以下では、本発明の実施の形態について、添付図面を参照しつつ詳細に説明する。
<車両の駆動系>
図1は、車両1の駆動系の構成を示すスケルトン図である。
車両1は、エンジン2を駆動源とする自動車である。
エンジン2には、エンジン2の燃焼室への吸気量を調整するための電子スロットルバルブ、燃料を吸入空気に噴射するインジェクタ(燃料噴射装置)および燃焼室内に電気放電を生じさせる点火プラグなどが設けられている。また、エンジン2には、その始動のためのスタータが付随して設けられている。エンジン2の動力は、トルクコンバータ3および変速機4を介して、デファレンシャルギヤ5に伝達され、デファレンシャルギヤ5から左右のドライブシャフト6L,6Rを介してそれぞれ左右の駆動輪7L,7Rに伝達される。
エンジン2は、E/G出力軸11を備えている。E/G出力軸11は、エンジン2が発生する動力により回転される。
トルクコンバータ3は、フロントカバー21、ポンプインペラ22、タービンランナ23およびロックアップ機構24を備えている。フロントカバー21には、E/G出力軸11が接続され、フロントカバー21は、E/G出力軸11と一体に回転する。ポンプインペラ22は、フロントカバー21に対するエンジン2側と反対側に配置されている。ポンプインペラ22は、フロントカバー21と一体回転可能に設けられている。タービンランナ23は、フロントカバー21とポンプインペラ22との間に配置されて、フロントカバー21と共通の回転軸線を中心に回転可能に設けられている。
ロックアップ機構24は、ロックアップピストン25を備えている。ロックアップピストン25は、フロントカバー21とタービンランナ23との間に設けられている。ロックアップ機構24は、ロックアップピストン25とフロントカバー21との間の解放油室26の油圧とロックアップピストン25とポンプインペラ22との間の係合油室27の油圧との差圧により、ロックアップオン(係合)/オフ(解放)される。すなわち、解放油室26の油圧が係合油室27の油圧よりも高い状態では、その差圧により、ロックアップピストン25がフロントカバー21から離間し、ロックアップオフとなる。係合油室27の油圧が解放油室26の油圧よりも高い状態では、その差圧により、ロックアップピストン25がフロントカバー21に押し付けられて、ロックアップオンとなる。
ロックアップオフの状態では、E/G出力軸11が回転されると、ポンプインペラ22が回転する。ポンプインペラ22が回転すると、ポンプインペラ22からタービンランナ23に向かうオイルの流れが生じる。このオイルの流れがタービンランナ23で受けられて、タービンランナ23が回転する。このとき、トルクコンバータ3の増幅作用が生じ、タービンランナ23には、E/G出力軸11の動力(トルク)よりも大きな動力が発生する。
ロックアップオンの状態では、E/G出力軸11が回転されると、E/G出力軸11、ポンプインペラ22およびタービンランナ23が一体となって回転する。
変速機4は、インプット軸31およびアウトプット軸32を備え、インプット軸31に入力される動力を2つの経路に分岐してアウトプット軸32に伝達可能に構成された、いわゆる動力分割式(トルクスプリット式)変速機である。2つの動力伝達経路を構成するため、変速機4は、無段変速機構33、前減速ギヤ機構34、遊星歯車機構35およびスプリット変速機構36を備えている。
インプット軸31は、トルクコンバータ3のタービンランナ23に連結され、タービンランナ23と同一の回転軸線を中心に一体的に回転可能に設けられている。
アウトプット軸32は、インプット軸31と平行に設けられている。アウトプット軸32には、出力ギヤ37が相対回転不能に支持されている。出力ギヤ37は、デファレンシャルギヤ5(デファレンシャルギヤ5のリングギヤ)と噛合している。
無段変速機構33は、公知のベルト式の無段変速機(CVT:Continuously Variable Transmission)と同様の構成を有している。具体的には、無段変速機構33は、プライマリ軸41と、プライマリ軸41と平行に設けられたセカンダリ軸42と、プライマリ軸41に相対回転不能に支持されたプライマリプーリ43と、セカンダリ軸42に相対回転不能に支持されたセカンダリプーリ44と、プライマリプーリ43とセカンダリプーリ44とに巻き掛けられたベルト45とを備えている。
プライマリプーリ43は、プライマリ軸41に固定された固定シーブ51と、固定シーブ51にベルト45を挟んで対向配置され、プライマリ軸41にその軸線方向に移動可能かつ相対回転不能に支持された可動シーブ52とを備えている。可動シーブ52に対して固定シーブ51と反対側には、プライマリ軸41に固定されたシリンダ53が設けられ、可動シーブ52とシリンダ53との間に、油圧室54が形成されている。
セカンダリプーリ44は、セカンダリ軸42に固定された固定シーブ55と、固定シーブ55にベルト45を挟んで対向配置され、セカンダリ軸42にその軸線方向に移動可能かつ相対回転不能に支持された可動シーブ56とを備えている。可動シーブ56に対して固定シーブ55と反対側には、セカンダリ軸42に固定されたシリンダ57が設けられ、可動シーブ56とシリンダ57との間に、油圧室58が形成されている。回転軸線方向において、固定シーブ55と可動シーブ56との位置関係は、プライマリプーリ43の固定シーブ51と可動シーブ52との位置関係と逆転している。
無段変速機構33では、プライマリプーリ43の油圧室54およびセカンダリプーリ44の油圧室58に供給される油圧がそれぞれ制御されて、プライマリプーリ43およびセカンダリプーリ44の各溝幅が変更されることにより、プライマリプーリ43とセカンダリプーリ44との変速比(プーリ比)が連続的に無段階で変更される。
具体的には、変速比が小さくされるときには、プライマリプーリ43の油圧室54に供給される油圧が上げられる。これにより、プライマリプーリ43の可動シーブ52が固定シーブ51側に移動し、固定シーブ51と可動シーブ52との間隔(溝幅)が小さくなる。これに伴い、プライマリプーリ43に対するベルト45の巻きかけ径が大きくなり、セカンダリプーリ44の固定シーブ55と可動シーブ56との間隔(溝幅)が大きくなる。その結果、プライマリプーリ43とセカンダリプーリ44との変速比が小さくなる。
変速比が大きくされるときには、プライマリプーリ43の油圧室54に供給される油圧が下げられる。これにより、セカンダリプーリ44の推力(セカンダリ推力)に対するプライマリプーリ43の推力(プライマリ推力)の比である推力比が小さくなり、セカンダリプーリ44の固定シーブ55と可動シーブ56との間隔が小さくなるとともに、固定シーブ51と可動シーブ52との間隔が大きくなる。その結果、プライマリプーリ43とセカンダリプーリ44との変速比が大きくなる。
一方、プライマリプーリ43およびセカンダリプーリ44の推力は、プライマリプーリ43およびセカンダリプーリ44とベルト45との間で滑り(ベルト滑り)が生じない大きさを必要とする。そのため、ベルト滑りを生じない必要十分な挟圧が得られるよう、プライマリプーリ43の油圧室54およびセカンダリプーリ44の油圧室58に供給される油圧が制御される。
前減速ギヤ機構34は、インプット軸31に入力される動力を逆転かつ減速させてプライマリ軸41に伝達する構成である。具体的には、前減速ギヤ機構34は、インプット軸31に相対回転不能に支持されるインプット軸ギヤ61と、インプット軸ギヤ61よりも大径で歯数が多く、プライマリ軸41にスプライン嵌合により相対回転不能に支持されて、インプット軸ギヤ61と噛合するプライマリ軸ギヤ62とを含む。
遊星歯車機構35は、サンギヤ71、キャリヤ72およびリングギヤ73を備えている。サンギヤ71は、セカンダリ軸42にスプライン嵌合により相対回転不能に支持されている。キャリヤ72は、アウトプット軸32に相対回転可能に外嵌されている。キャリヤ72は、複数個のピニオンギヤ74を回転可能に支持している。複数個のピニオンギヤ74は、円周上に配置され、サンギヤ71と噛合している。リングギヤ73は、複数個のピニオンギヤ74を一括して取り囲む円環状を有し、各ピニオンギヤ74にセカンダリ軸42の回転径方向の外側から噛合している。また、リングギヤ73には、アウトプット軸32が接続され、リングギヤ73は、アウトプット軸32と同一の回転軸線を中心に一体的に回転可能に設けられている。
スプリット変速機構36は、スプリットドライブギヤ81と、スプリットドライブギヤ81と噛合するスプリットドリブンギヤ82とを含む平行軸式歯車機構である。
スプリットドライブギヤ81は、インプット軸31に相対回転可能に外嵌されている。
スプリットドリブンギヤ82は、遊星歯車機構35のキャリヤ72と同一の回転軸線を中心に一体的に回転可能に設けられている。スプリットドリブンギヤ82は、スプリットドライブギヤ81よりも小径に形成され、スプリットドライブギヤ81よりも少ない歯数を有している。
また、変速機4は、クラッチC1,C2およびブレーキB1を備えている。
クラッチC1は、油圧により、インプット軸31とスプリットドライブギヤ81とを直結(一体回転可能に結合)する係合状態と、その直結を解除する解放状態とに切り替えられる。
クラッチC2は、油圧により、遊星歯車機構35のサンギヤ71とリングギヤ73とを直結(一体回転可能に結合)する係合状態と、その直結を解除する解放状態とに切り替えられる。
ブレーキB1は、油圧により、遊星歯車機構35のキャリヤ72を制動する係合状態と、キャリヤ72の回転を許容する解放状態とに切り替えられる。
<動力伝達モード>
図2は、車両1の前進時および後進時におけるクラッチC1,C2およびブレーキB1の状態を示す図である。図3は、遊星歯車機構35のサンギヤ71、キャリヤ72およびリングギヤ73の回転数(回転速度)の関係を示す共線図である。図4は、無段変速機構33による変速比と変速機4の全体での減速比(ユニット変速比)、つまりインプット軸31とアウトプット軸32との回転数比である減速比の関係を示す図である。
図2において、「○」は、クラッチC1,C2およびブレーキB1が係合状態であることを示している。「×」は、クラッチC1,C2およびブレーキB1が解放状態であることを示している。
車両1の車室内には、運転者が操作可能な位置に、シフトレバー(セレクトレバー)が配設されている。シフトレバーの可動範囲には、たとえば、P(パーキング)ポジション、R(リバース)ポジション、N(ニュートラル)ポジションおよびD(ドライブ)ポジションがこの順に一列に並べて設けられている。
シフトレバーがPポジションに位置する状態では、クラッチC1,C2およびブレーキB1のすべてが解放され、パーキングロックギヤ(図示せず)が固定されることにより、変速機4の変速レンジの1つであるPレンジが構成される。また、シフトレバーがNポジションに位置する状態では、クラッチC1,C2およびブレーキB1のすべてが解放されて、パーキングロックギヤが固定されないことにより、変速機4の変速レンジの1つであるNレンジが構成される。クラッチC1およびブレーキB1の両方が解放された状態では、エンジン2の動力がセカンダリ軸42まで伝達されて、セカンダリ軸42が回転するが、遊星歯車機構35のサンギヤ71およびピニオンギヤ74が空転し、エンジン2の動力は駆動輪7L,7Rに伝達されない。
シフトレバーがDポジションに位置する状態では、変速機4の変速レンジの1つである前進レンジが構成される。この前進レンジでの動力伝達モードには、ベルトモードおよびスプリットモードが含まれる。ベルトモードとスプリットモードとは、クラッチC1が係合している状態とクラッチC2が係合している状態との切り替え(クラッチC1,C2の掛け替え)により切り替えられる。
ベルトモードでは、図2に示されるように、クラッチC1およびブレーキB1が解放され、クラッチC2が係合される。これにより、スプリットドライブギヤ81がインプット軸31から切り離され、遊星歯車機構35のキャリヤ72がフリー(自由回転状態)になり、遊星歯車機構35のサンギヤ71とリングギヤ73とが直結される。
インプット軸31に入力される動力は、前減速ギヤ機構34により逆転かつ減速されて、無段変速機構33のプライマリ軸41に伝達され、プライマリ軸41およびプライマリプーリ43を回転させる。プライマリプーリ43の回転は、ベルト45を介して、セカンダリプーリ44に伝達され、セカンダリプーリ44およびセカンダリ軸42を回転させる。遊星歯車機構35のサンギヤ71とリングギヤ73とが直結されているので、セカンダリ軸42と一体となって、サンギヤ71、リングギヤ73およびアウトプット軸32が回転する。したがって、ベルトモードでは、図3および図4に示されるように、減速比が無段変速機構33の変速比(プライマリプーリ43とセカンダリプーリ44とのプーリ比)に前減速比(インプット軸31の回転数/プライマリ軸41の回転数)を乗じた値と一致する。
スプリットモードでは、図2に示されるように、クラッチC1が係合され、クラッチC2およびブレーキB1が解放される。これにより、インプット軸31とスプリットドライブギヤ81とが結合されて、インプット軸31の回転がスプリットドライブギヤ81およびスプリットドリブンギヤ82を介して遊星歯車機構35のキャリヤ72に伝達可能になり、遊星歯車機構35のサンギヤ71とリングギヤ73とが切り離される。
インプット軸31に入力される動力は、スプリットドライブギヤ81からスプリットドリブンギヤ82を介して遊星歯車機構35のキャリヤ72に増速されて伝達される。キャリヤ72に伝達される動力は、キャリヤ72からサンギヤ71およびリングギヤ73に分割して伝達される。サンギヤ71の動力は、セカンダリ軸42、セカンダリプーリ44、ベルト45、プライマリプーリ43およびプライマリ軸41を介してプライマリ軸ギヤ62に伝達され、プライマリ軸ギヤ62からインプット軸ギヤ61に伝達される。そのため、ベルトモードでは、インプット軸ギヤ61が駆動ギヤとなり、プライマリ軸ギヤ62が被動ギヤとなるのに対し、スプリットモードでは、プライマリ軸ギヤ62が駆動ギヤとなり、インプット軸ギヤ61が被動ギヤとなる。
スプリットドライブギヤ81とスプリットドリブンギヤ82とのギヤ比は一定で不変(固定)であるので、スプリットモードでは、インプット軸31に入力される動力が一定であれば、遊星歯車機構35のキャリヤ72の回転が一定速度に保持される。そのため、変速比が上げられると、遊星歯車機構35のサンギヤ71の回転数が下がるので、図3に破線で示されるように、遊星歯車機構35のリングギヤ73(アウトプット軸32)の回転数が上がる。その結果、スプリットモードでは、図4に示されるように、無段変速機構33の変速比が大きいほど、変速機4の減速比が小さくなり、変速比に対する減速比の感度(変速比の変化量に対する減速比の変化量の割合)がベルトモードと比べて低い。
ベルトモードおよびスプリットモードにおけるアウトプット軸32の回転は、出力ギヤ37を介して、デファレンシャルギヤ5に伝達される。これにより、車両1のドライブシャフト6L,6Rおよび駆動輪7L,7Rが前進方向に回転する。
シフトレバーがRポジションに位置する状態では、変速機4の変速レンジの1つである後進レンジが構成される。後進レンジでは、図2に示されるように、クラッチC1,C2が解放され、ブレーキB1が係合される。これにより、スプリットドライブギヤ81がインプット軸31から切り離され、遊星歯車機構35のサンギヤ71とリングギヤ73とが切り離され、遊星歯車機構35のキャリヤ72が制動される。
インプット軸31に入力される動力は、前減速ギヤ機構34により逆転かつ減速されて、無段変速機構33のプライマリ軸41に伝達され、プライマリ軸41からプライマリプーリ43、ベルト45およびセカンダリプーリ44を介してセカンダリ軸42に伝達され、セカンダリ軸42と一体に、遊星歯車機構35のサンギヤ71を回転させる。遊星歯車機構35のキャリヤ72が制動されているので、サンギヤ71が回転すると、遊星歯車機構35のリングギヤ73がサンギヤ71と逆方向に回転する。このリングギヤ73の回転方向は、前進時(ベルトモードおよびスプリットモード)におけるリングギヤ73の回転方向と逆方向となる。そして、リングギヤ73と一体に、アウトプット軸32が回転する。アウトプット軸32の回転は、出力ギヤ37を介して、デファレンシャルギヤ5に伝達される。これにより、車両1のドライブシャフト6L,6Rおよび駆動輪7L,7Rが後進方向に回転する。
<車両の制御系>
図5は、車両1の制御系の構成を示すブロック図である。
車両1には、マイコン(マイクロコントローラユニット)を含む構成のECU(Electronic Control Unit:電子制御ユニット)が備えられている。マイコンには、たとえば、CPU、フラッシュメモリなどの不揮発性メモリおよびDRAM(Dynamic Random Access Memory)などの揮発性メモリが内蔵されている。図5には、変速機4を制御するための1つのECU91のみが示されているが、車両1には、各部を制御するため、ECU91と同様の構成を有する複数のECUが搭載されている。ECU91を含む複数のECUは、CAN(Controller Area Network)通信プロトコルによる双方向通信が可能に接続されている。
ECU91には、制御に必要な各種センサが接続されている。その一例として、ECU91には、トルクコンバータ3のタービンランナ23の回転に同期したパルス信号を検出信号として出力するタービン回転センサ92と、プライマリ軸41の回転に同期したパルス信号を検出信号として出力するプライマリ回転センサ93と、セカンダリ軸42の回転に同期したパルス信号を検出信号として出力するセカンダリ回転センサ94と、アウトプット軸32の回転に同期したパルス信号を検出信号として出力するアウトプット回転センサ95と、シフトレバーのP,R,N,Dポジションの各ポジションに応じた検出信号を出力するシフトポジションセンサ96と、運転者により操作されるアクセルペダル(図示せず)の操作量に応じた検出信号を出力するアクセルセンサ97とが接続されている。
ECU91では、タービン回転センサ92、プライマリ回転センサ93、セカンダリ回転センサ94、アウトプット回転センサ95およびシフトポジションセンサ96の各検出信号から、タービンランナ23の回転数であるタービン回転数、プライマリ回転数(プライマリプーリ43)の回転数であるプライマリ回転数、セカンダリ軸42(セカンダリプーリ44)の回転数であるセカンダリ回転数、アウトプット軸32の回転数であるアウトプット回転数、およびシフトレバーのポジションが取得される。また、ECU91では、アクセルセンサ97の検出信号から、アクセルペダルの最大操作量に対する操作量の割合、つまりアクセルペダルが踏み込まれていないときを0%とし、アクセルペダルが最大に踏み込まれたときを100%とする百分率であるアクセル開度が求められる。そして、ECU91により、各種のセンサから取得される情報、他のECUから入力される情報などに基づいて、変速機4の変速制御などのため、変速機4を含むユニットの各部に油圧を供給するための油圧回路に含まれる各種のバルブなどが制御される。
<発進制御1>
図6は、発進制御の一例を示すフローチャートである。
車室内のシフトレバーがPポジションまたはNポジションからDポジションまたはRポジションに変位されると、ECU91により、発進制御が実行される。
発進制御では、無段変速機構33の変速比が最大変速比よりも小さい発進変速比に設定される(ステップS11)。これにより、変速機4の減速比は、最大減速比よりも小さい減速比となる。
車室内のシフトレバーがPポジションまたはNポジションからDポジションに変位されると、クラッチC2が係合されて、通常は、車両1が前進を開始する。また、シフトレバーがPポジションまたはNポジションからからRポジションに変位されると、ブレーキB1が係合されて、通常は、車両1が後進を開始する。
車両1が前進または後進を開始した場合、つまり車両1が発進した場合(ステップS12のNO)、発進制御が終了される。
車両1が発進しない場合(ステップS12のYES)、シフトレバーがDポジションまたはRポジションからNポジションに変位されたか否かが判別される(ステップS13)。
そして、シフトレバーがDポジションまたはRポジションからNポジション(Nポジションを経由してPポジション)に変位されると(ステップS13のYES)、これに応じて、無段変速機構33の変速比が最大変速比側に所定量だけ変更される(ステップS14)。
その後、シフトレバーがNポジション(Pポジション)からDポジションまたはRポジションに変位されると(ステップS15のYES)、発進制御が終了される。
<作用効果>
車両1の発進が不能である場合に、シフトレバーがNポジションに変位されたことに応じて、無段変速機構33の変速比が最大変速比側(Low側)に変更される。シフトレバーがNポジションに位置し、クラッチC1,C2およびブレーキB1のすべてが解放されている状態では、エンジン2の動力によりプライマリプーリ43およびセカンダリプーリ44が回転しているので、変速比の変更が可能である。変速比が最大変速比側に変更されることにより、車両1を発進させる駆動力が上昇するので、車両1を良好に発進させることができる。また、変速比が最大変速比側に変更される前は、変速比が最大変速比よりも小さい発進変速比に設定されているので、車両1の発進のための駆動力が過大になることを抑制できる。
<発進制御2>
図7は、発進制御の他の例を示すフローチャートである。
発進制御の他の例では、車両1の発進前、シフトレバーがPポジションまたはNポジションに位置している状態において、無段変速機構33の変速比が最大変速比よりも小さい発進変速比に設定される(ステップS21)。
そして、車室内のシフトレバーがPポジションまたはNポジションからDポジションに変位されると、クラッチC2の係合前に、車両1が所在する路面が車両1の発進方向に上り勾配であるか否かが判定される(ステップS22)。路面の勾配は、Gセンサの検出信号から求めることができる。Gセンサは、たとえば、錘の変位に応じた信号を車両1の加速度に応じた検出信号として出力するものが採用されている。そのため、路面の勾配に応じた検出信号がGセンサから出力されるので、Gセンサの検出信号から車両1が所在する路面の勾配(傾斜角)を求めることができる。
路面が車両1の発進方向に上り勾配である場合には(ステップS22のYES)、無段変速機構33の変速比が最大変速比側に所定量だけ変更されて(ステップS23)、発進制御が終了される。路面が車両1の発進方向に上り勾配ではない場合には(ステップS22のNO)、無段変速機構33の変速比が発進変速比に設定されたまま(ステップS23のスキップ)、発進制御が終了される。
<作用効果>
この発進制御によれば、通常時には、車両1の発進時の無段変速機構33の変速比が最大変速比よりも小さい発進変速比に設定される。これにより、車両1の発進のための駆動力が過大になることを抑制できる。また、車両1が所在する路面の勾配が当該発進方向に上り勾配である場合には、車両1の発進前に、無段変速機構33の変速比が最大変速比側に変更される。そのため、車両1を良好に発進させることができる。
<発進制御3>
図8は、発進制御のさらに他の例を示すフローチャートである。
図8に示される発進制御では、車室内のシフトレバーがPポジションまたはNポジションからDポジションまたはRポジションに変位されると、無段変速機構33の変速比が最大変速比よりも小さい発進変速比に設定される(ステップS31)。
その後、クラッチC2が係合されると、通常は、車両1が前進を開始する。また、シフトレバーがPポジションまたはNポジションからからRポジションに変位されると、ブレーキB1が係合されて、通常は、車両1が後進を開始する。
車両1が前進または後進を開始した場合、つまり車両1が発進した場合(ステップS32のNO)、発進制御が終了される。
車両1が発進しない場合(ステップS32のYES)、アクセルペダルの踏操作が解除されて、アクセル開度が所定開度以下(たとえば、0)に戻されたか否かが判別される(ステップS33)。
そして、アクセル開度が所定開度以下に戻される(ステップS33のYES)、これに応じて、クラッチC2にスリップが発生するようにクラッチC2の係合圧(クラッチ圧)が制御されることにより、プライマリプーリ43およびセカンダリプーリ44を回転させて、変速比が最大変速比側に所定量だけ変更される(ステップS34)。その後、発進制御が終了される。
<作用効果>
この発進制御によっても、図6に示される発進制御の場合と同様な作用効果を奏することができる。また、アクセル開度が所定開度以下に戻された状態でクラッチC2を滑らせることにより、クラッチC2の損傷を防止しつつ、車両1を良好に発進させることができる。
<変形例>
前述の実施形態では、変速機4として、動力分割式(トルクスプリット式)の変速機を取り上げたが、本発明に係る制御装置は、動力分割式の変速機4に限らず、図9に示される構成のCVT104を搭載した車両101に搭載することもできる。
車両101は、エンジン102を駆動源とする自動車である。エンジン102の動力は、トルクコンバータ103およびベルト式のCVT104を介して、デファレンシャルギヤ105に伝達され、デファレンシャルギヤ105から左右のドライブシャフト106L,106Rを介してそれぞれ左右の駆動輪107L,107Rに伝達される。
トルクコンバータ103は、ロックアップ機構付きのトルクコンバータであり、フロントカバー111、ポンプインペラ112、タービンランナ113およびロックアップクラッチ114を備えている。フロントカバー111には、エンジン102のクランクシャフトが接続され、フロントカバー111は、クランクシャフトと一体に回転する。ポンプインペラ112は、フロントカバー111に対するエンジン側と反対側に配置されている。ポンプインペラ112は、フロントカバー111と一体回転可能に設けられている。タービンランナ113は、フロントカバー111とポンプインペラ112との間に配置されて、フロントカバー111と共通の回転軸線を中心に回転可能に設けられている。ロックアップクラッチ114は、フロントカバー111とタービンランナ113との間に配置されている。
ロックアップクラッチ114は、ロックアップクラッチ114とフロントカバー111との間の解放側油室115の油圧とロックアップクラッチ114とポンプインペラ112との間の係合側油室116の油圧との差圧により係合/解放される。すなわち、解放側油室115の油圧が係合側油室116の油圧よりも高い状態では、その差圧により、ロックアップクラッチ114がフロントカバー111から離間し、ロックアップクラッチ114が解放されたロックアップオフ状態(解放状態)になる。係合側油室116の油圧が解放側油室115の油圧よりも高い状態では、その差圧により、ロックアップクラッチ114がフロントカバー111に押し付けられて、ロックアップクラッチ114が係合されたロックアップオン状態(締結状態)になる。
ロックアップオフ状態において、E/G出力軸が回転されると、ポンプインペラ112が回転する。ポンプインペラ112が回転すると、ポンプインペラ112からタービンランナ113に向かうオイルの流れが生じる。このオイルの流れがタービンランナ113で受けられて、タービンランナ113が回転する。このとき、トルクコンバータ103の増幅作用が生じ、タービンランナ113には、E/G出力軸の動力(トルク)よりも大きな動力が発生する。
ロックアップオン状態では、E/G出力軸が回転されると、E/G出力軸、ポンプインペラ112およびタービンランナ113が一体となって回転する。
トルクコンバータ103とCVT104との間には、オイルポンプ108が設けられている。オイルポンプ108は、機械式オイルポンプであり、ポンプ軸は、トルクコンバータ103のポンプインペラ112と一体回転するように設けられている。これにより、エンジン102の動力によりポンプインペラ112が回転すると、オイルポンプ108のポンプ軸が回転し、オイルポンプ108から油圧が発生する。
CVT104は、トルクコンバータ103から入力される動力をデファレンシャルギヤ105に伝達する。CVT104は、インプット軸121、アウトプット軸122、ベルト伝達機構123および前後進切替機構124を備えている。
インプット軸121は、トルクコンバータ103のタービンランナ113に連結され、タービンランナ113と同一の回転軸線を中心に一体的に回転可能に設けられている。
アウトプット軸122は、インプット軸121と平行に配置されている。アウトプット軸122には、出力ギヤ125が相対回転不能に支持されている。
ベルト伝達機構123には、プライマリ軸131およびセカンダリ軸132が含まれる。プライマリ軸131およびセカンダリ軸132は、それぞれインプット軸121およびアウトプット軸122と同一軸線上に配置されている。
そして、ベルト伝達機構123は、プライマリ軸131に支持されたプライマリプーリ133とセカンダリ軸132に支持されたセカンダリプーリ134とに、無端状のベルト135が巻き掛けられた構成を有している。
プライマリプーリ133は、プライマリ軸131に固定された固定シーブ141と、固定シーブ141にベルト135を挟んで対向配置され、プライマリ軸131にその軸線方向に移動可能かつ相対回転不能に支持された可動シーブ142とを備えている。可動シーブ142に対して固定シーブ141と反対側には、プライマリ軸131に固定されたピストン143が設けられ、可動シーブ142とピストン143との間に、ピストン室144が形成されている。
セカンダリプーリ134は、セカンダリ軸132に対して固定された固定シーブ145と、固定シーブ145にベルト135を挟んで対向配置され、セカンダリ軸132にその軸線方向に移動可能かつ相対回転不能に支持された可動シーブ146とを備えている。可動シーブ146に対して固定シーブ145と反対側には、セカンダリ軸132に固定されたピストン147が設けられ、可動シーブ146とピストン147との間に、ピストン室148が形成されている。
プライマリプーリ133の可動シーブ142の移動により、固定シーブ141と可動シーブ142との間隔である溝幅が連続的に変化する。セカンダリプーリ134の可動シーブ146の移動により、固定シーブ145と可動シーブ146との間隔である溝幅が連続的に変化する。プライマリプーリ133およびセカンダリプーリ134の各溝幅を連続的に変更することにより、プライマリプーリ133およびセカンダリプーリ134に対するベルト135の巻きかけ径を変更することができ、変速比(プーリ比)を無段階で連続的に変更することができる。
なお、図示されていないが、可動シーブ146とピストン147との間には、ベルト135に初期挟圧(初期推力)を与えるためのバイアススプリングが介在されている。バイアススプリングの弾性力により、可動シーブ146およびピストン147は、互いに離間する方向に付勢されている。
前後進切替機構124は、インプット軸121とベルト伝達機構123のプライマリ軸131との間に介装されている。前後進切替機構124は、遊星歯車機構151、クラッチCおよびブレーキBを備えている。
遊星歯車機構151には、キャリヤ152、サンギヤ153およびリングギヤ154が含まれる。
キャリヤ152は、インプット軸121に相対回転可能に外嵌されている。キャリヤ152は、複数のピニオンギヤ155を回転可能に支持している。複数のピニオンギヤ155は、円周上に配置されている。
サンギヤ153は、インプット軸121に相対回転不能に支持されて、複数のピニオンギヤ155により取り囲まれる空間に配置されている。サンギヤ153のギヤ歯は、各ピニオンギヤ155のギヤ歯と噛合している。
リングギヤ154は、その回転軸線がプライマリ軸131の軸心と一致するように設けられている。リングギヤ154には、ベルト伝達機構123のプライマリ軸131が連結されている。リングギヤ154のギヤ歯は、複数のピニオンギヤ155を一括して取り囲むように形成され、各ピニオンギヤ155のギヤ歯と噛合している。
クラッチCは、油圧により、キャリヤ152とサンギヤ153とを直結(一体回転可能に結合)する係合状態(オン)と、その直結を解除する解放状態(オフ)とに切り替えられる。
ブレーキBは、キャリヤ152とトルクコンバータ103およびCVT104を収容するトランスミッションケースとの間に設けられ、油圧により、キャリヤ152を制動する係合状態(オン)と、キャリヤ152の回転を許容する解放状態(オフ)とに切り替えられる。
CVT104の構成では、クラッチCおよびブレーキBの両方が解放されたニュートラル状態では、プライマリプーリ133およびセカンダリプーリ134が回転しない。そのため、車両1の発進不能時に変速比を最大変速比側に変更する場合には、ニュートラル状態において、プライマリプーリ133のピストン室148から油圧を抜いて、プライマリプーリ133とベルト135とを滑らせながら、可動シーブ142を移動させることにより、変速比が変更されるとよい。
その他、前述の構成には、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。