明細書において、「焼戻し」とは、焼入れ後の中間鋼材をAc1点未満の温度で再加熱して、保持することを意味する。ここで、焼戻し温度とは、焼入れ後の中間鋼材を加熱して、保持する際の炉の温度に相当する。焼戻し時間とは、中間鋼材を焼戻し温度で保持する時間を意味する。
上記の焼戻し後の各試験番号の継目無鋼管に対して、以下に説明する引張試験、粗大Si酸化物の個数密度測定試験、及び、耐水素脆化特性評価試験を実施した。
各試験番号の継目無鋼管に対して、引張試験を実施して、降伏強度を求めた。引張試験はASTM E8/E8M(2021)に準拠して行った。各試験番号の継目無鋼管の肉厚中央部から、平行部直径8.9mm、標点距離35.6mmの丸棒試験片を作製した。丸棒試験片の軸方向は、継目無鋼管の管軸方向と平行であった。作製した丸棒試験片を用いて、常温(25℃)、大気中にて引張試験を実施して、各試験番号の継目無鋼管の降伏強度(MPa)を得た。なお、本実施例では、引張試験で得られた0.65%伸び時の応力(0.65%耐力)を、降伏強度と定義した。得られた降伏強度(MPa)を「YS(MPa)」として表3に示す。
各試験番号の継目無鋼管に対して、粗大Si酸化物の個数密度測定試験を実施して、長径5.0μm以上のSi酸化物(粗大Si酸化物)の個数密度を求めた。各試験番号の継目無鋼管の肉厚中央部から作製した試験片を用いて、上述の方法で、粗大Si酸化物の個数密度を求めた。得られた粗大Si酸化物の個数密度(個/200mm2)を、表3の「粗大Si酸化物(個/200mm2)」欄に示す。
各試験番号の継目無鋼管の肉厚中央部から、環状切欠き付き丸棒試験片を2つ作製した。各試験片の平行部の外径は4.0mmであり、平行部の長さは25mmであり、平行部の長手方向中央位置には、環状ノッチを形成した。切欠き形状では、切欠きの深さが0.3mm、切欠き角度が60°であり、切欠き底の曲率半径が0.125mmであった。なお、丸棒試験片の軸方向は、継目無鋼管の圧延方向(管軸方向)と平行になるように丸棒試験片を作製した。
表1-1、表1-2、表2、及び、表3を参照して、試験番号1~17の継目無鋼管の化学組成は適切であり、製造方法も上述の好ましい条件を満たしていた。その結果、これらの継目無鋼管は、降伏強度が965MPa以上であり、さらに、粗大Si酸化物の個数密度が5個/200mm2以下であった。その結果、これらの継目無鋼管は、耐水素脆化特性評価試験において、相対破断応力が0.85以上となった。すなわち、試験番号1~17の継目無鋼管は、965MPa以上の降伏強度と、優れた耐水素脆化特性とを両立していた。なお、これらの継目無鋼管は、ミクロ組織において、焼戻しマルテンサイト及び焼戻しベイナイトの体積率の合計が90%以上であると判断した。
Claims (3)
- 鋼材であって、
質量%で、
C:0.15~0.45%、
Si:0.05~1.00%、
Mn:0.05~1.00%、
P:0.030%以下、
S:0.0050%以下、
Al:0.005~0.100%、
Cr:0.30~1.50%、
Mo:0.40~2.00%、
Ti:0.002~0.020%、
Nb:0.002~0.100%、
V:0.05~0.30%、
B:0.0005~0.0040%、
N:0.0100%以下、
O:0.0040%以下、
Cu:0~0.50%、
Ni:0~0.50%、
W:0~0.50%、
Ca:0~0.0100%、
Mg:0~0.0100%、
Zr:0~0.0100%、
希土類元素:0~0.0100%、及び、
残部がFe及び不純物からなり、
降伏強度が965MPa以上であり、
前記鋼材のミクロ組織において、焼戻しマルテンサイト及び焼戻しベイナイトの体積率の合計が90%以上であり、
前記鋼材中において、
質量%で、Si含有量が20%以上であり、O含有量が10%以上であり、長径が5.0μm以上のSi酸化物の個数密度が、5個/200mm2以下である、
鋼材。 - 請求項1に記載の鋼材であって、
Cu:0.01~0.50%、
Ni:0.01~0.50%、
W:0.01~0.50%、
Ca:0.0001~0.0100%、
Mg:0.0001~0.0100%、
Zr:0.0001~0.0100%、及び、
希土類元素:0.0001~0.0100%からなる群から選択される1元素以上を含有する、
鋼材。 - 請求項1又は請求項2に記載の鋼材であって、
前記鋼材は継目無鋼管である、
鋼材。
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