JP7673875B1 - 高強度鋼板、高強度めっき鋼板及びそれらの製造方法並びに部材 - Google Patents
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Abstract
所定の成分組成を有し、xTi,eff=xTi-xN-xS(ただし、xTi、xN、xSは各元素の鋼中モル分率)から求められる有効Tiモル分率(xTi,eff)が0.001以上を満たし、板厚1/4位置において、マルテンサイトの面積率が60%以上99%以下、フェライトの面積率および/または残留オーステナイトの体積率が合計で0%超40%以下である鋼組織と、方位差15度以上の旧オーステナイト粒界におけるボロン原子濃度が0.3at%以上6.0at%以下、大きさ2μm以上の析出物の個数密度が150個/mm2以下である、高強度鋼板。
Description
YR=YS/TS×100・・・・(2)
伸びフランジ性については、JIS Z 2256に準拠して測定する穴広げ率(以下、単にλともいう)が30%以上の場合、伸びフランジ性に優れると判断する。
A :ホールドタイム0.16秒で0.1mm以上の長さのき裂が認められない。
B :ホールドタイム0.16秒で0.1mm以上の長さのき裂が認められるが、ホールドタイム0.20秒で0.1mm以上の長さのき裂が認められない。
C :ホールドタイム0.20秒で0.1mm以上の長さのき裂が認められる。
(1)マルテンサイト(焼入れマルテンサイト及び焼戻しマルテンサイト)を主体とし、さらにフェライトおよび/または残留オーステナイトを含む鋼組織とすることで、部品の寸法精度の指標であるYRを65%以上90%以下に実現できる。
(2)方位差15度以上の旧オーステナイト粒界におけるボロン原子濃度を0.3at%以上6.0at%以下とすることで、良好なスポット溶接部HAZの耐鋼板間割れ特性を実現できる。
(3)大きさ2μm以上の析出物の個数密度を150個/mm2以下とすることで、良好な伸びフランジ性および曲げ性を実現できる。
[1]質量%で、C:0.030%以上0.500%以下、Si:0.01%以上2.50%以下、Mn:0.10%以上5.00%以下、P:0.100%以下、S:0.0200%以下、Al:0.100%以下、N:0.0100%以下、O:0.0100%以下、Ti:0.002%以上0.200%以下、および、B:0.0002%以上0.0100%以下を含有するとともに、下記(1)式から求められる有効Tiモル分率(xTi,eff)が0.001以上を満たし、残部がFeおよび不可避的不純物からなる成分組成と、
板厚1/4位置において、マルテンサイトの面積率が60%以上99%以下、フェライトの面積率および/または残留オーステナイトの体積率が合計で0%超40%以下である鋼組織と、方位差15度以上の旧オーステナイト粒界におけるボロン原子濃度が0.3at%以上6.0at%以下、大きさ2μm以上の析出物の個数密度が150個/mm2以下である、高強度鋼板。
記
xTi,eff=xTi-xN-xS・・・(1)
なお、式中のxTi、xN、xSは各元素の鋼板中含有量(モル分率)を表す。
[2]前記成分組成は、さらに、質量%で、Nb:0.200%以下、V:0.200%以下、Ta:0.10%以下、W:0.10%以下、Cr:1.00%以下、Mo:1.00%以下、Co:0.010%以下、Ni:1.00%以下、Cu:1.00%以下、Sn:0.200%以下、Sb:0.200%以下、Ca:0.0100%以下、Mg:0.0100%以下、REM:0.0100%以下、Zr:0.100%以下、Te:0.100%以下、Hf:0.10%以下、Bi:0.200%以下、
のうちから選ばれる少なくとも1種の元素を含有する、[1]に記載の高強度鋼板。
[3][1]または[2]に記載の高強度鋼板の少なくとも片面にめっき層を有する、高強度めっき鋼板。
[4][1]または[2]に記載の成分組成を有する鋼スラブとし、700℃以上1000℃以下の温度域における平均冷却速度を50℃/hr以上500℃/hr以下として前記鋼スラブを冷却し、次いで、前記鋼スラブを、900℃以上1150℃以下の温度域におけるスラブの平均加熱速度を25℃/min以下、1150℃以上のスラブ加熱温度まで、1100℃から前記スラブ加熱温度までの滞留時間を20分以上として加熱し、次いで、前記鋼スラブに、粗圧延出側温度が1100℃以上、仕上げ圧延入側温度が1050℃以上とする熱間圧延を施して熱延板とし、次いで、前記熱延板に酸洗を施して酸洗板とし、次いで、前記酸洗板に、累積圧下率を20%以上95%以下、および、冷間圧延の最終パスの通板速度を50mpm以上として冷間圧延を施して冷延板とし、次いで、前記冷延板を780℃以上の加熱温度まで加熱する焼鈍工程を行い、次いで、前記冷延板を加熱温度から650℃までの温度域における平均冷却速度を0.5℃/s以上50℃/s以下の条件で第一冷却する、高強度鋼板の製造方法。
[5]前記第一冷却後、さらに、250℃以上400℃以下の温度域における平均冷却速度を1.0℃/s以上とする第二冷却を行う、[4]に記載の高強度鋼板の製造方法。
[6]前記第一冷却後、さらに、100℃以上450℃以下の保熱温度で5s以上保熱する第二冷却を行う、[4]に記載の高強度鋼板の製造方法。
[7]前記第一冷却後、さらに、250℃以下とし、次いで、前記冷延板を、(前記冷却停止温度+50℃)以上450℃以下の再加熱温度に再加熱して該再加熱温度にて5s以上保熱する第二冷却を行う、[4]に記載の高強度鋼板の製造方法。
[8][4]に記載の焼鈍工程の後、前記冷延板の少なくとも片面にめっき処理を施すめっき工程を行う、高強度めっき鋼板の製造方法。
[9]前記第一冷却後、さらに、250℃以上400℃以下の温度域における平均冷却速度を1.0℃/s以上とする第二冷却を行う、[8]に記載の高強度めっき鋼板の製造方法。
[10]前記第一冷却後、さらに、100℃以上450℃以下の保熱温度で5s以上保熱する第二冷却を行う、[8]に記載の高強度めっき鋼板の製造方法。
[11]前記第一冷却後、さらに、250℃以下とし、次いで、前記冷延板を、(前記冷却停止温度+50℃)以上450℃以下の再加熱温度に再加熱して該再加熱温度にて5s以上保熱する第二冷却を行う、[8]に記載の高強度めっき鋼板の製造方法。
[12][1]または[2]に記載の高強度鋼板を少なくとも一部に用いてなる、部材。
[13][3]に記載の高強度めっき鋼板を少なくとも一部に用いてなる、部材。
Cは、鋼の重要な基本成分の1つであり、特に本開示では、マルテンサイト、フェライトの面積率、および、残留オーステナイトの体積率に影響する重要な元素である。Cの含有量が0.030%未満では、マルテンサイトの面積率が減少し、さらにフェライトの面積率が増加し、1180MPa以上のTSを実現することが困難になる。また、所望のYRを実現することが困難になる。一方、Cの含有量が0.500%を超えると、残留オーステナイトの体積率が増加するため、λおよび曲げ性が低下する。したがって、Cの含有量は、0.030%以上0.500%以下とする。Cの含有量は、好ましくは0.080%以上とする。Cの含有量は、好ましくは0.400%以下とする。Cの含有量は、より好ましくは0.110%以上とする。Cの含有量は、より好ましくは0.350%以下とする。
Siは、鋼の重要な基本成分の1つであり、特に本開示では、焼鈍中の炭化物生成を抑制し、残留オーステナイトの生成を促進することから、残留オーステナイトの体積率に影響する元素である。Siの含有量が0.01%未満では、フェライトの面積率および/または残留オーステナイトの体積率が減少するため、所望のYRを実現することが困難になる。一方、Siの含有量が2.50%を超えると、残留オーステナイトの体積率が増加するため、所望のYRを実現することが困難になる。したがって、Siの含有量は、0.01%以上2.50%以下とする。Siの含有量は、好ましくは0.20%以上とする。Siの含有量は、好ましくは2.00%以下とする。Siの含有量は、より好ましくは0.25%以上とする。Siの含有量は、より好ましくは1.50%以下とする。
Mnは、鋼の重要な基本成分の1つであり、特に本開示では、マルテンサイト、フェライトの面積率、および、残留オーステナイトの体積率に影響する重要な元素である。Mnの含有量が0.10%未満では、マルテンサイトの面積率が減少し、さらにフェライトの面積率が増加し、1180MPa以上のTSを実現することが困難になる。また、所望のYRを実現することが困難になる。一方、Mnの含有量が5.00%を超えると、マルテンサイトの面積率が増加し、所望のフェライトの面積率および/または残留オーステナイトの体積率が得られず、所望のYRを実現することが困難になる。また、λおよび曲げ性が低下する。したがって、Mnの含有量は、0.10%以上5.00%以下とする。Mnの含有量は、好ましくは1.00%以上とする。Mnの含有量は、好ましくは4.00%以下とする。Mnの含有量は、より好ましくは2.00%以上とする。Mnの含有量は、より好ましくは3.50%以下とする。
Pが過剰となると、旧オーステナイト粒界に偏析して粒界を脆化させ、鋼板の極限変形能を低下させることから、λおよび曲げ性が低下する。そのため、Pの含有量は0.100%以下にする必要がある。なお、Pの含有量の下限は特に規定しないが、Pは固溶強化元素であり、鋼板の強度を上昇させることができることから、0.001%以上とすることが好ましい。したがって、Pの含有量は、0.100%以下とする。Pの含有量は、好ましくは0.001%以上とする。Pの含有量は、好ましくは0.070%以下とする。
Sは、硫化物として存在し、大きさ2μm以上の析出物の個数密度を増加することから、λおよび曲げ性が低下する。そのため、Sの含有量は0.0200%以下にする必要がある。なお、Sの含有量の下限は特に規定しないが、生産技術上の制約から、Sの含有量は0.0001%以上とすることが好ましい。したがって、Sの含有量は0.0200%以下とする。Sの含有量は、好ましくは0.0001%以上とする。Sの含有量は、好ましくは0.0050%以下とする。
Alが過剰となると、A3変態点が上昇し、鋼組織中に多量のフェライトを含んでしまうため、所望のYRを実現することが困難になる。そのため、Alの含有量は0.100%以下にする必要がある。なお、Alの含有量の下限は特に規定しないが、連続焼鈍中の炭化物生成を抑制し、残留オーステナイトの生成を促進することから、Alの含有量は0.001%以上とすることが好ましい。したがって、Alの含有量は0.100%以下とする。Alの含有量は好ましくは0.001%以上とする。Alの含有量は好ましくは0.050%以下とする。
Nは、窒化物として存在し、大きさ2μm以上の析出物の個数密度を増加させることから、λおよび曲げ性が低下する。そのため、Nの含有量は0.0100%以下にする必要がある。なお、Nの含有量の下限は特に規定しないが、生産技術上の制約から、Nの含有量は0.0005%以上とすることが好ましい。したがって、Nの含有量は0.0100%以下とする。Nの含有量は、好ましくは0.0005%以上とする。Nの含有量は、好ましくは0.0050%以下とする。
Oは、酸化物として存在し、大きさ2μm以上の析出物の個数密度を増加させることから、λおよび曲げ性が低下する。そのため、Oの含有量は0.0100%以下にする必要がある。なお、Oの含有量の下限は特に規定しないが、生産技術上の制約から、Oの含有量は0.0001%以上とすることが好ましい。したがって、Oの含有量は0.0100%以下とする。Oの含有量は、好ましくは0.0001%以上とする。Oの含有量は、好ましくは0.0050%以下とする。
Tiは、熱間圧延時あるいは焼鈍時に、微細な炭化物、窒化物もしくは炭窒化物を形成することによって、鋼板の強度を上昇させる。また、Tiを添加することで、大きさ2μm以上の析出物の個数密度を減少することができる。さらに、TiはNやSと析出物を形成することで、方位差15度以上の旧オーステナイト粒界におけるボロン原子濃度を増加することができる。こうした効果を得るためには、Tiの含有量を0.002%以上にする必要がある。一方、Tiの含有量が0.200%を超えると、炭化物、窒化物もしくは炭窒化物の量が増大するため、所望のYRを実現することが困難になる。したがって、Tiの含有量は、0.002%以上0.200%以下とする。Tiの含有量は、好ましくは0.006%以上とする。Tiの含有量は、好ましくは0.100%以下とする。Tiの含有量は、より好ましくは0.010%以上とする。Tiの含有量は、より好ましくは0.050%以下とする。
有効Tiモル分率(xTi,eff)=xTi-xN-xS・・・(1)
なお、式中のxTi、xN、xSは各元素の鋼板中含有量(モル分率)を表す。
上記(1)式から求められる有効Tiモル分率を一定以上とすることで、大きさ2μm以上の析出物の個数密度を減少し、良好なλおよび曲げ性を実現することができる。さらに、TiはNやSと析出物を形成することで、方位差15度以上の旧オーステナイト粒界におけるボロン原子濃度を増加することができる。こうした効果を得るために、有効Tiモル分率を0.001%以上にする。なお、有効Tiモル分率の上限は特に規定しないが、炭化物、窒化物もしくは炭窒化物の量が増大し、所望のYRを実現することが困難になることから、有効Tiモル分率は0.040以下とすることが好ましい。したがって、有効Tiモル分率は0.001%以上とする。有効Tiモル分率は、好ましくは0.002%以上とする。有効Tiモル分率は、好ましくは0.040%以下とする。
Bは、方位差15度以上の旧オーステナイト粒界におけるボロン原子濃度を増加し、良好なスポット溶接部HAZの耐鋼板間割れ特性を実現することができる。こうした効果を得るためには、Bの含有量を0.0002%以上にする必要がある。一方、Bの含有量が0.0100%を超えると、大きさ2μm以上の析出物の個数密度が増大するため、λおよび曲げ性が低下する。したがって、Bの含有量は、0.0002%以上0.0100%以下とする。Bの含有量は、好ましくは0.0004%以上とする。Bの含有量は、好ましくは0.0080%以下とする。Bの含有量は、より好ましくは0.0005%以上とする。Bの含有量は、より好ましくは0.0050%以下とする。
Nbは、粗大な析出物や介在物が多量に生成し、鋼板の極限変形能を低下させることから、Nbの含有量が0.200%超であるとλおよび曲げ性が低下する。そのため、Nbの含有量は0.200%以下にする。なおNbの含有量の下限は特に規定しないが、Nbの含有量を0.001%以上とすることで、熱間圧延時あるいは連続焼鈍時に微細な炭化物、窒化物もしくは炭窒化物を形成することによって、鋼板の強度を上昇させ、YRを所望の範囲に制御することができる。このことから、Nbの含有量は0.001%以上とすることが好ましい。したがって、添加する場合、Nbの含有量は0.200%以下とする。Nbの含有量は好ましくは0.001%以上とする。Nbの含有量は好ましくは0.100%以下とする。
Vは、粗大な析出物や介在物が多量に生成し、鋼板の極限変形能を低下させることから、Vの含有量が0.200%超であるとλおよび曲げ性が低下する。そのため、Vの含有量は0.200%以下にする。なお、Vの含有量の下限は特に規定しないが、Vの含有量を0.001%以上とすることで、熱間圧延時あるいは連続焼鈍時に微細な炭化物、窒化物もしくは炭窒化物を形成することによって、鋼板の強度を上昇させ、YRを所望の範囲に制御することができる。このことから、Vの含有量は0.001%以上とすることが好ましい。したがって、添加する場合、Vの含有量は0.200%以下とする。Vの含有量は好ましくは0.001%以上とする。Vの含有量は好ましくは0.100%以下とする。
TaおよびWの含有量がそれぞれ0.10%超であると、粗大な析出物や介在物が多量に生成し、鋼板の極限変形能を低下させることから、λおよび曲げ性が低下する。そのため、TaおよびWの含有量はそれぞれ0.10%以下にする。なおTaおよびWの含有量の下限は特に規定しないが、熱間圧延時あるいは連続焼鈍時に、微細な炭化物、窒化物もしくは炭窒化物を形成することによって鋼板の強度を上昇させることから、TaおよびWの含有量はそれぞれ0.01%以上とすることが好ましい。したがって、添加する場合、TaおよびWの含有量はそれぞれ0.10%以下とする。TaおよびWの含有量は、好ましくはそれぞれ0.01%以上とする。TaおよびWの含有量は、好ましくはそれぞれ0.08%以下とする。
Cr、MoおよびNiがそれぞれ1.00%超であると、粗大な析出物や介在物が増加し、鋼板の極限変形能を低下させることから、λおよび曲げ性が低下する。そのため、Cr、MoおよびNiの含有量はそれぞれ1.00%以下にする。なお、Cr、MoおよびNiの含有量の下限は特に規定しないが、これらは焼入れ性を向上させる元素であることから、Cr、MoおよびNiの含有量はそれぞれ0.01%以上とすることが好ましい。したがって、添加する場合、Cr、MoおよびNiの含有量はそれぞれ1.00%以下とする。Cr、MoおよびNiの含有量は、好ましくは0.01%以上とする。Cr、MoおよびNiの含有量は、好ましくは0.80%以下とする。
Coの含有量が0.010%超であると、粗大な析出物や介在物が増加し、鋼板の極限変形能を低下させることから、λおよび曲げ性が低下する。そのため、Coの含有量は0.010%以下にする。なお、Coの含有量の下限は特に規定しないが、Coは焼入れ性を向上させる元素であることから、Coの含有量は0.001%以上とすることが好ましい。したがって、添加する場合、Coの含有量は0.010%以下とする。Coの含有量は、好ましくは0.001%以上とする。Coの含有量は、好ましくは0.008%以下とする。
Cuの含有量が1.00%超であると、粗大な析出物や介在物が増加し、鋼板の極限変形能を低下させることから、λおよび曲げ性が低下する。そのため、Cuの含有量は1.00%以下にする。なお、Cuの含有量の下限は特に規定しないが、Cuは焼入れ性を向上させる元素であることから、Cuの含有量は0.01%以上とすることが好ましい。したがって、Cuを添加する場合、Cuの含有量は1.00%以下とする。Cuの含有量は、好ましくは0.01%以上とする。Cuの含有量は、好ましくは0.80%以下とする。
Snの含有量が0.200%超であると、鋳造時あるいは熱間圧延時において鋼板内部に割れを生成し、鋼板の極限変形能を低下させることから、λおよび曲げ性が低下する。そのため、Snの含有量は0.200%以下にする。なお、Snの含有量の下限は特に規定しないが、Snは焼入れ性を向上させる元素であることから、Snの含有量は0.001%以上とすることが好ましい。したがって、添加する場合、Snの含有量は0.200%以下とする。Snの含有量は、好ましくは0.001%以上とする。Snの含有量は、好ましくは0.100%以下とする。
Sbの含有量が0.200%超であると、粗大な析出物や介在物が増加し、鋼板の極限変形能を低下させることから、λおよび曲げ性が低下する。そのため、Sbの含有量は0.200%以下にする。なお、Sbの含有量の下限は特に規定しないが、Sbは表層軟化厚みを制御し、強度調整を可能にする元素であることから、Sbの含有量は0.001%以上とすることが好ましい。したがって、添加する場合、Sbの含有量は0.200%以下とする。Sbの含有量は、好ましくは0.001%以上とする。Sbの含有量は、好ましくは0.100%以下とする。
Ca、MgおよびREMの含有量がそれぞれ0.0100%超であると、粗大な析出物や介在物が増加し、鋼板の極限変形能を低下させることから、λおよび曲げ性が低下する。そのため、Ca、MgおよびREMの含有量はそれぞれ0.0100%以下にする。なお、Ca、MgおよびREMの含有量の下限は特に規定しないが、これら元素は窒化物や硫化物の形状を球状化し、鋼板の極限変形能を向上する元素であることから、Ca、MgおよびREMの含有量はそれぞれ0.0005%以上とすることが好ましい。したがって、添加する場合、Ca、MgおよびREMの含有量はそれぞれ0.0100%以下とする。Ca、MgおよびREMの含有量は、好ましくは0.0005%以上とする。Ca、MgおよびREMの含有量は、好ましくは0.0050%以下とする。なお、REM(希土類元素)とは、Sc、Yと原子番号57のランタン(La)から原子番号71のルテチウム(Lu)までの15元素の総称であり、ここでいうREM含有量は、これらの元素の合計含有量である。
ZrおよびTeがそれぞれ0.100%超であると、粗大な析出物や介在物が増加し、鋼板の極限変形能を低下させることから、λおよび曲げ性が低下する。そのため、ZrおよびTeの含有量はそれぞれ0.100%以下にする必要がある。なお、ZrおよびTeの含有量の下限は特に規定しないが、窒化物や硫化物の形状を球状化し、鋼板の極限変形能を向上する元素であることから、ZrおよびTeの含有量はそれぞれ0.001%以上とすることが好ましい。したがって、添加する場合、ZrおよびTeの含有量は0.100%以下とする。ZrおよびTeの含有量は、好ましくはそれぞれ0.001%以上とする。ZrおよびTeの含有量は、好ましくはそれぞれ0.080%以下とする。
Hfの含有量が0.10%超であると、粗大な析出物や介在物が増加し、鋼板の極限変形能を低下させることから、λおよび曲げ性が低下する。そのため、Hfの含有量は0.10%以下にする。なお、Hfの含有量の下限は特に規定しないが、窒化物や硫化物の形状を球状化し、鋼板の極限変形能を向上する元素であることから、Hfの含有量は0.01%以上とすることが好ましい。したがって、添加する場合、Hfの含有量は0.10%以下とする。Hfの含有量は、好ましくは0.01%以上とする。Hfの含有量は、好ましくは0.08%以下とする。
Biの含有量が0.200%超であると、粗大な析出物や介在物が増加し、鋼板の極限変形能を低下させることから、λおよび曲げ性が低下する。そのため、Biの含有量は0.200%以下にする。なお、Biの含有量の下限は特に規定しないが、Biは偏析を軽減する元素であることから、Biの含有量は0.001%以上とすることが好ましい。したがって、添加する場合、Biの含有量は0.200%以下とする。Biの含有量は、好ましくは0.001%以上とする。Biの含有量は、好ましくは0.100%以下とする。
マルテンサイトの面積率が60%未満では、フェライトの面積率が増加し、1180MPa以上のTSを実現することが困難になる。また、所望のYRを実現することが困難になる。一方、マルテンサイトの面積率が99%を超えると、YRの制御に有効なフェライトおよび/または残留オーステナイトが鋼組織中に存在しないため、所望のYRを実現することが困難になる。したがって、マルテンサイトの面積率は60%以上99%以下とする。マルテンサイトの面積率は、好ましくは65%以上とする。マルテンサイトの面積率は、好ましくは98%以下とする。マルテンサイトの面積率は、より好ましくは67%以上とする。マルテンサイトの面積率は、好ましくは97%以下とする。なお、ここでいうマルテンサイトには、焼入れマルテンサイト(フレッシュマルテンサイト)に加え、焼戻しマルテンサイト及びベイナイトが含まれる。なお、マルテンサイトの面積率の観察位置は、後述の通り、鋼板の板厚の1/4位置とする。
フェライトの面積率および/または残留オーステナイトの体積率の合計が0%では、鋼組織がマルテンサイト単相組織となるため、所望のYRを実現することが困難になる。一方、フェライトの面積率および/または残留オーステナイトの体積率の合計が40%を超えると、マルテンサイトの面積率が減少し、1180MPa以上のTSを実現することが困難になる。また、所望のYRを実現することが困難になる。したがって、フェライトの面積率および/または残留オーステナイトの体積率の合計は0%超40%以下とする。フェライトの面積率および/または残留オーステナイトの体積率の合計は、好ましくは1%以上とする。フェライトの面積率および/または残留オーステナイトの体積率の合計は、好ましくは38%以下とする。フェライトの面積率および/または残留オーステナイトの体積率の合計は、より好ましくは2%以上とする。フェライトの面積率および/または残留オーステナイトの体積率の合計の面積率は、好ましくは35%以下とする。なお、ここでいうフェライトには、ベイニティックフェライトが含まれる。なお、フェライトの面積率および残留オーステナイトの体積率の観察位置は、後述の通り、鋼板の板厚の1/4位置とする。
本開示において、極めて重要な発明構成要件である。スポット溶接部HAZの耐鋼板間割れ特性を制御するためには方位差15度以上の旧オーステナイト粒界における元素偏析を制御することが重要である。特に方位差15度以上の旧オーステナイト粒界におけるボロン原子濃度を増加することで、スポット溶接部HAZの耐鋼板間割れ特性を向上することができる。こうした効果を得るためには、方位差15度以上の旧オーステナイト粒界におけるボロン原子濃度を0.3at%以上にする必要がある。一方、方位差15度以上の旧オーステナイト粒界におけるボロン原子濃度が6.0at%を超えると、大きさ2μm以上の析出物の個数密度が増大するため、λおよび曲げ性が低下する。したがって、方位差15度以上の旧オーステナイト粒界におけるボロン原子濃度は0.3at%以上6.0at%以下とする。方位差15度以上の旧オーステナイト粒界におけるボロン原子濃度は、好ましくは0.4at%以上とする。方位差15度以上の旧オーステナイト粒界におけるボロン原子濃度は、好ましくは5.0at%以下とする。方位差15度以上の旧オーステナイト粒界におけるボロン原子濃度は、より好ましくは0.5at%以上とする。方位差15度以上の旧オーステナイト粒界におけるボロン原子濃度は、好ましくは4.0at%以下とする。方位差15度以上の旧オーステナイト粒界におけるボロン原子濃度は、さらに好ましくは0.6at%以上とする。方位差15度以上の旧オーステナイト粒界におけるボロン原子濃度は、さらに好ましくは3.0at%以下とする。
本開示において、極めて重要な発明構成要件である。λおよび曲げ性を制御するためには、析出物の個数密度、特に大きさ2μm以上の析出物の個数密度を制御することが重要で、大きさ2μm以上の析出物の個数密度を減少することで、λおよび曲げ性を向上することができる。こうした効果を得るためには、大きさ2μm以上の析出物の個数密度を150個/mm2以下にする必要がある。なお、大きさ2μm以上の析出物の個数密度の下限は特に限定しないが、大きさ2μm以上の析出物の個数密度は低いほど好ましく、0個/mm2であっても本開示の効果は得られる。したがって、大きさ2μm以上の析出物の個数密度は150個/mm2以下とする。大きさ2μm以上の析出物の個数密度は、好ましくは0個/mm2以上とする。大きさ2μm以上の析出物の個数密度は、好ましくは100個/mm2以下とする。ここで、大きさ2μm以上の析出物とは、硫化物、窒化物、酸化物、ホウ化物等が複合析出した結果生成する、粗大介在物である。
高強度鋼板の成分組成及び鋼組織は上記の通りである。また、高強度鋼板の板厚は特に限定されないが、通常、0.3mm以上であり、また2.8mm以下である。
本開示の高強度めっき鋼板は、本開示の高強度鋼板の少なくとも片面上にめっき層を備える高強度めっき鋼板である。めっき層の種類は特に限定されず、例えば、溶融めっき層、電気めっき層のいずれでもよい。また、めっき層は合金化されためっき層でもよい。めっき層は亜鉛めっき層が好ましい。亜鉛めっき層はAlやMgを含有してもよい。また、溶融亜鉛-アルミニウム-マグネシウム合金めっき(Zn-Al-Mgめっき層)も好ましい。この場合、Al含有量を1質量%以上22質量%以下、Mg含有量を0.1質量%以上10質量%以下とし残部はZnとすることが好ましい。また、Zn-Al-Mgめっき層の場合、Zn、Al、Mg以外に、Si、Ni、Ce及びLaから選ばれる一種以上を合計で1質量%以下含有してもよい。なお、めっき金属は特に限定されないため、上記のようなZnめっき以外に、Alめっき等でもよい。
700℃以上1000℃以下の温度域における平均冷却速度は、極めて重要な発明構成要件である。700℃以上1000℃以下の温度域における平均冷却速度を速くすることで、大きさ2μm以上の析出物の個数密度を減少することができる。こうした効果を得るために、700℃以上1000℃以下の温度域における平均冷却速度を50℃/hr以上とする。一方、700℃以上1000℃以下の温度域における平均冷却速度が500℃/hrを超えると、方位差15度以上の旧オーステナイト粒界におけるボロン原子濃度が減少するため、良好なスポット溶接部HAZの耐鋼板間割れ特性を実現することができない。したがって、700℃以上1000℃以下の温度域における平均冷却速度は50℃/hr以上500℃/hr以下とする。700℃以上1000℃以下の温度域における平均冷却速度は、好ましくは100℃/hr以上とする。700℃以上1000℃以下の温度域における平均冷却速度は、好ましくは450℃/hr以下とする。700℃以上1000℃以下の温度域における平均冷却速度は、より好ましくは150℃/hr以上とする。700℃以上1000℃以下の温度域における平均冷却速度は、より好ましくは400℃/hr以下とする。なお、ここでの鋼スラブの温度は鋼スラブの表面の温度とする。
本開示において、極めて重要な発明構成要件である。900℃以上1150℃以下の温度域におけるスラブの平均加熱速度を25℃/min以下と遅くすることで、方位差15度以上の旧オーステナイト粒界におけるボロン原子濃度を増加したり、大きさ2μm以上の析出物の個数密度を減少したりすることができる。こうした効果を得るため、900℃以上1150℃以下の温度域におけるスラブの平均加熱速度を25℃/min以下にする。なお、900℃以上1150℃以下の温度域におけるスラブの平均加熱速度の下限は特に規定しないが、焼鈍後の表層軟化厚みの増加を好適に防ぎ、TSをより好適な範囲内となるために、5℃/min以上とすることが好ましい。したがって、900℃以上1150℃以下の温度域におけるスラブの平均加熱速度は25℃/min以下とする。900℃以上1150℃以下の温度域におけるスラブの平均加熱速度は好ましくは5℃/min以上とする。900℃以上1150℃以下の温度域におけるスラブの平均加熱速度は好ましくは15℃/min以下とする。なお、スラブ加熱温度はスラブ加熱時の鋼スラブの表面の温度とする。
本開示において、極めて重要な発明構成要件である。スラブ加熱温度を1150℃以上と高くすることで、方位差15度以上の旧オーステナイト粒界におけるボロン原子濃度を増加したり、大きさ2μm以上の析出物の個数密度を減少したりすることができる。こうした効果を得るため、スラブ加熱温度を1150℃以上にする。なお、スラブ再加熱温度の上限は特に規定しないが、焼鈍後の表層軟化厚みの増加を好適に防ぎ、TSをより好適な範囲内となるために、1300℃以下とすることが好ましい。したがって、スラブ加熱温度は1150℃以上とする。スラブ加熱温度は好ましくは1180℃以上とする。スラブ加熱温度は好ましくは1300℃以下とする。なお、スラブ加熱温度はスラブ加熱時の鋼スラブの表面の温度とする。
本開示において、極めて重要な発明構成要件である。1100℃から前記スラブ加熱温度までの滞留時間を20分以上と長くすることで、方位差15度以上の旧オーステナイト粒界におけるボロン原子濃度を増加したり、大きさ2μm以上の析出物の個数密度を減少したりすることができる。こうした効果を得るため、1100℃から前記スラブ加熱温度までの滞留時間を20分以上にする。なお、1100℃から前記スラブ加熱温度までの滞留時間の上限は特に規定しないが、焼鈍後の表層軟化厚みの増加を好適に防ぎ、TSをより好適な範囲内となるために、100分以下とすることが好ましい。したがって、1100℃から前記スラブ加熱温度までの滞留時間は20分以上とする。1100℃から前記スラブ加熱温度までの滞留時間は好ましくは30分以上とする。1100℃から前記スラブ加熱温度までの滞留時間は好ましくは100分以下とする。なお、スラブ加熱温度はスラブ加熱時の鋼スラブの表面の温度とする。
本開示において、極めて重要な発明構成要件である。粗圧延出側温度を1100℃以上と高くすることで、方位差15度以上の旧オーステナイト粒界におけるボロン原子濃度を増加したり、大きさ2μm以上の析出物の個数密度を減少したりすることができる。こうした効果を得るため、粗圧延出側温度を1100℃以上にする。なお、粗圧延出側温度の上限は特に規定しないが、焼鈍後の表層軟化厚みの増加を好適に防ぎ、TSをより好適な範囲内とするために、1200℃以下とすることが好ましい。したがって、粗圧延出側温度は1100℃以上とする。粗圧延出側温度は好ましくは1110℃以上とする。粗圧延出側温度は好ましくは1200℃以下とする。
本開示において、極めて重要な発明構成要件である。仕上げ圧延入側温度を1050℃以上と高くすることで、方位差15度以上の旧オーステナイト粒界におけるボロン原子濃度を増加したり、大きさ2μm以上の析出物の個数密度を減少したりすることができる。こうした効果を得るため、仕上げ圧延入側温度を1050℃以上にする。なお、仕上げ圧延入側温度の上限は特に規定しないが、焼鈍後の表層軟化厚みの増加を好適に防ぎ、TSをより好適な範囲内とするために、1150℃以下とすることが好ましい。したがって、仕上げ圧延入側温度は1050℃以上とする。仕上げ圧延入側温度は好ましくは1100℃以上とする。仕上げ圧延入側温度は好ましくは1150℃以下とする。
Ar3変態点(℃)=868-396×[%C]+24.6×[%Si]-68.1×[%Mn]-36.1×[%Ni]-20.7×[%Cu]-24.8×[%Cr]
なお、上記の式中の[%元素記号]は、上記の成分組成における当該元素の含有量(質量%)を表すし、当該元素を含まない場合には0とする。
冷間圧延の累積圧下率を増加することで、フェライトの面積率を低下、つまりフェライトの面積率および/または残留オーステナイトの体積率の合計を40%以下とすることができる。こうした効果を得るためには、冷間圧延の累積圧下率を20%以上にする。一方、冷間圧延の累積圧下率が95%を超えると、焼鈍時に生成するオーステナイトの粒径が微細になり、焼鈍板の残留オーステナイトの量が増加する。つまりフェライトの面積率および/または残留オーステナイトの体積率の合計が増加することから、所望のYRを実現することができない。したがって、冷間圧延の累積圧下率は20%以上95%以下とする。冷間圧延の累積圧下率は、好ましくは25%以上とする。冷間圧延の累積圧下率は、好ましくは90%とする。冷間圧延の累積圧下率は、より好ましくは27%以上とする。冷間圧延の累積圧下率は、より好ましくは70%以下とする。
本開示において、極めて重要な発明構成要件である。冷間圧延の最終パスの通板速度を増加することで、鋼板に多量の歪を導入し、方位差15度以上の旧オーステナイト粒界を増加することができる。その結果、方位差15度以上の旧オーステナイト粒界におけるボロン原子濃度を増加することができ、結果として良好なスポット溶接部HAZの耐鋼板間割れ特性を実現することができる。こうした効果を得るためには、冷間圧延の最終パスの通板速度は50mpm以上とする。なお、冷間圧延の最終パスの通板速度の上限は特に規定しないが、生産技術上の制約から、300mpm以下であることが好ましい。したがって、冷間圧延の最終パスの通板速度は50mpm以上とする。冷間圧延の最終パスの通板速度は、好ましくは70mpm以上とする。冷間圧延の最終パスの通板速度は、好ましくは300mpm以下とする。
加熱温度(焼鈍温度)が780℃未満では、フェライト及びオーステナイトの二相域での焼鈍処理になり、焼鈍後に多量のフェライトを含有するため、1180MPa以上のTSを実現できず、所望のYRを実現することが困難になる。また、方位差15度以上の旧オーステナイト粒界におけるボロン原子濃度が減少するため、良好なスポット溶接部HAZの耐鋼板間割れ特性を実現することができない。さらに、大きさ2μm以上の析出物の個数密度が増加するため、λおよび曲げ性を向上することができない。したがって、加熱温度は780℃以上とする。なお、加熱温度の上限は特に規定しないが、加熱温度が上昇すると、焼鈍後の表層軟化厚みが増加し、TSが低下することや、旧オーステナイト粒径が粗大化し、YRが低下する場合があることから、1050℃以下が好ましい。したがって、加熱温度は780℃以上とする。好ましくは800℃以上とする。好ましくは1050℃以下とする。より好ましくは820℃以上とする。より好ましくは1000℃以下とする。なお、加熱温度は、鋼板表面の温度を基準として測定する。
焼鈍工程後は、冷延板を冷却する(冷延板の冷却工程という)。冷却条件は以下のとおりである。
本開示において、極めて重要な発明構成要件である。加熱温度から650℃までの温度域における平均冷却速度を増加することで、フェライトの面積率を減少し、所望のTSおよびYRを実現することができる。また、大きさ2μm以上の析出物の個数密度を減少することができる。こうした効果を得るため、加熱温度から650℃までの温度域における平均冷却速度を0.5℃/s以上にする。一方、加熱温度から650℃までの温度域における平均冷却速度が50℃/sを超えると、方位差15度以上の旧オーステナイト粒界におけるボロン原子濃度を高めることができない。したがって、加熱温度から650℃までの温度域における平均冷却速度は0.5℃/s以上50℃/s以下とする。加熱温度から650℃までの温度域における平均冷却速度は、好ましくは1℃/s以上とする。加熱温度から650℃までの温度域における平均冷却速度は、好ましくは40℃/s以下とする。加熱温度から650℃までの温度域における平均冷却速度は、より好ましくは3℃/s以上とする。加熱温度から650℃までの温度域における平均冷却速度は、より好ましくは35℃/s以下とする。
前記第一冷却後、得られた冷延板をさらに冷却する(第二冷却)ことが好ましい。この工程では、加熱温度から650℃までの第一冷却後、冷延板をさらに冷却する。冷却停止温度は特に限定されず、室温であってもよい。なお、650℃以下における平均冷却速度は、以下で特に明記しない限り、5℃/s以上30℃/s以下とすることが好ましい。また、650℃以下の温度域において、高強度鋼板を一旦冷却し、再度鋼板温度を上昇しても構わない。
第二冷却工程において、250℃以上400℃以下の温度域における平均冷却速度が1.0℃/s以上であれば、焼鈍後に含有するベイニティックフェライトの量をより低減し、YR、λ及び曲げ性をより向上することができる。250℃以上400℃以下の温度域における平均冷却速度は、1.0℃/s以上が好ましく、2.0℃/s以上がより好ましく、3.0℃/s以上がさらに好ましい。なお、250℃以上400℃以下の温度域における平均冷却速度の上限は特に規定しないが、生産技術上の制約から、100.0℃/s以下が好ましく、80.0℃/s以下がさらに好ましい。冷却停止温度が250℃を超える場合は、平均冷却速度は冷却停止温度以上400℃以下の温度域における値とする。なお、平均冷却速度は、鋼板表面の温度を基準として測定する。
第二冷却工程において、100℃以上450℃以下の温度域の保熱温度で保熱することが好ましい。上記範囲内にあることで、高強度鋼板に保熱を施し、YR、λ及び曲げ性をより好適な範囲内とすることができる。また、ベイニティックフェライトの面積率をより低減し、TSをより向上するができる。第二冷却工程での保熱温度は150℃以上がより好ましく、200℃以上がさらに好ましい。また、第二冷却工程での保熱温度は400℃以下がより好ましく、350℃以下がさらに好ましい。なお、前記保温温度は鋼板表面温度を基準とする。
前記保熱温度で保熱することで、YR、λ及び曲げ性をより好適な範囲内とすることができる。こうした効果を得るためには、前記保熱温度における保熱時間は5s以上が好ましく、10s以上がより好ましく、15s以上がさらに好ましい。なお、前記保熱時間の上限は特に規定しないが、TSをより好適な範囲内とするためには、500s以下が好ましく、250s以下がより好ましい。
上述した第二冷却工程において、冷却停止温度は250℃以下が好ましく、200℃以下がより好ましい。冷却停止温度が250℃以下であれば、焼鈍後に多量の残留オーステナイトが生じることを防ぎ、YR、λ及び曲げ性をより向上することができる。なお、冷却停止温度の下限は特に規定しないが、生産性の観点から室温以上とすることが好ましい。なお、冷却停止温度は、鋼板表面の温度を基準として測定する。
前記冷却停止温度までの冷却後、あるいは前記冷却停止温度までの冷却後にさらに圧延した後に、高強度鋼板に再加熱を施してもよい(再加熱工程)。高強度鋼板に再加熱を施すことで、YR、λ及び曲げ性をより好適な範囲内とすることができる。こうした効果を得るためには、再加熱温度は、(冷却停止温度+50℃)以上が好ましく、(冷却停止温度+100℃)以上がより好ましく、(冷却停止温度+150℃)以上がさらに好ましい。一方、再加熱温度の上昇に伴い、マルテンサイトの焼戻しが進行し、TSが低下することから、再加熱温度は、450℃以下が好ましく、400℃以下がより好ましく、380℃以下がさらに好ましい。なお、上記再加熱温度の温度は鋼板表面温度を基準とする。
前記再加熱温度で保熱することで、YR、λ及び曲げ性をより好適な範囲内とすることができる。こうした効果を得るためには、前記再加熱温度での保熱時間は、5s以上が好ましく、10s以上がより好ましく、15s以上がさらに好ましい。なお、前記再加熱温度での保熱時間の上限は特に規定しないが、TSをより好適な範囲内とするためには、再加熱温度での保熱時間は、500s以下が好ましく、250s以下がより好ましい。
上記のように製造した高強度鋼板の少なくとも片面に、めっき処理を施して高強度めっき鋼板を得ることができる。例えば、めっき処理としては、溶融亜鉛めっき処理、溶融亜鉛めっき後に合金化を行う処理を例示できる。また、焼鈍と亜鉛めっきとを1ラインで連続して行ってもよい。その他、Zn-Ni電気合金めっき等の電気めっきにより、めっき層を形成してもよいし、溶融亜鉛-アルミニウム-マグネシウム合金めっきを施してもよい。なお、上記では亜鉛めっきの場合を中心に説明したが、Znめっき、Alめっき等のめっき金属の種類は特に限定されない。
つぎに、本発明の一実施形態に係る部材について、説明する。
引張試験は、JIS Z 2241:2011に準拠して行った。得られた鋼板より、鋼板の圧延方向に対して直角方向となるようにJIS5号試験片を採取し、クロスヘッド速度が1.67×10-1mm/sの条件で引張試験を行い、YSおよびTSを測定した。なお、本発明では、降伏比(YR)が65%以上90%以下の場合を寸法精度が高いと判断した。なお、YRは上述の式(2)に記載の計算方法で算出した。
穴広げ試験は、JIS Z 2256に準拠して行った。得られた鋼板より、100mm×100mmにせん断し、ついで、せん断した鋼板にクリアランス:12.5%で直径:10mmの穴を打ち抜いた。ついで、内径:75mmのダイスを用いてしわ押さえ力:9ton(88.26kN)で鋼板を抑え、その状態で、頂角:60°の円錐ポンチを穴に押し込んで亀裂発生限界における穴直径を測定した。そして、次式により、(限界)穴広げ率:λ(%)を求めた。
限界穴広げ率:λ(%)={(Df-D0)/D0}×100
ここで、Dfは亀裂発生時の穴径(mm)、D0は初期穴径(mm)である。そして、限界穴広げ率:λが30%以上の場合に、製造直後の伸びフランジ性に優れると判断した。
曲げ試験は、JIS Z 2248:2022に準拠して行った。得られた鋼板より、鋼板の圧延方向に対して平行方向が曲げ試験の軸方向となるように、幅が30mm、長さが100mmの短冊状の試験片を採取した。その後、押込み荷重が100kN、押付け保持時間が5秒とする条件で、90°V曲げ試験を行った。なお、本開示では、曲げ性は曲げ半径(R)を板厚(t)で除した値R/tが約4.5、即ち、4.3~4.7となるRにおいて、5サンプルの曲げ試験を実施した。次いで、5サンプル全ての曲げ頂点の稜線部におけるき裂の長さを評価し、き裂長さが200μm以下の場合、曲げ性に優れると判断した。ここで、き裂長さは、曲げ頂点の稜線部をデジタルマイクロスコープ(RH-2000:株式会社ハイロックス製)を用いて、40~160倍の倍率で測定することにより評価した。
圧延方向を長手として、板厚1.4mm、長さ30、幅100mmに切り出した試験片を、同サイズに切り出した、溶融亜鉛めっき層の片面あたりの付着量が50g/m2である試験用溶融亜鉛めっき鋼板と重ねて板組とした。次いで、サーボモータ加圧式で単相交流(50Hz)の抵抗溶接機かつ先端径が6mmの電極を用いて、該抵抗溶接機の電極に対して前記板組を5°傾け、下電極と下の鋼板の間に1.5mmのクリアランスを設けた状態で抵抗溶接を施した。具体的には、前記板組に、加圧力:3.5kN、ホールドタイム:0.16秒または0.20秒、並びにナゲット径が5.9mmになる溶接電流および溶接時間の条件にて抵抗溶接を施して溶接部付き板組とした。次いで、溶接部を含むように前記溶接部付き板組を半切して、該溶接部の断面を光学顕微鏡(200倍)で観察し、上述の基準でスポット溶接部HAZの耐鋼板間割れ特性を評価した。また、一部のサンプルでは、板厚を0.8mmおよび2.3mmで、同様の評価を実施した。
Claims (13)
- 質量%で、
C:0.030%以上0.500%以下、
Si:0.01%以上2.50%以下、
Mn:0.10%以上5.00%以下、
P:0.100%以下、
S:0.0200%以下、
Al:0.100%以下、
N:0.0100%以下、
O:0.0100%以下、
Ti:0.002%以上0.200%以下、および、
B:0.0002%以上0.0100%以下を含有するとともに、
下記(1)式から求められる有効Tiモル分率(xTi,eff)が0.001以上を満たし、
残部がFeおよび不可避的不純物からなる成分組成と、
板厚1/4位置において、
焼入れマルテンサイト、焼戻しマルテンサイト及びベイナイトを含む、マルテンサイトの面積率が60%以上99%以下、
ベイニティックフェライトを含む、フェライトの面積率および/または残留オーステナイトの体積率が合計で0%超40%以下である鋼組織と、
方位差15度以上の旧オーステナイト粒界におけるボロン原子濃度が0.3at%以上6.0at%以下、
大きさ2μm以上の析出物の個数密度が150個/mm2以下であり、ここで大きさ2μm以上の析出物とは、鋼板の圧延方向に平行な板厚断面が観察面となるよう試料を切り出した後、ダイヤモンドペーストを用いて観察面を鏡面研磨し、加速電圧15kVの条件でSEMの反射電子像を用いて鋼板の全厚を3000倍で圧延方向に2列観察した視野で観察された析出物の最大長さを意味する、高強度鋼板。
記
xTi,eff=xTi-xN-xS・・・(1)
なお、式中のxTi、xN、xSは各元素の鋼板中含有量(モル分率)を表す。 - 前記成分組成は、さらに、質量%で、
Nb:0.200%以下、
V:0.200%以下、
Ta:0.10%以下、
W:0.10%以下、
Cr:1.00%以下、
Mo:1.00%以下、
Co:0.010%以下、
Ni:1.00%以下、
Cu:1.00%以下、
Sn:0.200%以下、
Sb:0.200%以下、
Ca:0.0100%以下、
Mg:0.0100%以下、
REM:0.0100%以下、
Zr:0.100%以下、
Te:0.100%以下、
Hf:0.10%以下、
Bi:0.200%以下、
のうちから選ばれる少なくとも1種の元素を含有する、請求項1に記載の高強度鋼板。 - 請求項1または2に記載の高強度鋼板の少なくとも片面にめっき層を有する、高強度めっき鋼板。
- 請求項1または2に記載の高強度鋼板の製造方法であって、前記成分組成を有する鋼スラブとし、
700℃以上1000℃以下の温度域における平均冷却速度を50℃/hr以上500℃/hr以下として前記鋼スラブを冷却し、
次いで、前記鋼スラブを、900℃以上1150℃以下の温度域におけるスラブの平均加熱速度を25℃/min以下、1150℃以上のスラブ加熱温度まで、1100℃から前記スラブ加熱温度までの滞留時間を20分以上として加熱し、
次いで、前記鋼スラブに、粗圧延出側温度が1100℃以上、仕上げ圧延入側温度が1050℃以上とする熱間圧延を施して熱延板とし、
次いで、前記熱延板に酸洗を施して酸洗板とし、
次いで、前記酸洗板に、累積圧下率を20%以上95%以下、および、冷間圧延の最終パスの通板速度を50mpm以上として冷間圧延を施して冷延板とし、
次いで、前記冷延板を780℃以上の加熱温度まで加熱する焼鈍工程を行い、
次いで、前記冷延板を加熱温度から650℃までの温度域における平均冷却速度を0.5℃/s以上50℃/s以下の条件で第一冷却する、高強度鋼板の製造方法。 - 前記第一冷却の後、さらに、250℃以上400℃以下の温度域における平均冷却速度を1.0℃/s以上とする第二冷却を行う、請求項4に記載の高強度鋼板の製造方法。
- 前記第一冷却の後、さらに、100℃以上450℃以下の保熱温度で5s以上保熱する第二冷却を行う、請求項4に記載の高強度鋼板の製造方法。
- 前記第一冷却の後、さらに、冷却停止温度を250℃以下とし、次いで、前記冷延板を、(前記冷却停止温度+50℃)以上450℃以下の再加熱温度に再加熱して該再加熱温度にて5s以上保熱する第二冷却を行う、請求項4に記載の高強度鋼板の製造方法。
- 請求項4に記載の焼鈍工程の後、前記冷延板の少なくとも片面にめっき処理を施すめっき工程を行う、高強度めっき鋼板の製造方法。
- 前記第一冷却の後、さらに、250℃以上400℃以下の温度域における平均冷却速度を1.0℃/s以上とする第二冷却を行う、請求項8に記載の高強度めっき鋼板の製造方法。
- 前記第一冷却の後、さらに、100℃以上450℃以下の保熱温度で5s以上保熱する第二冷却を行う、請求項8に記載の高強度めっき鋼板の製造方法。
- 前記第一冷却の後、さらに、冷却停止温度を250℃以下とし、次いで、前記冷延板を、(前記冷却停止温度+50℃)以上450℃以下の再加熱温度に再加熱して該再加熱温度にて5s以上保熱する第二冷却を行う、請求項8に記載の高強度めっき鋼板の製造方法。
- 請求項1または2に記載の高強度鋼板を少なくとも一部に用いてなる、部材。
- 請求項3に記載の高強度めっき鋼板を少なくとも一部に用いてなる、部材。
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