以下、本発明の実施形態を図面に基づき説明する。
(第1実施形態)
図1は本発明の第1実施形態のモータ(回転電機)と比較するためのモータ(以下、「比較例のモータ」という。)1をロータシャフト6の一方向からみたモータ1の概略断面図である。
具体的に説明すると、モータ1は、ロータ2と、ステータ11と、を備える。
ロータ2は、ロータコア3、永久磁石5、ロータシャフト6を含んでいる。ロータコア3は、電磁鋼板で形成される薄板円盤状部材4をロータシャフト6の軸方向(以下、単に「ロータシャフト方向」という。)に複数積層した構造からなる。薄板円盤上部材4の外周側には、周方向に16等分した位置に磁石5を収納する16個の穴が穿設されている。この16個の穴に磁石がロータシャフト方向から挿入され固定される。
16個の磁石のうち、1つ飛ばしの8個の磁石5は、ロータコア3の外周側がN極となり、ロータコア3の内周側がS極となるように配置される。残り8個の磁石5はロータコア3の内周側がN極となり、ロータコア3の外周側がS極となるように配置される。このように、16個の磁石5は、ロータ2の径方向に着磁され、磁石5の極性が隣接する磁石間で反転している。そして、16個の磁石5に対して、後述するステータコイル12が配置される。
実施形態では、1極当たり1枚の磁石を配置した場合を示しているが、この場合に限定されるものでない。1極当たり複数の磁石を配した場合であってよい。
また、薄板円盤状部材4には、部材4の中心位置にロータシャフト6を収納する1個の穴が穿設されている。この1個の穴にロータシャフト6がロータシャフト方向から挿入され、ロータコア12と連結される。ロータシャフト6は、モータハウジング(図示しない)に対して回動自在に支持される。
ステータ11は、ロータ2の外周に配置され、図示しないモータハウジングに固定される。ステータ11は、ステータコア12、ステータコイル61を含んでいる。磁性体からなるステータコア12は、径方向の外側にバックヨークを、径方向の内側に内周側に向けて突出するティースを備え、ティースの周方向の両脇に、コイルを収容する空間としてのスロット35を有する。スロット35の数は、三相電流の場合は極対数(極数の1/2)の3倍、つまり8個×3=24個である。
モータ1は、集中巻モータである。集中巻モータでは、各ティース31に単相のコイルとしてのステータコイル61が巻回される。こうした集中巻きの構成から、1つのティース31が必ず含まれるようにステータコア12を周方向に分割して構成することができる。
ここではステータコア12を、1つのティース31が必ず含まれるようにして周方向に等分に24個に分割し、その分割したステータコア(以下、「分割コア」という。)21のティース31を被覆する単相のコイルとしてのステータコイル61を形成する。分割コア21のティース31に単相のコイルを被覆した部品の全体を、以下「コイルセグメント」という。24個のコイルセグメント13を周方向に並べて組み立てることで、全体として円筒状のステータ11が構成される。
比較例のモータを構成するコイルセグメント(以下、「比較例のコイルセグメント」ともいう。)13を詳述する。24個の各コイルセグメント13の構成は同様であるので、1つのコイルセグメント13を取り出して説明する。図2は1つのコイルセグメント13の分解斜視図、図3は図1のA部の拡大図である。ただし、図3では1つのコイルセグメント13についてだけ取り出して示し、ティース31を被覆するステータコイル61は省略して示していない。
比較例のコイルセグメント13は、ステータコア12の一部を構成する分割コア21と、インシュレータ41と、ステータコイル61と、を備えている。図3のように、径方向(図2では上下方向)、周方向(図2では水平方向)、ロータシャフト方向の各方向を定めるとする。
分割コア21は、径方向の外側(図2で上方)に位置するほぼ直方体状のバックヨーク22と、このバックヨーク22の中央位置から径方向内側(図2で下方)に向かって突出するティース31とから構成される。つまり、分割コア21は、径方向の外側にバックヨーク22を、径方向の内側にティース31を備え、ティース21の周方向の両脇に、ステータコイル61を収容する空間としてのスロット35を有している。
バックヨーク22の周方向の一方(図3では右方)の径方向面22Aに凹部37が、周方向の他方(図3では左方)の径方向面22Bに凸部38が形成される。これら一対の凹部37と凸部38は、隣接する分割コア22,22同士あるいはコイルセグメント13,13同士を結合する際の位置決めを容易に行わせるためのものである。
図3に示したようにコイルセグメント13は、ロータシャフト6の中心を通るY軸を中心にして、断面が線対称な形状をしている。つまり、同じ機能を有する部分や部位を、Y軸を中心にして周方向の2箇所に有している。このため、以下では、周方向の一方の側(図3で右側)の部分や部位であることを表すため「A」を、周方向の他方の側(図3で左側)の部品や部位であることを表すため、Bを数字の後に付す。
ティース31は、周方向幅が径方向に関係なく同じである。1つのティース31の周方向にある2つの面(以下、「周方向面」という。)32A,32Bの径方向内側端には、周方向の両側に突出する突出部33A,33Bが形成されている。
磁性体の分割コア21と高電圧部であるステータコイル61を絶縁するために、絶縁体(例えば樹脂材料)から形成されるインシュレータ41の上からステータコイル61を構成する、例えば絶縁皮膜銅線などの電線62が巻かれている。インシュレータ41は、分割コア21とステータコイル61の間の電気絶縁、伝熱、及びステータコイル61の保持という役割を担うものである。
インシュレータ41は、ティース31の周方向面32A,32Bと、ロータシャフト方向にある面32C,32Dの4つ全て、及びバックヨーク22の内周側の面(以下、「内周面」という。)23A,23Bを被覆するため、8つの部位を有している。すなわち、インシュレータ41は、バックヨーク22の内周面(径方向のうちの一方の面)を被覆する鍔部と、ティース31を被覆する胴部とで構成されている。このうちインシュレータ41の鍔部は、径方向の外側にある2つの部位46A,46Bのことである。また、インシュレータ41の胴部は、周方向にある2つの部位44A,44B及びロータシャフト方向にある2つの部位44C,44D(図2参照)のことである。さらに、径方向の内側にある2つの部位45A,45Bを有している。この2つの部位45A,45Bも鍔部である。このように、鍔部45A,45B,46A,46Bが胴部の径方向内側端及び径方向外側端に形成されている。かつ胴部から起立する起壁として鍔部が形成されている。以下では、特に径方向の外側にある2つの部位46A,46Bを鍔部として扱う。
インシュレータ41の胴部(44A,44B)は、ティース31の周方向面32A,32Bを被覆する。インシュレータ41の胴部(44C,44D)は、ティース31のロータシャフト方向にある面32C,32D(図2参照)を被覆する。インシュレータ41の鍔部46A,46Bは、バックヨーク22の内周面23A,23Bを被覆する。インシュレータ41の径方向内側部位45A,45Bは、ティース31の突出部33A,33Bを被覆する。
インシュレータ41は、図2にも示したように、ロータシャフト方向に2つのピース(部品)42,43に分割され、分割された側が開放端側となる。図2では一方のピース42の右上側が開放端側、他方のピース43の左下側が開放端側である。以下、一方のピース42を「第1ピース」、他方のピース43を「第2ピース」という。第1、第2の2つのピース(以下、単に「2つのピース」ともいう。)42,43の開放端側の部位(以下「開放端側部位」という。)がティース31に近くなるように、分割コア21に対してロータシャフト方向の両側に2つのピース42,43を配置する。そして、2つのピース42,43の開放端側部位で分割コア21のティース31を被覆しつつ、ロータシャフト方向に互いに移動して2つのピース42,43の開放端側部位同士を周方向にラップさせる。これによって、1つのティース31の周方向及びロータシャフト方向の4つの面(32A,32B,32C,32D)を被覆する1つのインシュレータ41が構成される。
このようにして、1つのティース31の4つの面をインシュレータ41の胴部(44A,44B,44C,44D)で被覆した後には、絶縁皮膜で被覆された電線62をインシュレータ41の上から巻回することで、ステータコイル61を形成する。これによって、図2の右側にも示したように、1つのコイルセグメント13が完成される。
次に、完成した24個のコイルセグメント13を、図1にも示したように、ロータ2の外側に周方向に並べる。そして、周方向に隣り合う2つのコイルセグメント13,13の凹部37と凸部38とを嵌合させた後に、24個のステータコイル61を電気的につなぎ合わせることによって、ステータ11を完成する。
完成したステータ11では、分割コア21のバックヨーク22が周方向に環状につながって全体としてもステータコア12のバックヨークを構成する。周方向に環状につながったバックヨーク22はステータコア12の外周側部分で周方向磁路を形成する。バックヨーク22から内周側に向けて突出するティース31は径方向磁路を形成する。
第1実施形態は、1つの分割コア21に対して、1つだけのティース31を含ませた場合であるが、1つの分割コア21に対して、複数のティースを含ませる場合であってよい。また、第1実施形態はモータ1が8極機の場合であるが、この場合に限られない。例えば、4極機、6極機、10極機等のモータであってよい。
さて、モータ1の要求性能を達成するために、1つのティース31に電線62をいかに多く巻くかが重要である。そのための指標として巻線占積率(スロット35の断面空間に対する電線62の占める割合)がある。巻線占積率を上げるために、インシュレータ41を薄肉にして、電線62をたくさん巻いてやるというのが、基本的な考え方となる。
この考え方のもとで比較例のモータ1に用いられているインシュレータ(以下、「比較例のインシュレータ」ともいう。)を本発明者が再考したところを次に説明する。 図4は比較例のモータ1に用いられているステータ(以下、「比較例のステータ」ともいう。)11の一部拡大断面図である。図4では、図4の左側に示した断面図のB部を拡大して図4の右側に示している。
図4に示したように、比較例のインシュレータ41では、径方向外側の鍔部46A,46Bの根元から先端部(以下、単に「鍔部先端部」ともいう。)47A,47Bまで同じ厚さとなっている。そして、隣接する2つの鍔部先端部47A,47Bの端面48A,48Bを互いに周方向に当接することで、ステータコイル61が収容される空間部としてのスロット35を形成している。
このように、隣り合う2つの鍔部先端部47A,47Bの端面48A,48B(以下、「先端部端面」ともいう。)を周方向に当接させるだけの構成であると、鍔部46A,46Bの厚さが薄くなっているため、バックヨーク22のすぐ近くにステータコイル61が位置することとなる。なお、比較例のステータでは、後述するようにバックヨーク22の内周面の両端に切欠き部24A,24Bを設けるのであるが、ここでは切欠き部24A,24Bはないものとして説明する。すなわち、切欠き部24A,24Bはなく、インシュレータ41の鍔部46A,46Bの径方向外側にバックヨーク22の内周面23A,23Bが当接しているものとする。以下、「内周面23A,23B」とは、バックヨークの内周側の面のうち、ティース31を除いた部分についていうものとする。
このとき、電線62のうち径方向外側にあって2つの先端部端面48A,48Bに最も近い電線(この電線を、以下「最外周電線」という。)63A,63Bとバックヨーク22との間の絶縁距離が近いものとなる。さらに、インシュレータ41の製作バラツキにより、周方向に隣り合う2つの先端部端面48A,48Bの間に隙間(空間)が生じ得ることがある。こうして、最外周電線63A,63Bとバックヨーク22との絶縁距離が短く、かつ周方向に隣り合う2つの先端部端面48A,48Bの間に隙間があると、最外周電線63A,63Bとバックヨーク22との間で短絡が生じ得る。樹脂材料(電気絶縁物)であっても肉厚の薄い2つの先端部端面48A,48Bを当接させるだけでは、高電圧の最外周電線63A,63Bと接地電圧のバックヨーク22との間の電気絶縁が保たれ難いのである。このように、巻線占積率の向上のためインシュレータ41の鍔部46A,46Bの肉厚を薄くしたいという要求はあるものの、電気絶縁性能との両立は難しい、というのが比較例のインシュレータの有する基本的な課題である。
さらに述べると、電線62そのものも絶縁皮膜で被覆しているが、絶縁皮膜された電線62を引っ張りながらインシュレータ41の胴部(44A,44B,44C,44D)の上から巻くので、モータ1の製造時に電線62の絶縁皮膜が破れることがある。また、理想的な絶縁皮膜は存在せず、絶縁皮膜にある確率でピンホールのような小さな孔が電線62に絶縁皮膜を被覆する工程で生じてしまうことがある。このように絶縁皮膜が破れたり絶縁皮膜にピンホールができたりしている電線部分が、たまたま最外周電線63A,63Bの位置にくると、その位置にある上記電線部分の破れた絶縁被膜やピンポールの部分で電線62の導体部分が直接空気と触れることとなる。電線62の導体部分が直接空気と触れている状態では、電気絶縁されていない状態となり、直接空気と触れている電線62の導体部分からバックヨーク22へと空気中を電荷が飛んでしまう。量産で何万台というモータを製造する際には、何万台のうちの1台といった確率で上記絶縁被膜の破れやピンホールに起因して、最外周電線63A,63Bとバックヨーク22の間に短絡が生じる可能性がある。こういった短絡は小さい確率でしか生じないといっても、生じてから対策するのでは遅いので、予め短絡を回避するための対策が必要となるわけである。
この対策のため、比較例のモータ1では、図3,図4にも示したようにバックヨーク22の内周面23A,23Bの周方向の両端を切欠くことで、鍔部先端部47A,47Bとバックヨーク22との間に所定の空間36を生じさせている。バックヨーク22の内周面23A,23Bに切欠き部24A,24Bを設けて最外周電線63A,63Bとバックヨーク22とを径方向に遠ざけることで、最外周電線63A,63Bとバックヨーク22との間の物理的な絶縁距離を長くしているのである。
単純に絶縁距離を長くするだけならこの対策でよいのであるが、金属の切りくずなどの微細な異物が、分割コア21に付着した状態でモータの組み立て製造が行われると、モータハウジングの内部に当該異物が取り残される。ここでは、上記の異物が金属などの導体である場合を扱うものとし、モータハウジングの内部に侵入した異物を「コンタミ」で定義する。モータ1の組み立て製造時には、モータハウジングの内部に存在するコンタミの存在を避けて通れないのである。
比較例のモータ1のようにバックヨーク22の内周面23A,23Bに切欠き部24A,24Bを設けただけでは、鍔部先端部47A,47Bとバックヨーク22との間の空間36にコンタミ65が図4の右側に示したように侵入してくることが考えられる。なお、図4では、コンタミ65の存在を明確にするため拡大して示している。このため、コンタミ65がバックヨーク22に突き刺さっているようにみえるが、実際にコンタミ65がバックヨーク22に突き刺さっているわけでない。コンタミ65はバックヨーク22に付着するだけである。空間36にコンタミ65が侵入してバックヨーク22に付着したときには、コンタミ65がバックヨーク22の一部を形成する。このため、コンタミ65の分だけバックヨーク22と鍔部先端部47A,47Bとの間の絶縁距離が、コンタミ65が侵入しない場合より短くなってしまい、最外周電線63A,63Bとバックヨーク22との間に短絡が生じ得る。最外周電線63A,63Bの外周と、バックヨーク22と電気的に接続されているコンタミ65の先端との間の最短の距離で短絡66が生じるのである。
コンタミ65は数ミリ長と想定される。そこで、想定される数ミリというコンタミ65が鍔部先端部47A,47Bとバックヨーク22との間の空間36に侵入しても、コンタミ65がバックヨーク22と一体化しないように(つまり、バックヨーク22に触れないように)することが考えられる。切欠き部24A,24Bを径方向外側に向けて大きくかつ周方向に向けても大きくすることで、鍔部先端部47A,47Bとバックヨーク22との間の空間36を広くし、空間36に侵入してくるコンタミがバックヨーク22に触れることがないようにするのである。しかしながら、バックヨーク22は、周方向磁路を形成する部位になるので、空間36を径方向外側に向けて広くしたのでは、周方向磁路を狭めることになる。周方向磁路を狭めたのでは、モータ1の発生するトルクが低下してしまう。せっかく、インシュレータ41の肉厚を薄くすることにより巻線占積率を上げてモータ性能をよくしようとしているのに、空間36を広くすることで周方向磁路を狭めたのでは、モータ性能が低下する。このように、バックヨーク22の内周面23A,23Bに切欠き部24A,24Bを設けるだけの対策は、モータ性能の上では得策でない。
そこで本発明の第1実施形態では、図5に示したように、バックヨーク22の内周面23A,23B(径方向のうちの一方の面)の周方向の両端に切欠き部24A,24Bを設けた上で、さらに次の構成を追加する。すなわち、鍔部先端部47A,47Bを、鍔部46A,46Bの他の部分よりも径方向外側に向けて厚く形成し、この厚くした鍔部先端部47A,47Bが、切欠き部24A,24Bによって形成される空間36を埋めるようにする。鍔部46A,46Bの先端部47A,47Bのみ残りの鍔部46A,46Bより肉厚とするのである。
なお、図5では、図5の下方に示した断面図のB部を拡大して図5の上方に示している。この場合に、2つの部材同士あるいは2つの部位同士あるいは1つの部材と1つの部位を当接させた状態で示すと見にくくなるので、図5上方の拡大図では2つの部材同士あるいは2つの部位同士あるいは1つの部材と1つの部位を少しずらせた状態を示している。ずらせた状態を示しているからといって、実際にも2つの部材同士あるいは2つの部位同士あるいは1つの部材と1つの部位がこのようにずれているわけでない。
詳細には、切欠き部24A,24Bは、周方向面25A,25Bと径方向面26A,26Bの2つの面で構成されている。以下、切欠き部の周方向面25A,25Bを「第1面」と、径方向面26A,26Bを「第2面」という。以下、本実施形態で「面」という場合、基本的に平面であるとして説明するが、面が平面であることは必ずしも必要ない。
バックヨーク22の径方向面22A,22Bと切欠き部24A,24Bの第1面25A,25Bとのなす角度のうち、バックヨーク側の角度θ1は90度よりも少し大きな角度となっている。また、第1面25A,25Bと第2面26A,26Bの2つの面のなす角度のうち、空間側の角度θ2は90度よりも少し大きな角度となっている。
一方、インシュレータの鍔部先端部47A,47Bに、切欠き部24A,24Bの第1面25A,25Bに対向して当接する周方向面49A,49Bと、切欠き部24A,24Bの第2面26A,26Bに対向して当接する径方向面50A,50Bを形成する。以下、鍔部先端部47A,47Bに新たに形成する周方向面49A,49Bを「第1面」、おなじく新たに形成する径方向面50A,50Bを「第2面」という。そして、鍔部先端部47A,47Bの第1面49A,49Bと先端部端面48A,48Bとのなす角度のうち、インシュレータ側の角度θ3は90度よりも少し小さな角度となっている。また、鍔部先端部47A,47Bの第1面49A,49Bと第2面50A,50Bの2つの面のなす角度のうち、インシュレータ側の角度θ4は90度よりも少し大きな角度となっている。4つの角度θ1,θ2,θ3,θ4の間には、θ1=θ2=θ4、θ1+θ3=180度の関係を有している。
第1実施形態では、3つの角度θ1,θ2,θ4を90度より少し大きな角度とし、角度θ3を90度より少し小さな角度とする場合であるが、本発明はこの場合に限定されるものでない。また、2つの切欠き部24,24Bと、2つの鍔部先端部47,47を、図5の断面図では線対称で形成している。線対称で形成することは好ましいが、必ずしも線対称で形成することは必要でない。
このように径方向外側に厚くした鍔部先端部47A,47Bの第1、第2の2つの面49A,49B,50A,50Bと、切欠き部24A,24Bの第1、第2の2つの面25A,25B,26A,26Bとをモータの組み立て製造時に当接させる。また、隣り合う鍔部46A,46Bの2つの先端部端面48A,48Bを当接させる。これによって、切欠き部24A,24Bにより形成される空間36に、径方向外側に向けて厚くした2つの鍔部先端部47A,47Bを隙間無く収容させる。こうして、径方向外側に厚くした鍔部先端部47A,47Bを空間36に隙間無く収容させることとしたのは、鍔部46A,46Bとバックヨーク22との間の空間36に、モータハウジング内に存在するコンタミ65が侵入しにくくするためである。
なお、径方向外側に向けて厚くした鍔部先端部47A,47Bが、鍔部46A,46Bとバックヨーク22との間の空間36の全てを埋めるのが好ましい。しかしながら、製作バラツキがあるので、切欠き部Bの第1面25A,25Bと、鍔部先端部の第1面49A,49Bとの間、あるいは切欠き部の第2面26A,26Bと、鍔部先端部の第2面50A,50Bとの間に多少の空間は生じるものと考えている。それでも、製作バラツキに伴う空間であるため、コンタミが侵入することは殆ど考えられない。
ここで、本実施形態の作用効果を説明する。
第1実施形態では、分割コア21と、インシュレータ41と、ステータコイル61と、を備え、ステータコイル61が巻回されている分割コア21を周方向に並べてステータ11を構成するようにした集中巻回転電機のステータ構造を前提とする。上記分割コア21(ステータコア)は、少なくとも1つのティース31を含ませて周方向に複数に分割されたものである。上記インシュレータ41は、分割コア21が有するバックヨーク22の内周面23A,23B(径方向のうちの一方の面)を被覆する鍔部46A,46Bと、分割コア21が有するティース31を被覆する胴部(44A,44B,44C,44D)とで構成される。上記ステータコイル61(コイル)は、インシュレータ41の上から巻回される。この場合に、第1実施形態では、バックヨーク22が、内周面23A,23B(径方向のうちの一方の面)のうち周方向の両端に切欠き部24A,24Bを備える。さらに、インシュレータ41の鍔部先端部47A,47Bが、鍔部46A,46Bの他の部分よりも径方向外側に向けて厚く形成され、この厚くした鍔部先端部47A,47Bが切欠き部24A,24Bによって形成される空間36を埋める。第1実施形態では、鍔部46A,46Bとバックヨーク22との間の空間36を、径方向に厚くした鍔部先端部47A,47Bで埋めるのであるから、モータハウジング内にコンタミ65が存在していても、コンタミ65が当該空間36に侵入することが困難となる。モータ性能を悪化させるほど大きな空間36を形成する切欠き部24A,24Bを設けなくとも、切欠き部24A,24Bによって形成される空間36へのコンタミ65の侵入を防ぐことができるのである。これによって、巻線占積率を向上させつつ、コンタミ65の存在に伴う短絡を防止することができる。
(第2実施形態)
図6は第2実施形態のステータ11の一部拡大断面図である。第1実施形態の図5と同一部分には同一の符号を付している。
なお、図6においても、図6の下方に示した断面図のB部を拡大して図6の上方に示している。この場合に、図5と同様に、図6の上方の拡大図では2つの部材同士あるいは2つの部位同士あるいは1つの部材と1つの部位を少しずらせた状態を示している。
第2実施形態は、第1実施形態を前提として、さらに、径方向外側に厚くした鍔部先端部47A,47Bにラビリンス構造を設けてやることで、コンタミ65が、鍔部46A,46Bとバックヨーク22との間の空間36に侵入することを確実に阻止するものである。ここで、2つの部材を当接させたとき、当接させた2つの面の間の空間が入り組んでいるような構造を、「ラビリンス構造」で定義する。
このため、第2実施形態では、径方向外側に厚くした2つの鍔部先端部47A,47Bを、断面が線対称の形状ではなく、非線対称の形状とする。すなわち、鍔部先端部47A,47Bに周方向に延びるくさび状部位71,75を設け、2つのくさび状部位71,75の当接面が周方向に生じるようにする。言い換えると、くさび状部位71,75を有する2つの鍔部先端部47A,47Bの当接面が、バックヨークの径方向面22A,22Bの延長上と交わるようにする。
まず一方(図6で右側)の鍔部先端部47Bを、周方向(図6で左方)の先端にゆくほど先細るくさび状部位71を形成する。すなわち、鍔部46Bの先端部端面48Bを第1実施形態よりも周方向(図5で左方)に延び出させる。また、鍔部先端部47Bの第2面50Bのうち径方向の内周側のみを残し、残した鍔部先端部47Bの第2面50Bと鍔部46Bの先端部端面48Bとを、周方向先端に向けて周方向に傾斜する面(以下、「斜面」という。)72でつなぐ。
他方(図6で左側)の鍔部先端部47Aについても周方向(図6で右側)の先端にゆくほど先細るくさび状部位75を形成する。すなわち、鍔部46Aの先端部端面48Aを径方向の外側(図6で上側)と内側(図6で下側)の2つの部分に大きく分ける。このうち、鍔部46Aの先端部端面48Aの径方向外側を周方向(図6で右方)に延び出させて、切欠き部24Bの第2面26Bに当接させると共に、切欠き部24Bの第1面25Bと当接する面76を新たに形成する。また、鍔部46Aの先端部端面48Aの径方向内側を周方向(図6で左方)に縮めて、一方の鍔部46Bの先端部端面48Bと当接させるようにする。また、鍔部46Aの先端部端面48Aのうちの径方向外側部分と、鍔部46Aの先端部端面48Aのうちの径方向内側部分とを、周方向先端に向けて周方向に傾斜する面(以下、「斜面」という。)77でつなぐ。この斜面77は上記の斜面72と対向して当接させる。
このように断面が非線対称なくさび状部位71,75を2つの鍔部先端部47A,47Bに形成することで、隣接する2つのくさび状部位71,75を当接させたとき、くさび状部位71,75で隣り合うインシュレータ同士が径方向に一箇所でラップする。言い換えると、周方向に隣接する2つのくさび状部位71,75の当接面は、2つの斜面72,77と先端部端面48A,48Bになる。第1実施形態では、2つの鍔部先端部47A,47Bの当接面が先端部端面48A,48Bの1つの面のみであったのが、第2実施形態では鍔部先端部47A,47Bの当接面が2つの面(折れ曲がった2つの面)に増加するわけである。
このように、鍔部先端部47A,47Bの当接面を2つに折り曲げて複雑にしたのは、物理的な絶縁距離を稼ぐという意味もあるが、本来の目的は次の点にある。すなわち、ラビリンス構造とすることによって、モータハウジング内に存在するコンタミ65が、鍔部46A,46Bとバックヨーク22との間の空間36に入り込みにくくすることにある。要は、折れ曲がった2つの面の隙間をぬって這うように入るコンタミ65はあり得ない。鍔部46A,46Bとバックヨーク22との間の空間36に、コンタミ65が予め存在しない限りは、インシュレータ41をティース31に被覆した直ぐ後から当該空間36にコンタミ65が侵入してくることはなくなる。第2実施形態では、空間36に、径方向外側に厚くした鍔部先端部47A,47Bを隙間無く収容させた上で、さらに2つの鍔部先端部47A,47Bを有効活用することで、コンタミ65が侵入することを確実に排除するようにしたのである。
一方、第2実施形態と相違して、先端部47A,47Bを含む鍔部46A,46Bの全体を先端部47A,47Bの肉厚と同じ肉厚で形成した上で、先端部47A,47Bにラビリンス構造を設ける、とする対策が考えられる。しかしながら、この対策では、巻線占積率を上げることができない。
第2実施形態では、周方向に隣り合う鍔部46A,46Bの2つの先端部47A,47Bが、径方向に一箇所でラップした状態で切欠き部24A,24Bによって形成される空間を埋めている。これによって、断面が線対称となるように鍔部46A,46Bの先端部端面48A,48Bを径方向に設け、2つの先端部端面48A,48Bを当接するだけの場合より、鍔部46A,46Bとバックヨーク22との間の空間36へのコンタミの侵入をさらに防止することができる。
第2実施形態では、2つの鍔部先端部47A,47Bが径方向に一箇所でラップする構造が、ラビリンス構造である。これによって、鍔部46A,46Bとバックヨーク22との間の空間36へのコンタミの侵入をさらに防止することができる。
第2実施形態では、2つの鍔部先端部47A,47Bが、周方向に延び出すくさび状部位71,75を備えている。そして、これら2つのくさび状部位71,75を径方向に当接させた状態の2つの鍔部先端部47A,47Bで切欠き部24A,24Bによって形成される空間36を埋めている。これによって、簡単な構成で、2つの鍔部先端部47A,47Bが径方向に一箇所でラップする構造とすることができる。
(第3実施形態)
図7は第3実施形態のステータ11の一部拡大断面図である。第1実施形態の図5と同一部分には同一の符号を付している。
なお、図7においても、図7の下方に示した断面図のB部を拡大して図7の上方に示している。この場合に、図5と同様に、図7の上方の拡大図では2つの部材同士あるいは2つの部位同士あるいは1つの部材と1つの部位を少しずらせた状態を示している。
第3実施形態も、第1実施形態を前提として、径方向外側に厚くした2つの鍔部先端部47A,47Bにラビリンス構造を設けてやることで、コンタミ65が、鍔部46A,46Bとバックヨーク22との間の空間36に侵入することを確実に阻止するものである。
ただし、ラビリンス構造が第2実施形態の場合と相違する。すなわち、一方(図7で右側)の鍔部46Bの先端部端面48Bに、径方向のほぼ中央から周方向(図7で左方)に飛び出す、断面が台形状の突起部81を設ける。他方(図7で左側)の鍔部46Aの先端部端面48Aには、周方向(図7で左方)に引っ込む凹部85を設ける。一方の鍔部46Bの先端部端面48Bに形成した突起部81を、他方の鍔部46Aの先端部端面48Aに形成した凹部85に嵌り込ませることで、2つの鍔部先端部47A,47Bが径方向に二箇所でラップする構造とするのである。
具体的には、突起部81を3つの面82,83,84で、凹部85を3つの面86,87,88で構成する。そして、モータの組み立て製造時に突起部81の面82と凹部85の面86を、突起部81の面83と凹部85の面87を、突起部81の面84と凹部85の面88を対向させ、当接する。このように断面が線対称な先端部47A,47Bの一部に、断面が非線対称な突起81と凹部85の組み合わせを形成するわけである。
こうして、径方向外側に厚くした鍔部先端部47A,47Bに突起81と凹部85の組み合わせを形成することで、隣接する2つの鍔部先端部47A,47Bを当接させたとき、鍔部先端部47A,47Bで隣り合うインシュレータ同士が径方向に二箇所でラップする。言い換えると、2つの鍔部先端部47A,47Bの当接面は、面82,86、面83,87、面84,88の3つの面と先端部端面48A,48Bになる。このうち、面82,86と面84,88の2つの面がバックヨークの径方向面22A,22Bの延長上と交わる当接面となる。第2実施形態ではバックヨークの径方向面22A,22Bの延長上と交わる当接面が斜面72,77のみ(1つの面のみ)であったのが、第3実施形態では径方向面22A,22Bの延長上と交わる当接面が面82,86と面84,88の2つに増加するわけである。
第3実施形態では、2つの鍔部先端部47A,47Bが、一方に周方向に延び出す突起部81を、他方にこの突起部81の嵌り込む凹部85を備えている。そして、突起部81を凹部81に嵌り込ませた状態の2つの鍔部先端部47A,47Bで切欠き部24A,24Bによって形成される空間36を埋めている。これによって、2つの鍔部先端部47A,47Bが径方向に一箇所でラップする場合と比較して、コンタミの侵入を確実に防ぐことができる。また、2つの鍔部先端部47A,47Bが径方向に一箇所でラップする場合と比較して、さらに絶縁距離が長くなり、絶縁信頼性を向上できる。また、2つの鍔部先端部が径方向に二箇所でラップすることで、切欠き部24A,24Bの第2面26A,26Bの径方向幅を短くしても、絶縁距離を確保できることとなる。
(第4実施形態)
第1、第2、第3の実施形態では、切欠き部24A,24Bを構成する第1、第2の2つの面について、第1面25A,25Bの周方向幅と第2面26A,26Bの径方向幅がほぼ同等となるようにしているが、この場合に限定されるものでない。例えば、切欠き部24A,24Bを構成する第1、第2の2つの面について、第2面26A,26Bの径方向幅を第1面25A,25Bの周方向幅より狭くすることが、モータの性能上好ましい。
これは、次の理由による。すなわち、ステータコアの外周側にある円環状のバックヨーク22は周方向磁路となり、磁束がバックヨーク22を周方向に流れる。この周方向に流れる磁束が主磁束であり、モータ性能と強く相関する。言い換えると、モータ性能への影響は径方向のほうが周方向より大きい。この場合に、バックヨーク22の内周側に切欠き部24A,24Bを設けることは、周方向磁路の断面積を減少させる、つまり、モータ性能への影響が大きいことを意味する。絶縁距離を確保するために切欠き部24A,24Bを設けるにせよ、モータ性能への影響を最低限にとどめるには、第2面26A,26Aの径方向幅を第1面25A,25Bの周方向幅より狭くすることが効果的であるためである。
このように、第4の実施形態では、切り欠き部24A,24Bが周方向の第1面25A,25Bと径方向の第2面26A,26Bとで構成される場合に、第2面26A,26Bの径方向幅を第1面25A,25Bの周方向幅より狭くしている。モータ性能への影響は径方向より周方向のほうが小さいため、第2面26A,26Bの径方向幅を第1面25A,25Bの周方向幅より短くすることで、絶縁距離を確保しつつ、モータ性能の悪化を抑えることができる。
(第5実施形態)
図8は第5実施形態のステータ11の一部拡大断面図、図9は図8のA部の拡大断面図である。第3実施形態の図7と同一部分には同一の符号を付している。
なお、図9においても、図9の下方に示した断面図のB部を拡大して図9の上方に示している。この場合に、図5と同様に、図9の上方の拡大図では2つの部材同士あるいは2つの部位同士あるいは1つの部材と1つの部位を少しずらせた状態を示している。
第3実施形態では、切欠き部24A,24Bが第1、第2の2つの面25A,25B,26A,26Bからなる1段の切欠き部であった。一方、第5実施形態は、図9にも示したように第1面25A,25B,第2面26A,26Bにさらに第3面27A,27B,第4面28A,28Bを加えて、合計で4つの面からなる2段の切欠き部24A,24Bとするものである。
このように切欠き部24A,24Bを2段とした理由を、図10〜図18を参照して説明すると、図10は第3、第5の実施形態のコイルセグメント13を周方向の一方向からみた側面図である。コイルセグメント13を周方向からみた側面図においては、第3実施形態と第5実施形態とで変わらない。
一方、切欠き部24A,24B及びインシュレータ41を構成する2つのピース42,43の形状が第3実施形態と第5実施形態とで異なる。この点を示すと、図11,図12,図13,図14は、図10が第5実施形態のコイルセグメントである場合における、図10のX1−X1線、X2−X2線、X3−X3線、X4−X4線の各断面図である。また、図15,図16,図17,図18は、図10が第3実施形態のコイルセグメントである場合における、図10のX1−X1線、X2−X2線、X3−X3線、X4−X4線の各断面図である。
なお、図15〜図18においても、2つの部材同士あるいは2つの部位同士あるいは1つの部材と1つの部位を少しずらせた状態を示している。
先に、第3実施形態のコイルセグメント13の場合から説明する。2つの鍔部先端部47A,47Bを径方向外側に厚く形成するにしても、インシュレータを分割した2つのピース42,43で構成する場合には、2つのピースの開放端側部位がラップする境界でピースとバックヨークとの間に空間を生じることを避けることができない。
この点について、図15〜図18を参照して具体的に説明する。図10のX2−X2線断面図を示す図16では第1ピース42,42の開放端側部位の外周に第2ピース43,43がラップしている。そして、第2ピース43,43の開放端側部位に形成された、径方向外側に向けて厚くした鍔部先端部47A,47Bが、鍔部46A,46Bとバックヨーク22との間の空間36’に隙間無く収容されている。図10のX3−X3線、X4−X4線の断面図を示す図17,図18では、第1ピース42,42と第2ピース43,43のいずれかに形成された、径方向外側に向けて厚くした鍔部先端部47A,47Bが、同じく空間36’に隙間無く収容されている。このように、X2−X2線、X3−X3線、X4−X4線の断面図では、ピース42,43とバックヨーク22との間に空間36’を生じていない。
ところが、図10のX1−X1線断面図を示す図15に限っては、第1ピース42,42の開放端側部位のみが存在する。第1ピース42,42の開放端側部位の鍔部先端部47A,47Bは径方向外側に向けて厚くなっておらず、鍔部46A,46Bの厚さと同じになっている。つまり、第1ピース42,42の開放端側部位の鍔部先端部47A,47Bが径方向外側に向けて厚くされていないために、第1ピース42,42とバックヨーク22との間に空間36’が生じている。
この理由は次の通りである。すなわち、X2−X2線断面とX1−X1線断面とはロータシャフト方向にわずかしか離れていない。しかしながら、X1−X1線断面は、2つのピース42,43の開放端側部位がラップする境界の断面であるので、当該断面である図15では第1ピース42の開放端側部位の外周をラップする第2ピース43の開放端側部位が存在していないためである。
さらに述べると、2つのピース42,43を開放端側部位同士でラップさせる場合に、理論的には2つのピース42,43の開放端側部位同士がラップする境界まで、第1ピース42の開放端側部位の外周を第2ピース43の開放端側部位でラップさせることができる。しかしながら、2つのピース42,43の製作バラツキを考えると、実際には第1ピース42の開放端側部位の外周側の全てを第2ピース43の開放端側部位でラップすることができない。2つのピース42,43の開放端側部位同士がラップする境界には、製作バラツキによって第1ピース42の開放端側部位を第2ピース43の開放端側部位でラップできない部分が図10にも示したようにロータシャフト方向のほんの短い範囲で生じ得るのである。
このように、2つのピース42,43の開放端側部位同士のラップ部のうちロータシャフト方向のほんの短い範囲である境界で、第1ピース42,42とバックヨーク22との間に空間36’が生じている。この空間36’は比較例のステータに生じていた空間36と同様のものであるが、次の点で両者は相違している。すなわち、比較例のステータに生じていた空間36はロータシャフト方向の全体に生じるものであたった。一方、図15に示した空間36’はロータシャフト方向のほんの短い範囲にしか生じない。
そこで、ロータシャフト方向のほんの短い範囲に空間36’が生じる場合の問題を考えると、この空間36’にコンタミが侵入してくることはまず考えられないので、コンタミの空間36’への侵入を考える必要はない。すると、残る問題は、空間36’が存在することによって最外周電線63A,63Bとバックヨーク22との間の絶縁距離が不足すると考えられる点である。すなわち、2つのピース42,43の開放端側部位をラップさせることでインシュレータ41を構成するときには、2つのピース42,43の開放端側部位がラップする境界において最外周電線63A,63Bとバックヨーク22との間の絶縁距離を保つ必要がある。
さて、電気絶縁物で隔離することなく、一の導電体上の点と当該導電体と空間的に離れた他の導電体上の点の2点の電気的絶縁を考えるときに、絶縁距離として空間距離と沿面距離の双方を確保する必要がある。ここで、空間距離とは、上記2つの導電体上の2点の間の空間を通る最短の距離のことである。一方、沿面距離とは、上記2つの導電体上の2点の間の、絶縁物の表面に沿った最短の距離のことである。
通常、空間距離というのは、瞬時で決まるものなので、沿面距離に比べて短い距離で良い。一方、沿面距離というのは、長い時間かけて絶縁不良が進行して生じるので、空間距離に比べて長めの距離をとらないといけない。このように、空間距離と沿面距離とでは求められる距離が異なっている。
上記絶縁距離の考え方を図15の場合に適用するため、まず図19の絶縁モデルを考える。図19は空間36’を含む切欠き部24A及び第1ピース42,42の拡大断面図である。図19はモデルであるので、説明の便宜上、各面は平面であるとする。
ここでも、断面の形状が線対称であるので、周方向の2箇所に最外周電線63A,63Bが生じる。電気絶縁を考える上で2つの最外周電線63A,63Bは同様の位置づけとなる。ここでは一方の最外周電線63Aの場合で代表させて述べるため、図19には2つの切欠き部24A,24Bのうちの一方(24A)だけを示している。
第3実施形態の場合から先に説明する。第3実施形態の切欠き部24Aを実線で示している。なお、平行でない2つの平面が交わるとき、交わった部分に直線(交線)が生じる。図19は断面図であるため、交線に含まれる点をA,B,D,E,G,H,I,J,K,L,Mで表示している。交線は当該点を通り紙面に直交する方向に生じる。
第1ピース42の先端部端面48Aの径方向外側端をE線とし、E線から最外周電線63Aに接する円筒C1を描き、最外周電線63Aとの接線をAとする。また、当該円筒C1に接するように、切欠き部24Aの第1面25Aを描き、第1面25Aとの接線をF線とする。この場合、第1面25Aとバックヨーク22の径方向面22Aのなす角度のうちバックヨーク側の角度θ1は90度より少し大きい角度とする。第1ピース42の先端部端面48Aの径方向内側端をD線とする。
このようにA,D,E,Fの4つの交線を定めたとき、電荷がA線からD線、E線を経由してF線まで最短距離で飛ぶと仮定すれば(白抜き矢印参照)、A−D−E−Fを結んだ合計の距離が空間距離となる。
一方、沿面距離については、第1ピース42(絶縁物)の表面上の線からの空間距離がある距離を超えると、その線から電荷がバックヨーク22に向けて最短距離で飛ぶこととなる。この距離は予め決まっている。この距離を所定値Lsurとする。
最外周電線63Aと第1ピース42の径方向内側面42aとの接線をB線とする。円筒C1と第1ピース42の径方向外側面42bとの交線をG線とし、G線を中心として半径を所定値Lsurとする円筒C2を描く。当該円筒C2と交わるように、切欠き部24Aの第2面26Aを描き、円筒C2との交線をH線とする。この場合、第1面25Aと第2面26Aのなす角度のうち空間側の角度θ2はθ1に等しいとする。第1面25Aと第2面26Aの交線をI線とする。
このようにB,H,Iの3つの交線を定めたとき、電荷はB線から第1ピース42の径方向内側面42aに沿ってD線まで流れ、D線からはE線へと流れ、さらにE線からは今度は第1ピース42の径方向外側面42bに沿ってG線に到達する。そして、G線からH線へと電荷が最短距離で飛ぶと仮定すれば(ドット入り矢印参照)、B−D−E−G−Hを結んだ合計の距離が沿面距離となる。
第3実施形態のように切欠き部24Aが1段の場合、径方向外側への切欠きが深く、第1ピース42とバックヨーク22との間に大きな空間36’が生じている。大きな空間36’が問題となるのは、径方向外側への切欠きが深いほど周方向磁路の断面積が狭くなるためである。切欠き部24Aが形成される部位は、ちょうど、バックヨークの周方向磁路の一部に当たっている。モータの発生するトルクはバックヨーク22の周方向磁路の断面積と強い相関があり、周方向磁路の断面積を切欠き部24Aによって狭くしたのではモータの発生するトルクが低下する。従って、第3実施形態と同じに空間距離と沿面距離の両方を満たしつつ、周方向磁路の断面積を広くする必要がある。
沿面距離は第1ピース42の径方向内側面42aや径方向外側面42bに沿う距離であるので、径方向には必ずしも長く必要でなく、周方向に長いような距離が必要になる。一方、空間距離は、沿面距離と相違して、周方向には必要なく、径方向に長い距離が必要になる。このように、径方向に必要な絶縁距離は空間距離≧沿面距離の関係にあり、周方向に必要な絶縁距離は沿面距離≧空間距離の関係にある。
そこで、第5実施形態では、切欠き部24Aに新たに2つの面27A,28Aを追加して切欠き部24Aを2段の階段状にする。第5実施形態の場合の切欠き部24Aを図19に破線で重ねて示す。第5実施形態で新たに追加される径方向面27Aを「第3面」、新たに追加される周方向面28Aを「第4面」とする。第5実施形態では、第1面25A、第2面26Aに、第3面27Aと第4面28Aを追加することで、切欠き部24Aを2段の階段状にするのである。
具体的には、図19に示したように、第2面26Aから第1面25Aと平行でかつ第2の円筒C2に接するように第4面28Aをとり、第4面28Aと第2の円筒C2との接線をJ線とする。また、第4面28Aと第2面26Aとの交線をK線とする。J線から第2面26Aと平行な面をとり、第3面27Aとする。第3面27Aと第1面25Aとが交わる線をL線とする。第1面25Aとバックヨークの径方向面22Aの交線をM線とする。
このように、J,K,L,Mの交線をとったとき、M−L−J−K−Hを結んでできる4つの面25A,26A,27A,28Aで第5実施形態の切欠き部24Aが構成される。これによって、一方の切欠き部24Aについて、L−J−K−Iの交線で囲まれる断面積の分だけ、周方向磁路の断面積を、1段の切欠き部を設ける第3実施形態の場合より増やすことができる。1段の切欠き部で空間距離と沿面距離の2つを満足しようとすると、径方向外側に向けて空間36’が大きくなり勝ちである。そこで、切欠き部24A,24Bを2段の階段状にして、それぞれ空間距離と沿面距離に必要な距離を設けることで、バックヨーク22の内周面23A,23Bを不必要に切り欠くことがないようにするのである。
図19ではバックヨークの径方向面22Aと第1面25Aとがなす角度のうちバックヨーク側の角度θ1、第1面25Aと第2面26Aがなす角度のうち空間側の角度θ2は90度より少し大きい角度であり、かつθ1=θ2である場合で説明した。第5実施形態は、この場合に限定されるものでない。
図19では、周方向に隣り合う2つの切欠き部24A,24Bのうち一方の切欠き部24Aについてだけ説明した。周方向に隣り合う2つの切欠き部24A,24Bの全体を示すと、図8,図9のようになる。すなわち、第5実施形態では、第3面27A,27Bと第4面28A,28Bを追加した、2段の階段状の切欠き部24A,24Bを、バックヨークの22内周面23A,23Bの周方向の両端に形成する。
かつ、2段の階段状の切欠き部24A,24Bを、2つのピース42,43の開放端側部位と当接する部位だけでなく、図11〜図14のように、ロータシャフト方向の全体にわたって形成する。ここで、2段の階段状の切欠き部24A,24Bをロータシャフト方向の全体にわたって形成することとした理由は次の通りである。すなわち、基本的には、空間36’が生じる部位、つまり2つのピース42,43の開放端側部位と当接する部位だけに2段の階段状の切欠き部24A,24Bを形成すればよい。しかしながら、このようにロータシャフト方向の一部だけに2段の階段状の切欠き部24A,24Bを形成するのでは、製造上の工数が増加する。そこで、2段の階段状の切欠き部24A,24Bをロータシャフト方向の全体にわたって形成することで、工数が増加しないようにするためである。従って、工数が増加してもかまわないのであれば、2段の階段状の切欠き部24A,24Bを2つのピース42,43の開放端側部位と当接する部位だけに形成することとしてよい。
次に、第3面27A,27Bと第4面28A,28Bを切欠き部24A,24Bに追加したことに対応して、インシュレータ41の鍔部先端部47A,47Bにも、第3面27A,27Bと対向して当接する2つの面を形成する。すなわち、図9にも示したように、切欠き部24A,24Bの第3面27A,27Bと対向して当接する径方向面51A,51Bと、第4面28A,28Bと対向する周方向面52A,52Bを、インシュレータ41の鍔部先端部47A,47Bに追加して形成する。以下、鍔部先端部47A,47Bに新たに形成する径方向面51A,51Bを「第3面」、おなじく新たに形成する周方向面52A,52Bを「第4面」という。モータの製作時には切欠き部の第3面27A,27Bと鍔部先端部47A,47Bの第3面51A,51Bを、切欠き部の第4面28A,28Bと鍔部先端部47A,47Bの第4面52A,52Bを当接させることで、第5実施形態でも、コンタミの侵入を防止する。
ここで、切欠き部24,24に追加した第3、第4の2つの面27A,27B,28A,28Bは、第1、第2の2つの面25A,25B,26A,26Bの途中に形成される。このため、4つの面を一連の面の連なりとみれば、一方の切欠き部24Aについて25A,27A,28A,26Aと、また他方の切欠き部24Bについて25B,27B,28B,26Bと連なっている。そこで、この連なりの順序に従い、第5実施形態では、面25A,25Bを第1面、面27A,27Bを第2面、面28A,28Bを第3面、面26A,26Bを第4面として取り直す。これより、切欠き部は、周方向に延びる第1面25A,25Bと、この第1面から径方向に延びる第2面27A,27Bと、この第2面から周方向に延びる第3面28A,28Bと、この第3面から径方向に延びる第4面26A,26Bとを有する2段の階段状となる。
同様に、鍔部先端部47A,47Bに追加した第3、第4の2つの面51A,51B,52A,52Bは、第1、第2の2つの面49A,49B,50A,50Bの途中に形成される。このため、4つの面を一連の面の連なりとみれば、一方の鍔部先端部47Aについて49A,51A,52A,50Aと、また他方の鍔部先端部47Bについて49B,51B,52B,50Bと連なっている。そこで、この連なりの順序に従い、第5実施形態では、面49A,49Bを第1面、面51A,51Bを第2面、面52A,52Bを第3面、面50A,50Bを第4面として取り直す。これより、鍔部先端部は、周方向に延びる第1面49A,49Bと、この第1面から径方向に延びる第2面51A,51Bと、この第2面から周方向に延びる第3面52A,52Bと、この第3面から径方向に延びる第4面50A,50Bとを有するとなる。
第5実施形態では、2つに分割されたピース42,43の開放端側部位をラップさせることで1つのインシュレータ41が構成される。周方向に隣り合う2つの切欠き部24A,24Bは、周方向に延びる第1面25A,25Bと、この第1面から径方向に延びる第2面27A,27Bと、この第2面から周方向に延びる第3面28A,28Bと、この第3面から径方向に延びる第4面26A,26Bとを有する2段の階段状である。2つの鍔部先端部24A,24Bは、前記4つの面に対向し、周方向に延びる第1面49A,49Bと、この第1面から径方向に延びる第2面51A,51Bと、この第2面から周方向に延びる第3面52A,52Bと、この第3面から径方向に延びる第4面50A,50Bとを有する2段の階段状である。鍔部先端部の第1,第2,第3,第4の4つの面と切欠き部の第1,第2,第3,第4の4つの面とを当接させた状態の2つの鍔部先端部47A,47Bで切欠き部24A,24Bによって形成される空間36’を埋めている。2つのピースに分割されたインシュレータの場合、2つのピース42,43の開放端側部位がラップする境界では第2ピース42とバックヨーク22との間に空間36’を生じるため、絶縁距離として空間距離の他に沿面距離を確保する必要がある。この場合に、径方向に必要な絶縁距離は空間距離≧沿面距離の関係にあり、周方向に必要な絶縁距離は沿面距離≧空間距離の関係にある。第5実施形態では、切欠き部24A,24Bを2段の階段状とし、この階段状の切欠き部24A,24Bと当接する鍔部先端部47A,47Bの面も2段の階段状とすることで、空間距離及び沿面距離としてそれぞれに必要な分を確保しつつ、周方向磁路の断面積の減少を抑制した。これによって、2つのピース42,43の開放端側部位同士がラップする境界に空間36’が生じる場合で合っても、不必要に空間36’を大きくしてモータ性能を悪化させることなく絶縁距離を確保できる。なお、ピース42,43の開放端側部位同士がラップする境界に生じる空間36’は、そのロータシャフト方向の両側を、径方向外側に向けて厚くした鍔部先端部47A,47Bによって挟まれているため、コンタミが侵入してくることは無い。
第5実施形態との比較のため、次の比較例2を考える。すなわち、第5実施形態では先端部47A,47Bを第3実施形態と同じに、径方向外側に向けて厚くしている。この先端部47A,47Bの径方向厚さと同じ厚さで径方向外側部位46A,46Bの全体を形成すると共に、バックヨーク22の内周面23A,23Bに切欠き部24A,24Bを形成しないものを比較例2とする。この比較例2と第5実施形態とで巻線占積率がどうなるかを比較してみた。この結果、比較例2に対して、第5実施形態では巻線占積率が約1割向上することを確認している。
また、第5実施形態では、切欠き部を2段の階段状としない場合より低車速側の最大トルクについてのトルク低下が0.04%以下に抑えられていることを確認している。
(第6実施形態)
図20は第6施形態のステータ11の一部拡大断面図で、第5実施形態の図9と置き換わるものである。第5実施形態の図9と同一部分には同一の符号を付している。
なお、図20においても、図20の下方に示した断面図のB部を拡大して図20の上方に示している。この場合に、図5と同様に、図20の上方の拡大図では2つの部材同士あるいは2つの部位同士あるいは1つの部材と1つの部位を少しずらせた状態を示している。
第1〜第5の実施形態では、絶縁皮膜を除いた断面が略円形の電線62をティース31に巻回してステータコイル61を形成する場合を前提としていた。一方、第6実施形態は、絶縁皮膜を除いた断面が略長方形の平角線(電線)91をティース31に巻回してステータコイル61を形成する場合を前提とするものである。平角線91をステータコイル61に用いるときには、絶縁皮膜を除いた断面が略円形の電線62をティース31に巻回してステータコイル61を形成する場合より巻線占積率を上げることができる。
平角線91を用いる場合であっても、第5実施形態と同様の構成とすることができる。すなわち、第6実施形態でも、鍔部46A,46Bとバックヨーク22との間の空間36を埋めるように、インシュレータの2つの鍔部先端部47A,47Bを径方向外側に向けて厚くする。そして、2つの鍔部46A,46Bの先端部端面48A,48Bに突起部81と凹部85とで構成されるラビリンス構造を設ける。また、第5実施形態と同様に、第1面25A,25B,第2面27A,27B,第3面28A,28B,第4面26A,26Bの4つの面からなる2段の階段状の切欠き部24A,24Bとする。さらに、インシュレータ41の鍔部先端部47A,47Bにも、切欠き部の第2、第3の面27A,27B,28A,28Bと対向して当接する2つの面を形成する。すなわち、切欠き部24A,24Bの第2面27A,27Bと対向して当接する径方向の第2面51A,51Bと、第3面28A,28Bと対向する周方向の第3面52A,52Bを、インシュレータ41の鍔部先端部47A,47Bに追加して形成する。モータの製作時には切欠き部24A,22Bの第1〜第4の4つの面と鍔部先端部47A,47Bの第1〜第4の4つの面を当接させた状態の2つの鍔部先端部で切欠き部によって形成される空間を埋めることで、第6実施形態でも、コンタミの侵入を防止する。
平角線91をステータコイルに用いる第6実施形態でも、第5実施形態と同様の作用効果が得られる。
第1〜第6の実施形態では、分割コア21のティース31に対して、2つのピース42,43の開放端側部位をラップさせることで、1つのインシュレータ41を構成するものを前提とした。第1〜第6実施形態の前提となるインシュレータ41の構成はこの場合に限られない。インシュレータを分割することなく、単体のインシュレータで分割コア21のティース31を被覆する構成としたものを前提とする場合であってよい。
例えば、分割コア21に対してインシュレータ101をモールド成形した(コア一体モールドインシュレータ)のコイルセグメント13を図21に示すと、図21は当該コイルセグメント13の斜視図である。ただし、図21ではステータコイルを形成する前の状態を示している。第1実施形態の図2と同一部分には同一の符号を付している。なお、図21は、前述した比較例のステータ11のさらに前提となる周知のものであるので、バックヨーク22の内周面に切欠き部すら設けられていない。
単体のインシュレータで構成する方法はこの場合に限らず、単体のインシュレータ101を分割コア21のティース31に内径側から嵌め込む構成の場合であってよい。
このように、単体のインシュレータ101で分割コア21のティース31を被覆する構成のコイルセグメント13であっても、本発明の第1〜第4、第6の実施形態を適用することができる。
実施形態では、ロータが筒状のステータの内部で回動する、いわゆるインナーロータ型の場合であるが、ロータがステータの外周側で回動する、いわゆるアウターロータ型であってもよい。回転同期モータか誘導モータかを問わずに本発明の適用がある。