以下、図面を参照して、本発明の実施形態による走査アンテナおよびその製造方法を説明する。以下の説明においては、まず、公知のTFT型LCD(以下、「TFT−LCD」という。)の構造および製造方法を説明する。ただし、LCDの技術分野で周知の事項については説明を省略することがある。TFT−LCDの基本的な技術については、例えば、Liquid Crystals, Applications and Uses, Vol. 1−3(Editor: Birenda Bahadur, Publisher: World Scientific Pub Co Inc)などを参照されたい。参考のために、上記の文献の開示内容の全てを本明細書に援用する。
図26(a)および(b)を参照して、典型的な透過型のTFT−LCD(以下、単に「LCD」という。)900の構造および動作を説明する。ここでは、液晶層の厚さ方向に電圧を印加する縦電界モード(例えば、TNモードや垂直配向モード)のLCD900を例示する。LCDの液晶容量に印加される電圧のフレーム周波数(典型的には極性反転周波数の2倍)は例えば4倍速駆動でも240Hzであり、LCDの液晶容量の誘電体層としての液晶層の誘電率εは、マイクロ波(例えば、衛星放送やKuバンド(12〜18GHz)、Kバンド(18〜26GHz)、Kaバンド(26〜40GHz))に対する誘電率M(εM)と異なる。
図26(a)に模式的に示すように、透過型のLCD900は、液晶表示パネル900aと、制御回路CNTLと、バックライト(不図示)と、電源回路(不図示)などを備えている。液晶表示パネル900aは、液晶表示セルLCCと、ゲートドライバGDおよびソースドライバSDを含む駆動回路とを含む。駆動回路は、例えば、液晶表示セルLCCのTFT基板910に実装されてもよいし、駆動回路の一部または全部は、TFT基板910に一体化(モノリシック化)されてもよい。
図26(b)に、LCD900が有する液晶表示パネル(以下、「LCDパネル」という。)900aの模式的に断面図を示す。LCDパネル900aは、TFT基板910と、対向基板920と、これらの間に設けられた液晶層930とを有している。TFT基板910および対向基板920は、いずれもガラス基板などの透明基板911、921を有している。透明基板911、921としては、ガラス基板の他、プラスチック基板が用いられることもある。プラスチック基板は、例えば、透明な樹脂(例えばポリエステル)とガラス繊維(例えば不織布)で形成される。
LCDパネル900aの表示領域DRは、マトリクス状に配列された画素Pによって構成されている。表示領域DRの周辺には表示に寄与しない額縁領域FRが形成されている。液晶材料は表示領域DRを包囲するように形成されたシール部(不図示)によって表示領域DR内に封止されている。シール部は、例えば、紫外線硬化性樹脂とスペーサ(例えば樹脂ビーズ)とを含むシール材を硬化させることによって形成され、TFT基板910と対向基板920とを互いに接着、固定する。シール材中のスペーサは、TFT基板910と対向基板920との間隙、すなわち液晶層930の厚さを一定に制御する。液晶層930の厚さの面内ばらつきを抑制するために、表示領域DR内の遮光される部分(例えば配線上)に、柱状スペーサが紫外線硬化性樹脂を用いて形成される。近年、液晶テレビやスマートフォン用のLCDパネルに見られるように、表示に寄与しない額縁領域FRの幅は非常に狭くなっている。
TFT基板910では、透明基板911上に、TFT912、ゲートバスライン(走査線)GL、ソースバスライン(表示信号線)SL、画素電極914、補助容量電極(不図示)、CSバスライン(補助容量線)(不図示)が形成されている。CSバスラインはゲートバスラインと平行に設けられる。あるいは、次段のゲートバスラインをCSバスラインとして用いることもある(CSオンゲート構造)。
画素電極914は、液晶の配向を制御する配向膜(例えばポリイミド膜)に覆われている。配向膜は、液晶層930と接するように設けられる。TFT基板910はバックライト側(観察者とは反対側)に配置されることが多い。
対向基板920は、液晶層930の観察者側に配置されることが多い。対向基板920は、透明基板921上に、カラーフィルタ層(不図示)と、対向電極924と、配向膜(不図示)とを有している。対向電極924は、表示領域DRを構成する複数の画素Pに共通に設けられるので、共通電極とも呼ばれる。カラーフィルタ層は、画素P毎に設けられるカラーフィルタ(例えば、赤フィルタ、緑フィルタ、青フィルタ)と、表示に不要な光を遮光するためのブラックマトリクス(遮光層)とを含む。ブラックマトリクスは、例えば、表示領域DR内の画素Pの間、および額縁領域FRを遮光するように配置される。
TFT基板910の画素電極914と、対向基板920の対向電極924と、これらの間の液晶層930が、液晶容量Clcを構成する。個々の液晶容量が画素に対応する。液晶容量Clcに印加された電圧を保持するために(いわゆる電圧保持率を高くするために)、液晶容量Clcと電気的に並列に接続された補助容量CSが形成されている。補助容量CSは、典型的には、画素電極914と同電位とされる電極と、無機絶縁層(例えばゲート絶縁層(SiO2層))と、CSバスラインに接続された補助容量電極とで構成される。CSバスラインからは、典型的には、対向電極924と同じ共通電圧が供給される。
液晶容量Clcに印加された電圧(実効電圧)が低下する要因としては、(1)液晶容量Clcの容量値CClcと、抵抗値Rとの積であるCR時定数に基づくもの、(2)液晶材料中に含まれるイオン性不純物に起因する界面分極、および/または、液晶分子の配向分極などがある。これらのうち、液晶容量ClcのCR時定数による寄与が大きく、液晶容量Clcに電気的に並列に接続された補助容量CSを設けることによって、CR時定数を大きくすることができる。なお、液晶容量Clcの誘電体層である液晶層930の体積抵抗率は、汎用されているネマチック液晶材料の場合、1012Ω・cmのオーダを超えている。
画素電極914に供給される表示信号は、ゲートバスラインGLにゲートドライバGDから供給される走査信号によって選択されたTFT912がオン状態となったときに、そのTFT912に接続されているソースバスラインSLに供給されている表示信号である。したがって、あるゲートバスラインGLに接続されているTFT912が同時にオン状態となり、その時に、その行の画素PのそれぞれのTFT912に接続されているソースバスラインSLから対応する表示信号が供給される。この動作を、1行目(例えば表示面の最上行)からm行目(例えば表示面の最下行)まで順次に行うことによって、m行の画素行で構成された表示領域DRに1枚の画像(フレーム)が書き込まれ、表示される。画素Pがm行n列にマトリクス状に配列されているとすると、ソースバスラインSLは各画素列に対応して少なくとも1本、合計で少なくともn本設けられる。
このような走査は線順次走査と呼ばれ、1つの画素行が選択されて、次の行が選択されるまでの時間は水平走査期間(1H)と呼ばれ、ある行が選択され、再びその行が選択されるまでの時間は垂直走査期間(1V)またはフレームと呼ばれる。なお、一般に、1V(または1フレーム)は、m本の画素行を全て選択する期間m・Hに、ブランキング期間を加えたものとなる。
例えば、入力映像信号がNTSC信号の場合、従来のLCDパネルの1V(=1フレーム)は、1/60sec(16.7msec)であった。NTSC信号はインターレース信号であり、フレーム周波数は30Hzで、フィールド周波数は60Hzであるが、LCDパネルにおいては各フィールドで全ての画素に表示信号を供給する必要があるので、1V=(1/60)secで駆動する(60Hz駆動)。なお、近年では、動画表示特性を改善するために、2倍速駆動(120Hz駆動、1V=(1/120)sec)で駆動されるLCDパネルや、3D表示のために4倍速(240Hz駆動、1V=(1/240)sec)で駆動されるLCDパネルもある。
液晶層930に直流電圧が印加されると実効電圧が低下し、画素Pの輝度が低下する。この実効電圧の低下には、上記の界面分極および/または配向分極の寄与があるので、補助容量CSを設けても完全に防止することは難しい。例えば、ある中間階調に対応する表示信号を全ての画素にフレーム毎に書き込むと、フレーム毎に輝度が変動し、フリッカーとして観察される。また、液晶層930に長時間にわたって直流電圧が印加されると液晶材料の電気分解が起こることがある。また、不純物イオンが片側の電極に偏析し、液晶層に実効的な電圧が印加されなくなり、液晶分子が動かなくなることもある。これらを防止するために、LCDパネル900aはいわゆる、交流駆動される。典型的には、表示信号の極性を1フレーム毎(1垂直走査期間毎)に反転する、フレーム反転駆動が行われる。例えば、従来のLCDパネルでは、1/60sec毎に極性反転が行われている(極性反転の周期は30Hz)。
また、1フレーム内においても印加される電圧の極性の異なる画素を均一に分布させるために、ドット反転駆動またはライン反転駆動などが行われている。これは、正極性と負極性とで、液晶層に印加される実効電圧の大きさを完全に一致させることが難しいからである。例えば、液晶材料の体積抵抗率が1012Ω・cmのオーダ超であれば、1/60sec毎に、ドット反転またはライン反転駆動を行えば、フリッカーはほとんど視認されない。
LCDパネル900aにおける走査信号および表示信号は、制御回路CNTLからゲートドライバGDおよびソースドライバSDに供給される信号に基づいて、ゲートドライバGDおよびソースドライバSDがゲートバスラインGLおよびソースバスラインSLにそれぞれ供給される。例えば、ゲートドライバGDおよびソースドライバSDは、それぞれ、TFT基板910に設けられた対応する端子に接続されている。ゲートドライバGDおよびソースドライバSDは、例えば、ドライバICとしてTFT基板910の額縁領域FRに実装されることもあるし、TFT基板910の額縁領域FRにモノリシックに形成されることもある。
対向基板920の対向電極924は、トランスファー(転移)と呼ばれる導電部(不図示)を介して、TFT基板910の端子(不図示)に電気的に接続される。トランスファーは、例えば、シール部と重なるように、あるいは、シール部の一部に導電性を付与することによって形成される。額縁領域FRを狭くするためである。対向電極924には、制御回路CNTLから、直接または間接的に共通電圧が供給される。典型的には、共通電圧は、上述したように、CSバスラインにも供給される。
[走査アンテナの基本構造]
液晶材料の大きな誘電率M(εM)の異方性(複屈折率)を利用したアンテナ単位を用いた走査アンテナは、LCDパネルの画素に対応付けられるアンテナ単位の各液晶層に印加する電圧を制御し、各アンテナ単位の液晶層の実効的な誘電率M(εM)を変化させることによって、静電容量の異なるアンテナ単位で2次元的なパターンを形成する(LCDによる画像の表示に対応する。)。アンテナから出射される、または、アンテナによって受信される電磁波(例えば、マイクロ波)には、各アンテナ単位の静電容量に応じた位相差が与えられ、静電容量の異なるアンテナ単位によって形成された2次元的なパターンに応じて、特定の方向に強い指向性を有することになる(ビーム走査)。例えば、アンテナから出射される電磁波は、入力電磁波が各アンテナ単位に入射し、各アンテナ単位で散乱された結果得られる球面波を、各アンテナ単位によって与えられる位相差を考慮して積分することによって得られる。各アンテナ単位が、「フェイズシフター:phase shifter」として機能していると考えることもできる。液晶材料を用いた走査アンテナの基本的な構造および動作原理については、特許文献1〜4および非特許文献1、2を参照されたい。非特許文献2は、らせん状のスロットが配列された走査アンテナの基本的な構造を開示している。参考のために、特許文献1〜4および非特許文献1、2の開示内容の全てを本明細書に援用する。
なお、本発明の実施形態による走査アンテナにおけるアンテナ単位はLCDパネルの画素に類似してはいるものの、LCDパネルの画素の構造とは異なっているし、複数のアンテナ単位の配列もLCDパネルにおける画素の配列とは異なっている。後に詳細に説明する第1の実施形態の走査アンテナ1000を示す図1を参照して、本発明の実施形態による走査アンテナの基本構造を説明する。走査アンテナ1000は、スロットが同心円状に配列されたラジアルインラインスロットアンテナであるが、本発明の実施形態による走査アンテナはこれに限られず、例えば、スロットの配列は、公知の種々の配列であってよい。
図1は、本実施形態の走査アンテナ1000の一部を模式的に示す断面図であり、同心円状に配列されたスロットの中心近傍に設けられた給電ピン72(図2(b)参照)から半径方向に沿った断面の一部を模式的に示す。
走査アンテナ1000は、TFT基板101と、スロット基板201と、これらの間に配置された液晶層LCと、スロット基板201と、空気層54を介して対向するように配置された反射導電板65とを備えている。走査アンテナ1000は、TFT基板101側からマイクロ波を送受信する。
TFT基板101は、ガラス基板などの誘電体基板1と、誘電体基板1上に形成された複数のパッチ電極15と、複数のTFT10とを有している。各パッチ電極15は、対応するTFT10に接続されている。各TFT10は、ゲートバスラインとソースバスラインとに接続されている。
スロット基板201は、ガラス基板などの誘電体基板51と、誘電体基板51の液晶層LC側に形成されたスロット電極55とを有している。スロット電極55は複数のスロット57を有している。
スロット基板201と、空気層54を介して対向するように反射導電板65が配置されている。空気層54に代えて、マイクロ波に対する誘電率Mが小さい誘電体(例えば、PTFEなどのフッ素樹脂)で形成された層を用いることができる。スロット電極55と反射導電板65と、これらの間の誘電体基板51および空気層54とが導波路301として機能する。
パッチ電極15と、スロット57を含むスロット電極55の部分と、これらの間の液晶層LCとがアンテナ単位Uを構成する。各アンテナ単位Uにおいて、1つのパッチ電極15が1つのスロット57を含むスロット電極55の部分と液晶層LCを介して対向しており、液晶容量を構成している。パッチ電極15とスロット電極55とが液晶層LCを介して対向する構造は、図26に示したLCDパネル900aの画素電極914と対向電極924とが液晶層930を介して対向する構造と似ている。すなわち、走査アンテナ1000のアンテナ単位Uと、LCDパネル900aにおける画素Pとは似た構成を有している。また、アンテナ単位は、液晶容量と電気的に並列に接続された補助容量(図13(a)、図16参照)を有している点でもLCDパネル900aにおける画素Pと似た構成を有している。しかしながら、走査アンテナ1000は、LCDパネル900aと多くの相違点を有している。
まず、走査アンテナ1000の誘電体基板1、51に求められる性能は、LCDパネルの基板に求められる性能と異なる。
一般にLCDパネルには、可視光に透明な基板が用いられ、例えば、ガラス基板またはプラスチック基板が用いられる。反射型のLCDパネルにおいては、背面側の基板には透明性が必要ないので、半導体基板が用いられることもある。これに対し、アンテナ用の誘電体基板1、51としては、マイクロ波に対する誘電損失(マイクロ波に対する誘電正接をtanδMと表すことにする。)が小さいことが好ましい。誘電体基板1、51のtanδMは、概ね0.03以下であることが好ましく、0.01以下がさらに好ましい。具体的には、ガラス基板またはプラスチック基板を用いることができる。ガラス基板はプラスチック基板よりも寸法安定性、耐熱性に優れ、TFT、配線、電極等の回路要素をLCD技術を用いて形成するのに適している。例えば、導波路を形成する材料が空気とガラスである場合、ガラスの方が上記誘電損失が大きいため、ガラスがより薄い方が導波ロスを減らすことができるとの観点から、好ましくは400μm以下であり、300μm以下がさらに好ましい。下限は特になく、製造プロセスにおいて、割れることなくハンドリングできればよい。
電極に用いられる導電材料も異なる。LCDパネルの画素電極や対向電極には透明導電膜としてITO膜が用いられることが多い。しかしながら、ITOはマイクロ波に対するtanδMが大きく、アンテナにおける導電層として用いることができない。スロット電極55は、反射導電板65とともに導波路301の壁として機能する。したがって、導波路301の壁におけるマイクロ波の透過を抑制するためには、導波路301の壁の厚さ、すなわち、金属層(Cu層またはAl層)の厚さは大きいことが好ましい。金属層の厚さが表皮深さの3倍であれば、電磁波は1/20(−26dB)に減衰され、5倍であれば1/150(−43dB)程度に減衰されることが知られている。したがって、金属層の厚さが表皮深さの5倍であれば、電磁波の透過率を1%に低減することができる。例えば、10GHzのマイクロ波に対しては、厚さが3.3μm以上のCu層、および厚さが4.0μm以上のAl層を用いると、マイクロ波を1/150まで低減することができる。また、30GHzのマイクロ波に対しては、厚さが1.9μm以上のCu層、および厚さが2.3μm以上のAl層を用いると、マイクロ波を1/150まで低減することができる。このように、スロット電極55は、比較的厚いCu層またはAl層で形成することが好ましい。Cu層またはAl層の厚さに上限は特になく、成膜時間やコストを考慮して、適宜設定され得る。Cu層を用いると、Al層を用いるよりも薄くできるという利点が得られる。比較的厚いCu層またはAl層の形成は、LCDの製造プロセスで用いられる薄膜堆積法だけでなく、Cu箔またはAl箔を基板に貼り付ける等、他の方法を採用することもできる。金属層の厚さは、例えば、2μm以上30μm以下である。薄膜堆積法を用いて形成する場合、金属層の厚さは5μm以下であることが好ましい。なお、反射導電板65は、例えば、厚さが数mmのアルミニウム板、銅板などを用いることができる。
パッチ電極15は、スロット電極55のように導波路301を構成する訳ではないので、スロット電極55よりも厚さが小さいCu層またはAl層を用いることができる。ただし、スロット電極55のスロット57付近の自由電子の振動がパッチ電極15内の自由電子の振動を誘起する際に熱に変わるロスを避けるために、抵抗が低い方が好ましい。量産性の観点からはCu層よりもAl層を用いることが好ましく、Al層の厚さは例えば0.5μm〜2μmが好ましい。
また、アンテナ単位Uの配列ピッチは、画素ピッチと大きく異なる。例えば、12GHz(Ku band)のマイクロ波用のアンテナを考えると、波長λは、例えば25mmである。そうすると、特許文献4に記載されているように、アンテナ単位Uのピッチはλ/4以下および/またはλ/5以下であるので、6.25mm以下および/または5mm以下ということになる。これはLCDパネルの画素のピッチと比べて10倍以上大きい。したがって、アンテナ単位Uの長さおよび幅もLCDパネルの画素長さおよび幅よりも約10倍大きいことになる。
もちろん、アンテナ単位Uの配列はLCDパネルにおける画素の配列と異なり得る。ここでは、同心円状に配列した例(例えば、特開2002−217640号公報参照)を示すが、これに限られず、例えば、非特許文献2に記載されているように、らせん状に配列されてもよい。さらに、特許文献4に記載されているようにマトリクス状に配列してもよい。
走査アンテナ1000の液晶層LCの液晶材料に求められる特性は、LCDパネルの液晶材料に求められる特性と異なる。LCDパネルは画素の液晶層の屈折率変化によって、可視光(波長380nm〜830nm)の偏光に位相差を与えることによって、偏光状態を変化させる(例えば、直線偏光の偏光軸方向を回転させる、または、円偏光の円偏光度を変化させる)ことによって、表示を行う。これに対して実施形態による走査アンテナ1000は、アンテナ単位Uが有する液晶容量の静電容量値を変化させることによって、各パッチ電極から励振(再輻射)されるマイクロ波の位相を変化させる。したがって、液晶層は、マイクロ波に対する誘電率M(εM)の異方性(ΔεM)が大きいことが好ましく、tanδMは小さいことが好ましい。例えば、M. Wittek et al., SID 2015 DIGESTpp.824-826に記載のΔεMが4以上で、tanδMが0.02以下(いずれも19Gzの値)を好適に用いることができる。この他、九鬼、高分子55巻8月号pp.599-602(2006)に記載のΔεMが0.4以上、tanδMが0.04以下の液晶材料を用いることができる。
一般に液晶材料の誘電率は周波数分散を有するが、マイクロ波に対する誘電異方性ΔεMは、可視光に対する屈折率異方性Δnと正の相関がある。したがって、マイクロ波に対するアンテナ単位用の液晶材料は、可視光に対する屈折率異方性Δnが大きい材料が好ましいと言える。LCD用の液晶材料の屈折率異方性Δnは550nmの光に対する屈折率異方性で評価される。ここでも550nmの光に対するΔn(複屈折率)を指標に用いると、Δnが0.3以上、好ましくは0.4以上のネマチック液晶が、マイクロ波に対するアンテナ単位用に用いられる。Δnに特に上限はない。ただし、Δnが大きい液晶材料は極性が強い傾向にあるので、信頼性を低下させる恐れがある。信頼性の観点からは、Δnは0.4以下であることが好ましい。液晶層の厚さは、例えば、1μm〜500μmである。
以下、本発明の実施形態による走査アンテナの構造および製造方法をより詳細に説明する。
(第1の実施形態)
まず、図1および図2を参照する。図1は詳述した様に走査アンテナ1000の中心付近の模式的な部分断面図であり、図2(a)および(b)は、それぞれ、走査アンテナ1000におけるTFT基板101およびスロット基板201を示す模式的な平面図である。
走査アンテナ1000は2次元に配列された複数のアンテナ単位Uを有しており、ここで例示する走査アンテナ1000では、複数のアンテナ単位が同心円状に配列されている。以下の説明においては、アンテナ単位Uに対応するTFT基板101の領域およびスロット基板201の領域を「アンテナ単位領域」と呼び、アンテナ単位と同じ参照符号Uを付すことにする。また、図2(a)および(b)に示す様に、TFT基板101およびスロット基板201において、2次元的に配列された複数のアンテナ単位領域によって画定される領域を「送受信領域R1」と呼び、送受信領域R1以外の領域を「非送受信領域R2」と呼ぶ。非送受信領域R2には、端子部、駆動回路などが設けられる。
図2(a)は、走査アンテナ1000におけるTFT基板101を示す模式的な平面図である。
図示する例では、TFT基板101の法線方向から見たとき、送受信領域R1はドーナツ状である。非送受信領域R2は、送受信領域R1の中心部に位置する第1非送受信領域R2aと、送受信領域R1の周縁部に位置する第2非送受信領域R2bとを含む。送受信領域R1の外径は、例えば200mm〜1500mmで、通信量などに応じて設定される。
TFT基板101の送受信領域R1には、誘電体基板1に支持された複数のゲートバスラインGLおよび複数のソースバスラインSLが設けられ、これらの配線によってアンテナ単位領域Uが規定されている。アンテナ単位領域Uは、送受信領域R1において、例えば同心円状に配列されている。アンテナ単位領域Uのそれぞれは、TFTと、TFTに電気的に接続されたパッチ電極とを含んでいる。TFTのソース電極はソースバスラインSLに、ゲート電極はゲートバスラインGLにそれぞれ電気的に接続されている。また、ドレイン電極は、パッチ電極と電気的に接続されている。
非送受信領域R2(R2a、R2b)には、送受信領域R1を包囲するようにシール領域Rsが配置されている。シール領域Rsにはシール材(不図示)が付与されている。シール材は、TFT基板101およびスロット基板201を互いに接着させるとともに、これらの基板101、201の間に液晶を封入する。
非送受信領域R2のうちシール領域Rsの外側には、ゲート端子部GT、ゲートドライバGD、ソース端子部STおよびソースドライバSDが設けられている。ゲートバスラインGLのそれぞれはゲート端子部GTを介してゲートドライバGDに接続されている。ソースバスラインSLのそれぞれはソース端子部STを介してソースドライバSDに接続されている。なお、この例では、ソースドライバSDおよびゲートドライバGDは誘電体基板1上に形成されているが、これらのドライバの一方または両方は他の誘電体基板上に設けられていてもよい。
非送受信領域R2には、また、複数のトランスファー端子部PTが設けられている。トランスファー端子部PTは、スロット基板201のスロット電極55(図2(b))と電気的に接続される。本明細書では、トランスファー端子部PTとスロット電極55との接続部を「トランスファー部」と称する。図示するように、トランスファー端子部PT(トランスファー部)は、シール領域Rs内に配置されてもよい。この場合、シール材として導電性粒子を含有する樹脂を用いてもよい。これにより、TFT基板101とスロット基板201との間に液晶を封入させるとともに、トランスファー端子部PTとスロット基板201のスロット電極55との電気的な接続を確保できる。この例では、第1非送受信領域R2aおよび第2非送受信領域R2bの両方にトランスファー端子部PTが配置されているが、いずれか一方のみに配置されていてもよい。
なお、トランスファー端子部PT(トランスファー部)は、シール領域Rs内に配置されていなくてもよい。例えば非送受信領域R2のうちシール領域Rsの外側に配置されていてもよい。
図2(b)は、走査アンテナ1000におけるスロット基板201を例示する模式的な平面図であり、スロット基板201の液晶層LC側の表面を示している。
スロット基板201では、誘電体基板51上に、送受信領域R1および非送受信領域R2に亘ってスロット電極55が形成されている。
スロット基板201の送受信領域R1では、スロット電極55には複数のスロット57が配置されている。スロット57は、TFT基板101におけるアンテナ単位領域Uに対応して配置されている。図示する例では、複数のスロット57は、ラジアルインラインスロットアンテナを構成するように、互いに概ね直交する方向に延びる一対のスロット57が同心円状に配列されている。互いに概ね直交するスロットを有するので、走査アンテナ1000は、円偏波を送受信することができる。
非送受信領域R2には、複数の、スロット電極55の端子部ITが設けられている。端子部ITは、TFT基板101のトランスファー端子部PT(図2(a))と電気的に接続される。この例では、端子部ITは、シール領域Rs内に配置されており、導電性粒子を含有するシール材によって対応するトランスファー端子部PTと電気的に接続される。
また、第1非送受信領域R2aにおいて、スロット基板201の裏面側に給電ピン72が配置されている。給電ピン72によって、スロット電極55、反射導電板65および誘電体基板51で構成された導波路301にマイクロ波が挿入される。給電ピン72は給電装置70に接続されている。給電は、スロット57が配列された同心円の中心から行う。給電の方式は、直結給電方式および電磁結合方式のいずれであってもよく、公知の給電構造を採用することができる。
以下、図面を参照して、走査アンテナ1000の各構成要素をより詳しく説明する。
<TFT基板101の構造>
・アンテナ単位領域U
図3(a)および(b)は、それぞれ、TFT基板101のアンテナ単位領域Uを模式的に示す断面図および平面図である。
アンテナ単位領域Uのそれぞれは、誘電体基板(不図示)と、誘電体基板に支持されたTFT10と、TFT10を覆う第1絶縁層11と、第1絶縁層11上に形成され、TFT10に電気的に接続されたパッチ電極15と、パッチ電極15を覆う第2絶縁層17とを備える。TFT10は、例えば、ゲートバスラインGLおよびソースバスラインSLの交点近傍に配置されている。
TFT10は、ゲート電極3、島状の半導体層5、ゲート電極3と半導体層5との間に配置されたゲート絶縁層4、ソース電極7Sおよびドレイン電極7Dを備える。TFT10の構造は特に限定しない。この例では、TFT10は、ボトムゲート構造を有するチャネルエッチ型のTFTである。
ゲート電極3は、ゲートバスラインGLに電気的に接続されており、ゲートバスラインGLから走査信号を供給される。ソース電極7Sは、ソースバスラインSLに電気的に接続されており、ソースバスラインSLからデータ信号を供給される。ゲート電極3およびゲートバスラインGLは同じ導電膜(ゲート用導電膜)から形成されていてもよい。ソース電極7S、ドレイン電極7DおよびソースバスラインSLは同じ導電膜(ソース用導電膜)から形成されていてもよい。ゲート用導電膜およびソース用導電膜は、例えば金属膜である。本明細書では、ゲート用導電膜を用いて形成された層(レイヤー)を「ゲートメタル層」、ソース用導電膜を用いて形成された層を「ソースメタル層」と呼ぶことがある。
半導体層5は、ゲート絶縁層4を介してゲート電極3と重なるように配置されている。図示する例では、半導体層5上に、ソースコンタクト層6Sおよびドレインコンタクト層6Dが形成されている。ソースコンタクト層6Sおよびドレインコンタクト層6Dは、それぞれ、半導体層5のうちチャネルが形成される領域(チャネル領域)の両側に配置されている。半導体層5は真性アモルファスシリコン(i−a−Si)層であり、ソースコンタクト層6Sおよびドレインコンタクト層6Dはn+型アモルファスシリコン(n+−a−Si)層であってもよい。
ソース電極7Sは、ソースコンタクト層6Sに接するように設けられ、ソースコンタクト層6Sを介して半導体層5に接続されている。ドレイン電極7Dは、ドレインコンタクト層6Dに接するように設けられ、ドレインコンタクト層6Dを介して半導体層5に接続されている。
第1絶縁層11は、TFT10のドレイン電極7Dに達するコンタクトホールCH1を有している。
パッチ電極15は、第1絶縁層11上およびコンタクトホールCH1内に設けられており、コンタクトホールCH1内で、ドレイン電極7Dと接している。パッチ電極15は、金属層を含む。パッチ電極15は、金属層のみから形成された金属電極であってもよい。パッチ電極15の材料は、ソース電極7Sおよびドレイン電極7Dと同じであってもよい。ただし、パッチ電極15における金属層の厚さ(パッチ電極15が金属電極の場合にはパッチ電極15の厚さ)は、ソース電極7Sおよびドレイン電極7Dの厚さよりも大きくなるように設定される。パッチ電極15における金属層の厚さは、Al層で形成する場合、例えば0.5μm以上に設定される。
ゲートバスラインGLと同じ導電膜を用いて、CSバスラインCLが設けられていてもよい。CSバスラインCLは、ゲート絶縁層4を介してドレイン電極(またはドレイン電極の延長部分)7Dと重なるように配置され、ゲート絶縁層4を誘電体層とする補助容量CSを構成してもよい。
ゲートバスラインGLよりも誘電体基板側に、アライメントマーク(例えば金属層)21と、アライメントマーク21を覆う下地絶縁膜2とが形成されていてもよい。アライメントマーク21は、1枚のガラス基板から例えばm枚のTFT基板を作製する場合において、フォトマスク枚がn枚(n<m)であると、各露光工程を複数回に分けて行う必要が生じる。このようにフォトマスクの枚数(n枚)が1枚のガラス基板1から作製されるTFT基板101の枚数(m枚)よりも少ないとき、フォトマスクのアライメントに用いられる。アライメントマーク21は省略され得る。
本実施形態では、ソースメタル層とは異なる層内にパッチ電極15を形成する。これにより、次のようなメリットが得られる。
ソースメタル層は、通常金属膜を用いて形成されることから、ソースメタル層内にパッチ電極を形成することも考えられる(参考例のTFT基板)。しかしながら、パッチ電極は、電子の振動を阻害しない程度に低抵抗であることが好ましく、例えば、厚さが0.5μm以上の比較的厚いAl層で形成される。このため、参考例のTFT基板では、そのような厚い金属膜からソースバスラインSLなども形成することになり、配線を形成する際のパターニングの制御性が低くなるという問題がある。これに対し、本実施形態では、ソースメタル層とは別個にパッチ電極15を形成するので、ソースメタル層の厚さとパッチ電極15の厚さとを独立して制御できる。したがって、ソースメタル層を形成する際の制御性を確保しつつ、所望の厚さのパッチ電極15を形成できる。
本実施形態では、パッチ電極15の厚さを、ソースメタル層の厚さとは別個に、高い自由度で設定できる。なお、パッチ電極15のサイズは、ソースバスラインSL等ほど厳密に制御される必要がないので、パッチ電極15を厚くすることによって線幅シフト(設計値とのずれ)が大きくなっても構わない。なお、パッチ電極15の厚さとソースメタル層の厚さが等しい場合を排除するものではない。
パッチ電極15は、主層としてCu層またはAl層を含んでもよい。走査アンテナの性能はパッチ電極15の電気抵抗と相関があり、主層の厚さは、所望の抵抗が得られるように設定される。電気抵抗の観点から、Cu層の方がAl層よりもパッチ電極15の厚さを小さくできる可能性がある。
・ゲート端子部GT、ソース端子部STおよびトランスファー端子部PT
図4(a)〜(c)は、それぞれ、ゲート端子部GT、ソース端子部STおよびトランスファー端子部PTを模式的に示す断面図である。
ゲート端子部GTは、誘電体基板上に形成されたゲートバスラインGL、ゲートバスラインGLを覆う絶縁層、およびゲート端子用上部接続部19gを備えている。ゲート端子用上部接続部19gは、絶縁層に形成されたコンタクトホールCH2内で、ゲートバスラインGLと接している。この例では、ゲートバスラインGLを覆う絶縁層は、誘電体基板側からゲート絶縁層4、第1絶縁層11および第2絶縁層17を含む。ゲート端子用上部接続部19gは、例えば、第2絶縁層17上に設けられた透明導電膜から形成された透明電極である。
ソース端子部STは、誘電体基板上(ここではゲート絶縁層4上)に形成されたソースバスラインSL、ソースバスラインSLを覆う絶縁層、およびソース端子用上部接続部19sを備えている。ソース端子用上部接続部19sは、絶縁層に形成されたコンタクトホールCH3内で、ソースバスラインSLと接している。この例では、ソースバスラインSLを覆う絶縁層は、第1絶縁層11および第2絶縁層17を含む。ソース端子用上部接続部19sは、例えば、第2絶縁層17上に設けられた透明導電膜から形成された透明電極である。
トランスファー端子部PTは、第1絶縁層11上に形成されたパッチ接続部15pと、パッチ接続部15pを覆う第2絶縁層17と、トランスファー端子用上部接続部19pとを有している。トランスファー端子用上部接続部19pは、第2絶縁層17に形成されたコンタクトホールCH4内で、パッチ接続部15pと接している。パッチ接続部15pは、パッチ電極15と同じ導電膜から形成されている。トランスファー端子用上部接続部(上部透明電極ともいう。)19pは、例えば、第2絶縁層17上に設けられた透明導電膜から形成された透明電極である。本実施形態では、各端子部の上部接続部19g、19sおよび19pは、同じ透明導電膜から形成されている。
本実施形態では、第2絶縁層17を形成した後のエッチング工程により、各端子部のコンタクトホールCH2、CH3、CH4を同時に形成することができるという利点がある。詳細な製造プロセスは後述する。
<TFT基板101の製造方法>
TFT基板101は、例えば以下の方法で製造され得る。図5は、TFT基板101の製造工程を例示する図である。
まず、誘電体基板上に、金属膜(例えばTi膜)を形成し、これをパターニングすることにより、アライメントマーク21を形成する。誘電体基板としては、例えばガラス基板、耐熱性を有するプラスチック基板(樹脂基板)などを用いることができる。次いで、アライメントマーク21を覆うように、下地絶縁膜2を形成する。下地絶縁膜2として、例えばSiO2膜を用いる。
続いて、下地絶縁膜2上に、ゲート電極3およびゲートバスラインGLを含むゲートメタル層を形成する。
ゲート電極3は、ゲートバスラインGLと一体的に形成され得る。ここでは、誘電体基板上に、スパッタ法などによって、図示しないゲート用導電膜(厚さ:例えば50nm以上500nm以下)を形成する。次いで、ゲート用導電膜をパターニングすることにより、ゲート電極3およびゲートバスラインGLを得る。ゲート用導電膜の材料は特に限定しない。アルミニウム(Al)、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、タンタル(Ta)、クロム(Cr)、チタン(Ti)、銅(Cu)等の金属またはその合金、若しくはその金属窒化物を含む膜を適宜用いることができる。ここでは、ゲート用導電膜として、MoN(厚さ:例えば50nm)、Al(厚さ:例えば200nm)およびMoN(厚さ:例えば50nm)をこの順で積層した積層膜を形成する。
次いで、ゲートメタル層を覆うようにゲート絶縁層4を形成する。ゲート絶縁層4は、CVD法等によって形成され得る。ゲート絶縁層4としては、酸化珪素(SiO2)層、窒化珪素(SiNx)層、酸化窒化珪素(SiOxNy;x>y)層、窒化酸化珪素(SiNxOy;x>y)層等を適宜用いることができる。ゲート絶縁層4は積層構造を有していてもよい。ここでは、ゲート絶縁層4として、SiNx層(厚さ:例えば410nm)を形成する。
次いで、ゲート絶縁層4上に半導体層5およびコンタクト層を形成する。ここでは、真性アモルファスシリコン膜(厚さ:例えば125nm)およびn+型アモルファスシリコン膜(厚さ:例えば65nm)をこの順で形成し、パターニングすることにより、島状の半導体層5およびコンタクト層を得る。半導体層5に用いる半導体膜はアモルファスシリコン膜に限定されない。例えば、半導体層5として酸化物半導体層を形成してもよい。この場合には、半導体層5とソース・ドレイン電極との間にコンタクト層を設けなくてもよい。
次いで、ゲート絶縁層4上およびコンタクト層上にソース用導電膜(厚さ:例えば50nm以上500nm以下)を形成し、これをパターニングすることによって、ソース電極7S、ドレイン電極7DおよびソースバスラインSLを含むソースメタル層を形成する。このとき、コンタクト層もエッチングされ、互いに分離されたソースコンタクト層6Sとドレインコンタクト層6Dとが形成される。
ソース用導電膜の材料は特に限定しない。アルミニウム(Al)、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、タンタル(Ta)、クロム(Cr)、チタン(Ti)、銅(Cu)等の金属またはその合金、若しくはその金属窒化物を含む膜を適宜用いることができる。ここでは、ソース用導電膜として、MoN(厚さ:例えば30nm)、Al(厚さ:例えば200nm)およびMoN(厚さ:例えば50nm)をこの順で積層した積層膜を形成する。なお、代わりに、ソース用導電膜として、Ti(厚さ:例えば30nm)、MoN(厚さ:例えば30nm)、Al(厚さ:例えば200nm)およびMoN(厚さ:例えば50nm)をこの順で積層した積層膜を形成してもよい。
ここでは、例えば、スパッタ法でソース用導電膜を形成し、ウェットエッチングによりソース用導電膜のパターニング(ソース・ドレイン分離)を行う。この後、例えばドライエッチングにより、コンタクト層のうち、半導体層5のチャネル領域となる領域上に位置する部分を除去してギャップ部を形成し、ソースコンタクト層6Sおよびドレインコンタクト層6Dとに分離する。このとき、ギャップ部において、半導体層5の表面近傍もエッチングされる(オーバーエッチング)。
なお、例えばソース用導電膜としてTi膜およびAl膜をこの順で積層した積層膜を用いる場合には、例えばリン酸酢酸硝酸水溶液を用いて、ウェットエッチングでAl膜のパターニングを行った後、ドライエッチングでTi膜およびコンタクト層(n+型アモルファスシリコン層)6を同時にパターニングしてもよい。あるいは、ソース用導電膜およびコンタクト層を一括してエッチングすることも可能である。ただし、ソース用導電膜またはその下層とコンタクト層6とを同時にエッチングする場合には、基板全体における半導体層5のエッチング量(ギャップ部の掘れ量)の分布の制御が困難となる場合がある。これに対し、上述したように、ソース・ドレイン分離とギャップ部の形成と別個のエッチング工程で行うと、ギャップ部のエッチング量をより容易に制御できる。
次に、TFT10を覆うように第1絶縁層11を形成する。この例では、第1絶縁層11は、半導体層5のチャネル領域と接するように配置される。また、公知のフォトリソグラフィにより、第1絶縁層11に、ドレイン電極7Dに達するコンタクトホールCH1を形成する。
第1絶縁層11は、例えば、酸化珪素(SiO2)膜、窒化珪素(SiNx)膜、酸化窒化珪素(SiOxNy;x>y)膜、窒化酸化珪素(SiNxOy;x>y)膜等の無機絶縁層であってもよい。ここでは、第1絶縁層11として、例えばCVD法により、厚さが例えば330nmのSiNx層を形成する。
次いで、第1絶縁層11上およびコンタクトホールCH1内にパッチ用導電膜を形成し、これをパターニングする。これにより、送受信領域R1にパッチ電極15を形成し、非送受信領域R2にパッチ接続部15pを形成する。パッチ電極15は、コンタクトホールCH1内でドレイン電極7Dと接する。なお、本明細書では、パッチ用導電膜から形成された、パッチ電極15、パッチ接続部15pを含む層を「パッチメタル層」と呼ぶことがある。
パッチ用導電膜の材料として、ゲート用導電膜またはソース用導電膜と同様の材料が用いられ得る。ただし、パッチ用導電膜は、ゲート用導電膜およびソース用導電膜よりも厚くなるように設定される。これにより、電磁波の透過率を低く抑えること、パッチ電極のシート抵抗を低減させることで、パッチ電極内の自由電子の振動が熱に変わるロスを低減させることが可能になる。パッチ用導電膜の好適な厚さは、例えば、1μm以上30μm以下である。これよりも薄いと、電磁波の透過率が30%程度となり、シート抵抗が0.03Ω/sq以上となり、ロスが大きくなるという問題が生じる可能性があり、厚いとスロットのパターニング性が悪化するという問題が生じる可能性がある。
ここでは、パッチ用導電膜として、MoN(厚さ:例えば50nm)、Al(厚さ:例えば1000nm)およびMoN(厚さ:例えば50nm)をこの順で積層した積層膜(MoN/Al/MoN)を形成する。なお、代わりに、Ti(厚さ:例えば50nm)、MoN(厚さ:例えば50nm)、Al(厚さ:例えば2000nm)およびMoN(厚さ:例えば50nm)をこの順で積層した積層膜(MoN/Al/MoN/Ti)を形成してもよい。あるいは、代わりに、Ti(厚さ:例えば50nm)、MoN(厚さ:例えば50nm)、Al(厚さ:例えば500nm)およびMoN(厚さ:例えば50nm)をこの順で積層した積層膜(MoN/Al/MoN/Ti)を形成してもよい。または、Ti膜、Cu膜およびTi膜をこの順で積層した積層膜(Ti/Cu/Ti)、あるいは、Ti膜およびCu膜をこの順で積層した積層膜(Cu/Ti)を用いてもよい。
次いで、パッチ電極15および第1絶縁層11上に第2絶縁層(厚さ:例えば100nm以上300nm以下)17を形成する。第2絶縁層17としては、特に限定されず、例えば酸化珪素(SiO2)膜、窒化珪素(SiNx)膜、酸化窒化珪素(SiOxNy;x>y)膜、窒化酸化珪素(SiNxOy;x>y)膜等を適宜用いることができる。ここでは、第2絶縁層17として、例えば厚さ200nmのSiNx層を形成する。
この後、例えばフッ素系ガスを用いたドライエッチングにより、無機絶縁膜(第2絶縁層17、第1絶縁層11およびゲート絶縁層4)を一括してエッチングする。エッチングでは、パッチ電極15、ソースバスラインSLおよびゲートバスラインGLはエッチストップとして機能する。これにより、第2絶縁層17、第1絶縁層11およびゲート絶縁層4に、ゲートバスラインGLに達するコンタクトホールCH2が形成され、第2絶縁層17および第1絶縁層11に、ソースバスラインSLに達するコンタクトホールCH3が形成される。また、第2絶縁層17に、パッチ接続部15pに達するコンタクトホールCH4が形成される。
この例では、無機絶縁膜を一括してエッチングするため、得られたコンタクトホールCH2の側壁では、第2絶縁層17、第1絶縁層11およびゲート絶縁層4の側面が整合し、コンタクトホールCH3の側壁では、第2絶縁層17および第1絶縁層11の側壁が整合する。なお、本明細書において、コンタクトホール内において、異なる2以上の層の「側面が整合する」とは、これらの層におけるコンタクトホール内に露出した側面が、垂直方向に面一である場合のみでなく、連続してテーパー形状などの傾斜面を構成する場合をも含む。このような構成は、例えば、同一のマスクを用いてこれらの層をエッチングする、あるいは、一方の層をマスクとして他方の層のエッチングを行うこと等によって得られる。
次に、第2絶縁層17上、およびコンタクトホールCH2、CH3、CH4内に、例えばスパッタ法により透明導電膜(厚さ:50nm以上200nm以下)を形成する。透明導電膜として、例えばITO(インジウム・錫酸化物)膜、IZO膜、ZnO膜(酸化亜鉛膜)などを用いることができる。ここでは、透明導電膜として、厚さが例えば100nmのITO膜を用いる。
次いで、透明導電膜をパターニングすることにより、ゲート端子用上部接続部19g、ソース端子用上部接続部19sおよびトランスファー端子用上部接続部19pを形成する。ゲート端子用上部接続部19g、ソース端子用上部接続部19sおよびトランスファー端子用上部接続部19pは、各端子部で露出した電極または配線を保護するために用いられる。このようにして、ゲート端子部GT、ソース端子部STおよびトランスファー端子部PTが得られる。
<スロット基板201の構造>
次いで、スロット基板201の構造をより具体的に説明する。
図6は、スロット基板201におけるアンテナ単位領域Uおよび端子部ITを模式的に示す断面図である。
スロット基板201は、表面および裏面を有する誘電体基板51と、誘電体基板51の表面に形成された第3絶縁層52と、第3絶縁層52上に形成されたスロット電極55と、スロット電極55を覆う第4絶縁層58とを備える。反射導電板65が誘電体基板51の裏面に誘電体層(空気層)54を介して対向するように配置されている。スロット電極55および反射導電板65は導波路301の壁として機能する。
送受信領域R1において、スロット電極55には複数のスロット57が形成されている。スロット57はスロット電極55を貫通する開口である。この例では、各アンテナ単位領域Uに1個のスロット57が配置されている。
第4絶縁層58は、スロット電極55上およびスロット57内に形成されている。第4絶縁層58の材料は、第3絶縁層52の材料と同じであってもよい。第4絶縁層58でスロット電極55を覆うことにより、スロット電極55と液晶層LCとが直接接触しないので、信頼性を高めることができる。スロット電極55がCu層で形成されていると、Cuが液晶層LCに溶出することがある。また、スロット電極55を薄膜堆積技術を用いてAl層で形成すると、Al層にボイドが含まれることがある。第4絶縁層58は、Al層のボイドに液晶材料が侵入するのを防止することができる。なお、Al層をアルミ箔を接着材により誘電体基板51に貼り付け、これをパターニングすることによってスロット電極55を作製すれば、ボイドの問題を回避できる。
スロット電極55は、Cu層、Al層などの主層55Mを含む。スロット電極55は、主層55Mと、それを挟むように配置された上層55Uおよび下層55Lとを含む積層構造を有していてもよい。主層55Mの厚さは、材料に応じて表皮効果を考慮して設定され、例えば2μm以上30μm以下であってもよい。主層55Mの厚さは、典型的には上層55Uおよび下層55Lの厚さよりも大きい。
図示する例では、主層55MはCu層、上層55Uおよび下層55LはTi層である。主層55Mと第3絶縁層52との間に下層55Lを配置することにより、スロット電極55と第3絶縁層52との密着性を向上できる。また、上層55Uを設けることにより、主層55M(例えばCu層)の腐食を抑制できる。
反射導電板65は、導波路301の壁を構成するので、表皮深さの3倍以上、好ましくは5倍以上の厚さを有することが好ましい。反射導電板65は、例えば、削り出しによって作製された厚さが数mmのアルミニウム板、銅板などを用いることができる。
非送受信領域R2には、端子部ITが設けられている。端子部ITは、スロット電極55と、スロット電極55を覆う第4絶縁層58と、上部接続部60とを備える。第4絶縁層58は、スロット電極55に達する開口を有している。上部接続部60は、開口内でスロット電極55に接している。本実施形態では、端子部ITは、シール領域Rs内に配置され、導電性粒子を含有するシール樹脂によって、TFT基板におけるトランスファー端子部と接続される(トランスファー部)。
・トランスファー部
図7は、TFT基板101のトランスファー端子部PTと、スロット基板201の端子部ITとを接続するトランスファー部を説明するための模式的な断面図である。図7では、図1〜図4と同様の構成要素には同じ参照符号を付している。
トランスファー部では、端子部ITの上部接続部60は、TFT基板101におけるトランスファー端子部PTのトランスファー端子用上部接続部19pと電気的に接続される。本実施形態では、上部接続部60とトランスファー端子用上部接続部19pとを、導電性ビーズ71を含む樹脂(シール樹脂)73(「シール部73」ということもある。)を介して接続する。
上部接続部60、19pは、いずれも、ITO膜、IZO膜などの透明導電層であり、その表面に酸化膜が形成される場合がある。酸化膜が形成されると、透明導電層同士の電気的な接続が確保できず、コンタクト抵抗が高くなる可能性がある。これに対し、本実施形態では、導電性ビーズ(例えばAuビーズ)71を含む樹脂を介して、これらの透明導電層を接着させるので、表面酸化膜が形成されていても、導電性ビーズが表面酸化膜を突き破る(貫通する)ことにより、コンタクト抵抗の増大を抑えることが可能である。導電性ビーズ71は、表面酸化膜だけでなく、透明導電層である上部接続部60、19pをも貫通し、パッチ接続部15pおよびスロット電極55に直接接していてもよい。
トランスファー部は、走査アンテナ1000の中心部および周縁部(すなわち、走査アンテナ1000の法線方向から見たとき、ドーナツ状の送受信領域R1の内側および外側)の両方に配置されていてもよいし、いずれか一方のみに配置されていてもよい。トランスファー部は、液晶を封入するシール領域Rs内に配置されていてもよいし、シール領域Rsの外側(液晶層と反対側)に配置されていてもよい。
<スロット基板201の製造方法>
スロット基板201は、例えば以下の方法で製造され得る。
まず、誘電体基板上に第3絶縁層(厚さ:例えば200nm)52を形成する。誘電体基板としては、ガラス基板、樹脂基板などの、電磁波に対する透過率の高い(誘電率εMおよび誘電損失tanδMが小さい)基板を用いることができる。誘電体基板は電磁波の減衰を抑制するために薄い方が好ましい。例えば、ガラス基板の表面に後述するプロセスでスロット電極55などの構成要素を形成した後、ガラス基板を裏面側から薄板化してもよい。これにより、ガラス基板の厚さを例えば500μm以下に低減できる。
誘電体基板として樹脂基板を用いる場合、TFT等の構成要素を直接、樹脂基板上に形成してもよいし、転写法を用いて樹脂基板上に形成してもよい。転写法によると、例えば、ガラス基板上に樹脂膜(例えばポリイミド膜)を形成し、樹脂膜上に後述するプロセスで構成要素を形成した後、構成要素が形成された樹脂膜とガラス基板とを分離させる。一般に、ガラスよりも樹脂の方が誘電率εMおよび誘電損失tanδMが小さい。樹脂基板の厚さは、例えば、3μm〜300μmである。樹脂材料としては、ポリイミドの他、例えば、液晶高分子を用いることもできる。
第3絶縁層52としては、特に限定しないが、例えば酸化珪素(SiO2)膜、窒化珪素(SiNx)膜、酸化窒化珪素(SiOxNy;x>y)膜、窒化酸化珪素(SiNxOy;x>y)膜等を適宜用いることができる。
次いで、第3絶縁層52の上に金属膜を形成し、これをパターニングすることによって、複数のスロット57を有するスロット電極55を得る。金属膜としては、厚さが2μm〜5μmのCu膜(またはAl膜)を用いてもよい。ここでは、Ti膜、Cu膜およびTi膜をこの順で積層した積層膜を用いる。なお、代わりに、Ti(厚さ:例えば50nm)およびCu(厚さ:例えば5000nm)をこの順で積層した積層膜を形成してもよい。
この後、スロット電極55上およびスロット57内に第4絶縁層(厚さ:例えば100nmまたは200nm)58を形成する。第4絶縁層58の材料は、第3絶縁層の材料と同じであってもよい。この後、非送受信領域R2において、第4絶縁層58に、スロット電極55に達する開口部を形成する。
次いで、第4絶縁層58上および第4絶縁層58の開口部内に透明導電膜を形成し、これをパターニングすることにより、開口部内でスロット電極55と接する上部接続部60を形成する。これにより、端子部ITを得る。
<TFT10の材料および構造>
本実施形態では、各画素に配置されるスイッチング素子として、半導体層5を活性層とするTFTが用いられる。半導体層5はアモルファスシリコン層に限定されず、ポリシリコン層、酸化物半導体層であってもよい。
酸化物半導体層を用いる場合、酸化物半導体層に含まれる酸化物半導体は、アモルファス酸化物半導体であってもよいし、結晶質部分を有する結晶質酸化物半導体であってもよい。結晶質酸化物半導体としては、多結晶酸化物半導体、微結晶酸化物半導体、c軸が層面に概ね垂直に配向した結晶質酸化物半導体などが挙げられる。
酸化物半導体層は、2層以上の積層構造を有していてもよい。酸化物半導体層が積層構造を有する場合には、酸化物半導体層は、非晶質酸化物半導体層と結晶質酸化物半導体層とを含んでいてもよい。あるいは、結晶構造の異なる複数の結晶質酸化物半導体層を含んでいてもよい。また、複数の非晶質酸化物半導体層を含んでいてもよい。酸化物半導体層が上層と下層とを含む2層構造を有する場合、上層に含まれる酸化物半導体のエネルギーギャップは、下層に含まれる酸化物半導体のエネルギーギャップよりも大きいことが好ましい。ただし、これらの層のエネルギーギャップの差が比較的小さい場合には、下層の酸化物半導体のエネルギーギャップが上層の酸化物半導体のエネルギーギャップよりも大きくてもよい。
非晶質酸化物半導体および上記の各結晶質酸化物半導体の材料、構造、成膜方法、積層構造を有する酸化物半導体層の構成などは、例えば特開2014−007399号公報に記載されている。参考のために、特開2014−007399号公報の開示内容の全てを本明細書に援用する。
酸化物半導体層は、例えば、In、GaおよびZnのうち少なくとも1種の金属元素を含んでもよい。本実施形態では、酸化物半導体層は、例えば、In−Ga−Zn−O系の半導体(例えば酸化インジウムガリウム亜鉛)を含む。ここで、In−Ga−Zn−O系の半導体は、In(インジウム)、Ga(ガリウム)、Zn(亜鉛)の三元系酸化物であって、In、GaおよびZnの割合(組成比)は特に限定されず、例えばIn:Ga:Zn=2:2:1、In:Ga:Zn=1:1:1、In:Ga:Zn=1:1:2等を含む。このような酸化物半導体層は、In−Ga−Zn−O系の半導体を含む酸化物半導体膜から形成され得る。なお、In−Ga−Zn−O系の半導体等、酸化物半導体を含む活性層を有するチャネルエッチ型のTFTを、「CE−OS−TFT」と呼ぶことがある。
In−Ga−Zn−O系の半導体は、アモルファスでもよいし、結晶質でもよい。結晶質In−Ga−Zn−O系の半導体としては、c軸が層面に概ね垂直に配向した結晶質In−Ga−Zn−O系の半導体が好ましい。
なお、結晶質In−Ga−Zn−O系の半導体の結晶構造は、例えば、上述した特開2014−007399号公報、特開2012−134475号公報、特開2014−209727号公報などに開示されている。参考のために、特開2012−134475号公報および特開2014−209727号公報の開示内容の全てを本明細書に援用する。In−Ga−Zn−O系半導体層を有するTFTは、高い移動度(a−SiTFTに比べ20倍超)および低いリーク電流(a−SiTFTに比べ100分の1未満)を有しているので、駆動TFT(例えば、非送受信領域に設けられる駆動回路に含まれるTFT)および各アンテナ単位領域に設けられるTFTとして好適に用いられる。
酸化物半導体層は、In−Ga−Zn−O系半導体の代わりに、他の酸化物半導体を含んでいてもよい。例えばIn−Sn−Zn−O系半導体(例えばIn2O3−SnO2−ZnO;InSnZnO)を含んでもよい。In−Sn−Zn−O系半導体は、In(インジウム)、Sn(スズ)およびZn(亜鉛)の三元系酸化物である。あるいは、酸化物半導体層は、In−Al−Zn−O系半導体、In−Al−Sn−Zn−O系半導体、Zn−O系半導体、In−Zn−O系半導体、Zn−Ti−O系半導体、Cd−Ge−O系半導体、Cd−Pb−O系半導体、CdO(酸化カドミウム)、Mg−Zn−O系半導体、In−Ga−Sn−O系半導体、In−Ga−O系半導体、Zr−In−Zn−O系半導体、Hf−In−Zn−O系半導体、Al−Ga−Zn−O系半導体、Ga−Zn−O系半導体などを含んでいてもよい。
図3に示す例では、TFT10は、ボトムゲート構造を有するチャネルエッチ型のTFTである。「チャネルエッチ型のTFT」では、チャネル領域上にエッチストップ層が形成されておらず、ソースおよびドレイン電極のチャネル側の端部下面は、半導体層の上面と接するように配置されている。チャネルエッチ型のTFTは、例えば半導体層上にソース・ドレイン電極用の導電膜を形成し、ソース・ドレイン分離を行うことによって形成される。ソース・ドレイン分離工程において、チャネル領域の表面部分がエッチングされる場合がある。
なお、TFT10は、チャネル領域上にエッチストップ層が形成されたエッチストップ型TFTであってもよい。エッチストップ型TFTでは、ソースおよびドレイン電極のチャネル側の端部下面は、例えばエッチストップ層上に位置する。エッチストップ型のTFTは、例えば半導体層のうちチャネル領域となる部分を覆うエッチストップ層を形成した後、半導体層およびエッチストップ層上にソース・ドレイン電極用の導電膜を形成し、ソース・ドレイン分離を行うことによって形成される。
また、TFT10は、ソースおよびドレイン電極が半導体層の上面と接するトップコンタクト構造を有するが、ソースおよびドレイン電極は半導体層の下面と接するように配置されていてもよい(ボトムコンタクト構造)。さらに、TFT10は、半導体層の誘電体基板側にゲート電極を有するボトムゲート構造であってもよいし、半導体層の上方にゲート電極を有するトップゲート構造であってもよい。
(第2の実施形態)
図面を参照しながら、第2の実施形態の走査アンテナを説明する。本実施形態の走査アンテナにおけるTFT基板は、各端子部の上部接続部となる透明導電層が、TFT基板における第1絶縁層と第2絶縁層との間に設けられている点で、図2に示すTFT基板101と異なる。
図8(a)〜(c)は、それぞれ、本実施形態におけるTFT基板102のゲート端子部GT、ソース端子部STおよびトランスファー端子部PTを示す断面図である。図4と同様の構成要素には同じ参照符号を付し、説明を省略する。なお、アンテナ単位領域Uの断面構造は前述の実施形態(図3)と同様であるので図示および説明を省略する。
本実施形態におけるゲート端子部GTは、誘電体基板上に形成されたゲートバスラインGL、ゲートバスラインGLを覆う絶縁層、およびゲート端子用上部接続部19gを備えている。ゲート端子用上部接続部19gは、絶縁層に形成されたコンタクトホールCH2内で、ゲートバスラインGLと接している。この例では、ゲートバスラインGLを覆う絶縁層は、ゲート絶縁層4および第1絶縁層11を含む。ゲート端子用上部接続部19gおよび第1絶縁層11上には第2絶縁層17が形成されている。第2絶縁層17は、ゲート端子用上部接続部19gの一部を露出する開口部18gを有している。この例では、第2絶縁層17の開口部18gは、コンタクトホールCH2全体を露出するように配置されていてもよい。
ソース端子部STは、誘電体基板上(ここではゲート絶縁層4上)に形成されたソースバスラインSL、ソースバスラインSLを覆う絶縁層、およびソース端子用上部接続部19sを備えている。ソース端子用上部接続部19sは、絶縁層に形成されたコンタクトホールCH3内で、ソースバスラインSLと接している。この例では、ソースバスラインSLを覆う絶縁層は、第1絶縁層11のみを含む。第2絶縁層17は、ソース端子用上部接続部19sおよび第1絶縁層11上に延設されている。第2絶縁層17は、ソース端子用上部接続部19sの一部を露出する開口部18sを有している。第2絶縁層17の開口部18sは、コンタクトホールCH3全体を露出するように配置されていてもよい。
トランスファー端子部PTは、ソースバスラインSLと同じ導電膜(ソース用導電膜)から形成されたソース接続配線7pと、ソース接続配線7p上に延設された第1絶縁層11と、第1絶縁層11上に形成されたトランスファー端子用上部接続部19pおよびパッチ接続部15pとを有している。
第1絶縁層11には、ソース接続配線7pを露出するコンタクトホールCH5およびCH6が設けられている。トランスファー端子用上部接続部19pは、第1絶縁層11上およびコンタクトホールCH5内に配置され、コンタクトホールCH5内で、ソース接続配線7pと接している。パッチ接続部15pは、第1絶縁層11上およびコンタクトホールCH6内に配置され、コンタクトホールCH6内でソース接続配線7pと接している。トランスファー端子用上部接続部19pは、透明導電膜から形成された透明電極である。パッチ接続部15pは、パッチ電極15と同じ導電膜から形成されている。なお、各端子部の上部接続部19g、19sおよび19pは、同じ透明導電膜から形成されていてもよい。
第2絶縁層17は、トランスファー端子用上部接続部19p、パッチ接続部15pおよび第1絶縁層11上に延設されている。第2絶縁層17は、トランスファー端子用上部接続部19pの一部を露出する開口部18pを有している。この例では、第2絶縁層17の開口部18pは、コンタクトホールCH5全体を露出するように配置されている。一方、パッチ接続部15pは、第2絶縁層17で覆われている。
このように、本実施形態では、ソースメタル層に形成されたソース接続配線7pによって、トランスファー端子部PTのトランスファー端子用上部接続部19pと、パッチ接続部15pとを電気的に接続している。図示していないが、前述の実施形態と同様に、トランスファー端子用上部接続部19pは、スロット基板201におけるスロット電極と、導電性粒子を含有するシール樹脂によって接続される。
前述した実施形態では、第2絶縁層17の形成後に、深さが異なるコンタクトホールCH1〜CH4を一括して形成する。例えばゲート端子部GT上では、比較的厚い絶縁層(ゲート絶縁層4、第1絶縁層11および第2絶縁層17)をエッチングするのに対し、トランスファー端子部PTでは、第2絶縁層17のみをエッチングする。このため、浅いコンタクトホールの下地となる導電膜(例えばパッチ電極用導電膜)がエッチング時に大きなダメージを受ける可能性がある。
これに対し、本実施形態では、第2絶縁層17を形成する前にコンタクトホールCH1〜3、CH5、CH6を形成する。これらのコンタクトホールは第1絶縁層11のみ、または第1絶縁層11およびゲート絶縁層4の積層膜に形成されるので、前述の実施形態よりも、一括形成されるコンタクトホールの深さの差を低減できる。したがって、コンタクトホールの下地となる導電膜へのダメージを低減できる。特に、パッチ電極用導電膜にAl膜を用いる場合には、ITO膜とAl膜とを直接接触させると良好なコンタクトが得られないことから、Al膜の上層にMoN層などのキャップ層を形成することがある。このような場合に、エッチングの際のダメージを考慮してキャップ層の厚さを大きくする必要がないので有利である。
<TFT基板102の製造方法>
TFT基板102は、例えば次のような方法で製造される。図9は、TFT基板102の製造工程を例示する図である。なお、以下では、各層の材料、厚さ、形成方法などが、前述したTFT基板101と同様である場合には説明を省略する。
まず、TFT基板102と同様の方法で、誘電体基板上に、アライメントマーク、下地絶縁層、ゲートメタル層、ゲート絶縁層、半導体層、コンタクト層およびソースメタル層を形成し、TFTを得る。ソースメタル層を形成する工程では、ソース用導電膜から、ソースおよびドレイン電極、ソースバスラインに加えて、ソース接続配線7pも形成する。
次に、ソースメタル層を覆うように第1絶縁層11を形成する。この後、第1絶縁層11およびゲート絶縁層4を一括してエッチングし、コンタクトホールCH1〜3、CH5、CH6を形成する。エッチングでは、ソースバスラインSLおよびゲートバスラインGLはエッチストップとして機能する。これにより、送受信領域R1において、第1絶縁層11に、TFTのドレイン電極に達するコンタクトホールCH1が形成される。また、非送受信領域R2において、第1絶縁層11およびゲート絶縁層4に、ゲートバスラインGLに達するコンタクトホールCH2、第1絶縁層11に、ソースバスラインSLに達するコンタクトホールCH3およびソース接続配線7pに達するコンタクトホールCH5、CH6が形成される。コンタクトホールCH5をシール領域Rsに配置し、コンタクトホールCH6をシール領域Rsの外側に配置してもよい。あるいは、両方ともシール領域Rsの外部に配置してもよい。
次いで、第1絶縁層11上およびコンタクトホールCH1〜3、CH5、CH6に透明導電膜を形成し、これをパターニングする。これにより、コンタクトホールCH2内でゲートバスラインGLと接するゲート端子用上部接続部19g、コンタクトホールCH3内でソースバスラインSLと接するソース端子用上部接続部19s、およびコンタクトホールCH5内でソース接続配線7pと接するトランスファー端子用上部接続部19pを形成する。
次に、第1絶縁層11上、ゲート端子用上部接続部19g、ソース端子用上部接続部19s、トランスファー端子用上部接続部19p上、およびコンタクトホールCH1、CH6内に、パッチ電極用導電膜を形成し、パターニングを行う。これにより、送受信領域R1に、コンタクトホールCH1内でドレイン電極7Dと接するパッチ電極15、非送受信領域R2に、コンタクトホールCH6内でソース接続配線7pと接するパッチ接続部15pを形成する。パッチ電極用導電膜のパターニングは、ウェットエッチングによって行ってもよい。ここでは、透明導電膜(ITOなど)とパッチ電極用導電膜(例えばAl膜)とのエッチング選択比を大きくできるエッチャントを用いる。これにより、パッチ電極用導電膜のパターニングの際に、透明導電膜をエッチストップとして機能させることができる。ソースバスラインSL、ゲートバスラインGLおよびソース接続配線7pのうちコンタクトホールCH2、CH3、CH5で露出された部分は、エッチストップ(透明導電膜)で覆われているため、エッチングされない。
続いて、第2絶縁層17を形成する。この後、例えばフッ素系ガスを用いたドライエッチングにより、第2絶縁層17のパターニングを行う。これにより、第2絶縁層17に、ゲート端子用上部接続部19gを露出する開口部18g、ソース端子用上部接続部19sを露出する開口部18sおよびトランスファー端子用上部接続部19pを露出する開口部18pを設ける。このようにして、TFT基板102を得る。
(第3の実施形態)
図面を参照しながら、第3の実施形態の走査アンテナを説明する。本実施形態の走査アンテナにおけるTFT基板は、透明導電膜からなる上部接続部をトランスファー端子部に設けない点で、図8に示すTFT基板102と異なる。
図10(a)〜(c)は、それぞれ、本実施形態におけるTFT基板103のゲート端子部GT、ソース端子部STおよびトランスファー端子部PTを示す断面図である。図8と同様の構成要素には同じ参照符号を付し、説明を省略する。なお、アンテナ単位領域Uの構造は前述の実施形態(図3)と同様であるので図示および説明を省略する。
ゲート端子部GTおよびソース端子部STの構造は、図8に示すTFT基板102のゲート端子部およびソース端子部の構造と同様である。
トランスファー端子部PTは、第1絶縁層11上に形成されたパッチ接続部15pと、パッチ接続部15p上に積み重ねられた保護導電層23とを有している。第2絶縁層17は、保護導電層23上に延設され、保護導電層23の一部を露出する開口部18pを有している。一方、パッチ電極15は、第2絶縁層17で覆われている。
<TFT基板103の製造方法>
TFT基板103は、例えば次のような方法で製造される。図11は、TFT基板103の製造工程を例示する図である。なお、以下では、各層の材料、厚さ、形成方法などが、前述したTFT基板101と同様である場合には説明を省略する。
まず、TFT基板101と同様の方法で、誘電体基板上に、アライメントマーク、下地絶縁層、ゲートメタル層、ゲート絶縁層、半導体層、コンタクト層およびソースメタル層を形成し、TFTを得る。
次に、ソースメタル層を覆うように第1絶縁層11を形成する。この後、第1絶縁層11およびゲート絶縁層4を一括してエッチングし、コンタクトホールCH1〜3を形成する。エッチングでは、ソースバスラインSLおよびゲートバスラインGLはエッチストップとして機能する。これにより、第1絶縁層11に、TFTのドレイン電極に達するコンタクトホールCH1が形成されるとともに、第1絶縁層11およびゲート絶縁層4に、ゲートバスラインGLに達するコンタクトホールCH2が形成され、第1絶縁層11に、ソースバスラインSLに達するコンタクトホールCH3が形成される。トランスファー端子部が形成される領域にはコンタクトホールを形成しない。
次いで、第1絶縁層11上およびコンタクトホールCH1、CH2、CH3内に透明導電膜を形成し、これをパターニングする。これにより、コンタクトホールCH2内でゲートバスラインGLと接するゲート端子用上部接続部19g、およびコンタクトホールCH3内でソースバスラインSLと接するソース端子用上部接続部19sを形成する。トランスファー端子部が形成される領域では、透明導電膜は除去される。
次に、第1絶縁層11上、ゲート端子用上部接続部19gおよびソース端子用上部接続部19s上、およびコンタクトホールCH1内にパッチ電極用導電膜を形成し、パターニングを行う。これにより、送受信領域R1に、コンタクトホールCH1内でドレイン電極7Dと接するパッチ電極15を形成し、非送受信領域R2に、パッチ接続部15pを形成する。前述の実施形態と同様に、パッチ電極用導電膜のパターニングには、透明導電膜(ITOなど)とパッチ電極用導電膜とのエッチング選択比を確保できるエッチャントを用いる。
続いて、パッチ接続部15p上に保護導電層23を形成する。保護導電層23として、Ti層、ITO層およびIZO(インジウム亜鉛酸化物)層など(厚さ:例えば50nm以上100nm以下)を用いることができる。ここでは、保護導電層23として、Ti層(厚さ:例えば50nm)を用いる。なお、保護導電層をパッチ電極15の上に形成してもよい。
次いで、第2絶縁層17を形成する。この後、例えばフッ素系ガスを用いたドライエッチングにより、第2絶縁層17のパターニングを行う。これにより、第2絶縁層17に、ゲート端子用上部接続部19gを露出する開口部18g、ソース端子用上部接続部19sを露出する開口部18s、および保護導電層23を露出する開口部18pを設ける。このようにして、TFT基板103を得る。
<スロット基板203の構造>
図12は、本実施形態における、TFT基板103のトランスファー端子部PTと、スロット基板203の端子部ITとを接続するトランスファー部を説明するための模式的な断面図である。図12では、前述の実施形態と同様の構成要素には同じ参照符号を付している。
まず、本実施形態におけるスロット基板203を説明する。スロット基板203は、誘電体基板51と、誘電体基板51の表面に形成された第3絶縁層52と、第3絶縁層52上に形成されたスロット電極55と、スロット電極55を覆う第4絶縁層58とを備える。反射導電板65が誘電体基板51の裏面に誘電体層(空気層)54を介して対向するように配置されている。スロット電極55および反射導電板65は導波路301の壁として機能する。
スロット電極55は、Cu層またはAl層を主層55Mとする積層構造を有している。送受信領域R1において、スロット電極55には複数のスロット57が形成されている。送受信領域R1におけるスロット電極55の構造は、図6を参照しながら前述したスロット基板201の構造と同じである。
非送受信領域R2には、端子部ITが設けられている。端子部ITでは、第4絶縁層58に、スロット電極55の表面を露出する開口が設けられている。スロット電極55の露出した領域がコンタクト面55cとなる。このように、本実施形態では、スロット電極55のコンタクト面55cは、第4絶縁層58で覆われていない。
トランスファー部では、TFT基板103におけるパッチ接続部15pを覆う保護導電層23と、スロット基板203におけるスロット電極55のコンタクト面55cとを、導電性ビーズ71を含む樹脂(シール樹脂)を介して接続する。
本実施形態におけるトランスファー部は、前述の実施形態と同様に、走査アンテナの中心部および周縁部の両方に配置されていてもよいし、いずれか一方のみに配置されていてもよい。また、シール領域Rs内に配置されていてもよいし、シール領域Rsの外側(液晶層と反対側)に配置されていてもよい。
本実施形態では、トランスファー端子部PTおよび端子部ITのコンタクト面に透明導電膜を設けない。このため、保護導電層23と、スロット基板203のスロット電極55とを、導電性粒子を含有するシール樹脂を介して接続させることができる。
また、本実施形態では、第1の実施形態(図3および図4)と比べて、一括形成されるコンタクトホールの深さの差が小さいので、コンタクトホールの下地となる導電膜へのダメージを低減できる。
<スロット基板203の製造方法>
スロット基板203は、次のようにして製造される。各層の材料、厚さおよび形成方法は、スロット基板201と同様であるので、説明を省略する。
まず、スロット基板201と同様の方法で、誘電体基板上に、第3絶縁層52およびスロット電極55を形成し、スロット電極55に複数のスロット57を形成する。次いで、スロット電極55上およびスロット内に第4絶縁層58を形成する。この後、スロット電極55のコンタクト面となる領域を露出するように、第4絶縁層58に開口部18pを設ける。このようにして、スロット基板203が製造される。
<内部ヒーター構造>
上述したように、アンテナのアンテナ単位に用いられる液晶材料の誘電異方性ΔεMは大きいことが好ましい。しかしながら、誘電異方性ΔεMが大きい液晶材料(ネマチック液晶)の粘度は大きく、応答速度が遅いという問題がある。特に、温度が低下すると、粘度は上昇する。移動体(例えば、船舶、航空機、自動車)に搭載された走査アンテナの環境温度は変動する。したがって、液晶材料の温度をある程度以上、例えば30℃以上、あるいは45℃以上に調整できることが好ましい。設定温度は、ネマチック液晶材料の粘度が概ね10cP(センチポアズ)以下となるように設定することが好ましい。
本発明の実施形態の走査アンテナは、上記の構造に加えて、内部ヒーター構造を有することが好ましい。内部ヒーターとしては、ジュール熱を利用する抵抗加熱方式のヒーターが好ましい。ヒーター用の抵抗膜の材料としては、特に限定されないが、例えば、ITOやIZOなど比較的比抵抗の高い導電材料を用いることができる。また、抵抗値の調整のために、金属(例えば、ニクロム、チタン、クロム、白金、ニッケル、アルミニウム、銅)の細線やメッシュで抵抗膜を形成してもよい。ITOやIZOなどの細線やメッシュを用いることもできる。求められる発熱量に応じて、抵抗値を設定すればよい。
例えば、直径が340mmの円の面積(約90、000mm2)を100V交流(60Hz)で、抵抗膜の発熱温度を30℃にするためには、抵抗膜の抵抗値を139Ω、電流を0.7Aで、電力密度を800W/m2とすればよい。同じ面積を100V交流(60Hz)で、抵抗膜の発熱温度を45℃にするためには、抵抗膜の抵抗値を82Ω、電流を1.2Aで、電力密度を1350W/m2とすればよい。
ヒーター用の抵抗膜は、走査アンテナの動作に影響を及ぼさない限りどこに設けてもよいが、液晶材料を効率的に加熱するためには、液晶層の近くに設けることが好ましい。例えば、図13(a)に示すTFT基板104に示す様に、誘電体基板1のほぼ全面に抵抗膜68を形成してもよい。図13(a)は、ヒーター用抵抗膜68を有するTFT基板104の模式的な平面図である。抵抗膜68は、例えば、図3に示した下地絶縁膜2で覆われる。下地絶縁膜2は、十分な絶縁耐圧を有するように形成される。
抵抗膜68は、開口部68a、68bおよび68cを有することが好ましい。TFT基板104とスロット基板とが貼り合せられたとき、パッチ電極15と対向するようにスロット57が位置する。このときに、スロット57のエッジから距離dの周囲には抵抗膜68が存在しないよう開口部68aを配置する。dは例えば0.5mmである。また、補助容量CSの下部にも開口部68bを配置し、TFTの下部にも開口部68cを配置することが好ましい。
なお、アンテナ単位Uのサイズは、例えば4mm×4mmである。また、図13(b)に示すように、例えば、スロット57の幅s2は0.5mm、スロット57の長さs1は3.3mm、スロット57の幅方向のパッチ電極15の幅p2は0.7mm、スロットの長さ方向のパッチ電極15の幅p1は0.5mmである。なお、アンテナ単位U、スロット57およびパッチ電極15のサイズ、形状、配置関係などは図13(a)および(b)に示す例に限定されない。
ヒーター用抵抗膜68からの電界の影響をさらに低減するために、シールド導電層を形成してもよい。シールド導電層は、例えば、下地絶縁膜2の上に誘電体基板1のほぼ全面に形成される。シールド導電層には、抵抗膜68のように開口部68a、68bを設ける必要はないが、開口部68cを設けることが好ましい。シールド導電層は、例えば、アルミニウム層で形成され、接地電位とされる。
また、液晶層を均一に加熱できるように、抵抗膜の抵抗値に分布を持たせることが好ましい。液晶層の温度分布は、最高温度−最低温度(温度むら)が、例えば15℃以下となることが好ましい。温度むらが15℃を超えると、位相差変調が面内でばらつき、良好なビーム形成ができなくなるという不具合が発生することがある。また、液晶層の温度がTni点(例えば125℃)に近づくと、ΔεMが小さくなるので好ましくない。
図14(a)、(b)および図15(a)〜(c)を参照して、抵抗膜における抵抗値の分布を説明する。図14(a)、(b)および図15(a)〜(c)に、抵抗加熱構造80a〜80eの模式的な構造と電流の分布を示す。抵抗加熱構造は、抵抗膜と、ヒーター用端子とを備えている。
図14(a)に示す抵抗加熱構造80aは、第1端子82aと第2端子84aとこれらに接続された抵抗膜86aとを有している。第1端子82aは、円の中心に配置され、第2端子84aは円周の全体に沿って配置されている。ここで円は、送受信領域R1に対応する。第1端子82aと第2端子84aとの間に直流電圧を供給すると、例えば、第1端子82aから第2端子84aに放射状に電流IAが流れる。したがって、抵抗膜86aは面内の抵抗値は一定であっても、均一に発熱することができる。もちろん、電流の流れる向きは、第2端子84aから第1端子82aに向かう方向でもよい。
図14(b)に抵抗加熱構造80bは、第1端子82bと第2端子84bとこれらに接続された抵抗膜86bとを有している。第1端子82bおよび第2端子84bは円周に沿って互いに隣接して配置されている。抵抗膜86bにおける第1端子82bと第2端子84bとの間を流れる電流IAによって発生する単位面積当たりの発熱量が一定になるように、抵抗膜86bの抵抗値は面内分布を有している。抵抗膜86bの抵抗値の面内分布は、例えば、抵抗膜86を細線で構成する場合、細線の太さや、細線の密度で調整すればよい。
図15(a)に示す抵抗加熱構造80cは、第1端子82cと第2端子84cとこれらに接続された抵抗膜86cとを有している。第1端子82cは、円の上側半分の円周に沿って配置されており、第2端子84cは円の下側半分の円周に沿って配置されている。抵抗膜86cを例えば第1端子82cと第2端子84cとの間を上下に延びる細線で構成する場合、電流IAによる単位面積あたりの発熱量が面内で一定になるように、例えば、中央付近の細線の太さや密度が高くなるように調整されている。
図15(b)に示す抵抗加熱構造80dは、第1端子82dと第2端子84dとこれらに接続された抵抗膜86dとを有している。第1端子82dと第2端子84dとは、それぞれ円の直径に沿って上下方向、左右方向に延びるように設けられている。図では簡略化しているが、第1端子82dと第2端子84dとは互いに絶縁されている。
また、図15(c)に示す抵抗加熱構造80eは、第1端子82eと第2端子84eとこれらに接続された抵抗膜86eとを有している。抵抗加熱構造80eは、抵抗加熱構造80dと異なり、第1端子82eおよび第2端子84eのいずれも円の中心から上下左右の4つの方向に延びる4つの部分を有している。互いに90度を成す第1端子82eの部分と第2端子84eの部分とは、電流IAが、時計回りに流れるように配置されている。
抵抗加熱構造80dおよび抵抗加熱構造80eのいずれにおいても、単位面積当たりの発熱量が面内で均一になるように、円周に近いほど電流IAが多くなるように、例えば、円周に近い側の細線を太く、密度が高くなるように調整されている。
このような内部ヒーター構造は、例えば、走査アンテナの温度を検出して、予め設定された温度を下回ったときに自動的に動作するようにしてもよい。もちろん、使用者の操作に呼応して動作するようにしてもよい。
<駆動方法>
本発明の実施形態による走査アンテナが有するアンテナ単位のアレイは、LCDパネルと類似した構造を有しているので、LCDパネルと同様に線順次駆動を行う。しかしながら、従来のLCDパネルの駆動方法を適用すると、以下の問題が発生する恐れがある。図16に示す、走査アンテナの1つのアンテナ単位の等価回路図を参照しつつ、走査アンテナに発生し得る問題点を説明する。
まず、上述したように、マイクロ波領域の誘電異方性ΔεM(可視光に対する複屈折Δn)が大きい液晶材料の比抵抗は低いので、LCDパネルの駆動方法をそのまま適用すると、液晶層に印加される電圧を十分に保持できない。そうすると、液晶層に印加される実効電圧が低下し、液晶容量の静電容量値が目標値に到達しない。
このように液晶層に印加された電圧が所定の値からずれると、アンテナのゲインが最大となる方向が所望する方向からずれることになる。そうすると、例えば、通信衛星を正確に追尾できないことになる。これを防止するために、液晶容量Clcと電気的に並列に補助容量CSを設け、補助容量CSの容量値C−Ccsを十分に大きくする。補助容量CSの容量値C−Ccsは、液晶容量Clcの電圧保持率が90%以上となるように適宜設定することが好ましい。
また、比抵抗が低い液晶材料を用いると、界面分極および/または配向分極による電圧低下も起こる。これらの分極による電圧低下を防止するために、電圧降下分を見込んだ十分に高い電圧を印加することが考えられる。しかしながら、比抵抗が低い液晶層に高い電圧を印加すると、動的散乱効果(DS効果)が起こる恐れがある。DS効果は、液晶層中のイオン性不純物の対流に起因し、液晶層の誘電率εMは平均値((εM‖+2εM⊥)/3)に近づく。また、液晶層の誘電率εMを多段階(多階調)で制御するためには、常に十分に高い電圧を印加することもできない。
上記のDS効果および/または分極による電圧降下を抑制するためには、液晶層に印加する電圧の極性反転周期を十分に短くすればよい。よく知られているように、印加電圧の極性反転周期を短くするとDS効果が起こるしきい値電圧が高くなる。したがって、液晶層に印加する電圧(絶対値)の最大値が、DS効果が起こるしきい値電圧未満となるように、極性反転周波数を決めればよい。極性反転周波数が300Hz以上であれば、例えば比抵抗が1×1010Ω・cm、誘電異方性Δε(@1kHz)が−0.6程度の液晶層に絶対値が10Vの電圧を印加しても、良好な動作を確保することができる。また、極性反転周波数(典型的にはフレーム周波数の2倍と同じ)が300Hz以上であれば、上記の分極に起因する電圧降下も抑制される。極性反転周期の上限は、消費電力などの観点から約5kHz以下であることが好ましい。
上述したように液晶材料の粘度は温度に依存するので、液晶層の温度は適宜制御されることが好ましい。ここで述べた液晶材料の物性および駆動条件は、液晶層の動作温度における値である。逆に言うと、上記の条件で駆動できるように、液晶層の温度を制御することが好ましい。
図17(a)〜(g)を参照して、走査アンテナの駆動に用いられる信号の波形の例を説明する。なお、図17(d)に、比較のために、LCDパネルのソースバスラインに供給される表示信号Vs(LCD)の波形を示している。
図17(a)はゲートバスラインG−L1に供給される走査信号Vgの波形、図17(b)はゲートバスラインG−L2に供給される走査信号Vgの波形、図17(c)はゲートバスラインG−L3に供給される走査信号Vgの波形を示し、図17(e)はソースバスラインに供給されるデータ信号Vdaの波形を示し、図17(f)はスロット基板のスロット電極(スロット電極)に供給されるスロット電圧Vidcの波形を示し、図17(g)はアンテナ単位の液晶層に印加される電圧の波形を示す。
図17(a)〜(c)に示す様に、ゲートバスラインに供給される走査信号Vgの電圧が、順次、ローレベル(VgL)からハイレベル(VgH)に切替わる。VgLおよびVgHは、TFTの特性に応じて適宜設定され得る。例えば、VgL=−5V〜0V、Vgh=+20Vである。また、VgL=−20V、Vgh=+20Vとしてもよい。あるゲートバスラインの走査信号Vgの電圧がローレベル(VgL)からハイレベル(VgH)に切替わる時刻から、その次のゲートバスラインの電圧がVgLからVgHに切替わる時刻までの期間を1水平走査期間(1H)ということにする。また、各ゲートバスラインの電圧がハイレベル(VgH)になっている期間を選択期間PSという。この選択期間PSにおいて、各ゲートバスラインに接続されたTFTがオン状態となり、ソースバスラインに供給されているデータ信号Vdaのその時の電圧が、対応するパッチ電極に供給される。データ信号Vdaは例えば−15V〜+15V(絶対値が15V)であり、例えば、12階調、好ましくは16階調に対応する絶対値の異なるデータ信号Vdaを用いる。
ここでは、全てのアンテナ単位にある中間電圧を印加している場合を例示する。すなわち、データ信号Vdaの電圧は、全てのアンテナ単位(m本のゲートバスラインに接続されているとする。)に対して一定であるとする。これはLCDパネルにおいて全面である中間調を表示している場合に対応する。このとき、LCDパネルでは、ドット反転駆動が行われる。すなわち、各フレームにおいて、互いに隣接する画素(ドット)の極性が互いに逆になるように、表示信号電圧が供給される。
図17(d)はドット反転駆動を行っているLCDパネルの表示信号の波形を示している。図17(d)に示したように、1H毎にVs(LCD)の極性が反転している。この波形を有するVs(LCD)が供給されているソースバスラインに隣接するソースバスラインに供給されるVs(LCD)の極性は、図17(d)に示すVs(LCD)の極性と逆になっている。また、全ての画素に供給される表示信号の極性は、フレーム毎に反転する。LCDパネルでは、正極性と負極性とで、液晶層に印加される実効電圧の大きさを完全に一致させることが難しく、かつ、実効電圧の差が輝度の差となり、フリッカーとして観察される。このフリッカーを観察され難くするために、各フレームにおいて極性の異なる電圧が印加される画素(ドット)を空間的に分散させている。典型的には、ドット反転駆動を行うことによって、極性が異なる画素(ドット)を市松模様に配列させる。
これに対して、走査アンテナにおいては、フリッカー自体は問題とならない。すなわち、液晶容量の静電容量値が所望の値でありさえすればよく、各フレームにおける極性の空間的な分布は問題とならない。したがって、低消費電力等の観点から、ソースバスラインから供給されるデータ信号Vdaの極性反転の回数を少なくする、すなわち、極性反転の周期を長くすることが好ましい。例えば、図17(e)に示す様に、極性反転の周期を10H(5H毎に極性反転)にすればよい。もちろん、各ソースバスラインに接続されているアンテナ単位の数(典型的には、ゲートバスラインの本数に等しい。)をm個とすると、データ信号Vdaの極性反転の周期を2m・H(m・H毎に極性反転)としてもよい。データ信号Vdaの極性反転の周期は、2フレーム(1フレーム毎に極性反転)と等しくてもよい。
また、全てのソースバスラインから供給するデータ信号Vdaの極性を同じにしてもよい。したがって、例えば、あるフレームでは、全てのソースバスラインから正極性のデータ信号Vdaを供給し、次にフレームでは、全てのソースバスラインから負極性のデータ信号Vdaを供給してもよい。
あるいは、互いに隣接するソースバスラインから供給するデータ信号Vdaの極性を互いに逆極性にしてもよい。例えば、あるフレームでは、奇数列のソースバスラインからは正極性のデータ信号Vdaを供給し、偶数列のソースバスラインからは負極性のデータ信号Vdaを供給する。そして、次のフレームでは、奇数列のソースバスラインからは負極性のデータ信号Vdaを供給し、偶数列のソースバスラインからは正極性のデータ信号Vdaを供給する。このような駆動方法は、LCDパネルでは、ソースライン反転駆動と呼ばれる。隣接するソースバスラインから供給するデータ信号Vdaを逆極性にすると、フレーム間で供給するデータ信号Vdaの極性を反転させる前に、隣接するソースバスラインを互いに接続する(ショートさせる)ことによって、液晶容量に充電された電荷を隣接する列間でキャンセルさせることができる。したがって、各フレームにおいてソースバスラインから供給する電荷の量を少なくできるという利点が得られる。
スロット電極の電圧Vidcは図17(f)に示す様に、例えば、DC電圧であり、典型的にはグランド電位である。アンテナ単位の容量(液晶容量および補助容量)の容量値は、LCDパネルの画素容量の容量値よりも大きい(例えば、20型程度のLCDパネルと比較して約30倍)ので、TFTの寄生容量に起因する引込電圧の影響がなく、スロット電極の電圧Vidcをグランド電位として、データ信号Vdaをグランド電位を基準に正負対称な電圧としても、パッチ電極に供給される電圧は正負対称な電圧となる。LCDパネルにおいては、TFTの引込電圧を考慮して、対向電極の電圧(共通電圧)を調整することによって、画素電極に正負対称な電圧が印加されるようにしているが、走査アンテナのスロット電圧についてはその必要がなく、グランド電位であってよい。また、図17に図示しないが、CSバスラインには、スロット電圧Vidcと同じ電圧が供給される。
アンテナ単位の液晶容量に印加される電圧は、スロット電極の電圧Vidc(図17(f))に対するパッチ電極の電圧(すなわち、図17(e)に示したデータ信号Vdaの電圧)なので、スロット電圧Vidcがグランド電位のとき、図17(g)に示す様に、図17(e)に示したデータ信号Vdaの波形と一致する。
走査アンテナの駆動に用いられる信号の波形は、上記の例に限られない。例えば、図18および図19を参照して以下に説明するように、スロット電極の電圧として振動波形を有するViacを用いてもよい。
例えば、図18(a)〜(e)に例示する様な信号を用いることができる。図18では、ゲートバスラインに供給される走査信号Vgの波形を省略しているが、ここでも、図17(a)〜(c)を参照して説明した走査信号Vgを用いる。
図18(a)に示す様に、図17(e)に示したのと同様に、データ信号Vdaの波形が10H周期(5H毎)で極性反転している場合を例示する。ここでは、データ信号Vdaとして、振幅が最大値|Vdamax|の場合を示す。上述したように、データ信号Vdaの波形は、2フレーム周期(1フレーム毎)で極性反転させてもよい。
ここで、スロット電極の電圧Viacは、図18(c)に示す様に、データ信号Vda(ON)と極性が逆で、振動の周期は同じ、振動電圧とする。スロット電極の電圧Viacの振幅は、データ信号Vdaの振幅の最大値|Vdamax|と等しい。すなわち、スロット電圧Viacは、データ信号Vda(ON)と極性反転の周期は同じで、極性が逆(位相が180°異なる)で、−Vdamaxと+Vdamaxとの間を振動する電圧とする。
アンテナ単位の液晶容量に印加される電圧Vlcは、スロット電極の電圧Viac(図18(c))に対するパッチ電極の電圧(すなわち、図18(a)に示したデータ信号Vda(ON)の電圧)なので、データ信号Vdaの振幅が±Vdamaxで振動しているとき、液晶容量に印加される電圧は、図18(d)に示す様に、Vdamaxの2倍の振幅で振動する波形となる。したがって、液晶容量に印加される電圧Vlcの最大振幅を±Vdamaxとするために必要なデータ信号Vdaの最大振幅は、±Vdamax/2となる。
このようなスロット電圧Viacを用いることによって、データ信号Vdaの最大振幅を半分にできるので、データ信号Vdaを出力するドライバ回路として、例えば、耐圧が20V以下の汎用のドライバICを用いることができるという利点が得られる。
なお、図18(e)に示す様に、アンテナ単位の液晶容量に印加される電圧Vlc(OFF)をゼロとするとために、図18(b)に示す様に、データ信号Vda(OFF)をスロット電圧Viacと同じ波形にすればよい。
例えば、液晶容量に印加される電圧Vlcの最大振幅を±15Vとする場合を考える。スロット電圧として、図17(f)に示したVidcを用い、Vidc=0Vとすると、図17(e)に示したVdaの最大振幅は、±15Vとなる。これに対して、スロット電圧として、図18(c)に示したViacを用い、Viacの最大振幅を±7.5Vとすると、図18(a)に示したVda(ON)の最大振幅は、±7.5Vとなる。
液晶容量に印加される電圧Vlcを0Vとする場合、図17(e)に示したVdaを0Vとすればよく、図18(b)に示したVda(OFF)の最大振幅は±7.5Vとすればよい。
図18(c)に示したViacを用いる場合は、液晶容量に印加される電圧Vlcの振幅は、Vdaの振幅とは異なるので、適宜変換する必要がある。
図19(a)〜(e)に例示する様な信号を用いることもできる。図19(a)〜(e)に示す信号は、図18(a)〜(e)に示した信号と同様に、スロット電極の電圧Viacを図19(c)に示す様に、データ信号Vda(ON)と振動の位相が180°ずれた振動電圧とする。ただし、図19(a)〜(c)にそれぞれ示す様に、データ信号Vda(ON)、Vda(OFF)およびスロット電圧Viacをいずれも0Vと正の電圧との間で振動する電圧としている。スロット電極の電圧Viacの振幅は、データ信号Vdaの振幅の最大値|Vdamax|と等しい。
このような信号を用いると、駆動回路は正の電圧だけを出力すればよく、低コスト化に寄与する。このように0Vと正の電圧との間で振動する電圧を用いても、図19(d)に示すように、液晶容量に印加される電圧Vlc(ON)は、極性反転する。図19(d)に示す電圧波形において、+(正)は、パッチ電極の電圧がスロット電圧よりも高いことを示し、−(負)は、パッチ電極の電圧がスロット電圧よりも低いことを示している。すなわち、液晶層に印加される電界の向き(極性)は、他の例と同様に反転している。液晶容量に印加される電圧Vlc(ON)の振幅はVdamaxである。
なお、図19(e)に示す様に、アンテナ単位の液晶容量に印加される電圧Vlc(OFF)をゼロとするとために、図19(b)に示す様に、データ信号Vda(OFF)をスロット電圧Viacと同じ波形にすればよい。
図18および図19を参照して説明したスロット電極の電圧Viacを振動させる(反転させる)駆動方法は、LCDパネルの駆動方法でいうと、対向電圧を反転させる駆動方法に対応する(「コモン反転駆動」といわれることがある。)。LCDパネルでは、フリッカーを十分に抑制できないことから、コモン反転駆動は採用されていない。これに対し、走査アンテナでは、フリッカーは問題とならないので、スロット電圧を反転させることができる。振動(反転)は、例えば、フレーム毎に行われる(図18および図19における5Hを1V(垂直走査期間またはフレーム)とする)。
上記の説明では、スロット電極の電圧Viacは1つの電圧が印加される例、すなわち、全てのパッチ電極に対して共通のスロット電極が設けられている例を説明したが、スロット電極を、パッチ電極の1行、または、2以上の行に対応して分割してもよい。ここで、行とは、1つのゲートバスラインにTFTを介して接続されたパッチ電極の集合を指す。このようにスロット電極を複数の行部分に分割すれば、スロット電極の各部分の電圧の極性を互いに独立にできる。例えば、任意のフレームにおいて、パッチ電極に印加される電圧の極性を、隣接するゲートバスラインに接続されたパッチ電極間で互いに逆にできる。このように、パッチ電極の1行毎に極性を反転させる行反転(1H反転)だけでなく、2以上の行毎に極性を反転させるm行反転(mH反転)を行うことができる。もちろん、行反転とフレーム反転とは組合せられる。
駆動の単純さの観点からは、任意のフレームにおいて、パッチ電極に印加される電圧の極性を全て同じにし、フレーム毎に極性が反転する駆動が好ましい。
<アンテナ単位の配列、ゲートバスライン、ソースバスラインの接続の例>
本発明の実施形態の走査アンテナにおいて、アンテナ単位は例えば、同心円状に配列される。
例えば、m個の同心円に配列されている場合、ゲートバスラインは例えば、各円に対して1本ずつ設けられ、合計m本のゲートバスラインが設けられる。送受信領域R1の外径を、例えば800mmとすると、mは例えば、200である。最も内側のゲートバスラインを1番目とすると、1番目のゲートバスラインには、n個(例えば30個)のアンテナ単位が接続され、m番目のゲートバスラインにはnx個(例えば620個)のアンテナ単位が接続されている。
このような配列では、各ゲートバスラインに接続されているアンテナ単位の数が異なる。また、最も外側の円を構成するnx個のアンテナ単位に接続されているnx本のソースバスラインには、m個のアンテナ単位が接続されているが、内側の円を構成するアンテナ単位に接続されているソースバスラインに接続されているアンテナ単位の数はmよりも小さくなる。
このように、走査アンテナにおけるアンテナ単位の配列は、LCDパネルにおける画素(ドット)の配列とは異なり、ゲートバスラインおよび/またはソースバスラインによって、接続されているアンテナ単位の数が異なる。したがって、全てのアンテナ単位の容量(液晶容量+補助容量)を同じにすると、ゲートバスラインおよび/またはソースバスラインによって、接続されている電気的な負荷が異なることになる。そうすると、アンテナ単位への電圧の書き込みにばらつきが生じるという問題がある。
そこで、これを防止するために、例えば、補助容量の容量値を調整することによって、あるいは、ゲートバスラインおよび/またはソースバスラインに接続するアンテナ単位の数を調整することによって、各ゲートバスラインおよび各ソースバスラインに接続されている電気的な負荷を略同一にすることが好ましい。
本発明の実施形態による走査アンテナは、必要に応じて、例えばプラスチック製の筺体に収容される。筺体にはマイクロ波の送受信に影響を与えない誘電率εMが小さい材料を用いることが好ましい。また、筺体の送受信領域R1に対応する部分には貫通孔を設けてもよい。さらに、液晶材料が光に曝されないように、遮光構造を設けてもよい。遮光構造は、例えば、TFT基板101の誘電体基板1および/またはスロット基板201の誘電体基板51の側面から誘電体基板1および/または51内を伝播し、液晶層に入射する光を遮光するように設ける。誘電異方性ΔεMが大きな液晶材料は、光劣化しやすいものがあり、紫外線だけでなく、可視光の中でも短波長の青色光も遮光することが好ましい。遮光構造は、例えば、黒色の粘着テープなどの遮光性のテープを用いることによって、必要な個所に容易に形成できる。
<スペーサ構造>
本発明の実施形態による走査アンテナは、LCDパネルと同様に、スペーサを用いて液晶層LCの厚さが制御される。スペーサとしては、シール材に混合されたスペーサ(「粒状スペーサ」ということがある。)と、紫外線硬化性樹脂などの感光性樹脂を用いてフォトリソグラフィプロセスで形成される柱状スペーサ(「フォトスペーサ」ということがある。)とが用いられる。
本発明の実施形態による走査アンテナにおいて、マイクロ波の位相の制御に寄与するのはパッチ電極15とスロット電極55との間の液晶層LCであるので、走査アンテナの動作精度を高める観点からは、パッチ電極15とスロット電極55との間の液晶層LCの厚さdLC(図20参照)の均一性が高いことが好ましい。以下で説明する実施形態の走査アンテナは、パッチ電極15とスロット電極55との間の液晶層LCの厚さdLCの均一性を向上させることができるスペーサ構造を有する。
走査アンテナが有するスロット基板およびTFT基板の表面の凹凸(段差)の程度は、LCDの対向基板およびTFT基板の表面の凹凸よりも大きい。これは、スロット電極やパッチ電極を構成する金属層(例えば、Cu層またはAl層)の厚さが、例えば0.5μm〜5μmと大きいことが1つの要因である。パッチ電極15とスロット電極55との間の液晶層LCの厚さdLCを例えば5μmに設定すると、液晶層LCの厚さが最も大きい箇所では10μmを超える。
LCDパネルの製造方法において、フォトスペーサは、感光性樹脂(例えば、紫外線硬化樹脂)の前駆体溶液を基板上に(例えば、スピンコータまたはスロットコータを用いて)塗布して、必要に応じて溶剤を除去、プリベークした後、所定のパターンに露光・現像することによって形成される。LCDパネルの液晶層の厚さ(フォトスペーサの高さ)は2μm〜3μm程度なので、上記のプロセスでフォトスペーサを形成することができる。しかしながら、上記のプロセスで高さが5μmを超えるフォトスペーサを形成することは難しい。
そこで、図20から図22を参照して説明する本発明の実施形態による走査アンテナは、スペーサ構造体75を用いて、液晶層LCの厚さdLCを制御する。以下の図において、先に説明した走査アンテナの構成要素と実質的に同じ機能を有する構成要素は共通の参照符号を付して、説明を省略することがある。
図20は、スペーサ構造体75を有する走査アンテナの構造の例を模式的に示す断面図であり、送受信領域R1にあるスペーサ構造体75を模式的に示す図である。図21は、スペーサ構造体75を有する走査アンテナが有するTFT基板105の模式的な平面図であり、図22はスペーサ構造体75を設ける場所とスロット57およびパッチ電極15の位置との関係を説明するための模式的な平面図である。なお、走査アンテナが有する複数のスペーサ構造体75は、送受信領域R1にある複数のスペーサ構造体および非送受信領域R2にある複数のスペーサ構造体を含んでよい。
図20に示す様に、TFT基板105とスロット基板205との間の液晶層LCの厚さは場所によって異なる。図20に示すTFT基板105は、例えば、図1を参照して説明した実施形態1のTFT基板101と同様に作製される。ここで、パッチ電極15とスロット電極55との間の液晶層LCの厚さdLCを例えば5.00μmとすると、TFT基板105(ゲートメタル層、ソースメタル層およびパッチメタル層のいずれとも重ならない部分)とスロット電極55との間の液晶層LCの厚さΔL1は、例えば7.73μmとなる。TFT基板105(ゲートメタル層、ソースメタル層およびパッチメタル層のいずれとも重ならない部分)とスロット57との間の液晶層LCの厚さΔL2は、例えば12.78μmとなる。従来のLCDパネルにおいては、フォトスペーサはΔL1を規定する位置に設けられるが、図20に示す走査アンテナにおいて、ΔL1は7μmを超えるので、このような高さを有するフォトスペーサを形成することは難しい。
そこで、この走査アンテナでは、ΔL1の間隙を有する部分のTFT基板105に、台座75Bを形成し、台座75B上の液晶層LCの厚さΔL3を5μm以下とし、この台座75B上にフォトスペーサ59aを配置している。台座75Bは、TFT基板105を構成するゲートメタル層、ソースメタル層およびパッチメタル層を用いて形成され得るので、新たな層を形成する必要はなく、各層をパターニングする際のマスクのパターンを変更することによって形成され得る。既に説明したように、ゲートメタル層は、ゲート電極3およびゲートバスラインGLを含む層であり、ソースメタル層は、ソース電極7S、ドレイン電極7DおよびソースバスラインSLを含む層であり、パッチメタル層は、パッチ電極15およびパッチ接続部15pを含む層である。フォトスペーサ59aは、例えば、スロット電極55上に形成された有機絶縁層59をパターニングすることによって形成される。有機絶縁層59は、例えば感光性樹脂(例えばアクリル樹脂)から形成されている。フォトスペーサ59aの高さは、例えば2μm以上5μm以下である。フォトスペーサ59aの高さは、例えば液晶層LCの厚さΔL3とほぼ等しい。すなわち、台座75Bの上の液晶層LCの厚さΔL3は、例えば2μm以上5μm以下である。フォトスペーサ59aの高さは、第1誘電体基板1の法線方向における高さをいう。液晶層LCの厚さは、第1誘電体基板1の法線方向における厚さをいう。走査アンテナが有する他の導電層または絶縁層についても、特に断らない限り同様である。
このように、スペーサ構造体75は、フォトスペーサ59aと台座75Bとを含む。台座75Bは、少なくともパッチメタル層の一部M3を含むことが好ましい。台座75Bは、ゲートメタル層の一部M1および/またはソースメタル層の一部M2をさらに含んでもよい。ここでは、液晶層LCの厚さΔL3を小さくするために、ゲートメタル層の一部M1およびソースメタル層の一部M2を含む台座75Bを形成している。
例えば図20に示すように、台座75Bが、ゲートメタル層の一部M1と、ソースメタル層の一部M2と、パッチメタル層の一部M3とを有するときは、フォトスペーサ59aの厚さは、液晶層LCの厚さΔL1から、ゲートメタル層の厚さと、ソースメタル層の厚さと、パッチメタル層の厚さとの和を引いた値とすればよい。パッチメタル層の厚さは、例えば0.5μm〜2μmである。パッチメタル層の厚さが大きいほど、液晶層LCの厚さΔL1に対してフォトスペーサ59aの高さを小さくすることができる。例えばパッチメタル層の厚さが2μmであるとき、5μmの高さを有するフォトスペーサ59aを用いることによって、液晶層LCの厚さΔL1が7μmのとき、液晶層LCの厚さΔL3を5μmとすることができる。
なお、パッチ電極15の下にはゲートメタル層が存在しないので、パッチ電極15上の液晶層LCの厚さdLCは、台座75B上の液晶層LCの厚さΔL3よりもゲートメタル層の厚さ分だけ大きいことになる。液晶層LCの厚さdLCは、台座75B上の液晶層LCの厚さΔL3とほぼ同じとなる。従って、上記のスペーサ構造を有することによって、パッチ電極15とスロット電極55との間の液晶層LCの厚さdLCを、例えば2μm以上5μm以下に制御することができる。
台座75Bが、パッチメタル層の一部M3に加えて、ゲートメタル層の一部M1および/またはソースメタル層の一部M2をさらに含むことによって、フォトスペーサ59aの高さを小さくすることができる。ゲートメタル層の厚さおよびソースメタル層の厚さは、それぞれ、例えば200nm〜400nm程度であり、これはパッチメタル層の厚さの10%〜80%程度である。ゲートメタル層の厚さおよびソースメタル層の厚さと比べてパッチメタル層の厚さが大きいほど、フォトスペーサ59aの高さを小さくするために、台座75Bは少なくともパッチメタル層の一部M3を含むことが効果的である。
液晶層LCの厚さΔL1が小さい場合は、上記問題が生じないことがある。この場合は、台座75Bはパッチメタル層の一部を含まなくてもよい。あるいは、スペーサ構造体75は、台座75Bを含まなくてもよい。例えば液晶層LCの厚さΔL1が5μm以下の場合には、台座75Bはパッチメタル層の一部を含まなくてもよい。例えば液晶層LCの厚さΔL1が5μm以下の場合には、スペーサ構造体75は、台座75Bを含まなくてもよい。
例示したスペーサ構造においては、スロット基板205がフォトスペーサ59aを有するが、本発明の実施形態による走査アンテナが有するスペーサ構造は、これに限られない。TFT基板105がフォトスペーサを有していてもよい。TFT基板105が有するフォトスペーサは、例えば、第2絶縁層17上に形成された有機絶縁層をパターニングすることによって形成される。TFT基板105の表面の凹凸(段差)の程度が、スロット基板205の表面の凹凸(段差)の程度よりも小さい場合、スロット基板205上にフォトスペーサを形成するよりもTFT基板105上にフォトスペーサを形成する方が容易であることがある。TFT基板105およびスロット基板205の表面の凹凸(段差)の程度は、それぞれ、主に、パッチメタル層の厚さおよびスロット電極を構成する金属層(例えば、Cu層またはAl層)の厚さによって決まる。
スペーサ構造体75の周りでは、液晶分子の配向に乱れが生じることがある。LCDパネルにおいては、液晶分子の配向の乱れによる表示品位の低下を抑制するために、スペーサをブラックマトリクス(遮光層)に重なるように配置し、ブラックマトリクスで液晶分子の配向の乱れが生じ得る部分を覆うことが多い。
これに対して、走査アンテナにおいては、表示品位の低下という問題は生じないが、スペーサ構造体75による液晶分子の配向の乱れが生じる場所によっては、各アンテナ単位領域Uにおけるマイクロ波の位相の制御の精度が低下するおそれがある。従って、走査アンテナの動作に影響を及ぼさないためには、スペーサ構造体は、走査アンテナ1000の法線方向から見たとき、スロット57およびその周辺領域と重ならず、パッチ電極15およびその周辺領域と重ならないことが好ましい。例えば、第1誘電体基板1の法線方向から見たとき、複数のスロット57のそれぞれのエッジからの距離がds以内である領域を第1領域Rp1とし、複数のパッチ電極15のそれぞれのエッジからの距離がdp以内である領域を第2領域Rp2とする。第1領域Rp1および第2領域Rp2は、図22において点線で表示している。複数のスペーサは、第1誘電体基板1の法線方向から見たとき、第1領域Rp1および/または第2領域Rp2と重ならないことが好ましい。距離dsは例えば0.3mmであり、距離dpは例えば0.3mmである。
スペーサ構造体75を第1領域Rp1および/または第2領域Rp2と重ならないように配置することによって、走査アンテナの動作に影響を及ぼすことなく、パッチ電極15とスロット電極55との間の液晶層LCの厚さdLCを均一に保つことができる。パッチ電極15とスロット電極55との間の液晶層LCの厚さdLCを測定した結果を後に示す(図23)。パッチ電極15とスロット電極55との間の液晶層LCの厚さdLCが均一に制御されるので、各アンテナ単位領域Uにおいてマイクロ波の位相を精度良く制御することができる。パッチ電極15とスロット電極55との間の液晶層LCの厚さdLCは、例えば、設計値(例えば5μm)に対して±5%の範囲内にあるように制御されていることが好ましい。
図21に示すように、スペーサ構造体75の配置(位置および密度)は、例えば第1領域Rp1および/または第2領域Rp2と重ならない限り、任意であってよい。スペーサ構造体75が有するゲートメタル層の一部M1は、ゲート電極3、ゲートバスラインGLおよびCSバスラインCLとは別に形成されていることが好ましい。同様に、スペーサ構造体75が有するソースメタル層の一部M2は、ソース電極7S、ドレイン電極7DおよびソースバスラインSLとは別に形成されていることが好ましい。このように形成することによって、スペーサ構造体75の高さを均一に制御し易くなる。スペーサ構造体75が有するゲートメタル層の一部M1は、補助容量CSとも別に形成されていることがさらに好ましい。なお、スペーサ構造体75が有するパッチメタル層の一部M3は、パッチ電極15およびパッチ接続部15pとは別に形成されている。
非送受信領域R2においては、スペーサ構造体75を設ける場所について、避けるべき場所はないので、例えば一定の間隔でスペーサを設ければよい。
送受信領域R1におけるスペーサ構造体75の配置密度(第1誘電体基板1の法線方向から見たときの単位面積当たりのスペーサ構造体75の面積の割合)は、例えば0.05%以上0.6%以下であればよい。パッチ電極15とスロット電極55との間の液晶層LCの厚さを均一に保つ観点からは、送受信領域R1におけるスペーサ構造体75の配置密度を例えば0.35%以上とすることが好ましい。なお、配置密度の算出に当たり、スペーサ構造体75の面積は、フォトスペーサ59aの面積(第1誘電体基板1の法線方向から見たときの面積)とする。スペーサ構造体75の台座75Bは、フォトスペーサ59aの配置の容易さを考慮して大きめに作ることが好ましく、スペーサ構造体75のスペーサとしての機能はフォトスペーサ59aに依存するからである。
フォトスペーサ59aは、第1誘電体基板1の法線方向から見たとき、例えば直径が30μmの円形状である。フォトスペーサ59aの形状が円でない場合には、面積円相当直径が30μmであればよい。以下に説明するように、このような形状および大きさを有するフォトスペーサ59aによって、走査アンテナ1000の液晶層LCの厚さdLCを効果的に均一に制御することができる。
上述したように、LCDパネルにおいては、スペーサによる液晶分子の配向の乱れに起因して表示品位が低下するという問題が生じ得る。LCDパネルにおいて、基板面の法線方向から見たときのスペーサは、例えば直径が5μm〜10μmの円形状である。走査アンテナにおいては、表示品位の低下という問題は生じないので、スペーサ構造体75は、走査アンテナの動作に影響を及ぼさない限り、送受信領域R1および非送受信領域R2の任意の場所に設けることができる。例えば、基板面の法線方向から見たとき、スペーサが第1領域Rp1および/または第2領域Rp2と重ならない限り、基板面の法線方向から見たときのスペーサ構造体75の大きさは制限されない。従って、走査アンテナにおいては、LCDパネルに比べて、基板面の法線方向から見たときのスペーサ構造体75の大きさを大きくすることができる。これにより、液晶層LCの厚さをより均一に保つことができるという効果が得られる。
第1誘電体基板1の法線方向から見たとき、パッチメタル層の一部M3は、例えば直径が50μmの円形状であり、ソースメタル層の一部M2は、例えば直径が60μmの円形状であり、ゲートメタル層の一部M1は、例えば直径が70μmの円形状である。第1誘電体基板1の法線方向から見たとき、ソースメタル層の一部M2は、パッチメタル層の一部M3よりも大きいことが好ましい。第1誘電体基板1の法線方向から見たとき、ゲートメタル層の一部M1は、ソースメタル層の一部M2よりも大きいことが好ましい。
TFT基板とスロット基板との間に設けられた複数のスペーサ構造体75は、TFT基板とスロット基板との間の距離を規定する複数の第1スペーサ構造体と、複数の第1スペーサ構造体よりも低い複数の第2スペーサ構造体とを含んでいてもよい。第2スペーサ構造体の高さは、第1スペーサ構造体の高さよりも、例えば0.2μm以上0.5μm以下(例えば0.3μm)小さい。第1スペーサ構造体は、液晶層の厚さを制御するスペーサ構造体であり、上述のスペーサ構造体75は、第1スペーサ構造体である。第1スペーサ構造体に加えて、第2スペーサ構造体を設けると、LCDパネルにおいて知られているように、以下のような効果を得られる。
耐荷重特性を向上させるためにスペーサの配置密度(単位面積当たりのスペーサの数)を高くすると、低温発泡(真空気泡)が発生しやすくなるという問題がある。第1スペーサ構造体に加えて第2スペーサ構造体を設けることによって、実効的なスペーサ密度をあまり上げずに、低温発泡を抑制することができる。すなわち、通常の状態(室温付近で荷重が無い状態)の液晶層の厚さは、第1スペーサ構造体のみで制御されるので、実効的なスペーサ密度は第1スペーサ構造体のみで規定される。低温において、液晶材料が収縮すると、第1スペーサ構造体が変形し、第2スペーサ構造体が液晶層の厚さを保持するように作用する。このように、液晶層の厚さが、液晶材料の収縮に追従しやすいので、低温発泡の発生を抑制することができる。また、荷重が加わって液晶層の厚さが狭くなったときには、第1スペーサ構造体および第2スペーサ構造体の両方で液晶層の厚さが保持される(このときの実効的なスペーサ密度は第1スペーサ構造体および第2スペーサ構造体の両方で規定される)ので、高い耐荷重特性を実現できる。例えば、船舶、航空機、自動車などの移動体に搭載された走査アンテナの環境温度は変動する。また、走査アンテナの保管状態によっても環境温度は異なる。例えば、−25℃あるいは−40℃において、低温発泡が起こらないように、第2スペーサ構造体を設けることが好ましい。
第2スペーサ構造体は、例えば、フォトスペーサ59aを形成する工程で、ハーフトーン露光などの方法によって、第1スペーサ構造体75に含まれるフォトスペーサ59aよりも高さが低いフォトスペーサを形成することによって得ることができる。あるいは、第1スペーサ構造体75に含まれる台座75Bよりも低い台座を形成し、フォトスペーサの高さは同じにしてもよい。勿論、両方を併用してもよい。
複数のスペーサ構造体75が、複数の第1スペーサ構造体と、複数の第2スペーサ構造体とを含むとき、送受信領域R1における第1スペーサ構造体の配置密度は、例えば0.05%以上0.5%以下であり、送受信領域R1における第2スペーサ構造体の配置密度は、例えば0.05%以上0.5%以下である。第2スペーサ構造体の配置密度は、第1スペーサ構造体の配置密度と同じであってもよいし、第1スペーサ構造体の配置密度よりも高くてもよい。送受信領域R1における第1スペーサ構造体の配置密度を1とすると、送受信領域R1における第2スペーサ構造体の配置密度は、例えば1以上10以下である。これに対して、複数のスペーサ構造体75が、複数の第2スペーサ構造体を含まないとき、送受信領域R1における第1スペーサ構造体の配置密度は、例えば0.2%以上0.6%以下である。
パッチ電極15とスロット電極55との間の液晶層LCの厚さdLCを均一に制御するという観点からは、送受信領域R1だけでなく、非送受信領域R2にも第1スペーサ構造体75を設けることが好ましい。非送受信領域R2における第1スペーサ構造体75の配置密度は、例えば0.05%以上0.6%以下とすることができる。非送受信領域R2における第1スペーサ構造体75の配置密度を例えば0.35%以上とすることが好ましい。非送受信領域R2における第1スペーサ構造体75の配置密度は、送受信領域R1における第1スペーサ構造体75の配置密度と同じであってもよいし、異なってもよい。非送受信領域R2におけるスペーサ構造体75の位置は、特に制限されず、任意であってよい。スペーサ構造体75は、シール部73の内側に形成されていてもよいし、シール部73に覆われていてもよいし、シール部73の外側に形成されていてもよい。
非送受信領域R2においても、送受信領域R1と同様に、第1スペーサ構造体に加えて第2スペーサ構造体を設けることができる。非送受信領域R2における第2スペーサ構造体の配置密度は、例えば0.05%以上0.5%以下である。非送受信領域R2における第1スペーサ構造体の配置密度を1とすると、非送受信領域R2における第2スペーサ構造体の配置密度は、例えば1以上10以下である。非送受信領域R2において複数の第2スペーサ構造体が設けられていないときは、非送受信領域R2における第1スペーサ構造体の配置密度は、例えば0.2%以上0.6%以下である。
図23に、TFT基板105を有する走査アンテナにおいて、パッチ電極15とスロット電極55との間の液晶層LCの厚さを測定した結果を示す。図23は、走査アンテナの送受信領域R1を4つに分割した部分の内の1つについて、パッチ電極15とスロット電極55との間の液晶層LCの厚さdLCを測定した結果(単位:μm)を示す図である。用いた走査アンテナは、送受信領域R1に第1スペーサ構造体(配置密度:0.35%)を有し、第2スペーサ構造体は有しない。各数値は、互いに隣接する9個のアンテナ単位領域Uにおける測定結果を平均することによって得た。各数値は、アンテナ単位領域Uの走査アンテナ部分の送受信領域R1における位置に対応して記載している。
各アンテナ単位領域Uにおけるパッチ電極15とスロット電極55との間の液晶層LCの厚さdLCは、以下のようにして得た。TFT基板105(ゲートメタル層、ソースメタル層およびパッチメタル層のいずれとも重ならない部分)とスロット電極55との間の液晶層LCの厚さを、リタデーションを測定することによって求め、パッチ電極15の厚さ(測定値)およびスロット電極55の厚さ(測定値)を差し引くことによって得た。
図23に示す液晶層LCの厚さdLCについて得られた値の内、最小値は5.12μmであり、最大値は5.33μmであり、全ての値の平均値は5.24μmであった。結果は0.24μmの範囲内に存在しており、平均値に対する変動範囲の割合(0.24/5.24)は4.0%である。設計値(5μm)に対する変動範囲の割合(0.24/5)は4.8%である。いずれも±5%の範囲内にあるので、精度良く走査アンテナを動作させる程度に、液晶層LCの厚さdLCが均一に制御されていると言える。また、液晶層LCの厚さdLCについて得られた値について、3σは0.12μmであった。ここで、ある確率変数が正規分布に従うとき、平均値±3σの範囲に変数が含まれる確率は99.7%である。液晶層LCの厚さdLCはばらつきが小さいと言える。
スペーサ構造体75の配置は上記の例に限られない。例えば、図24に示すTFT基板105のように一定の間隔(ピッチ)で台座75Bを配置し、台座75Bを含むスペーサ構造体を形成してもよい。台座75Bのピッチは例えば100μmである。図24に示す例では、台座75Bのそれぞれは、ゲートメタル層の一部M1、ソースメタル層の一部M2およびパッチメタル層の一部M3を有する。すなわち、ゲートメタル層の一部M1、ソースメタル層の一部M2およびパッチメタル層の一部M3を一定の間隔で形成する。一定のピッチで台座75Bを配置することによって、台座75B、すなわちスペーサ構造体75の位置を決める設計を効率的に行うことができる。また、一定のピッチでスペーサ構造体75を配置することによって、液晶層LCの厚さdLCをより均一に制御することができる。
図25に示すTFT基板105のように、台座75Bをスペーサ構造体75が設けられ得る場所の全面に形成してもよい。フォトスペーサ59a(図25では不図示)は、台座75B上の所定の位置に配置する。フォトスペーサ59aは、例えば、上述したようにスロット基板205上に形成される。そうすると、TFT基板とスロット基板とを貼り合わせる際に、台座75Bとフォトスペーサ59aとのアライメントずれを考慮する必要がなくなるという利点が得られる。