以下、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。なお、図面の寸法比率は、説明の都合上、誇張されて実際の比率とは異なる場合がある。
<第1実施形態>
本発明の第1実施形態に係るバルーンコーティング方法は、バルーンの表面に薬剤を含むコーティング層を形成するものであり、図1に示すバルーンコーティング装置50により実施される。なお、本明細書では、バルーンカテーテル10の生体管腔に挿入する側を「先端」若しくは「先端側」、操作する手元側を「基端」若しくは「基端側」と称することとする。
まず、バルーンカテーテル10の構造を説明する。バルーンカテーテル10は、図2に示すように、長尺なカテーテル本体部20と、カテーテル本体部20の先端部に設けられるバルーン30と、カテーテル本体部20の基端に固着されたハブ40とを有している。
カテーテル本体部20は、先端および基端が開口した管状体である外管21と、外管21の内部に配置される内管22とを備えている。外管21および内管22の間には、バルーン30を拡張するための拡張用流体が流通する拡張ルーメン23が形成されており、内管22の内側には、ガイドワイヤーが挿通されるガイドワイヤールーメン24が形成されている。
バルーン30は、先端側が内管22に接着され、基端側が外管21に接着されており、バルーン30の内部が、拡張ルーメン23に連通している。バルーン30の軸心X方向における中央部には、拡張させた際に外径が等しい円筒状のストレート部31が形成され、ストレート部31の軸心X方向の両側に、外径が徐々に変化するテーパ部33が形成される。そして、ストレート部31の外表面の全体に、薬剤を含むコーティング層32が形成される。なお、バルーン30においてコーティング層32を形成する範囲は、ストレート部31のみに限定されず、ストレート部31に加えてテーパ部33の少なくとも一部が含まれてもよく、または、ストレート部31の一部のみであってもよい。
ハブ40は、外管21の拡張ルーメン23と連通して拡張用流体を流入出させるポートとして機能する第1開口部41と、ガイドワイヤールーメン24を挿通させる第2開口部42とを備えている。第2開口部42には、血液の流出を抑制する止血弁43が設けられている。
バルーン30は、ある程度の可撓性を有する材料により形成されることが好ましく、そのような材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アイオノマー、あるいはこれら二種以上の混合物等のポリオレフィンや、軟質ポリ塩化ビニル樹脂、ポリアミド、ポリアミドエラストマー、ポリエステル、ポリエステルエラストマー、ポリウレタン、フッ素樹脂等の熱可塑性樹脂、シリコーンゴム、ラテックスゴム等が使用できる。
次に、バルーンコーティング装置50について説明する。バルーンコーティング装置50は、図1に示すように、バルーンカテーテル10を保持してバルーン30の軸心Xを中心として回転させる回転機構60と、バルーンカテーテル10を支持する支持台70と、バルーンカテーテル10の軸心Xの方向へ移動可能な移動台81を備える移動機構80と、バルーン30の外表面にコーティング液Rを塗布する塗布機構90と、バルーンコーティング装置50を制御する制御部110と、を有する。
回転機構60は、バルーンカテーテル10のハブ40を保持し、内蔵されるモーター等の駆動源によってバルーンカテーテル10を回転させる。バルーンカテーテル10は、ガイドワイヤールーメン24内に芯材61が挿通されて保持されるとともに、芯材61によってコーティング液Rのガイドワイヤールーメン24内への流入が防止されている。また、バルーンカテーテル10は、拡張ルーメン23を覆うようにハブ40の第1開口部41にキャップ63が被せられ、バルーン30を拡張させた際に拡張用流体を密封することができる。なお、キャップ63ではなしに、三方活栓を利用してもよい。
支持台70は、カテーテル本体部20を内部に収容して回転可能に支持する管状の基端側支持部71と、芯材61を回転可能に支持する先端側支持部72とを備えている。なお、先端側支持部72は、可能であれば、芯材61ではなしにカテーテル本体部20の先端部を回転可能に支持してもよい。また、本実施形態では、芯材61をバルーンカテーテル10とともに回転させているが、芯材61を先端側支持部72に固定して、芯材61の外側をバルーンカテーテル10が回転してもよい。
移動機構80は、バルーン30の軸心Xと平行な方向へ直線的に移動可能な移動台81を備えている。移動台81は、内蔵されるモーター等の駆動源によって、直線的に移動可能である。移動台81には、塗布機構90が載置されており、塗布機構90をバルーンカテーテル10の軸心Xに沿う両方向へ直線的に移動させる。
塗布機構90は、コーティング液Rを収容する容器92と、任意の送液量でコーティング液Rを送液する送液ポンプ93と、コーティング液Rをバルーン30に塗布するディスペンシングチューブ94(塗布部)と、バルーン30の偏心を抑制するための2つのバルーン支持部100とを備えている。
送液ポンプ93は、例えばシリンジポンプであり、制御部110によって制御されて、容器92から吸引チューブ95を介してコーティング液Rを吸引し、供給チューブ96を介してディスペンシングチューブ94へコーティング液Rを任意の送液量で供給することができる。送液ポンプ93は、移動台81に設置され、移動台81の移動により直線的に移動可能である。なお、送液ポンプ93は、コーティング液Rを送液可能であればシリンジポンプに限定されず、例えばチューブポンプであってもよい。
ディスペンシングチューブ94は、バルーン30の外表面へ向かって開口する開口部からコーティング液Rを吐出する円管状の部材である。ディスペンシングチュ−ブ94の開口部は、ディスペンシングチュ−ブ94の軸心と直交する面で開口するように形成されているが、これに限定されない。ディスペンシングチューブ94は、移動台81に固定される固定部材98に固定されており、移動台81に設置される送液ポンプ93とともに、バルーンカテーテル10の軸心Xに沿う両方向へ直線的に移動可能である。なお、ディスペンシングチューブ94は、コーティング液Rを供給可能であれば、円管状でなくてもよい。なお、バルーン30にコーティング液Rを塗布する方法は、ディスペンシングチューブ94を用いる方法に限定されず、例えば、コーティング液Rを含ませた繊維材、織布、不織布、スポンジ等の多孔質体、ヘラ状の部材、ブラシ等を用いて塗布してもよい。
ディスペンシングチューブ94の内径は、特に限定されないが、例えば0.1〜2.0mmであり、バルーン30の大きさやコーティング液Rの粘度等に応じて適宜設定されることが好ましい。
ディスペンシングチューブ94の構成材料は、コーティング液Rを塗布できれば、特に限定されず、一般的な樹脂や金属等を適用できる。
2つのバルーン支持部100は、図3,4に示すように、移動台81に固定される固定部材98から下方へ延びる枠体99に、バルーン30の上下を挟みつつ回転可能に設けられており、コーティング液Rを塗布する際のディスペンシングチューブ94の移動方向側に位置して、ディスペンシングチューブ94とともに移動可能となっている。2つのバルーン支持部100は、回転可能なローラであり、バルーン30の軸心Xと直交する回転軸を備え、バルーン30の上下を挟むように平行に配置されている。各々のバルーン支持部100は、円柱形状であってバルーン30と接するローラ部101と、枠体99(保持部)に回転可能に連結される軸部102とを備える。
2つのバルーン支持部100の離間距離L1は、塗布を行う際のバルーン30の外周面と接触するように、バルーン30の外周面の外径と一致または多少短いことが好ましく、例えば1〜10mmである。バルーン支持部100のローラ部101の外径は、特に限定されないが、例えば0.5〜20mmである。
バルーン支持部100の構成材料は、特に限定されないが、例えば、ポリアミド、ポリイミド、フェノール樹脂、アクリル、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリアセタール、ポリカーボネート等の各種樹脂材料やステンレス、アルミニウム等の各種金属材料等を適用できる。バルーン支持部100のローラ部101の外周面は、低摩擦材料で被覆されてもよい。低摩擦材料は、例えばポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のフッ素系樹脂、シリコン樹脂等である。
枠体99の構成材料は、バルーン支持部100を保持できれば、特に限定されず、一般的な樹脂や金属等を適用できる。
制御部110は、例えばコンピュータにより構成され、回転機構60、移動機構80および塗布機構90を統括的に制御する。
コーティング液Rは、薬剤、添加剤、および揮発性溶媒を含んでいる。薬剤は、生体へ作用する物質であり、水溶性薬剤および不水溶性薬剤のいずれであってもよいが、薬剤の血中への溶出を抑制するという観点から、不水溶性薬剤が好ましい。
不水溶性薬剤は、水に不溶または難溶性である薬剤を意味し、具体的には、水に対する溶解度が、pH5〜8で5mg/mL未満である。その溶解度は、1mg/mL未満、さらに、0.1mg/mL未満でもよい。水不溶性薬剤は、脂溶性薬剤を含む。
いくつかの好ましい水不溶性薬剤の例は、免疫抑制剤、例えば、シクロスポリンを含むシクロスポリン類、ラパマイシン等の免疫活性剤、パクリタキセル等の抗がん剤、抗ウイルス剤または抗菌剤、抗新生組織剤、鎮痛剤および抗炎症剤、抗生物質、抗てんかん剤、不安緩解剤、抗麻酔剤、拮抗剤、ニューロンブロック剤、抗コリン作用剤、抗不整脈剤、抗高血圧剤、ホルモン剤ならびに栄養剤を含む。
水不溶性薬剤としては、ラパマイシン、パクリタキセル、ドセタキセルおよびエベロリムスからなる群から選択される少なくとも1つが好ましい。ラパマイシン、パクリタキセル、ドセタキセル、エベロリムスは、それぞれ、同様の薬効を有する限り、それらの類似体および/またはそれらの誘導体を含む。例えば、パクリタキセルとドセタキセルとは類似体の関係にあり、ラパマイシンとエベロリムスとは誘導体の関係にある。これらのうちでは、パクリタキセルがさらに好ましい。
本実施形態におけるコーティング液Rは、上記水不溶性薬剤を、好ましくは5〜60mg/mLの濃度で、より好ましくは20〜50mg/mLの濃度で、さらに好ましくは30〜40mg/mLの濃度で、含有する。
添加剤は、特に制限されないが、薬剤と固体分散体を形成するポリマー(重合体)及び/又は高分子または低分子の化合物を適用でき、例えば、ポリオレフィン、ポリイソブチレン、エチレン−α−オレフィン共重合体、アクリルポリマーおよび共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリビニル・メチル・エーテル、ポリフッ化ビニリデン、ポリ塩化ビニリデン、ポリアクリロニトリル、ポリビニルケトン、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、エチレン−メチル・メタクリル酸塩共重合体、アクリロニトリル−スチレン共重合体、ABS樹脂、ナイロン12およびそのブロック共重合体、ポリカプロラクトン、ポリオキシメチレン、ポリエステル、ポリエーテル、ポリアミド、エポキシ樹脂、ポリウレタン、レーヨン・トリアセテート、セルロース、酢酸セルロース、酪酸セルロース、セロハン、硝酸セルロース、プロピオニルセルロース、セルロース・エーテル、カルボキシメチルセルロース、キチン、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリエチレンオキシド、ポリ乳酸−ポリエチレンオキシド共重合体、ポリエチレングリコール、ポリプロピレン・グリコール、グリセロール、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、有機酸、有機酸エステルからなる群より選択される少なくとも1種が好ましい。なお、添加剤は、必ずしも設けられなくてもよい。
添加剤は、薬剤に対して少量であることが好ましく、マトリクスを形成しないことが好ましい。また、添加剤は、ミセル、リポソーム、造影剤、乳化剤、界面活性剤を含まないことが好ましいが、含まれてもよい。また、添加剤は、ポリマーを含まず低分子の化合物のみを含むことが好ましい。
揮発性溶媒は、特に限定されないが、メタノール、エタノール、ジオキサン、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド、アセトン等の揮発性有機溶媒を少なくとも1種類を含むことが好ましい。また、揮発性有機溶媒に水等が混合されてもよい。
次に、上述したバルーンコーティング装置50を用いてバルーン30の表面に薬剤を含むコーティング層32を形成するバルーンコーティング方法を説明する。
初めに、バルーンカテーテル10の第1開口部41から拡張用の流体をバルーン30内に供給し、バルーン30を拡張させた状態で第1開口部41にキャップ63を被せて密封し、バルーン30を拡張させた状態で維持する。なお、バルーン30を拡張させずに、バルーン30の表面にコーティング層32を形成することもでき、その場合には、拡張用の流体をバルーン30内に供給する必要はない。
次に、バルーン30の外周面がバルーン支持部100のローラ部101と接するように、バルーンカテーテル10を支持台70に回転可能に設置し、ハブ40を回転機構60に連結する。
次に、移動台81を移動させて、バルーン30においてコーティング層32を形成する最も先端側の位置にディスペンシングチューブ94を位置させる。これにより、バルーン支持部100は、ディスペンシングチューブ94の進行方向側で、バルーン30の外周面と接触して支持した状態となる。
次に、送液ポンプ93により送液量を調節しつつコーティング液Rをディスペンシングチューブ94へ供給し、回転機構60によりバルーンカテーテル10を回転させるとともに、移動台81を移動させて、ディスペンシングチューブ94を軸心Xに沿って徐々に基端方向へ移動させる。これにより、図5,6に示すように、ディスペンシングチューブ94から吐出されるコーティング液Rは、バルーン30の回転およびディスペンシングチューブ94の移動によって、バルーン30の外周面上に、螺旋を描きつつ連続的に隙間なく塗布される(塗布工程)。また、2つのバルーン支持部100は、ディスペンシングチューブ94とともに移動し、バルーン30から受ける力によって回転する。2つのバルーン支持部100は、バルーン30を挟むように位置しているため、互いに逆回転で回転することになる。
ディスペンシングチューブ94の移動速度は、例えば0.05〜5mm/秒であるが、これに限定されない。コーティング液Rのディスペンシングチューブ94からの吐出速度は、例えば0.05〜5μL/秒であるが、これに限定されない。バルーン30の回転数は、例えば10〜300rpmであるが、これに限定されない。
バルーンカテーテル10が回転すると、バルーン30の軸心Xに沿う湾曲によってバルーン30が偏心しようとするが、バルーン支持部100によってバルーン30が挟まれて支持されているため、バルーン30の偏心が抑制される。これにより、バルーン30に塗布されるコーティング液Rの厚さのバラツキが抑制されて、コーティング液R(コーティング層32)の厚さの調節が容易となる。特に、バルーン支持部100は、ディスペンシングチューブ94の進行方向側に一定の距離で離れた状態で位置しているため、コーティング液Rをバルーン支持部100に接触させることなしに、ディスペンシングチューブ94からコーティング液Rが塗布される位置におけるバルーン30の偏心を、最小限に抑えることができる。また、バルーン支持部100が、バルーン30に接触して回転可能であるため、バルーン支持部100とバルーン30との間の接触抵抗を極力小さくでき、バルーン支持部100がバルーン30の回転を妨げ難くなり、かつバルーン30の損傷等の発生を抑制できる。また、ローラ部101のバルーン30の外表面に対して接触する部位に低摩擦材料が設けられるため、バルーン支持部100とバルーン30との間の接触抵抗をさらに低下させることができ、バルーン支持部100がバルーン30の回転をさらに妨げ難くなり、かつバルーン30の損傷等の発生をさらに抑制できる。
この後、バルーン30の表面に塗布されたコーティング液Rに含まれる揮発性溶媒が揮発して、バルーン30の表面に薬剤および添加物を含むコーティング層32が徐々に形成される。揮発させる時間は、溶媒により適宜設定されるが、例えば、数秒〜十数秒程度である。
バルーン30の外表面にコーティングされる薬剤は、結晶型、非結晶質(アモルファス)型、およびそれらの混合型などの異なる形態型となり得る。薬剤が結晶型となる場合でも、結晶構造が異なる種々の形態型が存在する。さらに、結晶や非晶質は、コーティング層32において規則性を有するように配置されてもよいが、不規則に配置されてもよい。そして、このような薬剤の形態型は、揮発性溶媒を揮発させる時間の長短や雰囲気温度により影響を受ける。したがって、上述のように、コーティング液Rの厚さを適切に調節することで、溶媒を揮発させる時間を調節することが容易となり、コーティング層32に含まれる薬剤の形態型や大きさなどをより自在に調節することが可能となる。
そして、バルーン30を回転させつつディスペンシングチューブ94を徐々に軸心Xの方向へ移動させることで、バルーン30の外表面に、コーティング層32を徐々に形成する。バルーン30のコーティングする範囲の全体にコーティング層32が形成された後、回転機構60、移動機構80および塗布機構90を停止させる。
コーティング層32の厚さは、例えば1〜50μmであるが、これに限定されず、バルーン30の寸法や薬剤の種類等に応じて適宜設定可能である。
この後、バルーンカテーテル10をバルーンコーティング装置50から取り外して、バルーン30のコーティングが完了する。
以上のように、本実施形態に係るバルーンコーティング方法は、バルーンカテーテル10のバルーン30の外表面にコーティング層32を形成するバルーンコーティング方法であって、バルーン30を当該バルーン30の軸心Xを中心に回転させつつ、薬剤を含むコーティング液Rを塗布するディスペンシングチューブ94(塗布部)をバルーン30に対して軸心X方向へ相対的に移動させるとともに、ディスペンシングチューブ94の移動方向側に設けられて回転可能な少なくとも2つのバルーン支持部100によりバルーン30を挟んで接触させて当該バルーン30を支持しつつ、ディスペンシングチューブ94によってコーティング液Rをバルーン30の外表面に塗布する塗布工程を有している。このように、ディスペンシングチューブ94の移動方向側に設けられるバルーン支持部100によってバルーン30が支持されているため、ディスペンシングチューブ94が設けられる部位における、回転により生じるバルーン30の偏心が抑制され、塗りムラが抑制される。これにより、バルーン30に塗布されるコーティング液Rの厚さのバラツキが抑制されて、コーティング液R(コーティング層32)の厚さの調節が容易となる。そして、バルーン支持部100は、ディスペンシングチューブ94の進行方向側に位置しているため、コーティング液Rをバルーン支持部100に接触させることなしに、ディスペンシングチューブ94からコーティング液Rが塗布される位置におけるバルーン30の偏心を、最小限に抑えることができる。さらに、コーティング液Rの厚さを調節することで、溶媒を揮発させる時間を調節することが容易となり、コーティング層32に含まれる薬剤の形態型や大きさなどをより自在に設定することが可能となる。そして、バルーン30に適切なコーティング層32が形成されることで、望ましい治療効果を期待できる。また、バルーン支持部100が、バルーン30に接触して回転可能であるため、バルーン支持部100とバルーン30との間の接触抵抗を極力小さくすることができ、バルーン支持部100がバルーン30の回転を妨げ難くなることで良好なコーティングを維持でき、かつバルーン30の損傷等の発生を抑制できる。
また、塗布工程において、ディスペンシングチューブ94(塗布部)と一体的に移動可能な枠体99(保持部)によってバルーン支持部100を回転可能に保持するため、ディスペンシングチューブ94が設けられる部位におけるバルーン30の偏心がバルーン支持部100によって抑制され、塗りムラが抑制される。
また、塗布工程において、バルーン支持部100を、バルーン30の軸心Xと直交する軸を中心に回転可能に保持するため、バルーン支持部100がバルーン30に対して軸心X方向へ相対的に移動する際にバルーン支持部100が回転する。これにより、バルーン支持部100とバルーン30との間の接触抵抗を極力小さくでき、バルーン支持部100がバルーン30の回転を妨げ難くなることで良好なコーティングを維持でき、かつバルーン30の損傷等の発生を抑制できる。
また、塗布工程において、バルーン30の外表面に対して接触する部位に低摩擦材料を設けたバルーン支持部100を用いるため、バルーン支持部100がバルーン30の回転をさらに妨げ難くなり、かつバルーン30の損傷等の発生をさらに抑制できる。
<第2実施形態>
本発明の第2実施形態に係るバルーンコーティング方法は、バルーン支持部および枠体の形態が、第1実施形態と異なる。なお、他の構成は、第1実施形態と同様であるため、同様の符号を付し、説明を省略する。
第2実施形態におけるバルーンコーティング装置は、図7,8に示すように、バルーン30の偏心を抑制するための2つのバルーン支持部120が、移動台81に固定される固定部材98から下方へ延びる枠体123(保持部)に回転可能に保持されている。
2つのバルーン支持部120は、バルーン30の上下を挟みつつ回転可能に設けられており、コーティング液Rを塗布する際のディスペンシングチューブ94の移動方向側に位置して、ディスペンシングチューブ94とともに移動可能となっている。2つのバルーン支持部120は、回転可能なローラであり、バルーン30の軸心Xと平行な回転軸を備え、バルーン30の上下を挟むように平行に配置されている。各々のバルーン支持部120は、円柱形状であってバルーン30と接するローラ部121と、枠体123に回転可能に連結される軸部122とを備える。ローラ部121は、低摩擦材料で被覆されてもよい。
2つのバルーン支持部120の構成材料や寸法等は、第1実施形態におけるバルーン支持部100と同様の構成材料や寸法等を適用できる。
第2実施形態においてバルーン30の表面に薬剤を含むコーティング層32を形成する際には、バルーン30の外周面がバルーン支持部120のローラ部121と接するように、バルーンカテーテル10を支持台70に回転可能に設置し、ハブ40を回転機構60に連結する。次に、移動台81を移動させて、バルーン30においてコーティング層32を形成する最も先端側の位置にディスペンシングチューブ94を位置させる。
次に、送液ポンプ93により送液量を調節しつつコーティング液Rをディスペンシングチューブ94へ供給し、回転機構60によりバルーンカテーテル10を回転させるとともに、移動台81を移動させて、ディスペンシングチューブ94を徐々に基端方向へ移動させる。これにより、ディスペンシングチューブ94から吐出されるコーティング液Rは、バルーン30の回転およびディスペンシングチューブ94の移動によって、バルーン30の外周面上に、螺旋を描きつつ連続的に隙間なく塗布される(塗布工程)。また、2つのバルーン支持部120は、ディスペンシングチューブ94とともに移動し、バルーン30の回転力を受けて回転する。2つのバルーン支持部120は、いずれもバルーン30に対して逆回転で回転することになる。
バルーンカテーテル10が回転すると、バルーン30の軸心Xに沿う湾曲によってバルーン30が偏心しようとするが、バルーン支持部120によってバルーン30が挟まれて支持されているため、バルーン30の偏心が抑制される。これにより、バルーン30に塗布されるコーティング液Rの厚さのバラツキが抑制されて、コーティング液R(コーティング層32)の厚さの調節が容易となる。特に、バルーン支持部120は、ディスペンシングチューブ94の進行方向側に一定の距離で離れた状態で位置しているため、コーティング液Rをバルーン支持部120に接触させることなしに、ディスペンシングチューブ94からコーティング液Rが塗布される位置におけるバルーン30の偏心を、最小限に抑えることができる。また、バルーン支持部120が、バルーン30に接触して回転可能であるため、バルーン支持部120とバルーン30との間の接触抵抗を極力小さくでき、バルーン支持部120がバルーン30の回転を妨げ難くなり、かつバルーン30の損傷等の発生を抑制できる。また、ローラ部121のバルーン30の外表面に対して接触する部位に低摩擦材料が設けられるため、バルーン支持部120とバルーン30との間の接触抵抗をさらに低下させることができ、バルーン支持部120がバルーン30の回転をさらに妨げ難くなり、かつバルーン30の損傷等の発生をさらに抑制できる。
また、コーティング液Rの厚さの調節が容易となることで、溶媒を揮発させる時間を調節することが容易となり、コーティング層32に含まれる薬剤の形態型や大きさなどをより自在に調節することが可能となる。
バルーン30のコーティングする範囲の全体にコーティング層32が形成された後、回転機構60、移動機構80および塗布機構90を停止させ、バルーンカテーテル10をバルーンコーティング装置から取り外して、バルーン30のコーティングが完了する。
以上のように、第2実施形態に係るバルーンコーティング方法は、塗布工程において、バルーン支持部120を、バルーン30の軸心Xと平行な軸を中心に回転可能に保持するため、バルーン30の回転力を受けてバルーン30と逆回転でバルーン支持部120が回転する。これにより、バルーン支持部120とバルーン30との間の接触抵抗を極力小さくでき、バルーン支持部120がバルーン30の回転を妨げ難くなることで良好なコーティングを維持でき、かつバルーン30の損傷等の発生を抑制できる。
<第3実施形態>
本発明の第3実施形態に係るバルーンコーティング方法は、バルーン支持部およびバルーン支持部を保持する保持部の形態が、第1実施形態と異なる。なお、他の構成は、第1実施形態と同様であるため、同様の符号を付し、説明を省略する。
第3実施形態におけるバルーンコーティング装置は、図9に示すように、バルーン30の偏心を抑制するための2つのバルーン支持部130が、移動台81に固定される固定部材98から下方へ延びる枠体132に設けられる保持部131に、回転可能に保持されている。
2つのバルーン支持部130は、バルーン30の上下を挟みつつ回転可能に設けられており、コーティング液Rを塗布する際のディスペンシングチューブ94の移動方向側に位置して、ディスペンシングチューブ94とともに移動可能となっている。2つのバルーン支持部130は、球体であり、あらゆる方向へ回転可能である。保持部131は、バルーン支持部130をあらゆる方向へ回転可能とするように、バルーン支持部130の外周面の一部を摺動可能に保持している。バルーン支持部130は、低摩擦材料で被覆されている。
2つのバルーン支持部130の構成材料は、第1実施形態におけるバルーン支持部130と同様の構成材料を適用できる。
2つのバルーン支持部130の離間距離L2は、塗布を行う際のバルーン30の外周面と接触するように、バルーン30の外周面の外径と一致または多少短いことが好ましく、例えば1〜10mmである。バルーン支持部130の外径は、特に限定されないが、例えば0.5〜20mmである。
第3実施形態においてバルーン30の表面に薬剤を含むコーティング層32を形成する際には、バルーン30の外周面がバルーン支持部130と接するように、バルーンカテーテル10を支持台70に回転可能に設置し、ハブ40を回転機構60に連結する。次に、移動台81を移動させて、バルーン30においてコーティング層32を形成する最も先端側の位置にディスペンシングチューブ94を位置させる。
次に、送液ポンプ93により送液量を調節しつつコーティング液Rをディスペンシングチューブ94へ供給し、回転機構60によりバルーンカテーテル10を回転させるとともに、移動台81を移動させて、ディスペンシングチューブ94を徐々に基端方向へ移動させる。これにより、ディスペンシングチューブ94から吐出されるコーティング液Rは、バルーン30の回転およびディスペンシングチューブ94の移動によって、バルーン30の外周面上に、螺旋を描きつつ連続的に隙間なく塗布される(塗布工程)。また、2つのバルーン支持部130は、ディスペンシングチューブ94とともに移動し、バルーン30の回転力を受けて回転する。
バルーンカテーテル10が回転すると、バルーン30の軸心Xに沿う湾曲によってバルーン30が偏心しようとするが、バルーン支持部130によってバルーン30が挟まれて支持されているため、バルーン30の偏心が抑制される。これにより、バルーン30に塗布されるコーティング液Rの厚さのバラツキが抑制されて、コーティング液R(コーティング層32)の厚さの調節が容易となる。特に、バルーン支持部130は、ディスペンシングチューブ94の進行方向側に一定の距離で離れた状態で位置しているため、コーティング液Rをバルーン支持部130に接触させることなしに、ディスペンシングチューブ94からコーティング液Rが塗布される位置におけるバルーン30の偏心を、最小限に抑えることができる。また、バルーン支持部130が、バルーン30に接触してあらゆる方向へ回転可能であるため、バルーン支持部130とバルーン30との間の接触抵抗を極力小さくでき、バルーン支持部130がバルーン30の回転を妨げ難くなり、かつバルーン30の損傷等の発生を抑制できる。また、バルーン支持部130のバルーン30の外表面に対して接触する部位に低摩擦材料が設けられるため、バルーン支持部130とバルーン30との間の接触抵抗をさらに低下させることができ、バルーン支持部130がバルーン30の回転をさらに妨げ難くなり、かつバルーン30の損傷等の発生をさらに抑制できる。
また、コーティング液Rの厚さの調節が容易となることで、溶媒を揮発させる時間を調節することが容易となり、コーティング層32に含まれる薬剤の形態型や大きさなどをより自在に調節することが可能となる。
バルーン30のコーティングする範囲の全体にコーティング層32が形成された後、回転機構60、移動機構80および塗布機構90を停止させ、バルーンカテーテル10をバルーンコーティング装置から取り外して、バルーン30のコーティングが完了する。
以上のように、第3実施形態に係るバルーンコーティング方法は、塗布工程において、バルーン支持部130を、あらゆる方向へ回転可能に保持するため、バルーン30の回転力を受けてバルーン支持部130が回転し、バルーン支持部130とバルーン30との間の接触抵抗を極力小さくできる。これにより、バルーン支持部130がバルーン30の回転を妨げ難くなることでより良好なコーティングを維持でき、かつバルーン30の損傷等の発生を抑制できる。
なお、本発明は、上述した実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の技術的思想内において当業者により種々変更が可能である。例えば、上述した実施形態では、バルーン30の先端側から基端側へ向かってコーティング液Rを塗布しているが、基端側から先端側へ向かって塗布してもよい。
また、ディスペンシングチューブ94およびバルーン支持部100,120,130は、バルーン30の偏心によって一体的に移動してもよい。すなわち、バルーン30が偏心する際に、バルーン支持部100によってバルーン30の偏心を強制的に抑えるのではなしに、バルーン30の偏心に伴って、バルーン支持部100を移動させるようにすることができる。この場合、バルーン30が偏心しても、バルーン支持部100,120,130が移動する際にバルーン支持部100,120,130とともにディスペンシングチューブ94が一体的に移動することで、ディスペンシングチューブ94とバルーン30との間の距離が変化せず、塗りムラが抑制され、バルーン30に塗布されるコーティング液Rの厚さのバラツキが抑制される。
また、上述の第1〜第3実施形態では、バルーン支持部100,120,130が、バルーン30の上下に配置されているが、配置される位置は限定されず、例えばバルーン30の左右(軸心Xの水平方向側)に配置されてもよい。また、バルーン支持部100,120,130は、2つが対となって設けられているが、3つ以上が対となって設けられてもよい。この場合、バルーン支持部は、バルーン30の周方向に均等な角度で配置されることが好ましいが、均等な角度で配置されなくてもよい。3つ以上のバルーン支持部を用いる場合、バルーン支持部が180度以上の間隔で離れることのないようにバルーン30の周囲に配置することで、軸心Xと直交する全ての方向へのバルーン30の偏心を効果的に抑制できる。
また、第1実施形態におけるバルーン支持部100の変形例として、図10に示すように、バルーン支持部140のローラ部141の中央に、円弧状に窪んだ凹部142を設けてもよい。凹部142の曲率半径は、バルーン30の曲率半径以上であることが好ましい。このような構成とすれば、バルーン支持部140の回転軸に沿う方向へのバルーン30の偏心をも、効果的に抑制できる。
また、上述の実施形態に係るバルーンコーティング方法では、バルーンカテーテル10は、オーバーザワイヤ型(Over−the−wire type)のバルーンカテーテル10のバルーン30にコーティングを施しているが、図11に示すように、ラピッドエクスチェンジ型(Rapid exchange type)のバルーンカテーテル200のバルーン250にコーティングを施してもよい。バルーンカテーテル200は、基端側からハブ210、基部シャフト220、中間部分230、先端シャフト240、バルーン250および内管シャフト260を備えている。
ハブ210には、金属または一部の樹脂など比較的剛性の高い材質からなる基部シャフト220が、流体を流通可能に連通して接合されている。
基部シャフト220の先端側には、中間部分230が流体を流通可能に連通して設けられている。中間部分230の先端側には樹脂などの材質からなる比較的剛性の低い先端シャフト240が流体を流通可能に連通して設けられている。先端シャフト240の先端側には、バルーン250の基端部が流体を流通可能に連通して設けられている。
内管シャフト260は、先端シャフト240及びバルーン250の内部を同軸状に貫通している。内管シャフト260の先端部は先端チップ261となっており、先端チップ261はバルーン250の先端部より先端側へ延在している。先端チップ261は、バルーン250の先端部と液密を保った状態で接合されている。内管シャフト260の基端は、中間部分230から先端シャフト240にかけての一部分に設けられたガイドワイヤ開口部262まで延長され、液密を保った状態で接合されている。ガイドワイヤは、先端チップ261の先端開口部263を入口とし、ガイドワイヤ開口部202を出口として、内管シャフト260内に挿入可能である。
上述のラピッドエクスチェンジ型のバルーンカテーテル200であっても、バルーン250を拡張させて密封し、ハブ210を回転機構60に取り付け、支持台70により基部シャフト220、中間部分230および先端シャフト240の少なくとも一部を支持し、芯材61をガイドワイヤ開口部262から内管シャフト260内に挿入して、バルーンコーティング装置50に取り付けることができる。そして、上述の実施形態において説明した方法と同様の方法で、バルーン250の外表面にコーティング層を形成することができる。