JP7523525B2 - シール構造 - Google Patents
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Description
なお、シャフトの往復動無しで回転のみ、あるいは、回転運動無しでシャフトの往復動のみ、の運動形態であっても、より一層優れた密封性向上及び低摩擦性の効果を実現することが望まれている。
本発明は、例えば、異なる環境間の境界において、優れた密封性向上効果及び低摩擦性の効果を奏し得るシール構造を提供することを1つの目的とするものである。
本発明は、特に、軸部材の回転と往復動を同時に伴うような構造のシール(半導体製造装置の真空シール等)について、優れた密封性向上効果及び低摩擦性の効果を維持し得るシール構造を提供することを1つの目的とするものである。
ハウジングに設けられた開口部と該開口部に挿通された軸部材との間を密封するシール構造であって、
前記軸部材と前記ハウジングとの間に設けられ、前記軸部材に挿設されて軸方向及び/または周方向に相対移動可能な筒状のブッシュと、該ブッシュにおける軸方向の一方側の端面に対向する対向面を有する受圧部材と、前記ブッシュを前記受圧部材に軸方向の他方側から押圧する弾性部材と、を備え、
前記軸部材の外周面と、前記ブッシュにおける前記軸孔の内周面、との間に、第1のコーティング層が設けられ、
前記ブッシュにおける軸方向の一方側の端面と、前記受圧部材における前記対向面との間に、第2のコーティング層が形成されている。
前記開口部を取り囲む前記ハウジングの内面領域が、前記受圧部材における前記対向面を構成していてもよい。
あるいは、前記開口部を取り囲む前記ハウジングの内面領域と、前記ブッシュにおける軸方向の一方側の端面との間に、平板状のリング部材が介在しており、当該リング部材が、前記受圧部材を構成していてもよい。
前記シールユニットの個数が2個であり、
前記貫通孔の内の一方の貫通孔が、前記一組のシールユニットの内の一方のシールユニットにおける開口部となり、他方の貫通孔が、他方のシールユニットにおける開口部となる、シール構造も本発明の好ましい態様として例示することができる。
また、複数個の前記シールユニットのうち、何れか1個のシールユニットにおける軸方向の一方側の隣に、他のシールユニットがあってもよい。
さらに、前記ハウジングの内部空間に、前記2つのシールユニットにおける前記第1のコーティング層及び前記第2のコーティング層を膨潤させる液体物質が充填されていてもよい。
以下、説明の便宜上、軸x方向において矢印(a)(図1及び図3~図5参照)方向を上側(a)とし、軸x方向において矢印(b)(図1及び図3~図5参照)方向を下側(b)とする。
図1は、本発明の例示的一態様である第1の実施形態に係るシール構造10の概略構成を示すための、軸xに沿う断面における断面図である。図1を参照して、本実施形態に係るシール構造10の構成を説明する。
ブッシュ11は、シャフト13が嵌挿される軸孔11cを有する、厚肉の円筒状の形状であり、軸x方向の両側(上側(a)及び下側(b))に平面リング状の端面11a,11bを備えている。
また、リング部材16における対向面16aに、第2のコーティング層12Bが形成されている。
膨潤液体17は、第1のコーティング層12A及び第2のコーティング層12Bと接液した状態になっている。膨潤液体17は、第1のコーティング層12A及び第2のコーティング層12Bを膨潤させる性質を有する液体であり、例えば、イオン液体が用いられる。当該膨潤液体17の詳細については、後述する。
本明細書において、単に「コーティング層」という場合には、第1のコーティング層12A及び第2のコーティング層12Bの両方を区別することなく指すものとし、また、符号「12」を付する場合がある。また、本明細書において、コーティング層12が形成された表面近傍を「シール部材」と称する場合があり、その場合には符号「1」を付する。
適用可能なコーティング層としては、従来公知の各種有機薄膜あるいは無機薄膜からなるコーティング層を挙げることができる。
これら無機薄膜あるいは有機薄膜の中でも、好ましくは、膨潤状態の薄膜であり、より好ましくは、膨潤状態の有機薄膜である。
以下、コーティング層12としてポリマーブラシ層を適用したシール部材1の例について説明する。
例えば、ポリマーブラシ層12は、基材表面19Aに、直接的に形成されていてもよいし、または間接的に形成されていてもよい。
なお、シール面1aにおいてより高い密封性を得る観点からは、ポリマーブラシ層12は、基材表面19Aの全面に形成されていることが好ましく、この場合、シール面1aはポリマーブラシ層12からなる表面12aとなる。
このように、シール面1aにポリマーブラシ層12を有するシール部材1によれば、シール面1aに対応する基材表面19A及び被シール面の表面性状の影響を受けず、シール面1aにおいて優れた密封性が得られる。
ポリマーブラシ層12は、例えば、表面開始リビングラジカル重合法によって形成することができる。表面開始リビングラジカル重合法は、
(I)高分子グラフト鎖121の起点となる基材表面19Aに、重合開始基を導入し、
(II)該重合開始基を始点として、表面開始リビングラジカル重合法を行うことで、
高分子グラフト鎖121を形成する手法である。
基材表面19Aに重合開始基を導入する方法としては、特に限定されないが、重合開始剤を溶剤に溶解あるいは分散させることで、重合開始剤溶液を調製し、調製した重合開始剤溶液中に基材19を浸漬する方法などが挙げられる。
なお、必要に応じて、重合開始基の導入に先立ち、基材表面19Aを洗浄することが望ましい。基材表面19Aの洗浄は、基材19の材質及び形状などに応じて、公知の方法により行うことができる。
重合開始基を導入した基材表面19Aに高分子グラフト鎖を形成する方法は、特に限定されないが、まず、所定のモノマーや各種低分子遊離開始剤(ラジカル開始剤)などの重合反応に必要な各種成分を、溶剤に溶解あるいは分散させることで重合反応溶液を調製する。次に、調製した重合反応溶液に、予め重合開始基を導入しておいた基材19を浸漬させた後、必要に応じて加圧、加熱することで、基材表面19Aに、重合単位として所定のモノマーを含有する高分子グラフト鎖121を形成することができる。
(ポリマー断面積=(グラフト鎖部分のモノマー1個当たりの体積)/(ポリマーの伸びきり形態における繰り返し単位の長さ)
グラフト鎖部分のモノマー1個当たりの体積=[{(グラフト鎖部分のモノマーの分子量)/(アボガドロ数)}/(ポリマーのバルク密度)])。
また、必要に応じて、シリカコート層を設ける前に、上述したポリマーブラシ層12を設ける際と同様に、基材表面19Aを洗浄することが望ましい。基材表面19Aの洗浄は、基材19の材質及び形状などに応じて、公知の方法により行うことができる。
以上の構成により、シャフト13が軸xに対して偏心した場合や傾いて首振り状になった場合にも、ブッシュ11が姿勢を変えてシャフト13の偏心や傾きに追随することができる。したがって、シャフト13が軸xに対して偏心や傾きが生じた場合にも、優れた密封性向上効果及び低摩擦性の効果を実現することができる。
図3は、本発明の例示的一態様である第2の実施形態に係るシール構造20の概略構成を示すための、軸xに沿う断面における断面図である。図3を参照して、本実施形態に係るシール構造20の構成を説明する。
図4は、本発明の例示的一態様である第3の実施形態に係るシール構造30の概略構成を示すための、軸xに沿う断面における断面図である。図4を参照して、本実施形態に係るシール構造30の構成を説明する。
換言すれば、一方のシールユニット10Bにおいて軸x方向の他方側となるハウジング35の開口部(貫通孔)35aが、他方のシールユニット10Aにおいては軸x方向の一方側の開口部(図1における開口部15bに相当)となっている。
図5は、本発明の例示的一態様である第4の実施形態に係るシール構造40の概略構成を示すための、軸xに沿う断面における断面図である。図5を参照して、本実施形態に係るシール構造40の構成を説明する。
図6は、本発明の例示的一態様である第5の実施形態に係るシール構造50の概略構成を示すための、軸xに沿う断面における断面図である。図5を参照して、本実施形態に係るシール構造50の構成を説明する。
本実施形態において、シールユニット10Cにおけるブッシュ11Cと、ハウジング55の内面領域に当たる、円盤部材55nの突出部55kの面55kaと、の間には、リング部材16の如き部材は無い。
図7は、本発明の例示的一態様である第6の実施形態に係るシール構造60の概略構成を示すための、軸xに沿う断面における断面図である。図7を参照して、本実施形態に係るシール構造60の構成を説明する。
なお、本実施形態にかかるシール構造60は、第3の実施形態にかかるシール構造30におけるシールユニット10Aとシールユニット10Bとの間に,シールユニット10Dが挟み込まれた構造とも云える。よって、本実施形態にかかる図7において、シールユニット10A及びシールユニット10Bについては、第3の実施形態と同一の構成の部材に同一の符号を付して、その詳細な説明を省略している。
また、シールユニット10Dについては、第1の実施形態と同一の構成の部材に同一の付番に「D」を加えた符号を付して、同様に、その詳細な説明を省略している。
これら締結具35j及び締結具65tによる締結で、全体として1つのハウジング65が構成されている。
本実施形態において、シールユニット10Dにおけるブッシュ11Dと、ハウジング65の内面領域に当たる、円盤部材65uの突出部65vの面65vaと、の間には、リング部材16の如き部材は無い。
図8に、実施例で作製した試作装置の概略構成を示すための、軸線に沿う断面における断面図を示す。また、図9には、当該試作装置の図8におけるA-A断面図を示す。なお、図9においては、後述する膨潤液体(液体物質)117の図示を省略している。なお、以下の説明において、図8における上下関係をもって、試作装置の上下関係を述べる場合がある。
当該試作装置は、図1に示す第1の実施形態に近似した構成のものである。
ハウジング115は、上下方向の両端面に、シャフト113の小径部113aが貫通する開口部115a,115bを有する。
リング部材116の中心開口部の近傍とハウジング115の内面領域115dとの間には、シールリング118が配されている。
ハウジング115における内部空間(密閉空間ではない)には、膨潤液体117が充填されている。
ハウジング115の内面領域115cからは、円柱状の回り止めロッド119が鉛直方向に垂下している。この回り止めロッド119が、ブッシュ111の切り欠き部111eに嵌合し、ブッシュ111の回転方向(矢印T方向)への動きを規制している。
シャフト113の上端は、不図示の回転駆動装置からの回転駆動力が入力され、シャフト113が反時計回り(矢印T方向)に回転するように構成されている。
本試作装置においては、ハウジング115及びその内部構造が、本発明のシール構造を構成している。
・ポリマーブラシ層の乾燥膜厚:第1のコーティング層112A(シャフト113の外周面)…440nm、第1のコーティング層112A(ブッシュ111における軸孔111cの内周面)1120nm、第2のコーティング層112B…460nm
第1のコーティング層112A(シャフト113)…グラフト密度σ=0.33
第1のコーティング層112A(ブッシュ111)…グラフト密度σ=0.33
第2のコーティング層112B…グラフト密度σ=0.31
第1のコーティング層112A(シャフト113)…平均分子鎖長さLp=2.4μm
第1のコーティング層112A(ブッシュ111)…平均分子鎖長さLp=6.1μm
第2のコーティング層112B…平均分子鎖長さLp=2.9μm
第1のコーティング層112A(シャフト113)…分子量分布(Mw/Mn)=1.09
第1のコーティング層112A(ブッシュ111)…分子量分布(Mw/Mn)=1.18
第2のコーティング層112B…分子量分布(Mw/Mn)=1.09
試作装置の上側を開放して大気圧APになるようにするとともに、下側は真空状態Vにした。
Claims (13)
- ハウジングに設けられた開口部と該開口部に挿通された軸部材との間を密封するシール構造であって、
前記軸部材と前記ハウジングとの間に設けられ、前記軸部材が挿設される軸孔を有し、軸方向及び/または周方向に相対移動可能な筒状のブッシュと、該ブッシュにおける軸方向の一方側の端面に対向する対向面を有する受圧部材と、前記ブッシュを前記受圧部材に軸方向の他方側から押圧する弾性部材と、を備え、
前記軸部材の外周面と、前記ブッシュにおける前記軸孔の内周面との間に第1のコーティング層が設けられ、
前記ブッシュにおける軸方向の一方側の端面と、前記受圧部材における前記対向面との間に第2のコーティング層が形成されており、
前記第1のコーティング層及び前記第2のコーティング層が、液体物質で膨潤されている、シール構造。 - ハウジングに設けられた開口部と該開口部に挿通された軸部材との間を密封するシール構造であって、
前記軸部材と前記ハウジングとの間に設けられ、前記軸部材が挿設される軸孔を有し、軸方向及び/または周方向に相対移動可能な筒状のブッシュと、該ブッシュにおける軸方向の一方側の端面に対向する対向面を有する受圧部材と、前記ブッシュを前記受圧部材に軸方向の他方側から押圧する弾性部材と、を備え、
前記軸部材の外周面と、前記ブッシュにおける前記軸孔の内周面との間に第1のコーティング層が設けられ、
前記ブッシュにおける軸方向の一方側の端面と、前記受圧部材における前記対向面との間に第2のコーティング層が形成されており、
前記開口部を取り囲む前記ハウジングの内面領域と、前記ブッシュにおける軸方向の一方側の端面との間に、平板状のリング部材が介在しており、
当該リング部材が、前記受圧部材を構成しており、
前記ハウジングの前記内面領域と、前記リング部材と、の間に、さらにリング部材用弾性部材が介在しており、
当該リング部材用弾性部材が、前記リング部材を前記ブッシュに軸方向の一方側から押圧している、シール構造。 - ハウジングに設けられた開口部と該開口部に挿通された軸部材との間を密封するシール構造であって、
前記軸部材と前記ハウジングとの間に設けられ、前記軸部材が挿設される軸孔を有し、軸方向及び/または周方向に相対移動可能な筒状のブッシュと、該ブッシュにおける軸方向の一方側の端面に対向する対向面を有する受圧部材と、前記ブッシュを前記受圧部材に軸方向の他方側から押圧する弾性部材と、を備え、
前記軸部材の外周面と、前記ブッシュにおける前記軸孔の内周面と、の少なくともいずれか一方に第1のコーティング層が設けられ、
前記ブッシュにおける軸方向の一方側の端面と、前記受圧部材における前記対向面と、の少なくともいずれか一方に第2のコーティング層が形成されており、
前記弾性部材が、前記開口部のうちの軸方向の他方側の開口部を取り囲む前記ハウジングの内面領域と、前記ブッシュにおける軸方向の他方側の端面との間に介在している、シール構造。 - ハウジングに設けられた開口部と該開口部に挿通された軸部材との間を密封するシール構造であって、
前記軸部材と前記ハウジングとの間に設けられ、前記軸部材が挿設される軸孔を有し、軸方向及び/または周方向に相対移動可能な筒状のブッシュと、該ブッシュにおける軸方向の一方側の端面に対向する対向面を有する受圧部材と、前記ブッシュを前記受圧部材に軸方向の他方側から押圧する弾性部材と、を備え、
前記軸部材の外周面と、前記ブッシュにおける前記軸孔の内周面との間に第1のコーティング層が設けられ、
前記ブッシュにおける軸方向の一方側の端面と、前記受圧部材における前記対向面との間に第2のコーティング層が形成されているシール構造
を有するシールユニットを、1本の軸部材に対して、1つの前記ハウジングを共有するように複数個、軸方向において並列に備える、シール構造。 - 前記開口部を取り囲む前記ハウジングの内面領域が、前記受圧部材における前記対向面を構成している、請求項1に記載のシール構造。
- 前記弾性部材が、その伸縮方向の一端側で前記ブッシュと接続され、他端側で前記ハウジングの内面と接続されている、請求項3に記載のシール構造。
- 複数個の前記シールユニットのうち、隣り合う少なくとも一組のシールユニットの向きが、軸方向において反転状態である、請求項4に記載のシール構造。
- 前記ハウジングが、軸方向の対向する位置に、前記軸部材が貫通する一対の貫通孔を有し、
前記シールユニットの個数が2個であり、
前記貫通孔の内の一方の貫通孔が、前記一組のシールユニットの内の一方のシールユニットにおける開口部となり、他方の貫通孔が、他方のシールユニットにおける開口部となる、請求項7に記載のシール構造。 - 前記ハウジングが、その軸方向の中央で、内周面から前記軸部材に向けて突出する突出部を備え、
前記2つのシールユニットにおいて、前記突出部におけるそれぞれの前記シール構造側の面と、それぞれの前記ブッシュにおける前記突出部に対向する端面と、の間に、それぞれの前記弾性部材が介在している、請求項8に記載のシール構造。 - 前記2つのシールユニットにおいて、それぞれの前記弾性部材が、その伸縮方向の一端側でそれぞれの前記ブッシュと接続され、他方側で前記突出部と接続されている、請求項9に記載のシール構造。
- 複数個の前記シールユニットのうち、隣り合う少なくとも一組のシールユニットの向きが、軸方向において同じである、請求項4に記載のシール構造。
- 複数個の前記シールユニットのうち、何れか1個のシールユニットにおける軸方向の一方側の隣に、他のシールユニットがある、請求項4に記載のシール構造。
- 前記ハウジングの内部空間に、前記複数のシールユニットにおける前記第1のコーティング層及び前記第2のコーティング層を膨潤させる液体物質が充填されている、請求項4または請求項7~12のいずれかに記載のシール構造。
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