本発明者は、部品の追加や鋼板の厚板化をせずに衝突性能を満たすリンフォースフロントピラーロアとリンフォースサイドシルアウタを有する車体側部構造について検討するため、まず、車両の衝突時において車体に生じる荷重と車体の変形挙動を調査した。調査にあたっては、車両の前面から衝突し、車体の狭領域に大荷重が入力する微小ラップ衝突を対象としてCAE解析を行った。
図16に、微小ラップ衝突時において、リンフォースフロントピラーロア110の下方前端部に生じた荷重の解析結果を示す。図16(a)は、解析対象とした車体側部構造の模式図であり、リンフォースフロントピラーロア110の下部とリンフォースサイドシルアウタ120の前端部との結合部近傍を示し、該結合部の前方には車輪Wが設けられている。
図16(b)〜(d)は、リンフォースフロントピラーロア110の下方前端部(図16(a)中のP点)における車体前後方向(X方向)、車体上下方向(Y方向)及び車体幅方向(Z方向)の衝突時における荷重の時間変化である。
この結果から、リンフォースフロントピラーロア110の下方前端部において、衝突後の約0.07msに荷重が最大となり、X方向、Y方向及びZ方向における最大荷重の比は、約25:7:1であることから、微小ラップ衝突においては車体前後方向(X方向)に次いで車体上下方向(Y方向)の荷重が高いことが判明した。
さらに、図17(a)に示すような、リンフォースフロントピラーロア130と、リンフォースサイドシルアウタ120と、センターピラー150を有する車体側部構造101において、車体前方側からリンフォースフロントピラーロア130の下部に衝突荷重が入力する場合についてCAE解析を行った結果、図17(b)に示すように、リンフォースサイドシルアウタ120は、その車体上方側の壁部とリンフォースフロントピラーロア130の下部とが接触する位置付近(図17中の丸印C)を起点として車体上下方向に座屈変形する挙動が見られた。
また、リンフォースフロントピラーロア130とは下部の形状が異なる図18に示すような、リンフォースフロントピラーロア140を有する車体側部構造103においても、車体前方側からリンフォースフロントピラーロア140の下部に衝突荷重が入力する場合についてCAE解析を行った結果、図18(b)に示すように、リンフォースサイドシルアウタ120は、その車体上方側の壁部とリンフォースフロントピラーロア140の下部とが接触する位置付近(図18中の丸印C)を起点として車体上下方向に座屈変形する挙動が見られた。
そして、リンフォースサイドシルアウタ120の座屈変形に伴ってリンフォースフロントピラーロア130又は140の下部も車体上下方向に変形が生じることにより、実際の自動車車両においては車室内の搭乗員の足元付近に損傷を与える可能性が高いことが判明した。
なお、実際の自動車車両においては、車体側部構造の外面にアウタパネル等が設置されており、通常、アウタパネルには薄板軟鋼板が使用されている。しかしながら、このようなアウタパネルは車両の衝突性能にはほとんど寄与しない。
そこで、図16〜18に示した結果を基にさらに検討を進めたところ、微小ラップ衝突等の前面衝突においては、リンフォースフロントピラーロアの前面側から入力した衝突荷重がリンフォースフロントピラーロア下方の前端部を変形させることにより衝突エネルギーを吸収してリンフォースサイドシルに伝達する荷重を低減させることと、リンフォースサイドシルアウタの車体上下方向に対する座屈耐力を向上させる必要があることが非常に重要であることが分かった。
さらに、リンフォースフロントピラーロアとリンフォースサイドシルアウタを備えた車体側部構造においては、衝突性能以外の車体性能(例えば、操縦安定性に大きく寄与するねじり剛性等)も確保することが要求される。
そこで発明者は、衝突性能を向上させるとともに、車体性能として十分な剛性を確保する車体側部構造についてさらに検討を進めた。その結果、リンフォースサイドシルアウタに補強手段を設け、かつ当該補強手段の前端がリンフォースフロントピラーロアの前端から所定距離に位置させることにより、車体剛性を低下させることなく車両の衝突性能を向上できることを見出した。
本発明に係る車体側部構造の実施の形態について、図1乃至5を参照して以下に説明する。
本実施の形態に係る車体側部構造1は、図1に示すように、自動車の車体上下方向に延在するフロントピラーロア(図示なし)内に配設されるリンフォースフロントピラーロア10と、車体前後方向に延在するサイドシル(図示なし)内に配設されるリンフォースサイドシルアウタ(A)30を有するものであって、リンフォースサイドシルアウタ(A)30にはリンフォースサイドシルアウタ(A)30を補強する補強手段としてビード形状部41が設けられている。
リンフォースフロントピラーロア10は、車体の上方から下方に向かって延在する長辺部11と、長辺部11の下端から車体後方側に湾曲する湾曲部13と湾曲部13の後端から車体後方側に延出する短辺部15を有し、車体幅方向の車体内側に向かって開口したハット断面形状である。
湾曲部13及び短辺部15は、ハット断面形状を保ったまま車体上方から車体後方に向かって湾曲して延出しているため、リンフォースフロントピラーロア10は、車体後方側から見て袋状に閉じた形状となっている。
図1に示す車体側部構造1は、図2に例示するように、主に長辺部11の開口を塞ぐリンフォースフロントピラーロアインナ(A)21(図2参照)と、主に湾曲部13と短辺部15の開口を塞ぐリンフォースフロントピラーロアインナ(B)23(図2参照)とがそれぞれ接合して閉断面が形成されている。
リンフォースサイドシルアウタ(A)30は、リンフォースフロントピラーロア10の湾曲部13及び短辺部15が車体幅方向の車体外側から被装可能な直線状であり、車体側方側の壁部33と、壁部33の上端から連続する車体上方側の壁部31と、壁部33の下端から連続する車体下方側の壁部35と、壁部31及び壁部35からそれぞれ連続するフランジ部を有し、車体幅方向の車内側に向かって開口したハット断面形状である。
図1に示す車体側部構造1において、リンフォースサイドシルアウタ(A)30の車体前方側の前端部30a(図2参照)に、リンフォースフロントピラーロア10の湾曲部13及び短辺部15が車体幅方向の車体外側から被装されて結合されている。
さらに、リンフォースサイドシルアウタ(A)30は、ハット断面形状のリンフォースサイドシルインナ51とフランジ部同士が接合して閉断面を形成し、該閉断面の内部にはリンフォースサイドシルアウタ(B)53が配設されている(図2参照)。
ビード形状部41(長さLb)は、リンフォースサイドシルアウタ(A)30の車体側方側の壁部33において車体後方に向かって直線状に形成されてなるものであり、車体幅方向の車体外側に凸形状である。
ビード形状部41の前端41aは、リンフォースサイドシルアウタ(A)30の前端部30a(図2参照)にリンフォースフロントピラーロア10の湾曲部13及び短辺部15が被装された状態で、リンフォースフロントピラーロア10の前端10aから車体後方側に距離L1の位置にある(図1参照)。
そして、当該距離L1は、リンフォースフロントピラーロア10の前端10aから湾曲のR止まり13a(湾曲部13の後端であって、リンフォースフロントピラーロア10の後方側に湾曲する湾曲部13と短辺部15との車体上方側の境界)までの距離をL0としたときに、0.5≦L1/L0≦1.2の関係を満たす(図1及び図3参照)。
ビード形状部41の後端41bは、リンフォースサイドシルアウタ(A)30の前端部30a(図2参照)にリンフォースフロントピラーロア10の湾曲部13及び短辺部15が被装された状態で、リンフォースフロントピラーロア10の前端10aから車体後方側に距離L2(=L1+Lb)の位置であって、センターピラー80の下部先端(センターピラー80とリンフォースサイドシルアウタ(A)30とが接触する位置)から車体前方側に距離L3の位置にある(図3参照)。そして、ビード形状部41の後端41b位置までの距離L2は、1.3≦L2/L0≦3.2であることが望ましい。
なお、ビード形状部41の形状として、ビード形状部41の長手方向の中心軸に沿ったビード長さLb(図1及び図3参照)、壁部33上における前記中心軸に直交する方向のビード幅及び車体幅方向のビード深さを適宜設定することができる。
ビード形状部41のビード長さLbは、リンフォースサイドシルアウタ(A)30の車体前後方向の長さの5%以上35%以下であることが望ましい。
さらに、ビード形状部41のビード幅は、リンフォースサイドシルアウタ(A)30の壁部33の高さの3%以上30%以下に設定することが望ましく、ビード深さは、当該壁部33の高さHの3%以上15%以下に設定することが望ましい。
また、前記壁部33に形成するビード形状部41の車体上下方向の位置は、前記壁部33の高さの10%以上90%以下の範囲内であることが望ましい。
さらに、ビード形状部41の長手方向の中心軸とリンフォースサイドシルアウタ(A)30の長手方向とのなす角度は、0°以上30°以下の範囲内に設定することが望ましい。
ビード形状部41の中心軸とリンフォースサイドシルアウタ(A)30の長手方向とのなす角度が0°の場合、ビード長さLbは車体前後方向におけるビード形状部41の長さであり、さらに、ビード幅は車体上下方向におけるビード形状部41の幅である。
また、図1に示す本実施の形態に係る車体側部構造1において、ビード形状部41は、車体幅方向の外側に向かって凸形状であるが、本発明に係る車体側部構造におけるビード形状部は、車体幅方向の内側に向かって凸となる凹み形状であっても良い。
なお、上記のビード形状部41の望ましい形状及び位置は、衝突時の車体上下方向変形防止とねじり剛性向上を両立することを、後述する実施例にて実証した。
以上より、本実施の形態に係る車体側部構造1においては、リンフォースサイドシルアウタ(A)30の車体側方側の壁部33にビード形状部41を設け、ビード形状部41の前端41aがリンフォースフロントピラーロア10の前端10aから車体前後方向において所定の距離を離れて位置していることにより、車体前方から衝突荷重が入力した場合、ビード形状部41よりも車体前方側のリンフォースサイドシルアウタ(A)30及びリンフォースフロントピラーロア10の下部において衝突エネルギーが吸収されると共に、リンフォースサイドシルアウタ(A)30の車体上下方向の座屈耐力が向上するため、補強部品等を追加しなくても衝突性能の向上が可能となる。
また、車体側部構造1は、リンフォースサイドシルアウタ(A)30の車体幅方向の壁部33にビード形状部41を設けたものであるため、衝突性能を保ったまま鋼板の板厚を低減することができ、軽量化が可能となる。
さらに、車体側部構造1は、例えばプレス成形によりリンフォースサイドシルアウタ(A)30を製造する際に一定長さのビード形状部41を同時に形成することができるため、製造コストや工程数を増加させることもない。
上記の説明において、リンフォースフロントピラーロア10は、その下部が袋状に形成されたものであるが、本発明に係る車体側部構造は、図4及び図5に示すようにリンフォースフロントピラーロア60の湾曲部63及び短辺部65の下部が開放形状である車体側部構造3であっても良い。
車体側部構造3においても、ビード形状部41は、リンフォースサイドシルアウタ(A)30の車体側方側の壁部33に設けられており、その形状及び位置は車体側部構造1と同様に規定される。
また、上記の説明では、ビード形状部41は、車体幅方向において外側に凸形状のものであるが、車体幅方向において内側に向かって凸となる凹み形状のものであっても良い。
さらに、リンフォースサイドシルアウタ(A)30に設ける補強手段は、リンフォースサイドシルアウタ(A)30の車体側方側の壁部33に形成されたビード形状部41に限るものではなく、例えば、リンフォースサイドシルアウタ(A)30の断面形状に沿って設けられたリンフォース(補強部材)、リンフォースサイドシルアウタ(A)30の壁部同士のコーナー部に配置したL断面補強部品、バルクヘッドの設置、樹脂充填、コの字型リンフォースの配置等であっても良く、これらの補強手段を設ける部位は、車体側方側の壁部33に限定されるものではなく、これらの補強手段が、リンフォースフロントピラーの前端から所定の距離L1離れた位置よりも車体後方側に設けられたものであれば良い。
または、補強手段として、リンフォースサイドシルアウタ(A)30の下端のフランジ部まで届くリンフォースフロントピラーロアインナを用いたり、リンフォースフロントピラーロア10内にバルクヘッドを設けたりしても良い。
これら補強手段の設置位置は、前端が0.5/L1≦L0≦1.2、後端が1.3≦L2/L0≦3.2であることが望ましい。
上記のようにリンフォースサイドシルアウタに補強手段を設けることにより、補強手段の前端よりも車体前方側におけるリンフォースフロントピラーロアおよびリンフォースサイドシルアウタを変形させ易くすることによって衝突エネルギーを吸収するとともに、補強手段を設けた部位付近における車体上下方向に対する座屈耐力を向上させることにより、リンフォースフロントピラーロアとリンフォースサイドシルアウタを有する車体側部構造の衝突性能を向上させることができる。
本発明に係る車体側部構造の作用効果について確認するための具体的な実験を行ったので、その結果について以下に説明する。
実施例1では、リンフォースサイドシルアウタの車体側方側の壁部にビード形状部を設けることによる車体変形の抑制効果について、車両の前面からの微小ラップ衝突を想定した車体側部構造の変形挙動のCAE解析により検証した。
図6及び図7に、CAE解析における車体側部構造の解析モデルを示す。図6は、下部が袋状のリンフォースフロントピラーロア10を有してなる車体側部構造1、図7は、下部が開放形状のリンフォースフロントピラーロア60を有してなる車体側部構造3であり、車体側部構造1及び車体側部構造3はそれぞれ、図2及び図5に示す各部品から構成されている。
実施例1におけるCAE解析では、車体側部構造1及び車体側部構造3の各部品の板厚及び材質として、どちらともに、リンフォースフロントピラーロア10及び60には板厚1.6mm、980MPa級鋼板を、リンフォースフロントピラーロアインナ(A)21及びリンフォースフロントピラーロアインナ(B)23には、板厚1.8mm(又は1.6mm)、1470MPa級鋼板、リンフォースサイドシルアウタ(A)30には板厚1.6mm、1180MPa級鋼板、リンフォースサイドシルインナ51及びリンフォースサイドシルアウタ(B)53には板厚1.6mm、1470MPa級鋼板を用いた。
車体側部構造1は、図6に示すように、リンフォースサイドシルアウタ(A)30にリンフォースフロントピラーロア10の湾曲部13及び短辺部15が被装されて結合されており、又、車体側部構造3は、図7に示すように、リンフォースサイドシルアウタ(A)30にリンフォースフロントピラーロア60の湾曲部63及び短辺部65が被装されて結合されている。
そして、車体側部構造1及び3ともに、リンフォースサイドシルアウタ(A)30の車体側方側の壁部33には、車体の後方側に向かって延びるビード形状部41が形成されている。
実施例1(図8、図10の解析結果)におけるビード形状部の形状及び位置は、L1=310mm、L2=50mm、ビード幅15mmである。
実施例1におけるCAE解析では、図6及び図7に示すように、リンフォースサイドシルアウタ(A)30の後端部及びリンフォースフロントピラーロア10又は60の上端部の一部(図6及び図7中の太い破線部)を完全拘束した条件の下で、リンフォースフロントピラーロア10又は60の下部に対して車体前方側から剛体パンチを時速56kmで衝突させて、変形挙動を求めた。
図8に車体側部構造1の変形挙動の解析結果を示す。図8(a)は衝突前の形状、図8(b)は、衝突後0.123msec(剛体パンチの移動量200mm)における形状及び塑性ひずみのコンター図である。
又、比較対象として、図9にビード形状部が形成されていないリンフォースサイドシルアウタ(A)70とリンフォースフロントピラーロア10を結合してなる従来の車体側部構造7における変形挙動の解析結果を示す。図9(a)は、衝突前の形状、図9(b)は、衝突後0.123msec(剛体パンチの移動量200mm)における車体側部構造7の形状及び塑性ひずみのコンター図である。
図8及び図9中の丸印A及びBは、衝突による車体上下方向の変形量を評価する位置であり、衝突前におけるAB間の車体上下方向距離は170mmである。
ビード形状部41を設けた車体側部構造1の場合(図8(b))、衝突後におけるAB間の車体上下方向距離は170mmであるのに対し、ビード形状部を付与しない車体側部構造7の場合(図9(b))、衝突後におけるAB間の車体上下方向距離は181mmであり、ビード形状部を設けることによりリンフォースサイドシルアウタ(A)30の座屈耐力が向上し、車体上下方向の変形が抑制されたことが分かる。
図10に車体側部構造3の変形挙動の解析結果を示す。図10(a)は、衝突前の形状、図10(b)は、衝突後0.123msec(剛体パンチの移動量200mm)における形状及び塑性ひずみのコンター図である。
又、比較対象として、図11にビード形状部が形成されていないリンフォースサイドシルアウタ(A)70とリンフォースフロントピラーロア60を結合してなる従来の車体側部構造9における変形挙動の解析結果を示す。図11(a)は、衝突前の形状、図11(b)は、衝突後0.123msec(剛体パンチの移動量200mm)における車体側部構造9の形状及び塑性ひずみのコンター図である。
図10及び図11中の丸印A及びBは、衝突による車体上下方向の変形量を評価する位置であり、衝突前におけるAB間の車体上下方向距離は170mmである。
ビード形状部41を壁部33に形成した車体側部構造3の場合(図10(b))、衝突後におけるAB間の車体上下方向距離は180mmであるのに対し、ビード形状部を付与しない車体側部構造9の場合(図9(b))、衝突後におけるAB間の車体上下方向距離は192mmであった。
これより、下部が開放形状のリンフォースフロントピラーロア60を有する車体側部構造3においても、リンフォースサイドシルアウタ(A)30の壁部33にビード形状部41を設けることによりリンフォースサイドシルアウタ(A)30の座屈耐力が向上し、車体上下方向の変形が抑制されたことが分かる。
図12に、本発明に係る車体側部構造1及び従来の車体側部構造7において、衝突後のリンフォースサイドシルアウタ(A)30及び70の形状を示す。なお、図12は、リンフォースサイドシルアウタ(A)30及び70の形状を詳細に見るため、リンフォースフロントピラーロア10を取り外した状態である。
従来の車体側部構造7においては(図12(a))、リンフォースサイドサイドシルアウタ(A)70の車体側方側の壁部にビード形状部が形成されておらず、リンフォースサイドシルアウタ(A)70の中間部に座屈が発生している(図12(a)の丸印C)。
これに対し、リンフォースサイドシルアウタ(A)30の壁部33にビード形状部41を付与した本発明に係る車体側部構造1の場合(図12(b))、リンフォースサイドシルアウタ(A)30の中間部に座屈はなかった。
さらに、従来のリンフォースサイドシルアウタ(A)70と、本発明に係るリンフォースサイドシルアウタ(A)30の車体前方側の開口部における変形を比較すると、リンフォースサイドシルアウタ(A)70の先端付近においては座屈の発生が3箇所(図12(a)中のb1〜b3)見られた。リンフォースサイドシルアウタ(A)30の先端付近においても座屈の発生が4箇所見られた(図12(b)中のb1〜b4)。
すなわち、本発明に係る車体側部構造1及び3においては、リンフォースサイドシルアウタ(A)30にビード形状部41を形成しても、車体前方側においては衝突により座屈変形が生じることで衝突エネルギーが吸収されることに加え、リンフォースフロントピラーロア10の湾曲部13における湾曲のR止まり13aと接触するリンフォースサイドシルアウタ(A)30の部位近傍における座屈耐力が向上し、当該部位を起点とする座屈変形が抑制されることが示された。
さらに、ビード形状部41の有無及びリンフォースサイドシルアウタ(A)30の板厚を変更した時の衝突特性について、車体側部構造1におけるAB間の車体上下方向の変形量の解析結果を図13に示す。
図13より、リンフォースサイドシルアウタ(A)30の板厚が等しい場合(1.2mm)において、ビード形状部41有りとビード形状部無しの結果を比較すると、ビード形状部41を付与することにより車体上下方向の変形量が大幅に低減していることが分かる。
この結果は、リンフォースサイドシルアウタ(A)30にビード形状部41を付与することにより、衝突性能が向上することを示している。
また、リンフォースサイドシルアウタ(A)30の板厚が1.5mmでビード形状部なしと、リンフォースサイドシルアウタ(A)30の板厚が1.2mmでビード形状部ありを比較すると、変形量は同程度であった。
この結果は、リンフォースサイドシルアウタ(A)30にビード形状部41を付与することにより、衝突性能を低下させずにリンフォースサイドシルアウタ(A)30の板厚を減少できることを示しており、この場合においては、リンフォースサイドシルアウタ(A)30の板厚を1.5mmから1.2mmに減少することで、20%の軽量化が達成できることが示唆される。
以上より、リンフォースサイドシルアウタの車体側方側の壁部にビード形状部を形成することにより、衝突性能を向上させることに加え、衝突性能を維持したまま軽量化が可能であることが実証された。
次に、リンフォースサイドシルアウタに付与するビード形状部の形状及び位置の違いによる効果を確認するための実験を行った。
実施例2では、自動車車両の微小ラップ衝突を想定した荷重が車体側部構造に作用した時の変形挙動と、リンフォースサイドシルアウタにねじり荷重が作用した時のねじり剛性の2通りについてCAE解析を行った。
変形挙動のCAE解析は、前述の実施例1と同様、図1及び図4に示す車体側部構造1及び車体側部構造3を解析対象とした。そして、車体側部構造1及び車体側部構造3は、図2及び5にそれぞれ示す各部品から構成されており、各部品の材質及び板厚は実施例1と同様に設定した。
そして、図6及び7に示すように、リンフォースサイドシルアウタ(A)30の後端部及びリンフォースフロントピラーロア10の上端部の一部(図6及び7中、太い破線部)を完全拘束した条件の下で、リンフォースフロントピラーロア10の湾曲部13に対して車体前方側から剛体パンチを時速56kmで衝突させて、変形挙動を評価した。
実施例2では、衝突後におけるリンフォースサイドシルアウタ(A)30の先端(図6又は図7中C点)とリンフォースサイドシルアウタ(A)30の下部稜線上の特定点(図6又は図7中D点)との車体上下方向距離の変形量(=(衝突後のCD間の車体上下方向距離)−(衝突前のCD間の車体上下方向距離))を算出した。ここで、衝突前におけるCD間の車体上下方向距離は93mmであった。
CAE解析により、ビード形状部41の形状(車体上下方向のビード幅、車体幅方向のビード深さ、車体前後方向のビード長さ)、位置(車体上下方向、車体前後方向における前端)、ビード角度及び凸形状の向きを変更して、衝突による変形量を評価した。
一方、ねじり剛性のCAE解析は、図14に示す供試材90を解析対象とし、供試材90は、板厚1.6mm、長さ900mm、密度7.9*10-3g/m3、ヤング率210GPa、ポアソン比0.3の部材からなるリンフォースサイドシルアウタであり、供試材90の壁部91には、その長手方向に所定長さのビード形状部が形成されている。
そして、供試材90の長手方向における一方の端部を完全拘束した条件の下で、他方の端部に一定荷重(図14中の矢印の向きに1kN・mのモーメント)を与えた時のねじり角を求めた。
表1に、変形挙動のCAE解析により求めた衝突後13msにおける車体上下方向変形量と、ねじり剛性のCAE解析により求めたねじり角を示す。
ここで、表1及び後述する表2において、ビード形状部41のビード幅W及びビード深さDは、リンフォースサイドシルアウタ(A)30の車体側方側の壁部33の高さ(=100mm)を基準とした相対値、リンフォースフロントピラーロア10又は60の前端からビード形状部41の前端までの距離L1およびビード形状部41の後端までの距離L2は、リンフォースフロントピラーロア10又は60の前端10a又は60aから湾曲のR止まり13a又は63aまでの距離L0(=310mm)を基準とした相対値としてのL1/L0又はL2/L0(図3及び図4参照)、ビード長さLbはリンフォースサイドシルアウタ(A)30の車体前後方向の長さ(=1900mm)を基準とした相対値を示している。
発明例1〜18は、下部が袋状のリンフォースフロントピラーロア10を有する車体側部構造1を対象としたものであり、発明例1又は発明例8を基準とし、ビード形状部41の車体上下方向におけるビード幅W(発明例3〜6)、車体幅方向におけるビード深さD(発明例7及び8)、車体前後方向におけるビード長さLb(発明例9〜11)、ビード形状部41の長手方向中心軸を基準とする車体上下方向位置(発明例14)、ビード形状部41の車体幅方向における凸状の向き(発明例16)、ビード形状部41の長手方向の中心軸とリンフォースサイドシルアウタ(A)30の長手方向の中心軸とのなす角度(発明例16〜18)それぞれを本発明の好適範囲内で変更し、ビード形状部41の前端位置(発明例12及び13)を本発明の範囲内で変更したものである。
ビード形状部41の長手方向の中心軸とリンフォースサイドシルアウタ(A)30の長手方向中心軸のなす角度が0でない場合は、ビード形状部41におけるリンフォースサイドシルアウタ(A)30長手方向を基準とする角度範囲を好適にするとよい。
発明例19〜29は、下部が開放形状のリンフォースフロントピラーロア60を有する車体側部構造3を対象としたものであり、発明例19又は発明例26を基準とし、ビード形状部41の車体上下方向におけるビード幅W(発明例21〜23)、車体幅方向におけるビード深さD(発明例24)、車体前後方向におけるビード長さLb(発明例25及び26)、ビード形状部41の車体幅方向における凸状の向き(発明例28)、ビード形状部41の長手方向の中心軸とリンフォースサイドシルアウタ(A)30の長手方向の中心軸とのなす角度(発明例28、29)それぞれを本発明の好適範囲内で変更し、ビード形状部41の前端位置(発明例27)を本発明の範囲内で変更したものである。
さらに、表2に、従来例としてビード形状部を付与しない従来の車体側部構造7及び9、並びに、比較例としてビード形状部41の形状又は位置が好適範囲外の車体側部構造1又は3における変形挙動について、CAE解析により求めた衝突後13msにおける車体上下方向変形量と、ねじり剛性のCAE解析により求めたねじり角を示す。
表1と同様、表2においては、ビード形状部41のビード幅W及びビード深さDは、リンフォースサイドシルアウタ(A)30の車体側方側の壁部33の高さ(=100mm)を基準とした相対値、リンフォースフロントピラーロア10又は60の前端10a又は60aからビード形状部41の前端41aまでの距離L1は、リンフォースフロントピラーロア10又は60の前端から湾曲のR止まりまでの距離L0を基準とした相対値としてのL1/L0又はL2/L0(図3及び図4参照)、ビード長さLbはリンフォースサイドシルアウタ(A)30の車体前後方向の長さを基準とした相対値である。
比較例1〜7は、下部が袋状のリンフォースフロントピラーロア10を有する車体側部構造1を対象としたものであり、発明例1を基準とし、ビード形状部41の車体上下方向におけるビード幅W(比較例1及び2)、車体幅方向におけるビード深さD(比較例3及び4)、車体前後方向におけるビード長さLb(比較例5)、ビード形状部41の長手方向の中心軸とリンフォースサイドシルアウタ(A)30の長手方向の中心軸とのなす角度(比較例7)それぞれを本発明の好適範囲外で変更したものであり、比較例5及び6に関しては、リンフォースフロントピラーロア60の前端60aからビード形状部41の前端41aまでの距離の関係L1/L0が本発明の範囲外である。
比較例8〜10は、下部が開放形状のリンフォースフロントピラーロア60を有する車体側部構造3を対象としたものであり、発明例1を基準とし、ビード形状部41の車体上下方向におけるビード幅W(比較例8及び9)、ビード形状部41の車体幅方向における凸状の向き及びビード長さLb(比較例10)それぞれを本発明の好適範囲内で変更したものであり、比較例10に関しては、リンフォースフロントピラーロア60の前端60aからビード形状部41の前端41aまでの距離L1が本発明の範囲外である。
表1に示す本発明例における車体上下方向変形量およびねじり角の結果について、以下のとおり説明する。
発明例3〜6は、ビード幅Wが本発明の好適範囲内(車体側方側の壁部33の高さの3%以上30%以下)であり、従来例(表2参照)に比べると、車体上下方向の変形量が大幅に減少し、ねじれ角に関してはほぼ同程度であった。
発明例7及び8は、ビード深さDが本発明の好適範囲内(車体側方側の壁部33の高さの3%以上15%以下)であり、従来例に比べると、車体上下方向の変形量が大幅に減少し、ねじれ角はほぼ同程度であった。
発明例9〜11は、ビード長さLbが本発明の好適範囲内(リンフォースサイドシルアウタ(A)30の車体前後方向の長さの5%以上35%以下)であり、従来例に比べると、車体上下方向の変形量が大幅に減少し、ねじれ角はほぼ同程度であった。
発明例12及び13は、リンフォースフロントピラーロア10の前端10aからビード形状部41の前端41aまでの距離の関係L1/L0が本発明の範囲内(リンフォースフロントピラーロア10の前端10aから湾曲部13における湾曲のR止まり13aまでの距離をL0としたとき、0.5≦L1/L0≦1.2)であり、従来例に比べると、車体上下方向の変形量が大幅に減少し、ねじれ角はほぼ同程度であった。
発明例14は、ビード形状部41の車体上下方向の位置が本発明の好適範囲内(車体側方側の壁部33の高さの10%以上90%以下)であり、従来例に比べると、車体上下方向の変形量が大幅に減少し、ねじれ角はほぼ同程度であった。
発明例15は、ビード形状部41の後端41bがセンターピラーの前端近傍に位置するものであって、リンフォースフロントピラーロア60の前端60aからビード形状部41の前端41aまでの距離の関係L1/L0が本発明の範囲内、かつビード形状部41の後端41bまでの距離の関係L2/L0が本発明の好適範囲内(リンフォースフロントピラーロア10の前端10aから湾曲部13における湾曲のR止まり13aまでの距離をL0としたとき、1.3≦L2/L0≦3.2)であり、従来例に比べると、車体上下方向の変形量が大幅に減少し、ねじれ角はほぼ同程度であった。
発明例16は、ビード形状部41の凸形状の向きが車体幅方向において内側のものであり、従来例に比べると、車体上下方向の変形量が大幅に減少し、ねじれ角はほぼ同程度であった。
発明例17及び18は、ビード形状部41の長手方向の中心軸とリンフォースサイドシルアウタ(A)30の長手方向の中心軸とのなす角度が本発明の範囲内であり、従来例に比べると、車体上下方向の変形量が大幅に減少し、ねじれ角はほぼ同程度であった。
さらに、下部が開放形状のリンフォースフロントピラーロア60を有する車体側部構造3を対象とした発明例21〜29は、ビード幅(発明例21〜23)、ビード深さ(発明例24、25)、ビード長さ(発明例26)、ビード形状部41の車体幅方向における凸形状の向き(発明例28)、ビード角度(発明例29)を本発明の好適範囲内で変更したものであり、又、発明例27を含めてリンフォースフロントピラーロア60の前端60aからビード形状部41の前端41aまでの距離の関係L1/L0を本発明の範囲内で変更しているため、いずれの結果も、表2に示す従来例に比べると、ねじれ剛性を低下させずに車体上下方向の変形量は大幅に減少した。
次に、表2に示す比較例における車体変形量およびねじり角の結果について、以下のとおり説明する。
比較例1及び8は、ビード幅Wが本発明の好適範囲よりも小さく、ねじれ角に関しては従来例とほぼ同程度であり、車体上下方向の変形量は、従来例よりは減少していたが発明例3〜6より大きかった。
比較例2及び9は、ビード幅Wが本発明の好適範囲よりも大きく、車体上下方向の変形量は大幅に減少して発明例3〜6と同程度であったが、従来例と比べてねじり角は増加した。
比較例3は、ビード深さDが本発明の好適範囲よりも小さく、ねじれ角に関しては従来例とほぼ同程度であり、車体上下方向の変形量は、従来例よりは減少していたが発明例7及び8と比べて大きかった。
比較例4は、ビード深さDが本発明の好適範囲よりも大きく、車体上下方向の変形量は大幅に減少して発明例3〜6と同程度であったが、従来例と比べてねじり角は増加した。
比較例5及び10は、ビード長さLbが本発明の好適範囲よりも大きく、又、リンフォースフロントピラーロア60の前端60aからビード形状部41の前端41aまでの距離の関係L1/L0が本発明の範囲外であり、従来例と比べて車体上下方向の変形量はいくらか減少するものの、ねじり角は増加する結果で、特に比較例10は特許文献3及び4に相当する形状であって、ねじれ角が著しく増加して問題であった。
比較例6は、リンフォースフロントピラーロア60の前端60aからビード形状部41の前端41aまでの距離の関係L1/L0が本発明の範囲外であり、ねじれ角に関しては従来例とほぼ同程度であったが、発明例9〜11と比べて車体上下方向の変形量は大きい。
比較例7は、ビード形状部41の長手方向の中心軸とリンフォースサイドシルアウタ(A)30の長手方向の中心軸とのなす角度が本発明の好適範囲外であり、ねじれ角に関しては従来例とほぼ同程度であったが、発明例17及び18と比べると車体上下方向の変形量は大きい。
なお、発明例1〜29は、リンフォースサイドシルアウタ(A)30の車体側方側の壁部33に補強手段としてビード形状部41を形成しただけのものであるため、従来例に比べて重量を増加させるものではないことは自明である。
さらに、補強手段であるビード形状部41のビード長さについては、リンフォースサイドシルアウタ(A)30の車体前後方向の長さに対して所定の比率で設定した場合と、リンフォースサイドシルアウタ(A)30の全長にわたって設定した場合についてねじり剛性のCAE解析を行った。図15に、CAE解析により得られたねじり角の結果を示す。
ビード形状部なしの場合におけるねじり角と比較すると、供試材90に設けたビード形状部のビード後端41bまでの距離の関係L2/L0がL2/L0≦3.2ではほぼ同程度のねじり角であるが、ビード形状部のビード後端41bまでの距離の関係L2/L0がL2/L0>3.2(比較例5及び10)では、ビード長さとともにねじり角は大きく増加する結果となった。
上記の解析結果から、ビード形状部41をその前端41aまでの距離の関係L1/L0を0.5≦L1/L0≦1.2とし、その後端41bまでの距離の関係L2/L0を1.3≦L2/L0≦3.2に設定することで、ねじり剛性の低下を防ぐことができることが示唆される。
以上、表1、表2及び図15に示した結果より、ビード形状部41の前端41aまでの距離の関係L1/L0および後端41bまでの距離の関係L2/L0に係る本発明の範囲内、並びに、ビード形状部41の形状(ビード幅W、ビード深さD、ビード長さLb)及び位置(ビード角度、車体上下方向の位置)に係る本発明の好適範囲が実証された。
よって、リンフォースフロントピラーロアとリンフォースサイドシルアウタを有する車体側部構造において、リンフォースサイドシルアウタに補強手段としてビード形状部を設け、該ビード形状部の形状及び位置を適宜設定することにより、重量を増加させずに、リンフォースサイドシルアウタの車体上下方向に対する座屈耐力が向上し、車体のねじり剛性等の性能を低下することなく、車両の衝突性能を向上させることができることが示された。