本発明の第一実施形態は、触媒担体および前記触媒担体に担持される触媒金属からなる電極触媒と、水を主成分とする分散媒と、を接触させ、その後、さらに高分子電解質を混合して組成物を得、該組成物を用いて触媒層を形成する、ことを有し、接触は電極触媒の粒子径1μm以下の累積体積分率が0%超になるまで維持する、燃料電池用触媒層の製造方法である。
また、本発明の第二実施形態は、触媒担体および前記触媒担体に担持される触媒金属からなる燃料電池用電極触媒と、水を主成分とする分散媒とを含む触媒混合物であって、電極触媒の粒子径1μm以下の累積体積分率が0%超である、電極触媒混合物である。
以下、触媒担体および触媒担体に担持される触媒金属からなる燃料電池用電極触媒を単に電極触媒と、水を主成分とする分散媒を単に分散媒と称することがある。
第一実施形態の電極触媒の製造方法により得られた電極触媒層、または第二実施形態の電極触媒混合物を用いて形成された電極触媒層を膜電極接合体に適用することで、ウェット条件下での電池性能を維持しつつ、ドライ条件下での電池性能を向上させることができる。両実施形態がかような効果を奏するメカニズムは、以下のように推定される。なお、本発明の技術的範囲は、以下のメカニズムに何ら限定されるものではない。
燃料電池の性能(活性)は、触媒金属自体の活性に加えて、触媒金属への反応ガス(例えば、プロトン)の輸送特性の影響を受ける。したがって、触媒金属近傍から触媒層まで、種々のスケールにおける構造形成が反応ガス輸送特性への影響を通して、燃料電池の性能(活性)の支配要因となる。
アノード側で生成したプロトンは、電極触媒内の高分子電解質および高分子電解質膜を通してカソード側に輸送される。この際、例えば、ナフィオン(登録商標、デュポン社製)のようなパーフルオロカーボンスルホン酸系ポリマーにおいては、ポリマー中のスルホン酸基をプロトンが移動する。ドライ条件下では、プロトン輸送を担うスルホン酸基を有する高分子電解質側鎖の運動性が低下するため、高分子電解質を介するプロトン輸送性が低下してしまう。このため、一般的にはドライ条件下では、プロトン輸送が不利となり、電池性能の低下を招きやすい。
一方、電極触媒を構成する触媒担体として一般的に用いられる炭素材料は、1次粒子径が数十nmオーダのため、van der Waals引力で凝集しやすく、また、疎水性表面を有するため、水系溶媒中では疎水効果により凝集しやすい。電極触媒が凝集してしまうと、電極触媒凝集体内部に存在する触媒活性成分が反応に寄与できなくなるため、電池性能の低下を引き起こすこととなる。
本実施形態では、電極触媒を分散媒に接触させる(浸漬する)ことで、電極触媒の凝集体を緩やかにほぐすことを意図したものである。分散媒は水を主成分とするので、本来であれば疎水性表面を有する触媒担体に吸着しにくく、粒子間に分散媒は浸透しにくい。しかしながら、電極触媒を分散媒に比較的長時間浸漬させることで、触媒担体の凝集体の各粒子間に水が吸着し、さらに、粒子間に水が入り込むことで、凝集体がほぐれると考えられる。また、入り込んだ水は電極触媒粒子に吸着する(図1参照)。この粒子に吸着した吸着水が、疎水性である触媒担体表面と反発し、発生する斥力によって、粒子が再び凝集することを抑制することができるものと考えられる。
また、上記のように、電極触媒上に吸着水が存在することで、該吸着水によって高分子電解質の側鎖が電極触媒に近づきやすくなる。このような組成物を用いて電極触媒層を形成することで、電極触媒に側鎖のスルホン酸基が接近した電極触媒層が得られる。したがって、電極触媒近傍における側鎖により、ドライ条件下でもプロトン輸送性の低下が抑制される。
ゆえに、電極触媒の凝集体を崩し、そしてその状態を維持することで、電極触媒粒子上に存在する触媒金属を有効に利用することができる。また、電極触媒周囲に水が存在する組成物を用いて触媒層を形成することで、プロトンの輸送性が向上し、ドライ条件下であっても、電池性能が向上するものと考えられる。
一方で、ウェット条件下では、一般的に触媒層内での酸素輸送が不利となる。本実施形態の構成によれば、電極触媒層形成用の組成物において、電極触媒表面に吸着水が存在することで、疎水性である高分子電解質主鎖が電極触媒に近づくことができない。このため、一定割合以上で高分子電解質を介さずに反応ガスを直接触媒金属に供給することができ、触媒金属まで酸素ガスをより速やかにかつより効率よく輸送できる。ゆえに、酸素輸送性が向上し、ウェット条件下でも高い発電性能を維持できるものと考えられる。
したがって、第一実施形態の電極触媒の製造方法により得られた電極触媒層、または第二実施形態の電極触媒混合物を用いて形成された電極触媒層を有する膜電極接合体および燃料電池は、ウェット条件下での高い発電性能を維持できるとともに、ドライ条件下であっても高い発電性能を発揮することができる。
以下、第一実施形態の燃料電池用触媒層の製造方法における各工程について説明する。なお、本明細書において、範囲を示す「X〜Y」は、XおよびYを含み、「X以上Y以下」を意味する。また、特記しない限り、操作および物性等の測定は室温(20〜25℃)/相対湿度40〜50%RHの条件で行う。
(I)電極触媒および水を主成分とする分散媒を接触させ、電極触媒の粒子径1μm以下の累積体積分率が0%超になるまで接触を維持して電極触媒混合物を得る工程
まず、電極触媒を準備する。
電極触媒は、触媒担体および触媒担体に担持される触媒金属からなる。
触媒担体は、上述した触媒成分を担持するための担体、および触媒成分と他の部材との間での電子の授受に関与する電子伝導パスとして機能する。触媒担体としては、触媒粒子を所望の分散状態で担持させるための比表面積を有し、集電体として十分な電子導電性を有しているものであればよいが、導電性および耐久性の観点から、触媒担体が炭素材料であることが好ましい。炭素材料としては、具体的には、アセチレンブラック、チャンネルブラック、オイルファーネスブラック、ガスファーネスブラック(例えば、バルカン)、ランプブラック、サーマルブラック、ブラックパール、ケッチェンブラック(登録商標)などのカーボンブラック;ブラックパール;黒鉛化アセチレンブラック;黒鉛化チャンネルブラック;黒鉛化オイルファーネスブラック;黒鉛化ガスファーネスブラック;黒鉛化ランプブラック;黒鉛化サーマルブラック;黒鉛化ケッチェンブラック;黒鉛化ブラックパール;カーボンナノチューブ;カーボンナノファイバー;カーボンナノホーン;カーボンフィブリル;活性炭;コークス;天然黒鉛;人造黒鉛などを挙げることができる。また、導電性担体として、ナノサイズの帯状グラフェンが3次元状に規則的に連結した構造を有するゼオライト鋳型炭素(ZTC)も挙げることができる。これらは1種単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。なお、ここでいう炭素材料とは、主成分として炭素原子を含むことをいい、炭素原子のみからなる、実質的に炭素原子からなる、の双方を含む概念であり、炭素原子以外の元素が含まれていてもよい。「実質的に炭素原子からなる」とは、2〜3重量%程度以下の不純物の混入が許容されうることを意味する。
触媒担体のBET比表面積は、触媒を高分散担持させるのに十分な比表面積であればよい。触媒担体(触媒担持前の触媒担体前駆体)のBET比表面積が500m2/g以上であることが好ましく、550m2/g以上であることがより好ましい。比表面積が上記したような範囲であれば、触媒担体へ触媒が十分分散して十分な発電性能が得られ、また、触媒を十分有効利用できるとともに、酸素輸送抵抗を低く制御しやすい。触媒担体のBET比表面積の上限は、2000m2/g以下であることが好ましく、1500m2/g以下であることがより好ましい。なお、触媒担体は、市販品を使用しても、または例えば、特開2010−208887号公報、国際公開第2009/075264号などに記載される公知の方法によって製造されてよい。
本明細書において、「BET比表面積(m2/g触媒担体)」は、窒素吸着法により測定される。詳細には、サンプル(炭素粉末、触媒粉末) 約0.04〜0.07gを精秤し、試料管に封入する。この試料管を真空乾燥器で90℃×数時間予備乾燥し、測定用サンプルとする。秤量には、株式会社島津製作所製電子天秤(AW220)を用いる。なお、塗布シートの場合には、これの全重量から、同面積のテフロン(登録商標)(基材)重量を差し引いた塗布層の正味の重量約0.03〜0.04gを試料重量として用いる。次に、下記測定条件にて、BET比表面積を測定する。吸着・脱着等温線の吸着側において、相対圧(P/P0)約0.00〜0.45の範囲から、BETプロットを作成することで、その傾きと切片からBET比表面積を算出する。
上記炭素材料の他、Sn(錫)やTi(チタン)などの多孔質金属、さらには導電性金属酸化物なども担体として使用可能である。本実施形態の効果を鑑みれば、触媒担体は粒子であることが好ましい。
また、触媒担体の大きさは、特に限定されないが、担持の容易さ、触媒利用率、電極触媒層の厚みを適切な範囲で制御するなどの観点からは、平均一次粒子径が5〜200nm、好ましくは10〜100nm程度とするのがよい。平均一次粒子径は、走査型電子顕微鏡(SEM)や透過型電子顕微鏡(TEM)などの観察手段を用い、数〜数十視野中に観察される粒子の粒子径の平均値として算出される値を採用するものとする。
触媒担体に触媒金属が担持された電極触媒において、触媒金属の担持量は、電極触媒の全量に対して、好ましくは10〜80重量%、より好ましくは20〜60重量%とするのがよい。触媒金属の担持量がかような範囲内の値であると、触媒担体上での触媒金属の分散度と触媒性能とのバランスが適切に制御されうる。なお、本発明における「触媒金属担持率」は、触媒金属を担持する前の担体と、触媒金属を担持させた後の触媒の重量を測定することにより求められる値である。
電極触媒を構成する触媒金属は、電気的化学反応の触媒作用をする機能を有する。アノード触媒層に用いられる触媒金属は、水素の酸化反応に触媒作用を有するものであれば特に制限はなく公知の触媒が同様にして使用できる。また、カソード触媒層に用いられる触媒金属もまた、酸素の還元反応に触媒作用を有するものであれば特に制限はなく公知の触媒が同様にして使用できる。具体的には、白金、ルテニウム、イリジウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、タングステン、鉛、鉄、銅、銀、クロム、コバルト、ニッケル、マンガン、バナジウム、モリブデン、ガリウム、アルミニウム等の金属およびこれらの合金などから選択されうる。
これらのうち、触媒活性、一酸化炭素等に対する耐被毒性、耐熱性などを向上させるために、少なくとも白金を含むものが好ましく用いられる。すなわち、触媒金属は、白金であるまたは白金と白金以外の金属成分を含むことが好ましく、白金または白金含有合金であることがより好ましい。このような触媒金属は、高い活性を発揮できる。前記合金の組成は、合金化する金属の種類にもよるが、白金の含有量を30〜90原子%とし、白金と合金化する金属の含有量を10〜70原子%とするのがよい。なお、合金とは、一般に金属元素に1種以上の金属元素または非金属元素を加えたものであって、金属的性質をもっているものの総称である。合金の組織には、成分元素が別個の結晶となるいわば混合物である共晶合金、成分元素が完全に溶け合い固溶体となっているもの、成分元素が金属間化合物または金属と非金属との化合物を形成しているものなどがあり、本願ではいずれであってもよい。この際、アノード触媒層に用いられる触媒金属およびカソード触媒層に用いられる触媒金属は、上記の中から適宜選択されうる。本明細書では、特記しない限り、アノード触媒層用およびカソード触媒層用の触媒金属についての説明は、両者について同様の定義である。しかしながら、アノード触媒層およびカソード触媒層の触媒金属は同一である必要はなく、上記したような所望の作用を奏するように、適宜選択されうる。
触媒金属(触媒成分)の形状や大きさは、特に制限されず公知の触媒成分と同様の形状および大きさが採用されうる。形状としては、例えば、粒状、鱗片状、層状などのものが使用できるが、好ましくは粒状である。この際、触媒金属粒子の平均粒子径は、好ましくは1〜30nm、より好ましくは2〜10nmである。触媒金属粒子の平均粒子径がかような範囲内の値であると、電気化学反応が進行する有効電極面積に関連する触媒利用率と担持の簡便さとのバランスが適切に制御されうる。なお、本明細書において、「触媒金属粒子の平均粒子径」は、X線回折における触媒金属成分の回折ピークの半値幅より求められる結晶子半径や、透過型電子顕微鏡(TEM)より調べられる触媒金属粒子の粒子半径の平均値として測定されうる。本明細書では、「触媒金属粒子の平均粒子径」は、X線回折における触媒金属成分の回折ピークの半値幅より求められる結晶子半径である。
電極触媒の製造方法(触媒担体前駆体への金属触媒の担持方法)は特に限定されず、従来公知の方法を用いることができる。例えば、液相還元法、蒸発乾固法、コロイド吸着法、噴霧熱分解法、逆ミセル(マイクロエマルジョン法)などの公知の方法が使用できる。または、電極触媒は、市販品を用いてもよい。
液相還元法による触媒の製造方法としては、触媒担体前駆体の表面に触媒金属を析出させた後、熱処理を行う方法などが挙げられる。具体的には、例えば、触媒金属の前駆体溶液に、触媒担体を浸漬して還元剤を用いて還元した後、熱処理を行う方法などが挙げられる。
ここで、触媒金属の前駆体としては、特に制限されず、使用される触媒金属の種類によって適宜選択される。具体的には、上記白金等の触媒金属の塩化物、硝酸塩、硫酸塩、塩化物、酢酸塩およびアミン化合物などが例示できる。より具体的には、塩化白金(ヘキサクロロ白金酸六水和物)、塩化パラジウム、塩化ロジウム、塩化ルテニウム、塩化コバルトなどの塩化物、硝酸パラジウム、硝酸ロジウム、硝酸イリジウムなどの硝酸塩、硫酸パラジウム、硫酸ロジウムなどの硫酸塩、酢酸ロジウムなどの酢酸塩、ジニトロジアンミン白金硝酸、ジニトロジアンミンパラジウムなどのアンミン化合物などが好ましく、例示される。また、触媒金属の前駆体溶液の調製に使用される溶媒は、触媒金属の前駆体を溶解できるものであれば特に制限されず、使用される触媒金属の前駆体の種類によって適宜選択される。具体的には、水、酸、アルカリ、有機溶媒などが挙げられる。触媒金属の前駆体溶液中の触媒金属の前駆体の濃度は、特に制限されないが、金属換算で0.1〜50重量%であることが好ましく、より好ましくは0.5〜20重量%である。
還元剤としては、水素、ヒドラジン、ホウ素化水素ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、クエン酸、クエン酸ナトリウム、L−アスコルビン酸、水素化ホウ素ナトリウム、ホルムアルデヒド、メタノール、エタノール、エチレン、一酸化炭素等が挙げられる。なお、水素などの常温でガス状の物質は、バブリングで供給することもできる。還元剤の量は、上記触媒金属の前駆体を触媒金属に還元できる量であれば特に制限されず、公知の量を同様にして適用できる。
析出条件は、触媒金属が触媒担体に析出できる条件であれば特に制限されない。例えば、析出温度は、溶媒の沸点付近の温度、より好ましくは室温〜100℃であることが好ましい。また、析出時間は、1〜10時間、より好ましくは2〜8時間であることが好ましい。なお、上記析出工程は、必要であれば、撹拌・混合しながら行ってもよい。これにより、触媒金属の前駆体が触媒金属に還元されて、触媒金属が触媒担体に析出(担持)する。
熱処理条件としては、例えば、熱処理温度は、300〜1200℃、より好ましくは500〜1150℃、特に好ましくは700〜1000℃であることが好ましい。また、熱処理時間は、0.02〜3時間、より好ましくは0.1〜2時間、特に好ましくは0.2〜1.5時間である。なお、触媒金属前駆体の還元促進効果を考慮すると、熱処理工程は、水素ガスを含む雰囲気下、より好ましくは水素雰囲気で行われることが好ましい。
次いで、電極触媒および水を主成分とする分散媒を接触させる。
水を主成分とする分散媒における主成分とは、分散媒に対して水が80重量%以上(上限100重量%)であることを指し、好ましくは水が90重量%以上(上限100重量%)であり、さらに好ましくは水が100重量%、すなわち分散媒が水である。分散媒の水の割合が高いことで、粒子間に入り込んだ分散媒(特に水)および電極触媒間の斥力が大きいものとなり、ほぐれた凝集体が再び凝集することを抑制することができる。さらに、分散媒の水の割合が高いことで、電極触媒に吸着した分散媒(特に水)の存在により高分子電解質が電極触媒に近づきにくくなり、ドライ条件下でのプロトン輸送性が向上するとともに、ウェット条件下での酸素輸送性も高く維持される。
ここで、水は、特に制限されず、水道水、精製水、イオン交換水、蒸留水等が使用できる。また、分散媒には水以外の親水性溶媒が含まれていてもよい。親水性溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコールなどが挙げられる。親水性溶媒は、単独で使用してもまたは2種以上を混合して使用してもよい。
電極触媒および分散媒の接触は、電極触媒の粒子径1μm以下の累積体積分率が0%超になるまで行う。すなわち、電極触媒の一次粒子径に近い粒子が現出するまで行う。電極触媒への分散媒の接触を維持することで、水が凝集体内部に入り込み、凝集体を崩すため、触媒粒子が一次粒子径に近い粒子が存在するようになるととともに、粒子上に吸着水が存在するようになると考えられる。さらに好適には、電極触媒および分散媒の接触の維持は、電極触媒の粒子径1μm以下の累積体積分率が2.5%以上(上限100%)、より好ましくは3.5%以上、より好ましくは4.5%以上、最も好ましくは5.0%以上になるまで行うことが好ましい。電極触媒の粒子径1μm以下の累積体積分率は大きければ大きいほど好ましいため、その上限は規定されないが、通常は40.0%以下である。
なお、「電極触媒および分散媒の接触は、電極触媒の粒子径1μm以下の累積体積分率が0%超になるまで行う」とは、電極触媒の粒子径1μm以下の累積体積分率が0%超以上となれば、接触の維持はどの時点でやめてもよいことを意味する。
また、電極触媒および分散媒の接触は、具体的には、接触前の電極触媒のピーク粒子径を100とした場合に、電極触媒のピーク粒子径が95以下になるまで行うことが好ましい。上述したように、電極触媒の凝集は、粒子間のファンデルワールス引力によるものと、分散媒中での疎水化効果によるものがある。分散媒接触前の凝集は、粒子間のファンデルワールス引力によるものであり、一般的には分散媒接触後のピーク粒子径より小さい。よって、電極触媒および分散媒の接触を、分散媒接触前の電極触媒のピーク粒子径よりも小さくなるまで行うことで、粒子間のファンデルワールス引力および分散媒中での疎水化効果の双方に起因して形成された凝集体のピーク粒子径よりも小さいものとなる。このようにピーク粒子径が小さくなることによって、電極触媒の一層の小粒径化が図れることとなる。ここで、電極触媒のピーク粒子径は、下記実施例に記載の粒径分布計測条件に基づいて算出された値を採用する。また、接触前の電極触媒のピーク粒子径を100とした場合に、90以下となるように電極触媒および分散媒の接触を行うことが好ましく、80以下となるように電極触媒および分散媒の接触を行うことがより好ましい。なお、電極触媒および分散媒の接触において、電極触媒のピーク粒子径を100とした場合に、接触を維持し続けても10程度で飽和する。好適な一実施形態は、接触前の電極触媒のピーク粒子径を100とした場合に、電極触媒のピーク粒子径が50〜80となるように電極触媒および分散媒の接触を行うことが好ましい。
なお、分散媒中の電極触媒のピーク粒子径および電極触媒の粒子径1μm以下の累積体積分率は以下のようにして求める。電極触媒および分散媒の混合物を2−プロパノールで固形分濃度が1.0重量%になるように希釈して、サンプルを調製する。次に、このサンプルについて、下記条件にて、粒径分布を計測する。下記粒径分布測定条件によって算出される粒子径は体積基準である。
また、分散媒接触前の電極触媒のピーク粒子径は、上記粒径分布測定条件にて、粒径分布を計測する。
得られた粒径分布(粒径−体積分率頻度曲線)から、ピーク粒子径および粒子径が1μm以下の累積体積分率を求める。
ここで、電極触媒混合物の電極触媒の粒子径1μm以下の累積体積分率を0%超に制御する方法は、特に制限されないが、(1)電極触媒および分散媒の接触を維持する時間、および(2)電極触媒を分散媒に分散させた分散液の攪拌条件からなる群より選択される少なくとも一種を制御することが特に電極触媒のピーク粒子径を小さく制御することに重要であることが判明した。以下、上記について詳細に説明する。なお、上記(1)〜(2)の方法に限定されないことはいうまでもない。
(1)接触状態の時間
電極触媒および分散媒の接触の維持は、24時間以上であることが好ましく、48時間以上であることがより好ましい。接触状態を24時間以上とすることで、電極凝集体に十分に分散媒がいきわたり、電極触媒粒子間に分散媒が入りこみやすくなり、電極触媒のピーク粒子径を十分に小さくすることができる。接触の維持は、時間が長ければ長いほど、電極触媒のピーク粒子径を小さくすることができるため、特にその上限は規定されない。しかしながら、接触の維持は一定時間以上になると、その効果が飽和する。このため、接触の維持は、効果の飽和と生産性を考慮して、200時間以下であることが好ましく、180時間以下であることがより好ましい。
(2)電極触媒を分散媒に分散させた分散液の攪拌条件
接触の維持は、静置または攪拌下で行われることが好ましく、攪拌下で行われることがより好ましい。
なお、攪拌下で接触の維持を行う場合には、長時間の撹拌に伴う溶媒の蒸発を防ぐため閉鎖系で行うことが好ましい。
この際、本実施形態では比較的長時間攪拌を行うため、長時間の攪拌により電極触媒が損傷しない程度の剪断力で、比較的緩やかな条件下で行うことが好ましい。この際に用いられる好適な攪拌機としては、転倒回転型撹拌機:ミックスローター(アズワン社製)、マグチックスターラー、攪拌羽根付攪拌機などが挙げられる。中でも本発明の効果が発揮されやすいことから、接触の維持は、転倒回転型撹拌機を用いた攪拌下にて行うことが好ましい。
転倒回転型攪拌機とは、ある角度をもって容器を回転させるものであり、容器の回転方向は、容器軸を中心とした自転であっても、容器全体を中心点のまわりに回転させる公転であってもよい。好ましくは、自転の転倒回転型攪拌機である。しかしながら、ここでいう転倒回転型攪拌機には自転および公転の双方を伴う自転・公転型攪拌機は含まない。
転倒回転型撹拌機を用いた攪拌における攪拌条件は、適宜設定すればよいが、例えば、自転の転倒回転型攪拌機の場合、回転数を0.1〜5回転/分とすることが好ましく、0.5〜3回転/分とすることがより好ましい。
また、電極触媒および分散媒の接触の維持の前に、電極触媒および分散媒の予備混合を行うことが好ましい。予備混合を行うことで、電極触媒が分散媒へなじみやすくなり、その後の微粒子化する時間を短縮することができる。
予備混合の際の攪拌装置としては、自転公転ミキサー、プラネタリーミキサー、ホモミキサーなどのミキサーや、超音波分散機、ジェットミルなどの分散機が挙げられる。
中でも、自公転ミキサーなどの自転・公転型攪拌機にて予備混合を行うことが好ましい。自転・公転型攪拌機にて予備混合を行うことで、電極触媒が分散媒へのなじみやすくなり、その後の浸漬によって凝集体がほぐれる時間を短縮することができる。自転・公転型攪拌機とは、容器を時計方向に公転させると同時に、容器自体を反時計方向に自転させ、高速の自転・公転で生じた遠心力を押圧力として容器中の材料に対して働かせ、渦状の上下対流を連続的に発生させることで、材料を分散する方式である。自転・公転型攪拌機の分散装置としては、あわとり練太郎(登録商標)(シンキー社製)などが使用される。
すなわち、本実施形態の好適な形態は、電極触媒および分散媒を自転・公転型攪拌機によって予備混合を行った後、攪拌下、好適には転倒回転型撹拌機を用いた攪拌下、触媒電極触媒および分散媒の接触を維持する形態である。
また、本実施形態のさらに好適な形態は、電極触媒および分散媒を自転・公転型攪拌機によって予備混合を行った後、攪拌下、好適には転倒回転型撹拌機を用いた攪拌下、触媒電極触媒および分散媒の接触状態を24時間以上維持する形態である。
ただし、自転・公転型攪拌機は比較的攪拌力が強く、長時間の攪拌は電極触媒自体が損傷し、触媒活性が低下する虞れがある。このため、予備混合の時間は、5分以下であることが好ましく、2分以下であることがより好ましい。また、予備混合の効果をより得やすいことから、予備混合の時間は、10秒以上であることが好ましく、30秒以上であることがより好ましい。
自転・公転型攪拌機の攪拌条件は、適宜設定すればよいが、例えば、自転の回転数を100〜400回転/分とすることが好ましく、200〜300回転/分とすることがより好ましい。また、公転の回転数を200〜800回転/分とすることが好ましく、400〜600回転/分とすることがより好ましい。
このようにして、触媒担体および触媒担体に担持される触媒金属からなる燃料電池用電極触媒と、水を主成分とする分散媒とを含む(燃料電池触媒層形成用)電極触媒混合物を得ることができる。
電極触媒混合物は、好適には、電極触媒の粒子径1μm以下の累積体積分率が0%超である。すなわち、好適には、触媒担体および触媒担体に担持される触媒金属からなる燃料電池用電極触媒と、水を主成分とする分散媒とを含む電極触媒混合物であって、電極触媒の粒子径1μm以下の累積体積分率が0%超である、(燃料電池電極触媒層形成用)電極触媒混合物である。1μm以下の小粒径が一定以上存在する電極触媒混合物は、電極触媒の凝集体が少ないため、触媒担体上の触媒金属を有効に利用できる。ゆえに、発電性能に優れる。また、電極触媒上に存在する吸着水により、粒子が再び凝集することが抑制され、さらに、高分子電解質が電極触媒に近づきにくくなり、ドライ条件下でのプロトン輸送性が向上するとともに、ウェット条件下での酸素輸送性も高く維持される。混合物において、電極触媒の粒子径1μm以下の累積体積分率は2.5%以上(上限100%)、より好ましくは3.5%以上、より好ましくは4.5%以上、最も好ましくは5.0%以上である。
電極触媒混合物は、このまま、高分子電解質を混合してもよいし、電極触媒混合物から濾別などにより分散媒から電極触媒を分離してもよい。作業性の観点からは、電極触媒混合物は、水分散物のまま高分子電解質と混合することが好ましく、分散性の観点からは、電極触媒混合物は、水分散物のまま、溶媒(好適には水および炭素数1〜4の低級アルコールの混合溶媒)に分散させた高分子電解質と混合することがより好ましい。
(II)工程(I)の後、さらに高分子電解質を混合して組成物を得る工程
次いで電極触媒混合物、または電極触媒混合物から分離された電極触媒に高分子電解質を混合して組成物を得る。
組成物は燃料電池触媒層形成用触媒インク(スラリー、塗布液)であることが好ましい。このため、粘度調整用の粘度調整用溶媒を含むことが好ましい。
高分子電解質は、特に制限されないが、イオン伝導性の高分子電解質であることが好ましい。上記高分子電解質は、燃料極側の触媒活物質周辺で発生したプロトンを伝達する役割を果たすことから、プロトン伝導性高分子とも呼ばれる。
当該高分子電解質は、特に限定されず従来公知の知見が適宜参照されうる。高分子電解質は、構成材料であるイオン交換樹脂の種類によって、フッ素系高分子電解質と炭化水素系高分子電解質とに大別される。これらのうち、プロトン伝導性の点でフッ素系高分子電解質が好ましい。
フッ素系高分子電解質を構成するイオン交換樹脂としては、例えば、ナフィオン(登録商標、デュポン社製)、アシプレックス(登録商標、旭化成株式会社製)、フレミオン(登録商標、旭硝子株式会社製)等のパーフルオロカーボンスルホン酸系ポリマー、パーフルオロカーボンホスホン酸系ポリマー、トリフルオロスチレンスルホン酸系ポリマー、エチレンテトラフルオロエチレン−g−スチレンスルホン酸系ポリマー、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体、ポリビニリデンフルオリド−パーフルオロカーボンスルホン酸系ポリマーなどが挙げられる。耐熱性、化学的安定性、耐久性、機械強度に優れるという観点からは、これらのフッ素系高分子電解質が好ましく用いられ、特に好ましくはパーフルオロカーボンスルホン酸系ポリマーから構成されるフッ素系高分子電解質が用いられる。
炭化水素系電解質として、具体的には、スルホン化ポリエーテルスルホン(S−PES)、スルホン化ポリアリールエーテルケトン、スルホン化ポリベンズイミダゾールアルキル、ホスホン化ポリベンズイミダゾールアルキル、スルホン化ポリスチレン、スルホン化ポリエーテルエーテルケトン(S−PEEK)、スルホン化ポリフェニレン(S−PPP)などが挙げられる。原料が安価で製造工程が簡便であり、かつ材料の選択性が高いといった製造上の観点からは、これらの炭化水素系高分子電解質が好ましく用いられる。なお、上述したイオン交換樹脂は、1種のみが単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。また、上述した材料のみに制限されず、その他の材料が用いられてもよい。また、電解質が予め溶媒中に調製されている市販の電解質溶液(例えば、デュポン製のNafion溶液:1−プロパノール中に5wt%の濃度でNafionが分散/懸濁したもの)を使用してもよい。
プロトンの伝達を担う高分子電解質においては、プロトンの伝導度が重要となる。ここで、高分子電解質のEWが大きすぎる場合には触媒層全体でのイオン伝導性が低下する。したがって、本形態の触媒層は、EWの小さい高分子電解質を含むことが好ましい。具体的には、本形態の触媒層は、好ましくはEWが1500g/mol以下の高分子電解質を含み、より好ましくは1200g/mol以下の高分子電解質を含む。一方、EWが小さすぎる場合には、親水性が高すぎて、水の円滑な移動が困難となる。かような観点から、高分子電解質のEWは600g/mol以上であることが好ましい。なお、EW(Equivalent Weight)は、プロトン伝導性を有する交換基の当量重量を表している。当量重量は、イオン交換基1当量あたりの高分子電解質の乾燥重量であり、「g/mol」の単位で表される。
高分子電解質および組成物Aの混合比は、触媒担体(C)に対する高分子電解質(I)の重量比(I/C比)は、0.4〜1.6であることが好ましく、0.7〜1.4であることがより好ましい。
粘度調整用溶媒としては、特に制限されず、触媒層を形成するのに使用される通常の溶媒が同様にして使用できる。具体的には、水、シクロヘキサノール、炭素数1〜4の低級アルコール、プロピレングリコール、ベンゼン、トルエン、キシレンなどが挙げられる。これらの他にも、酢酸ブチルアルコール、ジメチルエーテル、エチレングリコール、などが溶媒として用いられてもよい。これらの溶媒は、1種を単独で使用してもあるいは2種以上の混合液の状態で使用してもよい。
水は、特に制限されず、水道水、精製水、イオン交換水、蒸留水等が使用できる。また、アルコールも、特に制限されない。具体的には、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−メチル−1−プロパノール、2−ブタノール、2−メチル−2−プロパノール、シクロヘキサノールなどが挙げられる。これらのうち、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−メチル−1−プロパノール、2−ブタノールおよび2−メチル−2−プロパノールが好ましい。このような親和性が高い低級アルコールを用いることで、電解質の極端な偏在を防ぐことができる。また、上記のアルコールのうち、沸点が100℃未満のアルコールを用いることがより好ましい。沸点が100℃未満のアルコールとしては、メタノール(沸点:65℃)、エタノール(沸点:78℃)、1−プロパノール(沸点:97℃)、2−プロパノール(沸点:82℃)、および2−メチル−2−プロパノール(沸点:83℃)からなる群より選択されるものが例示できる。上記アルコールを1種単独で、または2種以上を混合して用いることができる。
必須により添加される粘度調整用溶媒の量は、電解質を完全に溶解できる量であれば特に制限されない。具体的には、電極触媒および高分子電解質を合わせた固形分の濃度が、組成物中、1〜50重量%、より好ましくは5〜30重量%程度とするのが好ましい。
上述したように、高分子電解質は、構成材料であるイオン交換樹脂の種類によって、フッ素系高分子電解質と炭化水素系高分子電解質とに大別される。これらのうち、電解質は、フッ素系高分子電解質であることが好ましい。このように疎水性のフッ素系高分子電解質を用いることによって、電極触媒に吸着した水とフッ素系高分子電解質との間に斥力が働き、電極触媒の周りにフッ素系高分子電解質が近づきにくくなる。ゆえに、ドライ条件下およびウェット条件下での電池性能が高いものとなる。
電極触媒、高分子電解質および粘度調整用溶媒の添加順序は特に限定されず、全てを一括に混合する;電極触媒および高分子電解質を混合した後、粘度調整用溶媒を添加して混合するなどいずれの形態であってもよい。
燃料電池触媒層形成用の組成物には、必要に応じて、ポリテトラフルオロエチレン、ポリヘキサフルオロプロピレン、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体などの撥水剤、界面活性剤などの分散剤、グリセリン、エチレングリコール(EG)、ポリビニルアルコール(PVA)、プロピレングリコール(PG)などの増粘剤、造孔剤等の添加剤が含まれていても構わない。
なお、撥水剤、分散剤、増粘剤、造孔剤等の添加剤を使用する場合には、組成物にこれらの添加剤を添加すればよい。この際、添加剤の添加量は、本発明の上記効果を妨げない程度の量であれば特に制限されない。例えば、添加剤の添加量は、それぞれ、組成物の全重量に対して、好ましくは5〜20重量%である。
このようにして、電極触媒および高分子電解質を含む組成物が得られる。
(III)工程(II)で得られた組成物を用いて触媒層を形成する
工程(II)で得られた組成物を用いて触媒層を形成する方法としては特に限定されないが、基材の表面に組成物(触媒インク)を塗布して触媒層を形成することが好ましい。
基材への組成物の塗布方法は、特に制限されず、公知の方法を使用できる。具体的には、スプレー(スプレー塗布)法、ガリバー印刷法、ダイコーター法、スクリーン印刷法、ドクターブレード法など、公知の方法を用いて行うことができる。
この際、組成物を塗布する基材としては、固体高分子電解質膜(電解質層)やガス拡散基材(ガス拡散層)を使用することができる。かような場合には、固体高分子電解質膜(電解質層)またはガス拡散基材(ガス拡散層)の表面に触媒層を形成した後、得られた積層体をそのまま膜電極接合体の製造に利用することができる。あるいは、基材としてポリテトラフルオロエチレン(PTFE)[テフロン(登録商標)]シート等の剥離可能な基材を使用し、基材上に触媒層を形成した後に基材から触媒層部分を剥離することにより、触媒層を得てもよい。
塗布基材への触媒インクの塗布量は、特に制限されない。具体的には、触媒層面積当たりの触媒金属の含有量(目付量)(mg/cm2)は、0.5mg/cm2以下、好ましくは0.4mg/cm2以下である。下限値は発電性能が得られる限り特に制限されず、例えば、0.01mg/cm2以上である。なお、本明細書において、「触媒層面積当たりの白金の含有量(mg/cm2)」の測定(確認)には、誘導結合プラズマ発光分光法(ICP)を用いる。所望の「触媒層面積当たりの白金の含有量」にせしめる方法も当業者であれば容易に行うことができ、スラリーの組成(触媒濃度)と塗布量を制御することで量を調整することができる。
または、触媒層の厚み(乾燥膜厚)は、特に制限されないが、好ましくは1〜20μm、より好ましくは2〜15μmである。なお、上記厚みは、カソード触媒層およびアノード触媒層双方に適用される。しかし、カソード触媒層及びアノード触媒層の厚みは、同じであってもあるいは異なってもよい。
最後に、触媒インクの塗布層(膜)を、空気雰囲気下あるいは不活性ガス雰囲気下、室温〜150℃で、1〜60分間、乾燥する。
このようにして燃料電池用触媒層が得られる。
以下、適宜図面を参照しながら、第一実施形態の製造方法により得られる触媒層または第二実施形態の電極触媒混合物を用いて得られる触媒層、膜電極接合体(MEA)および燃料電池の一実施形態を詳細に説明する。しかし、本発明は、以下の実施形態のみには制限されない。なお、各図面は説明の便宜上誇張されて表現されており、各図面における各構成要素の寸法比率が実際とは異なる場合がある。また、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明した場合では、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
[燃料電池]
燃料電池は、膜電極接合体(MEA)と、燃料ガスが流れる燃料ガス流路を有するアノード側セパレータと酸化剤ガスが流れる酸化剤ガス流路を有するカソード側セパレータとからなる一対のセパレータとを有する。本形態の燃料電池は、高い発電性能を発揮できる。
図2は、本発明の一実施形態に係る固体高分子形燃料電池(PEFC)1の基本構成を示す概略図である。PEFC 1は、まず、固体高分子電解質膜2と、これを挟持する一対の触媒層(アノード触媒層3aおよびカソード触媒層3c)とを有する。そして、固体高分子電解質膜2と触媒層(3a、3c)との積層体はさらに、一対のガス拡散層(GDL)(アノードガス拡散層4aおよびカソードガス拡散層4c)により挟持されている。このように、固体高分子電解質膜2、一対の触媒層(3a、3c)および一対のガス拡散層(4a、4c)は、積層された状態で膜電極接合体(MEA)10を構成する。
PEFC 1において、MEA 10はさらに、一対のセパレータ(アノードセパレータ5aおよびカソードセパレータ5c)により挟持されている。図2において、セパレータ(5a、5c)は、図示したMEA 10の両端に位置するように図示されている。ただし、複数のMEAが積層されてなる燃料電池スタックでは、セパレータは、隣接するPEFC(図示せず)のためのセパレータとしても用いられるのが一般的である。換言すれば、燃料電池スタックにおいてMEAは、セパレータを介して順次積層されることにより、スタックを構成することとなる。なお、実際の燃料電池スタックにおいては、セパレータ(5a、5c)と固体高分子電解質膜2との間や、PEFC 1とこれと隣接する他のPEFCとの間にガスシール部が配置されるが、図2ではこれらの記載を省略する。
セパレータ(5a、5c)は、例えば、厚さ0.5mm以下の薄板にプレス処理を施すことで図2に示すような凹凸状の形状に成形することにより得られる。セパレータ(5a、5c)のMEA側から見た凸部はMEA 10と接触している。これにより、MEA 10との電気的な接続が確保される。また、セパレータ(5a、5c)のMEA側から見た凹部(セパレータの有する凹凸状の形状に起因して生じるセパレータとMEAとの間の空間)は、PEFC 1の運転時にガスを流通させるためのガス流路として機能する。具体的には、アノードセパレータ5aのガス流路6aには燃料ガス(例えば、水素など)を流通させ、カソードセパレータ5cのガス流路6cには酸化剤ガス(例えば、空気など)を流通させる。
一方、セパレータ(5a、5c)のMEA側とは反対の側から見た凹部は、PEFC 1の運転時にPEFCを冷却するための冷媒(例えば、水)を流通させるための冷媒流路7とされる。さらに、セパレータには通常、マニホールド(図示せず)が設けられる。このマニホールドは、スタックを構成した際に各セルを連結するための連結手段として機能する。かような構成とすることで、燃料電池スタックの機械的強度が確保されうる。
なお、図2に示す実施形態においては、セパレータ(5a、5c)は凹凸状の形状に成形されている。ただし、セパレータは、かような凹凸状の形態のみに限定されるわけではなく、ガス流路および冷媒流路の機能を発揮できる限り、平板状、一部凹凸状などの任意の形態であってもよい。
上記のような、本発明のMEAを有する燃料電池は、優れた発電性能を発揮する。ここで、燃料電池の種類としては、特に限定されず、上記した説明中では固体高分子形燃料電池を例に挙げて説明したが、この他にも、アルカリ型燃料電池、ダイレクトメタノール型燃料電池、マイクロ燃料電池などが挙げられる。なかでも小型かつ高密度・高出力化が可能であるから、固体高分子形燃料電池(PEFC)が好ましく挙げられる。また、前記燃料電池は、搭載スペースが限定される車両などの移動体用電源の他、定置用電源などとして有用である。なかでも、比較的長時間の運転停止後に高い出力電圧が要求される自動車などの移動体用電源として用いられることが特に好ましい。
燃料電池を運転する際に用いられる燃料は特に限定されない。例えば、水素、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、第2級ブタノール、第3級ブタノール、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、エチレングリコール、ジエチレングリコールなどが用いられうる。なかでも、高出力化が可能である点で、水素やメタノールが好ましく用いられる。
また、燃料電池の適用用途は特に限定されるものではないが、車両に適用することが好ましい。本発明の電解質膜−電極接合体は、発電性能および耐久性に優れ、小型化が実現可能である。このため、本発明の燃料電池は、車載性の点から、車両に該燃料電池を適用した場合、特に有利である。したがって、本発明は、本発明の燃料電池を有する車両を提供する。
以下、本形態の燃料電池を構成する部材について簡単に説明するが、本発明の技術的範囲は下記の形態のみに制限されない。
[電極触媒層(触媒層)]
電極触媒層(触媒層)は、第一実施形態の製造方法により形成される、または第二実施形態の電極触媒混合物を用いて形成される。ここで、膜電極接合体は、カソード触媒層およびアノード触媒層を有する。カソード触媒層およびアノード触媒層の少なくとも一方が本発明の触媒混合物を用いて形成されればよい。ただし、プロトン伝導性の向上および反応ガス(特にO2)の輸送特性(ガス拡散性)の向上の必要性を考慮すると、少なくともカソード触媒層が第一実施形態の製造方法により、または第二実施形態の電極触媒混合物を用いて形成されることが好ましい。ただし、カソード触媒層のみが本発明の電極触媒混合物を用いて形成されてもよいし、カソード触媒層およびアノード触媒層双方が本発明の電極触媒混合物を用いて形成されてもよいなど、特に制限されるものではない。
[電解質膜(高分子電解質膜)]
電解質膜は、構成材料であるイオン交換樹脂の種類によって、フッ素系高分子電解質膜と炭化水素系高分子電解質膜とに大別される。フッ素系高分子電解質膜を構成するイオン交換樹脂としては、例えば、ナフィオン(登録商標、デュポン社製)、アシプレックス(登録商標、旭化成株式会社製)、フレミオン(登録商標、旭硝子株式会社製)等のパーフルオロカーボンスルホン酸系ポリマー、パーフルオロカーボンホスホン酸系ポリマー、トリフルオロスチレンスルホン酸系ポリマー、エチレンテトラフルオロエチレン−g−スチレンスルホン酸系ポリマー、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体、ポリビニリデンフルオリド−パーフルオロカーボンスルホン酸系ポリマーなどが挙げられる。耐熱性、化学的安定性などの発電性能を向上させるという観点からは、これらのフッ素系高分子電解質膜が好ましく用いられ、特に好ましくはパーフルオロカーボンスルホン酸系ポリマーから構成されるフッ素系高分子電解質膜が用いられる。
炭化水素系電解質として、具体的には、スルホン化ポリエーテルスルホン(S−PES)、スルホン化ポリアリールエーテルケトン、スルホン化ポリベンズイミダゾールアルキル、ホスホン化ポリベンズイミダゾールアルキル、スルホン化ポリスチレン、スルホン化ポリエーテルエーテルケトン(S−PEEK)、スルホン化ポリフェニレン(S−PPP)などが挙げられる。これらの炭化水素系高分子電解質膜は、原料が安価で製造工程が簡便であり、かつ材料の選択性が高いといった製造上の利点がある。なお、上述したイオン交換樹脂は、1種のみが単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。また、上述した材料のみに制限されず、その他の材料が用いられてもよい。
電解質膜の厚さは、通常は5〜100μm程度である。
[ガス拡散層]
ガス拡散層(ガス拡散層基材)は、セパレータ流路を介して供給されたガス(燃料ガスまたは酸化剤ガス)の拡散を促進する機能、および電子伝導パスとしての機能に加え、親水性多孔質層を支持する機能を有する。
ガス拡散層基材を構成する材料は特に限定されず、従来公知の知見が適宜参照されうる。例えば、炭素製の織物、紙状抄紙体、フェルト、不織布といった導電性および多孔質性を有するシート状材料が挙げられる。より具体的には、カーボンペーパ、カーボンクロス、カーボン不織布などが好ましく挙げられる。ガス拡散層基材は、市販品を用いることもでき、例えば、東レ株式会社製カーボンペーパTGPシリーズ、E−TEK社製カーボンクロスなどが挙げられる。
ガス拡散層基材の厚さは、得られるガス拡散層の特性を考慮して適宜決定すればよいが、30〜500μm程度とすればよい。基材の厚さがかような範囲内の値であれば、機械的強度とガスおよび水などの拡散性とのバランスが適切に制御されうる。
ガス拡散層基材は、撥水性をより高めてフラッディング現象などを防止することを目的として、撥水剤を含むことが好ましい。撥水剤としては、特に限定されないが、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリヘキサフルオロプロピレン、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)などのフッ素系の高分子材料、ポリプロピレン、ポリエチレンなどが挙げられる。
また、撥水性をより向上させるために、ガス拡散層は、マイクロポーラス層(MPL層)をガス拡散層基材の触媒層側に有するものであってもよい。マイクロポーラス層は微細孔を多数有する微多孔層を指し、通常カーボン粒子の集合体である。
マイクロポーラス層に含まれるカーボン粒子は特に限定されず、カーボンブラック、グラファイト、膨張黒鉛などの従来公知の材料が適宜採用されうる。なかでも、電子伝導性に優れ、比表面積が大きいことから、オイルファーネスブラック、チャネルブラック、ランプブラック、サーマルブラック、アセチレンブラックなどのカーボンブラックが好ましく用いられうる。カーボン粒子の平均粒径は、10〜100nm程度とするのがよい。これにより、毛細管力による高い排水性が得られるとともに、触媒層との接触性も向上させることが可能となる。
マイクロポーラス層は撥水剤を含んでいることが好ましい。マイクロポーラス層に用いられる撥水剤としては、上述した撥水剤と同様のものが挙げられる。なかでも、撥水性、電極反応時の耐食性などに優れることから、フッ素系の高分子材料が好ましく用いられうる。
マイクロポーラス層におけるカーボン粒子と撥水剤との混合比は、撥水性および電子伝導性のバランスを考慮して、重量比で90:10〜40:60(カーボン粒子:撥水剤)程度とするのがよい。なお、カーボン粒子層の厚さについても特に制限はなく、得られるガス拡散層の撥水性を考慮して適宜決定すればよい。
上述したように、電解質膜(固体高分子電解質膜)またはガス拡散層基材(ガス拡散層)の表面に触媒層を形成した後、得られた積層体をそのまま膜電極接合体の製造に利用することができる。あるいは、基材としてポリテトラフルオロエチレン(PTFE)[テフロン(登録商標)]シート等の剥離可能な基材を使用し、基材上に触媒層を形成した後に基材から触媒層部分を剥離することにより、触媒層を得てもよい。
(膜電極接合体)
本発明のさらなる実施形態によれば、上記燃料電池用電極触媒層を含む、燃料電池用膜電極接合体が提供される。すなわち、固体高分子電解質膜2、電解質膜の一方の側に配置されたカソード触媒層3cと、電解質膜の他方の側に配置されたアノード触媒層3aと、電解質膜2並びに前記アノード触媒層3a及びカソード触媒層3cを挟持する一対のガス拡散層(4a,4c)とを有する燃料電池用膜電極接合体が提供される。そしてこの膜電極接合体において、カソード触媒層およびアノード触媒層の少なくとも一方が上記に記載した実施形態の触媒層である。
ただし、プロトン伝導性の向上および反応ガス(特にO2)の輸送特性(ガス拡散性)の向上の必要性を考慮すると、少なくともカソード触媒層が上記に記載した実施形態の触媒層であることが好ましい。ただし、上記形態に係る触媒層は、アノード触媒層として用いてもよいし、カソード触媒層およびアノード触媒層双方として用いてもよいなど、特に制限されるものではない。
膜電極接合体の作製方法としては、特に制限されず、従来公知の方法を使用できる。例えば、上記したように電解質膜に触媒層をホットプレスで転写または塗布し、これを乾燥したものに、ガス拡散層を接合する方法や、ガス拡散層のマイクロポーラス層側(マイクロポーラス層を含まない場合には、基材層)の片面に触媒層を予め塗布して乾燥することによりガス拡散電極(GDE)を2枚作製し、固体高分子電解質膜の両面にこのガス拡散電極をホットプレスで接合する方法を使用することができる。ホットプレス等の塗布、接合条件は、固体高分子電解質膜や触媒層内の高分子電解質の種類(パーフルオロスルホン酸系や炭化水素系)によって適宜調整すればよい。
(燃料電池)
本発明のさらなる実施形態によれば、上記形態の膜電極接合体を有する燃料電池が提供される。すなわち、本発明の一実施形態は、上記形態の膜電極接合体を挟持する一対のアノードセパレータおよびカソードセパレータを有する燃料電池である。
(セパレータ)
セパレータは、固体高分子形燃料電池などの燃料電池の単セルを複数個直列に接続して燃料電池スタックを構成する際に、各セルを電気的に直列に接続する機能を有する。また、セパレータは、燃料ガス、酸化剤ガス、および冷却剤を互に分離する隔壁としての機能も有する。これらの流路を確保するため、上述したように、セパレータのそれぞれにはガス流路および冷却流路が設けられていることが好ましい。セパレータを構成する材料としては、緻密カーボングラファイト、炭素板などのカーボンや、ステンレスなどの金属など、従来公知の材料が適宜制限なく採用できる。セパレータの厚さやサイズ、設けられる各流路の形状やサイズなどは特に限定されず、得られる燃料電池の所望の出力特性などを考慮して適宜決定できる。
燃料電池の製造方法は、特に制限されることなく、燃料電池の分野において従来公知の知見が適宜参照されうる。
さらに、燃料電池が所望する電圧を発揮できるように、セパレータを介して膜電極接合体を複数積層して直列に繋いだ構造の燃料電池スタックを形成してもよい。燃料電池の形状などは、特に限定されず、所望する電圧などの電池特性が得られるように適宜決定すればよい。
上述したPEFCや膜電極接合体は、ドライ条件下およびウェット条件下の双方の発電性能に優れる触媒層を用いている。したがって、当該PEFCや膜電極接合体は発電性能に優れる。
本実施形態のPEFCやこれを用いた燃料電池スタックは、例えば、車両に駆動用電源として搭載されうる。
本発明の効果を、以下の実施例および比較例を用いて説明する。実施例において「部」あるいは「%」の表示を用いる場合があるが、特に断りがない限り、「重量部」あるいは「重量%」を表す。また、特記しない限り、各操作は、室温(25℃)で行われる。
(実施例1)
(電極触媒の製造)
触媒担体Aとして、BET比表面積が790m2/g、一次平均粒子径が約40nmである、ケッチェンブラックEC300J(ケッチェンブラックインターナショナル株式会社製)を準備した。この触媒担体Aに、触媒金属として平均粒子径2.5nmの白金(Pt)を担持率が50重量%となるように担持させて、触媒粉末Aを得た。すなわち、白金濃度4.6重量%のジニトロジアンミン白金硝酸溶液を1000g(白金含有量:46g)に担体Aを46g浸漬させ攪拌後、還元剤として100%エタノールを100ml添加した。この溶液を沸点で7時間、攪拌、混合し、白金を触媒担体Aに担持させた。そして、濾過、乾燥することにより、担体に対する担持率が50重量%の触媒粉末を得た。その後、水素雰囲気において、温度900℃に1時間保持し、電極触媒Iを得た。下記粒径分布計測条件によって測定された電極触媒Iのピーク粒子径は13.2μmであった。
(電極触媒混合物の製造)
電極触媒I 100重量部および精製水500重量部を自公転式ミキサー(あわとり練太郎(登録商標) AR−250、シンキー社製)を用いて、自転:200回転/分、公転:400回転/分にて、2分間混合した。
その後、ミックスローター(転倒攪拌型攪拌機)(BR−2、アズワン社製)で24時間、回転数:2回転/分で攪拌して電極触媒混合物A−1を得た。攪拌後の電極触媒混合物A−1は、ピーク粒子径が9.2μm、粒子径が1μm以下の累積体積分率が2.9%であった。ゆえに、分散媒接触前のピーク粒子径を100とした場合の接触維持後の電極触媒のピーク粒子径は、69.3であった。
なお、上記撹拌は、攪拌に伴う溶媒の蒸発を防ぐため系を密閉して行った。以下の実施例および比較例も同様である。
また、粒径測定条件は以下のとおりである。
(粒径測定条件)
電極触媒の分散媒による分散液を、2−プロパノールで固形分濃度が1.0重量%になるように希釈して、サンプルを調製した。次に、このサンプルについて、下記粒径分布計測条件にて、粒径分布を計測した。得られた粒径分布(粒径−体積分率頻度曲線)に基づいて、粒子径が1μm以下の累積体積分率を求めた。
(粒径分布計測条件)
手法:レーザー回折・散乱法
装置名:MT3000II(マイクロトラックベル製)
(実施例2)
ミックスローター(BR−2、アズワン製)の攪拌時間を24時間から72時間に変更したこと以外は、実施例1と同様にして電極触媒混合物A−2を得た。攪拌後の電極触媒混合物A−2は、ピーク粒子径が8.0μm、粒子径が1μm以下の累積体積分率が3.7%であった。ゆえに、分散媒接触前のピーク粒子径を100とした場合の接触維持後の電極触媒のピーク粒子径は、60.6であった。
(実施例3)
ミックスローター(BR−2、アズワン製)の攪拌時間を24時間から120時間に変更したこと以外は、実施例1と同様にして電極触媒混合物A−3を得た。攪拌後の電極触媒混合物A−3は、ピーク粒子径が7.6μm、粒子径が1μm以下の累積体積分率が5.6%であった。ゆえに、分散媒接触前のピーク粒子径を100とした場合の接触維持後の電極触媒のピーク粒子径は、57.6であった。
(実施例4)
ミックスローター(BR−2、アズワン製)の攪拌時間を24時間から168時間に変更したこと以外は、実施例1と同様にして電極触媒混合物A−4を得た。攪拌後の電極触媒混合物A−4は、ピーク粒子径が8.7μm、粒子径が1μm以下の累積体積分率が5.0%であった。ゆえに、分散媒接触前のピーク粒子径を100とした場合の接触維持後の電極触媒のピーク粒子径は、65.9であった。
(実施例5)
自公転式ミキサーによる予備混合を行わなかったこと以外は、実施例1と同様にして電極触媒混合物A−5を得た。攪拌後の電極触媒混合物A−5は、ピーク粒子径が13.6μm、粒子径が1μm以下の累積体積分率が3.1%であった。ゆえに、分散媒接触前のピーク粒子径を100とした場合の接触維持後の電極触媒のピーク粒子径は、103.0であった。
(実施例6)
ミックスローター(BR−2、アズワン製)の攪拌時間を24時間から96時間に変更したこと以外は、実施例5と同様にして電極触媒混合物A−6を得た。攪拌後の電極触媒混合物A−6は、ピーク粒子径が10.4μm、粒子径が1μm以下の累積体積分率が5.4%であった。ゆえに、分散媒接触前のピーク粒子径を100とした場合の接触維持後の電極触媒のピーク粒子径は、78.7であった。
(実施例7)
ミックスローター(BR−2、アズワン製)の攪拌時間を24時間から168時間に変更したこと以外は、実施例5と同様にして電極触媒混合物A−7を得た。攪拌後の電極触媒混合物A−7は、ピーク粒子径が9.9μm、粒子径が1μm以下の累積体積分率が4.8%であった。ゆえに、分散媒接触前のピーク粒子径を100とした場合の接触維持後の電極触媒のピーク粒子径は、75.0であった。
(比較例1)
(電極触媒の製造)
実施例1と同様にして電極触媒Iを得た。
(組成物Aの製造)
電極触媒I 100重量部および精製水500重量部を自公転式ミキサー(AR−250、シンキー社製)を用いて、自転:200回転/分、公転:400回転/分にて、2分間混合して、組成物A−8を得た。攪拌後の組成物A−8は、ピーク粒子径が13.2μm、粒子径が1μm以下の累積体積分率が0%であった。ゆえに、分散媒接触前のピーク粒子径を100とした場合の予備混合後の電極触媒のピーク粒子径は、100であった。
上記実施例1〜7では、電極触媒に水を長時間浸漬する、具体的には24時間以上浸漬することで、粒子径が1μm以下の累積体積分率が0%超となった。また、実施例1および5の比較により、予備混合を行うことで、分散媒接触前のピーク粒子径を100とした場合の接触維持後の電極触媒のピーク粒子径が小さくなることがわかる。これは予備混合により触媒間に水がより浸透し、その後の工程において触媒が解砕されやすくなるためであると考えられる。
一方、比較例1では、電極触媒および水の予備混合のみを行い、水による長時間の浸漬を行っていないため、粒子径が1μm以下の累積体積分率が0%となった。
(実施例8)
実施例3で得られた組成物A−3に、高分子電解質としてのアイオノマー分散液(Nafion(登録商標)D2020,EW=1100g/mol、DuPont社製)を、カーボン担体に対する電解質(アイオノマー)の重量比(I/C比)が0.9となるよう混合した。次に、上記混合物を、溶媒としてn−プロピルアルコール(NPA)水溶液(水:NPA=6:4(重量比))を固形分率(Pt+触媒担体+高分子電解質)が7重量%となるよう添加して触媒インクを作製した。
高分子電解質膜(Dupont社製、Nafion(登録商標)NR211、厚み:25μm)の両面の周囲にガスケット(帝人デュポンフィルム株式会社製、テオネックス(登録商標)、厚み:25μm(接着層:2710μm))を配置した。次いで、高分子電解質膜の片面の露出部に、上記触媒インクをスプレー塗布法により、5cm×2cmのサイズに塗布した。スプレー塗布を行うステージを60℃に10分間保つことで触媒インクを乾燥し、電極触媒層を得た。このときの白金担持量は0.35mg/cm2であった。また、触媒層の厚さは10μmであった。次に、上記と同様にして、電解質膜の他方面上にスプレー塗布および乾燥処理を行うことで、電解質膜の両面に触媒層を形成してなる膜電極接合体を得た。
(比較例2)
比較例1で得られた組成物A−8を用いたこと以外は実施例8と同様にして膜電極接合体を得た。
実施例8および比較例2で得られた膜電極接合体を用いて、以下の発電性能試験およびプロトン輸送抵抗試験を行った。
(発電性能試験1:Dry条件)
発電は、アノードに純水素、カソードに空気(両方とも大気圧)を供給して行なった。発電条件は、セル温度80℃、アノードガス相対湿度40%、カソードガス相対湿度40%とした。上記条件下にて、I−V性能を測定した。
(発電性能試験2:Wet条件)
発電は、アノードに純水素、カソードに空気(両方とも大気圧)を供給して行なった。発電条件は、セル温度80℃、アノードガス相対湿度100%、カソードガス相対湿度100%とした。上記条件下にて、I−V性能を測定した。
Dry条件およびWet条件での電流密度1A/cm2における実施例および比較例のセル電圧(IR−free)を下記表1に示す。
(プロトン輸送抵抗試験)
電気化学インピーダンス分光法により、計測した。なお、使用機器としては、北斗電工株式会社製、電気化学測定システムHZ−3000と、株式会社エヌエフ回路設計ブロック製、周波数応答分析器FRA5020と、を用い下記表2の測定条件により評価を行った。結果を図3に示す。
本発明の製造方法により得られた、また本発明の電極触媒混合物を用いて得られた電極触媒層を用いて作製した膜電極接合体は、ウェット条件およびドライ条件のいずれにおいても電池性能に優れたものであり、また、プロトン輸送性にも優れたものであった。