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JP7608264B2 - 生体データ関連指標計測システム - Google Patents

生体データ関連指標計測システム Download PDF

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Description

本発明は、生体データ関連指標計測システム、情報処理システムおよび生体データ関連指標計測方法に関する。
機械化の進展している工場または保守現場(以下、工場等)などもあるが、多くの工場等では、作業員による作業に依存している。このため、作業員のヒューマンエラー抑制が品質改善および生産性向上の鍵となる。人間の動きに伴う計測誤差を排除すべく、激しい動きが検出された期間のデータを使用せずに生体指標を計測する技術は知られている(特許文献1,2)。
特開2007-283041号公報 特開2014-200389号公報
従来技術では、人間が激しい動きをしているときに計測されたデータを使用しないが、実際には、動作が激しいからといって常に生体指標の計測が難しいとは限らない。動作は激しいが生体指標を安定して計算できる場合もあれば、動作は激しくないが生体指標の計算は難しい場合もある。
このような実態を無視して、単純に身体動作の活発さの度合いだけでフィルタリングすると、動作は激しいが生体指標は安定して計算できている区間のデータを除外してしまったり、これとは逆に、動作は激しくないが生体指標の計算が安定しない区間のデータを使用してしまったりすることになる。
本開示の目的は、生体データを効率的に使用することができるようにした生体データ関連指標計測システム、情報処理システムおよび生体データ関連指標計測方法を提供することにある。
上記課題を解決すべく、本開示に従う生体データ関連指標計測システムは、計測対象の生体データに基づく所定の生体データ関連指標を計測する生体データ関連指標計測システムであって、生体データに基づいて、生体特徴量と当該生体特徴量の信頼度とを計算する生体特徴量計算部と、計測対象の動作データに基づいて、動作特徴量を計算する動作特徴量計算部と、生体特徴量および当該生体特徴量の信頼度と動作特徴量とに基づいて、計測対象についての所定の生体データ関連指標を計算する生体データ関連指標計算部と、を備える。
本発明によれば、生体特徴量および当該生体特徴量の信頼度と動作特徴量とに基づいて、計測対象についての所定の生体データ関連指標を計算することができる。
本実施形態の全体概要を示す説明図。 生体指標計測装置の構成図。 生体データの例としての心電データの特徴量を示す説明図。 生体特徴の算出方法の説明に使用される図。 信頼度付き生体特徴量を算出する処理のフローチャート。 生体特徴量の使用可否を決める信頼度を管理するテーブルの例。 生体特徴量の使用可否を決める信頼度を管理する他のテーブルの例。 第2実施例に係り、生体指標計測システムのブロック図。 第3実施例に係り、生体指標計測システムのブロック図。 第4実施例に係り、生体指標計測システムのブロック図。 第5実施例に係り、生体指標計測システムを利用する情報処理システムを含むブロック図。 第6実施例に係り、生体指標計測システムを利用する情報処理システムを含むブロック図。 第7実施例に係り、生体指標計測システムを利用する情報処理システムを含むブロック図。 第8実施例に係り、生体指標計測システムを利用する情報処理システムを含むブロック図。
以下、図面に基づいて、本発明の実施の形態を説明する。本実施形態では、計測対象の例としての作業員の生体データをできるだけ有効に利用することにより、「生体データ関連指標」としての生体指標の精度を改善する。本実施形態では、作業員の動作データに基づく動作特徴量により、生体データに基づく生体特徴量のうち生体指標の計算に使用する生体特徴量を算出する。
本実施形態では、作業員の生体指標の計算結果に基づいて作業員に警告または助言を与えることにより、ヒューマンエラーの発生を抑制する。さらに、本実施形態は、作業員の生体指標の統計情報を計算することにより、作業員の置かれた環境の改善にも寄与する。
以下、「計測対象」として作業員などの人間を例に挙げて説明するが、本実施形態は人間に限らず、家畜、ペット、野生動物、動物園で飼育されている動物を計測対象とすることもできる。人間を計測対象とする場合、本実施形態では作業員に限定しない。本実施形態における計測対象は、作業員に限らず、例えば、運転者、操縦士、医師、看護師、料理人、宅配業者、フィットネスクラブのインストラクター、美容師、理髪師などが含まれる。本実施形態における計測対象は、一例として、活発な身体運動を含む活動に従事する人間であるのが好ましい。本実施形態では、活発な身体運動中に計測された生体データを、その信頼度に基づいて採用するためである。ただし、本明細書において「好ましい」とは、好ましいとされた構成または方法に限定する意図ではない。
図1~図7を用いて第1実施例を説明する。図1は、生体指標計測システム1のブロック図と生体特徴量などを示す説明図である。
図1の下段には、「計測対象」としての作業員3が作業対象4に対して作業をしている様子が示されている。作業員3には、一つまたは複数のセンサ2(1)~2(3)が対応付けられている。
センサ2(1)は、作業員が身につけるタイプのセンサ、いわゆるウェアラブルセンサである。ウェアラブルセンサには、例えば、眼鏡型センサ、腕時計型センサ、シャツ型センサ、ウェアラブルカメラなどがある。眼鏡型センサは、例えば、眼電位、視線または映像などを計測して出力することができる。シャツ型センサでは、心電位、加速度、温度、衣服の伸展やひずみ、などが取得可能である。腕時計型センサは、例えば、脈拍、体温、発汗量、皮膚の電気活動量、加速度、姿勢(ジャイロセンサ)、地磁気などを計測して出力する。図1では、眼鏡型センサ2(1)、腕時計型センサ2(2)を例に挙げる。センサ2(1),2(2)は作業員3が装着して使用するセンサであるが、センサ2(3)は作業員の外部に設けられるセンサである。センサ2(3)は、例えば、カメラ、温度計、湿度計、気圧計、騒音計、振動計、照度計、日射量計などの、作業員3および作業員3の周囲環境を計測するセンサである。
以下、センサ2(1)~2(3)を区別しない場合、センサ2と称する。センサ2は、上述の構成に限らない。眼鏡型または腕時計型等のウェアラブル端末によって、作業員3の周囲環境(気温、湿度、騒音等)を計測してもよい。あるいはカメラで撮影した作業員3の皮膚に浮かぶ血管の変位から、心拍などを計測してもよい。
作業対象4は、作業員3による作業の対象となる物体である。作業対象4は、例えば、自動車、工作機械、事務機器、医療機器、家電製品などの各種製品のほかに、料理、テイクアウト食品、衣服、患者、動物などの種々の物体が該当する。本実施例の生体指標計測システム1は、作業員3が作業対象4に対する作業を行ったために作業員3の生体データに大きな変化が生じ場合に、信頼できる生体データをできるだけ収集して生体指標を計算する。このため、作業員3の生体データに変化を引き起こしうる作業を伴う作業対象4であればよい。したがって、作業員3は工員に限らず、例えば、医師、看護師、美容師、調理師、運転手、操縦士、客室乗務員、車掌などでもよい。
図1の中段には、生体データと身体動作データの関係が示されている。生体データとして心電データを例に挙げて説明する。身体動作データは、作業員3の動作および姿勢(以下、動作等と称する。)を示すデータである。波形の振幅が大きいほど、波形の波長が短いほど、作業員3の動作等が短時間で変化していることを示す。図1の例では、区間DS1およびDS3では、作業員は比較的安静に過ごしているが、区間DS2では、作業員3は激しく動作等している。
生体データに着目すると、作業員3が安静にしている区間DS1では、生体データも安定している。作業員3が所定値以上激しく動作等している区間DS2では、通常、生体データも不安定となる。しかし、図示の例では、作業員3が激しい動作等をしている場合でも、作業員3の生体データは安定しているものとする。例えば、作業員3の身体能力がもともと高く、体を多少動かした程度では心電位に影響が出ないような場合である。一方、区間DS3では、作業員3は安静にしているにもかかわらず、生体データは不安定になっている。作業員3自身はあまり動いていないが、その周囲環境(気温、湿度、騒音、照度)が大きく変化した場合に、生体データが乱れる可能性がある。
本実施例では、後述のように、作業員3の生体データから得られる生体特徴量の信頼性を評価し、身体動作データから得られる動作特徴量に基づいて、当該信頼性の活用基準(例えば閾値)を定め、それに基づいて信頼できる生体特徴量を採用して生体指標を計算する。図1中段の例では、区間DS1および区間DS2の生体データに基づく生体特徴量の信頼性は高いと評価されて採用されるが、区間DS3の生体データに基づく生体特徴量の信頼性は低いと評価されて採用されない。例えば、或る区間Aと他の区間Bとで生体データが似ていると、その信頼度も似た値(例えば0.91と0.92)になる。しかし、各区間A,Bでの動作特徴は異なるため、信頼度の閾値は各区間A,Bで異なる(例えば閾値0.7と0.95)。その結果、区間Aの生体データは、信頼度が閾値以上(0.91>0.7)なので採用するが、区間Bの生体データは、その信頼度の値は高いものの、閾値以下(0.92<0.95)なので採用しないケースがある。
図1の上段には、生体指標計測システム1の機能ブロックが示されている。生体指標計測システム1は、例えば、信頼度付き生体特徴量計算部121と、動作特徴量計算部122と、生体指標計算部123とを含む。
信頼度付き生体特徴量計算部121(以下、生体特徴量計算部121と略記する場合がある。)は、生体データD1に基づいて生体特徴量を計算すると共に、算出された生体特徴量の信頼度も計算する。生体特徴量計算部121は、計算された生体特徴量およびその信頼度を生体指標計算部123へ送る。
生体データD1とは、例えば心電、眼電、筋電、脳波、視線、発汗量、体温等である。生体特徴量計算部121は、センサ2から直接生体データを取得してもよいし、または、記憶装置に蓄積された生体データを後から読みだして処理してもよい。
生体特徴量計算部121は、或る時点までに観測された生体データとそれまでの特徴量とから、或る生体特徴量が得られる事後確率を計算し、計算された事後確率をその生体特徴量の信頼度として生体指標計算部123へ出力する。
生体特徴量とは、例えば、波形のピーク位置やその間隔(RRI:R-R Interval)、ピークの高さ、値が一定値を超えている時間の長さ、特定の周波数成分の信号強度など、生体指標を計算するために、生の生体データに所定の処理を施して得られるものである。
動作特徴量計算部122は、身体動作データD2に基づいて動作特徴量を計算し、算出された動作特徴量を生体指標計算部123へ送る。
身体動作データD2とは、例えば、加速度センサ、ジャイロセンサ、地磁気センサ、固定カメラ、ウェアラブル端末に内蔵されたカメラ、距離カメラ、レーザーセンサ、歪みセンサなどの、作業員3の身体動作を推定するために使用されるデータである。
生体指標計算部123は、生体特徴量およびその信頼度と動作特徴量との両方を勘案して、「生体データ関連指標」としての生体指標を計算する。詳細は後述するが、生体指標計算部123は、生体特徴量計算部121から受領した生体特徴量のうち、生体指標の算出に使用する生体特徴量を、動作特徴量に応じて決定する。例えば、生体指標計算部123は、動作特徴量により決まる閾値以上の信頼度を持つ生体特徴量を、生体指標の計算に使用することができる。動作特徴量に応じて生体特徴量の採否を決定する方法は、閾値による選別に限らない。動作特徴量に基づいて生体指標の計算に用いる生体特徴量を選別できる方法であれば、本実施例に適用可能である。
生体指標計算部123は、生体指標の計算結果D3を出力する。算出された生体指標D3を利用して作業員3に情報を与えたり、作業員3の作業環境を把握したりするシステムについては、後述する。
生体指標とは、例えば、心拍数、RRI、RRV(R-R interval variability )、LF(低周波成分)、HF(高周波成分)、LF/HF、NN50(連続して隣接するRRIの差が50msを超える総数)、pNN50(隣接 RRI の差が 50msec を超えた比率)、瞬き頻度、瞬きの長さ、脳波の各種周波数帯の信号強度やその比率(例:β/αなど)、視線移動量、またこれらの時間平均や分散、中央値などの各種統計量、時間微分(差分)及び積分値、これらの一つまたは複数に所定の変換を施したものである。値xに対し、何らかの関数fを施した値でもよい。関数f(x)は単純な構成でもよいし、例えばニューラルネットワークで表現されるような複雑な関数でもよい。
図2は、生体指標計測システム1内の生体指標計測装置10の構成図である。生体指標計測装置10は、複数のセンサ21,22に接続されている。センサ21は、生体データを検出する生体データセンサである。センサ22は、身体動作データを検出する身体動作データセンサである。センサ21,22は、図1で述べたセンサ2の例である。生体データセンサ21と身体動作データセンサ22は同一筐体内に設けられる場合もある。
生体指標計測装置10は、例えば、信号処理部11と、制御部12と、通信部13を含む計算機として構成される。制御部12は、プロセッサ101および通信メモリ102を含むハードウェア資源とメモリ102に格納された所定のコンピュータプログラムとを用いて、信頼度付き生体特徴量計算部121と動作特徴量計算部122と生体指標計算部123といった各機能を実現する。
生体指標計測装置10は、通信部13から通信ネットワークCNを介して、外部装置5に接続されている。ここで外部装置5は、例えば計算機5(1)、ウェブサーバ5(2)、ストレージシステム5(3)の総称である。それら外部装置5は、生体指標計測装置10からの生体指標D3を受信して利用可能である。なお、後述のように、生体指標計測システム1と生体指標を利用する情報処理システム140とは、通信ネットワークCNを介さずに直接的に接続されてもよいし、同一計算機内に設けられてもよい。
生体指標計測装置10には、例えばフラッシュメモリまたはハードディスクドライブなどの記憶媒体MMを着脱可能に接続することができる。記憶媒体MMは、メモリ102との間でコンピュータプログラムまたはデータの一部または全部を送受信可能である。
<信頼度付き生体特徴量計算部の説明>
図3を参照して、信頼度付き生体特徴量計算部121の具体例を説明する。ここでは、生体データとして心電位、生体指標として平均RRIを計算する場合を例に説明する、図3の縦軸は心電位を、横軸は時間を示す。図中xは処理前の生体データ(心電位の生データ)の全体を示す。本実施例では、生体特徴量の推定を確率モデルで表現する。
観測データx(とその時点までの特徴量yの値)が得られたときに、ある生体特徴量yが得られる事後確率を計算し、これを当該生体特徴量の信頼度とする。生体データとして心電位データ、生体特徴量としてRRIを用いる場合は、例えば、次のように事後確率p(yt+1│x,yt,…,y)が計算できる。これは定性的には、観測データxとt番目までの特徴量(RRI)が得られているとき、t+1番目の特徴量がyt+1となる確率を表す。事後確率pは、下記数1で示すことができる。
Figure 0007608264000001

数1中のZは、正規化のための定数であり、下記数2で与えられる。
Figure 0007608264000002

ここで、Y={yt+1|ymin<yt+1≦ymax}であり、定性的には、特徴量の値としてあり得る範囲を表す。例えば、RRIであれば、ymin=250(msec)、ymax=2000(msec)などとすることができる。
また、Yは下記数3で示すこともできる。
Figure 0007608264000003

ただし、x(t)は時刻tにおける心電位の値を示し、tは初めの心電位のピーク時刻を示す。また、Mは心電位の極大値の集合を示す。x(t+Σyi)は、定性的には、t番目の心電位のピーク時刻からyt+1経過後の心電位の値の大きさを表す(Σでは、変数iの初期値は1であり、t+1まで変化させる)。集合Yは、所定の範囲内にあるRRIで、かつ、t番目のピーク位置から当該RRI経過後の心電位が極大になるものの集合を示す。
ここで、p(x│yt+1,yt,…,y1)及びp(yt+1|yt,…,y1)は、特徴量の特性に合わせて任意にモデル化することができる。
例えば、RRI計算の例であれば、数4のように表すことができる。
Figure 0007608264000004

数4に示す式は定性的には、t番目の心電位のピーク時刻からyt+1経過後の心電位の値の大きさを表しており、この値が大きいほどピーク位置を表している可能性が高い、つまり正しいRRIが推定できている可能性が高いことをモデル化している。
なお、このようなデータの性質をモデル化することが難しい場合はp(x│yt+1,yt,…,y)は一様分布であると仮定して、実質的にはp(yt+1|yt,…,y)のみからp(yt+1│x,yt,…,y)を計算するようにしてもよいし、逆に過去の特徴量計算結果への依存性が全くないと仮定する場合はp(yt+1|yt,…,y)を一様分布であると仮定してもよい。p(yt+1|yt,…,y)としては、例えば下記数5、数6、数7として示すことができる。
Figure 0007608264000005

Figure 0007608264000006

Figure 0007608264000007

ここでN(yt,σ)はytを平均、σ2を分散とする正規分布である。数5は、RRIが短い時間間隔の中で急激に変化することがないということを、モデル化している。
μtは、下記数8の式で与えられるt番目のRRIまでの平均値である。
Figure 0007608264000008

数6は、これまでのRRIの平均値から大きく外れるようなRRIが観測される確率は低いことをモデル化している。
数7において、x_tは下記数9で示される。
Figure 0007608264000009

数7のfftxt(f)は系列xtを高速フーリエ変換(FFT)して得られる系列における周波数fに対応する成分、gはこの結果を更に変換して得られる分布、例えば振幅やパワースペクトルを正規化したものであるとする(図4参照)。
数7の1/yt+1は心電データのピークが観測される周期に相当する。心電位データにはこの周期に対応する周波数帯の信号強度が強く観測されると期待できるため、数7は定性的には、これまで観測されたデータの中でよく観測されている周期に相当するRRIほど値が高くなるようにモデル化している。p(yt+1│yt,…,y)を計算する際には、これらを組み合わせて用いてもよい。
以上のような方法で、p(x│yt+1,yt,…,y)及びp(yt+1|yt,…,y)を計算し、それらを用いて事後確率p(yt+1│x,yt,…,y)を計算することができる。
t+1番目のRRIは、例えば、数10から求めることができる。
Figure 0007608264000010

以上のようにして、t+1番目のRRIとその信頼度の組(yt+1,p(yt+1│x,yt,…,y))を求めることができる。
上述の通り、本実施例では信頼度を確率モデルで表現しており、その結果として信頼度は[0,1]の値になっているが、必ずしもこのように設計する必要はない。例えば先の例で言えば、心電位のピークの高さを信頼度としてそのまま用いることもできる。ただし、この場合、「心電位がXX以上の場合にその生体特徴量を生体指標計算に採用する」という、その閾値XXの意味を直感的に把握することが難しくなること、および、異なる生体特徴量を用いるときにその閾値を当該生体特徴量に合わせて設定し直さなければならない。
これに対し、本実施例のように、生体特徴量の得られる事後確率を確率モデルにしたがって計算し、計算された事後確率をその生体特徴量の信頼度として使用すれば、閾値の意味を直感的に理解しやすくなるばかりか、他の生体特徴量にも適用することができ、生体指標計測システムの設計者およびユーザにとっての使い勝手がよい。しかし、使い勝手の良さをそれほど求めないのであれば、上述した他の方法を採用してもよい。
図5は、信頼度付き生体特徴量を計算する方法を示すフローチャートである。
信頼度付き生体特徴量計算部121は、図5に示すステップS11~S19の処理を実行することにより、上述したように、生体特徴量とその信頼度の組を計算する。
ステップS11では、1番目の特徴量y1とその信頼度p(y|x)を計算して記録する。ステップS12では、tに1をセットし、ステップS13では、下記数11を計算する。
Figure 0007608264000011

数11内のTは、生体データxの長さである。

ステップS11のp(y|x)は、下記数12、数13から得られる。
Figure 0007608264000012

Figure 0007608264000013

ステップS14では、p(x│yt+1,yt,…,y)を計算する。ステップS15では、p(yt+1|yt,…,y)を計算する。ステップs16では、p(yt+1│x,yt,…,y)を計算する。ステップS17では、下記数14を計算する。
Figure 0007608264000014

ステップS15では、t+1番目の特徴量yt+1とその信頼度p(yt+1│x,yt,…,y)を記録する。ステップS16ではtを1だけインクリメントし、ステップS13へ戻る。ステップS13では、生体データxについて計算が完了すると、NOと判定されて本処理は終了する。
<動作特徴量計算部の説明>
動作特徴量を計算する方法を説明する。上述の通り、動作特徴量には、例えば、動作強度、動作種別、姿勢などを用いることができる。動作強度の計算例としては以下のようなものが考えられる。
例えば身体動作データとして、時刻tにおいて3軸の加速度データ(a,t,a,t,az,t)が得られている時、時刻tにおける動作強度ItをIt=√(ax +ay +az )のように計算してもよいし、特定の軸のみを用いて|ax,t|などとしてもよい。また一定時間加速度データを取得し、それに例えば主成分分析などを適用して特定の方向を定め、その方向の成分を用いて計算してもよい。また、加速度データの時間微分値や積分値に基づいて計算をしてもよい。ジャイロセンサや地磁気センサなどについても同様の処理ができる。
身体動作データとして、ウェアラブル端末に内蔵されたカメラからの画像を取得できる場合は、例えば、任意の既存手法を用いてオプティカルフローを計算した後、画像内の各点でのオプティカルフローの大きさを足し合わせたものを動作強度としてもよい。
すなわち、nフレーム目の映像の点(x,y)における、水平方向および垂直方向それぞれのオプティカルフローをhx,y,vx,yと置くと、nフレーム目時点での動作強度Iは下記数15に示すように計算できる。
Figure 0007608264000015

上記のように画像内の全ての点について集計するのではなく、特定の領域のオプティカルフローだけを集計するようにしてもよい。
また、身体動作データとして、固定カメラからの画像を取得できる場合は、例えば次のように、動作強度を求めることができる。すなわち、まず生体指標を計算する対象の人物(作業員3)に対して、任意の既存手法を用いて骨格抽出処理を施し、nフレーム目の映像における当該人物の関節位置の3次元座標の集合(数16)を得る。
Figure 0007608264000016

ここでは関節の三次元座標を求める例を説明しているが、二次元座標でも同様の処理ができる。Jは、骨格抽出により得られる関節位置の個数である。次に、各関節の座標値を時間微分(差分)して得られる関節の移動速度ベクトル(数17)を用いて、動作強度Inを例えば下記数18のように計算できる。
Figure 0007608264000017
Figure 0007608264000018

速度の代わりに座標値を二次微分(差分)した加速度を用いてもよい。全ての関節の情報を用いるのではなく、ターゲットの生体指標に関連が深いと思われる特定の関節の情報だけを用いるようにしてもよい。
動作特徴量として、動作種別や姿勢を用いる場合は、任意の既存の行動識別手法を用いて、加速度データや画像データなどから動作種別を識別し、その動作種別のIDを出力することができる。
動作種別とは、例えば静止、起立、着座、睡眠、歩行、走行、階段昇降、乗り物移動、スポーツ(更に細かくサッカー、野球、バスケットボールなどと分類してもよい)、作業(更に細かくねじ回し、配線、溶接、釘打ち、目視点検などに分類してもよい)などである。このような分類の他に、動作が正常状態であるか異常状態であるかの別を動作種別としてもよい。
動作特徴量として、動作種別と動作強度を合わせたものを出力してもよい。
身体動作データを取得する手段としては、単一のセンサに限定する必要はなく、複数の固定カメラを用いてもよいし、固定カメラとウェアラブルカメラや、カメラと加速度センサ、加速度センサとジャイロセンサなどの組み合わせを用いてもよい。
<生体指標計算部の説明>
生体指標計算部は、生体特徴量及びその信頼度と動作特徴量の両方を勘案して生体指標を計算する。生体指標とは、例えば、心拍数、RRI、RRV、LF、HF、LF/HF、NN50、pNN50、瞬き頻度、瞬きの長さ、脳波の各種周波数帯の信号強度やその比率(例:β/αなど)、視線移動量、またこれらの時間平均や分散、中央値などの各種統計量、時間微分(差分)及び積分値、これらの一つまたは複数に所定の変換を施したものなどである。
以下、生体特徴量として心電位のピーク(R波)の間隔であるRRI(単位はmsecとする)を、生体指標としてある期間(例えば5分間)の平均心拍数(単位はbeat/minuteとする)を用いる場合を例に説明をする。
ここで、当該期間中にN個のRRIの計測点(数19)が得られている場合、平均心拍数HRバーは例えば、下記数20により計算できる。
Figure 0007608264000019
Figure 0007608264000020

以下、N個のRRIに対応する信頼度をS(数21)、そのときの動作特徴量をM(数22)とする。
Figure 0007608264000021

Figure 0007608264000022

例えば、動作特徴量として、単一の値が出力される場合には、図6のテーブルT1に示すように、別途それぞれの動作特徴量に対応する信頼度閾値を決めておいてもよい。この場合、上記数20の計算において、信頼度が閾値より低いものを除外して、下記数23のように平均心拍数を求めることができる。
Figure 0007608264000023

ここで、11[A]は指示関数であり、Aが真であるとき1を、そうでないとき0となる。またθ(mn)はテーブルT1を参照して得られる、動作特徴量mnに対応する信頼度閾値であり、例えばθ(0.03)=0.7、θ(0.23)=0.8、θ(0.93)=0.9などとなる。
動作特徴量に対応する信頼度閾値は、必ずしもテーブルT1のような形式で保持しておく必要はなく、例えば数24のように式として表現し、そのパラメータ(数24の例では係数aおよびb)を保持してもよい。
Figure 0007608264000024

ここで、σ(・)はシグモイド関数である。ここまでの例では、閾値処理により、信頼度が閾値以下のデータは生体指標の計算には一切用いない場合を説明したが、動作特徴量に応じて生体特徴量に重みづけを行い、それを生体特徴量の信頼度と共に用いて生体指標を求めるようにしてもよい。例えば、動作特徴量mnに対応する重みw(mn)をw(mn)=σ(amn+b)と定義し、数25によって平均心拍数を求めてもよい。
Figure 0007608264000025

ここでは、動作特徴量mnに対応する重みw(mn)と特徴量RRInの信頼度Snを単純に乗算する例を紹介したが、任意の形式で特徴量RRInに対する重みづけを決定してよい。
動作特徴量として、動作の種別や姿勢が出力される場合には、図7のテーブルT1aに示すように、別途それぞれの動作種別(=動作特徴量)に対応する信頼度閾値を決めてもよい。その後は、前述の方法と同様にして、例えば数23を用いて生体指標を求めることができる。
単一の動作種別の中でも動作強度が異なることもあるので、動作特徴量として動作種別および強度を出力し、数23と数25で述べた方法を組み合わせて、生体指標を計算してもよい。
このように構成される本実施例によれば、計算の信頼性が低い区間のデータ(生体特徴量)を除外しつつも、できるだけ無駄なくデータを利用することができるため、効率よく高精度に生体指標を計測することができる。
本実施例の生体指標計測システムによれば、作業員が作業をしている場合など、身体の動きが伴う状況下でも生体指標を安定して計測できる。
図8を用いて第2実施例を説明する。本実施例を含む以下の各実施例では、第1実施例との相違を中心に説明する。本実施例では、計測対象の作業員3の動作種別に応じて、生体特徴量の基準値を選択する。
図8は、本実施例の生体指標計測システム1Aのブロック図である。生体指標計測システム1Aは、第1実施例で述べた生体指標計測システム1に対して、身体動作データを用いて動作種別を判別する動作種別判別部125と、動作に応じた生体特徴量の基準値を管理する動作別生体特徴量基準値データベース124とが追加されている。以下、動作別生体特徴量基準値データベース124を基準値データベース124と略記する場合がある。
信頼度付き生体特徴量計算部121は、生体特徴量及びその信頼度を計算する際に、動作種別判別部125の判別結果に応じて、基準値データベース124から当該動作種別における生体特徴量の基準値を読み出し、その基準値を参照して生体特徴量及びその信頼度を計算する。生体指標・特徴量は動作種別によっておおよその取り得る値の範囲が決まることがある。例えば、安静ときには心拍数は低いが、ジョギングなど運動をしているときは心拍数が高くなる傾向がある。このような前知識をモデル化することで、より高精度な生体特徴量及び生体指標の計算ができると期待できる。加速度データや映像データなどの身体動作データを用いて運動状態を判別し、その判別結果に応じて、生体特徴量の予測モデル(におけるパラメータ)を変更する。数学的には、数1におけるp(yt+1|yt,…,y)の部分が動作種別によって変わることになる。
数5~数7では、それまでに観測されたRRIと次のRRIが突然大きく異なることはない、ということなどをモデル化したが、それらに変えて、あるいは加えて、数26のようなモデルを用いることもできる。
Figure 0007608264000026

t+1は動作種別判別によって判別されたyt+1に対応する時刻における動作種別、μ(at+1)は動作種別at+1に対応する生体特徴量の基準値である。
生体特徴量の基準値は、運動科学などの知見を基に人手で設定をしてもよいし、過去の実績データから機械学習などを用いて決定してもよい。ここでは身体動作データから動作種別を判別する例を説明したが、動作状態を規定するような外部情報が利用可能な場合は、それを用いて、動作種別の判別を行ってもよい。例えば、 MES(Manufacturing Execution System:製造実行システム)の情報が利用できれば、時刻ごとの作業内容、すなわち動作種別を知ることができる。
このように構成される本実施例も第1実施例と同様の作用効果を奏する。さらに、本実施例では、動作種別に応じて生体特徴量の基準値を選択するため、より一層高精度に生体指標を計測することができる。
図9を用いて第3実施例を説明する。本実施例では、作業員毎に(個人別に)生体特徴量の基準値を選択する。図9は、本実施例の生体指標計測システム1Bのブロック図である。
本実施例の生体指標計測システム1Bは、第1実施例で述べた生体指標計測システム1に対して、個人ごとの生体特徴量の基準値を管理する生体特徴量基準値データベース124Bを有する。信頼度付き生体特徴量計算部121は、生体特徴量及びその信頼度を計算する際に、基準値データベース124Bから当該個人(作業員3)における生体特徴量の基準値を読み出し、それを参照して生体特徴量及びその信頼度を計算する。
生体指標および生体特徴量は個人ごとに、おおよその取り得る値の範囲が決まることがある。例えば、アスリートなどは平均的な心拍数が低いことが知られている。このような知識をモデル化することで、より高精度な生体特徴量及び生体指標を計算可能である。信頼度付き生体特徴量計算部121において、個人ごとに生体特徴量の予測モデル(におけるパラメータ)を変更する。
数学的には、数1におけるp(yt+1|yt,…,y)の部分が個人によって変わることになる。数5~数7では、それまでに観測されたRRIと次のRRIが突然大きく異なることはない、ということなどをモデル化したが、それらに変えて、あるいは加えて、数27に示すモデルを用いることもできる。
Figure 0007608264000027

μiは個人IDがiである個人の生体特徴量の基準値である。この基準値を格納するデータベース124Bは、生体データを計測する生体センサと一緒に同じ端末に実装し、ローカルに値を読み出すようにしてもよい。あるいは、データベース124Bをクラウド上に実装し、ネットワーク通信を通して、生体特徴量の基準値を読み出してもよい。
生体特徴量基準値は、例えば、身長、体重、年齢、性別、運動経験、習慣などの個人プロファイルデータから一定の変換式に基づいて設定してもよいし、当該被験者の過去のログデータから自動的に推定してもよい。
このように構成される本実施例も第1実施例と同様の作用効果を奏する。さらに、本実施例では、計測対象の作業員毎の生体特徴量の履歴を管理し、個人別の生体特徴量基準値を用いるため、より高精度に生体指標を計測できる。
図10を用いて第4実施例を説明する。本実施例では、作業員3が作業する周囲環境の情報を参考にして生体特徴量を計算する。
図10は、本実施例の生体指標計測システム1Cのブロック図である。本実施例の生体指標計測システム1Cは、第1実施例で述べた生体指標計測システム1に対して、環境情報データD4を用いて環境条件を判別する環境条件判別部126と、環境条件ごとの生体特徴量の基準値を管理する生体特徴量基準データベース124Cとを追加する。信頼度付き生体特徴量計算部121は、生体特徴量及びその信頼度を計算する際に、データベース124Cから当該環境条件における生体特徴量の基準値を読み出し、その基準値を参照して生体特徴量及びその信頼度を計算する。
環境情報データD4とは例えば、温度、湿度、照度、音(騒音)、二酸化炭素濃度などである。環境情報データD4を検出するセンサには、例えば、温度計、湿度計、照度計、マイクロフォン、騒音計、二酸化炭素濃度計などがある。
生体指標および生体特徴量は、環境条件ごとに、おおよその取り得る値の範囲が決まることがある。例えば、室温や湿度が高いと発汗量が増加したり、騒音が大きいと心拍数が増加したりする場合である。このような前知識をモデル化することで、より高精度に生体特徴量及び生体指標を計算できる。信頼度付き生体特徴量計算部121において、環境条件ごとに生体特徴量の予測モデルにおけるパラメータ)を変更する。数学的には、数1におけるp(yt+1|yt,…,y)の部分が環境条件によって変わることになる。数5~数7では、それまでに観測されたRRIと次のRRIが突然大きく異なることはない、ということなどをモデル化したが、それらに変えて、あるいは加えて、数28に示すモデルを用いることもできる。
Figure 0007608264000028

et+1はyt+1に対応する時刻における環境条件、ν(et+1)は環境条件がet+1であるときの生体特徴量の基準値である。
環境条件は、例えば温度など連続値を取ってもよいし、一つまたは複数の環境センサを用いていくつかのカテゴリの中から分類してもよい。環境条件が連続値の場合、ν(et+1)は、例えば当該連続値を別の連続値に変換するための任意の関数である。その関数のパラメータは事前に手動で決定してもよいし、データから機械学習的に決定してもよい。これらのパラメータを環境条件別生体特徴量基準値データベース124Cに格納しておく。また、環境条件がカテゴリ値の場合、カテゴリごとの基準値をデータベース124Cへ格納しておく。
このように構成される本実施例も第1実施例と同様の作用効果を奏する。さらに、本実施例では、作業員の作業環境に応じて生体特徴量の基準値を選択するため、より高精度に生体指標を計測することができる。
図11を用いて、第5実施例を説明する。本実施例を含む以下の各実施例では、生体指標計測システム1の出力する生体指標を利用する生体指標利用システム140を備える情報処理システムについて説明する。本実施例では、作業員の生体指標から当該作業員の内的状態を推定する。
本実施例の情報処理システム6は、生体指標計測システム1と生体指標利用システム140を備える。生体指標利用システム140は、一つまたは複数の生体指標に応じた内的状態を推定するための計算パラメータを管理する内的状態推定用データベース142と、計算された生体指標D3と内的状態推定用の計算パラメータとを用いて作業員の内的状態を推定する内的状態推定部141と、を備えている。
内的状態とは、例えば、集中度、疲労度、ストレス度、安静度、興奮度、動揺度、自信度、怒り度合い、躁鬱度合い、焦り度合い、活気、やる気、エラーポテンシャル、など人の内面を表す状態である。内的状態は、連続値で表現してもよいし、低・中・高あるいは安静・同様のように量子化あるいはカテゴリ化をして表現してもよい。
本実施例では、例えば、平均心拍数と瞬きの頻度という生体指標を用いて、作業員の集中度を推定する。必要に応じて環境情報を追加で用いてもよい。例えば、環境情報センサとしてマイクを用い、周囲の雑音が大きい場合、あるいは音声認識により誰かから話しかけられていることが認識できた場合、集中度が下がっている可能性が高いことが考えられる。
生体科学または心理学などの知見に基づいて推定式をあらかじめ人手で定め、そのパラメータを内的状態推定用データベース142に格納しておき、そのパラメータを用いて人の内的状態を推定してもよい。あるいは、予備的に生体指標及びそのときの内的状態を表すデータを収集し、機械学習の手法によって推定用のパラメータを学習し、そのパラメータを内的状態推定用データベース142に格納しておき、当該パラメータを用いて人の内的状態を推定してもよい。この際、機械学習モデル学習用に予備的に収集する内的状態を表すデータ(正解データ)は、被験者アンケートなど任意の別手段を用いて収集すればよい。
内的状態を推定するときには、その尤もらしさを示す数値(信頼度、確信度、尤度、など)を一緒に出力してもよい。その尤もらしさを示す数値には、例えば機械学習モデルとしてニューラルネットワークを用いて識別をする場合、最終層の出力値、あるいはそれにsoftmax関数を適用したものを用いることができる。その他の場合においても、同様に、機械学習モデルの出力結果を参考にこの数値を定めることができる。
内的状態を推定する際の基となった生体特徴量の信頼度も、例えば計算に用いられた生体特徴量の平均信頼度のように、一緒に出力してもよい。このように、内的状態の推定結果に加えその尤もらしさを示す数値を一緒に出力することにより、後に述べるように、その尤もらしさを示す数値を用いて、より柔軟な分析および判断が可能となる。
このように構成される本実施例も第1実施例と同様の作用効果を奏する。さらに本実施例の情報処理システム6は、生体指標利用システム140を備えるため、作業員3の生体指標から当該作業員の内的状態を推定でき、情報処理システム6のユーザにとっての使い勝手が向上する。
図12を用いて第6実施例を説明する。本実施例の情報処理システム6Aは、作業員の内的状態の推定結果に応じて、「所定の情報」としての警報D6を出力する。
本実施例の情報処理システム6Aの生体指標利用システム140Aでは、第5実施例で述べた情報処理システム6の生体指標利用システム140に対して、内的状態の推定結果D5に基づいて警報D6を出力する警報出力部143が追加されている。
生体指標利用システム140Aは、例えば、作業員の集中度が所定の閾値を下回った場合または作業員の疲労度が所定の閾値を超えた場合などに、警報D6を出力する。警報出力先は、計測対象の作業員本人でもよいし、当該作業員を監督する管理者などの他の人間でもよい。
警報D6は、例えば、音、振動、変色、点灯・点滅、画面表示、通知アイコン、電子メールなどを用いて出力することができる。
警報の出力方法としては、内的状態推定結果が連続値の場合は上述のように閾値処理でもよいし、カテゴリの場合はあるカテゴリになったときに出力するようにしてもよい。
警報を出力する/警報を出力しないといった単純な二値判断だけでなく、値やカテゴリに応じて警報D6の内容を変更してもよい。
誤報や過剰な警報出力を抑えるために、内的状態の推定結果D5が単位時間内に閾値を一定回数以上超えた場合に警報を出力してもよい。内的状態の推定結果D5が一定時間連続して超えた場合に警報を出力してもよい。内的状態の推定結果D5の移動平均に基づいて警報出力の是非を判断してもよい。
図12の上側に示すように、警報D6には、「集中度:38、信頼度:0.94」のように、内的状態推定の尤もらしさを表す値を含めてもよい。これにより、例えば集中力の低下を知らせる警報D6が出力された場合に、その警報D6に従うか否かを作業員または管理者が判断できる。例えば、作業時間に余裕があれば休憩を取るが、作業時間的に余裕がなく警報の信頼度も低いときは警報を無視する、などの対応が可能となる。
さらに、データ収集対象の個人情報が利用可能であれば、その個人情報に応じて、警報を出力するか否かの判断を変更できる。例えば、作業員が初心者の場合は作業に不慣れであり、熟練者に比べて集中度が低下したり、疲労度が増加したりするため、警報を出力する条件を緩和する。
作業員の体調を示すデータ、睡眠時間を示すデータなどを生体指標利用システム140Aへ入力し、それらの個人データを利用して警報D6を出力する条件または警報D6の内容を調整してもよい。
内的状態の推定結果の信頼度を用いて、警報D6を出力するか否かを判断することもできる。例えば、熟練者であれば信頼度が0.90以上の場合のみ出力するが、初心者であれば0.60以上であれば出力する、体調が悪い人の場合は信頼度が低くても念のため出力するといった処理が可能となる。これにより、警報の出力に関して柔軟な判断を支援することができる。
このように構成される本実施例も第5実施例と同様の作用効果を奏する。さらに、本実施例では、内的状態の推定結果D5に基づいて警報D6を出力するため、より一層計測対象の作業員および本システム6のユーザにとっての使い勝手が向上する。
図13を用いて第7実施例を説明する。本実施例の情報処理システム6Bは、作業員の内的状態の推定結果D5を蓄積し、蓄積された推定結果D5を統計処理して利用する。
本実施例の情報処理システム6Bの生体指標利用システム140Aでは、第5実施例で述べた情報処理システム6の生体指標利用システム140に対して、ある活動環境において推定された複数の内的状態推定結果D5の記録を管理する内的状態記録データベース144と、データベース144に格納されたデータに基づいて当該活動環境下における内的状態の統計情報を計算する統計情報計算部145が追加されている。
例えば、内的状態としての集中度を推定する場合、集中度の履歴を保存することにより、ある作業現場における作業員の集中度と他の作業現場における作業員の集中度を比較できる。これにより、ある現場において作業員の集中度が低い傾向が判明した場合、作業環境のレイアウトを変更する、作業順序を見直す、温度や照明・音環境などをコントロールする、人員を入れ替えるなどの、その現場の改善策を作成することができる。
図13の上側に示すように、内的状態記録データベース144は、例えば、タイムスタンプ(図中、TS)、個人ID、環境ID、活動ID、一つ以上の内的状態の推定結果とその信頼度の組を備えることができる。
タイムスタンプは、内的状態の推定結果D5がデータベース144に登録された日時である。個人IDは、計測対象の作業員を特定する情報である。環境IDとは、例えば工場やラインを特定するIDである。活動IDとは、作業種別を特定するIDである。その他必要に応じて、使用した道具、一緒に作業をした作業員のID、イベント情報などをテーブル144に適宜追加してもよい。
内的状態の記録は、一人の記録を取ってもよいし、複数人の記録でもよい。内的状態は1種類である必要はなく、複数でもよい。
蓄積された内的状態の推定結果D5から計算される統計情報とは、例えば、平均値、分散、時間的な推移などである。統計情報は、グラフとして表示されてもよい。生体指標利用システム140Bは、統計情報に基づいて改善策を立案する機能を備えてもよい。改善策には、例えば、作業現場の改善策、作業工程の改善策、設計図の改善策、作業手順の改善策などがある。
上述の通り、データベース144には、内的状態推定D5の尤もらしさを表す値を「信頼度」として、内的状態の推定結果D5と一緒に記録してもよい。これにより、例えばデータが十分貯まってきた際には、信頼度が一定値以上の推定結果D5だけを集計して統計情報を計算するなどの処理を行うことができ、より精度の高い統計情報が得られることが期待できる。
図14を用いて第8実施例を説明する。本実施例の情報処理システム6Cは、作業員の内的状態の推定結果D5を環境情報データD4と対応付けて蓄積し、蓄積されたデータD5,D4を統計処理して利用する。
本実施例の情報処理システム6Bの生体指標利用システム140Cでは、第5実施例で述べた情報処理システム6の生体指標利用システム140に対して、ある活動環境D4において推定された複数の内的状態推定結果D5を記録する内的状態記録データベース144Cと、データベース144に格納されたデータD5に基づいて当該活動環境下における内的状態の統計情報を計算する統計情報計算部145Cが追加されている。
作業員の内的状態の推定結果D5と温度や照度などの環境情報データD4とを対応付けてデータベース144Cに記録しておけば、作業環境と内的状態の関係を推測することができ、本情報処理システム6Cのユーザにとっての使い勝手が向上する。作業環境と内的状態の関係とは、例えば、気温が高いと集中力が低下する傾向がある、照度を上げると集中度も上がる傾向がある、騒音を小さくすると疲労度が低下する傾向がある、などである。
内的状態記録データベース144Cは、例えば、タイムスタンプ、個人ID、環境ID、活動ID、環境情報、一つ以上の内的状態の推定結果とその信頼度の組を備えることができる。環境情報の欄は、温度、湿度、照度、騒音などのように環境情報ごとに設けられる。
上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために構成を詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、各実施例の構成の一部について、他の構成に追加、削除、置換することが可能である。
また、上記の各構成、機能、処理部、処理手段等は、それらの一部又は全部を、例えば集積回路で設計する等によりハードウェアで実現してもよい。また、本発明は、実施例の機能を実現するソフトウェアのプログラムコードによっても実現できる。この場合、プログラムコードを記録した記憶媒体をコンピュータに提供し、そのコンピュータが備えるプロセッサが記憶媒体に格納されたプログラムコードを読み出す。この場合、記憶媒体から読み出されたプログラムコード自体が前述した実施例の機能を実現することになり、そのプログラムコード自体、およびそれを記憶した記憶媒体は本発明を構成することになる。このようなプログラムコードを供給するための記憶媒体としては、例えば、フレキシブルディスク、CD-ROM、DVD-ROM、ハードディスク、SSD(Solid State Drive)、光ディスク、光磁気ディスク、CD-R、磁気テープ、不揮発性のメモリカード、ROMなどが用いられる。
また、本実施例に記載の機能を実現するプログラムコードは、例えば、アセンブラ、C/C++、perl、Shell、PHP、Java(登録商標)等の広範囲のプログラム又はスクリプト言語で実装できる。
さらに、実施例の機能を実現するソフトウェアのプログラムコードを、ネットワークを介して配信することによって、それをコンピュータのハードディスクやメモリ等の記憶手段又はCD-RW、CD-R等の記憶媒体に格納し、コンピュータが備えるプロセッサが当該記憶手段や当該記憶媒体に格納されたプログラムコードを読み出して実行するようにしてもよい。
上述の実施例において、制御線や情報線は、説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしも全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。全ての構成が相互に接続されていてもよい。
1,1A,1B,1C:生体指標計測システム、2:センサ、3:作業員、4:作業対象、5:外部装置、6,6A,6B,6C:情報処理システム、121:信頼度付き生体特徴量計算部、122:動作特徴量計算部、123:生体指標計算部、124:動作別生体特徴量基準データベース、124B:個人別生体特徴量基準データベース、124C:環境条件別生体特徴量基準データベース、125:動作種別判別部、126:環境条件計算部、141:内的状態推定部、142:内的状態推定用データベース、143:警報出力部、144,144C:内的状態記録データベース、145,145C:統計情報計算部

Claims (5)

  1. 計測対象の生体データに基づく所定の生体データ関連指標を計測する生体データ関連指標計測システムであって、
    生体データに基づいて、生体特徴量と当該生体特徴量の信頼度とを計算する生体特徴量計算部と、
    計測対象の動作データに基づいて、動作特徴量を計算する動作特徴量計算部と、
    前記生体特徴量および当該生体特徴量の信頼度と前記動作特徴量とに基づいて、前記計測対象についての所定の生体データ関連指標を計算する生体データ関連指標計算部と
    を備え、
    前記生体特徴量計算部は、所定の確率モデルに基づいて、生体特徴量の得られる事後確率を算出し、前記算出された事後確率の値を前記生体特徴量の信頼度として出力する
    体データ関連指標計測システム。
  2. 前記所定の確率モデルは、生体特徴量の特性に応じて設定することができる
    請求項に記載の生体データ関連指標計測システム。
  3. 前記計測対象の動作データに基づいて動作種別等を判別する動作種別判別部と、前記計測対象の動作種別または姿勢(以下、動作種別等ごとの生体特徴量の基準値を管理する動作別基準値管理部をさらに備えており、
    前記生体特徴量計算部は、前記動作種別判別部により判別された動作種別等に対応する生体特徴量の基準値を前記動作別基準値管理部から取得し、前記取得された生体特徴量の基準値を用いて、生体データから生体特徴量と当該生体特徴量の信頼度とを計算する
    請求項に記載の生体データ関連指標計測システム。
  4. 前記計測対象ごとの生体特徴量の基準値を管理する計測対象別基準値管理部をさらに備え、
    前記生体特徴量計算部は、前記計測対象に対応する生体特徴量の基準値を前記計測対象別基準値管理部から取得し、前記取得された生体特徴量の基準値を用いて、生体データから生体特徴量と当該生体特徴量の信頼度とを計算する
    請求項1に記載の生体データ関連指標計測システム。
  5. 前記計測対象の周囲の環境情報に基づいて環境条件を判別する環境条件判別部と、環境条件ごとの生体特徴量の基準値を管理する環境条件別基準値管理部をさらに備え、
    前記生体特徴量計算部は、前記環境条件判別部により判別された環境条件に対応する生体特徴量の基準値を前記環境条件別基準値管理部から取得し、前記取得された生体特徴量の基準値を用いて、生体データから生体特徴量と当該生体特徴量の信頼度とを計算する
    請求項1に記載の生体データ関連指標計測システム。
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