以下、本発明の一実施例を図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の実施例において図は理解を容易とするために適宜簡略化或いは変形されており、各部の寸法比および形状等は必ずしも正確に描かれていない。
図1は、本発明の一実施例の車両用動力伝達装置10の構成を説明する骨子図である。図1において、車両用動力伝達装置10は、FF(フロントエンジン・フロントドライブ)方式の車両に好適に採用されるものであり、内燃機関から構成されるエンジン(機関)12と、そのエンジン12のクランク軸14に連結されたトルクコンバータ(流体伝動装置)16と、そのトルクコンバータ16と図示しない一対の駆動輪との間に配設されてトルクコンバータ16の出力側に連結された出力軸15に一対のギヤ17を介して連結された自動変速機18と、エンジン12とトルクコンバータ16との間に配設されてクランク軸14に連結された第1電動機(第1回転機)MG1と、トルクコンバータ16と自動変速機18との間すなわちトルクコンバータ16より動力伝達経路で後に配設され、トルクコンバータ16の出力軸15に連結された第2電動機(第2回転機)MG2とを備えている。なお、車両用動力伝達装置10には、エンジン12の出力をトルクコンバータ16を経由して前記一対の駆動輪に伝達する機械経路が設けられている。
トルクコンバータ16は、エンジン12からの動力が入力される入力側回転要素であるポンプ翼車16pと、出力軸15すなわち自動変速機18へ動力を出力する出力側回転要素であるタービン翼車16tと、ポンプ翼車16pとタービン翼車16tとの間に回転可能に配設されたステータ翼車16sとを備えており、作動油を介して動力伝達を行う流体伝動装置である。そのポンプ翼車16pすなわちポンプインペラは、エンジン12のクランク軸14と第1電動機MG1とに連結されており、そのエンジン12により回転駆動されることによってトルクコンバータ16内の作動油の流動による流体流を発生させる。タービン翼車16tすなわちタービンランナは、出力軸15および一対のギヤ17を介して自動変速機18の入力軸20に連結されており、ポンプ翼車16pからの流体流を受けて回転させられる。ステータ翼車16sは、ポンプ翼車16pからタービン翼車16tへの流体流中に配設され、一方向クラッチFを介して非回転部材としてのトランスミッションケース24に連結されている。図1から判るように本実施例では、エンジン12と第1電動機MG1とポンプ翼車16pとは相対回転不能に連結されているので、ポンプ翼車16pの回転数Np(以下、ポンプ回転数Npという)は第1電動機MG1の回転数NMG1(以下、第1電動機回転数NMG1という)およびエンジン12の回転数Ne(以下、エンジン回転数Neという)と同じである。また、タービン翼車16tは、第2電動機MG2と出力軸15を介して相対回転不能に連結されているので、タービン翼車16tの回転数Nt(以下、タービン回転数Ntという)は第2電動機MG2の回転数NMG2(以下、第2電動機回転数NMG2という)と同じである。
トルクコンバータ16は、ポンプ翼車16pとタービン翼車16tとの間を直結可能なロックアップクラッチL/Cを備えている。ロックアップクラッチL/Cは、完全係合状態、スリップ状態、および解放状態のいずれか1の状態に制御される。ロックアップクラッチL/Cが解放状態とされた場合には、上記のようにクランク軸14と出力軸15との間のトルク伝達がトルクコンバータ16内の作動油を介して行われる。そして、ロックアップクラッチL/Cが完全係合状態とされた場合には、エンジン12のクランク軸14と出力軸15とが相互に一体的に連結されて、それらクランク軸14と出力軸15との間のトルク伝達がトルクコンバータ16内の作動油を介さずに直接的に行われる。
第1電動機MG1および第2電動機MG2は、駆動トルクを発生させる電動モータとしての機能と回生トルクを発生させる発電機としての機能とが選択的に得られるように構成された回転機であって、例えば交流同期型のモータジェネレータにより構成される。また、バッテリである蓄電装置36と電動機MG1,MG2を制御するためのインバータ38とが車両用動力伝達装置10に設けられており(図3参照)、その蓄電装置36と第1電動機MG1と第2電動機MG2とは相互に電力授受可能にそれ等第1電動機MG1および第2電動機MG2との間は、エンジン12の出力を電気的に伝達する電気経路として機能している。第1電動機MG1および第2電動機MG2はそれぞれ、その駆動によってクランク軸14および出力軸15に正回転方向および負回転方向の駆動トルクを付与することができ、また、その発電(回生)によってクランク軸14および出力軸15に負回転方向の負荷トルクすなわち制動トルクを付与すると共に、車両に設けられた蓄電装置36をインバータ38を介して充電することができる。なお、上記クランク軸14および出力軸15の正回転方向とは、エンジン12の駆動時におけるクランク軸14の回転方向であり、上記負回転方向とはその正回転方向とは逆向きの回転方向である。
自動変速機18は、トルクコンバータ16と図示しない一対の駆動輪との間に介装されており、非回転部材であるトランスミッションケース24内に第1遊星歯車装置26と第2遊星歯車装置28とを備えた公知の遊星歯車式多段変速機である。そして、この自動変速機18においては、公知の各油圧式摩擦係合装置(クラッチC1、C2、ブレーキB1、B2)が図2に示す所定の作動表に従ってそれぞれ係合又は解放されることにより、自動変速機18の変速比γAT(=入力軸20の回転速度NATIN/出力軸22の回転速度Nout)がそれぞれ異なる複数の変速段が成立させられる。図2において、「○」は係合状態を、空欄は解放状態をそれぞれ示している。また、この自動変速機18の自動変速制御は、予め記憶されたアップシフト線及びダウンシフト線を有する公知の関係(変速線図、変速マップ)に従って実行される。
以上のように構成された車両用動力伝達装置10においては、車両の走行状態に応じて、エンジン12の動力により車両を走行させるエンジン走行と第2電動機MG2の動力により車両を走行させるモータ走行とが切り換えられて作動させられるようになっている。上記エンジン走行とモータ走行との切り換えは、車両の走行状態が前記変速線図と同様の二次元座標内において予め設定されたエンジン走行領域およびモータ走行領域のどちらに属するかに基づいて行われる。
なお、車両用動力伝達装置10では、たとえば、車両の走行状態がモータ走行領域に属していても蓄電装置36の充電残量SOCが所定値以下である場合にはエンジン走行が行われる、また、車両の急発進時や急加速時などにはエンジン12および第2電動機MG2の両方の出力が用いられて車両が走行させられる等の制御が適宜行われる。
図3は、車両用動力伝達装置10を制御するための電子制御装置40に各センサ等から入力される入力信号および電子制御装置40内で入力および出力される信号を説明する図である。図3において、電子制御装置40は、各センサ等からの入力信号が入力されるHVECU40aと、そのHVECU40aから出力された出力指令信号が入力されるMGECU40bおよびエンジンECU40cとから構成されている。また、電子制御装置40は、車両用動力伝達装置10の制御装置として機能を有するものであって、CPU、RAM、ROM、入出力インターフェース等を備えた所謂マイクロコンピュータを含んで構成されており、CPUがRAMの一時記憶機能を利用しつつROMに予め記憶されたプログラムに従って信号処理を行うことにより、エンジン12の出力制御、自動変速機18の変速制御、および電動機MG1、MG2の出力制御などを実行する。
図3に示すように、電子制御装置40には、第1電動機回転数センサ42により検出された第1電動機回転数NMG1を表す信号、第2電動機回転数センサ44により検出された第2電動機回転数NMG2を表す信号、アクセル開度センサ46により検出された運転者による車両に対する加速要求量としてのアクセルペダル48の操作量であるアクセル開度Accを表す信号、車速センサ50により検出された車速Vを表す信号、蓄電装置36に設けられたSOCセンサ52によって検出される蓄電装置36の充電残量SOCを表す信号、バッテリー温度センサ54により検出された蓄電装置36のバッテリー温度Tbを表す信号、レバーポジションセンサ56により検出された「P」、「R」、「N」、「D」等のシフトレバー58のレバーポジション(操作位置、シフトポジション)PSHを示す信号などがそれぞれ供給される。また、電子制御装置40からは、車両に設けられた各装置に各種出力信号(例えばエンジン出力制御信号、電動機出力制御信号、油圧制御指令信号、ロックアップクラッチ制御信号)が供給される。
図4は、電子制御装置40による制御機能の要部を説明する機能ブロック線図である。図4において、リバース運転中判定部すなわちリバース運転中判定手段60は、運転者がシフトレバー58を例えばNレンジからRレンジに切り換えられた否かをレバーポジションセンサ56に基づいて判定する。また、リバース運転中判定手段60において、シフトレバー58がRレンジに切り換えられると、図2に示す係合作動表に従ってギヤ段が達成されるように、自動変速機18の変速に関与する油圧式摩擦係合装置(クラッチC1、C2、ブレーキB1、B2)を係合させ且つ解放させる油圧制御指令信号Spが油圧制御回路62へ出力される。油圧制御回路62は、その油圧制御指令信号Spに従って、その油圧制御回路62内のリニアソレノイドバルブを作動させて、そのギヤ段成立に関与する油圧式摩擦係合装置の各油圧アクチュエータを作動させる。
充電残量判定部すなわち充電残量判定手段64は、蓄電装置36の充電残量SOCが所定充電残量値SOCAを下回っているか否かをSOCセンサ52に基づいて判定する。
MG2駆動制御部すなわちMG2駆動制御手段66は、シフトレバー58がRレンジに切り換えられ、アクセルペダル48の操作量であるアクセル開度Accおよび車速センサ50により検出された車速V等に基づいて算出された運転者の要求する車両のリバース駆動力を出力させるために、第2電動機MG2をエンジン12のクランク軸14の回転とは反対方向に駆動制御させる。また、MG2駆動制御手段66では、運転者の要求する車両のリバース駆動力を出力させるために電子制御装置40のMGECU40bから第2電動機MG2に指令電流である第2電動機電流IMG2が出力される。また、MG2駆動制御手段66では、運転者の要求する車両のリバース駆動力を満たす第2電動機MG2の許容回転数の中で第2電動機MG2が最高効率領域内の動作点で作動させられるようになっている。また、MG2駆動制御手段66おいて、第2電動機MG2では、シフトレバー58がRレンジに切り換えられると、クリープトルクに代わる所定の駆動トルクが出力軸15に出力される。
MG1発電電力算出部すなわちMG1発電電力算出手段68では、第1電動機MG1の要求発電電力が、運転者の要求する車両のリバース駆動力を出力させるために必要な第2電動機MG2の電力、および第2電動機MG2、第1電動機MG1の損失等から算出される。そして、MG1発電電力算出手段68では、図5に示すように、第1電動機MG1の要求発電電力を満たす第1電動機MG1の動作点の連なりである要求発電電力線L1が形成され、この要求発電電力線L1上の動作点であれば第1電動機MG1で要求発電電力が発電される。また、リバース駆動力を出力させるために必要な第2電動機MG2の電量、もしくはトルクが大きい、または第2電動機MG2、第1電動機MG1の損失が大きいほど、第1電動機MG1の要求発電電力が大きくなり、要求発電電力線L1は変化する。
MG1動作点設定部すなわちMG1動作点設定手段70は、図5に示すように、第1電動機MG1の要求発電電力線L1において、第1電動機MG1の動作点が許容回転数の中で第1電動機MG1の発電効率が最も良い最高効率領域内の動作点(この場合はA点)が設定される。また、MG1動作点設定手段70における許容回転数とは、エンジン12を駆動させて第1電動機MG1で回生させることにより、そのエンジン12からトルクコンバータ16を介して出力軸15に作用する逆トルクすなわちタービントルクTt(=τCN2)が抑制され、車両のリバース駆動力が確保されるエンジン回転数Ne(第1電動機回転数NMG1)である。なお、タービントルクTt(=τCN2)において、τはトルク比を示し、Cは、トルクコンバータ16の容量係数を示し、Nは、ポンプ回転数Np、エンジン回転数Ne、第1電動機回転数NMG1を示す。
図6は、トルクコンバータ16の特性を示す図であり、横軸を速度比e(=タービン回転数Nt/ポンプ回転数Np)とし縦軸をトルクコンバータ16の容量係数Cおよびトルク比τとする図である。なお、図6において、速度比e1は、図7に示す実線のエンジン最適燃費線L2、車両の騒音や振動を防止するための一点鎖線の目標線であるNV防止動作線L3と、アクセル開度Accおよび車速Vに基づいて決定される運転者が要求するエンジン出力を満たす破線の要求パワー線L4とにより決定されたエンジン12の動作点(運転点)aの回転数Ne1から決まる速度比である。なお、図7に示すエンジン12の動作点aは、任意のエンジン出力で前進走行時に、エンジン12の効率や車両の振動・騒音を勘案して設定されたものである。本実施例では、エンジン12の動作点aは、NV防止動作線L3と要求パワー線L4との交点である。また、速度比e2は、トルクコンバータ16のトルク比τが最大となる速度比である。また、速度比e3は−1であり、トルクコンバータ16の容量係数Cが急増を開始する前の最小値となる速度比である。
MG1動作点設定手段70において、許容回転数は、図6に基づいて設定されている。すなわち、許容回転数は、出力軸15の回転数を一定とした場合、速度比e1から決まるエンジン回転数Ne1より低くエンジン12がエンジンストールが起きない程度の所定のエンジン回転数Neより高い範囲に設定される。これによって、リバース走行時においてエンジン12の動作点のエンジン回転数Neがエンジン回転数Ne1より低く設定されると、出力軸15に作用する反力トルクすなわちタービントルクTt(=τCN2)のNが比較的に小さい値となり反力トルクが抑制される。また、好適には、許容回転数は、出力軸15の回転数を一定とした場合、速度比e1から決まるエンジン回転数Ne1より低く速度比e3から決まるエンジン回転数Ne3より高い範囲に設定される。これによって、リバース走行時においてエンジン12の動作点のエンジン回転数Neが出力軸15の回転数の絶対値以上に設定されると、容量係数Cの増加が抑えられつつエンジン回転数Neが低くなり反力トルクが好適に抑制される。また、更に好適には、許容回転数は、出力軸15の回転数を一定とした場合、速度比e2から決まるエンジン回転数Ne2より低く速度比e3から決まるエンジン回転数Ne3より高い範囲に設定される。これによって、リバース走行時においてエンジン12の動作点のエンジン回転数Neがエンジン回転数Ne2より低く設定されると、容量係数Cの増加が抑えられつつエンジン回転数Neおよびトルク比τが低くなり反力トルクが更に好適に抑制される。なお、本実施例において、リバース走行時においてエンジン12の動作点のエンジン回転数Neがエンジン回転数Ne3に設定され、容量係数Cが最小となると共にエンジン回転数Neおよびトルク比τが好適に低くなるので、反力トルクが好適に抑制される。
エンジン動作点設定部すなわちエンジン動作点設定手段72は、MG1動作点設定手段70により設定された第1電動機MG1の動作点Aの回転数例えばエンジン回転数Ne3に基づいてエンジン12の動作点(運転点)bが設定される。図7に示すように、エンジン12の動作点bは、運転者の要求するエンジン12の出力を満たす要求パワー線L4とエンジン回転数Ne3を示す一点鎖線L5との交点である。また、リバース走行時のエンジン12の動作点bは、エンジン12の出力がそれぞれ同じであるエンジン12の要求パワー線L4上において比較すると、前進走行時のエンジン12の動作点aよりも低回転高トルク側の動作点である。
エンジン動作点制御部すなわちエンジン動作点制御手段74は、エンジン動作点設定手段72により設定されたエンジン12の動作点bとなるようにすなわちトルクコンバータ16の容量係数Cが最小となるように、例えば、電子制御装置40のエンジンECU40cから例えば電子スロットル弁の開閉を制御する為のスロットアクチュエータへ駆動信号SEが出力され、エンジン回転数Neおよびエンジン12のトルクが制御される。
MG1回生トルク制御部すなわちMG1回生トルク制御手段76は、MG1動作点設定手段70により設定された第1電動機MG1の動作点Aとなるようにすなわちトルクコンバータ16の容量係数Cが最小となるように、電子制御装置40のMGECU40bから第1電動機MG1に指令電流である第1電動機電流IMG1が出力されて、第1電動機MG1の回生トルクが制御される。
図8は、エンジン最小燃料消費率線L6と運転者が必要とする必要エンジンパワーが出力される必要エンジンパワー線L7とにより決定されたエンジン12の動作点で作動された場合において、変速比eが変化することによりポンプ翼車16pのポンプトルクTp(=CN2)と第1電動機MG1のMG1トルクTMG1との分担割合の変化を示す図である。この図8によれば、エンジントルクは、ポンプトルクTpとMG1トルクTMG1と合わせたものであり、ポンプトルクTpは、容量係数Cが比較的に大きい変速比e1のときよりも容量係数Cが比較的に小さい変速比e2の時ほうが小さくなり、ポンプトルクTpが小さくなった分だけMG1トルクTMG1が大きくなる これによって、第1電動機MG1で発電させる際のポンプトルクTpが低下し、出力軸15に作用する逆トルクが好適に抑制される。
図9は、電子制御装置40の制御作動の要部によってリバース走行時において車両のリバース駆動力が確保される制御作動を説明するフローチャートである。また、図10は、図9の制御作動に対応するタイムチャートである。
図9において、先ず、リバース運転中判定手段60に対応するS1において、例えばシフトレバー58がRレンジに切り換えられたか否かが判定される。このS1の判断が否定される場合は本ルーチンが終了させられるが、肯定される場合(図10のt1時点)には充電残量判定手段64に対応するS2において、充電残量SOCが所定充電残量値SOCAを下回ったか否かが判定される。このS1の判定が否定される場合にはMG2駆動制御手段66に対応するS3において、第2電動機MG2がエンジン12と反対回転に回動されて出力軸15に運転者の要求する要求駆動力が作用される(図10のt1からt2までの間)。
S2が肯定される場合(図10のt2時点)には、MG1発電電力算出手段68、MG1動作点設定手段70およびエンジン動作点設定手段72に対応するS4において、第1電動機MG1の要求発電電力が算出され、出力軸15に作用する逆トルクが抑制され且つ前記要求発電電力をエンジン12を駆動させて第1電動機MG1で発電できるように第1電動機MG1の動作点Aおよびエンジン12の動作点bが設定される。
次に、エンジン動作点制御手段74およびMG1回生トルク制御手76に対応するS5(図10のt3時点)において、S4で設定された第1電動機MG1の動作点Aおよびエンジン12の動作点bとなるように、第1電動機MG1およびエンジン12が制御されて第1電動機MG1で発電が行われる。
図10に示すように、S4において出力軸15に作用する逆トルクが抑制されように第1電動機MG1の動作点Aおよびエンジン12の動作点bが設定されたので、エンジン回転数Neおよび第1電動機回転数NMG1がエンジン回転数Ne1より低下し、タービントルクTt(=τCN2)および出力軸15の出力軸トルクがエンジン回転数Ne1の時よりも低下する。なお、図10において、タービントルクおよび出力軸トルクに記載されている一点鎖線L8、L9は、リバース走行時にエンジン12(第1電動機MG1)をエンジン回転数Ne1で回転させた時のタービントルクおよび出力軸トルクの大きさを示すものである。
本実施例の車両用動力伝達装置10によれば、エンジン10を作動させながら第2電動機MG2を運転させるリバース走行時には、エンジン10が、運転者の要求するエンジン12の出力を満たす要求パワー線L4上で比較すると、前進走行時のエンジン12の動作点aよりも低回転高トルク側の動作点bで作動させられることから、リバース走行時にはエンジン回転数Neが下げられトルクコンバータ16の入力側回転要素であるポンプ翼車16pのポンプトルクTpが低下するので、トルクコンバータ16の出力側回転要素であるタービン翼車16tに連結された出力軸15に働くリバースに対する逆トルクが従来に比較して低下させられる。これによって、第2電動機MG2に作用するエンジン12からの逆トルクが抑制されるので、リバース走行時のリバース駆動力が確保される。
また、本実施例の車両用動力伝達装置10によれば、前進走行する場合のエンジン12の回転数Ne1は、任意のエンジン出力で走行時に、エンジン12の効率や車両の振動・騒音を勘案して設定されたエンジン12の動作点aから求められる回転数である。リバース走行時にはそのエンジン12の回転数Ne1よりも低下させられるので、車両のリバース駆動力が確保される。
また、本実施例の車両用動力伝達装置10によれば、エンジン12の回転数Neは、トルクコンバータ16が最大トルク比τとなる速度比e2から求まる入力回転数Ne2より低く設定される。このため、トルク比τの比較的に小さいトルクコンバータ16を介してエンジン12のトルクが伝達されるので、トルクコンバータ16のタービン翼車16tに連結された出力軸15に働く第2電動機MG2の出力トルクに対する逆トルクが好適に低下させられる。
また、本実施例の車両用動力伝達装置10によれば、エンジン12の回転数Neは、タービン翼車16tに連結された出力軸15の回転数の絶対値以上とする。このため、トルクコンバータ16の速度比eが−1以下となるので、トルクコンバータ16の容量係数Cが急増しそのトルクコンバータ16のタービン翼車16tに連結された出力軸15に働く逆トルクの増加が抑制される。
また、本実施例の車両用動力伝達装置10によれば、第1回転機MG1および/または第2回転機MG2は、その許容回転数の中で最高効率領域内の動作点で作動させられる。このため、第1電動機MG1および/または第2電動機MG2が効率の良い動作点で運転されるので、効率よく車両のリバース駆動力が確保される。
また、本実施例の車両用動力伝達装置10によれば、エンジン12の回転数Neは、トルクコンバータ16が容量係数Cが最小となる速度比e3から求まる入力回転数Ne3に設定されて、トルクコンバータ16の容量係数Cが最小とされる。このため、エンジン12からの逆トルクが最小とされ、且つエンジン12の出力が発電に必要な最小限にされる。
また、本実施例の車両用動力伝達装置10によれば、トルクコンバータ16の容量係数Cが最小となるように、エンジン12の回転数Ne、エンジン12のトルク、もしくは、第1回転機MG1の回生トルクが制御される。このため、トルクコンバータ16の容量係数Cが上昇してもより低い容量係数Cとなるエンジン12の動作点bもしくは第1電動機MG1の動作点Aとされるので、出力軸15に伝達される逆トルクを低下する。
次に、本発明の他の実施例を説明する。なお、以下の説明において実施例相互間で共通する部分には同一の符号を付して説明を省略する。
図11に示すように、本実施例の車両用動力伝達装置80は、前述の実施例1の車両用動力伝達装置10に比較して、トルクコンバータ16のステータ翼車16tにおいてブレーキBsを介してトランスミッションケース24に断接可能に連結されている点で相違し、それ以外は略同様に構成されている。また、ブレーキBsは、油圧シリンダとその油圧シリンダに供給される油圧に応じて摩擦係合される多板式ブレーキを備える油圧式摩擦係合装置である。
図12に示すように、電子制御装置40の容量係数変更部すなわち容量係数変更手段82は、ブレーキBsの係合作動を制御することによりステータ翼車16sの回転作動(すなわち回転速度)を制御して、トルクコンバータ16の流体特性としての容量係数Cを変化させる。すなわち、ブレーキBsが解放されると、ステータ翼車16sが自由回転させられるステータフリー状態となり、容量係数Cは同じ速度比eにおいて増大させられる。一方、ブレーキBsが係合されると、ステータ翼車16sが回転停止させられるステータ固定状態となり、容量係数Cは同じ速度比eにおいてステータフリー状態より低減させられる。他方、ブレーキBsがスリップ係合されると、ブレーキBsのトルク容量に応じてステータ翼車16sの回転がある程度許容させられるステータ半固定状態となり、容量係数Cは同じ速度比eにおいてステータフリー状態とステータ固定状態との間で可変させられる。容量係数変更手段82では、ブレーキBsによってステータ翼車16sの回転作動を制御し、トルクコンバータ16の容量係数Cを積極的に低下させる。従って、容量係数変更手段82では、トルクコンバータ16の容量係数Cが積極的に低下されることで、ポンプトルクTpを低下させて出力軸15に作用する逆トルクを低下させる。
図13は、本実施例の電子制御装置40の制御作動の要部によってリバース走行時において車両のリバース駆動力が確保される制御作動を説明するフローチャートであり、ここでは、図9と同じS1乃至S5の説明を省略してS6だけを説明する。
容量係数変更手段82に対応するS6において、ブレーキBsによってステータ翼車16sの回転作動を制御して、トルクコンバータ16の容量係数Cが積極的に低下される。S6によって、出力軸15に作用するポンプトルクTpすなわち低下し車両のリバース駆動力が確保される。
車両用動力伝達装置80の電子制御装置40には、図12に示すように、前述の実施例1と同様のエンジン動作点設定手段72が設けられているので、そのエンジン動作点設定手段72によって、エンジン回転数Neがトルクコンバータ16が容量係数Cが最小となる速度比e3から求まる入力回転数Ne3に設定されて、トルクコンバータ16の容量係数Cが最小とされる。これによって、エンジン12からの逆トルクが最小とされ、且つエンジン12の出力が発電に必要な最小限にされる。
また、車両用動力伝達装置80の電子制御装置40には、図12に示すように、前述の実施例1と同様のエンジン動作点設定手段72、MG1回生トルク制御手段74が設けられているので、トルクコンバータ16の容量係数Cが最小となる動作点A、bとなるように、エンジン12の回転数Ne、エンジン12のトルク、もしくは、第1回転機MG1の回生トルクが制御される。このため、トルクコンバータ16の容量係数Cが上昇してもより低い容量係数Cとなるエンジン12の動作点bもしくは第1電動機MG1の動作点Aとされるので、出力軸15に伝達される逆トルクを低下する。
本実施例の車両用動力伝達装置80によれば、エンジン12を作動させながら第2電動機MG2を運転させるリバース走行時に、ブレーキBsによってステータ翼車16sの回転作動を制御してトルクコンバータ16の容量係数Cが積極的に低下させられるので、トルクコンバータ16のタービン翼車16tに連結された出力軸15に伝達されるエンジン12からの逆トルクが従来に比較して低下させられる。これによって、トルクコンバータ16のタービン翼車16tに連結された出力軸15に作用するエンジン12からの逆トルクを抑えつつエンジン12を用いて第1電動機MG1で発電可能となるので、第2電動機MG2のリバース駆動力が好適に確保される。
以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、本発明はその他の態様においても適用される。
本実施例の車両用動力伝達装置10において、流体伝動装置としてトルクコンバータ16を用いたが、そのトルクコンバータ16に代えて、トルク増幅作用を担うステータ翼車16sを備えないフルードカップリング(流体継手)を用いても良い。また、機関の一例として内燃機関であるエンジン12を用いたが、他の動力源が使用されても良い。
また、本実施例の車両用動力伝達装置10のMG1発電電力算出手段68において、図5の要求発電電力線L1は、例えば運転者の要求する車両のリバース駆動力によって変化するものであったが、必ずしも要求発電電力線L1を変化させる必要はなく予め決められたものであっても良い。
また、本実施例の車両用動力伝達装置80において、図13のフローチャートに示すように、電子制御装置40の制御作動には、S4、S5が設けられていたが、必ずしもS4、S5が設けられる必要はなく、容量係数変更手段82に対応するS6だけでも良い。容量係数変更手段82だけで、出力軸15に作用する逆トルクが抑制され車両のリバース駆動力が確保される。
なお、上述したのはあくまでも一実施形態であり、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を加えた態様で実施することができる。