JP6852172B2 - 有機電界発光素子 - Google Patents
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Description
有機EL素子は、陽極と陰極との間に発光性有機化合物を含んで形成される発光層を含む1種または複数種の層を挟んだ構造を持ち、陽極から注入されたホールと陰極から注入された電子が再結合する時のエネルギーを利用して発光性有機化合物を励起させ、発光を得るものである。有機EL素子は電流駆動型の素子であり、流れる電流をより効率的に活用するため、素子構造が種々改良され、また、素子を構成する層の材料についても種々検討されている。
なお、以下において記載する本発明の個々の好ましい形態を2つ以上組み合わせたものもまた、本発明の好ましい形態である。
本発明の有機電界発光素子は、上記特徴を有するものである限り、他の層の数、他の層を構成する材料や積層する順番は特に制限されないが、金属酸化物層と窒素含有化合物層とが、陰極と発光層との間にあることが好ましい。窒素含有化合物は、電子注入特性に優れたものであり、このような層構成を有する有機電界発光素子は、高い電子注入特性を有することになり、発光効率に優れた素子となる。
このような膜を形成することで有機電界発光素子の性能が向上する理由については以下のように推定される。
まず第一に窒素原子を含む場合、その孤立電子対は基材中の金属原子と結合を作る傾向にある。その金属−窒素結合間の分極が、強い電子注入特性を発現することになる。上記(1)〜(4)全ての窒素含有膜において、それは満たされる。より好適には、孤立電子対を有する窒素原子比率が高い上記(2)が適している。
上記(3)、(4)では、膜生成に関わる分解の現象により高密度に窒素原子が基材上に存在する膜となる事が期待され、結果として、多彩な金属−窒素結合が出現することが期待される。そしてその中には、従来よりも強固な金属−窒素結合も存在すると考えられる。さらに、分解の状況によっては、不要な炭素等の他の成分が消失する事により、相対的に窒素原子分率が上昇し、結果として、より好適な環境が実現される場合もある(4)。これらの窒素含有膜では、主たる窒素の起源が金属−窒素結合になることから、通常の分子の物理吸着よりも高密度に窒素原子が集積されていると期待される。これらの要因により、このような窒素含有膜を有することで、有機電界発光素子が、発光効率に優れ、素子駆動安定性と素子寿命に優れたものとなると考えられる。実際、上記窒素含有化合物の分解に起因する現象は、表面分析手法の一つであるX線光電子分光法により立証できる。具体的な結果は実施例で示すが、窒素含有化合物として窒素と炭素とを構成元素として含む化合物を用い、この化合物を分解させる処理をすることにより、炭素:窒素比(CN比)が2:1から1:1にまで高窒素比率になっている事が観測されている。また同時に、上記処理により、窒素のスペクトルの半値幅の増加が観測されており、この事は、化学環境の広がりを示しており、より強固な金属−窒素結合の出現も示唆されている。
したがって、窒素含有膜からなる層の下地が金属元素を含む膜であることも上記のような本発明の有機電界発光素子が奏する効果の発現に大きく寄与していると考えられる。
上記(1)、(2)の窒素含有膜の形成方法は特に制限されないが、窒素含有化合物の溶液を金属酸化物層に隣接するように塗布した後、溶媒を揮発させる方法が好適に用いられる。
上記(3)、(4)の窒素含有膜の形成方法は特に制限されないが、窒素含有化合物の溶液を金属酸化物層に塗布した後、窒素含有化合物を分解して形成する方法が好適に用いられる。
上記非特許文献4では、逆構造のHOILED素子の電子注入層を形成する材料としてポリエチレンイミンを用いることで仕事関数が低下し、電子注入の障壁が低くなることが開示されている。非特許文献4では、ポリエチレンイミンによる仕事関数の変化はポリエチレンイミン層の厚みが薄くなるほど大きくなるものの、その効果はポリエチレンイミン層の厚みが8nmの場合と4nmの場合とで差がない結果となっており、8nm程度よりも層の厚みを薄くしてもそれ以上は効果の向上が期待できないことが示唆される結果となっている。これに対し本発明は、逆構造のHOILED素子において、金属酸化物層に隣接するように非特許文献4に開示されたものよりも更に薄い平均厚さが0.1nm以上、3nm未満の窒素含有膜を形成することで、発光効率及び輝度に優れた素子が得られるという、従来の技術からは予測のできない効果が得られることを見出したものである。
窒素含有膜からなる層の平均厚さは、実施例に記載の方法により測定することができる。
窒素原子数/(窒素原子数+炭素原子数)>1/8
の関係を満たすことが好ましい。
このように窒素含有膜中における窒素原子数の割合が高いと、金属−窒素結合の総数が増加し、結果としてより強い分極により電子注入特性が更に高いものとなる。窒素含有膜における窒素原子数/(窒素原子数+炭素原子数)は、1/5より大きいことがより好ましい。
窒素含有膜中における窒素元素、炭素元素の存在比率は、光電子分光法(XPS)により測定することができる。
ポリアミン類としては、塗布により層を形成することができるものが好ましく、低分子化合物であっても高分子化合物であってもよい。低分子化合物としては、ジエチレントリアミン、ペンタメチルジエチレントリアミンのようなポリアルキレンアミンが好適に用いられ、高分子化合物では、ポリアルキレンイミン構造を有する重合体が好適に用いられる。特にポリエチレンイミンが好ましい。中でも、窒素含有化合物が、ポリエチレンイミン又はジエチレントリアミンであることは本発明の好適な実施形態の1つである。
なお、ここで低分子化合物とは、高分子化合物(重合体)ではない化合物を意味し、分子量の低い化合物を必ずしも意味するものではない。
また、上記ポリアミン類の中でも、ポリアルキレンイミン構造を主鎖骨格に有する直鎖状構造の重合体を用いることも、本発明の好適な実施形態の1つである。
ポリアミン類の中でも、上記の主鎖骨格が分岐状構造あるいは直鎖状構造の重合体を用いることで、素子駆動安定性と素子寿命により優れたものとなる。これは、このようなポリアルキレンイミン構造を主鎖骨格に有する重合体は、デバイス中で安定に存在することによるものと推定される。
このようなポリアルキレンイミン構造を主鎖骨格に有する分岐状構造あるいは直鎖状構造の重合体によって金属酸化物層に隣接して形成された窒素含有膜は、上記(1)の窒素含有膜となる。
上記ポリアルキレンイミン構造を主鎖骨格に有する直鎖状構造の重合体は、主鎖骨格を形成するポリアルキレンイミン構造の大半が直鎖状に連結したものであればよく、一部に分岐構造を有するものであってもよいが、主鎖骨格を形成するポリアルキレンイミン構造の90%以上が直鎖状に連結したものである。好ましくは、95%以上が直鎖状に連結したものであり、最も好ましくは、主鎖骨格を形成するポリアルキレンイミン構造の100%が直鎖状に連結したものである。
上記ポリアルキレンイミン構造を主鎖骨格に有する分岐状構造の重合体とは、分岐構造を10%より多く有するものが分岐状ポリアルキレンイミンである。
また、ポリアルキレンイミン構造を有する重合体が上述した直鎖状構造の重合体である場合には、重合体の重量平均分子量は、より好ましくは、250000以下であり、更に好ましくは、10000超過、50000以下であり、特に好ましくは、10000超過、25000未満である。
重量平均分子量は、以下の条件でGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)測定により求めることができる。
測定機器:Waters Alliance(2695)(商品名、Waters社製)
分子量カラム:TSKguard column α、TSKgel α−3000、TSKgel α−4000、TSKgel α−5000(いずれも東ソー社製)を直列に接続して使用
溶離液:100mMホウ酸水溶液14304gに50mM水酸化ナトリウム水溶液96gとアセトニトリル3600gを混合した溶液
検量線用標準物質:ポリエチレングリコール(東ソー社製)
測定方法:測定対象物を固形分が約0.2質量%となるように溶離液に溶解し、フィルターにてろ過した物を測定サンプルとして分子量を測定する。
有機電界発光素子の金属酸化物層は、後述するようにスプレー熱分解法、ゾルゲル法、スパッタ法等の方法で成膜され、表面は平滑ではなく凹凸を持つ。この金属酸化物層の上に、真空蒸着等の方法で発光層を成膜した場合、発光層の原料となる成分の種類によっては、金属酸化物層の表面の凹凸が結晶核となり、金属酸化物層に接する発光層を形成する材料の結晶化が促進される。このため、有機電界発光素子を完成させたとしても、大きなリーク電流が流れ、発光面が不均一化して、実用に耐える素子が得られない場合がある。
しかし、溶液を塗布して層を形成すると、表面の平滑な層を形成することができるため、金属酸化物層と発光層との間に塗布により窒素含有化合物層を形成すると、発光層を形成する材料の結晶化が抑制され、これによって、金属酸化物層を有する有機電界発光素子がリーク電流の抑制と、均一な面発光を得ることができることになる。
溶媒でリンスする工程を行う場合、水、エタノール、メトキシエタノール等の溶媒の1種又は2種以上を用いることができる。
不活性ガスとしては、ヘリウム、窒素、アルゴン等を用いることができる。
窒素含有化合物を加熱により分解させると、金属酸化物層中の金属原子と窒素原子との結合が強化され、これにより、有機電界発光素子が、より長期にわたって高い駆動安定性を発揮するものとなる。
このように窒素含有膜が、窒素含有化合物を加熱により分解させることで形成されるものであることは本発明の好適な実施形態の1つである。
このようなHOILED素子の製造方法、すなわち、陽極と、基板上に形成された陰極との間に複数の層が積層された構造を有する有機電界発光素子の製造方法であって、上記製造方法は、金属酸化物層上に、窒素含有化合物を含む溶液を塗布する工程と、該窒素含有化合物の塗膜から溶媒を除去する工程と、該窒素含有化合物が分解する温度で加熱処理をして本発明の窒素含有膜からなる層を製造する工程とを含む有機電界発光素子の製造方法もまた、本発明の1つである。
本発明の有機電界発光素子の製造方法において、窒素含有化合物を含む溶液を塗布する工程の好ましい形態は上述したとおりである。また、上述した溶媒でリンスする工程や超音波で洗浄する工程を行ってもよい。
溶媒を除去するための加熱処理の温度は、80〜180℃であることが好ましい。より好ましくは、100〜150℃である。
加熱処理の温度や時間は、上記範囲の中で、窒素含有化合物の種類により適宜設定すればよい。例えば、窒素含有化合物として下記ポリアルキレンイミン構造を主鎖骨格に有する重合体を用いる場合、重合体の分子量が大きくなるほど分解温度は高くなるため、重合体の分子量を考慮し、後述する実施例での加熱処理条件を参考にして加熱処理の温度、及び、時間を適宜設定することができる。
上記窒素含有化合物を分解させるための加熱処理は、大気下で行ってもよく、不活性ガス雰囲気下で行ってもよい。
窒素含有化合物が分解しているか否かはX線光電子分光法(XPS)測定により確認することができる。
その中でも、本発明の有機電界発光素子は、基板上に隣接して陰極が形成され、陽極と陰極との間に金属酸化物層を有する有機無機ハイブリッド型の有機電界発光素子であって、発光層と陽極とを有し、陰極と発光層との間に、電子注入層と、必要に応じて電子輸送層とを有し、陽極と発光層との間に正孔輸送層及び/又は正孔注入層を有する構成の素子であることが好ましい。本発明の有機電界発光素子は、これらの各層の間に他の層を有していてもよいが、これらの各層のみから構成される素子であることが好ましい。すなわち、陰極、電子注入層、必要に応じて電子輸送層、発光層、正孔輸送層及び/又は正孔注入層、陽極の各層がこの順に隣接して積層された素子であることが好ましい。なお、これらの各層は、1層からなるものであってもよく、2層以上からなるものであってもよい。
上述したように、窒素含有膜は、電子注入特性に優れたものであるから、電子注入側、つまり陰極側に用いられることが好ましい。また金属酸化物層は、後述するように、陰極の一部若しくは電子注入層の一層、及び/又は、陽極の一部若しくは正孔注入層の一層として積層されることが好ましい。
上記構成の有機電界素子において、素子が電子輸送層を有さない場合は、電子注入層と発光層とが隣接することになる。また、素子が正孔輸送層、正孔注入層のいずれか一方のみを有する場合には、当該一方の層が発光層と陽極とに隣接して積層されることになり、素子が正孔輸送層と正孔注入層の両方を有する場合には、発光層、正孔輸送層、正孔注入層、陽極の順にこれらの層が隣接して積層されることになる。
なお、本発明において低分子材料とは、高分子材料(重合体)ではない材料を意味し、分子量が低い有機化合物を必ずしも意味するものではない。
発光層の平均厚さは、低分子化合物の場合は水晶振動子膜厚計により、高分子化合物の場合は接触式段差計により測定することができる。
電子輸送層の材料として用いることができる化合物の例としては、トリス−1,3,5−(3’−(ピリジン−3’’−イル)フェニル)ベンゼン(TmPyPhB)のようなピリジン誘導体、(2−(3−(9−カルバゾリル)フェニル)キノリン(mCQ))のようなキノリン誘導体、2−フェニル−4,6−ビス(3,5−ジピリジルフェニル)ピリミジン(BPyPPM)のようなピリミジン誘導体、ピラジン誘導体、バソフェナントロリン(BPhen)のようなフェナントロリン誘導体、2,4−ビス(4−ビフェニル)−6−(4’−(2−ピリジニル)−4−ビフェニル)−[1,3,5]トリアジン(MPT)のようなトリアジン誘導体、3−フェニル−4−(1’−ナフチル)−5−フェニル−1,2,4−トリアゾール(TAZ)のようなトリアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、2−(4−ビフェニリル)−5−(4−tert−ブチルフェニル−1,3,4−オキサジアゾール)(PBD)のようなオキサジアゾール誘導体、2,2’,2’’−(1,3,5−ベントリイル)−トリス(1−フェニル−1−H−ベンズイミダゾール)(TPBI)のようなイミダゾール誘導体、ナフタレン、ペリレン等の芳香環テトラカルボン酸無水物、ビス[2−(2−ヒドロキシフェニル)ベンゾチアゾラト]亜鉛(Zn(BTZ)2)、トリス(8−ヒドロキシキノリナト)アルミニウム(Alq3)などに代表される各種金属錯体、2,5−ビス(6’−(2’,2’’−ビピリジル))−1,1−ジメチル−3,4−ジフェニルシロール(PyPySPyPy)等のシロール誘導体に代表される有機シラン誘導体等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。
これらの中でも、Alq3のような金属錯体、TmPyPhBのようなピリジン誘導体が好ましい。
p型の高分子材料(有機ポリマー)としては、例えば、ポリアリールアミン、フルオレン−アリールアミン共重合体、フルオレン−ビチオフェン共重合体、ポリ(N−ビニルカルバゾール)、ポリビニルピレン、ポリビニルアントラセン、ポリチオフェン、ポリアルキルチオフェン、ポリヘキシルチオフェン、ポリ(p−フェニレンビニレン)、ポリチニレンビニレン、ピレンホルムアルデヒド樹脂、エチルカルバゾールホルムアルデヒド樹脂またはその誘導体等が挙げられる。
またこれらの化合物は、他の化合物との混合物として用いることもできる。一例として、ポリチオフェンを含有する混合物としては、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン/スチレンスルホン酸)(PEDOT/PSS)等が挙げられる。
電子輸送層や正孔輸送層の平均厚さは、低分子化合物の場合は水晶振動子膜厚計により、高分子化合物の場合は接触式段差計により測定することができる。
これら第1の金属酸化物層は、電子注入層ともいえ、また、電極(陰極)ともいえる。
なお、本発明においては、シート抵抗が100Ω/□より低い物は導電体、シート抵抗が100Ω/□より高い物は半導体または絶縁体として分類される。従って、透明電極として知られているITO(錫ドープ酸化インジウム)、ATO(アンチモンドープ酸化インジウム)、IZO(インジウムドープ酸化亜鉛)、AZO(アルミニウムドープ酸化亜鉛)、FTO(フッ素ドープ酸化インジウム)等の薄膜は、導電性が高く半導体または絶縁体の範疇に含まれないことから本発明の第1の金属酸化物層を構成する一層に該当しない。
上記第2の金属酸化物層の平均厚さは、特に限定されないが、1〜1000nmであることが好ましい。より好ましくは、5〜50nmである。
第1の金属酸化物層の平均厚さは、触針式段差計、分光エリプソメトリーにより測定することができる。
第2の金属酸化物層の平均厚さは、水晶振動子膜厚計により成膜時に測定することができる。
陰極としては、この中でも、ITO、IZO、FTOが好ましい。
陽極としては、これらの中でも、Au、Ag、Alが好ましい。
上記のように、一般に陽極に用いられる金属を陰極及び陽極に用いる事ができる事から、上部電極からの光の取り出しを想定する場合(トップエミッション構造の場合)も容易に実現でき、上記電極を種々選んでそれぞれの電極に用いる事ができる。例えば、下部電極としてAl、上部電極にITOなどである。
上記陽極の平均厚さは、特に限定されないが、10〜1000nmであることが好ましい。より好ましくは、30〜150nmである。また、不透過な材料を用いる場合でも、例えば平均厚さを10〜30nm程度にすることで、トップエミッション型及び透明型の陽極として使用することができる。
陽極の平均厚さは、水晶振動子膜厚計により成膜時に測定することができる。
これらの中でも、溶媒としては、非極性溶媒が好適であり、例えば、キシレン、トルエン、シクロヘキシルベンゼン、ジハイドロベンゾフラン、トリメチルベンゼン、テトラメチルベンゼン等の芳香族炭化水素系溶媒、ピリジン、ピラジン、フラン、ピロール、チオフェン、メチルピロリドン等の芳香族複素環化合物系溶媒、ヘキサン、ペンタン、ヘプタン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素系溶媒等が挙げられ、これらを単独または混合して用いることができる。
上記基板の材料としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリプロピレン、シクロオレフィンポリマー、ポリアミド、ポリエーテルサルフォン、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート、ポリアリレートのような樹脂材料や、石英ガラス、ソーダガラスのようなガラス材料等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。
また、トップエミッション型の場合には、不透明基板も用いることができ、例えば、アルミナのようなセラミックス材料で構成された基板、ステンレス鋼のような金属基板の表面に酸化膜(絶縁膜)を形成したもの、樹脂材料で構成された基板等も用いることができる。
基板の平均厚さはデジタルマルチメーター、ノギスにより測定することができる。
本発明の有機電界発光素子は、有機化合物層の材料を適宜選択することによって発光色を変化させることができるし、カラーフィルター等を併用して所望の発光色を得ることもできる。そのため、表示装置の発光部位や照明装置として好適に用いることができる。特に、逆構造という特性から、酸化物TFTと組み合わせた表示装置が好適である。
このような、本発明の有機電界発光素子を備えることを特徴とする表示装置や、本発明の有機電界発光素子を備えることを特徴とする照明装置もまた、本発明の1つである。
窒素含有膜の膜厚は極薄膜であることから、通常の接触式段差計などの測定方法では計測が難しく、X線光電子分光を用いた算出方法を用いた。本算出方法は、ケトゥル シー ポパット(Ketul C Popat)外2名「ジャーナルオブ フィジカル ケミストリー ビー(Journal of Physical Chemistry B)」108巻、2004年、pp5185でも用いられており、確立した方法である。ここでは、窒素含有膜の膜厚計算には以下の式(1)を用いた。(丸善株式会社「X線光電子分光」)
X線光電分光測定に関しては、島津クレイトス社製(AXIS−NOVA)の光電子分光測定装置を用いて、次の条件にて行った。
X線源:AlKα
ビーム出力:100W
PassEnergy:40eV
Step:0.1eV
(実施例1)
[1]市販されている平均厚さ0.7mmのITO電極層付き透明ガラス基板1を用意した。この時、基板のITO電極2は幅2mmにパターニングされているものを用いた。この基板を超純水ですすいだ後、クリーンエースの希釈液中で5分間×2回超音波洗浄した。その後超純水中で5分間×2回超音波洗浄し、アセトン中、イソプロパノール中でそれぞれ10分間超音波洗浄後、イソプロパノール中 で5分間煮沸した。この基板をイソプロパノール中から取り出し、窒素ブローにより乾燥させ、UVオゾン洗浄を20分行った。
[2]この基板を、亜鉛金属ターゲットを持つミラトロンスパッタ装置の基板ホルダーに再度固定した。約5×10−5Paまで減圧した後、アルゴンと酸素を導入した状態でスパッタし、第1の金属酸化物層3として、膜厚約2nmの酸化亜鉛層を作成した。
この時にメタルマスクを併用して、電極取り出しのためITO電極の一部は酸化亜鉛が成膜されないようにした。
[3]この基板を超純水中で15分間超音波洗浄後、アセトン中、イソプロパノール中でそれぞれ5分間超音波洗浄し、イソプロパノール中で5分間煮沸した。この基板をイソプロパノール中から取り出し、窒素ブローにより乾燥させ、UVオゾン洗浄を20分行った。
[4]UVオゾン洗浄後の基板を窒素ブローにより除塵し、1質量%の酢酸マグネシウム溶液を1300rpm、60秒の条件でスピンコートした。その後、150℃のホットプレート上で1時間アニールを行った。
[5]アニール後の基板を超純水にてリンスし、150℃のホットプレート上で30分間アニールを行った。
[6]次に窒素含有膜の層4を形成するため、日本触媒社製ポリエチレンイミン(登録商標:エポミン)をエタノールにより0.1質量%に希釈したものを2000rpm、30秒の条件でスピンコートした。ここで用いたエポミンは重量平均分子量70000のP1000(分岐状構造)であった。
[7][6]で作製された薄膜(基板)を、大気下ホットプレート上で150℃、10分間のアニールを行った。
[8]次に、[7]の処理を行った基板を真空装置に導入し、5×10−5Pa以下まで減圧する。電子輸送層としてKHLHS−01を15nm真空蒸着法により積層した後、125℃で20分間アニールした。再度基板を真空装置に導入し、5×10−5Pa以下まで減圧した後、発光層としてα−NPD:KHLHS−04:KHLDR−03を、正孔輸送層としてα−NPDをそれぞれ順番に30nm、24nm真空蒸着法により積層した。
[9]次に、有機化合物層5の上に、第2の金属酸化物層6を形成した。ここでは、酸化モリブデンを10nm気相製膜法である真空蒸着法により形成した。
[10]次に、最終工程として第2の金属酸化物層6上に陽極7を形成した。ここでは、アルミニウムを100nm真空蒸着法により製膜した。
以上の工程[1]〜[10]により、有機電界発光素子1を作製した。
[11]下記<有機電界発光素子の発光特性測定>および<有機電界発光素子の寿命特性測定>により、有機電界発光素子1の特性(電圧−輝度特性、定電流密度下(1000cd/m2相当)での輝度および電圧の経時変化)を評価した。結果を図2に示した。
<有機電界発光素子の発光特性測定>
ケースレー社製の「2400型ソースメーター」により、素子への電圧印加と、電流測定を行った。トプコン社製の「BM−7」により、発光輝度を測定した。測定はアルゴン雰囲気下で行った。
<有機電界発光素子の寿命特性測定>
システム技研社製の「有機EL寿命測定装置」により、素子への電圧印加と、相対輝度測定を行った。この装置では素子に一定電流が流れるように電圧を自動的に調整しながら、フォトダイオードによる相対輝度測定が行える。測定開始時の輝度が1000cd/m2になるように素子ごとに電流値を設定した。
実施例1の工程[7]を以下の[7−2]に変更した以外は同様にして有機電界発光素子2を作製し、特性評価を行った。結果を図3に示した。
[7−2][6]で作製された薄膜(基板)を、窒素下ホットプレート上で150℃、10分間のアニールを行った。
実施例1の工程[7]を省略した以外は同様にして有機電界発光素子3を作製し、特性評価を行った。結果を図4に示した。
実施例1の工程[6]を以下の[6−2]に、工程[11]を以下の[11−2]に変更した以外は同様にして比較有機電界発光素子1を作製し、特性評価を行った。結果を図5に示した。
[6−2]次に窒素含有膜の層4を形成するため、日本触媒社製ポリエチレンイミン(登録商標:エポミン)をエタノールにより0.4質量%に希釈したものを2000rpm、30秒の条件でスピンコートした。ここで用いたエポミンは分子量70000のP1000であった。
[11−2]下記<有機電界発光素子の発光特性測定>により有機電界発光素子特性(電圧−輝度特性)を測定した。
<有機電界発光素子の発光特性測定>
ケースレー社製の「2400型ソースメーター」により、素子への電圧印加と、電流測定を行った。トプコン社製の「BM−7」により、発光輝度を測定した。測定はアルゴン雰囲気下で行った。
実施例1の工程[6]を以下の[6−3]に変更した以外は同様にして有機電界発光素子4を作製し、特性評価を行った。結果を図6に示した。
[6−3]次に窒素含有膜の層4を形成するため、日本触媒社製ポリエチレンイミン(登録商標:エポミン)をエタノールにより0.1質量%に希釈したものを2000rpm、30秒の条件でスピンコートした。ここで用いたエポミンは分子量70000のP1000であった。スピンコート後の基板をエタノールでリンスした。
実施例1の工程[6]を以下の[6−4]に変更した以外は同様にして有機電界発光素子5を作製し、特性評価を行った。結果を図7に示した。
[6−4]次に窒素含有膜の層4を形成するため、日本触媒社製ポリエチレンイミン(登録商標:エポミン)をエタノールにより0.1質量%に希釈したものを2000rpm、30秒の条件でスピンコートした。ここで用いたエポミンは重量平均分子量600のSP006(分岐状構造)であった。スピンコート後の基板をエタノールでリンスした。
実施例1の工程[6]を以下の[6−5]に変更した以外は同様にして有機電界発光素子6を作製し、特性評価を行った。結果を図8に示した。
[6−5]次に窒素含有膜の層4を形成するため、重量平均分子量11000の直鎖状ポリエチレンイミンをエタノールにより0.1質量%に希釈したものを3000rpm、30秒の条件でスピンコートした。スピンコート後の基板をエタノールでリンスした。
実施例1の工程[6]を以下の[6−6]に、工程[11]を上記[11−2]に変更し、工程[7]を省略した以外は同様にして有機電界発光素子7を作製し、特性評価を行った。結果を図9に示した。
[6−6]次に窒素含有膜の層4を形成するため、基板をジエチレントリアミンの蒸気に0.5時間さらした。
実施例1の工程[6]を以下の[6−7]に、工程[11]を上記[11−2]に変更し、工程[7]を省略した以外は同様にして有機電界発光素子8を作製し、特性評価を行った。結果を図9に示した。
[6−7]次に窒素含有膜の層4を形成するため、基板をジエチレントリアミンの蒸気に4時間さらした。
実施例1の工程[6][7]を省略し、工程[11]を上記[11−2]に変更した以外は同様にして比較有機電界発光素子2を作製し、特性評価を行った。結果を図9に示した。
実施例1の工程[6]を以下の[6−8]に変更し、工程[7]を省略し、工程[11]を上記[11−2]に変更した以外は同様にして比較有機電界発光素子3を作製し、特性評価を行った。結果を図9に示した。
[6−8]次に窒素含有膜の層4を形成するため、基板をジエチレントリアミンの蒸気に24時間さらした。
実施例1の工程[6]を以下の[6−9]に変更し、工程[7]を省略し、工程[11]を上記[11−2]に変更した以外は同様にして有機電界発光素子9を作製し、特性評価を行った。結果を図10に示した。
[6−9]次に窒素含有膜の層4を形成するため、ペンタメチルジエチレントリアミンをエタノールにより1.0質量%に希釈したものを2000rpm、30秒の条件でスピンコートした。
実施例1の工程[7]を以下の[7−3]に変更した以外は同様にして有機電界発光素子10を作製し、特性評価を行った。結果を図12に示した。
[7−3][6]で作製された薄膜(基板)を、大気下ホットプレート上で150℃、2時間のアニールを行った。
実施例1の工程[7]を以下の[7−4]に変更した以外は同様にして有機電界発光素子11を作製し、特性評価を行った。結果を図12に示した。
[7−4][6]で作製された薄膜(基板)を、窒素下ホットプレート上で150℃、2時間のアニールを行った。
これらは窒素含有膜製膜後のアニール条件が異なる素子の特性評価結果であり、図2(素子1)は大気下、図3(素子2)は窒素下、図4(素子3)はアニール工程無しの素子の結果である。それぞれ、低電圧から発光し始め、十分な輝度を実現できている。同時に、相応の寿命も実現できていることが明らかになった。また、それぞれの窒素含有膜の膜厚は、1.77、2.13、2.28nmといずれも3nm未満の薄膜であることがわかっており、3nm未満の薄膜で高性能な有機電界発光素子が実現できていることがわかる。
これらの膜厚の違いは、アニールによる膜厚現象によるものと考えられる。大気下での膜厚の大きな減少は、大気中の酸素と反応することによるものと推測される。また、窒素下でのアニールによる膜厚減少は、残留溶媒の除去ならびに加温によるポリエチレンイミンの再配列がもたらす容積減少が想像される。故に、膜厚は薄い方から、大気下、窒素下、アニール無しの順になったと考えられる。また、わずかながら、大気下の膜厚のバラツキが大きいのは、反応を伴うためと推察される。
素子1〜3は、いずれもある一定の特性以上ではあるものの、その中でも特性に優劣はあり、例えば、ある電圧下での輝度、定電流駆動での素子寿命の観点からは、大気下、そして窒素下アニールとアニール無しが同等で高特性という順になっている。
図5は、図3(素子2)と同じ窒素含有膜作製の最適条件下で膜厚のみ4.50nmと厚くした、本発明の有機電界発光素子に該当しない素子(比較素子1)の結果である。発光閾値電圧が、0.5Vほど上昇し、6Vでの発光輝度は、3000cd/m2ほど減少していることがわかる。
図6は、逆に窒素含有膜のより薄いところを最適条件下で検討した結果である。膜厚は1.76nmと大気下でのアニールと同等程度に薄膜化できている一方、上記輝度、寿命といった特性は、図2〜図5のどの例よりも高特性であることがわかる。
これらの結果から、3nm以下であれば十分に高特性の有機電界発光素子が得られるものの、その中でも、より薄膜の領域でかつ窒素下でのアニールが適していることが示された。
それぞれ重量平均分子量600の分岐上構造を持ったポリエチレンイミンと重量平均分子量11000の直鎖状構造を持ったポリエチレンイミンである。いずれも良好なEL特性を示すことがわかる。
図9は、ポリエチレンイミンの部分ユニットを切り出したモデル物質として、ジエチレントリアミンを製膜した素子7、8、比較素子3及び窒素含有膜を製膜しなかった比較素子2の測定結果である。製膜手法として、ここでは蒸気に晒す手法を用いた。もちろんこれに限定されることはなく、塗布膜作製で用いられるスピンコートなどの一般的な製膜手法を用いることができる。蒸気に晒す場合はその時間で膜厚を制御できる。0.5時間蒸気にさらしたもの(素子7)は、1.60nmであり、4時間蒸気にさらしたもの(素子8)は、1.82nmであり、24時間蒸気にさらしたもの(比較素子3)は、7.17nmであった。ちなみに、処理をしなかったもの(比較素子2)は0.04nmと観測されており、精度よく計測できていることが示されている。ポリエチレンイミンのスピンコート製膜でも良好であった1nm台が本材料でも良好な特性を示した。発光閾値電圧は、0.5時間の暴露がより良好なものの、6V下での輝度は、4時間の暴露の方が良好であった。この違いは膜構造の違いから来るものと推測している。一方、24時間暴露の素子は、処理なしの素子と比較しても発光閾値電圧および6V下での輝度の両面において劣っている。ここでも3nm以下の膜厚が良好であることが示された。
図10は、窒素含有膜を形成するモデル物資を3級アミンのみで構成したペンタメチルジエチレントリアミンに変更して、スピンコート製膜により作製した素子9の特性評価結果である。膜厚は、0.16nmと極端に薄いものの、処理なしの素子(比較素子2)と比較して、特性向上が実現できていることが証明されている。このことから、1nm未満の極端に薄い領域でも特性向上が期待できることが明らかとなった。
図11は、実施例2および3の素子2および素子3をそれぞれ3つずつ作製して5V下での輝度を測定し、特性のばらつきを比較したものである。窒素下でのアニールの結果が、アニール無しの結果に比べて似通った値になっていることがわかる。このことは、アニールがバラツキを低減する効果があることを示唆していると考えられる。つまり、アニールによりプロセス安定性が向上していることがわかる。このことは、アニールによる再配列の効果と推察される。
図12は、プロセス安定性の高いアニールの環境依存について検討した結果である。大気下と窒素下それぞれの環境において、10分間のアニールを行った素子1、素子2と2時間のアニールを行った素子10、素子11をそれぞれ図12の欄外に記載の数作製し、5V下での輝度を比較したものである。長時間のアニールがどの環境においても良好でないことがわかる。しかしながら、大気下でのアニールのほうが大きく劣化しており、ほぼ発光しない程度にまで劣化している。その点、窒素下でのアニールでは、輝度減少はあるものの、まだ十分な輝度が発現できている。
図11および図12から窒素下でのアニールはプロセス安定性に優れているといえる。
また、その中でもより薄膜が良好なこと、製膜プロセスは一般的な塗布プロセスはもちろん、それ以外の例えば気相製膜である蒸気に晒す方法などでも良好な特性を得ることが可能であることが明らかとなった。その後のプロセスとして窒素下でのアニールがプロセス安定性においても良好であることを見出した。
2:陰極
3:第1の金属酸化物層
4:窒素含有膜の層
5:有機化合物層
6:第2の金属酸化物層
7:陽極
Claims (5)
- 陽極と、基板上に形成された陰極との間に複数の層が積層された構造を有する有機電界発光素子であって、
該有機電界発光素子は、陽極と陰極との間に金属酸化物層を有し、
該金属酸化物層に隣接して陽極側に、窒素含有膜からなり、平均厚さが0.1nm以上、3nm未満の層を有する
ことを特徴とする有機電界発光素子。 - 前記窒素含有膜は、1級アミン構造を有する窒素含有化合物由来の膜であることを特徴とする請求項1に記載の有機電界発光素子。
- 前記窒素含有化合物は、ポリエチレンイミン又はジエチレントリアミンであることを特徴とする請求項1又は2に記載の有機電界発光素子。
- 前記窒素含有化合物は、分岐状構造のポリエチレンイミンであり、その重量平均分子量が100〜1000であることを特徴とする請求項1又は2に記載の有機電界発光素子。
- 前記窒素含有膜は、窒素含有化合物を加熱により分解させることで形成されることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の有機電界発光素子。
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