JP5872725B1 - 鰹節由来のジペプチジルペプチダーゼiv阻害組成物 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】鰹だし由来の又は鰹だし粕由来のDPPIV阻害組成物。以下の工程を含む、鰹だし粕由来のジペプチジルペプチダーゼIV阻害組成物の製造方法。1)鰹節を60℃〜100℃の熱水で抽出し、更に遠心分離によって上澄を取り除き、鰹だし粕を得る工程;2)前記鰹だし粕を、至適条件下、特定の群より選択される少なくとも1種の菌株由来のプロテアーゼであって食品工業用途のプロテアーゼによって酵素分解し、さらに遠心分離によって清澄液を得る工程;3)前記清澄液を精製する工程;及び4)エタノール濃度10%、25%、50%及び99.5%のステップワイズグラジエントによる溶出を行う工程
【選択図】図1
Description
この糖尿病疾患の三大合併症として、糖尿病性腎症、糖尿病性網膜症、糖尿病性神経症が以前から知られているが、近年では、糖尿病疾患によって、動脈硬化症発症のリスクが高くなることも知られている。
そして糖尿病としては「膵β細胞の破壊的病変でインスリンの欠乏が生じて起こる」I型糖尿病と「膵β細胞の機能異常によるインスリン分泌能低下と肝、筋、脂肪組織等の標的臓器におけるインスリン感受性低下が併発することによって発症する」II型糖尿病が存在する。
昨今、激増する糖尿病はII型に由来するものであり、糖尿病の90〜95%を占めていると考えられている。このII型糖尿病は「生活習慣病」といわれているように、ストレス、肥満、運動不足による基礎代謝能低下と、それに加えて、高カロリー食摂取等、現代型社会生活によって引き起こされている。
しかしながら、インクレチンの問題点として、体内安定性が挙げられる。すなわち、インクレチンは体内に普遍的に存在するDPPIVによって速やかに不活性なものへと分解され、数分間で半減してしまう。そこで、安定なDPPIV阻害剤の開発が進められている(特許文献1、非特許文献1)。
また、コラゲナーゼによるコラーゲンの分解物の生理活性については、フィブリン凝集阻害活性(特許文献6)、麻酔作用(非特許文献2)が知られている。
また、食品由来のペプチドによるDPPIV阻害剤に関する報告もある(特許文献7)。
ところでまた、DPPIV阻害とは血糖上昇抑制の作用機序の点で異なるが、α−グルコシダーゼを阻害することにより血糖上昇を抑制する物質として、食品由来の豆鼓エキス及び難消化性デキストリン(特許文献8及び特許文献9)を挙げることができる。
ペプチド性のDPPIV阻害剤もまた、食品由来ではない場合、摂取した際の安全性の点で課題が残る。
さらにまた、α−グルコシダーゼ阻害作用を有する物質は、食品由来といえども、摂取後に低血糖などの副作用のおそれがある。
よって、天然成分由来の安全性の高いDPPIV阻害作用を有する物質が望まれていた。
この点、鰹だし、即ち、鰹節を熱水で抽出しただし汁、及び、粕として残存する鰹だし粕は従来から食品として利用されており、安全性の点から優れていると考えられる。
一態様において、本発明の組成物は、Ser−Glyの配列から成るペプチドを、好ましくは、当該組成物の乾燥物100g当り0.1乃至10mg含有する。
本発明の別の態様は、 Gly−Leu、Leu−Phe、Phe−Pro、Met−Pro−Phe、Leu−Pro−Leu、Met−Pro−Leu及びAla−Gly−Ala−Met−Proから成る群より選択される少なくとも1種のペプチドを含有する、鰹だし粕由来のジペプチジルペプチダーゼIV阻害組成物に関する。
好ましくは、前記組成物は、Gly−Leu、Leu−Phe、Phe−Pro、Met−Pro−Phe、Leu−Pro−Leu、Met−Pro−Leu及びAla−Gly−Ala−Met−Proから成る群より選択される少なくとも1種のペプチドを、当該組成物の乾燥物に基づき1乃至10質量%の量で含有する。
本発明のまた別の態様は、
1)鰹節を60℃〜100℃の熱水で抽出し、さらに遠心分離によって上澄を取り除き、鰹だし粕を得る工程;
2)前記鰹だし粕を、至適条件下、Aspergillus orizae属、Bacillus licheniformis属及びAsperigillus niger属からなる群より選択される少なくとも1種の菌株由来のプロテアーゼであって食品工業用途のプロテアーゼ、好ましくは中性プロテアーゼによって酵素分解し、さらに遠心分離によって清澄液を得る工程;及び
3)前記清澄液を精製する工程;
を経て得られる、鰹だし粕由来のジペプチジルペプチダーゼIV阻害組成物に関する。
好ましくは、本発明は、清澄液を精製する工程の後に、エタノール濃度10%、25%、50%及び99.5%のステップワイズグラジエントによる溶出を行う工程をさらに含む。
また、本発明は、上記組成物がα−グルコシダーゼ阻害作用を実質的に有しないことを特徴とする、組成物にも関する。
さらにまた本発明は、上記組成物が食後血糖値上昇抑制作用を有することを特徴とする、組成物に関する。
本発明のさらなる態様は、上記組成物のうちいずれかの組成物を含有することを特徴とする、医薬組成物に関する。
本発明のさらに別の態様は、
以下の工程:
1)鰹節を60℃〜100℃の熱水で抽出し、さらに遠心分離によって上澄を取り除き、鰹だし粕を得る工程;
2)前記鰹だし粕を、至適条件下、Aspergillus orizae属、Bacillus licheniformis属及びAsperigillus niger属からなる群より選択される少なくとも1種の菌株由来のプロテアーゼであって食品工業用途のプロテアーゼによって酵素分解し、さらに遠心分離によって清澄液を得る工程; 及び
3)前記清澄液を精製する工程;及び
4)エタノール濃度10%、25%、50%及び99.5%のステップワイズグラジエントによる溶出を行う工程;
を含むことを特徴とする、鰹だし粕由来のジペプチジルペプチダーゼIV阻害組成物の製造方法にも関する。
本発明において用いられる鰹節は、当業者に既知の手法により製造されたものであれば十分であり、もちろん市場に流通しているものでも構わない。
そして、鰹だしは、上述の鰹節を、水で加熱抽出して得られる水溶性タンパク質、アミノ酸、ペプチドであるということができる。
本発明においては、通常公知の方法により製造しただしを用いることも可能であり、市販品を用いることも可能である。
また、鰹だし由来のDPPIV阻害組成物については、だしとの混合物で用いることが可能である。
鰹だし粕は、前記遠心分離によって上澄を除去した後に沈澱物として、又は濾過によって残留物として、得ることができる。そして、鰹だし粕を、特定のプロテアーゼを用いて酵素分解することによって、分解後に得られる組成物において、DPPIV阻害活性が発現することとなる。
プロテアーゼM「アマノ」G(天野エンザイム社製;Aspergillus oryzae属;至適温度40℃〜60℃(50℃);至適pH4〜7(pH6))、
スミチームLP50D (新日本化学工業社製;Aspergillus oryzae属;至適温度45℃〜60℃(50℃);至適pH5〜8(pH7))、
スミチームFP(新日本化学工業社製;Aspergillus oryzae属;至適温度45℃〜55℃(50℃);至適pH4〜8(pH6))、
デナチームAP(ナガセケムテックス社製; Aspergillus oryzae属;至適温度40〜55℃;至適pH6〜8(pH7))、
プロチンSD−AC10F(天野エンザイム社製; Bacillus licheniformis属;至適温度40℃〜60℃;至適pH5.5〜9.0(pH8〜9))、
デナプシン2P( ナガセケムテックス社製;Asperigillus niger属;至適温度40℃から60℃(50℃);至適pH2〜4(pH3))
である。
これらプロテアーゼは、本発明の完成のために本発明者らによって選択されたもので、食品工業用途であって安全性が高く、且つ、鰹だし粕を酵素分解したときに、高いDPPIV阻害活性をその酵素分解組成物に付与し得る。
さらには、上記6種のプロテアーゼの中でも、より高いDPPIV阻害活性を付与し得るという観点から、中性プロテアーゼ、即ち、プロテアーゼM「アマノ」G及びスミチームLP50D が最も好ましい。
なお、プロテアーゼ処理は、加熱等により酵素を失活させることで終了させることができる。また、酵素反応後のpHは、その後の市販適用のために中和することが望ましい。
次いで、吸着したプロテアーゼ分解物の溶離には、酸、アルカリ又は種々の有機溶媒、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール等の低級アルコールや、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、アセトン等のケトン類を用いることできるが、これらに限定されるものではない。又は、酸、アルカリとの混合溶媒としてもよい。なお、経済性と安全性の点からは、濃度50%以下のエタノール水溶液又は水を用いて溶離するのが好ましい。樹脂精製法は、バッチ法又はカラム法にて行うことができる。回収した画分は減圧又は限外濾過により濃縮し、さらに必要に応じて溶媒を完全に除去して乾固するか凍結乾燥を行ってもよい。
本発明の製造方法に従い製造され市販されている鰹節若しくはそのだしを、そのまま食してもよいし、若しくは濃縮することによってDPPIV阻害活性の力価をより高めることができる。
具体的には、例えば、鰹節の組織を粉砕した後、水洗、希塩溶液による抽出、酸あるいはアルカリ溶液による抽出、ペプシン、トリプシンやヒアルロニダーゼ等の酵素による抽出を行い、塩析や透析等の公知の精製手段を施して、活性成分を得ることができる。
また、本組成物のDPPIV阻害作用が、DPPIV阻害のみであり、α−グルコシダーゼ阻害活性を有しないため、低血糖などの副作用のおそれも低く、安全性は高いと考えられる。
また、本組成物は安全性が高いため、食品、菓子等に有効量を配合することができ、これらの食品、菓子等を継続的に摂取することで糖尿病の発症を予防し得る。
なお且つ、当該組成物はまた、ペプシン、トリプシン又はキモトリプシンといった消化管プロテアーゼに対する耐性が高く、これらプロテアーゼによる処理を受けたとしても、処理前と比較して、そのDPPIV阻害活性値が低下しないという利点を有する。
また、本発明の鰹だし粕由来のDPPIV阻害組成物は、一回のプロテアーゼ処理工程のみで上記利点を付与し、且つ活性が高く安全性に優れたDPPIV阻害剤である。
さらにまた、本発明の組成物は、血糖低下効能を有する製薬と比較して、活性がほどほど抑えられているため、副作用のおそれもより低く、特定保健用食品の有効成分としてより適するものといえる。
工業的スケールにおいては、鰹節(タンパク質160kg)に加水1000%後、95℃±3℃、35分間で熱水抽出し、下記の比率の本発明に係る鰹だし由来のDPPIV阻害組成物を得た(表1)。また鰹だし粕とのタンパク質比率は、25対75であった。
ヒトにおいて効果が発揮するためには、消化管プロテアーゼ耐性が必須である。本発明に係る鰹だし由来のDPPIV阻害組成物の腸管プロテアーゼ耐性を調べるために、表2に示すとおりの条件及び消化酵素にて処理を行った。
即ち、鰹だし由来のDPPIV阻害組成物の消化管プロテアーゼ耐性は、下記表2の方法で試料分取後、DPPIV阻害活性を測定し阻害率を調べることにより図ることが出来る。
鰹だし由来のDPPIV阻害組成物、その消化管プロテアーゼ(ペプシン、トリプシン、キモトリプシン)処理品及び鰹だし粕由来のDPPIV阻害組成物の食品工業用プロテアーゼ分解組成物を、凍結乾燥後、それらの16mg、8mg、4mg、2mg、1mgを50mMトリス塩酸緩衝液(pH7.5)1mLにそれぞれ溶解し、DPPIV阻害活性測定のための試料とした。
次に、疑似サンプル基質(インクレチンホルモン)(H−Gly−Pro−7−アミノ−4−メチルクマリン)を所定の濃度調整後、25μLを分注し、反応時間0〜30分の間、数回測定し、検量線直線が認められる反応時間間の増加率から、コントロール(阻害物質なし)と、各種試料の測定値から、DPPIV測定阻害活性(%)を計算し、そのDPPIVの50%阻害活性が認められる各種試料濃度をIC50値として算出した。また、各試料の各濃度で4回測定し、得られた4回分のIC50値の平均値を算出し、これをDPPIV阻害活性(%)とした。
上記実施例2−1で調製した鰹だし由来のDPPIV阻害組成物のDPPIV阻害活性を、上記試験例1の測定方法で測定した。
結果を下記表3に示す。
これに対し、ペプシン処理後の阻害活性(力価)は、28.3%向上し、ペプシン処理後トリプシン・キモトリプシン処理後の阻害活性(IC50)は、2588μg/mLであった。
よって、鰹だし由来のDPPIV阻害組成物のDPPIV阻害活性は、消化管プロテアーゼ処理により低下しないこと、即ち、体内に吸収後も、その活性を発現し得る可能性が示された。
上記実施例1の表1に示されるとおりの、鰹だし抽出後に得られた鰹だし粕タンパク質を、各種のプロテアーゼを用いて可溶化し、DPPIV阻害活性をそれぞれ測定した。
鰹だし粕(タンパク質72%)に水10倍量(対基質)加え、下記表4に示す各プロテアーゼ(いずれも食品工業用途)の至適pHに調製後、当該プロテアーゼを用いて、50℃にて16時間反応させた。そしてその後、98℃、15分間でプロテアーゼを失活させ、遠心分離(15000回転、5分間)した後、得られた清澄液を、本発明の鰹だし粕由来のDPPIV阻害組成物とし、それらのDPPIV阻害活性を測定した。
各種試料の測定値から、DPPIV測定阻害活性(%)を計算し、そのDPPIVの50%阻害活性が認められる各種試料濃度をIC50値として算出した。また、各試料の各濃度で4回測定し、得られた4回分のIC50値の平均値を算出し、これをDPPIV阻害率とした。なお、コントロール(阻害物質なし)のDPPIV測定阻害活性(%)を100とした。
結果を下記表4に示す。
用いるプロテアーゼを変更した他は実施例3と同様にして、比較例組成物を得、それらのDPPIV阻害活性を測定した。
結果を下記表5に示す。
さらには、上記表4に示されるとおり、本発明の鰹だし粕由来のDPPIV阻害組成物の中でも、中性プロテアーゼであるプロテアーゼM「アマノ」G及びスミチームLP50Dを用いて分解した組成物について、DPPIV阻害活性が特に強いことが判った。
上記実施例3で得られた本発明に係る鰹だし粕由来のDPPIV阻害組成物の6種について、それらのDPPIV阻害の濃度依存性について試験を行った。
結果を下記表6及び図1に示す。
食後血糖上昇抑制作用機構には、2糖類の酵素分解を阻害するα−グルコシダーゼ阻害と難消化性デキストリンよる糖の吸収を遅延させる効果が知られている。
食後の血糖が低い場合は、食事前の摂取による低血糖の副作用が認められているα−グルコシダーゼ阻害活性について、実施例1で得た本発明の鰹だし由来のDPPIV阻害組成物の濃度別に値を測定した(図2)。
図2に示される結果から、本発明の鰹だし由来のDPPIV阻害組成物には、α−グルコシダーゼ活性を阻害する物質は、高濃度においても存在しないことが推察された。
なお、α−グルコシダーゼ阻害活性の測定は、Benavente−Garcia et.al,J Agric Food Chem,56(15),6185−205(2008)に従い行った。
これに対して、特定保健用食品の血糖上昇抑制成分である豆鼓エキス(特許文献8)及び難消化性デキストリン(特許文献9)は、α-グルコシダーゼ阻害活性を有するが、DPPIV阻害活性を有していないことが明らかであり、この観点において、本発明に係る組成物は、これら物質と比べてより優れていると考えられる。
上記のとおり本発明に係る鰹だし由来のDPPIV阻害組成物にはDPPIV阻害活性が認められたことから、糖尿病患者及びその境界型糖尿病(糖尿病予備軍)患者にとって、当該本発明の鰹だし由来のDPPIV阻害組成物を摂取することによって、治療及び健康効果が期待される。
しかしながら、当該組成物に認められるにおいや味は比較的変性しやすく、サプリメントとして利用するには適しているとは言い難い。
そこで、本発明に係る当該組成物が凍結乾燥品としても、ヒト体内において、DPPIV阻害性糖代謝改善作用(血糖上昇抑制作用)を有するか否かを明らかにするために、下記のとおり臨床試験を行った。
まず、被験者の空腹時の血糖値を、簡易自己血糖測定装置を用いて測定した。次いで、実施例1の鰹だし由来のDPPIV阻害組成物の凍結乾燥物4.5gに水150mLを加えたものを摂取し、その30分後に、米飯200g(約糖質70g)、ふりかけ2gを摂取し、さらにその後、30、45、60、75、90、120分及び150分の血糖値を経時的に測定した。
別の指定日に、対照群として、実施例1の当該組成物の代わりに白湯を150mL摂取後、米飯200gとふりかけ2gを食し、上記と同様に血糖値を測定した。
被験者は、正常者及び境界型糖尿病(糖尿病予備軍)であり、医師の問診、血液検査で健常と認められた対象者とする。
試験は2日間に分けて行い、1日目(当日)と2日目(翌日又は約1週間後指定)の試験内容は上記のとおりであった。
また、本発明に係る鰹だし由来のDPPIV阻害組成物又は白湯と米飯の摂食前に、空腹時の血糖値を測定することから、当日の朝は絶食とした。前日21時以降は摂食せず、前日からの摂食リズムが2日間ともに同じようになるようにした。
採血は、各自専用のペン型採血針を用いて指先から行った。通常、採血量は米粒約半分の大きさ程度(約2μL)であり、採決後に使い捨ての専用試験紙を装着した簡易自己血糖測定装置を用いて血糖値を測定した。
空腹時血糖値を測定してから摂食後血糖値の経時的測定を完了するまでに約3時間半を要し、各測定の間隔における行動は自由とし、血糖値に大きく影響を及ぼすような運動や活動は控えるように制限した。
実施例1の組成物の凍結乾燥物を摂取した群の14名中12名に糖負荷後30分から上昇抑制作用が示され、2時間経過後まで、対照群(白湯摂取群)に対して、5%の危険率で有意差が示された(有効率85.7%)。2名の内、1名は摂取45分から抑制効果を示し、その後、徐々に正常血糖値に復帰した。1名は変化がなかった。
実施例1の組成物の凍結乾燥物及び白湯摂取後の血糖値の変化を図3に示した。また、下記表10に実施例1の組成物の凍結乾燥物及び白湯摂取後の血糖降下曲線面積を表した。5%の危険率で群間の有意差が認められた。
また、糖摂取なし且つ実施例1組成物の凍結乾燥物の摂取のみでは、血糖低下作用は示さなかった。
上記臨床試験から、本発明の鰹だし由来のDPPIV阻害組成物と同様にその凍結乾燥品の摂取により、ヒトに対して血糖上昇抑制作用を示すことが明らかとなった。
さらに、摂食前後及び期間中に副作用及び自覚症状もなく、医師の問診においても異常となる所見は得られなかった。
糖摂取なし且つ実施例1組成物の凍結乾燥物の摂取のみでは、血糖低下作用を示さなかったことから、製薬で懸念される低血糖による副作用はなく、正常血糖者及び低血糖者に作用しないと考えられる。
また、その阻害作用が、DPPIV阻害のみによるものであることが分かっており、トクホの血糖上昇抑制成分である豆鼓エキス(日本サプリメント)、難消化性デキストリン(松谷化学工業)の作用機序のようにα−グルコシダーゼ阻害によるものでないことが明らかであり、この観点から、本発明の鰹だし由来の及び鰹だし粕由来のDPPIV阻害組成物が、特定保健用食品としてより優れた製品となり得ることが示唆される。
鰹だしの凍結乾燥品100mgを水1mLに溶解し、20mMリン酸緩衝液pH7.5(10mL)で平衡化した固相抽出管(SupelTM Shere Carbon/NH26mL SPE Cartridge(SUPELCO)に負荷し(得られた画分1)、100%エタノール(15mL)溶出(得られた画分2)後、2M NaCl 50mM Tris−HCl pH9.0(4mL)で溶出した(得られた画分3)。
各々の画分についてDPPIV阻害活性を測定した結果、コントロールを100%として、それぞれの阻害活性は、54、66、37%(p<0.001)であり、画分3に高い値が得られた。そこで、当該画分3を逆相HPLCに供した。条件は下記のとおりである。
InterSustainC18カラム(4.6×150mm、GLサイエンス)
移動相;A:0.1%ギ酸溶液−B:アセトニトリル100%液/A0%−B100%/30min
また、その溶出曲線を図4に示す。
この分画1について、LC/MS/MSによる分析とde novo sequence解析を行った。
サンプル:かつおだし分画1
カラム:ACQUITY UPLC BEH C18column
(1.7μm,2.1×50mm,Waters)
質量分析:Xevo G2−qTOF(Waters)
スペクトル解析:BioLynxソフトウェア(Waters)
ピークのペプチド配列同定:de novo sequence
LC/MS/MSによる分析の結果を、図5に示した。
これに対し、本実施例で得られた、上記同定したSGの阻害活性(IC50)は258.7μg/mLであり、実施例2−2の鰹だし由来のDPPIV阻害組成物の阻害活性値(3049.3μg/mL;上記表3参照のこと)の約10倍であった。また、鰹だし由来のDPPIV阻害組成物中のSGの含有量は3.26mg(当該組成物の乾燥物100g当り)であることから、寄与率は0.038%となり、当該組成物中の主要なDPPIV阻害成分の一つと推定された(表11)。
実施例3及び4の結果から、組成物2(上記表7参照)のDPPIV阻害活性が高かったことを受け、当該組成物中のDPPIV阻害物質の同定を行った。
上記実施例1の表1に示されるとおりの、鰹だし抽出後に得られた鰹だし粕(タンパク質72%)に水10倍量(対基質)を加え、スミチームLP50Dの至適pH7に調節後、50℃にて16時間反応させた。そしてその後、98℃、15分間で失活させ、遠心分離(15000回転、5分間)した後、清澄液を得た(当該清澄液をN5と呼ぶ。上記組成物2に相当する)。
水溶出分画と、10%エタノール溶出分画により、DPPIV阻害活性を9倍の比率で分け得て、酵素分解物(N5)のIC50の5倍高いIC50=73.71μg/mLの画分を得た(以降、この得られた画分をY−2画分と呼ぶ)(表12)。酵素分解物(N5)からの収率は、20%量得られ、阻害活性の回収率は、約100%であった。
N5酵素分解物(タンパク質量5kg)を、疎水性樹脂(充填剤SP207;三菱化学)100Lを充填し平衡化したカラムに負荷し、下記表13に記載のタイムコースで精製を行った。
非吸着画分を別取りし、吸着画分を10%エタノール濃度溶出液で脱着、Y−2画分を得た。その後、4サイクル分を減圧濃縮によりエタノールを除去、噴霧乾燥し、Y−2画分の粉末を得た。
サンプル:Y−2画分の凍結乾燥物10mg/mL
カラム:ACQUITY UPLC M−Class HSS T3 column
(1.8μm,0.75×150mm,Waters)
質量分析:Xevo G2−qTOF(Waters)
スペクトル解析:BioLynxソフトウェア(Waters)
ピークのペプチド配列同定:de novo sequence
これらペプチドについて、上記試験例1に記載されているのと同様の方法によって、DPPIV阻害活性を測定し、その内、阻害活性が最も高かった7種のペプチドについて、さらに同定した。当該7種のペプチド配列及びDPPIV阻害活性を下記表14に示す。
表17より、α−グルコシダーゼ阻害活性を有しない本発明の組成物は、低血糖などのおそれがより低いといえる。
本発明の飲食用組成物(飲食料)は、表16に示されたペプチドの一種以上を、1回の摂取量として0.001mg〜100mg添加して製造される。
本発明の鰹だし由来のDPPIV阻害組成物及び鰹だし粕由来のDPPIV阻害組成物は、乾燥させることによって、取り扱いが容易で安定な固体ないし粉末形態とすることができ、当該形態の水への溶解性もよい。また、胃腸管からの吸収もよい。したがって、食品への添加の時期、及び方法に特別の制限はなく、粉末状、溶液状、懸濁液状等として、食品製造の原料段階、中間工程、最終工程に、食品分野で慣用の方法で添加することが可能である。
飲食品の形態としては、固形状、半流動状、流動状などを挙げることができる。固形状食品としては、シート状、タブレットやカプセルなどの錠剤、顆粒粉末などの形態の一般食品及び健康食品が挙げられる。半流動状食品としては、ペースト状、ゼリー状、ゲル状などの、また、流動状食品としては、ジュース、清涼飲料、茶飲料、ドリンク剤などの形態の一般食品及び健康食品が挙げられる。飲食物を栄養ドリンクや調味料として、本発明の組成物を継続して摂取することにより、血糖の上昇を抑制することも可能である。
本発明の鰹だし粕由来のDPPIV阻害組成物(Y−2画分)の乾燥物(粉末品)を原料素材として用い、当該乾燥物100mgを配合した機能性食品を得た。加工食品として飲料、錠剤、スープ等にも用いられる。
Y−2画分を配合した食品素材の配合割合を下記表18に示した。
Y−2画分の錠果・錠剤・カプセル製造について、Y−2画分、食品素材を計量、混合・造粒・打錠・コート工程後、DPPIV阻害活性、ペプチド量を測定して製品化できる。
効能重視の製薬と異なり、特定保健用食品はあくまでも食品であって、同様の効能を有する当該製薬と同等の効き目を必要としない。むしろ、安全性の点から、特定保健用食品の効き目は、製薬よりも1000〜10000倍ほど弱いことが望ましい。
現在、我が国で承認されているDPPIV阻害薬は7つあるが、いずれも製薬として強力なnMレベルで効果を発揮する。その強力な効果の反面、副作用のおそれも懸念される。
これに対し、本発明の7種のペプチドを含有する組成物(Y−2画分)は、効果がμMレベルであり、製薬の力価よりも1000倍程度弱いことから、効き過ぎず、特定保健用食品の成分として、妥当である。今後の動物試験及び臨床試験で十分にその効果が証明されると考えられる。
Claims (7)
- 鰹だし粕由来のジペプチジルペプチダーゼIV阻害組成物であって、
Gly−Leu、Leu−Phe、Phe−Pro、Met−Pro−Phe、Leu−Pro−Leu、Met−Pro−Leu及びAla−Gly−Ala−Met−Proを、当該組成物の乾燥物に基づき1乃至10質量%の量でそれぞれ含有し、且つα−グルコシダーゼ阻害活性(IC50)が1.5mg/mL以上である、前記鰹だし粕由来のジペプチジルペプチダーゼIV阻害組成物。 - Gly−Leu、Leu−Phe、Phe−Pro、Met−Pro−Phe、Leu−Pro−Leu、Met−Pro−Leu及びAla−Gly−Ala−Met−Proを、当該組成物の乾燥物に基づき1乃至10質量%の量でそれぞれ含有し、且つα−グルコシダーゼ阻害活性(IC50)が1.5mg/mL以上である、鰹だし粕由来のジペプチジルペプチダーゼIV阻害組成物の製造方法であって、
1)鰹節を60℃〜100℃の熱水で抽出し、さらに遠心分離によって上澄を取り除き、鰹だし粕を得る工程;
2)前記鰹だし粕を、至適条件下、Aspergillus orizae属、Bacillus licheniformis属及びAsperigillus niger属からなる群より選択される少なくとも1種の菌株由来のプロテアーゼであって食品工業用途のプロテアーゼによって酵素分解し、さらに遠心分離によって清澄液を得る工程;及び
3)前記清澄液を精製する工程;
を含むことを特徴とする、前記鰹だし粕由来のジペプチジルペプチダーゼIV阻害組成物の製造方法。 - 前記プロテアーゼは、中性プロテアーゼであることを特徴とする、請求項2に記載の製造方法。
- 前記3)の清澄液を精製する工程の後に、エタノール濃度10%、25%、50%及び99.5%のステップワイズグラジエントによる溶出を行う工程をさらに含む、請求項2又は3に記載の製造方法。
- 前記組成物は、食後血糖値上昇抑制作用を有することを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
- 請求項1に記載の組成物を含有することを特徴とする、医薬組成物。
- 請求項1に記載の組成物を含有することを特徴とする、特定保健用食品。
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