JP6561281B2 - 有機el素子および有機el素子の製造方法 - Google Patents
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Description
有機EL素子は、一対の電極(陽極および陰極)間に、少なくとも発光層が挟まれた構成を有している。そして、有機EL素子は、多くの場合、発光層の他に、発光層に電子を供給するための機能層(電子輸送層、電子注入層)や、正孔注入層、正孔輸送層等が発光層と陰極との間にさらに挟まれた構成を有している。
また有機EL素子において、機能層に仕事関数の低いアルカリ金属やアルカリ土類金属を含む層を用いることによって、良好な電子注入性が得られることも知られている。
これに対して特許文献2には、発光層上に無機バリア層を設けた構成の有機EL素子が開示されている。このように無機バリア層を設けると、その無機バリア層よりも前に形成された有機発光媒体層の表面に吸着された不純物によって機能層が劣化するのを防止する働きをなす。
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、不純物に対する十分なブロック性を確保して良好な保管安定性を確保しつつ、良好な発光特性を得ることのできる有機EL素子および有機EL素子の製造方法を提供することを目的とする。
次に「金属層」は、Ag,Alをはじめとする金属元素の単体で形成された層であってもよいが、複数の金属元素の合金で形成された層であってもよい。
また、機能層には、第1中間層に隣接する領域に第2金属が含まれ、その第2金属は、第1中間層に含まれる第1金属のフッ化物における第1金属とフッ素との結合を切って第1金属を遊離させる。遊離した第1金属は、アルカリ金属またはアルカリ土類金属であるため、仕事関数が小さく電子注入性が高い。従って、機能層から発光層への電子供給性が良好となり、駆動電圧を低減できる。
上記のように、アルカリ金属やアルカリ土類金属から選択された元素(本明細書における「第1金属」)を含む機能層を発光層の上に形成することで、当該機能層から発光層に対して優れた電子注入性を得ることができるが、水分や酸素といった不純物が発光層から機能層に移行することによって機能層が劣化する課題も存在するので、機能層の電子注入性を確保しながら、機能層の劣化を防止する方法が求められる。
<発明の態様>
本発明の一態様にかかる有機EL素子は、光反射性の陽極と、陽極の上方に配された発光層と、発光層上に配され、アルカリ金属またはアルカリ土類金属である第1金属のフッ化物を含む第1中間層と、第1中間層の上方に配され、電子輸送性および電子注入性のうち少なくとも一方の性質を有する機能層と、機能層の上方に配され、金属層を含む光透過性の陰極と、を有し、機能層には、第1中間層に隣接する領域に、第1金属のフッ化物における第1金属とフッ素との結合を切る性質を有する第2金属を含ませた。
また、機能層に含まれる第2金属は、第1中間層に含まれる第1金属のフッ化物における第1金属とフッ素との結合を切って第1金属を遊離させる。遊離した第1金属は、アルカリ金属またはアルカリ土類金属であり、仕事関数が小さく電子注入性が高いので、機能層から発光層への電子供給性が良好となり、駆動電圧の低減に寄与する。
本発明の一態様に係る有機EL素子の製造方法は、光反射性の陽極を形成し、陽極の上方に発光層を形成し、発光層上に、アルカリ金属またはアルカリ土類金属である第1金属のフッ化物を含む第1中間層を形成し、第1中間層の上に、電子輸送性および電子注入性のうち少なくとも一方の性質を有する機能層を形成し、機能層の上方に、金属層を含む光透過性の陰極を形成する。そして、機能層を形成する際に、第1中間層と隣接する領域に、第1金属のフッ化物における第1金属とフッ素との結合を切る性質を有する第2金属を含ませる。
上記態様の有機EL素子、及び製造方法において、以下のようにしてもよい。
陰極を構成する金属材料を、銀、銀合金、アルミニウム及びアルミニウム合金から選択する。これらの金属材料は、反射率及び導電率が良好なので、光共振構造において光取り出し効率を高めたり、陰極のシート抵抗値を低くするのに適している。
アルカリ金属またはアルカリ土類金属は、比較的仕事関数が低く電子供給能が高い。また、フッ素との反応性が比較的高いので、第1金属とフッ素との結合を切って第1金属を遊離させる作用効果を得やすい。
機能層を、第2金属がドープされた有機材料で形成する。これによって、機能層が電子輸送性を持ち、陰極から発光層に電子を効率よく供給することができる。
機能層を、電子輸送性の有機材料からなる有機層と、当該有機層と第1中間層との間に介在し第2金属の単体で形成された第2中間層とで構成する。
これによって、第1中間層に隣接する領域に第2金属の単体で形成された第2中間層が存在するので、第1金属とフッ素との結合を切って第1金属を遊離させる効果が優れたものとなる。
第1金属として、ナトリウムを用いる。これによって、中間層は、吸湿性が低く、酸素との反応性が低いフッ化ナトリウムを含むため、不純物をブロックする性質に優れた層となる。また、ナトリウムは仕事関数が低いので、中間層から発光層に対する電子注入性が優れたものとなる。
当該光学膜厚を変化させたときに、有機EL素子から取り出される青色光の輝度とxy色度のy値との比(輝度/y値)が示す特性に関し、1次干渉に相当する光学膜厚の範囲内で、且つ輝度/y値が2次干渉の極大値以上となる光学膜厚に設定する。
これによって、青色発光素子から、輝度/y値の高い青色光が取り出されるので、色純度の良好な青色光を効率よく取り出すことができる。
以下、実施の形態にかかる有機EL素子について説明する。なお、以下の説明は、本発明の一態様に係る構成および作用・効果を説明するための例示であって、本発明の本質的部分以外は以下の形態に限定されない。
[1.有機EL素子の構成]
図1は、実施の形態1に係る有機EL表示パネル100(図15参照)の部分断面図である。有機EL表示パネル100は、3つの色(赤色、緑色、青色)を発光する有機EL素子1(R)、1(G)、1(B)で構成される画素を複数備えている。図1では、その1つの青色の有機EL素子1(B)を中心としてその周辺の断面を示している。
有機EL素子1(R)と、有機EL素子1(G)と、有機EL素子1(B)は、ほぼ同様の構成を有するので、以下では、まとめて有機EL素子1として説明する。
図1に示すように、有機EL素子1は、基板11、層間絶縁層12、画素電極13、隔壁層14、正孔注入層15、正孔輸送層16、発光層17、第1中間層18、第2中間層19、機能層21、対向電極22、および封止層23を備える。なお、基板11、層間絶縁層12、第1中間層18、第2中間層19、機能層21、対向電極22、および封止層23は、画素ごとに形成されているのではなく、有機EL表示パネル100が備える複数の有機EL素子1に共通して形成されている。
基板11は、絶縁材料である基材111と、TFT(Thin Film Transistor)層112とを含む。TFT層112には、画素毎に駆動回路が形成されている。基材111は、例えばガラス材料からなる基板である。ガラス材料としては、無アルカリガラス、ソーダガラス、無蛍光ガラス、燐酸系ガラス、硼酸系ガラス、石英等のガラスなどが挙げられる。
層間絶縁層12は、基板11上に形成されている。層間絶縁層12は、樹脂材料からなり、TFT層112の上面の段差を平坦化するためのものである。樹脂材料としては、例えば、ポジ型の感光性材料が挙げられる。また、このような感光性材料として、アクリル系樹脂、ポリイミド系樹脂、シロキサン系樹脂、フェノール系樹脂が挙げられる。また、図1の断面図には示されていないが、層間絶縁層12には、画素毎にコンタクトホールが形成されている。
画素電極13は、光反射性の金属材料からなる金属層を含み、層間絶縁層12上に形成されている。画素電極13は、画素毎に個々に設けられ、コンタクトホールを通じてTFT層112と電気的に接続されている。
本実施形態においては、画素電極13は、陽極として機能する。
<隔壁層>
隔壁層14は、画素電極13の上面の一部の領域を露出させ、その周辺の領域を被覆した状態で画素電極13上に形成されている。画素電極13上面において隔壁層14で被覆されていない領域(以下、「開口部」という。)は、サブピクセルに対応している。即ち、隔壁層14は、サブピクセル毎に設けられた開口部14aを有する。
隔壁層14は、例えば、絶縁性の有機材料(例えばアクリル系樹脂、ポリイミド系樹脂、ノボラック樹脂、フェノール樹脂等)からなる。隔壁層14は、発光層17を塗布法で形成する場合には塗布されたインクがあふれ出ないようにするための構造物として機能し、発光層17を蒸着法で形成する場合には蒸着マスクを載置するための構造物として機能する。本実施形態では、隔壁層14は、樹脂材料からなり、隔壁層14の材料としては、例えば、ポジ型の感光性材料が挙げられる。また、このような感光性材料として、アクリル系樹脂、ポリイミド系樹脂、シロキサン系樹脂、フェノール系樹脂が挙げられる。本実施形態においては、フェノール系樹脂が用いられている。
正孔注入層15は、画素電極13から発光層17への正孔の注入を促進させる目的で、画素電極13上の開口部14a内に設けられている。正孔注入層15は、例えば、銀(Ag)、モリブデン(Mo)、クロム(Cr)、バナジウム(V)、タングステン(W)、ニッケル(Ni)、イリジウム(Ir)などの酸化物、あるいは、PEDOT(ポリチオフェンとポリスチレンスルホン酸との混合物)などの導電性ポリマー材料からなる層である。上記の内、酸化金属からなる正孔注入層15は、正孔(ホール)を安定的に、または正孔(ホール)の生成を補助して、発光層17に対し正孔(ホール)を注入する機能を有し、大きな仕事関数を有する。本実施の形態においては、正孔注入層15は、PEDOT(ポリチオフェンとポリスチレンスルホン酸との混合物)などの導電性ポリマー材料からなる。
<正孔輸送層>
正孔輸送層16は、親水基を備えない高分子化合物を用い開口部14a内に形成されている。例えば、ポリフルオレンやその誘導体、あるいはポリアリールアミンやその誘導体などの高分子化合物であって、親水基を備えないものなどを用いることができる。
<発光層>
発光層17は、開口部14a内に形成されている。発光層17は、正孔と電子の再結合によりR,G,Bの各色の光を出射する機能を有する。発光層17の材料としては公知の材料を利用することができる。例えば、オキシノイド化合物、ペリレン化合物、クマリン化合物、アザクマリン化合物、オキサゾール化合物、オキサジアゾール化合物、ペリノン化合物、ピロロピロール化合物、ナフタレン化合物、アントラセン化合物、フルオレン化合物、フルオランテン化合物、テトラセン化合物、ピレン化合物、コロネン化合物、キノロン化合物及びアザキノロン化合物、ピラゾリン誘導体及びピラゾロン誘導体、ローダミン化合物、クリセン化合物、フェナントレン化合物、シクロペンタジエン化合物、スチルベン化合物、ジフェニルキノン化合物、スチリル化合物、ブタジエン化合物、ジシアノメチレンピラン化合物、ジシアノメチレンチオピラン化合物、フルオレセイン化合物、ピリリウム化合物、チアピリリウム化合物、セレナピリリウム化合物、テルロピリリウム化合物、芳香族アルダジエン化合物、オリゴフェニレン化合物、チオキサンテン化合物、アンスラセン化合物、シアニン化合物、アクリジン化合物、8−ヒドロキシキノリン化合物の金属錯体、2−ビピリジン化合物の金属錯体、シッフ塩とIII族金属との錯体、オキシン金属錯体、希土類錯体等の蛍光物質や、トリス(2-フェニルピリジン)イリジウムなどの燐光を発光する金属錯体等の燐光物質を用いることができる。
第1中間層18は、発光層17上に形成されており、アルカリ金属またはアルカリ土類金属から選択される第1金属のフッ化物で形成されている。
アルカリ金属に該当する金属は、リチウム,ナトリウム,カリウム,ルビジウム,セシウム,フランシウムであり、アルカリ土類金属の該当する金属は、カルシウム,ストロンチウム,バリウム,ラジウムである。これらのフッ化物で形成した膜は、不純物をブロックする働きをなす。
第1金属としては、特に、NaあるいはLiが好ましく、第1中間層18を、NaF(フッ化ナトリウム)あるいはLiF(フッ化リチウム)で形成することが好ましい。
機能層21は、対向電極22から注入された電子を発光層17へと輸送する機能を有する有機材料と、アルカリ金属またはアルカリ土類金属から選択され、第1金属のフッ化物(NaF)の結合を切る性質を持つ第2金属とを含む層である。
機能層21は、第2金属の単体からなり第1中間層18の直上に形成された第2中間層19と、第2中間層19の上に積層され電子輸送性の有機材料からなり第2金属がドープされた電子輸送層20とで構成されている。
第2金属は、アルカリ金属(リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウムなど)またはアルカリ土類金属(マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウムなど)の中で、第1中間層に含まれる第1金属のフッ化物における第1金属とフッ素との結合を切る性質を有する金属を用いる。
<対向電極>
対向電極22は、各サブピクセル共通に設けられており、陰極として機能する。
従って、発光層17からの光の一部は対向電極22において反射されるが、残りの一部は対向電極22を透過する。
また対向電極22に金属層が含まれることによって、画素電極13と対向電極22との間に形成される光共振器構造においてそのキャビティ効果を高めることができる。
その他の合金として、リチウム−マグネシウム合金、リチウム−インジウム合金、が挙げられる。
金属層は、例えばAg層あるいはMgAg合金層の単層で構成してもよいし、Mg層とAg層の積層構造(Mg/Ag)、あるいは、MgAg合金層とAg層の積層構造(MgAg/Ag)にしてもよい。
<封止層>
対向電極22の上には、発光層17が水分や酸素等に触れて劣化することを抑制する目的で封止層23が設けられている。有機EL表示パネル100はトップエミッション型であるため、封止層23の材料としては、例えばSiN(窒化シリコン)、SiON(酸窒化シリコン)等の光透過性材料が選択される。
なお図1には示されないが、封止層23の上に、封止樹脂を介してカラーフィルタや上部基板を貼り合せてもよい。上部基板を貼り合せることによって、正孔輸送層16、発光層17、機能層21を水分および空気などから保護できる。
[2.不純物ブロック性と電子注入性]
正孔注入層15、正孔輸送層16、発光層17をウェットプロセスで形成する場合、これらの層の内部および表面に存在する不純物が機能層21に到達すると、機能層21の有機材料にドープされている金属と反応して、機能層21の機能を低下させる。
隔壁層14をウェットプロセスで形成する場合にも、隔壁層14の内部および表面に存在する不純物が、同様に機能層21の機能低下を引き起こす原因となる。
これに対して、本実施形態に係る有機EL素子1は、発光層17と機能層21との間に、第1中間層18および第2中間層19を備え、第1中間層18は、アルカリ金属のフッ化物中のアルカリ金属またはアルカリ土類金属のフッ化物を含んでいるので、このフッ化物が発光層17側からの不純物の侵入を防ぐ。
なお、第1金属のフッ化物における第1金属とフッ素との結合を分解する機構は、上記に限られない。第1中間層18、第2中間層19、発光層17、機能層21等の機能を損なわない限り、何れの機構によって第1金属とフッ素との結合が切れてもよい。
ここでは、第1中間層18および第2中間層19を形成する際に、それぞれ膜厚がD1およびD2となるように意図した方法で形成した場合、形成された第1中間層18および第2中間層19の膜厚がそれぞれD1およびD2であるということとする。他の層の膜厚についても同様である。
第2中間層19の膜厚D2が互いに異なる4種類の有機EL表示パネル100を試験体として作製し、それぞれの試験体に電圧を印加して電流密度を測定した。第2中間層19の膜厚D2は、0nm,0.5nm,1nm,2nmの4種類である。4つの試験体における第1中間層18の膜厚D1は、何れも4nmである。
図2に示すように、第2中間層19の膜厚D2が0nmの試験体(即ち、第2中間層19を備えない試験体)と比べて、膜厚D2=0.5nm,1nm,2nmの試験体は、何れも高い電流密度を示した。この結果は、第2中間層19を設けることによって、有機EL素子1の発光層17により多くの電流が流れることを示している。
従って、第2中間層19の膜厚D2は、0.5nmあれば十分な電流密度が得られるといえる。
図3は、第2中間層19の膜厚D2が互いに異なる6種類の有機EL表示パネル100についての発光効率比を示すグラフである。6種類の膜厚D2は、0nm,0.1nm,0.2nm,0.5nm,1,2nmである。なお、6種類の有機EL表示パネル試験体において、第1中間層18の膜厚D1はいずれも4nmとした。
なお発光効率の基準値としては、第2中間層19を備えず、正孔輸送層16に正孔注入性の低い物質(具体的には、酸化タングステン)を用いた有機EL表示パネルの発光効率の値を用いた。
[5.第1中間層の膜厚と保管安定性]
第1中間層18の膜厚D1が互いに異なる3種類の有機EL表示パネル100を試験体として保管安定性試験を行った。
保管安定性試験においては、各試験体に通電して初期輝度を測定し、80℃の環境下に7日間保管した後、再び通電して高温保管後の輝度を測定した。そして各試験体について、輝度保持率(初期輝度に対する高温保管後の輝度の割合〔%〕)を算出した。
この高温保管後の輝度保持率で保管安定性を評価した。
図4(a)に示すように、第1中間層18の膜厚D1が1nmの場合、輝度保持率が59〔%〕であって、保管安定性は低いが、膜厚D1が4nm以上の場合、輝度保持率が95%以上であり、良好な保管安定性を示している。
これより、第1中間層18の膜厚D1が4nm以上あれば、良好な保管安定性が得られることがわかる。
[6.第1中間層の膜厚と発光効率比]
図4(b)は、第1中間層18の膜厚D1が互いに異なる3種類の有機EL表示パネル100についての発光効率比を示すグラフである。膜厚D1は、1,4,10〔nm〕の3種類である。発光効率比は、図3に示す発光効率比の場合と同様に、電流密度が10mA/cm2となるような電圧を印加した際の輝度を測定し、測定された輝度の値から発光効率を算出した。そして、基準となる有機EL表示パネルの発光効率の値を発光効率基準値として、発光効率基準値に対する比(発光効率比)をグラフにプロットした。
この結果から、第1中間層18の膜厚D1が、1nmよりも薄い場合および10nmよりも厚い場合には、さらに発光効率比が低くなると考えられる。これは、第1中間層18の膜厚D1が薄くなりすぎると、乖離する第1金属(本実施形態においてはNa)の絶対量が少なくなり、機能層21から発光層17への電子の移動が促進されなくなり、一方、第1中間層18の膜厚D1が厚くなりすぎると、絶縁層としての機能が強くなって、発光効率が低下するためと考えられる。
[7.第1中間層の膜厚に対する第2中間層の膜厚の割合と発光効率比]
以上説明したように、第1中間層18の膜厚D1については、不純物ブロック性を確保するための最低限の膜厚が必要である。一方、膜厚D1が厚くなりすぎると、絶縁膜としての性質が強くなって発光層17へ電子が注入されにくくなり、十分な輝度が得られなくなる。
以上の結果から、本発明者らは、第1中間層18および第2中間層19は、それぞれの膜厚の好適な値の範囲が存在するのみならず、膜厚D1と膜厚D2との比率(D2/D1)にも好適な範囲が存在するのではないかと考え、膜厚D1に対する膜厚D2の比(D2/D1)を変えて、発光効率比がどのように変わるかを調べた。
図5(a)に示す試験体と、図5(b)に示す試験体とでは、正孔輸送層16に用いられた正孔輸送物質が異なるが、それ以外の基本的な構成は同じである。図5(a)の試験体の正孔輸送層16に用いられた正孔輸送物質Aは、図5(b)の試験体の正孔輸送層16に用いられた正孔輸送物質Bよりも、正孔供給能が高い。
図5(b)に示すように、正孔供給能が比較的低い正孔輸送物質Bを用いた場合、膜厚比D2/D1が3〜5〔%〕の範囲に、発光効率比のピークが観察された。図5(a)に示すように、正孔供給能が比較的高い正孔輸送物質Aを用いた場合、膜厚比D2/D1が20%〜25%の範囲に、発光効率比のピークが観察された。
なお、上述したように、実際には、第1中間層18と第2中間層19の境界は、明確には分かれておらず、第1中間層18を形成する材料と、第2中間層19を形成する材料とが、製造の過程で多少混ざり合って形成されている場合もあると考えられる。そのような場合には、第1金属と第2金属の成分比(モル比)が、1〔%〕≦第2金属/第1金属≦10〔%〕であれば、良好な発光効率が得られると考えられる。
図6は、電子輸送層20におけるドープ金属濃度の違いによる発光効率比の違いを示すグラフである。ここではドープ金属はBa(バリウム)であり、ドープ金属濃度は、5,20,40wt%の3つの値である。なお、各試験体における第1中間層18の膜厚D1はいずれも4nmであり、第2中間層19の膜厚D2はいずれも0.2nmである。
ただし、電子輸送層20におけるドープ金属(Ba)の濃度が20wt%のところで発光効率が最大値を示しているので、ドープ金属の濃度は、5〜40wt%の範囲の中でも、20wt%以下の範囲(5〜20wt%の範囲)内に設定することが好ましい。
さらに、電子輸送層20において第2金属をドープしなくても(すなわち電子輸送層20におけるドープ金属濃度が0であっても)、第2中間層19による電子注入性向上効果を得ることができる。
図7(a)は、本実施形態にかかる有機EL素子の光共振器構造における光の干渉を説明する図である。当図では青色発光の発光層17を有する有機EL素子1(B)について示し、ここでは特に有機EL素子1(B)について説明する。
この有機EL素子1(B)の光共振器構造において、発光層17における正孔輸送層16との界面近傍から出射されて各層を透過していく。この各層界面において光の一部が反射されることによって光の干渉が生じる。その主なものを例示すると以下のような干渉が挙げられる。
(2)発光層17から対向電極22側に進行した光の一部が、対向電極22で反射されて、さらに画素電極13で反射された後、発光素子の外部に出射される第3光路C3も形成される。
第2光路C2と第3光路C3との光学距離の差は図7(a)に示す光学膜厚L2に対応する。この光学膜厚L2は、発光層17、第1中間層18、第2中間層19、機能層21の合計の光学距離である。
(3)第3光路C3を経由する光と、上記第2光路C2を経由する光との干渉も生じる。
第1光路C1と第3光路C3との光学距離の差は、図7(a)に示す光学膜厚L3に対応する。光学膜厚L3は、上記光学膜厚L1と光学膜厚L2の和である(L3=L1+L2)。
通常、共振器構造において、光取り出し効率が極大値を示す光学膜厚に調整される。上記の各光路を経由する光が、互いに干渉によって強め合って光取り出し効率が高まるように、発光層17と画素電極13との間の光学膜厚L1、発光層17と対向電極22との間の光学膜厚L2、そして、画素電極13と対向電極22との間の光学膜厚L3は設定される。
ただし本発明者の考察によると、青色発光素子に関しては、光取り出し効率が極大値となる光学膜厚に設定すると、取り出される青色光の色度が目標色度に近いとはいえず、むしろ光取り出し効率が極大値をとる光学膜厚からずらして、色度y値の小さい青色光を取り出す光学膜厚を選択する方が好ましいといえる。
そこで、以下に詳細に説明するように、青色発光素子については、輝度とxy色度のy値との比(輝度/y値)が高い値を示すような光学膜厚に調整することとする。
青色の有機EL素子1(B)から取り出される青色光の色度y値がこの目標色度から遠ければ、カラーフィルタ(CF)で大きく色度補正をする必要がある。その場合、光透過率の低いCFを用いざるを得ないので、もとの青色発光素子からの光取り出し効率が大きくても、CF通過後の光取り出し効率は大幅に低下してしまう。
本発明者等は、さらに検討を行った結果、上記特許文献1にも開示されているように、色度y値が0.08以下の青色光を効率よく取り出すには、輝度/y値が高い値を示すように各層の光学膜厚の設定を行えばよいことも見出した。
(光学シミュレーション)
本実施形態に基づく一実施例にかかる青色の有機EL素子1(B)において、正孔輸送層16の膜厚、及び発光層17から機能層21までの合計膜厚を、それぞれ変化させたときに、素子から取り出される青色光の輝度/y値がどのように変化するかをシミュレーションで算出した。
このシミュレーションにおいて用いた有機EL素子1(B)の層構造は、図7(a)の表に示す構造であって、正孔輸送層16の膜厚を5nm〜200nmの範囲で変えてシミュレーションを行った。
ここで、光学膜厚L1は、正孔輸送層16、正孔注入層15、画素電極13の金属酸化物層の光学膜厚の合計であって。図8の横軸にはその光学膜厚L1の値も表示している。
同様に、光学膜厚L2は、発光層17〜機能層21の合計光学膜厚であって、図8の縦軸にはその光学膜厚L2の値も表示している。
輝度/y値の最高値を1としたときの輝度/y値の相対値を、数値範囲(0.2、0.3〜0.4、0.5〜0.6、0.7〜0.8、0.9〜1.0)に分けてグラフ内にマッピングした。
以上のことから、有機EL素子1(B)から輝度/y値の高い青色光を取り出すには、光学膜厚L1を干渉ピークに合せて設定するだけでなく、光学膜厚L2も干渉ピークに合せて設定することによって、より高い輝度/y値の青色光を取りせることがわかる。
ここで、光学膜厚L2に関する干渉ピークが大きくなっているのは、対向電極22に金属層が含まれていることが要因と考えられるので、対向電極22に金属層が含まれていることが、光共振効果を高めるのに寄与しているということもいえる。
以下では、光学膜厚L2に着目し、光学膜厚L1を、1次干渉に相当する一定値に固定して、光学膜厚L2を変化させたときに、輝度/y値がどのように変化するかを考察する。
光学膜厚L1が1次干渉に相当するのは、図8に示すように、正孔輸送層16の膜厚20nmのときで、光学膜厚L1が76nmのときである。
なお、光学膜厚L2は、横軸の発光層17〜機能層21の膜厚に屈折率を掛けた値の合計である。
従って、青色有機EL素子において、機能層21の膜厚を、1次干渉のピークに相当する膜厚に設定すれば、素子から取り出される青色光の輝度/y値が高くなるので、色度が良好な青色光を効率よく取り出せることになる。
この範囲Aは、発光層17〜機能層21の合計膜厚が29nm〜44nmの範囲であって、光学膜厚L2の範囲としては、29×1.9=55nmから44×1.9=84nmに相当する。
なお、図9には、光学膜厚L1が1次干渉ピークに相当するとき(正孔輸送層16の膜厚20nmのとき)について示したが、図8を参照すると、光学膜厚L1が2次干渉ピークに相当するとき(正孔輸送層16の膜厚155nm、光学膜厚L1が305.5nmのとき)も、輝度/Y値の値は全体的に低いものの、図9と同様の形状のグラフが得られることがわかる。
このように、有機EL素子1(B)から色度の良好な青色光を効率よく取り出すには、光学膜厚L1を光学干渉に適した範囲に設定した上で、光学膜厚L2を57nm〜84nmの範囲に設定することが好ましい。
[10.有機EL素子の製造方法]
有機EL素子1の製造方法について、図10〜図13、図14を参照しながら説明する。なお、図10〜図13は、有機EL素子1の製造過程を模式的に示す断面図であり、図14は、有機EL素子1の製造過程を示す模式工程図である。
そして、サブピクセル毎に、金属材料を真空蒸着法またはスパッタ法で厚み150nm程度に成膜して、図10(b)に示すように、画素電極13を形成する(図14のステップS4)。
そして、マスク蒸着法やインクジェットによる塗布法によって、正孔注入層15の材料を成膜し、焼成することによって、図11(b)に示すように正孔注入層15を形成する(図14のステップS7)。
同様に、発光層17の材料を含むインクを塗布し、焼成(乾燥)することにより、図12(a)に示すように発光層17を形成する(図14のステップS9)。
次に、第2中間層19の上に、第2金属をドープしながら電子輸送層20の有機材料を真空蒸着法で成膜することによって、図13(a)に示すように電子輸送層20を形成する(図14のステップS12)。
そして、対向電極22の上に、SiN、SiON等の光透過性材料を、スパッタ法、CVD法等で成膜することによって、図13(c)に示すように封止層23を形成する(図14のステップS14)。
[11.有機EL表示装置の全体構成]
図15は、有機EL表示装置1000の構成を示す模式ブロック図である。当図に示すように、有機EL表示装置1000は、有機EL表示パネル100と、これに接続された駆動制御部200とを有している。駆動制御部200は、4つの駆動回路210〜240と制御回路250とから構成されている。
[実施の形態1のまとめ]
実施の形態1に係る有機EL素子1によれば、第1中間層18によって、発光層17側から機能層21や対向電極22への不純物が侵入するのを防止し、且つ、第2中間層19の働きで対向電極22側から発光層17への電子注入を促進するので、良好な保管安定性と発光特性を実現することができる。
第2中間層19の膜厚D2は1nm以下であるため、第2中間層19における光吸収量を低く抑えて、良好な光取出し性を実現することができる。
なお、上記説明における膜厚の範囲や膜厚の割合についての条件は、必ずしも開口部14aで規定されるサブピクセルの全領域で満たさなくてもよく、サブピクセルの中央部での膜厚が、上記説明における膜厚の条件を満たしていればよい。
本実施形態にかかる有機EL素子は、上記実施の形態1で説明した有機EL素子1と同様の構成であるが、機能層21において、Ba単体の第2中間層19はなく、第1中間層18の上に、Baを含む電子輸送層20が直接形成されている。これは、以下のような点を考慮している。
それに加えて、第2中間層の膜厚を薄くしようとすると、均一な膜を形成することが難しく、層が形成されている部分と形成されていない部分とがまだらになることもある。
このような点を考慮して、本実施形態では、第1中間層18の上に、Baの単体からなる第2中間層を形成せずに、Baをドープした電子輸送層20を直接形成することとした。
本実施形態の有機EL素子においても、実施の形態1の有機EL素子1と同様に、第1中間層18を構成している第1金属のフッ化物(具体的にはNaF)が、発光層17側からの不純物の侵入を防止し、機能層21に含まれるBaが不純物と反応するのを防いで、機能層21の電子供給能の低下を抑制し、さらに、対向電極22が不純物によって劣化するのを防止する。
ただし、上記実施の形態1の有機EL素子では、電子輸送層20の直下に、第2金属(Ba)からなる第2中間層19が存在するので、電子輸送層20におけるドープ金属(Ba)の濃度を低く設定しても良好な発光効率が得られるのに対して、本実施の形態では第2中間層19が存在しないので、電子輸送層20におけるBaのドープ濃度は5〜40wt%の範囲の中でも、比較的高い濃度に設定することが好ましく、20〜40wt%の範囲が好ましいと考えられる。
<変形例>
以上、実施の形態1,2について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されることはなく、例えば以下に示すような変形例を実施することも出来る。
(変形例2)さらに、電子注入層や、透明導電層などの層を含む構成とすることもできる。電子注入層を備える場合には、電子注入層と電子輸送層とをまとめて、機能層として扱ってもよい。また、電子輸送層を備えず、電子注入層を備える場合には、電子注入層を機能層として扱ってもよい。
その場合、例えば、層間絶縁層12上に陰極としての画素電極13および隔壁層14を形成し、開口部14a内において、画素電極13の上に、機能層21、第1中間層18、発光層17を順に形成し、その上に、正孔輸送層16、正孔注入層15を形成し、その上に陽極としての対向電極22を形成する。
13 画素電極(陽極)
17 発光層
18 第1中間層
19 第2中間層
20 電子輸送層
21 機能層
22 対向電極(陰極)
Claims (20)
- 光反射性の陽極と、
前記陽極の上方に配された発光層と、
前記発光層上に配され、アルカリ金属またはアルカリ土類金属である第1金属のフッ化物を含む第1中間層と、
前記第1中間層の上に配され、電子輸送性および電子注入性のうち少なくとも一方の性質を有する機能層と、
前記機能層の上方に配され、金属層を含む光透過性の陰極と、
を有し、
前記機能層は、前記第1中間層に隣接する領域に、前記第1金属のフッ化物における前記第1金属とフッ素との結合を切る性質を有する第2金属を含み、
前記機能層は、前記第2金属の単体からなり前記第1中間層の直上に形成された第2中間層と、前記第2中間層の上に積層され電子輸送性の有機材料からなる有機層とで構成されており、
前記第1金属に対する前記第2金属のモル比は、1%以上10%以下である
有機EL素子。 - 前記金属層は、
銀、銀合金、アルミニウム及びアルミニウム合金から選択される材料で形成されている、
請求項1に記載の有機EL素子。 - 前記第2金属は、アルカリ金属またはアルカリ土類金属である、
請求項1または2に記載の有機EL素子。 - 前記機能層は、電子輸送性の有機材料で形成され、前記第2金属がドープされている、
請求項1〜3のいずれかに記載の有機EL素子。 - 前記機能層中における前記第2金属のドープ濃度は、
5wt%以上、40wt%以下である、
請求項4に記載の有機EL素子。 - 前記有機層に、前記第2金属がドープされている、
請求項5記載の有機EL素子。 - 前記第2金属は、バリウムである、
請求項1〜6のいずれかに記載の有機EL素子。 - 前記第1金属は、ナトリウムである、
請求項1〜7のいずれかに記載の有機EL素子。 - 前記発光層が青色光を発光し、前記陽極と陰極との間に共振器構造が形成され、
前記発光層から前記機能層までの合計の光学膜厚は、
当該光学膜厚を変化させたときに取り出される青色光の輝度/y値が示す特性において、1次干渉のピークに相当する光学膜厚の範囲内で、且つ輝度/y値が2次干渉のピークの極大値以上となる光学膜厚に設定されている、
請求項1〜8のいずれかに記載の有機EL素子。
ここで、上記輝度/y値は、有機EL素子から取り出される青色光の輝度とxy色度のy値との比である。 - 前記第1中間層において、前記第1金属の濃度は、前記有機層側よりも前記発光層側で高く、前記第2金属の濃度は、前記発光層側よりも前記有機層側で高い
請求項1〜9のいずれかに記載の有機EL素子。 - 前記第1中間層の膜厚に対する前記第2中間層の膜厚の比は、3%以上25%以下である
請求項1〜9のいずれかに記載の有機EL素子。 - 光反射性の陽極を形成し、
前記陽極の上方に発光層を形成し、
前記発光層上に、アルカリ金属またはアルカリ土類金属である第1金属のフッ化物を含む第1中間層を形成し、
前記第1中間層の上に、電子輸送性および電子注入性のうち少なくとも一方の性質を有する機能層を形成し、
前記機能層の上方に、金属層を含む光透過性の陰極を形成し、
前記機能層を形成する際に、
前記第1中間層に隣接する領域に、前記第1金属のフッ化物における前記第1金属とフッ素との結合を切る性質を有する第2金属を含有させ、
前記機能層を形成する際に、
前記第1中間層の上に、
前記第2金属の単体で第2中間層を形成し、
当該第2中間層の上に、電子輸送性の有機材料からなる有機層を形成し、
前記第1金属に対する前記第2金属のモル比は、1%以上10%以下である
有機EL素子の製造方法。 - 前記金属層は、
銀、銀合金、アルミニウム及びアルミニウム合金から選択される材料で形成される、
請求項12に記載の有機EL素子の製造方法。 - 前記第2金属は、アルカリ金属またはアルカリ土類金属である、
請求項12または13に記載の有機EL素子の製造方法。 - 前記機能層を形成する際に、
電子輸送性の有機材料に、前記第2金属をドープする
請求項14に記載の有機EL素子の製造方法。 - 前記機能層を形成する際に、
前記有機材料に前記第2金属をドープする濃度は、5wt%以上、40wt%以下である、
請求項15に記載の有機EL素子の製造方法。 - 前記第2金属は、バリウムである、
請求項12〜16のいずれかに記載の有機EL素子の製造方法。 - 前記第1金属は、ナトリウムである、
請求項12〜17のいずれかに記載の有機EL素子の製造方法。 - 前記第1中間層において、前記第1金属の濃度は、前記有機層側よりも前記発光層側で高く形成されており、前記第2金属の濃度は、前記発光層側よりも前記有機層側で高い形成されている
請求項12〜18のいずれかに記載の有機EL素子の製造方法。 - 前記第1中間層の膜厚に対する前記第2中間層の膜厚の比は、3%以上25%以下である
請求項12〜18のいずれかに記載の有機EL素子の製造方法。
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