図1に従い、メッキ膜を有する成形体の製造方法について説明する。まず、ポリアミドを含む熱可塑性樹脂と、ミネラルと、親水性セグメントを含むブロック共重合体と、金属微粒子とを含有する成形体を用意する(図1、ステップS1)。
[成形体]
成形体は、熱可塑性樹脂としてポリアミドを含有する。ポリアミドは吸水性が高いため、メッキ液の浸透が促されてメッキ膜が安定して成長する。また、ポリアミドは剛性、耐熱性及び耐薬品性に優れるため、樹脂部品の剛性、耐熱性及び耐薬品性が確保できる。熱可塑性樹脂に含まれるポリアミドとしては、特に限定されず、ナイロン6(PA6)、ナイロン66(PA66)、ナイロン12(PA12)、ナイロン11(PA11)、ナイロン6T(PA6T)、ナイロンMXD6(PAMDX6)、ナイロン6・66共重合体等を用いることができる。メッキ膜の形成し易さから、吸水性が高く膨潤しやすいナイロン6が好ましい。成形体の熱可塑性樹脂は、主成分がポリアミドであることが好ましく、例えば、熱可塑性樹脂中にポリアミドは30重量%〜100重量%含まれることが好ましく、60重量%〜98重量%含まれることがより好ましい。
成形体の熱可塑性樹脂は、ポリアミド以外の樹脂を含んでもよいし、含まなくてもよい。ポリアミド以外の樹脂としては、特に限定されず、ポリプロピレン、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート、アモルファスポリオレフィン、ポリエーテルイミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリテーテルエーテルケトン、ABS系樹脂、ポリフェニレンサルファイド、ポリアミドイミド、ポリ乳酸、ポリカプロラクトン等を用いることができる。
成形体中の熱可塑性樹脂の含有量は、成形体の機械的強度の観点からは多い方がよい。逆に、無電解メッキの反応性の観点からは、熱可塑性樹脂の含有量は少なく、金属微粒子や親水性セグメントを含むブロック共重合体の含有量が多い方がよい。この二つの観点から、成形体中の熱可塑性樹脂の含有量は、70〜99.9重量%が好ましく、85〜99.5重量%がより好ましい。
成形体が含有するミネラルとしては、例えば、ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、二酸化ケイ素等のケイ酸塩、ケイ酸、酸化カルシウム、炭酸カルシウム、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、硫酸バリウム、及びそれを含む化合物(鉱物)が挙げられる。特に、成形物の表面性(外観)や機械強度、寸法安定性およびコストの観点から、ケイ酸カルシウム等のケイ酸塩、水酸化マグネシウムが好ましい。同様に、酸化カルシウム、二酸化ケイ素も本実施形態に用いるミネラルとして好ましい。
成形体に含有されるミネラルの形状は、特に限定されないが、粒状又は略球状であることが好ましい。粒状又は略球状のミネラルは、例えば、針状のファイバーと比較して、成形体中において目立たず、成形体の意匠性を高めることができる。
本実施形態では、成形体中にミネラルを含有することにより、成形体の反りを抑制し、剛性及び寸法安定性を向上させることができる。成形体中のミネラルの含有量は、成形物の表面性(外観)や機械強度、寸法安定性、成形性(成形のし易さ)等の観点から、10〜65体積%が好ましく、30〜50体積%がより好ましい。
また、成形体が含有するミネラルは、鉛(Pb)及び硫黄(S)の少なくとも一方を含んでもよい。成形体が含有するミネラルは、コスト低減の観点から、天然鉱物であることが好ましく、天然鉱物は、鉛(Pb)及び/又は、硫黄(S)を含んでいることが多い。ミネラルに含まれる鉛及び硫黄は、鉛単体、硫黄単体でもよく、また、鉛化合物、硫黄化合物でもよい。鉛化合物としては、例えば、硫化鉛、硫酸鉛、炭酸鉛が挙げられ、硫黄化合物としては、例えば、硫化鉄、硫化銅、硫化亜鉛、硫化ニッケルが挙げられる。成形体中の鉛の含有量は、0.1重量ppm〜1重量ppmであってもよく、1重量ppm〜5重量ppmであってもよい。成形体中の硫黄の含有量は、0.1重量ppm〜0.5重量ppmであってもよく、0.6重量ppm〜1重量ppmであってもよい。
本実施形態では、上述した熱可塑性樹脂及びミネラルとして、市販のミネラルを含有する熱可塑性樹脂を用いてもよい。一般に、ミネラルを含有する熱可塑性樹脂は、「ミネラル強化樹脂」と呼ばれる。ミネラル強化樹脂の市販品としては、例えば、東洋紡製のミネラル強化樹脂T777‐02、宇部興産製のミネラル強化樹脂1013R、1013R1等がある。
成形体が含有する親水性セグメントを含むブロック共重合体(以下、適宜「ブロック共重合体」と記載する)は、親水性セグメントを有し、更に、親水性セグメントとは異なる他のセグメント(以下、適宜「他のセグメント」と記載する)を有する。親水性セグメントには、アニオン性セグメント、カチオン性セグメント、ノニオン性セグメントを用いることができる。アニオン性セグメントとしては、ポリスチレンスルホン酸系、カチオン性セグメントとしては、四級アンモニウム塩基含有アクリレート重合体系、ノニオン性セグメントとしては、ポリエーテルエステルアミド系、ポリエチレンオキシド−エピクロルヒドリン系、ポリエーテルエステル系が挙げられる。成形体の耐熱性を確保し易いことから、親水性セグメントは、ポリエーテル構造を有するノニオン性セグメントであることが好ましい。ポリエーテル構造としては、例えば、ポリオキシエチレン基、ポリオキシプロピレン基、ポリオキシトリメチレン基、ポリオキシテトラメチレン基等のオキシアルキレン基、ポリエーテルジオール、ポリエーテルジアミン、及びこれらの変性物、並びにポリエーテル含有親水性ポリマーが含まれ、特にポリエチレンオキシドが好ましい。
ブロック共重合体の他のセグメントは、親水性セグメントよりも疎水性であれば任意であるが、例えば、ナイロン、ポリオレフィン等を用いることができる。また、他のセグメントに、成形体に用いる熱可塑性樹脂と相溶する材料を用いると、成形体の成形時及び成形後の成形体内部で、熱可塑性樹脂とブロック共重合体との相分離を抑制できる。一方、他のセグメントに成形体に用いる熱可塑性樹脂と非相溶の材料を用いると、ブロック共重合体は成形体表面にブリードアウトしようと移動する働きが強くなり、成形体の表面近傍に偏析し易くなる。これにより、メッキ液の成形体への浸透性を高めることができる。成形体に用いる熱可塑性樹脂と相溶する材料としては、該熱可塑性樹脂と同じ構造又は、類似の構造を有する樹脂が好ましい。例えば、成形体に用いる熱可塑性樹脂にナイロン等のポリアミド樹脂を用いる場合には、他のセグメントはポリアミド成分を含むナイロン等が好ましい。また、成形体に用いる熱可塑性樹脂にポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂を用いる場合には、他のセグメントはポリオレフィン成分を含むことが好ましい。反対に、成形体に用いる熱可塑性樹脂と非相溶の材料としては、該熱可塑性樹脂と異なる構造や、異なる性質を有する樹脂が好ましい。例えば、成形体に用いる熱可塑性樹脂が疎水性のポリプロピレン等のポリオレフィンであれは、他のセグメントには比較的親水性の高いナイロン等を用いることができる。
ブロック共重合体は市販品を用いてもよく、例えば、三洋化成工業製ペレスタット(登録商標)、ペレクトロン(登録商標)等を用いることができる。例えば、三洋化成工業製ペレスタットNC6321、1251は、親水性セグメントのポリエーテルと、他のセグメントのナイロンをエステル結合でコポリマー化したブロック共重合体である。
成形体中のブロック共重合体の含有量は、0.1〜30重量%が好ましく、0.5〜15重量%とすることがより好ましい。0.1重量%以上とすると、成形体をメッキ処理した場合に、メッキ液の成形体への浸透性を高めることができ、30重量%以下とすると、該成形体が十分な機械強度を有することができ、更に、メッキ膜形成後も耐熱衝撃性能を維持することができる。
成形体が含有する金属微粒子としては、Pd、Ni、Pt、Cu等の金属微粒子、金属錯体、金属アルコキシド等の金属酸化物の前駆体を用いることができる。金属錯体の種類は任意であるが、より具体的には、ヘキサフルオロアセチルアセトナトパラジウム(II)金属錯体、白金ジメチル(シクロオクタジエン)、ビス(シクロペンタジエニル)ニッケル、ビス(アセチルアセトネート)パラジウム等が、加圧二酸化炭素への溶解性が高く好ましい。これらの金属微粒子は、メッキ触媒と機能し、該成形体に無電解メッキを施すことができる。
成形体中の金属微粒子の含有量は、無電解メッキの反応性の観点から、0.1重量ppm以上が好ましく、1重量ppm以上とすることがより好ましい。また、上限は、例えば、後述する成形体の製造方法における、加圧二酸化炭素への金属微粒子の飽和溶解度等で決まるため、金属微粒子の種類に依存する。
本実施形態の成形体は、表面粗さ(Ra)が、1μm以下であることが好ましい。表面粗さを小さくすることで、成形体表面に形成されるメッキ膜の表面粗さも小さく抑えることができ、メッキ膜の意匠性を向上させることができる。例えば、成形体に含有するミネラルとして、粒状又は略球状のミネラルを用いることにより、成形体の表面粗さ(Ra)を1μm以下と小さくすることができる。
[成形体の製造方法]
本実施形態で用意する成形体は、例えば、ブロック共重合体と金属微粒子とを含有する第1の樹脂ペレットを用意し、第1の樹脂ペレットと共に前記熱可塑性樹脂を含有する第2の樹脂ペレットを可塑化溶融して成形してもよい。
このように、第1及び第2の樹脂ペレットを用いて成形体を製造する方法において、第1の樹脂ペレットは、マスターバッチであり、第2の樹脂ペレットは、マスターバッチが配合されるベース樹脂に相当する。マスターバッチとは、染料、顔料、その他の添加剤等の機能性材料を高濃度に含有した樹脂ペレットであり、機能性材料を含有しないベース樹脂に混合され、ベース樹脂と共に成形される。マスターバッチを用いると、機能性材料を直接ベース樹脂に添加して成形することと比較して、材料の取り扱い性が容易で秤量精度も向上する。本実施形態では、ブロック共重合体及び金属微粒子を含有する樹脂ペレット(第1の樹脂ペレット)をブロック共重合体及び金属微粒子を含有するマスターバッチとして用いる。
第1の樹脂ペレットは、ブロック共重合体を可塑化溶融することと、可塑化溶融したブロック共重合体に、金属微粒子が溶解した加圧二酸化炭素を混合することと、金属微粒子を混合したブロック共重合体を押出成形することと、押出し成形した金属微粒子を混合したブロック共重合体を粉砕して前記第1の樹脂ペレットを得ることを含む製造方法によって製造してもよい。例えば、押出成形機の可塑化シリンダ内でブロック共重合体を可塑化溶融し、その可塑化シリンダへ金属微粒子が溶解した加圧二酸化炭素を供給し、可塑化シリンダ内でブロック共重合体と加圧二酸化炭素を接触させる。
加圧二酸化炭素は、金属微粒子の溶媒であると共に、ブロック共重合体の可塑剤としても作用し、金属微粒子がブロック共重合体に均一に分散することを促進する。したがって、加圧二酸化炭素を用いて製造された第1の樹脂ペレットを用いて、メッキ膜を有する成形体を製造すると、均一で高品質なメッキ膜を得ることができる。加圧二酸化炭素を用いずに、ブロック共重合体と金属微粒子のみを混合することで第1の樹脂ペレットを製造することも可能であるが、以上の理由から加圧二酸化炭素を用いることが好ましい。
上述の第1の樹脂ペレットの製造方法において、加圧二酸化炭素としては、液体状態、ガス状態、又は超臨界状態の加圧二酸化炭素を用いることができる。これらの加圧二酸化炭素は、人体に無害であり、また溶融樹脂への拡散性に優れ、しかも溶融樹脂から容易に除去可能であり、更に、溶融樹脂の可塑剤としても機能する。可塑化シリンダへ導入する加圧二酸化炭素の圧力、温度は任意であるが、密度が高く安定であることから液体二酸化炭素もしくは超臨界二酸化炭素を用いることが好ましい。加圧二酸化炭素の温度は5℃〜50℃の範囲が好ましい。加圧二酸化炭素の温度は、低いほど高密度となり溶媒効果が高くなるので好ましいが、冷却制御が容易であるという観点から5℃以上が好ましい。また、加圧二酸化炭素の温度が高くなると密度が低くなり液送が不安定になる虞があるので、安定に液送するという観点から、50℃以下が好ましい。加圧二酸化炭素の圧力は、4〜25MPaの範囲が望ましい。圧力が低いと溶媒効果が発現しにくくなるので、適度な溶媒効果を得るという観点から、4MPa以上が好ましく、また、圧力が高いと高圧設備の維持にコストが係るので、コストを抑えるという観点から、25MPa以下が好ましい。尚、金属微粒子を溶解又は分散させた加圧二酸化炭素は、可塑化シリンダ内で瞬時に高温になり圧力も変動する。よって、上述の加圧二酸化炭素の状態、温度及び圧力は、可塑化シリンダに導入する前の安定な状態の加圧二酸化炭素の状態、圧力及び温度の値である。
更に、加圧二酸化炭素は金属微粒子を溶解する溶媒を含有してもよい。例えば、金属微粒子として金属錯体を使用する場合、加圧二酸化炭素中の金属錯体の濃度を高めるため、パーフルオロペンチルアミンなどのフッ素系有機溶媒を用いてもよい。
加圧二酸化炭素中の金属微粒子の濃度は、金属微粒子の種類を考慮して適宜選択することができ、特に制限されない。溶融樹脂への浸透性や加圧二酸化炭素中の金属微粒子の凝集を考慮すれば、好ましくは飽和溶解度以下である。特に高温になる成形機の可塑化シリンダ内では急激に二酸化炭素の密度が低下するので、加圧二酸化炭素中の金属微粒子の濃度は、飽和溶解度の1〜50%程度が好ましい。
加圧二酸化炭素を調製する方法としては、特に限定されず、従来公知の方法を使用することができる。例えば、図2に示す注射器のように加圧二酸化炭素を吸引、送液するシリンジポンプを備えた加圧流体供給装置100を用いてもよい。本実施形態では、加圧流体供給装置100において、所定の割合で金属微粒子を混合した加圧二酸化炭素(以下、必要により、「混合加圧流体」と記載する)を製造し、この混合加圧流体を可塑化シリンダへ供給する。
混合加圧流体を可塑化シリンダに供給する方法は任意である。例えば、混合加圧流体を可塑化シリンダに間欠的に導入してもよいし、連続的に導入してもよい。また、混合加圧流体の導入は、例えば、安定な送液が行えるシリンジポンプを利用し、導入量を制御してもよい。
混合加圧流体をブロック共重合体に混合した後、金属微粒子を含むブロック共重合体を押出成形し、粉砕して第1の樹脂ペレットを得ることができる。
次に、得られた第1の樹脂ペレットと共に、前記金属微粒子を含有せず、前記熱可塑性樹脂を含有する第2の樹脂ペレットを可塑化溶融して、汎用の射出成形機、押出成形機等の成形機を使用し、汎用の成形方法により、成形体を成形することができる。したがって、本実施形態の製造方法は、新たな成形機を購入する等の設備投資をすることなく、熱可塑性樹脂と、ミネラルと、メッキ触媒である金属微粒子と、親水性セグメントを含むブロック共重合体とを含有する成形体を製造することができる。
以上説明した成形体の製造方法において、第1の樹脂ペレット(マスターバッチ)は、ブロック共重合体と金属微粒子のみから形成されるが、第1の樹脂ペレットは、更に、上述した熱可塑性樹脂等の他の材料を含有してもよい。他の材料を含有する場合、第1の樹脂ペレット(マスターバッチ)中のブロック共重合体及び金属微粒子の濃度は高い方が好ましい。例えば、第1の樹脂ペレット中のブロック重合体の含有量は、20〜100重量%が好ましく、50〜100重量%がより好ましい。また、第1の樹脂ペレット中の金属微粒子の含有量は、5重量ppm以上が好ましく、50重量ppm以上がより好ましい。第1の樹脂ペレットと、第2の樹脂ペレットとの混合比は、目的とする成形体中のブロック共重合体濃度、金属微粒子濃度に基づき、適宜決定することができるが、例えば、重量比(第1の樹脂ペレット):(第2の樹脂ペレット)=0.1:99.9〜30:70とすることができる。
以上、本実施形態で用意する成形体の製造方法について説明したが、成形体の製造方法はこれに限定されない。例えば、第1の樹脂ペレットに、ブロック共重合体と金属微粒子に加え、上述した熱可塑性樹脂及びミネラルを含有させ、第2の樹脂ペレットを用いずに、第1の樹脂ペレットのみから成形体を製造してもよい。また、第1の樹脂ペレットの製造に押出成形を行ったが、射出成形で製造してもよい。更に、高圧容器内で、ペレット状のブロック共重合体(原料ペレット)に、金属微粒子が溶解した加圧二酸化炭素を接触させる方法によって、第1の樹脂ペレットを製造してもよい。この場合、加圧二酸化炭素と共に金属微粒子が原料ペレットに浸透し、金属微粒子を含有する第1の樹脂ペレットを製造することができる。
[メッキ前処理]
次に、用意したブロック共重合体と金属微粒子を含む成形体に強酸を1〜30秒間接触させる(図1、ステップS2)。本実施形態において、成形体に強酸を接触させる工程は、成形体にメッキ膜を形成するためのメッキ前処理に相当する。
本実施形態で用いる「酸(強酸)」は、水溶液中においてプロトン(H+)を放出する化合物であり、成形体表面を溶解(エッチング)し、更に、成形体中に含有されるブロック共重合体を軟化、又は溶解する化合物である。「ブロック共重合体が軟化する」とは、酸がブロック共重合体と接触した時に、ブロック共重合体は酸に溶解はしないが膨潤し、ブロック共重合体の硬度が酸との接触前より低くなることを意味する。また、ブロック共重合体が酸に溶解する場合、主にブロック共重合体の親水性セグメントが酸に溶解すると推察される。ブロック共重合体を溶解するか、単に膨潤させるに留まるかは、酸の強さ、濃度、温度、成形体と酸の接触時間等による。また、ブロック共重合体の溶解と膨潤は、どちらか一方のみ生じる場合もあり、また、両方同時に生じる場合もあると推察される。
本実施形態で用いる強酸とは、酸解離定数Kaが1.0×10−3以上の酸である。成形体表面のメッキ反応性を向上させる観点から、本実施形態に用いることができる強酸としては、塩酸、硝酸、硫酸、過塩素酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、クロム酸、塩素酸、臭素酸、ヨウ素酸、過臭素酸、メタ過ヨウ素酸、過マンガン酸、チオシアン酸、テトラフルオロホウ酸及びヘキサフルオロリン酸が好ましく、中でも、塩酸及び硝酸がより好ましい。本実施形態では、1種類の強酸を単独で用いてもよいし、2種類以上の強酸を任意の割合で混合して用いてもよい。
成形体に強酸を接触させている時間(メッキ前処理時間)は、1秒〜30秒である。1秒未満であると、成形体の表面のエッチングやブロック共重合体の軟化又は溶解を行うことが難しくなり、30秒を超えると、後述するミネラルの溶解により、メッキ膜未着部が発生する虞があるからである。尚、例えば、成形体に強酸を接触させる工程を装置等を用いて自動で行う場合には、成形体が強酸に接触する時間が短過ぎると装置制御が困難となるので、成形体に強酸を接触させている時間は、5〜10秒が好ましい。
また、成形体に接触させる強酸の濃度は1.0〜3.5Nであるが好ましく、1.0〜3.0Nであることがより好ましい。1.0N未満であると、成形体の表面のエッチングやブロック共重合体の軟化又は溶解が不十分となる虞があり、3.5Nを超えると、後述するミネラルの溶解により、メッキ膜未着部が発生し易くなる虞があるからである。
また、成形体に接触させる強酸の温度は10℃〜30℃が好ましい。10℃未満であると、成形体の表面のエッチングやブロック共重合体の軟化又は溶解が不十分となる虞があり、30℃を超えると、後述するミネラルの溶解により、メッキ膜未着部が発生し易くなる虞があるからである。
本実施形態において、メッキ前処理に用いる強酸は、六価クロム酸を含まないことが好ましい。六価クロム酸は、成形体表面をエッチングし、成形体に含有されるブロック共重合体を膨潤又は、溶解することができるが、毒性及び環境負荷が高いからである。
成形体に強酸を接触させる方法は任意であり、目的に応じて種々の方法を用いることができる。例えば、酸に成形体全体を浸漬させてもよい。また、成形体の一部分のみメッキ処理する場合には、メッキ処理が予定される部分のみを酸と接触させてもよい。
本実施形態の強酸を用いたメッキ前処理を行うと、成形体のメッキ反応性が向上してメッキ反応時間を短縮できる。また、メッキ反応性が向上してメッキ膜が形成し易くなるため、複雑形状の成形体のメッキ反応ムラを抑制することができる。更に、本実施形態の強酸を用いたメッキ前処理を行うと、成形体上に十分な密着強度を有するメッキ膜を形成できる。
本実施形態の強酸を用いたメッキ前処理が上記効果を奏する理由は以下のように推察される。但し、以下に説明するメカニズムは推定に過ぎず、本発明はこれにより何ら限定されない。メッキ前処理において、強酸が成形体表面をエッチングし、更に成形体に含有されるブロック共重合体を軟化させて熱可塑性樹脂を膨潤させると、無電解メッキ処理において、無電解メッキ液が成形体の表面から内部に向って浸透し易くなる。これにより、無電解メッキ液は、多くのメッキ触媒である金属微粒子と接触してメッキ反応性が向上する。また、メッキ液が成形体の内部に浸透することにより、メッキ膜が成形体内部から成長するため、十分な密着強度を有するメッキ膜が形成される。また、メッキ前処理において、強酸が成形体表面をエッチングし、更に、ブロック共重合体を溶解させることで、より多くの金属微粒子を成形体表面に露出させることができる。より多くの金属微粒子が成形体表面に露出することで、成形体表面にメッキ膜が形成し易くなる。
本実施形態の強酸処理は、特に複雑形状の成形体に無電解メッキ膜を形成する場合に有効である。複雑形状の成形体は、成形体表面における金属微粒子の分布ムラや、樹脂結晶化度のムラが発生し易く、それに起因するメッキムラが発生し易い。しかし、複雑形状の成形体であっても、本実施形態の強酸を用いたメッキ前処理を行うことで、成形体表面のメッキ反応性が向上するため、メッキムラを抑制でき、均一なメッキ膜を形成することができる。
尚、本実施形態における強酸を用いたメッキの前処理は、従来の成形体表面を粗化するメッキ前処理とは異なる。従来のメッキ前処理としては、ABS樹脂、エラストマー、ミネラル等を樹脂に含有させ、これらを六価クロム酸等の環境負荷の高いエッチング液により成形体表面から除去する方法が知られている。したがって、従来のメッキ前処理では、成形体表面に比較的大きな凹凸が形成される。これに対して、本実施形態の強酸によるメッキの前処理は、成形体表面をわずかにエッチングし、更に、成形体表面近傍のブロック共重合体を軟化させるか、又は、ブロック共重合体の親水性セグメントを溶解する。ブロック共重合体を溶解する場合であっても、金属微粒子を成形体表面に露出させるにとどまり、成形体表面を粗化させることはない。
更に、本実施形態では、成形体に強酸を接触させている時間(メッキ前処理時間)を1〜30秒に制御することにより、メッキ膜未着部の発生を抑制できる。ここで、ミネラルを含有する成形体に強酸を用いたメッキ前処理を行うことで発生する「メッキ膜未着部」とは、成形体上において他の部分と明らかにメッキ反応性が異なる部分であり、複雑形状の成形体に発生し易いメッキムラやピンホール等とは異なる。メッキ膜未着部は、ミネラルに起因したものであり、熱可塑性樹脂に混合されるミネラルの一般的な大きさは大きいものでも数十〜数百μm以下である。そのため、メッキ膜未着部も原因となるミネラルを中心としたほぼ円形の形状となり、サイズも1mmより小さい。一方、メッキムラは、成形体表面における金属微粒子の分布ムラや、成形体表面の樹脂結晶化度のムラに起因したもので、サイズが1mm以上のものが大部分であり、形状も円形でないものが多い。ピンホールも成形体表面に付着した不純物や成形不良等によって発生するもので、形状が円形でないものが大半である。そのため前記メッキ膜未着部は、メッキムラやピンホールと目視により区別できる。
本実施形態において、メッキ膜未着部の発生を抑制できるメカニズムは、次のように推測される。但し、以下に説明するメカニズムは推定に過ぎず、本発明はこれにより何ら限定されない。成形体がミネラルを含有する場合、酸、特に強酸を用いてメッキ前処理を行うと、成形体表面にメッキ膜が形成されないメッキ膜未着部が多数発生する。本発明者らは、その原因がミネラルに含有される鉛(Pb)成分又は、硫黄(S)成分であると推測する。メッキ前処理に強酸を用いると、強酸がミネラルを溶解し、ミネラルから鉛(Pb)成分又は、硫黄(S)成分が溶出する。これらが無電解メッキのメッキ成長を阻害し、又は、金属微粒子のメッキ触媒活性を低下させて、メッキ膜未着部を発生させていると考えられる。本実施形態では、強酸によるメッキ前処理時間を1〜30秒と、短時間に制御することにより、ミネラルからの鉛(Pb)成分又は、硫黄(S)成分の溶出を抑え、メッキ膜未着部の発生を抑制できると推察される。
また、本発明者らによれば、強酸を用いて短時間(1〜30秒)でメッキ前処理を行う代わりに、弱酸を用いて長時間(30秒より長い時間)メッキ前処理を行う事によっても、メッキ膜未着部の発生を抑制できることが見出された。しかし、弱酸は温度等によって解離度が変化するため、酸強度(pH)の制御や保管が難しく、また、酢酸等の弱酸は、作業中の臭気が問題となる。これに対して本実施形態で用いる強酸は、酸強度(pH)の制御や保管が容易であり、臭気の問題も発生しない。更に、弱酸と比べてメッキ前処理時間が短時間でよいという利点もある。
本実施形態のメッキ前処理は、成形体に強酸を接触させるのみでもよいが、更に、成形体にアルコール処理液を接触させてもよい。アルコール処理液も、成形体に含有されるブロック共重合体を膨潤させることができ、無電解メッキのメッキ反応性を更に向上させることができる。アルコール処理液を用いたメッキ前処理は、強酸を用いたメッキ前処理の後に行う。強酸を用いたメッキ前処理の前にアルコール処理液を用いたメッキ前処理を行うと、無電解メッキが樹脂内部から成長せずに成形体表面を直ぐに被覆してしまい、密着強度が極端に低いメッキ膜が形成される虞がある。この理由は定かではないが、以下のように推察される。一般にアルコール処理液の方が強酸の処理液よりも表面張力が低く成形体により浸透し易い。そのため、先にアルコール処理液を用いたメッキ前処理を行うと、処理後に純水等で洗浄しても、成形体内部にアルコール処理液が残存し、その後に行う強酸処理の処理液(強酸)が成形体の内部に浸透しない。この結果、成形体の最表面のみにおいて、エッチングやブロック共重合体の溶解が生じて成形体の最表面のみの活性化が進み、成形体内部からのメッキ成長が行われる前に最表面でメッキ膜が形成されてしまうと推察される。
アルコール処理液は、成形体に含有されるブロック共重合体を軟化させる性質を有するアルコールを含有する。アルコール処理液が含有するアルコールとしては、例えば、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール、1−メトキシ−2−プロパノール、1−エトキシ−2−プロパノール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、2−(2−ブトキシエトキシ)エタノール、2−(2−エトキシエトキシ)エタノール、2−(2−メトキシエトキシ)エタノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、及びポリプロピレングリコールが挙げられる。
更に、アルコール処理液が含有するアルコールは、成形体への浸透性が高い方が好ましい。したがって、本実施形態で用いるアルコールの20℃における表面張力は、20℃における水の表面張力である73dyn/cmよりも低いことが好ましく、50dyn/cm以下であることがより好ましい。また、メッキ処理作業上の安全性を考慮すると、アルコール処理液が含有するアルコールは、40℃以上の引火点を有することが好ましい。このような低表面張力、高引火点という両条件を満たすアルコールとしては、例えば、1,3−ブタンジオール(表面張力:37.8dyn/cm、引火点:121℃)、2−メトキシエタノール(表面張力:31.8dyn/cm、引火点:43℃)、2−(2−メトキシプロポキシ)プロパノール(表面張力:28.8dyn/cm、引火点:74℃)等が挙げられる。これらの中でも、浸透性に優れる1,3−ブタンジオールがより好ましい。アルコール処理液が含有するアルコールは、1種類のアルコールであってもよいし、2種類以上を任意の割合で混合して用いてもよい。
本実施形態で用いるアルコール処理液は、アルコールの他に、使用するアルコールと相溶する他の溶媒、例えば水を含有してもよい。ただし、他の溶媒の含有量が多くなりすぎると、メッキ前処理において、上述したブロック共重合体の軟化が不十分になる。このため、アルコール処理液中のアルコールの含有量は、30体積%以上が好ましく、50体積%以上がより好ましい。特に、工業製品の場合に混入してくる不可避不純物を除き、実質的にアルコールのみからなるアルコール処理液が好ましい。尚、アルコール処理液は、成形体への浸透性を向上するために添加剤を含有してもよい。このような添加剤としては、例えば、界面活性剤が挙げられる。
成形体にアルコール処理液を接触させる方法は任意であり、目的に応じて種々の方法を用いることができる。例えば、アルコール処理液中に成形体全体を浸漬させてもよい。また、成形体の一部分のみメッキ処理する場合には、メッキ処理が予定される部分のみをアルコール処理液と接触させてもよい。
成形体にアルコール処理液を接触させている時間は、成形体に含有される熱可塑性樹脂の種類やアルコールの種類に基づき任意に設定することができる。成形体にアルコール処理液を接触させている時間が短すぎると、アルコールが成形体に十分に浸透しないため、アルコール処理液によりブロック共重合体が十分に軟化しない。一方、成形体にアルコール処理液を接触させている時間が長すぎると、製造効率が低下し、更に、アルコールにより成形体の樹脂構造が脆弱化する虞がある。このような観点から、成形体にアルコール処理液を接触させている時間は、例えば、1分〜30分が好ましい。
また、アルコール処理液によるメッキ前処理は、室温で行ってもよいし、ブロック共重合体の軟化及びアルコール処理液の成形体への含浸を促進するために、室温以上の温度で行ってもよい。特に、成形体に含有される熱可塑性樹脂のガラス転位温度以上の温度でメッキ前処理を行うことが好ましい。ガラス転位温度以上であれば、成形体が塑性変形して、アルコール処理液が成形体に浸透し易くなるからである。
[無電解メッキ]
次に、強酸に接触させた前記成形体に、無電解メッキ液を接触させてメッキ膜を形成し(図1、ステップS3)、メッキ膜を有する成形体を得る。無電解メッキ液としては、目的に応じて任意の汎用の無電解メッキ液を使用しできるが、触媒活性が高く液が安定であるという点から、無電解ニッケルリンメッキ液が好ましい。本実施形態で用意した成形体は、メッキ触媒として働く金属微粒子を含有しているので、無電解メッキを行うに際してメッキ触媒付与処理を行う必要がない。
メッキ前処理を施した成形体上には、異なる種類の無電解メッキ膜を複数層形成してもよいし、更に、無電解メッキ膜の上に、電解メッキにより電解メッキ膜を形成してもよい。また、無電解メッキ膜が形成された成形体は、無電解メッキ後にアニール処理を施してもよいし、室温で放置して自然乾燥してもよい。また、アニール処理や自然乾燥を行わず、連続して電解メッキ膜を形成する等の次の工程を行ってもよい。
本実施形態では、成形体の製造過程又は製造後において、ブロック共重合体の親水性セグメントは成形体表面にブリードアウトしようと移動する。よって、ブロック共重合体は、成形体の表面近傍に偏在し、ブロック共重合体の親水性セグメントにより、成形体は表面近傍のみが親水化される。
本実施形態では、成形体に無電解メッキ液を接触させると、メッキ液は成形体の表面から内部に浸透して金属微粒子と接触し、樹脂成形体の内部から樹脂成形体を押し広げながらメッキ膜が成長する。このとき、本実施形態の成形体はブロック共重合体により表面近傍が親水化されているため、メッキ液の浸透とメッキ膜の成長が促されると考えられる。本実施形態の成形体は、メッキ膜の付きまわり性が良好で、短時間でメッキ膜が形成される。メッキ膜形成時間が短くなることで、ピンホール等のメッキ膜の欠陥も生じにくくなる。
一方、ブロック共重合体は、成形体の表面近傍に偏析するため、ブロック共重合体により親水化されるのは成形体の表面近傍のみである。ブロック共重合体は成形体の親水性を部分的に向上させるが、成形体全体の吸水性(マクロ的吸水性)へ与える影響は小さい。よって、メッキ液中での成形体の脆性破壊を抑制でき、成形体の機械的特性を低下させない。この結果、メッキ膜形成後も成形体は十分な耐熱衝撃性能を有する。
更に、本実施形態において、ブロック共重合体が成形体の表面近傍へ移動するのに伴って、金属微粒子も表面近傍へ移動し表面近傍に偏在化し易くなると推察される。この現象の理由は定かではないが、金属微粒子が表面近傍に偏在化することで、メッキ膜を樹脂表面に形成し易くなり、メッキ膜の密着力低下が抑制され、メッキ反応ムラやピンホール等の外観不良が低減される。
尚、本明細書において、「成形体の表面近傍」とは、成形体の内部であって、且つ、表面に近い領域を意味し、成形体をメッキ液に接触させたときに表面からメッキ液が浸透してメッキ反応が起きる領域を意味する。「成形体の表面近傍」が、成形体の表面から、どの程度の深さまでの領域を意味するかは、成形体に用いられる樹脂の種類によっても異なるが、例えば、成形体の表面から、0.1〜10μmまでの深さの領域である。
尚、本実施形態では、ブロック共重合体を用いることによって、成形体の表面近傍のみを親水化し、上述の効果を奏することができる。例えば、同じ構成成分からなるランダム共重合体や、親水性セグメントのみから構成される重合体等では、成形体の表面近傍のみを親水化することは難しく、本発明と同等の効果は得られない。また、低分子の界面活性剤も成形体表面に偏析する性質を有しているが、本実施形態のブロック共重合体と同等の効果を奏することはできない。ブロック共重合体は、通常の低分子の界面活性剤とは異なり、ポリマーである。ブロック共重合体は、大きな分子量有するため、混合される金属微粒子を伴って成形体の表面近傍に移動できると考えられる。また、ポリマーであるので、成形体の表面に高濃度に偏在しても、成形体の耐熱性や機械的強度を低下させない。更に、上述したように、可塑化溶融した状態で十分な粘度を有するので、ブロック共重合体単独であっても押出成形が可能であり、ペレット化することができる。
以下、実施例及び比較例により本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例及び比較例により制限されない。
[実施例1]
本実施例では、図2に示す樹脂ペレット製造装置1000を用いて、親水性セグメントを含むブロック共重合体と、金属微粒子とを含有する第1の樹脂ペレットを製造し、次に、汎用の射出成形機を用いて、第1の樹脂ペレットと、熱可塑性樹脂を含む第2の樹脂ペレットから成形体を成形した。そして、製造した成形体上にメッキ膜を形成した。
第1の樹脂ペレットに含有されるブロック共重合体としては、ポリエチレンオキシドとポリアミド成分をエステル結合させたポリエーテルエステルアミドブロック共重合体(三洋化成工業製、ペレスタットNC6321)を、金属微粒子としては、有機金属錯体であるヘキサフルオロアセチルアセトナトパラジウム(II)金属錯体を用いた。ポリエーテルエステルアミドブロック共重合体における親水性セグメントは、ポリエーテルであるポリエチレンオキシドである。また、第2の樹脂ペレットとしては、酸化カルシウム、二酸化ケイ素を含むミネラルを40体積%混合したミネラル強化ナイロン6(東洋紡製、製品名:T777‐02)を用いた。また、メッキ前処理に用いる酸としては、3.0Nの塩酸を使用した。
〈樹脂ペレット製造装置〉
まず、本実施例で第1の樹脂ペレットの製造に用いた装置について説明する。図2に示すように、樹脂ペレット製造装置1000は、金属微粒子を混合したブロック共重合体を押出成形する押出成形装置200と、金属微粒子を含む加圧二酸化炭素(混合加圧流体)を押出成形装置200に供給する加圧流体供給装置100と、押出成形装置200により押出成形されたブロック共重合体を冷却する樹脂冷却装置300と、制御装置(不図示)を備える。制御装置は、加圧流体供給装置100、押出成形装置200、及び樹脂冷却装置300を動作制御する。
加圧流体供給装置100は、加圧二酸化炭素と、金属微粒子を溶媒に溶解させた溶液Cとを混合して混合加圧流体を調製し、調製した混合加圧流体を押出成形装置200に供給する。加圧流体供給装置100は、サイフォン式の二酸化炭素ボンベ101と、二酸化炭素ボンベ101より液体二酸化炭素を吸引した後、加圧して液体二酸化炭素を供給する二酸化炭素用シリンジポンプ102と、金属微粒子含有液体Cを収容する溶液槽111と、溶液槽111内の金属微粒子含有液体Cを加圧して供給する溶液用シリンジポンプ112より構成される。各シリンジポンプ102、112は圧力制御と流量制御が可能である。調製された混合加圧流体は、背圧弁120を介して押出成形装置200に供給される。
押出成形装置200は、内部に回転自在に配設されたスクリュ20を有する第1シリンダ(可塑化シリンダ)210と、内部に回転自在に配設されたスクリュ25を有する第2シリンダ220と、スクリュ20、25それぞれに連結し、スクリュ20、25を回転動作させるサーボモータ28、29と、第1シリンダ210と第2シリンダ220とを連結する連結部230から主に構成される。本実施例では、第1及び第2シリンダ210、220内において、可塑化溶融された溶融樹脂は、図2における右手から左手に向かって流動する。したがって、第1及び第2シリンダ210、220の内部においては、図2における右手を「上流」又は「後方」、左手を「下流」又は「前方」と定義する。第1シリンダ(可塑化シリンダ)210は、スクリュ20が貫通するリング形状のシール部材26と、シール部材26よりも下流に設けられ、スクリュウ20が貫通するリング形状部材24が設けられる。また、第2シリンダ220は、その先端部にノズル27有する。
第1シリンダ210の上部側面には、上流側から順に、ブロック共重合体を可塑化シリンダ210に供給するための樹脂供給口201、混合加圧流体を第1シリンダ210内に導入するための導入口202が形成される。これらの樹脂供給口201、及び導入口202にはそれぞれ、樹脂供給用ホッパ211、及び導入バルブ212が配設されている。第1シリンダ210の外壁面には、バンドヒータ(図示せず)が配設されており、これにより可塑化シリンダ210が加熱され、ブロック共重合体が可塑化溶融される。また、第2シリンダ220の上部側面には、第2シリンダ220内からガス化した二酸化炭素を排気するためのベント203が形成されている。
押出成形装置200では、樹脂供給口201から第1シリンダ210内にブロック共重合体が供給され、ブロック共重合体がバンドヒータによって可塑化されて溶融樹脂となり、スクリュ20が正回転することにより下流に送られる。そして、導入口202近傍まで送られた溶融樹脂は、導入された金属微粒子を含む加圧二酸化炭素(混合加圧流体)と高圧下、接触混練される。混合加圧流体を含む溶融樹脂は、第1シリンダ210から、下流の連結部230へ送られる。そして、連結部230の樹脂は、第1シリンダ210から順次供給される樹脂に押出されて、更に下流の第2シリンダ220へ送られる。第2シリンダ220では、混合加圧流体と接触混練された溶融樹脂の樹脂内圧を低下させることにより、ガス化した二酸化炭素が溶融樹脂から分離し、ベント203から排気される。二酸化炭素が排気された後、溶融樹脂は、スクリュ25が回転することにより下流に送られ、ノズル27から第2シリンダ220の外部へ押し出される。
以上説明したように、第1シリンダ210内では、上流側から順に、ブロック共重合体を可塑化溶融して溶融樹脂とする可塑化ゾーン21、溶融樹脂と導入口202から導入される混合加圧流体とを高圧下、接触混練する混練ゾーン22が形成される。そして、第2シリンダ220内では、混合加圧流体と接触混練した溶融樹脂の樹脂内圧を低下させることにより、溶融樹脂から分離された二酸化炭素をベント203から排気する減圧ゾーン23が形成される。第1シリンダ210においては、上述のリング形状のシール部材26は、可塑化ゾーン21と混練ゾーン22の境界に位置しており、リング形状部材24は混練ゾーン22に位置している。そして、スクリュ20の混練ゾーン22に位置する部分は、その直径が下流に向かうに従い大きくなる形状を有する。
樹脂冷却装置300は、第2シリンダ220のノズル27から押出されたブロック共重合体を冷却し固化する装置であり、冷却水等によりブロック共重合体が十分に固化される機構であれば任意であるが、本実施形態では、冷却水を用いないアルミ製のベルトコンベア装置301を用いた。冷却水を用いないことで、ブロック共重合体の過剰な吸水を防ぐことができ、後工程での困難な脱水作業が不要となる。図2に示すように、アルミベルトコンベア装置301は、輪状にしたアルミ製のベルトを回転させるベルトコンベアであり、アルミ製のベルトの上に、押出成形装置200から押し出されるブロック共重合体を裁置し、図2の上流から下流へ(右手から左手へ)運搬する。放熱性能の高いアルミ製のベルトの上に裁置されることで、押出されたブロック共重合体は運搬されながら冷却され、固化する。
〈第1の樹脂ペレットの製造〉
上で説明した図2に示す樹脂ペレット製造装置1000を用いて、以下に説明する方法により、樹脂ペレットを製造した。まず、液体二酸化炭素ボンベ101から液体二酸化炭素を吸引し、二酸化炭素用シリンジポンプ102の圧力制御により所定圧力まで液体二酸化炭素を加圧した。また、溶液用シリンジポンプ112により、溶液槽111から溶媒に金属微粒子を溶解させた溶液Cを吸引し、溶液用シリンジポンプ112の圧力制御により所定圧力まで溶液Cを加圧する。本実施例では、溶液Cの溶媒としてパーフルオロペンチルアミンのフッ素系有機溶媒を用いた。
次に、二酸化炭素用シリンジポンプ102及び溶液用シリンジポンプ112を圧力制御から流量制御に切替え、二酸化炭素用シリンジポンプ102と溶液用シリンジポンプ112の流量比が10:1となるように流動させた。これにより、配管内で加圧二酸化炭素と溶液Cとが混合され、かつ、第1シリンダ210内に混合加圧流体を導入する導入バルブ212までの系内を加圧した。本実施例において、シリンジポンプ102、112から導入バルブ212までの系内は10℃に冷却し、圧力は10MPaとした。背圧弁120の設定圧力も10MPaとした。また、本実施例において、混合加圧流体中の金属微粒子の濃度は、飽和溶解度の10〜20%程度に制御した。
一方、押出成形装置200において、樹脂供給用ホッパ211からブロック共重合体を供給し、可塑化ゾーン21の外壁面に設けられたバンドヒータ(図示せず)により可塑化ゾーン21を加熱し、スクリュ20を回転させた。これにより、ブロック共重合体を可塑化溶融し、下流の混練ゾーン22へ流動させた。
混練ゾーン22において、導入バルブ212により、導入口202を介して可塑化シリンダ210内へ、混合加圧流体を一定流量で連続的に供給した。そして、スクリュ20を回転されることにより、混合加圧流体を溶融樹脂(溶融したブロック共重合体)中に分散混練した。このとき、リング形状のシール部材26によって、混練ゾーン22に導入した二酸化炭素や金属微粒子が上流側の可塑化ゾーン21に漏れることが防止される。
次に、スクリュ20の回転により、混練ゾーン22の樹脂を下流の連結部230へ流動させた。混練ゾーン22において、樹脂の下流への流動の際、直径が下流に向かうに従い大きくなるというスクリュ20の形状及びリング形状部材24の存在が溶融樹脂の流動抵抗となり、混練ゾーン22内の樹脂内圧が上がり、第1シリンダ210の圧力が上昇する。
混練ゾーン22には、図示しない圧力センサーが設けられており、混練ゾーン22のシリンダ圧力を監視できる。樹脂粘性などの変化により混練ゾーン22のシリンダ内の圧力が低下した際には、サーボモータ28の回転数を上げて混練ゾーン22への溶融樹脂の供給量を増やし、混練ゾーン22のシリンダ内の圧力を上昇させる。反対に、シリンダ内の圧力が上昇した際には、サーボモータ28の回転数を下げて樹脂供給量を減らし、シリンダ内の圧力を低下させる。このように、本実施例の第1シリンダは、スクリュ回転数を調整することで、シリンダ内圧を一定に保つことができる機構を有する。混練ゾーン22のシリンダ内の圧力の変動が大きいと、シリンジポンプ102、112から供給される混合加圧流体の導入量が安定せず、ばらつきが発生するが、本実施例では、混練ゾーン22のシリンダ内の圧力を一定に保つことで導入量が安定する。本実施例においては、混練ゾーン22のシリンダ内圧が8MPaを保つように、スクリュ20の回転数を設定した。
スクリュ20を継続して回転させ、第1シリンダ210の溶融樹脂(溶融したブロック共重合体)を下流の連結部230へ供給し続けた。連結部230の溶融樹脂は、第1シリンダから供給される溶融樹脂に押し出される形で、下流の第2シリンダ220の減圧ゾーン23に流動した。減圧ゾーン22において、溶融樹脂の減圧を行い、溶融樹脂中に溶解した二酸化炭素のみを分離し、第2シリンダ220に設けられたベント203から排出した。
次に、二酸化炭素を排出した溶融樹脂(溶融したブロック共重合体)を、第2シリンダの先端部に設けられたノズル27から、スクリュ25の回転により押し出した。ノズル27からの溶融樹脂の押出し量は、サーボモータ29により調節した。尚、サーボモータ29は、サーボモータ28と独立制御が可能である。
ノズル27から押し出されたブロック共重合体を冷却装置300のアルミベルトコンベア301の上に裁置し、図2における上流から下流へ運搬した。押し出された溶融樹脂(溶融したブロック共重合体)は、運搬される間に冷却され、固化した。固化したブロック共重合体を汎用の裁断機によって任意のサイズに裁断し、パラジウム金属微粒子とブロック共重合体を含む第1の樹脂ペレットを得た。第1の樹脂ペレット中の金属微粒子の濃度は、500重量ppmであった。
〈成形体の成形〉
得られた第1の樹脂ペレットと、第2の樹脂ペレットとを重量比、10:90で混合し、汎用の発泡射出成形機(日本製鋼所製、J180AD−2M)を用いて、汎用の成形方法により、6cm×4cm×0.2cmの平板形状の成形体を成形した。本実施例では、物理発泡剤を用いず、溶融樹脂の金型への樹脂充填率を金型キャビティの容積に対して100%に設定し、非発泡成形体を成形した。
〈メッキ前処理〉
次に、得られた成形体を25℃の塩酸(3.0N)に30秒間浸漬した。塩酸に浸漬後、成形体を純水で洗浄した。
〈メッキ処理〉
メッキ前処理を行った成形体を70〜90℃の無電解ニッケルリンメッキ液(奥野製薬社製、トップニコロンHMA−LF)に15分間浸漬し、無電解ニッケルリンメッキ膜を形成した。次に、ニッケルリンメッキ膜を形成した成形体を室温の置換銅メッキ液(奥野製薬社製、ANCアクチ)に1分間浸漬し、置換銅メッキ膜を形成した。その後、無電解メッキ時に樹脂内部に吸水しているため、銅メッキ膜を形成した成形体を電気炉に入れ、80℃で1時間、アニール処理を行って脱水を促進した。
次に、活性化剤(奥野製薬社製、トップサン)を用い、濃度100g/Lの活性化剤溶液を調製した。調製した活性剤溶液に、アニール処理を行った成形体を室温で5分間浸漬し、成形体上の金属膜の活性化処理を行った。この処理によって、アニールによって成形体の最表面に形成された酸化膜が除去された。
活性化処理を行った成形体上に、汎用の電解メッキ法により20μmの電解銅メッキ膜を形成した。電解銅メッキ液には、硫酸銅、硫酸、塩酸及び光沢剤を含有する硫酸銅浴を使用し、浴温度は30℃、電流密度は3A/dm2とした。更に、電解銅メッキ膜上に、汎用の方法により、20μmの電解ニッケルメッキ膜を形成した。電解ニッケルメッキ液には、硫酸ニッケル、塩化ニッケル、ホウ酸及び光沢剤を含有するワット浴を使用し、浴温度は55℃、電流密度は3A/dm2とした。
上述のようにして電解メッキ膜を形成した成形体を電気炉に入れ、80℃で1時間アニール処理を行い、本実施例の試料(メッキ膜を有する成形体)を得た。尚、本実施例では、置換銅メッキ膜を形成した後、無電解メッキ時に吸水した成形体の脱水を促進するためにアニール処理を行ったが、アニール処理は行なわなくてもよい。アニール処理の代わりに、銅メッキ膜を形成した成形体を室温で放置してもよいし、成形体を室温放置せずに、続けて次の処理工程を行ってもよい。置換銅メッキ膜を形成した後に、次の工程を続けて行う場合には、活性化処理を省略し、電解銅メッキを行ってもよい。
[実施例2]
実施例2では、成形体の塩酸への浸漬時間を5秒間としてメッキ前処理を行った以外は、実施例1と同様の材料を用い、同様の方法によりメッキ膜を有する成形体(試料)を製造した。
[実施例3]
実施例3では、メッキ前処理として、成形体を25℃の塩酸(3.0N)に30秒間浸漬し、浸漬後に成形体を純水で洗浄し、更に、80℃の1,3−ブタンジオール水溶液(75体積%)に15分間浸漬し、浸漬後に成形体を純水で洗浄した。メッキ前処理以外は、実施例1と同様の材料を用い、同様の方法によりメッキ膜を有する成形体(試料)を製造した。
[実施例4]
実施例4では、メッキ前処理として、成形体を25℃の塩酸(3.0N)に5秒間浸漬し、浸漬後に成形体を純水で洗浄し、更に、80℃の1,3−ブタンジオール水溶液(75体積%)に15分間浸漬し、浸漬後に成形体を純水で洗浄した。メッキ前処理以外は、実施例1と同様の材料を用い、同様の方法によりメッキ膜を有する成形体(試料)を製造した。
[実施例5]
実施例5では、塩酸に代えて硝酸(2.5N)を用いてメッキ前処理を行った以外は、実施例1と同様の材料を用い、同様の方法によりメッキ膜を有する成形体(試料)を製造した。
[実施例6]
実施例6では、成形体の硝酸への浸漬時間を5秒としてメッキ前処理を行った以外は、実施例5と同様の材料を用い、同様の方法によりメッキ膜を有する成形体(試料)を製造した。
[実施例7]
実施例7では、メッキ前処理として、成形体を25℃の硝酸(2.5N)に30秒間浸漬し、浸漬後に成形体を純水で洗浄し、更に、80℃の1,3−ブタンジオール水溶液(75体積%)に15分間浸漬し、浸漬後に成形体を純水で洗浄した。メッキ前処理以外は、実施例1と同様の材料を用い、同様の方法によりメッキ膜を有する成形体(試料)を製造した。
[実施例8]
実施例8では、メッキ前処理として、成形体を25℃の硝酸(2.5N)に5秒間浸漬し、浸漬後に成形体を純水で洗浄し、更に、80℃の1,3−ブタンジオール水溶液(75体積%)に15分間浸漬し、浸漬後に成形体を純水で洗浄した。メッキ前処理以外は、実施例1と同様の材料を用い、同様の方法によりメッキ膜を有する成形体(試料)を製造した。
[比較例1]
比較例1では、メッキ前処理として、成形体を25℃の塩酸(3.0N)に60秒間浸漬した。メッキ前処理以外は、実施例1と同様の材料を用い、同様の方法によりメッキ膜を有する成形体(試料)を製造した。
[比較例2]
比較例2では、メッキ前処理として、成形体を25℃の塩酸(3.0N)に60秒間浸漬し、浸漬後に成形体を純水で洗浄し、更に、80℃の1,3−ブタンジオール水溶液(75体積%)に15分間浸漬し、浸漬後に成形体を純水で洗浄した。メッキ前処理以外は、実施例1と同様の材料を用い、同様の方法によりメッキ膜を有する成形体(試料)を製造した。
[比較例3]
比較例1では、メッキ前処理として、成形体を25℃の硝酸(2.5N)に60秒間浸漬した。メッキ前処理以外は、実施例1と同様の材料を用い、同様の方法によりメッキ膜を有する成形体(試料)を製造した。
[比較例4]
比較例4では、メッキ前処理として、成形体を25℃の硝酸(2.5N)に60秒間浸漬し、浸漬後に成形体を純水で洗浄し、更に、80℃の1,3−ブタンジオール水溶液(75体積%)に15分間浸漬し、浸漬後に成形体を純水で洗浄した。メッキ前処理以外は、実施例1と同様の材料を用い、同様の方法によりメッキ膜を有する成形体(試料)を製造した。
[比較例5]
比較例5では、メッキ前処理を行わなかった以外は、実施例1と同様の材料を用い、同様の方法によりメッキ膜を有する成形体(試料)を製造した。但し、比較例5では、無電解メッキ液に15分間浸漬しても無電解メッキ膜(無電解ニッケルリン膜)が成形体全面に形成されなかったため、無電解メッキ膜が成形体全面に形成されるまで、19.6分間、成形体を無電解メッキ液に浸漬し続けた。
[参考例1]
参考例1では、第2の樹脂ペレットとして、ミネラルを含有していないナイロン6(非強化ナイロン6)(東レ製、CM1017)を用いた。第2の樹脂ペレット以外は、比較例1と同様の材料を用い、同様の方法によりメッキ膜を有する成形体(試料)を製造した。
<評価>
実施例1〜8、比較例1〜5及び参考例1における試料の作製過程において、又は作製後の試料について、以下(1)〜(3)の評価項目について評価を行った。
(1)メッキ膜未着部の評価
実施例1〜8、比較例1〜5及び参考例1で作製した成形体において、無電解ニッケルリンメッキ膜を形成した段階で表面を目視で観察し、試料の表面全体に存在するメッキ膜未着部の数を数えて、単位面積(cm2)当たりのメッキ膜未着部の数を求めた。各実施例等において、5個の成形体について同様の評価を行った。結果を表1に示す。
(2)密着強度測定
引っ張り試験機(島津製作所社製,AGS−100N)を用いて、JIS H8630に準拠し、角度90°、速度25mm/分の条件で、試料表面において長さ40mmに亘り、メッキ膜を試料からから引き剥がすときの力を測定した。各実施例等において、5個の試料について同様の試験を行い、平均値を求めた。結果を表1に示す。
(3)メッキ膜未着部周辺の組成分析
比較例1で製造した成形体において、無電解ニッケルリンメッキ膜を形成した段階で生じたメッキ膜未着部の周辺を走査型電子顕微鏡(SEM)により観察した。SEM写真を図3(a)に示す。図3(a)に示す、メッキ膜未着部1の組成分析を電子プローブ微小分析器(EPMA)により行った。その結果、メッキ膜未着部1から、鉛(Pb):15.7重量%(1.27モル%)、硫黄(S):2.12重量%(1.11モル%)が検出された。
次に、比較例1で製造した成形体において、図3(a)に示す、メッキ膜未着部1の断面、及びメッキ膜が形成されている部分(メッキ膜形成部)2の断面をSEMにより観察した。メッキ膜未着部1の断面のSEM写真を図3(b)に、メッキ膜形成部2の断面のSEM写真を図3(c)に示す。メッキ膜未着部1の断面及びメッキ膜形成部2の断面には、それぞれ、ミネラルM1、M2が観察された。図3(b)及び(c)に示すミネラルM1、M2について、エネルギー分散型X線分光法(EDX)により、組成分析を行った。その結果、メッキ膜未着部1に存在するミネラルM1からは、酸化カルシウム及び二酸化ケイ素由来のカルシウム(Ca)、ケイ素(Si)、酸素(O)の他に、鉛(Pb):53.7重量%(7.68モル%)、硫黄(S):10.8重量%(10.0モル%)が検出された。一方、メッキ膜形成部2に存在するミネラルM2からは、鉛(Pb)及び硫黄(S)は検出されなかった。
<考察>
(1)メッキ膜未着部について
メッキ前処理として、成形体を強酸(塩酸又は硝酸)に30秒間又は、5秒間浸漬させた実施例1〜8では、単位面積(cm2)当たりのメッキ膜未着部の個数は少なく、0〜4個/cm2の範囲内であった。特に、メッキ前処理として、成形体を強酸(塩酸又は硝酸)に5秒間浸漬させた実施例2、4、6及び8では、単位面積(cm2)当たりのメッキ膜未着部の個数が、0〜1個/cm2と、非常に少なかった。
一方、メッキ前処理として、成形体を強酸(塩酸又は硝酸)に60秒間浸漬させた比較例1〜4では、単位面積(cm2)当たりのメッキ膜未着部の個数は多く、5〜58個/cm2の範囲内であった。
以上の結果から、メッキ膜未着部を減らし、外観特性に優れた均一なメッキ膜を形成する観点からは、強酸を用いたメッキ前処理時間は短い方が好ましく、30秒以下とする必要があることがわかった。
ミネラルを含有しない成形体を用いた参考例1では、比較例1と同様に、成形体を塩酸に60秒浸漬したのにもかかわらず、単位面積(cm2)当たりのメッキ膜未着部の個数が、0〜1個/cm2と、非常に少なかった。そして、比較例1で作製した試料のメッキ膜未着部1に存在するミネラルM1からは、Pb及びSが検出され、一方、メッキ膜形成部2に存在するミネラルM2からは、Pb及びSは検出されなかった。
以上の結果から、以下のことが推察される。メッキ前処理に用いる強酸は、成形体内に含まれるミネラルを溶解させる等、何らかの反応により、ミネラル中のPd又はSを溶出させ、メッキ反応に何らかの悪影響を与える。これにより、成形体表面において、S又はPdが含有される部分にメッキ膜未着部が形成される。実施例1〜8では、強酸を用いたメッキ前処理時間を30秒以下としたことで、ネラル中のPd又はSの溶出を抑制でき、メッキ膜未着部の発生が抑制できたと考えられる。
尚、強酸を用いたメッキ前処理を行わなかった比較例5では、実施例1〜8と同様に、単位面積(cm2)当たりのメッキ膜未着部の個数が少なかったが、後述するように、メッキ膜の密着強度は目標値以下であった。
(2)密着強度
メッキ膜の密着強度の目標値は10N/cm以上である。表1に示すように、メッキ前処理に強酸を用いた実施例1〜8では、目標値以上の密着強度を得ることができた。中でも、強酸を用いたメッキ前処理に加えて、アルコール処理液を用いたメッキ前処理を行った実施例3、4、7及び8は、16.7N/cm以上と、特に高い密着強度を得ることができた。一方、強酸を用いたメッキ前処理を行わなかった比較例5では、密着強度は目標値以下であった。
尚、メッキ前処理に強酸を用いた比較例1〜4では、目標値以上の密着強度を得ることができたが、上述したように、単位面積(cm2)当たりのメッキ膜未着部の個数が多かった。
尚、以上説明した実施例1〜8では、成形体が含有するミネラルは、酸化カルシウム、二酸化ケイ素であったが、それ以外のミネラル、例えば、ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、二酸化ケイ素、酸化カルシウム、炭酸カルシウム、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、硫酸バリウム及びこれらを含む化合物からなる群から選択される少なくとも一種が成形体に含有されていても、同様の結果を得られると推測される。
また、実施例3、4、7及び8では、アルコール処理液として、1,3−ブタンジオール水溶液を用いたが、その他のアルコール処理液、例えば、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1,2−ブタンジオール、2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール、1−メトキシ−2−プロパノール、1−エトキシ−2−プロパノール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、2−(2−ブトキシエトキシ)エタノール、2−(2−エトキシエトキシ)エタノール、2−(2−メトキシエトキシ)エタノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、及びポリプロピレングリコールからなる群から選択される少なくとも一種を含むアルコール処理液を用いても、同様の結果を得られると推測される。
実施例1〜8では、第1の樹脂ペレットは押出成形を用いて製造したが、その他の製造方法、例えば、ペレット状のブロック共重合体に、金属微粒子が溶解した加圧二酸化炭素を接触させることによって第1の樹脂ペレットを製造しても同様の結果を得られると推測される。