以下、図面を参照して、本発明の無段変速機の実施形態を説明する。本実施形態の無段変速機は、四節リンク機構型の無段変速機であり、変速比h(h=入力軸の回転速度/出力軸の回転速度)を無限大(∞)にして出力軸の回転速度を「0」にできる変速機、いわゆるIVT(Infinity Variable Transmission)の一種である。また、本実施形態は、無段変速機を車両に搭載した場合の実施形態であるが、本発明の無段変速機は、船舶等、他の乗り物や無人機にも搭載し得るものである。
[第1実施形態]
図1〜図6を参照して、第1実施形態の無段変速機1について説明する。
まず、図1及び図2を参照して、本実施形態の無段変速機1の構成について説明する。
本実施形態の無段変速機1は、図1に示すように、入力部2と、入力部2の回転中心軸線P1と平行に配置された出力軸3と、入力部2の回転中心軸線P1上に設けられた6個の回転半径調節機構4とを備える。
入力部2は、主駆動源であるエンジンENG(走行用駆動源)からの駆動力が伝達されることで回転中心軸線P1を中心に回転する。なお、主駆動源としては、内燃機関の他、電動機等を用いてもよい。
出力軸3は、図示省略したデファレンシャルギヤを介して車両の駆動輪(図示省略)に回転駆動力を伝達させる。なお、デファレンシャルギヤの代わりにプロペラシャフトを設けてもよい。
回転半径調節機構4は、入力部2の回転中心軸線P1上に設けられたカムディスク5(カム部)と、カムディスク5に回転自在に外嵌している回転ディスク6(回転部)とを有する。
カムディスク5は、円盤状であり、入力部2の回転中心軸線P1に対して偏心した状態で、入力部2と一体的に回転可能に、2個1組で設けられている。各1組のカムディスク5は、それぞれ位相が60°異なるように設定され、6組のカムディスク5で入力部2の回転中心軸線P1の周方向を一回りするように配置されている。
カムディスク5には、入力部2の回転中心軸線P1方向に貫通し、カムディスク5の中心P2に対して偏心した位置に穿設された貫通孔5aが形成されている。また、カムディスク5には、入力部2の回転中心軸線P1を挟んでカムディスク5の中心P2と反対側となる領域に、カムディスク5の外周面と貫通孔5aの内周面とを連通させる切欠孔5bが形成されている。
2個1組のカムディスク5同士はボルト(図示省略)で固定されている。また、2個1組のカムディスク5の一方は、隣接する回転半径調節機構4が有する他の2個1組のカムディスク5の他方と一体的に形成され、一体型カム部を構成している。また、カムディスク5のうち、最もエンジンENGに近い位置にあるカムディスク5は、入力部2と一体的に形成されている。このようにして、入力部2と複数のカムディスク5とで、入力軸(カムシャフト)が構成されることとなる。
なお、2個1組のカムディスク5同士は、ボルトではなく、他の手段で固定してもよい。また、一体型カム部は、一体成型で形成してもよく、2つのカムディスク5を溶接して一体化してもよい。また、最もエンジンENGに近い位置にあるカムディスク5と入力部2とを一体的に形成する方法としては、一体成型で形成してもよく、カムディスク5と入力部2とを溶接して一体化してもよい。
回転ディスク6は、図2に示すように、その中心P3から偏心した位置に受入孔6aが設けられた円盤状であり、入力部2の回転中心軸線P1に対して回転可能に設けられている。その受入孔6aには、各1組のカムディスク5が、回転自在に嵌め込まれている。また、回転ディスク6の受入孔6aには、図1に示すように、1組のカムディスク5の間となる位置に、内歯6bが設けられている。
また、回転ディスク6の受入孔6aは、入力部2の回転中心軸線P1からカムディスク5の中心P2(受入孔6aの中心)までの距離Rxとカムディスク5の中心P2から回転ディスク6の中心P3までの距離Ryとが同一となるように、カムディスク5に対して偏心している。
入力部2と複数のカムディスク5によって構成された入力軸は、カムディスク5の貫通孔5aが連なることによって構成される挿通孔50を備えている。これにより、入力軸は、エンジンENGとは反対側の一方端が開口し他方端が閉塞した中空軸形状となっている。
挿通孔50には、回転中心軸線P1と同心に、ピニオンシャフト7が入力軸と相対回転自在となるように配置されている。
ピニオンシャフト7は、回転ディスク6の内歯6bと対応する位置にピニオン7aを有している。また、ピニオンシャフト7は、入力部2の回転中心軸線P1方向において隣接するピニオン7aの間に位置させてピニオン軸受7bが設けられている。このピニオン軸受7bを介して、ピニオンシャフト7は、入力軸を支えている。
ピニオン7aは、ピニオンシャフト7のシャフト部と一体に形成されている。ピニオン7aは、カムディスク5の切欠孔5bを介して、回転ディスク6の内歯6bと噛合する。なお、ピニオン7aは、ピニオンシャフト7と別体に構成して、ピニオンシャフト7にスプライン結合で連結させてもよい。本実施形態においては、単にピニオン7aというときは、ピニオンシャフト7を含むものとして定義する。
また、ピニオンシャフト7は、遊星歯車機構などで構成される差動機構8が接続されている。
差動機構8は、図1に示すように、例えば、遊星歯車機構として構成され、サンギヤ9と、入力部2と複数のカムディスク5によって構成された入力軸に連結された第1リングギヤ10と、ピニオンシャフト7に連結された第2リングギヤ11と、サンギヤ9及び第1リングギヤ10と噛合する大径部12aと、第2リングギヤ11と噛合する小径部12bとからなる段付ピニオン12を自転及び公転自在に軸支するキャリア13とを有している。
サンギヤ9は、ピニオンシャフト7用の副駆動源であるアクチュエータ14(調節用駆動源)の回転軸14aに連結されており、そのアクチュエータ14から駆動力が伝達される。したがって、ピニオン7aにも、差動機構8を介して、アクチュエータ14の駆動力が伝達される。
ピニオンシャフト7の回転速度を入力部2の回転速度と同一にした場合、サンギヤ9と第1リングギヤ10とが同一速度で回転することとなる。その結果、サンギヤ9、第1リングギヤ10、第2リングギヤ11及びキャリア13の4個の要素が相対回転不能なロック状態となって、第2リングギヤ11と連結するピニオンシャフト7が入力部2と同一速度で回転する。
ピニオンシャフト7の回転速度を入力部2の回転速度よりも遅くした場合、サンギヤ9の回転数をNs、第1リングギヤ10の回転数をNR1、サンギヤ9と第1リングギヤ10のギヤ比(第1リングギヤ10の歯数/サンギヤ9の歯数)をjとすると、キャリア13の回転数が(j・NR1+Ns)/(j+1)となる。また、サンギヤ9と第2リングギヤ11のギヤ比((第2リングギヤ11の歯数/サンギヤ9の歯数)×(段付ピニオン12の大径部12aの歯数/小径部12bの歯数))をkとすると、第2リングギヤ11の回転数が{j(k+1)NR1+(k−j)Ns}/{k(j+1)}となる。
すなわち、入力部2の回転速度とピニオンシャフト7の回転速度とに差がある場合、ピニオンシャフト7のピニオン7aと噛合する回転ディスク6の内歯6bを介して伝達されたアクチュエータ14からの駆動力により、回転ディスク6は、カムディスク5の中心P2を中心にカムディスク5の周縁を回転する。
ところで、図2に示すように、回転ディスク6は、カムディスク5に対して、入力部2の回転中心軸線P1からカムディスク5の中心P2までの距離Rxと、カムディスク5の中心P2から回転ディスク6の中心P3までの距離Ryとが同一となるように偏心している。
そのため、回転ディスク6の中心P3を入力部2の回転中心軸線P1と同一線上に位置させて、入力部2の回転中心軸線P1と回転ディスク6の中心P3との距離(回転半径調節機構4の回転半径)、すなわち、偏心量R1を「0」にすることもできる。
回転ディスク6の周縁には、一方(入力部2側)の端部に大径の入力側環状部15aを有し、他方(出力軸3)の端部に入力側環状部15aの径よりも小径の出力側環状部15bを有するコネクティングロッド15が、回転自在に接続している。
コネクティングロッド15の入力側環状部15aは、軸方向に2個並べた2個1組のボールベアリングからなるコネクティングロッド軸受16を介して、回転ディスク6に回転自在に外嵌している。
出力軸3には、ワンウェイクラッチ17(一方向回転阻止機構)を介して、6個の揺動リンク18が、コネクティングロッド15に対応させて揺動自在に軸支されている。
ワンウェイクラッチ17は、揺動リンク18と出力軸3との間に設けられ、揺動リンク18が出力軸3の回転中心軸線P5を中心として出力軸3に対して一方側に相対回転しようとする場合には、出力軸3に対して揺動リンク18を固定し(固定状態)、他方側に相対回転しようとする場合には、出力軸3に対して揺動リンク18を空転させる(空転状態)。
揺動リンク18は、環状に形成されており、その下方には、コネクティングロッド15の出力側環状部15bに連結される揺動端部18aが設けられている。揺動端部18aには、出力側環状部15bを軸方向から挟み込むように突出した一対の突片18bが設けられている。一対の突片18bには、出力側環状部15bの内径に対応する差込孔18cが穿設されている。
差込孔18c及び出力側環状部15bに、揺動軸としての連結ピン19が挿入されることによって、コネクティングロッド15と揺動リンク18とが、相対回転可能に接続される。
本実施形態の無段変速機1では、上記のような構成を有する回転半径調節機構4と、揺動リンク18と、コネクティングロッド15とによって、てこクランク機構20が構成されている。
てこクランク機構20及びワンウェイクラッチ17は、変速機ケース21に収納されている。この変速機ケース21の下方には、潤滑油が油溜を形成している。
そして、揺動リンク18は、その揺動端部18aが変速機ケース21の下方に溜まった潤滑油の油溜に油没するように配置されている。
そのため、てこクランク機構20の駆動時には、揺動端部18aを油溜で潤滑するとともに、揺動リンク18の揺動運動により、油溜の潤滑油を掻き揚げて、無段変速機1の他の部品を潤滑させることができるようになっている。
また、変速機ケース21は、一端壁部21aと、一端壁部21aに対向して配置され、エンジンENGに固定されている他端壁部21bと、てこクランク機構20及びワンウェイクラッチ17を間隔を存して覆い、一端壁部21aの外縁と他端壁部21bの外縁とを連結する周壁部21cとによって形成されている。
一端壁部21aと他端壁部21bには、入力軸を軸支するための開口部と、出力軸3を軸支するための開口部が形成されており、それらの開口部には、入力軸軸受22と出力軸軸受23が嵌合されている。
変速機ケース21は、その内部にオイルポンプ(不図示)を備えている。オイルポンプは、走行用駆動源であるエンジンENGの回転数の増加に連動して吐出する潤滑油の油量が増加する。このオイルポンプによって、入力軸の一端側に潤滑油が供給される。
なお、本実施形態においては、6個のてこクランク機構20を備えたものを説明した。しかし、本発明の無段変速機におけるてこクランク機構の数は、その数に限られず、例えば、5個以下のてこクランク機構を備えていてもよいし、7個以上のてこクランク機構を備えていてもよい。
また、本実施形態においては、入力部2と複数のカムディスク5によって入力軸を構成し、入力軸がカムディスク5の貫通孔5aが連なることによって構成される挿通孔50を備えるものを説明した。しかし、本発明の無段変速機における入力軸はこのように構成されたものに限られない。
例えば、入力部を一端が開口するように挿通孔を有する中空軸状に構成し、円盤状のカムディスクに入力部を挿通できるように貫通孔を本実施形態のものよりも大きく形成して、カムディスクを中空軸状に構成された入力部の外周面にスプライン結合させてもよい。
この場合、中空軸からなる入力部には、カムディスクの切欠孔に対応させて切欠孔が設けられる。そして、入力部内に挿入されるピニオンは、入力部の切欠孔及びカムディスクの切欠孔を介して、回転ディスクの内歯と噛合する。
また、本実施形態においては、一方向回転阻止機構としてワンウェイクラッチ17を用いたものを説明した。しかし、本発明の無段変速機における一方向回転阻止機構はワンウェイクラッチに限らず、例えば、揺動リンクから出力軸にトルクを伝達可能な揺動リンクの出力軸に対する回転方向を切換自在に構成されるツーウェイクラッチを用いてもよい。
次に、図1〜図4を参照して、本実施形態の無段変速機のてこクランク機構20について説明する。
本実施形態の無段変速機1は、図1に示すように、合計6個のてこクランク機構20(四節リンク機構)を備えている。てこクランク機構20は、図2に示すように、コネクティングロッド15と、揺動リンク18と、回転ディスク6を有しその回転半径を調節自在な回転半径調節機構4とで構成されている。このてこクランク機構20によって、入力軸の回転運動が、揺動リンク18の揺動運動に変換される。
このてこクランク機構20では、回転半径調節機構4の回転ディスク6の中心P3(入力側支点)の回転半径(偏心量R1)が、「0」でない場合、入力部2とピニオンシャフト7とを同一速度で回転させると、各コネクティングロッド15が、位相を変えながら、入力部2と出力軸3との間で、揺動端部18aを、出力軸3側に押したり、入力部2側に引いたりを交互に繰り返して、揺動リンク18を揺動させる。
そして、揺動リンク18と出力軸3との間にはワンウェイクラッチ17が設けられているので、コネクティングロッド15によって、揺動リンク18が出力軸3に対して一方側に、出力軸3の回転速度を超える速度で回転するときには、揺動リンク18が出力軸3に対して固定され、出力軸3にトルクを伝達する。一方、揺動リンク18が出力軸3に対して他方側に回転するときには、揺動リンク18が出力軸3に対して空回りし、出力軸3にトルクを伝達しない。
本実施形態の無段変速機1では、6個のてこクランク機構20の回転半径調節機構4が、それぞれ60度ずつ位相を変えて配置されているので、出力軸3は、6個のてこクランク機構20で順に回転させられる。
図3は、回転半径調節機構4の回転ディスク6の中心P3(入力側支点)の回転半径(偏心量R1)を変化させた状態のピニオンシャフト7と回転ディスク6との位置関係を示す図である。
図3Aは、偏心量R1を「最大」とした状態を示し、入力部2の回転中心軸線P1とカムディスク5の中心P2と回転ディスク6の中心P3とが一直線に並ぶように、ピニオンシャフト7と回転ディスク6とが位置する。この場合の変速比hは「最小」となる。
図3Bは、偏心量R1を図3Aよりも小さい「中」とした状態を示し、図3Cは、偏心量R1を図3Bよりも更に小さい「小」とした状態を示している。変速比hは、図3Bでは図3Aの変速比hよりも大きい「中」となり、図3Cでは図3Bの変速比hよりも大きい「大」となる。
図3Dは、偏心量R1を「0」とした状態を示し、入力部2の回転中心軸線P1と、回転ディスク6の中心P3とが同心に位置する。この場合の変速比hは「無限大(∞)」となる。
図4は、回転半径調節機構4の回転ディスク6の中心P3(入力側支点)の回転半径(偏心量R1)と、揺動リンク18の揺動運動の揺動範囲θ2との関係を示す図である。
図4Aは、偏心量R1が図3Aの「最大」である場合(変速比hが「最小」である場合)、図4Bは、偏心量R1が図3Bの「中」である場合(変速比hが「中」である場合)、図4Cは、偏心量R1が図3Cの「小」である場合(変速比hが「大」である場合)、図4Dは、偏心量R1が図3Dの「0」である場合(変速比hが「無限大(∞)」である場合)を示す。
ここで、R2は、揺動リンク18の長さである。より具体的には、R2は、出力軸3の回転中心軸線P5からコネクティングロッド15と揺動端部18aとの連結点、すなわち、連結ピン19の中心(出力側支点P4)までの距離である。また、θ1は、回転半径調節機構4の回転ディスク6の位相である。
この図4から明らかなように、偏心量R1が小さくなるにつれ、揺動リンク18の揺動範囲θ2が狭くなり、偏心量R1が「0」になった場合には、揺動リンク18は揺動しなくなる。
次に、図1及び図5〜図7を参照して、本実施形態の無段変速機1のてこクランク機構20のコネクティングロッド軸受16に潤滑油を供給する構造について詳細に説明する。
図1に示すように、ピニオンシャフト7は、入力軸の回転中心軸線P1上に、第1油路7cが形成された筒状の部材として形成されている。この第1油路7cには、ピニオンシャフト7の一端側(図1においては左側)から、オイルポンプ(図示省略)が吐出した潤滑油が流入する。
また、ピニオンシャフト7は、ピニオン軸受7bに対応する位置に、ピニオンシャフト7の内周面と外周面とを連通するように形成された第2油路7dが形成されている。この第2油路7dには、第1油路7cから潤滑油が流入し、その潤滑油はピニオンシャフト7の外周面側に供給される。
なお、第2油路7dからピニオンシャフト7の外周面側に供給された潤滑油は、ピニオン7aに隣接するように配置されたピニオン軸受7bに供給される。その後、潤滑油は遠心力によって、カムシャフトを構成する複数のカムディスク5同士の隙間や側面、回転ディスク6に形成された潤滑油供給孔6c(第3油路)を経由して、コネクティングロッド軸受16に供給される。
潤滑油供給孔6cに潤滑油が流入する流入口は、カムディスク5及びピニオンシャフト7が挿通される回転ディスク6の受入孔6aの内周面に形成されている。一方、潤滑油供給孔6cから潤滑油が流出する流出口は、回転ディスク6の外周面に形成されている。その流出口から流出した潤滑油は、回転ディスク6とその回転ディスク6に外嵌しているコネクティングロッド15との間に配置されたコネクティングロッド軸受16に供給される。
ところで、図5のグラフに実線及び破線で示すように、本実施形態の無段変速機1では、回転半径調節機構4の回転ディスク6の中心P3(入力側支点)の回転半径(偏心量R1)と走行用駆動源の出力する駆動力(エンジンENGの回転数)が増加すると、ピニオン軸受7bやコネクティングロッド軸受16等のてこクランク機構20の入力軸側の構成部材に生じる摩擦の軽減や熱の冷却のために必要な潤滑油の量が増加する。
オイルポンプによっててこクランク機構20の入力軸側の構成部材に供給される潤滑油の量は、てこクランク機構20の構成部材に生じる摩擦や熱が最も大きくなる偏心量R1やエンジンENGの回転数の場合に、十分な量に設定することが好ましい。
具体的には、無段変速機1を搭載した車両の車両速度が最高速度になる場合(グラフではR1=大の場合であって、エンジン回転数が最大になる場合)に基づいて設定することが好ましい。
しかし、図5のグラフに一点鎖線で示すように、本実施形態の無段変速機1でも用いられている一般的なオイルポンプは、エンジンENGの回転数に比例して潤滑油の供給量が増加する。そのため、オイルポンプが吐出する潤滑油の量を、車両速度が最高速度になる状態で最適になるように調整すると、偏心量R1やエンジンENGの回転数が小さい場合には、てこクランク機構20に供給される潤滑油の量が過剰になってしまう。
潤滑油が過剰に供給されると、その潤滑油がてこクランク機構20の入力軸側の構成部材の作動の抵抗になるおそれがある。
特に、回転ディスク6とコネクティングロッド15の入力側環状部15aとの間に配置されているコネクティングロッド軸受16は、発生する摩擦や熱が大きいため、多くの潤滑油が必要となる。そのため、偏心量R1やエンジンENGの回転数が小さい場合には、特に過剰に潤滑油が供給されやすい。
そして、てこクランク機構20のコネクティングロッド軸受16に供給される潤滑油が過剰になると、その潤滑油がインナー部材とアウター部材との間(本実施形態では回転ディスク6の外周面とコネクティングロッド15の入力側環状部15aの内周面との間)に配置されている転動体の転がり抵抗になるおそれがあった。
そこで、本実施形態の無段変速機1では、てこクランク機構20のコネクティングロッド軸受16に供給する潤滑油の量を、偏心量R1に応じて調整する機構を備えている。以下においては、その機構について詳細に説明する。
図6に示すように、回転ディスク6の受入孔6aの縁部には、受入孔6aの内周面と回転ディスク6の外部(側面)とを連通する回転ディスク側切欠部6d(回転部側孔部)が形成されている。なお、回転ディスク側切欠部6dは、図1においては、図示省略している。
カムディスク5には、入力軸の回転中心軸線P1と交わる方向において回転ディスク6と重ならない位置に、回転ディスク6の縁部を覆うように径方向に延出した鍔部5cを有している。
図7に示すように、回転ディスク側切欠部6dは、受入孔6aの縁部に形成されている。回転ディスク側切欠部6dの外周の形状は、回転ディスク6の外周側に向けて形成された半円と一致する形状になっている。
カムディスク5の鍔部5cの外周の形状は、中心がカムディスク5の中心P2から偏心している円と一致する形状になっている。すなわち、鍔部5cは、その位相ごとに、カムディスクの中心P2から外周までの距離が異なっている。
そのため、回転ディスク6とカムディスク5との相対位相(すなわち、偏心量R1)に応じて、鍔部5cが回転ディスク側切欠部6dを覆う面積(領域)が変化する。
本実施形態の無段変速機1では、回転ディスク側切欠部6dと鍔部5cとによって排出用油路が形成されているので、その排出用油路の排出口の開度は、回転ディスク6とカムディスク5との相対位相(すなわち、偏心量R1)に応じて変化する。したがって、排出用油路から排出される潤滑油の流量も、回転ディスク6とカムディスク5との相対位相に応じて変化する。
具体的には、図7Aに示すように、相対位相が偏心量R1が「最大」になる位相の場合、回転ディスク側切欠部6dは、一部のみが鍔部5cによって覆われる。
この場合、図6Aに示すように、第2油路からピニオンシャフト7の外周面に供給された潤滑油の一部が、回転ディスク側切欠部6dと鍔部5cとによって形成された排出用油路から排出され、残りの潤滑油のみが、潤滑油供給孔6cを介して、コネクティングロッド軸受16に供給される。
図7Bに示すように、相対位相が偏心量R1が「大」になる位相(車両の走行速度が最高速度になる位相)の場合、回転ディスク側切欠部6dは、その全てが鍔部5cによって覆われる。
この場合、図6Bに示すように、第2油路からピニオンシャフト7の外周面に供給された潤滑油が、回転ディスク側切欠部6dと鍔部5cとによって形成された排出用油路から排出されず、全ての潤滑油が、潤滑油供給孔6cを介して、コネクティングロッド軸受16に供給される。
図7Cに示すように、相対位相が偏心量R1が「小」になる位相の場合、回転ディスク側切欠部6dは、半分以上が鍔部5cによって覆われる。
この場合、図6Cに示すように、第2油路からピニオンシャフト7の外周面に供給された潤滑油の半分以下の量が、回転ディスク側切欠部6dと鍔部5cとによって形成された排出用油路から排出され、残りの潤滑油のみが、潤滑油供給孔6cを介して、コネクティングロッド軸受16に供給される。
図7Dに示すように、相対位相が偏心量R1が「0」になる位相の場合、回転ディスク側切欠部6dは、半分程度が鍔部5cによって覆われる。
この場合、図6Dに示すように、第2油路からピニオンシャフト7の外周面に供給された潤滑油の半分程度の量が、回転ディスク側切欠部6dと鍔部5cとによって形成された排出用油路から排出され、残りの潤滑油のみが、潤滑油供給孔6cを介して、コネクティングロッド軸受16に供給される。
本実施形態の無段変速機1では、第1油路7c、第2油路7d、潤滑油供給孔6c(第3油路)及び排出用油路を備えているので、潤滑油供給孔6cを介してコネクティングロッド軸受16に供給される潤滑油の量が、偏心量R1の変化に応じて変化する。したがって、てこクランク機構20のコネクティングロッド軸受16に適切な量の潤滑油を供給することができる。
[第2実施形態]
図8及び図9を参照して、本実施形態の無段変速機について説明する。ただし、本実施形態の無段変速機は、第1実施形態の無段変速機と、カムディスク及び回転ディスクの形状のみが異なるので、それらについてのみ詳細に説明する。また、第1実施形態の無段変速機と同様の構成については同じ符号を付すとともに、それらについての説明は省略する。
図8に示すように、回転ディスク6の受入孔6aの縁部には、受入孔6aの内周面と回転ディスク6の外部とを連通する回転ディスク側切欠部6eが形成されている。
カムディスク5には、入力軸の回転中心軸線P1と交わる方向において回転ディスク6と重ならない位置に、回転ディスク6の縁部を覆うように径方向に延出した鍔部5dを有している。また、鍔部5dの縁部には、カムディスク側切欠部5e(カム部側切欠部)が形成されている。
図9に示すように、回転ディスク側切欠部6eの外周の形状は、カムディスク5の中心P2から偏心している円、又は、その円とはカムディスク5の中心P2を挟んで反対側に偏心している円と一致する形状になっている。
カムディスク5の鍔部5dの外周の形状は、その中心がカムディスク5の中心P2であり、受入孔よりも半径が大きい円と一致する形状になっている。カムディスク側切欠部5eの形状は、カムディスク5の内周側に向けて形成された半円と一致する形状になっている。
そのため、回転ディスク6とカムディスク5との相対位相(すなわち、偏心量R1)に応じて、鍔部5dが回転ディスク側切欠部6eを覆う(カムディスク側切欠部5eと回転ディスク側切欠部6eとが連通する)面積が変化する。
本実施形態の無段変速機では、回転ディスク側切欠部6eと鍔部5dとによって排出用油路が形成されているので、その排出用油路の排出口の開度は、回転ディスク6とカムディスク5との相対位相(すなわち、偏心量R1)に応じて変化する。したがって、排出用油路から排出される潤滑油の流量も、回転ディスク6とカムディスク5との相対位相に応じて変化する。
具体的には、図9Aに示すように、相対位相が偏心量R1が「最大」になる位相の場合、回転ディスク側切欠部6eは、一部のみが鍔部5dのカムディスク側切欠部5eと連通する。
この場合、図8Aに示すように、第2油路からピニオンシャフト7の外周面に供給された潤滑油の一部が、回転ディスク側切欠部6eと鍔部5dとによって形成された排出用油路から排出され、残りの潤滑油のみが、潤滑油供給孔6cを介して、コネクティングロッド軸受16に供給される。
図9Bに示すように、相対位相が偏心量R1が「大」になる位相(車両の走行速度が最高速度になる位相)の場合、回転ディスク側切欠部6eは、その全てが鍔部5dによって覆われる。
この場合、図8Bに示すように、第2油路からピニオンシャフト7の外周面に供給された潤滑油が、回転ディスク側切欠部6eと鍔部5dとによって形成された排出用油路から排出されず、全ての潤滑油が、潤滑油供給孔6cを介して、コネクティングロッド軸受16に供給される。
図9Cに示すように、相対位相が偏心量R1が「小」になる位相の場合、回転ディスク側切欠部6eは、半分程度が鍔部5dのカムディスク側切欠部5eと連通する。
この場合、図8Cに示すように、第2油路からピニオンシャフト7の外周面に供給された潤滑油の半分程度の量が、回転ディスク側切欠部6eと鍔部5dとによって形成された排出用油路から排出され、残りの潤滑油のみが、潤滑油供給孔6cを介して、コネクティングロッド軸受16に供給される。
図9Dに示すように、相対位相が偏心量R1が「0」になる位相の場合、回転ディスク側切欠部6eは、その半分以上が鍔部5dのカムディスク側切欠部5eと連通する。
この場合、図8Dに示すように、第2油路からピニオンシャフト7の外周面に供給された潤滑油の半分以上の量が、回転ディスク側切欠部6eと鍔部5dとによって形成された排出用油路から排出され、残りの潤滑油のみが、潤滑油供給孔6cを介して、コネクティングロッド軸受16に供給される。
本実施形態の無段変速機1では、第1油路7c、第2油路7d、潤滑油供給孔6c(第3油路)及び排出用油路を備えているので、潤滑油供給孔6cを介してコネクティングロッド軸受16に供給される潤滑油の量が、偏心量R1の変化に応じて変化する。したがって、てこクランク機構20のコネクティングロッド軸受16に適切な量の潤滑油を供給することができる。
以上、図示の実施形態について説明したが、本発明はこのような形態に限られるものではない。
例えば、本発明の鍔部及び回転部側孔部の形状は、上記実施形態において示したような形状に限定されるものではなく、カム部と回転部との相対位相に応じて、形成される排出用油路の排出口の開度が異なるものであればよい。例えば、カム部側孔部及び回転部側孔部を必ずしも切欠きとする必要はない。