自動車や自動二輪車、農業機械、船舶等のレシプロエンジンには、ピストンの往復運動を回転運動に変換して動力を取り出すために、クランク軸が不可欠である。クランク軸は、型鍛造または鋳造によって製造できる。特に、高強度と高剛性がクランク軸に要求される場合、それらの特性に優れることから、型鍛造によって製造されたクランク軸(以下、「鍛造クランク軸」ともいう)が多用される。
一般に、鍛造クランク軸は、ビレットを原材料とする。そのビレットの横断面は、形状が丸形または角形であり、断面積が全長にわたって一定である。鍛造クランク軸の製造工程では、予備成形工程、型鍛造工程、バリ抜き工程および整形工程がその順に設けられる。通常、予備成形工程は、ロール成形と曲げ打ちの各工程を含み、型鍛造工程は、荒打ちと仕上げ打ちの各工程を含む。
図1A〜図1Fは、従来の一般的な鍛造クランク軸の製造工程を説明するための模式図である。図1Aはビレット、図1Bはロール荒地、図1Cは曲げ荒地、図1Dは荒鍛造材、図1Eは仕上げ鍛造材、および、図1Fは鍛造クランク軸をそれぞれ示す。
図1Fに例示するクランク軸1は、5つのジャーナル部J1〜J5、4つのピン部P1〜P4、フロント部Fr、フランジ部Fl、および、8枚のクランクアーム部(以下、単に「アーム部」ともいう)A1〜A8から構成される。アーム部A1〜A8は、ジャーナル部J1〜J5とピン部P1〜P4をそれぞれつなぐ。また、クランク軸1は、8枚の全てのアーム部A1〜A8にカウンターウエイト部(以下、単に「ウエイト部」ともいう)W1〜W8を有する。このような図1Fに示すクランク軸1は、4気筒エンジンに搭載される。
以下では、ジャーナル部J1〜J5、ピン部P1〜P4、アーム部A1〜A8およびウエイト部W1〜W8のそれぞれを総称するとき、その符号は、ジャーナル部で「J」、ピン部で「P」、アーム部で「A」、ウエイト部で「W」とも記す。
図1A〜図1Fに示す製造方法では、以下のようにして鍛造クランク軸1が製造される。先ず、図1Aに示すような所定の長さのビレット2を加熱炉(例えば誘導加熱炉やガス雰囲気加熱炉)によって加熱した後、ロール成形を行う。ロール成形工程では、例えば孔型ロールを用いてビレット2を圧延して絞ることにより、その体積を長手方向に配分し、中間素材であるロール荒地3を成形する(図1B参照)。次に、曲げ打ち工程では、ロール荒地3を長手方向と直角な方向から部分的に圧下する。これにより、ロール荒地3の体積を配分し、更なる中間素材である曲げ荒地4を成形する(図1C参照)。
続いて、荒打ち工程では、曲げ荒地4を上下に一対の金型を用いてプレス鍛造することにより、荒鍛造材5を得る(図1D参照)。その荒鍛造材5には、クランク軸(最終製品)のおおよその形状が成形されている。さらに、仕上げ打ち工程では、荒鍛造材5を上下に一対の金型を用いてプレス鍛造することにより、仕上げ鍛造材6を得る(図1E参照)。その仕上げ鍛造材6には、最終製品のクランク軸と合致する形状が成形されている。これら荒打ちおよび仕上げ打ちのとき、互いに対向する金型の型割面の間から、余材がバリとして流出する。このため、荒鍛造材5および仕上げ鍛造材6は、いずれも、成形されたクランク軸の周囲にバリBが大きく付いている。
バリ抜き工程では、例えばバリ付きの仕上げ鍛造材6を一対の金型によって挟んで保持した状態で、刃物型によってバリBを打ち抜き除去する。これにより、バリ無し鍛造材が得られ、そのバリ無し鍛造材は、図1Fに示す鍛造クランク軸1とほぼ同じ形状である。
整形工程では、バリ無し鍛造材の要所を上下から金型で僅かに圧下し、バリ無し鍛造材を最終製品の寸法形状に矯正する。ここで、バリ無し鍛造材の要所は、例えば、ジャーナル部J、ピン部P、フロント部Fr、フランジ部Flなどといった軸部、さらにはアーム部Aおよびウエイト部Wが該当する。こうして、鍛造クランク軸1が製造される。
図1A〜図1Fに示す製造工程は、図1Fに示すような4気筒−8枚カウンターウエイトのクランク軸に限らず、様々なクランク軸に適用できる。例えば、4気筒−4枚カウンターウエイトのクランク軸にも適用できる。4気筒−4枚カウンターウエイトのクランク軸では、8枚のアーム部Aのうちで一部のアーム部にウエイト部Wが一体で設けられる。その他に、3気筒エンジン、直列6気筒エンジン、V型6気筒エンジン、8気筒エンジン等に搭載されるクランク軸であっても、製造工程は同様である。なお、ピン部の配置角度の調整が必要な場合は、バリ抜き工程の後に、捩り工程が追加される。
近年、特に自動車用のレシプロエンジンには、燃費の向上のために軽量化が求められている。このため、レシプロエンジンに搭載されるクランク軸にも、軽量化の要求が著しくなっている。鍛造クランク軸の軽量化に対し、扇形状のウエイト部のうちで外周面の周辺部を厚肉化することが有効である。外周面の周辺部の厚肉化に関する従来技術として特許文献1および2がある。
図2Aおよび図2Bは、特許文献1に記載されるクランク軸のウエイト部の形状を示す模式図であり、図2Aはジャーナル部側表面を、図2Bは側面をそれぞれ示す。図2Aおよび図2Bでは、クランク軸のうちで、1つのウエイト部Wと、そのウエイト部Wと一体であるアーム部Aを抽出して示しており、残りのクランク軸の形状を省略する。なお、図2Bは、図2Aの破線矢印で示す方向からの投影図である。
図2Aに示すように、ウエイト部Wは、例えば、ジャーナル部Jの軸心(回転中心)を中心とする扇形状であり、ジャーナル部Jの軸心とピン部Pの軸心とを含む面C(以下、「ウエイト部中心面」ともいう)の両側にそれぞれ所定の角度で広がる。
特許文献1では、ウエイト部Wの外周面Wa周辺に凸部Wzを設けることが提案されており、その凸部Wzは、ウエイト部Wのジャーナル部J側表面からウエイト部Wの厚さ方向(クランク軸の軸方向)に突出する。このような凸部Wzを設けることによってウエイト部Wの外周面Waの周辺部を厚肉化すれば、その外周面Waの周辺部はジャーナル部Jの軸心(回転中心)と距離があることから、ウエイト部Wの重心半径が大きくなる。これに応じ、ウエイト部Wのうちでジャーナル部Jの周辺部を薄肉化できる。このため、ウエイト部Wの質量を低減でき、その結果、鍛造クランク軸を軽量化できる。
ウエイト部の凸部Wzは、厚みやピン部の偏心方向に沿う長さが、圧下方向(ウエイト部の幅方向、図2Aのハッチングを施した矢印参照)で一定、または、ウエイト部中心面Cから遠ざかるのに従って小さくなる。これは、型鍛造工程で型抜き勾配が逆勾配となるのを防止し、鍛造材を金型から取り出し可能とするためである。
特許文献2では、クランク軸を、ウエイト部以外の部分が一体成形された本体と、本体と別個に成形されたウエイト部と、本体とウエイト部とを連結する連結部材とで構成することが提案されている。このような特許文献2に提案されるクランク軸によれば、ウエイト部を別個に成形するので、ウエイト部の設計自由度を向上できるとともに軽量化を図ることができるとしている。
本発明が対象とする鍛造クランク軸は、回転中心となるジャーナル部と、そのジャーナル部に対して偏心したピン部と、ジャーナル部とピン部をつなぐアーム部と、アーム部と一体に設けられるウエイト部とを有する。そのウエイト部は、全部のアーム部に設けてもよく、一部のアーム部に設けてもよい。
このような鍛造クランク軸を対象とする本発明は、例えば、第1〜第3の実施形態を採用できる。第1〜3実施形態では、いずれも、ウエイト部の外周面の縁部を厚肉化するが、その厚肉化に伴って外周面の縁部が張り出す方向(側)が異なる。以下に、第1〜第3実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、第2実施形態および第3実施形態の説明では、第1実施形態と共通する部分の説明を適宜省略する。
1.第1実施形態
[クランク軸の形状]
図3Aおよび図3Bは、第1実施形態が対象とするクランク軸のウエイト部の形状を示す模式図であり、図3Aはピン部側表面を示す図、図3BはI−I断面図(ウエイト部中心面の断面図)である。図3Aおよび図3Bでは、折り曲げ後(最終製品)のクランク軸のうちで、扇形状のウエイト部Wと、そのウエイト部Wと一体であるアーム部Aを抽出して示しており、残りのクランク軸の形状を省略する。
図3Aおよび図3Bに示すように、第1実施形態が対象とするクランク軸のウエイト部Wは、外周面の縁部Wbが、ジャーナル部Jの周辺部と比べ、厚さ方向に沿ってピン部P側に張り出し、厚肉である。ウエイト部Wの外周面の縁部Wbは、図3Aに示すように、ウエイト部Wの外周面Waに沿う形状であり、外周面Waから内周側(ジャーナル部J側)に所定の長さで広がる。
このような第1実施形態が対象とするクランク軸は、ウエイト部Wの外周面の縁部Wbが厚肉化され、その外周面の縁部Wbは、ジャーナル部Jの軸心(回転中心)と距離がある。また、外周面の縁部Wbは、ウエイト部Wの外周面Waに沿う形状であり、前述の特許文献1に記載のクランク軸のように、外周面の縁部Wbの内周側領域Wcを含まない。すなわち、内周側領域Wcは、厚肉化しない。これにより、ウエイト部Wの重心半径が大きくなるので、ウエイト部Wの他の部位、例えば、ジャーナル部Jの周辺部や、外周面の縁部Wbの内周側領域Wcを薄肉化できる。このため、ウエイト部の質量を低減でき、その結果、鍛造クランク軸を軽量化できる。
[折り曲げ前の形状]
図4Aおよび図4Bは、第1実施形態における折り曲げ前のウエイト部の形状を示す模式図であり、図4Aはピン部側表面を示す図、図4BはII−II断面図である。図4Aおよび4Bでは、クランク軸の形状のうちで1つのウエイト部Wと、そのウエイト部Wと一体であるアーム部Aとを抽出して示しており、残りのクランク軸の形状を省略する。
図4Aおよび図4Bに示すように、折り曲げ前のウエイト部Wは、折り曲げ後のウエイト部と比べ、外周面の縁部Wbのピン部P側表面の形状が異なり、加えて余肉部Eaを有する点でも異なる。すなわち、折り曲げ前のウエイト部Wは、外周面の縁部Wbのピン部P側表面の形状、および、余肉部Eaを除けば、折り曲げ後のウエイト部の形状と合致する。外周面の縁部Wbにおけるピン部P側表面の形状が異なるので、折り曲げ前の縁部Wbの厚さは、折り曲げ後の縁部Wbの厚さより薄い。
余肉部Eaは、ウエイト部Wの外周面Waから扇形状の径方向に沿って突出する。また、同図に示す余肉部Eaは、ウエイト部の厚さ方向の位置が、外周面Waのうち、ピン部P側表面寄りに配置される。すなわち、余肉部Eaは、ウエイト部の折り曲げられる側の表面寄りに配置される。
本発明において、余肉部Eaは、バリとして流出する部位でなく、折り曲げ後のウエイト部の外周面Wa位置より突出している部位を意味する。
[製造方法]
第1実施形態は、型鍛造工程と、バリ抜き工程と、折り曲げ工程とをその順で含む。型鍛造工程の前工程として、例えば、予備成形工程を設けることができる。また、折り曲げ工程の後工程として、例えば、整形工程を設けることができる。また、整形工程において、折り曲げ工程を実施することもできる。なお、ピン部の配置角度の調整が必要な場合は、バリ抜き工程と整形工程の間に、捩り工程が追加される。これらの工程は、いずれも、熱間で一連に行われる。
予備成形工程は、例えば、ロール成形工程と曲げ打ち工程とで構成できる。ロール成形工程および曲げ打ち工程では、ビレット(原材料)の体積を配分し、曲げ荒地を成形する。
型鍛造工程では、クランク軸の形状が成形されたバリ付きの鍛造材を得る。そのバリ付きの鍛造材には、前記図4Aおよび図4Bに示すようなジャーナル部J、ピン部Pおよびアーム部Aの形状が成形されるとともに、余肉部Eaが成形される。このようなバリ付きの鍛造材を得る型鍛造工程は、荒打ち工程および仕上げ打ち工程をその順で設けることによって構成できる。
型鍛造工程の型抜き勾配は、ウエイト部Wの外周面の縁部Wbおよび余肉部Eaに対応する部位のいずれでも、逆勾配にならない。このため、荒打ちと仕上げ打ちのいずれの型鍛造も、支障なく行え、バリ付きの鍛造材を得ることができる。
バリ抜き工程では、例えば、バリ付きの鍛造材を一対の金型によって挟んで保持した状態で、その鍛造材からバリを除去する。これにより、バリ無し鍛造材を得ることができる。
折り曲げ工程では、第1金型をウエイト部の外周面側からジャーナル部側に向けて移動させることにより、第1金型を余肉部に押し当てる。これにより、余肉部をウエイト部のピン部側表面に向けて折り曲げ、ウエイト部の外周面の縁部で厚みを増加させる。折り曲げ工程の加工フロー例については、後述する。
整形工程では、バリ無し鍛造材を一対の金型で圧下し、最終製品の寸法形状に矯正する。なお、ピン部の配置角度の調整が必要な場合は、捩り工程でピン部の配置角度を調整する。このような工程により、本実施形態の鍛造クランク軸の製造方法は、鍛造クランク軸を得る。
[折り曲げ工程]
図5A〜図6Bは、折り曲げ工程の加工フロー例を示す模式図である。そのうちの図5Aおよび図5Bは、ウエイト部のピン部側表面を示し、図5Aは第2金型の押し当て時、図5Bは折り曲げ終了時を示す。図5Aおよび図5Bには、バリ無し鍛造材40と、余肉部Eaに押し当てられる第1金型10と、上下で一対の保持用金型30とを示し、図面の理解を容易にするため、ウエイト部Wのピン部P側表面を保持する第2金型21を省略する。
図6Aおよび図6Bは、ウエイト部中心面におけるウエイト部の断面図であり、図6Aは第2金型の押し当て時、図6Bは折り曲げ終了時を示す。同図には、バリ無し鍛造材40と、第1金型11と、ウエイト部Wのピン部P側表面を保持する第2金型21とを示し、図面の理解を容易にするため、上下で一対の保持用金型30を省略する。
折り曲げ工程では、余肉部Eaを折り曲げるために第1金型11を用いる。第1金型11には、型彫刻部が彫り込まれている。その型彫刻部には、クランク軸の最終製品形状のうちの一部が反映されている。具体的には、余肉部Eaを折り曲げるため、ウエイト部Wの外周面Waの形状が型彫刻部に反映されている。また、型彫刻部のうちで余肉部Eaの折り曲げに寄与する部位は、余肉部Eaをピン部P側表面に向けて案内するように傾斜している。
このような第1金型11は、ウエイト部Wの外周面Wa側からジャーナル部J側に向けて進退移動が可能である。その第1金型11の進退移動は、例えば、第1金型11に油圧シリンダを連結することによって実現できる。この場合、油圧シリンダの作動に伴い、第1金型11をピン部Pの偏心方向に沿って移動させればよい(図5Aの太線矢印参照)。また、第1金型11は、ウエイト部Wの外周面Waに沿うようなU字状としてもよい。
同図に示す加工フロー例では、折り曲げの際にバリ無し鍛造材40を上下で一対の保持用金型30で保持する。その保持用金型30は、上型31と、下型32とで構成される。上型31および下型32には、型彫刻部が彫り込まれている。その型彫刻部には、クランク軸の形状の一部が反映されている。例えば、ピン部Pやジャーナル部J、アーム部Aの形状が型彫刻部に反映されている。また、ウエイト部Wのうちでジャーナル部J周辺の形状を型彫刻部に反映してもよい。この保持用金型30は、第1金型11による余肉部の折り曲げを可能とするため、ウエイト部Wの外周面Waに対応する部位が開放されている。
また、保持用金型30の型彫刻部には、ウエイト部Wのピン部P側表面のうちで外周面の縁部の内周側領域Wcの形状が反映されることなく、外周面の縁部Wbの内周側領域Wcに対応する部位が開放されている。これは、型抜き勾配が逆勾配となるのを防止するためである。その開放部には、図6Aおよび図6Bに示すような第2金型21を配置してもよい。第2金型21には、型彫刻部が彫り込まれており、その型彫刻部には、ウエイト部Wのピン部P側表面のうちで内周側領域Wcの形状が反映されている。
第2金型21は、第1金型11および保持用金型30から独立し、ウエイト部Wのピン部P側表面に対して接触したり離間したりするように進退移動が可能である。第2金型21の進退移動は、第2金型21に連結された油圧シリンダ等によって実行される。
このような第1金型11、第2金型21および保持用金型30を用いる折り曲げ工程の加工フロー例を説明する。先ず、保持用金型30の上型31と下型32とを離間させ、その状態でバリ除去後の鍛造材40を上型31と下型32の間に配置する。この状態で、保持用金型30の上型31と下型32とを近接するように移動させ、より具体的には、上型31を下死点まで下降させる。これにより、バリ無し鍛造材40を上型31と下型32とで挟み込んで保持する。
次いで、第2金型21を用いる場合、第2金型21を進出させ、図6Aに示すように、ウエイト部Wのピン部P側表面に押し付ける。これにより、ウエイト部Wのピン部P側表面を第2金型21で保持する。ただし、ウエイト部Wのピン部P側表面のうちで外周面の縁部Wbの領域については、第2金型21を押し当てない(図6A参照)。その領域に金型を押し当てて保持すると、余肉部Eaの折り曲げによってウエイト部の外周面の縁部Wbで厚みを増加させることが不可能となるからである。
続いて、図5Bおよび図6Bに示すように、第1金型11をウエイト部Wの外周面Wa側からジャーナル部J側に向けて移動(進出)させる。これにより、余肉部Eaを第1金型11の型彫刻部に沿ってウエイト部Wのピン部P側表面に向けて折り曲げ、ピン部P側に張り出させる。その結果、ウエイト部の外周面の縁部Wbで厚みが増加する。余肉部Eaは第1金型11によって折り曲げられるので、第1金型11の進出に要する力は、型鍛造やポンチの押し込みによる穴開けと比べ、小さくなる。
続いて、第1金型11を後退させて退避させる。第2金型21を用いる場合、第2金型21も後退させて退避させる。そして、保持用金型30の上型31と下型32とを離間させ、より具体的には、上型31を上死点まで上昇させる。上型31と下型32とを離間させた状態で、折り曲げ済みのバリ無し鍛造材を搬出する。
このような第1実施形態は、ウエイト部Wの外周面の縁部Wbが厚肉化されたクランク軸を得ることができる。これにより、ウエイト部の重心半径が大きくなるので、ウエイト部Wの他の部位を薄肉化でき、その結果、鍛造クランク軸を軽量化できる。
また、第1実施形態は、折り曲げによってウエイト部の外周面の縁部Wbを厚肉化するので、ウエイト部を本体と別個に成形し、ウエイト部を本体と連結する必要がない。このため、製造工程が大幅に増加して製造コストが著しく増加するのを防止できる。
2.第2実施形態
[クランク軸の形状]
図7A〜図7Cは、第2実施形態が対象とするクランク軸のウエイト部の形状を示す模式図であり、図7Aはピン部側表面を示す図、図7Bはジャーナル部側表面を示す図、図7CはIII−III断面図である。
図7A〜図7Cに示すように、第2実施形態が対象とするクランク軸のウエイト部Wは、外周面の縁部Wbが、前述の第1実施形態と同様に、ジャーナル部Jの周辺部と比べ、厚肉である。第2実施形態が対象とするクランク軸のウエイト部Wは、外周面の縁部Wbが、前述の第1実施形態と異なり、ピン部P側のみならず、ジャーナル部J側にも厚さ方向に沿って張り出す。このようなウエイト部Wを有する第2実施形態のクランク軸は、前述の第1実施形態と同様に、ウエイト部Wの他の部位を薄肉化でき、鍛造クランク軸を軽量化できる。
[折り曲げ前の形状]
図8A〜図8Cは、第2実施形態における折り曲げ前のウエイト部の形状を示す模式図であり、図8Aはピン部側表面を示す図、図8Bはジャーナル部側表面を示す図、図8CはIV−IV断面図である。
図8A〜図8Cに示すように、第2実施形態の折り曲げ前のウエイト部Wは、第1実施形態と同様に、折り曲げ後のウエイト部と比べ、外周面の縁部Wbにおけるピン部P側表面の形状が異なり、加えてピン部P側表面寄りに配置された余肉部Eaを有する点でも異なる。さらに、第2実施形態の折り曲げ前のウエイト部Wは、外周面の縁部Wbにおけるジャーナル部J側表面の形状が異なるとともに、ジャーナル部J側表面寄りに配置された余肉部Ebを有する点で異なる。
このような折り曲げ前のウエイト部Wは、外周面の縁部Wbにおけるピン部P側表面の形状、外周面の縁部Wbにおけるジャーナル部J側表面の形状、および、余肉部(Ea、Eb)を除けば、折り曲げ後のウエイト部の形状と合致する。折り曲げ前の外周面の縁部Wbの厚さは、折り曲げ後の外周面の縁部の厚さより薄い。
また、ピン部P側表面寄りに配置された余肉部Ea、および、ジャーナル部J側表面寄りに配置された余肉部Ebは、いずれも、ウエイト部Wの外周面Waから扇形状の径方向に沿って突出する。このようなピン部P側表面寄りに配置された余肉部Eaと、ジャーナル部J側表面寄りに配置された余肉部Ebとは、ウエイト部Wの厚さ方向に並べて配置される。
[製造方法]
第2実施形態は、前述の第1実施形態と同様の製造工程を採用できる。第2実施形態の型鍛造工程では、クランク軸の形状が成形されたバリ付きの鍛造材を得るが、そのバリ付きの鍛造材には、ピン部P側表面寄りに配置された余肉部Eaのみならず、ジャーナル部J側表面寄りに配置された余肉部Ebを成形する。折り曲げ工程では、ピン部P側表面寄りに配置された余肉部Eaをウエイト部Wのピン部P側に向けて折り曲げるのみならず、ジャーナル部J側表面寄りに配置された余肉部Ebをウエイト部Wのジャーナル部J側に向けて折り曲げる。これにより、ウエイト部Wの外周面の縁部Wbで厚みを増加させる。折り曲げ工程の加工フロー例については、後述する。
[折り曲げ工程]
図9Aおよび図9Bは、第2実施形態の折り曲げ工程の加工フロー例を模式的に示すウエイト部の断面図であり、図9Aは第2金型の押し当て時、図9Bは折り曲げ終了時をそれぞれ示す。なお、同図は、ウエイト部中心面における断面図である。同図には、バリ無し鍛造材40と、第1金型11と、ウエイト部Wのピン部P側表面を保持する第2金型21と、ウエイト部Wのジャーナル部J側表面を保持する第2金型22とを示し、図面の理解を容易にするため、保持用金型の図示を省略する。
第1金型11の型彫刻部には、クランク軸の最終製品形状のうちの一部が反映されている。具体的には、ピン部P側表面寄りに配置された余肉部Ea、および、ジャーナル部J側表面寄りに配置された余肉部Ebを折り曲げるため、ウエイト部Wの外周面Waの形状が型彫刻部に反映されている。また、型彫刻部のうちで、ピン部P側表面寄りに配置された余肉部Eaの折り曲げに寄与する部位は、その余肉部Eaをピン部P側表面に向けて案内するように傾斜している。加えて、型彫刻部のうちで、ジャーナル部J側表面寄りに配置された余肉部Ebの折り曲げに寄与する部位は、その余肉部Ebをジャーナル部J側表面に向けて案内するように傾斜している。このような第1金型11は、ウエイト部Wの外周面Wa側からジャーナル部J側に向けて進退移動が可能である。
同図に示す加工フロー例では、第1実施形態と同様に、折り曲げの際にバリ無し鍛造材40を上下で一対の保持用金型(図示なし)で保持する。保持用金型の上型および下型には、型彫刻部が彫り込まれており、その型彫刻部には、クランク軸の形状の一部が反映されている。
この第2実施形態の保持用金型は、第1実施形態と同様に、第1金型11による余肉部(Ea、Eb)の折り曲げを可能とするため、ウエイト部Wの外周面Waに対応する部位が開放されている。また、保持用金型の型彫刻部には、ウエイト部Wのピン部P側表面のうちで縁部Wbの内周側領域Wcの形状が反映されることなく、外周面の縁部Wbの内周側領域Wcに対応する部位が開放されている。この開放部には、同図に示すような第2金型21を配置し、第2金型21でウエイト部Wのピン部側表面を保持してもよい。
加えて、第2実施形態の保持用金型の型彫刻部には、前述の第1実施形態と異なり、ウエイト部Wのジャーナル部J側表面のうちで縁部Wbの内周側領域Wcの形状が反映されることなく、外周面の縁部Wbの内周側領域Wcに対応する部位も開放されている。これは、型抜き勾配が逆勾配となるのを防止するためである。この開放部には、同図に示すような第2金型22を配置し、第2金型22でウエイト部Wのジャーナル部側表面を保持してもよい。第2金型22には、型彫刻部が彫り込まれており、その型彫刻部には、ウエイト部のジャーナル部J側表面のうちで外周面の縁部Wbの内周側領域Wcの形状が反映されている。
いずれの第2金型(21、22)も、第1金型11および保持用金型からそれぞれ独立し、ウエイト部の各表面に対して接触したり離間したりするように進退移動が可能である。
このような第1金型11、第2金型(21、22)および保持用金型を用いる折り曲げ工程の加工フロー例を説明する。先ず、保持用金型の上型と下型とを離間させ、その状態でバリ除去後の鍛造材40を上型と下型の間に配置する。この状態で、保持用金型の上型と下型とを近接するように移動させ、バリ無し鍛造材40を上型と下型とで保持する。
次いで、第2金型(21、22)を用いる場合、第2金型(21、22)を進出させ、図9Aに示すように、ウエイト部Wの各表面に押し付けることにより、ウエイト部Wの各表面を第2金型(21、22)で保持する。ただし、ウエイト部Wのピン部P側表面およびジャーナル部J側表面のうちで外周面の縁部Wbの領域については、第2金型(21、22)を押し当てない(図9A参照)。その領域に第2金型(21、22)を押し当てて保持すると、余肉部(Ea、Eb)の折り曲げによってウエイト部の外周面の縁部Wbで厚みを増加させることが不可能となるからである。
この状態で、第1金型11をウエイト部Wの外周面Wa側からジャーナル部J側に向けて移動(進出)させる。これにより、第1実施形態と同様に、ピン部P側表面寄りの余肉部Eaを第1金型11の型彫刻部に沿ってウエイト部Wのピン部P側表面に向けて折り曲げ、ピン部P側に張り出させる。第2実施形態では、さらに、ジャーナル部J側表面寄りの余肉部Ebを第1金型11の型彫刻部に沿ってウエイト部Wのジャーナル部J側表面に向けて折り曲げ、ジャーナル部J側に張り出させる。その結果、ウエイト部の外周面の縁部Wbで厚みが増加する。
続いて、第1金型11を後退させて退避させる。第2金型(21、22)を用いる場合、第2金型(21、22)も後退させて退避させる。そして、保持用金型の上型と下型とを離間させた後、折り曲げ済みのバリ無し鍛造材を搬出する。
このような第2実施形態は、第1実施形態と同様に、ウエイト部Wの外周面の縁部Wbが厚肉化されたクランク軸を得ることができる。これにより、鍛造クランク軸を軽量化できる。また、製造工程が大幅に増加して製造コストが著しく増加するのを防止できる。
3.第3実施形態
[クランク軸の形状]
図10Aおよび図10Bは、第3実施形態が対象とするクランク軸のウエイト部の形状を示す模式図であり、図10Aはジャーナル部側表面を示す図、図10BはV−V断面図である。
図10Aおよび図10Bに示すように、第3実施形態が対象とするクランク軸のウエイト部Wは、外周面の縁部Wbが、前述の第1実施形態と同様に、ジャーナル部Jの周辺部と比べ、厚肉である。第3実施形態が対象とするクランク軸のウエイト部Wは、外周面の縁部Wbが、前述の第1実施形態の反対側、すなわち、ジャーナル部J側に厚さ方向に沿って張り出す。このようなウエイト部Wを有する第3実施形態のクランク軸は、前述の第1実施形態と同様に、ウエイト部Wの他の部位を薄肉化でき、鍛造クランク軸を軽量化できる。
[折り曲げ前の形状]
図11Aおよび図11Bは、第3実施形態における折り曲げ前のウエイト部の形状を示す模式図であり、図11Aはジャーナル部側表面を示す図、図11BはVI−VI断面図である。
図11Aおよび図11Bに示すように、第3実施形態の折り曲げ前のウエイト部Wは、折り曲げ後のウエイト部と比べ、外周面の縁部Wbにおけるジャーナル部J側表面の形状が異なり、加えて余肉部Ebを有する点でも異なる。このような折り曲げ前のウエイト部Wは、外周面の縁部Wbにおけるジャーナル部J側表面の形状、および、余肉部Ebを除けば、折り曲げ後のウエイト部の形状と合致する。折り曲げ前の外周面の縁部Wbの厚さは、折り曲げ後の外周面の縁部Wbの厚さより薄い。
余肉部Ebは、ウエイト部Wの外周面Waから扇形状の径方向に沿って突出する。また、同図に示す余肉部Ebは、ウエイト部の厚さ方向の位置が、外周面Waのうち、ジャーナル部J側表面寄りに配置される。
[製造方法]
第3実施形態は、前述の第1実施形態と同様の製造工程を採用できる。第3実施形態の型鍛造工程では、クランク軸の形状が成形されたバリ付きの鍛造材を得るが、そのバリ付きの鍛造材には、ピン部P側表面寄りに配置された余肉部Eaに代えて、ジャーナル部J側表面寄りに配置された余肉部Ebが成形される。折り曲げ工程では、その余肉部Ebを、前述の第1実施形態の反対側、具体的には、ウエイト部Wのジャーナル部J側表面に向けて折り曲げる。これにより、ウエイト部Wの外周面の縁部Wbの厚みを増加させる。折り曲げ工程の加工フロー例については、後述する。
[折り曲げ工程]
図12Aおよび図12Bは、第3実施形態の折り曲げ工程の加工フロー例を模式的に示すウエイト部の断面図であり、図12Aは第2金型の押し当て時、図12Bは折り曲げ終了時をそれぞれ示す。なお、同図は、ウエイト部中心面における断面図である。図12Aおよび図12Bには、バリ無し鍛造材40と、第1金型11と、ウエイト部Wのジャーナル部J側表面を保持する第2金型22とを示し、図面の理解を容易にするため、保持用金型の図示を省略する。
第1金型11の型彫刻部には、クランク軸の最終製品形状のうちの一部が反映されている。具体的には、余肉部Ebを折り曲げるため、ウエイト部Wの外周面Waの形状が型彫刻部に反映されている。また、型彫刻部のうちで余肉部Ebの折り曲げに寄与する部位は、その余肉部Ebをジャーナル部J側表面に向けて案内するように傾斜している。
第3実施形態の加工フロー例では、第1実施形態と同様に、折り曲げの際にバリ無し鍛造材40を上下で一対の保持用金型で保持する。その保持用金型の上型および下型には、型彫刻部が彫り込まれており、その型彫刻部には、クランク軸の形状の一部が反映されている。この保持用金型は、第1金型11による余肉部Ebの折り曲げを可能とするため、ウエイト部Wの外周面Waに対応する部位が開放されている。
また、保持用金型の型彫刻部には、ウエイト部Wのジャーナル部J側表面のうちで縁部Wbの内周側領域Wcの形状が反映されることなく、外周面の縁部Wbの内周側領域Wcに対応する部位が開放されている。この開放部には、同図に示すような第2金型22を配置してもよい。第2金型22には、型彫刻部が彫り込まれており、その型彫刻部には、ウエイト部Wのジャーナル部J側表面のうちで外周面の縁部Wbの内周側領域Wcの形状が反映されている。第2金型22は、第1金型11および保持用金型30から独立し、ウエイト部Wのジャーナル部J側表面に対して接触したり離間したりするように進退移動が可能である。
このような第1金型11、第2金型22および保持用金型を用いる折り曲げ工程の加工フロー例を説明する。先ず、保持用金型の上型と下型とを離間させ、その状態でバリ除去後の鍛造材40を上型と下型の間に配置する。この状態で、保持用金型の上型と下型とを近接するように移動させ、バリ無し鍛造材40を上型と下型とで保持する。
次いで、第2金型22を用いる場合、第2金型22を進出させ、図12Aに示すように、ウエイト部Wのジャーナル部J側表面に押し付ける。これにより、ウエイト部Wのジャーナル部J側表面を第2金型22で保持する。ただし、ウエイト部Wのジャーナル部J側表面のうちで外周面の縁部Wbの領域については、第2金型22を押し当てない(図12A参照)。その領域に第2金型22を押し当てて保持すると、余肉部Ebの折り曲げによってウエイト部Wの外周面の縁部Wbで厚みを増加させることが不可能となるからである。
この状態で、第1金型11をウエイト部Wの外周面Wa側からジャーナル部J側に向けて移動(進出)させる。これにより、第1実施形態と同様に、第1金型11の型彫刻部に沿って余肉部Ebを折り曲げる。ただし、第3実施形態では、前述の第1実施形態の反対側、具体的には、ウエイト部Wのジャーナル部J側表面に向けて余肉部Ebを折り曲げ、ジャーナル部J側に張り出させる。その結果、ウエイト部の外周面の縁部Wbで厚みが増加する。
続いて、第1金型11を後退させて退避させる。第2金型22を用いる場合、第2金型22も後退させて退避させる。そして、保持用金型の上型と下型とを離間させた後、折り曲げ済みのバリ無し鍛造材を搬出する。
このような第3実施形態は、第1実施形態と同様に、ウエイト部Wの外周面の縁部Wbが厚肉化されたクランク軸を得ることができる。これにより、鍛造クランク軸を軽量化できる。また、製造工程が大幅に増加して製造コストが著しく増加するのを防止できる。
本発明の鍛造クランク軸の製造方法は、ウエイト部の外周面の縁部Wbが厚さ方向に沿ってピン部P側およびジャーナル部J側のいずれか一方に張り出してもよく、両方に張り出してもよい。すなわち、第1〜第3実施形態のいずれも採用できる。クランク軸のバランスを向上させる観点では、ウエイト部の外周面の縁部Wbは、第1実施形態のようにピン部P側に厚さ方向に沿って張り出すのが好ましい。これにより、ピン部Pの重心からウエイト部Wの重心までのクランク軸の軸心方向の距離が短くなり、クランク軸のバランスが向上する。
クランク軸の軽量化の観点では、ウエイト部の外周面の縁部Wbは、第2実施形態のようにピン部P側およびジャーナル部J側の両方に厚さ方向に沿って張り出すのが好ましい。これにより、外周面の縁部Wbをより厚肉化できるとともに、ウエイト部Wの他の部位をより薄肉化できる。その結果、鍛造クランク軸をさらに軽量化できる。
第1〜第3実施形態では、余肉部(Ea、Eb)が折り曲げられる側のウエイト部Wの表面のうちで、外周面の縁部Wbを少なくとも除く領域を、第2金型(21、22)の押し当てにより保持するのが好ましい。これにより、ウエイト部Wの表面形状を精密に仕上げることができる。なお、第2金型(21、22)は、ウエイト部Wの表面を保持するのみで、押し込むことがないので、第2金型(21、22)の押し当てに要する力は小さくて済む。
第1〜第3実施形態では、折り曲げ工程を、金型を用いた圧下によりクランク軸の形状を矯正する整形工程で実施するのが好ましい。これにより、従来と同様の製造工程を採用できる。この場合、一対の保持用金型に代えて一対の整形用金型を用いればよい。一対の整形用金型は、上型と下型とで構成でき、上型および下型には、型彫刻部がそれぞれ彫り込まれる。その型彫刻部には、クランク軸の最終製品形状の一部が反映され、具体的には、型彫刻部には、アーム部Aやジャーナル部J、ピン部P、ウエイト部W、フランジ部Fl、フロント部Fr等の形状が反映される。また、整形用金型は、前述の保持用金型と同様に、第1金型11や第2金型(21、22)を配置するために開放部が設けられる。
このような整形用金型を用いる場合、以下のような加工フローを採用できる。先ず、整形用金型の上型と下型とを離間させ、その状態でバリ除去後の鍛造材を上型と下型の間に配置する。この状態で、整形用金型の上型と下型とを近接するように移動させ、バリ無し鍛造材40を上型と下型とで圧下する。その際、クランク軸の形状を矯正し、ウエイト部Wの外周面の縁部Wbを除いて最終製品形状とする。次いで、第2金型(21、22)を用いる場合、第2金型(21、22)を進出させる。その後、第1金型11を進出させて余肉部を折り曲げる。続いて、第1金型11を後退させて退避させる。第2金型(21、22)を用いる場合、第2金型(21、22)も後退させて退避させる。そして、整形用金型の上型と下型とを離間させた後、折り曲げおよび整形済みのバリ無し鍛造材を搬出する。
第1〜第3実施形態では、余肉部(Ea、Eb)を、ウエイト部の外周面から扇形状の径方向に沿って突出するように成形する。その際、余肉部(Ea、Eb)は、ウエイト部Wの厚さ方向の位置を、余肉部(Ea、Eb)が折り曲げられる側のウエイト部Wの表面寄りに配置するのが好ましい。これにより、所定の方向への折り曲げ変形を容易に行うことができるとともに、折り曲げの際に外周面の縁部Wb以外が変形するのを抑制でき、加えて、加工負荷も軽減できる。
第1および第2実施形態のように外周面の縁部Wbがピン部P側に厚さ方向に沿って張り出す場合がある。この場合、ウエイト部Wの外周面の縁部Wbの厚さtp(mm、図3B参照)を厚くし、外周面の縁部Wbのピン部P側表面がピンスラスト面(図示なし)の位置を超えると、使用時に他の部材と干渉するおそれがある。このため、ウエイト部Wの外周面の縁部Wbの厚さtp(mm)は、外周面の縁部Wbのピン部側表面がピンスラスト面の位置を超えないように設定するのが好ましい。ここで、ピンスラスト面とは、アーム部のピン部側表面に設けられ、コネクティングロッドのスラスト方向の移動を制限する部位である。
また、第2および第3実施形態のように外周面の縁部WbがジャーナルJ部側に厚さ方向に沿って張り出す場合がある。この場合、ウエイト部Wの外周面の縁部Wbの厚さtp(mm)を厚くし、外周面の縁部Wbのジャーナル部J側表面がジャーナルスラスト面(図示なし)の位置を超えると、使用時に他の部材と干渉するおそれがある。このため、ウエイト部Wの外周面の縁部Wbの厚さtp(mm)は、外周面の縁部Wbのジャーナル部側表面がジャーナルスラスト面の位置を超えないように設定するのが好ましい。ここで、ジャーナルスラスト面とは、アーム部のジャーナル部側表面に設けられ、エンジン本体に対してクランク軸がスラスト方向に移動するのを制限する。
軽量化を促進する観点から、縁部Wbの径方向の長さL1(mm、図3A参照)は、ウエイト部Wの径方向の長さL2(mm)に対する割合(L1/L2)で、1%以上とするのが好ましく、3%以上がより好ましい。一方、割合(L1/L2)で、L1が50%を超えると、ウエイト部Wのジャーナル部J周辺が縁部Wbに含まれ、軽量化を阻害するおそれがある。このため、50%以下とするのが好ましく、35%以下がより好ましい。ここで、ウエイト部Wの径方向の長さL2は、ウエイト部の外周面Waの半径R1(mm、図3A参照)とジャーナル部の半径R2(mm、図3A参照)の差(R1−R2)である。
第1〜第3実施形態では、ウエイト部の外周部(円弧部)を厚肉化する技術を組み合わせてもよい。具体的には、前記図2Aおよび2Bに示すクランク軸において、ウエイト部の外周面の縁部をさらに厚肉化してもよい。
第1〜第3実施形態では、外周面Waの周方向の全範囲で、すなわち、ウエイト部Wの一方の頂部から他方の頂部に至る範囲で、縁部Wbを厚肉化する。このような形態は、アーム部A(ウエイト部Wを含む)の形状がウエイト部中心面Cに対して対称なクランク軸に好適である。ここで、ウエイト部Wの頂部とは、幅方向に最も出っ張る箇所である。
縁部Wbは、外周面Waの周方向の一部で厚肉化してもよい。このような形態は、アーム部A(ウエイト部Wを含む)の形状がウエイト部中心面Cに対して非対称となるクランク軸、例えば、V6エンジンに搭載されるクランク軸に好適である。外周面の縁部Wbを厚肉化する範囲の変更は、余肉部(Ea、Eb)を成形する周方向の範囲を適宜調整することで行える。