以下、本発明の好適な実施形態について図面を用いて詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではない。また、以下で説明される構成の全てが本発明の必須構成要件であるとは限らない。
また、以下では、本発明に係る荷電粒子線装置として、電子線を照射して試料の観察や分析等を行う走査電子顕微鏡を例に挙げて説明するが、本発明に係る荷電粒子線装置は電子線以外の荷電粒子線(イオン等)を照射して試料の観察や分析等を行う装置であってもよい。
1. 第1実施形態
1.1. 電子顕微鏡
まず、第1実施形態に係る電子顕微鏡について図面を参照しながら説明する。図1は、第1実施形態に係る電子顕微鏡100の構成を示す図である。
電子顕微鏡100は、図1に示すように、電子源(荷電粒子線源の一例)2と、収束レンズ3と、対物レンズ4と、走査偏向器5と、試料ステージ6と、電子検出器8と、走査信号発生器10と、増幅器12と、信号調整器14と、信号取得部16と、信号変換器18と、操作部20と、表示部22と、記憶部24と、処理部30と、を含む。
電子源2は、電子を発生させる。電子源2は、例えば、陰極から放出された電子を陽極で加速し電子線(荷電粒子線の一例)を放出する電子銃である。
収束レンズ3は、対物レンズ4とともに、電子源2から放出された電子線を収束させて電子プローブ(荷電粒子プローブの一例)を形成する。収束レンズ3によって、電子プローブの径やプローブ電流(照射電流量)を制御することができる。
対物レンズ4は、試料Sの直前に配置された電子プローブを形成するためのレンズである。対物レンズ4は、例えば、コイルと、ヨークと、を含んで構成されている。対物レンズ4では、コイルで作られた磁力線を、鉄などの透磁率の高い材料で作られたヨークに閉じ込め、ヨークの一部に切欠きを作ることで、高密度に分布した磁力線を光軸OA上に漏洩させる。
走査偏向器5は、収束レンズ3と対物レンズ4とによって形成された電子プローブ(収束された電子線)を偏向させる。走査偏向器5は、電子プローブで、試料S上を走査するために用いられる。走査偏向器5は、走査信号発生器10が発生させた走査信号に基づき駆動し、電子線を偏向させる。この結果、電子プローブで試料S上を走査することができる。
試料ステージ6には、試料Sが載置される。試料ステージ6は、試料Sを支持している。試料ステージ6は、試料Sを移動させるための駆動機構を有している。
電子検出器8は、試料Sに電子線が照射されることによって試料Sで散乱し回折された電子を検出する。結晶性の試料Sに電子を入射すると、電子は散乱した後、結晶の格子面で回折され、回折を受けた電子(反射電子)を放出する。電子顕微鏡100では、この回折を受けた電子を含む反射電子を電子検出器8で検出する。
図2は、電子検出器8を模式的に示す平面図である。電子検出器8は、図2に示すように、n個の検出領域9(検出部の一例)を有している分割型検出器である。ただし、nは2以上の整数であり、好ましくは5以上の整数である。図示の例ではn=16である。n個の検出領域9は、それぞれ独立して電子を検出可能である。すなわち、n個の検出領域9の各々が、検出した電子の量に応じた検出信号を出力する。具体的には、第1の検出領域9から第1検出信号が出力され、第2の検出領域9から第2検出信号が出力され、・・・第nの検出領域9から第n検出信号が出力される。図2に示す例では、電子検出器8は、円環状の検出面を円周方向に分割することで、16個の検出領域9が形成されている。電子検出器8は、光軸OA上に配置されている。電子検出器8では、円環状の検出面の中心を光軸OAが通るように配置されている。
なお、検出器(検出面)の形状や、分割数は、図2に示す例に限定されない。また、電子検出器8として分割型検出器のかわりに、検出領域が1つの電子検出器を複数配置してもよい。この場合、1つの電子検出器が1つの検出部を構成している。
また、図1に示す例では、電子検出器8が対物レンズ4の直下に配置されているが、電子検出器8は、試料Sで回折された反射電子を検出することができればその位置は特に限定されない。
例えば、図示はしないが、電子顕微鏡100において、対物レンズ4として、レンズの磁場を積極的に試料S付近まで発生させることで低加速電圧での分解能を向上させたレンズ(シュノーケルレンズ)を用いた場合、電子検出器8を対物レンズ4内に配置してもよい。この場合、試料Sから放出された電子は対物レンズ4の中心穴を通過して対物レンズ4内に到達しやすいためである。
電子顕微鏡100では、電子源2から放出された電子線を収束レンズ3および対物レンズ4によって収束して電子プローブを形成し、走査偏向器5で電子線を偏向させることによって、電子プローブで試料S上を走査する。これにより、試料Sに入射した電子は試料S内で散乱した後、結晶の格子面によって回折される。回折を受けた電子(反射電子)は試料Sから放出され、電子検出器8の検出面には回折パターン(菊池パターン)が形成される。試料Sから放出された反射電子は、電子検出器8で検出される。
電子検出器8の検出領域9から出力された検出信号は、増幅器12で増幅される。増幅器12における検出信号の増幅率およびオフセット量等は、信号調整器14により調整される。
信号取得部16は、増幅された検出信号を取得する。信号取得部16は、例えば、n個の検出領域9から出力された第1~第n検出信号を同時に取得する。信号取得部16は、走査信号発生器10からの走査信号を受け付けて、試料Sにおける電子線の入射位置の情報を取得する。信号取得部16では、検出信号が電子線の入射位置の情報に関連づけられる。信号取得部16は、例えば、専用回路により実現できる。
信号取得部16から出力された電子線の入射位置に関連付けられた検出信号は、信号変換器18において処理部30で読み取り可能な信号に変換される。
操作部20は、ユーザーによる操作に応じた操作信号を取得し、処理部30に送る処理を行う。操作部20は、例えば、ボタン、キー、タッチパネル型ディスプレイ、マイクなどである。
表示部22は、処理部30によって生成された画像を表示するものである。表示部22は、LCD(Liquid Crystal Display)などのディスプレイにより実現できる。
記憶部24は、処理部30が各種の計算処理や制御処理を行うためのプログラムやデータ等を記憶している。また、記憶部24は、処理部30の作業領域として用いられ、処理部30が各種プログラムに従って実行した算出結果等を一時的に記憶するためにも使用される。記憶部24は、例えば、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、およびハードディスクにより実現できる。
処理部30は、記憶部24に記憶されているプログラムに従って、各種の制御処理や計算処理を行う。処理部30の機能は、各種プロセッサ(CPU(Central Processing Unit)等)でプログラムを実行することにより実現することができる。処理部30は、強度パターン情報生成部32と、パターン解析部33と、画像生成部34と、を含む。
強度パターン情報生成部32は、n個の検出領域9から出力された第1~第n検出信号の強度に基づく強度パターン情報を生成する。強度パターン情報は、後述するように第1~第n検出信号の強度を図形として表したものである。なお、強度パターン情報は、図形そのものの情報だけでなく、当該図形を行列として表したときの行列の情報、当該図形を数式として表したときの数式の情報などが含まれるものとする。
パターン解析部33は、強度パターン情報生成部32で生成された強度パターン同士を比較して、パターン解析情報を生成する。
画像生成部34は、試料Sに対する電子線の入射位置に関連づけられたパターン解析情報に基づいて、画像を生成する。画像生成部34がパターン解析情報に基づいて生成する画像は、後述する試料Sの結晶方位の分布を示す結晶方位画像および結晶粒の粒界を抽出した結晶粒界画像を含む。
強度パターン情報生成部32の処理、パターン解析部33の処理、および画像生成部34の処理については後述する。
1.2. 原理
まず、電子顕微鏡100における分析の原理について説明する。
結晶性の試料に電子を入射すると電子は散乱および回折され、試料から回折を受けた電子(反射電子)が放出される。走査電子顕微鏡でこの回折を受けた反射電子を検出して走査電子像を取得すると、結晶方位によって明るさが変化するチャネリングコントラストが得られる。電子の照射条件が同じでも検出器の位置を変えると回折の受け方が異なる電子を検出することとなり、チャネリングコントラストも変化する。そのため、複数の反射電子検出器を使って反射電子を検出し、それぞれの反射電子検出器の検出信号の強度から試料の結晶方位を解析できる。
1.2.1. シミュレーション
シミュレーションで検出器の位置によって回折による信号強度の差があることを確認した。
シミュレーションの内容は以下のとおりである。
走査電子顕微鏡の検出器として、図2に示すように、円周方向に16等分された円環状の反射電子検出器を用い、試料の上方に配置した(図1参照)。反射電子検出器には、回折パターンが形成されているものとして、所定時間に検出された反射電子の強度を各検出領域で積分して、各検出領域の信号強度とした。
図3および図4は、シミュレーションの結果を示す図である。図3は、試料をある方位の結晶としたときの各検出領域の信号強度を示している。図4は、同じ試料で結晶の方位を変えた時の各検出領域の信号強度を示している。図3および図4では、明るい領域は信号量が多く、暗い領域は信号量が少ないことを示している。シミュレーションの結果、試料の結晶方位によって各検出領域の信号強度が異なることがわかった。
1.2.2. 実施例
次に、図2に示すように、円周方向に16等分された円環状の反射電子検出器を用意して走査電子顕微鏡に搭載し、試料の結晶方位によって分割型検出器の各検出領域の信号強度が異なるか調べた。
図5は、分割型検出器における信号強度の分布を示す図である。扇型の領域は、検出領域を示しており、扇形の明るさは信号強度を示している。具体的には、明るい検出領域は信号量が多く、暗い検出領域は信号量が少ないことを示している。
分割型検出器における信号強度の分布を見ていくと、同一結晶粒内では信号強度の分布が似ており、結晶方位が異なる結晶粒では信号強度の分布が大きく異なっている。また、離れた結晶粒同士でも同一の結晶方位の結晶粒では、信号強度の分布が類似している。
このことから分割型検出器における信号強度の分布から、結晶粒の結晶方位の解析が可能であることがわかった。
1.3. 処理
次に、電子顕微鏡100の処理部30の処理について説明する。
1.3.1. 検出信号の取得
まず、処理部30において検出信号を取得する処理について説明する。
処理部30には、信号取得部16で取得されたn個の検出領域9から出力された第1~第n検出信号が、走査信号で特定される試料Sに対する電子線の入射位置の情報とともに入力される。
試料Sに対する電子線の入射位置をx,y、電子検出器8の検出領域9の数をnとして検出領域z=1,2,・・・,nとし、x,y,zにおける検出信号の信号強度を3次元の配列s(x,y,z)とする。以下、この配列s(x,y,z)を信号強度配列という。信号強度配列s(x、y、z)は、記憶部24に記憶される。
このようにして取得した信号強度配列s(x,y,z)に基づいて、画像(走査像)を生成することができる。
例えば、電子線の入射位置と、その入射位置における各検出領域9の検出信号の強度の和を用いて画像を作成すれば、反射電子を検出して得られる走査像、すなわち、反射電子像と同様の画像が得られる。この画像は、画像の配列をi(x,y)とすると、次式で表すことができる。
また、次式で示すように、単一の検出領域9の検出信号の強度を用いて画像を生成してもよい。
また、複数の検出領域9の検出信号に対して、加算、あるいは減算などの信号処理を行って画像を生成してもよい。これらの画像を生成する処理は、画像生成部34で行われる。
1.3.2. 強度パターンの生成方法
次に、強度パターンを生成する方法について説明する。強度パターンは、強度パターン情報生成部32で生成される。
第1~第n検出信号の強度(以下単に「信号強度」ともいう)は、同じ結晶方位では同様の信号強度となる。そのため、試料S上の任意の位置(以下「基準位置」ともいう)の信号強度を基準として、試料S上の他の位置(以下「解析位置」ともいう)の信号強度と比較することで、基準位置の結晶方位と解析位置の結晶方位とが同じか否かを判断できる。
基準位置の信号強度と解析位置の信号強度からそれぞれ強度パターンを生成し、これら2つのパターンを比較することで、結晶性の評価を行う。以下、その手法について説明する。
まず、信号強度を強度パターンに変換する方法の一例を説明する。
検出領域9の数をnとすると、ある入射位置x,yでの第1~第n検出信号の強度は、信号強度配列sを用いて表すと、d1=s(x,y,1)、d2=s(x,y,2)、・・・、dn=s(x,y,n)となる。
図6は、第1~第n検出信号の強度を示すグラフである。なお、図6では、n=16である。
d1,d2,・・・,dnのなかから最も値が小さいものをdminとした場合、強度パターンaは、次式で求められる。
a=(d1/dmin,d2/dmin,・・・,dn/dmin)
このように、第1~第n検出信号の強度を、最も値の小さい検出信号の強度で規格化する。これにより、第1~第n検出信号の強度を得ることができる。この信号強度から、上記の行列で表される強度パターンa(強度パターン情報の一例)が得られる。
図7は、図6に示す第1~第n検出信号の強度に基づき生成された強度パターンをレーダーチャートで示した図である。
図7は、第1~第n検出信号の強度軸の原点を1つにまとめて放射状にし、第1~第n検出信号の強度軸に、規格化された第1~第n検出信号の強度をプロットし、隣同士の点を直線で結んで形成された図形である。
生成された強度パターンは、電子線の入射位置に対応づけられた走査像の画素ごとに記憶部24に記憶される。
次に、強度パターンの生成方法の変形例について説明する。
上記では、第1~第n検出信号を最小値dminで規格化して強度パターンを生成したが、強度パターンの生成方法はこれに限定されない。
例えば、d1,d2,・・・,dnから最も値が小さいものをdminとし、最も値が大きいものをdmaxとした場合に、強度パターンaを、次式で求めてもよい。
a=((d1-dmin)/(dmax-dmin),(d2-dmin)/(dmax-dmin),・・・,(dn-dmin)/(dmax-dmin))
ここで、電子線の電流量が少ない条件では、検出信号のSN比(Signal to Noise Ratio)が悪くなってしまい、後述するパターン解析(パターン認識とも呼ばれる)の精度が低下してしまう。そこで、解析位置の周辺の強度パターンを平均して求めた行列を強度パターンとして利用してもよい。これにより、パターン解析の精度を向上できる。このように、強度パターンを生成する際に、パターン解析の精度を向上させるための処理を行ってもよい。
例えば、上記の例では、検出器の数nと、強度パターンaを表す行例の大きさは一致していたが、次式のように、検出器の数nと、強度パターンaを表す行列の大きさは一致していなくてもよい。
例えば、強度パターンの要素として、第1~第n検出信号の強度の平均を加えてもよい。この場合、検出器の数nに対して第1~第n検出信号の強度を使って生成したパターンに加えて第1~第n検出信号の強度の平均が加わるので、得られる強度パターンの要素数はn+1になる。
ここで、例えば、図2に示すように、円環状の検出面を持つ分割型検出器では、試料面が検出面に対して平行でない場合、信号強度は、この試料面の傾きの影響を受け、パターン解析に影響してしまう。そこで、隣り合う検出領域9の検出信号の強度の差をとって強
度パターンを生成すると、例えば、次式のように、試料面の傾きによる信号強度の差に比べて、回折による結晶方位による信号強度の差が強調されるので、パターン解析の精度が向上する。
a=((d1-dn)/dmin,(d2-d1)/dmin,・・・,(dn-dn-1)/dmin)
また、例えば、電子線のドース量が少ないと統計誤差により強度パターンにノイズが入り正しくパターン解析できない場合がある。そのため、電子線の入射位置の周囲の信号強度を平均して強度パターンを生成してもよい。これにより、統計量を増やしてノイズを減らすことができるため、パターン解析の精度を向上できる。
1.3.3. 強度パターンの比較
次に、生成された強度パターンを、基準となる強度パターンと比較して、パターンの類似性を評価する方法について説明する。この処理は、パターン解析部33で行われる。
図8は、強度パターンを取得した位置を示す図である。図9は、図8の点p1で得られた強度パターンaと、図8の点p2で得られた強度パターンbと、を比較した図である。なお、図9では、強度パターンaを実線で示し、強度パターンbを破線で示している。図10は、図8の点p1で得られた強度パターンaと、図8の点p3で得られた強度パターンcと、を比較した図である。なお、図10では、強度パターンaを実線で示し、強度パターンcを破線で示している。
図9において強度パターンaと強度パターンbとは類似しているので、点p1の結晶方位と点p2の結晶方位とは同じであるといえる。これに対して、図10において、強度パターンaと強度パターンcとは類似していないので、点p1の結晶方位と点p3の結晶方位とは異なっているといえる。
図9および図10に示すように、2つの強度パターンを重ねて目視で確認すればパターンの類似性がわかりやすい。しかしながら、結晶性の評価を行うために生成したすべての強度パターンに対して、目視での確認を行うことは困難である。そのため、パターン解析部33では、数学的にパターンを比較する。
ここでは、パターン解析の方法として、ユークリッド距離を用いた場合について説明する。パターン解析の方法は、これに限定されず、その他の公知のパターン解析の方法(例えば、最近傍決定則(nearest neighbor rule)を用いた方法)も適用可能である。
まず、基準となる強度パターン(以下「基準強度パターン」ともいう)を決定する。基準強度パターンは、例えば、生成された強度パターンのなかから選択された強度パターンである。すなわち、基準強度パターンとして、走査像を構成する複数の画素に対応して生成された複数の強度パターンのうちの1つの強度パターンを用いる。
例えば、基準強度パターンは、走査像の中心に位置する画素における強度パターンであってもよい。また、基準強度パターンは、走査像の任意の画素における強度パターンであってもよい。
解析対象となる画素の強度パターン(以下、「解析強度パターン」ともいう)をaとし、基準強度パターンをbとしたときに、基準強度パターンbと解析強度パターンaのユークリッド距離Dを求めることでパターンの類似性を判断することができる。
ユークリッド距離Dは、次式(1)で求められる。
ここで、aiは解析強度パターンaの要素であり、biは基準強度パターンbの要素である。nは強度パターンの要素数である。ここでのnは検出領域9の数と同じであるが、必ずしも同じであるとは限らない。ユークリッド距離Dが小さいほど解析強度パターンaと基準強度パターンbが類似しているといえる。ノイズなどによるパターンのばらつきを考慮して、解析対象となる画素において、基準強度パターンbとのユークリッド距離Dが所定値以下であれば、解析対象となる画素は、基準強度パターンの結晶方位と同じであると判断する。
1.3.4. 画像の生成
次に、画像の生成方法について説明する。画像を生成する処理は、画像生成部34で行われる。
(1)パターン解析画像の生成
まず、パターン解析の結果を反映した画像(以下「パターン解析画像」ともいう)を生成する方法について説明する。
以下では、走査像の任意の画素を(x,y)とし、その画素における強度パターンをax,yとし、パターン解析部33で得られた解析結果をユークリッド距離Dx,yとする。ここでは基準強度パターンと解析強度パターンax,yのユークリッド距離がDx,yとなる。
観察視野中に、結晶方位cd1と結晶方位cd2の領域があった場合、結晶方位cd1の強度パターンを基準強度パターンbとし、結晶方位cd2の領域に含まれる複数の画素において、基準強度パターンbとのユークリッド距離Dx,yを求める。これらの画素は、同じ結晶方位cd2の領域に含まれるため、ユークリッド距離Dx,yは、近い値になる。例えば複数の画素を(x1,y1)と、(x2,y2)としたときにそれぞれの画素における強度パターンはax1,y1、ax2,y2になる。(x1,y1)と、(x2,y2)は同じ結晶方位内の点なのでax1,y1とax2,y2の強度パターンは似ている。そのため、それぞれの強度パターンと基準強度パターンbのユークリッド距離Dx1,y1とユークリッド距離Dx2,y2も近い値になる。
したがって、観察視野中の任意の点(例えば視野の中心)の強度パターンを基準強度パターンbとし、走査像を構成する各画素において、基準強度パターンbとのユークリッド距離Dx,yを求める。そして、各画素におけるユークリッド距離Dx,yの大きさを明るさに対応させて画像を生成すると、結晶方位の異なる結晶粒が異なる明るさで表示される画像(パターン解析画像)になる。
図11は、視野中心の画素における強度パターンを基準強度パターンbとした場合のパターン解析画像である。図12は、矢印で示す画素における強度パターンを基準強度パターンbとした場合のパターン解析画像である。
図11および図12に示すように、基準強度パターンbが異なると、得られるパターン解析画像が異なる。図示の例では、基準強度パターンbと解析強度パターンaが類似する
場合(すなわちユークリッド距離Dx,yが小さい場合)その画素は暗く、基準強度パターンbと解析強度パターンaが類似しない場合(すなわちユークリッド距離Dx,yが大きい場合)その画素は明るくなる。しかしながら、この手法では、明るい画素同士が必ずしも近い強度パターンであるとは限らない。
そこで、基準強度パターンを複数用意して、複数の基準強度パターンのそれぞれについてユークリッド距離Dx,yを求めることでより正確なパターン解析を行うことができる。
例えば、まず、任意の画素における強度パターンを基準強度パターンb1とし、走査像を構成する各画素において、基準強度パターンb1とのユークリッド距離D1x,yを求める。
次に、走査像を構成する複数の画素のなかから、ユークリッド距離D1x,yが最大となる画素を選択し、当該画素における強度パターンを新たな基準強度パターンb2とする。そして、走査像を構成する各画素において、基準強度パターンb2とのユークリッド距離D2x,yを求める。
次に、走査像を構成する複数の画素のなかから、ユークリッド距離D1x,yとユークリッド距離D2x,yの和が最大となる画素を選択し、当該画素における強度パターンを新たな基準強度パターンb3とする。そして、走査像を構成する各画素において、基準強度パターンb3とのユークリッド距離D3x,yを求める。
次に、走査像を構成する各画素の明るさを、ユークリッド距離D1x,yの大きさに対応させて第1走査像を形成する。このとき、第1走査像には赤色を割り当てる。同様に、走査像を構成する各画素の明るさを、ユークリッド距離D2x,yの大きさに対応させて第2走査像を形成する。このとき、第2走査像には緑色を割り当てる。同様に、走査像を構成する各画素の明るさを、ユークリッド距離D3x,yの大きさに対応させて第3走査像を形成する。このとき、第3走査像には青色を割り当てる。
次に、第1走査像、第2走査像、および第3走査像を重ね合わせて、1つの画像とする。これにより、3つの基準強度パターンb1,b2,b3を用いて生成された試料Sのパターン解析画像が得られる。
図13は、基準強度パターンを3つ用いて生成された試料Sのパターン解析画像である。
図13に示すように、基準強度パターンを3つ用いて生成されたパターン解析画像は、パターンの類似性が高い画素が近い色となる。すなわち、図13において同じ色で表される画素は、同じ結晶方位を持つことを示している。図13では、3つの基準強度パターンを用いているため、例えば、1つの基準強度パターンを用いる場合と比べて、結晶方位の違いをより正確に画像に反映できる。
図14は、試料Sの反射電子像である。なお、図13に示すパターン解析画像と図14に示す反射電子像は、同じ視野である。
図14に示すように、反射電子像でも、チャネリングコントラストによって結晶粒が判別できるが、コントラストが近い結晶粒が隣接していると境界がわかりにくい。これに対して、図13に示すパターン解析画像では、反射電子像に比べて、結晶粒の境界が明確である。
なお、ここでは、基準強度パターンを3つ用いてパターン解析画像を生成する場合について説明したが、パターン解析画像を生成するために用いられる基準強度パターンの数は特に限定されない。また、基準強度パターンの選択方法も上記の例に限定されない。
(2)結晶粒界画像の生成
次に、結晶粒界が抽出された画像(以下「結晶粒界画像」ともいう)を生成する方法について説明する。
任意の画素(x,y)における強度パターンを基準強度パターンとし、その周りの画素において、基準強度パターンとのユークリッド距離を求めてその合計を算出する。画素(x,y)の周りの画素に異なる結晶方位があると、ユークリッド距離の合計は大きくなる。そのため、ユークリッド距離の合計から粒界の有無を判別できる。以下、結晶粒界画像の生成方法について、より具体的に説明する。
走査像において、基準となる画素を基準画素(x,y)とし、その基準画素における強度パターンを基準強度パターンとする。そして、基準画素(x,y)の周囲の画素(x,y-1)、(x-1,y)、(x+1,y)、(x、y+1)について、ユークリッド距離を求める。
ここでは、xの範囲を0~xmaxとし、yの範囲を0~ymaxとする。なお、基準画素(0,0)の場合、周囲の画素が(0,-1)、(-1,0)、(1,0)、(0,1)となり、上記の範囲外となるため、基準画素は、周囲の画素が上記の範囲内となるように設定する。
最初に、基準画素(1,1)として、その周囲の画素(1,0)、(0,1)、(2,1)、(1,2)について、それぞれユークリッド距離を算出し、これらの合計Db1,1を求める。
具体的には、まず、基準画素(1,1)における強度パターンと画素(1,0)における強度パターンのユークリッド距離を算出する。同様に、基準画素(1,1)における強度パターンと画素(0,1)における強度パターンのユークリッド距離、基準画素(1,1)における強度パターンと画素(2,1)における強度パターンのユークリッド距離、基準画素(1,1)における強度パターンと画素(1,2)における強度パターンのユークリッド距離を算出する。そして、算出された4つのユークリッド距離の合計Db1,1を求める。
同様に、基準画素(2,1)とし、周囲の画素(2,0)、(1,1)、(3,1)、(2,2)について、それぞれユークリッド距離を算出し、これらの合計Db2,1を求める。この処理を、周囲の画素とのユークリッド距離が計算可能な走査像の全ての画素について行う。
このように、周囲の画素とのユークリッド距離が計算可能な走査像の全ての画素について、基準画素となる画素を変更しながら、その周囲の画素においてそれぞれユークリッド距離を算出し、その合計を求める処理を行う。これにより、合計Db1,1、合計Db2,1、・・・、合計Dbxmax-1,ymax-1が求められる。
次に、合計Db1,1、合計Db2,1、・・・、合計Dbxmax-1,ymax-1を用いて、画像を生成する。例えば、合計Db1,1、合計Db2,1、・・・、合計Dbxmax-1,ymax-1のなかから、最大値と最小値を求め、最大値を白、最小
値を黒となるように画像の明るさをグレースケールで表し画像とする。この結果、結晶粒界が強調された結晶粒界画像が得られる。
図15は、試料Sの結晶粒界画像である。図15に示すように、結晶粒界画像では、結晶粒界が白く強調されて表示される。
なお、結晶粒界画像の生成方法は、上記の手法に限定されない。例えば、合計Db1,1、合計Db2,1、・・・、合計Dbxmax-1,ymax-1について、その値が所定値以上であれば白、所定値未満であれば黒として2値画像を生成することで、結晶粒界画像を生成してもよい。
また、上記では、基準画素(x,y)の上下左右の画素において、ユークリッド距離を算出する場合について説明したが、ユークリッド距離を算出する対象となる周囲の画素の範囲を、さらに広げてもよい。例えば、粒界が大きい場合は、ユークリッド距離を算出する対象となる周囲の画素を、基準画素から離れた画素としてもよい。
また、検出信号のノイズが大きい場合には、ノイズの影響を受けてユークリッド距離が大きくなり粒界と誤認識される場合がある。そのため、基準画素における強度パターンとその周囲の画素における強度パターンとの平均を、基準強度パターンとしてもよい。これにより、ノイズの影響を低減できる。
また、結晶粒界画像をリアルタイムで観察したい場合には、電子プローブを走査しながら信号強度配列s(x,y,z)を取得する。そして、電子線の入射位置に対応する画素を、基準画素(x,y)とし、すでに電子線が通過した領域に対応する画素(x,y-1)、(x-1,y)について、ユークリッド距離を算出し、その合計を求めて、結晶粒界画像を生成してもよい。このように、周囲の画素の取り方は、特に限定されない。
(3)結晶粒の大きさの測定
なお、走査像を構成する画素ごとに記憶された強度パターンを用いて、結晶粒の大きさを測定することができる。結晶粒の大きさを測定する処理は、画像生成部34で行われる。
例えば、ユーザーが結晶粒の大きさを知りたいときに、走査像において結晶粒が含まれる任意の画素を基準画素として指定すれば、走査像を構成する他の画素において、基準画素における強度パターン(基準強度パターン)とのユークリッド距離を求めることで、結晶粒の大きさを測定できる。以下、その方法について説明する。
ユーザーが指定した画素における強度パターンを基準強度パターンとし、走査像のすべての画素において、ユークリッド距離Dx,yを求める。ユークリッド距離Dx,yが所定値以下である画素(x,y)は同一方位であるが、結晶粒としては別のものである可能性がある。そのため、画素(x,y)を含みユークリッド距離Dx,yが所定値以下になるような領域を抽出する。抽出された領域の画素数を求め、スキャン幅から1画素当たりの面積を計算する。そして、画素数と1画素当たりの面積の積から指定された結晶粒の面積を求める。
1.4. 処理の流れ
次に、第1実施形態に係る電子顕微鏡100の処理部30の処理の流れについて説明する。図16は、第1実施形態に係る電子顕微鏡100の処理部30の処理の流れの一例を示すフローチャートである。
電子顕微鏡100では、電子プローブで試料Sを走査し、電子線の入射位置からの反射電子を複数の検出領域9で検出して、入射位置ごとに(すなわち、走査像を構成する画素ごとに)、n個の検出領域9から出力された第1~第n検出信号を取得する。
処理部30には、信号取得部16で取得された第1~第n検出信号が、走査信号で特定される試料Sに対する電子線の入射位置の情報とともに入力される。
強度パターン情報生成部32は、第1~第n検出信号の強度に基づく強度パターンを生成する(S100)。
具体的には、強度パターン情報生成部32は、第1~第n検出信号の強度d1,d2,・・・,dnを取得し、第1~第n検出信号の強度d1,d2,・・・,dnを規格化して、第1~第n検出信号の強度に基づく強度パターンa=(d1/dmin,d2/dmin,・・・,dn/dmin)を生成する。
強度パターン情報生成部32は、電子線の入射位置ごとに(すなわち走査像を構成する画素ごとに)、上記の処理を行って強度パターンを生成する。強度パターン情報生成部32は、生成された強度パターンを電子線の入射位置に関連づけて記憶部24に記憶させる。すなわち、記憶部24には、走査像を構成する複数の画素の各々に対応して、強度パターンaが記憶される。
次に、パターン解析部33は、記憶部24に記憶された強度パターンaに基づいて、電子線の入射位置ごとにパターン解析情報を生成する(S102)。
例えば、パターン解析画像を生成する場合、パターン解析部33は、走査像を構成する画素ごとに、基準となる基準強度パターンとのユークリッド距離を求める。このユークリッド距離をパターン解析情報とする。
また、例えば、結晶粒界画像を生成する場合、パターン解析部33は、周囲の画素とのユークリッド距離が計算可能な走査像の全ての画素について、基準画素となる画素を変更しながら、その周囲の画素についてそれぞれユークリッド距離を算出し、その合計を求める処理を行う。この合計をパターン解析情報とする。
次に、画像生成部34は、パターン解析部33で生成されたパターン解析情報に基づいて、画像を生成する(S104)。
例えば、パターン解析画像を生成する場合、画像生成部34は、ユークリッド距離に応じて画素の明るさを設定し、パターン解析画像を生成する。
また、例えば、結晶粒界画像を生成する場合、画像生成部34は、パターン解析部33における解析で得られたユークリッド距離の合計値に応じて、画素の明るさを設定し、結晶粒界画像を生成する。
画像生成部34は、生成した画像を表示部22に表示させる制御を行う(S106)。
1.5. 特徴
電子顕微鏡100は、例えば、以下の特徴を有する。
電子顕微鏡100は、試料Sに電子線が照射されることによって試料Sで回折された電子を検出する複数の検出領域9を備えた電子検出器8と、複数の検出領域9から出力され
た第1~第n検出信号の強度に基づく強度パターンを生成する強度パターン情報生成部32と、を含む。電子顕微鏡100では、第1~第n検出信号の強度に基づいて、強度パターンを生成することができるため、例えば、EBSD法による測定を行うための専用の検出器や、ECP法による測定を行うための特殊な照射系が不要であり、容易に、試料Sの結晶性の情報を得ることができる。
さらに、電子顕微鏡100では、複数の検出領域9を備えた電子検出器8によって反射電子を検出することで測定が可能であるため、例えばEBSD法やECP法による測定に比べて、短時間で測定が可能である。
例えば、反射電子像を取得することで結晶粒の大きさを評価する場合には、異なる結晶粒も同じ明るさで表示されることがあるので結晶粒の大きさを正確に評価できない。これに対して、電子顕微鏡100では、強度パターンから画像を生成するため、このような問題が生じない。そのため、電子顕微鏡100では、反射電子像に比べて正確に結晶粒の大きさの評価が可能な画像(パターン解析画像、結晶粒界画像)を得ることができる。
電子顕微鏡100では、電子プローブで試料S上を走査するための走査偏向器5と、試料Sに対する電子線の入射位置に関連づけられた強度パターンを解析するパターン解析部33と、パターン解析部33での強度パターンの解析結果に基づいて、画像を生成する画像生成部34と、を含む。そのため、電子顕微鏡100では、試料Sの結晶方位が反映されたパターン解析画像や、結晶粒界が抽出された結晶粒界画像を得ることができる。したがって、電子顕微鏡100では、試料Sの結晶性の情報を、容易に短時間で得ることができる。
電子顕微鏡100では、パターン解析部33は試料Sに対する電子線の入射位置に関連づけられた強度パターンに基づいて、基準強度パターン情報を取得する。そのため、電子顕微鏡100では、例えば、注目する結晶粒の強度パターンを基準強度パターンとしてパターン解析画像を生成することによって、注目する結晶粒と他の結晶粒との結晶方位の違いを可視化することができる。
電子顕微鏡100では、パターン解析部33は基準となる基準強度パターンと生成された強度パターンを比較し、画像生成部34は試料Sの結晶粒界が抽出された結晶粒界画像を生成する。そのため、電子顕微鏡100では、試料Sの結晶粒界画像を、容易に、短時間で得ることができる。
電子顕微鏡100では、試料Sで回折された電子を、複数の検出領域9を有する分割型検出器(電子検出器8)で検出する。そのため、電子顕微鏡100では、例えばEBSD法やECP法による測定に比べて、短時間で測定が可能である。
電子顕微鏡100では、強度パターン情報生成部32は、複数の検出領域9から出力された複数の検出信号の強度を規格化して、強度パターンを生成する。そのため、電子顕微鏡100では、容易に、結晶性の情報を得ることができる。
2. 第2実施形態
2.1. 電子顕微鏡
次に、第2実施形態に係る電子顕微鏡について図面を参照しながら説明する。図17は、第2実施形態に係る電子顕微鏡200の構成を示す図である。以下、第2実施形態に係る電子顕微鏡200において、第1実施形態に係る電子顕微鏡100の構成部材と同様の機能を有する部材については同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
電子顕微鏡200では、図17に示すように、記憶部24には、結晶方位ごとに、基準強度パターンが登録されたデータベース26が記憶されている。
上述したように、結晶方位が同じであれば、強度パターンも同じになる。そのため、結晶方位が既知の試料の強度パターンを基準強度パターンとして用いて、解析位置の解析強度パターンを基準強度パターンと比較することによって、解析位置の結晶方位が、基準強度パターンの結晶方位と同じか否かの判断が可能である。
そのため、試料の組成および試料の結晶方位ごとに、基準強度パターンが登録されたデータベース26を用意し、あらかじめ記憶部24に記憶させる。データベース26に登録される基準強度パターンは、あらかじめEBSD法やECP法などによって結晶方位を測定した試料を用いて強度パターンを取得することで得ることができる。
データベース26には、強度パターンを測定したときの測定条件も登録する。これは、同じ試料の同じ結晶方位でも測定条件によって回折電子の強度分布が変わる場合があるためである。そのため、解析対象となる試料Sの強度パターンを取得する際には、データベース26に登録された測定条件と同じ測定条件で測定を行うことが好ましい。
データベース26に登録される測定条件は、強度パターンの形成に影響する、加速電圧、作動距離、電子線の入射角などの条件である。必要に応じて複数の測定条件およびその測定条件での強度パターンがデータベース26に登録されていてもよい。
また、シミュレーションによって、所望の結晶方位の強度パターンを得て、基準強度パターンとしてデータベース26に登録してもよい。
また、解析対象となる試料Sの測定の前に、データベース26が記憶部24に記憶されていなくてもよい。試料Sの測定条件等からシミュレーション計算して様々な結晶方位の強度パターンを得て、当該強度パターンを基準強度パターンとしてもよい。
なお、本実施形態において、検出領域の数や、測定条件、試料の結晶性などによっては、異なる結晶方位であっても強度パターンが類似している(すなわちユークリッド距離が小さい)場合もある。そのため、解析強度パターンが、複数の基準強度パターンに類似すると判断された場合には、当該画素について結晶方位の候補が複数あることをユーザーに通知する処理を行ってもよい。
なお、上記では、電子検出器8と結晶方位の回転とに関する説明を省略したが、実際の解析では、解析位置と基準位置とで試料Sの法線方向から観測した結晶方位が一致していても、試料面で結晶方位が回転していれば、解析強度パターンと基準強度パターンとは一致しない。
図18は、同じ結晶方位であって、かつ、結晶方位の回転角が異なる場合に、基準強度パターンbと解析強度パターンaを比較した図である。図19は、図18に示す基準強度パターンbを112.5°回転させて、解析強度パターンaと比較した図である。なお、図18および図19では、基準強度パターンbを破線で示し、解析強度パターンaを実線で示している。
図18では、基準強度パターンbと解析強度パターンaとは、異なるように見える。しかし、図19に示すように、基準強度パターンbを回転させると、基準強度パターンbと解析強度パターンaとは一致する。そのため、結晶方位を特定する際には、結晶方位の回転も考慮する必要がある。以下、結晶方位の回転を考慮した解析方法について説明する。
結晶方位の回転を考慮するにあたり、試料Sが回転しても同様の強度パターンを取得できる必要があるため、複数の検出領域9は光軸OAを中心に回転対称に配置される。光軸OAに沿って電子線が進行するため、図2に示すように、電子検出器8は、検出面が中心に貫通孔の空いた円形である。なお、例えば、電子検出器8の検出面を、多角形を円周方向に等分割した形状としてもよい。また、複数の検出領域9を有する電子検出器8として、単一検出領域を有した検出器を複数用意し、それらが回転対称になるように配置してもよい。
また、検出信号を増幅する場合、それぞれの増幅率は一致させる。同様に、検出信号間でゼロ点がずれている場合は、ゼロ点を一致させる。
ここで、回転対称な検出面を回転させて、元の検出面と一致する最小の角度をφdとし、基準強度パターンbと解析強度パターンaとの角度のずれをφpとする。m=φp/φdとし、mが整数、あるいは整数に近い値の場合(例えばφd≒φpなど)は、基準強度パターンと解析強度パターンは回転しているので、パターン解析する際にパターンの回転を考慮する。
例えば、強度パターンの回転を考慮すると、ユークリッド距離Dは次式(2)で求めることができる。
rはi+j≦nのときに、r=i+j、i+j>nのときにr=i+j-nとなり、jを1~nに変化させると強度パターンが回転するので、回転を考慮したパターン解析ができる。ここでは、解析強度パターンを回転されているが、基準強度パターンを回転させてもよい。例えば、パターン解析部33は、はじめj=1に取り、ユークリッド距離Dを演算して、Dの値が所定値を越えていた場合、jを1増やし、再びユークリッド距離Dを計算する。この計算をj=16まで続ける。パターン解析部33は、jを1から16までの間で変化させて、ユークリッド距離Dの値が所定値以下あれば、計算を終了させて、解析対象となる画素は、基準強度パターンの結晶方位と同じであると判断し、所定値以下にならなかった場合には、1≦j≦16の範囲におけるユークリッド距離Dの最小値を用いてパターンの類似性を評価する。
mが小数になる場合、例えば、φd>φpでは、解析強度パターンを回転させても、基準強度パターンと一致しない可能性がある。これは、特に、検出領域9の数が少ない場合に起こりうる。例えば、結晶方位100の試料Sに電子線を垂直入射し、試料S上方の電子検出器8に入射する回折電子の回転方向の強度分布は、4回対称になる。仮に、検出領域9の数が16個の電子検出器8でこの強度分布を取得すると、ある向きでは、図20に示すような結果が得られる。検出領域9の数が16個の電子検出器8では、φdは22.5°であるため、11.25°回転させたときの回折電子の強度分布を取得すると図21に示すような結果となる。
これは、検出信号を回転方向で積分したような形になるので、回折電子の回転方向の強度分布の振幅より検出領域9の角度幅が大きいと検出する強度分布の範囲によって信号量
が大きく変わってしまうためである。
このような場合は、基準強度パターンとして、試料Sの複数の回転角の強度パターンをデータベース26に登録しておけばよい。
例えば検出領域9の数が16個の電子検出器8で基準強度パターンを取得する際には、試料Sの回転角が0°の時の強度パターンを基準強度パターンA、試料Sの回転角が11.25°のときの強度パターンを基準強度パターンB、試料Sの回転角が5.625°のときの強度パターンを基準強度パターンC、試料Sの回転角が16.875°のときの強度パターンを基準強度パターンDとして、データベース26に登録する。解析位置の強度パターンが基準強度パターンA,B,C,Dのいずれかと一致すれば、解析位置の結晶方位は、基準強度パターンA,B,C,Dの結晶方位と一致する。
このように、同一の結晶方位について、回転角の異なる複数の基準強度パターンをデータベース26に登録することで、結晶方位の回転角が異なる場合でも、結晶方位の特定が可能である。
また、上記では、電子プローブで試料Sを走査しながら、強度パターンを生成して結晶方位の解析を行ったが、電子プローブでの走査を行う必要はなく、試料S上の一点に電子線を入射して、強度パターンを生成して結晶方位の解析を行ってもよい。
2.2. 処理
次に、電子顕微鏡200の処理部30の処理について説明する。
上述した電子顕微鏡100の処理部30の処理では、基準強度パターンとして走査像の任意の画素における強度パターンを用いたが、電子顕微鏡200の処理部30の処理では、基準強度パターンとして、データベース26に、結晶方位ごとに登録された基準強度パターンを用いる点が異なる。その他の点については、上述した電子顕微鏡100の処理部30の処理と同様であり、その説明を省略する。
電子顕微鏡200では、データベース26に登録された、試料の既知の結晶方位で得られた強度パターンを基準強度パターンとするため、各画素において、基準強度パターンの結晶方位と同じか否かを判断することができる。また、データベース26に登録された、互いに結晶方位の異なる複数の基準強度パターンを用いることで、様々な結晶方位の特定が可能である。
電子顕微鏡200では、このようにして特定された結晶方位を、結晶方位画像上に表示してもよい。
2.3. 処理の流れ
次に、第2実施形態に係る電子顕微鏡200の処理部30の処理の流れについて説明する。図22は、第2実施形態に係る電子顕微鏡200の処理部30の処理の流れの一例を示すフローチャートである。以下では、上述した図16に示す電子顕微鏡100の処理部30の処理と異なる点について説明し、同様の点については詳細な説明を省略する。
強度パターン情報生成部32は、第1~第n検出信号の強度に基づく強度パターンを生成する(S200)。
本処理S200は、上述した処理S100と同様に行われる。
次に、パターン解析部33は、走査像の任意の画素を(x,y)、その画素における強度パターンをax,yとして、ax,yをデータベース26に登録された基準強度パターンと生成された強度パターンを比較して、結晶方位を特定する(S202)。
具体的には、データベース26に登録されている基準強度パターンbとのユークリッド距離を算出し、ユークリッド距離が所定値よりも小さい場合に、その画素における結晶方位が、基準強度パターンの結晶方位と同じと判断する。
パターン解析部33は、結晶方位が異なる複数の基準強度パターンを用いて、結晶方位を特定する処理を行ってもよい。具体的には、データベース26に登録されているm個の基準強度パターンをb1,b2,・・・,bmとし、強度パターンax,yと基準強度パターンb1,b2,・・・,bmのユークリッド距離をD1,D2,・・・,Dmとする。
パターン解析部33は、まず、強度パターンax,yと基準強度パターンb1のユークリッド距離D1を計算する。同様に登録されている基準強度パターンb2,・・・,bmとのユークリッド距離D2,・・・,Dmを計算し、得られたユークリッド距離D1,・・・,Dmの中から所定値よりも小さいユークリッド距離を抽出し、その位置における結晶方位が、基準強度パターンの結晶方位と同じと判断し、その基準強度パターンに関連付けられた方位情報を出力する。また、パターン解析部33は、回転角が異なる複数の基準強度パターンを用いて、結晶方位を特定する処理を行ってもよい。
次に、画像生成部34は、パターン解析部33で生成された方位情報に基づいて、結晶方位画像を生成する(S204)。画像生成部34は、パターン解析部33で生成された方位情報に基づいて、結晶方位に対応した色、明るさなどの画素情報を決定し画像を生成する。
画像生成部34は、生成した画像を表示部22に表示させる制御を行う(S206)。このとき、画像生成部34は、例えば、生成された画像上に特定された結晶方位の情報を表示させてもよい。
2.4. 特徴
電子顕微鏡200は、例えば、以下の特徴を有する。
電子顕微鏡200では、パターン解析部33は、結晶方位ごとに基準強度パターンが登録されたデータベース26から基準強度パターン情報を取得する。そのため、電子顕微鏡200では、容易に、結晶方位を特定することができる。
電子顕微鏡200では、パターン解析部33は、データベース26に登録された基準強度パターンと生成された強度パターンを比較して結晶方位を特定し、画像生成部34は特定された結晶方位に基づいて結晶方位画像を生成する。そのため、電子顕微鏡200では、容易に、結晶粒の結晶方位の特定が可能である。
2.5. 変形例
次に、第2実施形態に係る電子顕微鏡200の変形例について説明する。
上述した実施形態では、データベース26に登録された既知の結晶方位の基準強度パターンを用いて、結晶方位を特定したが、結晶方位を特定する手法はこれに限定されない。
例えば、立方晶の100方位では、回折電子の強度分布が4回対称となり、他の結晶方
位では回折電子の強度分布は4回対称とならない。そのため、強度パターンが4回対称性を持っていれば、100方位であると判断できる。以下、具体的に説明する。
画像生成部34では、取得した解析強度パターンをFFT(fast Fourier transform)することで解析強度パターンの周期性を解析する。例えば、解析の結果、4回対称性を持つと判断できれば、結晶方位は100方位であると特定できる。
電子顕微鏡200では、例えば、電子プローブで試料Sを走査しながら、強度パターン情報生成部32で生成された解析強度パターンから結晶方位を特定する。このとき、画像生成部34は、結晶方位が特定できた画素を強調して表示する処理を行う。解析強度パターンの周期性による結晶方位の特定は、強度パターンに特徴のある方位しか解析できない。しかしながら、本手法は、結晶方位の解析を速く容易に行うことができ、また、データベースなどをあらかじめ準備する必要がない。
上記では、電子プローブで試料Sを走査しながら、強度パターンを取得し、結晶方位を特定したが、試料S上の一点に電子線を照射して強度パターンを取得し、結晶方位を特定してもよい。
本変形例では、パターン解析部33は、強度パターンの対称性に基づいて、試料Sの結晶方位を特定する。そのため、容易に、試料Sの結晶方位を特定することができる。
3. 第3実施形態
3.1. 電子顕微鏡
次に、第3実施形態に係る電子顕微鏡について図面を参照しながら説明する。図23は、第3実施形態に係る電子顕微鏡300の構成を示す図である。以下、第3実施形態に係る電子顕微鏡300において、第1実施形態に係る電子顕微鏡100の構成部材と同様の機能を有する部材については同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
上述した第2実施形態では、データベース26に登録された既知の結晶方位の基準強度パターンを用いて結晶方位を特定した。
これに対して、第3実施形態では、EBSD法による結晶方位の測定により結晶方位を特定する。
電子顕微鏡300は、図23に示すように、EBSD検出器302を含む。また、電子顕微鏡300では、処理部30が制御部36を含む。
電子顕微鏡300では、試料Sの表面に対して約70°方向から電子線を入射する。試料Sに入射した電子は回折されて反射電子として試料Sから放出される。このとき現れる回折パターン(EBSDパターン)がEBSD検出器302に投影され、EBSD検出器302でこの回折パターンを取得する。取得された回折パターンの情報は、処理部30に送られる。
上記のように、EBSD検出器302で回折パターンを取得する場合、光軸OAに対して試料Sを大きく傾斜させる。これに対して、電子検出器8で反射電子の検出を行う際には、試料Sを水平にして、第1実施形態と同様の状態(図1参照)で測定を行う。
なお、光軸OAに対して試料Sを大きく傾斜させた状態で、電子検出器8で測定を行ってもよい。この場合、対物レンズ4の直下では試料Sから放出した電子が到達しにくい場合がある。そのため、電子検出器8を試料Sから放出した電子が到達しやすい位置に配置
してもよい。
また、この構成においてはEBSD検出器302を電子検出器8として代用してもよい。具体的には通常EBSD検出器は二次元配列型の検出器が用いられ、画像として信号を取り込む。この取り込まれた画像を複数のエリアに分割し、エリア内の明るさを積分して信号量とし、エリアごとの信号量を使って強度パターンを生成する。
制御部36は、電子顕微鏡300の光学系などを制御する処理を行う。例えば、EBSD法による測定は、制御部36の処理により自動で行われる。
3.2. 処理
次に、電子顕微鏡300の処理部30の処理について説明する。電子顕微鏡300では、EBSD検出器302で取得された回折パターンに基づいて、パターン解析画像を構成する画素における結晶方位を特定する。このとき、パターン解析部33は、パターン解析画像を構成する各画素において、当該画素における強度パターンと基準強度パターンを比較してグループ化し、グループごとに回折パターンを取得して、グループに対応する結晶方位を特定する。以下、この処理について具体的に説明する。以下では、上述した電子顕微鏡100の処理と異なる点について説明し、同様の点については説明を省略する。
電子顕微鏡300では、上述した第1実施形態と同様に、電子プローブで試料S上を走査しながら、放出された反射電子を電子検出器8で検出し、信号強度配列s(x,y,z)を取得する。そして、強度パターン情報生成部32が、走査像を構成する各画素について、強度パターンを生成する。記憶部24には、走査像を構成する複数の画素の各々に対応して、強度パターンが記憶される。
パターン解析部33は、例えば、任意の画素における強度パターンを基準強度パターンとし、走査像を構成するすべての画素において、当該画素の強度パターンと基準強度パターンのユークリッド距離を求める。そして、ユークリッド距離が所定値以下の画素を集合G1とし、集合G=G1とする。
次に、集合G以外の任意の画素を選択し、選択された画素における強度パターンを基準強度パターンとして、集合G以外の画素において、ユークリッド距離を求める。そして、ユークリッド距離が所定値以下となる画素を集合G2とし、集合G=G∪G2とする。
さらに、集合G以外の任意の画素を選択し、選択された画素における強度パターンを基準強度パターンとしてユークリッド距離を求める。そして、ユークリッド距離が所定値以下になる画素を集合G3とし、G=G∪G3とする。
このように、強度パターンが類似する画素の集合を集合Gに加えていくと、最終的にすべての画素がGに属し、求まった集合がm組あったとすると、G1,G2,・・・,Gmの集合ができる。
なお、上記では、集合G以外の画素における強度パターンを基準強度パターンとして、集合G以外の画素について、ユークリッド距離を求めてグループ化する処理を繰り返した。これに対して、集合G以外の画素における強度パターンを基準強度パターンとして、走査像を構成するすべての画素についてユークリッド距離を求めてグループ化する処理を繰り返してもよい。
ここで、パターン解析の精度や回折電子の強度分布のばらつきによって、複数の集合に属する画素ができる場合がある。この場合、複数の集合に属する画素について、どれか1
つの集合に属して、複数の集合には属さないようにする。つまり0=G1∩G2∩・・・∩Gmとする。例えば、複数の集合に属する画素があった場合に、その画素の周囲の画素が属する集合からその画素の集合を判断してもよい。例えば、その画素が、周囲の画素が最も多く属した集合に属するものとしてものよいし、ユークリッド距離が最も小さい集合に属するものとしてもよい。
パターン解析部33は、得られた集合G1,G2,・・・,Gmごとに、回折パターンを取得して結晶方位を特定する。具体的には、パターン解析部33は、まず、集合G1に属する画素に対応する試料S上の領域を特定し、当該領域内における測定位置を決定する。なお、1つの集合に対して測定位置は1箇所でもよいし、複数箇所でもよい。
そして、制御部36は、この測定位置の情報に基づいて、当該位置の回折パターンが得られるように、電子顕微鏡100の光学系の制御を行う。この結果、測定位置における回折パターンをEBSD検出器302で取得することができる。そして、パターン解析部33は得られた回折パターンから集合G1の結晶方位を特定する。その他の集合G2,・・・,Gmについても同様の処理が行われる。この結果、パターン解析画像を構成するすべての画素について結晶方位を特定することができる。
画像生成部34は、得られた結晶方位情報に基づき、方位に対応した色および明るさに各画素を設定した結晶方位画像を生成する。
なお、本実施形態において、パターン解析の処理は、上述した第1実施形態と同様であり、その説明を省略する。
ここで、EBSD法では、試料面に対して電子線を斜め方向から高加速電圧の電子線を入射して回折パターンを得るため、試料S内における電子の散乱領域が大きくなる。そのため、分解能は数十nm程度となり、これ以下の粒径の結晶粒の解析は難しい。
これに対して、電子顕微鏡300では、低加速電圧の電子を、試料面に対して垂直方向から入射させるため、EBSD法による測定と比べて、電子の散乱領域が小さい。そのため、分解能は数nm程度となる。そのため、電子顕微鏡300では、EBSD法の分解能以下の数nm程度の粒径の結晶粒についても結晶方位の解析が可能である。
具体的には、画像生成部34においてパターン解析画像を生成し、EBSD法によって結晶方位マップを取得する。そして、EBSD法によって取得した結晶方位マップとパターン解析画像とを対応させて、パターン解析画像の結晶方位を特定する。このとき、パターン解析画像に含まれる結晶粒のうち、EBSD法の分解能以下の結晶粒については結晶方位を特定できない。
そのため、パターン解析画像に含まれる結晶粒のうち、EBSD法で結晶方位が特定できなかったEBSD法の分解能以下の結晶粒については、EBSD法で結晶方位が特定された結晶粒の強度パターンに基づいて、結晶粒の結晶方位を特定する。
具体的には、パターン解析画像とEBSD法による結晶方位マップから、EBSD法で特定された結晶方位と強度パターンとを関連づけたデータベースを作成する。そして、EBSD法で結晶方位が特定できなかった結晶粒の強度パターンについて、データベースに登録された強度パターンとのユークリッド距離を計算し、最もユークリッド距離が小さい強度パターンに対応する結晶方位を、その結晶粒の結晶方位とする。
これにより、パターン解析画像の結晶粒の方位は特定されるので、解析結果を基に画像
生成部34は結晶方位画像を生成する。
3.3. 処理の流れ
次に、第3実施形態に係る電子顕微鏡300の処理部30の処理の流れについて説明する。図24は、第3実施形態に係る電子顕微鏡300の処理部30の処理の流れの一例を示すフローチャートである。以下では、上述した図16に示す電子顕微鏡100の処理部30の処理と異なる点について説明し、同様の点については詳細な説明を省略する。
強度パターン情報生成部32は、第1~第n検出信号の強度に基づく強度パターンを生成する(S300)。
本処理S300は、上述した処理S100と同様に行われる。
次に、パターン解析部33は、記憶部24に記憶された強度パターンに基づいて、パターン解析を行ってパターン解析情報を生成し(S302)、画像生成部34がパターン解析情報に基づいてパターン解析画像を生成する(S304)。
次に、パターン解析部33は、EBSD法による結晶方位の解析結果に基づいて、パターン解析画像に含まれる結晶粒の結晶方位を特定する(S306)。
このとき、パターン解析部33は、例えば、結晶方位画像を構成する各画素において、当該画素における強度パターンと基準強度パターンを比較してグループ化し、グループ(集合)ごとにEBSD法による回折パターンを取得して、グループに対応する結晶方位を特定してもよい。
また、パターン解析部33は、例えば、EBSD法による結晶方位マップによる結晶方位の解析結果に基づいて、パターン解析画像に含まれる結晶粒の結晶方位を特定してもよい。そして、パターン解析画像の結晶粒のうち、結晶方位マップにより結晶方位が特定できなかった結晶粒の結晶方位を、結晶方位マップにより結晶方位が特定された結晶粒の強度パターンに基づいて特定してもよい。
次に、画像生成部34は、特定された結晶方位に基づいてそれぞれの画素が対応した明るさおよび色で表された結晶方位画像を生成する(S308)。
次に、画像生成部34は、生成した結晶方位画像および特定された結晶方位の情報を表示部22に表示させる制御を行う(S310)。
3.4. 特徴
電子顕微鏡300は、例えば、以下の特徴を有する。
電子顕微鏡300は、試料Sに電子線を照射することによって得られた回折パターン(EBSDパターン)を取得するEBSD検出器302を含み、パターン解析部33は、回折パターンに基づいて、パターン解析画像を構成する画素における結晶方位を特定する。そのため、電子顕微鏡300では、パターン解析画像を構成する画素における結晶方位を特定することができる。
電子顕微鏡300では、パターン解析部33は、パターン解析画像を構成する画素において当該画素の強度パターンと基準強度パターンを比較してグループ化し、グループごとにEBSD法による回折パターンを取得して、グループにおける結晶方位を特定する。そのため、電子顕微鏡300では、例えば、EBSD法により結晶方位マップを取得する場
合と比べて、EBSD法による解析の点数を削減できる。
電子顕微鏡300では、パターン解析部33は、回折パターン(例えばEBSD法による結晶方位マップ)に基づいてパターン解析画像に含まれる結晶粒の結晶方位を特定し、パターン解析画像の結晶粒のうち、回折パターンに基づき結晶方位が特定できなかった結晶粒の結晶方位を、回折パターンに基づき結晶方位が特定された結晶粒の強度パターンに基づいて特定する。そのため、電子顕微鏡300では、例えば、EBSD法の分解能以下の結晶粒の結晶方位の特定が可能である。
なお、上記では、EBSD法による回折パターンに基づく解析結果から、パターン解析画像に含まれる結晶粒の結晶方位を特定する場合について説明したが、結晶方位を特定する手法は特に限定されず、ECP法による回折パターンに基づく解析結果から、パターン解析画像に含まれる結晶粒の結晶方位を特定してもよい。
4. 第4実施形態
4.1. 電子顕微鏡
次に、第4実施形態に係る電子顕微鏡について図面を参照しながら説明する。図25は、第4実施形態に係る電子顕微鏡400の構成を示す図である。以下、第4実施形態に係る電子顕微鏡400において、第1実施形態に係る電子顕微鏡100の構成部材と同様の機能を有する部材については同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
電子顕微鏡400は、図25に示すように、試料Sに負荷を加えることが可能な試料負荷付与部402が設けられている。
試料負荷付与部402は、例えば、試料Sに力を加えて変形させる機構を有する。また、試料負荷付与部402は、例えば、試料Sに熱を加える機構を有する。
電子顕微鏡400では、試料負荷付与部402を含むため、試料Sに力を加えて変形させながら画像を取得したり、試料Sに熱を加えながら画像を取得したりすることができる。
4.2. 処理
次に、電子顕微鏡400の処理部30の処理について説明する。上述した第1実施形態では、1回の電子プローブの走査で走査像を構成する複数の画素における強度パターンを得た。そして、各画素において、当該画素の強度パターンと基準強度パターンを比較して、その類似性から各画素の明るさを計算しパターン解析画像を生成した。
ここで、電子顕微鏡では、例えば試料Sに力を加えて変形させたり、熱を加えたりしながら試料Sの結晶粒の形状や成長を観察するといった使われ方もする。この場合、試料Sに熱や応力などの負荷を与えながら、電子プローブでの走査を繰り返し行い、連続した複数の走査像を取得していく。これにより、試料Sに与えられる負荷によって、結晶粒の形状が変化する様子を観察することができる。
上述した結晶方位画像を生成する手法を、この観察方法に適用すれば、結晶粒の形状や結晶方位の変化を、よりわかりやすく、かつ、容易に観察できる。
このとき、電子顕微鏡400では、電子プローブでの走査を繰り返し行う際に、基準強度パターンを共通、すなわち同じ強度パターンとする。例えば、電子プローブでの走査を繰り返し行う際に、基準強度パターンが共通でない場合、1回目の走査で得られた結晶方位画像と、2回目の走査で得られた結晶方位画像において、同じ強度パターンが得られた
画素があったとしても、その画素の明るさは異なってしまう。
例えば、基準強度パターンを、1回の走査で得られる走査像の任意の画素(例えば視野の中心に位置する画素)における強度パターンとした場合、走査を繰り返すことによって、当該画素に対応する結晶粒が歪んだり、結晶方位が変化したりして、基準強度パターンが変化してしまう。そのため、電子顕微鏡400では、電子プローブでの走査を繰り返し行う際に、基準強度パターンを共通とする。以下、この手法について、具体的に説明する。また、以下では、上述した電子顕微鏡100の処理と異なる点について説明し、同様の点については説明を省略する。
基準強度パターンを設定するタイミングは、試料Sに負荷を与える前(負荷試験前)と、試料Sに負荷を与えた後(負荷試験後)の二通りが考えられる。
まず、負荷試験前に基準強度パターンを設定する場合について説明する。試料Sに負荷を与える前に基準強度パターンを設定することで、試料Sに負荷を与えながらリアルタイムで試料Sの状態の変化を確認できる。例えば、EBSD法などによってあらかじめ結晶方位が既知の試料Sで、ある方位に注目して負荷を与えたときの変化を見たい場合に有効である。
負荷試験前に、1スキャン分のデータを取得する。すなわち、1スキャン分の走査像を構成するすべての画素における強度パターンを取得する。取得した強度パターンのデータから基準強度パターンを取得する。基準強度パターンは、任意の画素(例えば視野の中心の画素)における強度パターンが自動で選択されるようになっていてもよいし、取得した強度パターンのデータから走査像を生成してユーザーが走査像から基準強度パターンを取得する画素を選択できるようになっていてもよい。
また、特定の結晶方位の変化に注目したい場合で、あらかじめその結晶方位での強度パターンが分かっている場合は、その強度パターンを基準強度パターンとしてもよい。
また、任意の画素における強度パターンを取得して仮の基準強度パターンとし、その仮の基準強度パターンを用いて仮のパターン解析画像を生成して結晶粒を観察しやすくしてから、当該仮のパターン解析画像から基準強度パターンを得る画素を指定してもよい。
設定された基準強度パターンは、記憶部24に記憶される。なお、基準強度パターンは複数設定されてもよい。
次に、試料Sに負荷を与え、電子プローブで試料S上を走査しながら、複数の検出領域9で電子を検出する。そして、パターン解析部33は、走査像を構成する各画素において、決定された基準強度パターンと、第1~第n検出信号の強度に基づく強度パターンを比較し、画像生成部34はパターン解析部33における解析結果に基づいてパターン解析画像を生成する。画像生成部34は、試料Sに負荷を与えてから1回目の走査で生成されたパターン解析画像、2回目の走査で生成されたパターン解析画像、・・・、をそれぞれ走査回数の情報に関連づけて記憶部24に記憶させる処理を行う。
この結果、得られた複数のパターン解析画像から、注目する結晶粒の形状や結晶方位が試料Sに与えられる負荷によって変化する様子を観察することができる。
また、負荷試験を行いながらこれらの処理を行い、得られた最新のパターン解析画像を表示部22に表示することで、試料の結晶粒の様子が観察でき、それに合わせて負荷の強弱を変化させるといった使い方もできる。
次に、負荷試験後に基準強度パターンを決定する場合について説明する。
電子プローブで試料S上を走査しながら、負荷試験を開始し、複数の検出領域9で電子を検出する。そして、1回目の走査で得られた、電子線の入射位置に関連付けられた第1~第2検出信号の信号量のデータ(以下「スキャンデータ」ともいう)、2回目の走査で得られたスキャンデータ、・・・は、走査回数の情報に関連づけられて記憶部24に記憶される。このとき、第1~第n検出信号の強度の合計に基づく走査像を表示部22に表示させてもよい。
走査回数が多くなると、データ量が大きくなるため、スキャンデータを圧縮変換してもよい。
負荷試験後に、パターン解析部33は、記憶部24からスキャンデータを読み出して解析を行い、画像生成部34でパターン解析画像を順次生成して、表示部22に表示させることができる。
このようにして、記憶部24に記憶されたスキャンデータに基づいて、電子プローブでの走査ごとに、パターン解析画像を生成および表示することができる。このとき、ユーザーが気になる結晶粒があった場合には、その結晶粒を指定することで、その結晶粒のその時点での強度パターンが基準強度パターンとなる。これにより、ユーザーが指定した結晶粒の変化を観察できる。
なお、これらの2つの手法を組み合わせて、負荷試験前に基準強度パターンを設定し、リアルタイムでパターン解析画像を生成しながらスキャンデータを記録し、負荷試験後に改めて基準強度パターンを設定し、パターン解析画像を生成し、表示部22に表示させることができる。
また、結晶方位が関連付けられた強度パターンを基準強度パターンとして用い、パターン解析部33で得られた解析結果から結晶方位を特定し、画像生成部34で結晶方位画像を生成してもよい。
4.3. 特徴
電子顕微鏡400は、例えば、以下の特徴を有する。
電子顕微鏡400では、画像生成部34は、電子プローブでの試料Sの複数回の走査に応じて、複数のパターン解析画像を生成し、複数のパターン解析画像において、基準強度パターンを共通とする。そのため、電子顕微鏡400では、上述したように、試料Sの結晶性の変化を観察することができる。
例えば、電子顕微鏡400では、試料Sに熱を加えながら電子プローブでの走査を繰り返して、複数のパターン解析画像を取得することにより、試料Sの相転移の様子を観察することができる。さらに、試料Sの温度をモニターすることにより、相転移の温度を特定することができる。
5. 第5実施形態
5.1. 電子顕微鏡
次に、第5実施形態に係る電子顕微鏡について図面を参照しながら説明する。図26は、第5実施形態に係る電子顕微鏡500の構成を示す図である。図27は、電子検出器508を模式的に示す平面図である。
以下、第5実施形態に係る電子顕微鏡500において、第1実施形態に係る電子顕微鏡100の構成部材と同様の機能を有する部材については同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
電子顕微鏡500では、図27に示すように、電子検出器508は、n´個の検出領域509(検出部の一例)がライン状に配置された構成を有している。ただし、n´は2以上の整数である。
図26に示す強度パターン情報生成部32は、n´個の検出領域509から出力されたn´個の検出信号の強度に基づいて、強度パターン情報としての強度ラインプロファイルを生成する。処理部30は、強度パターン情報生成部32で生成された強度ラインプロファイルに基づいて、結晶方位を特定するラインプロファイル解析部38を含む。
電子検出器508は、図27に示すように、n´個の検出領域509を有している分割型検出器である。n´個の検出領域509は、図示の例では、円に沿って配置されている。検出領域509は、上述した図2に示す検出領域9と同様に、独立して電子を検出可能である。検出領域509は、後述する回折パターンのラインプロファイルが得られる数だけ配置される。
電子顕微鏡500では、1つの検出領域509の面積が、図2に示す電子検出器8の検出領域9の面積よりも小さい。図2に示す1つの検出領域9の面積は、例えば、電子検出器508が配置される面に形成される菊池線の幅よりも大きいが、図27に示す1つの検出領域509の面積は、菊池線の幅よりも小さい。1つの検出領域509の面積は、菊池線を特定できるように、菊池線の幅よりも十分に小さいことが好ましい。
電子検出器508は、例えば、円に沿って並べたn´個のフォトダイオードを含んで構成されている。n´個のフォトダイオードがn´個の検出領域509に対応する。電子検出器508は、先端に蛍光塗料を塗布した光ファイバーを円に沿って並べて、後端に光検出器を接続したものであってもよい。光検出器としては、フォトダイオード、光電子増倍管などを用いることができる。
図28は、電子検出器508(検出領域509)が配置される面に形成される回折パターンと電子検出器508の関係を示す図である。なお、図28では、便宜上、n´個の検出領域509を線で表している。n´個の検出領域509がつくる線を、検出線ともいう。
図28に示すように、試料Sに入射した電子は試料S内で散乱した後、結晶の格子面によって回折される。回折を受けた電子(反射電子)は試料Sから放出され、電子検出器8が配置される面には回折パターンが形成される。ここで、試料Sに入射した電子が結晶性の試料内で原子の熱振動による非弾性散乱を受けた後にブラッグ反射(弾性散乱)を起こすことによって菊池パターンが生じる。非弾性散乱を受けた電子の進行方向は、広い角度にわたって分布するので、ブラッグ反射位置には、ある結晶面の表面と裏面の反射による明線と暗線のペアが生じる。この明線と暗線のペアを菊池線という。
図28に示すように、n´個の検出領域509は、ライン状であり、複数の菊池線を横断するように構成されている。そのため、n´個の検出領域509により、n´個の検出領域509が配置されたラインに沿ったラインプロファイル(以下、「強度ラインプロファイル」ともいう)を取得することができる。強度ラインプロファイルは、検出線上の輝度(菊池線の強度)を表している。
5.2. 処理
次に、電子顕微鏡500の処理部30の処理について説明する。電子顕微鏡500では、強度パターン情報生成部32は、n´個の検出領域509から出力されたn´個の検出信号の強度に基づいて、強度パターン情報としての強度ラインプロファイルを生成する。ラインプロファイル解析部38は、強度ラインプロファイルに基づいて、結晶方位を特定する。以下では、上述した電子顕微鏡100の処理と異なる点について説明し、同様の点については説明を省略する。
5.2.1. ラインプロファイルの生成
強度パターン情報生成部32は、n´個の検出領域509から出力されたn´個の検出信号の強度に基づいて、強度パターン情報としての強度ラインプロファイルを生成する。
解析対象となる強度ラインプロファイルは、試料S上の結晶方位の解析を行う点(以下「解析点」ともいう)に、電子線を照射し、試料Sで散乱および回折されて試料Sから放出された電子を電子検出器508で検出することで取得することができる。
図29は、強度ラインプロファイルの一例を示す図である。
強度ラインプロファイルは、横軸が回折パターン上での位置を表し、縦軸が回折パターンの強度(すなわち輝度)を表している。図示の例では、n´個の検出領域509は、円に沿って配置されているため、強度ラインプロファイルは回折パターン上での前記円に沿った強度のプロファイルとなる。1つの検出領域509の面積は、菊池線の幅に対して十分に小さい。そのため、強度ラインプロファイルには、菊池線の明線に対応するピークおよび暗線に対応するボトムが見られる。
5.2.2. 基準ラインプロファイルの生成
ラインプロファイル解析部38は、試料Sの回折パターンを計算(シミュレーション)により求め、求めた回折パターンからラインプロファイル(以下「基準ラインプロファイル」ともいう)を生成する。第5実施形態では、n´個の検出領域509を用いて得られた強度ラインプロファイルを、シミュレーションにより得られた回折パターンから生成されたラインプロファイル(基準ラインプロファイル)と比較することで、結晶方位を特定する。
回折パターンは、シミュレーションにより求めることができる。具体的には、回折パターンは、例えば、結晶を構成する元素とその結晶構造、および試料Sに入射する電子のエネルギーから公知の手法を用いて計算できる。
シミュレーションで得られた回折パターンから基準ラインプロファイルを生成するためには、例えば、検出線の形状および位置がわかればよい。
検出線の形状および位置は、n´個の検出領域509の形状および位置、n´個の検出領域509が配置された面と試料Sとの間の距離から知ることができる。これらの情報は、装置の設計情報から取得できる。そのため、電子顕微鏡500では、これらの情報は、あらかじめ記憶部24に記憶されている。
図30および図31は、基準ラインプロファイルを求める手法を説明するための図である。
例えば、図30に示すように、半径eの電子検出器508が対物レンズ4の下に、対物
レンズ4と電子検出器508との間の距離がfの位置に配置されている場合、作動距離をgとすると、試料Sと電子検出器508との間の距離は、距離g-fとなる。そのため、電子検出器508は、回折パターン上の角度θ=tan-1(e/(g-f))線上の信号を取得していることになる。したがって、シミュレーションで得られた回折パターンからこの角度θを満たす線上のプロファイルを取得することで、基準ラインプロファイルを生成することができる。
回折パターンは、様々な結晶方位で計算され、それぞれについて基準ラインプロファイルが生成される。結晶方位と基準ラインプロファイルとは関連付けられて記憶部24に記憶される。このようにして、解析対象となる試料の結晶方位と基準ラインプロファイルのデータベースを生成することができる。
なお、回折パターンは、測定条件によって変わるので、あらかじめ様々な測定条件で回折パターンを計算してデータベースを作成しておき、測定条件に合わせたデータベースを読み出して使用してもよい。
5.2.3. 解析
ラインプロファイル解析部38は、強度パターン情報生成部32で生成された強度ラインプロファイルと基準ラインプロファイルとを比較して、結晶方位を特定する。
強度パターン情報生成部32で生成された強度ラインプロファイルは、データベースの基準ラインプロファイルと比較され、プロファイルの形状が最も近い基準ラインプロファイルに関連付けられた結晶方位が解析点の結晶方位となる。
解析点での強度ラインプロファイルと、データベースの基準ラインプロファイルとの比較は、例えば、ユークリッド距離を用いた計算により行うことができる。強度ラインプロファイルと基準ラインプロファイルのユークリッド距離は、上述した強度パターンのユークリッド距離Dを求める場合と同様の計算(式(1)、または式(2)参照)により求めることができる。
なお、強度ラインプロファイルと基準ラインプロファイルとの比較は、ユークリッド距離を用いた手法に限定されない。例えば、シミュレーションにより得られた回折パターン中の菊池線の位置および幅をデータベースに登録し、強度ラインプロファイルから菊池線の位置および幅を推定し、データベースを検索することで、比較を行ってもよい。この手法によれば、シミュレーションにより回折パターンの強度を求めなくても良いため、データベースをより簡単に作成することができる。
このようにして得られた解析点における結晶方位の解析結果は、表示部22に表示される。
5.3. 処理の流れ
次に、第5実施形態に係る電子顕微鏡500の処理部30の処理の流れについて説明する。図32は、第5実施形態に係る電子顕微鏡500の処理部30の処理の流れの一例を示すフローチャートである。以下では、上述した図16に示す電子顕微鏡100の処理部30の処理と異なる点について説明し、同様の点については詳細な説明を省略する。
まず、ラインプロファイル解析部38は、解析対象となる試料の結晶方位と基準ラインプロファイルのデータベースを生成する(S400)。ユーザーが操作部20を介して解析対象となる試料の組成およびその結晶構造を入力すると、ラインプロファイル解析部38は、解析対象となる試料において、様々な結晶方位の基準ラインプロファイルを生成し
、生成した基準ラインプロファイルを結晶方位と関連づけてデータベースに登録する。データベースは、記憶部24に記憶される。
次に、強度パターン情報生成部32は、n´個の検出領域509から出力されたn´個の検出信号の強度に基づいて、解析点における強度ラインプロファイルを生成する(S402)。
次に、ラインプロファイル解析部38は、解析点における強度ラインプロファイルと、基準ラインプロファイルとを比較して、結晶方位を特定する(S404)。
画像生成部34は、特定された結晶方位の情報を表示部22に表示させる制御を行う(S406)。
5.4. 特徴
電子顕微鏡500は、例えば、以下の特徴を有する。
電子顕微鏡500では、強度パターン情報生成部32は、複数の検出領域509から出力された複数の検出信号の強度に基づいて、強度ラインプロファイルを生成する。そのため、電子顕微鏡500では、上述した電子顕微鏡100と同様に、容易に、試料Sの結晶性の情報を得ることができる。
さらに、電子顕微鏡500では、複数の検出領域509を備えた電子検出器508によって反射電子を検出することで測定が可能であるため、例えばEBSD法やECP法による測定に比べて、短時間で測定が可能である。
電子顕微鏡500では、ラインプロファイル解析部38は、強度ラインプロファイルに基づいて、結晶方位を特定する。そのため、容易に、試料Sの結晶性の情報を得ることができる。
電子顕微鏡500では、ラインプロファイル解析部38は、試料Sに電子線を照射することによって得られる回折パターンを計算により求め、求めた回折パターンから基準となる基準ラインプロファイルを生成し、強度ラインプロファイルと、基準ラインプロファイルとを比較して、結晶方位を特定する。そのため、容易に、試料Sの結晶性の情報を得ることができる。
5.5. 変形例
次に、第5実施形態に係る電子顕微鏡500の変形例について説明する。
5.5.1. 第1変形例
図33および図34は、電子検出器508の変形例について説明するための図である。図33および図34は、図28に対応している。
例えば、上述した電子検出器508は、図27および図28に示すように、n´個の検出領域509は、円に沿って配置され、検出線が円である場合について説明したが、例えば、図33に示すように、n´個の検出領域509が多角形(図示の例では三角形)に沿って配置され、検出線が多角形であってもよい。また、図34に示すように、n´個の検出領域509による検出線は、閉曲線でなくてもよい。図34に示す電子検出器508では、n´個の検出領域509が平行な2つの線と、当該2つの線の端を接続する線と、に沿って配置され、検出線はこれらの線で形成される形状である。
なお、図28に示す検出線が円の場合には、強度ラインプロファイルが回転している場合でも、式(2)を用いて、ユークリッド距離を求めることができる。しかし、図33および図34に示す検出線では、式(2)を用いてユークリッド距離を求めることができない。そのため、データベースには、あらかじめ様々な回転角のラインプロファイルを登録しておく。
5.5.2. 第2変形例
図35は、電子検出器508の変形例について説明するための図である。
例えば、上述した図27に示す電子検出器508は、n´個の検出領域509を含んで構成されていたが、図35に示す電子検出器508は、1つの検出領域509と、検出領域509を移動させる移動機構510と、を含んで構成されている。
移動機構510は、図示の例では、検出領域509を円に沿って移動させる。移動機構510で検出領域509の位置を変更しながら、検出領域509が反射電子の検出を行うことにより、図27に示す電子検出器508と同様の強度ラインプロファイルを得ることができる。強度パターン情報生成部32は、例えば、検出領域509の位置とその位置での検出信号の強度とに基づいて、強度ラインプロファイルを生成する。
なお、移動機構510は、図33に示す検出線、図34に示す検出線に沿って検出領域509を移動させてもよい。
5.5.3. 第3変形例
上述した第5実施形態では、解析点における結晶方位を解析する場合について説明したが、解析点を移動させることで、上述した第1実施形態に係る電子顕微鏡100と同様に、試料Sの結晶方位の分布を示す結晶方位画像を生成することもできる。この場合、試料Sの情報や測定条件は同じであるため、全ての解析点で同じデータベースを用いて結晶方位の解析を行うことができる。
6. 第6実施形態
6.1. 電子顕微鏡
次に、第6実施形態に係る電子顕微鏡について図面を参照しながら説明する。図36は、第6実施形態に係る電子顕微鏡600の構成を示す図である。以下、第6実施形態に係る電子顕微鏡600において、第5実施形態に係る電子顕微鏡500の構成部材と同様の機能を有する部材については同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
電子顕微鏡600は、図36に示すように、X線検出器602と、信号処理部604と、を含む。さらに、電子顕微鏡600では、処理部30は、元素分析部39を含む。
上述した図26に示す電子顕微鏡500では、試料Sの組成情報をユーザーが入力したが、電子顕微鏡600では、解析対象の試料Sの組成情報を、X線検出器602による元素分析の結果から取得する。
X線検出器602は、例えば、エネルギー分散X線検出器、波長分散X線検出器等である。X線検出器602から出力される信号は、信号処理部604に送られる。信号処理部604では、X線検出器602からの信号に基づいて、スペクトルデータが生成され、処理部30に送られる。元素分析部39は、信号処理部604からのスペクトルデータ(EDSスペクトルデータ、WDSスペクトルデータ)に基づいて、元素分析を行う。
6.2. 処理
電子顕微鏡600では、ラインプロファイル解析部38は、X線検出器602を用いた元素分析の結果に基づいて、回折パターンを計算する。
まず、解析点に電子線を照射して発生したX線をX線検出器602で検出し、元素分析部39で解析点の元素分析を行い、元素分析の結果としての組成情報を取得する。ラインプロファイル解析部38では、この組成情報に基づいて、電子顕微鏡500の場合と同様に、基準ラインプロファイルを生成し、データベースに登録する。その他の処理は、電子顕微鏡500と同様であり、その説明を省略する。
なお、解析点におけるX線検出器602によるX線の検出と、解析点における電子検出器508による回折パターンの検出は、同時に行われてもよい。また、まず、解析点におけるX線検出器602によるX線の検出を行い、元素分析の結果から回折パターンを検出する際の測定条件(入射エネルギーなど)を決定して、電子検出器508による回折パターンの検出を行ってもよい。
6.3. 特徴
電子顕微鏡600は、例えば、以下の特徴を有する。
電子顕微鏡600では、試料Sに電子線を照射することによって発生したX線を検出するX線検出器602を含み、ラインプロファイル解析部38は、X線検出器602を用いた元素分析の結果に基づいて、回折パターンを計算する。そのため、電子顕微鏡600では、試料の情報を正確に取得することができ、基準ラインプロファイルを精度よく生成することができる。
例えば、電子顕微鏡500では、ユーザーは試料の組成情報を知らなければならなかったが、電子顕微鏡600では、その必要がない。したがって、電子顕微鏡600では、容易に、結晶方位の解析が可能である。
また、電子顕微鏡600では、電子検出器508を用いて、結晶方位の解析が可能であるため、試料Sを傾斜させることなく水平な状態で、結晶方位の解析が可能である。そのため、X線検出器602で得られた元素分析の結果との整合を取りやすい。
例えば、EBSD法で試料Sの結晶方位を特定する場合、試料Sを大きく傾けなければならない。しかしながら、このように試料Sを大きく傾けた状態では、X線検出器602を使用することはできない。したがって、試料Sを大きく傾けた状態で取得したEBSD法による結晶方位の解析結果と、試料Sを水平にした状態で取得したX線検出器602を用いた元素分析の結果と、の整合を取ることが難しい。これに対して、電子検出器508は、X線検出器602と同様の条件で使用することができるため、このような問題が生じない。
なお、上述した電子顕微鏡500の第1~第3変形例は、電子顕微鏡600にも適用可能である。
7. 第7実施形態
7.1. 電子顕微鏡
次に、第7実施形態に係る電子顕微鏡について図面を参照しながら説明する。図37は、第7実施形態に係る電子顕微鏡700の構成を示す図である。
以下、第7実施形態に係る電子顕微鏡700において、第1実施形態に係る電子顕微鏡100および第5実施形態に係る電子顕微鏡500の構成部材と同様の機能を有する部材
については同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
電子顕微鏡700は、図37に示すように、電子検出器8と電子検出器508の両方を含む。
図38は、電子顕微鏡700に搭載された、電子検出器8と、電子検出器508と、を模式的に示す平面図である。
図38に示すように、円環状の検出面を円周方向に分割することで形成されたn個の検出領域9を囲むように、n´個の検出領域509が配置されている。電子検出器8と電子検出器508とは、一体に構成されており、同時に動作可能である。
なお、電子検出器8と電子検出器508とは、別体であってもよい。また、図示はしないが、電子顕微鏡700は、電子検出器8を移動させる移動機構および電子検出器508を移動させる移動機構を含んで構成されていてもよい。この場合、電子検出器8を使用する場合には、電子検出器8を光軸OA上に移動させるとともに電子検出器508を光軸OA上から退避させ、電子検出器508を使用する場合には、電子検出器508を光軸OA上に移動させるとともに電子検出器8を光軸OA上から退避させる。
7.2. 処理
電子検出器508は、1つの検出領域509の面積が小さいため、単位時間あたりに取得できる信号量が少ない。そのため、電子検出器508では、電子検出器8に比べて、解析点に電子線を照射する時間を長くしなければならない。
しかしながら、電子線を照射する時間を長くすると、試料の汚染や、熱による試料の変形、試料の帯電などの問題が生じる。そのため、電子顕微鏡700では、電子検出器8と電子検出器508の両方を含むことにより、電子検出器8を用いて電子線のスキャン速度を速くして結晶粒の形状を確認できる画像(例えば、パターン解析画像、結晶粒界画像等)を取得し、電子検出器508を用いて結晶粒中の少なくとも1点を解析点として結晶方位を解析することで結晶方位画像を取得することができる。以下、この処理について具体的に説明する。
上述した第1実施形態で説明したように、電子検出器8を用いて結晶粒の形状を確認できる結晶粒界画像を取得することができる。
図39は、結晶粒界画像I2を模式的に示す図である。図40は、結晶粒界画像I2に内接円を描いた状態を模式的に示す図である。
結晶粒界画像I2において、結晶粒ごとに解析点を設定する。例えば、図40に示すように、結晶粒界画像中の結晶粒に内接円を描き、内接円の中心を求めて、この中心を解析点とする。この処理を、結晶粒界画像中の全ての結晶粒に対して行う。これにより、1つの結晶粒に対して1つの解析点を設定することができる。
このようにして結晶粒ごとに設定された解析点について、上述した第5実施形態で説明した処理により、結晶方位を特定する。この結果、結晶粒界画像I2中の結晶粒について結晶方位を特定することができ、結晶方位画像を生成することができる。
7.3. 処理の流れ
次に、第7実施形態に係る電子顕微鏡700の処理部30の処理の流れについて説明する。図41は、第7実施形態に係る電子顕微鏡700の処理部30の処理の流れの一例を
示すフローチャートである。
まず、強度パターン情報生成部32、パターン解析部33および画像生成部34が、図16に示す強度パターンを生成する処理(S100)、パターン解析情報を生成する処理(S102)、および画像を生成する処理(S104)を行って、結晶粒界画像を取得する(S500)。
次に、強度パターン情報生成部32は、結晶粒界画像において、結晶粒ごとに解析点を設定する(S502)。強度パターン情報生成部32は、結晶粒界画像中の結晶粒に内接円を描き、内接円の中心を求めて、この中心を解析点とする処理を、結晶粒界画像中の全ての結晶粒に対して行う。
次に、強度パターン情報生成部32、およびラインプロファイル解析部38は、図32に示す基準ラインプロファイルを生成する処理(S400)、強度ラインプロファイルを取得する処理(S402)、および結晶方位を解析する処理(S404)を、設定された全ての解析点について行う(S504)。これにより、結晶粒界画像中の全ての結晶粒の結晶方位を特定することができる。
画像生成部34は、結晶粒界画像および結晶粒の結晶方位の特定結果(結晶方位情報)に基づいて、画像を生成する(S506)。画像生成部34は、得られた結晶方位情報に基づき、結晶粒を結晶方位に対応した色および明るさに設定し、結晶方位画像を生成する。
次に、画像生成部34は、生成した結晶方位画像を表示部22に表示させる制御を行う(S508)。このとき、画像生成部34は、生成された結晶方位画像上に特定された結晶方位の情報を表示してもよい。
7.4. 特徴
電子顕微鏡700は、例えば、以下の特徴を有する。
電子顕微鏡700は、電子検出器8と電子検出器508の両方を含む。そのため、結晶方位画像を容易に取得することができる。
なお、上述した第6実施形態に係る電子顕微鏡600におけるX線検出器602を用いた元素分析の結果に基づいて、回折パターンを計算する処理は、第7実施形態にも適用可能である。
7.5. 変形例
第7実施形態に係る電子顕微鏡700の変形例について説明する。
上述した第7実施形態では、結晶粒中の1点で結晶方位の解析を行った。しかしながら、電子線を試料の1点に長時間照射すると、この1点に局所的な試料汚染が起こってしまう。この場所でSEM像を取得すると、試料汚染が確認できる。
そのため、本変形例では、電子線を走査しながら、電子検出器8と電子検出器508の両方で、試料Sから放出された電子を検出する。そして、電子検出器8の検出信号から結晶粒界画像を生成して結晶粒を特定し、1つの結晶粒内で取得された電子検出器508の検出信号を積算して1つの強度ラインプロファイルを生成する。これにより、試料の1点に長時間電子線を照射することなく、強度ラインプロファイルを取得することができる。
また、上述した第7実施形態では、1つの結晶粒では、結晶方位が同じであるものとして、結晶方位の解析を行う場合について説明した。しかしながら、結晶粒内でも結晶方位が異なる場合がある。このような場合でも、結晶方位画像や結晶粒界画像では、結晶粒内に結晶方位の変化があることがわかるため、このような結晶粒に対しては解析点を増やして結晶方位の解析を行ってもよい。
8. その他
上述した第1~第7実施形態では、試料表面が水平または水平に近い状態(例えば試料傾斜角が10°以下)にした試料Sに対して、低エネルギーの電子線を入射させることによって、明瞭な回折パターンを取得することができる。以下、その理由について説明する。
試料に電子線を入射させると試料内で散乱されて、様々なエネルギーの電子が試料表面から放出される。EBSD法による結晶方位の解析に利用される回折パターンは、試料表面から放出される電子のうち、入射エネルギーに対してエネルギーロスの少ない電子によるものである。
図42は、鉄原子に対する電子の弾性散乱断面積を示すグラフである。図42に示すグラフは、直線運動している電子が原子に近づいて電子と原子の相互作用により散乱を起こしたときの角度変化量とその確率を示している。
まず、試料に入射する電子のエネルギーが高い場合を考える。図42に示すグラフからわかるように、高エネルギーの電子は、試料内で散乱しても角度変化が小さい。また、試料に入射した電子は、試料最表面で散乱するわけでなく、平均自由行程の深さまで侵入して散乱するが、平均自由行程は、電子のエネルギーが高くなるほど大きくなる。そのため、試料を水平にして試料に高エネルギーの電子線を入射すると、すなわち、試料表面に対して垂直に高エネルギーの電子線を入射すると、電子の散乱は試料表面から比較的深い領域で起こり、大部分の電子が試料の深い方向へ散乱する。また、ごくまれに電子が試料表面に到達して試料から放出されたとしても、このような電子は、散乱を繰り返しているため、エネルギーロスが大きい。したがって、試料を水平にして試料に高エネルギーの電子線を入射しても、回折パターンを形成するエネルギーロスの少ない電子はごくわずかしか試料表面から放出されない。
そのため、EBSD法では、試料を大きく傾斜させて、試料表面に対して電子線を斜め方向から入射させている。これにより、試料中での電子の散乱領域と試料表面とが近づくので、散乱回数の少ない、すなわち、エネルギーロスの少ない電子が試料表面に到達しやすくなる。この結果、回折パターンを形成するエネルギーロスの少ない電子が試料表面から多く放出され、回折パターンを得やすい。
次に、試料に入射する電子のエネルギーが低い場合を考える。図42に示すように、低エネルギーの電子は、180°方向に散乱する確率が高エネルギーの電子に比べて高い。そのため、低エネルギーの電子線を試料に入射した場合、電子線の入射方向とは反対向きの散乱量が増加する。また、低エネルギーの電子は、高エネルギーの電子に比べて、試料中での平均自由行程が短いので、散乱が試料表面に近いところで起きやすい。そのため、低エネルギーの電子線を試料に入射させた場合、試料表面が水平でも、エネルギーロスの少ない電子が多く放出される。
したがって、試料表面が水平または水平に近い状態(例えば試料傾斜角が10°以下)にした試料Sに低エネルギーの電子線を入射させることによって、明瞭な回折パターンを取得することができる。例えば、加速電圧を10kV以下、より好ましくは加速電圧を5
kV以下とする。これにより、試料Sに低エネルギーの電子を入射することができ、試料表面が水平または水平に近い状態であっても、明瞭な回折パターンを得ることができる。
図43は、試料から放出された電子(反射電子)が、散乱を起こした深さを示すグラフである。横軸は散乱が起きた深さであり、縦軸はその深さで散乱を起こした電子の割合を示している。図43では、試料は、金である。
加速電圧15kV、試料傾斜角70degの条件は、一般的に、EBSD法で菊池線を取得するために用いられる条件である。試料傾斜角とは、水平方向に対する試料表面の傾き角である。言い換えると、試料傾斜角とは、水平面を基準、すなわち0°とした場合の試料表面の傾きである。なお、電子線は、水平面に対して鉛直方向から試料に入射するものとする。
加速電圧15kV、試料傾斜角70degの場合、試料から放出される電子のうち、散乱を起こした深さが40nm以下の電子の割合が80%以上である。このように、試料傾斜角を大きくすることで、電子の散乱が起こる深さを浅くすることができ、試料から放出される電子において、エネルギーロスの少ない電子の割合を大きくすることができる。これにより、明瞭な回折パターンを得ることができる。
加速電圧15kV、試料傾斜角0deg(すなわち試料表面が水平)の場合、散乱は100nmよりも深い領域でも起こっている。そのため、この条件では、回折パターンのコントラストは非常に弱く、明瞭な回折パターンは得られない。
これに対して、加速電圧5kV、試料傾斜角0degの場合、散乱が浅い箇所で集中して起こる。図43に示すように、加速電圧5kV、試料傾斜角0degの場合、電子が散乱を起こした深さは、40nm以下に集中している。具体的には、加速電圧5kV、試料傾斜角0degの場合、試料から放出される電子において、散乱を起こした深さが40nm以下の電子の割合が90%以上である。このように、加速電圧を低くすることで、試料表面が水平または水平に近い状態であっても、電子が散乱を起こす深さを浅くすることができ、試料から放出される電子において、エネルギーロスの少ない電子の割合を大きくすることができる。
上記のように、試料表面が水平または水平に近い状態(例えば試料傾斜角を10°以下)となるように試料を保持した状態で、低エネルギーの電子線を試料に入射することにより、電子は試料の浅い領域で散乱を起こし、エネルギーロスの少ない電子が試料から放出される。この結果、電子検出器8および電子検出器508が配置される面には、明瞭な回折パターンが投影される。
なお、試料に低エネルギーの電子線を入射させることにより、試料に高エネルギーの電子線を入射させる場合に比べて、電子の散乱領域が小さくなる。これにより、反射電子の発生領域も小さくなるため、高い空間分解能での方位解析が可能となる。
上述した実施形態及び変形例は一例であって、これらに限定されるわけではない。例えば各実施形態及び各変形例は、適宜組み合わせることが可能である。
本発明は、実施の形態で説明した構成と実質的に同一の構成(例えば、機能、方法および結果が同一の構成、あるいは目的及び効果が同一の構成)を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成に公知技術を付加した
構成を含む。