実施例において後述するように、第1実施形態の製造方法によれば、レシピエントに他家移植した場合の拒絶反応(移植片対宿主病)が低減された低抗原性細胞を製造することができる。また、実施例において後述するように、第1実施形態の製造方法によって製造した低抗原性細胞は、レシピエントに他家移植した場合においても、レシピエントのNK細胞によって攻撃されにくい。
本明細書において、HLA遺伝子座を「HLAアレル」といい、細胞表面に提示されたHLAタンパク質の抗原多様性を「HLA型」という場合がある。以下、各工程について説明する。
また、第1実施形態の製造方法により製造される低抗原性細胞は、ドナー細胞のHLAアレルを破壊又は改変した細胞である。したがって、低抗原性細胞はドナー細胞と同様の多能性幹細胞であってもよいし、分化した細胞であってもよい。
また、レシピエントは、低抗原性細胞と同種の動物であることが好ましい。レシピエントは、実際に移植が予定された患者であってもよいし、将来レシピエントとなりうる仮想的なHLAアレルを有するレシピエントであってもよい。
HLAアレルの決定は、PCR-rSSO法(PCR-reverse Sequence Specific Oligonuclotide)、PCR-SSP(Sequence specific primer)法、PCR-SBT(Sequence based typing)法、次世代シーケンス法等の従来行われている方法により行うことができ、市販のHLAタイピングキット等を用いて行うことができる。また、全ゲノムシーケンス(WGS)、エクソームシーケンス(WES)、RNA-seq等の次世代シーケンサーのシーケンスデータからHLAタイピングを行うソフトウェアとして、HLAreporter、HLA-PRG、hla-genotyper、PHLAT、Optitype、neXtype、Athlates、HLAforest、SOAP-HLA、HLAminer、seq2HLA、GATK HLA Caller等が知られている。
本工程において決定されるHLAアレルは、細胞移植を行った場合の拒絶反応に関連性が高いHLAアレルであることが好ましく、HLA-Aアレル、HLA-Bアレル及びHLA-Cアレルを含むことが好ましい。
本工程において決定されるHLAアレルは、更にHLA-DRアレル、HLA-DQアレル、HLA-DPアレルを含んでいてもよく、更に他のHLAアレルを含んでいてもよい。
HLAアレルはゲノムDNA上にコードされた塩基配列であり、HLAタンパク質をコードしている。HLAタンパク質の血清学的な分類をHLA抗原型という。HLA抗原型の特定方法としては、特定のHLA抗原型を認識する血清や抗体との反応性を解析する方法や、HLAアレルのDNA又はHLAアレルから転写されたRNAの塩基配列を、既存の対応表やIPD-IMGTデータベース(https://www.ebi.ac.uk/ipd/imgt/hla/)等と照合する方法等が挙げられる。
HLA抗原型とは、一般的にはHLAアレル表記(http://hla.alleles.org/nomenclature/naming.html)の第1区域(2桁表記)の違いを指す場合もあるが、本明細書では、血清学的には同じHLA抗原型であってもアミノ酸配列が異なる場合(非同義置換)には異なるHLAアレルであると判断する。
具体的には、HLAアレル表記の第1区域及び第2区域(4桁表記)の違いから同一のHLAアレルであるか、異なるHLAアレルであるかを判断する。そして、HLAアレル表記の第1区域及び第2区域が一致したHLAアレルは同一のHLAアレルであると判断する。また、ゲノム編集の標的配列を決定する場合等、ゲノムの塩基配列を区別する必要がある場合には、第3区域(アミノ酸変異を伴わない翻訳領域内部の塩基置換)や第4区域(翻訳領域外での塩基置換)の違いも考慮する場合がある。
ここで、ドナー特異的HLAタンパク質を発現しない細胞とは、ドナー細胞のHLAアレルの破壊によって特定のHLAタンパク質の発現が陰性となった細胞、又はドナー細胞のHLAアレルの改変によって特定のHLA型から別のHLA型へと変化した細胞である。
本工程により得られた、ドナー特異的HLAタンパク質を発現しない細胞が低抗原性細胞である。なお、ドナー特異的HLAタンパク質が存在しない場合には、本工程は不要である。
第1実施形態の製造方法により製造される低抗原性細胞は、B2M遺伝子が破壊されていないことが好ましい。これにより、クラスIのHLAタンパク質が細胞表面に提示され、低抗原性細胞をレシピエントに他家移植した場合においても、レシピエントのNK細胞によって攻撃されにくくなる。また、一部のHLAが破壊されただけであり、残りのHLAが抗原提示能力を保持しているため、当該細胞がウイルス感染した場合や腫瘍化した場合であっても、抗原提示能力を維持することが可能である。
また、ドナーDNAの存在下でHLAアレルを特異的に切断してDSBを誘導することにより、DSBの修復過程で相同組換えを誘導し、HLAアレルを改変することができる。具体的には、例えば、実施例において後述するように、HLA-A*02:07アレルをHLA-A*01:01アレルに改変すること等が可能である。
ドナーDNAとしては、ゲノムDNAの二本鎖DNA切断の位置の前後を含む領域と配列同一性を有し、且つ所望のHLAアレルをコードするものを使用するとよい。ドナーDNAは、一本鎖DNAでもよいし、二本鎖DNAでもよい。また、ドナーDNAは、単一の塩基配列を有するDNAであってもよいし、複数の塩基配列を有するDNAの混合物であってもよい。
ここで、配列同一性を有するとは、ドナーDNAと標的となるゲノムDNAの二本鎖切断の位置を含む領域との間で90%以上の塩基配列が一致することを意味する。ドナーDNAは、ゲノムDNAの二本鎖切断の位置を含む領域と95%以上の塩基配列が一致することが好ましく、99%以上の塩基配列が一致することがより好ましい。
ドナーDNAは、50~5,000塩基程度の一本鎖DNAであってもよいし、50~5,000塩基対程度の二本鎖DNAであってもよい。ドナーDNAが一本鎖DNAである場合、ドナーDNAは、ゲノムDNAの二本鎖のうちのいずれの鎖と配列同一性を有していてもよい。
配列特異的DNA切断酵素は、ゲノムDNAを標的配列特異的に切断して二本鎖切断を形成するものであれば特に制限されない。配列特異的DNA切断酵素が認識する標的配列の長さは、例えば、10~60塩基程度であってよい。
また、配列特異的DNA切断酵素は、例えばニッカーゼを複数組み合わせてDNAを切断する態様であってもよい。ここで、ニッカーゼとは、二本鎖DNAのうちの一本鎖にニックを形成する酵素を意味する。例えば、ゲノムDNA上の近接した位置において、二本鎖DNAの双方の鎖にニックを形成することにより、二本鎖切断を形成することができる。
RNA誘導型ヌクレアーゼとは、ガイドとなる短鎖RNAが標的配列に結合し、2つのDNA切断ドメイン(ヌクレアーゼドメイン)を有するヌクレアーゼをリクルートして配列特異的な切断を誘導する酵素である。RNA誘導型ヌクレアーゼとしては、CRISPR-Casファミリータンパク質が挙げられる。CRISPR-Casファミリータンパク質は大きくクラス1とクラス2に分類されており、クラス1の中にはタイプI、タイプIII及びタイプIVが含まれ、クラス2の中にはタイプII、タイプV及びタイプVIが含まれる。
CRISPR-Casファミリータンパク質としては、例えば、Cas9、Cpf1、CasX、CasY、Cas12、Cas13、C2C2等が挙げられる。RNA誘導型ヌクレアーゼは、CRISPR-Casファミリータンパク質のホモログであってもよく、CRISPR-Casファミリータンパク質が改変されたものであってもよい。例えば、2つ存在する野生型のヌクレアーゼドメインの一方を不活性型に改変したニッカーゼ改変型のヌクレアーゼであってもよい。あるいは、標的特異性の向上したCas9-HFやHiFi-Cas9、eCas9等であってもよい。
Cas9は、例えば、化膿性レンサ球菌、黄色ブドウ球菌、ストレプトコッカス・サーモフィルス、ゲオバチルス・ステアロサーモフィルス等に由来するものが挙げられる。Cpf1としては、例えば、アシダミノコッカス、ラクノスピラ、クラミドモナス、フランシセラ-ノビサイダ等に由来するものが挙げられる。
人工ヌクレアーゼは、標的配列に特異的に結合するように設計・作製されたDNA結合ドメインと、ヌクレアーゼドメイン(制限酵素であるFokIのDNA切断ドメイン等)とを有する人工制限酵素である。人工ヌクレアーゼとしては、Zinc finger nuclease(ZFN)、Transcription activator-like effector nuclease(TALEN)、メガヌクレアーゼ等が挙げられるがこれらに限定されない。
gRNAをRNAの形態で調製する方法としては、gRNAをコードする核酸断片の上流にT7等のプロモーターを付加したコンストラクトを作製して試験管内転写反応で合成する方法、化学合成する方法等が挙げられる。gRNAを化学合成する場合、化学修飾されたRNAを用いてもよい。
発現ベクターとしては、H1プロモーター又はU6プロモーター等のPol IIIプロモーターからgRNAを転写するプラスミドベクターやウイルスベクターが挙げられる。発現ベクターを用いてgRNAを発現させる場合には、gRNAを恒常的に発現させてもよいし、発現誘導型プロモーターの制御下で発現させてもよい。
続いて、Cas9を用意する。Cas9は、Pol IIプロモーターから発現する発現ベクターの形態でドナー細胞に導入してもよいし、精製タンパク質の形態でドナー細胞に導入してもよい。発現ベクターとしては、トランスポゾンベクター、ウイルスベクター、エピソーマルベクター、プラスミドベクター等が挙げられる。
gRNA及びCas9のドナー細胞への導入は、gRNA及びCas9がウイルスベクターの形態である場合にはドナー細胞の培地に添加するだけよい。ウイルスベクターとしては、例えば、アデノ随伴ウイルスベクター、アデノウイルスベクター、レトロウイルスベクター、レンチウイルスベクター、センダイウイルスベクター、バキュロウイルスベクター等が挙げられる。
gRNA及びCas9が、トランスポゾンベクター、エピソーマルベクター、プラスミドベクター等である場合や、gRNAがRNAであり、Cas9が精製タンパク質である場合には、トランスフェクション試薬やエレクトロポレーション法によりドナー細胞に導入すればよい。
トランスフェクション試薬としては、例えば、Lipofectamine2000、Lipofectamine3000、CRISPRMAX、RNAMAX(いずれもサーモフィッシャーサイエンティフィック社)、FuGENE 6、FuGENE HD(いずれもプロメガ社)等を利用することができる。
また、エレクトロポレーション法は、NEPA21(ネッパジーン株式会社)、Neon(サーモフィッシャーサイエンティフィック社)、4D-Nucleofector(ロンザ社)等の機器を利用して行うことができる。
工程(d)は、低抗原性細胞を含む細胞集団にHLAタンパク質の発現誘導剤(HLAタンパク質発現誘導剤)を接触させる工程と、前記HLAタンパク質発現誘導剤に接触した前記細胞集団における前記ドナー特異的HLAタンパク質の発現を指標として、前記細胞集団から前記ドナー特異的HLAタンパク質を発現しない細胞を回収する工程とを含む。細胞集団にHLAタンパク質発現誘導剤を接触させる工程は、例えば細胞集団の培地にHLAタンパク質発現誘導剤を添加すること等により行うことができる。
本工程において、ドナー特異的HLAタンパク質の発現を指標として前記細胞集団からドナー特異的HLAタンパク質を発現しない細胞を回収するとは、発現したHLAタンパク質の存在を検出し、その存在又は不存在に基づいてドナー特異的HLAタンパク質を発現しない細胞を回収することであってよい。
HLAタンパク質発現誘導剤としては、IFN-γ、IFN-α、IFN-β、IL-4、GM-CSF、TGF-α、TGF-β等のサイトカインが挙げられる。これらの発現誘導剤は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。
上記のサイトカインは、ヒト細胞へ用いる場合にはヒト由来のサイトカインであることが好ましい。ヒトIFN-γタンパク質のNCBIアクセッション番号はNP_000610.2等であり、ヒトIFN-αタンパク質のNCBIアクセッション番号はNP_076918.1、NP_000596.2、NP_066546.1等であり、ヒトIFN-βタンパク質のNCBIアクセッション番号はNP_002167.1等であり、ヒトIL-4タンパク質のNCBIアクセッション番号はNP_000580.1、NP_758858.1、NP_001341919.1等であり、ヒトGM-CSFタンパク質のNCBIアクセッション番号はNP_000749.2等であり、ヒトTGF-αタンパク質のNCBIアクセッション番号はNP_001093161.1、NP_003227.1、NP_001295088.1、NP_001295087.1等であり、ヒトTGF-βタンパク質のNCBIアクセッション番号はNP_000651.3、XP_011525544.1等である。
上記のサイトカインは、HLAタンパク質の発現を誘導する活性を有している限り、上記の各アクセッション番号に記載されるアミノ酸配列に対して変異を有していてもよい。より具体的には、上記の各アクセッション番号に記載されるアミノ酸配列に対し、1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列を有していてもよい。ここで、1若しくは数個のアミノ酸とは、例えば1~10アミノ酸、例えば1~5アミノ酸、例えば1~3アミノ酸であってよい。上記のサイトカインは、更に、シグナルペプチドが除去されたアミノ酸配列を有していてもよい。
多能性幹細胞は、一般的に未分化状態において、HLAタンパク質を細胞表面に発現しておらずHLAタンパク質の検出が困難であることが知られている。HLAタンパク質を提示させるためには分化誘導を行う必要がある。しかしながら、分化誘導プロセスは一般的に煩雑であり時間もかかる。また、一度分化誘導させた細胞は自発的に未分化状態に戻らないため、HLAタンパク質陰性の分化細胞集団を回収したとしても、それはもはや多能性幹細胞ではない。
これに対し、発明者らは、上述したHLAタンパク質発現誘導剤を多能性幹細胞に作用させることにより、多能性幹細胞の多能性を維持したまま、HLAタンパク質の発現を誘導することができることを明らかにした。
これにより、工程(d)で得られた細胞集団におけるHLAタンパク質の発現を誘導し、目的とするHLAアレルの破壊又は改変が行われた多能性幹細胞(低抗原性細胞)を効率よく検出し、回収することができる。
例えば、細胞におけるHLAタンパク質の発現を誘導させた後、細胞を抗HLAタンパク質抗体で染色することにより、フローサイトメーターでHLA発現細胞又は非発現細胞を区別してソーティングにて回収することができる。
あるいは、抗HLAタンパク質抗体を磁気ビーズに吸着させて、HLAタンパク質発現細胞に接触させ、磁気ビーズが結合した細胞を、磁力を用いて回収することもできる。
あるいは、培養皿上の特定のHLAタンパク質を発現する細胞を抗HLAタンパク質抗体等で標識し、不要な目的外細胞を吸引又はレーザー照射等により除去し、目的とする低抗原性細胞のみを回収してもよい。
あるいは、培養皿上のHLAタンパク質発現細胞に、目的外のHLAタンパク質を認識するT細胞を混合し、目的外のHLAタンパク質を発現している細胞だけを攻撃して除去し、目的とする低抗原性細胞のみを回収してもよい。
第1実施形態の製造方法は、ドナー細胞のCIITAアレル、RFX5アレル、RFXAPアレル及びRFXANKアレルのうち少なくとも1つのアレルを更に破壊又は改変する工程を更に含んでいてもよい。CIITA遺伝子は、Class II Major Histocompatibility Complex Transactivatorタンパク質をコードする遺伝子である。また、RFX5遺伝子は、Regulatory Factor X5タンパク質をコードする遺伝子である。また、RFXAP遺伝子は、Regulatory Factor X Associated Proteinをコードする遺伝子である。また、RFXANK遺伝子は、Regulatory Factor X Associated Ankyrin Containing Proteinをコードする遺伝子である。
CIITA遺伝子は、RFX5遺伝子、RFXAP遺伝子、RFXANK遺伝子と共に、HLAクラスIIの転写活性化を制御する転写因子をコードしている。したがって、CIITAアレル、RFX5アレル、RFXAPアレル、RFXANKアレルのうち少なくとも1つが破壊された細胞は、HLAクラスIIタンパク質を発現せず、レシピエントに他家移植した場合の拒絶反応が更に低減されている。
ヒトCIITA遺伝子のNCBIアクセッション番号はNM_000246.3、NM_001286402.1、NM_001286403.1等であり、ヒトRFX5遺伝子のNCBIアクセッション番号はNM_000449.3、NM_001025603.1等であり、ヒトRFXAP遺伝子のNCBIアクセッション番号はNM_000538.3等であり、ヒトRFXANK遺伝子のNCBIアクセッション番号はNM_001278727.1、NM_001278728.1、NM_003721.3、NM_134440.2等である。
上述したように、CIITA遺伝子、RFX5遺伝子、RFXAP遺伝子及びRFXANK遺伝子の発現は、クラスIIのHLAタンパク質の発現に必須であることが知られている。したがって、CIITAアレル、RFX5アレル、RFXAPアレル、RFXANKアレルのうち少なくとも1つが破壊された細胞は、HLAクラスIIタンパク質を発現せず、レシピエントに他家移植した場合の拒絶反応が低減されている。
また、レシピエントは、低抗原性細胞と同種の動物であることが好ましい。レシピエントは、実際に移植が予定された患者であってもよいし、将来レシピエントとなりうる仮想的なHLAアレルを有するレシピエントであってもよい。
また、上述したように、B2Mアレルを破壊した細胞は、HLAアレルが野生型であってもHLAクラスIタンパク質を発現しない。第2実施形態の製造方法は、ドナー細胞のB2Mアレルを破壊する工程を更に含んでいてもよい。
本実施形態のキットにおいて、HLAタンパク質発現誘導剤は、上述したものと同様であり、IFN-γ、IFN-α、IFN-β、IL-4、GM-CSF、TGF-α、TGF-β等のサイトカインが挙げられる。本実施形態のキットは、これらの発現誘導剤のうち1種を単独で含んでいてもよいし、2種以上を含んでいてもよい。
本実施形態のキットにおいて、低抗原性細胞は多能性幹細胞であってもよい。実施例において後述するように、本実施形態のキットによれば、低抗原性細胞が多能性幹細胞である場合においても、低抗原性細胞の多能性を維持したまま、HLAタンパク質の発現を誘導することができる。
多能性幹細胞は、通常HLAタンパク質の発現が弱い。ここで、発現が弱いとは、例えば、抗HLAタンパク質抗体で細胞を染色してフローサイトメトリー解析を行った場合に、HLAタンパク質の発現を明確に検出できないことを意味する。
しかしながら、実施例において後述するように、多能性幹細胞にHLAタンパク質発現誘導剤を接触させると、HLAタンパク質の発現が増強される。第1実施形態の細胞において、「少なくとも1種のHLAタンパク質を発現可能」とは、細胞が、多能性幹細胞等の、通常HLAタンパク質の発現が弱い細胞である場合であっても、例えば、上述したHLAタンパク質発現誘導剤を接触させることにより、HLAタンパク質の発現が増強される細胞であることを意味する。また、第1実施形態の細胞は、分化し、HLAタンパク質を発現した細胞であってもよい。
実施例において後述するように、例えば、B2Mアレルを破壊した細胞は、HLAアレルが野生型であってもHLAクラスIタンパク質を発現しない。第1実施形態の細胞はこのような細胞を含まないものとする。
第1実施形態の細胞において、破壊又は改変されたHLAアレルは、クラスI HLAアレルを含むことが好ましく、HLA-Aアレル、HLA-Bアレル又はHLA-Cアレルを含むことが好ましい。
第1実施形態の細胞は、少なくとも1種のクラスI HLAタンパク質を発現するため、レシピエントに他家移植した場合においても、レシピエントのNK細胞によって攻撃されにくくなる。ここで、少なくとも1種のクラスI HLAタンパク質としては、HLA-Cタンパク質、HLA-Eタンパク質、HLA-Gタンパク質等が挙げられる。第1実施形態の細胞は、一部のHLAが破壊されただけであり、残りのHLAが抗原提示能力を保持しているため、当該細胞がウイルス感染した場合や腫瘍化した場合であっても、抗原提示能力を維持することが可能である。
第1実施形態の細胞は、レシピエントに他家移植した場合の拒絶反応が低減された低抗原性細胞であり、破壊又は改変された前記HLAアレルが、前記レシピエントに存在しないHLAアレルであってもよい。上記の低抗原性細胞は、レシピエントに他家移植した場合の拒絶反応が低減されている。
第1実施形態の低抗原性細胞は、レシピエントと同種の細胞であることが好ましく、ヒト細胞であってもよく非ヒト動物細胞であってもよい。レシピエントは、実際に移植が予定された患者であってもよいし、将来レシピエントとなりうる仮想的なHLAアレルを有するレシピエントであってもよい。
第1実施形態の細胞は、CIITAアレル、RFX5アレル、RFXAPアレル及びRFXANKアレルのうち少なくとも1つ以上を含むアレルが更に破壊又は改変されていてもよい。上述したように、CIITA遺伝子、RFX5遺伝子、RFXAP遺伝子及びRFXANK遺伝子の発現はクラスIIのHLAタンパク質の発現に必須であることが知られている。したがって、CIITAアレル、RFX5アレル、RFXAPアレル、RFXANKアレルのうち少なくとも1つが破壊された細胞は、HLAクラスIIタンパク質を発現せず、レシピエントに他家移植した場合の拒絶反応が更に低減されている。
第2実施形態の細胞は多能性幹細胞であってもよいし、分化した細胞であってもよい。また、上述したように、B2Mアレルを破壊した細胞は、HLAアレルが野生型であってもHLAクラスIタンパク質を発現しない。第2実施形態の細胞は、CIITAアレル、RFX5アレル、RFXAPアレル、RFXANKアレルのうち少なくとも1つに加えてB2Mアレルが更に破壊されていてもよい。
第2実施形態の低抗原性細胞は、レシピエントと同種の細胞であることが好ましく、ヒト細胞であってもよく非ヒト動物細胞であってもよい。レシピエントは、実際に移植が予定された患者であってもよいし、将来レシピエントとなりうる仮想的なHLAアレルを有するレシピエントであってもよい。
低抗原性細胞が多能性幹細胞である場合には、例えば、神経細胞、肝細胞、膵島細胞、心筋細胞、腎細胞、造血幹細胞、細胞傷害性T細胞等に分化させたうえで、患者に移植してもよい。
また、低抗原性細胞に遺伝子導入を行ったうえで患者に移植してもよい。例えば、多能性幹細胞をT細胞に分化させたうえでキメラ抗原受容体(CAR)を遺伝子導入し、CAR-T細胞として癌患者等に移植すること等が挙げられる。
第1実施形態の方法により、後述する第1実施形態のgRNAの標的塩基配列を特定することができる。後述するように、第1実施形態のgRNAは、特定のHLAハプロタイプ特異的にDSBを誘導することができ、オフターゲット変異導入のリスクも低い。
上述したように、HLA遺伝子は多くの偽遺伝子を持ち、お互いのHLA遺伝子配列の相同性が高いうえ、個人間での配列多様性が大きい。このため、配列特異的DNA切断酵素を用いたゲノム編集の適切な標的塩基配列を決定することは容易ではない。
HLA遺伝子特異的な配列特異的DNA切断酵素の標的塩基配列の特定は、例えば、次のようにして行うことができる。まず、全HLAハプロタイプのゲノムDNAの塩基配列データ(既知の全HLA遺伝子の塩基配列データ)を入手する。全HLA遺伝子の塩基配列データは、例えば、IPD-IMGT/HLAデータベース(https://www.ebi.ac.uk/ipd/imgt/hla/)から入手することができる。本データベースには、2017年7月現在、12,544件のHLAクラスI遺伝子の塩基配列と4,622件のHLAクラスII遺伝子の塩基配列が登録されている。
続いて、各HLAアレルの塩基配列から、使用する配列特異的DNA切断酵素の標的となる塩基配列を抽出する。例えば、CRISPR-Casを配列特異的DNA切断酵素として用いる場合、3~5塩基程度のPAM配列(例えば、化膿性レンサ球菌由来Cas9の場合「NGG」、アシダミノコッカス由来のCpf1の場合「TTTN」)を含む、gRNAの標的塩基配列として利用可能な塩基配列を抽出し、候補塩基配列とする。
本実施形態の方法において、標的塩基配列はPAM配列を含むものとする。PAM配列を含む標的塩基配列の長さは、配列特異的DNA切断酵素により異なる。例えば、配列特異的DNA切断酵素が化膿性レンサ球菌由来Cas9である場合、PAM配列を含む標的塩基配列の長さは、19~33塩基であることが好ましく、20~24塩基であることがより好ましい。また、配列特異的DNA切断酵素がアシダミノコッカス由来のCpf1である場合、PAM配列を含む標的塩基配列の長さは、20~34塩基であることが好ましく、約24塩基であることがより好ましい。
マッピングとは、リファレンス塩基配列(ここでは全HLAハプロタイプのゲノムDNAの塩基配列データを意味する。)上の、クエリー塩基配列(ここでは候補塩基配列を意味する。)の配列同一性が高い位置を特定する操作である。クエリー塩基配列とリファレンス塩基配列との配列同一性は、90%以上であることが好ましく、95%以上であることがより好ましく、99%以上であることが更に好ましく、100%であることが特に好ましい。
ここで、リファレンス塩基配列に対する、クエリー塩基配列の配列同一性は、例えば次のようにして求めることができる。まず、リファレンス塩基配列及びクエリー塩基配列をアラインメントする。続いて、リファレンス塩基配列及びクエリー塩基配列において、一致した塩基の塩基数を算出し、下記式(1)にしたがって、配列同一性を求めることができる。
配列同一性(%)=一致した塩基数/クエリー塩基配列の総塩基数×100 (1)
実施例において後述するように、マッピングは、例えば、Bowtieプログラム(http://bowtie-bio.sourceforge.net/index.shtml)を用いて行うことができる。また、マッピングは、BWA、BLAST、BLAT、SOAP、Novoalign、TopHat等の、Bowtieプログラム以外の配列相同性(配列同一性)検索プログラムを用いて行ってもよい。
続いて、HLAアレル以外の全ゲノムDNAの塩基配列データに対して、前記候補塩基配列をマッピングする。全ゲノムDNAの塩基配列データとしては、リファレンス・ヒトゲノム配列(Hg19)等を用いることができる。また、マッピングには、Bowtieプログラムや、Bowtieプログラム以外の配列相同性検索プログラムを用いることができる。
続いて、全HLAハプロタイプのゲノムDNAの塩基配列データに対してマッピングした場合に1つの標的とするHLAハプロタイプにしかマッピングされず、HLAアレル以外の全ゲノムDNAの塩基配列データに対してマッピングした場合にマッピングされない候補塩基配列を、標的塩基配列として特定する。ここで、標的とするHLAハプロタイプとは、破壊又は改変する対象のHLAハプロタイプを意味する。
実施例において後述するように、第1実施形態の方法により特定した標的塩基配列を標的塩基配列とするgRNA(後述する第1実施形態のgRNA)は、標的とする特定のHLAハプロタイプ特異的にDSBを誘導することができ、オフターゲット変異導入のリスクも低い。
HLA遺伝子は8つのエクソンで構成されていることが多いが、標的塩基配列は、HLA遺伝子のタンパク質コード領域を標的とすることが好ましい。標的塩基配列は、HLAタンパク質の細胞外ドメインをコードするエクソン1、2、3又は4を標的とすることが好ましく、エクソン2又は3を標的とすることが特に好ましい。
あるいは、標的塩基配列を2箇所に設定すると、その間の塩基配列を大きく削除することも可能である。これを利用するために、HLA遺伝子のタンパク質をコードする遺伝子領域を含むように、2つ以上の標的塩基配列を設計してもよい。
また、標的塩基配列は、HLA遺伝子以外の別のゲノム領域やミトコンドリアDNAを標的としないものであることが好ましい。また、数塩基のミスマッチを許容した場合においても、HLA遺伝子以外の領域を標的とする箇所が少ない標的塩基配列を選択することが好ましい。
第2実施形態の方法は、全HLAハプロタイプのゲノムDNAの塩基配列データに対してマッピングした場合に2つ以上の標的とするHLAハプロタイプにマッピングされる候補塩基配列を標的塩基配列として特定する点において、上述した第1実施形態の方法と主に異なる。
第2実施形態の方法において、候補塩基配列、全HLAハプロタイプのゲノムDNAの塩基配列データ、全ゲノムDNAの塩基配列データ、マッピングについては、上述した第1実施形態の方法と同様である。
本実施形態の方法により、後述する第2実施形態のgRNAの標的塩基配列を特定することができる。後述するように、第2実施形態のgRNAは、複数の標的とするHLA遺伝子(又はアレル)を切断することができる。このため、複数のHLA遺伝子を破壊又は改変する場合に必要なgRNAの種類を減らすことができる。これにより、gRNAを作製するコストを減らすことができる。また、使用するgRNAの種類を減らすことにより、オフターゲット変異導入のリスクも減らすことができる。
本実施形態において、gRNAは、CRISPR RNA(crRNA)とトランス活性化型CRISPR RNA(tracrRNA)との複合体であってもよいし、tracrRNAとcrRNAを組み合わせた単一の合成gRNA(sgRNA)であってもよい。いずれの構造のgRNAであっても標的塩基配列特異的にDSBを誘導することができる。
標的塩基配列は、上述した方法により特定されたものであることが好ましい。上述したように、本明細書では、標的塩基配列は、PAM配列を含む塩基配列である。そこで、標的塩基配列からPAM配列を除いた塩基配列をcrRNA又はsgRNAのスペーサー塩基配列に用いる。
まず、標的塩基配列からPAM配列を除いた塩基配列をスペーサー塩基配列とする。続いて、スペーサー塩基配列の3’末端に、スキャフォールド配列を連結した塩基配列を設計する。スキャフォールド配列としては、例えば配列番号39に記載の塩基配列を使用することができるがこれに限定されない。
配列番号39に記載の塩基配列は、スキャフォールド配列として機能する限り、配列番号39に記載の塩基配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換若しくは付加された塩基配列であってもよい。ここで、1若しくは数個の塩基とは、例えば1~10塩基、例えば1~5塩基、例えば1~3塩基であってよい。
設計したsgRNAは化学合成等により調製することができる。sgRNAは、RNAとして調製して直接ドナー細胞に導入してもよいし、DNAとして調製して発現ベクターに組み込み、発現ベクターの形態でドナー細胞に導入し、細胞内で発現させてもよい。
sgRNAを細胞内で発現させる場合、U6プロモーターやH1プロモーター等のポリメラーゼIIIプロモーターを用いることができる。この場合、転写効率を向上させるために、sgRNAの5’末端の塩基配列をG又はGGに変更してもよい。sgRNAの5’末端の塩基配列をG又はGGに変更しても、Cas9の切断活性にはほとんど影響がでない。
例えば、標的塩基配列からPAM配列を除いた塩基配列が「5’-NNNNNNNNNNNNNNNNNNNN-3’」(配列番号62)である場合、標的塩基配列を特異的に切断するsgRNAの塩基配列は「5’-NNNNNNNNNNNNNNNNNNNNGUUUUAGAGCUAGAAAUAGCAAGUUAAAAUAAGGCUAGUCCGUUAUCAACUUGAAAAAGUGGCACCGAGUCGGUGCUUUUUUU-3’」(配列番号63)とすることができる。
本実施形態のgRNAは、crRNAとtracrRNAとの複合体であってもよい。また、crRNA及びtracrRNAは、直接ドナー細胞に導入してもよいし、発現ベクターの形態でドナー細胞に導入し、細胞内で発現させてもよい。crRNA及びtracrRNAを細胞内で発現させる場合、U6プロモーターやH1プロモーター等のポリメラーゼIIIプロモーターを用いることができる。この場合、転写効率を向上させるために、crRNA又はtracrRNAの5’末端の塩基配列をG又はGGに変更してもよい。crRNA又はtracrRNAの5’末端の塩基配列をG又はGGに変更しても、Cas9の切断活性にはほとんど影響がでない。
まず、標的塩基配列からPAM配列を除いた塩基配列をスペーサー塩基配列とする。続いて、スペーサー塩基配列の3’末端に、スキャフォールド配列を連結した塩基配列を設計し、crRNAの塩基配列とする。例えば、標的塩基配列からPAM配列を除いた塩基配列が「5’-NNNNNNNNNNNNNNNNNNNN-3’」(配列番号62)である場合、crRNAの塩基配列は「5’-NNNNNNNNNNNNNNNNNNNNGUUUUAGAGCUAUGCUGUUUUG-3’」(配列番号64)とすることができる。また、tracrRNAの塩基配列は、例えば、「5’-CAAAACAGCAUAGCAAGUUAAAAUAAGGCUAGUCCGUUAUCAACUUGAAAAAGUGGCACCGAGUCGGUGC-3’」(配列番号65)とすることができる。
crRNAの塩基配列は、crRNAとして機能する限り、配列番号64に記載の塩基配列に対して変異を有していてもよい。より具体的には、配列番号64に記載の塩基配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換若しくは付加された塩基配列であってもよい。ここで、1若しくは数個の塩基とは、例えば1~10塩基、例えば1~5塩基、例えば1~3塩基であってよい。
また、tracrRNAの塩基配列は、tracrRNAとして機能する限り、配列番号65に記載の塩基配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換若しくは付加された塩基配列であってもよい。ここで、1若しくは数個の塩基とは、例えば1~10塩基、例えば1~5塩基、例えば1~3塩基であってよい。
設計したcrRNA及びtracrRNAは、化学合成等により調製することができる。crRNA及びtracrRNAはRNAとして調製して直接ドナー細胞に導入してもよいし、DNAとして調製して発現ベクターに組み込み、発現ベクターの形態でドナー細胞に導入し、細胞内で発現させてもよい。
具体的な第1実施形態のgRNAとしては、配列番号3、4、7、45~52、72~2459のいずれかに記載の塩基配列を標的塩基配列とするgRNA、又は、配列番号3、4、7、45~52、72~2459のいずれかに記載の塩基配列の5’末端において、1若しくは数個の塩基が欠失、置換若しくは付加された塩基配列を標的塩基配列とするgRNAが挙げられる。ここで、1若しくは数個の塩基とは、例えば1~10塩基、例えば1~5塩基、例えば1~3塩基であってよい。例えば、スペーサー配列の5’末端を2~3塩基短くすることでDNAへの結合能力を下げ、CRISPR-Cas9の配列認識特異性を高めることができる。
中でも、配列番号3、4、7、45~52のいずれかに記載の塩基配列を標的塩基配列とするgRNA、又は、配列番号3、4、7、45~52のいずれかに記載の塩基配列の5’末端において、1若しくは数個の塩基が欠失、置換若しくは付加された塩基配列を標的塩基配列とするgRNAが好ましい。実施例において後述するように、これらの塩基配列を標的塩基配列とするgRNAにより、HLAハプロタイプ特異的にHLAアレルを破壊又は改変し、レシピエントに他家移植した場合の拒絶反応が低減された低抗原性細胞を製造することができる。
具体的な第2実施形態のgRNAとしては、配列番号53~55、2460~8013のいずれかに記載の塩基配列を標的塩基配列とするgRNA、又は、配列番号53~55、2460~8013のいずれかに記載の塩基配列の5’末端において、1若しくは数個の塩基が欠失、置換若しくは付加された塩基配列を標的塩基配列とするgRNAが挙げられる。ここで、1若しくは数個の塩基とは、例えば1~10塩基、例えば1~5塩基、例えば1~3塩基であってよい。例えば、スペーサー配列の5’末端を2~3塩基短くすることでDNAへの結合能力を下げ、CRISPR-Cas9の配列認識特異性を高めることができる。
中でも、配列番号53~55のいずれかに記載の塩基配列を標的塩基配列とするgRNA、又は、配列番号53~55のいずれかに記載の塩基配列の5’末端において、1若しくは数個の塩基が欠失、置換若しくは付加された塩基配列を標的塩基配列とするgRNAが好ましい。
例えばHLA-Aアレルに着目した場合、HLA-Aアレルには父親由来のHLA-A遺伝子と母親由来のHLA-A遺伝子の2つの遺伝子が存在し、それぞれHLA-A遺伝子が異なる場合もあれば同一の場合もある。HLA-Aの抗原提示能力等を保持したい場合、一方のHLA-A遺伝子だけを切断してノックアウトを誘導し、反対側のHLA-A遺伝子は残す必要がある。あるいは、完全ノックアウトを誘導したい場合には、双方のHLA-A遺伝子を切断する必要がある。
一般的に、2つの遺伝子をCRISPR-gRNAの標的にする場合、2つのgRNAをデザインして別々にDNA切断を誘導することが一般的である。このため、複数のHLA遺伝子をノックアウトする場合、それぞれのHLA遺伝子に特異的なgRNAを用いることが考えられる。
これに対し、実施例において後述するように、発明者らは、HLA遺伝子が相互にDNA配列相同性が高いという特徴を利用して、1つのgRNAで複数のHLA遺伝子(例えばHLA-A遺伝子の父親由来配列と母親由来配列の両方、あるいは、HLA-A遺伝子とHLA-B遺伝子)の切断誘導が可能なgRNAを探索した所、このようなgRNA配列を複数同定することができた。
実施例において後述するように、第2実施形態のgRNAを利用することにより、複数のHLA遺伝子(又はアレル)を切断する場合に必要なgRNAの種類を減らすことができる。これにより、gRNAを作製するコストを減らすことができる。また、使用するgRNAの種類を減らすことにより、オフターゲット変異導入のリスクも減らすことができる。
1実施形態において、本発明は、多能性幹細胞の多能性を維持したままHLAタンパク質の発現を誘導する方法であって、多能性幹細胞の培地にIFN-γ、IFN-α、IFN-β、IL-4、GM-CSF、TGF-α又はTGF-βを添加する工程を備える方法を提供する。
次に実施例を示して本発明を更に詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
[実験例1]
(gRNAの設計)
HLA遺伝子は配列の個人差が大きく、一方でHLA遺伝子間の相同性が高いことから、特定のHLAハプロタイプだけを切断するgRNAの塩基配列を設計することは困難であった。具体的には、例えば、HLA-A*01:01アレルだけを認識するgRNAであって、他のHLA-AアレルやHLA-A以外のHLA遺伝子、他のゲノム領域を認識しないgRNA配列を設計することは困難であった。
そこで、次の方法により、HLA-Aアレル、HLA-Bアレル及びHLA-Cアレルを認識するgRNAの標的塩基配列を決定した。まず、IPD-IMGT/HLAデータベース(https://www.ebi.ac.uk/ipd/imgt/hla/)から、全HLAハプロタイプのゲノムDNAの塩基配列を含む「hla_gen.fasta」ファイルをダウンロードして入手した。
続いて、全HLAハプロタイプのゲノムDNAの塩基配列から、「NNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNGG」(配列番号40)と一致する塩基配列を、SpCas9のgRNA(sgRNA)の標的塩基配列の候補として抽出した。
続いて、各候補の塩基配列を全HLAハプロタイプの塩基配列に対してBowtieプログラム(http://bowtie-bio.sourceforge.net/index.shtml)を用いてマッピングし、各候補の塩基配列がどのHLA遺伝子に何カ所マッピングするかを解析した。なお、同様の操作はBowtieプログラム以外の配列相同性検索プログラムを用いて行うこともできる。
続いて、Bowtieプログラムの結果をもとに、各sgRNAが、HLA-Aアレル、HLA-Bアレル又はHLA-Cアレルのいずれか1つのみに結合する場合、並びに、HLA-Aアレル及びHLA-Bアレル、HLA-Aアレル及びHLA-Cアレル、HLA-Bアレル及びHLA-Cアレル、HLA-Aアレル、HLA-Bアレル及びHLA-Cアレル等の2つ以上のHLAアレルに結合する場合に分類した。
続いて、全ての候補の塩基配列をリファレンス・ヒトゲノム配列(Hg19)に対してBowtieを用いてマッピングし、HLAアレル以外のゲノム領域へとマッピングされるかどうかの確認を行った。その結果、HLAアレルのみにマッピングされる候補の塩基配列を目的の標的塩基配列として抽出した。
図1(a)は、本実験例で抽出した標的塩基配列が、HLA-Aアレル、HLA-Bアレル、HLA-Cアレルのいずれを標的とするかをベン図で示したものである。図中の数字は、sgRNAの標的塩基配列の数を示す。その結果、HLA-Aアレル、HLA-Bアレル又はHLA-Cアレルのいずれか1つのみを標的とするsgRNAの標的塩基配列、並びに、HLA-Aアレル及びHLA-Bアレル、HLA-Aアレル及びHLA-Cアレル、HLA-Bアレル及びHLA-Cアレル、HLA-Aアレル、HLA-Bアレル及びHLA-Cアレル等の2つ以上のHLAアレルを標的とするsgRNAの標的塩基配列を多数決定することができた。
図1(b)は、本実験例で同定したsgRNAの標的塩基配列が、HLA-Aアレル、HLA-Bアレル、HLA-Cアレルのどの場所を標的としているかを示した図である。図1(b)中、線で連結されたボックスは各HLA遺伝子のエクソンを示し、HLA-Aアレルは左側にエクソン1が、HLA-BアレルとHLA-Cアレルは右側にエクソン1が存在する。また、「[+]strand sgRNAs」はプラス鎖DNAを標的とする標的塩基配列を示し、「[-]strand sgRNAs」はマイナス鎖DNAを標的とする標的塩基配列を示し、「Unique k-mers」はヒトゲノム上で一箇所しか存在しない10~16merの塩基配列(「k-mer配列」という。)の集合を示す。
この結果、Unique k-mersのピークが高い部位に、多数のsgRNA標的配列を見出すことができたことが明らかとなった。なお、プラス鎖DNA又はマイナス鎖DNAのどちらにも相当数の標的塩基配列を見出すことができた。
配列番号3、4、7、45~52、72~2459に、全HLAハプロタイプのゲノムDNAの塩基配列データに対してマッピングした場合に1つの標的とするHLAハプロタイプにしかマッピングされず、HLAアレル以外の全ゲノムDNAの塩基配列データに対してマッピングした場合にマッピングされない塩基配列として抽出された塩基配列を示す。また、下記表1に、一例として、一部の塩基配列について、標的とするHLAアレルの数及び標的とするHLAアレルを示す。
また、配列番号53~55、2460~8013に、全HLAハプロタイプのゲノムDNAの塩基配列データに対してマッピングした場合に2つ以上の標的とするHLAハプロタイプにマッピングされ、HLAアレル以外の全ゲノムDNAの塩基配列データに対してマッピングした場合にマッピングされない塩基配列として抽出された塩基配列を示す。また、下記表2に、一例として、一部の塩基配列について、標的とするHLAアレルの数及び標的とするHLAアレルを示す。
また、下記表3に、全HLAハプロタイプのゲノムDNAの塩基配列データに対してマッピングした場合に2つ以上の標的とするHLAハプロタイプにマッピングされ、HLAアレル以外の全ゲノムDNAの塩基配列データに対してマッピングした場合にマッピングされない塩基配列として抽出された標的塩基配列について、標的とするHLAアレルの数及び抽出された標的塩基配列の数を示す。
[実験例2]
(iPS細胞の刺激によるHLAタンパク質の発現誘導1)
未分化iPS細胞を刺激してHLAタンパク質の発現を誘導することを試みた。具体的には、iPS細胞の培地に100ng/mLのリポポリサッカライド(LPS)、100ng/mLのTNF-α、又は50ng/mLのIFN-γを添加して48時間処理後、抗HLA-ABC抗体(品番:311418、BIOLEGEND社)を用いてフローサイトメトリー解析を行い、HLAタンパク質の発現を検討した。
図2は、フローサイトメトリーの結果を示すグラフである。その結果、IFN-γを添加するとHLAタンパク質の発現が上昇することが明らかとなった。
[実験例3]
(iPS細胞の刺激によるHLAタンパク質の発現誘導2)
iPS細胞の培地に10ng/mL、50ng/mL、又は100ng/mLのIFN-γを添加して48時間処理後、抗HLA-ABC抗体(品番:311418、BIOLEGEND社)を用いてフローサイトメトリー解析を行い、HLAタンパク質の発現を検討した。
図3は、フローサイトメトリーの結果を示すグラフである。その結果、IFN-γを添加するとHLAタンパク質の発現が上昇することが明らかとなった。その結果、いずれの濃度においても、IFN-γを添加するとHLAタンパク質の発現が上昇することが明らかとなった。
[実験例4]
(iPS細胞の刺激によるHLAタンパク質の発現誘導3)
iPS細胞の培地に50ng/mLのIFN-γを添加し、4時間、8時間、16時間、24時間、及び48時間処理後、抗HLA-A2抗体(品番:740082、BD社)を用いてフローサイトメトリー解析を行い、HLA-A2タンパク質の発現を検討した。
図4(a)は、フローサイトメトリーの結果を示すグラフである。また、図4(b)は、iPS細胞のIFN-γ処理とHLA-Aタンパク質の発現量の解析のスケジュールを示す図である。その結果、IFN-γ処理時間を長くするほどHLAタンパク質の発現が高くなることが明らかとなった。また、更なる検討の結果、iPS細胞をIFN-γで48時間処理した後、培地からIFN-γを除去して7日後においてもHLAタンパク質の発現が持続していることが明らかとなった。
[実験例5]
(細胞のHLAハプロタイプ決定)
以下の方法により、各細胞のHLAハプロタイプ(両親から受け継いだ各HLAアレルの対)を決定した。
604B1 iPS細胞及び1383D2 iPS細胞については、まず、604B1 iPS細胞のWES(Whole Exome Sequencing)解析結果、及び、1383D2 iPS細胞のWGS(Whole Genome Sequencing)解析結果に基づいて、それぞれFASTQ配列ファイルを作成した。
続いて、各FASTQ配列ファイルをリファレンス・ヒトゲノム配列(Hg19)に対してマッピングし、BAMファイルをそれぞれ作成した。続いて、ソフトウェア(名称「HLA-genotyper」、https://pypi.python.org/pypi/hla-genotyper/0.4.2b1)を用いて上記の各BAMファイルを解析し、各細胞のHLAハプロタイプを決定した。
また、585A1 iPS細胞については、抽出したゲノムDNAをHLA研究所(http://hla.or.jp/)に送付し、蛍光ビーズ法(PCR-rSSO/Luminex法)によるHLAハプロタイプ決定を行った。また、604B1 iPS細胞については、585A1 iPS細胞と同様のHLAハプロタイプ決定も行った。
また、末梢血単核細胞(PBMC)については、販売先(CTL社、Wako社)がHLAハプロタイプ情報を提供しているものを使用した。
[実験例6]
(sgRNAのゲノム切断活性の検討)
実験例1で同定した標的塩基配列を標的とするsgRNAの中から、A*02:07アレルだけを切断し、A*32:01アレルとは塩基配列が一致しないsgRNAである、A0207-ex3-g1(標的塩基配列を配列番号3に示す。)、A0207-ex3-g2(標的塩基配列を配列番号4に示す。)及びA0207-ex3-g4(標的塩基配列を配列番号7に示す。)を選択した。
なお、以下の各実験例で使用した各sgRNAの塩基配列は、それぞれのsgRNAの標的塩基配列からPAM配列を除いた塩基配列の3’側に、配列番号39に記載のスキャフォールド配列を連結した塩基配列であった。例えば、標的塩基配列からPAM配列を除いた塩基配列が「5’-NNNNNNNNNNNNNNNNNNNN-3’」(配列番号62)であった場合、使用したsgRNAの塩基配列は「5’-NNNNNNNNNNNNNNNNNNNNGUUUUAGAGCUAGAAAUAGCAAGUUAAAAUAAGGCUAGUCCGUUAUCAACUUGAAAAAGUGGCACCGAGUCGGUGCUUUUUUU-3’」(配列番号63)であった。また、以下の各実験例では、各sgRNAを発現ベクターの形態で細胞に導入し、細胞内で発現させて使用した。
図5(a)はHLA-Aのエクソン3の領域に見出されたsgRNAの標的部位及び標的塩基を示す図である。図5(a)中、ボックスはHLA-A*02:07遺伝子のエクソンを示し、矢印は各sgRNAの標的塩基配列の位置を示す。また、図5(a)には野生型のA*02:07アレルの塩基配列、及び野生型のA*32:01アレルの塩基配列も示す。両アレルで配列が異なる部分を大文字で示し、sgRNAのPAM配列を下線で示す。
続いて、A0207-ex3-g1、A0207-ex3-g2及びA0207-ex3-g4を、精製Cas9タンパク質と共に下記表4のHLAハプロタイプを持つ1383D2 iPS細胞にそれぞれトランスフェクションした。トランスフェクションは市販のキット(型式「CRISPR-MAX」、品番:CMAX00003、サーモフィッシャーサイエンティフィック社)を用いて行った。
続いて、ゲノムDNAを抽出後、T7エンドヌクレアーゼI(T7EI)アッセイにより、各細胞における遺伝子変異導入効率を検討した。T7EIアッセイは次のようにして行った。
まず、HLA-A2領域のA*02:07アレルを特異的に増幅するプライマーを用いてNested PCRを行った。Nested PCRには、下記表5に示すプライマーを使用した。
続いて、PCR産物を精製し、精製後のPCR産物(400ng)に1/10容量の10×NEBuffer2(NEB社)バッファーを添加し、95℃で5分間加熱して二本鎖DNAを熱変性した後、徐々に温度を下げることにより再アニーリングした。より具体的には、95℃から85℃まで-2℃/秒で冷却し、85℃から25℃まで-0.1℃/秒で冷却した。
続いて、再アニール後のPCR産物に10単位のT7エンドヌクレアーゼI(T7EI、Cat.No.M0302S、NEB社)を添加し、37℃で15分間処理した。続いて、反応液量の1/10容量の0.25M EDTA溶液を添加することによりT7EIの活性を停止させ、その後サンプルは低温(氷上)を維持した。
続いて、T7EI処理したPCR産物を2%アガロースゲル電気泳動し、切断バンドと未切断バンドのDNAシグナル強度をImageJソフトウェアで定量した。
図5(b)は各sgRNAを用いた場合のゲノムDNA変異導入効率をT7EIアッセイで解析した結果を示す。図5(b)中、「T7EI」はT7エンドヌクレアーゼIを示し、「-」は添加しなかったことを示し、「+」は添加したことを示す。また、「ex3-g1」はA0207-ex3-g1を導入した結果であることを示し、「ex3-g2」はA0207-ex3-g2を導入した結果であることを示し、「ex3-g4」はA0207-ex3-g4を導入した結果であることを示し、「DMD#1」は陽性対照として使用した、ジストロフィン遺伝子に特異的なsgRNAを導入した結果であることを示す。また、矢頭はT7EIにより切断されたバンドを示す。
その結果、A0207-ex3-g4 sgRNAが最もゲノム切断活性が高いことが明らかとなった。
[実験例7]
(HLAアレル特異的ノックアウト1)
《HLAタンパク質の発現の確認》
HLAの細胞表面での発現を確認するために、HLA抗原型A2を持つiPS細胞株を2株(1383D2株及び404C2株)選択した。また、HLA抗原型A2を持たないiPS細胞株として604B1株を選択した。合計3株の未分化iPS細胞に対して、サイトカイン未処理の場合と50ng/mLのIFN-γで48時間処理した場合において、抗HLA-A2抗体(品番:740082、BD社)を用いて細胞を染色し、フローサイトメトリー解析を行った。
図6(a)はフローサイトメトリー解析の結果を示すグラフである。その結果、IFN-γ処理によって、1383D2細胞及び404C2細胞においてHLA-A2の特異的な発現が確認できた。
《HLAアレル特異的ノックアウト》
続いて、上述したsgRNAである、A0207-ex3-g1(標的塩基配列を配列番号3に示す。)、A0207-ex3-g2(標的塩基配列を配列番号4に示す。)及びA0207-ex3-g4(標的塩基配列を配列番号7に示す。)を、精製Cas9タンパク質と共に1383D2 iPS細胞にそれぞれトランスフェクションした。トランスフェクションは市販のキット(型式「CRISPR-MAX」、品番:CMAX00003、サーモフィッシャーサイエンティフィック社)を用いて行った。
また、HLA遺伝子を破壊しないコントロールのsgRNAとして、X染色体上のジストロフィン(DMD)遺伝子をターゲットとするsgRNA-DMD#1(標的塩基配列を配列番号61に示す。)を用いた。
続いて、トランスフェクションした各iPS細胞をそれぞれ2つのウェル中で継代し、一方のウェルはサイトカイン未処理のまま維持し、もう一方のウェルは培地に50ng/mLのIFN-γを添加して48時間処理した。その後、抗HLA-A2抗体(品番:740082、BD社)を用いてフローサイトメトリー解析を行った。
図6(b)はフローサイトメトリー解析の結果を示すグラフである。その結果、ゲノム切断活性が最も大きかったA0207-ex3-g4 sgRNAを用いた場合に、最も多くのHLA-A2抗原が破壊された細胞が出現することが明らかとなった。
《sgRNAの標的部位の塩基配列の解析》
続いて、sgRNA(A0207-ex3-g4)を導入した1383D2 iPS細胞からゲノムDNAを抽出し、A*02:07アレルを特異的に増幅し、A*32:01アレルを増幅しないプライマーを用いてNested PCRを行いsgRNAのターゲット部位を増幅した。Nested PCRには、下記表6に示すプライマーを使用した。
続いて、PCR産物をTAクローニングでpGEM-T-Easyベクター(Promega社)にクローニングした。続いて、大腸菌コロニーを21株回収し、サンガーシーケンスにより塩基配列を決定した。その結果、11株は野生型の塩基配列を有していたが、10株(欠損4株と挿入6株)には何らかの挿入欠失変異(Indel変異)を生じたことが明らかとなった。
また、sgRNA(A0207-ex3-g4)を導入した1383D2 iPS細胞を、抗HLA-A2抗体(品番:740082、BD社)で染色し、フローサイトメーターにてHLA-A2抗原が陰性となった細胞をソートした。ソートしたiPS細胞からゲノムDNAを抽出し、標的アレルであるA*02:07アレルを特異的に増幅するプライマー(上述)をそれぞれ用いてのNested PCRを行った。また、標的ではないA*32:01アレルを特異的に増幅するプライマーをそれぞれ用いてNested PCRを行った。A*32:01アレルのNested PCRには、下記表7に示すプライマーを使用した。
続いて、PCR産物をTAクローニングでpGEM-T-Easyベクター(Promega社)にクローニングした。大腸菌コロニーを16株(A*02:07アレル)及び19株(A*32:01アレル)回収し、サンガーシーケンスにより塩基配列を決定した。続いて、決定した塩基配列に基づいて、配列に欠損があるクローン数、挿入があるクローン数、そして配列変化の無かったクローン数を計測した。
その結果、A*02:07アレルには、16株の全てのサブクローンにおいて、何らかの挿入欠失変異(Indel変異)が生じていた。一方、A*32:01アレルは、19株の全てのサブクローンにおいて野生型の塩基配列であることが確認された。
図7は、iPS細胞1383D2株にsgRNAを導入してゲノム編集を誘導した後、HLA-A2抗原発現によるソーティングを行わなかった場合と、HLA-A2抗原発現が陰性となった細胞群をソーティングした場合のゲノムDNA変異導入効率を示すグラフである。
その結果、HLA抗原陰性細胞を分取することにより、A*02:07ターゲットアレルがゲノム編集された細胞の割合が上昇することが明らかとなった。また、非ターゲットアレルであるHLA-A*32:01アレルには、全く変異が導入されていないことが確認された。
[実験例8]
(HLAアレル特異的ノックアウト2)
下記表8のHLAハプロタイプを持つ604B1 iPS細胞のHLAアレルを破壊することにより、下記表9に示す仮想的なHLAハプロタイプを持つレシピエントAに他家移植を行う場合の拒絶反応が低減された低抗原性細胞を作製した。なお、下記表9に示すHLAハプロタイプは、末梢血単核球細胞(PBMC、型式「LP_194」、CTL社)のHLAハプロタイプである。
表8及び表9に示すように、604B1 iPS細胞にはA*01:01アレル、B*07:02アレルが存在する。そして、これらのHLAアレルは、レシピエントAには存在しない。このため、604B1 iPS細胞又は604B1 iPS細胞から分化誘導された細胞をレシピエントに移植すると、レシピエントAの持つT細胞によって攻撃されて免疫拒絶が起こってしまう。
そこで、拒絶反応を低減するためには、レシピエントAに存在せずドナー細胞に存在するHLAアレルである、A*01:01アレルとB*07:02アレルを破壊して、ドナー細胞に特異的なHLAタンパク質を発現しないようにすればよい。
上記の実験例1で同定したsgRNAの中から、A*01:01アレルだけを切断し、A*24:02アレルとは塩基配列が一致しないsgRNA2つ(A0101-ex3-g1(標的塩基配列を配列番号45に示す。)及びA0101-ex3-g2(標的塩基配列を配列番号46に示す。))と、B*07:02アレルだけを切断し、B*37:01アレルとは配列が一致しないsgRNA2つ(B0702-ex2-g1(標的塩基配列を配列番号47に示す。)、B0702-ex2-g2(標的塩基配列を配列番号48に示す。))を選択した。
続いて、上記各sgRNAをインビトロ転写反応により合成し、精製Cas9タンパク質と共に604B1 iPS細胞にそれぞれトランスフェクションした。トランスフェクションは市販のキット(型式「CRISPR-MAX」、品番:CMAX00003、サーモフィッシャーサイエンティフィック社)を用いて行った。
sgRNAの導入によりA*01:01アレル又はB*07:02アレルが切断され、その修復の過程で遺伝子変異が生じると、A*01:01アレル又はB*07:02アレルがノックアウトされ、HLA-A1タンパク質又はHLA-B7タンパク質を欠失した細胞が得られる。
続いて、各iPS細胞を50ng/mLのIFN-γで48時間刺激し、HLAタンパク質を発現誘導した。続いて、各iPS細胞を、抗HLA-A1抗体(型式「ab33883」、abcam社)又は抗HLA-B7抗体(型式「MCA986」、Bio-Rad社)で染色し、フローサイトメトリーでHLAタンパク質陰性細胞の割合を解析した。
図8(a)及び(b)は、フローサイトメトリー解析の結果を示すグラフである。図8(a)は、A*01:01アレルを破壊したiPS細胞におけるHLA-A1タンパク質の発現量を測定した結果であり、図8(b)は、B*07:02アレルを破壊したiPS細胞におけるHLA-B7タンパク質の発現量を測定した結果である。図8(a)及び(b)中、「No transfection」はsgRNAを導入しなかったiPS細胞の結果を示す。
その結果、sgRNAとしてA0101-ex3-g1(標的塩基配列を配列番号45に示す。)を使用した場合、11.2%の細胞がHLA-A1タンパク質を欠失したことが明らかとなった。また、sgRNAとしてA0101-ex3-g2(標的塩基配列を配列番号46に示す。)を使用した場合、18.9%の細胞がHLA-A1タンパク質を欠失したことが明らかとなった。この結果から、A0101-ex3-g2がよりノックアウト効率の高いsgRNAであることが明らかとなった。
また、sgRNAとしてB0702-ex2-g1(標的塩基配列を配列番号47に示す。)を使用した場合、11.6%の細胞がHLA-B7タンパク質を欠失したことが明らかとなった。また、sgRNAとしてB0702-ex2-g2(標的塩基配列を配列番号48に示す。)を使用した場合、0.7%の細胞がHLA-B7タンパク質を欠失したことが明らかとなった。この結果から、B0702-ex2-g1がよりノックアウト効率の高いsgRNAであることが明らかとなった。
この結果から、ノックアウト効率の高かったA0101-ex3-g2とB0702-ex2-g1を選択し、A*01:01アレル及びB*07:02アレルの双方のノックアウトを行った。具体的には、604B1 iPS細胞に、選択した2種類のsgRNAを精製Cas9タンパク質と共にトランスフェクションした。トランスフェクションは市販のキット(型式「CRISPR-MAX」、品番:CMAX00003、サーモフィッシャーサイエンティフィック社)を用いて行った。
続いて、iPS細胞を50ng/mLのIFN-γで48時間刺激し、HLAタンパク質を発現誘導した。続いて、iPS細胞を抗HLA-A1抗体(型式「ab33883」、abcam社)及び抗HLA-B7抗体(型式「MCA986」、Bio-Rad社)で染色し、フローサイトメトリーで解析した。
図9(a)及び(b)は、フローサイトメトリー解析の結果を示すグラフである。図9(a)中、「No transfection」はsgRNAを導入しなかったiPS細胞の解析結果であることを示す。また、図9(b)中、「A0101-ex3-g2」及び「B0702-ex2-g1」は、これらの2つのsgRNAを共導入してA*01:01アレル及びB*07:02アレルの双方をノックアウトしたiPS細胞の解析結果であることを示す。
また、HLA-A1タンパク質及びHLA-B7タンパク質の双方が陰性である細胞集団から単細胞ソーティングを行い、15株のサブクローンを回収した。続いて、各サブクローンからゲノムDNAを抽出した。続いて、使用したsgRNAであるA0101-ex3-g2の標的部位(エクソン3)を含む領域、及びB0702-ex2-g1の標的部位(エクソン2)を含む領域をそれぞれ増幅するPCR反応を行った後、サンガーシーケンスにより塩基配列を解析した。
図10(a)は、回収した各クローンの塩基変異パターンを示す図である。図10(a)中、「WT」は野生型の塩基配列であったことを示し、「-」は欠失変異を有していたことを示し、「+」は挿入変異を有していたことを示す。例えば「-5bp」は5塩基の欠損を有していたことを示し、「+18bp」は18塩基の挿入を有していたことを示す。図10(b)では、代表例として2株(#8及び#10)の塩基配列を示す。
その結果、15株中11株のクローンにおいて、A*01:01アレル及びB*07:02アレルの双方に何らかの挿入欠失変異(Indel変異)が生じたことが明らかとなった。Indel変異が生じた11株のクローンの中から、フレームシフト変異を生じた2株(#8及び#10)を選択し、以下の実験に使用した。
[実験例9]
(HLAアレル特異的ノックアウト3)
下記表10のHLAハプロタイプを持つ585A1 iPS細胞のHLAアレルを破壊することにより、下記表11に示す仮想的なHLAハプロタイプを持つレシピエントBに他家移植を行う場合の拒絶反応が低減された低抗原性細胞を作製した。なお、下記表11に示すHLAハプロタイプは、末梢血単核球細胞(PBMC、型式「2010113203」、Wako社)のHLAハプロタイプである。
表10及び表11に示すように、585A1 iPS細胞にはB*07:02アレル、C*07:02アレルが存在する。そして、これらのHLAアレルは、レシピエントBには存在しない。このため、585A1 iPS細胞又は585A1 iPS細胞から分化誘導された細胞をレシピエントに移植すると、レシピエントBの持つT細胞によって攻撃されて免疫拒絶が起こってしまう。
そこで、拒絶反応を低減するためには、レシピエントBに存在せずドナー細胞に存在するHLAアレルである、B*07:02アレルとC*07:02アレルを破壊して、ドナー細胞に特異的なHLAタンパク質を発現しないようにすればよい。
sgRNAとして、B*07:02アレル特異的なB0702-ex2-g1(標的塩基配列を配列番号47に示す。)及びC*07:02アレル特異的なC0702-ex3-g3(標的塩基配列を配列番号49に示す。)を用いた。また、トランスフェクションに市販のキット(商品名「4D-Nucleofector」、型式「V4XP-4032」、ロンザ社)を使用した以外は実験例7と同様にして、585A1 iPS細胞のB*07:02アレル及びC*07:02アレルの双方のノックアウトを行った。
続いて、iPS細胞を50ng/mLのIFN-γで48時間刺激し、HLAタンパク質を発現誘導した。続いて、iPS細胞を抗HLA-B7抗体(型式「MCA986」、Bio-Rad社)で染色し、フローサイトメトリーで解析した。
図11はフローサイトメトリー解析の結果を示すグラフである。図11中、「No stain」は抗体で染色しなかったiPS細胞の解析結果であることを示し、「No transfection」はsgRNAを導入しなかったiPS細胞の解析結果であることを示し、「B0702-ex2-g1」及び「C0702-ex3-g3」は、これらのsgRNAを導入してB*07:02アレル及びC*07:02アレルの双方をノックアウトしたiPS細胞の解析結果であることを示す。
また、HLA-B7タンパク質が陰性である細胞集団から単細胞ソーティングを行い、28株のサブクローンを回収した。続いて、各サブクローンからゲノムDNAを抽出した。続いて、使用したsgRNAであるB0702-ex2-g1の標的部位(エクソン2)を含む領域、及びC0702-ex3-g3の標的部位(エクソン3)を含む領域をそれぞれ増幅するPCR反応を行った後、サンガーシーケンスにより塩基配列を解析した。
図12は、回収した各クローンの塩基変異パターンを示す図である。図12(a)中、「WT」は野生型の塩基配列であったことを示し、「-」は欠失変異を有していたことを示し、「+」は挿入変異を有していたことを示す。図12(b)では、代表例として3株(#2、#11及び#26)の塩基配列を示す。
その結果、複数のクローンにおいて、B*07:02アレル及びC*07:02アレルの双方に何らかの挿入欠失変異(Indel変異)が生じたことが明らかとなった。Indel変異が生じたクローンの中から、3株(#2、#11及び#26)を選択し、以下の実験に使用した。
[実験例10]
(HLAアレル特異的ノックアウト4)
下記表12のHLAハプロタイプを持つ585A1 iPS細胞のHLAアレルを破壊することにより、下記表13に示す仮想的なHLAハプロタイプを持つレシピエントCに他家移植を行う場合の拒絶反応が低減された低抗原性細胞を作製した。なお、下記表13に示すHLAハプロタイプは、末梢血単核球細胞(PBMC、型式「LP_266」、CTL社)のHLAハプロタイプである。
表12、13に示すように、585A1 iPS細胞にはB*52:01アレル、C*12:02アレルが存在する。そして、これらのHLAアレルは、レシピエントCには存在しない。このため、585A1 iPS細胞又は585A1 iPS細胞から分化誘導された細胞をレシピエントCに移植すると、レシピエントCの持つT細胞によって攻撃されて免疫拒絶が起こってしまう。
そこで、拒絶反応を低減するためには、レシピエントCに存在せずドナー細胞に存在するHLAアレルである、B*52:01アレルとC*12:02アレルを破壊して、ドナー細胞に特異的なHLAタンパク質を発現しないようにすればよい。
sgRNAとして、C*12:02アレル特異的なC1202-ex3-g1(標的塩基配列を配列番号50に示す。)を用いた点と、細胞のソーティングを行わなかった点以外は実験例9と同様にして、585A1 iPS細胞のC*12:02アレルのノックアウトを行い、17株のサブクローンを得た。なお、細胞のソーティングを行わなかったのは、抗HLA-C12のアレル特異的抗体が入手できなかったためである。
続いて、各サブクローンからゲノムDNAを抽出した。続いて、使用したsgRNAであるC1202-ex3-g1の標的部位(エクソン3)を含む領域を増幅するPCR反応を行った後、サンガーシーケンスにより塩基配列を解析した。
図13(a)は、回収した各クローンの塩基変異パターンを示す図である。図13(a)中、「-」は欠失変異を有していたことを示し、「+」は挿入変異を有していたことを示す。その結果、sgRNAの標的部位付近に何らかの挿入欠失変異(Indel変異)が生じたことが明らかとなった。Indel変異が生じたクローンの中から、フレームシフト変異を生じた#1細胞を選択した。
続いて、C*12:02アレルがノックアウトされた#1細胞に、sgRNAとしてB*52:01アレル特異的なB5201-ex3-g2(標的塩基配列を配列番号51に示す。)を導入してB*52:01アレルのノックアウトを行い、12株のサブクローン(クローン#1-1~#1-12)を得た。なお、細胞のソーティングを行わなかったのは、抗HLA-B52のアレル特異的抗体が入手できなかったためである。
続いて、各サブクローンからゲノムDNAを抽出した。続いて、使用したsgRNAであるB5201-ex3-g2の標的部位(エクソン3)を含む領域を増幅するPCR反応を行った後、サンガーシーケンスにより塩基配列を解析した。
図13(b)は、回収した各クローンの塩基変異パターンを示す図である。図13(b)中、「Mut」は置換変異を有していたことを示し、「WT」は野生型の塩基配列であったことを示し、「-」は欠失変異を有していたことを示す。その結果、sgRNAの標的部位付近に何らかの変異が生じたことが明らかとなった。図13(c)では、代表例として株#1-1の塩基配列を示す。
[実験例11]
(HLAアレル特異的ノックアウト5)
下記表14のHLAハプロタイプを持つ604B1 iPS細胞のHLAアレルを破壊することにより、下記表15で示す仮想的なHLAハプロタイプを持つレシピエントCに他家移植を行う場合の拒絶反応が低減された低抗原性細胞を作製した。なお、下記表15に示すHLAハプロタイプは、末梢血単核球細胞(PBMC、型式「LP_266」、CTL社)のHLAハプロタイプである。
表14、15に示すように、604B1 iPS細胞には、A*01:01アレル、B*37:01アレル及びC*06:02アレルが存在する。そして、これらのHLAアレルは、レシピエントCには存在しない。このため、604B1 iPS細胞又は604B1 iPS細胞から分化誘導された細胞をレシピエントに移植すると、レシピエントの持つT細胞によって攻撃されて免疫拒絶が起こってしまう。
そこで、拒絶反応を低減するためには、レシピエントCに存在せずドナー細胞に存在するHLAアレルである、A*01:01アレル、B*37:01アレル及びC*06:02アレルを破壊して、ドナー細胞に特異的なHLAタンパク質を発現しないようにすればよい。
sgRNAとして、A*01:01アレル特異的なA0101-ex3-g2(標的塩基配列を配列番号46に示す。)を用いて、実験例9と同様にして、604B1 iPS細胞のA*01:01アレルをノックアウトした。続いて、この細胞に、C*06:02アレル特異的なsgRNAであるC0602-ex3-g1(標的塩基配列を配列番号52に示す。)を導入してC*06:02アレルのノックアウトを行い、9株のサブクローンを得た。
続いて、各サブクローンからゲノムDNAを抽出した。続いて、使用したsgRNAであるA0101-ex3-g2の標的部位(エクソン3)を含む領域、及びC0602-ex3-g1の標的部位(エクソン3)を含む領域をそれぞれ増幅するPCR反応を行った後、サンガーシーケンスにより塩基配列を解析した。
図14(a)は、回収した各クローンの塩基変異パターンを示す図である。図14(a)中、「WT」は野生型の塩基配列であったことを示し、「-」は欠失変異を有していたことを示し、「+」は挿入変異を有していたことを示す。その結果、sgRNAの標的部位付近に何らかの挿入欠失変異(Indel変異)が生じたクローンが得られた。図14(b)では、Indel変異が生じたクローンの中から、フレームシフト変異を生じたクローン#3を代表例として塩基配列を示す。
続いて、A*01:01アレル及びC*06:02アレルがノックアウトされたクローン#3に、sgRNAとしてHLA-Bアレル特異的なB-ex2-g1(標的塩基配列を配列番号53に示す。)を導入してB*37:01アレルのみがノックアウトされたクローンの取得を試みた。なお、B-ex2-g1はB*37:01アレル及びB*07:02アレルの両方を標的とするsgRNAである。
続いて、iPS細胞を50ng/mLのIFN-γで48時間刺激し、HLAタンパク質を発現誘導した。続いて、iPS細胞を抗HLA-B7抗体(型式「MCA986」、Bio-Rad社)で染色し、フローサイトメトリーで解析した。
図15(a)はフローサイトメトリー解析の結果を示すグラフである。図15(a)中、「No stain」は抗体で染色しなかったiPS細胞の解析結果であることを示し、「No transfection」はsgRNAを導入しなかったiPS細胞の解析結果であることを示し、「B-ex2-g1」は、このsgRNAを導入してHLA-BアレルをノックアウトしたiPS細胞の解析結果であることを示す。
また、HLA-B7タンパク質が陽性である細胞集団から単細胞ソーティングを行い、12株のサブクローン(クローン#3-1~#3-12)を回収した。続いて、各サブクローンからゲノムDNAを抽出した。続いて、使用したsgRNAであるB-ex2-g1の標的部位(エクソン2)を含む領域の、標的としたB*37:01アレル及び標的としなかったB*07:02アレルをそれぞれ増幅するPCR反応を行った後、サンガーシーケンスにより塩基配列を解析した。
図15(b)は、回収した各クローンの塩基変異パターンを示す図である。図15(b)中、「Mut」は置換変異を有していたことを示し、「WT」は野生型の塩基配列であったことを示し、「-」は欠失変異を有していたことを示し、「+」は挿入変異を有していたことを示す。その結果、sgRNAの標的部位付近に何らかの挿入欠失変異(Indel変異)が生じたクローンが得られた。図15(c)では、B*37:01アレルのみにIndel変異が生じたクローンの中から、2株(クローン#3-11及び#3-12)を代表例として塩基配列を示す。
[実験例12]
(HLAアレル特異的ノックアウト6)
下記表16のHLAハプロタイプを持つ604B1 iPS細胞のHLAアレルを破壊することにより、HLA-Aアレル、HLA-Bアレル、HLA-Cアレルの3遺伝子座全てをノックアウトした細胞を作製した。図16(a)は本実験例で使用したsgRNAの標的部位を示す図である。
sgRNAとして、HLA-Bアレル及びHLA-Cアレルの双方を標的とすることができるBC-ex2-g1(標的塩基配列を配列番号54に示す。)を用いて、実験例9と同様にして、604B1 iPS細胞のB*07:02アレル、B*37:01アレル、C*06:02アレル及びC*07:02アレルをノックアウトした。
続いて、iPS細胞を50ng/mLのIFN-γで48時間刺激してフローサイトメトリー解析を行い、HLA-Bタンパク質及びHLA-Cタンパク質の発現を検討した。図16(b)はフローサイトメトリーの結果を示すグラフである。図16(b)中、「No stain」は抗体で染色しなかったiPS細胞の解析結果であることを示し、「No transfection」はsgRNAを導入しなかったiPS細胞の解析結果であることを示し、「BC-ex2-g1」は、このsgRNAを導入してHLA-Bアレル、HLA-Cアレルの双方をノックアウトしたiPS細胞の解析結果であることを示す。
続いて、HLA-Bタンパク質及びHLA-Cタンパク質の双方が陰性である細胞集団をソーティングして回収した。続いて、回収した細胞集団に、HLA-A遺伝子の両アレルを標的とすることができるA-ex3-g1(標的塩基配列を配列番号55に示す。)を導入し、A*01:01アレル及びA*24:02アレルをノックアウトした。
続いて、iPS細胞を50ng/mLのIFN-γで48時間刺激してフローサイトメトリー解析を行い、HLA-Aタンパク質、HLA-Bタンパク質及びHLA-Cタンパク質の発現を検討した。図16(c)はフローサイトメトリーの結果を示すグラフである。図16(c)中、「No stain」は抗体で染色しなかったiPS細胞の解析結果であることを示し、「No transfection」はsgRNAを導入しなかったiPS細胞の解析結果であることを示し、「A-ex3-g1」は、このsgRNAを導入してHLA-AアレルをノックアウトしたiPS細胞の解析結果であることを示す。
続いて、HLA-Aタンパク質、HLA-Bタンパク質及びHLA-Cタンパク質の全てが陰性である細胞集団の単細胞ソーティングを行い、8株のサブクローンを回収した。続いて、各サブクローンからゲノムDNAを抽出した。続いて、使用したsgRNAの標的部位を含む領域をそれぞれ増幅するPCR反応を行った後、サンガーシーケンスにより塩基配列を解析した。
図17(a)は、回収したクローンのうちの1つ(クローン#1)の塩基変異パターンを示す図である。図17(a)中、「-」は欠失変異を有していたことを示し、「+」は挿入変異を有していたことを示す。その結果、A*01:01アレル、A*24:02アレル、B*07:02アレル、B*37:01アレル、C*06:02アレル及びC*07:02アレルの全てに挿入欠失変異(Indel変異)が生じたクローンが得られたことが確認された。図17(b)は、クローン#1の各HLAアレルの塩基配列を示す。図17(b)中、「WT」は野生型の塩基配列を示す。
[実験例13]
(HLAアレル特異的ノックアウト7)
下記表17のHLAハプロタイプを持つ585A1 iPS細胞のHLAアレルを破壊することにより、HLA-Aアレル及びHLA-Bアレルがノックアウトされており、HLA-Cアレルの一方のみがノックアウトされた細胞を作製した。
sgRNAとして、HLA-Aアレルを標的とすることができるA-ex3-g1(標的塩基配列を配列番号55に示す。)と、HLA-Bアレルを標的とすることができるB-ex2-g1(標的塩基配列を配列番号53に示す。)を用いて、実験例9と同様にして、585A1 iPS細胞のA*24:02アレル、B*07:02アレル及びB*52:01アレルをノックアウトした。
続いて、iPS細胞を50ng/mLのIFN-γで48時間刺激してフローサイトメトリー解析を行い、HLA-A24抗原、HLA-B7抗原の発現を検討した。図18(a)はフローサイトメトリーの結果を示すグラフである。
続いて、HLA-A24抗原及びHLA-B7抗原の双方が陰性である細胞集団の単細胞ソーティングを行い、10株のサブクローンを回収した。続いて、各サブクローンからゲノムDNAを抽出した。続いて、使用したsgRNAの標的部位を含む領域をそれぞれ増幅するPCR反応を行った後、サンガーシーケンスにより塩基配列を解析した。
図18(b)は、回収した各クローンの塩基変異パターンを示す図である。図18(b)中、「WT」は野生型の塩基配列であったことを示し、「-」は欠失変異を有していたことを示し、「+」は挿入変異を有していたことを示し、「?」は確定できなかったことを示す。その結果、A*24:02アレル、B*07:02アレル及びB*52:01アレルの全てに挿入欠失変異(Indel変異)が生じたことが明らかとなったクローン#3を選択した。図18(c)に、クローン#3の塩基配列を示す。
続いて、クローン#3に、C*12:02アレル特異的なC1202-ex3-g1(標的塩基配列を配列番号50に示す。)を導入し、C*12:02アレルをノックアウトした。続いて、4株のサブクローン(クローン#3-1~#3-4)を回収した。続いて、各サブクローンからゲノムDNAを抽出した。続いて、C*07:02アレル及びC*12:02アレルをそれぞれ増幅するPCR反応を行った後、サンガーシーケンスにより塩基配列を解析した。
図18(d)は、回収した各クローンの塩基変異パターンを示す図である。図18(d)中、「WT」は野生型の塩基配列であることを示し、「-」は欠失変異を有することを示す。その結果、C*07:02アレルが残存しており、C*12:02アレルに挿入欠失変異(Indel変異)が生じたクローンが3株(クローン#3-1、#3-2、及び#3-3)得られたことが確認された。図18(e)に、代表例としてクローン#3-1の塩基配列を示す。
[実験例14]
(HLAアレル特異的ノックアウト8)
下記表18のHLAハプロタイプを持つ604B1 iPS細胞のHLAアレルを破壊することにより、HLA-Aアレル及びHLA-Bアレルをノックアウトした細胞を作製した。
sgRNAとして、HLA-Aアレルを標的とすることができるA-ex3-g1(標的塩基配列を配列番号55に示す。)と、HLA-Bアレルを標的とすることができるB-ex2-g1(標的塩基配列を配列番号53に示す。)を用いて、実験例9と同様にして、604B1 iPS細胞のA*01:01アレル、A*24:02アレル、B*07:02アレル及びB*37:01アレルをノックアウトした。
続いて、iPS細胞を50ng/mLのIFN-γで48時間刺激してフローサイトメトリー解析を行い、HLA-A24抗原及びHLA-B7抗原の発現を検討した。図19(a)はフローサイトメトリーの結果を示すグラフである。図19(a)中、「No stain」は抗体で染色しなかったiPS細胞の解析結果であることを示し、「No transfection」はsgRNAを導入しなかったiPS細胞の解析結果であることを示し、「A-ex2-g1」及び「B-ex2-g1」は、これらのsgRNAを導入してHLA-Aアレル、HLA-Bアレルの双方をノックアウトしたiPS細胞の解析結果であることを示す。
続いて、HLA-A24抗原及びHLA-B7抗原の双方が陰性である細胞集団をソーティングして回収し、更に、HLA-A1抗原の発現を検討した。図19(b)はフローサイトメトリーの結果を示すグラフである。図19(b)中、「No stain」は抗体で染色しなかったiPS細胞の解析結果であることを示し、「HLA-A24,B7(-)sorted」はソートしたHLA-A24抗原及びHLA-B7抗原の双方が陰性である細胞集団の解析結果であることを示す。
続いて、HLA-A1抗原が陰性である細胞集団をソーティングして回収し、23株のサブクローンを回収した。続いて、各サブクローンからゲノムDNAを抽出した。続いて、使用したsgRNAの標的部位を含む領域をそれぞれ増幅するPCR反応を行った後、サンガーシーケンスにより7株の塩基配列を解析した。
図19(c)は、回収した各クローンの塩基変異パターンを示す図である。図19(c)中、「WT」は野生型の塩基配列であったことを示し、「-」は欠失変異を有していたことを示し、「+」は挿入変異を有していたことを示す。その結果、A*01:01アレル、A*24:02アレル、B*07:02アレル及びB*37:01アレルの全てに挿入欠失変異(Indel変異)が生じたクローンが6株得られたことが明らかとなった。代表例としてクローン#4の塩基配列を図19(d)に示す。
[実験例15]
(HLAアレル特異的ノックアウト9)
下記表19のHLAハプロタイプを持つ1383D2 iPS細胞のHLAアレルを破壊することにより、HLA-Aアレル、HLA-Bアレル、HLA-Cアレルの3遺伝子座全てをノックアウトした細胞を作製した。図20(a)は本実験例で使用したsgRNAの標的部位を示す図である。
sgRNAとして、HLA-Bアレル及びHLA-Cアレルの双方を標的とすることができるBC-ex2-g1(標的塩基配列を配列番号54に示す。)を用いて、実験例9と同様にして、1383D2 iPS細胞のB*15:02アレル、B*51:01アレル、C*08:01アレル及びC*14:02アレルをノックアウトした。
続いて、iPS細胞を50ng/mLのIFN-γで48時間刺激してフローサイトメトリー解析を行い、HLA-Bタンパク質及びHLA-Cタンパク質の発現を検討した。図20(b)はフローサイトメトリーの結果を示すグラフである。図20(b)中、「No stain」は抗体で染色しなかったiPS細胞の解析結果であることを示し、「No transfection」はsgRNAを導入しなかったiPS細胞の解析結果であることを示し、「BC-ex2-g1」は、このsgRNAを導入してHLA-Bアレル、HLA-Cアレルの双方をノックアウトしたiPS細胞の解析結果であることを示す。
続いて、HLA-Bタンパク質及びHLA-Cタンパク質の双方が陰性である細胞集団をソーティングして回収した。続いて、回収した細胞集団に、HLA-A遺伝子の両アレルを標的とすることができるA-ex3-g1(標的塩基配列を配列番号55に示す。)を導入し、A*02:07アレル及びA*32:01アレルをノックアウトした。
続いて、iPS細胞を50ng/mLのIFN-γで48時間刺激してフローサイトメトリー解析を行い、HLA-Aタンパク質、HLA-Bタンパク質及びHLA-Cタンパク質の発現を検討した。
図20(c)はフローサイトメトリーの結果を示すグラフである。図20(c)中、「No stain」は抗体で染色しなかったiPS細胞の解析結果であることを示し、「No transfection」はsgRNAを導入しなかったiPS細胞の解析結果であることを示し、「A-ex3-g1」は、このsgRNAを導入してHLA-AアレルをノックアウトしたiPS細胞の解析結果であることを示す。その結果、HLA-Aタンパク質、HLA-Bタンパク質及びHLA-Cタンパク質の全てが陰性である細胞集団の存在が確認された。
[実験例16]
(HLAアレルの改変)
下記表20のHLAハプロタイプを持つ1383D2 iPS細胞のA*02:07アレルを、ゲノム編集によりA*01:01アレルに改変する検討を行った。
まず、いずれもpiggyBacトランスポゾンベクターである、二重制御型Cas9発現ベクター及びsgRNA発現ベクターを、1383D2 iPS細胞に導入し、終濃度1~15μg/mLのピューロマイシン(Cat.No.29455-54、ナカライテスク)又は終濃度100~200μg/mLハイグロマイシンB(Cat.No.10687-010、サーモフィッシャーサイエンティフィック社)を用いた約5日間の薬剤選択により、染色体安定導入細胞集団を得た。
二重制御型Cas9発現ベクターは、発現誘導及び細胞内局在の双方を制御することができるCas9の発現ベクターである(Ishida et al., Site-specifc randomization of the endogenous genome by a regulatable CRISPR-Cas9 piggyBac system in human cells, Sci. Rep., 8: 310, 2018)。本実験例では、ドキシサイクリン(Dox)を細胞の培地に添加することにより、Cas9タンパク質とグルココルチコイド受容体(GR)との融合タンパク質(以下、「Cas9-GRタンパク質」という。)の発現を誘導することができ、細胞の培地にデキサメタゾン(Dex)を添加することにより、Cas9-GRを核内に移行させることができる二重制御型Cas9発現ベクターを使用した。また、sgRNAとしては、A0207-ex3-g1(標的塩基配列を配列番号3に示す。)を使用した。
図21(a)及び(b)は、本実験例による相同組換えを説明する模式図である。続いて、相同組換えを誘導するために、A*01:01アレルのエクソン1~3を含む領域をコードする一本鎖DNA(標的塩基配列を配列番号56に示す。)を作製した。
具体的には、まず、604B1 iPS細胞のゲノムDNAを鋳型として、A*01:01アレルのエクソン1の上流67塩基からエクソン3の下流1247塩基の部分を、下記表21に示すプライマーを用いたPCRで増幅し、pENTRプラスミドへと組み込み、pENTRベクターを作製した。
続いて、このプラスミドDNAをニッキングエンドヌクレアーゼNb.BsrDI酵素(型番「R0648S」、New England Biolabs社)で処理し、ホルムアミド変性条件下でアガロース電気泳動を行い、相当するDNAバンドを切り出して精製し、目的の一本鎖DNAドナー(lssDNA donor、配列番号56)を調製した。
続いて、1383D2 iPS細胞に、二本鎖DNA状態であるpENTRベクター(dsDNA donor)又は調製した一本鎖DNA(lssDNA donor、配列番号56)をそれぞれ導入し、Dox及びDexを、それぞれ終濃度2μM及び1μMで添加し、ゲノム編集による相同組換えを誘導した。
続いて、各iPS細胞を50ng/mLのIFN-γで48時間刺激してフローサイトメトリー解析を行い、HLA-A2抗原及びHLA-A1抗原の発現を検討した。
図21(c)は、フローサイトメトリーの結果を示すグラフである。図20(c)中、「No stain」は抗体で染色しなかったiPS細胞の解析結果であることを示し、「No Dox/Dex」はCas9発現を誘導しなかったiPS細胞の解析結果であることを示し、「dsDNA donor」は、二本鎖DNAのドナーを導入して相同組換えを誘導したiPS細胞の解析結果であることを示し、「lssDNA donor」は、一本鎖DNAのドナーを導入して相同組換えを誘導したiPS細胞の解析結果であることを示す。
その結果、A2抗原が陰性でA1抗原が陽性となった割合は、二本鎖DNAをドナーとして用いた場合は0.2%であったのに対し、一本鎖DNAをドナーとして用いた場合には1.6%であった。
続いて、一本鎖DNAドナーを用いた相同組換えによりA2抗原が陰性となり、かつA1抗原が陽性となった細胞集団をフローサイトメトリーでソーティングし、細胞集団のまま、及び単細胞ソーティング後のサブクローンについて、HLA-A遺伝子座の塩基配列を解析した。
図22(a)は、細胞集団のまま塩基配列を解析した結果を示す図である。図22(a)中、「Bulk」は細胞集団のまま解析した結果であることを示す。その結果、A*02:07遺伝子座の一部(特にエクソン2とエクソン3の5’側)がA*01:01遺伝子に改変された細胞が混在していることが明らかとなった。
また、図22(b)は、単細胞ソーティングした代表的なサブクローン(クローン#2)について塩基配列を解析した結果を示す図である。その結果、A*02:07遺伝子座の一部がA*01:01遺伝子に改変されたことが明らかとなった。
[実験例17]
(B2MノックアウトiPS細胞の作製1)
1383D2 iPS細胞にCas9を発現するプラスミドベクターとB2M特異的なsgRNAをトランスフェクションした。sgRNAとしては、B2M-g1(標的塩基配列を配列番号59に示す。)及びB2M-g2(標的塩基配列を配列番号60に示す。)を使用した。
続いて、50ng/mLのIFN-γで48時間刺激した細胞を抗HLA-ABC抗体で染色し、フローサイトメトリー解析を行った。
図23(a)はフローサイトメトリーの結果を示すグラフである。図23(a)中、「No stain」は抗体で染色しなかったiPS細胞の解析結果であることを示し、「No transfection」はsgRNAを導入しなかったiPS細胞の解析結果であることを示し、「B2M-g1」、「B2M-g2」は、このsgRNAを導入してB2MアレルをノックアウトしたiPS細胞の解析結果であることを示す。
その結果、HLA-Aタンパク質、HLA-Bタンパク質及びHLA-Cタンパク質の全てが陰性である細胞集団の割合は、sgRNAとしてB2M-g1(標的塩基配列を配列番号59に示す。)を使用した場合、2.8%であった。また、sgRNAとしてB2M-g2(標的塩基配列を配列番号60に示す。)を使用した場合、6.9%であった。
続いて、B2M-g2 sgRNAの導入により得られた、HLA-A、HLA-B及びHLA-Cの全てが陰性である細胞集団から単細胞ソーティングにより、クローン#1及び#2の2株のサブクローンを得た。
得られた2株のサブクローンを再びIFN-γで48時間刺激してフローサイトメトリー解析を行った。図23(b)はフローサイトメトリーの結果を示すグラフである。図23(b)中、「B2M-KO#1」はクローン#1の結果であることを示し、「B2M-KO#2」はクローン#2の結果であることを示す。その結果、いずれのクローンにおいても、HLA-A、HLA-B及びHLA-Cの全てが陰性であることが確認された。
続いて、クローン#1のB2M遺伝子をPCR増幅して塩基配列を確認し、挿入欠失変異(Indel変異)が導入されたことを確認した。図23(c)にクローン#1のB2Mアレルの塩基配列を示す。図23(c)中「WT」は野生型の塩基配列を示す。
[実験例18]
(B2MノックアウトiPS細胞の作製2)
604B1 iPS細胞に対し、実験例17と同様の操作を行い、B2Mアレルをノックアウトした。sgRNAとしては、B2M-g2(標的塩基配列を配列番号60に示す。)を使用した。
続いて、50ng/mLのIFN-γで48時間刺激した細胞を抗HLA-ABC抗体で染色し、フローサイトメトリー解析を行った。
図24(a)はフローサイトメトリーの結果を示すグラフである。図24(a)中、「No stain」は抗体で染色しなかったiPS細胞の解析結果であることを示し、「No transfection」はsgRNAを導入しなかったiPS細胞の解析結果であることを示し、「B2M-g2」は、このsgRNAを導入してB2Mアレルをノックアウトしたことを示す。その結果、HLA-Aタンパク質、HLA-Bタンパク質及びHLA-Cタンパク質の全てが陰性である細胞集団が得られたことが明らかとなった。
続いて、HLA-A、HLA-B及びHLA-Cの全てが陰性である細胞集団から単細胞ソーティングにより、クローン#1、#2、#3及び#4の4株のサブクローンを得た。
続いて、これらのサブクローンのB2M遺伝子をPCR増幅して塩基配列を確認した。図24(b)は塩基配列の解析結果を示す図である。その結果、いずれのサブクローンにおいても挿入欠失変異(Indel変異)が導入されたことが確認された。
[実験例19]
(T細胞活性化試験1)
(1)下記表22のHLAハプロタイプを持つ604B1 iPS細胞、(2)実験例8で作製した、604B1 iPS細胞のA*01:01アレル及びB*07:02アレルをノックアウトしたクローン#8、(3)同クローン#10、(4)下記表23のHLAハプロタイプを持つ1383D2 iPS細胞、(5)実験例18で作製した、B2Mアレルをノックアウトした604B1 iPS細胞(クローン#1)を、それぞれ胚様体(EB)由来血球様細胞に分化誘導した。
続いて、下記表24のHLAハプロタイプを持つ末梢血単核球細胞(PBMC、型式「LP_194」、CTL社、上述したレシピエントAに相当する。)からソーティングにより回収したCD8陽性T細胞をCFSE(ケイマンケミカル社)で染色し、IL-2及びIFN-γの存在下で上記の(1)~(5)の各細胞から分化させたEB由来血球様細胞と8日間共培養した。
共培養後にフローサイトメトリー解析を行い、CFSEの蛍光を検討した。図25(a)~(e)はフローサイトメトリーの結果を示すグラフである。図25(a)~(e)は、それぞれ、上記(1)~(5)の各細胞から分化させたEB由来血球様細胞と共培養したCD8陽性T細胞の結果である。その結果、各iPS細胞のHLA抗原を特異的に認識するT細胞集団だけが増殖し、CFSEが陰性となったことが確認された。
[実験例20]
(T細胞活性化試験2)
(1)下記表25のHLAハプロタイプを持つ585A1 iPS細胞、(2)実験例9で作製した、585A1 iPS細胞のB*07:02アレル及びC*07:02アレルをノックアウトしたクローン#2、(3)同クローン#11、(4)同クローン#26、(5)下記表26のHLAハプロタイプを持つ1383D2 iPS細胞、(6)実験例18で作製した、B2Mをノックアウトした604B1 iPS細胞(クローン#1)を、それぞれEB由来血球様細胞に分化誘導した。
続いて、下記表27のHLAハプロタイプを持つ末梢血単核球細胞(PBMC、型式「2010113203」、Wako社、上述したレシピエントBに相当する。)からソーティングにより回収したCD8陽性T細胞をCFSE(ケイマンケミカル社)で染色し、IL-2及びIFN-γの存在下で上記の(1)~(6)の各細胞から分化させたEB由来血球様細胞と8日間共培養した。
共培養後にフローサイトメトリー解析を行い、CFSEの蛍光を検討した。図26(a)~(f)はフローサイトメトリーの結果を示すグラフである。図26(a)~(f)は、それぞれ、上記(1)~(6)の各細胞から分化させたEB由来血球様細胞と共培養したCD8陽性T細胞の結果である。その結果、各iPS細胞のHLA抗原を特異的に認識するT細胞集団が増殖し、CFSEが陰性となったことが確認された。
[実験例21]
(T細胞活性化試験3)
(1)下記表28のHLAハプロタイプを持つ604B1 iPS細胞、(2)実験例11で作製した、604B1 iPS細胞のA*01:01アレル、B*37:01アレル及びC*06:02アレルをノックアウトしたクローン#3-11、(3)同クローン#3-12、(4)下記表29のHLAハプロタイプを持つ1383D2 iPS細胞、(5)実験例18で作製した、B2Mをノックアウトした604B1 iPS細胞(クローン#1)を、それぞれEB由来血球様細胞に分化誘導した。
続いて、下記表30のHLAハプロタイプを持つ末梢血単核球細胞(PBMC、型式「LP_266」、CTL社、上述したレシピエントCに相当する。)からソーティングにより回収したCD8陽性T細胞をCFSE(ケイマンケミカル社)で染色し、IL-2及びIFN-γの存在下で上記の(1)~(5)の各細胞から分化させたEB由来血球様細胞と8日間共培養した。
共培養後にフローサイトメトリー解析を行い、CFSEの蛍光を検討した。図27(a)~(e)はフローサイトメトリーの結果を示すグラフである。図27(a)~(e)は、それぞれ、上記(1)~(5)の各細胞から分化させたEB由来血球様細胞と共培養したCD8陽性T細胞の結果である。その結果、各iPS細胞のHLA抗原を特異的に認識するT細胞集団が増殖し、CFSEが陰性となったことが確認された。
[実験例22]
(HLA抗原反応性CD8陽性T細胞の調製)
604B1 iPS細胞のHLA抗原に反応性を有するCD8陽性T細胞を調製した。末梢血単核球細胞(PBMC)由来のT細胞には、多様な抗原を認識するT細胞が混在している。これらのT細胞のうち、604B1 iPS細胞のHLA抗原に反応性を有するCD8陽性T細胞を刺激して増殖させ、回収した。
図28は本実験例の手順を示す模式図である。図28に示すように、まず、604B1 iPS細胞をEB由来血球様細胞に分化させた。EB由来血球様細胞はCD45陽性白血球細胞を含む。続いて、PBMCに含まれるCD8陽性T細胞をCFSE(ケイマンケミカル社)で染色し、IL-2及びIFN-γの存在下で604B1 iPS細胞から分化させたEB由来血球様細胞と8日間共培養した。
続いて、共培養後にフローサイトメトリー解析を行い、CFSEの蛍光を検討した。図29(a)~(e)はフローサイトメトリーの結果を示すグラフである。
図29(a)はPBMC細胞集団を他家(アロ)であるPBMC細胞集団と共培養した結果を示し、図29(b)はPBMC細胞集団を604B1 iPS細胞から分化させたEB由来血球様細胞と共培養した結果を示し、図29(c)はPBMC細胞集団のみを培養した結果を示し、図29(d)はPBMC細胞集団からソーティングにより回収したCD8陽性T細胞を604B1 iPS細胞から分化させたEB由来血球様細胞と共培養した結果を示し、図29(e)はPBMC細胞集団からソーティングにより回収したCD8陽性T細胞のみを培養した結果を示す。その結果、不適合であるHLA抗原を特異的に認識するT細胞集団が増殖し、CFSEが陰性となったことが確認された。
続いて、図29(d)に示す、CFSEが陰性となったCD8陽性T細胞をソーティングして回収し、604B1 iPS細胞のHLA抗原に反応性を有するT細胞を得た。
[実験例23]
(T細胞傷害性試験1)
図30は、本実験例の手順を示す模式図である。まず、(1)下記表31のHLAハプロタイプを持つ604B1 iPS細胞、(2)実験例8で作製した、604B1 iPS細胞のA*01:01アレル及びB*07:02アレルをノックアウトしたクローン#8、(3)同クローン#10、(4)実験例17で作製した、B2Mをノックアウトした1383D2 iPS細胞(クローン#1)を、それぞれ心筋細胞に分化誘導した。
続いて、各心筋細胞をIFN-γで刺激し、HLAタンパク質の発現を誘導した。続いて、後述する51Crリリースアッセイを行うために、培地に51Cr(クロム)を添加して各心筋細胞に取り込ませた。
続いて、各心筋細胞の培地に、実験例22で調製した604B1 iPS細胞のHLA抗原に反応性を有するCD8陽性T細胞を様々な割合で添加し、各心筋細胞が攻撃されたか否かを検討した。すなわち、エフェクター細胞として実験例22で調製したHLA抗原反応性CD8T細胞を、ターゲット細胞として上述したiPS細胞由来心筋細胞を使用した。添加するCD8陽性T細胞数の割合は、心筋細胞1に対して、0.625、1.25、2.5、5、10とした。
心筋細胞がCD8陽性細胞に攻撃されると、細胞が傷害を受け、細胞内から51Crが放出される。そこで、培地中に放出された51Crを測定することにより、各心筋細胞が攻撃されたか否かを判断することができる。これを51Crリリースアッセイという。51Crでラベル後、何も処理しなかった心筋細胞の上清に含まれる51Crの量を0%Specific Lysisと定義し、界面活性剤(Triton-X)によって51Crでラベルした心筋細胞を処理して死滅させた際に上清中に放出された51Crの量から、通常の培地で51Crラベル心筋細胞を培養した際に上清中に放出された51Crの量引いた値を100%Specific Lysisと定義した。
図31は、各心筋細胞が傷害を受けて溶解した割合を示すグラフである。図31中、「*」は、P<0.05で有意差が存在することを示し、「Non-edited」は、上記(1)の604B1 iPS細胞から分化誘導した心筋細胞の結果であることを示し、「A1-B7-#8」は、上記(2)のクローン#8から分化誘導した心筋細胞の結果であることを示し、「A1-B7-#10」は、上記(3)のクローン#10から分化誘導した心筋細胞の結果であることを示し、「1383D2-B2M-#1」は、上記(4)のB2Mをノックアウトした1383D2 iPS細胞(クローン#1)から分化誘導した心筋細胞の結果であることを示す。
その結果、604B1 iPS細胞から分化誘導した心筋細胞は、エフェクターCD8陽性T細胞の割合を上昇させると傷害の程度が上昇することが明らかとなった。
これに対し、B2Mをノックアウトした1383D2 iPS細胞から分化誘導した心筋細胞は、エフェクターCD8陽性T細胞の割合を上昇させても傷害を受けないことが明らかとなった。同様に、604B1 iPS細胞のA*01:01アレル及びB*07:02アレルをノックアウトした、クローン#8及び#10から分化誘導した心筋細胞は、エフェクターCD8陽性T細胞の割合を上昇させても傷害を受けないことが明らかとなった。
この結果は、iPS細胞のHLAアレルを破壊することにより、分化誘導して他家移植した場合の拒絶反応を低減させることができることを示す。
また、上記の(2)~(4)の各iPS細胞を心筋細胞に分化誘導できたことは、IFN-γ処理により、多能性幹細胞の多能性を維持したまま、HLAタンパク質の発現を誘導することができることを示す。
[実験例24]
(T細胞傷害性試験2)
実験例23と同様の(1)~(4)のiPS細胞をEB由来血球様細胞に分化誘導し、51Crリリースアッセイを行った。
まず、(1)604B1 iPS細胞、(2)実験例7で作製した、604B1 iPS細胞のA*01:01アレル及びB*07:02アレルをノックアウトしたクローン#8、(3)同クローン#10、(4)実験例18で作製した、B2Mをノックアウトした604B1 iPS細胞(クローン#1)を、それぞれEB由来血球様細胞に分化誘導した。なお、EB由来血球様細胞は血球細胞を含む。
続いて、各EB由来血球様細胞の培地に、実験例22で調製した604B1 iPS細胞のHLA抗原に反応性を有するCD8陽性T細胞を様々な割合で添加し、各EB由来血球様細胞が攻撃されたか否かを検討した。すなわち、エフェクター細胞として実験例21で調製したHLA抗原反応性CD8T細胞を、ターゲット細胞として上述した各EB由来血球様細胞を使用した。添加するCD8陽性T細胞数の割合は、EB由来血球様細胞1に対して、0.625、1.25、2.5、5、10、20とした。
図32は、各EB由来血球様細胞が傷害を受けて溶解した割合を示すグラフである。図32中、「*」は、P<0.05で有意差が存在することを示し、「Non-edited」は、上記(1)の604B1 iPS細胞から分化誘導したEB由来血球様細胞の結果であることを示し、「A1-B7-#8」は、上記(2)のクローン#8から分化誘導したEB由来血球様細胞の結果であることを示し、「A1-B7-#10」は、上記(3)のクローン#10から分化誘導したEB由来血球様細胞の結果であることを示し、「604B1-B2M-#1」は、上記(4)のB2Mをノックアウトした604B1 iPS細胞(クローン#1)から分化誘導したEB由来血球様細胞の結果であることを示す。
その結果、604B1 iPS細胞から分化誘導したEB由来血球様細胞は、エフェクターCD8陽性T細胞の割合を上昇させると傷害の程度が上昇することが明らかとなった。
これに対し、B2Mをノックアウトした604B1 iPS細胞から分化誘導したEB由来血球様細胞は、エフェクターCD8陽性T細胞の割合を上昇させても傷害を受けないことが明らかとなった。同様に、604B1 iPS細胞のA*01:01アレル及びB*07:02アレルをノックアウトした、クローン#8及び#10から分化誘導したEB由来血球様細胞は、エフェクターCD8陽性T細胞の割合を上昇させても傷害を受けないことが明らかとなった。
この結果は、iPS細胞のHLAアレルを破壊することにより、分化誘導して他家移植した場合の拒絶反応を低減させることができることを示す。
また、上記の(2)~(4)の各iPS細胞をEB由来血球様細胞に分化誘導できたことは、IFN-γ処理により、多能性幹細胞の多能性を維持したまま、HLAタンパク質の発現を誘導することができることを示す。
[実験例25]
(T細胞傷害性試験3)
実験例24とは異なるiPS細胞を用いた点以外は実験例24と同様の検討を行った。まず、(1)下記表32のHLAハプロタイプを持つ585A1 iPS細胞、(2)実験例9で作製した、585A1 iPS細胞のB*07:02アレルおよびC*07:02アレルをノックアウトしたクローン#2、(3)同クローン#11、(4)同クローン#26、(5)実験例18で作製した、B2Mをノックアウトした604B1 iPS細胞(クローン#1)を、それぞれEB由来血球様細胞に分化誘導した。なお、EB由来血球様細胞は血球細胞を含む。
続いて、各EB由来血球様細胞の培地に、下記表33のHLAハプロタイプを持つ末梢血単核球細胞(PBMC、型式「2010113203」、Wako社、上述したレシピエントBに相当する。)由来のエフェクターCD8陽性T細胞を様々な割合で添加し、各EB由来血球様細胞が攻撃されたか否かを検討した。エフェクター細胞として、実験例20の図26(a)に示す、CFSEが陰性となったPBMC中のCD8陽性T細胞をソーティングして用いた。また、ターゲット細胞が上述した各EB由来血球様細胞である。添加するエフェクターCD8陽性T細胞数の割合は、EB由来血球様細胞1に対して、0.625、1.25、2.5、5、10、20とした。
図33は、各EB由来血球様細胞が傷害を受けて溶解した割合を示すグラフである。図33中、「*」は、P<0.05で有意差が存在することを示し、「Non-edited」は、上記(1)の585A1 iPS細胞から分化誘導したEB由来血球様細胞の結果であることを示し、「B7-C7-#2」は、上記(2)のクローン#2から分化誘導したEB由来血球様細胞の結果であることを示し、「B7-C7-#11」は、上記(3)のクローン#11から分化誘導したEB由来血球様細胞の結果であることを示し、「B7-C7-#26」は、上記(4)のクローン#26から分化誘導したEB由来血球様細胞の結果であることを示し、「604B1-B2M-#1」は、上記(5)のB2Mをノックアウトした604B1 iPS細胞(クローン#1)から分化誘導したEB由来血球様細胞の結果であることを示す。
その結果、585A1 iPS細胞から分化誘導したEB由来血球様細胞は、エフェクターCD8陽性T細胞の割合を上昇させると傷害の程度が上昇することが明らかとなった。
これに対し、B2Mをノックアウトした604B1 iPS細胞から分化誘導したEB由来血球様細胞は、エフェクターCD8陽性T細胞の割合を上昇させても傷害を受けないことが明らかとなった。同様に、585A1 iPS細胞のB*07:02アレル及びC*07:02アレルをノックアウトした、クローン#2、#11及び#26から分化誘導したEB由来血球様細胞は、エフェクターCD8陽性T細胞の割合を上昇させても傷害を受けないことが明らかとなった。
この結果は、iPS細胞のHLAアレルを破壊することにより、分化誘導して他家移植した場合の拒絶反応を低減させることができることを示す。
また、上記の(2)~(5)の各iPS細胞をEB由来血球様細胞に分化誘導できたことは、IFN-γ処理により、多能性幹細胞の多能性を維持したまま、HLAタンパク質の発現を誘導することができることを示す。
[実験例26]
(T細胞傷害性試験4)
下記表34のHLAハプロタイプを持つ604B1 iPS細胞、及び、実験例18で作製した、B2Mをノックアウトした604B1 iPS細胞(クローン#1)を、下記表35のHLAハプロタイプを持つ末梢血単核球細胞(PBMC、型式「LP_266」、CTL社、上述したレシピエントCに相当する。)をCFSE(ケイマンケミカル社)でラベリングしたものと混合し、7日間共培養した。
共培養後にフローサイトメトリー解析を行い、CFSEの蛍光を検討した。図34(a)及び(b)はフローサイトメトリーの結果を示すグラフである。図34(a)及び(b)中、「604B1-B2M-#1」は、B2Mをノックアウトした604B1 iPS細胞(クローン#1)と共培養したPBMCの結果であることを示し、「604B1」は、604B1 iPS細胞と共培養したPBMCの結果であることを示す。
その結果、図34(a)に示すように、B2Mをノックアウトした604B1 iPS細胞(クローン#1)と共培養したPBMCには、CD8陽性、CSFE陰性のT細胞が11.3%含まれていた。また、図34(b)に示すように、604B1 iPS細胞と共培養したPBMCには、CD8陽性、CSFE陰性のT細胞が21.3%含まれていた。続いて、図34(b)に示す、604B1 iPS細胞と共培養したPBMCから、CD8陽性かつCSFE陰性の細胞を、エフェクターCD8陽性T細胞としてソーティングして回収した。
続いて、(1)604B1 iPS細胞、(2)実験例11で作製した、604B1 iPS細胞のA*01:01アレル、B*37:01アレルおよびC*06:02アレルをノックアウトしたクローン#3-11、(3)同クローン#3-12を、それぞれEB由来血球様細胞に分化誘導した。なお、EB由来血球様細胞は血球細胞を含む。
続いて、各EB由来血球様細胞の培地に、回収したエフェクターCD8陽性T細胞を様々な割合で添加し、各EB由来血球様細胞が攻撃されたか否かを検討した。すなわち、ターゲット細胞が上記(1)~(3)の各細胞から分化誘導したEB由来血球様細胞である。添加するエフェクターCD8陽性T細胞数の割合は、EB由来血球様細胞1に対して、0.625、1.25、2.5、5、10、20とした。
図34(c)は、各EB由来血球様細胞が傷害を受けて溶解した割合を示すグラフである。図34(c)中、「*」は、P<0.05で有意差が存在することを示し、「Non-edited」は、上記(1)の604B1 iPS細胞から分化誘導したEB由来血球様細胞の結果であることを示し、「A1-B37-C6-#3-11」は、上記(2)のクローン#3-11から分化誘導したEB由来血球様細胞の結果であることを示し、「A1-B37-C6-#3-12」は、上記(3)のクローン#3-12から分化誘導したEB由来血球様細胞の結果であることを示す。
その結果、604B1 iPS細胞から分化誘導したEB由来血球様細胞は、エフェクターCD8陽性T細胞の割合を上昇させると傷害の程度が上昇することが明らかとなった。
これに対し、604B1 iPS細胞のA*01:01アレル、B*37:01アレルおよびC*06:02アレルをノックアウトした、クローン#3-11及び#3-12から分化誘導したEB由来血球様細胞は、エフェクターCD8陽性T細胞の割合を上昇させても傷害を受けないことが明らかとなった。
この結果は、iPS細胞のHLAアレルを破壊することにより、分化誘導して他家移植した場合の拒絶反応を低減させることができることを示す。
また、上記の(2)~(3)の各iPS細胞をEB由来血球様細胞に分化誘導できたことは、IFN-γ処理により、多能性幹細胞の多能性を維持したまま、HLAタンパク質の発現を誘導することができることを示す。
[実験例27]
(NK細胞反応性試験1)
(1)下記表36のHLAハプロタイプを持つ604B1 iPS細胞、(2)実験例8で作製した、604B1 iPS細胞のA*01:01アレル及びB*07:02アレルをノックアウトしたクローン#8、(3)同クローン#10、(4)下記表37のHLAハプロタイプを持つ1383D2 iPS細胞、(5)実験例18で作製した、B2Mをノックアウトした604B1 iPS細胞(クローン#1)を、それぞれEB由来血球様細胞に分化させた。なお、EB由来血球様細胞はCD45陽性白血球細胞を含む。
また、下記表38のHLAハプロタイプを持つPBMC(型式「LP_194」、CTL社、上述したレシピエントAに相当する。)からCD56陽性細胞(NK細胞)をソーティングにより回収した。続いて、回収したNK細胞を、抗CD107a抗体の存在下で、分化させた各CD45陽性白血球細胞と共培養した。この結果、NK細胞が活性化するとCD107a陽性となる。共培養後にフローサイトメトリー解析を行い、活性化したNK細胞の割合を測定した。
図35(a)~(g)は、フローサイトメトリー解析の結果を示すグラフである。図35(a)はNK細胞のみを培養して解析した結果である。図35(b)は604B1 iPS細胞から分化誘導したEB由来血球様細胞と共培養したNK細胞を解析した結果である。図35(c)は604B1 iPS細胞のA*01:01アレル及びB*07:02アレルをノックアウトしたクローン#8から分化誘導したEB由来血球様細胞と共培養したNK細胞を解析した結果である。図35(d)は同クローン#10から分化誘導したEB由来血球様細胞と共培養したNK細胞を解析した結果である。図35(e)は1383D2 iPS細胞から分化誘導したEB由来血球様細胞と共培養したNK細胞を解析した結果である。図35(f)はB2Mをノックアウトした604B1 iPS細胞から分化誘導したEB由来血球様細胞と共培養したNK細胞を解析した結果である。図35(g)は、陽性対照として、HLA抗原を発現していないことが知られているK562細胞と共培養したNK細胞を解析した結果である。
その結果、K562細胞と共培養したNK細胞は、5.9%が活性化したことが明らかとなった。また、HLA抗原を発現していない、B2Mをノックアウトした604B1 iPS細胞から分化誘導したEB由来血球様細胞と共培養したNK細胞は、3.2%が活性化したことが明らかとなった。
これに対し、604B1 iPS細胞のA*01:01アレル及びB*07:02アレルをノックアウトしたクローン#8及び#10では、もう片方のA*24:02アレルとB*37:01アレルの発現が残っており、そこから分化誘導したEB由来血球様細胞と共培養したNK細胞は、活性化が抑制されたことが明らかとなった。
すなわち、B2Mをノックアウトした細胞は、NK細胞に有意に攻撃されるのに対し、一部のHLAアレルを残存させた細胞は、NK細胞による攻撃を回避することができることが明らかとなった。
[実験例28]
(多能性確認試験1)
1383D2 iPS細胞及び604B1 iPS細胞について、(1)未処理の状態、(2)50ng/mLのIFN-γで48時間処理した直後、及び(3)50ng/mLのIFN-γで48時間処理してから5日後、の各細胞をそれぞれ用意し、mRNAを抽出した。続いて、Rever Tra Ase qPCR RT Master Mix(Toyobo社)を用いてcDNAを合成後、多能性幹細胞で特異的に発現しているヒトNANOG cDNAを増幅するプライマー、及び、mRNA総量のコントロールとして、ヒトACTB cDNAを増幅するプライマーを用いて、定量PCRを行った。
ヒトNANOG cDNAの増幅に用いたプライマー、及び、ヒトACTB cDNAの増幅に用いたプライマーを下記表39に示す。
図36はNANOG遺伝子の発現量を測定した定量PCRの結果を示すグラフである。NANOG遺伝子の発現量を、「未処理」の1383D2細胞における、ACTB遺伝子に対するNANOG遺伝子の発現量を1とした相対値として示した。
図36中、「未処理」はIFN-γで処理せず、通常の未分化維持条件で培養したiPS細胞の結果であることを示し、「IFN直後」はIFN-γで48時間処理した直後の細胞の結果であることを示し、「5日後」はIFN-γで48時間処理してから5日後の細胞の結果であることを示す。
その結果、多能性マーカーとして広く用いられているNANOGの発現量は、iPS細胞をIFN-γで48時間処理しても低下しないことが明らかとなった。この結果は、iPS細胞をIFN-γで処理しても多能性が維持されることを示す。
[実験例29]
(多能性確認試験2)
(1)604B1 iPS細胞、(2)実験例11で作製した604B1 iPS細胞のA*01:01アレル、B*37:01アレル、C*06:02アレルを破壊したクローン#3-11、(3)同クローン#3-12、(4)実験例18で作製した604B1 iPS細胞のB2M遺伝子を破壊したクローン#1、(5)1383D2 iPS細胞、(6)実験例17で作製した1383D2 iPS細胞のB2M遺伝子を破壊したクローン#1を、それぞれ未分化維持条件下で培養し、各細胞の形態を位相差顕微鏡で観察した。
未分化維持条件での培養は、培地にAK03N培地(StemFit、Ajinomoto社)を用い、細胞マトリックスに、型式「iMatrix-511」(Nippi社)を用いて行った。
図37(a)~(f)は、それぞれ上記(1)~(5)の各細胞を位相差顕微鏡で撮影した写真である。スケールバーは1mmである。
その結果、HLAアレルやB2Mアレルを破壊し、IFN-γ処理を行ったiPS細胞も、未分化多能性幹細胞に特徴的な扁平コロニーを形成して増殖することが明らかとなった。この結果は、iPS細胞をIFN-γで処理しても多能性が維持されていることを示す。この結果はまた、iPS細胞のHLAアレルやB2Mアレルを破壊しても多能性が維持されていることを示す。
[実験例30]
(多能性確認試験3)
(1)604B1 iPS細胞、(2)実験例11で作製した604B1 iPS細胞のA*01:01アレル、B*37:01アレル、C*06:02アレルを破壊したクローン#3-11、(3)同クローン#3-12、(4)実験例18で作製した604B1 iPS細胞のB2M遺伝子を破壊したクローン#1、(5)1383D2 iPS細胞、(6)実験例17で作製した1383D2 iPS細胞のB2M遺伝子を破壊したクローン#1を、それぞれ血球分化誘導条件下で培養し、EB由来血球様細胞の形態を位相差顕微鏡で観察した。
iPS細胞の血球分化誘導は次のようにして行った、まず、未分化iPS細胞を超低接着培養プレート(Corning社)に播種し、Y-27633を含むAK03N培地でEB(胚葉体)を2日間形成させた。続いて、ヒトbFGF(オリエンタル酵母社)、ヒトVEGF(R&D Systems社)、ITS(Insulin-Transferrin-Selenium、サーモフィッシャーサイエンティフィック社)、GlutaMax-I(サーモフィッシャーサイエンティフィック社)、L-ascorbic acid 2- phosphate sesquimagnesium salt hydrate(Sigma社)、1-Thioglycerol(MTG、ナカライテスク社)及びヒトBMP4(R&D Systems社)を含むStemPro-34 SFM培地(サーモフィッシャーサイエンティフィック社)で更に3日間培養した後、ヒトBMP4を除去し、ヒトSCFを添加して2日間培養した。続いて、ヒトFlt3-Ligand(Peprotech社)及びヒトTPO(Peprotech社)を加えて培養した。その結果、EB由来血球様細胞が生成された。
図38(a)~(f)は、それぞれ分化誘導22日目の上記(1)~(5)の各EB由来血球様細胞を位相差顕微鏡で撮影した写真である。スケールバーは1mmである。
その結果、HLAアレルやB2Mアレルを破壊し、IFN-γ処理を行ったiPS細胞も、血球様細胞へと分化誘導が可能であることが明らかとなった。この結果は、iPS細胞をIFN-γで処理しても多能性が維持されていることを示す。この結果はまた、iPS細胞のHLAアレルやB2Mアレルを破壊しても多能性が維持されていることを示す。
[実験例31]
(T細胞傷害性試験5)
(1)実験例17で作製した、下記表40のHLAハプロタイプを持つ1383D2 iPS細胞のB2Mアレルをノックアウトした細胞(クローン#1)、(2)下記表41のHLAハプロタイプを持つ585A1 iPS細胞を、CFSE(ケイマンケミカル社)で染色し、下記表42のHLAハプロタイプを持つ末梢血単核球細胞(PBMC、型式「LP_275」、CTL社)と7日間共培養した。
共培養後にフローサイトメトリー解析を行い、CFSEの蛍光を検討した。図39(a)及び(b)はフローサイトメトリーの結果を示すグラフである。図39(a)及び(b)中、「1383D2 B2M-KO#1」は、B2Mをノックアウトした1383D2 iPS細胞(クローン#1)と共培養したPBMCの結果であることを示し、「585A1-WT」は、585A1 iPS細胞と共培養したPBMCの結果であることを示す。
その結果、図39(a)に示すように、B2Mをノックアウトした1383D2 iPS細胞(クローン#1)と共培養したPBMCには、CD8陽性、CSFE陰性のT細胞が存在しなかった。また、図39(b)に示すように、585A1 iPS細胞と共培養したPBMCには、活性化されてCSFE陰性となったCD8陽性T細胞が24.4%含まれていた。続いて、図39(b)に示す、585A1 iPS細胞と共培養したPBMCから、CD8陽性かつCSFE陰性の細胞を、エフェクターCD8陽性T細胞としてソーティングして回収した。
続いて、(1)585A1 iPS細胞、(2)実験例13で作製した、585A1 iPS細胞のA*24:02アレル、B*07:02アレル、B*52:01アレル、及びC*12:02アレルをノックアウトしたクローン#3-1、(3)同クローン#3-3、(4)後述する実験例46で作製した、585A1 iPS細胞のB2Mアレルをノックアウトした細胞(サブクローニングしていないバルクの細胞)を、それぞれEB由来血球様細胞に分化誘導した。なお、EB由来血球様細胞は血球細胞を含む。
続いて、各EB由来血球様細胞の培地に、回収したエフェクターCD8陽性T細胞を様々な割合で添加し、各EB由来血球様細胞が攻撃されたか否かを検討した。すなわち、ターゲット細胞が上記(1)~(4)の各細胞から分化誘導したEB由来血球様細胞である。添加するエフェクターCD8陽性T細胞数の割合は、EB由来血球様細胞1に対して、0.625、1.25、2.5、5、10、20とした。
図39(c)は、各EB由来血球様細胞が傷害を受けて溶解した割合を示すグラフである。図39(c)中、「**」はP<0.01で有意差が存在することを示し、「WT」は上記(1)の585A1 iPS細胞から分化誘導したEB由来血球様細胞の結果であることを示し、「C7#3-1」は上記(2)のクローン#3-1から分化誘導したEB由来血球様細胞の結果であることを示し、「C7#3-3」は上記(3)のクローン#3-3から分化誘導したEB由来血球様細胞の結果であることを示し、「B2M-」は上記(4)の585A1 iPS細胞のB2Mアレルをノックアウトした細胞から分化誘導したEB由来血球様細胞の結果であることを示す。
その結果、585A1 iPS細胞から分化誘導したEB由来血球様細胞は、エフェクターCD8陽性T細胞の割合を上昇させると傷害の程度が上昇することが明らかとなった。
これに対し、585A1 iPS細胞のA*24:02アレル、B*07:02アレル、B*52:01アレル、及びC*12:02アレルをノックアウトした、クローン#3-1及び#3-3から分化誘導したEB由来血球様細胞、及び、585A1 iPS細胞のB2Mアレルをノックアウトした細胞から分化誘導したEB由来血球様細胞は、エフェクターCD8陽性T細胞の割合を上昇させても傷害を受けないことが明らかとなった。
この結果は、iPS細胞のHLAアレルを破壊することにより、分化誘導して他家移植した場合の拒絶反応を低減させることができることを更に支持するものである。
[実験例32]
(T細胞傷害性試験6)
(1)実験例17で作製した、下記表43のHLAハプロタイプを持つ1383D2 iPS細胞のB2Mアレルをノックアウトした細胞(クローン#1)、(2)下記表44のHLAハプロタイプを持つ585A1 iPS細胞を、下記表45のHLAハプロタイプを持つ末梢血単核球細胞(PBMC、型式「LP_329」、CTL社)をCFSE(ケイマンケミカル社)で染色したものと7日間共培養した。
共培養後にフローサイトメトリー解析を行い、CFSEの蛍光を検討した。図40(a)及び(b)はフローサイトメトリーの結果を示すグラフである。図40(a)及び(b)中、「1383D2 B2M-KO#1」はB2Mをノックアウトした1383D2 iPS細胞(クローン#1)と共培養したPBMCの結果であることを示し、「585A1-WT」は585A1 iPS細胞と共培養したPBMCの結果であることを示す。
その結果、図40(a)に示すように、B2Mをノックアウトした1383D2 iPS細胞(クローン#1)と共培養したPBMCには、CD8陽性、CSFE陰性のT細胞が存在しなかった。また、図40(b)に示すように、585A1 iPS細胞と共培養したPBMCには、活性化されてCSFE陰性となったCD8陽性T細胞が11.7%含まれていた。続いて、図40(b)に示す、585A1 iPS細胞と共培養したPBMCから、CD8陽性かつCSFE陰性の細胞を、エフェクターCD8陽性T細胞としてソーティングして回収した。
続いて、(1)585A1 iPS細胞、(2)実験例13で作製した、585A1 iPS細胞のA*24:02アレル、B*07:02アレル、B*52:01アレル、及びC*12:02アレルをノックアウトしたクローン#3-1、(3)同クローン#3-3、(4)後述する実験例46で作製した、585A1 iPS細胞のB2Mアレルをノックアウトした細胞(サブクローニングしていないバルクの細胞)を、それぞれEB由来血球様細胞に分化誘導した。なお、EB由来血球様細胞は血球細胞を含む。
続いて、各EB由来血球様細胞の培地に、回収したエフェクターCD8陽性T細胞を様々な割合で添加し、各EB由来血球様細胞が攻撃されたか否かを検討した。すなわち、ターゲット細胞が上記(1)~(4)の各細胞から分化誘導したEB由来血球様細胞である。添加するエフェクターCD8陽性T細胞数の割合は、EB由来血球様細胞1に対して、0.625、1.25、2.5、5、10、20とした。
図40(c)は、各EB由来血球様細胞が傷害を受けて溶解した割合を示すグラフである。図40(c)中、「**」はP<0.01で有意差が存在することを示し、「WT」は上記(1)の585A1 iPS細胞から分化誘導したEB由来血球様細胞の結果であることを示し、「C7#3-1」は上記(2)のクローン#3-1から分化誘導したEB由来血球様細胞の結果であることを示し、「C7#3-3」は上記(3)のクローン#3-3から分化誘導したEB由来血球様細胞の結果であることを示し、「B2M-」は上記(4)の585A1 iPS細胞のB2Mアレルをノックアウトした細胞から分化誘導したEB由来血球様細胞の結果であることを示す。
その結果、585A1 iPS細胞から分化誘導したEB由来血球様細胞は、エフェクターCD8陽性T細胞の割合を上昇させると傷害の程度が上昇することが明らかとなった。
これに対し、585A1 iPS細胞のA*24:02アレル、B*07:02アレル、B*52:01アレル、及びC*12:02アレルをノックアウトした、クローン#3-1及び#3-3から分化誘導したEB由来血球様細胞、及び、1383D2 iPS細胞のB2Mアレルをノックアウトした細胞から分化誘導したEB由来血球様細胞は、エフェクターCD8陽性T細胞の割合を上昇させても傷害を受けないことが明らかとなった。
この結果は、iPS細胞のHLAアレルを破壊することにより、分化誘導して他家移植した場合の拒絶反応を低減させることができることを更に支持するものである。
[実験例33]
(細胞移植実験1)
(1)585A1 iPS細胞、(2)実験例13で作製した、585A1 iPS細胞のA*24:02アレル、B*07:02アレル、B*52:01アレル、及びC*12:02アレルをノックアウトしたクローン#3-1を、それぞれEB由来血球様細胞に分化誘導した。続いて、各EB由来血球様細胞をルシフェラーゼでラベルした。
続いて、実験開始の1時間前に、腹腔内投与により、免疫不全マウス(NOD.Cg-Rag1tm1MomIl2rgtm1Wjl/SzJ(NRG)、The Jackson Laboratory社)に各細胞をそれぞれ移植した。続いて、実験開始時に、実験例32と同様にして調製した、末梢血単核球細胞(PBMC、型式「LP_329」、CTL社)由来のエフェクターCD8陽性T細胞又は培地(対照)を更に腹腔内投与した。
続いて、細胞移植時(T細胞注射前)、実験開始から5時間後、1日後、3日後、7日後に、各マウスにルシフェラーゼの基質であるルシフェリンを投与し、IVISイメージングシステム(商品名「IVIS Spectrum」、SPI社)を用いて、ルシフェラーゼでラベルしたEB由来血球様細胞の蛍光を撮影し、移植した細胞の生存率を測定した。
図41(a)は実験スケジュールを説明した図である。また、図41(b)は、各マウスにおけるEB由来血球様細胞の蛍光を撮影した結果を示す写真である。また、図41(c)は、エフェクターCD8陽性T細胞をマウスに投与した場合の各EB由来血球様細胞の生存率を、T細胞注射前の蛍光強度を100%として算出した結果を示す相対的生存曲線のグラフである。
図41(b)及び(c)中、「WT」は上記(1)の585A1 iPS細胞から分化誘導したEB由来血球様細胞の結果であることを示し、「C7#3-1」は上記(2)のクローン#3-1から分化誘導したEB由来血球様細胞の結果であることを示し、「Mock」は対照として培地を投与した結果であることを示し、「T細胞」は末梢血単核球細胞(PBMC、型式「LP_329」、CTL社)由来のエフェクターCD8陽性T細胞を投与した結果であることを示す。
その結果、図41(c)に示すように、585A1 iPS細胞から分化誘導したEB由来血球様細胞は、エフェクターCD8陽性T細胞の投与後生存率が低下することが確認された。これに対し、585A1 iPS細胞のA*24:02アレル、B*07:02アレル、B*52:01アレル、及びC*12:02アレルをノックアウトした、クローン#3-1から分化誘導したEB由来血球様細胞は、エフェクターCD8陽性T細胞の投与後でも高い生存率を維持することが明らかとなった。
この結果は、iPS細胞のHLAアレルを破壊することにより、分化誘導して他家移植した場合の拒絶反応を低減させることができることを更に支持するものである。
[実験例34]
(NK細胞反応性試験2)
(1)585A1 iPS細胞、(2)実験例13で作製した、585A1 iPS細胞のA*24:02アレル、B*07:02アレル、B*52:01アレル、及びC*12:02アレルをノックアウトしたクローン#3-1、(3)後述する実験例46で作製した、585A1 iPS細胞のB2Mアレルをノックアウトした細胞(サブクローニングしていないバルクの細胞)を用意した。下記表46に585A1 iPS細胞のHLAハプロタイプを示し、下記表47に1383D2 iPS細胞のHLAハプロタイプを示す。
また、下記表48のHLAハプロタイプを持つPBMC(型式「LP_275」、CTL社)からCD56陽性細胞(NK細胞)をソーティングにより回収した。続いて、回収したNK細胞を、抗CD107a抗体の存在下で、上述の(1)~(3)の各細胞と共培養した。この結果、NK細胞が活性化するとCD107a陽性となる。共培養後にフローサイトメトリー解析を行い、活性化したNK細胞の割合を測定した。
図42(a)は、フローサイトメトリー解析の結果を示すグラフである。図42(a)中、「**」はP<0.01で有意差が存在することを示し、「WT」は上記(1)の585A1 iPS細胞の結果であることを示し、「C7#3-1」は上記(2)のクローン#3-1の結果であることを示し、「B2M-」は上記(3)の585A1 iPS細胞のB2Mアレルをノックアウトした細胞の結果であることを示す。
その結果、B2Mアレルをノックアウトした細胞と比較して、585A1 iPS細胞及びクローン#3-1では、NK細胞の活性化を有意に抑制することができたことが明らかとなった。続いて、B2Mアレルをノックアウトした細胞で活性化したNK細胞をソーティングして回収した。
続いて、(4)HLA抗原を発現していないことが知られているK562細胞、(5)後述する実験例46で作製した、585A1 iPS細胞のB2Mアレルをノックアウトした細胞(サブクローニングしていないバルクの細胞)、(6)後述する実験例47で作製した、585A1 iPS細胞のHLA-Aアレル、HLA-Bアレル及びHLA-Cアレルをノックアウトした細胞(クローン#3-5、HLA-E、F、Gアレルは残存している。)、(7)実験例13で作製した、585A1 iPS細胞のA*24:02アレル、B*07:02アレル、B*52:01アレル、及びC*12:02アレルをノックアウトしたクローン#3-1、(8)同クローン#3-3、(9)実験例13で作製した、585A1 iPS細胞のHLA-Aアレル及びHLA-Bアレルをノックアウトした細胞(クローン#3、HLA-C、E、F、Gアレルは残存している。)、(10)585A1 iPS細胞の各細胞に対し、活性化したNK細胞を様々な割合で添加し、51Crリリースアッセイを行った。
すなわち、エフェクター細胞として上述の活性化したNK細胞を、ターゲット細胞として上述の(4)~(10)の各細胞を使用した。添加するNK細胞数の割合は、ターゲット細胞1に対して、0.33、1、3とした。
図42(b)は上述の(4)~(10)の各細胞が傷害を受けて溶解した割合を示すグラフである。図42(b)中、「*」はP<0.05で有意差が存在することを示し、「**」はP<0.01で有意差が存在することを示し、「K562」は上記(4)のK562細胞の結果であることを示し、「B2M-」は上記(5)の585A1 iPS細胞のB2Mアレルをノックアウトした細胞の結果であることを示し、「A-B-C-#5」は上記(6)のHLA-Aアレル、HLA-Bアレル及びHLA-Cアレルをノックアウトした細胞(クローン#3-5)の結果であることを示し、「C7#3-1」は上記(7)のクローン#3-1の結果であることを示し、「C7#3-3」は上記(8)のクローン#3-3の結果であることを示し、「A-B-#3」は上記(9)のHLA-Aアレル及びHLA-Bアレルをノックアウトした細胞(クローン#3)の結果であることを示し、「585A1-WT」は上記(10)の585A1 iPS細胞の結果であることを示す。
その結果、HLA-Cアレルを残存させた細胞は、B2Mをノックアウトした細胞及びHLA-Aアレル、HLA-Bアレル及びHLA-Cアレルをノックアウトした細胞と比較して、NK細胞による攻撃を有意に回避することができることが明らかとなった。
[実験例35]
(NK細胞反応性試験3)
(1)585A1 iPS細胞、(2)実験例13で作製した、585A1 iPS細胞のA*24:02アレル、B*07:02アレル、B*52:01アレル、及びC*12:02アレルをノックアウトしたクローン#3-1、(3)後述する実験例46で作製した、585A1 iPS細胞のB2Mアレルをノックアウトした細胞(サブクローニングしていないバルクの細胞)を用意した。下記表49に585A1 iPS細胞のHLAハプロタイプを示し、下記表50に1383D2 iPS細胞のHLAハプロタイプを示す。
また、下記表51のHLAハプロタイプを持つPBMC(型式「LP_329」、CTL社)からCD3陰性CD56陽性細胞(NK細胞)をソーティングにより回収した。続いて、回収したNK細胞を、抗CD107a抗体の存在下で、上述の(1)~(3)の各細胞と共培養した。この結果、NK細胞が活性化するとCD107a陽性となる。共培養後にフローサイトメトリー解析を行い、活性化したNK細胞の割合を測定した。
図43(a)は、フローサイトメトリー解析の結果を示すグラフである。図43(a)中、「**」はP<0.01で有意差が存在することを示し、「WT」は上記(1)の585A1 iPS細胞の結果であることを示し、「C7#3-1」は上記(2)のクローン#3-1の結果であることを示し、「B2M-」は上記(3)の585A1 iPS細胞のB2Mアレルをノックアウトした細胞の結果であることを示す。
その結果、B2Mアレルをノックアウトした細胞と比較して、585A1 iPS細胞及びクローン#3-1では、NK細胞の活性化を有意に抑制することができたことが明らかとなった。続いて、B2Mアレルをノックアウトした細胞で活性化したNK細胞をソーティングして回収した。
続いて、(4)HLA抗原を発現していないことが知られているK562細胞、(5)後述する実験例46で作製した、585A1 iPS細胞のB2Mアレルをノックアウトした細胞(サブクローニングしていないバルクの細胞)、(6)後述する実験例47で作製した、585A1 iPS細胞のHLA-Aアレル、HLA-Bアレル及びHLA-Cアレルをノックアウトした細胞(クローン#3-5、HLA-E、F、Gアレルは残存している。)、(7)実験例13で作製した、585A1 iPS細胞のA*24:02アレル、B*07:02アレル、B*52:01アレル、及びC*12:02アレルをノックアウトしたクローン#3-1、(8)同クローン#3-3、(9)実験例13で作製した、585A1 iPS細胞のHLA-Aアレル及びHLA-Bアレルをノックアウトした細胞(クローン#3、HLA-C、E、F、Gアレルは残存している。)、(10)585A1 iPS細胞の各細胞に対し、活性化したNK細胞を様々な割合で添加し、51Crリリースアッセイを行った。
すなわち、エフェクター細胞として上述の活性化したNK細胞を、ターゲット細胞として上述の(4)~(10)の各細胞を使用した。添加するNK細胞数の割合は、ターゲット細胞1に対して、0.33、1、3とした。
図43(b)は上述の(4)~(10)の各細胞が傷害を受けて溶解した割合を示すグラフである。図43(b)中、「**」はP<0.01で有意差が存在することを示し、「K562」は上記(4)のK562細胞の結果であることを示し、「B2M-」は上記(5)の585A1 iPS細胞のB2Mアレルをノックアウトした細胞の結果であることを示し、「A-B-C-#5」は上記(6)のHLA-Aアレル、HLA-Bアレル及びHLA-Cアレルをノックアウトした細胞(クローン#5)の結果であることを示し、「C7#3-1」は上記(7)のクローン#3-1の結果であることを示し、「C7#3-3」は上記(8)のクローン#3-3の結果であることを示し、「A-B-#3」は上記(9)のHLA-Aアレル及びHLA-Bアレルをノックアウトした細胞(クローン#3)の結果であることを示し、「585A1-WT」は上記(10)の585A1 iPS細胞の結果であることを示す。
その結果、HLA-Cアレルを残存させた細胞は、B2Mをノックアウトした細胞及びHLA-Aアレル、HLA-Bアレル及びHLA-Cアレルをノックアウトした細胞と比較して、NK細胞による攻撃を有意に回避することができることが明らかとなった。
[実験例36]
(NK細胞反応性試験4)
(1)585A1 iPS細胞、(2)実験例13で作製した、585A1 iPS細胞のA*24:02アレル、B*07:02アレル、B*52:01アレル、及びC*12:02アレルをノックアウトしたクローン#3-1、(3)後述する実験例46で作製した、585A1 iPS細胞のB2Mアレルをノックアウトした細胞(サブクローニングしていないバルクの細胞)、(4)HLA抗原を発現していないことが知られているK562細胞を用意した。下記表52に585A1 iPS細胞のHLAハプロタイプを示し、下記表53に1383D2 iPS細胞のHLAハプロタイプを示す。
また、下記表54のHLAハプロタイプを持つPBMC(型式「LP_118」、CTL社)及び下記表55のHLAハプロタイプを持つPBMC(型式「LP_266」、CTL社)からCD3陰性CD56陽性細胞(NK細胞)をソーティングによりそれぞれ回収した。続いて、回収したNK細胞を、抗CD107a抗体の存在下で、上述の(1)~(4)の各細胞と共培養した。この結果、NK細胞が活性化するとCD107a陽性となる。共培養後にフローサイトメトリー解析を行い、活性化したNK細胞の割合を測定した。
図44(a)及び(b)は、フローサイトメトリー解析の結果を示すグラフである。図図44(a)は上記表54のHLAハプロタイプを持つPBMC(型式「LP_118」、CTL社)由来のNK細胞の結果を示し、図44(b)は上記表55のHLAハプロタイプを持つPBMC(型式「LP_266」、CTL社)由来のNK細胞の結果を示す。図44(a)及び(b)中、「**」はP<0.01で有意差が存在することを示し、「WT」は上記(1)の585A1 iPS細胞の結果であることを示し、「C7#3-1」は上記(2)のクローン#3-1の結果であることを示し、「B2M-」は上記(3)の585A1 iPS細胞のB2Mアレルをノックアウトした細胞の結果であることを示し、「K562」は上記(4)のK562細胞の結果であることを示す。
その結果、B2Mアレルをノックアウトした細胞と比較して、585A1 iPS細胞及びクローン#3-1では、NK細胞の活性化を有意に抑制することができたことが明らかとなった。
[実験例37]
(細胞移植実験2)
(1)585A1 iPS細胞のB2M遺伝子をノックアウトした細胞、(2)実験例13で作製した、585A1 iPS細胞のA*24:02アレル、B*07:02アレル、B*52:01アレル、及びC*12:02アレルをノックアウトしたクローン#3-1を、それぞれEB由来血球様細胞に分化誘導した。続いて、各EB由来血球様細胞をルシフェラーゼでラベルした。
続いて、実験開始の1時間前に、腹腔内投与により、免疫不全マウス(NOD.Cg-Rag1tm1MomIl2rgtm1Wjl/SzJ(NRG)、The Jackson Laboratory社)に各細胞をそれぞれ移植した。続いて、実験開始時に、実験例34、35と同様にして調製した、末梢血単核球細胞(PBMC、型式「LP_329」、CTL社)由来の活性化NK細胞又は培地(対照)を更に腹腔内投与した。下記表56にPBMC(型式「LP_329」、CTL社)のHLAハプロタイプを示す。
続いて、細胞移植時(NK細胞注射前)、実験開始から5時間後、1日後、3日後、5日後、7日後に、各マウスにルシフェラーゼの基質であるルシフェリンを投与し、IVISイメージングシステム(商品名「IVIS Spectrum」、SPI社)を用いて、ルシフェラーゼでラベルしたEB由来血球様細胞の蛍光を撮影し、移植した細胞の生存率を測定した。
図45(a)は実験スケジュールを説明した図である。また、図45(b)は、各マウスにおけるEB由来血球様細胞の蛍光を撮影した結果を示す写真である。また、図45(c)は、NK細胞をマウスに投与した場合の各EB由来血球様細胞の生存率を、NK細胞注射前の蛍光強度を100%として算出し、更に各測定時間における相対的生存率を下記式(F1)により算出した結果を示すグラフである。図45(c)中、縦軸の単位は(%)である。
相対的生存率(%)=NK細胞投与群の生存率(%)/対照群の生存率(%)×100 …(F1)
図45(b)及び(c)中、「B2M-」は上記(1)の585A1 iPS細胞のB2M遺伝子をノックアウトした細胞から分化誘導したEB由来血球様細胞の結果であることを示し、「C7#3-1」は上記(2)のクローン#3-1から分化誘導したEB由来血球様細胞の結果であることを示し、「Mock」は対照として培地を投与した結果であることを示し、「NK細胞」は末梢血単核球細胞(PBMC、型式「LP_329」、CTL社)由来の活性化NK細胞を投与した結果であることを示す。
その結果、図45(c)に示すように、B2M遺伝子をノックアウトした細胞から分化誘導したEB由来血球様細胞は、NK細胞の投与後生存率が低下することが確認された。これに対し、クローン#3-1から分化誘導したEB由来血球様細胞は、活性化NK細胞の投与後でも、より高い生存率を維持する傾向が認められた。
この結果は、HLAアレルを一部残存させることにより、他家移植した場合のNK細胞による攻撃を低減させることができることを更に支持するものである。
[実験例38]
(T細胞及びNK細胞による傷害性試験)
(1)585A1 iPS細胞、(2)実験例13で作製した、585A1 iPS細胞のA*24:02アレル、B*07:02アレル、B*52:01アレル、及びC*12:02アレルをノックアウトしたクローン#3-1、(3)後述する実験例46で作製した、585A1 iPS細胞のB2Mアレルをノックアウトした細胞(サブクローニングしていないバルクの細胞)を、それぞれEB由来血球様細胞に分化誘導した。
続いて、各EB由来血球様細胞の培地に、実験例31と同様にして、末梢血単核球細胞(PBMC、型式「LP_275」、CTL社)からソーティングして回収したエフェクターCD8陽性T細胞及び実験例34と同様にしてPBMC(型式「LP_275」、CTL社)からソーティングして回収した活性化NK細胞を様々な割合で添加し、51Crリリースアッセイを行った。
すなわち、ターゲット細胞が上記(1)~(3)の各細胞から分化誘導したEB由来血球様細胞であり、エフェクター細胞が上述のCD8陽性T細胞及び活性化NK細胞である。添加するエフェクターCD8陽性T細胞数の割合は、EB由来血球様細胞1に対して、1、3、9とした。また、添加する活性化NK細胞数の割合は、EB由来血球様細胞1に対して、0.33、1、3とした。
図46は、各EB由来血球様細胞が傷害を受けて溶解した割合を示すグラフである。図46中、「*」はP<0.05で有意差が存在することを示し、「**」はP<0.01で有意差が存在することを示し、「WT」は上記(1)の585A1 iPS細胞から分化誘導したEB由来血球様細胞の結果であることを示し、「C7#3-1」は上記(2)のクローン#3-1から分化誘導したEB由来血球様細胞の結果であることを示し、「B2M-」は上記(3)の585A1 iPS細胞のB2Mアレルをノックアウトした細胞から分化誘導したEB由来血球様細胞の結果であることを示す。
その結果、各EB由来血球様細胞にエフェクターCD8陽性T細胞を単独で混合すると、585A1 iPS細胞から分化誘導したEB由来血球様細胞のみが傷害を受けることが確認された。
また、各EB由来血球様細胞に活性化NK細胞を単独で混合すると、B2Mアレルをノックアウトした細胞から分化誘導したEB由来血球様細胞のみが傷害を受けることが確認された。
また、各EB由来血球様細胞に、エフェクターCD8陽性T細胞及び活性化NK細胞の双方を混合すると、585A1 iPS細胞から分化誘導したEB由来血球様細胞及びB2Mアレルをノックアウトした細胞から分化誘導したEB由来血球様細胞の双方が傷害を受けるが、C7#3-1細胞から分化誘導したEB由来血球様細胞は傷害の程度が有意に抑制されたことが明らかとなった。
この結果は、ドナー細胞に存在し、レシピエント細胞に存在しないHLAアレルを破壊し且つドナー細胞とレシピエント細胞で一致するHLAアレルを残存させることにより、エフェクターCD8陽性T細胞及び活性化NK細胞の双方による傷害をいずれも低減させることができることを示すものである。
[実験例39]
(CIITA遺伝子ノックアウトiPS細胞の作製)
CIITA遺伝子は、Class II Major Histocompatibility Complex Transactivatorタンパク質をコードする遺伝子である。上述したように、CIITA遺伝子の発現はクラスIIのHLAタンパク質の発現に必須であることが知られている。
実験例13で作製した、585A1 iPS細胞のA*24:02アレル、B*07:02アレル、B*52:01アレル、及びC*12:02アレルをノックアウトしたクローン#3-1(以下、「585A1-C7残存細胞」という場合がある。)のCIITA遺伝子をノックアウトした。
図47(a)は、585A1-C7残存細胞及びCIITA遺伝子をノックアウトした585A1-C7残存細胞のHLAハプロタイプを示す表である。CIITA遺伝子をノックアウトすることにより、クラスIIのHLAタンパク質である、HLA-DP、HLA-DQ、HLA-DR等を欠損させることができる。
具体的には、585A1-C7残存細胞に、精製Cas9タンパク質と共に、CIITAアレルを切断するsgRNAである、CIITA-ex3g5(標的塩基配列を配列番号8017に示す。)をトランスフェクションし、28株のサブクローンを得た。トランスフェクションは市販のキット(商品名「4D-Nucleofector」、型式「V4XP-4032」、ロンザ社)を用いて行った。
続いて、各サブクローンのゲノムのCIITAアレルの塩基配列を解析した。図47(b)は、各サブクローンの塩基変異パターンを示す図である。図47(b)中、「Clone ID」はサブクローン名を示し、「WT」は野生型の塩基配列であったことを示し、「-」は欠失変異を有していたことを示し、「+」は挿入変異を有していたことを示す。
その結果、図47(b)に示すように、28株のサブクローンのうち15株に、少なくとも一方のCIITAアレルに欠失変異又は挿入変異が導入されたことが確認された。図47(c)では、代表例としてクローン#3-1-3の塩基配列を示す。
[実験例40]
(CD4陽性T細胞活性化試験)
健常人ボランティア#21由来の末梢血単核球細胞(PBMC)からソーティングによりCD4陽性T細胞を回収し、CFSE(ケイマンケミカル社)で染色した。
続いて、上記のCD4陽性T細胞を、(1)585A1 iPS細胞、(2)実験例13で作製した、585A1 iPS細胞のA*24:02アレル、B*07:02アレル、B*52:01アレル、及びC*12:02アレルをノックアウトしたクローン#3-1(以下、「585A1-C7残存細胞」という場合がある。)、(3)実験例39で作製した、585A1-C7残存細胞のCIITA遺伝子をノックアウトした細胞(クローン#3-1-3)を混合して1週間共培養した。また、比較のために、(4)上記のCD4陽性T細胞のみを単独で1週間培養した群も用意した。
共培養後にフローサイトメトリー解析を行い、CFSEの蛍光を検討した。図48(a)~(d)はフローサイトメトリーの結果を示すグラフである。図48(a)~(d)中、「Mock」は上記(4)のCD4陽性T細胞のみを単独で培養した結果であることを示し、「585A1-WT」は上記(1)の585A1 iPS細胞の結果であることを示し、「585A1-C7#3-1」は上記(2)の585A1-C7残存細胞の結果であることを示し、「585A1-C7+CIITA-#3-1-3」は上記(3)の585A1-C7残存細胞のCIITA遺伝子をノックアウトした細胞(クローン#3-1-3)の結果であることを示す。
その結果、図48(a)に示すように、CD4陽性T細胞のみを単独で培養しても、CD4陽性T細胞は活性化されないことが明らかとなった。
また、図48(b)に示すように、健常人ボランティア#21由来のCD4陽性T細胞と585A1 iPS細胞を共培養すると45.6%のCD4陽性T細胞が活性化されてCFSE陰性となったことが明らかとなった。
また、図48(c)に示すように、健常人ボランティア#21由来のCD4陽性T細胞と585A1-C7残存細胞を共培養すると49.2%のCD4陽性T細胞が活性化されてCFSE陰性となったことが明らかとなった。
また、図48(d)に示すように、健常人ボランティア#21由来のCD4陽性T細胞と585A1-C7残存細胞のCIITA遺伝子をノックアウトした細胞(クローン#3-1-3)を共培養しても、CD4陽性T細胞は活性化されないことが明らかとなった。
[実験例41]
(CD4陽性T細胞、CD8陽性T細胞及びNK細胞の活性化試験)
末梢血単核球細胞(PBMC、型式「LP_329」、CTL社)をCFSE(ケイマンケミカル社)で染色した。下記表57にPBMC(型式「LP_329」、CTL社)のHLAハプロタイプを示す。
続いて、上記のPBMCを、(1)585A1 iPS細胞、(2)実験例13で作製した、585A1 iPS細胞のA*24:02アレル、B*07:02アレル、B*52:01アレル、及びC*12:02アレルをノックアウトしたクローン#3-1(以下、「585A1-C7残存細胞」という場合がある。)、(3)実験例39で作製した、585A1-C7残存細胞のCIITA遺伝子をノックアウトした細胞(クローン#3-1-3)、(4)同クローン#3-1-6の各細胞から分化させたEB由来血球様細胞、及び、(5)HLA抗原を発現していないことが知られているK562細胞を混合して1週間共培養した。また、比較のために、(6)上記のPBMCのみを単独で1週間培養した群も用意した。
共培養後にフローサイトメトリー解析を行い、CFSEの蛍光を検討した。図49(a)~(c)はフローサイトメトリーの結果を示すグラフである。図49(a)~(c)中、「Mock」は上記(6)のPBMCのみを単独で培養した結果であることを示し、「585A1-WT」は上記(1)の585A1 iPS細胞から分化誘導したEB由来血球様細胞の結果であることを示し、「585A1-C7#3-1」は上記(2)の585A1-C7残存細胞から分化誘導したEB由来血球様細胞の結果であることを示し、「585A1-C7+CIITA-#3-1-3」は上記(3)の585A1-C7残存細胞のCIITA遺伝子をノックアウトした細胞(クローン#3-1-3)から分化誘導したEB由来血球様細胞の結果であることを示し、「585A1-C7+CIITA-#3-1-6」は上記(4)の585A1-C7残存細胞のCIITA遺伝子をノックアウトした細胞(クローン#3-1-6)から分化誘導したEB由来血球様細胞の結果であることを示し、「K562」は上記(5)のK562細胞の結果であることを示す。
その結果、図49(a)に示すように、CD8陽性T細胞は、585A1 iPS細胞から分化誘導したEB由来血球様細胞に反応し、51.0%のCD8陽性T細胞が活性化されてCFSE陰性となったことが明らかとなった。これに対し、585A1 iPS細胞から分化誘導したEB由来血球様細胞以外の細胞と共培養しても、2%以下のCD8陽性T細胞しか活性化されないことが明らかとなった。
また、図49(b)に示すように、CD4陽性T細胞は、585A1 iPS細胞から分化誘導したEB由来血球様細胞及び585A1-C7残存細胞から分化誘導したEB由来血球様細胞に反応し、それぞれ49.2%及び26.7%のCD4陽性T細胞が活性化されてCFSE陰性となったことが明らかとなった。これに対し、その他の細胞と共培養しても、2%以下のCD4陽性T細胞しか活性化されないことが明らかとなった。
また、図49(c)に示すように、NK細胞は、K562細胞に反応し、79.2%のNK細胞が活性化されてCFSE陰性となったことが明らかとなった。これに対し、その他の細胞と共培養しても、7%以下のNK細胞しか活性化されないことが明らかとなった。
[実験例42]
(HLA-C7残存CIITA欠損iPS細胞の作製)
日本人において、第3位のHLAアレル頻度をホモに有するiPSストック細胞(Ff-Xt-28s05 iPS細胞)から、HLA-Aアレル、HLA-Bアレル及びCIITAアレルをノックアウトした。ノックアウトは1段階及び2段階のゲノム編集によりそれぞれ行った。下記表58にFf-Xt-28s05 iPS細胞のHLAハプロタイプを示す。
図50(a)~(c)は、本実験例の手順を説明する図である。図50(a)は、HLA-Aアレル、HLA-Bアレル及びCIITAアレルを1段階でノックアウトした手順を説明する図である。また、図50(b)及び(c)は、HLA-Aアレル、HLA-Bアレル及びCIITAアレルを2段階でノックアウトした手順を説明する図である。
1段階でのノックアウトでは、まず、図50(a)に示すように、Ff-Xt-28s05 iPS細胞に、HLA-Aアレルを標的とすることができるsgRNAであるA-ex3-g1(標的塩基配列を配列番号55に示す。)、HLA-Bアレルを標的とすることができるsgRNAであるB-ex2-g1(標的塩基配列を配列番号53に示す。)、及び、CIITAアレルを標的とすることができるsgRNAであるCIITA-ex3g5(標的塩基配列を配列番号8017に示す。)及び精製Cas9タンパク質をトランスフェクションした。トランスフェクションは市販のキット(商品名「4D-Nucleofector」、型式「V4XP-4032」、ロンザ社)を用いて行った。
続いて、iPS細胞を50ng/mLのIFN-γで48時間刺激してフローサイトメトリー解析を行い、HLA-A24抗原及びHLA-B7抗原の発現を検討した。図51(a)はフローサイトメトリーの結果を示すグラフである。図51(a)中、「No stain」は抗体で染色しなかったiPS細胞の解析結果であることを示し、「No TF」はsgRNAを導入しなかったiPS細胞の解析結果であることを示し、「HLA-A-ex3g1」は、A-ex3-g1(標的塩基配列を配列番号55に示す。)を導入した結果であることを示し、「HLA-B-ex2g1」は、B-ex2-g1(標的塩基配列を配列番号53に示す。)を導入した結果であることを示し、CIITA-ex3g5(標的塩基配列を配列番号8017に示す。)はCIITA-ex3g5を導入した結果であることを示す。
続いて、HLA-A24抗原及びHLA-B7抗原の双方が陰性である細胞集団をソーティングして回収し、15株のサブクローンを得た。続いて、各サブクローンのゲノムのHLA-A24アレル、HLA-B7アレル及びCIITAアレルの塩基配列を解析した。図51(b)は、各サブクローンの塩基変異パターンを示す図である。図51(b)中、「Clone ID」はサブクローン名を示し、「WT」は野生型の塩基配列であったことを示し、「-」は欠失変異を有していたことを示し、「+」は挿入変異を有していたことを示し、「N.D.」は塩基配列を決定しなかったことを示す。また、サブクローン名における「ABTo」は、HLA-Aアレル、HLA-Bアレル及びCIITAアレルをノックアウトしたことを意味する。
その結果、図51(b)に示すように、HLA-Aアレル、HLA-Bアレル、CIITAアレルの全てに挿入欠失変異(Indel変異)が検出された、クローン#1、#2、#3、#6、#13、#15を得た。
2段階でのノックアウトでは、まず、図50(b)に示すように、Ff-Xt-28s05 iPS細胞に、HLA-Aアレルを標的とすることができるsgRNAであるA-ex3-g1(標的塩基配列を配列番号55に示す。)、HLA-Bアレルを標的とすることができるsgRNAであるB-ex2-g1(標的塩基配列を配列番号53に示す。)及び精製Cas9タンパク質をトランスフェクションし、17株のサブクローンを得た。トランスフェクションは市販のキット(商品名「4D-Nucleofector」、型式「V4XP-4032」、ロンザ社)を用いて行った。
続いて、各サブクローンのゲノムのHLA-A24アレル及びHLA-B7アレルの塩基配列を解析した。図52(a)は、各サブクローンの塩基変異パターンを示す図である。図52(a)中、「Clone ID」はサブクローン名を示し、「WT」は野生型の塩基配列であったことを示し、「-」は欠失変異を有していたことを示し、「+」は挿入変異を有していたことを示し、「Mut.」は置換変異を有していたことを示す。また、サブクローン名における「ABo」は、HLA-Aアレル及びHLA-Bアレルをノックアウトしたことを意味する。
その結果、図52(a)に示すように、HLA-Aアレル、HLA-Bアレルの双方に挿入欠失変異(Indel変異)が検出された、クローン#14を得た。
続いて、図50(c)に示すように、得られたクローン#14にCIITAアレルを標的とすることができるsgRNAであるCIITA-ex3g5(標的塩基配列を配列番号8017に示す。)及び精製Cas9タンパク質をトランスフェクションし、12株のサブクローンを得た。トランスフェクションは市販のキット(商品名「4D-Nucleofector」、型式「V4XP-4032」、ロンザ社)を用いて行った。
続いて、各サブクローンのゲノムのCIITAアレルの塩基配列を解析した。図52(b)は、各サブクローンの塩基変異パターンを示す図である。図52(b)中、「Clone ID」はサブクローン名を示し、「WT」は野生型の塩基配列であったことを示し、「-」は欠失変異を有していたことを示し、「+」は挿入変異を有していたことを示し、「N.D.」は塩基配列を決定しなかったことを示す。また、サブクローン名における「ABo_To」は、HLA-Aアレル及びHLA-Bアレルをノックアウトして一度サブクローニングした後、CIITAアレルをノックアウトしたことを意味する。
その結果、図52(b)に示すように、CIITAの双方のアレルにフレームシフト変異となる挿入欠失変異(Indel変異)が検出された、クローン#14-3、#14-4、#14-6、#14-12を得た。
図53は、様々な人種におけるHLC-Cアレルのアレル頻度を示す表である。図53中、「JPN」は日本人を示し、「EUR」は欧州系アメリカ人を示し、「AFA」はアフリカ系アメリカ人を示し、「API」はアジア人を示し、「HIS」はヒスパニックを示す。また、「アレル頻度」は、各人種におけるアレルの頻度(%)を示し、「ランク」は頻度の高い順からの順番を示す。
図53に示すように、HLA-C*01:02、HLA-C*02:02、HLA-C*03:03、HLA-C*03:04、HLA-C*04:01、HLA-C*05:01、HLA-C*06:02、HLA-C*07:01、HLA-C*07:02、HLA-C*08:01、HLA-C*12:02、HLA-C*16:01の12種類の細胞を作製すれば、上記のいずれの人種においても93%以上の人口をカバーすることができる。
すなわち、HLA-Aアレル及びHLA-Bアレルを欠失し、上記の12種類のいずれかのHLA-Cアレルを有する細胞、あるいは、HLA-Aアレル、HLA-Bアレル及びCIITAアレルを欠失し、上記の12種類のいずれかのHLA-Cアレルを有する細胞は、細胞治療や再生医療用の細胞として非常に有用である。ここで、細胞は、細胞治療に用いられる細胞であれば特に限定されず、多能性幹細胞であってもよいし、分化した細胞であってもよい。具体的には、例えば、iPS細胞、T細胞、造血幹細胞、間葉系幹細胞等であってよい。
[実験例43]
(B2MノックアウトiPS細胞の作製3)
実験例41でも使用したiPSストック細胞(Ff-Xt-28s05 iPS細胞)から、B2Mアレルをノックアウトした。
Ff-Xt-28s05 iPS細胞に、B2Mアレルを標的とすることができるsgRNAであるB2M-g2(標的塩基配列を配列番号60に示す。)及び精製Cas9タンパク質をトランスフェクションし、5株のサブクローンを得た。トランスフェクションは市販のキット(商品名「4D-Nucleofector」、型式「V4XP-4032」、ロンザ社)を用いて行った。
続いて、各サブクローンのゲノムのB2Mアレルの塩基配列を解析した。図54は、各サブクローンの塩基変異パターンを示す図である。図54中、「Clone ID」はサブクローン名を示し、「WT」は野生型の塩基配列であったことを示し、「-」は欠失変異を有していたことを示し、「+」は挿入変異を有していたことを示す。また、サブクローン名における「Mo」は、B2Mアレルをノックアウトしたことを意味する。
その結果、図54に示すように、B2Mアレルにフレームシフト変異を生じたクローン#1及び#3を得た。
[実験例44]
(B2M及びCIITAノックアウトiPS細胞の作製)
実験例41でも使用したiPSストック細胞(Ff-Xt-28s05 iPS細胞)から、B2Mアレル及びCIITAアレルを同時にノックアウトした。
Ff-Xt-28s05 iPS細胞に、B2Mアレルを標的とすることができるsgRNAであるB2M-g2(標的塩基配列を配列番号60に示す。)、CIITAアレルを標的とすることができるsgRNAであるCIITA-ex3g5(標的塩基配列を配列番号8017に示す。)及び精製Cas9タンパク質をトランスフェクションし、19株のサブクローンを得た。トランスフェクションは市販のキット(商品名「4D-Nucleofector」、型式「V4XP-4032」、ロンザ社)を用いて行った。
続いて、各サブクローンのゲノムのB2Mアレル及びCIITAアレルの塩基配列を解析した。図55は、各サブクローンの塩基変異パターンを示す図である。図55中、「Clone ID」はサブクローン名を示し、「WT」は野生型の塩基配列であったことを示し、「-」は欠失変異を有していたことを示し、「+」は挿入変異を有していたことを示す。また、サブクローン名における「MTo」は、B2Mアレル及びCIITAアレルを1段階でノックアウトしたことを意味する。
その結果、図55に示すように、B2Mアレル及びCIITAアレルの双方にフレームシフト変異を生じたクローン#8を得た。
また、クローン#2は、B2Mアレルの片方のみがノックアウトされ、CIITAアレルは両方ノックアウトされていることが明らかとなった。そこで、実質的にCIITAアレルのみがノックアウトされた細胞株としてクローン#2を得た。
[実験例45]
(B2M及びCIITAノックアウトiPS細胞におけるHLAタンパク質の発現の検討)
実験例44で作製した、Ff-Xt-28s05-MTo#2 iPS細胞におけるHLA-ABCタンパク質の発現を検討した。
まず、Ff-Xt-28s05-MTo#2 iPS細胞を50ng/mLのIFN-γで48時間刺激した後、抗HLA-ABC抗体(品番:311418、BIOLEGEND社)で染色してフローサイトメトリー解析を行い、HLA-Aタンパク質、HLA-Bタンパク質及びHLA-Cタンパク質の発現を検討した。
図56(a)及び(b)は、フローサイトメトリーの結果を示すグラフである。図56(a)中、「No stain」は抗体で染色しなかったiPS細胞の解析結果であることを示す。また、図16(b)中、「Ff-Xt-28s05-MTo#2」はFf-Xt-28s05-MTo#2 iPS細胞の解析結果であることを示す。
その結果、Ff-Xt-28s05-MTo#2 iPS細胞は、HLA-Aタンパク質、HLA-Bタンパク質及びHLA-Cタンパク質の発現能を維持していることが明らかとなった。
[実験例46]
(B2MノックアウトiPS細胞の作製4)
585A1 iPS細胞にCas9を発現するプラスミドベクターとB2M特異的なsgRNAをトランスフェクションした。sgRNAとしては、B2M-g2(標的塩基配列を配列番号60に示す。)を使用した。
続いて、50ng/mLのIFN-γで48時間刺激した細胞を抗HLA-ABC抗体で染色し、フローサイトメトリー解析を行った。
図57はフローサイトメトリーの結果を示すグラフである。図57中、「No stain」は抗体で染色しなかったiPS細胞の解析結果であることを示し、「No TF」はsgRNAを導入しなかったiPS細胞の解析結果であることを示し、「B2M-g2」は、このsgRNAを導入してB2MアレルをノックアウトしたiPS細胞の解析結果であることを示す。
その結果、HLA-Aタンパク質、HLA-Bタンパク質及びHLA-Cタンパク質の全てが陰性である細胞集団の割合は27.0%であった。続いて、B2M-g2 sgRNAの導入により得られた、HLA-A、HLA-B及びHLA-Cの全てが陰性である細胞集団をソーティングにより回収した。ここではサブクローニングは行わなかった。
[実験例47]
(HLAアレル特異的ノックアウト10)
585A1 iPS細胞のHLA-Aアレル、HLA-Bアレル及びHLA-Cアレルをノックアウトした細胞を作製した。具体的には、実験例13で作製した、585A1 iPS細胞のA*24:02アレル、B*07:02アレル及びB*52:01アレルをノックアウトした細胞(クローン#3)に、精製Cas9タンパク質、C*07:02アレル特異的なsgRNA及びC*12:02アレル特異的なsgRNAをトランスフェクションした。
C*07:02アレル特異的なsgRNAとして、C0702-ex3-g3(標的塩基配列を配列番号49に示す。)を使用した。また、C*12:02アレル特異的なsgRNAとして、C1202-ex3-g1(標的塩基配列を配列番号50に示す。)を使用した。トランスフェクションには、市販のキット(商品名「4D-Nucleofector」、型式「V4XP-4032」、ロンザ社)を使用した。
その後、サブクローニングを行い、6株のサブクローンを得た。続いて、各サブクローンからゲノムDNAを抽出した。続いて、HLA-C*07:02アレル及びHLA-C*12:02アレルの塩基配列を、サンガーシーケンスにより解析した。
図58は、回収した各クローンの塩基変異パターンを示す図である。図58中、「Clone ID」はサブクローン名を示し、「HLA-C07」はHLA-C*07:02アレルを示し、「HLA-C12」はHLA-C*12:02アレルを示し、「WT」は野生型の塩基配列であったことを示し、「-」は欠失変異を有していたことを示し、「+」は挿入変異を有していたことを示す。その結果、クローン#3-4、#3-5、#3-6、#3-7では、HLA-Cの両アレルがノックアウトされたことが確認された。
[実験例48]
(HLAアレル特異的ノックアウト11)
実験例13で作製した、585A1 iPS細胞のA*24:02アレル、B*07:02アレル及びB*52:01アレルをノックアウトした細胞(クローン#3)に、精製Cas9タンパク質及びC*07:02アレル特異的なsgRNAをトランスフェクションした。
C*07:02アレル特異的なsgRNAとして、C0702-ex3-g3(標的塩基配列を配列番号49に示す。)を使用した。トランスフェクションには、市販のキット(商品名「4D-Nucleofector」、型式「V4XP-4032」、ロンザ社)を使用した。
その後、サブクローニングを行い、6株のサブクローンを得た。続いて、各サブクローンからゲノムDNAを抽出した。続いて、HLA-C*07:02アレル及びHLA-C*12:02アレルの塩基配列を、サンガーシーケンスにより解析した。
図59は、回収した各クローンの塩基変異パターンを示す図である。図59中、「Clone ID」はサブクローン名を示し、「HLA-C07」はHLA-C*07:02アレルを示し、「HLA-C12」はHLA-C*12:02アレルを示し、「WT」は野生型の塩基配列であったことを示し、「+」は挿入変異を有していたことを示す。その結果、クローン#3-1、#3-2、#3-3、#3-5、#3-6は、HLA-C*07:02アレルがノックアウトされ、HLA-C*12:02アレルのみ残存したクローンであることが確認された。
図53を参照しながら上述したように、HLA-C*01:02、HLA-C*02:02、HLA-C*03:03、HLA-C*03:04、HLA-C*04:01、HLA-C*05:01、HLA-C*06:02、HLA-C*07:01、HLA-C*07:02、HLA-C*08:01、HLA-C*12:02、HLA-C*16:01の12種類の細胞を用意すれば、日本人、欧州系アメリカ人、アフリカ系アメリカ人、アジア人、ヒスパニックのいずれの人種においても93%以上の人口をカバーすることができる。
本実験例で作製した細胞は、これらの12種類の細胞の1つとして使用することができる。
[実験例49]
(HLAアレル特異的ノックアウト12)
実験例14で作製した、604B1 iPS細胞のA*01:01アレル、A*24:02アレル、B*07:02アレル及びB*37:01アレルをノックアウトした細胞(クローン#4)に、精製Cas9タンパク質及びC*07:02アレル特異的なsgRNAをトランスフェクションした。
C*07:02アレル特異的なsgRNAとして、C0702-ex3-g3(標的塩基配列を配列番号49に示す。)を使用した。トランスフェクションには、市販のキット(商品名「4D-Nucleofector」、型式「V4XP-4032」、ロンザ社)を使用した。
その後、サブクローニングを行い、11株のサブクローンを得た。続いて、各サブクローンからゲノムDNAを抽出した。続いて、HLA-C*06:02アレル及びHLA-C*12:02アレルの塩基配列を、サンガーシーケンスにより解析した。
図60は、回収した各クローンの塩基変異パターンを示す図である。図60中、「Clone ID」はサブクローン名を示し、「HLA-C06」はHLA-C*06:02アレルを示し、「HLA-C07」はHLA-C*07:02アレルを示し、「WT」は野生型の塩基配列であったことを示し、「-」は挿入変異を有していたことを示し、「+」は挿入変異を有していたことを示す。その結果、クローン#4-2、#4-6、#4-10、#4-11は、HLA-C*07:02アレルがノックアウトされ、HLA-C*06:02アレルのみ残存したクローンであることが確認された。
図53を参照しながら上述したように、HLA-C*01:02、HLA-C*02:02、HLA-C*03:03、HLA-C*03:04、HLA-C*04:01、HLA-C*05:01、HLA-C*06:02、HLA-C*07:01、HLA-C*07:02、HLA-C*08:01、HLA-C*12:02、HLA-C*16:01の12種類の細胞を用意すれば、日本人、欧州系アメリカ人、アフリカ系アメリカ人、アジア人、ヒスパニックのいずれの人種においても93%以上の人口をカバーすることができる。
本実験例で作製した細胞は、これらの12種類の細胞の1つとして使用することができる。