JP5896165B2 - 酸洗後の鋼板表面の黄変防止方法 - Google Patents
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Description
上記黄変を防止する技術としては、これまでに幾つかの提案がなされている。例えば、特許文献5には、鋼帯を酸洗する酸洗処理のリンス工程において、黄変抑制薬剤を含むリンス液と窒素ガスとを混合して鋼帯に吹き付けることで鋼帯の変色を防止する技術が、また、特許文献6には、酸洗した鋼帯に変色防止剤を噴霧することで洗浄工程において、ラインを停止する際、ラインの停止直前に、変色防止剤の噴霧を開始し、次いで、洗浄水の噴射を停止し、その後、所定距離の通板の後に、通板の停止と変色防止剤の噴霧停止を順次行うことで鋼帯の変色を防止する技術が、提案されている。
近年、高強度冷延鋼板は、冷間圧延した冷延鋼板を再結晶させると同時に、所望の強度と加工性を付与するため、連続焼鈍炉で仕上焼鈍して製造することが多くなっている。連続焼鈍炉では、通常、雰囲気ガスとして非酸化性または還元性のガスが用いられており、露点も厳格に管理されている。しかし、焼鈍時の雰囲気ガスの成分や露点をいかに厳格に管理しても、Feと比較して易酸化性であるSiやMn等の元素は、鋼板表面にSi酸化物(SiO2)やSi−Mn系複合酸化物等のSi含有酸化物層を形成する。このうち、Si−Mn系複合酸化物は酸に容易に溶解するが、SiO2は難溶性であり、鋼板表面だけでなく、地鉄の内部にまで形成される。そのため、電着塗装の下地処理として施される化成処理(リン酸塩処理)における鋼板表面のエッチング性を阻害し、健全な化成処理皮膜の形成に悪影響を及ぼすことが知られている。
しかしながら、上記のような強酸洗を行った場合には、時として鋼板表面が黄色く変色する場合がある(以降、「黄変」ともいう。)。そして、この黄変した鋼板の化成処理性や塗装後耐食性を調査したところ、変色のない鋼板と比較して、いずれも大きく劣っていることが明らかとなった。
硝酸による強酸洗では、鋼板表層のSi含有酸化物層は除去されるものの、酸洗後の鋼板表面には、水洗までの間、酸化力の強い硝酸成分を含む酸洗液膜が残存する。その結果、鋼板表面では乾燥過程で酸洗液膜が乾燥し、酸洗液が濃縮していくこと、および、酸洗液膜中では、鉄溶解反応が継続して進行して、鉄イオン(Fe2+やFe3+等)と同時に水素が発生してpHを上昇させるため、上記鉄イオンは鉄系水酸化物として鋼板表面へ沈着することになる。また、洗浄水中には、酸洗によって酸洗液中に生じた鉄イオンが鋼板に付随して持ち込まれて多量に存在しているため、やはり、鉄系水酸化物として鋼板表面に沈着する。さらに、上記洗浄水中には、同じく酸洗液から持ち込まれた硝酸イオンや弗化物イオン等が含まれており、これらの濃度が高い場合には、鋼板表面で鉄溶解反応が進行して鉄イオンを生成し、鉄系水酸化物をさらに増大させることになる。この鉄系水酸化物は、水が存在する水濡れ状態のままであれば、その後の水洗で除去されるが、鋼板表面が一旦乾燥して鉄系水酸化物から水分子が取れ、鉄系酸化物として鋼板表面に付着した場合には、その後の水洗やでは容易に除去することができず、鋼板表面の黄変を引き起こすものと考えられる。
Si:1.0〜2.0mass%
Siは、固溶強化能が大きく、加工性を大きく損なうことなく鋼の強度を高めるため、鋼の高強度化を達成するのに有効な元素であるので、1.0maas%以上の添加が好ましい。また、Siは、化成処理性や塗装後耐食性に悪影響を及ぼす元素でもあるが、1.0mass%未満では、化成処理条件の悪化による影響は小さい。一方、Si添加量が2.0mass%以下であれば、熱間圧延性や冷間圧延性の低下が小さいので、生産性に悪影響を及ぼすことがない。また、鋼板自体の延性低下を招くこともない。よって、Siは1.0〜2.0mass%の範囲で添加するのが好ましく、より好ましくは1.0〜1.6mass%の範囲である。
C:0.01〜0.20mass%
Cは、鋼を高強度化するのに有効な元素であり、さらに、TRIP(変態誘起塑性:Transformation induced Plasticity)効果を有する残留オーステナイトや、ベイナイト、マルテンサイトを生成させるのにも有効な元素である。Cが0.01mass%以上であれば上記効果が得られる。また、Cが0.20mass%以下であれば、溶接性の低下が生じない。よって、Cは0.01〜0.20mass%の範囲で添加するのが好ましく、0.10〜0.20mass%の範囲で添加するのがより好ましい。
Mnは、鋼を固溶強化して高強度化するとともに、焼入性を高め、残留オーステナイトやベイナイト、マルテンサイトの生成を促進する作用を有する元素である。このような効果は、1.0mass%以上の添加で発現する。一方、Mnが3.0mass%以下であれば、コストの上昇を招かずに上記効果を得ることができる。よって、Mnは1.0〜3.0mass%の範囲で添加するのが好ましく、1.0〜2.8mass%の範囲で添加するのがより好ましい。
Pは、固溶強化能の大きい割に絞り性を害さない元素であり、高強度化を達成するのに有効な元素である。そのため、0.005mass%以上含有させることが好ましい。ただし、Pは、スポット溶接性を害する元素であるが、0.05mass%以下であれば問題は生じない。よって、Pは0.05mass%以下が好ましく、0.03mass%以下とするのがより好ましい。
Sは、鋼中に不可避的に混入してくる不純物元素であり、MnSとして析出し、鋼板の伸びフランジ性を低上させる有害な成分である。したがって、伸びフランジ性を低下させないためには、Sは0.005mass%以下に制限するのが好ましい。より好ましくは0.003mass%以下である。
Alは、製鋼工程で脱酸剤として添加される元素であり、また、伸びフランジ性を低下させる非金属介在物をスラグとして分離するのに有効な元素である。したがって、0.01mass%以上含有させるのが好ましい。一方、Al添加量が0.06mass%以下であれば、原料コストの上昇を招かずに上記効果を得ることができるので、上限は0.06mass%とするのが好ましい。より好ましくは0.02〜0.04mass%の範囲である。
本発明の鋼板は、Mnに対するSiの含有量比(Si/Mn)が0.4超えであることが好ましい。(Si/Mn)を0.4超えとすることによって、590MPa以上の高強度と優れた加工性を両立させ易くすることができるからである。より好ましくは0.6以上である。
本発明の冷延鋼板の製造方法は、SiやMn等のFeよりも易酸化性の成分を含有する鋼素材(スラブ)を加熱後、熱間圧延し、必要に応じて熱延板焼鈍し、熱延板酸洗し、冷間圧延し、連続焼鈍して所望の強度、加工性を付与した後、硝酸等の強酸化性酸を酸洗液に用いて酸洗して鋼板表層のSi含有酸化物層を地鉄ごと除去した後、鋼板表面に付着した酸洗液や上記酸洗で生成した反応生成物を水洗して除去し、乾燥する工程からなる。
以下、酸洗工程以降の条件について具体的に説明する。
0.5mass%を超えるSiやMn等の易酸化性成分を含有する連続焼鈍後の鋼板表層には、SiO2やSi−Mn系複合酸化物等のSi含有酸化物が多量に形成されており、このままでは化成処理性や塗装後耐食性が著しく低下する。そこで、連続焼鈍後の鋼板表層のSi含有酸化物は、何らかの酸、例えば、硝酸、塩酸、弗酸、硫酸およびそれらを混合した酸等のいずれかを用いて酸洗し、除去する必要がある。
また、酸洗に、上記いずれの酸を用いる場合でも、酸洗液の温度を20〜70℃の範囲とし、酸洗時間を3〜30秒の範囲として行うのが好ましい。
上記酸洗後の鋼板は、その後、洗浄水中に浸漬したり、洗浄水をスプレーしたり、ブラッシングしたりして、鋼板表面に付着した酸洗液、および、酸洗で生成した反応生成物を鋼板表面から除去する水洗工程を経た後、乾燥むらが出ないよう急速乾燥して製品板とする。
上記酸洗、水洗、乾燥工程からなる本発明の製造工程において重要なことは、酸洗後の鋼板表面の黄変を防止するため、酸洗後の鋼板が次の水洗工程に至るまでの間、鋼板表面を乾燥させることなく、常にウェット状態(水濡れ状態)に保持する必要があることである。酸洗後の鋼板表面には、酸洗によって生成した鉄系酸化物が存在する他、酸洗液中に含まれる鉄イオンや、鋼板表面に付着した硝酸イオン等による溶解反応により発生した鉄イオンが、鉄系水酸化物として多量に付着している。これらが乾燥すると、鉄系酸化物や鉄系水酸化物が変質して黄変を起こしてしまうからである。
なお、鋼板表面をウェット状態に保持する方法については、特に制限はなく、例えば、酸洗〜再酸洗までの間において、鋼板表面に水をスプレーしたりミスト噴霧したり、また、湿度を高めて乾燥を抑制したりする方法等で行うことができる。なお、鋼板表面にスプレーする水は、pH≧6以上の真水であることが好ましく、pH:6〜7の真水であることがさらに好ましい。
さらに、本発明において重要なことは、酸洗後の鋼板表面の黄変を防止するため、上記鋼板表面をウェット状態に保持(キープウェット)することに加えて、水洗に用いる洗浄水中の鉄イオン濃度を10g/L以下に制限する必要があることである。洗浄水中に含まれる鉄イオンは、鉄系水酸化物を生成して鋼板表面に沈着し、黄変を促進するからである。好ましくは5g/L以下である。
上記高強度冷延鋼板から採取したサンプルから70mm×150mmの試験片を切り出し、目視にて、黄変発生部分の面積率を測定した。
a.化成処理条件
上記黄変の評価に用いた各試験片に、日本パーカライジング社製の脱脂剤:FC−E2011、表面調整剤:PL−Xおよび化成処理剤:パルボンドPB−L3065を用いて、下記の標準条件および化成処理液の温度を下げて低温度化した比較条件の2条件で、化成処理皮膜付着量が1.7〜3.0g/m2となるよう化成処理を施した。
<標準条件>
・脱脂工程;処理温度:40°C、処理時間:120秒
・スプレー脱脂、表面調整工程;pH:9.5、処理温度:室温、処理時間:20秒
・化成処理工程;化成処理液の温度:35℃、処理時間:120秒
<低温度化条件>
上記標準条件における化成処理液の温度を33℃に低下した条件
b.腐食試験
上記化成処理を施した試験片の表面に、日本ペイント社製の電着塗料:V−50を用いて、膜厚が25μmとなるように電着塗装を施し、下記3種類の腐食試験に供した。
<塩温水浸漬試験>
化成処理および電着塗装を施した上記試験片の表面に、カッターで長さ45mmのクロスカット疵を付与した後、この試験片を、5mass%NaCl溶液(60℃)に240時間浸漬し、その後、水洗し、乾燥し、カット疵部に粘着テープを貼り付けた後、引き剥がすテープ剥離試験を行い、カット疵部左右を合わせた最大剥離全幅を測定した。この最大剥離全幅が5.0mm以下であれば、耐塩温水浸漬試験における耐食性は良好と評価することができる。
<塩水噴霧試験(SST)>
化成処理、電着塗装を施した上記試験片の表面に、カッターで長さ45mmのクロスカット疵を付与した後、この試験片を、5mass%NaCl水溶液を使用して、JIS Z2371:2000に規定される中性塩水噴霧試験に準拠して1000時間の塩水噴霧試験を行った後、クロスカット疵部についてテープ剥離試験し、カット疵部左右を合わせた最大剥離全幅を測定した。この最大剥離全幅が4.0mm以下であれば、塩水噴霧試験における耐食性は良好と評価することができる。
<複合サイクル腐食試験(CCT)>
化成処理、電着塗装を施した上記試験片の表面に、カッターで長さ45mmのクロスカット疵を付与した後、この試験片を、塩水噴霧(5mass%NaCl水溶液:35℃、相対湿度:98%)×2時間→乾燥(60℃、相対湿度:30%)×2時間→湿潤(50℃、相対湿度:95%)×2時間、を1サイクルとして、これを90サイクル繰り返す腐食試験後、水洗し、乾燥した後、カット疵部についてテープ剥離試験し、カット疵部左右を合わせた最大剥離全幅を測定した。この最大剥離全幅が6.0mm以下であれば、複合サイクル腐食試験での耐食性は良好と評価できる。
Claims (8)
- 連続焼鈍後の鋼板を酸洗して鋼板表層のSi含有酸化物層を除去した後、水洗し、乾燥した鋼板表面の黄変を防止する方法において、上記酸洗と水洗の間の鋼板表面をウェット状態に保持すると共に、上記水洗を、鉄イオン濃度を10g/L以下に低減した洗浄水を用いて行うことを特徴とする鋼板表面の黄変防止方法。
- 上記洗浄水は、さらに硝酸イオン濃度を10g/L以下、塩化物イオンを5g/L以下に低減したものであることを特徴とする請求項1に記載の鋼板表面の黄変防止方法。
- 上記水洗を、温度を20℃以上に保持した洗浄水中に3秒以上浸漬して行うことを特徴とする請求項1または2に記載の鋼板表面の黄変防止方法。
- 上記酸洗を、硝酸濃度が100g/L超え200g/L以下、硝酸濃度に対する塩酸濃度の比R(HCl/HNO3)が0.01〜0.25である硝酸と塩酸を混合した酸洗液を用いて行うことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の鋼板表面の黄変防止方法。
- 上記酸洗を、液温が20〜70℃の酸洗液に、3〜30秒間浸漬して行うことを特徴とする請求項4に記載の鋼板表面の黄変防止方法。
- 上記鋼板は、Si:1.0〜2.0mass%を含有する冷延鋼板であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の鋼板表面の黄変防止方法。
- 上記鋼板は、Si:1.0〜2.0mass%の他に、C:0.01〜0.20mass%、Mn:1.0〜3.0mass%、P:0.05mass%以下、S:0.005mass%以下、Al:0.06mass%以下を含有することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の鋼板表面の黄変防止方法。
- 上記鋼板は、Mnに対するSiの含有量比(Si/Mn)が0.4超えであることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の鋼板表面の黄変防止方法。
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