以下、図面を参照して種々の実施形態について詳細に説明する。なお、各図面において同一又は相当の部分に対しては同一の符号を附すこととする。
電子デバイスの製造においては、プラズマ処理装置が用いられている。プラズマ処理装置は、一般的に、チャンバ本体、ステージ、及び、高周波電源を備えている。チャンバ本体は、その内部空間をチャンバとして提供している。チャンバ本体は、接地されている。ステージは、チャンバ内に設けられており、その上に載置される基板を支持するように構成されている。ステージは、下部電極を含んでいる。高周波電源は、チャンバ内のガスを励起させるために、高周波を供給する。このプラズマ処理装置では、下部電極の電位とプラズマの電位との電位差によりイオンが加速され、加速されたイオンが基板に照射される。
プラズマ処理装置では、チャンバ本体とプラズマとの間にも電位差が生じる。チャンバ本体とプラズマとの間の電位差が大きい場合には、チャンバ本体の内壁に照射されるイオンのエネルギーが高くなり、チャンバ本体からパーティクルが放出される。チャンバ本体から放出されたパーティクルは、ステージ上に載置された基板を汚染する。このようなパーティクルの発生を防止するために、特許文献1では、チャンバの接地容量を調整する調整機構を利用する技術が提案されている。特許文献1に記載された調整機構は、チャンバに面するアノードとカソードの面積比率、即ちA/C比を調整するよう構成されている。
また、プラズマ処理装置では、基板に照射されるイオンのエネルギーを高めて基板のエッチングレートを高める観点から、バイアス用の直流電圧を下部電極に供給する技術がある。例えば、特許文献2では、バイアス用の直流電圧として負極性を有する直流電圧を下部電極に周期的に印加する技術が開示されている。特許文献2の技術では、直流電圧の周波数が例えば1MHz以上に設定された状態で、直流電圧のデューティー比を50%以上に調整することにより、基板に照射されるイオンのエネルギーを高めることが記載されている。ここで、デューティー比は、直流電圧が印加される各々の周期内において直流電圧が下部電極に印加される期間が占める割合である。
ところで、直流電圧を下部電極に周期的に印加するプラズマ処理装置では、直流電圧の印加が停止されている期間において、プラズマ中のイオンの移動が少なくなるため、プラズマの電位が高くなることがある。プラズマの電位が高くなると、プラズマとチャンバ本体との電位差が大きくなり、チャンバ本体の内壁に照射されるイオンのエネルギーが高くなる。また、直流電圧の周波数が例えば1MHz以上に設定されると、基板に照射されるイオンのエネルギーと共に、チャンバ本体の内壁に照射されるイオンのエネルギーが高くなる傾向がある。チャンバ本体の内壁に照射されるイオンのエネルギーが高くなるほど、チャンバ本体から放出されるパーティクルの量が多くなり、基板の汚染が促進される可能性がある。かかる背景から、基板のエッチングレートの低下を抑制し、且つ、チャンバ本体の内壁に照射されるイオンのエネルギーを低下させることが期待されている。
図1は、一実施形態に係るプラズマ処理装置を概略的に示す図である。図2は、図1に示すプラズマ処理装置の電源系及び制御系の一実施形態を示す図である。図1に示すプラズマ処理装置10は、容量結合型のプラズマ処理装置である。
プラズマ処理装置10は、チャンバ本体12を備えている。チャンバ本体12は、略円筒形状を有している。チャンバ本体12は、その内部空間をチャンバ12cとして提供している。チャンバ本体12は、例えばアルミニウムから構成されている。チャンバ本体12は接地電位に接続されている。チャンバ本体12の内壁面、即ち、チャンバ12cを画成する壁面には、耐プラズマ性を有する膜が形成されている。この膜は、陽極酸化処理によって形成された膜、又は、酸化イットリウムから形成された膜といったセラミック製の膜であり得る。また、チャンバ本体12の側壁には通路12pが形成されている。基板Wがチャンバ12cに搬入されるとき、また、基板Wがチャンバ12cから搬出されるときに、基板Wは通路12pを通過する。この通路12pの開閉のために、ゲートバルブ12gがチャンバ本体12の側壁に沿って設けられている。
チャンバ12c内では、支持部15が、チャンバ本体12の底部から上方に延在している。支持部15は、略円筒形状を有しており、セラミックといった絶縁材料から形成されている。支持部15上にはステージ16が搭載されている。ステージ16は支持部15によって支持されている。ステージ16は、チャンバ12c内において基板Wを支持するように構成されている。ステージ16は、下部電極18及び静電チャック20を含んでいる。一実施形態において、ステージ16は、電極プレート21を更に含んでいる。電極プレート21は、アルミニウムといった導電性材料から形成されており、略円盤形状を有している。下部電極18は、電極プレート21上に設けられている。下部電極18は、アルミニウムといった導電性材料から形成されており、略円盤形状を有している。下部電極18は、電極プレート21に電気的に接続されている。
下部電極18内には、流路18fが設けられている。流路18fは、熱交換媒体用の流路である。熱交換媒体としては、液状の冷媒、或いは、その気化によって下部電極18を冷却する冷媒(例えば、フロン)が用いられる。流路18fには、チャンバ本体12の外部に設けられたチラーユニットから配管23aを介して熱交換媒体が供給される。流路18fに供給された熱交換媒体は、配管23bを介してチラーユニットに戻される。即ち、流路18fには、当該流路18fとチラーユニットとの間で循環するように、熱交換媒体が供給される。
静電チャック20は、下部電極18上に設けられている。静電チャック20は、絶縁体から形成された本体と、当該本体内に設けられた膜状の電極を有している。静電チャック20の電極には、直流電源が電気的に接続されている。直流電源から静電チャック20の電極に電圧が印加されると、静電チャック20上に載置された基板Wと静電チャック20との間で静電引力が発生する。発生した静電引力により、基板Wは、静電チャック20に引き付けられ、当該静電チャック20によって保持される。この静電チャック20の周縁領域上には、フォーカスリングFRが配置される。フォーカスリングFRは、略環状板形状を有しており、例えばシリコンから形成されている。フォーカスリングFRは、基板Wのエッジを囲むように配置される。
プラズマ処理装置10には、ガス供給ライン25が設けられている。ガス供給ライン25は、ガス供給機構からの伝熱ガス、例えばHeガスを、静電チャック20の上面と基板Wの裏面(下面)との間に供給する。
チャンバ本体12の底部からは、筒状部28が上方に延在している。筒状部28は、支持部15の外周に沿って延在している。筒状部28は、導電性材料から形成されており、略円筒形状を有している。筒状部28は、接地電位に接続されている。筒状部28上には、絶縁部29が設けられている。絶縁部29は、絶縁性を有し、例えば石英又はセラミックから形成されている。絶縁部29は、ステージ16の外周に沿って延在している。
プラズマ処理装置10は、上部電極30を更に備えている。上部電極30は、ステージ16の上方に設けられている。上部電極30は、部材32と共にチャンバ本体12の上部開口を閉じている。部材32は、絶縁性を有している。上部電極30は、この部材32を介してチャンバ本体12の上部に支持されている。後述する第1の高周波電源61が下部電極18に電気的に接続されている場合には、上部電極30は、接地電位に接続される。
上部電極30は、天板34及び支持体36を含んでいる。天板34の下面は、チャンバ12cを画成している。天板34には、複数のガス吐出孔34aが設けられている。複数のガス吐出孔34aの各々は、天板34を板厚方向(鉛直方向)に貫通している。この天板34は、限定されるものではないが、例えばシリコンから形成されている。或いは、天板34は、アルミニウム製の母材の表面に耐プラズマ性の膜を設けた構造を有し得る。この膜は、陽極酸化処理によって形成された膜、又は、酸化イットリウムから形成された膜といったセラミック製の膜であり得る。
支持体36は、天板34を着脱自在に支持する部品である。支持体36は、例えばアルミニウムといった導電性材料から形成され得る。支持体36の内部には、ガス拡散室36aが設けられている。ガス拡散室36aからは、複数のガス孔36bが下方に延びている。複数のガス孔36bは、複数のガス吐出孔34aにそれぞれ連通している。支持体36には、ガス拡散室36aにガスを導くガス導入口36cが形成されており、このガス導入口36cには、ガス供給管38が接続されている。
ガス供給管38には、バルブ群42及び流量制御器群44を介して、ガスソース群40が接続されている。ガスソース群40は、複数のガスソースを含んでいる。バルブ群42は複数のバルブを含んでおり、流量制御器群44は複数の流量制御器を含んでいる。流量制御器群44の複数の流量制御器の各々は、マスフローコントローラ又は圧力制御式の流量制御器である。ガスソース群40の複数のガスソースはそれぞれ、バルブ群42の対応のバルブ及び流量制御器群44の対応の流量制御器を介して、ガス供給管38に接続されている。プラズマ処理装置10は、ガスソース群40の複数のガスソースのうち選択された一以上のガスソースからのガスを、個別に調整された流量で、チャンバ12cに供給することが可能である。
筒状部28とチャンバ本体12の側壁との間には、バッフルプレート48が設けられている。バッフルプレート48は、例えば、アルミニウム製の母材に酸化イットリウム等のセラミックを被覆することにより構成され得る。このバッフルプレート48には、多数の貫通孔が形成されている。バッフルプレート48の下方においては、排気管52がチャンバ本体12の底部に接続されている。この排気管52には、排気装置50が接続されている。排気装置50は、自動圧力制御弁といった圧力制御器、及び、ターボ分子ポンプなどの真空ポンプを有しており、チャンバ12cを減圧することができる。
図1及び図2に示すように、プラズマ処理装置10は、第1の高周波電源61を更に備えている。第1の高周波電源61は、チャンバ12c内のガスを励起させてプラズマを生成するための第1の高周波を発生する電源である。第1の高周波は、27~100MHzの範囲内の周波数、例えば60MHzの周波数を有する。第1の高周波電源61は、整合器64の第1の整合回路65及び電極プレート21を介して、下部電極18に接続されている。第1の整合回路65は、第1の高周波電源61の出力インピーダンスと負荷側(下部電極18側)のインピーダンスを整合させるための回路である。なお、第1の高周波電源61は、下部電極18に電気的に接続されていなくてもよく、第1の整合回路65を介して上部電極30に接続されていてもよい。
プラズマ処理装置10は、第2の高周波電源62を更に備えている。第2の高周波電源62は、基板Wにイオンを引き込むためのバイアス用の第2の高周波を発生する電源である。第2の高周波の周波数は、第1の高周波の周波数よりも低い。第2の高周波の周波数は、400kHz~13.56MHzの範囲内の周波数であり、例えば、400kHzである。第2の高周波電源62は、整合器64の第2の整合回路66及び電極プレート21を介して下部電極18に接続されている。第2の整合回路66は、第2の高周波電源62の出力インピーダンスと負荷側(下部電極18側)のインピーダンスを整合させるための回路である。
プラズマ処理装置10は、直流電源70及び切替ユニット72を更に備える。直流電源70は、負極性の直流電圧を発生する電源である。負極性の直流電圧は、ステージ16上に載置された基板Wにイオンを引き込むためのバイアス電圧として用いられる。直流電源70は、切替ユニット72に接続されている。切替ユニット72は、高周波フィルタ74を介して下部電極18に電気的に接続されている。プラズマ処理装置10では、直流電源70によって発生される直流電圧、及び、第2の高周波電源62によって発生される第2の高周波のうち何れか一方が下部電極18に選択的に供給される。
プラズマ処理装置10は、コントローラPCを更に備えている。コントローラPCは、切替ユニット72を制御するように構成されている。コントローラPCは、第1の高周波電源61及び第2の高周波電源62のうち一方又は双方の高周波電源を更に制御するように構成されていてもよい。
一実施形態では、プラズマ処理装置10は、主制御部MCを更に備え得る。主制御部MCは、プロセッサ、記憶装置、入力装置、表示装置等を備えるコンピュータであり、プラズマ処理装置10の各部を制御する。具体的に、主制御部MCは、記憶装置に記憶されている制御プログラムを実行し、当該記憶装置に記憶されているレシピデータに基づいてプラズマ処理装置10の各部を制御する。このような制御により、プラズマ処理装置10は、レシピデータによって指定されたプロセスを実行する。
以下、図2及び図3を参照する。図3は、図2に示す直流電源、切替ユニット、高周波フィルタ、及び、整合器の回路構成を示す図である。直流電源70は、可変直流電源であり、下部電極18に印加される負極性の直流電圧を発生する。
切替ユニット72は、直流電源70からの直流電圧の下部電極18に対する印加を停止可能に構成されている。一実施形態では、切替ユニット72は、電界効果トランジスタ(FET)72a、FET 72b、コンデンサ72c、及び、抵抗素子72dを有している。FET 72aは、例えばNチャネルMOS FETである。FET 72bは、例えばPチャネルMOS FETである。FET 72aのソースは、直流電源70の負極に接続されている。直流電源70の負極及びFET 72aのソースには、コンデンサ72cの一端が接続されている。コンデンサ72cの他端は、FET 72bのソースに接続されている。FET 72bのソースはグランドに接続されている。FET 72aのゲート及びFET 72bのゲートは互いに接続されている。FET 72aのゲートとFET 72bのゲートの間に接続されたノードNAには、コントローラPCからのパルス制御信号が供給される。FET 72aのドレインは、FET 72bのドレインに接続されている。FET 72aのドレインとFET 72bのドレインに接続されたノードNBは、抵抗素子72dを介して、高周波フィルタ74に接続されている。
高周波フィルタ74は、高周波を低減又は遮断するフィルタである。一実施形態では、高周波フィルタ74は、インダクタ74a及びコンデンサ74bを有している。インダクタ74aの一端は、抵抗素子72dに接続されている。インダクタ74aの一端には、コンデンサ74bの一端が接続されている。コンデンサ74bの他端は、グランドに接続されている。インダクタ74aの他端は、整合器64に接続されている。
整合器64は、第1の整合回路65及び第2の整合回路66を有している。一実施形態では、第1の整合回路65は、可変コンデンサ65a及び可変コンデンサ65bを有しており、第2の整合回路66は、可変コンデンサ66a及び可変コンデンサ66bを有している。可変コンデンサ65aの一端は、インダクタ74aの他端に接続されている。可変コンデンサ65aの他端は、第1の高周波電源61及び可変コンデンサ65bの一端に接続されている。可変コンデンサ65bの他端はグランドに接続されている。可変コンデンサ66aの一端は、インダクタ74aの他端に接続されている。可変コンデンサ66aの他端は、第2の高周波電源62及び可変コンデンサ66bの一端に接続されている。可変コンデンサ66bの他端はグランドに接続されている。可変コンデンサ65aの一端及び可変コンデンサ66aの一端は、整合器64の端子64aに接続されている。整合器64の端子64aは、電極プレート21を介して下部電極18に接続されている。
以下、主制御部MC及びコントローラPCによる制御について説明する。以下の説明では、図2及び図4を参照する。図4は、図1に示すプラズマ処理装置を用いて実行される一実施形態のプラズマ処理方法に関連するタイミングチャートである。図4において、横軸は時間を示している。図4において、縦軸は、第1の高周波の電力、直流電源70から下部電極18に印加される直流電圧、及び、コントローラPCによって出力される制御信号を示している。図4において、第1の高周波の電力が高レベルであることは、第1の高周波がプラズマの生成のために供給されていることを示しており、第1の高周波の電力が低レベルであることは第1の高周波の供給が停止されていることを示している。また、図4において、直流電圧が低レベルであることは、直流電源70から下部電極18に負極性の直流電圧が印加されていることを示しており、直流電圧が0Vであることは、直流電源70から下部電極18に直流電圧が印加されていないことを示している。
主制御部MCは、第1の高周波電源61に、第1の高周波の電力及び周波数を指定する。また、一実施形態では、主制御部MCは、第1の高周波電源61に、第1の高周波の供給を開始するタイミング、及び、第1の高周波の供給を終了するタイミングを指定する。第1の高周波電源61によって第1の高周波が供給されている期間では、チャンバ内のガスのプラズマが生成される。即ち、この期間では、プラズマを生成するために高周波電源から高周波を供給する工程S1が実行される。なお、図4の例では、第1の高周波は、一実施形態のプラズマ処理方法の実行中に連続的に供給される。
主制御部MCは、直流電源70からの負極性の直流電圧が下部電極18に印加される各々の周期を規定する周波数(以下「DC周波数」と呼ぶ)、及び、デューティー比をコントローラPCに指定する。デューティー比は、各々の周期(図4の「PDC」)内において、直流電源70からの負極性の直流電圧が下部電極18に印加される期間(図4の「T1」)が占める割合である。DC周波数は、1MHz未満に設定される。例えば、DC周波数は、50~800kHzの範囲内に設定される。デューティー比は、DC周波数が1MHz未満に設定された状態で、調整される。例えば、デューティー比は、50%以下、より好ましくは、35%以下に調整される。
コントローラPCは、主制御部MCから指定されるDC周波数、及び、デューティー比に応じて、制御信号を生成する。コントローラPCによって生成される制御信号は、パルス信号であり得る。一例では、図4に示すように、コントローラPCによって生成される制御信号は、期間T1において高レベルを有し、期間T2において低レベルを有する。期間T2は、一つの周期PDC内において期間T1を除く期間である。或いは、コントローラPCによって生成される制御信号は、期間T1において低レベルを有し、期間T2において高レベルを有していてもよい。
一実施形態では、コントローラPCによって生成された制御信号は、切替ユニット72のノードNAに与えられる。制御信号が与えられると、切替ユニット72は、期間T1においては、直流電源70からの負極性の直流電圧が下部電極18に印加されるよう、直流電源70とノードNBとを互いに接続する。一方、切替ユニット72は、期間T2においては、直流電源70からの負極性の直流電圧が下部電極18に印加されないように、直流電源70とノードNBとの接続を遮断する。これにより、図4に示すように、期間T1では、直流電源70からの負極性の直流電圧が下部電極18に印加され、期間T2では、直流電源70からの負極性の直流電圧の下部電極18に対する印加が停止される。即ち、一実施形態のプラズマ処理方法において、直流電源70からの負極性の直流電圧を下部電極18に周期的に印加する工程S2が実行される。
ここで、図5の(a)及び図5の(b)を参照して、デューティー比とプラズマの電位との関係を説明する。図5の(a)及び図5の(b)は、プラズマの電位を示すタイミングチャートである。期間T1においては、直流電源70からの負極性の直流電圧が下部電極18に印加されているので、プラズマ中の正イオンは基板Wに向けて移動する。したがって、図5の(a)及び図5の(b)に示すように、期間T1では、プラズマの電位が低くなる。一方、期間T2においては、直流電源70からの負極性の直流電圧の下部電極18に対する印加が停止されているので、正イオンの移動は少なくなり、主としてプラズマ中の電子が移動する。したがって、期間T2では、プラズマの電位が高くなる。
図5の(a)に示すタイミングチャートでは、図5の(b)に示すタイミングチャートに比べて、デューティー比が小さくなっている。プラズマの生成に関する諸条件が同一であれば、プラズマ中の正イオンの総量及び電子の総量の各々はデューティー比に依存しない。即ち、図5の(a)に示す面積A1と面積A2の比と、図5の(b)に示す面積A1と面積A2の比は同一となる。したがって、デューティー比が小さくなるほど、期間T2におけるプラズマの電位PVは小さくなる。
デューティー比、即ち、各々の周期PDC内において負極性の直流電圧が下部電極18に印加される期間T1が占める割合に対する、基板Wのエッチングレートの依存性は少ない。一方、デューティー比が比較的に小さい値に調整される場合、特にデューティー比が50%以下に調整される場合には、プラズマの電位が小さくなるので、チャンバ本体12のエッチングレートが大きく低下する。
続いて、図6A~図6D及び図7A~図7Dを参照して、DC周波数と、基板Wに照射されるイオンのエネルギーと、チャンバ本体12の内壁に照射されるイオンのエネルギーとの関係を説明する。図6A~図6Dは、DC周波数と基板Wに照射されるイオンのエネルギーとの関係の一例を示すシミュレーション結果である。図7A~図7Dは、DC周波数とチャンバ本体12の内壁に照射されるイオンのエネルギーとの関係の一例を示すシミュレーション結果である。図6A~図6Dは、それぞれ、DC周波数を200kHz、400kHz、800kHz及び1.6MHzに設定して、基板Wに照射されるイオンのエネルギー分布(IED:Ion Energy Distribution)をシミュレーションして得られた結果である。図7A~図7Dは、それぞれ、DC周波数を200kHz、400kHz、800kHz及び1.6MHzに設定して、チャンバ本体12の内壁に照射されるイオンのエネルギー分布(IED)をシミュレーションして得られた結果である。なお、他のシミュレーション条件としては、下部電極18に対する負極性の直流電圧のデューティー比:40%、下部電極18に対する負極性の直流電圧の電圧値:-450V、チャンバ12cの圧力:30mTorr(4.00Pa)、チャンバ12cに供給された処理ガス:Arガス:、第1の高周波:100MHz、500Wの連続波が用いられた。
図6A~図6Cに示すように、DC周波数が800kHz以下である場合、基板Wに照射されるイオンのエネルギー分布において、低エネルギー側ピークと高エネルギー側ピークとが現れる。また、図7A~図7Cに示すように、DC周波数が800kHz以下である場合、チャンバ本体12の内壁に照射されるイオンのエネルギー分布において、低エネルギー側ピークと高エネルギー側ピークとが現れる。即ち、DC周波数が800kHz以下である場合、下部電極18に周期的に印加される直流電圧にイオンが追従する。
一方、図6Dに示すように、DC周波数が1.6MHzである場合、基板Wに照射されるイオンのエネルギー分布において、低エネルギー側ピークと高エネルギー側ピークとが現れない。また、図7Dに示すように、DC周波数が1.6MHzである場合、チャンバ本体12の内壁に照射されるイオンのエネルギー分布において、低エネルギー側ピークと高エネルギー側ピークとが現れない。即ち、DC周波数が1.6MHzである場合、下部電極18に周期的に印加される直流電圧にイオンが追従しない。
本願の発明者は、図6A~図6D及び図7A~図7Dのシミュレーション結果を基に鋭意研究を重ねた。その結果、以下の事象が確認された。
・DC周波数が1MHz未満に、好ましくは、50~800kHzの範囲内に設定される場合に、下部電極18に周期的に印加される直流電圧にイオンが追従する。
・下部電極18に周期的に印加される直流電圧にイオンが追従する状況下において、直流電圧のデューティー比に対する基板Wのエッチングレートの依存性は、少ない。一方、デューティー比が比較的に小さい値に調整される場合、特にデューティー比が50%以下に調整される場合には、図5の(a)を用いて説明したように、プラズマの電位が小さくなるので、チャンバ本体12のエッチングレートが大きく低下する。
・DC周波数が1MHz以上に設定される場合に、下部電極18に周期的に印加される直流電圧にイオンが追従しなくなる。
・下部電極18に周期的に印加される直流電圧にイオンが追従しなくなる状況下では、基板に照射されるイオンのエネルギーと共に、チャンバ本体12の内壁に照射されるイオンのエネルギーが高くなる傾向がある。
そこで、一実施形態のプラズマ処理装置10では、下部電極18に直流電圧を周期的に印加する際に、DC周波数が1MHz未満に設定された状態で、デューティー比を50%以下に調整する。これにより、基板Wのエッチングレートの低下を抑制し、且つチャンバ本体12の内壁に照射されるイオンのエネルギーを低下させることが可能となる。結果的に、チャンバ本体12からのパーティクルの発生が抑制される。なお、デューティー比が35%以下である場合には、チャンバ本体12の内壁に照射されるイオンのエネルギーを更に低下させることが可能となる。
以下、別の実施形態について説明する。図8の(a)及び図8の(b)は、別の実施形態のプラズマ処理方法に関連するタイミングチャートである。図8の(a)及び図8の(b)の各々において、横軸は時間を示している。図8の(a)及び図8の(b)の各々において、縦軸は、第1の高周波の電力、及び、直流電源70から下部電極18に印加される直流電圧を示している。図8の(a)及び図8の(b)の各々において、第1の高周波の電力が高レベルであることは、第1の高周波がプラズマの生成のために供給されていることを示している。また、図8の(a)及び図8の(b)の各々において、第1の高周波の電力が低レベルであることは第1の高周波の供給が停止されていることを示している。また、図8の(a)及び図8の(b)の各々において、直流電圧が低レベルであることは、直流電源70から下部電極18に負極性の直流電圧が印加されていることを示している。また、図8の(a)及び図8の(b)の各々において、直流電圧が0Vであることは、直流電源70から下部電極18に直流電圧が印加されていないことを示している。
図8の(a)に示す実施形態では、下部電極18に対して直流電源70からの負極性の直流電圧が周期的に印加され、また、プラズマの生成のために第1の高周波が周期的に供給される。図8の(a)に示す実施形態では、下部電極18に対する直流電源70からの負極性の直流電圧の印加と第1の高周波の供給とが同期している。即ち、直流電源70からの直流電圧が下部電極18に印加される期間T1に第1の高周波が供給され、直流電源70からの下部電極18に対する直流電圧の印加が停止されている期間T2に、第1の高周波の供給が停止される。
図8の(b)に示す実施形態では、下部電極18に対して直流電源70からの負極性の直流電圧が周期的に印加され、また、プラズマの生成のために第1の高周波が周期的に供給される。図8の(b)に示す実施形態では、下部電極18に対する直流電源70からの負極性の直流電圧の印加の位相に対して、第1の高周波の供給の位相が反転している。即ち、直流電源70からの直流電圧が下部電極18に印加される期間T1に第1の高周波の供給が停止され、直流電源70からの下部電極18に対する直流電圧の印加が停止されている期間T2に、第1の高周波が供給される。
図8の(a)に示す実施形態及び図8の(b)に示す実施形態では、コントローラPCからの上述の制御信号が第1の高周波電源61に与えられる。第1の高周波電源61は、コントローラPCから制御信号の立ち上がり(又は立ち下がり)のタイミングで第1の高周波の供給を開始し、コントローラPCから制御信号の立ち下がり(又は立ち上がり)のタイミングで第1の高周波の供給を停止する。図8の(a)に示す実施形態及び図8の(b)に示す実施形態では、相互変調歪(Inter Modulation Distortion)による意図しない高周波の発生が抑制され得る。
以下、幾つかの別の実施形態に係るプラズマ処理装置について説明する。図9は、別の実施形態に係るプラズマ処理装置の電源系及び制御系を示す図である。図9に示すように、別の実施形態に係るプラズマ処理装置10Aは、第1の高周波電源61がコントローラPCを含んでいる点において、プラズマ処理装置10と異なっている。即ち、プラズマ処理装置10Aでは、コントローラPCは第1の高周波電源61の一部である。一方、プラズマ処理装置10では、コントローラPCは、第1の高周波電源61及び第2の高周波電源62とは別体である。プラズマ処理装置10Aでは、コントローラPCが第1の高周波電源61の一部であるので、コントローラPCからの上述の制御信号(パルス信号)は、第1の高周波電源61に送信されない。
図10は、更に別の実施形態に係るプラズマ処理装置の電源系及び制御系を示す図である。図10に示すプラズマ処理装置10Bは、複数の直流電源701及び702、並びに、複数の切替ユニット721及び722を備えている。複数の直流電源701及び702の各々は、直流電源70と同様の電源であり、下部電極18に印加される負極性の直流電圧を発生するように構成されている。複数の切替ユニット721及び722の各々は、切替ユニット72と同様の構成を有している。直流電源701は、切替ユニット721に接続されている。切替ユニット721は、切替ユニット72と同様に、直流電源701からの直流電圧の下部電極18に対する印加を停止可能に構成されている。直流電源702は、切替ユニット722に接続されている。切替ユニット722は、切替ユニット72と同様に、直流電源702からの直流電圧の下部電極18に対する印加を停止可能に構成されている。
図11は、図10に示すプラズマ処理装置を用いて実行される一実施形態のプラズマ処理方法に関連するタイミングチャートである。図11において、横軸は時間を示している。図11において、縦軸は、合成された直流電圧、直流電源701の直流電圧及び直流電源702の直流電圧を示している。直流電源701の直流電圧は、直流電源701から下部電極18に印加される直流電圧を示し、直流電源702の直流電圧は、直流電源702から下部電極18に印加される直流電圧を示す。合成された直流電圧は、各々の周期PDC内において下部電極18に印加される。図11に示すように、プラズマ処理装置10Bでは、各々の周期PDC内において下部電極18に印加される直流電圧は、複数の直流電源701及び702から順に出力される複数の直流電圧により形成される。即ち、プラズマ処理装置10Bでは、各々の周期PDC内において下部電極18に印加される直流電圧は、複数の直流電源701及び702から順に出力される複数の直流電圧の時間的な合成により生成される。このプラズマ処理装置10Bによれば、複数の直流電源701及び702の各々の負荷が軽減される。
図11に示すプラズマ処理方法を実行するプラズマ処理装置10Bでは、コントローラPCは、第1の制御信号を切替ユニット721に供給する。第1の制御信号は、直流電源701からの直流電圧が下部電極18に印加される期間において高レベル(又は低レベル)を有し、直流電源701からの直流電圧が下部電極18に印加されない期間において低レベル(又は高レベル)を有する。また、コントローラPCは、第2の制御信号を切替ユニット722に供給する。第2の制御信号は、直流電源702からの直流電圧が下部電極18に印加される期間において高レベル(又は低レベル)を有し、直流電源702からの直流電圧が下部電極18に印加されない期間において低レベル(又は高レベル)を有する。即ち、複数の直流電源に接続された複数の切替ユニット721、722にはそれぞれ、異なる位相を有する制御信号(パルス信号)が供給される。
図12は、図10に示すプラズマ処理装置を用いて実行される別の実施形態のプラズマ処理方法に関連するタイミングチャートである。図12において、横軸は時間を示している。図12において、縦軸は、合成された直流電圧、直流電源701の直流電圧及び直流電源702の直流電圧を示している。直流電源701の直流電圧は、直流電源701から下部電極18に印加される直流電圧を示し、直流電源702の直流電圧は、直流電源702から下部電極18に印加される直流電圧を示す。合成された直流電圧は、各々の周期内において下部電極18に印加される。図12に示すように、プラズマ処理装置10Bでは、隣り合う周期PDC1及び周期PDC2内において下部電極18に印加される直流電圧は、複数の直流電源701及び702から順に出力され且つ位相が90度ずれた複数の直流電圧により形成される。即ち、プラズマ処理装置10Bでは、隣り合う周期PDC1及び周期PDC2内において下部電極18に印加される直流電圧は、複数の直流電源701及び702から順に出力され且つ位相が90度ずれた複数の直流電圧の時間的な合成により生成される。複数の直流電源701及び702から順に出力され且つ位相が90度ずれた複数の直流電圧の時間的な合成により生成される直流電圧の周波数は、複数の直流電源701及び702の各々から出力される直流電圧の周波数の2倍となる。
図12に示すプラズマ処理方法を実行するプラズマ処理装置10Bでは、コントローラPCは、第3の制御信号を切替ユニット721に供給する。第3の制御信号は、直流電源701からの直流電圧が下部電極18に印加される期間において高レベル(又は低レベル)を有し、直流電源701からの直流電圧が下部電極18に印加されない期間において低レベル(又は高レベル)を有する。また、コントローラPCは、第4の制御信号を切替ユニット722に供給する。第4の制御信号は、直流電源702からの直流電圧が下部電極18に印加される期間において高レベル(又は低レベル)を有し、直流電源702からの直流電圧が下部電極18に印加されない期間において低レベル(又は高レベル)を有する。また、第3の制御信号の位相に対して、第4の制御信号の位相は90度ずれている。即ち、複数の直流電源701、702に接続された複数の切替ユニット721、722にはそれぞれ、位相が90度ずれた制御信号(パルス信号)が供給される。また、第3の制御信号の周波数及び第4の制御信号の周波数は、複数の直流電源701及び702から順に出力され且つ位相が90度ずれた複数の直流電圧の時間的な合成により生成される直流電圧の周波数の1/2倍となる。このプラズマ処理装置10Bによれば、複数の直流電源701、702に接続された複数の切替ユニット721、722の各々に供給される制御信号(パルス信号)の周波数を低下させることができる。その結果、このプラズマ処理装置10Bによれば、複数の切替ユニット721、722の各々の制御に伴う発熱を抑制することができる。
図13は、別の実施形態に係るプラズマ処理装置の電源系及び制御系を示す図である。図13に示すように、別の実施形態に係るプラズマ処理装置10Cは、直流電源702が省略されている点において、プラズマ処理装置10Bと異なっている。プラズマ処理装置10Cでは、直流電源701は、切替ユニット721及び切替ユニット722に接続されている。
図14は、更に別の実施形態に係るプラズマ処理装置の電源系及び制御系を示す図である。図14に示すプラズマ処理装置10Dは、波形調整器76を更に備える点で、プラズマ処理装置10とは異なっている。波形調整器76は、切替ユニット72と高周波フィルタ74との間で接続されている。波形調整器76は、直流電源70から切替ユニット72を経由して出力される直流電源、即ち、負極性の値と0Vの値を交互に有する直流電圧の波形を調整する。具体的に、波形調整器76は、下部電極18に印加される直流電圧の波形が略三角形状を有するように、当該直流電圧の波形を調整する。波形調整器76は、例えば積分回路である。
図15は、波形調整器76の一例を示す回路図である。図15に示す波形調整器76は、積分回路として構成されており、抵抗素子76a及びコンデンサ76bを有している。抵抗素子76aの一端は、切替ユニット72の抵抗素子72dに接続されており、抵抗素子76aの他端は、高周波フィルタ74に接続されている。コンデンサ76bの一端は抵抗素子76aの他端に接続されている。コンデンサ76bの他端はグランドに接続されている。図15に示す波形調整器76では、抵抗素子76aの抵抗値及びコンデンサ76bの静電容量値によって決定される時定数に応じて、切替ユニット72から出力される直流電圧の立ち上がりと立ち下がりに遅れが発生する。したがって、図15に示す波形調整器76によれば、擬似的に三角波の波形を有する電圧を下部電極18に印加することが可能となる。かかる波形調整器76を備えるプラズマ処理装置10Dによれば、チャンバ本体12の内壁に照射されるイオンのエネルギーを調整することが可能となる。
以上、種々の実施形態について説明してきたが、上述した実施形態に限定されることなく種々の変形態様を構成可能である。例えば、上述した種々の実施形態のプラズマ処理装置は、第2の高周波電源62を有していなくてもよい。即ち、上述した種々の実施形態のプラズマ処理装置は、単一の高周波電源を有していてもよい。
また、上述した種々の実施形態では、直流電源からの負極性の直流電圧の下部電極18に対する印加とその停止が、切替ユニットによって切り替えられているが、直流電源自体が負極性の直流電圧の出力とその出力停止を切り替えるように構成されていれば、切替ユニットは不要である。
また、上述した種々の実施形態では、直流電圧が下部電極18に印加される各々の周期を規定する周波数、即ち、DC周波数が1MHz未満の一定値に設定される場合を例に説明したが、時間の経過に応じて、DC周波数を低下させてもよい。これにより、基板がプラズマによりエッチングされて形成されるホールや溝の深さが深くなる場合であっても、ホール内や溝内においてイオンの直進性が低下することを抑制することができ、結果として、エッチング特性の劣化を抑制することができる。
また、上述した種々の実施形態の特徴的な構成は、任意に組み合わせて利用することが可能である。さらに、上述した種々の実施形態に係るプラズマ処理装置は容量結合型のプラズマ処理装置であるが、変形態様におけるプラズマ処理装置は、誘導結合型のプラズマ処理装置であってもよい。
なお、デューティー比が高い場合には、チャンバ本体12に照射されるイオンのエネルギーが大きくなる。したがって、デューティー比を高い値に設定すること、例えば、デューティー比を50%より大きい値に設定することにより、チャンバ本体12の内壁のクリーニングを行うことが可能となる。
以下、プラズマ処理装置10を用いたプラズマ処理方法に関して行った評価実験について説明する。
(第1の評価実験)
第1の評価実験では、プラズマ処理装置10の天板34のチャンバ12c側の面及びチャンバ本体12の側壁のそれぞれに、シリコン酸化膜を有するサンプルを貼り付け、また、静電チャック20上にシリコン酸化膜を有するサンプルを載置した。そして、第1の評価実験では、以下に示す条件のプラズマ処理を行った。なお、第1の評価実験では、下部電極18に周期的に印加する負極性の直流電圧のデューティー比を可変のパラメータとして用いた。
<第1の評価実験におけるプラズマ処理の条件>
・チャンバ12cの圧力:20mTorr(2.66Pa)
・チャンバ12cに供給されたガスの流量
C4F8ガス:24sccm
O2ガス:16sccm
Arガス:150sccm
・第1の高周波:100MHz、500Wの連続波
・下部電極18に対する負極性の直流電圧
電圧値:-3000V
周波数(DC周波数):200kHz
・処理時間:60秒
第1の評価実験では、天板34のチャンバ12c側の面に貼り付けられたサンプルのシリコン酸化膜のエッチング量(膜厚減少量)を測定した。また、第1の評価実験では、チャンバ本体12の側壁に貼り付けられたサンプルのシリコン酸化膜のエッチング量(膜厚減少量)を測定した。また、第1の評価実験では、静電チャック20上に載置されたサンプルのシリコン酸化膜のエッチング量(膜厚減少量)を測定した。図16の(a)は、第1の評価実験で求めた、デューティー比と、天板34のチャンバ12c側の面に貼り付けられたサンプルのシリコン酸化膜のエッチング量との関係を示すグラフである。図16の(b)は、第1の評価実験で求めた、デューティー比と、チャンバ本体12の側壁に貼り付けられたサンプルのシリコン酸化膜のエッチング量との関係を示すグラフである。図17は、第1の評価実験で求めた、デューティー比と、静電チャック20上に載置されたサンプルのシリコン酸化膜のエッチング量との関係を示すグラフである。
図17に示すように、静電チャック20上に載置されたサンプルのシリコン酸化膜のエッチング量のデューティー比に対する依存性は少なかった。また、図16の(a)及び図16の(b)に示すように、デューティー比が35%以下である場合に、天板34のチャンバ12c側の面に貼り付けられたサンプルのシリコン酸化膜のエッチング量は、相当に小さくなっていた。また、図16の(a)及び図16の(b)に示すように、デューティー比が35%以下である場合に、チャンバ本体12の側壁に貼り付けられたサンプルのシリコン酸化膜のエッチング量は、相当に小さくなっていた。したがって、第1の評価実験により、各々の周期PDC内において負極性の直流電圧が下部電極18に印加される期間が占めるデューティー比に対する、基板のエッチングレートの依存性は少ないことが確認された。また、デューティー比が小さい場合、特にデューティー比が35%以下である場合には、チャンバ本体12のエッチングレートが大きく低下すること、即ち、チャンバ本体12の内壁に照射されるイオンのエネルギーが小さくなることが確認された。なお、図16の(a)及び図16の(b)のグラフから、デューティー比が50%以下であれば、チャンバ本体12の内壁に照射されるイオンのエネルギーが相当に小さくなるものと推測される。
(第2の評価実験)
第2の評価実験では、プラズマ処理装置10の天板34のチャンバ12c側の面及びチャンバ本体12の側壁のそれぞれに、シリコン酸化膜を有するサンプルを貼り付け、また、静電チャック20上にシリコン酸化膜を有するサンプルを載置した。そして、第2の評価実験では、以下に示す条件のプラズマ処理を行った。
<第2の評価実験におけるプラズマ処理の条件>
・チャンバ12cの圧力:20mTorr(2.66Pa)
・チャンバ12cに供給されたガスの流量
C4F8ガス:24sccm
O2ガス:16sccm
Arガス:150sccm
・第1の高周波:100MHz、500Wの連続波
・下部電極18に対する負極性の直流電圧
電圧値:-3000V
周波数(DC周波数):200kHz
デューティー比:35%
・処理時間:60秒
また、比較実験において、プラズマ処理装置10の天板34のチャンバ12c側の面及びチャンバ本体12の側壁のそれぞれに、シリコン酸化膜を有するサンプルを貼り付け、また、静電チャック20上にシリコン酸化膜を有するサンプルを載置した。そして、比較実験では、以下に示す条件のプラズマ処理を行った。なお、比較実験における第2の高周波の条件は、静電チャック20上に載置されたサンプルのシリコン酸化膜のエッチング量(膜厚減少量)が第2の評価実験のプラズマ処理と比較実験のプラズマ処理とで略同等になるように設定した。
<比較実験におけるプラズマ処理の条件>
・チャンバ12cの圧力:20mTorr(2.66Pa)
・チャンバ12cに供給されるガスの流量
C4F8ガス:24sccm
O2ガス:16sccm
Arガス:150sccm
・第1の高周波:100MHz、500Wの連続波
・第2の高周波:400kHz、2500Wの連続波
・処理時間:60秒
第2の評価実験及び比較実験の各々では、天板34のチャンバ12c側の面に貼り付けられたサンプルのシリコン酸化膜のエッチング量(膜厚減少量)を測定した。また、第2の評価実験及び比較実験の各々では、チャンバ本体12の側壁に貼り付けられたサンプルのシリコン酸化膜のエッチング量(膜厚減少量)を測定した。図18の(a)は、第2の評価実験及び比較実験の各々で求めた、天板34のチャンバ12c側の面に貼り付けられたサンプルのシリコン酸化膜のエッチング量を示すグラフである。図18の(b)は、第2の評価実験及び比較実験の各々で求めた、チャンバ本体12の側壁に貼り付けられたサンプルのシリコン酸化膜のエッチング量を示すグラフである。図18の(a)のグラフにおいて、横軸は、天板34のチャンバ12c側の面に貼り付けられたサンプル内の測定位置のチャンバ12cの中心からの径方向の距離を示している。また、図18の(a)のグラフにおいて、縦軸は、天板34のチャンバ12c側の面に貼り付けられたサンプルのシリコン酸化膜のエッチング量を示している。図18の(b)のグラフにおいて、横軸は、チャンバ12c側壁に貼り付けられたサンプル内の測定位置の天板34のチャンバ12c側の面からの垂直方向の距離を示している。また、図18の(b)のグラフにおいて、縦軸は、チャンバ本体12の側壁に貼り付けられたサンプルのシリコン酸化膜のエッチング量を示している。
図18の(a)及び(b)に示すように、第2の高周波を用いた比較実験に比べて、負極性の直流電圧を用いた第2の評価実験では、天板34のチャンバ12c側の面に貼り付けられたサンプルのシリコン酸化膜のエッチング量が小さくなっていた。また、図18の(a)及び(b)に示すように、第2の高周波を用いた比較実験に比べて、負極性の直流電圧を用いた第2の評価実験では、チャンバ本体12の側壁に貼り付けられたサンプルのシリコン酸化膜のエッチング量が相当に小さくなっていた。したがって、下部電極18に周期的に負極性の直流電圧を印加することにより、以下の効果が確認された。即ち、静電チャック20上の基板に照射されるイオンのエネルギーの低下を抑制しつつ、チャンバ本体12の壁面及び上部電極30の壁面に照射されるイオンのエネルギーを大きく低減させることが可能であることが確認された。
以下、プラズマ処理装置10を用いたプラズマ処理方法に関して行った評価シミュレーションについて説明する。
(評価シミュレーション)
評価シミュレーションでは、以下に示す条件により、基板Wに照射されるイオンのエネルギー分布(IED)及びチャンバ本体12の内壁に照射されるイオンのエネルギー分布(IED)をシミュレーションした。なお、評価シミュレーションでは、DC周波数が1MHz未満の200kHzに設定された状態で、下部電極18に周期的に印加する負極性の直流電圧のデューティー比を可変のパラメータとして用いた。
<評価シミュレーションの条件>
・チャンバ12cの圧力:30mTorr(4.00Pa)
・チャンバ12cに供給された処理ガス:Arガス
・第1の高周波:100MHz、500Wの連続波
・下部電極18に対する負極性の直流電圧
電圧値:-450V
周波数(DC周波数):200kHz
図19A~図19Eは、デューティー比と基板Wに照射されるイオンのエネルギーとの関係の一例を示すシミュレーション結果である。図20A~図20Eは、デューティー比とチャンバ本体12の内壁に照射されるイオンのエネルギーとの関係の一例を示すシミュレーション結果である。
図19A~図19Eに示すように、基板Wに照射されるイオンのエネルギーの最大値は、デューティー比の変化に関わらず、予め定められた許容スペックの範囲内である約270eVに維持された。また、図20A~図20Eに示すように、デューティー比が50%以下である場合に、チャンバ本体12の内壁に照射されるイオンのエネルギーの最大値は、予め定められた許容スペックの範囲内である約60eV以下まで小さくなっていた。したがって、評価シミュレーションでは、DC周波数が1MHz未満の200kHzに設定される場合、直流電圧のデューティー比に対する基板Wのエッチングレートの依存性は、比較的に少ないことが確認された。また、DC周波数が1MHz未満の200kHzに設定された状態で、デューティー比が50%以下に調整される場合に、チャンバ本体12の内壁に照射されるイオンのエネルギーが予め定められた許容スペックの範囲内まで低下することが確認された。