JP6197761B2 - 冷間加工品の製造方法 - Google Patents
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上記熱処理歪の発生は、特に高温で処理される浸炭部品で顕著である。この熱処理歪は、熱処理中にγ粒が局所的に粗大化し、焼入れ性が不安定となるため、マルテンサイト変態時の膨張による応力不均一に起因して生じるとされている。
例えば、特許文献1および特許文献2には、鋼の熱履歴とAl、Nb、N量を調整して発現する、AlとNb窒化物のピン止め効果によって、γ粒の粗大化を抑制することが提案されている。しかし、AlやNbの窒化物は、熱間圧延や焼鈍などの熱履歴を経過する際に粗大化しやすく、かつ析出物の粗大化に伴って、浸炭処理や浸炭窒化処理の加熱時のγ粒粗大化抑制能が著しく低下するという問題があった。
その結果、冷間鍛造用素材の成分組成を好適化して、冷間鍛造前の焼鈍を省略しても、優れた寸法精度を有する冷間鍛造を実現し、さらに焼鈍を省略することにより焼鈍時の微細炭窒化物の粗大化を回避することが、浸炭加熱時のγ粒粗大化を抑止し、浸炭焼き入れ後に、従来よりも格段に優れた寸法精度の機械部品を得られることを見出した。さらに、浸炭処理後の旧γ粒の粗大化を阻止することによって、疲労強度についても有利な向上が達成されることの知見も得た。
本発明は、上記の知見に立脚するものである。
1.鋼素材に熱間圧延、次いで冷間鍛造を施した後、浸炭処理を行って冷間加工品を製造するに当たり、
前記冷間鍛造の前あるいは途中段階で行う焼鈍の回数を、下記(1)式を満足させ、
前記浸炭処理を行った後の冷間加工品における、オーステナイト粒径が50μm以下の結晶粒の面積率を80%以上、かつオーステナイト粒径が300μm超えの結晶粒の面積率を10%以下とすることを特徴とする冷間加工品の製造方法。
記
nA≦3−εc ・・・(1)
(nA<0の場合は、nA=0とする)
εc:冷間鍛造により導入される相当塑性ひずみ(複数回冷間鍛造の場合は総和)の最大値
C:0.10〜0.35%、
Si:0.01〜0.13%、
Mn:0.30〜0.80%、
P:0.03%以下、
S:0.03%以下、
Al:0.01〜 0.045%、
Cr:0.5〜3.0%、
B:0.0005〜0.0040%、
Nb:0.003〜0.080%および
N:0.0080%以下
を含み、不純物として混入するTiを0.005%以下に抑制し、残部はFe及び不可避的不純物の成分組成を有することを特徴とする前記1に記載の冷間加工品の製造方法。
Sb:0.0003〜 0.50%および
Sn:0.0003〜 0.50%
のうちから選んだ1種または2種以上を含有することを特徴とする前記2に記載の冷間加工品の製造方法。
本発明の冷間加工品の製造方法においては、浸炭処理による表面硬化が施すことが必須であるが、例えば機械構造部品として高い寸法精度と疲労強度を獲得するために、浸炭処理後の結晶粒径を微細にすることが重要である。
具体的には、浸炭処理後の冷間加工品において、オーステナイト粒径が50μm以下の結晶粒の面積率を80%以上、かつオーステナイト粒径が300μm超えの結晶粒の面積率を10%以下とする必要がある。好ましくは、オーステナイト粒径が50μm以下の結晶粒の面積率を90%以上、かつオーステナイト粒径が300μm超えの結晶粒の面積率を5%以下とする。
さて、鋼素材には、冷間鍛造処理後に浸炭処理を施して冷間加工品とするが、この浸炭処理後に疲労強度が劣化する場合が散見された。
そこで、発明者らは、この点についても検討を重ねた結果、疲労強度の劣化が生じた場合は、浸炭処理後に結晶粒が粗大化していることが判明した。さらに、この原因について調査したところ、この結晶粒の粗大化は冷間鍛造時における焼鈍の回数と強い相関があることが判明した。
すなわち、浸炭時の結晶粒の粗大化は、Al窒化物やNb炭窒化物の微細分散により抑制を可能としているが、焼鈍を複数回行うと、Al窒化物やNb炭窒化物が粗大化してしまい、結果として、浸炭時の結晶粒粗大化抑制能を失ってしまうため、焼鈍は下記(1)式を満足する回数に制限する必要がある。より好ましくは、下記(2)式を満足する回数である。
記
nA≦3−εc ・・・(1)
nA≦2.5−εc ・・・(2)
(nA≦0の場合は、nA=0とする)
まず、基本成分としては、C:0.10〜0.35%、Si:0.01〜0.13%、Mn:0.30〜0.80%、P:0.03%以下、S:0.03%以下、Al:0.01〜 0.045%、Cr:0.5〜3.0%、B:0.0005〜0.0040%、Nb:0.003〜0.080%およびN:0.0080%以下を含み、不純物として混入するTiを0.005%以下に抑制し、残部はFe及び不可避的不純物であることが好ましい。
Cは、冷間鍛造品に施す浸炭処理後の焼入れによって、鍛造品中心部において十分な硬度を得るために、0.10%以上とすることが好ましい。一方、Cの含有量が0.35%を超えると、冷間鍛造素材の硬度上昇にともない、上記した(1)式を満足する条件での冷間鍛造が困難となり、さらには浸炭焼き入れ後の中心部の靱性が劣化するため、C量は0.10〜 0.35%の範囲とするのが好ましい。なお、靭性および冷間鍛造性の面から、より好ましくは0.25%以下、さらに好ましくは0.20%以下である。
Siは、脱酸剤として有用であり、少なくとも0.01%の添加が好ましい。しかしながら、Siは浸炭表層で優先的に酸化し、粒界酸化を促すだけでなく、フェライトを固溶強化し変形抵抗を高めて冷間鍛造性を劣化させるため、上限を0.13%とするのが好ましい。より好ましくは0.02〜0.10%、さらに好ましくは0.02〜0.09%の範囲である。
Mnは、焼入性の向上に有効な元素で有り、0.30%以上の添加により効果を発揮することになる。しかし、Mnの過剰な添加は、固溶強化による変形抵抗の上昇を招いて冷間鍛造性を劣化させるため、上限を0.80%とすることが好ましい。より好ましくは0.60%以下、さらに好ましくは0.55%以下である。
Pは、結晶粒界に偏析して靭性を低下させるため、その混入は低いほど望ましいが、0.03%までは許容される。好ましくは0.025%以下である。また、下限については特に限定せずとも問題はないが、不要な低P化は精錬時間の増長や精錬コストの上昇を招くため、好ましくは0.010%以上とするのがよい。より好ましくは0.013%以上である。
Sは、硫化物系介在物として存在し、被削性の向上に有効な元素であるが、過剰な添加は冷間鍛造性の低下を招くため、上限を0.03%とするのが好ましい。また、下限については特に限定しないが、特に優れた被削性を確保するために、0.010%以上としてもよい。被削性の観点から、より好ましくは0.012%以上である。
Alは、過剰に添加すると鋼中のNをAlNとして固定して、Bの焼入性効果を発現させてしまう。浸炭処理後の部品強度を安定化させるためには、Bの焼入性効果を発現させないことが重要であり、そのためにAl量の上限は0.045%とする。一方、脱酸に有効な元素でもあるため、下限を0.01%とする。好ましくは0.01〜 0.040%、さらに好ましくは0.015〜0.035%の範囲である。
Crは、焼入性のみならず、焼戻し軟化抵抗の向上に寄与し、さらには炭化物の球状化促進にも有用な元素である。しかしながら、含有量が0.5%に満たないと、その添加効果に乏しく、一方3.0%を超えると、過剰浸炭や残留オーステナイトの生成を促進し、疲労強度に悪影響を与える。よって、Cr量は0.5〜3.0%の範囲とするのが好ましい。より好ましくは0.7〜2.5%、さらに好ましくは1.0〜1.8%の範囲である。
Bは、鋼中でNと結合することで、固溶Nを低減させる効果があり、そのため、固溶Nによる冷間鍛造時の動的ひずみ時効を低減することが可能であり、鍛造時の変形抵抗を下げることに寄与する。このためには、0.0005%以上のB添加が望ましいが、一方でB量が0.0040%を超えると、変形抵抗低減効果は飽和し、むしろ靱性の低下を招きさらに添加したBが固溶状態となると、焼き入れ性が著しく不安定化することから、B量は0.0005〜0.0040%の範囲に限定することが好ましい。より好ましくは0.0005〜 0.0030%の範囲である。
Nbは、鋼中でNbCを形成し、浸炭処理時のオーステナイト粒の粗粒化をピン止めにより抑制する効果がある。この効果を得るためには、少なくとも0.003%の添加が必要であるが、0.080%を超えて添加すると、粗大なNbCの析出による粗粒化抑制能の低下や疲労強度の劣化を招くおそれがある。このためNb量は0.003〜0.080%の範囲にすることが好ましい。より好ましくは0.010〜0.060%、さらに好ましくは0.015〜0.045%の範囲である。
Nは、鋼中に固溶し、冷間鍛造時に動的ひずみ時効を生じ、変形抵抗を増大させてしまうため、混入を極力回避することが好ましい成分である。そのため、N量は0.0080%以下とすることが好ましい。より好ましくは0.0070%以下、さらに好ましくは0.0065%以下である。
Tiは、鋼中への混入を極力回避することが好ましい成分である。すなわち、Tiは、Nと結合して粗大なTiNを形成しやすく、またNbとの同時添加は粗大析出物をより生じやすくし、疲労強度の低下を招くことから、その混入は極力低減することが好ましいが、0.005%以下であれば許容される。好ましくは0.003%以下である。
Sb:0.0003〜0.50%
Sbは、鋼材表面の脱炭を抑制し、表面硬度の低下を防止するために有効な元素である。ただし、過乗な添加は冷間鍛造性を劣化させることから、Sbは0.0003〜0.50%の範囲で添加することが好ましい。より好ましくは0.0010〜 0.050%、さらに好ましくは0.0015〜0.035%の範囲である。
Snは、鋼材表面の耐食性を向上させる上で有効な元素である。ただし、過剰な添加は冷間鍛造性を劣化させることから、Snは0.0003〜0.50%の範囲で含有させることが好ましい。より好ましくは0.0010〜0.050%、さらに好ましくは0.0015〜0.035%の範囲である。
その際、図2の形状への冷間鍛造工程における最大の荷重を測定した。また、冷間前方押し出し成形と冷間密閉鍛造とにより導入される相当塑性ひずみεcは、素材の断面積A0(=(素材径/2)2×π)と冷間密閉鍛造後の断面積A(=(8.5/2)2×π)とから、以下の(3)式により算出した。
εc=−ln(A/A0)…(3)
これに対して、焼鈍回数が規定回数を超えるNo.7および9は、浸炭焼入れ時に結晶粒の粗大化が発生し、最終形状の寸法精度および疲労強度が劣化する結果となった。
Claims (2)
- 質量%で、
C:0.10〜0.35%、
Si:0.01〜0.13%、
Mn:0.30〜0.80%、
P:0.03%以下、
S:0.03%以下、
Al:0.01〜0.045%、
Cr:0.5〜3.0%、
B:0.0005〜0.0040%、
Nb:0.003〜0.080%および
N:0.0080%以下
を含み、不純物として混入するTiを0.005%以下に抑制し、残部はFe及び不可避的不純物の成分組成からなる、鋼素材に熱間圧延、次いで冷間鍛造を施した後、浸炭処理を行って冷間加工品を製造するに当たり、
前記冷間鍛造による導入される相当塑性ひずみεcを1.0以上2.2以下とし、
前記冷間鍛造の前あるいは途中段階で行う焼鈍の回数を、下記(1)式を満足させ、
前記浸炭処理は、浸炭温度を950℃以上960℃以下とし、
前記浸炭処理を行った後の冷間加工品における、オーステナイト粒径が50μm以下の結晶粒の面積率を80%以上、かつオーステナイト粒径が300μm超えの結晶粒の面積率を10%以下とすることを特徴とする冷間加工品の製造方法。
記
nA≦3−εc・・・(1)
(nA<0の場合は、nA=0とする)
εc:冷間鍛造により導入される相当塑性ひずみ(複数回冷間鍛造の場合は総和)の最大値 - 前記鋼素材はさらに、質量%で、
Sb:0.0003〜 0.50%および
Sn:0.0003〜 0.50%
のうちから選んだ1種または2種を含有することを特徴とする請求項1に記載の冷間加工品の製造方法。
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