以下に詳述するように、本発明者らは、大腸菌K4フルクトシル化コンドロイチン莢膜多糖(K4P)の生合成に関与するタンパク質をコードする大腸菌K4遺伝子クラスターを配列決定し、ネイティブ配列に基づくDNAセグメントを合成してアセンブルし、これらの遺伝子を大規模発酵に適した代替宿主細胞中に移入し、これらの宿主細胞における組換えフルクトシル化コンドロイチン莢膜多糖の生産を実証した。代替宿主細胞は非フルクトシル化コンドロイチンを生産することが好ましいので、大腸菌K4によるコンドロイチンのフルクトシル化を担う遺伝子を同定し、代替宿主に移入される大腸菌K4コンドロイチン生合成遺伝子セットから欠失させた。結果として、この遺伝子セットを含有する代替宿主は非フルクトシル化コンドロイチンを生産した。代替宿主によって生産されたこの組換えコンドロイチン(rCH)は、コンドロイチン硫酸製品を生産するために硫酸化することができる。
本明細書において使用する用語「K4P」は、野生型大腸菌K4株によって合成されるネイティブまたは天然フルクトシル化コンドロイチン莢膜多糖を指す。用語「コンドロイチン」はコンドロイチン骨格を指す。コンドロイチンはフルクトシル化体であっても、フルクトシル化されないもの(unfructosylated)(非フルクトシル化(non-fructosylated)体)であってもよい。本明細書において使用する「コンドロイチン」という用語は、特に注記しない限り、フルクトシル化型とフルクトシル化されない型の両方を包含する。さらにまた、本明細書において使用するコンドロイチンという用語は、非硫酸化コンドロイチンを指す。本発明の方法によって生産されるコンドロイチンは、以下に詳しく説明するとおり、酵素的または化学的手段によって硫酸化することができ、その場合、それはコンドロイチン硫酸と呼ばれる。
一局面において、本発明は、大腸菌K4遺伝子セットまたは遺伝子クラスターを含むDNAコンストラクトを含む。本明細書において使用する用語「K4遺伝子クラスター」は、コンドロイチン様莢膜多糖(K4P)の生合成に関与する大腸菌K4由来の遺伝子のセットを指す。用語「K4遺伝子クラスター」は、コンドロイチン様莢膜多糖の生合成に関与する大腸菌K4由来の遺伝子の全てを指すか、これらの遺伝子のサブセットを指すことができる。
実施例1において詳述するように、大腸菌K4は、K4Pと呼ばれるコンドロイチン様莢膜多糖の合成に関与する一組の複数遺伝子を含有する。上述のように、この多糖は、フルクトース残基の付加によって修飾されているコンドロイチン骨格からなる。図2に示すように、これらの遺伝子は、3つの主要領域(領域1(「R1」)、領域2(「R2」)、および領域3(「R3」))に組織化されている。Ninomiyaら(2002)(GenBankアクセッション番号AB079602)が記述した領域2の配列に基づいて、領域2は、莢膜生合成に関係する7つの遺伝子kfoA、kfoB、kfoC、kfoD、kfoE、kfoFおよびkfoGを含むと予想された。Ninomiyaらは、大腸菌K4莢膜遺伝子クラスターの予期される領域1部分および領域3部分の配列を開示していない。しかし、他の大腸菌莢膜遺伝子クラスターの公知の構成に基づいて、領域1は、6つの遺伝子kpsF、kpsE、kpsD、kpsU、kpsC、kpsSを含むと予想され、領域3は2つの遺伝子kpsMおよびkpsTを含むと予想されるであろう。kpsM、kpsT、kpsD、kpsE、kpsCおよびkpsS遺伝子は、細胞質から細胞表面への莢膜多糖のトランスロケーションに必要なタンパク質をコードし、その細胞表面では、成熟莢膜多糖が細胞外膜に、その膜の脂質構成要素への共有結合によって固定されると考えられている(Whitfield, 2006)。kpsFおよびkpsU遺伝子は、CMP-Kdoの生合成における段階を触媒すると予想されるタンパク質をコードする。大腸菌でのコンドロイチン莢膜の生合成におけるCMP-Kdoの役割は提案されているが(Roberts, Annu. Rev. Microbiol. 1996; 50:285-315)、実験的には実証されていない(Whitfield, 2006)。このように、本発明の開示前には、K4遺伝子クラスターは全体で15個の遺伝子を含むと考えられていた。
Ninomiyaらによって報告された配列(GenBankアクセッション番号AB079602)を確認するために、本発明者らは、大腸菌K4株ATCC23502に由来するK4莢膜遺伝子クラスターの領域2を配列決定した。本発明者らによって決定された配列とAB079602配列とを比較したところ、置換、欠失および挿入を含む一塩基対の相違が、26ヶ所に見いだされた。実施例1において詳しく説明するように、これらの相違のいくつかは、本遺伝子クラスターによってコードされる領域2タンパク質の予想アミノ酸配列に、実質的な相違をもたらす。さらにまた、本発明者らは、Ninomiyaらによって遺伝子間配列と同定された領域を調べて、今まで同定されていなかった3つの追加オープンリーディングフレームorf1(本明細書においてはkfoHともいう)、orf2およびorf3(本明細書においてはkfoIともいう)を、領域2に同定した。
3つ全ての領域の遺伝子を含むK4遺伝子クラスター全体の正しい配列を決定するために、大腸菌血清型K4 U1-41株をStatens Serum Institut(デンマーク、コペンハーゲン)から入手した。U1-41はATCC23502株の祖先であり、培養時にK4莢膜多糖を生産すると報告されている。これは、大腸菌血清型別のためのK4参考株でもあり、Rodriguezら(1988)によるK4P構造決定に使用された多糖調製物を生産するためにも使用された。大腸菌U1-41中のK4莢膜遺伝子クラスターにまたがる全部でおよそ23kbのDNAを配列決定した。この配列(SEQ ID NO:117)により、領域1におけるkpsF、kpsE、kpsD、kpsU、kpsCおよびkpsS遺伝子の存在、および領域3におけるkpsMおよびkpsT遺伝子の存在が確認された。U1-41の領域2配列と、ATCC23502の領域2について本発明者らが決定した配列とは、同一であることがわかった。
実施例1において詳述するように、U1-41由来の遺伝子クラスターは、コンドロイチンの生合成に関係するタンパク質をコードすると予想される(Ninomiyaらが先に述べた15個ではなく)17個(IS2配列を除く)のオープンリーディングフレームを含有することがわかった。これらの遺伝子の編成は、大腸菌グループ2莢膜遺伝子クラスターに典型的なものである。保存された遺伝子kpsF、kpsE、kpsD、kpsU、kpsCおよびkpsSを含む領域1と、保存された遺伝子kpsMおよびkpsTを含む領域3が、領域2の9個のオープンリーディングフレームに隣接している。領域1および領域3の遺伝子は、大腸菌におけるグループ2莢膜全ての合成とトランスロケーションに必要なタンパク質を含んでいる。領域1は、上述のようにCMP-Kdoの生合成における段階を触媒すると予想される酵素をコードする2つの遺伝子(kpsFおよびkpsU)も含んでいる。領域2に同定された9個の遺伝子のうち3つは、莢膜合成に関係する明確に定義された活性を有するタンパク質をコードする:kfoA(UDP-GlcNAcをUDP-GalNAc前駆体に転化するUDP-GlcNAcエピメラーゼ)、kfoF(UDP-GlcをUDP-GlcUA前駆体に転化するUDP-Glcデヒドロゲナーゼ)、およびkfoC(コンドロイチンシンターゼ、すなわち前駆体UDP-GalNAcまたはUDP-GlcUAのどちらか一つを受容体コンドロイチン分子に付加することができるポリメラーゼ)。
K4莢膜遺伝子クラスターの領域2に存在する他の遺伝子kfoB、kfoG、kfoD、kfoE、kfoH(orf1)、およびkfoI(orf3)がコードするタンパク質の機能はわかっていなかった。kfoB遺伝子とkfoG遺伝子は、他のグリコサミノグリカン(GAG)莢膜を生産することが知られている細菌、例えばパスツレラ・マルトシダ血清型A、F、およびD(Townsend et al., J .Clin. Microbiol. 2001; 39: 924-929)、ならびに大腸菌血清型K5(Petit et al., Mol. Microbiol. 1995; 4:611-620)などの莢膜クラスター中に存在する遺伝子がコードするものと相同なタンパク質をコードしている。この状況証拠から、kfoBおよびkfoGは、GAG含有K4莢膜の生合成に役割を果たしうることが示唆された。実施例7において詳しく説明するとおり、本発明者らは、大腸菌におけるコンドロイチンの生産にとってkfoBおよびkfoG遺伝子は不可欠ではないが、コンドロイチンの最適な生産にはkfoG遺伝子が必要であることを見いだした。
本発明以前に、kfoD、kfoE、kfoH(またはorf1)、およびkfoI(またはorf3)が、K4莢膜の生合成に関与すると思わせる証拠はなかった。興味深いことに、4つの連続するK4遺伝子kfoD、kfoI(またはorf3)、kfoE、およびkfoH(またはorf1)は、連続するパスツレラ・マルトシダ血清型B遺伝子bcbDEFGおよびパスツレラ・マルトシダ血清型E遺伝子ecbDEFGにホモログを有することがわかった。しかしこれら2つのパスツレラ株はコンドロイチン生産株であることが知られておらず、大腸菌K4におけるこれらの遺伝子の役割は、本発明以前は、知られていなかった。したがって、kfoD、kfoI(orf3)、kfoE、およびkfoH(orf1)は、コンドロイチンの合成には関与していないかもしれないと思われた。実施例6および7に示すように、これらの遺伝子はいずれも、コンドロイチンの生合成には必要とされないが、K4遺伝子セットによって生産されるコンドロイチンのフルクトシル化には、これらの遺伝子の1つまたは複数が不可欠である。
U1-41 K4莢膜遺伝子クラスターの配列を根拠として使用して、本発明者らはさらに、大腸菌、キサントモナス・カンペストリス、スフィンゴモナス・エロデア(Sphingomonas elodea)、および枯草菌(Bacillus subtilis)などの宿主における発現にコドン最適化された合成遺伝子を設計した。これらのコドン最適化遺伝子の設計と合成は、実施例2において詳しく説明する。実施例4では、異種細菌中でこれらの遺伝子を発現させるためのプラスミドベクターの構築について述べる。
本発明のコドン最適化遺伝子の全ヌクレオチド配列、およびそれらがコードするアミノ酸配列は、次のとおりである。本発明において使用されるkpsFの全ヌクレオチド配列は、本明細書では、SEQ ID NO:1として表される。kpsFは、本明細書ではSEQ ID NO:2として表される327アミノ酸の配列をコードする981ヌクレオチドの配列(停止コドンを含まない)である。kpsEの全ヌクレオチド配列は、本明細書では、SEQ ID NO:3として表される。kpsEは、本明細書ではSEQ ID NO:4として表される382アミノ酸の配列をコードする1146ヌクレオチドの配列(停止コドンを含まない)である。kpsDの全ヌクレオチド配列は、本明細書では、SEQ ID NO:5として表される。kpsDは、本明細書ではSEQ ID NO:6として表される558アミノ酸の配列をコードする1674ヌクレオチドの配列(停止コドンを含まない)である。kpsUの全ヌクレオチド配列は、本明細書では、SEQ ID NO:7として表される。kpsUは、本明細書ではSEQ ID NO:8として表される246アミノ酸の配列をコードする738ヌクレオチドの配列(停止コドンを含まない)である。kpsCの全ヌクレオチド配列は、本明細書では、SEQ ID NO:9として表される。kpsCは、本明細書ではSEQ ID NO:10として表される675アミノ酸の配列をコードする2025ヌクレオチドの配列(停止コドンを含まない)である。kpsSの全ヌクレオチド配列は、本明細書では、SEQ ID NO:11として表される。kpsSは、本明細書ではSEQ ID NO:12として表される403アミノ酸の配列をコードする1209ヌクレオチドの配列(停止コドンを含まない)である。kpsMの全ヌクレオチド配列は、本明細書では、SEQ ID NO:13として表される。kpsMは、本明細書ではSEQ ID NO:14として表される258アミノ酸の配列をコードする774ヌクレオチドの配列(停止コドンを含まない)である。kpsTの全ヌクレオチド配列は、本明細書では、SEQ ID NO:15として表される。kpsTは、本明細書ではSEQ ID NO:16として表される222アミノ酸の配列をコードする666ヌクレオチドの配列(停止コドンを含まない)である。kfoAの全ヌクレオチド配列は、本明細書では、SEQ ID NO:17として表される。kfoAは、本明細書ではSEQ ID NO:18として表される339アミノ酸の配列をコードする1017ヌクレオチドの配列(停止コドンを含まない)である。kfoBの全ヌクレオチド配列は、本明細書では、SEQ ID NO:19として表される。kfoBは、本明細書ではSEQ ID NO:20として表される546アミノ酸の配列をコードする1638ヌクレオチドの配列(停止コドンを含まない)である。kfoCの全ヌクレオチド配列は、本明細書では、SEQ ID NO:21として表される。kfoCは、本明細書ではSEQ ID NO:22として表される686アミノ酸の配列をコードする2058ヌクレオチドの配列(停止コドンを含まない)である。kfoDの全ヌクレオチド配列は、本明細書では、SEQ ID NO:23として表される。kfoDは、本明細書ではSEQ ID NO:24として表される477アミノ酸の配列をコードする1431ヌクレオチドの配列(停止コドンを含まない)である。kfoEの全ヌクレオチド配列は、本明細書では、SEQ ID NO:25として表される。kfoEは、本明細書ではSEQ ID NO:26として表される522アミノ酸の配列をコードする1566ヌクレオチドの配列(停止コドンを含まない)である。kfoFの全ヌクレオチド配列は、本明細書では、SEQ ID NO:27として表される。kfoFは、本明細書ではSEQ ID NO:28として表される389アミノ酸の配列をコードする1167ヌクレオチドの配列(停止コドンを含まない)である。kfoGの全ヌクレオチド配列は、本明細書では、SEQ ID NO:29として表される。kfoGは、本明細書ではSEQ ID NO:30として表される488アミノ酸の配列をコードする1464ヌクレオチドの配列(停止コドンを含まない)である。
orf1(本明細書ではkfoHともいう)の全ヌクレオチド配列は、本明細書では、SEQ ID NO:31として表される。orf1は、本明細書ではSEQ ID NO:32として表される241アミノ酸の配列をコードする723ヌクレオチドの配列(停止コドンを含まない)である。orf3(本明細書ではkfoIともいう)の全ヌクレオチド配列は、本明細書では、SEQ ID NO:33として表される。orf3は、本明細書ではSEQ ID NO:34として表される126アミノ酸の配列をコードする378ヌクレオチドの配列(停止コドンを含まない)である。
さまざまな態様において、本発明は、大腸菌K4遺伝子クラスター、大腸菌K4遺伝子クラスターの1つまたは複数の領域、大腸菌K4遺伝子クラスター由来の遺伝子の1つまたは複数のサブセット、大腸菌K4遺伝子クラスター由来の1つまたは複数の個別遺伝子、またはそれらの組合せを含むDNAコンストラクトを含み、本コンストラクトは、細菌宿主細胞においてコンドロイチンを生産するという目的またはコンドロイチンの量を増加させるという目的に有用である。さまざまな態様において、コンストラクトは、上述した17遺伝子のクラスター全体を含むか、上述した17遺伝子のクラスターの1つまたは複数の遺伝子、すなわちkpsF、kpsE、kpsD、kpsU、kpsC、kpsS、kpsM、kpsT、kfoA、kfoB、kfoC、kfoD、kfoE、kfoF、kfoG、kfoH、およびkfoIを含むことができる。いくつかの態様では、コンストラクトが、K4クラスターの1つまたは複数の領域(すなわち、本明細書に記載する領域1、2、および/または3)を含む。いくつかの態様では、コンストラクトが、K4クラスター由来の遺伝子の1つまたは複数のサブセット(本明細書に記載する領域1、2、および/または3由来の遺伝子のサブセットを含む)を含む。コンストラクトは、クラスター中の遺伝子がクラスター中の他の任意の遺伝子に対して任意の順序で存在する遺伝子クラスターを含むことができる。したがって、本コンストラクト内では、遺伝子クラスター中の遺伝子の順序が、K4クラスター内の遺伝子の天然の順序とは異なりうる。同様に、コンストラクトは、K4クラスター由来の他の任意の領域、遺伝子のサブセット、または個別遺伝子に対してコンストラクト内で任意の順序にあることができる、K4クラスター由来の領域、K4クラスター由来の遺伝子のサブセット、またはK4クラスター由来の遺伝子を含むことができる。いくつかの態様では、遺伝子がコンストラクト内に指定された順序で存在する。コンストラクトは、上述の大腸菌血清型K4 U1-41株から単離された1つまたは複数のネイティブ遺伝子(すなわち大腸菌K4 U1-41または他の血清型K4株中に存在する配列を有する遺伝子)および/または1つまたは複数の合成遺伝子、すなわち、U1-41から単離されたネイティブ遺伝子に基づいているが、DNA配列が、これらの遺伝子によってコードされるアミノ酸配列を改変させずに、細菌宿主細胞において最適なコドン使用頻度になるように修飾されている遺伝子を含むことができる。そのような合成遺伝子の設計と製造は実施例2において説明する。
上述のように、そしてさらに実施例6および7において詳しく説明するように、大腸菌におけるコンドロイチンのフルクトシル化にはkfoD、kfoI、kfoE、およびkfoH遺伝子の1つまたは複数が不可欠であるが、これらの遺伝子はいずれもコンドロイチンの合成には必要とされない。これらの遺伝子の4つ全てを同時に脱落または失活させると、フルクトシル化されないコンドロイチンが生産されることになる。いくつかの態様において、本発明のコンストラクトは、kfoD、kfoI、kfoE、およびkfoHの1つまたは複数の機能的遺伝子を含有しない。言い換えると、これらの態様では、kfoD、kfoI、kfoE、およびkfoHの1つまたは複数の機能的遺伝子が、コンストラクト中に存在しない。機能的遺伝子を含有しないコンストラクト(すなわち、機能的遺伝子が存在しないコンストラクト)には、遺伝子全体が存在しないコンストラクトだけでなく、遺伝子またはその一部は存在するが、それが機能的でない(すなわち不活性である)コンストラクトも含まれる。いくつかの態様では、本発明のコンストラクトが、kfoD、kfoI、kfoE、およびkfoHの1つまたは複数が不活化するように修飾された遺伝子クラスターを含む。
いくつかの態様において、本発明が包含するコンストラクトは、kpsF、kpsE、kpsD、kpsU、kpsC、kpsS、kfoA、kfoC、およびkfoFを含む遺伝子クラスターを含み、かつkfoD、kfoI、kfoE、およびkfoHの1つまたは複数の機能的遺伝子を含有しない。いくつかの態様において、本コンストラクトは、本明細書において述べるとおり、非病原性細菌宿主細胞においてコンドロイチンを生産するのに適している。いくつかの態様では、コンドロイチンが非フルクトシル化体である。いくつかの態様において、コンストラクトは、さらに、kfoGおよび/またはkfoBを含むことができる。上述のように、kfoB遺伝子とkfoG遺伝子は、コンドロイチンの生産に不可欠であるとは認められなかったが、コンドロイチンの最適な生産にはkfoG遺伝子が必要とされることがわかった(実施例7参照)。いくつかの態様において、本発明のコンストラクトはさらに、kpsMおよび/またはkpsTを含むことができる。
いくつかの態様において、これらのコンストラクトには、発現ベクターpDD66(kpsMT-kfoABCFG-kpsFEDUCSを含有する発現ベクター)、pDD67(kpsFEDUCS-kpsMT-kfoABCFGを含有する発現ベクター)、pCX040(kpsMT-kfoACFG-kpsFEDUCSを含有する発現ベクター)、pCX041(kpsMT-kfoABCF-kpsFEDUCSを含有する発現ベクター)、pCX042(kpsFEDUCS-kpsMT-kfoACFGを含有する発現ベクター)、pCX043(kpsFEDUCS-kpsMT-kfoABCFを含有する発現ベクター)、およびpCX096(kpsFEDUCS-kfoABCFGを含有する発現ベクター)が含まれる。別の態様は、発現プラスミドpBR1052である。実施例4で述べるように、pBR1052は、pDD66と同じK4遺伝子セット(kpsMT-kfoABCFG-kpsFEDUCS)を含有し、さらに、kpsF遺伝子のすぐ上流に挿入されたPmプロモーター配列の2つ目のコピーを有する。pDD66のヌクレオチド配列はSEQ ID NO:35によって表され;pDD67のヌクレオチド配列はSEQ ID NO:36によって表され;pCX040のヌクレオチド配列はSEQ ID NO:37によって表され;pCX041のヌクレオチド配列はSEQ ID NO:38によって表され;pCX042のヌクレオチド配列はSEQ ID NO:39によって表され;pCX043のヌクレオチド配列はSEQ ID NO:40によって表され;pCX096のヌクレオチド配列はSEQ ID NO:149によって表され;pBR1052のヌクレオチド配列はSEQ ID NO:41によって表される。これらのDNAコンストラクトの設計および構築は実施例4において詳しく説明する。
いくつかの態様において、本発明は、細胞内コンドロイチン(すなわち宿主細胞から分泌されないコンドロイチン)を生産するという目的に有用なコンストラクトを包含する。コンドロイチンの細胞内生産は、培養培地中の高レベルの多糖に起因する発酵の粘性を排除するために望ましい場合がある。また、細胞内生産では分泌よりも高レベルのコンドロイチンが得られる可能性もある。いくつかの態様において、本コンストラクトは、領域3のkpsMおよびkpsTの少なくとも1つの機能的遺伝子を含有しない。いくつかの態様において、コンストラクトは、領域3のkpsMおよびkpsTの少なくとも1つを含有しないかそれが不活化するように修飾された遺伝子クラスターを含む。いくつかの態様において、コンストラクトは、領域1のkpsE、kpsD、kpsC、およびkpsSの少なくとも1つの機能的遺伝子を含有しない。いくつかの態様において、コンストラクトは、領域1のkpsE、kpsD、kpsCおよびkpsSの少なくとも1つを含有しないか、それが不活化するように修飾された遺伝子クラスターを含む。いくつかの態様において、コンストラクトは、領域3のkpsMおよびkpsTの少なくとも1つならびに領域1のkpsE、kpsD、kpsC、およびkpsSの少なくとも1つの機能的遺伝子を含有しない。いくつかの態様において、コンストラクトに含まれる遺伝子クラスターは、領域3のkpsMおよびkpsTの少なくとも1つならびに領域1のkpsE、kpsD、kpsC、およびkpsSの少なくとも1つを含有しないか、またはそれらが不活化するように修飾されている。これらのコンストラクトについては実施例4および9において述べる。
いくつかの態様において、本発明は、kfoA、kfoC、およびkfoFを含む遺伝子クラスターを含むコンストラクトを包含し、遺伝子クラスターは、kpsM、kpsT、kpsE、kpsD、kpsC、およびkpsSの1つまたは複数の機能的遺伝子を含有しない。いくつかの態様において、本コンストラクトは、本明細書に記載する非病原性細菌宿主細胞においてコンドロイチンを生産するのに適している。いくつかの態様では、コンドロイチンが宿主細胞から分泌されない。いくつかの態様では、コンドロイチンが非フルクトシル化体である。いくつかの態様では、コンストラクトが、kfoD、orf3、kfoE、およびorf1の1つまたは複数の機能的遺伝子も含有しない。いくつかの態様において、コンストラクトはさらに、kfoGおよび/またはkfoBを含むことができる。いくつかの態様では、コンストラクトが、kfoA、kfoB、kfoC、kfoF、およびkfoGを含む。
いくつかの態様において、本発明のコンストラクトは、kfoA、kfoB、kfoC、kfoF、kfoG、およびそれらの組合せからなる群より選択される遺伝子を含み、kpsM、kpsT、kpsE、kpsD、kpsC、およびkpsSの1つまたは複数の機能的遺伝子を含有しない。いくつかの態様において、本コンストラクトは、本明細書に記載する非病原性細菌宿主細胞においてコンドロイチンを生産するのに適している。いくつかの態様において、本コンストラクトは、本明細書に記載する非病原性細菌宿主細胞におけるコンドロイチンの量を増加させるのに適している。いくつかの態様では、コンストラクトが、宿主染色体に組み込まれた大腸菌K4遺伝子クラスター、前記クラスターの領域、前記クラスターの遺伝子のサブセット、または前記クラスターの遺伝子の1つまたは複数の既存のコピーを含む細菌宿主細胞に移入される。いくつかの態様では、コンドロイチンが非フルクトシル化体である。いくつかの態様において、コンストラクトは、kfoD、orf3、kfoE、およびorf1の1つまたは複数の機能的遺伝子も含有しない。いくつかの態様では、コンストラクトが、kfoA、kfoB、kfoC、kfoF、およびkfoGを含む。
いくつかの態様において、本発明のコンストラクトは、発現ベクターpCX039(kfoABCFGを含有する発現ベクター)、pCX044(kfoACFGを含有する発現ベクター)、pCX092(kfoABCFを含有する発現ベクター)、pCX045(kpsMT-kfoABCFG-kpsFEDUSを含有する発現ベクター)、およびpCX048(kpsM-kfoABCFG-kpsFEDUCSを含有する発現ベクター)を含む。pCX039のヌクレオチド配列はSEQ ID NO:42によって表され;pCX044のヌクレオチド配列はSEQ ID NO:43によって表され;pCX092のヌクレオチド配列はSEQ ID NO:154によって表され;pCX045のヌクレオチド配列はSEQ ID NO:44によって表され;pCX048のヌクレオチド配列はSEQ ID NO:45によって表される。これらのDNAコンストラクトの設計および構築は、実施例4において詳しく説明する。
いくつかの態様において、本発明のコンストラクトは、発現ベクターpCX075(kfoABFGを含有する発現ベクター)、pCX081(kfoABCGを含有する発現ベクター)、pCX082(kfoBCFGを含有する発現ベクター)、pCX101(kfoABCFG-kpsMTを含有する発現ベクター)、pBR1102(kfoABCFGを含有する発現ベクター)、pBR1100(kfoABCFGを含有する発現ベクター)、およびpBR1101(kfoABCFGを含有する発現ベクター)を含む。pCX075のヌクレオチド配列はSEQ ID NO:153によって表され;pCX081のヌクレオチド配列はSEQ ID NO:151によって表され;pCX082のヌクレオチド配列はSEQ ID NO:152によって表され;pCX101のヌクレオチド配列はSEQ ID NO:150によって表され;pBR1102のヌクレオチド配列はSEQ ID NO:170によって表され;pBR1100のヌクレオチド配列はSEQ ID NO:171によって表され;pBR1101のヌクレオチド配列はSEQ ID NO:172によって表される。これらのDNAコンストラクトの設計および構築は、実施例18および20において詳しく説明する。
本発明のコンストラクトはさらに、プロモーターを含むことができる。プロモーターは、本明細書に記載する細菌宿主細胞における遺伝子クラスターの発現を駆動する能力を有するべきである。所望の細菌宿主細胞における発現を駆動するのに有用なそのようなプロモーターを当業者は数多く熟知しており、それらを本発明において使用することができる。異種タンパク質を発現させるためによく使用されてきたプロモーターの例には、Pm、lac、trp、tac、λpL、T7、phoA、araC、xapA、cadおよびrecAが含まれるが、それらに限定されるわけではない(例えばWeikert et al., Curr. Opin. Biotechnol. 1996; 7: 494-499を参照されたい)。そのようなプロモーターは構成的または誘導性であることができる。終結制御領域も、好ましい宿主にとってネイティブであるさまざまな遺伝子から得ることができる。任意で、終結部位は不必要である場合もある。
いくつかの態様において、本発明のコンストラクトは、PmプロモーターをxylS調節遺伝子と一緒に含む(Mermod et al.,J. Bacteriol. 1986; 167: 447-54)。シュードモナス・プチダ(Pseudomonas putida)TOLプラスミドから単離されるPmプロモーターとその調節遺伝子xylSは、さまざまなグラム陰性細菌において機能することが示された強力でよく調節されたプロモーターを与える(Blatny et al., Plasmid 1997; 38: 35-51)。XylSタンパク質は、単量体または二量体として存在することができる。二量体型のXylSタンパク質は、Pmプロモーターに結合して転写を刺激することができる。XylSタンパク質の二量体化は、そしてそれゆえにPmプロモーターにおける転写開始は、例えばXylSに直接結合してこのタンパク質の二量体化を促進するメタトルイル酸(3-メチルベンゾエート)などといった一定のエフェクター分子によって強化される(Dominguez-Cuevas et al., J.Bact. 2008; 190: 3118-3128)。プロモーターは、遺伝子クラスターの1つまたは複数の遺伝子に機能的に連結することができる。
本発明のコンストラクトはさらに、第2のプロモーターを含むことができる。例えば、代替宿主におけるクローン化K4遺伝子の発現の分析により、一定の遺伝子または遺伝子セットの発現レベルが最適未満であることが示された場合は、最適なレベルでは発現していない遺伝子または遺伝子セットの転写が強化されるように選択された位置で、発現コンストラクトに第2のプロモーターを付加することができる。典型的には、付加されるプロモーターは、対象となる遺伝子または遺伝子セットのすぐ上流(すなわち5'側)に挿入されるであろう。第2のプロモーターはPmであるか、K4遺伝子セットを発現させるのに有用なプロモーターの例として上に列挙したプロモーターのいずれかであることができる。いくつかの態様において、第2のプロモーターはPmであることができる。第2のプロモーターは、遺伝子クラスターの1つまたは複数の遺伝子に機能的に連結することができる。ある態様では、第2のプロモーターを、kpsFEDUCS遺伝子セットに機能的に連結することができる。例えば、実施例4に記載する発現ベクターpBR1052を参照されたい。第2のプロモーターを使って発現させることまたは発現を増強することが有利であるだろう遺伝子または遺伝子の組合せは、任意の所与のプラスミド遺伝子セットまたは染色体遺伝子セットについて、ウェスタンブロット分析によって実験的に決定することができる。
本発明のコンストラクトはさらに、特定抗生物質に対する耐性を付与する抗生物質耐性遺伝子を含むことができる。そのような遺伝子は当技術分野において周知である。抗生物質耐性遺伝子の例には、クロラムフェニコール耐性遺伝子(CamR)、カナマイシン耐性遺伝子(KanR)、アンピシリン耐性遺伝子(AmpR)、テトラサイクリン耐性遺伝子(TetR)、スペクチノマイシン耐性遺伝子(SpcR)、スルホンアミド耐性遺伝子(SuR)、ブレオマイシン耐性遺伝子(BleR)、ストレプトマイシン耐性遺伝子(StrR)、カルベニシリン耐性遺伝子(CbR)およびエリスロマイシン耐性遺伝子(EryR)が含まれるが、それらに限定されるわけではない。
本発明のコンストラクトは、細菌宿主細胞においてコンドロイチンを生産するのに有用である。本発明では任意の細菌細胞を宿主細胞として使用することができるが、いくつかの態様では、宿主がグラム陰性細菌である。グラム陰性細菌の例には、エシェリキア、シュードモナス、キサントモナス、メチロモナス、アシネトバクター、およびスフィンゴモナスが含まれるが、それらに限定されるわけではない。いくつかの態様では、宿主が非病原性グラム陰性細菌である。非病原性グラム陰性細菌の例には、大腸菌K-12または大腸菌Bなどの非病原性大腸菌、キサントモナス・カンペストリス、スフィンゴモナス・エロデア、およびシュードモナス・プチダが含まれるが、それらに限定されるわけではない。
自らのネイティブ細胞外多糖を製造することができない宿主の派生株が望ましい。そのような派生株宿主の使用は、K4遺伝子セットが導入された場合に、組換えコンドロイチン(rCH)の生合成の視覚的および化学的同定と、宿主によって生産されたrCHの精製とを容易にするであろう。さらにまた、適当に設計された派生株宿主におけるrCHの生合成は、ネイティブ多糖合成との競合による制限を受けないだろう。例えば、ネイティブ多糖生合成経路の第1グリコシルトランスフェラーゼ遺伝子の不活化または欠失は、ネイティブ経路によるいかなる潜在的脂質担体の利用も防止し、かつネイティブ経路の酵素とK4酵素とが、脂質担体に関して、または新生多糖鎖に作用する他の任意の細胞構成要素であって利用可能性に制約があるかもしれないものに関して、競合するのを防止するであろう。ネイティブ生合成遺伝子クラスター全体の不活化(例えば欠失によるもの)は、競合的要素のほとんどを除去するであろうが、生理機能および/または膜構造に対して望ましくない効果を潜在的に有しうる。
実施例3において詳述するように、本発明者らは、一例として、大腸菌K-12(「K-12」)、大腸菌B(「EcB」)、およびキサントモナス・カンペストリス病原型カンペストリス(Xanthomonas campestris pv.campestris)(「Xcc」)を、本発明のコンストラクトを発現させるための宿主として使用したが、これらの例に限定しようという意図はない。ネイティブ細胞外多糖を合成するための酵素をコードする遺伝子クラスターの1つまたは複数の遺伝子に欠失を含む派生株宿主の生成は、実施例3において詳細に述べる二段階「ポップイン/ポップアウト」相同性駆動的方法を使って行った。例えばコラン酸(M抗原)は多くの腸内細菌が生産する細胞外多糖である。コラン酸生合成が欠損しているか不完全である大腸菌K-12および大腸菌B株を作出した。MSC188およびMSC175株は、それぞれ、コラン酸オペロン全体の欠失、およびコラン酸生合成に際して脂質担体への第1糖の負荷を担うグリコシルトランスフェラーゼ酵素をコードするwcaJ遺伝子の欠失を含む、大腸菌K-12株の派生株である。MSC364株は、コラン酸オペロン全体の欠失を含む大腸菌Bの派生株である。同様に、細胞外多糖キサンタンガムの生合成が欠損しているか不完全であるキサントモナス・カンペストリス病原型カンペストリス株も作出した。MSC225およびMSC226株は、グリコシルトランスフェラーゼI酵素をコードするgumD遺伝子の欠失を含むXcc株の派生株であり、MSC255、MSC256、およびMSC257株はキサンタンガムオペロン全体の欠失を含む。
本発明は、本発明のコンストラクトの任意の1つまたは複数を含む非病原性細菌宿主細胞を作製する方法に向けられ、本方法は、本発明のコンストラクトの任意の1つまたは複数を非病原性細菌宿主細胞に移入することを含む。本発明のコンストラクトは、コンストラクト内に存在する遺伝子を発現させるための任意の公知の方法によって、細菌宿主細胞中に導入することができる。そのような方法には形質転換、エレクトロポレーション、接合、または形質導入を含めることができるが、それらに限定されるわけではない。
本発明は、本発明のコンストラクトの任意の1つまたは複数を含む非病原性細菌宿主細胞に向けられる。したがって本発明は、本発明の発現ベクターを含むコンストラクトを宿主株(欠失を含む派生株を含む)中に導入することによって作出されたさまざまな株も包含する。一定の例を実施例6〜9、11、13、および14において詳述する。
いくつかの態様において、本発明のコンストラクト内に含有される遺伝子は、遺伝子が宿主染色体内に組み込まれるような形で、受容宿主株の染色体中に導入される。クローン化遺伝子を染色体に入れることは、コンドロイチン生合成遺伝子を保有するプラスミドまたはベクターを維持するための選択圧を維持する必要がなくなるという利点を提供し、よって、より安定な発現株または選択圧の非存在下でも安定な発現株を潜在的に提供することができる。したがって、本発明に包含される菌株は、その染色体中に組み込まれた、本発明のコンストラクト内に含有される遺伝子の任意の1つまたは複数の1コピーまたは複数コピーを含む。
一例として、本発明者らは、大腸菌K-12およびXcc株であって、その染色体中に組み込まれたコンドロイチン生合成用の合成遺伝子の1つまたは複数を含むものを作出した。本発明は、本発明の発現ベクターを含むコンストラクトを導入することによって作出された株であって、その染色体中に組み込まれた1コピーまたは複数コピーのコンストラクトを含む株も包含する。
いくつかの態様では、K4遺伝子クラスター、前記クラスターの1つまたは複数の領域、前記クラスターの遺伝子の1つまたは複数のサブセット、または前記クラスターの1つまたは複数の遺伝子が、本発明のコンストラクトおよび本明細書に記載する方法を使って、本明細書に記載する非病原性細菌宿主細胞の染色体中に組み込まれる。いくつかの態様では、2コピーまたはそれ以上の前記遺伝子クラスター、領域、サブセットまたは遺伝子が、非病原性細菌宿主細胞の染色体中に組み込まれる。いくつかの態様では、2〜20、2〜19、2〜18、2〜17、2〜16、2〜15、2〜14、2〜13、2〜12、2〜11、2〜10、2〜9、2〜8、2〜7、2〜6、2〜5、2〜4、または2〜3コピーの前記遺伝子クラスター、領域、サブセット、または遺伝子が、非病原性細菌宿主細胞の染色体中に組み込まれる。いくつかの態様では、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19または20コピーの前記遺伝子クラスター、領域、サブセット、または遺伝子が、非病原性細菌宿主細胞の染色体中に組み込まれる。いくつかの態様では、前記2コピーまたはそれ以上が、同じコンストラクトを使って宿主染色体中に組み込まれる。いくつかの態様では、前記2コピーまたはそれ以上が、異なるコンストラクトを使って宿主染色体中に組み込まれる。いくつかの態様では、宿主染色体中に組み込まれた遺伝子クラスター、領域、サブセット、または遺伝子の発現を制御するために、プロモーターも宿主染色体中に組み込まれる。いくつかの態様では、宿主染色体中に組み込まれた2コピーまたはそれ以上が、同じプロモーターまたは異なるプロモーターから発現する。いくつかの態様では、kfoA、kfoB、kfoC、kfoF、kfoG、およびそれらの組合せからなる群より選択される領域2遺伝子の2コピーまたはそれ以上が、宿主染色体中に組み込まれる。いくつかの態様では、kfoA、kfoB、kfoC、kfoF、およびkfoGの2コピーまたはそれ以上が、宿主染色体中に組み込まれる。いくつかの態様では、領域1、領域3、または領域1もしくは領域3由来の1つもしくは複数の遺伝子の2コピーまたはそれ以上が、宿主染色体中に組み込まれる。いくつかの態様では、本発明のコンストラクト内に含有される遺伝子が細菌宿主細胞の染色体中に組み込まれ、この細菌宿主細胞には、染色体中に組み込まれていない遺伝子を含む1つまたは複数の本発明のコンストラクトも含まれている。
本発明の株の例には、大腸菌K-12株MSC279、MSC280、MSC322、MSC323、MSC324、MSC325、MSC328、MSC346、MSC356、MSC359、MSC392、MSC402、MSC403、MSC404、MSC405、MSC410、MSC411、MSC436、MSC437、MSC438、MSC439、MSC458、MSC459、MSC460、MSC466、MSC467、MSC498、MSC499、MSC500、MSC510、MSC511、MSC522、MSC526、MSC537、MSC551、MSC561、MSC562、MSC563、MSC564、MSC566、MSC567、MSC619、MSC625、MSC627、MSC640、MSC641、MSC643、MSC646、MSC650、MSC656、MSC657、MSC658、MSC659、MSC660、MSC669、MSC670、MSC671、MSC672、MSC673、MSC674、MSC675、MSC676、MSC677、MSC678、MSC679、MSC680、MSC681、MSC682、MSC683、MSC684、MSC687、MSC688、MSC689、MSC690、MSC691、MSC692、MSC693、MSC694、MSC700、MSC701、MSC702、MSC722、MSC723、およびMSC724;大腸菌B株MSC315、MSC316、MSC317、MSC319、およびMSC347;ならびにキサントモナス・カンペストリス(X.campestris)株MSC326、MSC348、MSC350、MSC480、MSC461、MSC469、およびMSC494が含まれるが、それらに限定されるわけではない。
本発明は、本発明のコンストラクトの任意の1つまたは複数を非病原性細菌宿主細胞に移入する工程、およびコンドロイチンが細菌宿主細胞によって生産される発酵条件下で細菌宿主細胞を培養する工程を含む、コンドロイチンを生産するための方法に向けられる。
本発明は、本発明のコンストラクトの任意の1つまたは複数を含む非病原性宿主細胞を、コンドロイチンの生産にとって十分な発酵条件下で培養する工程を含む、コンドロイチンを生産するための方法に向けられる。
本発明は、非硫酸化コンドロイチンを生産するための方法を包含する。本方法は、非硫酸化コンドロイチンの生産にとって十分な発酵条件下で本発明の非病原性細菌宿主細胞を培養する工程を含む。いくつかの態様において、本方法は、本発明のコンストラクトを非病原性細菌宿主細胞に移入する工程、および細菌宿主細胞による非硫酸化コンドロイチンの生産をもたらす発酵条件下で細菌宿主細胞を培養する工程を含む。
さまざまな態様を実施例7〜15に記載する。具体的に述べると、実施例6〜9、11、13および14では、本発明のコンストラクトを宿主細胞に形質転換したときのコンドロイチンの生産を実証するデータを提示し、実施例10〜15では、本発明のコンストラクトが宿主細胞の染色体中に組み込まれたときのコンドロイチンの生産を実証するデータを提示する。
特定のコンストラクトおよびそこでの遺伝子の組合せに応じて、フルクトシル化体または非フルクトシル化体であるコンドロイチンを生産することが可能である(実施例6および7参照)。さらにまた、特定のコンストラクトおよびそこでの遺伝子の組合せに応じて、組換えコンドロイチンを培養培地中に分泌させることも、細胞内位置に留めておくこともできる(実施例9参照)。
細菌細胞を培養する方法および培養培地の組成は、当技術分野においては周知であり、本発明において使用することができる。組換えコンドロイチンの最適な生産が得られるように、さまざまな培養パラメータ、例えば温度、pH、溶存酸素濃度、誘導物質濃度および誘導後の培養の継続期間、ならびに培地の組成(そこに含まれる栄養素および塩類の含有量を含む)を、最適化すべきである。さまざまな成長培地、温度および誘導条件におけるコンドロイチンの組換え生産を、実施例8に記述する。この情報に基づけば、そのようなパラメータのさらなる最適化は、当業者には明白であろう。いくつかの態様では、細菌宿主細胞を20℃〜37℃、例えば20℃、21℃、22℃、23℃、24℃、25℃、26℃、27℃、28℃、29℃、30℃、31℃、32℃、33℃、34℃、35℃、36℃または37℃で培養する。いくつかの態様では、培養培地が酵母エキス、タンパク質消化物、リン酸カリウム、および水を含む。いくつかの態様では、培養培地がグリセリン(グリセロールとも呼ばれている)を含む。いくつかの態様では、1g/L〜50g/L、5g/L〜50g/Lまたは15g/L〜50g/Lの非硫酸化コンドロイチンが、24〜72時間で、細菌宿主細胞から分泌される。
いくつかの態様では、本発明のコンドロイチンを生産するための方法がさらに、細胞外培養培地からコンドロイチンを回収する工程を含む。コンドロイチンは、アルコール沈殿または当技術分野において公知の任意の技法(例えば乾燥粉末を得るための凍結乾燥を含むが、それに限定されるわけではない)によって、発酵ブロスから回収することができる。
いくつかの態様において、コンドロイチンを生産するための方法は、回収されたコンドロイチンを精製する段階を含むことができる。コンドロイチンの精製は、例えばアルカリ処理、酸処理、プロテイナーゼ処理、クロマトグラフィー、抽出、溶媒抽出、膜分離、電気透析、逆浸透、蒸留、沈殿、化学的誘導体化、結晶化、限外濾過、および/または有機溶媒を使った多糖の沈殿を含む、当技術分野において公知の任意の技法によって達成することができる。例えば、「Glycosaminoglycans and Proteoglycans in Physiological and Pathological Process of Body Systems」(R.S. VarmaおよびR. Varma編、Karger、スイス・バーゼル)の20〜40頁に記載のTaniguchi, N.著(1982)「Isolation and analysis of glycosaminoglycans」; Fraquharson et al., Oral. Microbiol. Immunol. 2000; 15: 151-157; Manzoni et al., J. Bioact. Comp. Polm. .1993; 8: 251-257; Manzoni et al., Biotechnol. Letters 2000; 22: 759-766;Johns et al., Aust. J. Biotechnol. 1991; 5: 73-77を参照されたい(これらの文書は参照によりそのまま本明細書に組み入れられる)。沈殿溶媒の例には、アセトン、メタノール、エタノール、またはイソプロパノールを含めることができるが、それらに限定されるわけではない。
本発明は、本発明の方法によってコンドロイチンを生産する工程と、コンドロイチンを硫酸化する工程とを含む、コンドロイチン硫酸を生産するための方法に向けられる。
硫酸化は化学的または酵素的に行うことができる。多糖を化学的に硫酸化するための手法は、当技術分野ではいくつか知られており、それらはいずれも、ここで使用することができる。例えば硫酸化は、多糖を有機溶媒中に可溶化した後、制御された温度下で硫酸化剤と反応させることによって達成することができる。可溶化溶媒の例には、ホルムアミド、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、ピリジン、またはジメチルスルホキシドを含めることができるが、それらに限定されるわけではない。硫酸化剤の例には、クロロスルホン酸、三酸化硫黄、および種々の三酸化硫黄-アミン錯体を含めることができるが、それらに限定されるわけではない。三酸化硫黄-アミン錯体に適したアミンの例には、ピリジン、DMF、トリメチルアミン、トリエチルアミン(TEA)およびピペリジンが含まれるが、それらに限定されるわけではない。いくつかの態様では、組換えコンドロイチンの硫酸化後に、硫酸化生成物は、天然コンドロイチン硫酸の硫黄含有量と一致する5.0〜7.5%の硫黄含有量を持つ。さらなる態様では、硫酸化生成物は、有意な解重合を起こさない。実施例15に、組換えコンドロイチンを化学的に硫酸化するための方法を記述する。いくつかの態様では、本発明の方法によって生産されたコンドロイチンを硫酸化する工程が、ホルムアミド中で三酸化硫黄-トリエチルアミン錯体またはクロロスルホン酸をコンドロイチンと混合することを含む。
いくつかの態様において、本組成物は、グルコサミン、グルコサミン硫酸塩またはグルコサミン塩酸塩などの補助剤を含むことができる。グルコサミン(2-アセトアミド-2-デオキシグルコース)は軟骨中に見いだされる天然化合物である。グルコサミン硫酸塩は、軟骨マトリックスおよび滑液中のグリコサミノグリカンの正常構成成分である。いくつかの臨床試験が、変形性関節症、特に膝の変形性関節症の処置におけるグルコサミン硫酸塩の使用を支持している(Herrero-Beaumont et al., Arthritis Rheum. 2007; 56: 555-67; Bruyere et al., Osteoarthritis Cartilage 2008; 16: 254-60)。硫酸塩部分が、軟骨を補強し、グリコサミノグリカン合成を助けることによって、滑液における臨床的利益をもたらすと提唱されている(Silbert, Glycobiology 2009; 19: 564-567)。グルコサミンは、関節の健康を促進するように意図された栄養補助剤において、また変形性関節症の処置として、通例、コンドロイチン硫酸と組み合わせて提供される。
いくつかの態様において、本発明は、対象における健康な関節機能を維持する方法を包含する。別の態様において、本発明は、変形性関節症、間質性膀胱炎および/または滑膜炎を処置または防止するための方法を包含する。これらの方法は、上述の組換えコンドロイチン硫酸を含む組成物を対象に投与する工程を含む。本発明の組成物は、一般に、治療有効量で投与することができる。
本発明は、K4コンドロイチン生合成遺伝子クラスターの遺伝子によってコードされるタンパク質に選択的に結合する抗体または抗体フラグメントに向けられる。これらの抗体および抗体フラグメントは、細菌宿主におけるK4コンドロイチン生合成遺伝子クラスターの遺伝子の発現を確認するために使用することができる。いくつかの態様において、本抗体または抗体フラグメントは、KpsFのSEQ ID NO:92、KpsEのSEQ ID NO:93、KpsDのSEQ ID NO:94、KpsUのSEQ ID NO:95、KpsCのSEQ ID NO:96、KpsSのSEQ ID NO:97、KpsTのSEQ ID NO:91、KfoAのSEQ ID NO:83、KfoBのSEQ ID NO:84、KfoCのSEQ ID NO:85、KfoI(Orf3)のSEQ ID NO:86、KfoEのSEQ ID NO:87、KfoH(Orf1)のSEQ ID NO:88、KfoFのSEQ ID NO:89、およびKfoGのSEQ ID NO:90からなる群より選択されるアミノ酸配列に結合する。抗体の生成については実施例5に詳述する。
適切な発酵培地に使用することができる同化可能な炭素の供給源には、デキストリン、スクロース、マルトース、ラクトース、グルコース、フルクトース、マンノース、ソルボース、アラビノースおよびキシロースを含む糖およびそれらのポリマー;脂肪酸;酢酸などの有機酸;エタノールおよびn-プロパノールなどの1級アルコール;ならびにグリセリンなどのポリアルコールが含まれるが、それらに限定されるわけではない。本発明における炭素源には、ポリアルコール、単糖、二糖、および三糖が含まれる。いくつかの態様では、炭素源がグリセリンである。
発酵培地におけるグリセリンなどの炭素源の濃度は、細胞成長を促進すべきであるが、使用する微生物の成長を抑制するほど高くはならないようにすべきである。典型的に、発酵は、グリセリンなどの炭素源を使って行われ、この時この炭素源は、望ましいレベルの成長および生物量が達成されるようなレベルで添加されるが、有機酸、具体的には酢酸の蓄積を避けるために、低い濃度レベル(1g/L未満)に維持される。別の態様では、発酵培地中のグリセリンなどの炭素源の濃度が、1g/Lより高いか、2g/Lより高いか、または5g/Lより高い。また、発酵培地中のグリセリンなどの炭素源の濃度は、典型的には、100g/L未満、50g/L未満、または20g/L未満である。発酵構成要素濃度への言及は、初期構成要素濃度および/または進行中の構成要素濃度の両方を指しうることに注意すべきである。いくつかの例では、発酵中に発酵培地を炭素源枯渇状態にさせることが望ましい場合もある。
適切な発酵培地に使用することができる同化可能な窒素の供給源には、単純窒素源、有機窒素源および複合窒素源が含まれるが、それらに限定されるわけではない。そのような窒素源には、無水アンモニア、アンモニウム塩ならびに動物、植物および/または微生物起源の物質が含まれる。適切な窒素源には、タンパク質加水分解物、微生物バイオマス加水分解物、ペプトン、酵母エキス、硫酸アンモニウム、水酸化アンモニウム、尿素、およびアミノ酸が含まれるが、それらに限定されるわけではない。発酵培地中の窒素源の濃度は、典型的には、0.1g/Lより高いか、0.25g/Lより高いか、または1.0g/Lより高い。ただし、一定の濃度を超えると、発酵培地への窒素源の添加は、微生物の成長にとって有利でなくなる。その結果として、発酵培地中の窒素源の濃度は、20g/L未満、10g/L未満、または5g/L未満である。さらに、いくつかの例では、発酵中に発酵培地を窒素源枯渇状態にさせることが望ましい場合もある。
有効な発酵培地は、消泡剤、無機塩、ビタミン、微量金属および/または成長促進剤などといった、他の化合物を含有することができる。そのような他の化合物は、有効な培地中の炭素源、窒素源またはミネラル源中に存在するか、またははっきり限定して培地に添加することができる。
発酵培地は適切なリン酸源も含有することができる。そのようなリン酸源には、無機リン酸源と有機リン酸源の両方が含まれる。リン酸源には、リン酸二水素ナトリウムおよびカリウムまたはリン酸水素ナトリウムおよびカリウム、リン酸アンモニウム、ならびにそれらの混合物などのリン酸塩が含まれるが、それらに限定されるわけではない。発酵培地中のリン酸の濃度は、典型的には、1.0g/Lより高いか、2.0g/Lより高いか、または5.0g/Lより高い。ただし、一定の濃度を超えると、発酵培地へのリン酸の添加は、微生物の成長にとって有利でなくなる。したがって、発酵培地中のリン酸の濃度は、典型的には、20g/L未満、15g/L未満、または10g/L未満である。
適切な発酵培地はマグネシウムの供給源も含むことができる。いくつかの態様では、マグネシウムの供給源が、硫酸マグネシウム七水和物などの生理学的に許容される塩の形態にあるが、他のマグネシウム源も同様のマグネシウム量を与える濃度で使用することができる。発酵培地中のマグネシウムの濃度は、典型的には、0.5g/Lより高いか、1.0g/Lより高いか、または2.0g/Lより高い。ただし、一定の濃度を超えると、発酵培地へのマグネシウムの添加は、微生物の成長にとって有利でなくなる。したがって、発酵培地中のマグネシウムの濃度は、典型的には、10g/L未満、5g/L未満、または3g/L未満である。さらに、いくつかの例では、発酵中に発酵培地をマグネシウム源枯渇状態にさせることが望ましい場合もある。
発酵培地は、クエン酸三ナトリウム二水和物またはクエン酸などの生物学的に許容されるキレート剤も含有することができる。そのような場合、発酵培地中のキレート剤の濃度は、0.1g/Lより高いか、0.2g/Lより高いか、0.5g/Lより高いか、または1g/Lより高い。ただし、一定の濃度を超えると、発酵培地へのキレート剤の添加は、微生物の成長にとって有利でなくなる。したがって、発酵培地中のキレート剤の濃度は、典型的には、10g/L未満、5g/L未満、または2g/L未満である。
発酵培地は、発酵培地を望ましいpHに維持するために生物学的に許容される酸または塩基を、最初に含むこともできる。生物学的に許容される酸には、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸およびそれらの混合物が含まれるが、それらに限定されるわけではない。生物学的に許容される塩基には、無水アンモニア、水酸化アンモニウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムおよびそれらの混合物が含まれるが、それらに限定されるわけではない。本発明のいくつかの態様では、使用される塩基が水酸化アンモニウムである。
発酵培地は、生物学的に許容されるカルシウム源(例えば塩化カルシウムを含むが、それに限定されるわけではない)も含むことができる。発酵培地中の塩化カルシウム二水和物などのカルシウム源の濃度は、典型的には、5mg/L〜2000mg/L、20mg/L〜1000mg/L、または50mg/L〜500mg/Lの範囲内にある。
発酵培地は塩化ナトリウムも含むことができる。発酵培地中の塩化ナトリウムの濃度は、典型的には、0.1g/L〜5g/L、1g/L〜4g/L、または2g/L〜4g/Lの範囲内にある。
上述のように発酵培地は微量金属も含むことができる。そのような微量金属は、便宜上、発酵培地の残りの部分とは別個に調製しておくことができる原液として、発酵培地に添加することができる。発酵培地における使用に適した微量金属原液を下記表1Aおよび1Bに示す。発酵培地に添加されるそのような微量金属溶液の量は、典型的には、1mL/Lより多いか、5mL/Lより多いか、または10mL/Lより多い。ただし、一定の濃度を超えると、発酵培地への微量金属の添加は、微生物の成長にとって有利でなくなる。したがって、発酵培地に添加されるそのような微量金属溶液の量は、典型的には、100mL/L未満、50mL/L未満、または30mL/L未満である。原液中の微量金属を添加することに加え、個々の構成要素を、それぞれ、上記の微量金属溶液の範囲によって決定される構成要素の量に独立して対応する範囲内で、別々に添加できることもできる点に注意すべきである。
以下の表1Aに示すように、本発明において使用するための適切な微量金属溶液は、硫酸第一鉄七水和物、硫酸銅五水和物、硫酸亜鉛七水和物、モリブデン酸ナトリウム二水和物、塩化コバルト六水和物、および硫酸第一マンガン一水和物を含むことができるが、それらに限定されるわけではない。微量金属塩を溶解状態に保つために原液には塩酸が加えられる。
本発明において使用するための別の適切な微量金属溶液を表1Bに示すが、これは、塩化第二鉄六水和物、塩化亜鉛、塩化コバルト六水和物、モリブデン酸ナトリウム、塩化マンガン、ホウ酸、およびキレート剤としてのクエン酸を含むことができる。
発酵培地はビタミン類も含むことができる。そのようなビタミン類は、便宜上、発酵培地の残りの部分とは別個に調製しておくことができる原液として、発酵培地に添加することができる。発酵培地において使用するための適切なビタミン原液を下記表2に示す。発酵培地に添加されるそのようなビタミン溶液の量は、典型的には、1ml/Lより多いか、5ml/Lより多いか、または10ml/Lより多い。ただし、一定の濃度を超えると、発酵培地へのビタミン類の添加は、微生物の成長にとって有利でなくなる。したがって、発酵培地に添加されるそのようなビタミン溶液の量は、典型的には、50ml/L未満、30ml/L未満、または20ml/L未満である。原液中のビタミン類を添加することに加え、個々の構成要素を、それぞれ、上記のビタミン原液の範囲によって決定される構成要素の量に独立して対応する範囲内で、別々に添加できることもできる点に注意すべきである。
表2に示すように、本発明において使用するための適切なビタミン溶液は、ビオチン、パントテン酸カルシウム、イノシトール、ピリドキシン-HClおよびチアミン-HClを含むことができるが、それらに限定されるわけではない。
本発明の微生物は通常の発酵方式で培養することができ、これには、回分方式、流加方式、細胞再利用(cell recycle)方式、および連続方式が含まれるが、それらに限定されるわけではない。いくつかの態様では、発酵が流加方式で行われる。そのような場合、発酵中に、培地の構成要素のいくつかが枯渇する。追加が必要になるまで、ある期間にわたって成長が支えられるように、そのような構成要素を比較的高い濃度にして発酵を開始することが可能である。これらの構成要素の好ましい範囲は、発酵によってレベルが低下したときに添加することにより、発酵の間中維持される。発酵培地中の構成要素のレベルは、例えば発酵培地を定期的にサンプリングし、濃度をアッセイすることなどによって監視することができる。あるいは、ひとたび標準的な発酵手法が開発されたら、発酵の間中、特定の時点における既知のレベルに対応する時限的間隔で、添加を行うこともできる。当業者には理解されるように、栄養素の消費速度は、培地の細胞密度が増加するにつれて、発酵中に増加する。さらにまた、発酵培地への外来微生物の導入を回避するために、添加は、当技術分野においては公知であるように、無菌添加法を使って行われる。また、発酵中に少量の制泡剤を加えることもできる。
発酵培地の温度は、成長およびコンドロイチンの生産に適した任意の温度であることができる。例えば、発酵培地に接種物を接種する前に、発酵培地を20℃〜45℃、25℃〜40℃、または28℃〜32℃の範囲の温度にして、その温度に維持することができる。
発酵培地のpHは、発酵培地への酸または塩基の添加によって制御することができる。pHを制御するためにアンモニアを使用する場合、それは、好都合なことに、発酵培地中で窒素源としての役割も果たす。いくつかの態様では、pHが3.0〜8.0、5.5〜7.5、または6.0〜7に維持される。
発酵培地は、細胞成長を維持し、コンドロイチンを生産するための細胞代謝作用を維持するために、発酵の過程において一定した溶存酸素含有量を持つように維持することもできる。発酵培地の酸素濃度は、公知の方法を使って、例えば酸素電極の使用などによって、監視することができる。当技術分野において公知の方法を使って、例えば撹拌、振とうまたはスパージング(sparging)による培地のかき混ぜおよび曝気によって、酸素を発酵培地に添加することができる。いくつかの態様では、発酵培地中の酸素濃度が、大気圧および20℃〜40℃の範囲の温度における発酵培地への酸素の溶解度に基づいて、培地における酸素の飽和値の10%〜200%の範囲にある。発酵中は、この範囲を下回る酸素濃度の断続的な低下が起こりうるが、発酵に有害な影響はない。
培地の曝気は、本明細書では、空気の使用に関連して記述したが、他の酸素源を使用することもできる。特に有用なのは、周囲空気における酸素の体積分率よりも高い体積分率の酸素を含有する曝気ガスの使用である。また、そのような曝気ガスは、発酵に負の影響を及ぼさない他のガスを含むこともできる。
本発明の発酵プロセスの一態様では、発酵培地が上述のように調製される。この発酵培地に、本発明の遺伝子修飾微生物が活発に成長している培養物を、妥当な成長期間後に高い細胞密度をもたらすのに十分な量で接種する。典型的な接種細胞密度は、細胞の乾燥重量に基づいて、0.001g/L〜10g/L、0.01g/L〜5g/L、または0.05g/L〜1.0g/Lの範囲内にある。ただし生産規模の発酵槽では、より高い接種物細胞密度が好ましい。次に細胞を10g/L〜150g/L、20g/L〜80g/L、または50g/L〜70g/Lの範囲の細胞密度まで成長させる。発酵中に微生物が所望の細胞密度に到達するまでの滞留時間は、典型的には、200時間未満、120時間未満、または96時間未満である。
本発明の実施形態の一つでは、発酵培地の炭素源濃度、例えばグリセリン濃度が、発酵中に監視される。発酵培地のグリセリン濃度は、公知の技法を使って、例えば高速液体クロマトグラフィー(これは、上清(例えば発酵培地の無細胞構成要素)におけるグリセリン濃度を監視するために使用することができる)の使用などによって、監視することができる。上述のように、炭素源濃度は、細胞成長阻害が起こるレベルより低く保つべきである。そのような濃度は生物ごとにさまざまでありうるが、炭素源としてのグリセリンの場合、細胞成長阻害は約60g/Lより高いグリセリン濃度で起こり、試行によって容易に決定することができる。したがってグリセリンを炭素源として使用する場合は、好ましくは、グリセリンを発酵槽に供給して、検出限界未満に維持する。あるいは、発酵培地中のグリセリン濃度を、1g/L〜100g/L、2g/L〜50g/L、または5g/L〜20g/Lの範囲に維持する。炭素源濃度は、例えば実質的に純粋なグリセリン溶液を添加することなどによって、望ましいレベル内に維持することができるが、元の発酵培地のアリコートを添加することによって発酵培地の炭素源濃度を維持することも許容される。培地中の他の栄養素(例えば窒素源およびリン酸源)の濃度も同時に維持することができるので、元の発酵培地のアリコートを使用することが望ましい場合がある。同様に、微量金属溶液のアリコートを添加することによって、発酵培地中の微量金属濃度を維持することもできる。
「分泌コンドロイチン」の場合、コンドロイチンの回収は、細胞除去後の無細胞培養培地のアルコール沈殿によって、または当技術分野において公知の任意の技法(乾燥粉末を得るための無細胞培養培地の凍結乾燥を含むが、それに限定されるわけではない)によって達成することができる。
「細胞表面コンドロイチン」の場合、コンドロイチンの回収はさらに、コンドロイチンを細胞表面から引き離す段階と、それに続く、遊離のコンドロイチンを含有する培養培地から細胞を除去する細胞除去段階とを含みうる。「細胞内コンドロイチン」の場合、回収はさらに、細胞を透過処理または溶解する段階と、それに続く、放出されたコンドロイチンを含有するようになった培養培地からの溶解細胞または透過処理細胞の除去を達成する段階とを含みうる。コンドロイチンは、培養培地のアルコール沈殿によって、または当技術分野において公知の任意の技法(乾燥粉末を得るための培養培地の凍結乾燥を含むが、それに限定されるわけではない)によって、培養培地から回収することができる。
さらに、ポリマーの分子量を低下させるために、回収されたコンドロイチンポリマーを解重合することができる。コンドロイチンの解重合は、当技術分野において公知の任意の技法(酸性解重合を含むが、それに限定されるわけではない)によって達成することができる。例えばTommeraas and Melander,Biomacromolecules 2008; 9:1535-1540を参照されたい。回収されたコンドロイチンは、例えば動物由来のコンドロイチンと類似するかまたは同一な分子量を持つコンドロイチンを生産し、かつ/または回収された非硫酸化コンドロイチンの硫酸化を助けるために、解重合することができる。例えば、回収されたコンドロイチンを、5kDa〜100kDa、好ましくは10kDa〜70kDa、より好ましくは20kDa〜40kDaの分子量を持つポリマーが得られるように解重合することができる。
本明細書において使用する用語「遺伝子」は、ある特異的タンパク質として発現されうる核酸フラグメント(またはポリヌクレオチド)を指し、コード配列の前(5'非コード配列)および後(3'非コード配列)にある調節配列を含んでいてもよい。「ネイティブ遺伝子」とは、自然界においてそれ自身の調節配列と共に見いだされる遺伝子を指す。「内因性遺伝子」は、ある生物のゲノムにおいてその天然の位置にあるネイティブ配列を指す。
「適切な調節配列」とは、コード配列の上流(5'非コード配列)、コード配列内、またはコード配列の下流(3'非コード配列)に位置し、関連するコード配列の転写、RNAのプロセシングもしくは安定性、または翻訳に影響を及ぼす、ヌクレオチド配列を指す。調節配列には、プロモーター、翻訳リーダー配列、イントロン、ポリアデニル化認識配列、RNAプロセシング部位、エフェクター結合部位およびステムループ構造を含めることができる。
「プロモーター」という用語は、コード配列または機能的RNAの発現を制御する能力を有するDNA配列を指す。一般にコード配列はプロモーター配列の3'側に位置する。プロモーターは、そっくりそのままネイティブ遺伝子に由来してもよいし、自然界に見いだされる異なるプロモーターに由来する異なる要素から構成されてもよく、さらには合成DNAセグメントを含むこともできる。異なるプロモーターが、異なる組織もしくは細胞タイプにおける遺伝子の発現、または異なる発生段階における遺伝子の発現、または異なる環境条件もしくは生理的条件に呼応した遺伝子の発現を指示できることは、当業者には理解される。ほとんどの細胞タイプにおいてほとんどの時点で遺伝子を発現させるプロモーターを、一般に、「構成的プロモーター」と呼ぶ。さらに、ほとんどの場合、調節配列の正確な境界は完全には定義づけられていないので、異なる長さのDNAフラグメントが同一のプロモーター活性を持ちうることも理解される。
本明細書において使用する「発現」という用語は、本発明の核酸フラグメントに由来するセンス(mRNA)またはアンチセンスRNAの転写および安定な蓄積を指す。発現は、mRNAからポリペプチドへの翻訳も指すことができる。
本明細書において使用する用語「形質転換」は、遺伝学的に安定した遺伝をもたらす、宿主生物中への核酸フラグメントの移入を指す。形質転換された核酸フラグメントを含有する宿主生物を「トランスジェニック」生物または「組換え」生物または「形質転換」生物という。
用語「コンストラクト」、「プラスミド」、「ベクター」および「カセット」は、多くの場合、細胞の中央代謝の一部ではない遺伝子を保有していて、通常は、環状または線状の二本鎖DNAフラグメントの形態にある、染色体外要素を指す。そのような要素は、任意の供給源に由来する一本鎖または二本鎖DNAまたはRNAの自律複製配列、ゲノム組込み配列、ファージまたはヌクレオチド配列であって、いくつかのヌクレオチド配列が接合されまたは組み換えられて、プロモーターフラグメントと選ばれた遺伝子産物のDNA配列とを適当な3'非翻訳配列と一緒に細胞中に導入する能力を有するユニークな構築物(construction)になっているものであることができる。
本明細書において使用する用語「コドン縮重」は、コードされているポリペプチドのアミノ酸配列の変異を伴わないヌクレオチド配列の変異を可能にする遺伝暗号の性質を指す。所与のアミノ酸を指定するためのヌクレオチドコドンの使用頻度に関して、特定の宿主細胞が示す「コドンバイアス」は、当業者によく知られている。それゆえに、ある宿主細胞における発現を改善するためにある遺伝子を合成する場合には、そのコドン使用の頻度が前記宿主細胞の優先的コドン使用の頻度に近づくように、遺伝子を設計することが望ましい。
「コドン最適化」という用語は、それがさまざまな宿主を形質転換するための核酸分子の遺伝子またはコード領域を指す場合には、DNAによってコードされるポリペプチドを改変することなく、前記宿主生物の典型的なコドン使用頻度を反映するための、核酸分子の遺伝子またはコード領域におけるコドンの改変を指す。
「機能的に連結されている」という用語は、一方の機能が他方による影響を受けるような単一核酸フラグメント上での核酸配列のつながりを指す。例えば、あるプロモーターがあるコード配列の発現を達成する能力を有する場合、そのプロモーターはそのコード配列と機能的に連結されている(すなわち、前記コード配列は前記プロモーターの転写制御下にある)。コード配列は、調節配列に、センス方向またはアンチセンス方向に、機能的に連結することができる。
本明細書において使用される標準的な組換えDNAおよび分子クローニング技法は、当技術分野において周知であり、Sambrook, J., Fritsch, E.F. and Maniatis,T.「Molecular Cloning:A Laboratory Manual」第2版, Cold Spring Harbor Laboratory Press, ニューヨーク州コールドスプリングハーバー(1989)(以下「Maniatis」);およびSilhavy, T.J., Bennan, M.L. and Enquist, L.W. 「Experiments with Gene Fusions」Cold Spring Harbor Laboratory Press, ニューヨーク州コールドスプリングハーバー(1984);およびAusubel, F. M., et al. 「Current Protocols in Molecular Biology」Greene Publishing Assoc.およびWiley-Interscience発行(1987)に記載されている。これらの文書はそれぞれ参照によりそのまま本明細書に組み入れられる。
実施例1:K4莢膜生合成の遺伝的性質
大腸菌K4莢膜は「グループ2」莢膜に分類される。Whitfield(Annu Rev Biochem.2006; 75:39-68)によって概説されているとおり、大腸菌グループ2莢膜の合成は、3つの領域からなる共通の遺伝子構成を有する遺伝子クラスターによってコードされた一組のタンパク質によって指示される。大腸菌K4莢膜遺伝子クラスターの予想構造(本発明以前)を図2に示す。領域1は6つの遺伝子kpsFEDUCSを含有すると予期され、領域3は2つの遺伝子kpsMおよびkpsTを含有すると予期された。公知タンパク質との配列相同性に基づいて、kpsF遺伝子とkpsU遺伝子は、糖ヌクレオチドCMP-Kdoの生合成における段階を触媒するタンパク質をコードすると予想された。大腸菌におけるグループ2莢膜のCMP-Kdo生合成の役割は提唱されているものの(Roberts, Annu. Rev. Microbiol. 1996; 50:285-315)、実験的には実証されていない(Whitfield, Annu Rev Biochem.2006; 75:39-68)。kpsM、kpsT、kpsD、kpsE、kpsCおよびkpsS遺伝子は、糖前駆体の重合が起こる細胞質から、成熟莢膜多糖がその膜の脂質構成要素への共有結合によって細胞外膜に固定されると考えられる細胞表面への、莢膜多糖のトランスロケーションに必要とされるタンパク質をコードすると断定された(Roberts, Annu. Rev. Microbiol. 1996; 50:285-315;Whitfield, Annu Rev Biochem.2006; 75:39-68)。大腸菌K4莢膜については、大半の大腸菌グループ2莢膜と同様に、多糖と莢膜の脂質構成要素との間の共有結合の構造は、実験的には決定されていない。そのうえ、脂質構成要素の実体もわかっていない。領域1遺伝子および領域3遺伝子ならびにそれらがコードするタンパク質は、極めて多様な多糖組成および構造を有する莢膜を生産する大腸菌株間で高度に保存されている(Whitfield, Annu Rev Biochem. 2006; 75: 39-68)。大腸菌におけるグループ2莢膜クラスターの領域2に含有される遺伝子には、糖ヌクレオチド前駆体生合成のための酵素およびこれらの前駆体を重合するための酵素をコードする遺伝子が含まれ、それにより、領域2は莢膜多糖の構造を決定する。大腸菌におけるグループ2莢膜クラスターの領域2中の他の遺伝子は、その機能が不明なタンパク質をコードしており、莢膜生合成に役割を有することは実証されていない。Ninomiyaらによって記述された大腸菌K4莢膜遺伝子クラスターの領域2の配列(J. Biol. Chem. 2002; 277: 21567-21575、GenBank AB079602)は、タンパク質をコードすると予想される7つの注釈付きオープンリーディングフレーム(kfoABCDEFG)を含有する。挿入配列IS2が遺伝子kfoCとkfoDの間に位置する。
K4莢膜生合成遺伝子の合成コード配列の設計における準備段階として、各遺伝子対を分離している遺伝子間配列を調べた。この配列分析によれば、この領域内には、発現して莢膜生合成に潜在的に関係する可能性があるタンパク質をコードするさらなるオープンリーディングフレーム(ORF)が少なくとも2つは存在するらしいと思われた。Ninomiyaらの配列に基づいて、次の遺伝子間距離が得られた:kfoA-kfoB:186bp;kfoB-kfoC:297bp;kfoC-IS2:29bp;IS2-kfoD:9bp;kfoD-kfoE:389bp;kfoE-kfoF:818bp;kfoF-kfoG:431bp。3つの最大遺伝子間距離のそれぞれに1つのオープンリーディングフレームが同定された。
kfoD-kfoE領域の大半は、kfoDの停止コドンの10ヌクレオチド後に始まり、kfoEのコード領域内で終わる「ORF3」と名付けられた390bpのORFによって包含されていた。すなわち、推定上のorf3遺伝子は、kfoE遺伝子と10ヌクレオチド分、オーバーラップしている。このORFはATGで始まり、9bp下流には、第2の考えうるATG開始点がインフレームで位置する。これらの考えうる開始点は認識しうるシャインダルガノ(SD)配列(Shine and Dalgarno,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 1974;71:1342-6)を欠いている。orf3のタンパク質産物をBLAST検索で使用したところ、8つの「グッド(good)」ヒット、すなわちスコア>138、E値<3e-31が得られた。これらのヒットのうち2つは、莢膜生合成のための遺伝子クラスター中に位置するパスツレラ・マルトシダ遺伝子(bcbFおよびecbF)によってコードされるタンパク質に対するものであった。これらのパスツレラ・マルトシダ莢膜遺伝子クラスターを、図3Aに、本発明者らが解析したNinomiyaらの配列によるK4領域2遺伝子と一緒に図解する。Orf3、BcbFおよびEcbFタンパク質に関するタンパク質配列のアラインメントを図3Bに示す。これらのパスツレラ・マルトシダ配列は、それぞれ血清型B株(M1404)および血清型E株(P1234)に由来している。血清型E莢膜の組成は未知であり、一方、血清型B莢膜は、マンノース、ガラクトースおよびアラビノースから構成されると報告されているものの、構造は報告されていない(Townsend et al., J .Clin. Microbiol. 2001; 39:924-929)。
kfoE-kfoF領域には、図3Aに示すように、「ORF1」と名付けられた630bpのORFが存在する。このORFのATG開始コドンは、上流のkfoE遺伝子のTGA停止コドンとオーバーラップしている。このATGの7塩基対上流、KfoEのコード配列内に、強いSD配列(AGGAGG)が存在する。したがって、このORFが発現されるはずだという状況証拠は有力である。ORF1がコードするタンパク質に関するBLASTの結果には、ORF3で得られたパスツレラ・マルトシダ遺伝子ヒットに隣接するパスツレラ・マルトシダ遺伝子(bcbEおよびecbE)に対する強いヒットが含まれる。すなわち、K4クラスターの推定上のORF1およびORF3はどちらも、莢膜多糖をコードする2つのパスツレラ・マルトシダ遺伝子クラスター内にホモログを有する。ORF1、BcbEおよびEcbEタンパク質配列のアラインメントを図3Bに示す。
kfoF-kfoG領域には、「ORF2」と名付けられた384bpのORFが存在する。このORFのATG開始コドンの前には、15bp上流に、弱いSD配列になりうるGG配列がある。このタンパク質配列によるBLAST検索では、有意なヒットは見つからなかった。このことから、このORFは、実際に生産されるポリペプチドをコードしていないかもしれないことが示唆された。
興味深いことに、領域2由来の他の2つのK4莢膜クラスター遺伝子(kfoDおよびkfoE)は、パスツレラ・マルトシダP1234およびパスツレラ・マルトシダM1404莢膜遺伝子クラスター中に位置するパスツレラ・マルトシダ遺伝子に対して相同性を有することが注目される。kfoDによってコードされるタンパク質はEcbDおよびBcbDとの相同性を有し、kfoE遺伝子産物も同様に、EcbGおよびBcbGとの相同性を有する。したがって、図3Aに示すように、これら4つの連続するK4遺伝子(kfoD、orf3、kfoE、およびorf1)は、連続するパスツレラ・マルトシダ血清型B遺伝子bcbDEFGおよびパスツレラ・マルトシダ血清型E遺伝子ecbDEFGにホモログを有する。上述のように、これら2つのパスツレラ株はコンドロイチン生産株ではなく、コンドロイチン生合成においてK4遺伝子kfoD、orf3、kfoE、およびorf1が果たす役割は、もしあったとしても、本発明以前には知られていなかった。
K4におけるkfoD、orf3、kfoE、orf1遺伝子セットの直前(9bp)にIS2が存在するという事実から、それらの起源およびコンドロイチン莢膜合成における役割に関して、数多くの可能性が生じる。理論に縛られることは望まないが、本発明者らは、K4領域2遺伝子クラスターは、kfoABCFGから構成される親コンドロイチン生産クラスターへのIS2を介した組換え/挿入によって生じたと考えている。さらに本発明者らは、kfoD、orf3、kfoEおよびorf1遺伝子はコンドロイチン骨格のフルクトシル化に関与するのかもしれないという仮説を立てた。フルクトシル化は、パスツレラ・マルトシダ血清型F莢膜と大腸菌K4莢膜の間の明白な構造的相違の一つである。これら2つの間の遺伝子構造の著しい相違、すなわちkfoD、orf3、kfoE、orf1遺伝子セットの有無は、その構造的相違の反映である可能性がある。パスツレラ・マルトシダのコンドロイチン生産性血清型F株P4182の莢膜生合成遺伝子クラスター(Townsend et al., J .Clin. Microbiol. 2001; 39:924-929)との類似性から、コンドロイチン骨格の生産に関連するK4領域2遺伝子はkfoA、kfoB、kfoC、kfoFおよびkfoGだけかもしれないと考えうる。実施例6および7で述べるように、本発明者らは、kfoD、orf3、kfoEおよびorf1遺伝子がコンドロイチンの生産には必要とされないこと、およびこれらの遺伝子の1つまたは複数がコンドロイチンのフルクトシル化にとって不可欠であることを確認した。
K4莢膜生合成遺伝子の合成コード配列の設計に先だってNinomiyaらの配列を確認するために、本発明者らは、ATCCから入手した大腸菌K4株ATCC23502由来のK4莢膜遺伝子クラスターの領域2を配列決定した。Qiagen Genomic DNA Kit(Qiagen Inc.、カリフォルニア州バレンシア)を供給元のプロトコールに従って使用することにより、ATCC23502株の新鮮終夜培養物から、ゲノムDNAを調製した。20ゲージ針を通過(5回)させることによって剪断したゲノムDNAのアリコートを、PCR反応におけるテンプレートとして使用することにより、サイズが2.2kB〜2.7kBの範囲にある、一連の6つのオーバーラップPCR産物を作製した。Qiagen QIAquick PCR Purification Kitを使用し、供給元のプロトコールに従って、PCR反応の産物を精製し、DNA配列決定のために業者(Biotechnology Resource Center,DNA Sequencing Facility,Cornell University,ニューヨーク州イサカ)に送った。これら6つのオーバーラップPCR産物の配列は、Ninomiyaら(2002)によって決定された領域2配列にまたがっていた。全体的にみて、本発明者らによって決定された配列と、Ninomiyaらによって報告された配列とは一致していて、99.8%の同一性があった。ただし、置換、欠失および挿入を含む一塩基対の相違が、26ヶ所にあった。これらの相違のいくつかは、本遺伝子クラスターによってコードされる領域2タンパク質の予想アミノ酸配列に実質的な相違をもたらした。観察されたヌクレオチド配列相違と、結果として生じる予想タンパク質配列への影響を、図4Aおよび4Bに示す。
K4莢膜生合成遺伝子の正しい配列を決定するために、大腸菌血清型K4 U1-41株をStatens Serum Institut(デンマーク・コペンハーゲン)から入手した。U1-41はATCC23502株の祖先であり、K4多糖の構造決定に使用された多糖調製物の製造には、これが使用された(Rodriguez et al.,1988)。大腸菌U1-41におけるK4莢膜遺伝子クラスターの領域1、2および3にまたがる約23kbのDNAの配列が決定された。この配列(SEQ ID NO:117)は、領域1のkpsF遺伝子のATG翻訳開始コドンの125bp上流から、領域3のkpsM遺伝子のATG翻訳開始コドンの110bp上流までにまたがる23,230塩基対からなる。
配列決定のために、Qiagen Genomic DNA Kit(Qiagen Inc.、カリフォルニア州バレンシア)を供給元のプロトコールに従って使用することにより、大腸菌U1-41の新鮮終夜培養物から、ゲノムDNAを調製した。20ゲージ針を通過(5回)させることによって剪断したゲノムDNAのアリコートを、PCR反応におけるテンプレートとして使用することにより、サイズが2.1kB〜2.8kBの範囲にある、一連の11個のオーバーラップPCR産物を作製した。反応1〜11と名付けられたこれらのPCR反応では、以下のオリゴヌクレオチドプライマーを使用した:反応1;(DHD089およびDHD090)、反応2;(DHD091およびDHD092)、反応3;(DHD093およびDHD175)、反応4;(DHD120およびDHD096)、反応5;(DHD097およびDHD098)、反応6;(DHD099およびDHD100)、反応7;(DHD101およびDHD102)、反応8;(DHD103およびDHD104)、反応9;(DHD105およびDHD106)、反応10;(DHD162およびDHD108)、反応11;(DHD169およびDHD110)。これらのプライマーの配列を以下に示す。
PCR反応1、2、3、7、8、9、10および11は、PfuUltra IIポリメラーゼ(STRATAGENE、カリフォルニア州ラホーヤ)を使用し、供給元のプロトコールに従って行った。各100μLの反応において、Pfu反応緩衝液(供給元によって供給されたもの)を1×の最終濃度になるように加え、プライマーを各0.4μMの最終濃度になるように加え、dNTPを各250μMの最終濃度になるように加え、100ngのU1-41ゲノムDNAをテンプレートとして加えた。PCR反応は、Perkin-Elmer GeneAmp 2400サーモサイクラーにおいて、次のサイクリングパラメータを使って行った:95℃で2分を1サイクル;95℃で20秒、55℃で20秒、および72℃で40秒を35サイクル;72℃で3分を1サイクル;および4℃で保持。PCR反応4、5および6は、次に挙げる点を除いて、上述のように行った。反応5および6の場合、プライマーを各0.5μMの最終濃度になるように加え、アニーリング段階を55℃ではなく60℃で行った。反応4の場合は、プライマーを0.5μMの最終濃度になるように加え、PCR反応は、RoboCycler(登録商標)Gradient 96サーモサイクラー(STRATAGENE、カリフォルニア州ラホーヤ)において、次のサイクリングパラメータを使って行った:95℃で1分を1サイクル;95℃で30秒、52℃で30秒、および72℃で1分を35サイクル;72℃で5分を1サイクル;および6℃で保持。
Qiagen QIAquick PCR Purification Kit(QIAGEN、カリフォルニア州バレンシア)を使用し、供給元のプロトコールに従って、PCR反応1、2、3、7、8、9、10および11の産物を精製し、100μLのEB溶出緩衝液中に回収し、次にそれを、シークエンス反応のためのテンプレートとして使用した。Qiagen QIAquick PCR Purification Kit(QIAGEN、カリフォルニア州バレンシア)を使用し、供給元のプロトコールに従って、PCR反応4、5および6の産物を精製し、次にそれを、分取アガロースゲル電気泳動によってさらに精製した。フラグメントをゲルから切り出し、QIAquick Gel Extraction Kit(QIAGEN Inc.、カリフォルニア州バレンシア)を使用し供給元のプロトコールに従って、ゲル切片から溶出し、100μLのEB溶出緩衝液中に回収した。ゲル精製したフラグメントをシークエンス反応用のテンプレートとした。反応1〜11の精製PCR産物を、DNA配列決定のために業者(Cornell University Life Sciences Core Laboratories Center,Cornell University,ニューヨーク州イサカ)に送った。これら11個のオーバーラップPCR産物から得られた配列は、Ninomiyaら(2002)によって決定された領域2配列にまたがり、領域1遺伝子と領域3遺伝子も全て含んでいた。
U1-41由来のK4莢膜遺伝子クラスターの配列は、大腸菌におけるグループ2莢膜遺伝子クラスターには典型的であるとおり、領域1におけるkpsF、kpsE、kpsD、kpsU、kpsCおよびkpsS遺伝子の存在を実証している。U1-41 KpsF、KpsE、KpsD、KpsU、KpsCおよびKpsSタンパク質の予想アミノ酸配列は、他の大腸菌グループ2莢膜生産株によってコードされるこれらのタンパク質の配列に対して相同である。それらは全て、これらのタンパク質に関するコンセンサス配列に対して、また大腸菌ニッスル(Nissle)1917(血清型K5)のKpsF、KpsE、KpsD、KpsU、KpsCおよびKpsS配列(Grozdanov et al.,J. Bacteriol. 2004;186:5432-41)に対して、>95%の同一性を示す。本配列は、大腸菌におけるグループ2莢膜遺伝子クラスターには典型的であるとおり、領域3におけるkpsM遺伝子およびkpsT遺伝子の存在も明らかにしている。U1-41 KpsMおよびKpsTタンパク質の予想アミノ酸配列は、他の大腸菌グループ2莢膜生産株によってコードされるこれらのタンパク質の配列に対して相同である。それらは全て、これらのタンパク質に関するコンセンサス配列に対して、また大腸菌ニッスル1917(血清型K5)のKpsMおよびKpsT配列に対して、>90%の同一性を示す。
U1-41 DNA配列は、Ninomiyaらの領域2配列および本発明者らがATCC23502の領域2について決定した配列と整列させることができる約13.5kbの領域2セグメントを含む。U1-41配列と、本発明者らがATCC23502の領域2について決定した配列は、この範囲において同一である。同定された領域2には、IS2配列を除いて、ポリペプチドとして発現すると予想される9個のオープンリーディングフレーム(ORF)が存在する。これら9個のORFには、今まで同定されていなかった、上に詳述した2つのORFが含まれる。これらのORFをコードする遺伝子は、ここではまず最初にorf1およびorf3と名付けたが、現在はそれぞれkfoHおよびkfoIと呼ぶことが提案されている。図5は、ATCC23502およびU1-41のDNA配列から本発明者らによって決定されたK4莢膜遺伝子クラスターの編成を表す。上述のorf2は、本発明者らによって決定された領域2の配列中に、別個のオープンリーディングフレームとして存在するとは認められなかった。本発明者らによって決定された配列では、orf2を含む配列は、kfoGのコード配列の一部である。Ninomiyaらによって公表された配列内でのフレームシフトは、kfoG配列を、2つの、より小さなオープンリーディングフレームに、すなわちNinomiyaらが注釈を付けたkfoG遺伝子と本発明者らが注釈を付けたorf2配列とに分割する。したがって、orf2は、Ninomiyaらによって公表された誤りのある配列の人為産物であった。
IS2配列を除くと、本遺伝子クラスターは、タンパク質をコードすると予想される17個のオープンリーディングフレームを含有している。これらの遺伝子の編成は、大腸菌グループ2莢膜遺伝子クラスターに典型的なものである(Whitfield 2006)。保存された遺伝子kpsFEDUCSを含む領域1と、保存された遺伝子kpsMTを含む領域3が、領域2の9個のオープンリーディングフレーム(およびIS2)に隣接している。領域1および領域3の遺伝子は、大腸菌におけるグループ2莢膜全ての合成およびトランスロケーションに必要なタンパク質を含んでいる。領域1は、CMP-Kdoの生合成における段階を触媒すると予想される酵素をコードする2つの遺伝子(kpsFおよびkpsU)も含んでいる。上述のように、大腸菌でのグループ2莢膜の生合成におけるCMP-Kdの役割は提案されているものの、実験的には実証されていない。グループ2莢膜遺伝子クラスターにおいて、領域2遺伝子は、典型的には、莢膜多糖の構造を決定する血清型特異的タンパク質をコードするものを含む。領域2中に同定された9個の遺伝子のうち、3つは、莢膜生合成に関係する明確に定義された活性を有するタンパク質をコードする:kfoC(コンドロイチンシンターゼ、すなわちポリメラーゼ)、kfoA(UDPGlcNAcエピメラーゼ、UDPGlcNAcをUDPGalNAc前駆体に転化する)およびkfoF(UDPGlcデヒドロゲナーゼ、UDPGlcをUDPGlcUA前駆体に転化する)。
K4莢膜遺伝子クラスターの領域2中に存在する他の遺伝子、すなわちkfoB、kfoG、kfoD、kfoE、kfoHおよびkfoIについては、機能は未知のままである。kfoBは、他のグリコサミノグリカン(GAG)莢膜を生産することが知られている細菌、パスツレラ・マルトシダ血清型A、FおよびDならびに大腸菌血清型K5の莢膜クラスター中に存在する遺伝子によってコードされるタンパク質と相同なタンパク質をコードする。同様に、KfoGタンパク質も、パスツレラ・マルトシダ血清型A、FおよびDの莢膜クラスター中に存在する遺伝子によってコードされるタンパク質に対する相同性を有する。この状況証拠から、kfoBおよびkfoGは、GAG含有K4莢膜の生合成において役割を果たしうることが示唆される。
KfoBおよびKfoGとは対照的に、本発明以前に、kfoD、kfoE、kfoHおよびkfoIがGAG生合成に関与することを示すそのような証拠はなかった。上述のように、また実施例6および7で述べるように、本発明者らは、K4莢膜多糖のコンドロイチン骨格のフルクトシル化には、これらの遺伝子(すなわち遺伝子kfoD、kfoE、kfoHおよびkfoI)の1つまたは複数が不可欠であるが、これらの遺伝子はいずれもコンドロイチン骨格の生産には必要とされないことを、本明細書において明らかにする。
挿入配列IS2は、U1-41でも、ATCC23502でも、遺伝子kfoCとkfoDの間に存在する。観察された方向でのIS2の挿入は、IS2内で始まる転写により、下流遺伝子の発現を活性化すると報告されている(Glansdorf et al.,Cold Spring Harbor Symp.Quant.Biol.,1981;45:153-156)。したがって、理論に束縛されることは望まないが、IS2の存在は下流遺伝子kfoD、kfoI、kfoE、kfoH、kfoFおよびkfoGの発現を調整しうるが、これらの遺伝子の発現を防止しないと予想されると提唱される。
実施例2:コドン最適化大腸菌K4莢膜生合成遺伝子の合成
本発明者らによって決定されたU1-41 K4莢膜遺伝子クラスターの配列を、代替宿主における発現に使用するための合成遺伝子の設計の根拠として使用した。K4莢膜生合成遺伝子を含有する1つまたは複数の合成オペロンの発現が可能になるように合成コンストラクトを設計し、大腸菌、キサントモナス・カンペストリス、スフィンゴモナス・エロデア(S.elodea)および枯草菌(B.subtilis)における発現にとって許容されるコドンを使用するコンセンサス優先コドン表に基づいて、コドン使用頻度について最適化した。表3Aに、大腸菌、キサントモナス・カンペストリスおよび枯草菌ゲノムならびにK4P莢膜生合成に関係する大腸菌K4領域2遺伝子および53個のスフィンゴモナス・エロデア遺伝子(ゲラン生合成に関係するものを含む)に関するコドン使用頻度表を示す。この表は、K4領域2生合成遺伝子において好ましくないコドンが著しく使用されていることを例証している。これらのコドンは、キサントモナス・カンペストリス発現またはスフィンゴモナス・エロデア発現にとって極端に好ましくないだけでなく、大腸菌における発現にとっても好ましくない。大腸菌における最適な発現のためには、著しいコドン最適化が必要であるだろうことが予期されるであろう。これらのコドン使用頻度表の比較に基づいて、合成コンドロイチン生合成遺伝子用に、コンセンサス優先コドン使用頻度表を設計し、表3Bに示す。このコドン使用頻度パターンは、広範囲にわたるさまざまな潜在的代替宿主において、効率のよい翻訳を与えると予期される。
表示の値は、各コドンについて、そのコドンがコードする所与のアミノ酸を指定する総コドン数のパーセンテージとして、出現頻度を反映している。コドン使用頻度は、枯草菌168株のゲノム、キサントモナス・カンペストリス病原型カンペストリスATCC33913、大腸菌K-12 W3110および20,972コドンを含有するスフィンゴモナス・エロデアの53個のCDSから算出した。
下記表3Bに示すコドン使用頻度は、合成遺伝子の設計に使用したコンセンサスコドン使用頻度表であり、以下で構築する合成遺伝子セットの最終コドン使用頻度である。合成遺伝子における実際の使用頻度は、DNAおよびmRNAの二次構造、制限部位の包含および排除、ならび全体的なGC含有量などといった設計上の考慮事項を反映している。
(表3B)コンセンサスコドン使用頻度
1 値はそのアミノ酸に関する総コドン数の%である。
2 値は、合成された合成遺伝子セット中のコドンの総数である。
合成遺伝子セットは、3つのセグメント、kpsFEDUCS(「FSセグメント」)、kpsMTkfoABCFG(「MGセグメント」)およびkfoDIER(「DHセグメント」)として構築した。図6に、これら3つの合成セグメントの構造を図示する。図6に示すユニーク制限部位は、プラスミド発現ベクターに挿入することができる1つまたは複数のオペロンへの合成フラグメントのアセンブリが可能になるように、戦略的な位置に組み込まれた。最初の戦略は、発現実験のために遺伝子を単一のオペロンとしてアセンブルすることだった。他の制限部位も、合成配列全体にわたって、任意の所与の遺伝子について非極性欠失体(non-polar deletion)の構築を可能にするような位置に、戦略的に配置された。これは、K4莢膜クラスターによってコードされるタンパク質の機能ならびにプラスミド配列の他の修飾の遺伝子分析を容易にすることができる。合成遺伝子の大半、すなわちkpsC、kpsT、kfoE、およびkfoHを除く全てに、コンセンサス強力リボソーム結合部位(AGGAGGttaataaATG、SEQ ID NO:46)を使用した。大腸菌K4 U1-41配列では、これらの遺伝子の翻訳開始部位が、すぐ上流にある遺伝子の翻訳停止点につながっており、結果として、リボソーム結合部位がそれら上流遺伝子のコード配列とオーバーラップする。
上に定義したFS、MGおよびDHセグメントを含む合成配列は、業者DNA2.0(カリフォルニア州メンローパーク)により、3つの別個のフラグメントとして合成された。これら3つの合成セグメントのヌクレオチド配列を、FSセグメント(SEQ ID NO:47)、MGセグメント(SEQ ID NO:48)およびDHセグメント(SEQ ID NO:49)として掲載する。
実施例3:代替宿主株の構築
K4生合成遺伝子の発現のために選んだ最初の代替宿主には、大腸菌K-12(「K-12」)、大腸菌B(「EcB」)、スフィンゴモナス・エロデア(「Sph」)、およびキサントモナス・カンペストリス病原型カンペストリス(「Xcc」)を含めた。K-12 W3110株およびMG1655株は、Yale UniversityのColi Genetic Stock Centerから入手した。Sph株ATCC31461はATCCから入手した。Xcc株NRRL B-1459(ATCC13951)はイリノイ州ピオリアのARS Culture Collection(NCUAR)から入手した。大腸菌B(ATCC11303)はATCCから入手した。
一般に、2つの方法でK4遺伝子を導入するために、代替宿主を用意した。可動化プラスミドpRK2013を含有する大腸菌を使った三親交雑において大腸菌の実験室クローニング株から接合伝達によって一定の代替宿主に遺伝子/プラスミドを送達できることが、有利な場合がある。接合環境(conjugal milieu)から代替宿主のトランスコンジュガント(transconjugant)を選択するには、代替宿主の抗生物質耐性派生株(典型的にはストレプトマイシン耐性)が必要になる。あるいは、大腸菌S17-1株(Simon et al.,BioTechnology 1983;1:784-791)を使用することができる。この株は、染色体に組み込まれた形態のプラスミドRP4を有し、適当なプラスミドを新しい宿主へと直接可動化するであろう。ただしこの株はストレプトマイシン耐性であるので、接合完了体(exconjugant)からこの株を淘汰するためにストレプトマイシンを使用することはできない。
Sph、Xcc、およびK-12における遺伝子欠失または遺伝子クラスター欠失の生成は、2段階「ポップイン/ポップアウト」相同性駆動的方法を使って行った(図7A参照)。第1段階では、所望する欠失構造のクローン化版(欠失に隣接する相同領域(homologous region))を含有するプラスミドが、一方の隣接領域における組換え(およびベクター上のマーカーでの選択)によって、染色体中に組み込まれた(ポップイン)。第2段階では、反対の隣接領域で組換えが起こり、計画された欠失だけを残して、クローニングベクター(およびマーカー)ならびにターゲットである染色体領域は除去(ポップアウト;「解消(resolving)」)された。そのような株は、マーカー選択の非存在下で多世代にわたって成長させた後、マーカーの欠失および所望の表現型(コロニー形態および/またはPCRによって決定)についてスクリーニングすることによって得られた。大腸菌以外のグラム陰性生物の場合、所望の欠失は、典型的には、ターゲット(非大腸菌)宿主株に接合伝達されうるがその中で複製することはできない「自殺」ベクターに組み込まれる。本発明者らは、自らの目的のために、pCM184を修飾することによって「自殺」ベクターを作出した(図7B参照;Marx and Lidstrom,BioTechniques 2002; 33(5):1062-1067)。カナマイシン耐性遺伝子および隣接loxP部位を、NotIおよびSacIIによる消化、T4 DNAポリメラーゼによる末端のポリッシング(polishing)およびライゲーションによって除去した。その結果得られたプラスミドpCX027(SEQ ID NO:141)は、図7Bに示すように、(SphまたはXccにおける)組み込み体の選択のためのテトラサイクリン耐性および大きなマルチクローニング部位を含有していた。大腸菌における欠失の作出には、プラスミドpMAK705(Hamilton et al.,J. Bacteriol. 1989;171(9):4617-4622)を使用した。このプラスミドは、温度感受性pSC101レプリコンを含有していたので、第1段階組込みの生成と第2(「解消(resolution)」)段階におけるプラスミド配列の喪失が、高温において容易になった。「細胞外多糖(EPS)マイナス」変異体の遺伝子構造をPCRおよびサザンブロット分析によって確認した。
欠失コンストラクトを作出するためのアプローチは、上記全てのターゲットについて同じとした。上流および下流の相同性領域(region of homology)は、適当なゲノムDNAをテンプレートとして使用するPCRによって得た。結果として生じるDNAフラグメントを所望のプラスミド中にクローニングすることができるように、制限部位をPCRプライマー中に設計するか、後述のXcc gumD遺伝子については、ゲノム中に天然に存在する制限部位を使用した。欠失(およびクローニングに使用される制限部位)は、ターゲット遺伝子のN末端およびC末端コード領域の短い領域間でインフレーム融合物が作り出されるように設計した。実質的には、標的コード領域が、制限酵素認識部位で置き換えられた。上流フラグメントと下流フラグメントの間の工学的に操作された(engineered)制限部位配列は、融合されたコード領域に2〜3個の非ネイティブコドンを付加した。この手法により、下流遺伝子の発現に対する極性効果(polar effect)がほとんど/全くないと予期される、明確に定義された変異が得られた。
大腸菌K-12
コラン酸(M抗原)は、多くの腸内細菌が生産する細胞外多糖であり(Grant,W.D., et al., J. Bacteriol. 1969;100:1187-1193)、典型的には、低い成長温度において、より高い生産量が見いだされる(Stout,V.,J. Bacteriol. 1996; 178:4273-4280)。この実施例では、コラン酸生合成が欠損した大腸菌K-12株の作出を述べる。そのような株は、30℃以下で行うことができる組換えコンドロイチンの生産のためにそれらをさらに工学的に操作した場合に、妨害または夾雑コラン酸を生産しない。プラスミドpMAK705(Hamilton,CM., et al., J. Bacteriol. 1989;171:4617-4622)を使って、染色体コラン酸生合成遺伝子クラスター中に正確な欠失を作出した。このプラスミドは温度感受性レプリコンを含有し、高温においては染色体外状態で存在することができない。一般に、ターゲット遺伝子座における正確な変異を作出するための段階は、「ポップイン/ポップアウト」機序によってもたらされ、Hamiltonら(前記)によって記述されている。設計された変異を含有するプラスミドクローンは、染色体中に、典型的にはターゲット遺伝子座における相同組換えを介して、非許容温度における形質転換体の成長とプラスミドがコードする抗生物質(クロラムフェニコール;Cm)耐性での選択によって、組み入れられる(「ポップイン」)。その後、これらの組み込み体をクロラムフェニコールの非存在下で多世代にわたって成長させると、プラスミドが組換えによって染色体から除去され、細胞分裂時に細胞から失われて、元の野生型構造または変異体構造のどちらか一方を残すことになる。これらの「ポップアウト体」は、Cm感受性によって同定される。次に、所望の変異体構造を持つ株が、(可能であれば)表現型によって、およびPCRまたはサザンブロット法によって同定される。
大腸菌K-12におけるコラン酸生合成オペロンは、約24kbにわたる19個または20個の連続する遺伝子からなる(Stevenson,G., et al., J. Bacteriol. 1996; 178:4885-4893)。20番目の遺伝子wcaMは、オペロン/転写単位の一部と思われるが、コラン酸生産には必要とされない。そこに含有されているのは、コラン酸生合成中に脂質担体への最初の糖の負荷を担うグリコシルトランスフェラーゼ酵素をコードするwcaJ遺伝子である。この実施例では、20個の遺伝子オペロン全体の欠失またはwcaJ遺伝子だけの欠失を含有する大腸菌K-12株の作出を述べる。大腸菌K-12 W3110株のゲノムはGenBank AP009048として公表されている(Blattner,F.R., et al., Science 1997;277:1453-1462)。
コラン酸オペロンの欠失:W3110コラン酸オペロンの第1遺伝子(wza)の上流および最後の遺伝子(wcaM)の下流にあるおよそ950bpを増幅するために、PCRプライマーを設計した。これらのフラグメントは染色体中の所望の組換え部位に対する相同性を与えた。増幅されたPCR産物の末端に以後のクローニングに使用するための非ネイティブ制限部位がもたらされるように、PCRプライマーを設計した。上流領域は、プライマーCAX129(HindIII部位に下線)およびCAX128(AscI部位に下線)で増幅した。下流領域は、プライマーCAX130(AscI部位に下線)およびCAX131(XbaI部位に下線)で増幅した。
PCRは、95℃で変性、57℃でアニーリングおよび72℃で伸長(各段階20秒)の30サイクルにわたって、Pfuポリメラーゼ(Stratagene)で行った。テンプレートは、100ngの大腸菌K-12 W3110ゲノムDNAからなった。PCRフラグメントをpCR-Blunt II-TOPO(Invitrogen)中にクローニングし、大腸菌TOP10(Invitrogen)に形質転換し、選択したクローン化インサートの配列が公表されたデータと合致することを確認した。上流クローンをHindIIIおよびAscIで消化し、下流クローンをXbaIおよびAscIで消化した。所望のフラグメントをゲル精製し(Gene Clean Turbo、Q-BIOgene)、HindIIIおよびXbaIで消化してからAntarcticホスファターゼ(New England Biolabs)で処理しておいたpMAK705とライゲーションした。大腸菌DH5α(Invitrogen)のCm耐性(LB Cm 34μg/mL、30℃)形質転換体をプラスミド構造について分析し、所望の構造を有するものをpMAK-CLと名付けた。このプラスミド(および最終的にそれから得られる染色体欠失)では、AscI部位における上流フラグメントと下流フラグメントの合体が、wza遺伝子の5'端とwcaM遺伝子の3'端とからなる小さな345bpのオープンリーディングフレームをもたらした。この特徴は、wcaMのさらに下流にある任意の遺伝子のコラン酸オペロンプロモーターからの潜在的発現の破壊が最小限になるように設計された。
プラスミドpMAK-CLを大腸菌W3110にエレクトロポレーションによって形質転換し、17μg/mLのCmを含有するLB(Maniatis,1989)寒天プレート上、30℃(許容温度)で平板培養することにより、Cm耐性で選択した。いくつかの形質転換コロニーをM9(Maniatis,1989)Cm 17μg/mL寒天プレートに画線し、43℃(非許容温度)でインキュベートした。二日後に複数のコロニー(推定組み込み体)が存在し、確認のために、これらをM9 Cmに43℃で再び画線した。2つの推定組み込み体を約25世代にわたって37℃のLB培地で成長させ、希釈液を調製してLBプレートに塗布し、室温(22〜24℃)で成長させた。三日後に、コロニーを2つのLB寒天プレート(1つはCm 17μg/mLを含有するもの)に移して、30℃で成長させた。Cm感受性分離株は、2つの元の組み込み体の派生株に62%および94%の頻度で存在した。これらは、おそらく、pMAK-CLプラスミドの「ポップアウト」および喪失によってもたらされたのだろう。「コロニーPCR」を使って、これらの株中のコラン酸オペロンにおける構造を評価した。少量のコロニーを、PCRに適合するチューブ中の滅菌脱イオン水10μLに懸濁した。これに、反応中の最終濃度/量が1×Taqポリメラーゼ緩衝液、1×「Taq Master」試薬、0.33mMの各dNTP、0.4μMの各プライマー、および0.5単位のTaqポリメラーゼになるように、「Taq Master」(Eppendorf)構成要素の1.5倍濃度混合物20μLを加えた。PCRは、95℃で8分から開始し、続けて95℃で30秒の変性、55℃で30秒のアニーリング、および68℃で3分の伸長を35サイクルにわたって行い、最後に68℃で7分間の伸長を行った。最初の特徴づけは、上流相同領域中のフォワードプライマー(CAX132)および下流相同領域中のリバースプライマー(CAX135)で行った。
所望のオペロン欠失を含有する株のPCRは1000bpのフラグメントを生成すると予期され、これが、分析した23個の「ポップアウト」株のうちの9個に見いだされた。これらの株において望ましくない再編成が起こっていないことを保証するために、相同性領域外のプライマーCAX162(フォワード)およびCAX163(リバース)による「コロニーPCR」を使用した。
これらの外側プライマーは、所望する構造の欠失では、2065bpのPCR産物を与え、9株中4株がこのPCR産物を生成したので、これらのうちの1つをMSC188と名付けた。MSC188株における欠失の構造のさらなる確認はサザンブロット法で達成した。pMAK-CLをテンプレートとして使用し、プライマーCAX128およびCAX129を使って、「DIG」標識プローブ(Roche)を作製した(1000bp)。野生型大腸菌W3110およびMSC188からの染色体DNAを制限酵素KpnI、PstIおよびBglIIで消化し、消化物をゲル電気泳動およびブロッティングに付した。プロービングにより、MSC188およびW3110において、それぞれ予期されるバンドパターンが明らかになった:KpnI、5921bp対9431bp;PstI、3902bp対12893bp;およびBglII、9361bp対6201bp。
wcaJの欠失:大腸菌K-12 W3110におけるwcaJ遺伝子を欠失させるための戦略は、コラン酸生合成オペロン全体の欠失について上述した戦略に準じた。W3110コラン酸オペロンののwcaJ遺伝子の上流および下流のおよそ500bpが増幅されるように、PCRプライマーを設計した。上流領域はプライマーCAX126(HindIII部位に下線)およびCAX125(PacI部位に下線)で増幅した。下流領域はプライマーCAX124(PacI部位に下線)およびCAX127(XbaI部位に下線)で増幅した。
上流および下流PCR産物の制限フラグメントを、pMAK705中にクローニングすることで、pMAK-wcaを得た。このプラスミドおよび最終的にそれから得られる染色体欠失では、PacI部位における上流フラグメントと下流フラグメントの合体が、wcaJ遺伝子の5'端と3'端とからなる小さな75bpのオープンリーディングフレームをもたらした。この特徴は、他のオペロン遺伝子の発現がコンドロイチンの生産にとって有益である場合に、それらの発現がいずれも途絶えないように設計された。大腸菌W3110の推定wcaJ欠失派生株のコロニーPCRによる最初の特徴づけはプライマーCAX126およびCAX127を使って行われ、23個の有望な「ポップアウト体」のうちの11個が所望のシグナルを与えた。推定wcaJ欠失を同定するために、外側プライマーCAX160(フォワード)およびCAX161(リバース)を使用したところ、試験した4株中3株が、予期される産物(1188bp)を含有していた。所望のDNA構造を持つ1つの株をMSC175と名付けた。
サザンブロット確認のために、pMAK-wcaをテンプレートとして使用し、プライマーCAX124およびCAX127を使って、「DIG」標識プローブを作製した(514bp)。野生型大腸菌W3110およびMSC175からの染色体DNAを制限酵素PacI、DraIIIおよびNdeIで消化し、消化物をゲル電気泳動およびブロッティングに付した。プロービングにより、MSC175およびW3110において、それぞれ予期されるバンドパターンが明らかになった:PacI、8456bp対>28000bp;DraIII、4502bp対5819bp、およびNdeI、8512bp対9829bp。
キサントモナス・カンペストリス
キサントモナス・カンペストリス病原型カンペストリス(Xcc)は、さまざまな工業的応用および食品的応用のための細胞外糖質ポリマー、キサンタンガムを生産するために、商業的に使用されている(Baird, J., et al., BioTechnology 1983;1:778-783)。この株およびプロセスをコンドロイチンの生産に使用するには、キサンタンガムを生合成することができないXcc株が必要である。(上で)大腸菌に使用した戦略と類似する戦略を使って、NRRL B-1459としても知られているキサントモナス・カンペストリス病原型カンペストリス株ATCC13951(Capage, M.R., et al., 国際公開WO87/05938; Katzen, F., et al., J. Bacteriol. 1998;180(7):1607-1617)におけるキサンタンガム生合成オペロン全体を、または第1グリコシルトランスフェラーゼの遺伝子gumDだけを、欠失させた。まず最初に、栄養寒天中の100μg/mL硫酸ストレプトマイシンに対して30℃において耐性な自然発生派生株を得て、これをMSC116と命名した。NRRL B-1459株のキサンタンガム生合成クラスターの配列(GenBankアクセッション番号U22511)に対して、また必要があれば、キサントモナス・カンペストリス病原型カンペストリスATCC33913のゲノム配列(GenBankアクセッションAE008922)に対して、PCRプライマーを設計した。
gumDの欠失:gumD遺伝子を欠失させるための戦略は、コード領域のおよそ1650bp上流(5')および1000bp下流(3')にある天然のEcoRI制限部位を利用した。これらの制限部位の外側にPCRプライマーを設計し、それらを、gumDコード配列のすぐ内側にあるPCRプライマーターゲティング領域とペアにすることにより、上流および下流相同性領域を作製した。およそ約1800bpの上流相同性領域を増幅するために、プライマーCAX114およびCAX116を使用した。およそ1100bpの下流相同性領域を増幅するために、プライマーCAX115およびCAX117を使用した。gumDコード領域の端にある2つの中間プライマーを、SbfI制限部位(下記下線部)で修正した。
PCRは、95℃(20秒)で変性、62℃(20秒)でアニーリングおよび72℃(30秒)で伸長の30サイクルにわたって、Pfu Ultra IIポリメラーゼ(Stratagene)で行った。テンプレートは100ngのキサントモナス・カンペストリス病原型カンペストリス(ATCC13951株;「Xcc」)ゲノムDNAからなった。PCRフラグメントをpCR-Blunt II-TOPO(Invitrogen)中にクローニングし、大腸菌TOP10(Invitrogen)に形質転換した。上流相同性クローンの関連配列はPCR産物の配列と合致したが、この共通配列は、この領域に関する公表されたXcc配列とは2塩基対が異なっている(プライマーを除く)。公表された配列は少数の正しくない割当を含んでいる可能性がある。下流相同性クローンの関連配列は、そのPCR産物の配列とも、この領域に関する公表されたXcc配列とも合致した(プライマーを除く)。
キサントモナスにおいて「ポップイン/ポップアウト」機序を使って特異的遺伝子欠失を作出するための戦略は、プラスミドpCM184(Marx, C. J. and Lidstrom,M.E.,BioTechniques 33(5):1062-1067,2002)の誘導体に基づいた。プラスミドpCM184は、プラスミドの複製を大腸菌では許すがキサントモナス(または他の非腸内細菌)では許さないColE1レプリコン、グラム陰性細菌間での接合伝達のためのoriT領域、アンピシリンおよびテトラサイクリンに対する耐性遺伝子、およびloxP配列に挟まれたカナマイシンに対する耐性遺伝子(Kanr)からなった。このプラスミドは、非大腸菌株において無標識(unmarked)(残留抗生物質耐性遺伝子がない)欠失を作出するように設計されたが、記載の手法では、欠失部位に小さなloxP配列が残った。しかし、本発明において作出される株にとっては、loxPなどの不必要な配列は含有しないことが望ましかった。そこで、loxP部位および介在カナマイシン耐性遺伝子が除去されるように、pCM184を修飾した。これにより、結果として得られた誘導体プラスミドを、上述の「ポップイン/ポップアウト」機序の変法によるキサントモナスにおける所望の無標識欠失の作出に、使用することが可能になった。
約1.8μgのプラスミドpCM184をNotIおよびSacII制限酵素(loxP/Kanr/loxP領域は除去するが、大半の制限部位は後で使うために残しておくように選択したもの)で消化し、酵素を失活させるために、完了した反応を75℃で15分間加熱した。次に、NotI消化によって生じた一本鎖突出部を埋め、SacII消化によって生じた突出部を刈り込む(trim back)するために(すなわち平滑端を作出するために)、試料(20μL)を、T4 DNAポリメラーゼ(1.8U, New England Biolabs)および100μMの各dNTPで、12℃において15分間処理した。EDTAを10mMになるように添加し、75℃で20分間加熱することにより、反応を停止させた。約170μgの処理済みプラスミドを、10μLの液量において、400UのT4 DNAリガーゼ(New England Biolabs)と、16℃で4時間反応させた。次に、不要なDNA構造(再形成されたpCM184など)を消化するために、ライゲーション反応を2.5U SbfIで90分間処理した。この反応のうち0.5μLの液量を使って大腸菌TOP10(Invitrogen)を形質転換し、LB Tc5にプレーティングしたところ、37℃における終夜インキュベーション後に、多数のコロニーが生じた。選ばれたコロニーからの細胞に含有されているプラスミドは、制限酵素分析およびDNA配列決定により、所望の構造を持つことが示された。このプラスミドをpCX027(SEQ ID NO:141)と命名し、図7Bに図示する。
gumD上流および下流領域(上記)のクローン化PCR産物を含有するプラスミド(それぞれ約2μg)を10UのSbfIを使って37℃で2時間消化した後、10UのEcoRIを(酵素特異的緩衝液と共に)使って同じ条件下で消化した。熱処理(70℃で20分間)の後、消化物をアガロース電気泳動に付し、所望のフラグメント(上流フラグメント約1.6kb;下流フラグメント約1.1kb)をQIAGEN Mini-Eluteキットで精製した。プラスミドpCX027(約3.5μg)を、50μL反応中、20UのEcoRIを使って、37℃で2.5時間消化し、60μL反応中、約18UのAntarcticホスファターゼ(New England Biolabs)を使って、37℃で15分間処理した後、70℃で20分間加熱した。三者ライゲーション(three-way ligation)を、それぞれ約100ngの処理済みpCX027と精製gumD上流および下流フラグメントとを使って、10μL反応中、16℃で約20時間行った。この反応の半分を大腸菌DH5α(Stratagene)に形質転換した後、LB Ap
100またはLB Tc
5に37℃でプレーティングした。所望の構造を持つクローンを同定するために、それぞれ上流および下流配列中の領域に相同なプライマーCAX122およびCAX119を使って、コロニーPCRを(上述のように)行った。
予期されるサイズ(1169bp)のPCR産物がいくつかのコロニーに検出され、所望の構造が制限分析によって確認された。対になった相同性領域の向き(gum遺伝子読み枠として与えられるもの)がベクターTetr遺伝子の向きと同じプラスミドまたは反対のプラスミドを、それぞれpCX030およびpCX031と名付けた。
キサントモナス・カンペストリス病原型カンペストリス(「Xcc」;イリノイ州ペオリアのARS Culture Collection(NCUAR)から得られるB-1459;ATCC13951としても知られている)を栄養ブロス(NB、Difco)中、30℃(表示しない限り、Xcc株の成長は全て30℃)で一晩、成長させ、新鮮NBに1:5希釈し、100μg/mLのストレプトマイシン(str)を含有する栄養寒天(NA、Difco)プレートに100μLずつ塗布した後、30℃でインキュベートした。数日後に、最初にプレーティングした細胞107個につき約1個の頻度で、コロニーが検出された。いくつかの自然発生的ストレプトマイシン耐性Xcc株を、NA str50プレートに画線することによって精製し、そのような分離株の一つをMSC116と名付けた。
プラスミドpCX030またはpCX031をXcc株MSC116にエレクトロポレーションによって移入した(Oshiro et al., J. Microbiol. Method 2006; 65:171-179)。それぞれpCX030(4.1×104/μg)およびpCX031(3.1×104/μg)からの形質転換体から、テトラサイクリン耐性コロニー(TcR)を得た。pCX031形質転換で得られた分離TcR株からゲノムDNAを調製し、pCX031組込みの部位についてPCRによって評価した。pCX031において使用した上流領域の外側のゲノム配列の下流領域への連結およびpCX031において使用した下流領域の外側の配列の上流領域への連結が決定されるように、プライマー対を選択した。具体的に述べると、プライマーCAX116(上流配列用の「外側プライマー」)およびCAX119(下流相同領域中;上記参照)を使って上流連結を調べ、CAX117(下流領域用の「外側プライマー」;上記参照)およびCAX122(上流相同領域中;上記参照)を使って下流連結を調べた。PCRは、Go Taq DNAポリメラーゼ(Promega、ウィスコンシン州マディソン)を使用し、0.5μMの各プライマー、250μMの各dNTP、1000ngのDNAテンプレート、および0.5Uの酵素を使って行った。反応条件は、94℃で4分の初回変性、94℃で15秒の変性、55℃で30秒のアニーリング、および72℃で4分の伸長を30サイクル、および2分の最終伸長を含む。「ポップイン」分離株は、pCX031の上流組込みと下流組込みの両方について同定した。2つの分離「ポップイン」株をMSC221およびMSC222と名付けた。これらの株を、30℃における成長のために、LBLS(10g/L Bactoペプトン、5g/L NaCl、5g/L酵母エキス、抗生物質なし)に接種した後、48時間間隔で、1:1000の希釈率を使って、同じ培地に、3回継代培養した。その結果得られた培養物を希釈し、アリコートをNA Str50プレートに塗布した。その結果生じたコロニーをNAおよびNA Tc5プレートに移した。TcS株はどちらの株からも2%の頻度で見いだされた。選ばれたTcS株に対するコロニーPCR分析を、プライマー対(CAX116とCAX119およびCAX117とCAX122)を使って、上述のように行ったところ、試験した全ての株がgumD欠失と合致することが実証された。MSC221およびMSC222からのこれら分離「ポップアウト」株をそれぞれMSC225およびMSC226と名付けた。寒天プレート上のMSC225およびMSC226のコロニーは、MSC116親株のコロニーと比較して、明らかに非粘液性であった。
キサンタンガム生合成遺伝子クラスターの欠失:gumBからgumMまでの生合成クラスターの大部分の欠失は、gumD遺伝子の欠失について詳述したものと同じ段階に準じた。pCX027へのクローニングのためのBglII制限部位と、上流および下流フラグメント間の融合のためのNotI部位とを組み込む、それぞれプライマーCAX136×CAX137(1434bp)およびCAX138×CAX139(1420bp)を使って、PCRにより、gumBの上流にある相同性領域とgumMの下流にある相同性領域を作出した。NotI部位の融合により、gumBコード配列の5'端とgumMコード配列の3'端とからなる53アミノ酸のポリペプチドのオープンリーディングフレームが作出される。制限部位に下線を付す:CAX136およびCAX139中のBglII;CAX137およびCAX138中のNotI。
上流フラグメントと下流フラグメントを増幅するために、Pfu Ultra IIポリメラーゼ(Stratagene)でPCRを行った。反応条件は、94℃で4分の初回変性、95℃で20秒の変性、57℃で30秒のアニーリング、および72℃で30分の伸長を30サイクル、および72℃で5分の最終伸長を含む。テンプレートは100ngのキサントモナス・カンペストリス病原型カンペストリス(ATCC13951株;「Xcc」)ゲノムDNAからなった。PCRフラグメントをpCR-Blunt II-TOPO(Invitrogen)中にクローニングし、大腸菌TOP10(Invitrogen)に形質転換した。上流相同性クローンの関連配列はPCR産物の配列と合致するが、この共通配列は、この領域に関するXcc株ATCC33913の公表された配列とは14塩基対が異なっている(プライマーを除く)。これらの食い違いはB-1459/ATCC13951ゲノムとATCC33913ゲノムの間のわずかな相違を反映しているらしい。下流相同性クローンの関連配列はPCR産物の配列と合致し、この配列は、この領域に関する公表されたXcc ATCC33913配列と異ならなかった(プライマーを除く)。gumBの上流領域(上記)およびgumMの下流領域(上記)のクローン化PCR産物を含有するプラスミド(それぞれ約1μg)を、7.5UのNotIおよび7.5UのBglIIを使って、37℃で2時間消化した。消化物をアガロースゲル電気泳動に付し、および所望のフラグメント(それぞれ約1.4kb)をQIAGEN Mini-Elute Kitで精製した。プラスミドpCX027(約1.0μg)を、15UのBglIIを使って、15μLで、37℃で2時間消化し、75μL反応中、約5UのAntarcticホスファターゼ(New England Biolabs)で、37℃において15分間処理した後、65℃で10分間加熱した。BglII消化したpCX027の精製後に、精製pCX027、gumBの上流フラグメント、およびgumMの下流フラグメントによる三者ライゲーションを、20μL反応中、室温で3時間行った。反応混合物の半分を大腸菌TOP10(Invitrogen)に形質転換した後、LB Ap
100またはLB Tc
5に、37℃でプレーティングした。所望の構造を持つクローンを同定するために、CAX140(上流相同領域中)およびCAX145(下流相同領域中)を使って、コロニーPCRを(上述のように)行った。
PCR陽性クローンからQIAGEN Qiaprep Spin Miniprep Kitを使ってプラスミドを調製し、プラスミドの構造を、上流および下流配列におけるその相同性領域の向きを含めて確認するために、BglII、NdeIまたはNcoIで消化した。対になった相同性領域の向きがベクターTetr遺伝子の向きと同じプラスミドまたは反対のプラスミドを、それぞれpKM001またはpKM002と名付けた。
プラスミドpKM001またはpKM002をXcc MSC116株にエレクトロポレーションによって移入した(Oshiro et al., J. Microbiol. Method 2006; 65:171-179)。Tc
Rコロニーを、それぞれpKM001(5.3×10
3/μg)およびpKM002(5.0×10
3/μg)の形質転換体から得た。ゲノムDNAをpKM001形質転換体由来の分離Tc
R株から調製し、pKM001組込みの部位についてPCRによって評価した。pKM001において使用した上流領域の外側のゲノム配列の下流領域への連結およびpKM001において使用した下流領域の外側の配列の上流領域への連結が決定されるように、プライマー対を選択した。具体的に述べると、プライマーprKM001(上流領域用の「外側プライマー」;下記参照)およびCAX145(下流相同領域中;上記参照)を使って上流連結を調べ、prKM002(下流領域用の「外側プライマー」;下記参照)およびCAX142(上流相同領域中;下記参照)を使って下流連結を調べた。
PCRは、Go Taq DNAポリメラーゼ(Promega)を使用し、0.5μMの各プライマー、250μMの各dNTP、600〜1000ngのDNAテンプレート、および0.5Uの酵素を使って行った。反応条件は、94℃で5分の初回変性、94℃で15秒の変性、55℃で30秒のアニーリング、および72℃で4分の伸長を30サイクル、および2分の最終伸長を含む。pKM001の上流組込みについて「ポップイン」分離株を同定した。これらの分離株をMSC242、MSC247およびMSC248と名付けた。
MSC242、MSC247およびMSC248を、30℃における成長のために、LBLS培地に接種した後、48時間間隔で、1:1000の希釈率を使って、同じ培地に、3回継代培養した。その結果得られた培養物を希釈し、アリコートをNA Str50プレートに塗布した。その結果生じたコロニーをNAおよびNA Tc5プレートに移した。TcS株は前記3つの株から1〜2%の頻度で見いだされた。gumBからgumMまでのキサンタンガム合成遺伝子の欠失を確認するために、上流連結についてはprKM001およびCAX145を使用し、下流連結についてはprKM003およびCAX142を使用して(上記参照)、選ばれたTcS株におけるゲノム構造をPCRによって評価した。PCRは、Herculase II Fusion DNAポリメラーゼ(Stratagene)を使用し、0.25μMの各プライマー、250μMの各dNTP、500〜700ngのDNAテンプレート、および0.5Uの酵素を使って行った。反応条件には、98℃で4分の初回変性、98℃で20秒の変性、60℃で20秒のアニーリング、および72℃で2分の伸長を30サイクル、および4分の最終伸長を含めた。3つの「ポップアウト」株(各「ポップイン」株から1つずつ)は、キサンタンガム生合成遺伝子クラスターの欠失と合致するPCR産物を示した。MSC242、MSC247およびMSC248からのこれらキサンタンガム生合成遺伝子欠失「ポップアウト」株を、それぞれMSC255、MSC256およびMSC257と名付けた。寒天プレート上のMSC255、MSC256、およびMSC257のコロニーは、MSC116親株のコロニーと比較して明らかに被粘液性であった。
大腸菌B
野生型大腸菌B(ATCC11303)の派生株である大腸菌BL21(DE3)のゲノムは、領域1および3は無傷(かつ機能的)であるが、領域2が破壊され非機能的である、不活性なグループ2莢膜遺伝子クラスターを含有すると報告された(Andreishcheva,E.N.and Vann,W.F.,Gene 2006; 384:113-119)。領域2の遺伝子はポリマー特異的であるが領域1および3は汎用であって特異性が低いことを考えると、大腸菌Bは、プラスミド上のまたは染色体に組み込まれたK4領域2遺伝子を与えるだけで、コンドロイチンを合成するように工学的に操作することができる(下記参照)。コンドロイチン生産用宿主としての大腸菌Bの有用性を改善するために、大腸菌K-12について上で述べた遺伝子変異によって、コラン酸の生産を排除した。
コラン酸オペロンの欠失:大腸菌Bコラン酸オペロンを欠失させるプロセスは、上述のK-12株に使用したものに準じる。本発明の時点において、大腸菌Bゲノム配列は公には利用可能でなかった。K-12株とB株は近縁関係にあるが、DNA配列にはいくつかの相違が予期される。そこで、新しい上流および下流相同領域を作出する必要があり、K-12株に使用した既存のプライマーを使用した。具体的に述べると、プライマー対CAX128×CAX129およびCAX130×CAX131と大腸菌BゲノムDNAテンプレートとによるPCRを使って、それぞれ上流および下流相同領域を作製した。サイズが約1kbの産物を得て、それをクローニングし、配列決定した。非プライマー配列において、上流相同領域(944bp)は、K-12上流領域とは2塩基だけが相違し(トランジション)、下流相同領域(911bp)は、30塩基が相違する(24個のトランジション、6個のトランスバージョン)。この上流および下流フラグメントをpMAK705中にクローニングして、pMAK-BCLを作製した。
プラスミドpMAK-BCLをエレクトロポレーションによって大腸菌Bに導入した。LB培地に新鮮なコロニーを接種し、激しく振とうしながら37℃で終夜インキュベートした。ある体積の新鮮な予熱したLBに終夜培養物を接種して初期OD600の読みを0.03にした(BioPhotometer、Eppendorf)。培養物がOD600≒0.8まで達した後、氷上で30〜40分間冷却した。細胞を遠心分離によって集め(10分、4000g)、元の体積の氷冷脱イオン水に再懸濁した後、再び遠心分離することによって、細胞を2回洗浄した。最後の遠心分離からの細胞を1/500体積の氷冷水に懸濁した。調製した大腸菌B懸濁液50μLにpMAK-BCL(200ng)を加え、氷上で約20分間インキュベートした。Gene Pulser Xcell(BioRad)を使用し、0.1mmギャップキュベット中、4.5〜5.0msecの持続時間を与える25μF、200Ωおよび1.8kVの設定で、エレクトロポレーションを行った。パルス処理した細胞を350μLのSOC培地(Maniatis,1989)で希釈し、37℃で1時間インキュベートした。次に、5〜10μLをLB Cm34寒天プレートに塗布し、43℃でインキュベートした。2日後に現れるコロニー(「ポップイン」候補を表す)を43℃でLB Cm34寒天プレートに画線し、その結果生じたコロニーをLB培地(Cmなし)に接種して、30℃で成長させ連続継代した。これらの培養物から得られたコロニーをCm感受性について試験して、「ポップアウト」候補を同定した。コロニーPCRを使って、候補株を特徴づけた。分離株の一つは、プライマー対CAX129×CAX132、CAX131×CAX132、CAX132×CAX135、CAX129×CAX135、およびCAX162×CAX163を使って、予期されるPCR産物を与えることがわかった。コラン酸遺伝子クラスターが欠失しているこの大腸菌B分離株をMSC364と名付けた。
実施例4:発現ベクターの構築
大腸菌に特異的な、明確に特徴づけられた、高コピー数および低コピー数プラスミドベクターが記述されている(Balbas and Bolivar,Methods Enzymol.1990;185:14-37、Das,Methods Enzymol.1990;182:93-112、Mardanov et al.Gene 2007; 15(395):15-21)。そのようなベクターでは、大腸菌における調節された遺伝子発現のために、明確に特徴づけられたさまざまなプロモーター系が使用される。加えて、大腸菌、キサントモナス・カンペストリスおよび多種多様な他のグラム陰性細菌において機能するRK2(低コピー数IncP)およびRSF1010(高コピー数IncQ)などの広宿主域プラスミドに基づく接合伝達性プラスミドベクターも利用できる(Franklin and Spooner「Promiscuous plasmids in Gram-negative bacteria」Academic Press(ロンドン)1989 pp247-267、Mather et al.Gene 1995;15:85-88、Haugen et al.,Plasmid 1995;33:27-39、Mermod et al,J.Bact. 1986;167:447-454)。キサントモナス・カンペストリス、スフィンゴモナス・エロデア、シュードモナス・プチダ(P.putida)、および非病原性大腸菌を含む多様な数多くのグラム陰性細菌における遺伝子移入および発現に同じプラスミドを使用することができるように、合成コンドロイチン生合成遺伝子セットを、これらの多用途広宿主域ベクター中にクローニングすることができる(Guiney and Lanka「Promiscuous plasmids in Gram-negative bacteria」Academic Press(ロンドン)1989 pp27-54)。
多くの有用なIncP系ベクターは、RK2(これは、最初は臨床シュードモナス分離株から単離され、その後、試験されたグラム陰性細菌のほぼ全てに自分自身を伝達しかつその中で機能する能力を有することが示された自己接合伝達性プラスミドである)に由来する。RK2のより小さな誘導体であって、安定なレプリコンであり、「ヘルパー」機能が第2のプラスミドからトランスに供給されれば、接合伝達されうるものが、構築されている。そのようなプラスミドの一つがpFF1である(Durland et al.,J.Bact. 1990;172:3859-3867)。このプラスミドの有用な誘導体がいくつか記述されており、そのうちの一つが、さまざまなグラム陰性細菌中で機能することが示されている強力なよく調節されたプロモーターを与えるためにシュードモナスTOLプラスミドのPmプロモーターと調節遺伝子xylSとを付加するpJB653である(Blatny et al.,Appl.Enviorn.Micro.1997;63:370-379)。このベクターおよび関連コンストラクトは、米国特許第6,258,565号の主題である。さまざまなIncQ系プラスミドベクターが、RSF1010(これは、元々はシュードモナス・プチダから単離された8.7kbのプラスミドである)から派生している。RSF1010は大腸菌および多種多様なグラム陰性細菌中で増殖することができる。PmプロモーターおよびxylS調節タンパク質を保有するRSF1010の誘導体が構築され、記述されている。プラスミドpNM185(Mermod et al.,J.Bact. 1986;167:447-454)はPmプロモーターおよびxylS調節遺伝子を保有するRSF1010誘導体である。
Schumannら(Plasmid 2005; 54:241-248)は、組換えタンパク質の安定な細胞内発現を可能にする枯草菌用の一連のプラスミド系発現ベクターを記述している。これらの発現ベクターは、大腸菌-枯草菌シャトルベクターpMTLBS72(これは、枯草菌中でシータ型サークルとして複製し、したがって、ローリングサークル機序で複製するpUB110などの典型的枯草菌プラスミドよりも安定である)に基づいている。構成的プロモーターPlepA、熱および酸ショックならびにエタノールによって誘導することができるプロモーターPgsiB、ならびにそれぞれキシロースおよびIPTGの添加に応答するPxylAおよびPspacプロモーターを含有するこのプラスミドの誘導体が記述されている。
IhcPおよびIncQプラスミドと和合性であると報告されている広宿主域プラスミドpBHR1(Szpirer et al.,J. Bacteriol. 2001; 183:2101-10)を、MoBiTec GmbH(ドイツ、ゲッティンゲン)から購入した。このプラスミドを修飾することで、上で言及したPm/xylS発現系を使用するベクター(pDD54)を作出した。pBHR1系発現ベクター構築の第1段階は、そのプラスミド上に存在するカナマイシン耐性(KanR)遺伝子を欠失させることであった。これが望ましかった理由は、pBHR1および誘導体の接合伝達を指示するために使用することができるプラスミドpRK2013もKanR遺伝子を保有しているからである。そのうえ、この遺伝子および隣接配列の欠失により、以下に詳述する一定の後続クローニング段階が容易になった。pBHR1はクロラムフェニコール耐性(CamR)を付与する遺伝子も保有するので、このプラスミドの選択には、カナマイシンの代わりにこの抗生物質を使用することができる。SbfIで消化したpBHR1(図8Aに図示)からプラスミドDNAを調製し、消化産物をライゲーションしてクロラムフェニコール耐性カナマイシン感受性形質転換体をスクリーニングすることによって、KanR遺伝子を含有する1.2kb SbfIフラグメントを欠失させた。そのような形質転換体の一つからのプラスミドをpDD39(図8A参照)と名付けて、以降の構築段階に使用した。
Pmプロモーターからの発現を正に調節するxylS遺伝子を、シュードモナス・プチダATCC33015から調製したpWW0(TOLプラスミド)DNAから、PCRによって増幅した。QIAGEN Plasmid Mini Kit(QIAGEN Inc.、カリフォルニア州バレンシア)を供給元のプロトコールに従って使用することにより、シュードモナス・プチダATCC33015の新鮮終夜培養物20mLから、4μgのpWW0 DNAを単離した。このDNA調製物をテンプレートとして使用するPCR反応で、xylS遺伝子および隣接DNA配列を2つのフラグメントとして増幅し、次にそれらを、後続のPCRスプライシング反応によって接合した。この手法により、xylSの翻訳停止コドンの9塩基対下流(3'側)にあるNsiI部位の付加が容易になった。第1ラウンドのPCRでは、一方の反応(反応A)にプライマーDHD197(SEQ ID NO:103)およびDHD201(SEQ ID NO:104)を使用し、もう一つの反応(反応B)にプライマーDHD200(SEQ ID NO:105)およびDHD198(SEQ ID NO:106)を使用した。これらのプライマーの配列は次のとおりである。
PCR反応は、PfuUltra IIポリメラーゼ(STRATAGENE、カリフォルニア州ラホーヤ)を使用し、供給元のプロトコールに従って行った。各100μLの反応において、プライマーを各0.4μMの最終濃度になるように加え、dNTPを各200μMの最終濃度で加え、10ナノグラムのpWW0 DNAをテンプレートとして加えた。PCR反応は、Perkin-Elmer GeneAmp 2400サーモサイクラーにおいて、次のサイクリングパラメータを使って行った:95℃で2分を1サイクル;95℃で20秒、60℃で20秒、および72℃で45秒を30サイクル;72℃で3分を1サイクル;および4℃で保持。これらの反応の産物をアガロースゲル電気泳動で分析した。観察されたPCR産物のサイズは、反応Aの産物(1259bp)も反応Bの産物(422bp)も、予期されるサイズと合致した。
Qiagen QIAquick PCR Purification Kit(QIAGEN、カリフォルニア州バレンシア)を使用し、供給元のプロトコールに従って、これらの反応の産物を精製し、それぞれの1μLを1mLの滅菌蒸留脱イオン水に加えた。この混合物50μLに、10×PfuUltra II反応緩衝液10μL、dNTPの原液(各10mM)10μL、DHD197の原液(4μM)10μL、DHD198の原液(4μM)10μL、滅菌蒸留脱イオン水16μLおよびPfuUltra IIポリメラーゼ2μLを加えた。反応AおよびBについて上述した手法を使ってPCR反応を行った。Qiagen QIAquick PCR Purification Kit(QIAGEN、カリフォルニア州バレンシア)を使用し、供給元のプロトコールに従って、この反応の産物を精製し、アガロースゲル電気泳動で分析した。PCRスプライシング反応の産物の予期されるサイズ1610bpと合致する位置に強いバンドが観察された。QIAquick Gel Extraction Kit(QIAGEN Inc.、カリフォルニア州バレンシア)を使用し、供給元のプロトコールに従って、このバンドをゲルから切り出した。
このPCRフラグメントを、pCR-Blunt II-TOPOクローニングベクター(Invitrogen、カリフォルニア州カールズバッド)中に、供給元のプロトコールに従ってクローニングした。その結果生じたプラスミドをpDD42と名付け、図8Aに図示する。PCRプライマーDHD197およびDHD198により、前記1610bpのPCRフラグメントの各端から3塩基対の位置にPstIが付加された。pDD42におけるPstIフラグメントの配列を決定した(SEQ ID NO:107)。この配列は、報告されたpWW0配列(GenBank、AJ344068)によれば、xylS遺伝子の予期される配列と合致し、プライマーDHD200およびDHD201に由来する5塩基対の付加(これはxylSの翻訳停止コドンの9塩基対下流(3'側)にNsiI部位の作出をもたらす)を示した。xylSの下流にある非コード領域には、pDD42中のクローン化PstIフラグメントとGenBankのAJ344068に報告されている配列との間に、2つの配列相違が観察された。G残基の挿入がxylS遺伝子のTGA停止コドンの3'側119bpおよび181bpの位置に観察される。これらの配列相違はxylS遺伝子とxylH遺伝子の間の遺伝子間領域内に存在する。
xylS遺伝子を含有するPstIフラグメントをpDD42から切り出し、ゲル精製し、pDD39のSbfI部位中にクローニングした。PstI酵素とSbfI酵素は、同一の4bp突出部を有する消化産物を作出し、それらを一つにライゲーションすることができるが、その結果生じる組換え体ではSbfI認識部位は破壊される。pDD42由来のPstIフラグメント上に含有されるxylS遺伝子を含有するpDD39誘導体をpDD47と名付け、図8Aに示す。
RNAポリメラーゼおよびXylSタンパク質の結合に必要な最小Pmプロモーター配列(Dominguez-Cuevas et al.,2008)にまたがるおよそ90bpのTOLプラスミドDNA配列と、合成上流および下流転写ターミネーターならびにPmプロモーターのすぐ下流に遺伝子をクローニングするための複数の制限部位とを含む、470bpのDNAフラグメント(SEQ ID NO:79)が、DNA2.0(カリフォルニア州カールズバッド)によって新規に合成された。図8Bは、DNA2.0 pJ201ベクターにクローニングされたこの470bpフラグメントを含有するpJ201:11352を表す。このプロモーター含有フラグメントは、pBHR1プラスミドおよび誘導体pDD47プラスミド中に位置していて適合する、そしておそらくはユニークであると思われた、BstBI部位へのクローニングを可能にする隣接AccI部位を持つように設計された。しかし、pDD47の消化と、その後のpBHR1の消化とにより、2つのBstBI部位の存在が明らかになった。文献に報告されているpBHR1の配列(GenBank:Y14439.1)が全く正しいわけではないことは、明らかである。この不一致ゆえに、クローン化PmプロモーターをpDD47に付加するには、追加のクローニング段階が必要であった。
図8Aに示すように、pDD47は、プロモーター挿入のターゲットとした注釈付きのBstBI部位に隣接するユニークなEcoRI部位とAgeI部位とを含有している。これはAgeI部位の下流にNgoMIV部位も含有している。pDD47の763bp EcoRI-NgoMIVフラグメントを切り出し、EcoRI-NgoMIV切断したpREZ6中にクローニングすることで、pDD49(図8B)を作製した。同様に図8Bに図示するpREZ6は、短いポリリンカー配列(ttaattaagggtttaaactac(SEQ ID NO:142))がpBluescript SK+のユニークDraIII部位に挿入されているpBluescript SK+(Stratagene、カリフォルニア州ラホーヤ)の誘導体である。このコンストラクトでは、関心対象のBstBIがユニークであるので、Pmプロモーターを含有するpJ201:11352のAccIフラグメントを切り出し、pDD49のBstBI部位中にクローニングすることで、pDD50を作出した。次に、pDD50のEcoRI-AgeIフラグメントを切り出し、pDD47の5055bp EcoRI-AgeIフラグメントにライゲーションすることで、図8Cに示す発現ベクターpDD54を作出した。pDD54を、以下に述べるように、また実施例6、7、8および9で述べるように、代替宿主への移入と、そこでの発現のために、K4莢膜遺伝子の初期クローニングにおける発現ベクターとして使用した。
3つの合成遺伝子フラグメントkpsFEDUCS(FSセグメント)、kpsMTkfoABCFG(MGセグメント)およびkfoDIEH(DHセグメント)を、合成業者DNA2.0(カリフォルニア州カールズバッド)から受け取った。合成DNAは、プラスミドベクターpJ241中にクローニングされたフラグメントとして提供された。図8Dはこれらのコンストラクトのプラスミド図を表す。合成遺伝子を単一のオペロンにアセンブルし、次にそれをpDD54中にクローニングした。このプロセスの第1段階は、FSセグメントとMGセグメントを組み合わせて単一のフラグメントにすることであった。プラスミドベクターpJ241においてFSセグメントとMGセグメントとを異なる順列で組み合わせた2つのプラスミドを構築した。
プラスミドpJ241:10662およびpJ241:10664のアリコートをSbfI+BglIIで消化し、アルカリホスファターゼで処理し、QIAEX II Gel Extraction Kit(Qiagen Inc.、カリフォルニア州バレンシア)を使用し供給元のプロトコールに従って、ゲル精製した。並行して、pJ241:10662およびpJ241:10664 DNAのアリコートをSbfIおよびBamHIで消化し、その結果生じたおよそ9.1kbおよびおよそ8.0kbのSbfI-BamHIフラグメント(それぞれ合成MGおよびFS遺伝子セグメントを含有する)を、上述のようにゲル精製した。ゲル精製したおよそ9.1kbのSbfI-BamHI MGセグメントを、SbfIおよびBglIIで消化してホスファターゼ処理したpJ241:10664ベクター(これはFS遺伝子セグメントを含有する)中にライゲーションした。BamHI酵素とBglII酵素は異なる配列(それぞれGGATCCとAGATCT)を認識するが、これらは同一の4bp突出部(GATC)を生じ、それゆえに消化産物を一つにライゲーションすることができるが、その結果生じるライゲーション産物は、以後、どちらの酵素によっても認識され得なくなる。結果として得られた組換えプラスミドをpDD37と名付け、図8Eに示す。このコンストラクトは、合成遺伝子の5'側にSbfI部位を保持し、合成遺伝子の3'側にpJ241:10664中に存在するBamHI部位を保持する。それゆえに、合成遺伝子セットkpsMTkfoABCFGkpsFEDUCS(MGFSセグメント)は、およそ17.1kbのSbfI-BamHIフラグメントとして切り出すことができる。同様に、ゲル精製したおよそ8.0kbのSbfI-BamHI FSセグメントを、SbfIおよびBglIIで消化してホスファターゼ処理したpJ241:10662ベクター(これはMG遺伝子セグメントを含有する)中にライゲーションした。その結果生じた組換えプラスミドをpDD38と名付け、図8Eに示す。ここでも、このコンストラクトは、合成遺伝子の5'側にSbfI部位を保持し、合成遺伝子の3'側にpJ241:10662中に存在するBamHIを保持する。それゆえに、この合成遺伝子セットkpsFEDUCSkpsMTkfoABCFG(FSMGセグメント)は、およそ17.1kbのSbfI-BamHIフラグメントとして切り出すことができる。
pJ241:10663(図8D参照)に含有される合成遺伝子kfoD、kfoI(またはorf3)、kfoEおよびkfoH(またはorf1)(DHセグメント)を、プラスミドpDD37およびpDD38中にクローニングした。プラスミドpDD37およびpDD38をEcoRIで消化し、アルカリホスファターゼで処理し、QIAEX II Gel Extraction Kit(Qiagen Inc.、カリフォルニア州バレンシア)を使用し供給元のプロトコールに従って、ゲル精製した。これらのプラスミドのそれぞれにおけるユニークEcoRI部位は、kfoCとkfoFとを分離する遺伝子間領域に位置する。合成遺伝子kfoD、kfoI、kfoEおよびkfoHを含有するDHセグメントを、pJ241:10663から、およそ4.2kbのEcoRIフラグメントとして切り出し、ゲル精製した。このフラグメントをEcoRI切断してホスファターゼ処理したpDD37プラスミドとpDD38プラスミドの両方にライゲーションした。その結果生じた組換え体を、およそ4.2kbのEcoRIフラグメントの向きについて、診断用制限酵素で切断することによって調べた。付加されたDHセグメントを正しい向きに含有している組換え体が、容易に得られた。その結果得られた、pDD37由来のプラスミドpDD51と、pDD38由来のpDD52を、図8Fに示す。これらのコンストラクトはそれぞれ、K4莢膜クラスター遺伝子の全てを含有しているが、図示するように、これら2つのプラスミドでは遺伝子の順序が異なっている。pDD51では、遺伝子の順序がkpsMTkfoABCDIEHFGkpsFEDUCSであり、pDD52では、順序がkpsFEDUCSkpsMTkfoABCDIEHFGである。どちらの場合も、K4遺伝子セット全体を、およそ21kbのSbfI-BamHIフラグメントとして切り出すことができる。これらのプラスミドからのK4莢膜遺伝子を、上述の発現ベクターpDD54中にサブクローニングすることで、それぞれ発現プラスミドpDD57およびpDD58を作製した。これらのプラスミドの両方を図8Gに図解する。合成K4莢膜遺伝子セット全体を、pDD51およびpDD52から、およそ21kbのSbfI-BamHIフラグメントとして切り出し、QIAEX II Gel Extraction Kit(Qiagen Inc.、カリフォルニア州バレンシア)を使用し供給元のプロトコールに従ってゲル精製し、SbfI-BamHI消化したpDD54中にクローニングした。
pDD57およびpDD58では、K4莢膜遺伝子セット全体(17遺伝子)が、Pmプロモーターと、xylS遺伝子によってコードされるXylS調節タンパク質との制御下にある。pDD54およびpDD58プラスミドは、元々は、遺伝子クローニングに関するその有用性を強化する変異をいくつか含有する市販株(Invitrogen、カリフォルニア州カールズバッド)である大腸菌「TOP10」株において構築された。次に、これらのプラスミドは、組換えDNA実験によく使用される別の大腸菌宿主(「DH5α」)にも移入された。これらの大腸菌株は、生産プラットフォームとして理想的な開発候補ではない。そこで、初期の実験では、下記実施例6で述べるように、pDD54およびpDD58を、より適切な大腸菌K-12株に形質転換し、その結果生じた株を、コンドロイチン生産について調べた。
pDD57およびpDD58の修飾によってさらなる発現プラスミドも構築した。以下に詳述するように、発現プラスミドpDD57およびpDD58にテトラサイクリン耐性遺伝子を付加した。テトラサイクリン耐性には、潜在的に、プラスミドの導入および維持に関する選択として、2つの利点がある。第1に、テトラサイクリン耐性(TcR)は、典型的には、プラスミド維持に関して、よりストリンジェントな選択である。なぜなら、その耐性機序は、クロラムフェニコールおよび他の多くの抗生物質の場合のように抗生物質の不活化に基づくのではなく、抗生物質の細胞外への輸送に基づくからである。それゆえに、培養培地中の選択剤の有効濃度は、細胞成長および代謝によって変化しない。第2に、テトラサイクリンに対する耐性を付与する自然な染色体変異は珍しく、キサントモナス・カンペストリスでは観察されなかった。これに対し、クロラムフェニコールに対する耐性を付与する自然な染色体変異は、実施例6で述べるようなプラスミド移入実験において、キサントモナス・カンペストリスで観察された。これらの変異は、潜在的に、pDD57またはpDD58などの関心対象のプラスミドを獲得したCmR形質転換体/接合完了体を不明瞭にする可能性がある。
発現プラスミドpDD57およびpDD58を、これらのプラスミドのクロラムフェニコール耐性(CmR)という性質を保持したまま、テトラサイクリン耐性(TcR)の性質を付与する遺伝子を付加することによって修飾した。プラスミドpCX027(上記実施例3および図7Bに記載)中に存在し、大腸菌プラスミドベクターpBR322に由来する、テトラサイクリン耐性遺伝子(tetR)を、PCRによって増幅し、pDD57およびpDD58に存在するユニークBamHI部位中にクローニングした。tetR遺伝子を増幅しクローニングする過程で、この遺伝子を、次に述べるように修飾した。PCRプライマーにより、tetR遺伝子の5'端、プロモーターの上流に、BglII部位が付加され、tetR停止コドンの3'側にBamHI部位が付加された。プライマーはさらに、(タンパク質のアミノ酸配列は変化させずに)内部BamHI部位を排除し、増幅されるフラグメント上に通常存在するいわゆる「抗tet(anti-tet)」プロモーターを排除するように、遺伝子を修飾した。このプロモーターは、tetRプロモーターの近くに位置するが、反対向きの転写を指示する(Balbas et al., Gene 1986;50:3-40)。tetR遺伝子の2つのオーバーラップセグメントを増幅し、所望の配列変化を導入する、2つのPCR反応を行うことによって、この修飾tetR遺伝子を作出した。次に、これら2つのフラグメントを後続のPCRスプライシング反応によって一つに接合することで、tetR遺伝子の5'端、プロモーターの上流にBglII部位を持ち、tetR翻訳停止コドンの3'側にBamHI部位を持つ、所望の配列のtetR遺伝子およびプロモーター領域を作製した。
第1PCR反応(反応A)では、プライマーDHD218(SEQ ID NO:113)およびDHD219(SEQ ID NO:114)を使用して、tetRコード配列のアミノ末端部分と上流プロモーター配列とを含むおよそ400bpのDNAを増幅した。第2反応(反応B)では、プライマーDHD220(SEQ ID NO:115)およびDHD221(SEQ ID NO:116)を使用して、tetRコード配列の残りの部分と翻訳停止コドンとを含むおよそ900bpのDNAを増幅した。これらのプライマーの配列は以下に示すとおりである。DHD218に示す影付きの配列は、pCX027中に存在する配列ATCGATAAGCTT(SEQ ID NO:141の核酸2843-2854)を置換し、その際に、tetRプロモーター領域中に位置するClaI部位とHindIII部位とを排除して、抗tetプロモーターの-10領域の配列を変化させる。DHD219およびDHD220の相補的な影付き配列は、pCX027のtetR遺伝子のBamHI部位を排除するサイレント変異を作出する。この変異はCTCロイシンコドンをTTGロイシンコドンに変化させるので、TetRタンパク質のアミノ酸配列を改変しない。
PCR反応AおよびBは、PfuUltra IIポリメラーゼ(Stratagene、カリフォルニア州ラホーヤ)を使用して行った。各40μLの反応において、Pfu反応緩衝液(供給元によって供給されたもの)を1×の最終濃度になるように加え、プライマーを各0.4μMの最終濃度になるように加え、dNTPを各200μMの最終濃度で加え、1ngのpCX027プラスミドDNAをテンプレートとして加え、2.5単位のPfuUltra IIポリメラーゼを加えた。PCR反応AおよびBは、RoboCycler(登録商標)Gradient 96サーモサイクラー(Stratagene、カリフォルニア州ラホーヤ)において、次のサイクリングパラメータを使って行った:95℃で1分を1サイクル;95℃で30秒、55℃で30秒、および72℃で30秒を30サイクル;72℃で5分を1サイクル;および6℃で保持。これらの反応の産物を、Qiagen QIAquick PCR Purification Kit(QIAGEN、カリフォルニア州バレンシア)を使用し供給元のプロトコールに従って精製し、アガロースゲル電気泳動によって分析した。観察されたPCR産物のサイズは、反応Aの産物(395bp)も反応Bの産物(920bp)も、予期されるサイズと合致した。これらのフラグメントをゲルから切り出し、QIAquick Gel Extraction Kit(QIAGEN Inc.、カリフォルニア州バレンシア)を使用し供給元のプロトコールに従ってゲル切片から溶出させ、30μLのEB溶出緩衝液中に回収した。その後のPCRスプライシング反応(反応SP)では、ゲル精製したフラグメントをテンプレートとした。50μL反応において、Pfu反応緩衝液を1×の最終濃度になるように加え、プライマーを各0.4μMの最終濃度になるように加え、dNTPを各200μMの最終濃度で加え、反応AおよびBのゲル精製反応産物各3μLをテンプレートとして加え、2.5単位のPfuUltra IIポリメラーゼを加えた。PCR反応SPは、RoboCycler(登録商標)Gradient 96サーモサイクラー(Stratagene、カリフォルニア州ラホーヤ)において、次のサイクリングパラメータを使って行った:95℃で1分を1サイクル;95℃で30秒、55℃で30秒、および72℃で30秒を30サイクル;72℃で5分を1サイクル;および6℃で保持。この反応の産物を、QIAGEN QIAquick PCR Purification Kit(QIAGEN、カリフォルニア州バレンシア)を使用し供給元のプロトコールに従って精製し、アガロースゲル電気泳動によって分析した。PCRスプライシング反応の産物の予期されるサイズ(1295bp)と合致する位置に強いバンドが観察された。
このPCR産物をBglIIおよびBamHIで消化し、BamHI消化したpDD57およびpDD58とライゲーションした。ライゲーション産物を使って大腸菌TOP10(Invitrogen、カリフォルニア州カールズバッド)を形質転換し、10μg/mLテトラサイクリンを含有するLBプレート上、30℃で平板培養することにより、テトラサイクリン耐性を獲得した形質転換体を選択した。その結果得られたテトラサイクリン耐性形質転換体を診断PCR反応および制限消化によってスクリーニングすることで、tetR遺伝子の存在を確認し、その向きを決定した。所望の構造を有するプラスミドを同定し、pDD61(pDD57::tetR)(SEQ ID NO:143)およびpDD62(pDD58::tetR)(SEQ ID NO:144)と名付けた。これらのプラスミドの略図を図8Hに示す。同様のtetR遺伝子の挿入をベクターpDD54のBamHI部位に行うことで、図8Iに示すpDD63を作製した。このプラスミドは、クローン化K4遺伝子を発現する任意のTcRプラスミドを使った実験に、TcRベクターのみの対照として役立ちうる。
合成遺伝子セットは、任意の関心対象の遺伝子の非極性欠失を作出することを可能にする制限部位を含有する。単一の4.2kb EcoRIフラグメントを欠失させることにより、4つの遺伝子kfoDIEHのセットを欠失させた。この4.2kb EcoRIフラグメントを、発現プラスミドpDD57およびpDD58ならびに上述したそれら各々のTcR誘導体pDD61およびpDD62から欠失させた。図8Gおよび8Hに示すこれら4つのプラスミドはいずれも3つのEcoRI部位を含有する。2つの部位が関心対象の4.2kbフラグメントを規定し、3つ目の部位は、クロラムフェニコール耐性(CmR)を付与するプラスミド遺伝子のコード配列内で切断する。これらのプラスミドのそれぞれをEcoRIで完全に消化し、その結果生じた消化産物を再ライゲーションした。ライゲーション産物による形質転換後に、CmR形質転換体を選択し、制限エンドヌクレアーゼ消化によって分析した。4.2kb EcoRIフラグメントが欠失しているプラスミドは、いずれの場合も容易に得られた。プラスミドpDD59、pDD60、pDD67およびpDD66は、それぞれpDD57、pDD58、pDD61およびpDD62の4.2kb EcoRIフラグメント欠失誘導体であり、いずれもkfoDIEH遺伝子が欠失している。これらのプラスミドを図8Jに図示する。
クローン化K4遺伝子の発現のウェスタンブロット分析(下記実施例5参照)は、pDD66を含有する大腸菌株では、kpsFEDUCS遺伝子の発現が最適未満であることを示した。そこで、kfoGとkpsFの間の遺伝子間領域にプロモーター(Pm)が組み込まれるように、pDD66を修飾した。図8Kに示すように、pDD66ではこの遺伝子間領域がユニークなPacI部位と2つのClaI部位とを含有している。PacIおよびClaIによる消化は、2つのフラグメント、すなわち34bpのClaIフラグメントと12bpのClaI-PacIフラグメントを切り出して、ClaI端およびPacI端を持つ大きなベクターフラグメントを残す。配列:
を有する127bp PacI-ClaI DNAフラグメントを、ClaI-PacI消化したpDD66ベクターフラグメントに挿入することで、pBR1052を作製した。付加された127bp PacI-ClaIフラグメントは、1コピーのPmプロモーター配列を含む。図8Kに示すように、pBR1052では、付加されたPmプロモーターのコピーが、このプロモーターにおける転写開始がkpsFEDUCS遺伝子を含むRNA転写産物をもたらしうるような方向を向いている。
発現プラスミドpDD66およびpBR1052を上に説明した。K4コンドロイチン生合成遺伝子を(下記実施例10で述べるように)染色体中に挿入するための遺伝子置換ベクターを構築するために、pDD66およびpBR1052からのK4コンドロイチン生合成遺伝子を、上記実施例3において述べたpMAK-CL置換ベクター中にクローニングした。図8Lに図示するpMAK-CLベクターは、コラン酸(CA)遺伝子クラスターの上流および下流にあるクローン化DNA領域と、これらの領域の接合部にあるユニークなAscIクローニング部位とを含有している。実施例3で詳述したように、このベクターを使って大腸菌K-12 W3110におけるCA遺伝子クラスター全体の欠失を構築することで、MSC188株を作製した。pDD66およびpBR1052からおよそ19kbのAscIフラグメントとしてK4遺伝子発現カセットを切り出し、QIAEX II Gel Extraction Kit(Qiagen Inc.、カリフォルニア州バレンシア)を使用し供給元のプロトコールに従ってゲル精製し、これらのフラグメントを、AscI消化しホスファターゼ処理しゲル精製したpMAK-CL DNAとライゲーションした。形質転換体をテトラサイクリンに対する耐性で選択した。テトラサイクリンに対する耐性を付与する遺伝子は、pDD66およびpBR1052のAscIフラグメント上に、Pmプロモーターならびに上流および下流転写ターミネーター配列と一緒に存在する。pBR1052またはpDD66のAscIフラグメントを含有するpMAK-CLの誘導体を同定し、それぞれpDD74およびpDD76と名付けた。これらのプラスミドを図8Lに図示する。
大腸菌fhuA遺伝子の上流(5')および下流(3')にあるDNA領域をPCRによってクローニングし、アセンブルし、配列決定し、この欠失フラグメントをpMAK705自殺プラスミド中に移すことで、pMAK705-ΔfhuAまたはpDD73(図8M)と呼ばれるfhuA遺伝子座用の置換ベクターを作出した。fhuA遺伝子の上流および下流にあるDNAセグメントを、大腸菌K-12 W3110株から調製したゲノムDNAから、PCRによって増幅し(実施例3参照)、次に、後続のPCRスプライシング反応によって、これら2つのフラグメントを一つに接合した。この手法によって、上流DNAセグメントと下流DNAセグメントの接合部におけるPstI部位の付加が容易になった。
第1ラウンドのPCRでは、一方の反応(反応A)にプライマーDHD236(SEQ ID NO:108)およびDHD237-S(SEQ ID NO:109)を使用して、fhuA遺伝子の上流にあるおよそ800bpのDNAを増幅し、もう一つの反応(反応B)にプライマーDHD238-S(SEQ ID NO:110)およびDHD239(SEQ ID NO:111)を使用して、fhuA遺伝子の下流にあるおよそ950bpのDNAを増幅した。これらのプライマーの配列は次のとおりである:
PCR反応Aは、PfuUltra IIポリメラーゼ(Stratagene、カリフォルニア州ラホーヤ)を使って行った。50μL反応において、Pfu反応緩衝液(供給元によって供給されたもの)を、1×の最終濃度になるように加え、プライマーを各0.4μMの最終濃度になるように加え、dNTPを各200μMの最終濃度で加え、50ngのW3110ゲノムDNAをテンプレートとして加え、2.5単位のPfuUltra IIポリメラーゼを加えた。PCR反応Aは、RoboCycler(登録商標)Gradient 96サーモサイクラー(Stratagene、カリフォルニア州ラホーヤ)において、次のサイクリングパラメータを使って行った:95℃で1分を1サイクル;95℃で1分、55℃で1分、および72℃で1分を30サイクル;72℃で4分を1サイクル;および6℃で保持。
PCR反応Bは、Herculaseポリメラーゼ(Stratagene、カリフォルニア州ラホーヤ)を使って行った。50μL反応において、Herculase反応緩衝液(供給元によって供給されたもの)を1×の最終濃度になるように加え、プライマーを各0.4μMの最終濃度になるように加え、dNTPを各200μMの最終濃度で加え、25ngのW3110ゲノムDNAをテンプレートとして加え、2.5単位のHerculaseポリメラーゼを加えた。PCR反応BはRoboCycler(登録商標)Gradient 96サーモサイクラー(Stratagene、カリフォルニア州ラホーヤ)において、次のサイクリングパラメータを使って行った:92℃で2分を1サイクル;95℃で30秒、50℃で30秒、および72℃で1分を33サイクル;68℃で10分を1サイクル;6℃で保持。
これらの反応の産物を、QIAGEN QIAquick PCR Purification Kit(QIAGEN、カリフォルニア州バレンシア)を使用し供給元のプロトコールに従って精製し、アガロースゲル電気泳動によって分析した。観察されたPCR産物のサイズは、反応Aの産物(832bp)も反応Bの産物(949bp)も、予期されるサイズと合致した。これらのフラグメントをゲルから切り出し、QIAquick Gel Extraction Kit(QIAGEN Inc.、カリフォルニア州バレンシア)を使用し供給元のプロトコールに従ってゲル切片から溶出させ、30μLのEB溶出緩衝液中に回収した。ゲル精製したフラグメントを、後続のPCRスプライシング反応(反応SP)におけるテンプレートとした。50μL反応において、Pfu反応緩衝液を1×の最終濃度になるように加え、プライマーを各0.4μMの最終濃度になるように加え、dNTPを各200μMの最終濃度で加え、反応AおよびBのゲル精製反応産物各3μLをテンプレートとして加え、2.5単位のPfuUltra IIポリメラーゼを加えた。PCR反応SPは、RoboCycler(登録商標)Gradient 96サーモサイクラー(Stratagene、カリフォルニア州ラホーヤ)において、次のサイクリングパラメータを使って行った:95℃で1分を1サイクル;95℃で30秒、60℃で30秒、および72℃で40秒を33サイクル;72℃で5分を1サイクル;および6℃で保持。この反応の産物をアガロースゲル電気泳動によって分析した。PCRスプライシング反応の産物の予期されるサイズ(1750bp)と合致する位置に、強いバンドが観察された。このバンドを、QIAquick Gel Extraction Kit(QIAGEN Inc.、カリフォルニア州バレンシア)を使用し供給元のプロトコールに従って、ゲルから切り出した。次に、このフラグメントを、pCR-Blunt II-TOPOクローニングベクター(Invitrogen、カリフォルニア州カールズバッド)中に、供給元のプロトコールに従ってクローニングし、クローン化PstIフラグメントの配列を決定した(SEQ ID NO:112)。
この配列は、W3110について報告されたゲノム配列(GenBank、AP009048)によれば、fhuA遺伝子の上流および下流にあるDNAセグメントの予期される配列と合致し、上流セグメントと下流セグメントの接合部に、プライマーDHD237-SおよびDHD238-Sに由来する6bp PstI部位の付加を示した。上流DNAセグメントの5'端におけるHindIII部位および下流DNAフラグメントの3'端におけるXbaI部位(それぞれプライマーDHD236およびDHD239に由来する)の付加も確認された。配列が検証されたPCRフラグメントを、1739bpのHindIII-XbaIフラグメントとして、pCR-Blunt II-TOPOベクターから切り出し、ゲル精製し、温度感受性pMAK705ベクター(実施例3参照)(HindIIIおよびXbaIで消化し、Antarcticホスファターゼ(New England BioLabs、マサチューセッツ州イプスウィッチ)で、供給元のプロトコールに従って処理したもの)とライゲーションした。ライゲーション産物を使って大腸菌NEB5α(New England BioLabs、マサチューセッツ州イプスウィッチ)を形質転換し、pMAK705複製の許容温度である30℃における平板培養によって得られたクロラムフェニコール耐性形質転換体を、PstIおよびXbaI+HindIIIによる消化で分析することにより、大腸菌fhuA遺伝子の上流および下流にあるクローン化DNA領域を含有する1739bp XbaI-HindIII フラグメントを保有する組換え体を同定した。そのような組換えプラスミドの1つをpDD73と名付け(図8M)、以降の実験に使用した。
xylS調節遺伝子を、次のようにして、pDD73置換ベクター中にクローニングした。xylS遺伝子をpDD42からPstIフラグメントとして切り出し、pDD73のPstI部位中にクローニングすることで、図8Nに図示するpDD77を作製した。xylS遺伝子を含有するpDD77のPstIフラグメントは、発現プラスミドpDD66およびpBR1052、親ベクターpDD54およびpDD54のテトラサイクリン耐性誘導体pDD63中に存在するxylS含有PstIフラグメントと同一である。
下記実施例10において詳述するように、xylS遺伝子プロモーター、リボソーム結合部位、および5'非翻訳領域(UTR)の合成最適化版を設計し、合成し、それらの修飾配列をxylS置換ベクターpDD77中に導入し、続いて染色体中に導入した。257bp BlpI-BglIIフラグメント(SEQ ID NO:140)は業者(DNA2.0)によって合成され、修飾された配列を含有する合成DNAを、xylS置換ベクターpDD77中に、ネイティブxylS調節配列を含有するネイティブBlpI-BglIIフラグメントの代わりに、BlpI-BglIIフラグメントとしてクローニングした。修飾xylSを含有するプラスミドをpDD79と命名した(図8N)。
kfoABCFG遺伝子セグメントのコピーを大腸菌K-12染色体中のfhuA遺伝子座に挿入するために置換ベクターを構築した。kfoABCFG遺伝子セグメント(Pmプロモーターを伴わないもの)をpCX039からPstIフラグメントにのせて切り出し、このフラグメントをpDD79の適合するNsiI部位(この部位はこのプラスミド中でユニークである)中にクローニングした。その結果得られるプラスミドpDD88(図8O)では、kfoABCFG遺伝子が、強い構成的プロモーターになるように設計された合成xylSプロモーターによって転写される。
個々の遺伝子または遺伝子群の役割を評価するために、pDD66およびpDD67発現プラスミドの欠失誘導体を構築した。これらの誘導体の構築には、上述のように合成K4遺伝子フラグメント中に設計された隣接制限酵素部位を利用した。0.6μgのDNAを、10μL反応中、10UのSacIで2時間消化した後、反応を熱処理(酵素を不活化するため)し、12μL反応中でライゲーション(1mM ATP+T4 DNAリガーゼ)することにより、kpsC遺伝子(K4領域1)を、pDD66から欠失させた。この反応の半分を大腸菌DH5α(Invitrogen)に形質転換し、LB Tc5に30℃でプレーティングした。pDD66では、kpsC遺伝子がSacI部位で挟まれているが、このベクターには、tetR遺伝子を含有するがプラスミド複製起点を含有しない第3のフラグメントが消化によって生じるような形で、3つ目のSacI部位も存在している。それゆえに、TcR形質転換体は、少なくともベクター/起点フラグメント+tetRフラグメントから構成されるプラスミドを含有すると予期される。これら2つのSacIフラグメントは含有するがkpsC SacIフラグメントを欠いているプラスミドを求めて、形質転換体をスクリーニングし、候補pDD66ΔkpsCクローンをさらにSalI消化によってスクリーニングすることで、前記2つのSacIフラグメントが所望の向きであるものを探した。そのようなプラスミドの1つをpCX045(図8P)と命名した。
pDD66中のkpsT遺伝子(K4領域3)はMluI制限部位に挟まれており、このプラスミド中に他のMluI部位は存在しない。上述したものと同様の段階を使って、pDD66をMluIで消化した後、再びライゲーションすることにより、pDD66ΔkpsT誘導体を作製し、これをpCX048と命名した(図8P)。
プラスミドpCX039は、K4領域1および3遺伝子の欠失によって、pDD67(上述、図8J参照)から作出した。プラスミドpDD67(1.5μg)を酵素PmlIおよびMluI(各10U)で同時に消化した後、MluIによって生成した突出部を埋める(平滑末端を残す)ために、T4 DNAポリメラーゼ(1.5U)+dNTP(各150μM)により、12℃で15分間処理した。PmlI消化では平滑末端が残る。次に、処理されたpDD67をT4 DNAリガーゼと共にインキュベートし、大腸菌TOP10(Invitrogen)に形質転換した後、Tet耐性で選択し、Cm耐性についてスクリーニングした。48個の二重抗生物質耐性コロニーで、プライマーDHD229およびDHD231によるコロニーPCRを行った。
アガロースゲル電気泳動で決定したところ、48の分離株のうち14株が、所望のコンストラクトについて予期される678bpに近いPCR産物を与えた。選ばれた8つの候補のうちの6つの中のプラスミドは(アガロースゲル電気泳動で)予期されるサイズを持ち、選ばれた2つのプラスミド分離株は、PmlI/MluI接合部に所望のDNA配列を含有していた。1つのプラスミドをpCX039(図8Q)と命名した。これは、xylSと、Pmプロモーターによって駆動されるK4領域2遺伝子kfoABCFGとを含有している。
pCX039中のkfoB遺伝子(およびそのリボソーム結合部位)の両端にはBstBI制限部位が近接しており、ベクター骨格中には第3のBstBI部位が存在する。それゆえに、pCX039をBstBIで消化すると、3つのフラグメント、すなわちkfoB遺伝子フラグメントと、プラスミド複製起点、Tet耐性遺伝子およびkfoCFG遺伝子を包含する大フラグメントと、Cm耐性遺伝子およびPm/kfoAを含有するフラグメントとが生じる(図8Q参照)。kfoB遺伝子を欠くpCX039の誘導体を作出するために、プラスミド(600ng)を、BstBI(10U)により、65℃で90分間、完全に消化した。MinEluteキット(QIAGEN)を使って酵素を反応から除去し、12μLの溶出緩衝液に最終溶出物を得た。この消化物のうち、およそ250ng(5μL)をT4 DNAリガーゼと共にインキュベートし、大腸菌DH5α(Invitrogen)に形質転換し、Cm耐性で選択した。Cm耐性で選択することにより、少なくとも大ベクターフラグメント(すなわちkfoCFG/起点)+Cm/Pm/kfoAフラグメントを含有するプラスミドが得られるはずである。選ばれた8つの形質転換体中のプラスミドを制限消化によって分析し、5つが、kfoB BstBIフラグメントを欠いていて、他の2つのフラグメントを所望の相対的方向で有することを見いだした。そのような分離株の1つの中のプラスミドをpCX044と命名した(図8Q;xylS+kfoACFG)。BstBI酵素による部分的プラスミド消化によっても同一のプラスミド構造が得られるであろうことは、当業者には理解されるだろう。
この実施例において上述したように、プラスミドpDD66とpDD67は、13個のK4遺伝子を異なる編成で含有している:pDD66-Pm/kpsMT/kfoABCFG/kpsFEDUCS;pDD67-Pm/kpsFEDUCS/kpsMT/kfoABCFG。これらのプラスミド中のK4遺伝子(各々のリボソーム結合部位を伴うもの)の大半の両端には、そのプラスミド内で2回または3回だけ切断する制限酵素部位の対が近接している。これらの特徴(および上述した他の配列要素)は、個々のK4遺伝子の選択的な非極性欠失を可能にする。pCX039からのpCX044の作出について上述した段階を使って、pDD66およびpDD67のΔkfoB誘導体を作製し、図8Rに図示するこれらのプラスミドをそれぞれpCX040およびpCX042と名付けた。pDD66およびpDD67中のkfoG遺伝子の両端にはNheI部位が近接しているが、各プラスミドにはテトラサイクリン耐性遺伝子のコード領域中に3つ目のNheI部位が存在する。pDD66およびpDD67のΔkfoG誘導体を作製するために、ΔkfoB誘導体の作製と類似するアプローチ、すなわちNheIによる完全な消化と、大腸菌のTet耐性形質転換体の選択とを利用した。このアプローチでは、プラスミド複製起点と共にテトラサイクリン耐性遺伝子の再生が選択される。結果として生じた形質転換体中のプラスミドを、kfoG NheIフラグメントの不在についてスクリーニングし、pCX041(pDD66ΔkfoG)およびpCX043(pDD67ΔkfoG)を同定した。これらを図8Sに示す。BstBI酵素またはNheI酵素による部分的プラスミド消化によっても同一のプラスミド構造が得られるであろうことは、当業者には理解されるであろう。
実施例5:K4莢膜生合成タンパク質を認識する抗体
抗体の生産:K4コンドロイチン生合成遺伝子クラスターによってコードされるタンパク質のうち15個に対する抗体を以下に述べるように生産した。これらの抗体は、代替宿主およびネイティブ大腸菌K4株におけるクローン化K4コンドロイチン生合成遺伝子の発現を評価するために使用することができる。これらは、他のグループ2莢膜生産大腸菌における領域1および領域3遺伝子発現を評価するために使用することもでき、他の血清群K4大腸菌で、領域2遺伝子発現を評価するために使用することもできるかもしれない。抗体は次のように作製した。
K4莢膜遺伝子クラスター中に同定された17個の遺伝子に対応する、サイズがそれぞれ約20〜30kDa程度の一連のポリペプチドまたは完全なタンパク質を増幅するために、PCRプライマーを設計した。最初のPCRプライマーセットは、実施例1において決定されたU1-41 K4莢膜遺伝子クラスターの配列に基づいた。いくつかの例では、クローン化PCRフラグメントの配列を検証してから、大腸菌における高レベル発現のために大腸菌プラスミドベクターであるpQE30(Qiagen,Inc.、カリフォルニア州バレンシア)中にサブクローニングした。あるいは、PCRフラグメントを、発現ベクター中に直接クローニングしてから、配列決定した。pQE30ベクターは、LacIリプレッサータンパク質の制御下にある強力なバクテリオファージT5プロモーターを使用することで、大腸菌における高レベルのIPTG誘導性発現を達成する。このベクターは、精製を容易にするために、ポリHisタグがクローン化ポリペプチドのアミノ末端に融合されるように設計されている。まず最初に、KpsM、KpsF、KpsE、KpsS、KfoC、KfoHおよびKfoC由来の抗原を、pQE30ベクター中で、Hisタグ付きポリペプチドとして発現させ、KpsD、KpsU、KpsC、KfoD、KfoI、KfoEおよびKfoF由来の抗原を、Hisタグなしで発現させた。Hisタグを欠くコンストラクトは、His残基をコードする配列を欠失させたpQE30-dHと呼ばれるpQE30の誘導体中にクローニングすることによって作出した。その後の発現実験により、KfoC、KfoHおよびKfoG由来のポリペプチド抗原の効率的な発現にはHisタグが必要であるが、他の抗原は非タグ付き型としてpQE30-dHにおいて効率よく発現することが示された。そこで、注射した抗原上には存在するがネイティブターゲットタンパク質には存在しないエピトープを認識する抗血清が得られる可能性を回避するために、ほとんどの抗原を非タグ付き型で発現させた。
抗原を発現させるために、pQE30またはpQE30-dH中にクローニングした抗原配列を含有する培養物を、典型的には、ルリアブロス中、37℃で、対数期中期まで成長させ、次に1mM IPTGの添加によって誘導した。典型的には、誘導の4時間後に細胞を収集し、界面活性剤系の溶解系であるBugBuster(登録商標)Protein Extraction Reagent(Novagen、ウィスコンシン州マディソン)を使用し、供給元のプロトコールに従って、可溶性画分と不溶性画分とに分画した。通例、T5プロモーター系で過剰発現させると、大腸菌細胞質内では、発現したポリペプチドが不溶型で蓄積することになるが、発現したポリペプチドの一部は可溶型で蓄積する。KpsU由来の抗原は可溶型で発現し、他の全ての抗原は不溶性画分に分配されることがわかった。多くの場合、組換えタンパク質は、BugBuster(登録商標)溶解および抽出手法によって生成する不溶性画分における主要ポリペプチドである。免疫化のために、これらのポリペプチド抗原の発現を100ml振とうフラスコ培養で行った。誘導された培養物の溶解後に、全ての培養物(KpsU抗原発現培養物を除く)の不溶性画分を分取用ゲルにかけた。KpsU抗原の場合は、ポリペプチド抗原が細胞溶解物の可溶性画分に分配されたので、その可溶性画分を分取用ゲルにかけた。関心対象のタンパク質を含有するゲル領域を切り出し、抗血清を生産するためのさらなる処理およびウサギの免疫化のために、業者Open Biosystems(アラバマ州ハンツビル)に送った。
初期の実験において、12の抗原は、抗原の精製が保証されるほど十分に、よく発現しているようだった。これら12の抗原は、KpsE、KpsD、KpsU、KpsC、KpsS、KpsT、KfoA、KfoB、KfoI(Orf3)、KfoE、KfoH(Orf1)およびKfoFに由来した。KpsF、KpsM、KfoC、KfoD、およびKfoGのタンパク質配列に由来する抗原は発現しないか、発現量が低かった。発現量の低い抗原のポリペプチド配列を、コドン使用頻度ならびに疎水性およびpI計算値などの物理的性質に関して分析した。よく発現するポリペプチド抗原について決定されたこれら同じ性質と比較したが、明確な相関は見いだされなかった。コドン使用頻度は、KfoGなど、発現量の低い一部の抗原では好ましくなかったが、他のよく発現する抗原でも好ましくなかった。KpsM抗原は極めて疎水性であり、それが発現した抗原の安定性に影響を及ぼす可能性はあったが、KpsMは内因性膜タンパク質であるため、その配列全体が極めて疎水性であり、KpsM由来の意味のあるサイズのポリペプチドはいずれも高度に疎水性であるだろう。
さらなる抗原コード配列を、上記実施例2において述べた合成K4遺伝子セットを使って、KpsM、KpsF、KfoC、およびKfoGの合成コドン最適化遺伝子から得た。合成DNAテンプレート由来のPCR産物を、6X-HisタグベクターであるpQE-30中にクローニングし、発現について調べた。合成配列KfoC、KfoG、およびKpsF抗原は、pQE-30ベクター中で6X-Hisタグと共に発現させると、高いまたは中等度に高い蓄積を有することがわかった。これらの抗原を、上述のように、誘導された培養物からゲル精製し、ウサギにおける抗血清生産のためにOpen Biosystems(アラバマ州ハンツビル)に送った。誘導された培地のクーマシー染色で決定したところ、6X-Hisタグを持つ合成配列KpsM抗原は、検出可能なレベルでは発現しなかった。
免疫ウサギからの抗血清を、ウェスタンブロットにより、力価および特異性について、誘導された抗原発現大腸菌株からの細胞抽出物を使って調べた。これらのウェスタンブロットでは全ての抗血清がそれぞれの抗原を認識した。使用力価は、通例、1:1500で、許容される非特異的バックグラウンドだった。これらの抗血清を使って行ったウェスタンブロットからの結果の例を図9に示す。
図9に示すように、一部の抗血清(例えば抗KfoA、抗KpsDおよび抗KpsS)は、他の大腸菌タンパク質に対する目に見える非特異的反応性をほとんどまたは全く伴わずに、クローン化K4遺伝子を保有する株におけるターゲットタンパク質バンドを同定した。他の抗血清(例えば抗KpsCおよび抗KpsF)では、より多くの非特異的な結合が観察されたが、クローン化K4遺伝子を欠く大腸菌対照株との比較により、ターゲットタンパク質を明確に同定することができた。ウェスタンブロットでは大半の抗血清がそれらの特異的ターゲットとして単一のタンパク質バンドを同定したが、いくつかの例(例えばKfoC)では複数のバンドが特異的に認識された。KfoCポリペプチドは、細胞内で、またはウェスタンブロット前の抽出物の加工中に、多少のタンパク質分解またはプロセシングを受けるらしく、図9に示すようなダブレットバンドが一貫して観察された。
このように、大腸菌K4株、およびクローン化K4莢膜遺伝子クラスターを発現する組換え株、およびこれらの遺伝子の一部または全部を含有するかもしれないネイティブ大腸菌株におけるKpsF、KpsE、KpsD、KpsU、KpsC、KpsS、KpsT、KfoA、KfoB、KfoC、KfoI(Orf3)、KfoE、KfoH(Orf1)、KfoFおよびKfoGを検出しうる抗血清を生じさせることに成功した。
表示したタンパク質を認識する抗血清を作製する目的でウサギを免疫するために使用した組換え発現ポリペプチドのアミノ酸配列を、以下に記載する。pQE30-dHベクターにおいて発現させた抗原は、発現したポリペプチドのアミノ末端に付加されたMGS配列を含有するが、これはプラスミド発現ベクターに由来し、ターゲットタンパク質の配列には存在しないものである。BamHI部位へのクローニングにより、pQE30ベクターにおいて発現させた抗原は、付加されたMRGSHHHHHHGS(SEQ ID NO:85のアミノ酸1〜12)配列をアミノ末端に含有するが、これはプラスミド発現ベクターに由来し、ターゲットタンパク質には存在しないものである。SacI部位へのクローニングにより、pQE30ベクターにおいて発現させた抗原は、付加されたMRGSHHHHHHGSACEL(SEQ ID NO:93のアミノ酸1〜16)配列をアミノ末端に含有するが、これはプラスミド発現ベクターに由来し、ターゲットタンパク質には存在しないものである。発現ベクターDNA配列に由来するポリペプチド抗原のアミノ末端配列を以下に影付きで示す。
実施例6:大腸菌K-12中で発現させると合成遺伝子セット[kpsFEDUCS+kpsMT+kfoABCDIEHFG]はフルクトシル化コンドロイチンを生産する。
上記実施例4に記載したプラスミドpDD54およびpDD58をMSC188(上記実施例3において述べたようにコラン酸生合成遺伝子クラスターを欠失させた大腸菌K-12W3110株)に形質転換した。その結果生じた株MSC204[MSC188(pDD54)]およびMSC206[MSC188(pDD58)]を振とうフラスコ培養で成長させ、コンドロイチン生産について調べた。株を新鮮なコロニーから、CYG培地(20g/Lカザミノ酸、5g/L酵母エキス、2g/Lグルコース、pH7.2)+クロラムフェニコール(20μg/mL)中、30℃で終夜成長させ、これらの培養物をOD A600=0.05になるように同じ培地で希釈した。OD A600がおよそ0.1の時点(およそ1時間後)で、誘導物質m-トルイル酸を2mMの最終濃度になるように加えた。誘導の4時間後、8時間後および24時間後にOD A600値を決定し、分析用に試料を採取した。培養ODを下記の表6-1に示す。各時点における各株について、多糖分析用の10mL試料をオートクレーブ処理(121℃、>15psi、5分)してから、凍結保存した。各時点における各株の5mlアリコート2つを遠心分離し、その結果生じた細胞ペレットを、以後のウェスタンブロット分析のために凍結保存した。
表4Aに示すとおり、大腸菌K-12株、MSC204およびMSC206は、誘導後によく成長し、誘導の24時間後に、これらの培養物のどちらのODもおよそ7だった。これらの実験からの培養試料を、実施例14に詳述するように、HPLCに基づくコンドロイチナーゼ依存的アッセイを使って、コンドロイチンおよびフルクトシル化コンドロイチンについてアッセイした。これらのアッセイにおける酵素消化に先だって、培養試料を脱フルクトシル化段階(酸処理)に付した。培養試料を、フルクトシル化コンドロイチンに特異的なELISAアッセイでもアッセイした(実施例14)。アッセイ結果を表4Aに示す。
(表4A)MSC204およびMSC206株における成長およびコンドロイチン生産
a誘導後
b脱フルクトシル化段階をアッセイに含めた
c未決定
これらの結果は、pDD58を保有する組換え大腸菌K-12(MSC206株)がフルクトシル化コンドロイチンを生産することを明確に実証している。ELISAアッセイに使用した抗血清はフルクトシル化型のコンドロイチンに特異的であり、フルクトシル化されないコンドロイチンを認識しないので、ELISAによる多糖の検出は、これらの株において生産される組換え多糖がフルクトシル化コンドロイチンであることを実証している。この実験において観察された最も高いレベルのフルクトシル化コンドロイチン生産は、およそ25μg/mLだった。ベクターのみのプラスミドpDD54を保有する対照株MSC204では、一貫して、フルクトシル化コンドロイチン生産は検出され得なかった。4時間試料および8時間試料におけるMSC206では、ELISAアッセイとHPLCアッセイの間で、測定されたフルクトシル化コンドロイチン値に量的な相違がある。これらの相違は、おそらくELISAアッセイの方が感度が低いことを反映しているのであろう。通例、所与の試料におけるフルクトシル化コンドロイチン濃度が高いほど、ELISAアッセイとHPLCアッセイとが、より良く一致する。
続く実験は、MSC206によるフルクトシル化コンドロイチンの生産を確認し、生産されるコンドロイチンのレベルに対する誘導物質濃度の効果を調べるために行った。MSC206の新鮮終夜培養物を0.05 OD A600に希釈し、およそ0.1のOD A600になるまで、CYG培地+クロラムフェニコール(20μg/mL)中、30℃で成長させた。次に、0、0.5、1.0、または2.0mMの最終濃度になるようにm-トルイル酸を加えることによって、培養物のアリコートを誘導した。培養物を誘導後24時間成長させ、その時点でODを測定し、多糖アッセイのために上述のように試料を採取した。また、誘導の24時間後に、各培養物のアリコートを希釈し、総生細胞数を定量するためにLB上で平板培養し、プラスミド含有生細胞数を定量するためにLB+クロラムフェニコール(17μg/mL)上で平板培養した。これらの培養物の成長およびコンドロイチン生産を表4Bに要約する。
(表4B)誘導物質濃度が成長およびMSC206におけるコンドロイチン生産に及ぼす効果
*脱フルクトシル化段階をアッセイに含めた
表4Bに示すように、この実験では、最も高レベルの誘導物質だけが、24時間時点における成長および生細胞数に負の効果を持っていた。この実験では、たとえ株を選択抗生物質クロラムフェニコールの存在下で成長させても、発現プラスミドpDD58は安定には維持されなかった。LBプレートと比較してLB+Cm17プレートに試料上で平板培養した場合に得られるコロニー形成単位の力価が低いことから証明されるように、24時間の時点で、プラスミドはかなり失われているようである。しかし、プラスミド含有細胞の分率は、誘導物質濃度による有意な影響を受けなかった。ELISAアッセイの結果は、MSC206におけるフルクトシル化コンドロイチンの生産を裏付けるものであり、脱フルクトシル化段階を含めた場合にHPLCアッセイを使って得られる結果と合致する。最も高いコンドロイチン力価を持つ試料は、ELISAアッセイとHPLCアッセイの間に最も良い一致を示した。これらの結果は、m-TA添加による誘導の非存在下でさえ起こるフルクトシル化コンドロイチンの生産を実証している。しかし、全ての誘導培養が非誘導培養よりも多くのフルクトシル化コンドロイチンを生産し、最も高レベルなフルクトシル化コンドロイチンは、1.0mM m-TAで誘導された培養によって生産された。
実施例7:大腸菌K-12または大腸菌Bにおいて発現させた場合、遺伝子セット[kpsFEDUCS+kpsMT+kfoABCFG]の発現は、フルクトシル化されないコンドロイチンを生産する。kfoBおよびkfoG遺伝子は、フルクトシル化されないコンドロイチンの生産にとって不可欠ではないが、最適な生産にはkfoGが必要である。
この研究以前に、K4莢膜多糖のフルクトシル化を担うタンパク質をコードする遺伝子は同定されていなかった。K4莢膜遺伝子クラスターの領域2に存在する遺伝子の多く(kfoB、kfoG、kfoD、kfoE、kfoH(orf1)およびkfoI(orf3))は、それらがコードするタンパク質について、機能が同定されていなかった。
グループ2大腸菌莢膜の領域2内に存在する遺伝子は、全てが、多糖または多糖の糖ヌクレオチド前駆体の合成に、典型的に関与している(Whitfield 2006)。上述のように(実施例1)、kfoB遺伝子とkfoG遺伝子は、他のグリコサミノグリカン莢膜を生産することが知られている細菌の莢膜クラスター中に存在する遺伝子がコードするものと相同なタンパク質をコードしている。この状況証拠は、グリコサミノグリカン莢膜の生合成におけるkfoBおよびkfoGの潜在的役割を示唆している。対照的に、本発明以前には、kfoD、kfoI、kfoEおよびkfoH遺伝子がK4莢膜多糖のコンドロイチン骨格の生合成に関与すると思わせる証拠はなかった。他の研究者らはkfoD遺伝子とkfoE遺伝子はおそらくフルクトシル化には関与しないという仮説を立てていたが(Ninomiya et al.,2002およびKrahulec et al.,Molec.Biotech.,2005; 30:129-134)、本発明者らは、kfoD、kfoI、kfoEおよびkfoH遺伝子は、コンドロイチンのフルクトシル化に関与するタンパク質をコードするのかもしれないという仮説を立てた。この仮説を検証するために、kfoDIEH遺伝子セットを含有しないが、kpsFEDUCS、kpsMTおよびkfoABCFG遺伝子は含有する組換えプラスミドを構築した。pDD66およびpDD67と呼ばれるそのような2つのプラスミドを上記実施例4において述べたように構築した。これら2つのプラスミドはテトラサイクリン耐性を付与する遺伝子も含有しているので、プラスミド維持に関する選択のために、細胞培養中にテトラサイクリンを使用することができる。pDD62と呼ばれるpDD58の誘導体も対照プラスミドとして構築した。上記実施例4において詳述したpDD62プラスミドは、kpsFEDUCS、kpsMTおよびkfoABCDIEHFG遺伝子を含有し、テトラサクリンに対する耐性を付与する遺伝子も含有する。
kfoDIEH遺伝子の欠失がフルクトシル化コンドロイチンの生合成に影響を及ぼすかどうかを決定するために、pDD62、pDD66およびpDD67をMSC188またはMSC175(上記実施例3において述べたW3110ΔwcaJ)に形質転換し、その結果得られた株を培養し、フルクトシル化コンドロイチンおよびフルクトシル化されないコンドロイチンの生産についてアッセイした。MSC274(MSC175+pDD62)、MSC279(MSC188+pDD66)およびMSC280(MSC188+pDD67)株を、振とうフラスコ中のCYG培地で、2μg/mLテトラサイクリン(Tc)を使って30℃で成長させ、表示のように1mM m-TAで誘導した。上述のように、誘導の24時間後に培養物の試料を採取し、オートクレーブ処理し、遠心分離し、その結果得られた上清を、脱フルクトシル化段階を伴うまたは伴わないHPLCアッセイによってアッセイした。
下記の表5Aに示すように、全ての株がコンドロイチンを生産したが、プラスミドpDD66またはpDD67を含有する株によって生産されたコンドロイチン多糖は、フルクトシル化の証拠を示さない。すなわち、MSC279試料とMSC280試料の場合、HPLCによって測定されるコンドロイチン力価は、脱フルクトシル化段階に付した試料でも、脱フルクトシル化段階に付さなかった試料と比べて有意差がない。対照的に、MSC274試料を脱フルクトシル化段階なしでアッセイした場合は、極めてわずかなコンドロイチンしか観察されない。有意なコンドロイチンは、脱フルクトシル化段階に付したMSC274試料にしか検出されない。実施例14において詳述するように、フルクトシル化コンドロイチンは、本HPLCアッセイにおいて使用されるコンドロイチナーゼでは消化されず、それゆえに、このアッセイでは検出することができない。これらのデータは、kfoDIEH遺伝子のうちの1つまたは複数はコンドロイチンのフルクトシル化にとって必要でなければならないが、これらの遺伝子はいずれもコンドロイチン生合成には必要でないことを、明確に実証している。これらの結果は、コンドロイチンはm-TAによる誘導の非存在下で生産されるが、誘導培養は非誘導培養よりも多くのコンドロイチンを生産することを、重ねて実証している。驚いたことに、MSC279とMSC280によって生産される非フルクトシル化コンドロイチンの力価は、どちらも、MSC274によって生産されるフルクトシル化コンドロイチンの力価より高かった(2.5〜4倍)。この結果は、フルクトシル化事象がコンドロイチン生産の効率を低下させることを示唆している。これは、インビトロで、フルクトシル化コンドロイチンがフルクトシル化されないコンドロイチンと比較して、KfoC酵素(コンドロイチンポリメラーゼ)の弱い基質であることと合致する(Lidholt and Fjelstad,J. Biol .Chem. 1997;272:2682-2687)。
(表5A)大腸菌K-12におけるフルクトシル化されないコンドロイチンの生産
a80℃、pH1.5で30分間の脱フルクトシル化処理に付した
b脱フルクトシル化処理に付さなかった
c未検
これらの株は、MSC206株と比較して改善されたプラスミド保持、すなわち抗生物質耐性の保持を示す。MSC206プラスミドの保持データについては上記実施例6の表4Bを参照されたい。これはおそらくプラスミドの選択に使用したテトラサイクリンとクロラムフェニコールの違いを反映しているのだろう。細胞成長を損なうことなく、最大のコンドロイチン生産を達成するために、プラスミド保持を最大化する目的で、テトラサイクリンまたは他の好ましい抗生物質の使用濃度を最適化するための追加実験を行うことができるだろう。
プラスミドpDD66およびpDD67を、MSC139、大腸菌B(ATCC11303)に形質転換し、その結果生じた株をコンドロイチン生産について調べた。対照プラスミドpDD63もMSC139に形質転換した。上記実施例4において述べたこのプラスミドは、pDD54ベクターの誘導体であり、そこにテトラサイクリン耐性遺伝子が付加されている。これはどのK4コンドロイチン生合成遺伝子も含有していない。pDD63(MSC314)、pDD66(MSC315)またはpDD67(MSC316)を含有する大腸菌Bにおけるコンドロイチン生産を振とうフラスコで評価した。
この実験では、5μg/mLのテトラサイクリン(Tc5)を含有するTB培地中、30℃で、培養物を成長させた。下記実施例8で述べるように、TB培地における成長は、CYG培地と比較して、大腸菌におけるコンドロイチンの組換え生産を強化することが見いだされ、またTc5は、細胞成長を損なわずにプラスミドを維持するのに有効な濃度であることが見いだされた。培養物を0.05 OD A600で接種し、0.10〜0.13の時点で、2mM m-TAの添加によって誘導した。誘導後に、培養物を、最大3日間、30℃で成長させた。当初、MSC315株は他の株より成長が遅く、MSC314培養物およびMSC316培養物より数時間遅れて誘導された。誘導の48時間後(MSC315の場合は誘導の42時間後)に、テトラサイクリンの存在下または非存在下での生細胞計数用およびHPLC法によるコンドロイチンアッセイ用の試料を採取した。
以下の表5Bに示すアッセイ結果は、pDD66またはpDD67のどちらかが存在する場合の大腸菌Bにおける有意なレベルでのコンドロイチン生産を実証している。「空ベクター」対照であるpDD63を含有するMSC314株ではコンドロイチンは検出されなかった。この実験におけるプラスミド保持率(%Tcr)は、pDD66およびpDD67については、およそ50%だったのに対し、対照ベクターpDD63の検出可能な喪失はなかった。
(表5B)大腸菌Bにおける組換えコンドロイチンの生産
a脱フルクトシル化処理を伴わないHPLC法
大腸菌Bは莢膜を生産しないが、潜在性グループ2莢膜遺伝子クラスターを含有しており、そこでは、領域2遺伝子が挿入配列によって破壊されていて、領域1および3遺伝子は機能的であるらしい(Andreishcheva and Vann,Gene 2004;484:113-119)。大腸菌K4領域2遺伝子が大腸菌Bの領域2欠陥を「補完」できるかどうかを決定するために、kfoABCFG遺伝子だけを含有するプラスミドを構築した。このプラスミドpCX039については実施例4で述べる。プラスミドpCX039をMSC139、大腸菌B(ATCC11303)に形質転換し、その結果生じた株(MSC317と呼ぶ)におけるコンドロイチン生産を振とうフラスコで評価した。株をTB培地+5μg/mL Tc中、30℃で成長させた。培養物を、およそ0.05 OD A600で接種し、およそ0.10のODにおいて、2mM m-TAで誘導した。誘導の48時間後に、テトラサイクリンの存在下または非存在下での生細胞計数用およびHPLC法によるコンドロイチンアッセイ用の試料を採取した。
LBプレート上でアッセイしたところ、5.9×109cfu/mLが得られ、5μg/mL Tcを含有するLBプレート上での並行平板培養物から得られたcfuの力価との有意差はなかった。これは、pCX039プラスミドがこの実験において定量的に保持されたことを示している。HPLCに基づくコンドロイチンアッセイを、脱フルクトシル化段階なしで行った。このアッセイで測定されたコンドロイチン力価は205μg/mLだった。この結果は、大腸菌Bにおいてコンドロイチン生合成を達成するのに必要とされるのは、領域2のK4遺伝子kfoABCFGだけであることを実証している。下記の実施例9では、大腸菌Bにおける領域1および3遺伝子がK4領域2遺伝子と協調して機能することで、コンドロイチン分泌をもたらすことを示すが、この知見はAndreishchevaおよびVann(2004)のものと合致する。
上述のように、KfoBおよびKfoGホモログは他のグリコサミノグリカン生産細菌の遺伝子クラスターにコードされているが、これらのタンパク質の機能は不明なままである。実施例4において述べたように、kfoBまたはkfoG遺伝子をpDD66およびpDD67から欠失させることで、下記表5Cに要約するプラスミドpCX040、pCX041、pCX042およびpCX043を作製した。これらのプラスミドを宿主株MSC188に形質転換し、その結果得られた株の培養物をコンドロイチン生合成について試験した。培養物をTB培地中、30℃で成長させ、OD A600≒0.2のときに2mM m-TAで誘導し、誘導の48時間後に、生細胞計数およびコンドロイチンアッセイ用に試料を採取した。以下に示すこれらのアッセイの結果は、どちらの遺伝子も組換え大腸菌K-12におけるコンドロイチン生合成にとって絶対的に不可欠なものではないことを示唆した。
(表5C)kfoBまたはkfoGの欠失がコンドロイチン生産に及ぼす効果
a脱フルクトシル化段階を伴わないHPLCアッセイ
これらの結果によれば、KfoBタンパク質活性は、これらの成長条件下でのこれらの株におけるコンドロイチン生産には、不必要であると思われる。実際、この実験では、pDD66からのkfoBの欠失を保有する株が、pDD66を含有する株よりおよそ20%多いコンドロイチンを生産した;MSC279をMSC322と対比されたい。この相違は有意であったが、組換え大腸菌におけるコンドロイチン生産について観察された日差変動の範囲内でもある。MSC279とMSC322を比較する反復実験では、kfoB欠失株によるコンドロイチンの強化された生産は観察されなかった。pDD67バックグラウンドでは、kfoB欠失が、コンドロイチン生産に対してほとんどまたは全く効果を持たないようだった。
以前に公表された、kfoGが不活化するように変異させた大腸菌K4の株の研究では、そのkfoG変異が、生産されるフルクトシル化コンドロイチンのレベルに及ぼす効果は何も報告されなかった(Krahulec et al.,2005)。対照的に、本発明者らの結果は、KfoGタンパク質が、コンドロイチンの生産にとって絶対的に不可欠なわけではないものの、この実験のこれらの成長条件下での大腸菌における組換えコンドロイチンの最適な生産レベルには必要であるらしいことを実証している。kfoG遺伝子の欠失は、pDD66およびpDD67によるコンドロイチンの生産を激しく低下させた。pDD66バックグラウンドにおいて、kfoGが欠失した株(MSC323)は、野生型対照株MSC279のおよそ20%の量のコンドロイチンしか生産しなかった。同様に、pDD67バックグラウンドでも、kfoGが欠失した株(MSC325)は、野生型対照株MSC280のおよそ5%の量のコンドロイチンしか生産しなかった。
実施例8:この実施例では、さまざまな成長培地、温度および誘導条件でのコンドロイチンの組換え生産を実証する。
大腸菌K4コンドロイチン生合成遺伝子を保有する組換え大腸菌株によるコンドロイチンの生産は、さまざまな異なる成長培地によって支持することができる。組換えコンドロイチンの最適な生産のためには、培地組成、温度、誘導物質濃度および誘導後の培養の継続期間などといった培養条件を最適化する必要がある。
大腸菌におけるコンドロイチンの組換え生産の初期の研究では、CYG成長培地(20g/Lカザミノ酸、5g/L酵母エキス、2g/Lグルコース、pH7.2)を使用した。コンドロイチンを生産する能力を有する組換え大腸菌株を培養し、コンドロイチン生産を達成するために、さまざまな代替成長培地および培養条件を使用することができる。
大腸菌の成長を支持することがよく知られている代替培養培地の一つがTB培地である(Sambrook, J., Fritsch, E.F. and Maniatis,T.「Molecular Cloning:A Laboratory Manual」第2版,Cold Spring Harbor Laboratory Press,ニューヨーク州コールドスプリングハーバー(1989))。この培地を調べたところ、組換え大腸菌によるコンドロイチンの生産も支持することがわかった。さらに、長いインキュベーション時間(誘導後最大72時間)がコンドロイチン生産に及ぼす効果も調べた。さらに、1mM m-TAと2mM m-TAによる誘導がコンドロイチン生産に及ぼす効果も対比して調べた。
株MSC279およびMSC280を、振とうフラスコにおいて、5μg/mLのテトラサイクリンを含有するTB中、30℃で成長させた。培養物を0.05 OD A600で接種し、およそ(0.1〜0.2)のOD A600において、1mMまたは2mM m-TAの添加によって誘導した。誘導の24時間後および48時間後に、コンドロイチンアッセイ用および生細胞計数用に、培養物の試料を採取した。この実験の結果を下記表6Aに要約する。
(表6A)
a誘導後の時間
b脱フルクトシル化処理を伴わないHPLCアッセイ
これらの結果は、TB培地が有意義なレベルのコンドロイチン生産を支持できることを証明している。また、培養時間を延ばすと、コンドロイチン力価が有意に増加し、コンドロイチンレベルは誘導の24時間後から48時間後までにおよそ二倍になった。誘導の48時間後には0.4〜0.5g/Lという最終コンドロイチン力価が達成された。これらのデータは、高い誘導物質濃度が、効果の強さは大きくないものの、より高い生産性をもたらしうることも示唆している。
CYGとTBはどちらも、培地の構成要素が化学的には明確でない加水分解カゼイン製品および自己消化酵母を含有する「複合(complex)」成長培地である。いくつかの状況では、細胞培養には最少培地または合成培地を使用することが望ましいかもしれない。考えうる合成培地または最少培地のいくつかの例には、酵母エキス(YE)の補足を伴うまたは伴わない「2×M9」+グルコースまたはグリセリンが含まれる。「2×M9」の基礎無機塩構成要素は、22.6g/L Na2HPO4・7H2O、6g/L KH2PO4、1g/L NaCl、2mM MgSO4、0.2mM CaCl2、および2.0g/L NH4Cl(pH7.4)である。この製剤に炭素源が加えられ、表示のように他の補助剤を加えることができる。MSC279およびMSC280株を、振とうフラスコにおいて、10g/Lグルコースまたはグリセリンを炭素源として含有する2×M9中、30℃で培養した。グルコース含有培地に1g/LのYEを補足した効果も調べた。この実験のために、接種物となる終夜培養物をLB培地中で成長させた。培養物を0.05 OD A600で接種し、およそ0.1〜0.2のOD A600において、1mM m-TAの添加によって誘導した。誘導の24時間後および48時間後に、グルコースを炭素源として含有する培養物の試料を、生細胞計数用およびコンドロイチンアッセイ用に採取した。しかしグリセリン培養物は、最初は比較的ゆっくり成長し、誘導の24時間後はまだ弱い成長しか見られなかったので、グリセリン培地の成長は72時間まで延長し、48時間および72時間の時点で、試料を採取した。下記の表6Bにこの実験の結果を要約する。
(表6B)
*脱フルクトシル化を伴わないHPLCアッセイ
どちらの株も、3つの培地組成の全てにおいて、およそ5〜6の最終OD A600に達し、プラスミド保持率は比較的良好な、およそ75〜90%だった。コンドロイチンは試験した全ての培地において、相当量生産された。収集時の力価はおよそ100〜350μg/mLの範囲にあった。2×M9+グルコース培地への酵母エキスの添加は、最終コンドロイチン力価に対して、よくても中程度の効果を持つに過ぎなかった。グリセリン培地は、初期成長遅延があるにもかかわらず、グルコースで見られるものと同様の最終細胞密度まで達した。コンドロイチンの最終力価は、グルコース培養と比較してグリセリン培養の方が高かった(1.5〜3倍)。これらの結果は、有意義なレベルのコンドロイチン生産を支持することができる最少/合成培地の例になる。さらなる培地開発および最適化は、微生物発酵プロセス開発の当業者には周知の標準的アプローチを使って行うことができる。
別の実験では、成長温度および誘導後成長時間の延長が、コンドロイチン蓄積に及ぼす効果が実証される。MSC280の培養物をCYG培地+2μg/mL Tc中で成長させた。フラスコを20℃、25℃、30℃、および37℃でインキュベートした。培養物をおよそ0.05のOD A600で接種し、表示の温度でおよそ0.1〜0.2のOD A600まで成長させ、その時点で、表示されている場合には、1mM m-TAの添加によって培養を誘導した。30℃における1つの対照培養は誘導しなかった。誘導の24、48および72時間後に、コンドロイチンアッセイおよび生細胞計数のために試料を集めた。最終収集時点からの結果を下記の表6Cに示す。これらの条件下では、コンドロイチン生産が、試験した全ての温度において達成されたが、最も良いコンドロイチン力価が達成されたのは25℃および30℃だった。コンドロイチン蓄積は、試験した全ての温度において、2日目および3日目中に有意に増加した(データ未掲載)。37℃ではコンドロイチン生産が30℃よりも実質的に低く(およそ10分の1)、37℃培養物の生存度は低かった。20℃〜37℃の範囲でさらなる温度を試験してコンドロイチン生産にとって好ましい温度範囲の定義を精密にすることにより、さらなる最適化を達成することができるであろう。同様に、誘導後の培養時間がコンドロイチン力価に及ぼす効果を精密にすることによって、さらなる最適化を達成することができるであろう。
(表6C)
a誘導後の時間
bデータなし
c未検、Tetプレート上に得られたコロニーなし
インキュベーション時間をさらに延長することによってインキュベーション時間を最適化するための追加研究により、コンドロイチン生産をさらに増加させうる。同様に、さらなる誘導物質濃度を試験して、コンドロイチン生産にとっての最適濃度を同定することもできる。
実施例9:この実施例では、大腸菌K-12および大腸菌Bにおいて、組換えコンドロイチンを培養培地に分泌させうることを実証する。この実施例では、さらに、コンドロイチンを細胞内で高レベルに生産させうることを実証する。
大腸菌K4を液体培地中で培養すると、莢膜多糖(K4P)、フルクトシル化コンドロイチンが、培養培地中に無細胞型で蓄積すると共に、細胞会合型として蓄積すると報告されている(Manzoni et al., Biotech. Lett. 1996; 18: 383-386、Cimini et al. Appl. Mocrobiol. Biotechnol. E-Publication, E-Pub. October 2009)。他のグループ2莢膜多糖、例えば大腸菌血清型K1および大腸菌血清型K5によって生産されるものなどとの類似性により、細胞会合型は、主として、脂質アンカーを利用して細胞の外膜の外層(outer leaflet)と会合していると考えられている(Whitfield, 2006)。多糖と脂質アンカーの間の結合の性質は、構造レベルではまだ限定されていないし、脂質アンカーの実体も決定されていない。上記実施例6〜8で述べたように生産され検出された組換えコンドロイチンは、明らかに培養培地中に存在する。コンドロイチンについてアッセイするための試料の培養培地から細胞を除去するには、低速遠心分離(3500gで10分)で十分であり、無細胞上清中に相当量のコンドロイチンが検出された。しかし、上記実施例6〜8においてコンドロイチンについてアッセイした試料は全て、細菌を殺すことで試料の取扱を容易にするために、遠心分離に先だってオートクレーブ処理した。このオートクレーブ処理段階は潜在的に、いかなる細胞会合型コンドロイチンの結合も破壊して、そのような細胞会合型コンドロイチンを細胞から放出させることになりうる。組換えコンドロイチンが無細胞型および/または細胞会合型で生産されるかどうかを決定するために、コンドロイチン生産培養からの試料の遠心分離の結果として起こる組換えコンドロイチンの上清画分およびペレット画分への分配にオートクレーブ処理が及ぼす効果を調べる実験を行った。
MSC279株を、振とうフラスコにおいて、TB培地5μg/mL Tc中、30℃で成長させた。培養物をおよそ0.03 OD A600で接種し、およそ0.1〜0.2 A600に達した時点で、2mM m-TAの添加によって誘導した。誘導の48時間後に、試料を採取し、コンドロイチンについてアッセイした。この培養物のアリコートをオートクレーブ処理してから遠心分離し、その結果得られた上清画分および細胞ペレット画分を、実施例14のHPLC法に従って、コンドロイチンについてアッセイした。別のアリコートをオートクレーブ処理を行わずに遠心分離し、その結果得られた上清画分および細胞ペレット画分を実施例14のHPLC法に従ってコンドロイチンについてアッセイした。非オートクレーブ処理試料からの細胞ペレットをTHB(50mM酢酸ナトリウムを含む50mMトリス-HCl緩衝液、pH8.0)に再懸濁し、コンドロイチナーゼABC(「CHase」)で直接(細胞溶解なしで)処理し、再び遠心分離して、アッセイ用の上清画分およびペレット画分を得た。残存培養培地中の持ち越された無細胞コンドロイチンを調べるために、非オートクレーブ試料からの別の細胞ペレットをTHBで穏やかに洗浄してから再び遠心分離した。洗浄からの上清(試料番号7)と、洗浄からの細胞ペレット(溶解なし)(試料番号8)とを、上記のようにコンドロイチンについてアッセイした。この実験の結果を下記の表7Aに示す。
オートクレーブ処理済み試料では全コンドロイチンの11%しか細胞ペレット(試料番号2)中に存在しなかったのに対し、遠心分離前にオートクレーブ処理しなかった試料の細胞ペレット(試料番号4)には、全コンドロイチンの45%が存在した。この結果は、MSC279によって生産されたコンドロイチンのかなりの分率が細胞会合型のままであること、およびオートクレーブ処理段階がコンドロイチンと細胞との会合を破壊することを示している。非オートクレーブ処理株のペレット中の細胞会合型コンドロイチンは、溶解処理なしでの再懸濁細胞の直接CHase処理によって消化されることがわかった。放出された二糖の量に基づいて算出される表面会合型コンドロイチンの量は、元の培養において130〜154μg/mL(試料番号5および試料番号8)と決定された。この値は、実施例14の「細胞溶解」技法によって測定される細胞会合型コンドロイチン力価(178μg/mL)よりもいくらか少ないが(試料番号4)、これは内部コンドロイチンポリマー(試料番号2および試料番号6において測定されるもの)を反映しているのだろう。しかし、両アッセイ法から得たデータは、非オートクレーブ処理試料ではオートクレーブ処理済み試料と比較して有意に高い分率のコンドロイチンが細胞会合型であることを示すという点で定性的に一致している。細胞会合型コンドロイチンが全細胞懸濁液のCHase処理によって二糖に消化されたという事実は、この分率のコンドロイチンは、多糖残基が細胞の外側および培養培地中に存在するような形で、細胞の外膜と会合していることを示している。これは莢膜の予期される構造と合致する。
これらの結果は、MSC279株によって生産される組換えコンドロイチンのかなりの分率(≧50%)は、培養培地中に、細胞会合型ではない形態で存在することを実証している。MSC279によって生産される細胞会合型コンドロイチンの大部分は、細胞に結合しているが、添加されたCHaseによる分解が証明するように、周囲の培地は接近可能である。ネイティブ大腸菌K4が無細胞型のK4Pと細胞会合型のK4Pをどちらも生産することは、Manzoni et al.,Biotechnol.Lett.1996; 18(4):383-386およびCimini et al.,Appl. Microbiol. Biotechnol. E-Publication,October 2009によって、以前に報告されている。組換え生産中に両方の形態が観察されることは、MSC279における組換えコンドロイチンの合成と分泌がネイティブ株において作動する経路と同じ経路によって進行するという理解と合致する。これは、MSC279中に導入されたクローン化遺伝子の全てが、大腸菌K4中と同じ方法で機能していること、および莢膜多糖を合成し搬出するための全経路が、組換え株において機能していることを示唆している。
細菌発酵によってコンドロイチンを生産するには大規模発酵を使用することが好ましいが、これは、細胞会合型コンドロイチンを培養培地中に放出させるための方法としてオートクレーブ処理を実行することが不可能になるほど大量の培養培地を生成する。大規模生産には、高温を酸または塩基処理と組み合わせて使用する代替的処理を使用することができるであろう。
培養培地へのコンドロイチンの分泌に関して、同様の結果が、コンドロイチンを生産する組換え大腸菌B株でも得られた。本発明者らは、組換え大腸菌K-12において、kfoB遺伝子がコンドロイチン生産にとって不可欠ではないことを、先に観察していた。大腸菌Bにおけるコンドロイチンの分泌について調べるために、MSC347(MSC139 pCX044、すなわちpCX039ΔkfoB)をTB/Tc5培地中、30℃で成長させ、OD A600がおよそ0.15のときに2mM m-TAで誘導した。48時間の時点で、ブロス試料を採取し、オートクレーブ処理を行って、およびオートクレーブ処理を行わずに、遠心分離することで、上清画分と細胞ペレット画分を生成した。この実験のコンドロイチンアッセイ結果を下記の表7Bに示す。オートクレーブ処理は、測定可能な総rCH量の90%以上を上清画分にもたらした。しかし、非オートクレーブ処理試料では、コンドロイチンのおよそ30%しか、上清に見いだされなかった。これらの結果は、オートクレーブ処理段階(5分、121℃、15psi)が本質的に全てのrCHを培地中に放出することを示唆する、上に詳述した組換え大腸菌K-12株での知見と合致している。さらにこれらの結果は、大腸菌Bにおける領域1および領域3遺伝子が、領域2遺伝子が存在する場合に、コンドロイチンを分泌する機能を果たすことを示している。
細胞培養培地へのコンドロイチンの分泌と、培養培地への細胞会合型コンドロイチンの放出は、無細胞型であって、遠心分離または濾過によって細胞から分離し、続いて精製することができるコンドロイチンを得るための方法になる。コンドロイチン生合成遺伝子の遺伝子操作によって、細胞内コンドロイチンを生産することも可能である。コンドロイチンの細胞内生産は、培養培地中の高レベルの多糖に起因する発酵の粘性を排除するために望ましい場合がありうる。また、大腸菌におけるコンドロイチン生産に関する本質的限界およびコンドロイチン生合成の生化学は、完全には理解されていない。細胞内生産の方が分泌よりも高レベルのコンドロイチンを達成できる可能性もある。そこで、培養培地への分泌を起こさずに有意義なレベルのコンドロイチンの蓄積を可能にする組換え遺伝子セットを同定した。
一定の条件下で、他の大腸菌莢膜多糖は、細胞内で合成され、細胞内に蓄積されうるという証拠が、文献にある。Bronnerら(J.Bact. 1993;175:5984-5992)の電子顕微鏡法(EM)結果は、kpsCおよびkpsSに欠陥を持つ変異体による大腸菌血清型K5莢膜多糖(ヘパロサン)の細胞内蓄積がいくらか存在することを示唆した。kpsC、kpsS、kpsEまたはkpsTに欠陥を持つ変異体をEMによって調べたときの大腸菌K1のポリシアル酸莢膜多糖についても、同様の観察結果が、CieslewiczおよびVimr(J.Bact. 1996; 178:3212-3220)によって報告された。細胞内K1多糖および細胞内K5多糖のレベルはこれらの研究では定量されなかった。
領域1遺伝子または領域3遺伝子中の変異が、大腸菌K-12において、組換え生産されたコンドロイチンの分泌を阻止しうるかどうかを決定するために、kpsCまたはkpsT遺伝子が欠失しているプラスミドpDD66の誘導体(それぞれpCX045およびpCX048)を、実施例4で述べたように構築した。これらのプラスミドをMSC188に形質転換し、その結果生じた株を、コンドロイチンを生産し培養培地に分泌する能力について、MSC279(無修飾のpDD66を含有するMSC188)と並行して調べた。
培養物をTB+Tc5培地中、30℃で成長させ、およそ0.15のOD A600において2mM m-TAで誘導し、48時間後に試料を採取した。48時間時点における各株について、オートクレーブ処理済み試料と非オートクレーブ処理試料の両方から、上清中および細胞ペレット中のコンドロイチンをアッセイした。下記表7Cに示すように、48時間時点におけるODは等しかった。kpsCおよびkpsT遺伝子がそれぞれ欠失しているMSC356株およびMSC359株からの非オートクレーブ処理試料では、コンドロイチンが、主に(およそ85〜90%)、細胞ペレットに局在している。これは、コンドロイチンのおよそ50%が細胞ペレットに局在し、およそ50%は上清中に存在するという、野生型対照MSC279での結果とは対照的である。
上記のように(表7C)、MSC279株では、MSC279培養物の非オートクレーブ処理試料において細胞ペレットに局在しているコンドロイチンの大部分は、細胞外膜の外層にある脂質アンカーに共有結合しているらしい。オートクレーブ処理は、細胞膜と、オートクレーブ処理がない場合に細胞と会合しているコンドロイチンとの会合を破壊するらしいが、細胞のオートクレーブ処理の効果は完全にはわかっていない。細胞と、kpsCまたはkpsT欠陥株の細胞ペレットに局在しているコンドロイチンとの間の会合の性質は、これらのデータでは扱われない。基本的に、このコンドロイチンは、細胞質に存在するか、細胞膜周辺腔に存在するか、または細胞外膜にまだ結合している。しかし、これらの変異株に関する結果は、kpsCおよびkpsTにおける変異がコンドロイチンの分泌を阻止し、コンドロイチンの細胞内蓄積をもたらすという理解と合致する。細胞表面上のこのコンドロイチンの存在は、非オートクレーブ処理細胞ペレットを再懸濁し、再懸濁した細胞をCHase消化に付し、コンドロイチン特異的二糖の生成を測定することによって調べることができる。あるいは、電子顕微鏡法を使って、MSC356およびMSC359によって生産された細胞会合型コンドロイチンの細胞局在を決定することもできる。
野生型株MSC279を使って、細胞からのコンドロイチンの放出におけるオートクレーブ処理の役割を確認し、K4領域2遺伝子だけを含有する大腸菌K-12(MSC346;MSC188 pCX039)が細胞内コンドロイチンを生産できるかどうかを決定するために、以下の詳述する追加実験を計画した。MSC279株およびMSC346株をTB/Tc5培地中、30℃で成長させ、OD A600がおよそ0.15のときに2mM m-TAで誘導した。48時間後に、二つ一組のブロス試料を採取して、遠心分離前のオートクレーブ処理を行って、または行わずに、上清画分と細胞ペレット画分を調製した。これらの試料からのコンドロイチンアッセイの結果を下記表7Dに示す。完全なコンドロイチン生合成遺伝子セットを含有するMSC279株からの非オートクレーブ処理試料では、コンドロイチンが上清(55%)とペレット(45%)にほぼ均等に分布していた。対照的に、領域2遺伝子だけを含有するMSC346株からの非オートクレーブ処理ペレットは、培養によって生産されたコンドロイチンのおよそ98%を含んでおり、上清にはほとんど見いだされなかった。どちらの株についても、オートクレーブ処理は、主として(>90%)上清へのCHの分配をもたらした。
これらの結果は、オートクレーブ処理(5分、121℃、15psi)によって、ほとんど全ての細胞会合型コンドロイチンが培地中に放出されることを実証している。したがって、MSC279の非オートクレーブ処理細胞ペレット中に検出されるコンドロイチンは、基本的に、外膜に結合しているか、細胞内に位置するのだろう。オートクレーブ処理を行わない場合は、MSC346株培養物の上清にはコンドロイチンが極めてわずかしか見いだされない。この結果は、領域1機能と領域3機能の全てを欠くMSC346が、細胞内コンドロイチンしか生産しないということと合致している。MSC346が生産するコンドロイチンの量はMSC279と比較すると低いが、生産されるコンドロイチンの量は依然としてかなり大きく、クローン化遺伝子kfoABCFGだけを使って組換え大腸菌K-12中でコンドロイチンをうまく生産できることを実証している。これらの結果は、このコンドロイチンを、オートクレーブ処理によって細胞から遊離させ、細胞片を除去するための遠心分離後に、オートクレーブ処理した培養物の上清中に得ることができることも実証している。あるいは、MSC346の細胞をさまざまな周知の方法(例えばホモジナイゼーション、界面活性剤および/または酵素による溶解、機械的破壊、超音波処理など)によって溶解することもでき、これらの方法によって放出されたコンドロイチンも、遠心分離後の上清中に回収することができるだろう。こうして回収されたコンドロイチンは、当技術分野において周知のアルコール沈殿などの方法によって、さらに精製することができるだろう。
実施例10:この実施例では、染色体中に挿入されたコンドロイチン生合成遺伝子を含有する大腸菌K-12の株の構築を説明し、これらの株におけるコンドロイチン生産を実証する。
上記実施例6〜9は、コンドロイチン生合成タンパク質をコードするクローン化遺伝子を異種宿主株に導入するためにプラスミドベクターを使用する、組換え大腸菌株におけるコンドロイチン生産を説明している。状況によっては、クローン化コンドロイチン生合成遺伝子を受容宿主株の染色体中に導入することが望ましい場合もあるだろう。クローン化遺伝子を染色体に入れると、コンドロイチン生合成遺伝子を保有するプラスミドを維持するための選択圧を維持する必要がなくなり、したがって、より安定な発現株または選択圧の不在下で安定な発現株を、潜在的に提供することができるであろう。そこで、コンドロイチン生合成のための大腸菌K4遺伝子を宿主染色体中に安定に組み込んだ大腸菌K-12株を構築した。これらの「染色体発現株」は、コラン酸生合成遺伝子座に組み込まれたpDD66およびpBR1052由来のPmプロモーターおよびK4遺伝子セットを使用する。xylS調節遺伝子も、別個の遺伝子座であるfhuA遺伝子座に組み込まれた。その結果得られたコンストラクトは、振とうフラスコおよび発酵槽において高レベルのコンドロイチンを生産することが示された(実施例14および15)。
発現プラスミドpDD66およびpBR1052については実施例4において述べる。pDD66およびpBR1052由来のK4コンドロイチン生合成遺伝子をpMAK-CL置換ベクター(これも実施例3において述べる)中にクローニングした。図8Lに図示するこのベクターは、コラン酸(CA)遺伝子クラスターの上流および下流にあるクローン化DNA領域と、これらの領域の接合部にあるユニークなAscIクローニング部位とを含有する。実施例3において詳述するように、このベクターを使って、大腸菌K-12 W3110におけるCA遺伝子クラスター全体の欠失を構築することで、MSC188株を作製した。pDD66およびpBR1052から、およそ19kbのAscIフラグメントとしてK4遺伝子発現カセットを切り出し、QIAEX II Gel Extraction Kit(QIAGEN Inc.、カリフォルニア州バレンシア)を使用し供給元のプロトコールに従ってゲル精製し、これらのフラグメントを、AscI消化し、ホスファターゼ処理し、かつゲル精製したpMAK-CL DNAとライゲーションした。形質転換体を、pDD66およびpBR1052のAscIフラグメント上にPmプロモーターならびに上流および下流転写ターミネーターと共に保有されているテトラサクリンに対する耐性で選択した。pBR1052またはpDD66のAscIフラグメントを含有するpMAK-CLの誘導体を同定し、それぞれpDD74およびpDD76と名付けた。これらのプラスミドを図8Lに図示する。
プラスミドpDD74およびpDD76をMSC188に形質転換することで、それぞれMSC373株およびMSC377株を作製し、K4遺伝子セットが染色体中に組み込まれているこれらの株の派生株を、次のようにして得た。MSC373およびMSC377を、LB+5μg/mLテトラサイクリン(Tc5)中、30℃で終夜成長させ、およそ20μLのアリコートをLB+Tc5プレート上にスポットして画線し、それを41℃で終夜インキュベートした。このプレート上で生じたコロニーを拾い、43℃のLB+Tc5プレートに再び画線した。高温におけるプラスミド媒介抗生物質耐性の維持に関する選択により、染色体中へのプラスミドの組換えが選択される。なぜなら、pDD74およびpDD76プラスミドは、pMAK705ベクターの誘導体として、複製に関して温度感受性だからである(Hamilton et al., J. Bact. 1989; 171: 4617-4622)。テトラサイクリン上、43℃で成長する能力を有するMSC373およびMSC377の派生株を、LB+Tc5液体培地中、30℃で1回、終夜継代培養した後、LB液体培地(テトラサイクリンなし)中、30℃で1回、終夜継代培養した。次に、これらの終夜培養を希釈し、LBプレート上、30℃で平板培養し、孤立コロニーを、30℃で、LB、LB+Tc5、およびLB+34μg/mLクロラムフェニコール(Cm34)上に拾い上げた。MSC377およびMSC373のそれぞれから、1つのテトラサイクリン耐性(TcR)クロラムフェニコール感受性(CmS)派生株を同定した。それぞれMSC391およびMSC392と名付けたこれらのTcR/CmS派生株は、相同組換えによってK4 DNA配列が染色体のCA遺伝子座に残り、プラスミド配列の残りの部分が切り出されるような形で組換えが起こって、プラスミドがその後に失われた置換株であると推定された。これらの分離株のPCR分析により、およそ19kbのK4 DNAフラグメントの5'および3'端が、コラン酸遺伝子座を挟む染色体DNA配列に対して、予期される位置に存在することが示された。
実施例4において詳述するように、大腸菌fhuA遺伝子の上流および下流にあるDNA領域をPCRによってクローニングし、アセンブルし、配列決定し、この欠失フラグメントをpMAK705自殺プラスミドに移入することで、pMAK705-ΔfhuAまたはpDD73(図8M)と呼ばれるfhuA遺伝子座用の置換ベクターを作出した。xylS調節遺伝子をこの置換ベクター中に次のようにクローニングした。xylS遺伝子を、pDD42から、PstIフラグメントとして切り出し、pDD73のPstI部位中にクローニングすることで、図8Nに図示するpDD77を作製した。pDD77のPstIフラグメントは、発現プラスミドpDD66およびpBR1052ならびに親ベクターpDD54中に存在するxylS含有PstIフラグメントと同一である。上述のK4遺伝子クラスター置換株MSC391およびMSC392をpDD77で形質転換した。pDD77によるMSC391およびMSC392の形質転換からそれぞれ2つの分離株を選択し、次のように命名した:
MSC402≡MSC391 pDD77「分離株A」
MSC403≡MSC391 pDD77「分離株B」
MSC404≡MSC392 pDD77「分離株A」
MSC405≡MSC392 pDD77「分離株B」。
これらの株を全て、振とうフラスコ中で、コンドロイチン生合成について試験した。株を、30℃のTB培地+Cm34中で成長させることで、pDD77プラスミドの維持について選択した。およそ0.2のOD A600において、2mM m-トルイル酸(m-TA)の添加によって培養を誘導した。誘導の24時間後および48時間後に試料を採取し、コンドロイチンについてアッセイした。4つの株は全て、コンドロイチンを生産した。これらのアッセイの結果を下記の表8Aに示す。誘導されたMSC404およびMSC405についてのコンドロイチンレベルは、MSC402およびMSC403より、およそ2.5倍高かった。この実験では、MSC404およびMSC405が、これらの培養条件下で、振とうフラスコ中のMSC279(MSC188 pDD66)で典型的に見られる量(およそ0.5g/L)の約65〜70%を生産した。これらの結果は、K4コンドロイチン生合成遺伝子の単一染色体コピーを含有する組換え大腸菌が、相当量のコンドロイチンを生産する能力を有することを示している。
pBR1052由来の株(MSC404およびMSC405)は、pDD66由来の株より生産性が高いようだったが、どちらの染色体遺伝子セットも、コンドロイチンを生産する機能を十分によく果たした。pBR1052由来の染色体K4遺伝子セットはkpsF遺伝子のすぐ上流に挿入された2コピー目のPmプロモーターを含有する。この追加プロモーターは、プラスミドpBR1052における下流遺伝子(kpsFEDUCS)の発現を、pDD66における発現度比較して強化することが示された。この追加Pmプロモーターは染色体環境下でも下流遺伝子発現を増加させ、これらの遺伝子の強化された発現が、CH生産を有意に増加させうる可能性がある。
pDD77のプラスミド媒介xylS遺伝子が染色体のfhuA遺伝子座に2段階「ポップイン/ポップアウト」法を使って組み込まれたMSC403およびMSC405の派生株を、次のようにして得た。MSC403およびMSC405をLB+Cm34中、30℃で終夜成長させた。これらの培養物を104倍に希釈し、LB+Cm34上、43℃で0.1mLずつ平板培養した。終夜インキュベーション後に、さまざまなサイズのおよそ100個のコロニーが得られた。孤立コロニーを拾い、LB+Cm34プレートに画線し、43℃で終夜成長させた。これらの平板培養物から孤立コロニーを拾い、それらを使って、抗生物質を何も含まないLBの5mL培養物に接種した。これらの培養物を30℃で終夜成長させた後、1000倍希釈と30℃のLBにおける終夜成長により2回継代培養した。次に、この継代3代目を106倍に希釈し、LB上、30℃および37℃で、0.1mLずつ平板培養した。これらの平板培養物からのコロニーをLBおよびLB+Cm34に拾い上げることで、プラスミドの喪失について試験した。クロラムフェニコール感受性(CmS)分離株が容易に得られ、それらをPCRでスクリーニングすることにより、xylS含有DNA配列が染色体のfhuA遺伝子座に残ると共にプラスミド配列の残りの部分が切り出されるような形で組換えが起こって、プラスミド配列がその後に失われている、所望の「ポップアウト」置換株を同定した。この事象は、大腸菌染色体からのfhuA遺伝子全体の欠失ももたらす。これらの分離株のPCR分析により、xylS DNAフラグメントの5'および3'端が、fhuA遺伝子座を挟む染色体DNA配列に対して予期される位置に存在するようになっていることが示された。その結果得られたMSC403由来の株MSC410およびMSC405由来の株MSC411は、fhuA遺伝子座に挿入されたxylS遺伝子を含有し、コラン酸遺伝子座に挿入されたK4遺伝子を保持している。
MSC410およびMSC411をコンドロイチン生合成について試験した。株をTB培地中、30℃で成長させ、およそ0.2のOD A600において、2mM m-TAの添加により、培養を誘導した。誘導の24時間後および48時間後に試料を採取し、コンドロイチンについてアッセイした。下記の表8Bに示すように、これらの株はいずれも極めて低レベルのコンドロイチンを生産した。
直前の先祖株が同じ培養条件下に同等な細胞密度で相当量のコンドロイチンを生産したことを考えると、この低い生産性は予想外だった。演繹的には、これらの結果は、xylS遺伝子の染色体挿入が、誘導物質m-TAの存在下でさえPmプロモーターを活性化するのに十分な量のXylSタンパク質を生産しないことを示すのかもしれない。あるいは、これらの株では、挿入されたK4および/またはxylS遺伝子の推定DNA構造が正しくないのかもしれない。相同なコラン酸遺伝子座およびfhuA遺伝子座配列に隣接する染色体配列に対する両セグメントの5'および3'端の連結関係はPCRによって検証した。しかし、それらのデータだけで、これらの株における挿入されたDNAの正確な構造および配列が確認されるわけではない。MSC410およびMSC411を各々のCH生産親株(MSC403およびMSC405)から派生する過程で、K4またはxylS DNAセグメント内での再編成、欠失または変異が起こって、それがCH生合成を損ねる結果になっていることもありうる。
これらの仮説を検証するために実験を行った。プラスミドpDD77をMSC410およびMSC411に形質転換することで、これら2つの株における染色体K4遺伝子セットの機能性について試験した。結果として生じた株をMSC436(MSC410 pDD77「分離株A」)、MSC437(MSC410 pDD77「分離株B」)、MSC438(MSC411 pDD77「分離株A」)およびMSC439(MSC411 pDD77「分離株B」)と名付けた。これらの株をTB培地中、30℃で成長させ、およそ0.2のOD A600において、2mM m-TAの添加によって培養を誘導した。誘導の24時間後および48時間後に試料を採取し、コンドロイチンについてアッセイした。下記の表8Cに示すように、これら4つの株は、それぞれの前駆株MSC403およびMSC405について見られた力価とよく似ていて、直前の先祖株MSC410およびMSC411よりはるかに高い、かなりの力価のコンドロイチンを生産した。これらの結果により、MSC410およびMSC411株におけるコンドロイチン生合成の欠陥はK4コンドロイチン生合成遺伝子そのものの欠陥に起因するのではないことが示された。
これらの知見は、株MSC410およびMSC411におけるコンドロイチン生合成は、おそらくは(それぞれMSC403およびMSC405からの)MSC410およびMSC411の作製中に発生したのであろう遺伝子コード配列の何らかの構造的エラーに起因するXylSタンパク質機能の欠陥ゆえに低いのであるだろうこと、あるいは、xylS遺伝子配列は正しいかもしれないが、これらのコンストラクトにおける染色体xylS遺伝子の発現レベルがK4遺伝子の最適な発現レベルを達成するには不十分であるかもしれないことを示唆している。
これらの仮説を検証するために、MSC410およびMSC411の染色体中のxylS遺伝子を配列決定した。xylS遺伝子挿入を含有する大腸菌染色体の領域を、組込み部位を挟むプライマーを使用するPCRによって増幅し、増幅されたDNAセグメントを配列決定した。xylSプロモーターおよびコード領域の配列は予期される配列と厳密に合致した。この結果から、MSC410およびMSC411におけるxylS機能の欠陥は、染色体遺伝子からのXylSタンパク質の不十分な発現によることが示唆された。そこで、xylS遺伝子の発現を強化するための実験を行った。この目的のために、合成最適化版のxylS遺伝子プロモーター、リボソーム結合部位、および5'非翻訳領域(UTR)を設計、合成し、それらの修飾配列をxylS置換ベクターpDD77中に導入し、続いて染色体中に導入した。
この合成フラグメントは、pDD77のBlpI-PstI配列に合致する134bpの配列と、それに続く、xylSのATG開始コドンまでの86bpの合成配列とを含有し、ユニークなBglII部位を通ってxylSコード配列中にさらに37bp伸びている。ATGからBglII部位までの配列は、pDD77中に存在する配列と合致している。BlpI-BglIIフラグメントはpDD77中には容易に導入することができる。なぜなら、これらの制限部位がこのプラスミドではユニークだからである。86bpの合成配列(下記)(SEQ ID NO:98)は、コンセンサス大腸菌プロモーター(Hawley and McClure,Gene 1983;11:2237-2255に基づくもの)と、コンセンサスシャインダルガノ(S-D)配列(Shine and Dalgarno Proc.Natl.Acad.Sci.USA.1974;71:1342-6)とを含む。この配列には、予想されるmRNAの5'端のステム-ループ構造(下線付きテキストで示す)も組み込まれている。これらの特徴は全て、XylSタンパク質の効率のよい発現を促進すると予期される。
BlpI-BglIIフラグメント(SEQ ID NO:140)は、業者(DNA2.0)によって合成され、修飾された配列を含有する合成DNAを、xylS置換ベクターpDD77中に、BlpI-BglIIフラグメントとして、ネイティブxylS調節配列を含有するネイティブBlpI-BglIIフラグメントの代わりにクローニングした。Pmプロモーターを活性化しコンドロイチン生産を駆動する修飾xylS遺伝子の能力を調べるために、pDD79(図8N)と名付けた修飾xylS含有プラスミドを、MSC392に形質転換した。pDD79を含有する3つのMSC392形質転換体を拾い、MSC458、MSC459およびMSC460と名付けた。これらの株を、MSC392親株と一緒に、標準的振とうフラスコ実験において、コンドロイチン生産について調べた。株を、TB培地(MSC392)またはTB+Cm34(MSC458〜460)中、30℃で成長させ、およそ0.2のOD A600において、2mM m-TAの添加により、培養を誘導した。誘導の24時間後、48時間後および72時間後に試料を採取した。48時間試料をコンドロイチンについてアッセイした。全てのpDD79含有株が、誘導培養でも非誘導培養でも、およそ300μg/mLを生産した。対照的に、xylS遺伝子を欠くMSC392は、誘導培養でも非誘導培養でも、4μg/mLのコンドロイチンしか生産しなかった。これらの結果を下記の表8Dに示す。
およそ300μg/mLのコンドロイチンという観測値は、プラスミドpDD77上のネイティブxylS遺伝子を含有するMSC405およびMSC438の誘導培養で見られる力価と似ている。しかし、MSC458、MSC459およびMSC460の非誘導培養と誘導培養はどちらも本質的に等価なCH力価をもたらした。この結果は、pDD79の修飾xylS遺伝子によるXylSの生産量の増加と合致している。なぜなら、XylSの過剰生産は、誘導物質が何も添加されていない状況において、Pmプロモーターを活性化すると報告されているからである(Dominguez-Cuevas et al.,J.Bact. 2008; 190:3118-3128)。
染色体中に挿入されたときの修飾xylS遺伝子の機能性を調べるために、上記実施例3において詳述した2段階「ポップイン/ポップアウト」法を使って、pDD79のプラスミド媒介xylS遺伝子が染色体のfhuA遺伝子座に組み込まれているMSC459の派生株を得た。MSC459をLB+34μg/mL クロラムフェニコール(Cm34)中、30℃で終夜成長させ、LB+Cm34上、43℃で平板培養した。終夜インキュベーション後に、孤立コロニーを拾い、LB+Cm34プレート上に画線し、再び43℃で終夜成長させた。これらの平板培養物から孤立コロニーを拾い、染色体へのプラスミドの組込みを確認するために、コロニーPCRによって試験した。
PCRで結果が陽性だった2つのコロニーを使って、抗生物質を何も含まないLB培地の5mL培養物に接種した。これらの培養物を30℃で終夜成長させた後、1000倍希釈と30℃のLBにおける終夜成長とによって継代した。次にこれらの培養物を106倍に希釈し、37℃のLB上で、0.1mLずつ平板培養した。これらの平板培養物から個々のコロニーをLBおよびLB+Cm34に拾い上げることで、プラスミドの喪失について調べた。クロラムフェニコール感受性(CmS)分離株が容易に得られ、各培養物からのそのような分離株6つを、PCRでスクリーニングすることにより、xylS含有DNA配列が染色体のfhuA遺伝子座に残ると共にプラスミド配列の残りの部分が切り出されるような形で組換えが起こり、プラスミド配列がその後に失われている、所望の「ポップアウト」置換株を同定した。この事象は、大腸菌染色体からのfhuA遺伝子全体の欠失ももたらす。これらの分離株のPCR分析により、xylS DNAフラグメントの5'および3'端が、fhuA遺伝子座を挟む染色体DNA配列に対して予期される位置に存在するようになっていることが示された。MSC459に由来するそのような2つの株MSC466およびMSC467は、fhuA遺伝子座に挿入されたxylS遺伝子(合成プロモーターを持つもの)とコラン酸遺伝子座に挿入されたK4遺伝子とを保有するようになっているはずである。
MSC466およびMSC467を振とうフラスコにおいてコンドロイチン生合成について調べた。株をTB培地中、30℃で成長させ、およそ0.2のOD A600において、0、1、2または4mM m-TAの添加により、培養を誘導した。誘導の24時間後、48時間後および72時間後に試料を採取した。48時間試料からのコンドロイチンアッセイデータを下記の表8Eに示す。1または2mM m-TAで誘導した場合、どちらの株も、かなりの力価のコンドロイチン(>400μg/mL)をもたらした。4mM m-TAで誘導した培養物は、それよりいくらか低いコンドロイチン力価をもたらした。非誘導培養はコンドロイチン生産量が少なく、およそ160〜170μg/mLであった。これらの結果は、合成プロモーター、最適化されたリボソーム結合部位および5'UTRヘアピン構造を持つ修飾xylS遺伝子がネイティブxylS遺伝子よりも効率よく発現し、それゆえにPmプロモーターによるK4コンドロイチン生合成遺伝子の転写を刺激するのに、より有効であるという仮説と合致している。染色体株MSC467およびMSC466は、K4コンドロイチン生合成遺伝子や調節xylS遺伝子を保有するプラスミドを何も含有せず、どちらも相当量のコンドロイチンを生産する能力を有する。
MSC467は、染色体K4遺伝子クラスターのkpsS遺伝子のすぐ下流(3')に挿入されたpDD74(図8L参照)由来のテトラサイクリン耐性遺伝子を含有する。(図8T参照)。プラスミド媒介遺伝子がコードするテトラサイクリン耐性を一定のプラスミドの導入および維持に関する選択に使用することが可能になるように、この染色体テトラサイクリン耐性遺伝子を、以下に詳述するように、実施例3に記載の「ポップイン/ポップアウト」手法を使って、MSC467の染色体から欠失させた。その結果生じたMSC467のテトラサイクリン感受性派生株をMSC561と名付けた。MSC561の構築は次のように達成した。
pDD74 DNAをテンプレートとして使用し、プライマーBLR476およびBLR478:
を使って、MSC467およびpDD74中のtetR遺伝子のすぐ上流にある約900塩基対の染色体配列を増幅した。
その結果生じたPCR産物をHindIIIおよびAscIで消化し、pMAK-CL(実施例3および図8Lに記載するもの)プラスミドDNA(HindIIIおよびAscIで消化し、Antarcticホスファターゼ(New England BioLabs、マサチューセッツ州イプスウィッチ)で供給元のプロトコールに従って処理しておいたもの)とライゲーションした。ライゲーション産物を大腸菌NEB5α(New England BioLabs、マサチューセッツ州イプスウィッチ)に形質転換し、その結果生じた形質転換体からのプラスミドDNAを、診断的制限エンドヌクレアーゼ消化により、クローン化PCRフラグメントの存在についてスクリーニングした。そのような形質転換体の一つからの組換えプラスミドをpBR1087と名付け、MSC467染色体からtetR遺伝子を欠失させるための遺伝子置換実験に使用した。pBR1087の構造を図8Uに図示する。このプラスミドをMSC467に形質転換し、pMAK705系レプリコンの複製に関する許容温度である30℃におけるクロラムフェニコール耐性で選択した。次に、30℃で成長させた培養物を、34μg/mLのクロラムフェニコール(Cm34)の存在下、43℃で平板培養し、その結果生じたコロニーを拾って、43℃のLB+Cm34プレートに画線した。その結果生じたコロニーを、標的遺伝子座におけるpBR1087の組込みに関して、PCRによってスクリーニングし、この遺伝子座に組み込まれたプラスミド配列を含有すると同定された分離株を、クロラムフェニコールの非存在下にLB液体培地中、30℃で継代培養した。次に、こうして継代培養した分離株を、クロラムフェニコールの非存在下、30℃のLBで平板培養し、その結果生じたコロニーを、クロラムフェニコールおよびテトラサイクリンに対する感受性に関して試験した。組み込まれたプラスミドが切り出された結果としてtetR遺伝子が欠失している推定遺伝子置換株であるクロラムフェニコール感受性テトラサイクリン感受性派生株を得て、それらをPCRでスクリーニングすることにより、この推定染色体構造を確認した。
こうしてtetR遺伝子の欠失を起こしていると同定された1つの株をMSC561と名付けた。MSC561の染色体K4遺伝子クラスターの構造を図8Tに示す。欠失は、kpsSコード配列の71bp下流から、コラン酸遺伝子座の下流にある配列の5'端にあるAscI部位までに及ぶ。この欠失はtetR遺伝子全体を含む。
実施例11:この実施例では、領域1および3遺伝子と比較したK4領域2遺伝子(kfoABCFG)の遺伝子量が、大腸菌K-12振とうフラスコ培養におけるコンドロイチン生産の有意な増加をもたらすことを実証する。
大腸菌K-12株MSC467(実施例10)は、コラン酸遺伝子座に、Pmプロモーターの制御下にある領域1、2、および3を含有し、fhuA遺伝子座に、合成コンセンサスプロモーターの制御下にあるxylSを含有する。プラスミドpCX039(実施例4)は、Pmプロモーターの制御下にある領域2kfoABCFG遺伝子を含有し、ネイティブxylS遺伝子も含有する。pCX039をMSC467に形質転換することで、MSC499株を作出した。対照株MSC498は、pDD63(実施例4)をMSC467に形質転換することによって作出した。さまざまな誘導物質濃度による振とうフラスコ培養(TB/Cm34培地、30℃、72時間)におけるコンドロイチン生産を、これら2つの株について決定した(表9A)。
領域2の遺伝子量を、それらをプラスミドにのせることによって増加させると、コンドロイチン生産量が明らかに高くなった。MSC499株では誘導なしで比較的高い生産レベルが見られた。これは、MSC499染色体中に存在する修飾xylS遺伝子の強化された発現による、K4遺伝子の非誘導発現に起因するものと思われた。上記のように、高レベルのXylSタンパク質が、誘導物質が添加されていない場合でさえ、Pmプロモーターを活性化できることは知られている(Dominguez-Cuevas et al.,2008)。プラスミドによってコードされる追加のXylSがこのプラスミド系における最適なコンドロイチン生産にとって必要かどうかを決定するために、xylS遺伝子を欠くプラスミドpDD63およびpCX039を構築した。これらのプラスミドはそれぞれ、1049bpのフラグメント内にあるxylS遺伝子コード配列全体を挟む2つのNsiI制限部位を含有している(実施例4参照)。これらのプラスミドの試料をNsiIで消化し、酵素を不活化するために熱処理してから、T4 DNAリガーゼで処理することで、xylS遺伝子フラグメントを欠く環状プラスミドを作製した。pDD63ΔNsiをまず最初に大腸菌MSC188(実施例3)に形質転換した。特徴づけられたpDD63ΔxylSプラスミドをpCX069と命名した。次にこのプラスミドを大腸菌MSC467(実施例10)に形質転換することで、MSC510株を作出した。pCX039ΔNsi試料をMSC467に直接形質転換し、特徴づけられたΔxylSプラスミドをpCX074と命名した。これらの株ならびにMSC498およびMSC499対照株によるコンドロイチン生産をこの実施例において先に述べたように決定し、その結果を表9Bに示す。
pCX039からのxylSの欠失は、生産されるコンドロイチンの最大量を減少させなかったが、最大レベルを達成するには、より高い誘導物質レベルが必要だった;表9BにおけるMSC511とMSC499を対比して参照されたい。この結果は、XylSレベル、誘導物質レベル、K4遺伝子補完、およびコンドロイチン生産性の相関性を、例証している。
上記実施例4は、xylSおよび領域2kfoABCFG遺伝子(全て合成コンセンサスプロモーターから発現されるもの)を大腸菌染色体のfhuA遺伝子座に挿入するために設計されたpMAK705系置換プラスミドであるプラスミドpDD80の派生を説明している。下記の表9Cに、染色体外要素としてpDD80を含有するMSC467(染色体xylS)株およびMSC392(xylSなし)株(実施例10)におけるコンドロイチン生産を記載する。
pCX039の場合と同様に、プラスミドpDD80は、K4コンドロイチン生合成遺伝子(領域1、2、および3)が全て補完された染色体コピーを含有する大腸菌宿主株におけるコンドロイチン生産を強化した。pDD80を含有する株では、染色体におけるxylSコピーの有無とは無関係に、誘導はコンドロイチン生産に対する効果をほとんど持たなかった。これはおそらく、強力な合成プロモーターによって駆動され、最適化されたリボソーム結合部位とmRNA 5'端に付加されたヘアピン構造とを含有する修飾xylS遺伝子のマルチコピープラスミドからの発現ゆえに、これらの株ではXylSのレベルが比較的高い結果であると思われる。
実施例12:この実施例では、MSC467株の染色体にkfoABCFG遺伝子の追加コピーを1つ付加することによってコンドロイチン生産が増加することを実証する。
上記実施例11は、Pmプロモーターの制御下にあるK4領域2遺伝子kfoABCFGの余分なコピーをプラスミドpCX039にのせてMSC467に導入すると、振とうフラスコにおけるMSC467株によるコンドロイチン生産が著しく強化されたことを実証している。プラスミドpDD80をMSC467に導入した場合にも類似する結果が得られた。実施例4で述べるプラスミドpDD80は、上記実施例10に記載の合成xylSプロモーターの転写制御下にあるkfoABCFG遺伝子を保有している。これらの結果は、kfoABCFG遺伝子によってコードされるタンパク質の1つまたは複数のレベルを増加させると、コンドロイチン生産が有意に増加することを示している。これらの遺伝子をマルチコピープラスミド上にクローニングすることは、これらのタンパク質の生産を増加させるための一方法になる。プラスミド発現プラットフォームを使用せずにこれらのタンパク質の生産を増加させるための代替的方法は、これらの遺伝子の複数コピーを宿主生物の染色体中に挿入することである。
kfoABCFG遺伝子セットの2つ目のコピーを、MSC467の染色体中、fhuA遺伝子座において、合成xylSプロモーターの転写制御下にある修飾xylS遺伝子のすぐ下流に挿入した。この目的のために、実施例4において詳述したように、pCX039から切り出したPstIフラグメント上のkfoABCFG遺伝子を、pDD79の適合するNsiI部位にクローニングすることにより、置換ベクターを構築した。その結果得られたプラスミドpDD80では、kfoABCFG遺伝子が、強力な構成的プロモーターになるように設計された合成xylSプロモーターによって転写される。pDD80をMSC467に形質転換することでMSC522株を作製したところ、これは振とうフラスコにおいておよそ1g/Lのコンドロイチンを生産することが、上記実施例10において示された。上記実施例3および実施例10に詳述したpMAK705系プラスミド置換の手法により、置換株(MSC537)を、MSC522から派生させた。この株は、fhuA遺伝子座に挿入されたkfoABCFGの追加コピーを、MSC467染色体中のxylS遺伝子のすぐ下流に、1つ保有する。
MSC537をMSC467と並行してコンドロイチン生産について調べた。培養物をおよそ0.01のOD A600で30℃のTB培地に接種した。およそ0.10のODにおいて、1mM m-TAの添加によって培養を誘導し、さらに72時間培養した。誘導の48時間後および72時間後にコンドロイチンアッセイ用の試料を採取した。誘導の72時間後に、MSC537は0.57g/Lのコンドロイチンを生産し、一方、MSC467は0.45g/Lを与え、MSC537ではMSC467に対しておよそ25%の増加だった。さらなる実験において、MSC537およびMSC467を振とうフラスコにおけるコンドロイチン生産について並行して調べたところ、MSC537は一貫してMSC467より多くのコンドロイチン(20〜30%)を生産した。この結果は、K4領域2遺伝子kfoABCFGの追加コピー1つをMSC467染色体に付加することで、コンドロイチン生産を増加させうることを示しているが、その程度は、kfoABCFG遺伝子の複数コピーの追加がMSC499およびMSC522株におけるコンドロイチン生産を増加させるほどではない。マルチコピープラスミド上のクローン化kfoABCFG遺伝子を保有するこれら2つの株は、MSC467よりおよそ2倍多いコンドロイチンを生産する(実施例10参照)。プラスミドpCX039をMSC537に形質転換することでMSC551を作出した。
MSC467と同様に、MSC537株は、MSC537中に存在する染色体K4遺伝子クラスターのkpsS遺伝子のすぐ下流(3')に、染色体に挿入されたpDD74(図8L参照)由来のテトラサイクリン耐性遺伝子を含有している。上記のように、いくつかの態様では、株はテトラサイクリン感受性であることが望ましい。そこで、MSC467の染色体からのtetR遺伝子の欠失に関して上記実施例10で述べたものと同じ手法および置換プラスミド(pBR1087)を使って、MSC537の染色体からtetR遺伝子を欠失させた。その結果生じたMSC537のテトラサイクリン感受性派生株をMSC562と名付けた。振とうフラスコ実験において、MSC562およびMSC537をTB培地中、30℃で成長させ、1mM m-TAの添加によって誘導した。誘導の72時間後に収集した培養試料のコンドロイチン力価を決定したところ、互いに同程度であることがわかった;MSC562の0.51g/LとMSC537の0.57g/L。
図8Qに示すようにkfoABCFG遺伝子を含有するプラスミドpCX039と、図8Iに示すベクターのみの対照プラスミドpDD63を、MSC562に形質転換することで、それぞれMSC564およびMSC563株を作出した。振とうフラスコ実験では、MSC563およびMSC564を、プラスミド選択のためのテトラサイクリン(5μg/mL)を含有するTB培地中、30℃で成長させ、1mM m-TAで誘導した。誘導の72時間後に、MSC564およびMSC563の培養物は、コンドロイチンを、それぞれ0.81g/Lおよび0.29g/Lの力価で生産した。
培養物をテトラサイクリンの存在下で成長させたこの実験において、MSC564におけるpCX039のプラスミド保持は、非常に効率がよかった。MSC564の72時間培養物からの試料を希釈し、LBプレート上および5μg/mLのテトラサイクリンを含有するLBプレート上で平板培養した。これら2つの平板培養条件下でコロニー形成単位(CFU)の力価に有意差はなかった;LBでの1.16×109CFU/mLと、LB+テトラサイクリンでの1.28×109CFU/mL。このように、この実験の条件下では、プラスミドの喪失は検出されなかった。
続いて、より多くのkfoABCFG遺伝子のコピーをMSC537の染色体に追加すると、この株におけるコンドロイチン生産はさらに増加するだろうと予期される。これらの遺伝子の追加コピーは、実施例3に詳述した遺伝子ターゲティング手法を使って、他の染色体遺伝子座に挿入することができる。大腸菌では、これらの遺伝子を組み込むためのさらなる部位として役立ちうる、多種多様な非必須遺伝子座が知られている。さらにまた、2コピー以上のkfoABCFG遺伝子セットからなるタンデム型の配列(tandem array)を遺伝子置換プラスミド上に構築し、単一の遺伝子置換事象で染色体中に導入することもできるだろう。
さらにまた、kfoABCFG遺伝子によってコードされるタンパク質の生産を増加させるためのさらなる方法には、タンパク質コード配列のコドン最適化、ならびにこれらの遺伝子のmRNAのプロモーター、リボソーム結合部位および5'非翻訳領域の配列の最適化が含まれる。そのような配列最適化は、プラスミドベクターから発現された遺伝子および染色体中に挿入された遺伝子に適用することができるだろう。
実施例13:この実施例では、プラスミドベクターおよび染色体組み込みを使ったキサントモナス・カンペストリスへのコンドロイチン生合成遺伝子の導入を説明し、振とうフラスコ中のキサントモナス・カンペストリスにおける組換えDNAによるコンドロイチン生合成を実証する。
具体的に述べると、ここで説明するのは、K4生合成遺伝子の組合せを含有するプラスミドの構築と、キサントモナス・カンペストリスMSC255株へのそれらの導入である。さらに、コンドロイチン生合成遺伝子およびそのサブセットをキサントモナス・カンペストリスMSC255株染色体の、キサンタンガムオペロンの欠失部位に安定に挿入するための、プラスミドpKM001およびpKM002(実施例3に記載)の誘導体の使用も説明する。
キサントモナス・カンペストリスへの、染色体外要素としてのコンドロイチン生合成遺伝子の導入
本発明者らは、大腸菌供与体からキサントモナス・カンペストリスへの大きなプラスミドの直接的な導入(例えば三親交雑によるもの)または大腸菌株から精製されたプラスミドとしての(例えばエレクトロポレーションによるもの-下記参照)が、その結果得られるキサントモナス・カンペストリス中のプラスミドにおける構造異常をもたらしうることを発見した。比較的小さいプラスミドはこの現象を起こしにくいようであり、これは、大きなDNA分子に対して比較的大きな効果を有するキサントモナス・カンペストリスにとってネイティブな制限系(Feyter and Gabriel,J.Bact. 1991;l73:6421-6427、da Silva et al.,Nature 2002; 417:459、Roberts et al.,Nuc.Acid Res.2010; 38:D234)によるのであろう。本発明者らは、この効果をうまく克服する2つのアプローチを使用した。一方のアプローチでは、領域1、2、および3遺伝子を包含する大きなプラスミドを、キサントモナス・カンペストリス形質転換体から精製された小さなプラスミドから再構築した。もう一つのアプローチでは、領域1、2、および3遺伝子を2つの(小さな)和合性プラスミドに分割した。
キサントモナス・カンペストリス細胞にプラスミドを導入するには、エレクトロポレーションを使用した(Oshiro et al.,J.Microbial.Method 65:171-179,2006)。プラスミドpDD67(実施例4に記載)を制限酵素BamHIおよびRsrIIで消化(領域2遺伝子が束ねられる)した後、T4 DNAポリメラーゼと反応させ(平滑端を作出するため)、ライゲーションを行う。その結果得られた混合物を大腸菌に形質転換し、テトラサイクリン耐性分離株を特徴づけた。次に、その結果得られたプラスミドpKM005(図10Aに示すもので、Pmが駆動する領域1および3遺伝子を含有する)を、エレクトロポレーションによって、キサントモナス・カンペストリスに形質転換することで、MSC338株を作出した。同様に、pCX039(実施例4)をキサントモナス・カンペストリスに形質転換することで、MSC326を作出した。MSC338から精製したプラスミドpKM005と、MSC326から精製したpCX039を、それぞれHindIII+AvrIIで消化し、pKM005由来の領域1、3フラグメントをpCX039のベクター/領域2フラグメントにライゲーションした。その結果得られた混合物をMSC255に直接形質転換し、テトラサイクリン耐性で選択した。1つのキサントモナス・カンペストリス形質転換体MSC348は、大腸菌に移入し戻されたプラスミドの制限消化ではpDD67と識別不可能なプラスミドpKM007(図10A)を含有することが示された。対照のために、キサントモナス・カンペストリスMSC255株をpDD63ベクターで形質転換することで、MSC397株を作出した。
プラスミドpJAK15(ATCC77290、ATCCから入手)はIncQ不和合性群に属し、カナマイシン耐性をコードする。pKM005由来のHindIII/AvrIIフラグメント(Pmが駆動する領域1および3を含有する;上記参照)をpJAK15由来のベクター/カナマイシン耐性HindIII/XbaIフラグメントとライゲーションした。その結果得られた、図10Bに示すプラスミドpKM006は、さまざまなpBHR1由来プラスミドと和合性であるベクター上に誘導性領域1および3遺伝子を含有する。MSC326(MSC255 pCX039)株をpKM006で形質転換し、カナマイシン耐性およびテトラサイクリン耐性で同時に選択することで、MSC350株を作出した。
ノックアウトベクターpKM001およびpKM002を、まず最初に、AscI、SbfI、SwaIおよびXhoIクローニング部位を保有する短いDNAオリゴヌクレオチドリンカーを、pKM001およびpKM002中の上流相同性領域と下流相同性領域の接合部を規定するNotI制限部位中に導入することによって修飾した。このリンカーは、アニールしたオリゴヌクレオチドprKM015およびprKM016でできていて、pKM001およびpKM002のNotI消化によって生成するものと適合する一本鎖突出部が存在するようになっている。その結果得られたプラスミド(それぞれpKM008およびpKM009と呼ぶ)は、AscI制限部位が上流領域に近くなるような向きにリンカーを含有する。
K4領域2遺伝子(kfoA、kfoB、kfoC、kfoFおよびkfoG)だけを有する置換ベクターを次のように構築した。pKM008をSbfI-XhoIまたはAscI-XhoIで消化し、pCX039をSbfI-SalIまたはAscI-SalIで消化した。SbfI-SalI処理ではpCX039からkfoABCFG含有フラグメントが生成し、AscI-SalI処理ではPmプロモーター-kfoABCFG含有フラグメントが生成する。これらのフラグメントを、最初にSbfI-XhoIまたはAscI-XhoIで消化したpKM008中にクローニングすることで、それぞれプラスミドpKM010(kfoABCFG:Pm-)およびpKM011(kfoABCFG:Pm+)を作製した。プラスミドpKM010(SEQ ID NO:145)およびpKM011(SEQ ID NO:146)を使って、K4領域3遺伝子(kpsF、kpsE、kpsD、kpsU、kpsCおよびkpsC)および領域1遺伝子(kpsMおよびkpsT)も組み込んださらなる置換ベクターを構築した。pKM010およびpKM011をSbfI-AvrIIで消化し、これらの線状化したベクターを、pDD67のSbfI-AvrII消化によって生成したkpsFEDUCSMT含有フラグメントとライゲーションした。その結果得られたプラスミドをpKM012(Pm-)およびpKM013(Pm+)と名付けた。プラスミドpKM010(SEQ ID NO:145)およびpKM012(SEQ ID NO:147)の派生を図10Cに図示する。プラスミドpKM011(SEQ ID NO:146)およびpKM013(SEQ ID NO:148)の派生を図10Dに図示する。
pKM008〜pKM013コンストラクトの全てにクローニングされているキサンタンガム遺伝子クラスターの上流領域はgum遺伝子クラスタープロモーターを包含すると報告されている(Federico et al.,J.Bact. 1996; 178:4313-4318)。したがって、染色体中に組み換えられたpKM010またはpKM012由来の配列を含有するキサントモナス・カンペストリス株は、K4遺伝子を内因性gumプロモーターから転写すると予期される。対照的に、pKM011およびpKM013は、gumプロモーターとPmプロモーターの間に位置するターミネーター配列(pDD67由来)を有する。したがって、pKM011またはpKM013配列を含有する組換えキサントモナス・カンペストリスにおけるK4遺伝子の発現は、Pm/XylS系によって調節されると予期される。
これらの置換プラスミドのそれぞれについて、「ポップイン/ポップアウト」法(上に詳述したもの)を使って、キサントモナス・カンペストリスMSC255株の染色体の(欠失される)gum遺伝子座中に各K4遺伝子クラスターを組み換えた。プラスミドをエレクトロポレーションによってMSC255中に導入し、テトラサイクリン耐性で選択した。中間体株および最終株を下記の表10Aに示す。「ポップイン」がgum遺伝子座で起こっている組換え体をPCRによって同定した。抗生物質選択の非存在下で培養することによって組み込み体の解消を起こらせてから、テトラサイクリン感受性(「ポップアウト」)派生株を同定した。次にPCRを使って、各K4遺伝子クラスターが所望の向きでgum遺伝子座にうまく組み込まれている「ポップアウト」派生株を同定した。次に、プラスミドpDD63(xylS誘導物質遺伝子を保有している)を、PmプロモーターがK4遺伝子セットを駆動している組換え体に形質転換した。4つの重要なキサントモナス染色体挿入株(プラスミドがコードするK4遺伝子を含有しないもの)MSC480、MSC469、MSC461、およびMAC494の遺伝子構造を、表10Aに要約する。
組換えキサントモナス・カンペストリスの振とうフラスコにおけるコンドロイチン生産
別段の表示がない限り、コンドロイチン生産を評価するための振とうフラスコにおけるキサントモナス・カンペストリス株の成育は、YMG培地(5g/Lプロテオースペプトン、3g/L酵母エキス、3g/L麦芽エキス、10g/Lグルコース)中で行った。培養物は、常法により、必要な選択用抗生物質(例えば2〜5μg/mLテトラサイクリン、10μg/mLカナマイシン)を含む250mL成長フラスコ中の50mL培地において、200〜225rpm、30℃で、48時間成長させた。Pmが駆動する遺伝子セットを誘導するために、培養密度がおよそOD600=0.5に到達したときに、2mM m-TAを加えた。
染色体外K4生合成遺伝子を持つ株。さまざまなプラスミドで形質転換されたキサントモナス・カンペストリスMSC255株(ΔgumB-gumM)におけるコンドロイチン生産を、上述のように培養しアッセイすることによって決定した。結果を表10Bに示す。
空ベクターを含有する対照株MSC397は検出可能なコンドロイチンを作らなかった。領域1、2、および3遺伝子を含有する株MSC348およびMSC350は、これらの条件下で約40μg/mLのコンドロイチンを生産した。領域2遺伝子だけを含有する株MSC326は、約100μg/mLのコンドロイチンを生産した。
別の実験では、kfoABCFG遺伝子を含有する株MSC326(MSC255 pCX039)におけるコンドロイチン生産が、48時間後に166μg/mLであり、対照株MSC397(MSC255 pDD63-ベクター対照)は検出可能なコンドロイチンを生産しなかった。MSC326培養物の非オートクレーブ処理試料からの画分では、無細胞上清画分と細胞ペレット画分がそれぞれ100μg/mLおよび71μg/mLのコンドロイチンを含有していた。これらの結果は、K4領域2遺伝子(フルクトシル化を指示するものを除く)がキサントモナス・カンペストリスにおけるコンドロイチン生産にとって十分であることを示しており、さらに、そのコンドロイチンが、まだ特徴づけられていない何らかの内因性機序によって、または細胞の破壊もしくは溶解によって、細胞から搬出されていることを示唆している。
染色体にコードされたK4生合成遺伝子を持つ株。上述の染色体外プラスミドは、抗生物質耐性の喪失によって明示されるとおり、さまざまな頻度で、培養中の細菌細胞から失われる。キサントモナス・カンペストリス染色体へのK4生合成遺伝子の組込みは、そのような不安定性を最小限に抑えると共に、これらの株の大規模培養を容易にするはずである。染色体に組み込まれたK4遺伝子を持つ4つの株(上記参照)におけるコンドロイチン生産を下記の表10Cに示す。株を、修飾YMG培地(YMGM(5):80mM MOPS(pH7.0)で緩衝化したYMG、5g/Lグルコース)またはTB培地中で48時間成長させた。pDD63を持つ株の場合はテトラサイクリンが5μg/mLの濃度で存在する。コンドロイチンは両方の培地において両方のプロモーターから生産された。重要なことに、コンドロイチンは領域2遺伝子が存在する場合にのみ生産される。表10C参照。
別の実験では、選ばれた株をさまざまなグルコースレベルを持つYMGM培地で成長させた。コンドロイチンは、生合成遺伝子のセットを保有する株では、全てのグルコース濃度において生産された(が、そのような遺伝子を欠く対照株では生産されなかった)。これらの条件下で最も高い生産は、Pm/xylS誘導の制御下にある領域2遺伝子だけを含有するMSC469株における390μg/mLだった。MSC469のYMGM+10g/Lグルコース培養物の非オートクレーブ処理無細胞上清および細胞ペレットのアッセイでは、それぞれ167μg/mLおよび150μg/mLのコンドロイチンが見いだされた。先と同様に、これらの結果はコンドロイチンが細胞から搬出されていることを示唆している。図10D参照。
実施例14:この実施例ではフルクトシル化コンドロイチンおよびフルクトシル化されないコンドロイチンをアッセイするための方法を説明する。
細菌からのコンドロイチンの調製
アニオン交換体DEAE-セルロースDE52カラムを使って組換えコンドロイチン(rCH)を捕捉した。5体積の100mM NaClで洗浄した後、カラムを5体積の300mM NaClで溶出させた。溶出液を濃縮し、10体積の蒸留水に対して透析した。透析された溶液を凍結乾燥した。その凍結乾燥粉末をrCHとして使用した。
フルクトシル化コンドロイチン莢膜多糖(K4P)を、U1-41株(大腸菌(Escherichia coli)O5:K4:H4)の培養物から、Manzoni,M. らの方法(Biotechnology Letters 1996; 18:383-386)に従って精製した。K4Pからの脱フルクトシル化K4P(DFK4P)の調製は、Lidholt,K.らの方法(J. Biol .Chem. 1997;272:2682)に従って行った。
試料調製およびHPLCによるコンドロイチンアッセイ
フラスコ培養試料(典型的には5mL)を121℃、>15psiで、5分間オートクレーブ処理し、冷ました。次に、オートクレーブ中の喪失を補うために、必要に応じて、試料を水で元の体積に再調節した。試料(1.5〜5mL)を遠心分離(典型的には、低細胞密度フラスコ培養の場合は3500gで10分、発酵または高密度培養の場合は12000gで5分)することで、上清画分とペレット画分を得た。場合によっては、表示のとおり、事前のオートクレーブ処理なしで、試料を遠心分離した。培養試料または分離した上清およびペレットは、通常、アッセイするまで-20℃で保存した。
細胞会合型コンドロイチンを分析するために、細胞ペレットを元の体積の50mMリン酸ナトリウム緩衝液pH7.2に再懸濁し、5〜10mg/mLリゾチーム(Sigma L-7651)および60U/mLデオキシリボヌクレアーゼI(Sigma D-4527)を使って37℃で2時間加水分解した後、200μg/mLプロテイナーゼK(Promega V3021)を使って37℃で1時間加水分解した。反応を停止(90℃、5分)してから、溶液を遠心分離することで細胞片を除去した。
フルクトシル化コンドロイチン莢膜多糖(K4P)を分析するために、試料(フラスコ/発酵ブロス上清または清澄化した加水分解済み細胞ペレット)をまず、温和な酸加水分解によって脱フルクトシル化した(すなわち、HClでpH1.5に調節し、80℃で30分間インキュベートした後、0.5M炭酸ナトリウムで中和した)。凍結乾燥に先だって、DFK4P試料および非フルクトシル化rCH試料(発酵ブロス上清、加水分解した細胞ペレット、または再構成した沈殿物)を、脱イオン水に対して一晩透析するか(Pierce Biotechnology Slide-A-Lyzer(登録商標)、分子量カットオフ7kD)、または脱イオン水で溶出させる遠心限外濾過(Amicon Ultra-0.5 Centrifugal Filter Device、10kD名目分子量カットオフ)によって部分精製した。
フルクトシル化されていないコンドロイチンは、コンドロイチナーゼABC(Seikagaku Biobusiness, Japan)と名付けられたコンドロイチン分解酵素により、不飽和非硫酸化二糖2-アセトアミド-2-デオキシ-3-O-(β-D-グルコ-4-エンピラノシルウロン酸)-D-ガラクトース(Δdi-0S)へと、完全に加水分解されうる。したがって、フルクトシル化されていない試料溶液中のコンドロイチンの量は、多糖から酵素的に生成したこの二糖をHPLCシステムを使って定量することによって決定することができる。
凍結乾燥後の残渣をTHB(50mM酢酸ナトリウムを含む50mMトリス-HCl緩衝液pH8.0)に溶解し、コンドロイチナーゼABC(2単位/mL、37℃で3時間)で加水分解した。90℃で5分間の加熱によって酵素反応を停止させた後、不溶性沈降物を除去するために、混合物を10000rpmで5分間遠心分離した。酵素および非コンドロイチン多糖を除去するためにMicrocon遠心分離フィルター(Ultracel YM-10;Millipore)を使って上清を濾過した。その結果得られた不飽和二糖(2-アセトアミド-2-デオキシ-3-O-(β-D-グルコ-4-エンピラノシルウロン酸)-D-ガラクトース;Δdi-0S)を、逆相イオン対HPLC(Senshu Pak Docosil、4.6×150mm;粒径5μm)で分離し、2-シアノアセトアミドでポストカラムラベルして蛍光で検出し(Toyoda,H., et al., J. Biol .Chem. ,2000;275:2269)、市販されているコンドロイチン(生化学バイオビジネス、日本)またはrCHから調製した外部標準に対して定量した。二糖に関する典型的な検量線を図11Bに示す。二糖に関する検量線は2〜200μg/mLの範囲で線形であり、二糖の検出限界は1μg/mLだった。コンドロイチン多糖の濃度は、次式を使って算出することができる:
濃度;μg/mL=[A]/[S]×[D]
式中、[A]は試料クロマトグラムにおけるΔdi-0Sのピーク面積を表し、[S]はΔdi-0S濃度に関する検量線の傾きを表し、[D]は希釈係数を表す。
フルクトシル化コンドロイチンを定量するためのELISA法
K4Pのカルボキシル基を介したビオチン化カップリングを、Osmond,R.I.W.らの方法(Analytical Biochemistry 2002; 310:199-207)に従って行った。100μlのビオチン化K4P(1μg/ml)を、ストレプトアビジンコート96ウェルマイクロタイタープレート(Thermo Scientific、日本)に、室温で30分間コンジュゲートした。0.05%TWEEN(登録商標)20および0.05%Proclinを補足した50mMトリス-HCl緩衝食塩水(NaCl 100mM)(pH7.5)を使ってプレートを洗浄した後、50μlの培養上清または標準K4P溶液と、希釈率2.5×106の抗K4P血清(Statens Serum Institut、デンマーク)50μlとを、ウェルに加え、60分間インキュベートした。ウェルを再び洗浄した後、HRP標識抗ウサギ免疫グロブリン(P0448、ダコジャパン、日本)を2000倍の希釈度で加え、60分間インキュベートした。ウェルを再び洗浄した後、H2O2を含有するTMB溶液(TMBW-1000-01、BioFX Laboratories Inc.、メリーランド州オウイングズ・ミルズ)を基質として加え、室温で30分間インキュベートした。50mlのStop Reagent(STRP-1000-01、BioFX Laboratories Inc.、メリーランド州オウイングズ・ミルズ)を加え、450nmにおける吸光度を測定した。これらのアッセイ条件下で、フルクトシル化されないコンドロイチン、ヘパロサンおよびDFK4Pなどの他の多糖は、K4Pと競合しない。典型的な標準曲線を図11Aに示す。
rCH、K4PおよびDFK4PのSEC-HPLC分析
屈折率検出器ならびにTSKゲルPWXL-4000、PWXL-3000、およびPWXL-2500(東ソー、日本)のタンデムカラムを装備したTOSOH HLC-8220GPCシステムを0.2M NaClによる0.6mL/分の一定流速で使用するSEC-HPLCでの分析により、多糖の重量平均分子量(「Mw」)およびコンドロイチナーゼ消化性を決定した。50μLの多糖溶液を1mg/mLの濃度でカラムに注入した。カラムおよび検出器区画は40℃に維持した。Mw既知のコンドロイチン硫酸(Mw:52.2、31.4、20.0、10.0、6.6、および1.0kDa)を分子量標準として使用した。
コンドロイチナーゼABC消化の前および後のrCH(フルクトシル化されていないもの)の典型的な溶出プロファイルを表12に示す。算出されたrCHの重量平均分子量は120kDaだった。
K4PおよびDFK4Pのコンドロイチナーゼ消化性の決定は次のように行った。K4PおよびDFK4Pを50mM THB(50mM酢酸ナトリウムを含むトリス-HCl pH8.0)に溶解することで最終濃度を1mg/mLにし、それを等しい部分試料に分割した。その溶液の部分試料1つを、上述のSEC-HPLCで直接分析した。別の部分試料を、コンドロイチナーゼABC(最終濃度;2単位/mL)により37℃で3時間プロセシングした後に、同じシステムで分析した。結果を図13に示す。大腸菌K4 U1-41の培養物から調製されたK4PおよびDFK4Pの分子量値は、それぞれ33kDaおよび28kDaだった。DFK4Pがコンドロイチナーゼ処理によって二糖Δdi-0Sへと完全に消化されたのに対し、K4Pはこの酵素で部分的に消化された(図13)。これらの結果から、K4Pは、上述の脱フルクトシル化プロセスにより、K4Pのコンドロイチン骨格構造に影響を及ぼすことなく、脱フルクトシル化型に転化されることが示された。したがって、試料中のK4Pの量も、試料を酵素消化前に脱フルクトシル化プロセスでプロセシングした場合には、コンドロイチナーゼ/HPLC法を使って、多糖から酵素的に生成した二糖を定量することによって決定することができる。
実施例15:この実施例ではコンドロイチンの硫酸化を例証する。
実施例14で調製したコンドロイチンを、部分的解重合に付して、分子量がおよそ30kDaのコンドロイチンを得た。30mgのこのコンドロイチンを0.6mLの乾燥ホルムアミド(FA)に60℃で撹拌しながら可溶化した。溶液が完全に均一になったら、固形の三酸化硫黄-TEA錯体(コンドロイチン二糖単位の5当量)を加え、撹拌を120分間続けた。3倍体積の1M酢酸ナトリウム溶液を加えることによって硫酸化反応を停止し、室温でさらに30分間、静置した。その溶液を蒸留水に対して3日間透析し、NaOHで中和し、凍結乾燥して白色粉末(32mg、107%)を得た。組換えコンドロイチン硫酸のさらなる分析により、29kDaの分子量と5.2%の硫黄分が実証された。
別の実験では、上述のコンドロイチン(50mg)を1.0mLの乾燥ホルムアミド(FA)に周囲温度で可溶化した。その溶液が透明になったら、クロロスルホン酸(CH二糖単位の5当量)をゆっくり加え、継続的撹拌を20分間維持した。3倍体積の1M酢酸ナトリウム溶液を加えることによって硫酸化反応を停止し、室温でさらに10分間、静置した。その溶液を蒸留水に対して3日間透析し、NaOHで中和し、凍結乾燥して、白色粉末(47mg、94%)を得た。組換えコンドロイチン硫酸の分析により、33kDaのMw、5.2%の硫黄分が示された。
実施例16:この実施例では、大腸菌MSC562株におけるコンドロイチン生産を最大限強化するには、コンドロイチン生合成領域2遺伝子セット(kfoABCFG)で十分であることを例証する。
領域1、2、および3(R1、R2、およびR3)遺伝子セットの組合せを含有する一組のプラスミドを、pBR1052(図8K)およびpDD67(図8J)から調製した。上述のように、遺伝子のセットが、特定の制限酵素による出発プラスミドの消化;例えばT4ポリメラーゼによる平滑端の生成;およびその結果生じたベクターフラグメントのライゲーションによって削除された。大腸菌MSC188株(実施例3)を、そのライゲーション反応で形質転換し、選ばれた抗生物質耐性形質転換体を、所望の特徴について評価した。pBR1052が領域1遺伝子セットの前に第2のPmプロモーターを含有しているという事実ゆえに、ここで述べるプラスミドの一部も、第2のPmプロモーターを含有している。これら記載のプラスミドは全て、xylSも含有している。下記の表11において、R1=kpsFEDUCS、R2=kfoABCFG、およびR3=kpsMTである。「Pm:R2」プラスミドは先に構築されたことに注意されたい(pCX039;実施例4)。プラスミドpCX096(SEQ ID NO:149)、pCX097、pCX100、pCX101(SEQ ID NO:150)、およびpCX102のDNAマップを、それぞれ図14A、14B、14C、14D、および14Eに示す。プラスミドpCX097およびpCX101を、それぞれpCX100およびpCX102のための出発プラスミドとして使用した。
最終プラスミドのそれぞれを宿主株MSC562に形質転換したところ、下記の表12に記載する株が得られた。これらの株と既存の対照株とを、2×M9/tet5培地を使って、振とうフラスコ中で成長させ、およそ0.1〜0.12のOD600値を1mMメタトルイル酸で誘導し、72時間後に、成長(OD600)およびrCH生産について評価した。
最も高い生産性は、領域2だけを保有するプラスミドを持つ株(MSC564)または領域2と領域1の組合せを保有するプラスミドを持つ株(MSC683)に見られた。領域2と領域3の組合せ(MSC688)は、それより低い生産性をもたらした。実際、プラスミドが媒介する領域3の存在は、他の関連株比較(例えばMSC683とMSC690)でも同様に阻害的であるようだった。これらの知見は、MSC562において領域2コピー数だけを増加させることによってrCH生産性を増加させるというアプローチを裏付けている。
実施例17:この実施例では、コンドロイチン生合成遺伝子領域2の正のコピー数効果が、kfoABCDG遺伝子の5つ全てを必要とすることを例証する。
プラスミドpCX039(図8Q;領域2遺伝子kfoABCFGを含有する)は、それが宿主大腸菌株MSC562中に存在する場合には(空ベクターpDD63を含有するMSC562と比較して)、rCH生産の大きな(8〜10倍の)増加をもたらした。pCX039によるrCH生産の刺激に対する個々の領域2遺伝子の役割を実証するために、pDD66およびpDD67からの遺伝子の欠失に関して上述した方法(実施例4参照)を使って、pCX039から2セットのプラスミドを誘導した。
5つのプラスミドからなる1セットは、領域2遺伝子の1つの除去の効果を評価するために設計した。MSC562などの大腸菌宿主では、これらの遺伝子の1コピーが、依然として(染色体中に組み込まれて)存在するだろう。このプラスミドのセットには、kfoABCFGのそれぞれを個別に欠失させたpCX039誘導体が含まれた。下記表13にkfo遺伝子を欠失させるために使用した制限酵素とその結果得られたプラスミドの名前を列挙する。上記実施例4はpCX044の派生を詳細に説明している。全てのプラスミドがxylSを含有する。
これらのプラスミドを宿主株MSC562(領域1、2および3+xylSの染色体コピー)に形質転換することで、下記表14に示す株を作製した。培養物を2×M9培地(10g/Lグリセロールおよび2μg/mL Tetを含むもの)中、30℃で成長させ、およそ0.1のOD600値において、1mM mTAで誘導し、72時間の成長後に、rCH生産についてアッセイした。
これらの結果は、これらの条件下で最大の生産性を達成するには、5つの領域2遺伝子(kfoABCFG)の全てが必要であることを示している。MSC563の結果は、染色体挿入からのkfoABCFG遺伝子の発現が、プラスミド媒介遺伝子コピーが存在しない状況での有意なrCH生産を支えるのに十分であることも示している。
pCX039誘導体の別のセットは、個々のプラスミド媒介領域2遺伝子の存在が、宿主株MSC562におけるrCH力価の強化に及ぼす効果をを評価するために設計された。結果として得られるプラスミド間で比較しうる発現レベルを維持する手段として、プロモーターに最も近いkfoA遺伝子は全てのコンストラクトにおいて保持された。この設計戦略ではプラスミドがコードするkfoB、C、FまたはG遺伝子を完全に分離して評価することはできないが、これらのプラスミドの全てにおけるkfoA遺伝子の保持と、その結果生じるPmプロモーターと第1読み枠との間の固定された関係は、Pmプロモーターからの発現レベルを比較しうるものにすると予期される。上記と同じ戦略を使って、以下の派生(表15)を行った。全てのプラスミドがxylSを含有する。
最終的なプラスミドセットのそれぞれを宿主株MSC562に形質転換することで、下記表16に記載する株を得た。これらの株とMSC563およびMSC564対照を、振とうフラスコにおいて、2×M9/tet2培地で成長させ、0.08〜0.18のOD600値において、1mMメタトルイル酸で誘導し、68時間後に、成長(OD600)およびrCH生産について評価した。
これらのデータは、K4領域2遺伝子(kfoABCFG)はいずれも個別には、MSC562宿主株におけるrCH生産を最大限に刺激するのに十分でないことを実証している。上述の知見(例えば実施例16)と合わせて考えれば、領域2遺伝子セットの5つの遺伝子全てを含めることが、rCH生産の最大限の強化をもたらすことは明らかである。
実施例18:この実施例では、コンドロイチン生産を増加させるためにコンドロイチン生合成遺伝子領域2の染色体コピー数を増加させるためのコンストラクトを例証する。
実施例12は、領域1、2、および3の染色体コピーを既に1つ含有している大腸菌宿主における領域2遺伝子セット(kfoABCFG)の1染色体コピーの追加が、rCH生産の有意な20〜30%の増加につながることを実証している。実施例11は、領域2遺伝子セットを保有するマルチコピープラスミドを含有する類似の宿主が、rCH生産の2〜300%の増加につながることを実証している。高生産性プラスミド非含有株を作製することを目指して、この実施例では、(Pmプロモーターによって駆動され)領域2を補完する染色体コピーを増加させるために設計されたプラスミドの構築および使用を説明する(この増加は、それらのプラスミドをさまざまな非必須染色体遺伝子に挿入することによって達成され、それらの非必須染色体遺伝子は、そのような挿入の同定が容易になるように、特に選択されたものである)。留意すべき点は、相同性駆動的「ポップイン/ポップアウト」法(実施例4および12参照)を使って宿主大腸菌染色体の異なる遺伝子座に領域2遺伝子セットのコピーを次々と挿入する際には、所望の遺伝子座ではなく既存の領域2インサートへの望ましくないターゲティング(相同性駆動的組換え)との競合が増加することである。したがって、労力と時間を要するPCRによるのではなく簡単なコロニースクリーニングによって所望の遺伝子座にインサートを含有する株を最初に同定する手段を持つことは、宿主株中の領域2のコピーの数が増えるにつれて、ますます有益になる。
この実施例では3つの大腸菌ターゲット遺伝子座を記載する。これらは遺伝子lacZ、mtlA、およびfruBKAオペロン(場合によっては単に「fruA」ともいう)であり、これらはそれぞれ、糖類ラクトース、マンニトール、およびフルクトースでの成長には必要であるが、グルコースまたはグリセリンなどの他の炭素源での成長には必要でない。これらの遺伝子が破壊された株のコロニーは、マッコンキー寒天(Miller,JH,Experiments in Molecular Genetics,1972)などの指示薬寒天上で、コロニー色の相違(組み込んだ糖を資化することができる株はピンク色/赤色、遺伝子破壊(例えば挿入)を持つ株は白色/明るいピンク色)により、視覚的に同定することができる。あるいは、LB/Xgal/IPTG寒天培地(同上書)を使って、ラクトース代謝の欠陥を検出することもできる(ラクトースを資化することができる株は青色コロニー、ラクトースを資化することができない株(lacZ遺伝子への挿入を持つ株など)は白色/淡黄褐色コロニー)。色の相違を利用するこれらのような方法は、どこか他の場所に挿入を持つコロニーの集団の中で、所望の遺伝子座への挿入を有する可能性がある株を視覚的に同定することを可能にする。所望の挿入事象をスクリーニングまたは選択することが可能なターゲット遺伝子座が他にも大腸菌中に存在することは、当業者には理解されるであろう。非限定的な例には、pepP、pepQ、feuA(cirA)、malB(lamB)、nupA(tsx)などがある。
プラスミドpMAK705を使ったfruBKA、lacZ、およびmtlA遺伝子への領域2(「R2」)の挿入が容易になるように、まず最初に、マルチクローニング部位を含有するpMAK705の誘導体を開発した。プライマーDHD266cおよびDHD267cは、多重制限(クローニング)部位(NotI、XhoI、AscI、SalI、BglII、HindIII)の片方である一本鎖を含有し、(アニールしたときに)AseIおよびClaIによるpMAK705の消化によって生成する突出部と適合する2塩基一本鎖端を除けば相補的である。これらの適合端のライゲーション時に、AseI制限部位とClaI制限部位は、どちらも再生しない。
プラスミドpMAK705をAseIおよびClaIで消化し、ベクターフラグメントをゲル精製した。リン酸化オリゴヌクレオチドDHD266cおよびDHD267cをアニール(200nMの各オリゴヌクレオチド、90℃で5分間、50℃に30分間徐冷)した後、pMAK705ベクターフラグメントにライゲーションした。ライゲーション反応を大腸菌NEB10βに形質転換し、クロラムフェニコール耐性で選択した。分離された形質転換体中のプラスミドを、PCRによってスクリーニングし、次にMCS制限酵素部位の存在についてスクリーニングした。MCS領域の配列決定により、所望の構造を持つプラスミドが同定された。このプラスミドをpMAK705pl(SEQ ID NO:157;図14Q)と命名した。
fruBKA、lacZ、およびmtlA遺伝子座にR2を挿入するための3つのベクターの構築は、いずれも、同じ2段階アプローチをとった。第1段階では、各ターゲット遺伝子座について、PCR産物の「内側」端間でのアニーリングを可能にするPCRプライマーを使って、上流および下流相同領域を作製した。この相同領域は、複数の制限部位(後にR2の付加に使用したもの)を包含する。第2段階では、各遺伝子座の上流および下流PCR産物を、個々のテンプレート部材を合成するために最初に使用した2つの「外側」プライマーと共に、PCR反応において混合する。上流および下流PCR産物(ここでは第2段階におけるテンプレート)中に設計された末端相同性ゆえに、第2段階反応の結果は、マルチクローニング部位に隣接する適当な向きの上流および下流領域を含むDNAフラグメントである。第2段階からのPCR産物を、「外側」プライマー中にその認識配列を設計した酵素(上流端についてはNotI、下流端についてはHindIII)で消化した。次に、これらのフラグメントを、NotIおよびHindIIIで消化したpMAK705pl(SEQ ID NO:157)中に、個別にクローニングした。その結果得られた3つのプラスミドは、およそ900〜1000bpの、R2コピーを受容するために使用されるマルチクローニング部位(MCS)に隣接する、適正な向きの上流(UP)および下流(DN)領域を含有した。pBR1093の場合は、MCSがlacZコード領域の約20bpを置換した。pBR1094の場合は、MCSがmtlAコード領域に挿入された。pBR1095の場合は、MCSがfruBの3'端、fruKの全ておよびfruAの5'端を置換した。これらの中間コンストラクトを調製するために使用したプライマーを下記表25に列挙する。
pBR1093、pBR1094、およびpBR1095中にクローニングするための領域2遺伝子セットを調製するために、kfoABCFG遺伝子を、PacI+ClaIを使ってpCX074(実施例11参照)から(Pmプロモーターを伴わずに)切り出した。次に、精製したR2フラグメントを、同じ酵素で消化したpJ201:11352(図8B参照)中にクローニングした。これにより、kfoABCFG遺伝子が再びPmプロモーターの後に配置されているプラスミドpBR1096が得られた。ただし、ここでは、pBR1093(図14S)、pBR1094(図14V)、およびpBR1095(図14W)中にクローニングするために、Pm:R2を、pBR1096からXhoI/AscIフラグメントとして単離することができるようになった。表17に、最終的な置換pMAK705系Pm:R2挿入プラスミドpBR1100(lacA遺伝子座用)、pBR1101(mtlA遺伝子座用)、およびpBR1102(fruBKA遺伝子座用)の呼称を記載する。プライマーDHD280c、DHD281c、DHD283、DHD285、DHD268c、DHD269c、DHD271、DHD273、DHD274c、DHD275c、DHD277、およびDHD279の配列をそれぞれSEQ ID NO:158〜169に示す。
選ばれた大腸菌株に追加のPm:R2コピーを付与するために、前述の「ポップイン/ポップアウト」法を、プラスミドpBR1100(SEQ ID NO:171;図14T)、pBR1101(SEQ ID NO:172;図14V)およびpBR1102(SEQ ID NO:170;図14X)で使用した。株を、30℃においてpBR1100、pBR1101、またはpBR1102で形質転換し、クロラムフェニコール耐性で選択した。次に形質転換体を43℃でマッコンキー/フルクトース/Cm寒天(pBR1102形質転換体用)、マッコンキー/マンニトール/Cm寒天(pBR1101形質転換体用)、またはLB/Xgal/IPTG/Cm寒天(pBR1100形質転換体用)にプレーティングした。目立って色の薄いコロニーをさらなる分析のために選んだ。これらのなかから、ターゲット遺伝子座中に組み込まれたプラスミドを持つ株をPCRによって同定した。次に、プラスミドがうまく組み込まれている株を複数(例えば20〜30)世代にわたってクロラムフェニコール選択の非存在下で成長させた。これらの培養物から派生したコロニーを、クロラムフェニコール感受性(プラスミドの切り出しを反映している)および糖代謝の欠陥(標的Pm:R2挿入の保持を反映している)についてスクリーニングした。所望の表現型を持つ分離株を、PCRにより、正しい染色体構造について評価した。図15に、この実施例および他の実施例において述べた方法を利用する株の派生における複数の段階を図示する。一例として、要約すると、MSC702株は、以下の重要な要素を含有している:コラン酸遺伝子座に挿入されたPm[kpsMTkfoABCFG]Pm[kpsFEDUCS]、fhuA遺伝子座に挿入されたPsyn[xylS]、fruBKA、lacZおよびmtlA遺伝子座に挿入されたPm[kfoABCFG]、ならびに(これがMSC691から派生したことによると思われる;実施例19参照)leuB遺伝子内の8塩基対変化。
実施例19:この実施例では大腸菌株における自然発生的栄養要求性の同定と矯正を例証する。
最少成長培地におけるrCH生産に関して組換え大腸菌株を評価する過程において、一定の株は成長しないことが発見された。その後、MSC561株は、ロイシンの供給源で補正した場合にのみ、最少培地で成長すること、すなわちこの株はロイシン要求体であることが決定された。MSC561中のロイシン生合成オペロンleuABCDを配列決定したところ、この株は、ロイシン原栄養体MSC467から派生した際に(実施例10参照)、leuB遺伝子コード領域における1塩基対欠失(コード領域の位置383におけるC/G塩基対)を自然に獲得していたことが明らかになった。この欠失は、読み枠のシフトと中途での翻訳終結をもたらす。この欠陥は、遺伝子操作と初期の生産試験が複合培地で行われたために、最初は検出されなかった。この突然変異がfhuAおよびコラン酸遺伝子座における先の標的組換えの結果であった可能性は極めて低い。なぜなら、それらはleuBとは密接には連鎖していないからである(fhuAとleuBは約85Kb離れており、コラン酸オペロンとleuBは約2Mb離れている)。R2コピーの付加によってMSC561から直接的または間接的に派生した株(MSC627、MSC650、MSC646、MSC679、およびMSC700;図15参照)も、全て、ロイシン栄養要求体であり、leuB配列中に同じ欠失を含有していた。別個のMSC467系統の株(MSC537、MSC562、およびMSC619)はロイシン原栄養体である(図15参照)。
ロイシン要求体を原栄養体に転化する(それゆえに添加されたロイシンを含まない最少培地における成長を可能にする)ために、2つのアプローチを使用した。一方のアプローチでは、栄養要求株の多数(約106〜107個)の細胞を、最少培地寒天プレートに適用した後、30℃で3〜7日間インキュベートした。典型的には数個のコロニーがこれらの条件下で発生する。これらのコロニーから分離された株(「自然復帰変異体)」はロイシンを含まない固形または液状最少培地で再現性良く成長した。選ばれた復帰変異体のleuB遺伝子の配列分析によって、(ほとんどの場合)元の一塩基対欠失の部位近くに、正しいleuB読み枠の回復をもたらす小さな挿入または欠失が明らかになった。下記表18に、ヌクレオチド変化の位置をleuBコード領域に対する座標で記載する。これらの自然復帰変異体ではLeuB酵素がこの領域において改変されたアミノ酸配列を持つが、ネイティブ構造からの変化は、ロイシン非含有培地における成長を支持するのに十分な機能を許容するものであると思われる。自然復帰変異体MSC692では、leuB中に補償的ヌクレオチド変化が検出されなかった。この株における遺伝子変化の性質は特徴づけられていない。
ロイシン要求体を原栄養体に転化するための別のアプローチでは、選ばれた株のleuBにおける自然変異を、特異的にネイティブ配列へと矯正する。PCRプライマーBLR513(SEQ ID NO:173)およびBLR516(SEQ ID NO:174)を使用し、野生型大腸菌W3110からのgDNAをテンプレートとして、ネイティブleuB遺伝子の646塩基対を増幅した。MSC561において欠失していることが見いだされた塩基対の部位は、このPCRフラグメントの上流端から288bpであり、PCRプライマーは、pBR1103(SEQ ID NO:175;図14R)をもたらすpMAK705pl(実施例18;SEQ ID NO:157;図14Q)へのクローニングのためのHindIIIおよびXhoIを生成する。pBR1103中のleuB遺伝子フラグメントは、SEQ ID NO:175のbp=5059〜5064にあるHindIII制限部位から、SEQ ID NO:175のbp=5712〜5717にあるXhoI制限部位まで続いている。これらの制限部位は天然leuB配列の一部ではなく、プライマーBLR513およびBLR516を使ったPCRにより、クローニングのために導入されたものである。
次に、標準的「ポップイン/ポップアウト」法を使って、栄養要求株MSC650、MSC679、およびMSC700において、欠陥leuB領域をネイティブ領域で置き換えることにより、それぞれ原栄養株MSC722、MSC723、およびMSC724を得た。簡単に述べると、pBR1103によるMSC650、MSC679、およびMSC700の最初の形質転換体を、LB/Cm34プレート上、30℃で選択した。選ばれた形質転換体を43℃のLB/Cm34で平板培養し、分離された生存株がleuB遺伝子座に組み込まれたpBR1103を持つことを、PCRによって確認した。選ばれた組み込み体を30℃のLB(Cmなし)で約10世代にわたって成長させた後、2×M9培地(Cmなし、ロイシンなし)で約15世代にわたって成長させた。これらの培養物から分離されたLBプレート上のコロニーに由来する株を、クロラムフェニコール感受性および原栄養性についてスクリーニングした。3つの初期親株のそれぞれに由来する原栄養クロラムフェニコール感受性株におけるleuB遺伝子のDNA配列決定によって、元の野生型配列が修復されていることが確認された。図15に、本明細書において記載した他の株について、これらの株の導派生を示す。
(表18)
*leuB領域には、leuB開始コドン(すなわちleuAの3'端)の約200bp上流からleuB停止コドンの約200bp上流まで(すなわち、leuBコード領域の合計1089塩基対のうちのleuB座標1からおよそ850まで)、補償的変化は何も検出されなかった。
MSC722、MSC723、およびMSC724株(特異的に矯正されたLeu+原栄養体)におけるrCH生産を、同一のK4遺伝子補完および編成を持つが、原栄養性への自然な転化によって派生した株、それぞれMSC677、MSC692、およびMSC702(図15参照)における生産と比較した。これら6つの株を、二つ一組の2×M9フラスコにおいて30℃で成長させ、およそ0.1のOD600値において1mM mTAで誘導した。誘導の71時間後に培養ブロスの試料を、rCH含有量について、上述のようにアッセイした。平均OD600およびrCH濃度を表19に示す。
3対の株のうち2対では、leuBへの特異的矯正を持つ株の方がrCH生産が高いが、最終細胞密度(終末OD600によって測定されるもの)は同等だった。これらの結果は、rCH生産に関して、大腸菌株開発の過程で発見された自然変異を特異的に矯正することのrCH生産面からみた利点を実証している。
実施例20:この実施例では発酵槽中の大腸菌における組換えDNAによるコンドロイチンの生産を説明する。
1.大腸菌(MSC537)の10L発酵
典型的発酵条件下で10リットル発酵槽を使用し、グリセリンを炭素源として、大腸菌MSC537株の培養物を培養した。発酵槽は、脱イオン水を使って体積を6リットルにした下記の培地(表20A)で、回分処理した。
上記の培地が入っている発酵槽をオートクレーブ処理してから、下記の構成要素(表20B)を無菌的に加えた。
発酵槽に典型的シード培養物を接種し、4.25時間後に2mM m-TAで誘導し、次に69時間培養し、培養中に炭素供給物(625g/Lのグリセリン溶液からなるもの)を供給した。69時間後に、発酵槽をオートクレーブ処理し、遠心分離によって収集した。発酵制御条件および生成物収量をそれぞれ表20Cおよび表20Dに示す。
2.大腸菌(MSC564)の2L発酵
典型的発酵条件下で2リットル発酵槽を使用し、グリセリンを炭素源として、大腸菌MSC564株の培養物を培養した。発酵槽は、脱イオン水を使って体積を1.5リットルにした下記の培地(表21A)で、回分処理した。
上記の培地が入っている発酵槽をオートクレーブ処理してから、下記の構成要素(表21B)を無菌的に加えた。
発酵槽に典型的シード培養物を接種し、次に66時間培養し、培養中に170mLの炭素供給物(625g/Lのグリセリン溶液からなるもの)を供給した。5時間培養した後、これを2mM m-TAで誘導した。発酵を、pH、溶存酸素、温度、グリセリン濃度および酢酸濃度(炭素代謝の副産物)について制御した。グリセリン供給速度は、酢酸濃度に基づいて調節し、目標を<2g/L酢酸とした。目標グリセリン濃度は<5g/Lとした。発酵を66時間行った時点でグリセリン消費量が<1.5g/L/時間に低下した。試料採取と蒸発ゆえに、最終体積は1.35Lだった。制御条件および生成物収量を以下に列挙する。66時間後に、発酵槽をオートクレーブ処理し、遠心分離によって収集した。遠心分離後の回収体積はおよそ1リットルの上清だった。発酵制御条件および生成物収量をそれぞれ下記の表21Cおよび表21Dに示す。
次の3つの発酵(3〜5)は、3つの10Lリアクターを同じ条件下で並列に稼働して、異なる数および編成の領域2遺伝子セットを宿主染色体中に含有するMSC619、MSC677およびMSC702株(実施例19参照;図15)を比較した1回の実験から得たものである。簡単に述べると、MSC619およびMSC677はそれぞれ全部で3コピーの領域2を有するが、MSC619中の1コピーはPmプロモーターではなくPsynプロモーターによって駆動される。MSC702株は、全てPmによって駆動される4コピーの領域2遺伝子セットを有する。
3.大腸菌(MSC619)の10L発酵
典型的発酵条件下で10リットル発酵槽を使用し、グリセリン、カゼイン加水分解物および水酸化アンモニウムをそれぞれ主要炭素源および窒素源として、大腸菌MSC619株の培養物を培養した。発酵槽は、脱イオン水を使って体積を6リットルにした下記の培地(表22A)で、回分処理した。
上記の培地が入っている発酵槽をオートクレーブ処理してから、下記の構成要素(表22B)を無菌的に加えた。
発酵槽に典型的シード培養物を接種し、4.2時間後に2mM m-TAで誘導し、次に80時間培養し、炭素供給物(625g/Lのグリセリン溶液からなるもの)および4N水酸化アンモニウムの形態の窒素供給物を供給した。炭素供給物と窒素供給物は、NOVA 300A Bioanalyzerによりオフラインで計測された試料読み値に基づいて、手作業で調節した。グリセリンの濃度は、1g/L未満に維持することを目標とし、酢酸蓄積の存在下では供給速度をさらに低下させた。アンモニア濃度の目標は、ブロス中のアンモニア100mg/L未満とした。pHを制御するために、培養中は2N硫酸の形態の酸および4N水酸化ナトリウムの形態の塩基が、自動的に添加された。ブロスの発泡を抑制するために、消泡剤も発酵槽に自動的に供給された。発酵制御条件および生成物収量をそれぞれ下記の表22Cおよび表22Dに示す。
4.大腸菌(MSC677)の10L発酵
典型的発酵条件下で10リットル発酵槽を使用し、グリセリン、カゼイン加水分解物および水酸化アンモニウムをそれぞれ主要炭素源および窒素源として、大腸菌MSC677株の培養物を培養した。発酵槽は、脱イオン水を使って体積を6リットルにした下記の培地(表23A)で、回分処理した。
上記の培地が入っている発酵槽をオートクレーブ処理してから、下記の構成要素(表23B)を無菌的に加えた。
発酵槽に典型的シード培養物を接種し、4.2時間後に2mM m-TAで誘導し、次に80時間培養し、炭素供給物(625g/Lのグリセリン溶液からなるもの)および4N水酸化アンモニウムの形態の窒素供給物を供給した。炭素供給物と窒素供給物は、NOVA 300A Bioanalyzerによりオフラインで計測された試料読み値に基づいて、手作業で調節した。グリセリンの濃度は、1g/L未満に維持することを目標とし、酢酸蓄積の存在下では供給速度をさらに低下させた。アンモニア濃度の目標は、ブロス中のアンモニア100mg/L未満とした。pHを制御するために、培養中は2N硫酸の形態の酸および4N水酸化ナトリウムの形態の塩基が、自動的に添加された。ブロスの発泡を抑制するために、消泡剤も発酵槽に自動的に供給された。発酵制御条件および生成物収量をそれぞれ表23Cおよび表23Dに示す。
5.大腸菌(MSC702)の10L発酵
典型的発酵条件下で10リットル発酵槽を使用し、グリセリン、カゼイン加水分解物および水酸化アンモニウムをそれぞれ主要炭素源および窒素源として、大腸菌MSC702株の培養物を培養した。発酵槽は、脱イオン水を使って体積を6リットルにした下記の培地(表24A)で、回分処理した。
上記の培地が入っている発酵槽をオートクレーブ処理してから、下記の構成要素(表24B)を無菌的に加えた。
発酵槽に典型的シード培養物を接種し、4.2時間後に2mM m-TAで誘導し、次に80時間培養し、炭素供給物(625g/Lのグリセリン溶液からなるもの)および4N水酸化アンモニウムの形態の窒素供給物を供給した。炭素供給物と窒素供給物は、NOVA 300A Bioanalyzerによりオフラインで計測された試料読み値に基づいて、手作業で調節した。グリセリンの濃度は、1g/L未満に維持することを目標とし、酢酸蓄積の存在下では供給速度をさらに低下させた。アンモニア濃度の目標は、ブロス中のアンモニア100mg/L未満とした。pHを制御するために、培養中は2N硫酸の形態の酸および4N水酸化ナトリウムの形態の塩基が、自動的に添加された。ブロスの発泡を抑制するために、消泡剤も発酵槽に自動的に供給された。発酵制御条件および生成物収量をそれぞれ表24Cおよび表24Dに示す。
実験3〜5を要約すると、MSC619、MSC677、およびMSC702株は、それぞれ3.45、4.3および5.3g/Lのコンドロイチンを与えて、コンドロイチン生産性の強化における領域2の編成(前後関係)およびコピー数の効果を実証した。
6.大腸菌(MSC702)の10L発酵
典型的発酵条件下で10リットル発酵槽を使用し、グリセリン、カゼイン加水分解物および水酸化アンモニウムをそれぞれ主要炭素源および窒素源として、大腸菌MSC702株の培養物を培養した。発酵槽は、脱イオン水を使って体積を6リットルにした下記の培地(表25A)で、回分処理した。
上記の培地が入っている発酵槽をオートクレーブ処理してから、下記の構成要素(表25B)を無菌的に加えた。
発酵槽に典型的シード培養物を接種し、4時間後に2mM m-TAで誘導し、次に82時間培養し、炭素供給物(625g/Lのグリセリン溶液からなるもの)および4N水酸化アンモニウムの形態の窒素供給物を供給した。炭素供給物と窒素供給物は、NOVA 300A Bioanalyzerによりオフラインで計測された試料読み値に基づいて、手作業で調節した。グリセリンの濃度は、1g/L未満に維持することを目標とし、酢酸蓄積の存在下では供給速度をさらに低下させた。アンモニア濃度の目標は、ブロス中のアンモニア100mg/L未満とした。pHを制御するために、培養中は2N硫酸の形態の酸および4N水酸化ナトリウムの形態の塩基が、自動的に添加された。ブロスの発泡を抑制するために、消泡剤も発酵槽に自動的に供給された。発酵制御条件および生成物収量をそれぞれ表25Cおよび表25Dに示す。
この作業は、発酵実験5(上記)の反復実験として計画されたが、コンドロイチン収量の有意な増加が達成された。収量の相違は、少なくとも部分的には、実験5において使用された過剰な消泡剤と酢酸蓄積レベルの増加(これらはどちらもコンドロイチン収量に負の影響を及ぼすと考えられる)によるものと考えられる。
7.大腸菌(MSC702)の50L発酵
典型的発酵条件下で50リットル発酵槽を使用し、グリセリンおよび水酸化アンモニウムをそれぞれ主要炭素源および窒素源として、大腸菌MSC702株の培養物を培養した。発酵槽は、脱イオン水を使って体積を40リットルにした下記の培地(表26A)で、回分処理した。
上記の培地が入っている発酵槽をオートクレーブ処理してから、下記の構成要素(表26B)を無菌的に加えた。
発酵槽に典型的シード培養物を接種し、4時間後に2mM m-TAで誘導し、次に91時間培養し、炭素供給物(625g/Lのグリセリン溶液からなるもの)および6N水酸化アンモニウムの形態の窒素供給物を供給した。炭素供給物と窒素供給物は、NOVA 300A Bioanalyzerによりオフラインで計測された試料読み値に基づいて、手作業で調節した。グリセリンの濃度は、1g/L未満に維持することを目標とし、酢酸蓄積の存在下では供給速度をさらに低下させた。アンモニア濃度の目標は、ブロス中のアンモニア100mg/L未満とした。pHを制御するために、培養中は3N硫酸の形態の酸および4N水酸化ナトリウムの形態の塩基が、自動的に添加された。ブロスの発泡を抑制するために、発酵槽には消泡剤が手作業で供給された。発酵制御条件および生成物収量をそれぞれ表26Cおよび表26Dに示す。
この発酵実験は、中間発酵規模の合成(最少)成長培地において高いコンドロイチン生産が達成されたことを実証している。
次の2つの発酵(8〜9)は、2つの10Lリアクターを同じ条件下で並列に稼働して、株MSC702およびMSC724を比較した1回の実験から得たものである。
8.大腸菌(MSC702)の10L発酵
典型的発酵条件下で10リットル発酵槽を使用し、グリセリン、カゼイン加水分解物および硫酸アンモニウムをそれぞれ主要炭素源および窒素源として、大腸菌MSC702株の培養物を培養した。発酵槽は、脱イオン水を使って体積を6リットルにした下記の培地(表27A)で、回分処理した。
上記の培地が入っている発酵槽をオートクレーブ処理してから、下記の構成要素(表27B)を無菌的に加えた。
発酵槽に典型的シード培養物を接種し、4時間後に2mM m-TAで誘導し、次に92時間培養し、炭素供給物(625g/Lのグリセリン溶液からなるもの)および硫酸アンモニウムの形態の窒素供給物を供給した。炭素供給物と窒素供給物は、NOVA 300A Bioanalyzerによりオフラインで計測された試料読み値に基づいて、手作業で調節した。グリセリンの濃度は、1g/L未満に維持することを目標とし、酢酸蓄積の存在下では供給速度をさらに低下させた。アンモニア濃度の目標は、ブロス中のアンモニア100mg/L未満とした。pHを制御するために、培養中は2N硫酸の形態の酸および4N水酸化ナトリウムの形態の塩基が、自動的に添加された。ブロスの発泡を抑制するために、消泡剤も発酵槽に自動的に供給された。発酵制御条件および生成物収量をそれぞれ表27Cおよび表27Dに示す。
9)大腸菌(MSC724)の10L発酵
典型的発酵条件下で10リットル発酵槽を使用し、グリセリン、カゼイン加水分解物および硫酸アンモニウムをそれぞれ主要炭素源および窒素源として、大腸菌MSC724株の培養物を培養した。発酵槽は、脱イオン水を使って体積を6リットルにした下記の培地(表28A)で、回分処理した。
上記の培地が入っている発酵槽をオートクレーブ処理してから、下記の構成要素(表28B)を無菌的に加えた。
発酵槽に典型的シード培養物を接種し、4時間後に2mM m-TAで誘導し、次に92時間培養し、炭素供給物(625g/Lのグリセリン溶液からなるもの)および硫酸アンモニウムの形態の窒素供給物を供給した。炭素供給物と窒素供給物は、NOVA 300A Bioanalyzerによりオフラインで計測された試料読み値に基づいて、手作業で調節した。グリセリンの濃度は、1g/L未満に維持することを目標とし、酢酸蓄積の存在下では供給速度をさらに低下させた。アンモニア濃度の目標は、ブロス中のアンモニア100mg/L未満とした。pHを制御するために、培養中は2N硫酸の形態の酸および4N水酸化ナトリウムの形態の塩基が、自動的に添加された。ブロスの発泡を抑制するために、消泡剤も発酵槽に自動的に供給された。発酵制御条件および生成物収量をそれぞれ表28Cおよび表28Dに示す。
この実施例における発酵8および9は、複合培地において、MSC702株より改良された、MSC724株のrCH収量を実証している。これは、MSC724におけるネイティブLeuB酵素の代謝効率が、MSC702における機能的ではあるが改変されているLeuB酵素よりも高い結果でありうる(実施例19参照)。
実施例21:この実施例では、発酵槽中のキサントモナス・カンペストリスにおける、組換えDNAによるコンドロイチン生産を説明する。
X. カンペストリス(MSC480)の10L発酵
典型的発酵条件下で10リットル発酵槽を使用し、グルコースを炭素源として、キサントモナス・カンペストリスMSC480株の培養物を培養した。発酵槽は、脱イオン水を使って体積を7.5リットルにした下記の培地(表29A)で、回分処理した。
上記の培地が入っている発酵槽をオートクレーブ処理してから、60gのグルコース(加熱滅菌済)を無菌的に加えた。
発酵槽に典型的シード培養物を接種し、次に70時間培養し、培養中に炭素供給物(871g/Lのグルコース溶液からなるもの)を供給した。70時間後に発酵槽をオートクレーブ処理し、遠心分離によって収集した。発酵制御条件および生成物収量をそれぞれ表29Bおよび表29Cに示す。
実施例22:この実施例では改良された大腸菌成長培地を例証する。
上記実施例4、7および8では、rCH生産組換え大腸菌K-12株の成長のための複合TB培地の使用を述べた。通常処方されるTB培地は、5g/Lグリセリンを主要炭素源として含有する。この実施例では、振とうフラスコにおけるrCH体積生産性および比生産性を強化するTB培地の改変を述べる。
接種物として使用するために、MSC564株の少量の培養物を30℃のTB/Tc5培地中で調整した。標準的TB培地(Sambrook et al.,1989;Difco「Terrific Broth」)を0.1M MOPS緩衝液(4-モルホリンプロパンスルホン酸;1.0M原液から調製し、NaOHで7.2にpH調節したもの)、10vg/Lグリセリン(通常のTB配合量の2倍)、またはその両者で改変した。各培地50mLが入っているエルレンマイヤー振とうフラスコ(250mL)に、MSC564培養物を接種することで、OD600=0.03とした。フラスコを、OD600値がおよそ0.125に達するまで、30℃で振とう(225rpm)してから、rCH生産を誘導するために、メタトルイル酸を1mMになるように加えた。続けて72時間振とうした後、pHおよびOD600を測定し、5mLアリコートを5〜7分間オートクレーブ処理し、冷却し、凍結保存した。rCH含有量を実施例14で述べたように決定した。最終的なOD600およびrCH濃度を表30に示す。
緩衝化しかつ余分なグリセリン(通常の2倍)で修正したTB培地は、細胞密度の追加を伴わずに(比生産性の向上)、rCH力価に>50%の増加(体積生産性の向上)をもたらした。2倍のグリセリンを含むが緩衝液を含まない培地における成長および生産性は、おそらくはグリセリンからの過剰な酸生産ゆえに、低い生産性をもたらした。これは、組換え株における生産能力の増加を実証しており、新しい大腸菌株を評価するための、生産性のより高い成長条件を提供する。
上述の本発明の説明は、例示と説明を目的として提示されたものである。さらにまた、前記の説明は、本明細書において開示される形態を限定しようとするものではない。
本明細書に記載したさまざまな局面、態様および選択肢の全てをありとあらゆるバリエーションで組み合わせることができる。
本明細書において言及した全ての刊行物、特許および特許出願は、個々の刊行物、特許おまたは特許出願について参照により本明細書に組み入れられることを明確にかつ個別に示した場合と同じように、参照により本明細書に組み入れられる。