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JP6852172B2 - 有機電界発光素子 - Google Patents

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Description

本発明は、有機電界発光素子に関する。より詳しくは、電子機器の表示部等の表示装置や照明装置等としての利用可能な有機電界発光素子に関する。
表示用デバイスや照明に適用できる新しい発光素子として有機電界発光素子(有機EL素子)が期待されている。
有機EL素子は、陽極と陰極との間に発光性有機化合物を含んで形成される発光層を含む1種または複数種の層を挟んだ構造を持ち、陽極から注入されたホールと陰極から注入された電子が再結合する時のエネルギーを利用して発光性有機化合物を励起させ、発光を得るものである。有機EL素子は電流駆動型の素子であり、流れる電流をより効率的に活用するため、素子構造が種々改良され、また、素子を構成する層の材料についても種々検討されている。
陽極から注入されたホールと陰極から注入された電子との再結合時のエネルギーを利用して発光性有機化合物を励起させ、発光を得る有機電界発光素子では、陽極からのホール注入、陰極からの電子注入がともにスムーズに行われることが重要であるため、よりスムーズなホール注入、電子注入が行われるよう、正孔注入層、電子注入層の材料についても種々検討され、最近では塗布できる電子注入層の材料として、ポリエチレンイミンやポリエチレンイミンを修飾した化合物を用いた順構造の有機電界発光素子が報告されている(非特許文献1〜3参照。)。
ところで、陰極と陽極との間の層が全て有機化合物で形成された有機電界発光素子は、結果として酸素や水によって劣化しやすく、これらの侵入を防ぐために厳密な封止が不可欠である。このことは、有機電界発光素子の製造工程を煩雑なものとする原因となっている。これに対し、陰極と陽極との間の層の一部が無機酸化物で形成された有機無機ハイブリッド型の電界発光素子(HOILED素子)が提案されている(特許文献1参照。)。この素子では、正孔輸送層、電子輸送層を無機酸化物に変えることで、陰極として導電性酸化物電極であるFTOやITO、陽極として金を使用することが可能になった。このことは素子駆動の観点からは電極に対する制約がなくなったことを意味する。結果、アルカリ金属やアルカリ金属化合物等、仕事関数の小さな金属を用いる必要がなくなり、厳密な封止無しで発光させることが可能となっている。加えてこのHOILED素子は、陰極が基板直上にあることが標準であり、上部電極に陽極がくる逆構造という特徴を有している。酸化物TFTの発展に伴い、大型有機ELディスプレイへの適用が検討される中、n型である酸化物TFTの特徴から逆構造の有機ELが注目されて来ている。本HOILED素子は逆構造有機EL素子の候補として発展が期待されている。また、このようなHOILED素子であって、平均厚さが3〜150nmのポリエチレンイミン等の窒素含有膜からなる層を有する素子も提案されている(特許文献2、非特許文献4参照。)。
特開2009−70954号公報 特開2014−168014号公報
タオ シオン(Tao Xiong)外3名「アプライド フィジクス レターズ(Applied Physics Letters)」93巻、2008年、pp123310−1 インファ ジョウ(Yinhua Zhou)外21名「サイエンス(Science)」336号、2012年、pp327 ジャンシャン チェン(Jianshan Chen)外6名「ジャーナル オブ マテリアルズ ケミストリー(Journal of Materials Chemistry)」2012年、22巻、pp5164 ユン−ウン キム(Young−Hoon Kim)外5名「アドバンスト ファンクショナル マテリアルズ(Advanced Functional Materials)」24号、2014年、pp3808
上記のとおり、有機電界発光素子について、素子の構成や材料について種々検討されているが、表示用デバイスや照明への適用のために、発光効率や輝度の更なる向上が求められており、これらの特性により優れた有機電界発光素子の開発が求められている。
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、発光効率及び輝度に優れた有機電界発光素子を提供することを目的とする。
本発明者は、発光効率及び輝度に優れる有機電界発光素子について種々検討したところ、陽極と陰極との間に有する金属酸化物層に隣接して陽極側に窒素含有膜からなり、平均厚さが0.1nm以上、3nm未満の厚みの薄い層を形成すると、有機電界発光素子の発光効率及び輝度が向上することを見出し、本発明に到達したものである。
本発明は、陽極と、基板上に形成された陰極との間に複数の層が積層された構造を有する有機電界発光素子であって、該有機電界発光素子は、陽極と陰極との間に金属酸化物層を有し、上記金属酸化物層に隣接して陽極側に、窒素含有膜からなり、平均厚さが0.1nm以上、3nm未満の層を有することを特徴とする有機電界発光素子である。
本発明の有機電界発光素子は、厳密な封止を必要としない有機無機ハイブリッド型の逆構造を有した有機電界発光素子であって、発光効率及び輝度に優れることから、表示用デバイスや照明装置の材料として好適に用いることができる。
本発明で示される有機電界発光素子の積層構造の一例を示した概略図である。 実施例1で作製した有機電界発光素子1の(a)電圧−輝度特性、(b)定電流密度下(1000cd/m相当)での輝度および電圧の経時変化を示した図である。 実施例2で作製した有機電界発光素子2の(a)電圧−輝度特性、(b)定電流密度下(1000cd/m相当)での輝度および電圧の経時変化を示した図である。 実施例3で作製した有機電界発光素子3の(a)電圧−輝度特性、(b)定電流密度下(1000cd/m相当)での輝度および電圧の経時変化を示した図である。 比較例1で作製した比較有機電界発光素子1の電圧−輝度特性を示した図である。 実施例4で作製した有機電界発光素子4の(a)電圧−輝度特性、(b)定電流密度下(1000cd/m相当)での輝度および電圧の経時変化を示した図である。 実施例5で作製した有機電界発光素子5の(a)電圧−輝度特性、(b)定電流密度下(1000cd/m相当)での輝度の経時変化を示した図である。 実施例6で作製した有機電界発光素子6の電圧−輝度特性を示した図である。 実施例7、8及び比較例2、3で作製した有機電界発光素子7、8及び比較有機電界発光素子2、3の電圧−輝度特性を示した図である。 実施例9で作製した有機電界発光素子9の電圧−輝度特性を示した図である。 実施例2、3で作製した有機電界発光素子2、3のアニールの有無による素子特性のばらつきを評価した結果を示した図である。 実施例1、2、10、11で作製した有機電界発光素子1、2、10、11の大気下と窒素雰囲気下でのアニールによる素子特性のばらつきを評価した結果を示した図である。
以下に本発明を詳述する。
なお、以下において記載する本発明の個々の好ましい形態を2つ以上組み合わせたものもまた、本発明の好ましい形態である。
本発明の有機電界発光素子は、基板上に陰極が形成され、陽極と陰極との間に金属酸化物層を有する、いわゆる逆構造の有機無機ハイブリッド型の電界発光素子(HOILED素子)であって、金属酸化物層に隣接して陽極側に、窒素含有膜からなり、平均厚さが0.1nm以上、3nm未満の層を有することを特徴とする。本発明の有機電界発光素子のポイントは、金属酸化物の金属と窒素含有膜中の窒素との間の双極子、そして窒素含有膜中の双極子による電子注入障壁の低減であるため、金属酸化物と窒素含有膜材料が所望の方向(電子注入する方向に対して金属酸化物そして窒素含有膜材料の順)に配置(例えば積層)されることである。本発明の平均厚さが0.1nm以上、3nm未満の厚みの薄い層は、後者の双極子について好適であるといえる。その理由は、極薄膜であれば、界面で生じる分子の向きを窒素含有膜中でほぼ受け継げるが、厚膜になると分子の立体構造により逆方向に双極子が向くことも予想され、結果として双極子が相殺される可能性があるためである。このような原理であるため、その素子構造(構成)は自由に選ぶことができる。
本発明の有機電界発光素子は、上記特徴を有するものである限り、他の層の数、他の層を構成する材料や積層する順番は特に制限されないが、金属酸化物層と窒素含有化合物層とが、陰極と発光層との間にあることが好ましい。窒素含有化合物は、電子注入特性に優れたものであり、このような層構成を有する有機電界発光素子は、高い電子注入特性を有することになり、発光効率に優れた素子となる。
本発明の有機電界発光素子に用いられる窒素含有膜には、(1)金属酸化物層上で窒素含有化合物により形成された窒素含有膜、(2)金属酸化物層上で窒素含有化合物により形成された高窒素含有膜、(3)金属酸化物層上で窒素含有化合物を分解させることで形成された窒素含有膜、(4)金属酸化物層上で窒素含有化合物を分解させることで形成された高窒素含有膜の合計4種類が存在する。
このような膜を形成することで有機電界発光素子の性能が向上する理由については以下のように推定される。
まず第一に窒素原子を含む場合、その孤立電子対は基材中の金属原子と結合を作る傾向にある。その金属−窒素結合間の分極が、強い電子注入特性を発現することになる。上記(1)〜(4)全ての窒素含有膜において、それは満たされる。より好適には、孤立電子対を有する窒素原子比率が高い上記(2)が適している。
上記(3)、(4)では、膜生成に関わる分解の現象により高密度に窒素原子が基材上に存在する膜となる事が期待され、結果として、多彩な金属−窒素結合が出現することが期待される。そしてその中には、従来よりも強固な金属−窒素結合も存在すると考えられる。さらに、分解の状況によっては、不要な炭素等の他の成分が消失する事により、相対的に窒素原子分率が上昇し、結果として、より好適な環境が実現される場合もある(4)。これらの窒素含有膜では、主たる窒素の起源が金属−窒素結合になることから、通常の分子の物理吸着よりも高密度に窒素原子が集積されていると期待される。これらの要因により、このような窒素含有膜を有することで、有機電界発光素子が、発光効率に優れ、素子駆動安定性と素子寿命に優れたものとなると考えられる。実際、上記窒素含有化合物の分解に起因する現象は、表面分析手法の一つであるX線光電子分光法により立証できる。具体的な結果は実施例で示すが、窒素含有化合物として窒素と炭素とを構成元素として含む化合物を用い、この化合物を分解させる処理をすることにより、炭素:窒素比(CN比)が2:1から1:1にまで高窒素比率になっている事が観測されている。また同時に、上記処理により、窒素のスペクトルの半値幅の増加が観測されており、この事は、化学環境の広がりを示しており、より強固な金属−窒素結合の出現も示唆されている。
したがって、窒素含有膜からなる層の下地が金属元素を含む膜であることも上記のような本発明の有機電界発光素子が奏する効果の発現に大きく寄与していると考えられる。
上記(1)、(2)の窒素含有膜は、金属酸化物層に隣接して形成された窒素含有化合物からなる膜、すなわち、窒素含有化合物が分解することなく膜を形成したものである。上記(2)の窒素含有膜は、窒素含有化合物として、窒素含有化合物を構成する全原子数に対する窒素原子数の割合が高いものを用いて形成されるものである。
上記(1)、(2)の窒素含有膜の形成方法は特に制限されないが、窒素含有化合物の溶液を金属酸化物層に隣接するように塗布した後、溶媒を揮発させる方法が好適に用いられる。
上記(3)、(4)の窒素含有膜は、金属酸化物層上で窒素含有化合物を分解させることで形成される膜であるが、窒素含有化合物の一部に分解されないものが残っていてもよい。好ましくは、窒素含有化合物の全てが分解されることである。
上記(3)、(4)の窒素含有膜の形成方法は特に制限されないが、窒素含有化合物の溶液を金属酸化物層に塗布した後、窒素含有化合物を分解して形成する方法が好適に用いられる。
上記窒素含有膜からなる層の平均厚さが0.1nm以上、3nm未満である点は本発明の有機電界発光素子の大きな特徴である。
上記非特許文献4では、逆構造のHOILED素子の電子注入層を形成する材料としてポリエチレンイミンを用いることで仕事関数が低下し、電子注入の障壁が低くなることが開示されている。非特許文献4では、ポリエチレンイミンによる仕事関数の変化はポリエチレンイミン層の厚みが薄くなるほど大きくなるものの、その効果はポリエチレンイミン層の厚みが8nmの場合と4nmの場合とで差がない結果となっており、8nm程度よりも層の厚みを薄くしてもそれ以上は効果の向上が期待できないことが示唆される結果となっている。これに対し本発明は、逆構造のHOILED素子において、金属酸化物層に隣接するように非特許文献4に開示されたものよりも更に薄い平均厚さが0.1nm以上、3nm未満の窒素含有膜を形成することで、発光効率及び輝度に優れた素子が得られるという、従来の技術からは予測のできない効果が得られることを見出したものである。
上記窒素含有膜からなる層の平均厚さは0.1nm以上、3nm未満であればよいが、0.5nm以上、2.9nm以下であることが好ましい。より好ましくは、1.0nm以上、2.7nm以下であり、更に好ましくは、1.5nm以上、2.5nm以下である。
窒素含有膜からなる層の平均厚さは、実施例に記載の方法により測定することができる。
上記窒素含有膜は、膜を構成する元素として窒素元素と炭素元素とを含み、該膜を構成する窒素原子と炭素原子との存在比率が
窒素原子数/(窒素原子数+炭素原子数)>1/8
の関係を満たすことが好ましい。
このように窒素含有膜中における窒素原子数の割合が高いと、金属−窒素結合の総数が増加し、結果としてより強い分極により電子注入特性が更に高いものとなる。窒素含有膜における窒素原子数/(窒素原子数+炭素原子数)は、1/5より大きいことがより好ましい。
窒素含有膜中における窒素元素、炭素元素の存在比率は、光電子分光法(XPS)により測定することができる。
上記窒素含有化合物としては、例えば、ポリビニルピロリドンのようなピロリドン類、ポリピロールのようなピロール類又はポリアニリンのようなアニリン類、又はポリビニルピリジンのようなピリジン類、同様に、ピロリジン類、イミダゾール類、ピペリジン類、ピリミジン類、トリアジン類などの含窒素複素環を有する化合物や、アミン化合物が挙げられる。その中でも、1級アミン構造を有する窒素含有化合物が好ましい。すなわち、窒素含有膜は、1級アミン構造を有する窒素含有化合物由来の膜であることは本発明の好適な実施形態の1つである。
上記窒素含有化合物としてはまた、窒素含有率の高い化合物が好ましく、ポリアミン類が好ましい。ポリアミン類は、化合物を構成する全原子数に対する窒素原子数の比率が高いため、有機電界発光素子を高い電子注入性と駆動安定性を有するものとする点から適している。
ポリアミン類としては、塗布により層を形成することができるものが好ましく、低分子化合物であっても高分子化合物であってもよい。低分子化合物としては、ジエチレントリアミン、ペンタメチルジエチレントリアミンのようなポリアルキレンアミンが好適に用いられ、高分子化合物では、ポリアルキレンイミン構造を有する重合体が好適に用いられる。特にポリエチレンイミンが好ましい。中でも、窒素含有化合物が、ポリエチレンイミン又はジエチレントリアミンであることは本発明の好適な実施形態の1つである。
なお、ここで低分子化合物とは、高分子化合物(重合体)ではない化合物を意味し、分子量の低い化合物を必ずしも意味するものではない。
上記ポリアミン類の中でも、ポリアルキレンイミン構造を主鎖骨格に有する分岐状構造の重合体を用いることは、本発明の好適な実施形態の1つである。
また、上記ポリアミン類の中でも、ポリアルキレンイミン構造を主鎖骨格に有する直鎖状構造の重合体を用いることも、本発明の好適な実施形態の1つである。
ポリアミン類の中でも、上記の主鎖骨格が分岐状構造あるいは直鎖状構造の重合体を用いることで、素子駆動安定性と素子寿命により優れたものとなる。これは、このようなポリアルキレンイミン構造を主鎖骨格に有する重合体は、デバイス中で安定に存在することによるものと推定される。
このようなポリアルキレンイミン構造を主鎖骨格に有する分岐状構造あるいは直鎖状構造の重合体によって金属酸化物層に隣接して形成された窒素含有膜は、上記(1)の窒素含有膜となる。
上記ポリアルキレンイミン構造を主鎖骨格に有する直鎖状構造の重合体は、主鎖骨格を形成するポリアルキレンイミン構造の大半が直鎖状に連結したものであればよく、一部に分岐構造を有するものであってもよいが、主鎖骨格を形成するポリアルキレンイミン構造の90%以上が直鎖状に連結したものである。好ましくは、95%以上が直鎖状に連結したものであり、最も好ましくは、主鎖骨格を形成するポリアルキレンイミン構造の100%が直鎖状に連結したものである。
上記ポリアルキレンイミン構造を主鎖骨格に有する分岐状構造の重合体とは、分岐構造を10%より多く有するものが分岐状ポリアルキレンイミンである。
上記ポリアルキレンイミン構造を有する重合体のポリアルキレンイミン構造は、炭素数2〜4のアルキレンイミンにより形成された構造であることが好ましい。より好ましくは、炭素数2又は3のアルキレンイミンにより形成された構造である。
上記ポリアルキレンイミン構造を有する重合体は、主鎖骨格にポリアルキレンイミン構造を有するものであればよく、ポリアルキレンイミン構造以外の構造を有する共重合体であってもよい。
上記ポリアルキレンイミン構造を有する重合体がポリアルキレンイミン構造以外の構造を有する場合、ポリアルキレンイミン構造以外の構造の原料となる単量体としては、例えば、エチレン、プロピレン、ブテン、アセチレン、アクリル酸、スチレン、又は、ビニルカルバゾール等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。また、これらの単量体の炭素原子に結合した水素原子が他の有機基に置換された構造のものも好適に用いることができる。水素原子と置換する他の有機基としては、例えば、酸素原子、窒素原子、硫黄原子からなる群より選択される少なくとも1種の原子を含んでいてもよい炭素数1〜10の炭化水素基等が挙げられる。
上記ポリアルキレンイミン構造を有する重合体は、重合体の主鎖骨格を形成する単量体成分100質量%のうち、ポリアルキレンイミン構造を形成する単量体が50質量%以上であることが好ましい。より好ましくは、66質量%以上であり、更に好ましくは、80質量%以上である。最も好ましくは、ポリアルキレンイミン構造を形成する単量体が100質量%であること、すなわち、ポリアルキレンイミン構造を有する重合体がポリアルキレンイミンのホモポリマーであることである。
上記ポリアルキレンイミン構造を有する重合体は、重量平均分子量が100000以下であることが好ましい。このような重量平均分子量のものを用い、重合体が分解する温度での加熱処理を行って層を形成することで、有機電界発光素子をより駆動安定性に優れたものとすることができる。ポリエチレンイミン等のポリアルキレンイミン構造を有する重合体が上述した分岐状構造の重合体である場合には、重合体の重量平均分子量は、より好ましくは、10000以下であり、更に好ましくは、100〜1000である。
また、ポリアルキレンイミン構造を有する重合体が上述した直鎖状構造の重合体である場合には、重合体の重量平均分子量は、より好ましくは、250000以下であり、更に好ましくは、10000超過、50000以下であり、特に好ましくは、10000超過、25000未満である。
重量平均分子量は、以下の条件でGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)測定により求めることができる。
測定機器:Waters Alliance(2695)(商品名、Waters社製)
分子量カラム:TSKguard column α、TSKgel α−3000、TSKgel α−4000、TSKgel α−5000(いずれも東ソー社製)を直列に接続して使用
溶離液:100mMホウ酸水溶液14304gに50mM水酸化ナトリウム水溶液96gとアセトニトリル3600gを混合した溶液
検量線用標準物質:ポリエチレングリコール(東ソー社製)
測定方法:測定対象物を固形分が約0.2質量%となるように溶離液に溶解し、フィルターにてろ過した物を測定サンプルとして分子量を測定する。
また、金属酸化物層上でこれら窒素含有化合物を分解させると、上記(3)の窒素含有膜や(4)の高窒素含有膜となる。窒素含有化合物として、ポリアミン類等のような窒素含有割合の高い化合物を用いることで金属酸化物層上に窒素含有化合物の分解物をより緻密に堆積させることができると考えられる。このような金属酸化物上の窒素含有薄膜も本特許の発明の一つである。
上記窒素含有膜を形成する方法は特に制限されないが、窒素含有化合物を蒸着させる工程を含む方法や、金属酸化物層上に窒素含有化合物を含む溶液を塗布する工程を含む方法が好ましく、中でも、金属酸化物層上に窒素含有化合物を含む溶液を塗布する工程を含む方法がより好ましい。金属酸化物層上に窒素含有化合物を含む溶液を塗布する工程を含む方法で窒素含有膜を形成すると、以下のような効果も得られる。
有機電界発光素子の金属酸化物層は、後述するようにスプレー熱分解法、ゾルゲル法、スパッタ法等の方法で成膜され、表面は平滑ではなく凹凸を持つ。この金属酸化物層の上に、真空蒸着等の方法で発光層を成膜した場合、発光層の原料となる成分の種類によっては、金属酸化物層の表面の凹凸が結晶核となり、金属酸化物層に接する発光層を形成する材料の結晶化が促進される。このため、有機電界発光素子を完成させたとしても、大きなリーク電流が流れ、発光面が不均一化して、実用に耐える素子が得られない場合がある。
しかし、溶液を塗布して層を形成すると、表面の平滑な層を形成することができるため、金属酸化物層と発光層との間に塗布により窒素含有化合物層を形成すると、発光層を形成する材料の結晶化が抑制され、これによって、金属酸化物層を有する有機電界発光素子がリーク電流の抑制と、均一な面発光を得ることができることになる。
上記窒素含有化合物として、ポリアミン類を用いる場合、窒素含有化合物を含む溶液の溶媒として水又は低級アルコールを用いることができる。低級アルコールとしては、炭素数1〜4のアルコールを用いることが好ましく、メタノール、エタノール、プロパノール、エトキシエタノール、メトキシエタノール等を単独または混合して用いることができる。
上記窒素含有膜を、窒素含有化合物を含む溶液を塗布する工程を含む方法により形成する場合、窒素含有化合物を含む溶液の濃度は、特に制限されないが、0.01〜1質量%であることが好ましい。より好ましくは、0.05〜0.5質量%であり、更に好ましくは、0.1〜0.3質量%である。
上記窒素含有膜を、窒素含有化合物を含む溶液を塗布する工程を含む方法により形成する場合、スピンコート法、キャスティング法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ワイヤーバーコート法、スリットコート法、ディップコート法、スプレーコート法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、インクジェット印刷法等の各種塗布法を用いて成膜することができる。このうち、膜厚をより制御しやすいという点でスピンコート法やスリットコート法が好ましい。
また上記窒素含有化合物を含む溶液を塗布する工程を行った後、溶媒でリンスする工程や超音波で洗浄する工程を行ってもよい。
溶媒でリンスする工程を行う場合、水、エタノール、メトキシエタノール等の溶媒の1種又は2種以上を用いることができる。
上記窒素含有化合物を含む溶液を塗布する工程、溶媒でリンスする工程や超音波で洗浄する工程は、大気下で行ってもよく、不活性ガス雰囲気下で行ってもよいが、不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましい。不活性ガス雰囲気下で行うことで、得られる素子が輝度や素子寿命により優れた素子となる。
不活性ガスとしては、ヘリウム、窒素、アルゴン等を用いることができる。
上記(3)、(4)の窒素含有膜は、金属酸化物層上で窒素含有化合物を分解させることで形成されるものである限り、窒素含有化合物を分解させる方法は特に制限されないが、窒素含有化合物を加熱により分解させることで形成されるものであることが好ましい。
窒素含有化合物を加熱により分解させると、金属酸化物層中の金属原子と窒素原子との結合が強化され、これにより、有機電界発光素子が、より長期にわたって高い駆動安定性を発揮するものとなる。
このように窒素含有膜が、窒素含有化合物を加熱により分解させることで形成されるものであることは本発明の好適な実施形態の1つである。
したがって、上記窒素含有膜は、金属酸化物層上に窒素含有化合物を含む溶液を塗布した後、窒素含有化合物を加熱により分解させることで形成する方法により形成されるものが最も好ましく、このような方法で形成することで、リーク電流の抑制と、均一な面発光を得る効果、及び、有機電界発光素子が、より長期にわたって高い駆動安定性を発揮するものとする効果が得られることになる。
このようなHOILED素子の製造方法、すなわち、陽極と、基板上に形成された陰極との間に複数の層が積層された構造を有する有機電界発光素子の製造方法であって、上記製造方法は、金属酸化物層上に、窒素含有化合物を含む溶液を塗布する工程と、該窒素含有化合物の塗膜から溶媒を除去する工程と、該窒素含有化合物が分解する温度で加熱処理をして本発明の窒素含有膜からなる層を製造する工程とを含む有機電界発光素子の製造方法もまた、本発明の1つである。
本発明の有機電界発光素子の製造方法において、窒素含有化合物を含む溶液を塗布する工程の好ましい形態は上述したとおりである。また、上述した溶媒でリンスする工程や超音波で洗浄する工程を行ってもよい。
上記窒素含有化合物の塗膜から溶媒を除去する工程における溶媒の除去は加熱処理により行われることが好ましい。加熱処理して溶媒等を膜中から排除することで、より安定な膜構造にすることができる。
溶媒を除去するための加熱処理の温度は、80〜180℃であることが好ましい。より好ましくは、100〜150℃である。
上記窒素含有化合物を分解させるため、もしくは溶媒等を膜中から排除しより安定な膜構造にするための加熱処理(アニール)の温度は、80〜200℃であることが好ましい。また加熱処理の時間は、1〜60分であることが好ましく、より好ましくは、5〜20分である。
加熱処理の温度や時間は、上記範囲の中で、窒素含有化合物の種類により適宜設定すればよい。例えば、窒素含有化合物として下記ポリアルキレンイミン構造を主鎖骨格に有する重合体を用いる場合、重合体の分子量が大きくなるほど分解温度は高くなるため、重合体の分子量を考慮し、後述する実施例での加熱処理条件を参考にして加熱処理の温度、及び、時間を適宜設定することができる。
上記窒素含有化合物を分解させるための加熱処理は、大気下で行ってもよく、不活性ガス雰囲気下で行ってもよい。
窒素含有化合物が分解しているか否かはX線光電子分光法(XPS)測定により確認することができる。
本発明の有機電界発光素子は、陽極および陰極と、前記陽極と前記陰極とに挟まれた1層または複数層の有機化合物層とを有し、前記陰極と前記有機化合物層との間に、金属酸化物層を有し、更に、前記金属酸化物層と前記有機化合物層との間に本発明の窒素含有膜からなる層を有することが好ましい。ここで有機化合物層は、発光層を含み、必要に応じてその他に電子輸送層や正孔輸送層を含む層である。
その中でも、本発明の有機電界発光素子は、基板上に隣接して陰極が形成され、陽極と陰極との間に金属酸化物層を有する有機無機ハイブリッド型の有機電界発光素子であって、発光層と陽極とを有し、陰極と発光層との間に、電子注入層と、必要に応じて電子輸送層とを有し、陽極と発光層との間に正孔輸送層及び/又は正孔注入層を有する構成の素子であることが好ましい。本発明の有機電界発光素子は、これらの各層の間に他の層を有していてもよいが、これらの各層のみから構成される素子であることが好ましい。すなわち、陰極、電子注入層、必要に応じて電子輸送層、発光層、正孔輸送層及び/又は正孔注入層、陽極の各層がこの順に隣接して積層された素子であることが好ましい。なお、これらの各層は、1層からなるものであってもよく、2層以上からなるものであってもよい。
上述したように、窒素含有膜は、電子注入特性に優れたものであるから、電子注入側、つまり陰極側に用いられることが好ましい。また金属酸化物層は、後述するように、陰極の一部若しくは電子注入層の一層、及び/又は、陽極の一部若しくは正孔注入層の一層として積層されることが好ましい。
上記構成の有機電界素子において、素子が電子輸送層を有さない場合は、電子注入層と発光層とが隣接することになる。また、素子が正孔輸送層、正孔注入層のいずれか一方のみを有する場合には、当該一方の層が発光層と陽極とに隣接して積層されることになり、素子が正孔輸送層と正孔注入層の両方を有する場合には、発光層、正孔輸送層、正孔注入層、陽極の順にこれらの層が隣接して積層されることになる。
本発明の有機電界発光素子において、発光層を形成する材料としては、発光層の材料として通常用いることができるいずれの化合物も用いることができ、低分子化合物であっても高分子化合物であってもよく、これらを混合して用いてもよい。
なお、本発明において低分子材料とは、高分子材料(重合体)ではない材料を意味し、分子量が低い有機化合物を必ずしも意味するものではない。
上記発光層を形成する高分子材料としては、例えば、トランス型ポリアセチレン、シス型ポリアセチレン、ポリ(ジ−フェニルアセチレン)(PDPA)、ポリ(アルキル,フェニルアセチレン)(PAPA)のようなポリアセチレン系化合物;ポリ(パラ−フェンビニレン)(PPV)、ポリ(2,5−ジアルコキシ−パラ−フェニレンビニレン)(RO−PPV)、シアノ−置換−ポリ(パラ−フェンビニレン)(CN−PPV)、ポリ(2−ジメチルオクチルシリル−パラ−フェニレンビニレン)(DMOS−PPV)、ポリ(2−メトキシ,5−(2’−エチルヘキソキシ)−パラ−フェニレンビニレン)(MEH−PPV)のようなポリパラフェニレンビニレン系化合物;ポリ(3−アルキルチオフェン)(PAT)、ポリ(オキシプロピレン)トリオール(POPT)のようなポリチオフェン系化合物;ポリ(9,9−ジアルキルフルオレン)(PDAF)、ポリ(ジオクチルフルオレン−アルト−ベンゾチアジアゾール)(F8BT)、α,ω−ビス[N,N’−ジ(メチルフェニル)アミノフェニル]−ポリ[9,9−ビス(2−エチルヘキシル)フルオレン−2,7−ジル](PF2/6am4)、ポリ(9,9−ジオクチル−2,7−ジビニレンフルオレニル)−オルト−コ(アントラセン−9,10−ジイル)のようなポリフルオレン系化合物;ポリ(パラ−フェニレン)(PPP)、ポリ(1,5−ジアルコキシ−パラ−フェニレン)(RO−PPP)のようなポリパラフェニレン系化合物;ポリ(N−ビニルカルバゾール)(PVK)のようなポリカルバゾール系化合物;ポリ(メチルフェニルシラン)(PMPS)、ポリ(ナフチルフェニルシラン)(PNPS)、ポリ(ビフェニリルフェニルシラン)(PBPS)のようなポリシラン系化合物;更には特願2010−230995号、特願2011−6457号に記載のホウ素化合物系高分子材料等が挙げられる。
上記発光層を形成する低分子材料としては、例えば、配位子に2,2’−ビピリジン−4,4’−ジカルボン酸を持つ、3配位のイリジウム錯体、ファクトリス(2−フェニルピリジン)イリジウム(Ir(ppy))、8−ヒドロキシキノリン アルミニウム(Alq)、トリス(4−メチル−8キノリノレート) アルミニウム(III)(Almq)、8−ヒドロキシキノリン 亜鉛(Znq)、(1,10−フェナントロリン)−トリス−(4,4,4−トリフルオロ−1−(2−チエニル)−ブタン−1,3−ジオネート)ユーロピウム(III)(Eu(TTA)(phen))、2,3,7,8,12,13,17,18−オクタエチル−21H,23H−ポルフィン プラチナム(II)のような各種金属錯体;ジスチリルベンゼン(DSB)、ジアミノジスチリルベンゼン(DADSB)のようなベンゼン系化合物;ナフタレン、ナイルレッドのようなナフタレン系化合物;フェナントレンのようなフェナントレン系化合物;クリセン、6−ニトロクリセンのようなクリセン系化合物;ペリレン、N,N’−ビス(2,5−ジ−t−ブチルフェニル)−3,4,9,10−ペリレン−ジ−カルボキシイミド(BPPC)のようなペリレン系化合物;コロネンのようなコロネン系化合物;アントラセン、ビススチリルアントラセンのようなアントラセン系化合物;ピレンのようなピレン系化合物;4−(ジ−シアノメチレン)−2−メチル−6−(パラ−ジメチルアミノスチリル)−4H−ピラン(DCM)のようなピラン系化合物;アクリジンのようなアクリジン系化合物;スチルベンのようなスチルベン系化合物;2,5−ジベンゾオキサゾールチオフェンのようなチオフェン系化合物;ベンゾオキサゾールのようなベンゾオキサゾール系化合物;ベンゾイミダゾールのようなベンゾイミダゾール系化合物;2,2’−(パラ−フェニレンジビニレン)−ビスベンゾチアゾールのようなベンゾチアゾール系化合物;ビスチリル(1,4−ジフェニル−1,3−ブタジエン)、テトラフェニルブタジエンのようなブタジエン系化合物;ナフタルイミドのようなナフタルイミド系化合物;クマリンのようなクマリン系化合物;ペリノンのようなペリノン系化合物;オキサジアゾールのようなオキサジアゾール系化合物;アルダジン系化合物;1,2,3,4,5−ペンタフェニル−1,3−シクロペンタジエン(PPCP)のようなシクロペンタジエン系化合物;キナクリドン、キナクリドンレッドのようなキナクリドン系化合物;ピロロピリジン、チアジアゾロピリジンのようなピリジン系化合物;2,2’,7,7’−テトラフェニル−9,9’−スピロビフルオレンのようなスピロ化合物;フタロシアニン(HPc)、銅フタロシアニンのような金属または無金属のフタロシアニン系化合物;更には特開2009−155325号公報および特願2010−230995号、特願2011−6458号に記載のホウ素化合物材料等が挙げられる。
上記発光層の平均厚さは、特に限定されないが、10〜150nmであることが好ましい。より好ましくは、20〜100nmであり、更に好ましくは、40〜100nmである。
発光層の平均厚さは、低分子化合物の場合は水晶振動子膜厚計により、高分子化合物の場合は接触式段差計により測定することができる。
本発明の有機電界発光素子が、電子輸送層を有する場合、その材料としては、電子輸送層の材料として通常用いることができるいずれの化合物も用いることができ、これらを混合して用いてもよい。
電子輸送層の材料として用いることができる化合物の例としては、トリス−1,3,5−(3’−(ピリジン−3’’−イル)フェニル)ベンゼン(TmPyPhB)のようなピリジン誘導体、(2−(3−(9−カルバゾリル)フェニル)キノリン(mCQ))のようなキノリン誘導体、2−フェニル−4,6−ビス(3,5−ジピリジルフェニル)ピリミジン(BPyPPM)のようなピリミジン誘導体、ピラジン誘導体、バソフェナントロリン(BPhen)のようなフェナントロリン誘導体、2,4−ビス(4−ビフェニル)−6−(4’−(2−ピリジニル)−4−ビフェニル)−[1,3,5]トリアジン(MPT)のようなトリアジン誘導体、3−フェニル−4−(1’−ナフチル)−5−フェニル−1,2,4−トリアゾール(TAZ)のようなトリアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、2−(4−ビフェニリル)−5−(4−tert−ブチルフェニル−1,3,4−オキサジアゾール)(PBD)のようなオキサジアゾール誘導体、2,2’,2’’−(1,3,5−ベントリイル)−トリス(1−フェニル−1−H−ベンズイミダゾール)(TPBI)のようなイミダゾール誘導体、ナフタレン、ペリレン等の芳香環テトラカルボン酸無水物、ビス[2−(2−ヒドロキシフェニル)ベンゾチアゾラト]亜鉛(Zn(BTZ))、トリス(8−ヒドロキシキノリナト)アルミニウム(Alq3)などに代表される各種金属錯体、2,5−ビス(6’−(2’,2’’−ビピリジル))−1,1−ジメチル−3,4−ジフェニルシロール(PyPySPyPy)等のシロール誘導体に代表される有機シラン誘導体等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。
これらの中でも、Alqのような金属錯体、TmPyPhBのようなピリジン誘導体が好ましい。
本発明の有機電界発光素子が、正孔輸送層を有する場合、正孔輸送層として用いる正孔輸送性有機材料には、各種p型の高分子材料や、各種p型の低分子材料を単独または組み合わせて用いることができる。
p型の高分子材料(有機ポリマー)としては、例えば、ポリアリールアミン、フルオレン−アリールアミン共重合体、フルオレン−ビチオフェン共重合体、ポリ(N−ビニルカルバゾール)、ポリビニルピレン、ポリビニルアントラセン、ポリチオフェン、ポリアルキルチオフェン、ポリヘキシルチオフェン、ポリ(p−フェニレンビニレン)、ポリチニレンビニレン、ピレンホルムアルデヒド樹脂、エチルカルバゾールホルムアルデヒド樹脂またはその誘導体等が挙げられる。
またこれらの化合物は、他の化合物との混合物として用いることもできる。一例として、ポリチオフェンを含有する混合物としては、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン/スチレンスルホン酸)(PEDOT/PSS)等が挙げられる。
上記p型の低分子材料としては、例えば、1,1−ビス(4−ジ−パラ−トリアミノフェニル)シクロへキサン、1,1’−ビス(4−ジ−パラ−トリルアミノフェニル)−4−フェニル−シクロヘキサンのようなアリールシクロアルカン系化合物、4,4’,4’’−トリメチルトリフェニルアミン、N,N,N’,N’−テトラフェニル−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン(TPD1)、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(4−メトキシフェニル)−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン(TPD2)、N,N,N’,N’−テトラキス(4−メトキシフェニル)−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン(TPD3)、N,N’−ジ(1−ナフチル)−N,N’−ジフェニル−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン(α−NPD)、TPTEのようなアリールアミン系化合物、N,N,N’,N’−テトラフェニル−パラ−フェニレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラ(パラ−トリル)−パラ−フェニレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラ(メタ−トリル)−メタ−フェニレンジアミン(PDA)のようなフェニレンジアミン系化合物、カルバゾール、N−イソプロピルカルバゾール、N−フェニルカルバゾールのようなカルバゾール系化合物、スチルベン、4−ジ−パラ−トリルアミノスチルベンのようなスチルベン系化合物、OZのようなオキサゾール系化合物、トリフェニルメタン、m−MTDATAのようなトリフェニルメタン系化合物、1−フェニル−3−(パラ−ジメチルアミノフェニル)ピラゾリンのようなピラゾリン系化合物、ベンジン(シクロヘキサジエン)系化合物、トリアゾールのようなトリアゾール系化合物、イミダゾールのようなイミダゾール系化合物、1,3,4−オキサジアゾール、2,5−ジ(4−ジメチルアミノフェニル)−1,3,4−オキサジアゾールのようなオキサジアゾール系化合物、アントラセン、9−(4−ジエチルアミノスチリル)アントラセンのようなアントラセン系化合物、フルオレノン、2,4,7−トリニトロ−9−フルオレノン、2,7−ビス(2−ヒドロキシ−3−(2−クロロフェニルカルバモイル)−1−ナフチルアゾ)フルオレノンのようなフルオレノン系化合物、ポリアニリンのようなアニリン系化合物、シラン系化合物、1,4−ジチオケト−3,6−ジフェニル−ピロロ−(3,4−c)ピロロピロールのようなピロール系化合物、フローレンのようなフローレン系化合物、ポルフィリン、金属テトラフェニルポルフィリンのようなポルフィリン系化合物、キナクリドンのようなキナクリドン系化合物、フタロシアニン、銅フタロシアニン、テトラ(t−ブチル)銅フタロシアニン、鉄フタロシアニンのような金属または無金属のフタロシアニン系化合物、銅ナフタロシアニン、バナジルナフタロシアニン、モノクロロガリウムナフタロシアニンのような金属または無金属のナフタロシアニン系化合物、N,N’−ジ(ナフタレン−1−イル)−N,N’−ジフェニル−ベンジジン、N,N,N’,N’−テトラフェニルベンジジンのようなベンジジン系化合物等が挙げられる。
本発明の有機電界発光素子が、電子輸送層や正孔輸送層を有する場合、これらの層の平均厚さは、特に限定されないが、10〜150nmであることが好ましい。より好ましくは、20〜100nmであり、更に好ましくは、40〜100nmである。
電子輸送層や正孔輸送層の平均厚さは、低分子化合物の場合は水晶振動子膜厚計により、高分子化合物の場合は接触式段差計により測定することができる。
本発明の有機電界発光素子は、陰極から発光層までの間、陽極から発光層までの間のいずれか又は両方に金属酸化物層を有することになるが、陰極から発光層までの間との発光層から陽極までの間の両方に金属酸化物層を有することが好ましい。陰極から発光層までの間の金属酸化物層を第1の金属酸化物層、陽極から発光層までの間の金属酸化物層を第2の金属酸化物層とし、本発明の有機電界発光素子の好ましい素子の構成の一例を表すと、陰極、第1の金属酸化物層、窒素含有膜からなる層、発光層、正孔輸送層、第2の金属酸化物層、陽極がこの順に隣接して積層された構成である。なお、窒素含有膜からなる層と、発光層との間に必要に応じて電子輸送層を有していてもよい。金属酸化物層の重要性は、第1の金属酸化物層の方が高く、第2の金属酸化物層は、最低非占有分子軌道の極端に深い有機材料、例えば、HATCNでも置き換える事ができる。
上記第1の金属酸化物層は、単体の金属酸化物膜の一層からなる層、もしくは、単体又は二種類以上の金属酸化物を積層及び/又は混合した層である半導体もしくは絶縁体積層薄膜の層である。金属酸化物を構成する金属元素としては、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、バナジウム、ニオブ、タンタル、クロム、モリブデン、タングステン、マンガン、インジウム、ガリウム、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、カドミウム、アルミニウム、ケイ素からなる群から選ばれる。これらのうち、積層又は混合金属酸化物層を構成する金属元素の少なくとも一つが、マグネシウム、アルミニウム、カルシウム、ジルコニウム、ハフニウム、ケイ素、チタン、亜鉛からなる層であることが好ましく、その中でも単体の金属酸化物ならば、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化ハフニウム、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化亜鉛からなる群から選ばれる金属酸化物を含むことが好ましい。
上記単体又は二種類以上の金属酸化物を積層及び/又は混合した層の例としては、酸化チタン/酸化亜鉛、酸化チタン/酸化マグネシウム、酸化チタン/酸化ジルコニウム、酸化チタン/酸化アルミニウム、酸化チタン/酸化ハフニウム、酸化チタン/酸化ケイ素、酸化亜鉛/酸化マグネシウム、酸化亜鉛/酸化ジルコニウム、酸化亜鉛/酸化ハフニウム、酸化亜鉛/酸化ケイ素、酸化カルシウム/酸化アルミニウムなどの金属酸化物の組合せを積層及び/又は混合したものや、酸化チタン/酸化亜鉛/酸化マグネシウム、酸化チタン/酸化亜鉛/酸化ジルコニウム、酸化チタン/酸化亜鉛/酸化アルミニウム、酸化チタン/酸化亜鉛/酸化ハフニウム、酸化チタン/酸化亜鉛/酸化ケイ素、酸化インジウム/酸化ガリウム/酸化亜鉛などの三種の金属酸化物の組合せを積層及び/又は混合したものなどが挙げられる。これらの中には、特殊な組成として良好な特性を示す酸化物半導体であるIGZOやエレクトライドである12CaO・7Alも含まれる。
これら第1の金属酸化物層は、電子注入層ともいえ、また、電極(陰極)ともいえる。
なお、本発明においては、シート抵抗が100Ω/□より低い物は導電体、シート抵抗が100Ω/□より高い物は半導体または絶縁体として分類される。従って、透明電極として知られているITO(錫ドープ酸化インジウム)、ATO(アンチモンドープ酸化インジウム)、IZO(インジウムドープ酸化亜鉛)、AZO(アルミニウムドープ酸化亜鉛)、FTO(フッ素ドープ酸化インジウム)等の薄膜は、導電性が高く半導体または絶縁体の範疇に含まれないことから本発明の第1の金属酸化物層を構成する一層に該当しない。
上記第2の金属酸化物層を形成する金属酸化物としては、特に制限されないが、酸化バナジウム(V)、酸化モリブテン(MoO)、酸化タングステン(WO)、酸化ルテニウム(RuO)等の1種又は2種以上を用いることができる。これらの中でも、酸化バナジウム又は酸化モリブテンを主成分とするものが好ましい。第2の金属酸化物層が酸化バナジウム又は酸化モリブテンを主成分とするものにより構成されると、第2の金属酸化物層が陽極から正孔を注入して発光層又は正孔輸送層へ輸送するという正孔注入層としての機能により優れたものとなる。また、酸化バナジウム又は酸化モリブテンは、それ自体の正孔輸送性が高いため、陽極から発光層又は正孔輸送層への正孔の注入効率が低下するのを好適に防止することもできるという利点がある。より好ましくは、酸化バナジウム及び/又は酸化モリブテンから構成されるものである。
上記第1の金属酸化物層の平均厚さは、1nmから数μm程度まで許容できるが、低電圧で駆動できる有機電界発光素子とする点から、1〜1000nmであることが好ましい。より好ましくは、2〜100nmである。
上記第2の金属酸化物層の平均厚さは、特に限定されないが、1〜1000nmであることが好ましい。より好ましくは、5〜50nmである。
第1の金属酸化物層の平均厚さは、触針式段差計、分光エリプソメトリーにより測定することができる。
第2の金属酸化物層の平均厚さは、水晶振動子膜厚計により成膜時に測定することができる。
本発明の有機電界発光素子において、陽極及び陰極としては、公知の導電性材料を適宜用いることができるが、光取り出しのために少なくともいずれか一方は透明であることが好ましい。公知の透明導電性材料の例としてはITO(錫ドープ酸化インジウム)、ATO(アンチモンドープ酸化インジウム)、IZO(インジウムドープ酸化亜鉛)、AZO(アルミニウムドープ酸化亜鉛)、FTO(フッ素ドープ酸化インジウム)などが上げられる。不透明な導電性材料の例としては、カルシウム、マグネシウム、アルミニウム、錫、インジウム、銅、銀、金、白金やこれらの合金などが挙げられる。
陰極としては、この中でも、ITO、IZO、FTOが好ましい。
陽極としては、これらの中でも、Au、Ag、Alが好ましい。
上記のように、一般に陽極に用いられる金属を陰極及び陽極に用いる事ができる事から、上部電極からの光の取り出しを想定する場合(トップエミッション構造の場合)も容易に実現でき、上記電極を種々選んでそれぞれの電極に用いる事ができる。例えば、下部電極としてAl、上部電極にITOなどである。
上記陰極の平均厚さは、特に制限されないが、10〜500nmであることが好ましい。より好ましくは、100〜200nmである。陰極の平均厚さは、触針式段差計、分光エリプソメトリーにより測定することができる。
上記陽極の平均厚さは、特に限定されないが、10〜1000nmであることが好ましい。より好ましくは、30〜150nmである。また、不透過な材料を用いる場合でも、例えば平均厚さを10〜30nm程度にすることで、トップエミッション型及び透明型の陽極として使用することができる。
陽極の平均厚さは、水晶振動子膜厚計により成膜時に測定することができる。
本発明の有機電界発光素子において、有機化合物から形成される層の成膜方法は特に限定されず、材料の特性に合わせて種々の方法を適宜用いることができるが、溶液にして塗布できる場合はスピンコート法、キャスティング法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ワイヤーバーコート法、スリットコート法、ディップコート法、スプレーコート法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、インクジェット印刷法等の各種塗布法を用いて成膜することができる。このうち、膜厚をより制御しやすいという点でスピンコート法やスリットコート法が好ましい。塗布しない場合や溶媒溶解性が低い場合は真空蒸着法や、ESDUS(Evaporative Spray Deposition from Ultra−dilute Solution)法などが好適な例として挙げられる。
上記有機化合物から形成される層を、有機化合物溶液を塗布して形成する場合、有機化合物を溶解するために用いる溶媒としては、例えば、硝酸、硫酸、アンモニア、過酸化水素、水、二硫化炭素、四塩化炭素、エチレンカーボネイト等の無機溶媒や、メチルエチルケトン(MEK)、アセトン、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトン(MIBK)、メチルイソプロピルケトン(MIPK)、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒、メタノール、エタノール、イソプロパノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール(DEG)、グリセリン等のアルコール系溶媒、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、1,2−ジメトキシエタン(DME)、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン(THF)、テトラヒドロピラン(THP)、アニソール、ジエチレングリコールジメチルエーテル(ジグリム)、ジエチレングリコールエチルエーテル(カルビトール)等のエーテル系溶媒、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、フェニルセロソルブ等のセロソルブ系溶媒、ヘキサン、ペンタン、ヘプタン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素系溶媒、トルエン、キシレン、ベンゼン等の芳香族炭化水素系溶媒、ピリジン、ピラジン、フラン、ピロール、チオフェン、メチルピロリドン等の芳香族複素環化合物系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMA)等のアミド系溶媒、クロロベンゼン、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン等のハロゲン化合物系溶媒、酢酸エチル、酢酸メチル、ギ酸エチル等のエステル系溶媒、ジメチルスルホキシド(DMSO)、スルホラン等の硫黄化合物系溶媒、アセトニトリル、プロピオニトリル、アクリロニトリル等のニトリル系溶媒、ギ酸、酢酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸等の有機酸系溶媒のような各種有機溶媒、または、これらを含む混合溶媒等が挙げられる。
これらの中でも、溶媒としては、非極性溶媒が好適であり、例えば、キシレン、トルエン、シクロヘキシルベンゼン、ジハイドロベンゾフラン、トリメチルベンゼン、テトラメチルベンゼン等の芳香族炭化水素系溶媒、ピリジン、ピラジン、フラン、ピロール、チオフェン、メチルピロリドン等の芳香族複素環化合物系溶媒、ヘキサン、ペンタン、ヘプタン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素系溶媒等が挙げられ、これらを単独または混合して用いることができる。
上記陰極、陽極、及び、酸化物層は、スパッタ法、真空蒸着法、ゾルゲル法、スプレー熱分解(SPD)法、原子層堆積(ALD)法、気相成膜法、液相成膜法等により形成することができる。陽極、陰極の形成には、金属箔の接合も用いることができる。これらの方法は各層の材料の特性に応じて選択するのが好ましく、層ごとに作製方法が異なっていても良い。第2の金属酸化物層は、これらの中でも、気相製膜法を用いて形成するのがより好ましい。気相製膜法によれば、有機化合物層の表面を壊すことなく清浄にかつ陽極と接触よく形成することができ、その結果、上述したような第2の金属酸化物層を有することによる効果がより顕著なものとなる。
本発明の有機電界発光素子の特性をさらに向上させる等の理由から、必要に応じて例えば正孔阻止層、電子阻止層などを有していてもよい。これらの層を形成するための材料としては、これらの層を形成するために通常用いられる材料を用い、また、これらの層を形成するために通常用いられる方法により層を形成することができる。
本発明の有機電界発光素子は、素子を構成する全ての層が有機化合物で構成された有機電界発光素子に比べると厳密な封止は必要ないが、必要であれば封止を施しても良い。封止工程としては、通常の方法を適宜使用できる。例えば、不活性ガス中で封止容器を接着する方法や、有機EL素子の上に直接封止膜を形成する方法などが挙げられる。これらに加えて、水分吸収材を封入する方法を併用してもよい。
本発明の有機電界発光素子は、基板上に陰極が隣接して形成される逆構造の有機電界発光素子である。本発明の有機電界発光素子は、基板がある側とは反対側に光を取り出すトップエミッション型のものであってもよく、基板がある側に光を取り出すボトムエミッション型のものであってもよい。
上記基板の材料としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリプロピレン、シクロオレフィンポリマー、ポリアミド、ポリエーテルサルフォン、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート、ポリアリレートのような樹脂材料や、石英ガラス、ソーダガラスのようなガラス材料等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。
また、トップエミッション型の場合には、不透明基板も用いることができ、例えば、アルミナのようなセラミックス材料で構成された基板、ステンレス鋼のような金属基板の表面に酸化膜(絶縁膜)を形成したもの、樹脂材料で構成された基板等も用いることができる。
上記基板の平均厚さは、0.1〜30mmであることが好ましい。より好ましくは、0.1〜10mmである。
基板の平均厚さはデジタルマルチメーター、ノギスにより測定することができる。
本発明の有機電界発光素子は、陽極と陰極との間に電圧(通常は15ボルト以下)を印加することによって発光させることができる。通常は直流電圧を印加するが、交流成分が含まれていても良い。
本発明の有機電界発光素子は、有機化合物層の材料を適宜選択することによって発光色を変化させることができるし、カラーフィルター等を併用して所望の発光色を得ることもできる。そのため、表示装置の発光部位や照明装置として好適に用いることができる。特に、逆構造という特性から、酸化物TFTと組み合わせた表示装置が好適である。
このような、本発明の有機電界発光素子を備えることを特徴とする表示装置や、本発明の有機電界発光素子を備えることを特徴とする照明装置もまた、本発明の1つである。
本発明の有機電界発光素子は、上述したとおり、金属酸化物層上に窒素含有膜からなる層を有することで、電子注入特性が向上して発光効率に優れるとともに、素子の駆動安定性及び素子寿命にも優れたものとなる。このような電子注入特性向上の効果は、有機電界発光素子に限らず、太陽電池や有機半導体等の他の光電子デバイスにおいても、性能向上に寄与する有益なものである。
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」は「重量部」を、「%」は「質量%」を意味するものとする。
窒素含有膜の膜厚測定は、以下の方法により行った。
窒素含有膜の膜厚は極薄膜であることから、通常の接触式段差計などの測定方法では計測が難しく、X線光電子分光を用いた算出方法を用いた。本算出方法は、ケトゥル シー ポパット(Ketul C Popat)外2名「ジャーナルオブ フィジカル ケミストリー ビー(Journal of Physical Chemistry B)」108巻、2004年、pp5185でも用いられており、確立した方法である。ここでは、窒素含有膜の膜厚計算には以下の式(1)を用いた。(丸善株式会社「X線光電子分光」)
Figure 0006852172
なお、Iは未知試料の窒素1s軌道強度、I は製膜に用いた窒素含有物から成る標準試料の窒素1s軌道強度、Xはモル分率、Z’は試料表面からの深さ、λは元素iの着目する光電子の脱出深さ、λi,iは非弾性平均自由工程、Z−Zは膜厚とする。
X線光電分光測定に関しては、島津クレイトス社製(AXIS−NOVA)の光電子分光測定装置を用いて、次の条件にて行った。
X線源:AlKα
ビーム出力:100W
PassEnergy:40eV
Step:0.1eV
(有機電界発光素子の作製及び特性評価)
(実施例1)
[1]市販されている平均厚さ0.7mmのITO電極層付き透明ガラス基板1を用意した。この時、基板のITO電極2は幅2mmにパターニングされているものを用いた。この基板を超純水ですすいだ後、クリーンエースの希釈液中で5分間×2回超音波洗浄した。その後超純水中で5分間×2回超音波洗浄し、アセトン中、イソプロパノール中でそれぞれ10分間超音波洗浄後、イソプロパノール中 で5分間煮沸した。この基板をイソプロパノール中から取り出し、窒素ブローにより乾燥させ、UVオゾン洗浄を20分行った。
[2]この基板を、亜鉛金属ターゲットを持つミラトロンスパッタ装置の基板ホルダーに再度固定した。約5×10−5Paまで減圧した後、アルゴンと酸素を導入した状態でスパッタし、第1の金属酸化物層3として、膜厚約2nmの酸化亜鉛層を作成した。
この時にメタルマスクを併用して、電極取り出しのためITO電極の一部は酸化亜鉛が成膜されないようにした。
[3]この基板を超純水中で15分間超音波洗浄後、アセトン中、イソプロパノール中でそれぞれ5分間超音波洗浄し、イソプロパノール中で5分間煮沸した。この基板をイソプロパノール中から取り出し、窒素ブローにより乾燥させ、UVオゾン洗浄を20分行った。
[4]UVオゾン洗浄後の基板を窒素ブローにより除塵し、1質量%の酢酸マグネシウム溶液を1300rpm、60秒の条件でスピンコートした。その後、150℃のホットプレート上で1時間アニールを行った。
[5]アニール後の基板を超純水にてリンスし、150℃のホットプレート上で30分間アニールを行った。
[6]次に窒素含有膜の層4を形成するため、日本触媒社製ポリエチレンイミン(登録商標:エポミン)をエタノールにより0.1質量%に希釈したものを2000rpm、30秒の条件でスピンコートした。ここで用いたエポミンは重量平均分子量70000のP1000(分岐状構造)であった。
[7][6]で作製された薄膜(基板)を、大気下ホットプレート上で150℃、10分間のアニールを行った。
[8]次に、[7]の処理を行った基板を真空装置に導入し、5×10−5Pa以下まで減圧する。電子輸送層としてKHLHS−01を15nm真空蒸着法により積層した後、125℃で20分間アニールした。再度基板を真空装置に導入し、5×10−5Pa以下まで減圧した後、発光層としてα−NPD:KHLHS−04:KHLDR−03を、正孔輸送層としてα−NPDをそれぞれ順番に30nm、24nm真空蒸着法により積層した。
[9]次に、有機化合物層5の上に、第2の金属酸化物層6を形成した。ここでは、酸化モリブデンを10nm気相製膜法である真空蒸着法により形成した。
[10]次に、最終工程として第2の金属酸化物層6上に陽極7を形成した。ここでは、アルミニウムを100nm真空蒸着法により製膜した。
以上の工程[1]〜[10]により、有機電界発光素子1を作製した。
[11]下記<有機電界発光素子の発光特性測定>および<有機電界発光素子の寿命特性測定>により、有機電界発光素子1の特性(電圧−輝度特性、定電流密度下(1000cd/m相当)での輝度および電圧の経時変化)を評価した。結果を図2に示した。
<有機電界発光素子の発光特性測定>
ケースレー社製の「2400型ソースメーター」により、素子への電圧印加と、電流測定を行った。トプコン社製の「BM−7」により、発光輝度を測定した。測定はアルゴン雰囲気下で行った。
<有機電界発光素子の寿命特性測定>
システム技研社製の「有機EL寿命測定装置」により、素子への電圧印加と、相対輝度測定を行った。この装置では素子に一定電流が流れるように電圧を自動的に調整しながら、フォトダイオードによる相対輝度測定が行える。測定開始時の輝度が1000cd/mになるように素子ごとに電流値を設定した。
(実施例2)
実施例1の工程[7]を以下の[7−2]に変更した以外は同様にして有機電界発光素子2を作製し、特性評価を行った。結果を図3に示した。
[7−2][6]で作製された薄膜(基板)を、窒素下ホットプレート上で150℃、10分間のアニールを行った。
(実施例3)
実施例1の工程[7]を省略した以外は同様にして有機電界発光素子3を作製し、特性評価を行った。結果を図4に示した。
(比較例1)
実施例1の工程[6]を以下の[6−2]に、工程[11]を以下の[11−2]に変更した以外は同様にして比較有機電界発光素子1を作製し、特性評価を行った。結果を図5に示した。
[6−2]次に窒素含有膜の層4を形成するため、日本触媒社製ポリエチレンイミン(登録商標:エポミン)をエタノールにより0.4質量%に希釈したものを2000rpm、30秒の条件でスピンコートした。ここで用いたエポミンは分子量70000のP1000であった。
[11−2]下記<有機電界発光素子の発光特性測定>により有機電界発光素子特性(電圧−輝度特性)を測定した。
<有機電界発光素子の発光特性測定>
ケースレー社製の「2400型ソースメーター」により、素子への電圧印加と、電流測定を行った。トプコン社製の「BM−7」により、発光輝度を測定した。測定はアルゴン雰囲気下で行った。
(実施例4)
実施例1の工程[6]を以下の[6−3]に変更した以外は同様にして有機電界発光素子4を作製し、特性評価を行った。結果を図6に示した。
[6−3]次に窒素含有膜の層4を形成するため、日本触媒社製ポリエチレンイミン(登録商標:エポミン)をエタノールにより0.1質量%に希釈したものを2000rpm、30秒の条件でスピンコートした。ここで用いたエポミンは分子量70000のP1000であった。スピンコート後の基板をエタノールでリンスした。
(実施例5)
実施例1の工程[6]を以下の[6−4]に変更した以外は同様にして有機電界発光素子5を作製し、特性評価を行った。結果を図7に示した。
[6−4]次に窒素含有膜の層4を形成するため、日本触媒社製ポリエチレンイミン(登録商標:エポミン)をエタノールにより0.1質量%に希釈したものを2000rpm、30秒の条件でスピンコートした。ここで用いたエポミンは重量平均分子量600のSP006(分岐状構造)であった。スピンコート後の基板をエタノールでリンスした。
(実施例6)
実施例1の工程[6]を以下の[6−5]に変更した以外は同様にして有機電界発光素子6を作製し、特性評価を行った。結果を図8に示した。
[6−5]次に窒素含有膜の層4を形成するため、重量平均分子量11000の直鎖状ポリエチレンイミンをエタノールにより0.1質量%に希釈したものを3000rpm、30秒の条件でスピンコートした。スピンコート後の基板をエタノールでリンスした。
(実施例7)
実施例1の工程[6]を以下の[6−6]に、工程[11]を上記[11−2]に変更し、工程[7]を省略した以外は同様にして有機電界発光素子7を作製し、特性評価を行った。結果を図9に示した。
[6−6]次に窒素含有膜の層4を形成するため、基板をジエチレントリアミンの蒸気に0.5時間さらした。
(実施例8)
実施例1の工程[6]を以下の[6−7]に、工程[11]を上記[11−2]に変更し、工程[7]を省略した以外は同様にして有機電界発光素子8を作製し、特性評価を行った。結果を図9に示した。
[6−7]次に窒素含有膜の層4を形成するため、基板をジエチレントリアミンの蒸気に4時間さらした。
(比較例2)
実施例1の工程[6][7]を省略し、工程[11]を上記[11−2]に変更した以外は同様にして比較有機電界発光素子2を作製し、特性評価を行った。結果を図9に示した。
(比較例3)
実施例1の工程[6]を以下の[6−8]に変更し、工程[7]を省略し、工程[11]を上記[11−2]に変更した以外は同様にして比較有機電界発光素子3を作製し、特性評価を行った。結果を図9に示した。
[6−8]次に窒素含有膜の層4を形成するため、基板をジエチレントリアミンの蒸気に24時間さらした。
(実施例9)
実施例1の工程[6]を以下の[6−9]に変更し、工程[7]を省略し、工程[11]を上記[11−2]に変更した以外は同様にして有機電界発光素子9を作製し、特性評価を行った。結果を図10に示した。
[6−9]次に窒素含有膜の層4を形成するため、ペンタメチルジエチレントリアミンをエタノールにより1.0質量%に希釈したものを2000rpm、30秒の条件でスピンコートした。
(実施例10)
実施例1の工程[7]を以下の[7−3]に変更した以外は同様にして有機電界発光素子10を作製し、特性評価を行った。結果を図12に示した。
[7−3][6]で作製された薄膜(基板)を、大気下ホットプレート上で150℃、2時間のアニールを行った。
(実施例11)
実施例1の工程[7]を以下の[7−4]に変更した以外は同様にして有機電界発光素子11を作製し、特性評価を行った。結果を図12に示した。
[7−4][6]で作製された薄膜(基板)を、窒素下ホットプレート上で150℃、2時間のアニールを行った。
図2〜図4の結果について、以下に説明する。
これらは窒素含有膜製膜後のアニール条件が異なる素子の特性評価結果であり、図2(素子1)は大気下、図3(素子2)は窒素下、図4(素子3)はアニール工程無しの素子の結果である。それぞれ、低電圧から発光し始め、十分な輝度を実現できている。同時に、相応の寿命も実現できていることが明らかになった。また、それぞれの窒素含有膜の膜厚は、1.77、2.13、2.28nmといずれも3nm未満の薄膜であることがわかっており、3nm未満の薄膜で高性能な有機電界発光素子が実現できていることがわかる。
これらの膜厚の違いは、アニールによる膜厚現象によるものと考えられる。大気下での膜厚の大きな減少は、大気中の酸素と反応することによるものと推測される。また、窒素下でのアニールによる膜厚減少は、残留溶媒の除去ならびに加温によるポリエチレンイミンの再配列がもたらす容積減少が想像される。故に、膜厚は薄い方から、大気下、窒素下、アニール無しの順になったと考えられる。また、わずかながら、大気下の膜厚のバラツキが大きいのは、反応を伴うためと推察される。
素子1〜3は、いずれもある一定の特性以上ではあるものの、その中でも特性に優劣はあり、例えば、ある電圧下での輝度、定電流駆動での素子寿命の観点からは、大気下、そして窒素下アニールとアニール無しが同等で高特性という順になっている。
次に、図5、6の結果を説明する。
図5は、図3(素子2)と同じ窒素含有膜作製の最適条件下で膜厚のみ4.50nmと厚くした、本発明の有機電界発光素子に該当しない素子(比較素子1)の結果である。発光閾値電圧が、0.5Vほど上昇し、6Vでの発光輝度は、3000cd/mほど減少していることがわかる。
図6は、逆に窒素含有膜のより薄いところを最適条件下で検討した結果である。膜厚は1.76nmと大気下でのアニールと同等程度に薄膜化できている一方、上記輝度、寿命といった特性は、図2〜図5のどの例よりも高特性であることがわかる。
これらの結果から、3nm以下であれば十分に高特性の有機電界発光素子が得られるものの、その中でも、より薄膜の領域でかつ窒素下でのアニールが適していることが示された。
次に、図7と8の結果を説明する。
それぞれ重量平均分子量600の分岐上構造を持ったポリエチレンイミンと重量平均分子量11000の直鎖状構造を持ったポリエチレンイミンである。いずれも良好なEL特性を示すことがわかる。
次に、図9の結果を説明する。
図9は、ポリエチレンイミンの部分ユニットを切り出したモデル物質として、ジエチレントリアミンを製膜した素子7、8、比較素子3及び窒素含有膜を製膜しなかった比較素子2の測定結果である。製膜手法として、ここでは蒸気に晒す手法を用いた。もちろんこれに限定されることはなく、塗布膜作製で用いられるスピンコートなどの一般的な製膜手法を用いることができる。蒸気に晒す場合はその時間で膜厚を制御できる。0.5時間蒸気にさらしたもの(素子7)は、1.60nmであり、4時間蒸気にさらしたもの(素子8)は、1.82nmであり、24時間蒸気にさらしたもの(比較素子3)は、7.17nmであった。ちなみに、処理をしなかったもの(比較素子2)は0.04nmと観測されており、精度よく計測できていることが示されている。ポリエチレンイミンのスピンコート製膜でも良好であった1nm台が本材料でも良好な特性を示した。発光閾値電圧は、0.5時間の暴露がより良好なものの、6V下での輝度は、4時間の暴露の方が良好であった。この違いは膜構造の違いから来るものと推測している。一方、24時間暴露の素子は、処理なしの素子と比較しても発光閾値電圧および6V下での輝度の両面において劣っている。ここでも3nm以下の膜厚が良好であることが示された。
次に、図10の結果を説明する。
図10は、窒素含有膜を形成するモデル物資を3級アミンのみで構成したペンタメチルジエチレントリアミンに変更して、スピンコート製膜により作製した素子9の特性評価結果である。膜厚は、0.16nmと極端に薄いものの、処理なしの素子(比較素子2)と比較して、特性向上が実現できていることが証明されている。このことから、1nm未満の極端に薄い領域でも特性向上が期待できることが明らかとなった。
最後に、図11、12の結果を説明する。
図11は、実施例2および3の素子2および素子3をそれぞれ3つずつ作製して5V下での輝度を測定し、特性のばらつきを比較したものである。窒素下でのアニールの結果が、アニール無しの結果に比べて似通った値になっていることがわかる。このことは、アニールがバラツキを低減する効果があることを示唆していると考えられる。つまり、アニールによりプロセス安定性が向上していることがわかる。このことは、アニールによる再配列の効果と推察される。
図12は、プロセス安定性の高いアニールの環境依存について検討した結果である。大気下と窒素下それぞれの環境において、10分間のアニールを行った素子1、素子2と2時間のアニールを行った素子10、素子11をそれぞれ図12の欄外に記載の数作製し、5V下での輝度を比較したものである。長時間のアニールがどの環境においても良好でないことがわかる。しかしながら、大気下でのアニールのほうが大きく劣化しており、ほぼ発光しない程度にまで劣化している。その点、窒素下でのアニールでは、輝度減少はあるものの、まだ十分な輝度が発現できている。
図11および図12から窒素下でのアニールはプロセス安定性に優れているといえる。
以上のことから、ポリエチレンイミン骨格を有する低分子から高分子の材料において、0.1nmから3nm未満の薄膜領域で良好な特性を示すことが示された。
また、その中でもより薄膜が良好なこと、製膜プロセスは一般的な塗布プロセスはもちろん、それ以外の例えば気相製膜である蒸気に晒す方法などでも良好な特性を得ることが可能であることが明らかとなった。その後のプロセスとして窒素下でのアニールがプロセス安定性においても良好であることを見出した。
1:基板
2:陰極
3:第1の金属酸化物層
4:窒素含有膜の層
5:有機化合物層
6:第2の金属酸化物層
7:陽極

Claims (5)

  1. 陽極と、基板上に形成された陰極との間に複数の層が積層された構造を有する有機電界発光素子であって、
    該有機電界発光素子は、陽極と陰極との間に金属酸化物層を有し、
    該金属酸化物層に隣接して陽極側に、窒素含有膜からなり、平均厚さが0.1nm以上、3nm未満の層を有する
    ことを特徴とする有機電界発光素子。
  2. 前記窒素含有膜は、1級アミン構造を有する窒素含有化合物由来の膜であることを特徴とする請求項1に記載の有機電界発光素子。
  3. 前記窒素含有化合物は、ポリエチレンイミン又はジエチレントリアミンであることを特徴とする請求項1又は2に記載の有機電界発光素子。
  4. 前記窒素含有化合物は、分岐状構造のポリエチレンイミンであり、その重量平均分子量が100〜1000であることを特徴とする請求項1又は2に記載の有機電界発光素子。
  5. 前記窒素含有膜は、窒素含有化合物を加熱により分解させることで形成されることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の有機電界発光素子。
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