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JP5734110B2 - 回転電機用巻線体のワニス含浸処理方法およびその方法によって製作された回転電機用巻線体 - Google Patents

回転電機用巻線体のワニス含浸処理方法およびその方法によって製作された回転電機用巻線体 Download PDF

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この発明は、一般産業用および民生用モータ、発電機等の回転電機用巻線体であるコイルのワニス含浸処理方法、およびこの方法によってワニス処理され製作された回転電機用巻線体であるコイルに関するものである。
従来から、回転電機の鉄心に導体を巻きつけて形成された固定子コイルや、回転子コイル等において、絶縁性能の向上に加え、導体間の空隙を充填しコイルから鉄心への熱伝達性を向上させコイルの放熱特性を向上させるために、ワニス含浸処理が行われている。
この様なワニス含浸方法として、コイルを熱硬化性樹脂のワニス中に浸してワニスを浸透させる浸漬含浸法や、コイルにワニスを滴下して含浸させる滴下含浸法、あるいはコイルを真空容器内に収容し、容器内を減圧した状態でコイルをワニス中に浸漬もしくはコイルにワニスを滴下して含浸させる真空含浸法などがある。
ところが、これらの方法によりワニスを含浸させたコイルは、その後加熱炉内で加熱されワニスを硬化させるが、この加熱過程において、コイル温度がワニスの硬化温度に達する以前に一旦ワニス粘度が下がり、コイルからワニスが流出し、絶縁性能やコイルの放熱性能が低下するという問題点があり、この改善のため、コイルをワニス中に浸漬しているときに、コイルに通電過熱してワニスをゲル化させ、含浸後のワニスの流出を防止する方法(例えば、特許文献1)や、コイル表面に粉体ワニス処理を行い非浸透性の被膜を形成した後、真空加圧含浸装置により被膜内に無溶剤ワニスを充填し、この後被膜内に充填された無溶剤ワニスを加熱硬化させる方法(例えば、特許文献2)などが提案されている。
特開昭61−214749号公報 特開平06−153468号公報
前記特許文献1のワニス含浸方法によれば、浸漬中にワニスをゲル化させるため、加熱硬化時にワニスの粘度低下が発生せずワニスの流出を防止できる。また特許文献2のワニス含浸方法によれば、非浸透性の被膜内にワニスを含浸させるため、やはり加熱硬化時のワニスの流出を防止できる。
しかしながら、特許文献1に示された技術では、ワニスを浸漬中にコイルを通電加熱するため、蓄熱によりワニスの劣化が進みポットライフ(可使時間)が短くなり材料歩留まりが低下するという問題点があった。また、特許文献2の技術では、無溶剤ワニスを含浸するための開口部を作るマスキング工程、粉体ワニスを付着させる工程、粉体ワニスを溶融固着させる工程が必要となり工数が増える上、粉体ワニスにより材料費も増えるため、製造コストが増大するという問題点があった。
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、余分な工程を経ることなくして製造コストの増大を抑制し、加熱硬化中のワニスの流出を防止できるコイルのワニス含浸処理方法と、この方法によりワニスを含浸することで製作された絶縁性、放熱性に優れた回転電機用巻線体を得ることを目的としている。
第1の発明は、導体を複数層巻きつけて形成された回転電機用巻線体のワニス含浸処理方法であって、回転電機用巻線体を予熱する予熱工程と、予熱された回転電機用巻線体にワニスを滴下、含浸するワニス含浸工程と、ワニスを硬化させる加熱硬化工程とを備え、
ワニス含浸工程は、Aワニスを滴下、含浸する第1の工程と、第1の工程に引き続きBワニスを滴下、含浸する第2の工程を有し、AワニスBワニスの硬化温度Aワニスの硬化温度>Bワニスの硬化温度とするとともに、予熱工程における回転電機用巻線体の予熱温度が、Bワニスの硬化温度以上で、かつAワニスの硬化温度よりも低いものであるとともに、第2の工程中にBワニスを回転電機用巻線体の表層部のみでゲル化させることにより、加熱硬化工程において回転電機用巻線体の内部からAワニスの流出を防止したものである。
第2の発明は、前記第1の発明に係るワニス含浸処理方法によって製作された回転電機用巻線体である。
第1の発明による回転電機用巻線体のワニス含浸処理方法は、前記のようなワニスの硬化温度を有し、前記のような工程を有するものであるので、ワニスのポットライフに影響を与えず、余分な工程を必要とせずに加熱硬化中のワニスの流出を防止でき、使用するワニスの歩留まりが向上し、この結果ワニスの消費量が低減でき、かつ製造コストを低減可能となる。
第2の発明による回転電機用巻線体は、第1の発明による方法によって製作されたものであるので低コストで、絶縁性、放熱性に優れた回転電機用巻線体を得ることができるという効果がある。
実施の形態1によるワニス含浸工程を示す模式図である。 実施の形態1によるAワニスを滴下後のコイルへの浸透状態を示す断面図である。 実施の形態1によるAワニス滴下後、Bワニスを滴下後のコイルへの浸透状態を示す断面図である。 実施の形態1による巻線体のワニス含浸処理工程を示す図である。 実施の形態1による各実施例の比較を示す図である。 実施の形態1の巻線体の放熱特性測定系の装置構成を示す図である。 実施の形態1による各実施例の放熱特性測定結果を示す図である。 実施の形態1による比較例2による巻線体へのワニス浸透状態を示す断面図である。 実施の形態1のよる比較例3による巻線体へのワニス浸透状態を示す断面図である。
実施の形態1.
以下、この発明の実施の形態1による回転電機用巻線体(以後、巻線体と称す)のワニス含浸処理方法について図に基づいて説明する。
図1(a)、(b)は、実施の形態1におけるワニス含浸工程を示す模式図である。ここでこの実施の形態1では155℃〜185℃の硬化温度を有する複数のAワニス4の内から155℃の硬化温度のAワニス4と、125℃〜145℃の硬化温度を有する複数のBワニス5の内から135℃の硬化温度のBワニス5が使用されている。図1(a)、(b)に示すように巻線体3は、鉄心1とコイル2とで構成されている。コイル2はエナメル線やポリエステルイミド線などの導体を鉄心1に直接複数層巻きつけて形成されている。
巻線体3は、吸着した水分および巻線時に発生した導体被覆層の歪みを除去するため、135℃の温度で図示省略した炉中で予熱後ワニス含浸処理される。前記予熱工程における巻線体3の温度調整は、前記Bワニス5の硬化温度(135℃)以上であって、前記Aワニス4の硬化温度(155℃)より低い温度である135℃となるようになされている。
このように予熱された巻線体3に対し、図1(a)に示すようにノズル11を通してAワニス4を滴下してコイル2の内部に浸透させた後、図1(b)に示すようにノズル11aを通してBワニス5を滴下してコイル2に浸透させる。
図2に、Aワニス4を滴下した後の巻線体3へのAワニス4の浸透状態の断面図を示す。図2に示すように、巻線体3の予熱温度(135℃)がAワニス4の硬化温度(155℃)より低いため、コイル2の表層部2aでゲル化することなくコイル2の中心部10まで浸透している。
図3に前述したAワニス4滴下後にBワニス5を滴下、浸透した巻線体3の断面図を示す。巻線体3の予熱温度が135℃であり、硬化温度が135℃であるBワニス5を採用しているため、図3に示すようにコイル2の中心部10まで浸透せず表層部2a、すなわちコイル2の表層より概略2〜3層でゲル化する。このようにAワニス4、Bワニス5を連続的に滴下、含浸した後、巻線体3をAワニス4の硬化温度にて加熱し、ワニス含浸処理を行う。この一連の工程は後述する。
次に、前記実施の形態1に基づく実施例を説明する。
鉄心1に線径1.05mmφの導体を直接巻きつけて占積率87%のコイル2を備えた巻線体3を形成した後、温度設定150℃の熱風乾燥炉内で2時間予熱し、135℃近傍の加熱調整した巻線体3にAワニス4を滴下(以下、第1の工程と称す)し、引き続きBワニス5滴下(以下、第2の工程と称す)した。その後175℃の熱風乾燥炉内で4時間加熱して、前記Aワニス4、Bワニス5を硬化させ含浸処理された巻線体3を得た。この一連の工程を図4に示す。
尚、Aワニス4は以下の通り調整した。
主剤:エポキシポリエステル49重量部、架橋剤:2−ヒドロキシエチルメタアクリレート49重量部、重合開始剤:ジクミルパーオキサイド:1重量部、硬化剤:オクチル酸亜鉛1重量部をプロペラ式攪拌機にて1時間攪拌した後、目視にて気泡が確認されなくなるまで放置脱泡した。このAワニス4の硬化温度は175℃である。
また、Bワニス5は以下の通り調整した。
主剤:エポキシアクリレート59重量部、架橋剤:2−ヒドロキシエチルメタアクリレート40重量部、重合開始剤:t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート:1重量部をプロペラ式攪拌機にて1時間攪拌した後、目視にて気泡が確認されなくなるまで放置脱泡した。このBワニス5の硬化温度は135℃である。
(比較例1)
ワニスの含浸工程において、第1の工程であるAワニス4のみを滴下し、第2の工程であるBワニス5の滴下を行わなかった以外は実施例と同じ工程を行い含浸処理された巻線体3を得た。
(比較例2)
ワニスの含浸工程において、第2の工程のBワニス5のみを滴下し、Aワニス4の滴下を行わなかった以外は実施例と同じ工程を行い含浸処理された巻線体3を得た。
(比較例3)
ワニスの含浸の第1の工程において、実施例のAワニス4に代替して、以下の通り調整したCワニス9を滴下した以外は実施例と同じ工程を行い含浸処理された巻線体3を得た。
主剤:不飽和ポリエステル50重量部、架橋剤:2−ヒドロキシエチルメタアクリレート49重量部、重合開始剤:1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)−2−メチルシクロヘキサン1重量部をプロペラ式攪拌機にて1時間攪拌した後、目視にて気泡が確認されなくなるまで放置脱泡した。このCワニス9の硬化温度は142℃である。
図5に実施例、比較例1、比較例2、比較例3での予熱工程条件、ワニス含浸工程条件、ワニス硬化工程条件をまとめて示す。
次に、実施例、比較例1、比較例2、比較例3で得られた巻線体3のワニス付着量、絶縁性能、巻線の放熱性能の評価を行った。ワニス付着量については、含浸処理前後の巻線体3の重量差から求めた。絶縁性能については、代表値としてコイル2と鉄心1間の誘電正接の値を測定した。測定条件はAC2500V、60Hzとし、総研電気(株)製tanδ測定機DAC−ASM−7で測定した。放熱特性について、図6に測定系の装置構成を示す。鉄心1にヒートシンク6を取り付けた状態で、コイル2に交流電源7よりAC100V、60Hzの電圧を印加し抵抗計8で初期及び1時間通電後のコイル2の抵抗測定を行い、JIS−C4203より下式に従ってコイル2の温度上昇を求めた。
θ=θ2−θα=(R2/R1−1)×(235+θ1)+(θ1−θα) [℃]
θ:コイル2の温度上昇値、θ1:初期抵抗測定時の巻線温度、θ2:試験後のコイル2の温度
θα:試験後の室温、R1:初期抵抗、R2:試験後の抵抗
図7に各測定結果をまとめて示す。
ワニスの付着量は実施例では24.2gで第1の工程および第2の工程で滴下されたAワニス4およびBワニス5の総量25gのほぼ全量が、硬化後のコイル2に付着していることが分かる。一方比較例1では13.8gで、ワニス含浸工程で滴下されたAワニス4の約45%が硬化工程でコイル2より流出してしまっている。また比較例2では9.4gと付着量が非常に少ない。
図8は比較例2で得られた巻線体3の断面図である。コイル2の表層部2a(表面より2〜3層)にのみBワニス5が付着し、コイル2の中心部10への浸透はほとんどみられない。これはコイル2に滴下されたBワニス5が表層部2aでゲル化しそれ以降に滴下されたBワニス5のコイル2への浸透を阻害したためである。比較例3では19.8gと比較例1、2に比較するとワニス付着量が多いが、実施例と比較すれば少ない。
図9に比較例3で得られた巻線体3の断面図を示す。図9から判るようにCワニス9がコイル2の中心部10まで浸透せずコイル2の中心部10に空隙が生じていることが分かる。これは、Cワニス9の硬化温度が142℃であるのに対し、Bワニス5の硬化温度が135℃、温度差が10℃以内でありBワニス5をゲル化させるために巻線体3の温度を135℃に調節したため、Cワニス9の滴下時にCワニス9の一部がゲル化しコイル2への浸透が阻害されたためである。
誘電正接については、比較例1が3.4%、比較例2が4.9%、比較例3が2.9%であるのに対し、実施例では2.2%と最少の値である。これは、比較例1、比較例2及び比較例3において、実施例に比べワニスの付着量が少ないことによりコイル2と鉄心1間のモレ電流の増大があることを示している。
また、温度上昇についても、比較例1が58.2℃、比較例2が61.4℃、比較例3が55.9℃であるのに対し、実施例では51.2℃と最少の値である。これは、実施例で第1の工程および第2の工程においてコイル2の中心部10まで充分にAワニス4が含浸され、またその後の硬化工程でコイル2の中からのAワニス4の流出が防止されて、硬化後コイル2中に充分なワニス付着量が確保されたことにより、コイル2と鉄心1間の熱伝達性およびコイル2の放熱性が向上したことを示している。
以上の結果より、実施の形態1に基づくワニス含浸処理方法を用いた実施例において、余分な工程を経ることなく低コストで、ワニス含浸工程前述した第1、第2の工程でコイル2の中に充分Aワニス4、Bワニス5を浸透させ、且つ図4に示す175℃のワニス硬化工程でコイル2の中からのワニスの流出を防止し充分なワニスの付着量を確保して、絶縁性能、放熱性能に優れた巻線体3が得られたことがわかる。
尚、実施例においてAワニス4およびBワニス5の組成例を示したが、これらに限定されるものではなく、この実施の形態1に記載する性能要件を満たすものであればいかなる組成のものでも使用可能である。
またこの実施の形態1では、鉄心1に導体を直接巻きつけて形成した直接巻きコイル2を備えた巻線体3のワニス含浸方法について説明したが、この例に限らずコイル2を鉄心1に直接巻きつけることでなく専用工具によって巻線され形成された、いわゆる間接巻きのコイル2とし、この間接巻きのコイル2のワニス含浸方法であってもよい。
またさらに、Aワニス4、Bワニス5がノズル11、11aを介して含浸する方法を述べたが、これに限らず他の方法、例えば浸漬含浸法、真空含浸法等であってもよい。そして、この実施の形態1によるワニス含浸処理方法は、汎用IPMモータや永久磁石埋込型モータや多方面にわたる各種回転電機に適用可能である。
1 鉄心、2 コイル、2a 表層部、3 巻線体、4 Aワニス、5 Bワニス。

Claims (6)

  1. 導体を複数層巻きつけて形成された回転電機用巻線体のワニス含浸処理方法であって、前記回転電機用巻線体を予熱する予熱工程と、前記予熱された回転電機用巻線体にワニスを滴下、含浸するワニス含浸工程と、前記ワニスを硬化させる加熱硬化工程とを備え、
    前記ワニス含浸工程は、Aワニスを滴下、含浸する第1の工程と、前記第1の工程に引き続きBワニスを滴下、含浸する第2の工程を有し、前記Aワニスと前記Bワニスの硬化温度Aワニスの硬化温度>Bワニスの硬化温度とするとともに、前記予熱工程における前記回転電機用巻線体の予熱温度が、前記Bワニスの硬化温度以上で、かつ前記Aワニスの硬化温度よりも低いものであるとともに、前記第2の工程中に前記Bワニスを前記回転電機用巻線体の表層部のみでゲル化させることにより、前記加熱硬化工程において前記回転電機用巻線体の内部から前記Aワニスの流出を防止したことを特徴とする回転電機用巻線体のワニス含浸処理方法。
  2. 前記第1の工程で滴下、含浸するAワニスの硬化温度が、前記第2の工程で滴下、含浸するBワニスの硬化温度よりも少なくとも10℃以上高いことを特徴とする請求項1に記載の回転電機用巻線体のワニス含浸処理方法。
  3. 前記回転電機用巻線体が鉄心とこの鉄心に直接巻きつけられたコイまたは前記回転電機用巻線体が間接巻きコイのいずれかとすることを特徴とする請求項1に記載の回転電機用巻線体のワニス含浸処理方法。
  4. 前記Aワニスが前記コイルの内部に含浸され、前記Bワニスが前記コイルの表層部に含浸されていることを特徴とする請求項3に記載の回転電機用巻線体のワニス含浸処理方法。
  5. 前記請求項1に記載のワニス含浸処理方法によって製作されたことを特徴とする回転電機用巻線体。
  6. 前記回転電機用巻線体が、鉄心とこの鉄心に直接巻きつけられたコイまたは前記回転電機用巻線体が間接巻きコイのいずれかとすることを特徴とする請求項5に記載の回転電機用巻線体。
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