第1の従来技術では、コア不飽和領域を使用しているが、磁界に対するコアの磁束特性(以下、適宜「コアのB−H特性」と表現する)は、コアの温度に応じて変化する。第1の従来技術においては、このB−H特性をコアの温度に応じて補正する術を有さぬため、算出される電流値がコアの温度に応じて変化する。即ち、電流の測定精度が不十分である。
一方、第2の従来技術では、コア飽和領域を使用するため、このようなコアの温度による測定精度のばらつきは生じ難いが、一方の飽和領域から他方の飽和領域へセンシング電流を流すだけであるため、B−H特性が有するヒステリシスによって、算出される電流値が誤差を有することとなる。即ち、電流の測定精度が不十分である。
このように、第1及び第2の従来技術を含む、磁気式電流センサにおけるこれまでの電流測定方法には、電流の測定精度が不十分である旨の技術的問題点がある。
本発明は、係る技術的問題点に鑑みてなされたものであり、磁気式電流センサにおける、コアの温度及びコアのヒステリシスに影響されない高精度な電流測定方法を提供することを課題とする。
上述した課題を解決するため、本発明に係る電流測定方法は、対象電流に応じて磁束密度が変化するコアと、センシング電流に応じて前記コアの磁束密度を変化させることが可能な導電手段と、前記センシング電流の方向を制御可能な調整手段とを備えた磁気式電流センサにおいて前記対象電流を測定するための電流測定方法であって、前記コアが前記対象電流により正磁化方向に磁気飽和した状態において前記センシング電流が負磁化方向に掃引される第1制御工程と、前記第1制御工程における前記コアの前記負磁化方向への磁気飽和が検出される第1検出工程と、前記コアの前記負磁化方向への磁気飽和が検出された場合に前記センシング電流が前記正磁化方向に掃引される第2制御工程と、前記第2制御工程における前記コアの前記正磁化方向への磁気飽和が検出される第2検出工程と、前記第2検出工程において前記コアの正磁化方向への磁気飽和が検出された時点から前記第1検出工程において前記コアの前記負磁化方向への磁気飽和が検出された時点までの時間である第1飽和時間に基づいて、前記第1制御工程において前記コアが消磁される前記センシング電流の値である第1電流値が特定される第1特定工程と、前記第1検出工程において前記コアの負磁化方向への磁気飽和が検出された時点から前記第2検出工程において前記コアの前記正磁化方向への磁気飽和が検出された時点までの時間である第2飽和時間に基づいて、前記第2制御工程において前記コアが消磁される前記センシング電流の値である第2電流値が特定される第2特定工程と、前記特定された第1及び第2電流値から前記対象電流の値が算出される算出工程とを具備し、前記第1制御工程及び前記第2制御工程が繰り返し実行されることを特徴とする(請求項1)。
本発明に係る電流測定方法の適用対象となる磁気式電流センサは、対象電流に応じて磁束密度Bの変化を生じるコアと、センシング電流に応じて当該磁束密度を変化させることが可能な、即ち、当該コアを励磁及び消磁可能な(即ち、コアの両磁化方向に磁束密度の変化を促すことが可能な)導電手段と、当該導電手段におけるセンシング電流の方向及び大きさを制御可能な調整手段とを備える。
コアは少なくとも磁性を有する材料で構成されるが、その磁性に係る具体的物性値及び形状は、現実的見地からコアとして適当であるか否かの判断を別とすれば、本発明に係る電流測定方法に大きく影響しない。但し、後述するように、第1制御工程の開始時点において、コアは対象電流により正磁化方向に磁気飽和している必要があり、コアの形状及び磁性に係る物性値は、対象電流が現実的に採り得る範囲においてコアが正磁化方向に磁気飽和するように決定されるのが望ましい。尚、「正磁化方向」とは、コアの磁化方向を区別するために便宜的に用いられる呼称であって、コアの一磁化方向を意味する。また、「負磁化方向」とは、この「正磁化方向」と真逆な磁化方向を意味する。従って、本発明において、「正磁化方向」と「負磁化方向」とを入れ替えても、その作用は何ら変わることがない。
導電手段は、センシング電流に応じてコアの磁化方向及び磁束密度を変化させ得る手段であって、好適には、コアに所定回数巻回された導電性のコイルである。コアがトロイダルコアである場合、導電手段は、コアの空芯部分を通過するように巻回されていてもよい。尚、コアの巻回数は、センシング電流により生じさせるべき磁束密度の規模に応じて設計的に適合されるのが望ましい。
調整手段によるセンシング電流の制御とは、少なくともセンシング電流の方向の制御を意味する。調整手段は、例えば、各種トランジスタの駆動状態の切り替えによりセンシング電流の方向を制御する各種のスイッチング回路と、導電手段に駆動電圧を印加する電源装置とを好適に含み得る。調整手段によるセンシング電流の制御は、例えば、上位のプロセッサ等による電気的制御により、センシング電流の値と、基準時刻からの経過時間とを相互に対応付けつつ実行される。
この種の磁気式電流センサにおいては、対象電流によりコアに磁束が生じている状態で、消磁方向にセンシング電流を掃引することによって、ある時点においてコアが消磁される。この消磁に要したセンシング電流の値(端的な一例としては、コアが消時されたと判定される時点におけるセンシング電流の値)に基づいて、例えば、当該電流値に磁気式電流センサの仕様値(例えば、コアの内径やコイルの巻回数等)を加味すること等によって、対象電流の値を算出することが出来る。尚、この場合の「消磁」とは厳密には磁束がゼロであることを意味するが、センシング電流が掃引される過程におけるコアの磁束密度をリアルタイムに且つ正確に検出することは一般に容易でない。従って、実践的には、合理的な理由に従って判定を伴う、磁束密度がゼロ相当値まで減磁されていることを包含する。
本発明に係る電流測定方法によれば、対象電流によりコアが正磁化方向に磁気飽和した状態において、第1制御工程が実行される。具体的には、コアが対象電流によって正磁化方向に磁気飽和した状態において、第1制御工程によりセンシング電流が負磁化方向に掃引(スイープ)される。尚、「センシング電流が負磁化方向に掃引される」とは、正磁化方向に磁気飽和したコアが減磁される方向(負磁化方向へ励磁される方向)へセンシング電流の方向が制御されることを意味し、コアを負磁化方向に磁気飽和させることを意味する。但し、磁束密度の非飽和領域において、この掃引の過程における磁束密度の変化はセンシング電流の変化を打ち消す向きに生じるから、センシング電流の値(センシング電流値)の時間推移は非線形であってよい。
第1制御工程によりセンシング電流が掃引される過程において、コアが負磁化方向に磁気飽和したか否かは、第1検出工程により当該負磁化方向への磁気飽和が検出されたか否かによって判定される。尚、磁束密度が飽和するとセンシング電流の抑制効果が小さくなるため、磁束密度の非飽和領域と飽和領域とではセンシング電流の振る舞いが自然と大きく異なる。従って、コアが負磁化方向に磁気飽和したタイミングは、センシング電流の時間推移が監視されることにより比較的簡便に検出され得る。この際、センシング電流値やその変化率等に然るべき閾値が設けられ、これらの大きさがこの閾値以上である場合に磁気飽和が検出されてもよい。
第1制御工程によりコアが負磁化方向に磁気飽和すると(理想的には、負磁化方向への磁気飽和が検出されたことをトリガとして)、第2制御工程が開始される。第2制御工程では、調整手段の制御を介してセンシング電流の方向が逆転され、センシング電流が正磁化方向に掃引される。尚、「センシング電流が正磁化方向に掃引される」とは、負磁化方向に磁気飽和したコアが減磁される方向(正磁化方向へ励磁される方向)へセンシング電流の方向が制御されることを意味し、コアを正磁化方向に磁気飽和させることを意味する。但し、磁束密度の非飽和領域において、この掃引の過程における磁束密度の変化はセンシング電流の変化を打ち消す向きに生じるから、センシング電流の値(センシング電流値)の時間推移は非線形であってよい。
第2制御工程によりセンシング電流が掃引される過程において、コアが正磁化方向に磁気飽和したか否かは、第2検出工程により当該正磁化方向への磁気飽和が検出されたか否かによって判定される。尚、磁束密度が飽和するとセンシング電流の抑制効果が小さくなるため、磁束密度の非飽和領域と飽和領域とではセンシング電流の振る舞いが自然と大きく異なる。従って、コアが正磁化方向に磁気飽和したタイミングは、センシング電流の時間推移が監視されることにより比較的簡便に検出され得る。この際、センシング電流値やその変化率等に然るべき閾値が設けられ、これらの大きさがこの閾値以上である場合に磁気飽和が検出されてもよい。
本発明に係る電流測定方法によれば、この第1制御工程及び第2制御工程を含む掃引サイクルが繰り返し実行される。一掃引サイクルが終了すると、ヒステリシスを含む、コアの閉じたB−H特性に沿ったセンシング電流の時間推移が把握される。尚、センシング電流の掃引速度は、異なる掃引サイクル間において理想的には等しく維持される。このようにセンシング電流の掃引プロファイルを共有することによって、過去の掃引サイクルにおいて得られた時間値を最新の掃引サイクルにそのまま適用することが出来る。
一方、本発明に係る電流測定方法によれば、この掃引サイクルと並行して、第1特定工程、第2特定工程及び算出工程が実行され、対象電流の値(以下、適宜「対象電流値」とする)が算出される。
算出工程における対象電流値の算出は、上述したように、コアが消磁された時点におけるセンシング電流に基づいてなされるが、本発明によれば、一の掃引サイクルにおいてコアが消磁される時点が二度訪れる。即ち、第1制御工程において正磁化方向から負磁化方向へ磁束密度が変化する際にコアが消磁される時点と、第2制御工程において負磁化方向から正磁化方向へ磁束密度が変化する際にコアが消磁される時点である。
ここで、双方の時点におけるセンシング電流の値は、コアが有するヒステリシスの影響により一般的には一致しないため、一方の時点におけるセンシング電流値のみを使用すると、対象電流値の算出精度がヒステリシスの影響を受けるが、本発明では、両時点におけるセンシング電流値が対象電流値の算出に利用される。具体的には、第1特定工程において、第1電流値として第1制御工程における消磁時点のセンシング電流値が特定され、第2特定工程において、第2電流値として第2制御工程における消磁時点のセンシング電流値が特定される。算出工程では、これら特定された第1及び第2電流値から対象電流値が算出される。
このため、本発明に係る電流測定方法によれば、コアのヒステリシスの影響を排除することが出来る。また、正磁化方向に磁気飽和した状態と、負磁化方向に磁気飽和した状態との間でセンシング電流が掃引されるため、主として非飽和領域においてコアが有する温度依存性の影響も排除することが出来る。従って、本発明に係る電流測定方法によれば、対象電流値を高精度に測定することが出来る。
ところで、上述したように、一方の磁化方向に磁気飽和した状態から他方の磁化方向に磁気飽和した状態までコアの磁束密度を変化させる過程において、コアが消磁されたタイミングをリアルタイムに且つ正確に把握することは一般的に容易でない。掃引過程におけるセンシング電流値を時間概念と対応付けて把握するにせよ、コアの消磁タイミングが明確な基準の下に判定されなければ、掃引サイクル間で対象電流値の算出精度が安定しない。
本発明では、第1特定工程において第1飽和時間が、また第2特定工程において第2飽和時間が参照され、各飽和時間に基づいて第1及び第2電流値が夫々精度良く特定されることによって、このような問題が解消されている。第1飽和時間は、第2検出工程において正磁化方向への磁気飽和が検出された時点から、第1検出工程において負磁化方向への磁気飽和が検出された時点までの時間値として定義される。第2飽和時間は、第1検出工程において負磁化方向への磁気飽和が検出された時点から、第2検出工程において正磁化方向への磁気飽和が検出された時点までの時間値として定義される。
第1及び第2飽和時間を、夫々第1及び第2電流値の特定に如何に利用するかは多義的であり、様々な実践的態様を採り得る。但し、一方で、第1及び第2制御工程におけるコアの消磁時点が、夫々第1及び第2飽和時間により規定される時間範囲に含まれ、他方で、コアのB−H特性が原点に対し対称性を有する点に鑑みれば、第1及び第2飽和時間の夫々半値に相当する時点或いはそこから派生的に導き得る時点の近傍にコアの消磁時点が存在すると考えることは極めて妥当である。即ち、第1及び第2飽和時間を拠り所として第1及び第2電流値は高精度に特定され得る。
このように、本発明に係る電流測定方法によれば、正磁化方向から負磁化方向へ、また負磁化方向から正磁化方向へセンシング電流を掃引させる各掃引プロセスにおいて、コアの磁気飽和が検出され、この磁気飽和の検出により導かれる各飽和時間に基づいて、コアが消磁された時点を推定し、コアの消磁に要するセンシング電流値(第1及び第2電流値)を特定することが出来る。従って、対象電流値をコアの温度依存性及びB−H特性のヒステリシスに影響されることなく正確に、且つ異なる掃引サイクル間における精度のばらつきを抑制しつつ測定することが出来るのである。
尚、本発明に係る電流測定方法は、例えばECU(Electronic Control Unit)等、各種プロセッサ、制御装置或いはコンピュータ装置等が、予め設定された条件において、予め設定された制御プログラムや制御アルゴリズムに従って人為的プロセスを含むこと無く実行するものである。
本発明に係る電流測定方法の一の態様では、前記導電手段は、前記コアに巻回された導電性コイルである(請求項2)。
この態様によれば、導電性コイルを一種のトランスとして機能させることが出来るため、コアを励磁及び減磁するにあたって必要となるセンシング電流を、導電性コイルの巻回数に応じて最適化することが出来る。従って、磁気式センサにおける調整手段の構成に高い自由度を付与することが可能となる。
本発明に係る電流測定方法の他の態様では、前記第1検出工程において、前記センシング電流の値が前記負磁化方向に対応する最大値以上となった場合に前記コアの前記負磁化方向への磁気飽和が検出され、前記第2検出工程において、前記センシング電流の値が前記正磁化方向に対応する最大値以上となった場合に前記コアの前記正磁化方向への磁気飽和が検出される(請求項3)。
この態様によれば、センシング電流が、各磁化方向について予め実験的に、経験的に又は理論的に定められる最大値以上となる場合にコアの磁気飽和が検出される。従って、磁気飽和を比較的に安定して検出することが出来る。
本発明に係る電流測定方法の他の態様では、前記第1特定工程において、過去における前記第1飽和時間の半値に相当する時点における前記センシング電流の値が前記第1電流値とされ、前記第2特定工程において、過去における前記第2飽和時間の半値に相当する時点における前記センシング電流の値が前記第2電流値とされる(請求項4)。
この態様によれば、過去の掃引サイクルにおいて確定したタイミングに基づいて、最新の掃引サイクルにおける第1電流値及び第2電流値を代替的に特定することが出来る。従って、厳密には最新の掃引サイクルにおける第1及び第2電流値が特定されないものの、第1及び第2電流値の特定を比較的円滑に実行することが出来る。この際、掃引サイクルの時間周期を、対象電流値の変化速度に対して十分に短くすれば、直近の過去の掃引サイクルと最新の掃引サイクルとの間に第1及び第2飽和時間の有意な差が生じることは少なく、実践上問題はない。特に、前回の掃引サイクルの値が使用される場合にはその効果が顕著である。
一方、この態様によれば、第1飽和時間の半値に相当する時点におけるセンシング電流値が第1電流値として特定され、第2飽和時間の半値に相当する時点におけるセンシング電流値が第2電流値として特定される。これらの電流値は、必ずしも厳密にコアが消磁された時点の電流値を意味しないが、少なくとも実践上問題が無い程度にはコア消磁時点の電流値に近い。従って、特定の容易性と値の信頼性とを総合的に勘案すれば、実践上極めて有益な参照値となり得る。
尚、このように過去の値が利用される構成においては、第1及び第2飽和時間の値を、夫々過去所定サイクル分について保持する工程が設けられてもよい。このような保持工程を設ければ、過去の第1及び第2飽和時間の値を、第1及び第2電流値の特定に夫々簡便に利用することが出来る。また、複数のサンプル値が保持される構成とすれば、保持されるサンプル値の中に異常値が含まれるか否かの判定も可能であり、異常値に基づいて対象電流が誤って算出される可能性を低減することも出来る。
本発明に係る電流測定方法の他の態様では、前記対象電流は、車両搭載用のインバータに流れる電流である(請求項5)。
例えば、ハイブリッド車両や電気自動車等、車両の動力源として三相交流モータ等の大電力デバイスを有する車両においては、インバータを含む電力制御ユニットを介して当該大電力デバイスに対する電力供給がなされることが多い。このような用途においてはインバータの駆動電流を正確に把握する必要が生じ得るが、消費電流が大きく動作時に相応の発熱を伴い得る点と、設置スペースが限られる点とから、温度依存性が低く且つヒステリシスの影響の少ない高精度な電流検出を省スペースで実現する必要がある。このような観点からすれば、本発明に係る電流測定方法は、この種の車両搭載用インバータにおける駆動電流の測定に顕著に効果的である。
本発明のこのような作用及び他の利得は次に説明する実施形態から明らかにされる。
<発明の実施形態>
以下、図面を参照して、本発明の好適な実施形態について説明する。
<実施形態の構成>
始めに、図1を参照し、本発明の第1実施形態に係るハイブリッド車両10の構成について説明する。ここに、図1は、ハイブリッド車両10の構成を概念的に表してなる概略構成図である。
図1において、ハイブリッド車両10は、ECU(Electronic Control Unit:電子制御装置)100、PCU(Power Control Unit)11、バッテリ12、ハイブリッド駆動装置200及び電流センサ300を備えた車両である。
ECU100は、CPU、ROM及びRAM等を備え、ハイブリッド車両10の各部の動作を制御可能に構成された電子制御ユニットであり、ROMに格納された制御プログラムに従って後述するインバータ電流算出制御処理を実行することにより、本発明に係る「第1制御工程」、「第1検出工程」、「第2制御工程」、「第2検出工程」、「第1特定工程」、「第2特定工程」及び「算出工程」の各工程を実現する実行主体として機能する。
PCU11は、バッテリ12から取り出した直流電力を交流電力に変換して、ハイブリッド車両10の一動力源であるモータジェネレータMG1及びモータジェネレータMG2に供給すると共に、モータジェネレータMG1及びモータジェネレータMG2によって発電された交流電力を直流電力に変換してバッテリ12に供給可能に構成された不図示のインバータを含み、バッテリ12と各モータジェネレータとの間の電力の入出力を、或いは各モータジェネレータ相互間の電力の入出力(即ち、この場合、バッテリ12を介さずに各モータジェネレータ相互間で電力の授受が行われる)を制御可能に構成された制御ユニットである。PCU11は、ECU100と電気的に接続されており、ECU100によってその動作が制御される構成となっている。
バッテリ12は、モータジェネレータMG1及びモータジェネレータMG2を力行するための電力に係る電力供給源として機能する充電可能な蓄電手段である。
ハイブリッド駆動装置200は、エンジン並びにモータジェネレータMG1及びMG2を含む動力源と、これら動力源と車軸との間の動力伝達を機械的に制御する遊星歯車機構とを含む、ハイブリッド車両10のパワートレインである。尚、ハイブリッド駆動装置200の構成は、本発明に係る電流測定方法との関係性が低いため、ここでは、その詳細な説明を省略することとする。
電流センサ300は、本発明に係る「磁気式電流センサ」の一例であり、PCU11に配されたインバータの駆動電流であるインバータ電流Ip(本発明に係る「対象電流」の一例である)を検出するためのセンサである。ここで、図2を参照して、電流センサ300の構成について説明する。ここに、図2は、電流センサ300の構成を概念的に表してなる概略構成図である。
図2において、電流センサ300は、コア310、コイル320、スイッチング回路330、端子340、電源350及び負荷抵抗RLを備える。尚、本実施形態では、ECU100が電流センサ300を制御してインバータ電流Ipを測定する構成としたが、電流センサ300がプロセッサを備え、当該プロセッサにより後述するインバータ電流算出制御処理に相当する処理を実行する構成としてもよい。
コア310は、磁性材料(フェライト)で構成されたトロイダル型の磁性体である。コア310は、空芯部にPCU11のインバータの電流配線(便宜上、巻回数ns=1とする)を貫通させた構成を有しており、インバータ電流Ipにより生じる磁界Hの作用により、その周方向に磁束密度Bで磁束を生じる構成となっている。
コイル320は、金属等の導電材料で構成された配線部材を巻回数nsで巻回してなる、本発明に係る「導電性コイル」の一例である。ここで、図3を参照し、コア310及びコイル320について詳述する。ここに、図3は、コア310及びコイル320の構成を概念的に表してなる概略構成図である。尚、同図において、図2と重複する箇所には同一の符号を付してその説明を適宜省略することとする。
図3において、コア320は、コイル310に対し図示のように巻回されている。コア320には、後述する駆動電圧Vc及びゲート電圧Vgに応じてセンシング電流Isが流れる構成となっており、センシング電流Isが流れると、コア310には、センシング電流Isの方向及び大きさに応じて、インバータ電流Ipによる磁化方向と同方向(本発明に係る「正磁化方向」の一例である)又はインバータ電流Ipによる磁化方向と逆方向(本発明に係る「負磁化方向」の一例である)に磁束が生じ、その磁束密度Bが変化する構成となっている。尚、コア310の内周長はlcである。
図2に戻り、スイッチング回路330は、Nチャネル型MOSFETであるトランジスタTL1及びTL4と、Pチャネル型MOSFETであるトランジスタTL2及びTL3と、電気配線とから構成された公知のHブリッジ型スイッチング回路である。各トランジスタのゲート端子には、図示せぬ電源系統からゲート電圧Vgが印加される構成となっており、この電源系統は、ECU100と電気的に接続されている。
スイッチング回路330は、端子340と負荷抵抗RLとの間に図示のように接続されており、電源350から駆動電圧Vcが印加された状態で、ECU100が電源系統を介して所定のゲート電圧Vgを印加することにより、コイル320に対し、スイッチング回路330のスイッチング状態に応じて定まる方向へ、コア310の状態に応じたセンシング電流Isを流すことが出来る。
尚、本実施形態では、ゲート電圧がオンオフ制御されるが、スイッチング回路330の構成としては、ゲート電圧をリニアに制御可能な構成であってもよい。
電源350は、電流センサ300に対し駆動電圧Vcを供給可能な電源装置である。電源350は、ECU100と電気的に接続されており、駆動電圧Vcの極性及び大きさは、ECU100により制御される構成となっている。
ここで、図4を参照し、スイッチング回路330のスイッチング状態について説明する。ここに、図4は、スイッチング回路330のスイッチング状態とセンシング電流Isの方向との関係を説明する模式的回路図である。尚、同図において、図2と重複する箇所には同一の符号を付してその説明を適宜省略することとする。
図4において、図4(a)に第1スイッチング状態が、図4(b)に第2スイッチング状態が、図4(c)に第3スイッチング状態が夫々表される。
端子340を介して正の駆動電圧Vcが印加された状態において、ECU100がゲート電圧Vgとして閾値以上の絶対値を有する正電圧を各トランジスタに印加すると、Nチャネル型MOSFETであるトランジスタTL1及びTL4がアクティブとなり、Pチャネル型MOSFETであるトランジスタTL2及びTL3が非アクティブとなり、第1スイッチング状態が実現される。第1スイッチング状態では、トランジスタTL1→コイル320→トランジスタTL4を経由してセンシング電流Isが流れる。尚、第1スイッチング状態におけるセンシング電流Isの方向は、コア310を負磁化方向に励磁する向きである。
端子340を介して負の駆動電圧Vcが印加された状態において、ECU100がゲート電圧Vgとして閾値以上の絶対値を有する負電圧を各トランジスタに印加すると、Pチャネル型MOSFETであるトランジスタTL2及びTL3がアクティブとなり、Nチャネル型MOSFETであるトランジスタTL1及びTL4が非アクティブとなり、第2スイッチング状態が実現される。第2スイッチング状態では、トランジスタTL2→コイル320→トランジスタTL3を経由してセンシング電流Isが流れる。即ち、第1スイッチング状態から第2スイッチング状態へスイッチング状態が切り替えられると、センシング電流Isの方向が反転する。尚、第2スイッチング状態におけるセンシング電流Isの方向は、コア310を正磁化方向に励磁する向きである。
端子340を介して正の駆動電圧Vcが印加された状態において、ECU100がゲート電圧Vgとして閾値以上の絶対値を有する負電圧を各トランジスタに印加すると、Pチャネル型MOSFETであるトランジスタTL2及びTL3がアクティブとなり、Nチャネル型MOSFETであるトランジスタTL1及びTL4が非アクティブとなり、第3スイッチング状態が実現される。第3スイッチング状態では、トランジスタTL3→コイル320→トランジスタTL2を経由してセンシング電流Isが流れる。即ち、第2スイッチング状態から第3スイッチング状態へスイッチング状態が切り替えられると、センシング電流Isの方向が反転する。尚、第3スイッチング状態におけるセンシング電流Isの方向は、コア310を負磁化方向に励磁する向きである。
<実施形態の動作>
以下、本実施形態の動作について説明する。
始めに、図5を参照し、電流センサ300におけるコア310のB−H特性について説明する。ここに、図5は、コア310のB−H特性を例示する図である。
図5において、縦軸に磁束密度Bを、横軸に磁界の強さHを表すと、コア310のB−H特性は実線のようになる。
ここで、当該B−H特性上に配された矢線マーク(白抜マーク及び黒抜マーク)は、センシング電流Isの掃引方向を意味しており、黒抜マークによって規定される掃引方向は、スイッチング回路330における上述した第1及び第3スイッチング状態に対応する。また、白抜マークによって規定される掃引方向は、同じく第2スイッチング状態に対応している。図示するように、コア310のB−H特性にはヒステリシスがある。本実施形態では、このヒステリシスの影響を排除した高精度な電流測定が可能となっている。
次に、図6を参照し、電流センサ330におけるインバータ電流Ipの測定方法について説明する。ここに、図6は、インバータ電流Ipの算出原理を説明する図である。尚、同図において、図5と重複する箇所には同一の符号を付してその説明を適宜省略することとする。
図6において、測定対象であるインバータの、ある時点の動作状態(即ち、インバータ電流Ip)に対し、センシング電流Is=0とした場合に、コア310の状態が図示状態点P(白丸)に相当する状態(以下、便宜上、適宜「状態P」とし、他の状態点についても同様とする)であるとする。状態Pにおいてコア310にはインバータ電流Ipに応じて磁界Hpが生じている。
ここで、スイッチング回路330のスイッチング状態を、上述した第1スイッチング状態とし、センシング電流Isをコア310の負磁化方向に掃引させると、コア310の状態は、上述した黒抜マークによって示される向きに、コア310のB-Hカーブに従って変化する。即ち、コア310の状態は、図示状態Pから状態P1、状態P2、状態P3を経由して状態P4まで変化する。
状態Pから状態P1に至る領域は、コア310が正磁化方向に磁気飽和している正飽和領域であり、状態P3から状態P4に至る領域は、コア310が負磁化方向に磁気飽和している負飽和領域である。また、状態P1から状態P3に至る領域は、コア310が磁気飽和していない非飽和領域であり、この非飽和領域においては、磁束密度Bは磁界Hに対してリニアに変化する。また、この非飽和領域においては、センシング電流Isの変化を打ち消す向きに磁束密度Bが変化するため、掃引されるセンシング電流Isは殆ど変化しない。
一方、スイッチング回路330のスイッチング状態を、上述した第2スイッチング状態とし、センシング電流Isをコア310の正磁化方向に掃引させると、コア310の状態は、上述した白抜マークによって示される向きに、コア310のB-Hカーブに従って変化する。即ち、コア310の状態は、図示状態P4から状態P3、状態P5、状態P6、状態P7を経由して状態P8まで変化する。
状態P4から状態P5に至る領域は、コア310が負磁化方向に磁気飽和している負飽和領域であり、状態P7から状態P8に至る領域は、コア310が正磁化方向に磁気飽和している正飽和領域である。また、状態P5から状態P7に至る領域は、コア310が磁気飽和していない非飽和領域であり、この非飽和領域においては、磁束密度Bは磁界Hに対してリニアに変化する。また、この非飽和領域においては、センシング電流Isの変化を打ち消す向きに磁束密度Bが変化するため、掃引されるセンシング電流Isは殆ど変化しない。
ここで、このようにセンシング電流Isが掃引される過程においては、コア310が二度消磁状態となる。即ち、負磁化方向へのセンシング電流Isの掃引時に通過する図示状態P2と、正磁化方向へのセンシング電流Isの掃引時に通過する図示状態P6である。
状態P2及び状態P6では、元々インバータ電流Ipにより生じていた磁束がセンシング電流Isにより消磁されており、センシング電流Isをインバータ電流Ipに置き換えて考えることが出来る。具体的には、インバータ電流Ipにより生じた磁界の強さHpと状態P2における磁界の強さとの偏差を第1磁界偏差値ΔH1とし、インバータ電流Ipにより生じた磁界の強さHpと状態P6における磁界の強さとの偏差を第2磁界偏差値ΔH2とすると、Hp、ΔH1及びΔH2の間には、下記(1)式の関係が成立する。
Hp=(ΔH1+ΔH2)/2・・・(1)
一方、Hp、ΔH1及びΔH2は、夫々下記(2)、(3)及び(4)式により表される。尚、(3)式におけるIs1は、状態P2におけるセンシング電流値であり、本発明に係る「第1電流値」の一例である。また、(4)式におけるIs2は、状態P6におけるセンシング電流値であり、本発明に係る「第2電流値」の一例である。これ以降、Is1及びIs2の各々を適宜、「第1電流値Is1」及び「第2電流値Is2」と表記する。
Hp=Ip・nc/lc・・・(2)
ΔH1=Is1・ns/lc・・・(3)
ΔH2=Is2・ns/lc・・・(4)
他方、上記(1)式に上記(2)、(3)及び(4)式を代入すると、下記(5)式が得られる。
Ip=(ns/np)・(Is1+Is2)/2・・・(5)
尚、本実施形態においてnpは1であるとしたので、結局、インバータ電流Ipは、コイル320の巻回数nsと、第1電流値Is1及び第2電流値Is2とが判明すれば求められる。本実施形態では、ECU100が、インバータ電流算出制御処理において、係る原理によってインバータ電流Ipを算出する構成となっている。尚、上記(5)式に従った演算処理は、本発明に係る「算出工程」の一例である。
この手法によれば、コア310のB−H特性が、正磁化方向及び負磁化方向の双方について利用されることから、ヒステリシスの影響を排除することが出来る。また、一方の磁化方向に磁気飽和した状態から他方の磁化方向に磁気飽和した状態までセンシング電流Isが掃引されることから、コア310の温度特性の影響も排除することが出来る。
一方、上記(5)式に示すように、インバータ電流Ipを算出するには、第1電流値Is1と第2電流値Is2とが必要となる。しかしながら、コア310の磁束密度を検出することは容易でなく、ましてコア310が消磁されるタイミングを直接検出することは困難である。そこで、本実施形態では、以下のようにして第1電流値Is1及び第2電流値Is2が特定される。
ここで、図7を参照し、インバータ電流算出制御処理におけるセンシング電流Isの時間推移について説明する。ここに、図7は、インバータ電流算出制御処理の概念図である。尚、同図において、図6と重複する箇所には同一の符号を付してその説明を適宜省略することとする。
図7において、縦軸にセンシング電流Isが、横軸に時刻Tが表される。今、時刻T0において、インバータ電流算出制御処理が開始されたとする。尚、時刻T0において、コア310は状態Pとなっている。即ち、コア310の材質及び形状は、インバータ電流Ipの採り得る範囲においてコア310が正磁化方向に磁気飽和するように予め設計されている。
ECU100は、時刻T0において、スイッチング回路330のスイッチング状態を第1スイッチング状態とする。第1スイッチング状態を採るスイッチング回路330により、負磁化方向へセンシング電流Isの掃引が開始されると、時刻T1において、コア310の磁化状態が正磁化方向における磁気飽和状態から非飽和状態へと遷移する(上述した状態P1である)。非飽和状態においては、磁束密度Bがセンシング電流Isの変化を抑制する方向へ変化するため、センシング電流Isは殆ど変化しなくなる。
一方、時刻T2において、コア310は磁束密度Bがゼロとなる前述した状態P2となり、更なるセンシング電流Isの掃引により、コア310は負磁化方向へ励磁される。この励磁により、コア310は時刻T3において負磁化方向に磁気飽和する(上述した状態P3である)。負磁化方向に磁気飽和した時点から、センシング電流Isは急激に上昇し始める。
時刻T4において、時刻T3から急激に上昇し始めたセンシング電流Isが予め負磁化方向について設定された最大値Ismax1に達すると、コア310が負磁化方向に磁気飽和した旨が検出される。即ち、時刻T4において、本発明に係る「第1検出工程」の一例が実行される。時刻T0から時刻T4までのセンシング電流Isの掃引制御は、本発明に係る「第1制御工程」の一例である。
時刻T4において負磁化方向への磁気飽和が検出されると、ECU100によりスイッチング回路330のスイッチング状態が第1スイッチング状態から第2スイッチング状態へと切り替えられ、センシング電流Isの方向が正磁化方向へ反転される。即ち、本発明に係る「第2制御工程」の一例が開始される。
正磁化方向へのセンシング電流Isの掃引が開始されると、時刻T5においてコア310の磁化状態は状態P5となり、コア310は、非飽和状態となる。従って、時刻T5以降暫時の期間については、センシング電流Isの値は殆ど変化しなくなる。
一方、時刻T6において、コア310は磁束密度Bがゼロとなる前述した状態P6となり、更なるセンシング電流Isの掃引により、コア310は正磁化方向へ再び励磁される。この励磁により、コア310は時刻T7において正磁化方向に磁気飽和する(上述した状態P7である)。磁気飽和した時点から、センシング電流Isは急激に変化し始める。
時刻T8において、時刻T7から急激に変化し始めたセンシング電流Isが予め正磁化方向について設定された最大値Ismax2に達すると、コア310が正磁化方向に磁気飽和した旨が検出される。即ち、時刻t8において、本発明に係る「第2検出工程」の一例が実行される。また、時刻T4から時刻T8までのセンシング電流Isの掃引制御が、本発明に係る「第2制御工程」の一例となる。
時刻T8において、コア310の正磁化方向への磁気飽和が検出されると、ECU100によりスイッチング回路330のスイッチング状態が第3スイッチング状態へ切り替えられ、センシング電流Isの方向が負磁化方向へ再度反転される。即ち、本発明に係る「第1制御工程」の一例が再度開始される。第3スイッチング状態における負磁化方向へのセンシング電流の掃引過程において、センシング電流Isが再びゼロになると、ECU100は、スイッチング回路330のスイッチング状態を第3スイッチング状態から第1スイッチング状態へと切り替え、上記時刻T0以降の処理が繰り返される。
このように、本実施形態では、正磁化方向への磁気飽和が検出された時点から(第1回目のサイクルのみ、Is=0の時点)負磁化方向への磁気飽和が検出される時点まで継続されるセンシング電流Isの掃引(第1制御工程)と、負磁化方向への磁気飽和が検出された時点から正磁化方向への磁気飽和が検出される時点まで継続されるセンシング電流Isの掃引(第2制御工程)とからなる掃引サイクルSWPが繰り返し実行される。
ここで、第1電流値Is1は、状態P2、即ち時刻T2におけるセンシング電流値である。従って、時刻T2を見つけることが出来れば、その時点のセンシング電流Isの値を第1電流値Is1として特定することが出来る。ここで特に、時刻T2は、理想的なB−H特性を前提とした場合、正飽和領域と非飽和領域との境界点に相当する時刻T1と、非飽和領域と負飽和領域との境界点に相当する時刻T3との中間点に相当する時刻である。然るに、これら境界点を毎掃引サイクルにおいて正確に検出するための負荷は小さくない。
そこで、本実施形態では、時刻T2を見つけるに当たって、コア310が第2制御工程において正磁化方向に磁気飽和した旨が検出された時刻T8から、コア310が第1制御工程において負磁化方向に磁気飽和した旨が検出された時刻T4までの時間である第1飽和時間ts1(即ち、本発明に係る「第1飽和時間」の一例である)が利用される。より具体的には、時刻T8から第1飽和時間ts1の半値に相当する時間が経過した時刻が、時刻T2として特定され、時刻T2におけるセンシング電流値が第1電流値Is1として特定される。
但し、一の掃引サイクルにおいて、時刻T4は時刻T2よりも後に訪れるため、一の掃引サイクルにおいて第1飽和時間ts1を特定することは出来ない。そこで、時刻T4及び時刻T8の値として、一掃引サイクル前の(即ち、過去の)掃引サイクルにおける値が使用される。尚、このように過去の掃引サイクルにおける時間値を使用するため、ECU100は、内蔵する揮発性メモリに、過去数サイクル分について時刻T4及び時刻T8の値を保持している。
具体的には、掃引サイクルSWPに時間識別子を付与し、現時点の掃引サイクルをSWP(i)、前回の掃引サイクルをSWP(i−1)、次回の掃引サイクルをSWP(i+1)、のように表すと、掃引サイクルSWP(i)において時刻T2に相当する時刻の特定に利用される第1飽和時間ts1は、2サイクル前の掃引サイクルSWP(i−2)における第2制御工程(負飽和領域から正飽和領域へのセンシング電流の掃引)において正磁化方向への磁気飽和が検出された時刻T8(i−2)(即ち、1サイクル前の掃引サイクルSWP(i−1)の開始時刻)から、1サイクル前に負磁化方向への磁気飽和が検出された時刻T4(i−1)までの時間である1サイクル前の第1飽和時間ts1(i−1)である。
このように、本実施形態によれば、一掃引サイクル前の値が使用されることによって、最新の掃引サイクルにおいて、コア310が消磁状態となるセンシング電流値である第1電流値Is1が高精度に且つ再現性良く取得され、インバータ電流Ipを高精度に算出することが可能となる。尚、時系列上で相前後する掃引サイクルにおいてインバータ電流Ipが大きく変化する事態は殆ど生じることがないため、このように過去の時間値を利用しても、実践上インバータ電流の算出精度が低下することはない。
一方、第2電流値Is2とは、状態P6、即ち時刻T6におけるセンシング電流値である。従って、時刻T6を見つけることが出来れば、その時点のセンシング電流Isの値を第2電流値Is2として特定することが出来る。ここで特に、時刻T6は、理想的なB−H特性を前提とした場合、負飽和領域と非飽和領域との境界点に相当する時刻T5と、非飽和領域と正飽和領域との境界点に相当する時刻T7との中間点に相当する時刻である。然るに、これら境界点を毎掃引サイクルにおいて正確に検出するための負荷は小さくない。
そこで、本実施形態では、時刻T6を見つけるに当たって、コア310が第1制御工程において負磁化方向に磁気飽和した旨が検出された時刻T4から、コア310が第2制御工程において正磁化方向に磁気飽和した旨が検出された時刻T8までの時間である第2飽和時間ts2(即ち、本発明に係る「第2飽和時間」の一例である)が利用される。より具体的には、時刻T4から第2飽和時間ts2の半値に相当する時間が経過した時刻が、時刻T6として特定され、時刻T6におけるセンシング電流値が第2電流値Is2として特定される。
但し、一の掃引サイクルにおいて、時刻T8は時刻T6よりも後に訪れるため、一の掃引サイクルにおいて第2飽和時間ts2を特定することは出来ない。そこで、時刻T4及び時刻T8の値として、一掃引サイクル前の(即ち、過去の)掃引サイクルにおける値が使用される。
即ち、掃引サイクルSWPに時間識別子を付与し、現時点の掃引サイクルをSWP(i)、前回の掃引サイクルをSWP(i−1)、次回の掃引サイクルをSWP(i+1)、のように表すと、掃引サイクルSWP(i)において時刻T6に相当する時刻の特定に利用される第2飽和時間ts2は、1サイクル前に負磁化方向への磁気飽和が検出された時刻T4(i−1)から、1サイクル前に正磁化方向への磁気飽和が検出された時刻T8(i−1)までの時間である1サイクル前の第2飽和時間ts2(i−1)である。
このように、本実施形態によれば、一掃引サイクル前の値が使用されることによって、最新の掃引サイクルにおいて、コア310が消磁状態となるセンシング電流値である第2電流値Is2が高精度に且つ再現性良く取得され、インバータ電流Ipを高精度に算出することが可能となる。尚、時系列上で相前後する掃引サイクルにおいてインバータ電流Ipが大きく変化する事態は殆ど生じることがないため、このように過去の時間値を利用しても、実践上インバータ電流の算出精度が低下することはない。
ここで、図8を参照し、インバータ電流算出制御処理の実行過程における、第1電流値Is1(即ち、状態P2)及び第2電流値Is2(即ち、状態P6)の実際の特定の様子を説明する。ここに、図8は、インバータ電流算出制御処理の実行過程におけるセンシング電流の一時間推移を例示するタイミングチャートである。尚、同図において、図7と重複する箇所には同一の符号を付してその説明を適宜省略することとする。
図8において、縦軸にセンシング電流Isが、横軸に時刻Tが表される。また、時刻0から時刻Tbに至る期間が掃引サイクルSWP(i)に相当し、時刻Tbから時刻Tdに至る期間が掃引サイクルSWP(i+1)に相当し、時刻Tdから時刻Tfに至る期間が掃引サイクルSWP(i+2)に相当し、時刻Tfから時刻Thに至る期間が掃引サイクルSWP(i+3)に相当する。
図8において、掃引サイクルSWP(i)において負磁化方向への磁気飽和が検出された時刻はTaであり、同じく正磁化方向への磁気飽和が検出された時刻がTbである。即ち、掃引サイクルSWP(i)において特定される第2飽和時間ts2(i)は、時刻Taから時刻Tbに至る時間である。この掃引サイクルSWP(i)において特定された第2飽和時間ts2(i)は、次サイクルである掃引サイクルSWP(i+1)に使用される。より具体的には、掃引サイクルSWP(i+1)においては、負磁化方向への磁気飽和が検出された時刻Tcから、第2飽和時間ts2(i)の半値に相当する時間が経過した時刻において、コア310が状態P6(i+1)(即ち、消磁状態)にあるものと推定され、この時刻におけるセンシング電流Isの値が、第2電流値Is2(i+1)として特定される。
また、掃引サイクルSWP(i+1)において負磁化方向への磁気飽和が検出された時刻はTcであり、同じく正磁化方向への磁気飽和が検出された時刻がTdである。即ち、掃引サイクルSWP(i+1)において特定される第2飽和時間ts2(i+1)は、時刻Tcから時刻Tdに至る時間である。この掃引サイクルSWP(i+1)において特定された第2飽和時間ts2(i+1)は、次サイクルである掃引サイクルSWP(i+2)に使用される。より具体的には、掃引サイクルSWP(i+2)においては、負磁化方向への磁気飽和が検出された時刻Teから、第2飽和時間ts2(i+1)の半値に相当する時間が経過した時刻において、コア310が状態P6(i+2)(即ち、消磁状態)にあるものと推定され、この時刻におけるセンシング電流Isの値が、第2電流値Is2(i+2)として特定される。
また、掃引サイクルSWP(i+2)において負磁化方向への磁気飽和が検出された時刻はTeであり、同じく正磁化方向への磁気飽和が検出された時刻がTfである。即ち、掃引サイクルSWP(i+2)において特定される第2飽和時間ts2(i+2)は、時刻Teから時刻Tfに至る時間である。この掃引サイクルSWP(i+2)において特定された第2飽和時間ts2(i+2)は、次サイクルである掃引サイクルSWP(i+3)に使用される。より具体的には、掃引サイクルSWP(i+3)においては、負磁化方向への磁気飽和が検出された時刻Tgから、第2飽和時間ts2(i+2)の半値に相当する時間が経過した時刻において、コア310が状態P6(i+3)(即ち、消磁状態)にあるものと推定され、この時刻におけるセンシング電流Isの値が、第2電流値Is2(i+3)として特定される
また、掃引サイクルSWP(i+3)において負磁化方向への磁気飽和が検出された時刻はTgであり、同じく正磁化方向への磁気飽和が検出された時刻がThである。即ち、掃引サイクルSWP(i+3)において特定される第2飽和時間ts2(i+3)は、時刻Tgから時刻Thに至る時間である。この掃引サイクルSWP(i+2)において特定された第2飽和時間ts2(i+2)も、同様にして次サイクルである掃引サイクルSWP(i+4)(不図示)に使用される。
一方、図8において、掃引サイクルSWP(i)において正磁化方向への磁気飽和が検出された時刻(掃引サイクルSWP(i+1)の基点となる時刻)はTbであり、掃引サイクルSWP(i+1)において負磁化方向への磁気飽和が検出された時刻がTcである。即ち、掃引サイクルSWP(i+1)において特定される第1飽和時間ts1(i+1)は、時刻Tbから時刻Tcに至る時間である。この掃引サイクルSWP(i+1)において特定された第1飽和時間ts1(i+1)は、次サイクルである掃引サイクルSWP(i+2)に使用される。より具体的には、掃引サイクルSWP(i+2)においては、正磁化方向への磁気飽和が検出された時刻Tdから、第1飽和時間ts1(i+1)の半値に相当する時間が経過した時刻において、コア310が状態P2(i+2)(即ち、消磁状態)にあるものと推定され、この時刻におけるセンシング電流Isの値が、第1電流値Is1(i+2)として特定される。
また、掃引サイクルSWP(i+1)において正磁化方向への磁気飽和が検出された時刻(掃引サイクルSWP(i+2)の基点となる時刻)はTdであり、掃引サイクルSWP(i+2)において負磁化方向への磁気飽和が検出された時刻がTeである。即ち、掃引サイクルSWP(i+2)において特定される第1飽和時間ts1(i+2)は、時刻Tdから時刻Teに至る時間である。この掃引サイクルSWP(i+2)において特定された第1飽和時間ts1(i+2)は、次サイクルである掃引サイクルSWP(i+3)に使用される。より具体的には、掃引サイクルSWP(i+3)においては、正磁化方向への磁気飽和が検出された時刻Tfから、第1飽和時間ts1(i+2)の半値に相当する時間が経過した時刻において、コア310が状態P2(i+3)(即ち、消磁状態)にあるものと推定され、この時刻におけるセンシング電流Isの値が、第1電流値Is1(i+3)として特定される。
また、掃引サイクルSWP(i+2)において正磁化方向への磁気飽和が検出された時刻(掃引サイクルSWP(i+3)の基点となる時刻)はTfであり、掃引サイクルSWP(i+3)において負磁化方向への磁気飽和が検出された時刻がTgである。即ち、掃引サイクルSWP(i+3)において特定される第1飽和時間ts1(i+3)は、時刻Tfから時刻Tgに至る時間である。この掃引サイクルSWP(i+3)において特定された第1飽和時間ts1(i+3)も、同様にして次サイクルである掃引サイクルSWP(i+4)(不図示)に使用される。
本発明は、上述した実施形態に限られるものではなく、請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う電流検出方法もまた本発明の技術的範囲に含まれるものである。